説明

アナストロゾール中間体の不純物及びその使用

アナストロゾールにおける不純物の決定のための対照マーカー及び対照標準が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、“不純物A”として言及されるアナストロゾール(Anastrozole)中間体の不純物、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
化学名称1,3−ベンゼンジアセトニトリル−α,α,α',α',−テトラメチル−5−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)及び下記化学構造:
【0003】
【化1】

【0004】
を有するアナストロゾールは、末梢組織において副腎アンドロゲンをエストロゲンに転換するアロマターゼ(エストロゲンシンターゼ)の有能且つ選択的非ステロイド性インヒビターである。それは、閉経後の女性において、進行した又は局部的に進行した乳癌の処理に、及び初期乳癌における補助処理として使用される。この薬剤は、AstrazenecaによりARIMIDEX(商標)として経口投与のために市販されている。
【0005】
合成化合物のように、アナストロゾールは、多くの源に起因する外来性化合物又は不純物を含むことができる。それらは、未反応の開始材料、反応の副産物、副反応の生成物、又は分解生成物であり得る。アナストロゾール又はいずれかの活性医薬成分(API)における不純物は所望されず、そして極端な場合、APIを含む投与形により処理される患者にとって有害であり得る。
【0006】
APIにおける不純物が、貯蔵、及び製造工程、例えば化学合成の間、純粋なAPIの安定性に関連する、API自体の分解から発生することもまた知られている。加工不純物は、未反応出発材料、出発材料に含まれる不純物の化学的誘導体、合成副産物、及び分解生成物を包含する。
【0007】
APIの保存寿命における因子である安定性の他に、商業的製造工程において生成されるAPIの純度は明らかに商業化のための必要な条件である。商業的製造工程の間に導入される不純物は、非常に少量に制限されるべきであり、そして好ましくは実質的に不在である。例えば、API製造のためのICH Q7Aガイダンスは、加工不純物が、原料の品質を特定し、加工パラメーター、例えば温度、圧力、時間、及び理論的比率を調節し、そして製造工程に精製段階、例えば結晶化、蒸留及び液体−液体抽出を包含することにより、設定限界以下に維持されることを必要とする。
【0008】
化学反応の生成物混合物は、医薬標準に適合するのに十分な純度を有する単一の化合物であることはまれである。反応の副生成物及び副産物、及び反応に使用される添加剤試薬はまた、ほとんどの場合、生成物混合物に存在するであろう。API、例えば(S)−アナストロゾールの加工の間、一定の段階で、連続した加工のために、及び究極的には、医薬製品への使用のために適切であるかどうかを決定するために、典型的にはHPLC又はTLC分析により純度について分析されるべきである。APIは、絶対的純度は、典型的には達成できない理論的理想であるので、絶対的に純粋である必要はない。むしろ、純度標準は、APIができるだけ不純物を有さず、そして従って、臨床使用のためにできるだけ安全であることの確保のために設定される。上記で論じられたように、アメリカ合衆国において、食品医薬品局のガイドラインは、いくつかの不純物の量が0.1%以下に制限されることを推薦している。
【0009】
一般的に、副生成物、副産物及び添加試薬(集合的には、“不純物”)は、分光的に、及び/又は他の物理的方法により同定され、そして次に、ピーク位置、例えばクロマトグラムにおけるその位置、又はTLCプレート上のスポットと結びつけられる。(S trobel p.953, Strobel, H.A.; Heineman, W.R. Chemical Instrumentations A Systematic Approach, 3rd ed. (Wiley & Sons: New York 1989))。その後、不純物は、例えばTLCプレート上のその相対的位置により同定され得、そしてプレート上の位置はプレートの基線からのcmで又はHPLCのクロマトグラムにおけるその相対的位置により測定され、ここでクロマトグラムにおける位置は、カラム上へのサンプルの注入と、検出器を通しての特定成分の溶出との間で、分として従来、測定される。クロマトグラムにおけるその相対的位置は、“保持時間”として知られている。
【0010】
保持時間は、計測の条件、及び多くの他の要因に基づいて平均値に関して変化することができる。不純物の正確な同定に基づいて、そのような変動が有する効果を軽減するために、実施者は、不純物を同定するために“保持時間比”(“RRT”)(Strobel p.922)を使用する。不純物のRRTは、対照マーカーの保持時間により割り算されたその保持時間である。検出できるほど十分に多く、そしてカラムを飽和しないほど十分に低い量で混合物に添加されるか、又はその混合物に存在するAPI以外の化合物を選択し、そしてRRTの決定のために対照マーカーとしてその化合物を使用することが好都合である。
【0011】
薬剤製造研究及び開発の当業者は、比較的純粋な状態での化合物が“対照標準”として使用され得ることを理解している。対照標準は、単なる定性分析のために使用されるが、しかし未知の混合物における対照標準の化合物の量を定量化するためにも使用される参照マーカーに類似する。対照標準は、既知濃度の対照標準の溶液及び未知の混合物が、同じ技法を用いて分析される場合、“外部標準”である(Strobel p.924, Snyder p.549, Snyder, L. R. ; Kirkland, J. J. Introduction to Modern Liquid Chramatography, 2nd ed. (John wiley & Sons: New York 1979))。混合物中の化合物の量は、検出器応答の大きさを比較することにより決定され得る。また、引用により本明細書に組込まれるアメリカ特許第6,333,198号を参照のこと。
【0012】
対照標準はまた、2種の化合物に対する検出器の感受性の差異を補充する“応答因子”が前もって決定されている場合、混合物におけるもう1つの化合物の量を定量化するためにも使用され得る(Strobel p.894)。このために、対照標準が混合物に直接的に添加され、そして“内部標準”として知られている(Strobel p.925, Snyder p.552)。
対照標準は、対照標準の意図した添加を伴わないで、未知の混合物が、“標準添加”として知られている技法を用いて、検出できる量の対照標準化合物を含む場合、内部標準として作用することができる。
【0013】
“標準添加技法”においては、少なくとも2種のサンプルが、既知の及び異なった量の内部標準を添加することにより調製される(Strobel pp.391-393, Snyder pp.571, 572)。添加を伴わないでの混合物に存在する対照標準のために検出器応答の割合は、個々のサンプルに添加される対照標準の量に対する検出器応答をプロットし、そしてゼロ濃度の対照標準に対するプロットを外挿することにより決定され得る(例えば、Strobel, 図11. 4 p.392を参照のこと)。HPLCにおける検出器の応答(例えば、UV検出器又は屈折率検出器)は、HPLCカラムから溶出する個々の化合物に関して、典型的には異なる。既知のような応答因子は、カラムから溶出する異なった化合物に対する検出器の応答シグナルにおけるこの差異を説明する。
【0014】
当業者に知られているように、加工不純物の管理は、それらの化学構造及び合成路を理解することにより、及び最終生成物における不純物の量に影響を及ぼすパラメーターを同定することにより、非常に増強される。
対照標準の検出又は定量化は、API又は中間体の純度のレベルを確立するよう作用する。標準としての化合物の使用は、実質的に純粋な化合物のサンプルへの依存を必要とする。
【発明の開示】
【0015】
発明の要約
1つの観点においては、本発明は、新規に単離された不純物A、 すなわち下記式:
【化2】

【0016】
で表される2,3−ビス−[3−(シアノ−ジメチル−メチル)−5−メチル‐フェニル]−2−メチル−プロピオニトリルを提供する。
もう1つの観点においては、本発明は、対照マーカーとして不純物Aを用いて、HPLC又はTLCを実施することを含んで成る、サンプルにおける化合物の存在の決定方法を提供する。
【0017】
さらにもう1つの観点においては、本発明は、対照マーカーとして不純物Aを用いて、HPLC又はTLCを実施することを含んで成る、サンプルにおける不純物Aの存在の決定方法を提供する。特に、この方法は、
(a)不純物Aを含んで成る対照マーカーにおける不純物Aに対応する保持時間をHPLC又はTLCにより決定し;
(b)3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエン及び不純物Aを含んで成るサンプルにおける不純物Aに対応する保持時間をHPLC又はTLCにより決定し;そして
(c)段階(b)の保持時間と、段階(a)の保持時間とを比較することにより、サンプルにおける不純物Aの存在を決定することを含んで成る。
【0018】
1つの観点においては、本発明は、対照標準として不純物Aを用いて、HPLC又はTLCを実施することを含んで成る、サンプルにおける化合物の量の決定方法を提供する。
もう1つの観点においては、本発明はまた、
(a)3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンの1又は複数のバッチの1又は複数のサンプルを入手し;
(b)前記個々のサンプルにおける不純物Aのレベルを測定し;
(c)前記バッチからのサンプルの測定に基づいて、HPLCによれば約0.10面積%以下の不純物Aのレベルを有する段階(a)からのバッチを選択し;そして
(d)選択されたバッチを用いて、アナストロゾールを調製する段階を含んで成る、HPLCによれば約0.10面積%以下の不純物Aを有する3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンからアナストロゾールを調製するための方法を提供する。
【0019】
さらにもう1つの観点においては、本発明は、5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンサンプルと水とを組合し、溶液を得;前記得られる溶液を100mm×4.6mmのHYPERSIL BOS C18(又は類似する)カラムに注入し;溶解剤として水(溶離剤Aとして、本明細書においては言及される)及びアセトニトリル(溶離剤Bとして、本明細書においては言及される)を用いて、約35分で前記カラムからサンプルを溶出し;そして前記適切なサンプルにおける不純物A含有量を、UV検出器(好ましくは、210nmの波長で)により測定することを含んで成る、3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンにおける不純物Aの存在及び量を決定するために使用されるHPLC方法を提供する。
【0020】
1つの態様においては、本発明は、本発明の方法により製造されたアナストロゾール、及び医薬的許容できる賦形剤を含んで成る医薬組成物を提供する。
もう1つの態様においては、本発明は、本発明の方法により製造されたアナストロゾール、及び医薬的許容できるキャリヤーを混合することを含んで成る医薬製剤の調製方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
発明の特定の記載
3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンに関して、用語“実質的に純粋な”とは、HPLCにより約0.10%面積以下の不純物Aを含む3,5−ビス(2−シクロイソプロピル)トルエンを意味する。
アナストロゾールに関して、用語“実質的に純粋な”とは、下記に定義されるように、HPLCにより約0.10%面積以下の不純物Bを含むアナストロゾールを意味する。
【0022】
本発明は、新しく単離された不純物、すなわち下記式:
【化3】

【0023】
で表される2,3−ビス[3−(シアノ−ジメチル−メチル)−5−メチル‐フェニル]−2−メチル‐プロピオニトリルを提供する。
“不純物A”として言及されるこの不純物は、アナストロゾール中間体、すなわち下記式I:
【0024】
【化4】

で表される3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンを汚染する。
【0025】
それは、式Iの3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンに関して、約1.53でのRRT、及び/又は約406でm/zピークを有するM/Sスペクトルから成る群から選択されたデータにより特徴づけられる。
【0026】
不純物Aは、溶離剤としてヘプタン及び酢酸エチルの混合物を用いてカラムクロマトグラフィーにより単離され得る。好ましくは、溶離剤は、それぞれ約9:1の比でのヘプタン:酢酸エチルを含む。好ましくは、不純物Aは、HPLCによれば約0%〜約10%面積の式Iの3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンを含む。
不純物Aが、アナストロゾールを調製するための反応の間、式Iの3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンから、次の構造:
【0027】
【化5】

【0028】
[式中、R及びR’は独立して、H又は1,2,4−トリアゾールであり得る]で表される、“不純物B”として言及されるアナストロゾールを汚染する不純物に転換することが、本発明者により見出された。不純物Bへの不純物Aの転換は、次のスキームにより示される:
【0029】
【化6】

【0030】
前記転換は、不純物Aの量が不純物Bの量に非常に類似するような態容で存在する。さらに、この不純物はアナストロゾールに対する類似する溶解性により特徴付けられるので、それをアナストロゾールから分離し、そして従って、それを対照マーカー及び標準として使用することは困難である。従って、本発明者は、不純物Aが出発材料、すなわち式Iの3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンから、より容易に且つより効果的に分離され得ることを見出した事実と、上記知識との組合せが、対照マーカー及び対照標準としてのその使用を、より魅力的にする。
【0031】
本発明はさらに、対照マーカーとして不純物Aを用いて、HPLC又はTLCを実施することを含んで成る、サンプルにおける化合物の存在の決定方法を提供する。
【0032】
本発明はまた、対照マーカーとして不純物Aを用いて、HPLC又はTLCを実施することを含んで成る、サンプルにおける不純物Aの存在を決定するため方法を提供する。特に、この方法は、
(a)不純物Aを含んで成る対照マーカーにおける不純物Aに対応する保持時間をHPLC又はTLCにより決定し;
(b)3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエン及び不純物Aを含んで成るサンプルにおける不純物Aに対応する保持時間をHPLC又はTLCにより決定し;そして
(c)段階(b)の保持時間と、段階(a)の保持時間とを比較することにより、サンプルにおける不純物Aの存在を決定することを含んで成る。
【0033】
本発明は、対照標準として不純物Aを用いて、HPLC又はTLCを実施することを含んで成る、サンプルにおける化合物の量の決定方法を提供する。
本発明はまた、HPLC又はTLCを実施することを含んで成る、サンプルにおける対照標準として使用される不純物Aの量を定量化するための方法を提供する。特に、この方法は、
(a)既知量の不純物Aを含んで成る対照標準において不純物Aに対応するピーク下の面積を、HPLC又はTLCにより測定し;
(b)不純物A及び3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンを含んで成るサンプルにおける不純物Aに対応するピーク下の面積を、HPLC又はTLCにより測定し;そして
(c)段階(b)の面積と、段階(a)の面積とを比較することにより、サンプルにおける不純物Aの量を決定する段階を含んで成る。
【0034】
本発明はまた、
(a)3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンの1又は複数のバッチの1又は複数のサンプルを入手し;
(b)前記個々のサンプルにおける不純物Aのレベルを測定し;
(c)前記バッチからのサンプルの測定に基づいて、HPLCによれば約0.10面積%以下の不純物Aのレベルを有する段階(a)からのバッチを選択し;そして
(d)選択されたバッチを用いて、アナストロゾールを調製する段階を含んで成る、HPLCによれば約0.10面積%以下の不純物Aを有する3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンからアナストロゾールを調製するための方法を提供する。
【0035】
段階(b)において測定されるレベルがHPLCによれば約0.10面積%により高い場合、前記方法はさらに、当業界において知られているいずれかの手段、例えば3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンがC6-9芳香族炭化水素及びC2-8エーテルから成る群から選択された溶媒から結晶化される、アメリカ仮特許出願番号60/694,528号に開示される方法による精製段階を含んで成る。
【0036】
本発明は、5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンサンプルと水とを組合し、溶液を得;前記得られる溶液を100mm×4.6mmのHYPERSIL BDS C18(又は類似する)カラムに注入し;溶解剤として水(溶離剤Aとして、本明細書においては言及される)及びアセトニトリル(溶離剤Bとして、本明細書においては言及される)を用いて、約35分で前記カラムからサンプルを溶出し;そして前記適切なサンプルにおける不純物A含有量を、UV検出器(好ましくは、210nmの波長で)により測定することを含んで成る、3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンにおける不純物Aの存在及び量を決定するために使用されるHPLC方法を提供する。
【0037】
好ましくは、使用される溶離剤は溶離剤A及び溶離剤Bの混合物(それらの比率は時間と共に変化する)、すなわちグラジエント溶離剤であり得る。時間0分で、前記溶離剤が、80%の溶離剤A及び20%の溶離剤Bを含み;時間30分で、前記溶離剤が、40%の溶離剤A及び60%の溶離剤Bを含み;時間35分で、前記溶離剤が、20%の溶離剤A及び80%の溶離剤Bを含み;そして時間36分で、前記溶離剤が、80%の溶離剤A及び20%の溶離剤Bを含む。
本発明はさらに、本発明の方法により製造されたアナストロゾール、及び医薬的許容できる賦形剤を含んで成る医薬組成物を提供する。
【0038】
本発明はまた、本発明の方法により製造されたアナストロゾール、及び医薬的許容できるキャリヤーを混合することを含んで成る医薬製剤の調製方法を提供する。
一定の好ましい態様に関して本発明を記載して来たが、他の態様も本明細書の考慮から当業者に明らかに成るであろう。本発明はさらに、本発明の化合物の調製を詳細に記載する次の例により定義される。材料及び方法に対する多くの修飾が本発明の範囲内で実施され得ることは、当業者に明らかであろう。
【実施例】
【0039】
不純物Aの分析を、次のHPLCを用いて、粗製の3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンにおいて行う
カラム及び充填物:HYPERSIL BDS C18; 3μm、100mm×4.6mm、カタログ番号28103−104630
【表1】

【0040】
停止時間 : 35分
平衡化時間: 5分
流速 : 1.0ml/分
検出器 : 210nmでのUV
カラム温度: 60℃
注入 : 5μl
希釈剤 : アセトニトリル
移動相組成及び流速を、必要とされるシステム適合性を達成するために変更することができる。
【0041】
質量スペクトル分析
ESIイオン源への直接的な注入。使用される操作条件は次の通りである:
計測器 :陽性イオンモードで作動するLCQ Deca(Thermofinnigan)
サンプル濃度:アセトニトリル中、10-6M
噴霧電圧 :4kV
細管電圧 :13V
細管温度 :270℃
【0042】
一定の好ましい態様に関して本発明を記載して来たが、他の態様も本明細書の考慮から当業者に明らかに成るであろう。本発明はさらに、本発明の組成物の調製及び使用方法を詳細に記載する次の例により定義される。材料及び方法に対する多くの修飾が本発明の範囲内で実施され得ることは、当業者に明らかであろう。下記に示される例は、最終の所望する純度が得られるまで、精製における同じ収率及び改良性を得るために反復され得る、単一の結晶化実験を記載する。
【0043】
例1:トルエンからの3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンの結晶化
1.93HPLC面積%の初期不純物A含有率を有する3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンのサンプル4gを、10mlのトルエンに懸濁し、そして完全な溶解が存在するまで、65℃に加熱した。次に、その溶液を25℃に、1時間にわたって冷却し、そして次に、0℃に2時間にわたって冷却した。0℃での30分後、得られる懸濁液を濾過し、そして濾液を、0℃に前もって冷却されたトルエン2.5mlによりすすいだ。1.02HPLC面積%の不純物Aを有する精製された3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンを、3.2gの量で回収した。
【0044】
例2:トルエンからの3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンの結晶化及び再結晶化
0.45%の不純物Aを含む3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエン(50g)を、トルエン(150ml)に溶解し、そして完全な溶液を得るまで、65〜70℃に加熱した。10分後、その溶液を6時間で25℃に冷却した。この後、懸濁液を1時間で-20℃に冷却し、同じ温度で30分間、攪拌し、そして濾過した。次に、固形物を、-20℃に前もって冷却されたトルエン(25ml)により洗浄した。
【0045】
次に、湿った固形物を、HPLCにより分析し、0.24%の不純物Aの含有率を示した。この固形物の2回以上の再結晶化により、0.07%の不純物Aを有する3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンを得た。次に、この固形物を、すべての溶媒が除去されるまで、50℃でのオーブンにおいて乾燥した。
【0046】
例3:3体積のトルエンからの3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンの結晶化
0.11HPLC面積%の初期不純物A含有率を有する3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンのサンプル42gを、130mlのトルエンに懸濁し、そして完全な溶解が存在するまで、61℃に加熱した。次に、その溶液を25℃に、3時間にわたって冷却し、懸濁液を得、そして次に、-20℃に2時間にわたって冷却した。-20℃での30分後、得られる懸濁液を濾過し、そして濾液を、-20℃に前もって冷却されたトルエン2.5mlによりすすいだ。0.06HPLC面積%の不純物Aを有する精製された3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンを、40.1gの量で回収した。
【0047】
例4:アナストロゾールの合成
HPLCによれば0.06%面積の不純物Aを有する3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンのサンプル30gを、150mlのアセトニトリルに溶解し、そして24.8gのN−ブロモスクシンイミドを添加した。得れる懸濁液を淡黄色の溶液が得られるまで、50℃に30分間、加熱した。次に、0.5gの2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)を添加し、そして反応を70℃に6時間、加熱した。次に、その溶液を、20℃に冷却し、水中、5重量%のナトリウムメタビスルフィット溶液150ml中に、激しく攪拌しながら添加した。
【0048】
次に、有機層を分離し、そして90mlの合計体積が得られるまで、減圧下で有機溶媒を除去する前、水中、5重量%の炭酸ナトリウム溶液100mlにより洗浄した。次に、その得られるスラリーを、50℃に加熱し、そして150mlのヘプタンを、30分間にわたって、ゆっくり添加し、その間、温度は70℃に上昇した。次のその懸濁液を20℃に冷却し、そしてガラス漏斗上で濾過した。減圧下での乾燥により、85%の純度(HPLC)で、54gの粗1−ブロモ−3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンを得た。
【0049】
B. アナストロゾールの形成:
1,2,4−トリアゾールのサンプル16.7gを、20℃で52mlのNMPに溶解し、そして9.7gのNaOHを、35℃以下で温度を維持しながら、1時間にわたって少しずつ添加した。その溶液を20℃で18時間、攪拌し、そして次に-30℃に冷却した。60mlのNMP中、40gの粗α−ブロモ−3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンの溶液を、-20℃以下の温度を維持しながら、6時間にわたって、ゆっくり添加した。添加の最後で、懸濁液を-20℃で18時間、攪拌し、そしてこの間、反応をHPLCによりモニターした。開始材料の量が0.5%以下に成る場合、酢酸を、約6.5〜約7のpHを付与するのに十分な量で添加した。その混合物を、20℃にゆっくり暖め、次に120mlのトルエン、240mlのヘプタン、及び170mlの水を添加した。二相システムを、30分間、激しく攪拌し、そして有機層を分離した。
【0050】
次に、240mlの水、60mlのトルエン、及び120mlのヘプタンを水性相に添加し、そしてそのシステムを、30分間、攪拌し、その後、有機相を分離した。次に、400mlのトルエン及び240mlの水を水性相に添加し、そして二相システムを1時間、攪拌した。有機層を分離し、そして水中、0.05Nの硫酸溶液180mlにより3度、洗浄した。最終有機相を、減圧下で40℃で、150mlの最後体積に濃縮し、そして180mlのヘプタンを1時間にわたって滴下した。その懸濁液を0℃に冷却し、1時間、攪拌し、そして濾過した。粗固形物を、50℃で390mlの2−プロパノールに溶解し、そして78mlのヘプタンを、攪拌しながら、ゆっくりと添加した。
【0051】
前記溶液を0度に冷却し、1時間、攪拌し、そして濾過した。固形物を、一定重量を達成するまで、減圧下で55℃で乾燥し、DSCにより測定される場合、0.06%の不純物B及び85℃の融点を有する、99.4HPLC面積%以上の純度の生成物23.5gを得た。
【0052】
例5:不純物Aの単離
不純物Aを含む3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンのサンプルを、ヘプタン/酢酸エチルの9:1混合物により溶出し、そしてHPLCにより画分を分析するフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。90%以上の純度を有する、不純物Aを含む画分をプールし、そして溶媒を真空下で除去し、式Iの不純物(2,3−ビス−[3−(シアノ−ジメチル−メチル)−5−メチル‐フェニル]−2−メチル−プロピオニトリル)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
【化1】

で表される、単離された2,3−ビス−[3−(シアノ−ジメチル−メチル)−5−メチル‐フェニル]−2−メチル−プロピオニトリル(不純物A)。
【請求項2】
約0%〜約10%の3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンを含む請求項1記載の単離された不純物。
【請求項3】
アナストロゾール(Anastrozole)中間体、すなわち下記式I:
【化2】

で表される3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンを汚染する請求項2記載の単離された不純物。
【請求項4】
式Iの3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンに関して、約1.53での保持時間比(RRT)により特徴づけられる請求項1又は2記載の単離された不純物。
【請求項5】
約406でm/zピークを有するM/Sスペクトルにより特徴づけられる請求項1〜3のいずれか1項記載の単離された不純物。
【請求項6】
対照マーカーとして不純物Aを用いて、HPLC又はTLCを実施することを含んで成る、サンプルにおける化合物の存在の決定方法。
【請求項7】
前記方法が、対照マーカーとして不純物Aを用いて、HPLC又はTLCを実施することを含んで成る、サンプルにおける不純物Aの存在を決定するためである請求項6記載の方法。
【請求項8】
(a)不純物Aを含んで成る対照マーカーにおける不純物Aに対応する保持時間をHPLC又はTLCにより決定し;
(b)3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエン及び不純物Aを含んで成るサンプルにおける不純物Aに対応する保持時間をHPLC又はTLCにより決定し;そして
(c)段階(b)の保持時間と、段階(a)の保持時間とを比較することにより、サンプルにおける不純物Aの存在を決定することを含んで成る請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
対照標準として不純物Aを用いて、HPLC又はTLCを実施することを含んで成る、サンプルにおける化合物の量の決定方法。
【請求項10】
前記方法が、HPLC又はTLCを実施することを含んで成る、サンプルにおける対照標準として使用される不純物Aの量を定量化するためである請求項6〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
(a)既知量の不純物Aを含んで成る対照標準において不純物Aに対応するピーク下の面積を、HPLC又はTLCにより測定し;
(b)不純物A及び3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンを含んで成るサンプルにおける不純物Aに対応するピーク下の面積を、HPLC又はTLCにより測定し;そして
(c)段階(b)の面積と、段階(a)の面積とを比較することにより、サンプルにおける不純物Aの量を決定することを含んで成る請求項6〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
HPLCによれば約0.10面積%以下の不純物Aを有する3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンからアナストロゾール(anastrozole)を調製するための方法であって、
(a)3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンの1又は複数のバッチの1又は複数のサンプルを入手し;
(b)前記個々のサンプルにおける不純物Aのレベルを測定し;
(c)前記バッチからのサンプルの測定に基づいて、HPLCによれば約0.10面積%以下の不純物Aのレベルを有する段階(a)からのバッチを選択し;そして
(d)選択されたバッチを用いて、アナストロゾールを調製する段階を含んで成る方法。
【請求項13】
前記方法が、段階(d)の前、段階(b)において測定されるレベルがHPLCによれば約0.10面積%以上である場合、3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンの精製をさらに含んで成る請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記精製が、C6-9芳香族炭化水素及びC2-8エーテルから成る群から選択された溶媒からの3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンの結晶化により行われる請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
3,5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンにおける不純物Aの存在及び量を決定するために使用されるHPLC方法であって、
(a)5−ビス(2−シアノイソプロピル)トルエンサンプルと水とを組合し、溶液を得;
(b)前記得られる溶液をカラムに注入し;
(c)溶解剤として水(溶離剤A)及びアセトニトリル(溶離剤B)を用いて、約35分で前記カラムからサンプルを溶出し;そして
(d)前記適切なサンプルにおける不純物A含有量を、UV検出器により測定することを含んで成る方法。
【請求項16】
前記UV検出器が、約210nmの波長で作動する請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記使用される溶離剤が、溶離剤A及び溶離剤Bの混合物である請求項15又は16記載の方法。
【請求項18】
溶離剤Aと溶離剤Bとの割合が時間と共に変化する請求項15〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
時間0分で、前記溶離剤が、80%の溶離剤A及び20%の溶離剤Bを含み;時間30分で、前記溶離剤が、40%の溶離剤A及び60%の溶離剤Bを含み;時間35分で、前記溶離剤が、20%の溶離剤A及び80%の溶離剤Bを含み;そして時間36分で、前記溶離剤が、80%の溶離剤A及び20%の溶離剤Bを含む請求項15〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
請求項12〜14のいずれか1項記載の方法により製造されたアナストロゾール、及び医薬的許容できる賦形剤を含んで成る医薬組成物。
【請求項21】
請求項12〜14のいずれか1項記載の方法により製造されたアナストロゾール、及び医薬的許容できるキャリヤーを混合することを含んで成る医薬製剤の調製方法。

【公表番号】特表2008−510020(P2008−510020A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528108(P2007−528108)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/025093
【国際公開番号】WO2007/002720
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(505216117)シコール インコーポレイティド (35)
【Fターム(参考)】