説明

アテローム硬化性プラークを治療するための装置及び方法

本発明は、冠状動脈の入口又はその近傍かつ不安定プラークの上流に配置することにより哺乳類の冠状動脈内のアテローム硬化性プラークを治療するための装置と、プラークを治療するための有効量の治療薬とを含む。本発明は、下流の不安定プラークの治療のために冠状動脈枝内に治療薬を多く定置するステップを含む。本発明はまた、徐放製剤、及び完全に分解可能な、或いは除去及び/又は置換される装置の送出も含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示による発明は、一般に医療機器及び方法に関し、より具体的には、冠状動脈の不安定プラークの治療を目的とする方法、装置及び製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓血管性疾患は、世界的に主な死因の1つである。従来は、心臓血管性疾患は、アテローム性動脈硬化症、即ち、冠状動脈に非不安定プラークが徐々に蓄積することにより生じる重度の閉塞に起因するものであると考えられていた。この罹患血管の収縮又は狭窄は、最終的には狭心症に至り、いずれは冠動脈閉塞症、突然心臓死、及び/又は血栓性脳卒中に至る可能性がある。
【0003】
近年の研究により、アテローム性動脈硬化症の理解に変化がもたらされてきた。現在では、科学者は、少なくとも一部の冠状動脈疾患は、炎症によりアテローム硬化性プラークが破裂する炎症過程に関与すると考えている。この炎症性プラークは、アテローム硬化性不安定プラーク(不安定プラーク)として知られている。近年の研究により、プラーク破裂が致命的な心筋梗塞の60%〜70%を誘発する可能性があることが示唆されている。このうち、25%〜30%はプラークびらん又は潰瘍化により誘発される。
【0004】
不安定プラークの組成の研究では、炎症細胞の存在が示唆されている。関連する炎症細胞を含む大きな脂質コアが、潰瘍及び/又は差し迫ったプラーク破裂の最も有力な前兆となる。例えば、プラークびらんでは、血栓の下の内皮細胞が炎症細胞に置き換わり、或いはそこに炎症細胞が散在するようになる。
【0005】
不安定プラークの別の特徴として結合組織の崩壊がある。細胞外基質の吸収に至る、プロテオグリカン及びコラーゲンを含む結合組織の非制御的な分解に、マトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)が重要であることを示す一連の証拠が存在する。通常、MMPは、合成レベルのみならず、細胞外活性レベルにおいても厳密に規制される。サイトカインを含む様々な細胞外刺激物、細胞−細胞間、及び細胞−基質間の相互作用により、MMPの発現が誘発される可能性がある。不安定プラーク領域においてMMPの発現及び活性の増加が認められることが、アテローム硬化性の病状に特に関連している(Galis他(1994年)J.Clin.Invest.第94巻、2493〜2503頁)。
【0006】
不安定アテローム硬化性プラークは、血管造影法などの従来の技術を使用して検出できないことが多い。実際、梗塞に至ったこれらの不安定プラークの大部分は、梗塞の前に行った血管造影図では正常に、或いは少ししか狭窄していないように見えた冠状動脈に発生している。しかしながら、不安定プラークが識別されても、治療の選択肢は限定される。現在の治療は、実際にあいまいな傾向にある。例えば、血清コレステロール(すなわち血中コレステロール)を低下させるためには、低コレステロールの食事が推奨されることが多い。別の方法では、炎症及び血栓症を減少させるためにアスピリン及び非ステロイド性薬物のような全身性抗炎症薬が利用される。しかしながら、不安定アテローム硬化性プラークを確実に検出することができれば、局所的な治療法を開発してこの問題に具体的に取り組むことができると考えられる。
【0007】
不安定プラークの治療に対して提案されている方法の1つに、治療薬の全身送出がある。この方法は、治療薬の望ましくない副作用を伴い、治療上有効な量を不安定プラークへ送出するのに大量の薬剤が必要となる。別の提案されている方法は、プラークの真上の動脈腔に配置したステントから薬物を溶出させることによる非常に局所的な治療薬の送出である。この方法の欠点として、個々の不安定プラークの位置にステントを配置する必要性が挙げられるが、これは外傷及び狭窄のリスク、並びにステントによる動脈の被覆を伴い、後で血管形成術/ステント術が必要となった場合、このことが問題となる可能性がある。さらに、不安定プラークを発症しやすい患者に対しては、特定のプラークの発症又は識別前に治療を行うことが望ましい。また、動脈腔が小さく、ステントで近づくのが困難なさらに下流の冠状動脈の分岐点に発症する可能性がある不安定プラークを治療することも望ましい。
【0008】
最近、Wang他(2004)のCirculation第110巻、278〜284頁に、冠状動脈枝全体にわたる閉塞性血栓症の地理的分布が発表された。Wangらは、主要冠状動脈の近位部内にこのような閉塞が群がっていることを立証した。詳細には、著者は、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)を引き起こす冠状動脈血栓症の空間分布は、大きな冠状動脈の下流の小さな枝内ではなく、大きな冠状動脈に集中した不安定なプラークびらん又は破裂に起因するものであると報告している。この研究では、急性STEMIは、大きな心外膜動脈の近位部に非常に集中していると報告されている。これらのホットスポットは、近位血管、特に左冠動脈前下行(LAD)へと向かう傾向がある。不安定プラークの生じる可能性が高い部位を図1に示す。これらの部位は、これらの部分に比較的限定されているため(LAD血栓症の50%は最初の血管の25mm以内で発症する)、治療的なアプローチは、これらの部位の不安定プラークを治療するように計画される必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの実施形態によれば、哺乳類の冠状動脈におけるアテローム硬化性プラークを治療するための装置が、冠状動脈の入口又はその近傍かつ不安定プラークの上流に配置され、プラークの治療に有効な量の治療薬を放出する。この装置は、装置が治療薬用のリザーバの機能を果たすとともに心門又は動脈内の所望の部位にその位置を保持できるようにする何らかの構造を含む。
【0010】
この構造は、装置が最終的に心門又は動脈に存在しなくなるように生分解性であることが好ましいが、部分的に又は完全に非生分解性、すなわち恒久的なものであってもよい。装置の構成材料に治療薬を組み入れて、(材料の生分解の一部としてかどうかに関係なく)この材料から溶出させるか、装置内に空洞を形成してそこから薬剤を放出できるようにするか、及び/又は装置上又は装置内にナノ構造を設けることによりリザーバ機能を実現することができる。
【0011】
装置は、環状リング、円筒形ステント、又は他の任意の適当な形状で構成することができる。所望の部位における装置の保持は、多くの方法で実現することができる。機械的な留め具(プロング、スパイク、フック)などの何らかの保持機構を組み入れることにより、或いは(付着性/粘着性材料で装置を形成又はコーティングし、及び/又は接着剤を塗布する)接着により実現することができる。単に装置の形状、装置を心門又は動脈壁の形状におおよそぴったりと適合させること、及び、動脈及び/又は装置を流れる血液の摩擦及び/又は圧力勾配の利用により、装置を適所に保持することができる。装置を体外で形成し、その後望ましい部位に挿入してもよいし、或いは原位置で形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】心臓、左右冠状動脈、及び不安定プラークの可能性がある部位を示す図である。
【図2】心門び左右冠状動脈の一部を示す大動脈弓の断面図である。
【図3】左冠状動脈及び関連する心門及び概略的に示した例示的な装置を示す図2の一部の拡大断面図である。
【図4】図3に示した装置の概略図である。
【図5A】冠状動脈の入口に配置した第1の実施形態による装置を示す斜視図である。
【図5B】冠状動脈の入口に配置した第1の実施形態による装置を示す断面図である。
【図5C】第1の実施形態による装置を動脈壁に固定するための代替の取り付け機構を示す図である。
【図5D】第1の実施形態による装置を動脈壁に固定するための代替の取り付け機構を示す図である。
【図5E】非生分解性コア又は骨格を備える代替の実施形態を示す図である。
【図5F】治療薬を収容するための空洞を含む代替の実施形態を示す図である。
【図5G】装置が先細の環状形を有する代替の実施形態を示す図である。
【図6A】冠状動脈の入口に配置した第2の実施形態による装置を示す図である。
【図6B】冠状動脈の入口に配置した第2の実施形態による装置を示す図である。
【図6C】図6A及び図6Bの装置を動脈壁に固定するための代替の取り付け機構を示す図である。
【図6D】図6A及び図6Bの装置を動脈壁に固定するための代替の取り付け機構を示す図である。
【図7A】冠状動脈の入口に配置した第3の実施形態によるメッシュ装置を示す図である。
【図7B】冠状動脈の入口に配置した第3の実施形態によるメッシュ装置を示す図である。
【図8A】冠状動脈の入口に配置した第4の実施形態による管状ステント装置を示す図である。
【図8B】冠状動脈の入口に配置した第4の実施形態による管状ステント装置を示す図である。
【図9】冠状動脈の内部周辺に配置した第5の実施形態による装置を示す図である。
【図10】冠状動脈の入口に配置した第6の実施形態によるプラグ装置を示す図である。
【図11】冠状動脈内の原位置で形成した第7の実施形態による装置を示す図である。
【図12A】冠状動脈内の原位置で組み立てた第8の実施形態による装置を示す図である。
【図12B】冠状動脈内の原位置で組み立てた第8の実施形態による装置を示す図である。
【図13A】吸収阻害層を含む第9の実施形態による装置を示す図である。
【図13B】吸収阻害層を含む第9の実施形態による装置を示す図である。
【図14A】外部エネルギー源を利用してリザーバから治療薬を放出する第10の実施形態による装置を示す図である。
【図14B】外部エネルギー源を利用してリザーバから治療薬を放出する第10の実施形態による装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
大動脈弓及び心門及び左右冠状動脈への入口を図2に示す。図3(図2の強調部分を拡大したもの)には、左冠状動脈LCAの入口に配置した例示的な装置100を概略的に示し、これについてはさらに図4にも概略的に示す。LCAは例示のみの目的でを選択したものであり、冠状動脈枝の任意の部分に装置を配置することができる。
【0014】
装置100は、左冠状動脈LCAなどの冠状動脈への入口内又はその近くに配置され、或いは別様に埋め込まれ、又は位置決めされるように構成される。この部位では、装置100は、冠状動脈のアテローム硬化性プラークの上流に存在することになる。装置は、血液が装置を通過して又は通り越えて流れることができるように構成され、即ち、装置は動脈を塞いでいるのではない。最終的に装置が心門又は動脈に存在しなくなるように、装置100の構造は生分解性であることが好ましい。これにより、後から必要に応じて他のこのような装置を配置し、及び/又は他の装置を冠状動脈に入れることができるようになる。或いは、装置構造は、部分的に又は完全に非生分解性、すなわち恒久的なものであってもよい。
【0015】
装置100は、装置の構造を構成する本体110、及び適当な治療薬TAのためのリザーバ140を含む。冠状動脈を流れる血中に治療薬を放出するように装置を構成及び/又は作成することにより、下流の不安定プラークの(単複の)部位に薬剤を運ぶことができるようになる。治療薬TAは、所望の時間にわたって所望の量で放出され、(単複の)下流部位の(単複の)不安定プラークに治療上有効な量の治療薬を供給する。
【0016】
治療薬を装置の構成材料、及び/又は追加の層又は多くの他の材料に組み入れて、(材料の生分解の一部かどうかに関係なく)材料から溶出させることにより、リザーバ機能を実現することができる。これとは別に、或いはこれに加えて、薬剤を放出できる空洞を装置に形成することにより及び/又は他の任意の適当な機構により、リザーバ機能を実現することもできる。
【0017】
装置100はまた、装置100を所望の部位に保持することができる保持構造又は保持機構120も含む。(プロング、スパイク、フックなどの)機械的留め具として保持機構を提供してもよいし、(装置を付着性/粘着性材料で形成又はコーティングし、及び/又は接着剤を塗布する)接着により、保持機構を実現してもよい。単に装置の形状、装置を心門又は動脈壁の形状におおよそぴったりと適合させること、及び、動脈及び/又は装置を流れる血液の摩擦及び/又は圧力勾配の利用により保持機構を実現して、装置を適所に保持することもできる。
【0018】
装置100を体外で形成し、その後(バルーンカテーテルなどにより)従来の技術で望ましい部位に挿入してもよいし、或いは原位置で組み立て及び/又は形成してもよい。
【0019】
以下、装置100のいくつかの例示的な実施構成についてさらに詳述する。まず装置の構造/形状について説明し、次に装置の材料/組成物について説明する。その後、適当な治療薬について説明する。
【0020】
第1の例示的な実施構成である装置200を図5A及び図5Bに示す。この実施形態では、装置200は、環状リング又はトーラスとして構成される。装置200の本体210が管腔又は開口部215を定める。装置200が動脈(図5Bに示すようにLCA)内に配置された場合、動脈内の血流BFは開口部215を通って流れることができる。本体210から放出される治療薬TAは、このようにして血流BFに入ることができる。
【0021】
当業者に知られている多くの技術のうちの任意の1つにより、装置200を冠状動脈枝内の所望の部位に送出することができる。例えば、ステントなどの装置を冠状動脈枝に送出するのに使用する種類のようなカテーテルを使用して、経皮経管的送出を行うことができる。バルーンカテーテルのバルーン上に装置を配置し、装置が適切に位置決めされると、バルーンが膨張して装置を送出することができる。また、装置は自己膨張式であってもよく、ガイドカテーテル及びガイドワイヤを使用してこれを送出することもできる。
【0022】
装置200は取り付け機構220を含む。取り付け機構220のいくつかの実施形態が企図される。図5Cの部分断面図に示す第1の実施形態では、取り付け機構220は接着剤の層として実現される。接着剤層の表面を動脈と接触させて装置200を動脈内に配置することにより、接着剤が動脈壁に接着し、装置200を適所に保持することになる。装置200の本体210を形成する材料は、別個の接着剤の層ではなく、所望の度合いの接着を行うのに十分に粘着性のある、或いは接着性のあるものであってもよい。上述したように、装置をバルーンカテーテルによって送出することができ、バルーンの膨張によって装置の動脈壁との接着を促すことができる。或いは、装置は自己膨張式であってもよく、圧縮の拘束から解放されたときに、自らを弾性的に動脈壁に接触するように促してもよい。
【0023】
装置を配置すると分解し、動脈壁に接するための接着面を露出させる保護スリーブ(図5Cに示すスリーブ230)により、冠状動脈枝内の所望の部位に送出する前に(別個の接着剤の層であるかどうかに関係なく)リングの接着面を保護することができる。
【0024】
図5Dの部分断面図に示す代替の実施形態では、取り付け機構220’が、動脈壁に埋め込まれて装置を保持することができるスパイク、フック、又はピンの形態の1又はそれ以上の機械的留め具を含む。装置の周囲に複数の留め具を配列することができる。留め具は、装置が送出されるまで装置から突出しないように、収容位置(図示せず)と図5Dに示す配置位置との間で可動であってもよい。送出バルーンを膨張させることにより、これらが配置位置にくるように促してもよく、或いは送出バルーンの膨張によって分解する壊れやすい保護スリーブから解放されるようにしてもよい。形状記憶材料で留め具を形成するような他の技術もまた、当業者にとっては明らかになるであろう。
【0025】
装置200は、トーラスとして形成されるのではなく、図5Gに示すように先細の動脈壁に固定することができる円錐形又はその他の先細の外面を有する別の円環形をとることができる。このようにして、装置200は、適合する先細部(テーパー部)を固定することにより動脈内で保持され(特に、末端方向に滑って冠状動脈枝内に入らないようにされ)る。
【0026】
上記の装置200の実施形態の各々では、(単複の)生分解性材料、生体吸収性材料、及び/又は生体腐食性材料で装置を形成することができる。このような材料として、加工デンプン、ゼラチン、セルロース、コラーゲン、フィブリン、フィブリノーゲン、(エラスチンなどの)結合タンパク又は天然材料、(ポリラクチド[ポリ−L−ラクチド(PLLA)、ポリ−D−ラクチド(PDLA)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)]、ポリグリコリド、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリグルコネート、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸−ポリ酸化エチレンコポリマー、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ酸無水物、ポリリン酸エステル、ポリ−チロシンなどのポリ(アミノ酸)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)などの)ポリマー又はコポリマー又はこれらの材料の関連コポリマーのほか、これらの複合材料及び組み合わせ及び他のこのような材料の組み合わせを挙げることができる。
【0027】
上記の実施形態のいずれも、部分的に又は全体的に生分解、生体吸収及び/又は生体腐食しない材料で形成することができる。例えば、図5Eに示すように、装置200は、生体適合性はあるが、生分解、生体吸収、又は生体腐食しない材料で形成されたコア又は骨格212を含む本体210を有する。従って、本体210の他の部分は最終的に動脈に存在しなくなるが、骨格212は残ることになる。この設計は、生分解性の構成要素に構造的支持を与えることにより、本体210の分解時にこの本体210が断片化することを避けるのに役立つことができる。骨格212に適した材料には、ポリマー、金属、(ステンレス鋼、Ni/Ti合金などの)合金、又はこれらの組み合わせ又はその他の適当な材料が含まれる。骨格212は、自己生成材料/自己由来材料、及び/又は合成生体適合性材料から形成することができる。合成生体適合性材料としては、シリコーン、ゴム、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、膨張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエステル、ダクロン、マイラ−、ポリエチレン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリアミド、PVC、ケブラー(ポリアラミド)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリオレフィン、又はこれらの複合体又はその他の適当な材料を挙げることができる。
【0028】
上述したように、治療薬を望ましい動的送出速度(kinetic delivery rate:「KDR」)まで生分解性ポリマーで調剤することなどによって治療薬を装置本体の生分解性材料に組み入れることにより、装置のリザーバ機能を実現することができる。これとは別に、或いはこれに加えて、装置が空洞を含み、この内部に適切な量の治療薬を貯蔵し、空洞内の孔を通じてこの治療薬を放出させることができる。このような実施形態を図5Fに概略的に示す。空洞240は治療薬TAで満たされるとともに孔245を介して開口部215と連通する。生分解性の閉鎖装置又はプラグ247で孔245を任意に閉鎖することにより、装置が動脈内に配置され、プラグ247が血液にさらされて生分解するまで治療薬TAを装置200から放出できないようにすることができる。
【0029】
第2の例示的な実施構成である装置300を図6A及び図6Bに示す。この実施形態は、本体310が複数の管腔又は開口部315で穿孔された円板として構成されていることを除き、先の実施形態と類似したものである。(図6Bに示すように)装置300が動脈内に配置された場合、動脈内の血流BFは開口部315を通って流れることができる。本体310から放出される治療薬TAは、このようにして血流BFに入ることができる。装置300はまた、装置200の実施構成と同様の実施構成を有する保持機構320を含むこともできる。従って、図6Cに示すように、取り付け機構320を接着剤の層として実現することができる(或いは装置300の本体310を形成する材料が、所望の接着力を有するようにすることができる)。同様に、冠状動脈枝の所望の部位に送出する前に、リングの接着面を保護スリーブ330によって保護することができる。或いは、図6Dに示すように、取り付け機構320’が、装置200に関して説明した留め具と同じ選択肢及び変形形態を有する1又はそれ以上の機械的留め具を含む。
【0030】
さらなる実施形態では、図7A及び図7Bに示すように、装置400は装置300と類似したものではあるが、心門をまたいで配置することができるメッシュとして形成される。
【0031】
さらに別の実施形態では、装置500が、公知の薬物溶出性冠状動脈ステントと同様に形成される。図8A及び図8Bに示すように、装置500は、中心管腔515を有する管状メッシュステントであってもよい。このステントは、バルーンにより配置/膨張させることができ、或いは自己膨張することもできる。配置された場合、血流BFは管腔515を通過することができる。
【0032】
上述の実施形態のように、装置を動脈の内部周囲の周りに、或いは心門を完全にまたいで配置する必要はない。装置が、冠状動脈分枝に入る血流に治療薬TAを放出できれば十分である。従って、例えば図9に示すように、動脈壁又は大動脈壁に入り込む機械的留め具を有する取り付け機構620などにより、装置200に類似した装置600を冠状動脈壁又は大動脈壁にしっかりと固定することができる。血液が開口部615を通って流れなくても、治療薬TAが装置600から放出され、血流BFに入ることができる。
【0033】
当業者であれば、平坦なシート又はプレート、円板等を含む、装置600の多くの適当な形及び形状が存在し得ることを認識するであろう。さらに、装置を管腔又は大動脈又は動脈内に配置し、その壁に取り付ける必要はない。むしろ、装置を部分的に又は全体的に血管壁に埋め込むことができる。従って、図10に示すように、1又はそれ以上の装置700を、心門の周囲又は内部の組織T内に埋め込むことができるプラグとして形成することができる。(単複の)装置700から放出される治療薬が血流BFに入り冠状動脈枝に至る。上述の実施形態では、装置は、体外で作製又は組み立てられ、その後、身体の所望の部位へ完全な形で送出される。別の実施形態では、装置を原位置で形成又は組み立てることができる。例えば、図11に示すように、装置800を、例えば、(液体などの)未硬化の形で送出し、適所で硬化することができるポリマー材料の層として直接動脈壁上に形成することができる。従って、動脈の管腔内は薬物溶出材料で覆われる。所望の厚さ及び軸方向範囲及び周囲範囲に装置800を形成することができる。装置800を動脈壁に接着することもでき、或いは単純に、装置800の動脈の形状との噛み合いにより適所に保持することもできる。当業者には明らかであるように、多孔性バルーン又はカテーテルによってポリマーを望ましい部位に送出することができる。
【0034】
さらなる代替例として、装置900を液体ポリマーではなく予備形成した材料シートから形成し、或いは適所で組み立てることができる。従って、図12A及び図12Bに示すように、装置900を複数の適当な材料シート910で形成することができる。その後、これらのシートを所望の部位に送出し、隣接させて、或いは重ねて血管壁の上に置くことができる。
【0035】
上記の実施形態では、装置が配置され、血流BFにさらされたことが確実になるとすぐ、装置から治療薬TAを放出させることができる。その後、治療薬は、装置及び治療薬の形状及び組成を含む様々な因子を通じて調整することができる時間に応じた量で継続的に放出される。治療薬の放出の開始を遅らせることが好ましい場合もあり、これは、同様に装置の本体の生分解の開始を遅らせることを意味することもできる。装置の本体上に吸収阻害層を設けることで、上記を達成することができる。動脈壁Wに隣接して動脈内に配置された(上記の装置500の円筒形ステント状の実施形態と類似したものであってもよい)本体1010を備える装置1000に関する図13A及び図13Bにこのことを概略的に示しており、血流BFはこの装置を通って流れる。吸収阻害層1050は、下に重なった装置本体1010の吸収速度を減少させることができ、吸収速度をゼロにまで減少させることもできる。吸収阻害層1050自身が吸収される場合、吸収阻害層1050が完全に吸収されると、その下の装置本体1010の吸収速度に及ぶ効果は無くなる。吸収阻害層1050が吸収されない場合、その下の装置本体1010が(吸収阻害層1050を通して低速で及び/又は別の方向から)吸収されるまでその効果が持続する。従って、その下の装置本体1010の吸収速度に及ぼされる吸収阻害層の効果の持続時間は、吸収阻害層1050の吸収速度及び/又はその厚さによって決まる。
【0036】
装置本体1010の特定の部分における吸収阻害層1050の厚さを変化させることにより、装置本体1010のいくつかの部分の吸収を他の部分よりも遅らせることができる。装置本体1010の一部に吸収阻害層1050が存在しないようにしてもよい。装置本体1010のこれらの部分は、体腔に埋め込まれるとすぐに生分解し始め、治療薬TAを放出することになる。或いは、吸収阻害層1050の厚さを一定にすることもできる。管腔内装置の生体吸収/生分解を阻害するこの方法は、2005年8月30日に出願された同一出願人による同時係属中の出願番号第11/213,817号にさらに詳細に記載されており、該出願の開示内容は引用により本明細書に組み入れられる。
【0037】
上述の治療薬の遅延放出の代替案として、治療薬をさらに選択的に、或いは一時的に冠状動脈枝内に放出することが望ましい場合がある。この目的を達成するためのいくつかの技術が企図される。例えば、必要時に治療薬を全身に送出することはできるが、活性化が有効になること(及び、これに対応して、冠状動脈枝以外の循環系の一部に作用する任意の望ましくない副作用を有すること)を必要とする形で行うことができ、これをプロドラッグと呼ぶことができる。その後、プロドラッグを、例えば、様々な周波数の電磁放射(RF、マイクロ波、高密度焦点式超音波(HIFU))のような外部から与えられるエネルギー源により冠状動脈枝内で局所的に活性化させることができる。上記の装置のように、装置を心門又は冠状動脈入口に配置することにより、活性化を強化及び/又はさらに局所化して、プロドラッグが装置を通過し、及び冠状動脈枝内に入るときに、外部から与えられるエネルギーを集中させるためのアンテナとして働き、プロドラッグを活性化させることができる。
【0038】
代替の実施形態では、治療薬を全身に導入するのではなく、上記に開示したもののように装置内部に収容することができ、外部エネルギー源などによって外部から活性化することにより装置から選択的に放出させることができる。図14A及び図14Bに概略的に示すこの実施形態では、装置1100が、本体1110及び治療薬TAのリザーバ1140を有する。振動装置1160が本体1110に結合されるとともに、治療薬TAの少なくとも一部をリザーバ1140から放出すべく本体を動かすように構成される。
【0039】
振動装置1160は、例えば、本体1110に結合されたマイクロ発振器などの発振器であってもよい。振動装置1160は、装置1100の特定の構成に関連する共鳴周波数で本体1110を振動させることができる。活性化の際、振動装置1160は、本体1110が振動されない場合の治療薬TAに関連する放出速度とは異なる速度で治療薬TAがリザーバ1140から放出されるように本体1110を振動させることができる。この治療薬の医療装置からの放出を制御する方法は、2006年4月6日に出願された同一出願人による同時係属中の出願番号第11/398,670号にさらに詳細に記載されており、該出願の開示内容は引用により本明細書に組み入れられる。
【0040】
上述の装置は、哺乳類などの冠状動脈内のアテローム硬化性プラークを治療する方法に使用することができる。このような(単複の)方法は、冠状動脈の入口又はその近くに保持されるように構成されるとともに冠状動脈を通過する血液にさらされることにより少なくとも部分的に生分解するように作成された上述のような装置を冠状動脈の入口又はその近くに配置するステップと、不安定プラークを治療するための治療薬を装置から血液内に放出するステップとを含む。治療薬は、装置の1又はそれ以上の表面を横切って通過する血液中に装置から放出することができ、血液によって治療量をプラークに運ぶことができる。哺乳類のなどの対象の心門、左冠状動脈、又は右冠状動脈のうちの1つ、又は冠状動脈枝の別の部分に装置を配置することができる。
【0041】
上述した様々な実施形態の装置を、様々な材料及び様々な構造で形成することができる。上述のように、装置は、全体的に又は部分的に生分解性であってもよい。装置の本体及びその他の構造要素を、構造要素の変形を実質的に阻害する生体適合性のある材料で予成形することができる。外部に配置される構造要素は、生体適合性のある材料からなる1つの固体の連続片で形成することができ、2種類以上の材料で形成することもできる。焼結、(射出成形などの)成形、鋳造、接着、積層、浸漬コーティング、噴霧のほか、これらの複合物及び組み合わせ及び他の適当な方法及び処理の組み合わせを含む様々な方法及び処理を使用して構造要素を作成することができる。
【0042】
装置を動脈内又はその近くに恒久的に配置することもでき、所望の時間血管内に配置し、その後除去することもできる。任意で、除去された、或いは完全に生分解された装置を同様の装置と置き換えることもできる。
【0043】
(血液、別の体液、又は注入した流体などの)流体にさらされると肥大又は膨張する材料で構造要素を部分的に又は完全に作成することができる。これらの材料には、親水性ゲル(ヒドロゲル)、発泡体、ゼラチン、再生セルロース、ポリエチレンビニルアセテート(PEVA)のほか、これらの複合物及び組み合わせ及び他の生体適合性のある肥大又は膨張材料の組み合わせを含むことができる。
【0044】
構造要素は表面コーティングを含むことができる。表面コーティングは、生体適合性のある材料で形成することができる。生体適合性のある表面コーティングを構造要素に塗布することにより、構造要素を1又はそれ以上の潜在的に非生体適合性の材料で形成できるようになる。
【0045】
表面だけでなく構造要素の内部に少なくとも1つのコーティングを位置付けることができる。構造要素は、生物学的に不活性の親水性材料でコーティングすることができる。要素は、不安定プラークを治療するコーティング、材料、化合物、物質、薬物、治療薬などの1又はそれ以上を組み入れることができる。いくつかの実施形態では、構造要素を複数の層で形成することができる。
【0046】
治療薬
開示した本発明の方法において、及び装置とともにするための様々な治療薬が企図される。これらの治療薬には、以下に限定されるわけではないが、抗炎症薬、メタロプロテアーゼ阻害剤、(不安定アテローム硬化性プラークの薄い線維性キャップアテロームを「厚く」保つための)硬化症薬及び抗脂質薬が含まれる。
【0047】
上述したように、細胞外基質の吸収に至る、プロテオグリカン及びコラーゲンを含む結合組織の分解が、リウマチ及び変形性関節症、角膜性潰瘍、表皮性潰瘍又は胃潰瘍、腫瘍転移又は腫瘍浸潤、歯周病、骨疾患及びアテローム発症などの多くの病態の特徴である。細胞外基質の吸収に至る、プロテオグリカン及びコラーゲンを含む結合組織の非制御的な分解に、マトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)が重要であることを示す一連の証拠が存在する。通常、MMPは、合成レベルのみならず、細胞外活性レベルにおいても厳密に規制される。
【0048】
アテローム発症は、2つの重要な事象、即ち、循環単球及びその他の炎症細胞の内皮下層への移行、及び平滑筋細胞の中膜から内膜への移行に関与する。最終的に、プラークびらん及び破裂が血栓症を引き起こし、最終的に心臓に損傷を与える可能性がある。これらの過程は、主に局所的に発現し、活性化されたMMPのタンパク質分解作用により行われる局所性マトリクス分解という共通の要件を共有する。サイトカインを含む様々な細胞外刺激物、細胞−細胞間、及び細胞−マトリクス間の相互作用により、MMP発現が誘発される可能性がある。不安定プラーク領域においてMMPの発現及び活性の増加が認められることが、アテローム硬化性の病状に特に関連している(Galis他(1994年)J.Clin.Invest.第94巻、2493〜2503頁)。
【0049】
従って、不安定プラークを含む炎症性疾患の治療にはメタロプロテアーゼの活性を阻害する化合物が治療上重要である。このため、下流の不安定プラークの治療に、少なくとも1つのメタロプロテアーゼ阻害剤又は製薬上容認可能な塩又はこれらのプロドラッグを冠状動脈枝内に多く放出できることが企図される。同様に、下流の不安定プラークの治療に、MMP阻害剤、製薬上容認可能な塩又はこれらのプロドラッグを含む治療薬の組み合わせを冠状動脈枝内に多く放出できることも企図される。メタロプロテアーゼ阻害剤の例示的な、本発明を限定しない例として、グルコン酸マグネシウム、Sopar、ファーマプロジェクト第3813号、ファーマプロジェクト第5682号、バチマスタット、マトリクスメタロプロテイナーゼ阻害剤−3次元医薬品、BAY157496、TIMP−3遺伝子療法、メタロプロテイナーゼ阻害剤−OSI/Vernalis、PG116800、PGE5747401、金属酵素阻害剤型Serono/Vernalis、CH715、TIMP−4遺伝子療法、COL3、ペントサンポリ硫酸、ウルソル酸、LY290181、REGA3G12、Cengent Therapeutics/De Novoからのマトリクスメタロプロテイナーゼ阻害剤、MillenniumからのMMP阻害剤、レビマスタット、RO1130830、アプラタスタット、及びABT518がある。
【0050】
不安定プラークの形成をもたらす一連の事象において、炎症が中心的な役割を果たすことを示唆する証拠により、開示した本発明の装置及び方法とともに使用することができる治療薬として抗炎症薬及び免疫調節薬も企図される。抗炎症薬及び免疫調節薬は、単独で、同時に、又は任意の治療薬と組み合わせて送出することができる。抗炎症薬の例には、副腎コルチコイド、(ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、フルチカゾン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ヒドロコルチゾンなどの)コルチコステロイド、グルココルチコイド、ステロイド、(アスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナク、及びCOX−2阻害剤などの)非ステロイド性抗炎症薬、(モンテルカスト、メチルキサンチン、ザフィルルカスト、及びジレウトンなどの)ロイコトリエン拮抗薬、(アルブテロール、ブテロール、フェノテロール、イソエタリン、メタプロテレノール、ピルブテロール、サルブタモール、テルブタリンフォルモテロール、サルメテロール、及びサルブタモールテルブタリンなどの)β2−作用薬、(臭化イプラトロピウム及び臭化オキシトロピウムなどの)抗コリン剤、スルファサラジン、ペニシラミン、ダプソン、抗ヒスタミンがある。炎症性疾患の治療に有用な薬剤を含む、当業者にとって周知の任意の抗炎症薬を使用することができる。抗炎症薬の本発明を限定しない例には、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)、ステロイド系抗炎症薬、(硫酸アトロピン、硝酸メチルアトロピン、及び臭化イプラトロピウムなどの)抗コリン作用薬が含まれる。
【0051】
また、開示した本発明の装置及び方法とともに抗増殖剤を使用できることも企図される。例示的な抗増殖剤には、パクリタキセル、アルケラン、シトキサン、リューケラン、シスプラチン、BiCNU、アドリアマイシン、ドキソルビシン、セルビジン、イダマイシン、ミトラシン、ムタマイシン、フルオロウラシル、メトトレキサート、トグアニン、トキソテーレ、エトポシド、ビンクリスチン、イリノテカン、ヒカンプチン、マチュレーン、ブモン、ヘキサリン、ヒドロキシウレア、ジェムザール、オンコビン、エトホホス、タクロリムス(FK506)、エベロリムス、又は次のシロリムスの類似体のいずれか、即ち、SDZ−RAD、CCI−779、7−エピ−ラパマイシン、7−チオメチルラパマイシン、7−エピ−トリメトキシフェニル−ラパマイシン、7−エピ−チオメチルラパマイシン、7−デメトキシ−ラパマイシン、32−デメトキシ、2−デスメチル及びプロリンが含まれる。当業者にとっては他の適当な抗増殖剤が明らかであろう。
【0052】
開示した本発明の装置及び方法とともに脂質低下剤及び/又はスタチンを単独で或いは組み合わせて使用して、不安定プラークの脂質プールの組成に影響を与えることができることがさらに企図される。本発明の組成物及び方法には、当業者にとって周知の任意の脂質低下剤を使用することができる。本発明を限定しない例として、ロバスタチン、プラバスタチン、アトルバスタチン、及びセリバスタチンが含まれる。
【0053】
開示した本発明の装置及び方法とともに抗血栓剤を単独で或いは組み合わせて使用できることがさらに企図される。本発明を限定しない抗血栓剤の例として、ヘパリン又はクマジン、又はプラビックス又はレオプロなどの抗血小板薬が含まれる。
【0054】
上記に掲載した治療薬は完全なリストではなく、開示した本発明の装置及び方法とともに使用できる治療薬の種類の単なる例にすぎない。また、上記に掲載した薬物又は他の任意の治療薬との組み合わせ療法も企図される。
【0055】
(単複の)治療形態が、1〜6ヶ月、6〜12ヶ月、12〜24ヶ月又は所望の場合これ以上などの時間をかけて徐々に送出されるように装置を構成及び作成することができる。当業者であれば、所望の速度で治療薬を送出するように装置を構成及び作成することができる。また、治療薬を同時に或いは連続して溶出するように装置を構成及び作成することもできる。従って、装置は、一定の時間にわたって1つの治療薬を溶出し、その後、第1の薬剤が溶出されてしまった後で別の治療薬を溶出することができる。或いは、治療薬を同時に放出することもできる。
【0056】
当業者であれば、広い意味で記載した特許請求の範囲の思想又は範囲から逸脱することなく、実施形態に数多くの変更及び/又は修正を行うことができることを理解するであろう。本説明において解説した特定の実施形態の同等物も特許請求の範囲を同様に実施することができる。従って、本実施形態はすべての点において例示的なものであり、限定的ものではないと考えるべきである。
【0057】
本明細書に含まれる文書、行為、材料、装置、物品などについてのあらゆる考察は、本発明の前後関係を説明するためのものであるにすぎない。これらの事項の何れか又は全てが、先行技術の基礎の一部を形成し、或いは本明細書の個々の請求項の優先日前に本出願に関連する分野において共通の一般常識であったことを認めるものであると受け取るべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冠状動脈の入り口又はその近傍でかつ前記冠状動脈内のアテローム硬化性プラークの上流に配置されるように構成されるとともに生分解するように作成された本体と、
前記本体から前記装置の表面を横切って通過する血液中に放出可能な、前記アテローム硬化性プラークの治療のための有効量の治療薬と、
を含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記治療薬は、抗炎症薬及び抗脂質薬から成るグループから選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記本体は、哺乳類の心門、左冠状動脈、及び右冠状動脈のうちの1又はそれ以上に配置されるように構成される、
ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記本体は環状リングとして構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記本体は生分解性ポリマーから成る、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記治療薬は、前記生分解性ポリマーに収容されるとともに前記生分解性ポリマーが生分解すると前記本体から溶出するように作成される、
ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記本体は、哺乳類の体内で6〜12ヶ月以内にほぼ完全に生分解されるように構成及び作成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記本体は、前記冠状動脈の先細部に近い先細部で構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記本体を前記冠状動脈の入り口又はその近傍に固定するための手段をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記本体は、哺乳類の血管の内側表面に付着するように作成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記本体は粘着性ポリマーで形成される、
ことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記本体は、哺乳類の血管の壁に埋め込まれて前記本体を前記血管に固定するように構成された少なくとも1つの突起を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記本体は、圧縮構成からより大きな配置構成へと弾性的に膨張可能であるとともに、前記配置構成に向けて弾性的に膨張することにより冠状動脈内に固定できるように冠状動脈内に配置されるように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記本体は、実質的に非生分解性である第1の部分と、哺乳類の血管内で生分解性である第2の部分とを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記冠状動脈内に保持され且つ前記冠状動脈を通過する血液にさらされることにより少なくとも部分的に生分解するように構成されるとともに不安定プラークを治療するための治療量の治療薬を、前記冠状動脈を通過する血液中に放出して前記装置の下流の前記冠状動脈内の不安定プラークへ送出するように作成された装置を、冠状動脈の入口又はその近傍に配置するステップを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記装置は、中心孔を有する環状リングであり、前記配置ステップは、前記冠状動脈を通って流れる血液が前記開口部を通過して流れるように前記環状リングを配置するステップを含む、
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記配置ステップは、哺乳類の前記心門、前記左冠状動脈、又は前記右冠状動脈のうちの1つに前記装置を配置するステップを含む、
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記装置は前記治療薬を収容する層を含む、
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記層は生分解性ポリマーで形成される、
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記装置は、前記ポリマーが生分解されると前記治療薬を放出するように作成される、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記装置は、前記冠状動脈の一部の先細部に近い先細部で構成され、前記配置ステップは、前記先細部が前記冠状動脈の一部の前記先細部に固定されるように前記本体を配置するステップを含む、
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記配置ステップは、前記装置を冠状動脈の内部表面に付着させるステップを含む、
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記本体は、該本体の少なくとも一部に配置される粘着性ポリマーを含み、前記配置ステップは、前記粘着性ポリマーを冠状動脈の内部表面に固定させるステップを含む、
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記装置は突起部分を含み、前記方法は、前記突起部分を前記冠状動脈の内部表面に埋め込むことにより前記装置を前記冠状動脈内に固定するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記配置ステップは、前記装置を経管的に送出するステップを含む、
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記装置は、圧縮構成からより大きな配置構成へと弾性的に膨張可能であり、前記配置ステップは、前記圧縮構成の前記装置を前記冠状動脈へ送出するステップと、前記装置を前記配置構成に向けて弾性的に膨張させ、前記冠状動脈の内壁に固定させるステップとを含む、
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【公表番号】特表2010−505526(P2010−505526A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531493(P2009−531493)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/068354
【国際公開番号】WO2008/042466
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】