説明

アディポネクチン産生促進剤

【課題】日常的な摂取により血中のアディポネクチン濃度を増大させ、インスリン感受性を維持し、インスリン抵抗性を改善することができるアディポネクチン産生促進剤を提供すること。
【解決手段】水溶性β−1、3−1、4−グルカンを有効成分とすることを特徴とするアディポネクチン産生促進剤。該アディポネクチン産生促進剤は、水溶性β−1、3−1、4−グルカンを5〜100質量%含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性β−1、3−1、4−グルカンを有効成分とするアディポネクチン産生促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
生活習慣病の一つである二型糖尿病は、近年わが国において患者数が増加しており、糖尿病境界領域に該当する人(耐糖能異常を呈し、糖尿病の可能性を否定できない人)を含めると既に1000万人を超えたとされ、糖尿病患者のケアと共に、糖尿病境界領域に該当する人を糖尿病患者にさせない糖尿病予防が重要な課題となっている。
【0003】
インスリンは血糖値降下作用を示すホルモンであり、食事等により血中グルコース濃度が増大することで膵臓ランゲルハンス島β細胞から分泌され、血糖値上昇を調節する作用を有する。
【0004】
食後血糖値が健常人よりも高くなる上記「耐糖能異常」の生体に及ぼす影響については古くから研究されており、この耐糖能異常がKaplanによる死の四重奏(1989)の一つに含まれることはよく知られるところである。近年わが国でも、日本糖尿病学会等8つの学会はメタボリックシンドロームの診断基準に耐糖能異常を挙げている。
【0005】
現在では、この耐糖能異常は糖尿病発症の前段階と考えられており、糖尿病移行への可能性が非常に高い事が示唆されている。また、このような状態においては既に肥満が引き起こされている場合も多い。
【0006】
近年の研究から、肥満に関与する脂肪細胞がアディポカイン(アディポネクチン、レプチン、遊離脂肪酸(FFA)、PAI-1、TNF-a、アンジオテンシノーゲン等)と呼ばれる生理活性物質を産生・分泌し、糖や脂質の代謝、動脈壁の恒常性維持に重要な役割を果たしていることが明らかにされている。
【0007】
その中で、アディポネクチンは、肥満や2型糖尿病・虚血性疾患等によって脂肪細胞が肥大化するに従い、分泌が低下し血中濃度が低下することで知られる。ヒトや動物での検討で、血中アディポネクチン濃度の低下(低アディポネクチン血症)はインスリン抵抗性を惹起する事が確認されている。
【0008】
インスリン抵抗性とは、インスリン感受性が低下した状態であり、血糖コントロールがうまくいかず、結果として食後の高血糖状態が延長されるため、血管障害を介した様々な疾患発症への危険性を内包する。
【0009】
動物試験ではアディポネクチン欠損マウスは糖尿病を発症することが明らかとなっているほか、外部からアディポネクチンを血中へ投与し、血中濃度を意図的に増大させることで、インスリン抵抗性の改善が認められる事も明らかとなっている(非特許文献1参照)。これは、アディポネクチンの血中濃度を適正に保つことがインスリン抵抗性改善に寄与し、これが糖尿病発症を抑制する要因になりうることを示している。
【0010】
アディポネクチンの産生を増大させる物質として、糖尿病治療薬に用いられている医薬品チアゾリジンジオン化合物、ロシグリタゾン化合物が知られている(非特許文献2参照)。これらはインスリン抵抗性を改善することにより血糖値を低下させる。一方、天然物由来成分によってもアディポネクチンを増大させ、インスリン抵抗性を改善する成分が確認されており、例えばウーロン茶抽出物(特許文献1)や乳酸菌培養物(特許文献2)、特定の油脂成分(特許文献3)等が提案されている。しかし、いずれも効果は強いものではない。
【0011】
もちろん、耐糖能異常の者が、血糖値コントロール(血糖値上昇抑制)を目的として、食餌療法や、腸内の糖質加水分解酵素(αグルコシダーゼ)阻害剤による投薬治療等を行うことも可能である。
【0012】
また、天然物由来成分を食後に摂取することで、食後血糖値の上昇抑制が認められたとする報告は多数あり、例えばオーツ麦、大麦等から抽出及び濃縮されたβグルカンについての報告が多数なされている(非特許文献3〜7)。
さらに、大麦発酵エキスを食後に摂取することで、血糖値の上昇を抑制する方法も提案されている(例えば、特許文献4)。
【0013】
しかし、これらの療法、αグルコシダーゼ阻害剤による投薬治療及び食後の天然物由来成分の摂取は、血中グルコース濃度を高めないための対症療法であるから、グルコースを取り込めない生体細胞にとっては基本的には飢餓状態であることに変わり無く、間接的に高血糖によりもたらされる各種疾病リスクを低減させる処置であるに過ぎない。また、このような血糖値コントロールに伴う患者の心理的ストレスも大きいため、インスリン抵抗性を本質的に改善させ、本来の生体恒常性のあるべき状態に近づける事が最も望ましい。
【0014】
以上の理由から、日常、手軽に摂取できる医薬品や飲食品として摂取可能でありながらも、アディポネクチン産生を促進することによる、インスリン抵抗性の改善効果のある成分が近年つとに求められている。
【0015】
尚、特定の分子量分布を示すβグルカン組成物を食前に摂取した場合に、優れた食後の血糖値の上昇抑制作用やインスリン分泌促進作用を有することも知られている(例えば特許文献5参照)が、これは上記対症療法であり、日常的に継続して摂取した場合の生理作用についてはこれまで知られていなかった。
また、βグルカンの加水分解物が、日常的に継続して摂取した場合に免疫調整作用を有すること(例えば特許文献6参照)も知られているが、インスリン感受性に関する生理作用についてはこれまで知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2004−315379
【特許文献2】特開2009−107956
【特許文献3】特開2009−13179
【特許文献4】特開2002−371003
【特許文献5】特開2009−263655
【特許文献6】特開2009−91255
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】門脇孝、山内敏正、窪田直人、第128回日本医学会シンポジウム、34-44 (2007)
【非特許文献2】武内浩二、鈴木伸宏、小高裕之、日薬理誌、128、37-41 (2006)
【非特許文献3】Bourdon I, Yokoyama W, Davis P, Hudson C, Backus R, Richter D, Knuckles B, Schneeman BO., Am J Clin Nutr 69, 55-63 (1999)
【非特許文献4】M. E. Pick, Z. J. Hawrysh, M. I. Gee and E. Toth, International Journal of Food Sciences and Nutrition 49, 71-78(1998)
【非特許文献5】Yokoyama, W.H., Hudson, C.A., Knuckles, B.E., Chiu, M.C.M, Sayre, R.N., Turnlans, J.R. and B.O. Schneeman, Cereal Chemistry 74, 293-296 (1997)
【非特許文献6】Winer, S., Chan, Y., Paltser G., Truong D., Tsui H., Tsui Hubert, Bahrami J., Dorfman R., Wang Y, Zielenski J., Mastronardi,F., Maezawa Y., Drucker, D.J., Engleman, E., Winer D., Dosch H-M. Nature medicine, published online 26 July 2009.
【非特許文献7】Nishimura, S., Manabe, I., Nagasaki, M., Eto, K., Yamashita, H., Ohsugi, M., Otsu, M., Hara, K., Ueki, K., Sugiura, S., Yoshimura, K., Kadowaki, T., Nagai, R. Nature medicine, published online 26 July 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、本発明の目的は、日常的な摂取により血中のアディポネクチン濃度を増大させ、インスリン感受性を維持し、インスリン抵抗性を改善することができるアディポネクチン産生促進剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、従来、上述のように、食後に摂取することで、グルコース吸収阻害効果による血糖値上昇抑制効果が知られていたβグルカンについて、日常、継続的に長期間に亘り摂取すると、まったく新しい効果として、血中のアディポネクチンを増大させ、さらにインスリン抵抗性を改善する効果を有すること見出した。
本発明者らは、さらにその効果について検討を進めたところ、特に大麦由来のβ−1、3−1、4−グルカン分子において、血中のアディポネクチン増加作用が高くインスリン抵抗性改善作用が大きいことを知見した。
【0020】
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、水溶性β−1、3−1、4−グルカンを有効成分とするアディポネクチン産生促進剤を提供するものである。
また、本発明は、上記アディポネクチン産生促進剤を含んでなる医薬組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記アディポネクチン産生促進剤を含んでなる飲食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明のアディポネクチン産生促進剤を長期間に亘り継続的に摂取した場合、インスリン抵抗性を改善することができる。そして、このインスリン抵抗性の改善により、耐糖能異常によるメタボリックシンドローム予防、糖尿病の予防、心疾患の予防、ひいては動脈硬化症の予防に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、実施例2におけるin vivoでのアディポネクチン産生促進試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のアディポネクチン産生促進剤について、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0024】
先ず、本発明のアディポネクチン産生促進剤の有効成分である、水溶性β−1、3−1、4−グルカンについて詳細に述べる。
上記水溶性β−1,3−1,4−グルカンは、β−1,3−グルコシド結合及びβ−1,4−グルコシド結合を有する水溶性βグルカンであれば特に限定されるものではなく、植物由来でも、担子菌類由来でも、微生物由来でもよい。
【0025】
一般に、水溶性β−1,3−1,4−グルカンは、植物、担子菌類又は微生物から、該水溶性β−1,3−1,4−グルカン及び該水溶性β−1、3−1、4−グルカン以外の成分(例えば、水不溶性β−1、3−1、4−グルカン、澱粉、タンパク質、アミノ酸、脂質等)を含有するβグルカン組成物の形態で得られる。本発明のアディポネクチン産生促進剤の代表的な態様は、該βグルカン組成物の1種又は2種以上からなるものである。本発明のアディポネクチン産生促進剤において、水溶性β−1,3−1,4−グルカンの含有量は、5質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。5質量%未満であると、医薬組成物及び飲食品へ有効量の水溶性β−1、3−1、4−グルカンを配合することが困難となる場合がある。
本発明のアディポネクチン産生促進剤は、含有する水溶性β−1,3−1,4−グルカンの量が多いほど、単位量当たりの効果が高くなるため好ましい。従って、上記βグルカン組成物から精製により水溶性β−1、3−1、4−グルカンのみを単離し、本発明のアディポネクチン産生促進剤を水溶性β−1、3−1、4−グルカン100質量%からなるものとすることは当然好ましい。しかしながら、精製コストを考慮すると、本発明のアディポネクチン産生促進剤における水溶性β−1,3−1,4−グルカンの含有量は、最大で90質量%が適当である。
【0026】
植物、担子菌類及び微生物の中でも、穀類は、β−1,3−1,4−グルカン含量が高いことから、水溶性β−1、3−1、4−グルカンを得るのに好適である。穀類を粉砕して得られる穀類粉は、それ自体が水溶性β−1、3−1、4−グルカンを含有する上記βグルカン組成物であり、そのまま、本発明のアディポネクチン産生促進剤に用いることができる。また、該穀類粉は、抽出処理を行って穀類粉抽出物としてから用いることもできる(尚、穀類粉抽出物も、水溶性β−1、3−1、4−グルカンを含有する上記βグルカン組成物である)。抽出処理を行うと穀類粉に含まれていた水溶性成分が抽出されるため、穀類粉抽出物は、穀類粉に比べて水溶性β−1、3−1、4−グルカンを高濃度で含有する。
【0027】
本発明のアディポネクチン産生促進剤は、水溶性β−1、3−1、4−グルカンを含有する上記穀類粉及び/又は上記穀類粉抽出物からなることが好ましい。穀類粉をそのまま本発明のアディポネクチン産生促進剤に用いることには、コスト面で大きな利点がある。また、穀類粉抽出物は、水溶性β−1、3−1、4−グルカンを高濃度に含有するため、少量の使用で本発明のアディポネクチン産生促進剤中の水溶性β−1、3−1、4−グルカン含量を高くできる点で有利である。コストを抑えながら水溶性β−1、3−1、4−グルカン含量を高くできる点で、本発明のアディポネクチン産生促進剤は、穀類粉及び穀類粉抽出物からなることがさらに好ましい。本発明のアディポネクチン産生促進剤が穀類粉及び穀類粉抽出物からなる場合、穀類粉と穀類粉抽出物との質量比率は、それぞれの水溶性β−1、3−1、4−グルカン含量に応じて、両者の混合物中の水溶性β−1、3−1、4−グルカン含量が上述の好ましい範囲となるように適宜選択すればよい。
【0028】
上記穀類粉としては、β−1,3−1,4−グルカンを多く含有するイネ科植物を使用することが好ましく、該イネ科植物としては、ライムギ、ライ小麦、米、小麦、大麦、オーツ麦、ヒエ、アワ、トウモロコシ等を例示することができるが、β−1、3−1、4−グルカンをより多く含有することから、大麦及び/又はオーツ麦を使用することがより好ましく、大麦が最も好ましい。
【0029】
上記穀類粉の部位としては、その種実の皮部、種実の外皮部(穎)、穂軸部、茎部、葉部、胚、胚乳部等を使用することができる。例えば、上記種実の皮部としては、いわゆるふすま、ぬか、があり、上記種実の外皮部としてはモミガラ、上記穂軸部としてはコーンコブ、上記茎部としてはイナワラ、ムギワラ等がある。
本発明においては、β−1,3−1,4−グルカン含量が特に高い点で、大麦の胚乳部を使用することが特に好ましい。
【0030】
大麦の胚乳部としては、大麦粒を外周部より削り、とう精歩合90質量%以下としたもの、特に80質量%以下としたものが好ましい。尚、とう精歩合の下限は、経済性の観点からすると50質量%が好ましい。
また、原料としては、β−1,3−1,4−グルカン含量の高い大麦品種を使用するのがよく、例えば、米澤モチ、坊主モチ、カシマムギ、ダイシモチ、ウルチミノリムギ、ミノリムギ、ファイバースノー、ビューファイバー、LT26、ウルチJENA84−1、Godiva、ベニハダカ、ウルチH−HOR4097/66、Nepa11684、Riso86、四R系1164等の品種や、これらを母本とした派生品種が使用できる。これらの中でも好ましい品種は、カシマムギ、ダイシモチ、ミノリムギ、ファイバースノー、ビューファイバーである。
【0031】
また、上記穀類粉は、下記の分級操作によりβ−1、3−1、4−グルカン含量を高めることができる(特開2007−204699号参照)。該分級操作によりβ−1、3−1、4−グルカン含量が高められた穀類粉は、本発明において好ましく使用される。
上記分級操作は、少なくとも胚乳部分を50質量%以上含む穀類を、粒子径500μm以上の粒子が10体積%以下、好ましくは5体積%以下、より好ましくは0体積%であり、且つ粒子径40μm以下の粒子が30〜95体積%、好ましくは40〜70体積%、より好ましくは48〜60体積%となるように粉砕する工程A、及び該工程Aで得られた粉砕物から粒子径50〜500μmの粒子が80体積%以上、好ましくは90体積%以上、より好ましくは99体積%以上の画分を得る工程Bを有する。該工程A及び該工程Bを経ることにより、β−1、3−1、4−グルカンを多く含む画分が得られる。
例えば、大麦の胚乳部を粉砕してなる未加工の大麦粉(上記分級操作並びに後述の糊化処理等の処理を行っていない大麦粉)は、植物、担子菌類及び微生物の中でも、β−1、3−1、4−グルカンを多く含むものであるが、それでもその含有量は5質量%程度である。斯かる未加工の大麦粉を上記分級操作に付すと、得られる画分は7〜35質量%程度にまでβ−1、3−1、4−グルカン含量が高められる。
【0032】
上記工程Aの粉砕方法は、常法に従えば良く、例えば、ローラー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ハンマーミル(粉砕機)、石臼粉砕機等の粉砕機を使用して粉砕すればよい。
また、上記工程Bの分画方法は特に制限されず、例えば穀類の分級に通常用いられる篩い、気流分級等により分画し、或いは篩い分画では、例えば、所望の粗さのスクリーンを用いて一定時間、篩い分画して、スクリーン上の画分を分取すればよい。尚、上記工程Bにより得られた画分は、必要に応じてさらに粉砕してもよい。
【0033】
また、上記穀類粉抽出物としては、上記穀類粉から、温水、冷水、或いは有機溶媒等の抽出溶液を用いて抽出処理を行なって得たものを使用するとよい。穀類粉抽出物は、30質量%以上の水溶性β−1、3−1、4−グルカンを含有することが好ましい。
上記抽出処理の方法としては、上記穀類粉に、例えば2〜100倍量(重量基準)、好ましくは3〜10倍量の抽出溶液を加え、0.5〜24時間攪拌抽出を行い、常法により固液分離し、上清を濃縮して或いはそのまま乾燥させて穀類粉抽出物とする方法を挙げることができる。
尚、抽出処理に使用する穀類粉は、特にとう精を行わなくてもよいが、好ましくはとう精歩合95質量%以下とする。この場合のとう精歩合の下限は、経済性の観点からすると70質量%が好ましい。
【0034】
上記抽出溶液としては、水、温水、熱水或いは塩溶液、更には酸性又はアルカリ性の水溶液、有機溶媒等を挙げることができるが、これらの中でも、水、温水又は熱水で抽出することが好ましく、30〜60℃の温水で抽出することがより好ましい。
また、抽出時に抽出促進剤等を加えてもよい。更には、抽出処理の際に、抽出溶媒として、上記の酸性又はアルカリ性の水溶液を使用する方法や、酵素溶液を使用する方法により、抽出と後述の加水分解を同時に行ってもよい。
【0035】
また、上記穀類粉及び/又は穀類粉抽出物は、加水分解処理されたものであってもよい。2種以上の穀類粉及び/又は穀類粉抽出物を使用する場合は、それらを混合した後に加水分解処理を行なってもよい。加水分解処理を行うと、水溶性β−1、3−1、4−グルカンを低分子化することができる。
該加水分解処理の方法としては、加熱処理、酸やアルカリ処理、酵素処理等、多糖類を加水分解する通常の方法が使用できるが、酵素処理が最適である。
【0036】
上記酵素処理で用いる酵素としては、具体的には、例えば、リケナーゼ(EC 3.2.1.73)、セルラーゼ(EC 3.2.1.4)が挙げられ、これらの他、エンド型のβグルカナーゼ、1,3−β−D−グルカナーゼ、1,4−β−D−グルカナーゼやこれらの複合酵素等を用いることもできる。
【0037】
尚、市販の酵素製剤には、これらの活性を含んだペクチナーゼ、キシラナーゼ、ヘミセルラーゼ、細胞壁溶解酵素、抽出物の粘度低減作用を示す酵素、果汁の成分の沈降防止用酵素製剤、ビールや果汁等の粘度を低下させる目的や濾過速度を促進するための目的で使用する酵素製剤等があり、低分子βグルカンを生成させる目的でこれらの酵素製剤も使用することができるが、これらの酵素製剤には、βグルカンを2糖であるセロビオース、単糖のグルコースにまで分解する活性が存在する。
従って、β−1,3−1,4−D−グルカンを重合度2以下まで加水分解しない酵素を使用することが好ましい。
これに該当する市販の酵素製剤としては、例えば、リケナーゼ(日本バイオコン社製)、セレミックス(ノボザイム社製)、グレイナーゼ(大和化成工業社製)、フィニザイム(ノボザイム社製)、セルクラスト(ノボザイム社製)、ウルトラフロL(Novozymes社製)、ビスコザイムL(Novozymes社製)、スミチームNX(新日本化学工業社製)、セルロシンT2(エイチビィアイ社製)、スミチームARS(新日本化学工業社製)が挙げられる。また、これらの酵素製剤からリケナーゼ活性を有する酵素を単離精製して使用してもよい。
【0038】
酵素処理は、常法によればよく、その処理条件は、使用する酵素の種類、目的とする低分子化の度合い等によって適宜選択することができる。例えば、処理温度は20〜80℃の範囲から選択することができ、処理時間は0.1〜48時間から選択することができる。
【0039】
また、本発明において、穀類粉を使用する場合、穀類粉は糊化処理されたものであることが好ましく、糊化度は25%以上、特に30%以上が好ましい。これは、穀類粉は澱粉を多く含有し、該澱粉は水不溶性であるため、このような穀類粉は当然にして水溶性が低いものであること、また、穀類粉においては、β−1、3−1、4−グルカンは澱粉と強く結合していることが多いため、このようなβ−1、3−1、4−グルカンは水溶性βグルカンとはならないことから、糊化処理により澱粉を糊化することで、水不溶性のβ−1、3−1、4−グルカンを水溶性β−1、3−1、4−グルカンに変換することが可能であるためである。また、糊化処理を行うと、斯かる変換が起こると同時に、水不溶性のβ−1、3−1、4−グルカンの低分子化も若干起こる。
糊化度の上限は100%であるが、水に添加した際の分散性が良好であること、及び、得られる水溶液の粘度が高くなりすぎないことから、90%以下とすることが好ましく、より好ましくは85%以下とする。また、糊化は常法によって行うことができ、例えば、水分含量20〜60質量%まで加水した後、70〜100℃にて5〜120分加熱処理すればよい。
【0040】
上記糊化処理は、2種以上の穀類粉を使用する場合、又は穀類粉と穀類粉抽出物とを使用する場合は、それらを混合した後に行うことが、より安定した品質のβグルカン組成物が得られる点で好ましい。
【0041】
本発明のアディポネクチン産生促進剤において、「水溶性β−1、3−1、4−グルカン」は、飲食品として或いは医薬組成物として投与した際に有効に働くβ−1、3−1、4−グルカンのことであり、その含有量は以下の方法により測定される。
【0042】
<水溶性β−1、3−1、4−グルカン含量の測定方法>
水溶性β−1、3−1、4−グルカン含量の測定は、McCleary法(酵素法)を採用する。具体的には、β−1,3−1,4−グルカン含量測定キット(型番K−BGLU、メガザイム社製)を使用し、以下の手順で測定することができる。
先ず、500μm(30メッシュ)のふるいにかけた測定サンプルについて、予め水分含量を測定(赤外線水分計、型番FD−230、Kett社製)し、無水物質量W(mg)を算出する。これとは別に、測定サンプル10mgを17mlチューブに取り、50%(v/v)エタノール水溶液を200μl加え、分散させる。次に4mlの20mMリン酸緩衝液(pH6.5)を加え、よく混合した後、煮沸した湯浴中にて1分間加温する。よく混合し、更に2分間、湯浴中で加熱する。遠心分離にて上清を得て、50℃に冷却後、5分間放置してから、各チューブにリケナーゼ酵素溶液(キットに付属するバイアルを20mlの20mMリン酸緩衝液で希釈、残量は凍結保存)の200μl(10U)を加え、50℃にて1時間反応させる。チューブに200mM酢酸緩衝液(pH4.0)を5ml加えて、静かに混合する。室温に5分間放置し、遠心分離にて上清を得る。上清100μlを3本のチューブに取り、1本には100μlの50mM酢酸緩衝液(pH4.0)を、他の2本には100μl(0.2U)のβグルコシターゼ溶液(キットに付属するバイアルを20mlの50mM酢酸緩衝液で希釈、残量は凍結保存)を加え、50℃にて10分間反応させる。3mlのグルコースオキシターゼ/ペルオキシターゼ溶液を加えて、50℃にて20分間反応させ、各サンプルの510nmにおける吸光度(EA)を測定する。これとは別に、グルコース100μgを含む3mlのグルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ溶液の吸光度(EG)を測定する。これらの測定結果から、次式により水溶性β−1,3−1,4−グルカン含量は求められる。
【0043】
水溶性β−1,3−1,4−グルカン含量(%,w/w)=(EA)×(F/W)×8.46
式中、F及びWは次の通りである。
F=(100)/(グルコース100μgの吸光度EG)
W=無水物質量(mg)
【0044】
また、本発明のアディポネクチン産生促進剤において、総β−1、3−1、4−グルカン中の水溶性β−1,3−1,4−グルカンの割合は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%であり、更に好ましくは85〜100質量%である。総β−1、3−1、4−グルカン含量は、以下の方法により測定することができる。
【0045】
<総β−1,3−1,4−グルカン含量の測定方法>
2分間湯浴中で加熱後の遠心分離操作を行わない以外は、水溶性β−1、3−1、4−グルカン含量の測定方法と同様の方法で、総β−1,3−1,4−グルカン含量を求める。
【0046】
また、本発明のアディポネクチン産生促進剤においては、上記水溶性β−1,3−1,4−グルカンが、下記の(A)、(B)及び(C)成分を、10〜85:10〜85:5〜60の質量比(但し、(A)+(B)+(C)=100とする)で含有するものであることが、より高い血清中のアディポネクチン増加効果を有する点で好ましい(以下、下記の(A)、(B)及び(C)成分の質量比を、分子量分布ともいう)。
【0047】
(A)分子量が50万以上の水溶性β−1、3−1、4−グルカン
(B)分子量が2万以上50万未満の水溶性β−1、3−1、4−グルカン
(C)分子量が500以上2万未満の水溶性β−1、3−1、4−グルカン
尚、(A)成分の分子量の上限は、β−1、3−1、4−グルカンが水溶性である限り特に制限されないが、好ましくは120万以下、より好ましくは90万以下とする。
【0048】
また、(A)、(B)及び(C)の3成分の含有量の質量比(但し、(A)+(B)+(C)=100とする)は、より好ましくは、12〜68:20〜78:10〜40の範囲内、最も好ましくは20〜40:30〜70:10〜40の範囲内である。
【0049】
水溶性β−1、3−1、4−グルカンの分子量分布は、例えば次の方法によって測定することができる。
【0050】
<水溶性β−1、3−1、4−グルカンの分子量分布の測定方法>
先ず、被験サンプル10mgに10mlの蒸留水を加え、煮沸した湯浴中にて1分間加温する。よく混合し、更に2分間湯浴中にて加熱する。遠心分離にて上清を得て、上清をディスポーザブルシリンジフィルターユニット(セルロースアセテート膜、0.45μm、アドバンテック社製)にてフィルターろ過し、分子量分布測定用サンプルとする。次に、このサンプルについて以下に示すHPLCシステムを使用して分子量を求める。
カラム;TSK GEL G6000PWXL(東ソー)−Shodex Sugar SB-802(昭和電工)、カラム温度60℃、流速0.5ml/min、RI及びUV(280nm)による検出(45℃)、サンプルアプライ量50μl(被験サンプル濃度1mg/ml)、溶出溶媒はMilli-Q水によるイソクラチック溶出。
水溶性β−1、3−1、4−グルカンの分子量分布は、得られたクロマトグラムよりGPC解析ソフト(GPC-8020 model II データ解析 Ver.4.20、東ソー株式会社)を用いて求める。
【0051】
尚、上記の分子量分布の測定において、測定サンプルのGPC上でのピーク成分が水溶性β−1、3−1、4−グルカンに由来することは、以下の方法によって確認できる。
即ち、上記測定用サンプル1mlにリケナーゼ酵素溶液(Megazyme, 1000U/ml)を0.2Uとなるように添加し、55℃にて1晩反応させる。この溶液について上記と同様にして分子量測定を行う。
この測定結果から、リケナーゼ処理により水溶性β−1、3−1、4−グルカンに相当するピークは消失することが確認され、且つ、サンプルにおいて消失したピーク面積値に相当する面積値ピークが3−4糖に相当するリテンションタイム39.5分において確認された場合、上記GPC上で確認されたピークの成分は水溶性β−1、3−1、4−グルカンであり、これらがリケナーゼにより3−4糖まで分解されたものとみなす事ができる。
【0052】
上記の特定の分子量分布を有する水溶性β−1,3−1,4−グルカンを含有する本発明のアディポネクチン産生促進剤は、上記の(A)、(B)及び(C)成分を、10〜85:10〜85:5〜60の質量比(但し、(A)+(B)+(C)=100とする)で含有するように、水溶性β−1、3−1、4−グルカンの分子量分布の異なる2種以上の穀類粉抽出物を混合する、或いは、穀類粉の1種又は2種以上と穀類粉抽出物の1種又は2種以上とを混合することによって得ることができる。尚、前者の方法の場合、各穀類粉抽出物に用いる穀類粉は、同一でも異なっていてもよく、また、後者の方法の場合、穀類粉と穀類粉抽出物に用いる穀類粉とは、同一でも異なっていてもよい。
【0053】
尚、一般に、未加工の穀類粉に含まれる水溶性β−1,3−1,4−グルカンは、上記(A)成分に該当するような高分子量のものが比較的多い。該穀類粉に対し、前述の抽出処理(温水等を用いた加温下での抽出処理)、加水分解処理及び糊化処理から選択される1以上の処理、好ましくは該抽出処理及び/又は加水分解処理を行うと、高分子量の水溶性β−1,3−1,4−グルカンが低分子量化され、上記(B)成分及び/又は上記(C)成分を多く含むβグルカン組成物を得ることができる。低分子量化の度合いは、各処理の条件を常法に従って適宜選択することによって調整可能である。
【0054】
本発明のアディポネクチン産生促進剤として特に好ましいβグルカン組成物は、総β−1,3−1,4−グルカン含有量7〜25質量%の穀類粉(とりわけ大麦粉)と、水溶性β−1,3−1,4−グルカン含有量30〜85質量%の穀類粉抽出物(とりわけ大麦粉抽出物)とを、5〜95:95〜5(前者:後者、質量基準)の比率で混合して混合物とした後、該混合物に対し前述の糊化処理を行うことにより得ることができる。このようにして得られたβグルカン組成物は、後述の実施例におけるサンプルEのような特に高いアディポネクチン産生能を示す。また、このようにすると、上記の好ましい(A)、(B)及び(C)成分の質量比を満たすβグルカン組成物が得られやすい。
【0055】
本発明のアディポネクチン産生促進剤は、上記水溶性β−1,3−1,4−グルカンを有効成分として含んでなるものであり、好ましくは上記の分子量分布となるように含有するものである。
上記水溶性β−1,3−1,4−グルカンは、血中のアディポネクチン濃度を顕著に上昇させうるものであることから、本発明のアディポネクチン産生促進剤は、血中のアディポネクチン濃度の低下に起因する疾病の予防又は改善に極めて有用である。尚、ここで、具体的な「疾病の予防又は改善」としては、疾病、又はそれに伴う症状について、発症又は発現を予防し、調節し、その進行を抑制又は遅延し、緩和し、その再発を予防又は抑制することを包含する意味で使用される。
【0056】
ここで、血中のアディポネクチン濃度の低下に起因する疾病の例としては、生活習慣病、メタボリック・シンドローム(代謝異常症候群)や、これに関連する疾病であり、代表例としては、インスリン抵抗性、高血糖、糖尿病があり、本発明のアディポネクチン産生促進剤は、これらの疾病に対して効果を発揮する。
【0057】
本発明において、所望のアディポネクチン産生促進効果を得るためには、上記水溶性β−1,3−1,4−グルカンを、成人一人1日当たり、20〜15000mg投与又は摂取することが望ましく、投与量又は摂取量はより好ましくは40〜7000mgであり、最も好ましくは100〜3500mgである。1日の投与量又は摂取量が20mg未満であると、充分な効果が得られない虞がある。また、15000mgを超えて投与又は摂取しても、それ以上の効果の増加はあまり望めない。本発明においては、この量の有効成分を1日1回ないし数回に分けて、アディポネクチン産生促進剤そのままの形態で、又は、医薬組成物、飲食品等の所望の形態とした上で、投与又は摂取すればよい。
【0058】
本発明のアディポネクチン産生促進剤を含有してなる医薬組成物について以下に述べる。
本発明の医薬組成物は、本発明のアディポネクチン産生促進剤を含有するものであり、上記水溶性β−1,3−1,4−グルカンを、上記の好ましい投与量を投与可能なように適切な量で含有することが好ましい。即ち、上記水溶性β−1,3−1,4−グルカン有効成分とする本発明のアディポネクチン産生促進剤をそのまま医薬品として使用することも可能であるが、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤等の添加剤と混合して、液状、ペースト状、粉末状、顆粒状等の形態で製剤化してもよい。本発明の有効成分である水溶性β−1,3−1,4−グルカンは、水溶性が良好であるため、水や水分の多い医薬組成物又は飲食品に添加する際も、ダマができにくく、均一に分散させることが可能であること、水溶性β−1、3−1、4−グルカンの効果は水に溶解した状態で最も高い効果を呈することから、医薬組成物としては、液状ないしペースト状で投与されるものであることが好ましい。
【0059】
投与方法としては、経口、非経口のどちらでもよいが、経口投与が好ましい。尚、非経口製剤の場合には、注射剤、点滴剤、皮膚外用剤や座剤等の形態をとることができる。簡易性の点からは、経口製剤であることが好ましい。
【0060】
本発明の医薬組成物における本発明のアディポネクチン産生促進剤の含有量は、その求められるアディポネクチン産生促進効果に応じ適宜設定可能であるが、水溶性β−1、3−1、4−グルカンとして、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは20〜100質量%、更に好ましくは50〜100質量%となる量である。
【0061】
本発明の医薬組成物を投与する場合、投与量は対象とする人の年令、血中アディポネクチン含量の程度等により異なるため一概には言えないが、有効成分である水溶性β−1,3−1,4−グルカン量換算で、成人一人1日当たり、1日に20〜15000mg投与することが望ましく、投与量はより好ましくは40〜7000mgであり、最も好ましくは100〜3500mgである。
【0062】
尚、本発明の医薬組成物には、必要に応じて、上記水溶性β−1,3−1,4−グルカン以外のアディポネクチン産生促進剤や、従来公知の他の生理活性成分、例えば、コレステロール上昇抑制剤、血圧上昇抑制剤、血中コレステロール調節機能剤、血糖値上昇抑制作用剤、腸内細菌叢改善剤、整腸作用剤、抗ガン作用剤、抗アレルギー作用剤、消化吸収調節作用剤、老化防止剤、抗酸化剤、血行促進剤、免疫調節剤等を配合してもよい。
【0063】
本発明のアディポネクチン産生促進剤を含有してなる飲食品について以下に述べる。
本発明の飲食品は、本発明のアディポネクチン産生促進剤を含有するものであり、上記水溶性β−1,3−1,4−グルカンを、前述の好ましい摂取量で摂取可能なように適切な量で含有するものであることが好ましい。
【0064】
本発明において、「飲食品」とは、医薬以外のものであって、経口摂取可能な形態のものであれば特に制限はなく、その形態も液状、ペースト状、粉末状、顆粒状等のさまざまな形態を採ることができ、また、栄養補助食品に代表されるように、錠剤形態であってもよい。
尚、本発明において「飲食品」には、機能性食品、特定保健用食品も含まれ、特に、疾病リスク低減表示が付された食品も包まれる。
【0065】
上記飲食品としては、例えば、マーガリン、ショートニング、マヨネーズ、クリーム、サラダオイル、揚油、ホイップクリーム、起泡性乳化脂、ドレッシング、ファットスプレッド、カスタードクリーム、ディップクリーム等の加工油脂製品、食パン、菓子パン、パイ・デニッシュ、クッキー、ケーキ等のベーカリー製品、チョコレート、キャンディー・ドロップ、飴、チューインガム、スナック等の菓子類、生麺、乾麺、即席麺、カップ麺、うどん、蕎麦、中華麺、ビーフン、パスタ類等の麺類、炊飯米、餅、無菌米飯、レトルト炊飯米、上新粉、餅粉、団子、せんべい、あられ等の穀類加工品、牛乳、発酵乳、バター、チーズ、アイスクリーム、ヨーグルト等の乳や乳製品、コンソメスープ、コーンポタージュスープ、玉子スープ、中華スープ、シチュー、カレー等のスープ類、ビール、日本酒、ウイスキー、ブランデー、洋酒、焼酎、蒸留酒、発泡酒、ワイン、果実酒等のアルコール飲料、コーヒー、紅茶、日本茶、ウーロン茶、中国茶、ココア、炭酸飲料、栄養ドリンク、スポーツドリンク、コーヒードリンク、炭酸飲料、乳酸菌飲料、果汁・果実飲料等の非アルコール飲料、調味料類、ハム・ソーセージ、ハンバーグ等の畜肉加工品、ちくわ、かまぼこ、さつま揚げ、魚肉ソーセージ等の水産加工品、調理食品、健康食品、低カロリー食品、アレルギー患者用食品、乳児用食品、老人用食品、美容食品、薬用食品、或いはそれらの冷凍食品、レトルト食品、インスタント食品、缶詰等を挙げることができる。
【0066】
本発明の有効成分である水溶性β−1,3−1,4−グルカンは、水溶性が良好であるため、水や水分の多い飲食品に添加する際も、ダマができにくく、均一に分散させることが可能であること、水溶性β−1、3−1、4−グルカンの効果は水に溶解した状態で最も高い効果を呈することから、飲食品としては、液状飲食品であることが好ましい。
【0067】
上記液状飲食品の例としては、上記スープ類、上記アルコール飲料、上記非アルコール飲料、乳飲料、醤油、ソース、たれ、ジャム、ケチャップ等の液状の調味料、ドリンク剤及びゼリー状飲料等が挙げられ、摂食時にお湯又は水等を加え液状として飲食する、これらの飲食品の濃縮物や乾燥品等のいわゆる即席の飲食品も含まれる。
【0068】
本発明の飲食品における本発明の水溶性β−1,3−1,4−グルカンの含有量は特に制限がなく、その求められるアディポネクチン産生促進効果に応じ適宜設定可能であるが、水溶性β−1、3−1、4−グルカンとして、好ましくは0.001〜100質量%、より好ましくは0.01〜100質量%となる量である。ただし、飲食品が液状飲食品の場合は、水溶性β−1、3−1、4−グルカンとして、好ましくは0.001〜30質量%、より好ましくは0.01〜10質量%となる量である。
【0069】
本発明の飲食品を摂取する場合、摂取量は摂取する人の年令、血中アディポネクチン含量の程度等により異なるため一概には言えないが、有効成分である水溶性β−1,3−1,4−グルカン量換算で、成人一人1日当たり、1日に20〜15000mg摂取することが望ましく、摂取量はより好ましくは40〜7000mgであり、最も好ましくは100〜3500mgである。
【実施例】
【0070】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明を更に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
尚、以下の実施例及び比較例において、水溶性β−1,3−1,4−グルカン含量、総β−1,3−1,4−グルカン含量、(A)、(B)及び(C)成分含量、並びに糊化度の測定は、下記の通り行った。
【0071】
<水溶性β−1,3−1,4−グルカン含量の測定方法>
水溶性β−1,3−1,4−グルカン含量の測定は、McCleary法(酵素法)を採用した。具体的にはβ−1,3−1,4−グルカン含量測定キット(型番K−BGLU)(メガザイム社製)を使用し、以下の手順で測定した。
先ず、500μm(30メッシュ)のふるいにかけた測定サンプルについて、予め水分含量を測定(赤外線水分計、型番FD−230、Kett社製)し、無水物質量W(mg)を算出した。これとは別に、測定サンプル10mgを17mlチューブに取り、50%(v/v)エタノール水溶液を200μl加え、分散させた。次に4mlの20mMリン酸緩衝液(pH6.5)を加え、よく混合した後、煮沸した湯浴中にて1分間加温した。よく混合し、更に2分間、湯浴中で加熱した。遠心分離にて上清を得て、50℃に冷却後、5分間放置してから、各チューブにリケナーゼ酵素溶液(キットに付属するバイアルを20mlの20mMリン酸緩衝液で希釈、残量は凍結保存)の200μl(10U)を加え、50℃にて1時間反応させた。チューブに200mM酢酸緩衝液(pH4.0)を5ml加えて、静かに混合した。室温に5分間放置し、遠心分離にて上清を得た。上清100μlを3本のチューブに取り、1本には100μlの50mM酢酸緩衝液(pH4.0)を、他の2本には100μl(0.2U)のβグルコシターゼ溶液(キットに付属するバイアルを20mlの50mM酢酸緩衝液で希釈、残量は凍結保存)を加え、50℃にて10分間反応させた。3mlのグルコースオキシターゼ/ペルオキシターゼ溶液を加えて、50℃にて20分間反応させ、各サンプルの510nmにおける吸光度(EA)を測定した。これとは別に、グルコース100μgを含む3mlのグルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ溶液の吸光度(EG)を測定する。これらの測定結果から、次式により水溶性β−1,3−1,4−グルカン含量を求めた。
水溶性β−1,3−1,4−グルカン含量(%,w/w)=(EA)×(F/W)×8.46
式中、F及びWは次の通りである。
F=(100)/(グルコース100μgの吸光度EG)
W=無水物質量(mg)
【0072】
<総β−1,3−1,4−グルカン含量の測定方法>
2分間湯浴中で加熱後の遠心分離を行なわない以外は、水溶性β−1,3−1,4−グルカン含量の測定方法と同様の方法で、総β−1,3−1,4−グルカン含量を求めた。
【0073】
<(A)、(B)及び(C)成分含量の測定方法>
水溶性β−1、3−1、4−グルカンの分子量分布、即ち、(A)、(B)及び(C)成分の含量(質量比)については、次の通りの手順で測定した。
先ず、被検サンプル10mgに10mlの蒸留水を加え、煮沸した湯浴中にて1分間加温した。よく混合し、更に2分間、湯浴中で加熱した。遠心分離にて上清を得て、上清をディスポーザブルシリンジフィルターユニット(セルロースアセテート膜、0.45μm、アドバンテック社製)にてフィルター濾過し、分子量分布測定用サンプルとした。次に、このサンプルについて、以下に示したHPLCシステムを使用して分子量分布を測定した。
カラム;TSK GEL G6000PWXL(東ソー)−Shodex Sugar SB-802(昭和電工)、カラム温度60℃、流速0.5ml/min、RI及びUV(280nm)による検出(45℃)、サンプルアプライ量50μl(被験サンプル濃度1mg/ml)、溶出溶媒はMilli-Q水によるイソクラチック溶出とした。
得られたカラムトグラムから、GPC解析ソフト(GPC-8020 model II データ解析 Ver.4.20、東ソー株式会社)を用いて、水溶性β−1、3−1、4−グルカンの分子量分布、即ち(A)、(B)、(C)成分含量を求めた。
【0074】
尚、上記の分子量分布の測定において、測定サンプルのGPC上でのピーク成分が水溶性β−1、3−1、4−グルカンに由来することを以下の方法によって確認した。
即ち、上記測定用サンプル1mlにリケナーゼ酵素溶液(Megazyme, 1000U/mL, Lot.60502)を0.2Uとなるよう添加し、55℃にて一晩反応させた。この溶液について、上記と同様の方法にて分子量測定を行った。
この測定結果から、リケナーゼ処理により水溶性β−1、3−1、4−グルカンに相当するピークは消失することが確認され、且つ、全サンプルにおいて、消失した面積値に相当する面積値のピークが3〜4糖に相当するリテンションタイム39.5分において確認された。このことから、上記(A)、(B)、(C)成分含量の測定方法により検出されたGPC上でピーク成分は水溶性β−1、3−1、4−グルカンであり、これらがリケナーゼにより主に3〜4糖にまで分解されたものとみなすことができる。
【0075】
<糊化度測定方法>
糊化度の測定は、食品分析法のグルコアミラーゼ法により行った。
先ず、測定サンプル20gにエタノール200mlを加え、1分間撹拌した後、遠心分離(8000回転/分・5分)し、得られた沈殿にエタノール200mlを加えた。これを1分間撹拌した後、再度遠心分離(8000回転/分・5分)し、得られた沈殿にエーテル200mlを加えた。これを、1分間撹拌した後、再度遠心分離(8000回転/分・5分)し、得られた沈殿を乾燥した。得られた沈殿の乾燥物100mgに蒸留水8mlを加えて均一な懸濁液とした。2mlを2本の試験管に取り、1本には1.6mlの2mol/l酢酸緩衝液(pH4.8)と0.4mlの蒸留水を加え、測定サンプル液とした。もう1本には0.2mlの10mol/l水酸化ナトリウムを加えて完全に溶解させた後、1.6mlの2mol/l酢酸、4mlの酢酸を加え、完全糊化サンプル液とした。これらのサンプル液に1mlのグルコアミラーゼ液(2.63単位)を加えて、37℃で60分間反応させた。反応終了後、反応液0.5mlに、25mmol/l塩酸20mlを加えて撹拌し、ソモジー・ネルソン法によりグルコース量(糖量)を定量した。糊化度を次式から算出した。
糊化度(%)=(サンプル液中の糖量/完全糊化サンプル液中の糖量)×100
【0076】
〔実施例1〕脂肪細胞によるアディポネクチン産生促進試験(in vitro)
下記1)において調製したアディポネクチン産生促進剤サンプルを用いて、下記2)の使用脂肪細胞及び試験方法により、in vitroにてアディポネクチン産生促進試験を行った。本試験では、水溶性β−1、3−1、4−グルカン含量、及び水溶性β−1、3−1、4−グルカンの分子量分布の違いによるアディポネクチン産生に及ぼす影響について検討した。
【0077】
1)使用サンプルの調製
(サンプルA)
平成18年度新潟県産のミノリムギを外周部より削り、とう精歩合60%とした大麦粒(胚乳部分含量100質量%)をローラー式粉砕機で粉砕した。得られた粉砕物は、粒子径500μm以上の粒子が0.5体積%であり、粒子径40μm以下の粒子が55体積%であった。
得られた粉砕物の10kgを140メッシュの篩にて60分間処理し、篩上の画分4.3kgを得た。得られた画分は、粒子径50〜500μmの粒子が94体積%であった。これを粉砕機(ピンミルDD-2-3.7、槇野産業)にて粉砕し、分級した大麦粉であるサンプルAを得た。
【0078】
(サンプルB)
平成20年度新潟県産のミノリムギを外周部より削り、とう精歩合90%とした大麦粒(胚乳部分含量100質量%)をローラー式粉砕機で粉砕した。得られた粉砕物200gに2Lの蒸留水を添加し、50℃にて60分間攪拌して抽出処理を行った。その後、全量を遠心分離して上清を得て、得られた上清を−20℃で凍結した後、融解した。凍結融解後の溶液を遠心分離し、得られた沈殿物を4℃の蒸留水にて洗浄後、凍結乾燥して穀類粉抽出物であるサンプルBを得た。
【0079】
(サンプルC)
上記サンプルBの調製時の抽出処理を行った後の遠心分離で残った沈殿に、5倍量の蒸留水を添加し、アミラーゼ(セルクラストR:ノボザイム社製)及びプロテアーゼ(アルカラーゼR:ノボザイム社)を添加し(対沈殿0.01%v/wとなるよう添加)、50℃にて2時間インキュベートした後、80℃にて30分の加熱により酵素を失活させ、遠心分離(8000rpm、20分間)により上清を取り除いた。得られた沈殿は凍結乾燥後、ミルにて細かく粉砕し、不溶性βグルカンであるサンプルCを得た。
【0080】
(サンプルD)
市販の大麦βグルカン(大麦から抽出したβ−1,3−1,4−D−グルカン65質量%含有、製品名:大麦ベータグルカンC60−P、ADEKA社製)の10gを、100mlの蒸留水に添加し、70℃にて加熱しながら溶解させた。溶液を室温に戻した後、遠心分離(8000rpm、10分間)にて上清を得た。上清に2倍量のエタノールを加え、一昼夜、4℃に放置後、沈殿を遠心分離(8000rpm、10分間)にて回収し、凍結乾燥させ4.8gの乾燥物を得た。この乾燥物中のβグルカン量を測定したところ88.5質量%であった。この乾燥物の粉末を4mMクエン酸緩衝液(pH6.0)100mlに溶解させた。リケナーゼ1000U/ml(Megazyme社製)の10倍希釈液を10μl添加して、40℃で24時間インキュベートした。沸騰水浴中で10分間加熱した後、室温まで冷却して凍結乾燥し、低分子量βグルカン組成物であるサンプルDを得た。
尚、サンプルDに含まれる水溶性β−1,3−1,4−D−グルカンの分子量は500〜2000の範囲に検出され、質量平均分子量は950と算出された。
【0081】
(サンプルE)
上記サンプルAと上記サンプルBを70:30の質量比で混合した後、ニーダー(ベンチニーダーPNV−1(入江商会))に投入し、水分含量40質量%となるまで加水した後、85℃にて60分加熱処理し、これを、水流ポンプでの減圧乾燥により水分含量7.0%まで乾燥した後、粉砕機(商品名:ミクロパウダー、ウエスト社製)の粒度つまみを10ミクロンにセットして更に粉砕し、サンプルEとした。
【0082】
(サンプルF)
上記サンプルA及び上記サンプルDを90:10の質量比で混合した後、ニーダー(ベンチニーダーPNV−1(入江商会))に投入し、水分含量40質量%となるまで加水した後、85℃にて60分加熱処理し、これを、水流ポンプでの減圧乾燥により水分含量7.0%まで乾燥した後、粉砕機(商品名:ミクロパウダー、ウエスト社製)の粒度つまみを10ミクロンにセットして更に粉砕し、サンプルFとした。
【0083】
(サンプルG)
上記サンプルA、上記サンプルB及びサンプルDを50:40:10の質量比で混合した後、ニーダー(ベンチニーダーPNV−1(入江商会))に投入し、水分含量40質量%となるまで加水した後、85℃にて60分加熱処理し、これを、水流ポンプでの減圧乾燥により水分含量7.0%まで乾燥した後、粉砕機(商品名:ミクロパウダー、ウエスト社製)の粒度つまみを10ミクロンにセットして更に粉砕し、サンプルGとした。
【0084】
(サンプルH)
上記サンプルA及び上記サンプルBを50:50の質量比で混合した後、ニーダー(ベンチニーダーPNV−1(入江商会))に投入し、水分含量40質量%となるまで加水した後、85℃にて60分加熱処理し、これを、水流ポンプでの減圧乾燥により水分含量7.0%まで乾燥した後、粉砕機(商品名:ミクロパウダー、ウエスト社製)の粒度つまみを10ミクロンにセットして更に粉砕し、サンプルHとした。
【0085】
以上のサンプルA〜Hの、水溶性β−1、3−1、4−グルカン含量、総β−1,3−1,4−グルカン含量、糊化度、(A)、(B)、(C)成分の質量比を測定した。これらの測定結果を表1に記載した。
【0086】
【表1】

【0087】
2)使用脂肪細胞および試験方法
10% Calf serum -Dulbecco's modified Eagle's medium(10% CS-DMEM)にて培養した脂肪細胞(3T3-L1、マウス由来)を遠心分離により回収し、同10%CS-DMEM培地にて希釈することで細胞数を5000cells/wellとして24well plate(IWAKI)に播き、ここに、蒸留水に溶解又は分散した上記サンプルA〜Hをそれぞれ総β−1、3−1、4−βグルカン濃度として終濃度50μl/mlとなるよう添加した。37℃にて72時間培養後(CO2インキュベータ使用)の培養上清を回収し、凍結保存し、アディポネクチン分泌量測定用サンプルとした。この測定用サンプルに含まれる、脂肪細胞から分泌されたアディポネクチンの量を、ELISA法を用いたキットにより測定(マウス−ラットアディポネクチンELISAキット、大塚製薬株式会社)した。測定結果を表2に記載した。尚、アディポネクチン分泌量は大麦粉抽出物であるサンプルBにおける値を100とした相対値(%)により表した。
また、ブランクとして、サンプルA〜Hに代えて蒸留水を使用した場合についても同様に試験を行なった。その測定結果も表2に記載した。
【0088】
【表2】

【0089】
3)試験結果
上記表1及び表2からわかるように、水溶性β−1,3−1,4−グルカンを含有しないサンプルCは蒸留水と同様アディポネクチン分泌がほとんど見られなかったのに対し、水溶性β−1、3−1、4−グルカンを含有するサンプルA、サンプルB、サンプルD〜Hでは高いアディポネクチン分泌が見られ、アディポネクチン産生促進剤として有用であることがわかった。なかでも、水溶性β−1,3−1,4−グルカン含有量が高いサンプルB、サンプルD〜Hで、特に高いアディポネクチン分泌が見られ、上述の(A)、(B)及び(C)成分を、10〜85:10〜85:5〜60の質量比(但し、(A)+(B)+(C)=100とする)で含有するものであるE〜Hがより高いアディポネクチン分泌を示した。上述の(A)、(B)及び(C)成分を、12〜68:20〜78:10〜40の質量比で含有するものであるサンプルE及びサンプルHがさらに高いアディポネクチン分泌を示し、上述の(A)、(B)及び(C)成分を、20〜40:30〜70:10〜40の質量比で含有するものであるサンプルEが最も高いアディポネクチン分泌を示した。
【0090】
〔実施例2〕マウスによるアディポネクチン産生促進試験(in vivo)
実施例1における脂肪細胞によるアディポネクチン産生促進試験(in vitro)において高いアディポネクチン分泌を示したサンプルEを本発明のアディポネクチン産生促進剤として使用し、下記1)、2)及び3)に従って、in vivoにてアディポネクチン産生促進試験を行った。
【0091】
1)使用動物及び飼育環境
5週齢のKKAy/Taマウス(メタボリックシンドロームモデルマウス、雌性、1群10匹、日本クレア)を市販飼料(MF固形、オリエンタル酵母)にて1週間予備飼育し馴化させた。その後、非絶食時血糖値がすでに高血糖(260mg/dl以上)を呈していた個体(n=6)については除外した後、血糖値が均等となるよう3群(1群n=8)に群分けした。
飼育条件は温度23±3℃、湿度60±10%、明暗サイクル12時間(明期AM9:00−PM9:00)にて飼育し、試験期間中の飼料及び水はそれぞれ自由摂取とした。尚、実験動物の取り扱いに関しては「動物の飼養及び保管等に関する基準」(昭和55年3月総理府告示第6号)を尊守のうえ実施した。
【0092】
2)アディポネクチン産生促進剤の投与
アディポネクチン産生促進剤投与群においては、1週間あたり水溶性β−1,3−1,4−グルカン投与量として270mg/kgとなるよう週2回にわけてゾンデを用いた経口投与を行った。いずれの投与においても前日より1晩絶食(18h)させた後、蒸留水にサンプルEを溶解した水溶液をマウス体重10gにつき0.75ml投与となるように投与した。また、コントロール群には蒸留水のみを同様に経口投与した。
以上の経口投与をアディポネクチン産生促進剤投与群及びコントロール群とも、9週間にわたり実施した。
【0093】
3)血清アディポネクチン測定
試験終了後、非絶食時においてマウス尾静脈より採血し、定法に従って血清を調製した。この血清中に含まれるアディポネクチン濃度をELISA法を用いた市販のキット(マウス/ラットアディポネクチンELISAキット、大塚製薬)により測定した。その結果を、図1に示す。
【0094】
図1から明らかな通り、本発明の有効成分である水溶性β−1,3−1,4−グルカンを長期的に投与した場合、KKAyマウスの非絶食時における血清アディポネクチン濃度は、アディポネクチン産生促進剤投与群においてコントロール群と比して有意に増大した(p<0.05)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性β−1、3−1、4−グルカンを有効成分とすることを特徴とするアディポネクチン産生促進剤。
【請求項2】
上記水溶性β−1、3−1、4−グルカンを5〜100質量%含有することを特徴とするアディポネクチン産生促進剤。
【請求項3】
上記水溶性β−1、3−1、4−グルカンが、下記の(A)、(B)及び(C)成分を、10〜85:10〜85:5〜60の質量比(但し、(A)+(B)+(C)=100とする)で含有することを特徴とする請求項1又は2記載のアディポネクチン産生促進剤。
(A)分子量が50万以上の水溶性β−1、3−1、4−グルカン
(B)分子量が2万以上50万未満の水溶性β−1、3−1、4−グルカン
(C)分子量が500以上2万未満の水溶性β−1、3−1、4−グルカン
【請求項4】
上記水溶性β−1、3−1、4−グルカンを含有する穀類粉及び/又は穀類粉抽出物からなる請求項1〜3のいずれか一項に記載のアディポネクチン産生促進剤。
【請求項5】
上記水溶性β−1、3−1、4−グルカンを含有する大麦粉及び/又は大麦粉抽出物からなる請求項1〜3のいずれか一項に記載のアディポネクチン産生促進剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のアディポネクチン産生促進剤を含んでなることを特徴とする医薬組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のアディポネクチン産生促進剤を含んでなることを特徴とする飲食品。

【図1】
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【公開番号】特開2012−6865(P2012−6865A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143679(P2010−143679)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】