説明

アドレス変換方法、アドレス変換代理応答方法、アドレス変換装置及びアドレス変換代理応答装置

【課題】アドレス変換装置において、効率の良い負荷分散を行うことを目的とする。
【解決手段】独立したアドレス空間を持つ2つのネットワークを複数台で接続し、一方のネットワークの実アドレスに対する他方のネットワークの擬似アドレスの対応情報をアドレス変換手段に持つアドレス変換装置であって、自装置が前記アドレス変換手段に持つ擬似アドレスに対するアドレス変換要求を受信するアドレス変換要求受信手段と、受信したアドレス変換要求の送信元アドレスを基に、予め定められたルールに従って前記アドレス変換要求に応答するかしないかを決定するアドレス解決応答決定手段と、前記アドレス解決応答決定手段の決定に基づいて前記アドレス変換要求に対する応答を行う応答手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立したアドレス空間を持つ2つのネットワークと接続する際のアドレス変換方法、アドレス変換代理応答方法、アドレス変換装置及びアドレス変換代理応答装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に複数のネットワークを接続した一例のネットワーク構成図を示す。図1において、サブネット1は端末1−1〜1−5、レイヤ2スイッチ2−1〜2−6を有し構成されている。また、サブネット2は端末1−6〜1−10、レイヤ2スイッチ2−7〜2−12を有し構成されている。
【0003】
サブネット1とサブネット2はIPアドレス空間が独立なネットワークであり、サブネット1とサブネット2はNAT(Network Address Translation:アドレス変換装置)により接続される。NAT3は、サブネット1にある端末群とサブネット2にある端末群での通信を接続するため、アドレス変換テーブルを保持する。例えば、NAT3は端末1−6に対する擬似IPアドレスを保持する。この端末1−6の擬似IPアドレスはNAT3が属するサブネット1のIPアドレス空間で定義される。
【0004】
サブネット1のネットワークアドレスが192.168.1.0/24、サブネット2のネットワークアドレスが192.168.100.0/24、端末1−1のIPアドレスが192.168.1.1、端末1−6のIPアドレスが192.168.100.1であるとする。NAT3は、端末1−1に対する擬似IPアドレス192.168.100.11と端末1−6に対する擬似IPアドレス192.168.1.11が登録されているアドレス変換テーブルを持つ。そして、端末1−1が端末1−6へパケットを送信する場合、端末1−1は端末1−6の擬似IPアドレス192.168.1.11へのパケットを送信し、それをNAT3が一旦受信する。そして、NAT3が宛先IPアドレスを192.168.100.1に変更し送信元IPアドレスを192.168.100.11に変更した後、受信パケットを端末1−6へ送信する。
【0005】
図1に示すように、単一のNATで2つのネットワークを接続した場合、中継するトラヒックが増加すると、NATの中継処理負荷が増加する問題がある。そこで、図2に示すように、複数のNATで接続する手法がある。
【0006】
図2では、サブネット1とサブネット2はNAT3とNAT4により接続される。この場合、NAT3が図3(A)に示すアドレス変換テーブルを持ち、NAT4が図3(B)に示すアドレス変換テーブルを持つことによって端末1−1、1−2、1−6、1−7、1−8宛のパケットは、NAT3によって転送され、端末1−3、1−4、1−5、1−9、1−10宛のパケットはNAT4によって転送される。なお、図3(C)にNAT3及びNAT4における送信元アドレス変換テーブルを示す。
【0007】
ところで、1つのネットワーク内に設けた複数のアドレス管理装置それぞれが管轄するアドレス範囲を分担して互いに異なる範囲のアドレスに関する管理を受け持つようにする技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0008】
また、異なるネットワークアドレスをもつネットワークを中継装置で接続し、ネットワークをまたぐARP要求に対して中継装置が代理として応答する技術が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0009】
また、同一ルート上に現用系と予備系の2台のLAN間接続装置を設ける技術が知られている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−186569号公報
【特許文献2】特開2005−33302号公報
【特許文献3】特開平8−256173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図2に示す手法では、複数のNAT3,4でエントリが重複しないように管理する必要があり、端末の増減によりテーブルの設定変更があった場合に修正の手間が掛かるという問題があった。また、特定のサーバに負荷が集中しているような場合、その高負荷サーバの擬似IPアドレスが登録されているNATにトラヒックが集中してしまう問題点があった。
【0012】
また、アドレス変換テーブルが登録されているNATを通過するため、エントリ登録の状態や通信を行う端末の位置により、遠回りの経路をデータが転送されるケースが発生していた。図2に示す端末1−2と端末1−6間、端末1−5と端末1−10間で通信を行う場合には、最短経路でデータ転送を行うことが可能である。
【0013】
しかし、端末1−1と端末1−10間で通信を行う場合には、NAT4を介して通信を行うために、端末1−1,レイヤ2スイッチ2−1,2−2,2−3,2−4,2−5,NAT4,レイヤ2スイッチ2−8,2−12,端末1−10の経路となり、NAT3を介して通信を行う場合に対してホップ数が大きくなり、遠回りの経路でデータ転送が行われ、より多くの遅延や無駄なトラヒックが発生することになるという問題があった。
【0014】
開示のアドレス変換装置は、効率の良い負荷分散を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
開示の一実施形態によるアドレス変換装置は、独立したアドレス空間を持つ2つのネットワークを複数台で接続し、一方のネットワークの実アドレスに対する他方のネットワークの擬似アドレスの対応情報をアドレス変換手段に持つアドレス変換装置であって、
自装置が前記アドレス変換手段に持つ擬似アドレスに対するアドレス変換要求を受信するアドレス変換要求受信手段と、
受信したアドレス変換要求の送信元アドレスを基に、予め定められたルールに従って前記アドレス変換要求に応答するかしないかを決定するアドレス解決応答決定手段と、
前記アドレス解決応答決定手段の決定に基づいて前記アドレス変換要求に対する応答を行う応答手段と、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本実施形態によれば、効率の良い負荷分散を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】複数のネットワークを接続した一例のネットワーク構成図である。
【図2】複数のネットワークを接続した他の一例のネットワーク構成図である。
【図3】アドレス変換テーブルを示す図である。
【図4】複数のネットワークを接続した第1実施形態のネットワーク構成図である。
【図5】端末のIPアドレスが割り当てを示す図である。
【図6】アドレス変換テーブルを示す図である。
【図7】アドレス変換装置の一実施形態の構成図である。
【図8】パケット転送動作を説明するための図である。
【図9】パケットの基本フォーマット、ARP要求フォーマット、ARP応答フォーマットを示す図である。
【図10】アドレス変換テーブルを示す図である。
【図11】複数のネットワークを接続した第3実施形態のネットワーク構成図である。
【図12】アドレス変換テーブルを示す図である。
【図13】ARP代理応答装置の一実施形態の構成図である。
【図14】パケット転送動作を説明するための図である。
【図15】複数のネットワークを接続した第4実施形態のネットワーク構成図である。
【図16】パケット転送動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて実施形態を説明する。
【0019】
<第1実施形態>
図4に複数のネットワークを接続した第1実施形態のネットワーク構成図を示す。図4において、サブネット1は端末1−1〜1−5、レイヤ2スイッチ2−1〜2−6を有し構成されている。また、サブネット2は端末1−6〜1−10、レイヤ2スイッチ2−7〜2−12を有し構成されている。
【0020】
サブネット1とサブネット2はIPアドレス空間が独立なネットワークであり、サブネット1とサブネット2はNAT11,12により接続される。なお、NAT11はレイヤ2スイッチ2−2,2−7に接続され、NAT12はレイヤ2スイッチ2−5,2−8に接続されている。
【0021】
NAT11,12は、サブネット1にある端末群とサブネット2にある端末群での通信を接続するため、アドレス変換テーブルを保持する。例えばNAT11,12は、端末1−6に対する擬似IPアドレスを保持する。この端末1−6の擬似IPアドレスはNAT11,12が属するサブネット1のIPアドレス空間で定義される。なお、サブネット1とサブネット2の間を3台以上のNATで接続する構成であっても良い。
【0022】
ここで、例えばサブネット1に192.168.1.0/24、サブネット2に192.168.100.0/24のネットワークアドレスが定義されているとする。そして、各端末には、図5に示すようなIPアドレスが割り当てられているとする。この場合、全てのNAT11,12は、図6に示す擬似IPアドレスと端末IPアドレスとを対応付けた宛先及び送信元アドレス変換用のアドレス変換テーブルを有している。
【0023】
<アドレス変換装置の構成>
図7はNAT11,12に対応するアドレス変換装置の一実施形態の構成図を示す。図7において、ARP(Address Resolution Protocol:アドレス解決プロトコル)要求・応答メッセージ送受信部21は、サブネット1からARP要求メッセージを受信してサブネット1へARP応答メッセージを送信する。また、サブネット2へARP要求メッセージを送信し、サブネット2からARP応答メッセージを受信する。
【0024】
アドレス解決応答決定部22は、サブネット1から受信したARP要求メッセージを処理するか否かを決定する。このとき、以下のルールのうち、いずれかの条件を満足する場合に処理すると決定する。以下の条件を判定する際に、アドレス変換テーブル23、トポロジーデータベース24、アドレス変換情報データベース25を参照する。
【0025】
第1に、ARP要求メッセージがアドレス変換テーブル23に登録されている擬似IPアドレスをターゲットIPアドレス(宛先IPアドレス)としたARP要求メッセージであるときARP要求メッセージを処理すると決定する。
【0026】
第2に、ARP要求メッセージの送信元MACアドレスを入力として例えばハッシュ関数で得られたハッシュ値等の結果によりARP要求メッセージを処理するか否かを決定する。
【0027】
第3に、ARP要求メッセージの送信端末とアドレス変換装置の距離が最短であるときARP要求メッセージを処理すると決定する。
【0028】
第4にARP要求メッセージの送信端末とターゲットIPアドレス(宛先IPアドレス)で示された擬似IPアドレスに対応する端末(宛先端末)との最短距離上にアドレス変換装置が存在するときARP要求メッセージを処理すると決定する。
【0029】
トポロジー収集部26は、SNMP(Simple Network Manegement Protocol)等により自装置に接続されたレイヤ2スイッチから自装置に接続されたネットワークの端末と他のアドレス変換装置の該ネットワークへの接続位置を含むトポロジー情報を収集する。
【0030】
広告メッセージ送受信部27は、自装置アドレスを格納した生存通知メッセージや、自装置アドレスと登録されている擬似IPアドレスのリストを格納したアドレスリスト通知メッセージをサブネット1に広告し、生存通知メッセージやアドレスリスト通知メッセージをサブネット1から受信する。また、保持しているアドレス変換テーブル23を格納したアドレス変換情報広告メッセージをサブネット1へ広告し、アドレス変換情報広告メッセージをサブネット1から受信する。
【0031】
アドレス変換情報広告処理部28は、アドレス変換テーブル23を参照し、アドレス変換テーブル23のエントリを格納したアドレス変換情報広告メッセージを生成する。また、サブネット1から受信したアドレス変換情報広告メッセージをアドレス変換情報データベース25に登録する。
【0032】
アドレス変換情報データベース25は、生存通知メッセージの受信等により認識した他のアドレス変換装置の生存情報を格納する。また、アドレス変換情報広告メッセージの受信等により認識した他のアドレス変換情報を格納する。
【0033】
アドレス変換テーブル23は、受信したデータパケットの宛先IPアドレス(=擬似IPアドレス)に対する実IPアドレスを対応付ける情報と、受信したデータパケットの送信元IPアドレス(つまり実IPアドレス)に対する擬似IPアドレスを対応付ける情報とが登録されている。
【0034】
ARP要求・応答メッセージ生成部29は、アドレス解決応答決定部22により受信したARP要求メッセージを処理することが決定された場合に、自装置のMACアドレスをターゲットMACアドレスとしてARP応答メッセージを作成する。また、アドレス解決応答決定部22が宛先端末のMACアドレスを必要とした場合に、受信したARP要求メッセージのターゲットIPアドレス(宛先IPアドレス)からアドレス変換テーブル23を使って実IPアドレスに探索し、その実IPアドレスに対してアドレス変換要求メッセージを作成する。そして、アドレス解決されたMACアドレスをARP応答メッセージに提供する。
【0035】
パケット受信部31はサブネット1からパケットを受信する。パケット送信部32はサブネット2へパケットを送信する。アドレス変換部33はアドレス変換テーブル23の情報を用いて、受信したデータパケットの宛先IPアドレスを送信元IPアドレスへ変換してパケット送信部32に転送する。
【0036】
上記の機能は、サブネット1からサブネット2へのパケット転送に伴うアドレス変更処理を行うための機能である。更にサブネット2からサブネット1へのパケット転送も行う両方向の場合には、逆方向の機能が必要となるが、図7では上記逆方向の機能は省略している。
【0037】
<サブネット1,2間のパケット転送動作>
図8を用いてサブネット1の端末1−1からサブネット2の端末1−6にパケットを転送する動作について説明する。以下の説明の括弧付き数字は図8の括弧付き数字と対応している。
【0038】
(1)端末1−1は、端末1−6の擬似IPアドレスに対するARP要求メッセージ(ARP要求)をサブネット1内にブロードキャストする。
【0039】
(2)ARP要求を受信したNAT11とNAT12は、自身が管理しているアドレス変換テーブル23にARP要求の宛先IPアドレスに該当する擬似IPアドレスが登録されているかをチェックし、登録されていることを確認する。そして、ARP要求の送信元MACアドレスを入力キーにハッシュ関数を用いてハッシュ値を求める。そのハッシュ値に従い、ARP要求を返信するか、無視するかを決定する。
【0040】
簡単な例としては、本実施形態では2台のNATでネットワークを接続していることから、送信元MACアドレスを2で割り、その余りを求める。そして、余り値が0の場合はNAT11が、1の場合にはNAT12がARP要求に返信するとしてもよい。また、送信元MACアドレスの値が閾値より大きい場合にNAT11が、閾値未満の場合にNAT12がARP要求に返信するとしてもよい。更に、MACアドレスのリストにNAT11又はNAT12を予め設定しておき、送信元MACアドレスで上記リストを参照してARP要求に返信するNATを決定しても良い。
【0041】
ARP要求を返信するNATは、ターゲットIPアドレス(端末1−6の擬似IPアドレス)に対するMACアドレスとして自身のMACアドレスを格納したアドレス解決応答メッセージ(ARP応答)を返信する。本実施形態では、ハッシュ値によりNAT11が選択され、NAT11が自装置のサブネット1側のインタフェースに付与されているMACアドレスをARP応答に格納して送信する。
【0042】
(3)ARP応答を受信した端末1−1は、端末1−6の擬似IPアドレスを宛先IPアドレス、NAT11のMACアドレスを宛先MACアドレス、端末1−1のIPアドレスを送信元IPアドレス、端末1−1のMACアドレスを送信元MACアドレスとしたデータパケットを生成し、NAT11に向け転送する。
【0043】
(4)NAT11は、自身のMACアドレスを宛先MACアドレスとするデータパケットを受信する。受信パケットの宛先IPアドレスを入力キーとしてアドレス変換テーブル23を検索し、対応する端末の実IPアドレスを特定する。そして、NAT11は、端末1−6の実IPアドレスに対するARP要求をサブネット2内にブロードキャストする。
【0044】
(5)端末1−6は、自身のMACアドレスに対するARP要求を受信し、端末1−6のMACアドレスを格納したARP応答を返信する。
【0045】
(6)ARP応答を受信したNAT11は、先に受信していたデータパケットのIPヘッダを次のように書き換える。端末1−6の実IPアドレスを宛先IPアドレス、端末1−6のMACアドレスを宛先MACアドレス、アドレス変換テーブル23を検索し得られた端末1−1の擬似IPアドレスを送信元IPアドレス、NAT11のサブネット2側のインタフェースに付与されているMACアドレスを送信元MACアドレスに書き換える。そして、ヘッダを書き換えたデータパケットを端末1−6へ送信する。
【0046】
ここで、図9(A),(B),(C)にパケットの基本フォーマット、ARP要求フォーマット、ARP応答フォーマットそれぞれを示す。データパケットは図9(A)に示す基本フォーマットのイーサネット(登録商標)ヘッダ部のタイプが0x0800(0xは16進表示を表す)とされ、イーサネット(登録商標)ヘッダ部以降に図9(D)に示すフォーマットのデータが格納される。なお、図中、「00H」等におけるHは16進表示を表している。
【0047】
上記の説明では、2台のNATで2つのネットワークを接続していることを想定し、ハッシュ関数を用いた。これは、2台のNATに同一のアドレス変換テーブル23を登録する際に2台のNATで接続していることをアドレス変換情報データベース25に他のアドレス変換情報として登録してもよい。しかし、アクティブになっているNATを自動で発見することにより、設定の簡略化が図れると共に、NATの障害に対応することができる。
【0048】
例えば、各NATが、接続している各ネットワーク(実施形態では、サブネット1,2)に、自身がIDを格納した生存通知パケットを定期送信する。接続している2つのネットワークから同一IDの生存通知パケットを受信した場合、NATが存在していることが分かる。この同一IDの生存通知パケットの個数を数えることで、2つのネットワークを接続しているNATの台数を認識することができる。検出されたNATの台数とハッシュ値によりARP応答を受信するか否かを決める方法を行うことができる。
【0049】
更に、各NATがアドレス変換テーブル23の擬似IPアドレスを通知し合うことにより、NATを通過するトラヒックを分散させるか、させないかをコントロールすることができる。
【0050】
例えば、図10(A)に示すように、NAT11がアドレス変換テーブル23に端末1−10の擬似IPアドレスを保持しておらず、図10(B)に示すように、NAT12がアドレス変換テーブル23に端末1−6の擬似IPアドレスを保持していないものとする。図10の取り消し線は、そのアドレスが登録されていないことを示している。そして、NAT11は端末1−6〜1−9の擬似IPアドレスを、NAT12は端末1−7〜1−10の擬似IPアドレスをサブネット1にブロードキャストする。更に、NAT11、NAT12は、端末1−1〜1−5をサブネット2にブロードキャストする。NAT11はNAT12もアドレス変換情報を持つ端末1−7〜1−9のARP要求に対してのみハッシュ関数を用いて応答するか決定し、端末1−6のARP要求に対しては常に応答するようにできる。図10(A)における応答フラグ「1」は、ARP要求に対しては常に応答することを示している。
【0051】
同様に、NAT12も、NAT11もアドレス変換情報を持つ端末1−7〜1−9のARP要求に対してのみハッシュ関数を用いて応答するか決定し、端末1−10のARP要求に対しては常に応答するようにできる。図10(B)における応答フラグ「1」は、ARP要求に対しては常に応答することを示している。なお、図10(C)にNAT11及びNAT12における送信元アドレス変換テーブルを示す。
【0052】
<第2実施形態>
LLDP(Link Layer Discovery Protocol)やSNMP等のプロトコルを利用することで、イーサネット(登録商標)等のネットワークのトポロジーを把握し、各端末がどこにいるかを把握することができる。それらの情報を用いてARP要求に応答するか否かを決定することによって、最短経路でのデータ転送を実現できるようになる。
【0053】
各NATがサブネット1の端末と他のアドレス変換装置の該ネットワークへの接続位置を含むトポロジー情報をLLDPとSNMPから把握していた場合、各NATは、受信したARP要求の送信元MACアドレスから、ARP要求を送信した端末と全てのNATまでの距離を算出することができる。そこで、NATとARP送信端末との距離が最も短い場合のみ、ARP応答を返信することとすればよい。なお、距離としては例えばホップ数を用いる。この他にも距離として実際の距離や遅延時間を用いても良い。
【0054】
例えば、図4に示すトポロジーである場合、NAT11は、端末1−1〜1−3からのARP要求を受信したとき、ARP応答を返信する。NAT12は、端末1−4〜1−6からのARP要求を受信したとき、ARP応答を返信する。
【0055】
更に、各NATが接続する両方のサブネット1,2の端末と他のアドレス変換装置の該ネットワークへの接続位置を含むトポロジー情報をLLDPとSNMPから把握していた場合、各NATは、受信したARP要求の送信元MACアドレスと宛先IPアドレスから、ARP要求を送信した端末と宛先端末までの最短経路を算出することができる。その最短経路上のNATであった場合のみ、ARP応答を返信する。
【0056】
同様に、図4のトポロジーであると想定する。端末1−1が端末1−10の擬似IPアドレスに対するARP要求をブロードキャストした場合、NAT11とNAT12の両方でARP要求が受信される。NAT11とNAT12ともに、送信元MACアドレスとアドレス解決するターゲットIPアドレスから最短経路を算出する。なお、最短経路は例えばホップ数が最小の経路とする。LLDPはレイヤ2スイッチに接続されている端末のMACアドレスを取得することが可能である。更に、LLDPのオプション機能により、その端末のIPアドレスも取得することができる。もしIPアドレスが取得されていない場合、NAT11とNAT12共に、ターゲットIPアドレスに対するARP要求をサブネット2へブロードキャストしてMACアドレスを取得する。そして、送信元MACアドレスと宛先MACアドレスを用いて最短経路を算出する。算出した経路上に自身が存在している場合、そのNATのみがARP応答を返信する。この場合、端末1−1、レイヤ2スイッチ2−1,2−2,NAT11,レイヤ2スイッチ2−7,2−8,2−12,端末1−10が最短経路であるため、NAT11がARP応答を返信する。
【0057】
片側のサブネット1又は2のトポロジー情報等を収集した場合には、送信端末からNATまでの最短経路を、両側のサブネット1,2のトポロジー情報を収集した場合には、送信端末から宛先端末までの最短経路を算出することが可能になり、低遅延での転送及び無駄なトラヒック発生を回避することができる。
【0058】
なお、上記実施形態では、LLDPやSNMP等のプロトコルによってネットワークトポロジーを把握することを想定しているが、それだけではなく、手動による登録や図示しないネットワーク管理サーバによりトポロジーを各NATに入力してもよい。
【0059】
ここで、NAT11,12がネットワークトポロジーを把握する手順を以下で詳しく説明する。
【0060】
(11)NATは、LLDPを用いて直接接続されているレイヤ2スイッチを特定する。
【0061】
(12)LLDPで特定したレイヤ2スイッチに対して、当該レイヤ2スイッチに接続している他のレイヤ2スイッチ又は端末又はNATの情報をSNMPを用いて入手する。なお、レイヤ2スイッチは、事前に接続されている他のレイヤ2スイッチ、端末、NATの情報をLLDPを用いて特定している。
【0062】
(13)上記(12)のステップで得られた他のレイヤ2スイッチに対して、(2)と同様の処理を行う。
【0063】
(14)上記(13)のステップを繰り返し、サブネット1,2に接続されている全てのレイヤ2スイッチ、端末、NATの接続情報を獲得する。
【0064】
第2実施形態では第1実施形態の図8に示す(2)のステップを以下のように変更する。まず、送信端末とNAT間の距離(ホップ数)を利用する場合について説明する。
【0065】
(2−1)ARP要求を受信したNAT11,12は、自身が管理しているアドレス変換テーブルにARP要求の宛先IPアドレスに該当する擬似IPアドレスが登録されているかをチェックし、登録されていることを確認する。
【0066】
(2−2)各NAT11,12は、サブネット1の端末と他のアドレス変換装置の該ネットワークへの接続位置を含むトポロジー情報をLLDPとSNMPから把握している。各NAT11,12は、受信したARP要求の送信元MACアドレスから、ARP要求を送信した端末と全てのNATまでの距離を算出する。自NATと送信端末との距離が最も短い場合のみ、ARP応答を返信すると決定する。
【0067】
(2−3)ARP要求を返信するNATは、ターゲットIPアドレスつまり宛先IPアドレス(端末1−6の擬似IPアドレス)に対するMACアドレスとして自NATのMACアドレスを格納したARP応答つまりアドレス解決応答メッセージを返信する。
【0068】
本実施形態では、端末1−1からの距離がNAT12に対しNAT11の方が短いため、NAT11が選択され、NAT11がサブネット1側のインタフェースに付与されているMACアドレスをARP応答に格納して送信する。
【0069】
次に、送信元端末と宛先端末間の距離(ホップ数)を利用する場合について説明する。以下では、LLDPにより端末のIPアドレスが取得されておらず、MACアドレスのみが取得されている場合について説明する。
【0070】
(2−11)ARP要求を受信したNAT11とNAT12は、自身が管理しているアドレス変換テーブルにARP要求の宛先IPアドレスに該当する擬似IPアドレスが登録されているかをチェックし、登録されていることを確認する。
【0071】
(2−12)各NAT11,12は、受信したARP要求の送信元MACアドレスと宛先IPアドレスを抽出する。ARP要求の宛先IPアドレスは疑似IPアドレスであるため、各NAT11,12は、その疑似IPアドレスに対応する端末IPアドレス(実IPアドレス)を宛先アドレス変換テーブルから求める。その端末IPアドレスをターゲットIPアドレスつまり宛先IPアドレスとするARP要求をサブネット2へブロードキャストする。
【0072】
(2−13)ARP要求を受信した宛先端末は、自身のMACアドレスを格納したARP応答を返信する。
【0073】
(2−14)各NAT11,12は接続する両方のサブネット1,2の端末と他のアドレス変換装置の該ネットワークへの接続位置を含むトポロジー情報をLLDPとSNMPから把握している。そして、(2−11)のステップで受信したARP要求の送信元MACアドレスと、(2−13)のステップで受信したARP応答の宛先MACアドレスを用いて最短経路を算出する。算出した経路上に自身が存在している場合、ARP応答を返信することを決定する。
【0074】
(2−15)ARP要求を返信するNATは、ターゲットIPアドレスつまり宛先IPアドレス(端末1−6の擬似IPアドレス)に対するMACアドレスとして自NATのMACアドレスを格納したARP応答つまりアドレス解決応答メッセージを返信する。
【0075】
この実施形態では、送信元端末と宛先端末の最短経路上(端末1−1,レイヤ2スイッチ2−1,2−2,NAT11,レイヤ2スイッチ2−7,2−8,2−12,端末1−10)にNAT11が存在するため、NAT11が選択され、NAT11のサブネット1側のインタフェースに付与されているMACアドレスをARP応答に格納して送信する。
【0076】
<第3実施形態>
図11に複数のネットワークを接続した第3実施形態のネットワーク構成図を示す。図11において、サブネット1は端末1−1〜1−5、レイヤ2スイッチ2−1〜2−6を有し構成されている。また、サブネット2は端末1−6〜1−10、レイヤ2スイッチ2−7〜2−12を有し構成されている。
【0077】
サブネット1とサブネット2はIPアドレス空間が独立なネットワークであり、サブネット1とサブネット2はNAT41,42により接続される。なお、NAT41はレイヤ2スイッチ2−2,2−7に接続され、NAT42はレイヤ2スイッチ2−5,2−8に接続されている。
【0078】
NAT41,42は、サブネット1にある端末群とサブネット2にある端末群での通信を接続するため、アドレス変換テーブルを保持する。例えばNAT41,42は、端末1−6に対する擬似IPアドレスを保持する。この端末1−6の擬似IPアドレスはNAT41,42が属するサブネット1のIPアドレス空間で定義される。なお、サブネット1とサブネット2の間を3台以上のNATで接続する構成であっても良い。
【0079】
図11では、サブネット1内にARP応答を行うARP代理応答装置43を設け、ARP代理応答装置43は例えばレイヤ2スイッチ2−1に接続している。このように、サブネットワーク1内にNAT11とNAT12に代わりARP応答を行うARP代理応答装置23を設けることによって、NAT41、NAT42に第1実施形態で定義された機能を追加することなく、NATの転送処理の負荷分散、最短経路でのデータ転送を実現することができる。
【0080】
NAT41,42それぞれは図7に示すNAT11,12に対応するアドレス変換装置の構成のうち、アドレス変換テーブル23とパケット受信部31とパケット送信部32とアドレス変換部33を有し、NAT41,42それぞれは図12に示すように同一内容のアドレス変換テーブル23を保持している。そして、ARP代理応答装置43には、NAT41とNAT42のMACアドレス、及び、NAT41,42が保持しているサブネット1に属する擬似IPアドレスリストをアドレス変換情報データベース25に登録しておく。
【0081】
図13にARP代理応答装置43の一実施形態の構成図を示す。図13において、図7と同一部分には同一符号を付す。図13を図7と比較して分かるように、ARP代理応答装置43は図7のアドレス変換装置からパケット受信部31とパケット送信部32とアドレス変換部33を取り去った構成である。
【0082】
ただし、ARP要求・応答メッセージ生成部29−1は、自装置のMACアドレスではなく、次のルールのうちいずれかの手法により得られたアドレス変換装置41,42に割り当てられたMACアドレスをARP応答メッセージに格納するターゲットMACアドレスとして用いる点が異なる。
【0083】
第1のルールでは、ARP要求メッセージの送信元MACアドレスを入力としてハッシュ関数で得られたハッシュ値等の結果によってアドレス解決装置を決定する。
【0084】
第2のルールでは、ARP要求メッセージの送信端末との距離が最短であるアドレス変換装置を決定する。
【0085】
第3のルールでは、ARP要求メッセージの送信端末とターゲットIPアドレスで示された擬似IPアドレスに対応する端末(宛先端末)との最短距離上にあるアドレス変換装置を決定する。
【0086】
<サブネット1,2間のパケット転送動作>
図14を用いてサブネット1の端末1−1からサブネット2の端末1−6にパケットを転送する動作について説明する。以下の説明の括弧付き数字は図14の括弧付き数字と対応している。
【0087】
(1)端末1−1は、端末1−6の擬似IPアドレスに対するARP要求をサブネット1内にブロードキャストする。
【0088】
(2)NAT41及びNAT42は、アドレス変換テーブル23に登録されている擬似アドレスであってもARP要求に対する応答を返信しない。ARP要求を受信したARP代理応答装置43は、保持している擬似アドレスリストにARP要求の宛先IPアドレスに該当する擬似IPアドレスが登録されているかをチェックし、登録されていることを確認する。そして、ARP要求の送信元MACアドレスを入力キーにハッシュ関数を用いてハッシュ値を求める。そのハッシュ値に従い、ARP要求を返信するか、無視するかを決定する。
【0089】
簡単な例としては、本実施形態では2台のNATでネットワークを接続していることから、送信元MACアドレスを2で割り、その余りをハッシュ値とする。そして、ハッシュ値が0の場合はNAT41が、1の場合にはNAT42の代理としてARP要求に返信する。ARP要求の代理返信する際に、使用するARP応答は、ターゲットIPアドレス(端末1−6の擬似IPアドレス)に対するMACアドレスとして、代理をするNATのMACアドレスを格納したARP応答を返信する。本実施形態では、ハッシュ値によりNAT41が選択され、ARP代理応答装置43はNAT41のMACアドレスをARP応答に格納して送信する。
【0090】
(3)ARP応答を受信した端末1−1は、端末1−6の擬似IPアドレスを宛先IPアドレス、NAT41のMACアドレスを宛先MACアドレス、端末1−1のIPアドレスを送信元IPアドレス、端末1−1のMACアドレスを送信元MACアドレスとしたデータパケットを生成し、NAT41に向け転送する。
【0091】
(4)NAT41は、自身のMACアドレスを宛先MACアドレスとするデータパケットを受信する。受信パケットの宛先IPアドレスを入力キーとしてアドレス変換テーブル23を検索し、対応する端末の実IPアドレスを特定する。そして、NAT41は、端末1−6の実IPアドレスに対するARP要求をサブネット2内にブロードキャストする。
【0092】
(5)端末1−6は、自身のMACアドレスに対するARP要求を受信し、端末1−6のMACアドレスを格納したARP応答を返信する。
【0093】
(6)ARP応答を受信したNAT41は、先に受信していたデータパケットのIPヘッダを次のように書き換える。端末1−6の実IPアドレスを宛先IPアドレス、端末1−6のMACアドレスを宛先MACアドレス、アドレス変換テーブル23を検索し得られた端末1−1の擬似IPアドレスを送信元IPアドレス、NAT41のサブネット2側のインタフェースに付与されているMACアドレスを送信元MACアドレスに書き換える。そして、ヘッダを書き換えたデータパケットを端末1−6へ送信する。
【0094】
なお、第1実施形態と処理が異なるのは、(2)のステップだけである。上記の処理により、既存のNAT装置に対して拡張を行わずに、ARP代理応答装置43を用いることによって、NATの負荷分散を図ることができる。
【0095】
更に、第2実施形態と同様に、ARP代理応答装置43が、予めサブネット1の端末と他のアドレス変換装置の該ネットワークへの接続位置を含むトポロジー情報をLLDPとSNMPから収集し、受信したARP要求の送信元MACアドレスから、ARP要求を送信した端末と全てのNATまでの距離を算出することによって、送信端末と最短になるNATにデータ転送をさせることが可能になる。つまり、ARP代理応答端末がARP要求を受信したステップ2において、受信したARP要求の送信元MACアドレスから、ARP要求を送信した端末と全てのNATまでの距離を算出し、ARP送信端末との距離が最も短いNATを選択する。そのNATのMACアドレスをターゲットIPアドレスつまり宛先IPアドレスに対するMACアドレスとしてARP応答を返信することによって、送信端末が最短になるNATに向けてデータを送信するようにさせることが可能になる。
【0096】
<第4実施形態>
図15に複数のネットワークを接続した第4実施形態のネットワーク構成図を示す。図15では図11に対し、ARP応答を行うARP代理応答装置43を設け、ARP代理応答装置43をサブネット1のレイヤ2スイッチ2−1とサブネット2のレイヤ2スイッチ2−7に接続する点が異なっている。
【0097】
NAT41,42それぞれは図12に示す同一内容のアドレス変換テーブル23を保持している。そして、ARP代理応答装置43には、NAT41とNAT42のMACアドレス、及び、NAT41,42が保持しているサブネット1,2に属する擬似IPアドレスリストをアドレス変換情報データベース25に登録しておく。
【0098】
ARP代理応答装置43は、第2実施形態のNATと同様に、LLDP及びSNMPを用いて、予めサブネット1及びサブネット2の両方の端末と他のアドレス変換装置の該ネットワークへの接続位置を含むトポロジー情報を収集しておく。トポロジー情報はLLDPで収集されたレイヤ2スイッチの各ポートに接続されている端末やレイヤ2スイッチの属性情報により把握される。また、端末やNATの位置情報は、少なくともレイヤ2スイッチの接続ポートと端末のMACアドレスから成っている。これらの情報を、SNMPを用いて収集することで、サブネット全体のトポロジーを把握することができる。
【0099】
<サブネット1,2間のパケット転送動作>
図16を用いてサブネット1の端末1−1からサブネット2の端末1−6にパケットを転送する動作について説明する。以下の説明の括弧付き数字は図16の括弧付き数字と対応している。
【0100】
(1)端末1−1は、端末1−6の擬似IPアドレスに対するARP要求をサブネット1内にブロードキャストする。
【0101】
(2)NAT41及びNAT42は、アドレス変換テーブル23に登録されている擬似アドレスであってもARP要求に対する応答を返信しない。ARP要求を受信したARP代理応答装置43が、NAT41あるいはNAT42に代わって以下の処理を行い、ARP応答を返信する。
【0102】
(2−1)ARP代理応答装置43は、保持している擬似アドレスリストにARP要求の宛先IPアドレスに該当する擬似IPアドレスが登録されているかをチェックし、登録されていることを確認する。
【0103】
(2−2)ARP代理応答装置43は、受信したARP要求の送信元MACアドレスと宛先IPアドレスを抽出する。ARP代理応答装置43は、ARP要求のIPアドレスは疑似IPアドレスであるため、それに対応する端末IPアドレスを宛先アドレス変換テーブル23から求める。その端末IPアドレスをターゲットIPアドレスとするARP要求をサブネット2へブロードキャストする。
【0104】
(2−3)ARP要求を受信した宛先端末は、自身のMACアドレスを格納したARP応答返信する。
【0105】
(2−4)ARP代理応答装置43は接続する両方のサブネット(サブネット1及びサブネット2)の端末と他のアドレス変換装置の該ネットワークへの接続位置を含むトポロジー情報をLLDPとSNMPから把握している。そして、(2−1)のステップで受信したARP要求の送信元MACアドレスと、(2−3)のステップで受信したARP応答の宛先MACアドレスを用いて最短経路を算出する。算出した経路上に存在しているNATのMACアドレスを格納したARP応答を送信する。
【0106】
(3)ARP応答を受信した端末1−1は、端末1−6の擬似IPアドレスを宛先IPアドレス、NAT41のMACアドレスを宛先MACアドレス、端末1−1のIPアドレスを送信元IPアドレス、端末1−1のMACアドレスを送信元MACアドレスとしたデータパケットを生成し、NAT41に向け転送する。
【0107】
(4)NAT41は、自身のMACアドレスを宛先MACアドレスとするデータパケットを受信する。受信パケットの宛先IPアドレスを入力キーとしてアドレス変換テーブル23を検索し、対応する端末の実IPアドレスを特定する。そして、NAT41は、端末1−6の実IPアドレスに対するARP要求をサブネット2内にブロードキャストする。
【0108】
(5)端末1−6は、自身のMACアドレスに対するARP要求を受信し、端末1−6のMACアドレスを格納したARP応答を返信する。
【0109】
(6)ARP応答を受信したNAT41は、先に受信していたデータパケットのIPヘッダを次のように書き換える。端末1−6の実IPアドレスを宛先IPアドレス、端末1−6のMACアドレスを宛先MACアドレス、アドレス変換テーブル23を検索し得られた端末1−1の擬似IPアドレスを送信元IPアドレス、NAT41のサブネット2側のインタフェースに付与されているMACアドレスを送信元MACアドレスに書き換える。そして、ヘッダが書き換えられたデータパケットを端末1−6へ送信する。
【0110】
なお、第3実施形態と処理が異なるのは、(2)のステップだけである。上記の処理により、既存のNAT装置に対して拡張を行わずに、ARP代理応答装置43を用いることによって、NATの負荷分散を図ることができる。
【0111】
なお、複数のNATのうち、予め決められた一台のNATがアドレス解決代理応答装置43として振舞ってもよい。あるいは、第1実施形態で説明した生存通知メッセージで通知されたアドレス変換装置から何らかのルールにより自動で選出されてもよい。例えば、上記ルールとして、最も値の小さいIDを有するアドレス変換装置がアドレス解決代理応答装置43と選出されるというルール等がある。
(付記1)
独立したアドレス空間を持つ2つのネットワークを複数台で接続し、一方のネットワークの実アドレスに対する他方のネットワークの擬似アドレスの対応情報をアドレス変換手段に持つアドレス変換装置であって、
自装置が前記アドレス変換手段に持つ擬似アドレスに対するアドレス変換要求を受信するアドレス変換要求受信手段と、
受信したアドレス変換要求の送信元アドレスを基に、予め定められたルールに従って前記アドレス変換要求に応答するかしないかを決定するアドレス解決応答決定手段と、
前記アドレス解決応答決定手段の決定に基づいて前記アドレス変換要求に対する応答を行う応答手段と、
を有することを特徴とするアドレス変換装置。
(付記2)
一方のネットワークの実アドレスに対する他方のネットワークの擬似アドレスの対応情報をアドレス変換手段に持つ複数のアドレス変換装置により、独立したアドレス空間を持つ2つのネットワークを接続し、前記複数のアドレス変換装置の代りにアドレス変換要求に対する応答を行うアドレス変換代理応答装置であって、
前記複数のアドレス変換装置が前記アドレス変換手段に持つ擬似アドレスを格納する擬似アドレス格納手段と、
前記複数のアドレス変換装置が前記アドレス変換手段に持つ擬似アドレスに対するアドレス変換要求を受信するアドレス変換要求受信手段と、
受信したアドレス変換要求の送信元アドレスを基に、予め定められたルールに従って前記アドレス変換要求に応答するアドレス変換装置を決定するアドレス解決応答決定手段と、
前記アドレス解決応答決定手段で決定されたアドレス変換装置のアドレスを前記アドレス変換要求に対する応答に格納して応答する応答手段と、
を有することを特徴とするアドレス変換代理応答装置。
(付記3)
一方のネットワークの実アドレスに対する他方のネットワークの擬似アドレスの対応情報をアドレス変換手段に持つ複数のアドレス変換装置により、独立したアドレス空間を持つ2つのネットワークを接続し、前記複数のアドレス変換装置の代りにアドレス変換要求に対する応答を行うアドレス変換方法であって、
各アドレス変換装置は、
自装置が前記アドレス変換手段に持つ擬似アドレスに対するアドレス変換要求を受信し、
受信したアドレス変換要求の送信元アドレスを基に、予め定められたルールに従って前記アドレス変換要求に応答するかしないかを決定し、
前記アドレス変換要求に応答するかしないかの決定に基づいて前記アドレス変換要求に対する応答を行う、
ことを特徴とするアドレス変換方法。
(付記4)
一方のネットワークの実アドレスに対する他方のネットワークの擬似アドレスの対応情報をアドレス変換手段に持つ複数のアドレス変換装置により、独立したアドレス空間を持つ2つのネットワークを接続し、前記複数のアドレス変換装置の代りにアドレス変換要求に対する応答を行うアドレス変換代理応答方法であって、
前記複数のアドレス変換装置が前記アドレス変換手段に持つ擬似アドレスを格納しておき、
前記複数のアドレス変換装置が前記アドレス変換手段に持つ擬似アドレスに対するアドレス変換要求を受信し、
受信したアドレス変換要求の送信元アドレスを基に、予め定められたルールに従って前記アドレス変換要求に応答するアドレス変換装置を決定し、
前記アドレス変換要求に応答すると決定されたアドレス変換装置のアドレスを前記アドレス変換要求に対する応答に格納して応答する、
ことを特徴とするアドレス変換代理応答方法。
(付記5)
付記1記載のアドレス変換装置において、
前記アドレス解決応答決定手段は、前記アドレス変換要求の送信元アドレスのハッシュ演算結果から前記アドレス変換要求に応答するかしないかを決定する
ことを特徴とするアドレス変換装置。
(付記6)
付記1記載のアドレス変換装置において、
自装置に接続されたネットワークのトポロジー情報を格納したトポロジー格納手段を有し、
前記アドレス解決応答決定手段は、前記アドレス変換要求の送信元アドレスを基に、前記アドレス変換要求の送信端末との距離を算出し、前記アドレス変換要求の送信端末と自装置との距離が最短の場合に前記アドレス変換要求に応答することを決定する
ことを特徴とするアドレス変換装置。
(付記7)
付記1記載のアドレス変換装置において、
自装置に接続されたネットワークのトポロジー情報を格納したトポロジー格納手段を有し、
前記アドレス解決応答決定手段は、前記アドレス変換要求の送信元アドレスと宛先アドレスを基に、前記アドレス変換要求の送信端末と宛先端末との最短経路を算出し、その経路上に自装置が存在する場合に前記アドレス変換要求に応答することを決定する
ことを特徴とするアドレス変換装置。
(付記8)
付記7記載のアドレス変換装置において、
前記アドレス解決応答決定手段は、前記アドレス変換手段を用いて前記アドレス変換要求の宛先アドレスを実アドレスに変換し、変換した実アドレスに対する新たなアドレス変換要求を前記一方のネットワークに送信し、
前記新たなアドレス変換要求に対する応答に格納されている宛先アドレスと、最初に受信したアドレス変換要求の送信元アドレスを基に、前記最初に受信したアドレス変換要求の送信端末と宛先端末との最短経路を算出する
ことを特徴とするアドレス変換装置。
(付記9)
付記6又は7記載のアドレス変換装置において、
前記トポロジー格納手段は、前記自装置に接続されたネットワークのトポロジー情報を外部のネットワーク管理サーバから設定される
ことを特徴とするアドレス変換装置。
(付記10)
付記6又は7記載のアドレス変換装置において、
前記ネットワークを構成するスイッチとスイッチの間、スイッチと端末の間、スイッチとアドレス変換装置の間それぞれの接続関係を発見するプロトコルの管理情報を収集して、前記自装置に接続されたネットワークのトポロジー情報を前記トポロジー格納手段に格納する手段を
有することを特徴とするアドレス変換装置。
(付記11)
付記1又は5乃至10のいずれか1項記載のアドレス変換装置において、
自装置アドレスを格納した生存通知をネットワークに送信する生存通知手段と、
他のアドレス変換装置から送信された生存通知を受信してネットワークを接続しているアドレス変換装置台数を認識する手段を
有することを特徴とするアドレス変換装置。
(付記12)
付記1又は5乃至11のいずれか1項記載のアドレス変換装置において、
自装置の前記アドレス変換手段に持つ擬似アドレスを格納したアドレスリストを送信するアドレスリスト送信手段と、
他のアドレス変換装置から送信されたアドレスリストを受信し、前記アドレスリストの擬似アドレスを格納する擬似アドレス格納手段を
有することを特徴とするアドレス変換装置。
(付記13)
付記2記載のアドレス変換代理応答装置において、
前記アドレス解決応答決定手段は、前記アドレス変換要求の送信元アドレスのハッシュ演算結果から前記アドレス変換要求に応答するアドレス変換装置を決定する
ことを特徴とするアドレス変換代理応答装置。
(付記14)
付記2記載のアドレス変換代理応答装置において、
自装置に接続されたネットワークのトポロジー情報を格納したトポロジー格納手段を有し、
前記アドレス解決応答決定手段は、前記アドレス変換要求の送信元アドレスを基に、前記アドレス変換要求の送信端末と各アドレス変換装置との距離を算出し、前記アドレス変換要求の送信端末との距離が最短のアドレス変換装置を前記アドレス変換要求に応答するアドレス変換装置として決定する
ことを特徴とするアドレス変換代理応答装置。
(付記15)
付記2記載のアドレス変換代理応答装置において、
自装置に接続されたネットワークのトポロジー情報を格納したトポロジー格納手段を有し、
前記アドレス解決応答決定手段は、前記アドレス変換要求の送信元アドレスと宛先アドレスを基に、前記アドレス変換要求の送信端末と宛先端末との最短経路を算出し、その経路上に存在するアドレス変換装置を前記アドレス変換要求にアドレス変換装置として決定する
ことを特徴とするアドレス変換代理応答装置。
【符号の説明】
【0112】
1,2 サブネット
1−1〜1−10 端末
2−1〜2−12 レイヤ2スイッチ
11,12,41,42 NAT
21 ARP要求・応答メッセージ送受信部
22 アドレス解決応答決定部
23 アドレス変換テーブル
24 トポロジーデータベース
25 アドレス変換情報データベース
26 トポロジー収集部
27 広告メッセージ送受信部
28 アドレス変換情報広告処理部
29 ARP要求・応答メッセージ生成部
31 パケット受信部
32 パケット送信部
33 アドレス変換部
43 ARP代理応答装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立したアドレス空間を持つ2つのネットワークを複数台で接続し、一方のネットワークの実アドレスに対する他方のネットワークの擬似アドレスの対応情報をアドレス変換手段に持つアドレス変換装置であって、
自装置が前記アドレス変換手段に持つ擬似アドレスに対するアドレス変換要求を受信するアドレス変換要求受信手段と、
受信したアドレス変換要求の送信元アドレスを基に、予め定められたルールに従って前記アドレス変換要求に応答するかしないかを決定するアドレス解決応答決定手段と、
前記アドレス解決応答決定手段の決定に基づいて前記アドレス変換要求に対する応答を行う応答手段と、
を有することを特徴とするアドレス変換装置。
【請求項2】
一方のネットワークの実アドレスに対する他方のネットワークの擬似アドレスの対応情報をアドレス変換手段に持つ複数のアドレス変換装置により、独立したアドレス空間を持つ2つのネットワークを接続し、前記複数のアドレス変換装置の代りにアドレス変換要求に対する応答を行うアドレス変換代理応答装置であって、
前記複数のアドレス変換装置が前記アドレス変換手段に持つ擬似アドレスを格納する擬似アドレス格納手段と、
前記複数のアドレス変換装置が前記アドレス変換手段に持つ擬似アドレスに対するアドレス変換要求を受信するアドレス変換要求受信手段と、
受信したアドレス変換要求の送信元アドレスを基に、予め定められたルールに従って前記アドレス変換要求に応答するアドレス変換装置を決定するアドレス解決応答決定手段と、
前記アドレス解決応答決定手段で決定されたアドレス変換装置のアドレスを前記アドレス変換要求に対する応答に格納して応答する応答手段と、
を有することを特徴とするアドレス変換代理応答装置。
【請求項3】
一方のネットワークの実アドレスに対する他方のネットワークの擬似アドレスの対応情報をアドレス変換手段に持つ複数のアドレス変換装置により、独立したアドレス空間を持つ2つのネットワークを接続し、前記複数のアドレス変換装置の代りにアドレス変換要求に対する応答を行うアドレス変換方法であって、
各アドレス変換装置は、
自装置が前記アドレス変換手段に持つ擬似アドレスに対するアドレス変換要求を受信し、
受信したアドレス変換要求の送信元アドレスを基に、予め定められたルールに従って前記アドレス変換要求に応答するかしないかを決定し、
前記アドレス変換要求に応答するかしないかの決定に基づいて前記アドレス変換要求に対する応答を行う、
ことを特徴とするアドレス変換方法。
【請求項4】
一方のネットワークの実アドレスに対する他方のネットワークの擬似アドレスの対応情報をアドレス変換手段に持つ複数のアドレス変換装置により、独立したアドレス空間を持つ2つのネットワークを接続し、前記複数のアドレス変換装置の代りにアドレス変換要求に対する応答を行うアドレス変換代理応答方法であって、
前記複数のアドレス変換装置が前記アドレス変換手段に持つ擬似アドレスを格納しておき、
前記複数のアドレス変換装置が前記アドレス変換手段に持つ擬似アドレスに対するアドレス変換要求を受信し、
受信したアドレス変換要求の送信元アドレスを基に、予め定められたルールに従って前記アドレス変換要求に応答するアドレス変換装置を決定し、
前記アドレス変換要求に応答すると決定されたアドレス変換装置のアドレスを前記アドレス変換要求に対する応答に格納して応答する、
ことを特徴とするアドレス変換代理応答方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−156656(P2012−156656A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12367(P2011−12367)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】