説明

アノード支持形燃料電池

アノード基材におけるストレスをストレス補償層で補償するアノード支持形燃料電池で、特にSOFCである。本発明によれば、前記ストレス補償層は様々な小さな開口部を作ることで多孔質にできている。これらの開口部は好ましくは6角形に作られ、当該開口部間の壁の厚さは薄い。電子伝導性多孔層は当該ストレス補償層に塗布されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアノード支持体、アノード層、電解質層およびカソード層を含むアノード支持型(anode−supported:燃料極支持形)燃料電池に関し、前記アノード支持体は当該アノード層の反対側にストレス補償層を備えている。
【背景技術】
【0002】
このタイプの燃料電池はWO 01/43524で開示されている。このような燃料電池は異なる膨張係数を有する異なる材料の層から構成されている。アノード基材で起こる化学反応の結果である当該電池におけるかなりな温度変化と共に容積変化の間に、アノード基材の歪みが生じる危険性がある。これがセルスタックの製造を極度に難しくし;当該電池の変形能および機械的強度が低いので“病”が直接的に必然的な破裂を導く。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
アノード支持体の最初の焼結において主に生じるこの難題を避けるために、WO 01/43524ではストレス補償層を塗布することが提案されている。本ストレス補償層は当該アノードが塗布されているアノード支持体側面の反対側のアノード支持体側面上に置かれる。その機械的および収縮の特性を基本的に当該電解質層と同じにすることで歪みを防ぐことがほぼできる。
【0004】
しかしながら、当該燃料電池におけるプロセスは妨害なしに起こることが重要である。即ち、ガス類および電子の移動が妨害なく起こることが可能でなければならない。
【0005】
この目的のために、前述PCT出願ではそれを通ってガス類が移動できるような比較的大きな開口部をストレス補償層に作ることが提案されている。当該開口部は集電体に対する接触圧点としても役立つ。ガス類の輸送はこれらの開口部を通して起こらねばならない。当該開口部間には比較的広い間隔があり、当該ガス類が導かれる地点に関する位置により変化する。当該ストレス補償層のこの部分はガスが透過可能である。
【0006】
このことは当該燃料電池の他の部分、より詳しくは集電材に対する当該ストレス補償層の正確な位置合わせにつき厳しい要求が課せられることを意味する。誤差を考慮すると、これは当該集電材がそれを通して拡がっているストレス補償層中の穴は比較的大きくしておかねばならないことを意味する。
【0007】
そのようなストレス補償層製造用の方法は複雑である。当該アノード支持体から始まりその上の一定の領域を被覆し、その後に当該ストレス補償層を何らかの方法で塗布し、それから当該組立品を焼結することが提案されている。
【0008】
当該穴の間が広い間隔である結果、当該アノードの位置におけるガス類、イオン類および電子の均一な分布が保証できないという不利な点がある。これは当該支持する基材が比較的薄いときに当てはまる。当該目的は当該電池についての材料の価格をできるだけ下げるために比較的薄い構成要素にするのである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目標は上述した不利な点を避けて、燃料極支持形燃料電池を提供することで、それにより一方では上述した問題および当該アノード支持体の起こりうる歪みを防ぎ、他方ではより簡易な方法で生産ができてイオン類および電子のより均一な分布を保証することである。
【0010】
この目標は、前記ストレス補償層は本質的な中断なしに広がっている多孔質層であり、そして作動状態では電子伝導性である最大100μmの厚さを持つ多孔質層が当該アノード支持体から離れた側面で前記ストレス補償層に塗布されている上述したような燃料極支持形燃料電池で実現される。
【0011】
本発明によれば、当該ストレス補償層には比較的大きい穴はないが、この層は連続的に広がっている。当該ストレス補償層は、好ましくは最大直径1mmの比較的小さな開口部を多数備えている。より詳しくは、当該直径(円形の開口部として換算する)は凡そ0.4mmである。このような比較的小さな開口部はいかなる形状にもなりうるが、本発明の都合がよい実施形態によれば六角形にする。当該開口部の間の距離は、特に薄層においては上記不均一な分布の影響は出ないように制限されている。特に隣の開口部との間隔、即ち開口部間の“壁厚”は1mm未満で、より詳しくは約0.3〜0.5mmであり、特に好ましい実施形態では約0.4mmである。驚いたことに、そのような構造のストレス補償層を用いると当該燃料電池の歪みを防ぐことができることが見出された。本発明のストレス補償層によれば、当該ガスの当該電解質への移動する距離をできるだけ短く保つことができる。この距離は好ましくは800μm未満である。
【0012】
当該ストレス補償層は好ましくは酸化ジルコニウム層である。
【0013】
当該ストレス補償層に更に電子伝導性多孔層を塗布すると、実効集電体を当該ストレス補償層または当該アノードに直接接触させる必要がなくなる。補助的集電体として機能するそのような多孔質電子伝導層は、塗布時で好ましくは最大限でも100μm、より詳しくは約50μmの比較的薄いニッケル/酸化ニッケル層である。焼結および還元後でこれは約10〜20μm(ニッケル)の層厚になる。そのような更なる電子伝導層の塗布の結果として、当該ストレス補償層を通しての接触地点の数は相当増加できる。そのような多孔質層の孔サイズは好ましくは0.2〜0.6μmであり、より詳しくは約0.4μmである。
【0014】
当該燃料電池を構成している種々の構成要素は本技術分野において知られている全ての構成要素で構成されることが可能である。当該燃料電池の製造方法についても同じことが当てはまる。一般的には、当該アノード(支持体および電解質を含む)は始めに比較的高温で焼結され、その後に当該カソードを塗布し、そして幾分低めの温度での焼結を行う。しかしながら、本発明によれば燃料電池または電気化学的電池をより多くの段階、またはより少ない段階にて製造することも可能である。上記の方法で当該電気化学的電池を製造する際は、当該アノード支持体を用意し、当該アノード層、時にはその上に補助層および電解質を塗布した後に、当該ストレス補償層を当該アノード基材の他の側面に塗布する。本発明によれば、当該塗布は印刷技術およびより詳しくはスクリーン印刷技術により行う。この方法によれば、非常に薄い層厚さを持つ非常に小さな開口部で非常に規則正しく分布した模様を作ることができる。しかも、そのようなスクリーン印刷技術を実施するのは特に簡単で、当該アノード基材のある部分を被覆しておくことは必要がない。ある種の印刷技術などを用いて当該ストレス補償層を塗布した後、焼結後に多孔質で電子伝導性となる酸化ニッケル層や他の層を塗布する。その後上述した組立品は約1400℃の温度で焼結することができる。当然当該アノード支持体から出発するが、種々な層を塗布する順序はある程度変化させることは可能である。
【0015】
スクリーン印刷で得られるストレス補償層における小さな開口部の形状は当技術で知られている如何なる形でありうる。好ましくは規則正しいハニカム模様で種々な特徴が生まれる。
【0016】
上記のような電池であれば、アノード支持体の歪みの問題は解決したが、一方では当該電池構成要素の簡易製造法の組合せで容易に達成でき、ガス類、電子およびイオン類の当該アノード支持体上での均一な分布が保証されることが見出された。
【0017】
本発明は図で示す例示的実施態様を参考にして以下で詳細に説明するであろう。
図1では、本発明による燃料電池を1で示す。この燃料電池はその全体を1で示し、アノード支持体2からなる。このアノード基材は多孔質NiO/YSZのような当技術分野で知られているいずれかの材料で作ることができる。
【0018】
当該実効アノード(補助)層3をそこに塗布する。勿論、この層3は除くことはできる。電解質層を4で示す。5で示すカソードをそこに塗布する。これは単に図面であり、このカソードは多くの層で構成することができる。
【0019】
当該アノード支持体2の反対側にはストレス補償層6を備える。ストレス補償層は大きな開口部なしで作られ、アノード支持体2に例えばスクリーン印刷で塗布される。1mm以下の直径(円に基づき)の非常に小さな開口部をスクリーン印刷の間に作成する。このストレス補償層は好ましくは層4の材料に類似する熱的および機械的特性を有する材料からなる。即ち、加熱または冷却時に基材2および層4の間に生じるストレス或いは化学反応の間に基材2と層6の間でまさに同じストレスが起こるとすれば、その結果前記基材の歪みが防止される。
【0020】
焼結および還元にて多孔性ニッケルに転換する酸化ニッケル層のような多孔質電子伝導層を層6に塗布する。そのような層の厚みは塗布時で100μm未満、好ましくは約50μmなので、焼結すると10〜20μmの層厚となる。
【0021】
層6の有孔率は好ましくは40%である。
【0022】
当然、上述した燃料電池の製造中に作られる特別な性質を有する構成要素または種々の構成要素は一括で本発明の範囲内に入る。即ち、本発明によるストレス補償層を備え、場合によりそれに塗布した電子伝導層との組合せである、粉結および焼結した両方の状態における燃料極支持形電極からなる組立品につき権利を要求する。
【0023】
極めて図式的に示しておいた集電体を層7に対し圧着する。
【0024】
図2はスクリーン印刷で層2へ塗布した後の層6の平面図を示す。基材2および層7を結合している層6の全体を通して広がる開口部の非常に規則的な6角形パターンがこの図から明瞭に見て取れる。
【0025】
本発明は好ましい実施形態によって上述したが、請求項で説明したような本発明の範囲を越えることなく多くの変更ができることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は本発明による燃料極支持形燃料電池の様々な層を断面につき図式的に示す。
【図2】図2は、当該アノード基材に塗布した直後のストレス補償層の平面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード支持体(2)、アノード層(3)、電解質層(4)およびカソード層(5)を含んでいて、前記アノード支持体は当該アノード層とは反対側にストレス補償層(6)を備えており、前記ストレス補償層(6)は本質的には中断なしに広がっている多孔性層(7)であり、作動時には電子伝導性である最大100μmの厚さを持つ多孔性層が当該アノード支持体から遠い側の前記ストレス補償層に塗布されていることを特徴としている、アノード(燃料極)支持形燃料電池。
【請求項2】
当該電子伝導層は作動状態にて厚さ10〜20μmを有する、請求項1記載の燃料電池。
【請求項3】
前記電子伝導層(7)はニッケル/酸化ニッケル層を含む、先行請求項の1つに記載の燃料電池。
【請求項4】
当該ストレス補償層が当該基材から当該電子伝導層まで広がる規則正しいパターンの孔を備えている、先行請求項の1つに記載の燃料電池。
【請求項5】
前記孔は6角形である、請求項4に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記ストレス補償層が最大40%の多孔性を有する、先行請求項の1つに記載の燃料電池。
【請求項7】
塗布したアノードおよび電解質と一体で、その上に当該カソード層を塗布、これに続いてこのようにして得た組立品を焼結するアノード支持体の製造、圧粉基材の準備、その上に当該アノード層と電解質の塗布、当該アノード層から遠い側の当該基材に塗布したストレス補償層は当該基材を覆って中断無しに広がるように塗布されていることを特徴としている前記ストレス補償層を含む当該アノード支持体の製造、そして焼結後にその上に電子伝導性多孔層を塗布し、その後その上に塗布した当該基材および当該層を焼結処理にかけることを含む、アノード(燃料極)支持形燃料電池の製造方法。
【請求項8】
前記焼結処理は1300〜1400℃にて実施する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記ストレス補償層は前記基材にスクリーン印刷で塗布される、請求項7および8記載の方法。
【請求項10】
前記ストレス補償層が前記層全体に広がっている最大サイズ1mmの開口部を備える、請求項7記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−500735(P2006−500735A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−519360(P2004−519360)
【出願日】平成15年7月3日(2003.7.3)
【国際出願番号】PCT/NL2003/000492
【国際公開番号】WO2004/006365
【国際公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【出願人】(505007434)ステフティング エネルギーオンデルゾエク セントラム ネーデルランド (5)
【Fターム(参考)】