説明

アポダイゼーション装置を有するホログラフィック直視型ディスプレイ

本発明は、ホログラフィック直視型ディスプレイにおいてアポダイゼーションにより隣接する眼における強度のクロストークを回避する。既知のアポダイゼーション関数は、前記関数が回折の選択されたより大きい大きさの強度を低下するようにアポダイゼーションマスクに対して利用されるか又は変更される。この目的のために、ホログラフィック直視型ディスプレイは、変調器セルを有し且つ入射するコヒーレント光を位相及び/又は振幅、並びにアポダイゼーションマスクのアレイに変調する制御可能な光変調器を含む。アポダイゼーションマスクは、所定の変調器セルグループに対して同一のアポダイゼーション関数を有し、その関数により、複素振幅透過率は変調器セルに対して設定される。この透過率は、光変調器の遠視野における個々に事前定義済みの強度に対応し、事前定義済みの強度は、光変調器により放射された干渉光及び/又は回折のより大きい大きさの光の強度の低下を含む。アポダイゼーション関数を検出するために、計算ユニットにおいて計算ルーチンとして実行する反復方法が提供される。応用分野は、ホログラフィック直視型ディスプレイにおいて種々の変調を実現する光変調ユニットを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を回折する変調器セルのマトリクス及びアポダイゼーションマスクのアレイを有する少なくとも1つの制御可能な空間光変調器を含むホログラフィック直視型ディスプレイに関する。更に本発明は、アポダイゼーションマスクに対するアポダイゼーション関数を見つける反復処理に関する。
【0002】
本発明の応用分野は、PC用直視型ディスプレイ、TV、移動電話又は情報を表示する機能を有する他の機器等の大きな表示領域を有し且つ/又は構造上の奥行きが小さい光電子表示装置を含む。
【0003】
制御可能な空間光変調器(SLM)の変調器セルのマトリクスは、能動的に切り替え可能な変調器領域及びその間に不活性領域(分割バー、セル境界線)を含む。それらの2つの領域の面積比は曲線因子として既知である。不活性領域は、光が回折される固定の格子構造を形成する。空間光変調器がコヒーレント光又は部分的にコヒーレントな光により照明される場合、回折光は特有のマルチビーム干渉効果を示す。空間光変調器の回折遠視野は、空間光変調器の複素振幅反射又は複素振幅透過のフーリエ変換に対応する。不活性領域は事前定義され、SLMの種類毎に特徴がある。これらの領域において、回折により高次回折が起こり、光学系の品質及び機能性が損なわれる。
【0004】
それらがホログラフィック再構成の実際の画像に重畳される場合、高次回折は増加したノイズ、二重像の形態で、すなわち例えば遠視野に生成されるSLMの像点の周囲の明るい点により、例えば、光学系の機能性に悪影響を及ぼす。SLMマトリクスの変調器セルに起因する高次回折を無効にする従来技術において既知の効率的な手段は、SLMに続く光学系の中間焦点に配設される空間フィルタである。空間フィルタが所望の回折次数のみを透過する一方で、全ての他の回折次数はアパーチャマスクとして設計される空間フィルタにより遮断される。そのようなフィルタ構成の欠点は、中間画像又は中間焦点が光路中のSLMの後に作成される必要があることである。第1に、これにより光学系の構造上の奥行きが非常に増加する。第2に、次の光学系(レンズ又はミラー)のアパーチャ(効果的な開口)は、SLMのアパーチャとほぼ同一の大きさである必要がある。これにより、そのような空間フィルタの適用性が相対的に小さなSLM及び投影型ディスプレイに制限される。
【0005】
アポダイゼーションは、高い次数を表すエアリーディスクの外輪が抑制される光学フィルタリング方法である。例えば特殊なグラディエントフィルタが光路の出口アパーチャに配設されるため、例えば結像システムの分解能を犠牲にして画像コントラストを向上するために結像システムにおいてこの方法が利用される。
【0006】
変調器セルのアポダイゼーションは、アポダイゼーション関数tSLM pixel(x,y)を使用して達成される。一般にアポダイゼーション関数は、実際の使用に従って計算され、例えばマスク又はフィルタにおいて実現される。更に、解析的に記述される多数の既知のアポダイゼーション関数は文献で説明される。余弦関数又は三角関数に加えて、例えばブラックマン関数、ハミング関数又はウェルチ関数という名称で既知のアポダイゼーション関数が存在する。これらのアポダイゼーション関数は、一般的なアポダイゼーションタスクに対する解決策を提供する。
【0007】
本出願人により出願された独国特許出願公開第10 2006 030 535 A1号は、投影型ディスプレイの画素マトリクスを有する空間光変調器におけるアポダイゼーション関数の使用について説明している。ここで、画素マトリクスのアポダイゼーションは、空間光変調器を照明する光のそれぞれの変調により排他的に達成される。このため、平面コヒーレント照明波は、周期性が変調器の画素構造に合致する適切な関数で変調される。
【0008】
ホログラフィック再構成を生成するホログラフィック直視型ディスプレイにおいて、制御可能な光変調器は十分にコヒーレントな光により照明され、遠視野において各眼に対する別個の可視領域(観察者ウィンドウとしても既知である)を生成する。高次回折の強度は、隣接する可視領域に放射され、観察者が再構成を見る時に妨害する。それらの可視領域の間の高次回折のクロストークを低減するアポダイゼーションに基づく既知の解決策はこれまでに存在していない。
【0009】
一般に既知であるように、効果的にするために、アポダイゼーションは実際に使用された光変調器手段により与えられる境界条件を満たす必要がある。
【0010】
要約すると、従来技術は以下の欠点を示す。輝度値が可能な限り現実的に表される真のホログラフィック再構成を生成するために、高次回折が少なくとも1つの特定の領域において特に低減されることが要求される。これらの領域は観察者平面の規定済みの位置にある。特に、他方の眼に入る回折次数を特に大きく低減できる。
【0011】
従来のアポダイゼーション関数により実現されない別の応用例は、全ての他の回折次数に対する0次以外の少なくとも1つの回折次数における相対的な光度の増加である。
【0012】
本発明の目的は、制御可能な変調器セルのマトリクスを含むホログラフィック直視型ディスプレイの制御可能な空間光変調器の遠視野における変調器セルに起因する高次回折をアポダイゼーションにより低減することである。ここで、光変調器は空間フィルタによるフィルタリングを許可しない光学系の構成要素である。
【0013】
アポダイゼーションマスクのアレイを使用することにより問題はなくなる。光変調器により、回折したコヒーレント光の種々の回折次数における強度分布の個々の指定が可能になる。
【0014】
同時に、変調器セルの設計に起因する他の妨害効果は、光学系の結像品質を向上するように可能な限り解消される。
【0015】
更に、連続プロファイルをアポダイゼーション関数に与えることができるか、あるいはアポダイゼーションマスクの変調器セルにわたる個々のステップの別個の値を有するアポダイゼーション関数を実現できる。
【0016】
また、一般に既知のアポダイゼーション関数は、種々の応用例に有効であり且つ技術的に実現可能な変更が行われる。
【0017】
ホログラフィック直視型ディスプレイの透過率は、僅かに低下するだけである。
【0018】
目的は、ホログラフィック直視型ディスプレイにより本発明に従って解決される。ホログラフィック直視型ディスプレイは、
−光を回折する変調器セルのマトリクスを含む少なくとも1つの制御可能な空間光変調器であり、光変調器の遠視野において個々に事前定義済みの強度プロファイルを実現する前記空間光変調器と、
−十分にコヒーレントな光の位相及び/又は振幅を変調する各変調器セルがアポダイゼーションマスクに割り当てられるアポダイゼーションマスクのアレイと、
−同一のアポダイゼーション関数を有するアポダイゼーションマスクに割り当てられる少なくとも1つの規定された変調器セルグループと、
−少なくとも1つの変調器セルグループに対して設定され且つ実現される事前定義済みの強度プロファイルに従ってこの変調器セルグループに対してアポダイゼーション関数を設定する複素振幅透過率であり、事前定義済みの強度プロファイルが少なくとも1つの高次回折における光度及び/又は光変調器により放射される迷光の光度の低下を含む複素振幅透過率とを備える。
【0019】
複素振幅透過率は、この例において、T(x,y)=A(x,y)×exp[iφ(x,y)]の形式で振幅A及び位相φを有する複素値のフィルタリング関数Tとして理解される。
【0020】
これは、アポダイゼーションマスクを通る電磁波の振幅及び位相の変化を記述する。
【0021】
本発明の一実施形態において、アポダイゼーションマスクのアポダイゼーション関数は、少なくとも1次元で複素振幅透過率の位相及び/又は絶対値の一定でないプロファイルを示す。例えばアポダイゼーション関数は、少なくとも1次元で変調器セルの中央で最大値を有し、変調器セルのエッジに向かって徐々に低下する複素振幅透過率を有することができる。
【0022】
アポダイゼーション関数を計算できるように、所定の形状、サイズ及び幾何学的配置、並びにアポダイズされる変調器セルの現在固有の複素振幅透過率が分かっている必要がある。特に画素ピッチ、曲線因子、並びに画素アパーチャの形状及び位置のパラメータを認識することが重要である。単一の変調器セルの曲線因子FFが例えばFF>0.5である場合及び変調器セルの領域が小さすぎない場合、個々の変調器セルの透過率プロファイルの特定の選択により、観察者ウィンドウの高次回折の強度が妨害するように隣接する眼の観察者ウィンドウに対してクロストークしないことが達成される。
【0023】
アポダイゼーション関数は、別個の走査点において複素振幅透過率を記述する数値によりそれら走査点において規定され、走査点は、アポダイゼーションマスクにより空間分解可能である相互距離を示す。
【0024】
ホログラフィック直視型ディスプレイの一実施形態において、少なくとも2つの制御可能な光変調器は共にはさまれ、各光変調器は専用のアポダイゼーションマスクを有するか又は少なくとも2つの光変調器は共通のアポダイゼーションマスクを有する。
【0025】
更に、ホログラフィック直視型ディスプレイの少なくとも2つの制御可能な光変調器のうちの1つの光変調器は、エレクトロウェッティングセルを含むプリズムアレイを形成するように設計される。アポダイゼーションマスクは、エレクトロウェッティングセルのプリズムアレイに対して設計されるか又はプリズムアレイと組み合わされると規定される。ホログラフィック直視型ディスプレイのアポダイゼーションマスクのアレイの場所は固定して規定されない。
【0026】
所定の変調器セルグループのアポダイゼーションマスクは、回折光の遠視野の所定の区間において事前定義済みの強度値を有する強度プロファイルを設定できるのが好ましい。遠視野の所定の区間は、少なくとも1次元で負の回折次数又は正の回折次数のみを含むことができる。
【0027】
全ての変調器セルは、一応用例に対して同一のアポダイゼーション関数を有することが更に可能である。
【0028】
本発明の更なる一実施形態において、3D表現に対するホログラフィック直視型ディスプレイは、変調器セルが光変調器に対する観察者距離範囲において観察者の眼にそれぞれ割り当てられる可視領域を生成するために所定のグループにおいて観察者の左眼及び右眼に常に割り当てられるように設計される。一方のグループのアポダイゼーションマスクにおいて、強度プロファイルは他方のグループの観察者の眼の位置において最小にされるように設定され、また、その逆も成り立つ。
【0029】
更にアポダイゼーションマスクは、複素振幅透過率が絶対定数値を有する可変位相関数として形成されるアポダイゼーション関数を示すことができる。別の実施形態によると、アポダイゼーションマスクは、迷光を好適に低減するように複素振幅透過率が2進表現であるアポダイゼーション関数を示す。エレクトロウェッティングセルと組み合わせると、2進アポダイゼーションマスクはこのセルの周辺部において発生する位相欠陥を最小限にする適切な要素である。
【0030】
更に、曲線因子が適切である特定のアポダイゼーション関数が好適に使用される場合、2進マスクのアレイはエレクトロウェッティングセルのアレイの曲線因子を意図的に低減できる。
【0031】
アポダイゼーション関数を正確に判定するために、検索されるためにメモリユニットに結果を提供する計算ユニットにおいて計算ルーチンとして実行される反復処理が使用される。
【0032】
例えば反復処理は、変換が光変調器の平面と遠視野におけるそのフーリエ平面との間で実行されるフーリエ変換方法に基づく。変調器セルで回折される光は、遠視野の所定の区間において所定の強度値に近似される。
【0033】
ホログラフィック直視型ディスプレイは、振幅単独マスク又は位相単独マスクのアレイを、アポダイゼーションマスクとして含むことができる。振幅マスクは、例えば投影リソグラフィ法、干渉リソグラフィ法又はグレースケールリソグラフィ法により製造される。このために、関数が点毎又は2次元で露光されるホログラフィックフィルム等の感光材料が露光される。あるいは、電子ビームによる高エネルギービーム感知(HEBS)ガラス又はレーザビームによるレーザ直接描画(LDW)ガラスにおいて直接露光を実現できる。更に別の製造オプションはデジタル印刷である。
【0034】
位相マスクは、高分子又はガラスにおける屈折率変調により又は表面形状を生成することにより作成される。感光材料(例えば、フォトレジスト)もこのために露光される。情報は、アポダイゼーションマスクのアレイが複数の面領域を接合することにより実現されるように材料に2次元に書き込まれる。別の製造オプションは、面接触又はプロキシミティ露光及び投影リソグラフィを含む。ここでも、複数の領域は、アポダイゼーションマスクのアレイを形成するために接合される。製造の更に別の可能性は、ガラス基板へのリチウムイオンの注入による局所イオン交換である。
【0035】
上述した方法は、更に振幅マスクが位相マスクに変換されることを可能にする。
【0036】
マスクは、上述していないが当業者により使用法が適切であると考えられる方法を使用しても製造可能である。
【0037】
別の実施形態において、ホログラフィック直視型ディスプレイは、特定の原色に割り当てられる変調器セルが所定のグループを形成するホログラフィックカラーディスプレイであってもよい。強度値を最小にするために、そのようなディスプレイにおいて、遠視野の所定の区間は全ての原色に対する同一の回折角の領域を含む。
【0038】
本発明は、アレイに配置され且つ制御可能な空間光変調器の変調器セルのマトリクスに割り当てられるアポダイゼーションマスクに対するアポダイゼーション関数を見つける方法に関する。方法は反復処理ステップで実行される。
【0039】
詳細には、処理ステップは、
−所定のグループの変調器セルの回折次数の位置を判定することと、
−遠視野における好適な回折次数又はその区間において個々に事前定義済みの強度プロファイルを規定することと、
−所定のグループの単一の変調器セルに対する初期のアポダイゼーション関数を規定することと、
−遠視野においてその区間の好適な回折次数において事前定義済みの強度プロファイルに近似するためにアポダイゼーション関数の複素振幅透過率を段階的に最適化することとである。
【0040】
変調器セルの複素振幅透過率を判定するために、変調器セルのアパーチャ内及びアパーチャ外の多数の走査点が規定される。更に遠視野における強度プロファイルは、同一数の走査点において複素振幅透過率のフーリエ変換の二乗絶対値により判定される。その後、更なる処理ステップにおいて、
−変調器セルのアパーチャ外の走査点がゼロに設定され、
−複素振幅透過率のフーリエ変換が遠視野におけるフーリエ平面に対して実行され、
−遠視野の好適な回折次数又はその区間における走査点の振幅がその走査点における事前定義済み強度値の平方根に対応する値に設定され、
−遠視野の複素値の逆フーリエ変換が光変調器の平面に対して実行されるようなアポダイゼーション関数の複素振幅透過率の段階的な最適化が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1a】図1aは、従来技術に係るアポダイゼーションマスクを有さないホログラフィック直視型ディスプレイを示す概略図である。
【図1b】図1bは、本発明に係るアポダイゼーションマスクを有するホログラフィック直視型ディスプレイを示す概略図である。
【図2】図2は、±2次から開始する回折次数の均一な低減に対する変調器セルのアポダイゼーション関数の振幅プロファイルを示すグラフである。
【図3】図3は、反復ステップを伴って及び反復ステップなしで計算されたフーリエ平面における個々の回折次数の強度を示すグラフである。
【図4】図4は、余弦型のアポダイゼーション関数及び負の回折次数のみの低減に対する反復計算されたフーリエ平面における強度を示すグラフである。
【図5】図5は、図3に係る変調器セルにわたる反復計算された複素値アポダイゼーション関数の振幅プロファイル及び余弦型のアポダイゼーション関数の振幅プロファイルを示すグラフである。
【図6】図6は、図3に係る変調器セルにわたる複素値のアポダイゼーション関数の位相プロファイルを示すグラフである。
【図7】図7は、負の回折次数及び正の回折次数の領域の低減に対するフーリエ平面における強度を示すグラフである。
【図8】図8は、図6に係る変調器セルにわたるアポダイゼーション関数の振幅プロファイルを示すグラフである。
【図9】図9は、全ての変調器セルが同一のアポダイゼーション関数を有するアポダイゼーションマスクの実施形態を示す概略図である。
【図10】図10は、異なるアポダイゼーション関数を有する2つの変調器セルグループが与えられるアポダイゼーションマスクの実施形態を示す概略図である。
【図11】図11は、2次元回折パターンで好適な回折次数の低減を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
添付の図面と共に実施形態を使用することにより、本発明を以下に詳細に説明する。
【0043】
本発明は、マトリクスに配置される変調器セルを含む少なくとも1つの制御可能な空間光変調器を有するホログラフィック直視型ディスプレイに関する。ここで、各変調器セルはアポダイゼーション関数を有するアポダイゼーションマスクに割り当てられる。光変調器は、十分にコヒーレントな光の位相及び/又は振幅を変調する。光変調器で符号化される位相値及び/又は振幅値は、例えばホログラフィック直視型ディスプレイにおいて3次元オブジェクトを再構成するホログラムを表せる。光変調器及びアポダイゼーションマスクの種々の組合せが可能である。例えば位相のみを変調する光変調器は、振幅のみをアポダイズするアポダイゼーションマスクと組み合わされることが可能であり、またその逆も可能である。一般に、複素値変調に対しては光変調器及びアポダイゼーションマスクの双方が使用される。
【0044】
本発明に従って変調器セルのアポダイゼーションマスクに対するアポダイゼーション関数を判定することは、固定の初期値に加えて、設定されるパラメータに対して目標値が規定される方法に基づく。本明細書において、複素振幅は、SLMのフーリエ平面に対応するSLMの遠視野において特に設定される。複素振幅は、SLMから遠視野へのフーリエ変換により実現される。
【0045】
特に、フーリエ平面における光度のパラメータが与えられる。光度は、好適な回折次数において又は好適な回折次数の選択された範囲のみにおいて大きく低下される。変調器セルの活性領域の形状は、遠視野及び従ってフーリエ平面における回折次数の位置を表す。例えばホログラフィック直視型ディスプレイにおいては観察者の眼もそこに位置しているため、SLMで符号化される左眼用のホログラムの回折次数は右目に入射し、右眼用のホログラムと干渉する。その逆のことも起こる。
【0046】
アポダイゼーションマスク及び光変調器の変調器セルの組合せのために、各パラメータにより計算されるアポダイゼーションマスクにおけるアポダイゼーション関数により、フーリエ平面の強度値がそこで与えられるか又は後者と同一である強度プロファイルに非常に類似するように入射光は変調される。
【0047】
アポダイゼーション関数の別のパラメータは、一定の振幅を有する位相関数であってもよい。本明細書では特に説明しない光変調に関連する他のパラメータは、アポダイゼーションマスクに対するアポダイゼーション関数を判定するために本発明に係る方法により最適化される。
【0048】
目標値は、本発明の一実施形態に係る反復処理を使用して近似され、強度プロファイルを最適化する。
【0049】
アポダイゼーションマスクは、アレイとして設計され、少なくとも1つのSLMの光変調光学層に可能な限り近接して配設されるのが理想的である。アレイは、追加の前方の層又は後方の層として少なくとも1つのSLMの真上に配設されるか、あるいは少なくとも1つのSLMのカバーガラスに組み込まれる。更に変調器セルの活性領域間の分割バーは、、アポダイゼーションアレイの効果を有するように既に設計されている。アポダイゼーションマスクは、変調器セルの所定の構成と位置合わせされる。
【0050】
一実施形態によると、例えば3Dシーンのホログラム値が符号化されるSLMに加えて、ホログラフィック直視型ディスプレイは、伝播方向に波面を変調するのが好ましく且つその波面の位相及び/又は振幅を更に変調できる更なるSLMとしてエレクトロウェッティングセルを含むプリズムアレイを含むことができる。
【0051】
図1aは、従来技術に係るホログラフィック直視型ディスプレイ、すなわちアポダイゼーションマスクを有さないホログラフィック直視型ディスプレイを概略的に示す上面図である。図中符号1はホログラフィック表示装置を示し、2l及び2rは3次元シーンの物点5の再構成ビームを示し、3l及び3rは表示装置1の遠視野における観察者の左眼及び右眼のそれぞれに対する観察者ウィンドウとも呼ばれる可視領域を示し、4は観察者の右眼に対する可視領域3rにおける強度分布を示す。再構成ビーム2rの強度分布4は発生する高次回折を更に示し、これはクロストークの原因となり、観察者の左眼に悪影響を及ぼす。
【0052】
図1bは、表示装置1上にアポダイゼーションマスクを有する本発明に係るホログラフィック直視型ディスプレイを概略的に示す上面図である。物点5の再構成ビーム2rは、観察者の右眼に対する可視領域3rにおいて強度分布4’を生成する。観察者の左眼の位置において、この強度分布4’の高次回折は、観察者の他方の眼を妨害しないように低減される。
【0053】
図2は、変調器セルに対するアポダイゼーションマスクで実現されるアポダイゼーション関数を示すグラフである。このアポダイゼーション関数は、目標値に従って回折光の±2次で開始する回折次数を均一に低減する。この図において、例示的な計算は1次元に対してのみ実行された。一般に、2次元の変調器セルの面積範囲がその計算において考慮される必要がある。この例において、変調器セルは、矩形であり且つ矩形の透過率曲線を示すと仮定される。
【0054】
アポダイゼーション関数を計算するためには、光変調器の2つの隣接する変調器セルの間の距離を認識することが重要である。これにより、特に個々の高次回折のみが低減される場合、変調器セルのマトリクスにおいて回折次数の場所が正確に見つけられる。隣接する回折次数の連続した範囲において強度が低下される場合は、距離を認識することはそれ程重要でない。
【0055】
光変調器からの距離Dのところの規定済みの位置において、回折次数は1次元で範囲D・λ/pを有する。λは光の波長であり、pはその次元における同一の所定のグループの2つの隣接する変調器セルの中心間の距離(ピッチ)である。
【0056】
図3は、光変調器のフーリエ平面におけるアポダイゼーションマスクを有する単一の変調器セル及びアポダイゼーションマスクを有さない単一の変調器セルの回折パターンを示す。図中、振幅は対数目盛りで示される。
【0057】
曲線K1は、変調器セルのアパーチャにわたり一定である矩形の透過率に対するsinc関数としてアポダイゼーションなしで計算される回折パターンを示す。振幅が変調器セルのアパーチャ内の全ての走査点において値1に設定されるような透過率プロファイルは、曲線K2が計算された反復処理に対する初期値としても使用される。セルの距離と同一の大きさのアパーチャを有する変調器セルにおいて、sinc関数の2つの極小値の間の距離は回折次数の範囲に対応する。アパーチャがセルの距離より小さい場合、回折次数はアパーチャとセルの距離との同一比率だけ小さい。
【0058】
曲線K2は、図2のアポダイゼーション関数から結果として得られる反復処理により計算されたフーリエ平面における振幅プロファイルを示す。反復処理は5つの反復ステップの後に終了され、結果はアポダイゼーション関数の計算に使用された。
【0059】
中央の突出部の左右の図のK2の高次回折の相対的な強度は、K1と比較して低下されているのが明らかである。
【0060】
ここでは、正の回折次数及び負の回折次数の対称的な低減が規定されたため、計算結果はアポダイゼーション関数の実際の振幅値又は強度値の分布である。
【0061】
このアポダイゼーション関数は、高次回折の均一な低減に対するアポダイゼーションマスクの第1の実施形態で実現される。計算結果は、従来の解析アポダイゼーション関数により取得される曲線に性質的に類似する。この例は、反復処理が一般的な例にも適用可能であることを示す。アポダイゼーション関数を変更する反復処理を使用する利点は、第2の実施形態において更に明らかとなるだろう。
【0062】
図4〜図6は、負の回折次数のみを低減するアポダイゼーション関数が実現されるアポダイゼーションマスクの第2の実施形態を示す。
【0063】
そのような一実施形態の応用例は、1つの変調器セルグループが左眼用可視領域の生成に使用され且つ別の変調器セルグループが右眼用可視領域の生成に使用されるような光変調器を有するホログラフィック直視型ディスプレイである。
【0064】
再構成を生成するホログラフィックディスプレイの光変調器において、フーリエ平面は、同時に再構成が可視である可視領域が位置付けられる平面でもある。右眼に対する左側の可視領域のクロストークは、例えば各変調器セルグループの好適な正の回折次数における強度によってのみ影響を受ける。左眼に対する右側の可視領域のクロストークは、他の変調器セルグループの負の回折次数のみが低減される必要があるように他の変調器セルグループの負の回折次数によってのみ影響を受ける。
【0065】
図4は、アポダイゼーション関数の余弦型曲線を有する回折次数の低減(曲線K3)及び負の回折次数のみの低減を伴う反復計算の結果(曲線K4)に対する等倍のフーリエ平面における回折パターンの振幅プロファイルを示す。
【0066】
曲線K4の強度プロファイルは反復ステップにより計算された。これにより、余弦型のアポダイゼーション関数により、また余弦型のアポダイゼーション関数に関して負の高次回折が低減される。正の高次回折は、アポダイゼーションなしの矩形の透過率プロファイルの回折パターン、すなわち図3のsinc関数K1の回折パターンとほぼ同一の大きさである。
【0067】
高次回折の残りの強度に関して、負の回折次数のみを使用することは本実施形態において何も利点を示さない。利点は、変調器セルのアポダイゼーションプロファイルが考慮され、負の次数を低減させる場合にのみ明らかとなるだろう。
【0068】
図5及び図6は、図4に係る変調器セルにわたる複素値のアポダイゼーション関数の振幅プロファイル及び位相プロファイルを示すグラフである。
【0069】
図5は、複素値の振幅プロファイルの曲線M4に加えて、曲線M3である余弦型アポダイゼーションの振幅プロファイルを示す。この余弦型アポダイゼーションにおいて、位相は変調器セルにわたり一定である。余弦型のアポダイゼーション関数の振幅プロファイルにより、光は変調器セルの周辺領域において吸収される。全体として、このアポダイゼーション関数を提供されるアポダイゼーションマスクが変調器セルの全体的な透過率を低下させるのは明らかである。アポダイゼーションが1次元でのみ実行される場合は50%であり、2次元の余弦アポダイゼーションの場合は25%である。−π/2とπ/2との間の二乗余弦の平均値に対応する(強度=振幅二乗)。これにより、0次回折に対して高次回折の光度が低下されるが、絶対強度が0次を含む全ての回折次数で同等に低減されるのは欠点である。これは、図4からは分からない。図4では、高い次数の低減の比較を容易にするために、振幅プロファイルは1に正規化される。
【0070】
これに対して、反復処理を使用して見つけられるアポダイゼーション関数を有する透過率は非常に高い。図5を参照すると、曲線M4の振幅及び従って強度は、変調器セルの中央領域においてほぼ1であり、エッジに向かって僅かに低下する。
【0071】
負の高次回折の低減に対する制約は、上述した他の使用された回折次数において強度を実質的に損失するという欠点なしで、それらの回折次数でほぼ同等に良好な結果を示す。
【0072】
高い次数の低減が0次と対称をなさないため、結果として得られるアポダイゼーション関数は複素値を有する。
【0073】
回折次数の対称的な挙動のために、アポダイゼーション関数の振幅プロファイルが同一になるように選択されるが位相プロファイルがミラーリングされるため、全ての正の高次回折の低減に対するアポダイゼーション関数は新しい反復処理なしで取得される。
【0074】
1つの変調器セルグループが左眼用の可視領域の生成に使用され且つ別の変調器セルグループが右眼用の可視領域の生成に使用される光変調器を有するホログラフィック直視型ディスプレイにおいて、アポダイゼーションマスクは全ての変調器セルに対して図5に示すような振幅プロファイル、曲線M4を有する。しかし、位相プロファイルに関しては、1つの変調器セルグループは図6に示すようなプロファイルを有し、別のグループはこの位相プロファイルに対してミラーリングされる位相プロファイルを有する。
【0075】
アポダイゼーション関数の変更されたプロファイルは、1つの方程式により単純に記述できないことが上述したことから明らかとなる。第2の実施形態は、解析アポダイゼーション関数が既知ではない応用例において、方法が一般に使用可能であることを示す。
【0076】
全ての正の高次回折又は全ての負の高次回折が低減されるわけではなく且つ好適な回折次数のみが低減される場合、アポダイゼーション関数の更なる最適化が可能である。本明細書で説明するホログラフィック直視型ディスプレイにおいて、これらは隣接する眼に入射する回折次数であるのが好ましい。
【0077】
この規定により採用される次数は、変調器セルのセル距離(ピッチ)及びディスプレイまでの好適な観察者の距離のようなパラメータに依存する。例えば影響を受けた次数は、+3次及び+4次又は−3次及び−4次回折であってもよい。
【0078】
変調器セルが左眼又は右眼に固定的に割り当てられていないホログラフィック直視型ディスプレイにおいて、+3次及び+4次又は−3次及び−4次回折等の好適な次数が全ての変調器セルに対して同様に低減されるようにアポダイゼーション関数を計算することは理解される。例えばこれは、左眼及び右眼に対して順に表示されるホログラムに当てはまる。あるいは、1つの観察者位置に対する左眼に対して特定の変調器セルを割り当て且つ別の観察者位置に対する右眼に対して特定の変調器セルを割り当てるディスプレイにおける観察者追跡機能に当てはまる。他方の各眼に対するクロストークは同一の変調器セルを有するいずれかの側で低減される。
【0079】
そのようなアポダイゼーション関数は、全ての高次回折の均一な低減に対して利点を有する。
【0080】
図7は、好適な回折次数(図中、矢印で示される)の領域の低減に対するフーリエ平面における回折パターンの1に正規化された振幅プロファイルK5を示す。ここで、低減は図4の曲線K3による余弦型のアポダイゼーションによるものより適切である。
【0081】
図8は、図7に係る変調器セルにわたる曲線M5の振幅プロファイルを示す。対称的なプロファイルのために、アポダイゼーション関数はここでも実数値を有する。位相は常にゼロである。
【0082】
アポダイゼーションマスクを有さない変調器セルに対して約62%の透過率の場合、その透過率は、約50%になる余弦型アポダイゼーションの場合より高い。
【0083】
他の応用例において、目標値の一致した規定を有する反復計算は、好適な回折次数の強度値の増加をもたらす。
【0084】
図9は、光変調器の規則的に配置された変調器セルにより詳細を概略的に示す。各変調器セルは、1次元で計算されたアポダイゼーション関数を有するアポダイゼーションマスクを割り当てられる。本明細書において、1次元とは、アポダイゼーション関数の振幅値及び位相値が一方向にのみ、ここでは水平方向にのみ変化し且つ変調器セルの種々の位置に対して直交方向、ここでは垂直方向に同一であることを意味する。更にこの例において、1つの変調器セルグループのみが存在し、これは、全ての変調器セルが同一のアポダイゼーション関数を有することを意味する。
【0085】
図10は、2つの変調器セルグループを形成する規則的に配置された変調器セルにより詳細を概略的に示す。
【0086】
アポダイゼーションマスクは、双方のグループに対して、更に常に2次元で計算される異なるアポダイゼーション関数を含む。
【0087】
これらの変調器セルグループは種々の目的で使用可能であり、アポダイゼーション関数はグループ毎に別個に計算される。
【0088】
本明細書において、2次元とは、アポダイゼーション関数の振幅値及び位相値が変調器セルにおいて水平方向及び垂直方向の二方向に変化することを意味する。
【0089】
図11は、2次元アポダイゼーション関数により実現される2次元のグレースケールプロファイルである二乗変調器セルの回折パターンを概略的に示す。相対的な輝度を非線形的に示す。この図は、好適な回折次数の範囲の低減に対する一例を示す。
【0090】
図10と同様に、他方の眼がホログラフィック直視型ディスプレイにおいて0次回折に位置する場合、隣接する右眼又は左眼に当たるそれらの回折次数のみが低減される。低減した回折次数の範囲が垂直方向に制限される。これを図において2つの黒色の矩形の形態で示す。この結果は、約77%の透過率を有するアポダイゼーション関数により達成される。
【0091】
種々のアポダイゼーション関数を有する変調器セルグループの応用の別の例は、3Dオブジェクトのカラー表現である。
【0092】
多くの種類の光変調器において、カラー表現は、例えば赤色フィルタ、緑色フィルタ又は青色フィルタを使用して取得される種々の原色の変調器セルの空間的インタリーブにより達成される。そのような色の空間的インタリーブにより、各原色の変調器セルは所定のグループを形成する。グループ毎に種々のアポダイゼーション関数が見つけられる。
【0093】
尚、コヒーレント照明が使用される場合、アポダイゼーション関数を見つける時に回折次数の幅は波長に比例して変化する。
【0094】
左眼/右眼に対する可視領域の間の妨害するクロストークがアポダイゼーションマスクを使用して防止されるようなそれらの2つの可視領域を有するホログラフィック直視型ディスプレイにおいて、赤色光、緑色光及び青色光に対する高次回折は隣接する眼に対して異なる位置を有する。従って、回折次数の実質的な低減を達成するために、アポダイゼーション関数は、個々の各色の変調器セルグループに対するフーリエ平面の種々の設定値を使用して別個に計算される必要がある。
【0095】
光変調器の変調器セルをカラーグループに分割することは、グループ分割の他のシステムと組み合わされる。3Dディスプレイにおいて変調器セルが更に固定的に左眼又は右眼に割り当てられる場合、例えば赤色光及び左眼に対する変調器セルはアポダイゼーション関数が見つけられる1グループを形成できる。
【0096】
本発明の更なる利点は、変調器セルグループ又はホログラフィック直視型ディスプレイの少なくとも1つの光変調器に対するアポダイゼーション関数を見つけるために、反復処理が計算ユニットにおいてオフラインで1度だけ実行されることである。反復アルゴリズムの他の応用例に対して、計算負荷及び必要とされる計算時間は役割を果たさない。
【0097】
ここで、空間光変調器の規則的に配置された変調器セルに割り当てられるアポダイゼーションマスクに対する最適化されたアポダイゼーション関数を判定する方法を説明する。前記方法は反復処理を含む。
【0098】
第1に、強度値は、反復処理を実行するために光路の規定された位置に対する好適な回折次数又はその区間で設定値としての役割を果たすように規定される。
【0099】
初期アポダイゼーション関数としてアポダイゼーション関数を規定した後、所定の変調器セルグループの変調器セルの既知の形状及びサイズを使用して、その変調器セルの透過率プロファイルは変調器セル内又はセル外の格子の複数の走査点により表される。一般に透過率プロファイルは、複素値の形態の振幅/位相プロファイル又は振幅プロファイルであると理解される。
【0100】
製造工程の点分解能が制限される場合、これらの走査点の格子は変調器セルにわたる透過率プロファイルの作成が技術的に実現可能である分解能と一致する。理想的には、アナログ透過率プロファイルが一般に望ましい。
【0101】
例えば透過率プロファイルが1μmの分解能で実現される60×60μmのサイズの変調器セルは、各次元が60走査点で表される。
【0102】
連続透過率プロファイルを技術的に製造できる場合、後者は走査点により計算において近似される。
【0103】
変調器セル内で透過率プロファイルを表す走査点は、初期の位相値及び振幅値を与えられる。最も単純な例において、これは変調器セルのアパーチャ内で1の透過率を有する矩形関数であるか又は他の既知の何らかの解析アポダイゼーション関数である。
【0104】
変調器セルのアパーチャ外で透過率がないため、そこに位置付けられる走査点はゼロに設定される。初期のアポダイゼーション関数には所定の初期値が提供され、この関数は反復処理を使用して最適化される。これは、特に最適化される光変調器のフーリエ平面における強度値の分布である。
【0105】
位相値及び振幅値は、光変調器の平面からフーリエ平面に変換される。これにより、フーリエ平面には、複数の回折次数にわたる振幅値又は複素値の分布が与えられる。
【0106】
フーリエ変換を使用して計算が行われるため、計算されるフーリエ平面における回折次数の数は、変調器セル(アパーチャ及びセル周辺部)内の走査点の数に対応し、フーリエ平面における1つの回折次数内の複素値の数は、走査点の総数及び変調器セル内の走査点の比に対応する。
【0107】
フーリエ平面において、振幅値又は複素値は所定の回折次数又はその区間における設定値で置換され、残りの回折次数において、上述した値は変換により得られ、光変調器の平面に逆変換される。
【0108】
光変調器の平面において、逆変換により計算される変調器セルのアパーチャ内の振幅値又は複素値は次の反復ステップに伝達され、変調器セルのアパーチャ外に位置する振幅値又は複素値はゼロに設定される。
【0109】
ここで、フーリエ平面への所定の値の変換を行う別の反復ステップが開始される。
【0110】
反復処理は、事前定義済みの反復ステップ数の後に終了されるか又は別の事前定義済みの終了基準が満たされた時に終了される。
【0111】
例えば、終了基準として置換前に高次回折における設定値をフーリエ平面における実際値と比較できる。反復は、設定値からの実際値の偏差が特定の閾値を下回る場合に終了される。光変調器の平面及びそのフーリエ平面の一方における1つの反復ステップにおけるそれら2つの平面の間のフーリエ変換の計算結果である複素値は、ここでは実際値と呼ばれる。
【0112】
反復処理の周期に対して更なる条件を導入できる。例えば、振幅値及び位相値が変調器セル内で量子化されること、並びに変調器セルの走査点に対する各反復ステップにおいて実際値を引き継ぐ代わりに各実際値に対する最小差分を有するそれらの量子化値がアポダイゼーション関数に対して使用されることを指定できる。
【0113】
このために、実際値の振幅は、それらの値の範囲が量子化値の範囲と一致するように正規化されるのが好ましい。0〜1の範囲への正規化は、最大振幅による除算により達成される。
【0114】
量子化アポダイゼーション関数のそのような計算は、アポダイゼーション関数がアポダイゼーションマスクの特定の製造工程において計算される場合且つ制限された数の種々のグレースケール値又は位相値のみがその方法により実現される場合に特に適切である。この特別な例は、黒色の完全に透過的な区間、すなわち2つの量子化ステップのみを含む2進アポダイゼーションマスクである。
【0115】
方法の別の変形例において、アポダイゼーション関数は位相限定関数であることを指定できる。位相関数は、光変調器の透過率がアポダイゼーションマスクにより低下されないという利点を有する。位相関数の場合、各反復ステップにおいて、複素値である実際値の位相部分が引き継がれ、絶対値が変調器セルのアパーチャ内の走査点において1に設定される。
【0116】
負の次数のみ又は正の次数のみを低減するために、例えば位相限定関数を使用できる。これは図4の曲線K4とは異なりそれらの回折次数においてある程度大きい残りの強度値を出力するが、この結果は光変調器の透過率を低下せずに完璧に達成される。
【0117】
終了基準に対する別のオプションは、振幅を最小値に設定することである。
【0118】
アポダイゼーションマスクを製造する特定の方法によると、走査点の距離がマスクの空間分解能に対応するように又は僅かに大きくなるように変調器セルのサイズに依存して計算する走査点を選択し、その結果、アポダイゼーションマスクが走査点間の補間により作成されることが理解される。
【0119】
アポダイゼーション関数を判定する反復処理の利点は、特定の応用例に対して最適化されるアポダイゼーション関数が計算され且つアポダイゼーションマスクにおいて実現されることである。これに対して、標準的なアポダイゼーション関数は、全ての高次回折において光の強度の均一な全体的な低下のみを可能にする。ここで、一般に強度の低下は、特定の高次回折に対して最適化される強度より重要である。
【0120】
更に、特定の応用例に対して最適化されるアポダイゼーション関数を使用する場合、光変調器の透過率は標準的なアポダイゼーション関数を使用する場合より低下する。
【0121】
判定されたアポダイゼーション関数を提供されるアポダイゼーションマスクは、制御可能な光変調器における所望の振幅透過率及び従って高次回折の低減を実現する。この光変調器は、左眼/右眼に別個に割り当てられるフーリエ平面における可視領域を有するホログラフィック直視型ディスプレイ又は観察者の眼に対する空間オブジェクトの表現のための立体ディスプレイにおいて使用可能である。後者の種類のディスプレイにおいては、コヒーレント光による照明が不可欠である。アポダイゼーション関数を使用して、左眼と右眼との間の立体ビューの可視領域間のクロストークが最小限にされる。
【0122】
上述のディスプレイにおいて、観察者に対して規定された距離のところで生成される可視領域の空間的インタリーブが実現される場合且つ変調器セルが観察者の左眼又は右眼に固定的に割り当てられる場合、変調器セルグループは、各グループの回折光が観察者の各眼に割り当てられるフーリエ平面の可視領域を生成するように指定される。一方のグループの設定された光度は他方のグループの観察者の眼において観察者の所定の距離のところで最小限にされ、また、その逆も成り立つ。この場合、観察者の左眼に対する変調器セルは、観察者の右眼に対する変調器セルのアポダイゼーション関数とは異なるアポダイゼーション関数を示す。
【0123】
制御可能な光変調器の変調器セルの場合、光変調器が回折されたコヒーレント光の回折次数において個々に指定された強度分布を好適に実現する際に使用するアポダイゼーションマスクが設計される。このために、アポダイゼーションマスクのアポダイゼーション関数が判定された。ここで、所定の高次回折における光度の目標値は単純な方法で計算において考慮される必要がある。そのように変更されたアポダイゼーション関数がアポダイゼーションマスクにおいて実現されることは技術的に可能である。更に、連続プロファイルをアポダイゼーション関数に与えることができるか、あるいはアポダイゼーションマスクにおいて変調器セルにわたり単一ステップで別個の値を有するアポダイゼーション関数を実現できる。
【0124】
本発明により、解析関数により記述できないアポダイゼーション関数として変調器セルの振幅及び/又は位相プロファイルが使用できる。
【0125】
ここで、アポダイゼーションは、単一の関数(余弦等)又は最も単純な例においては2進ステップにより可能にされるのが好ましい。更に変調器セルの限界効果の妨害は、例えば変調器セルの周辺部が暗くされるか又は切り離されるため、アポダイズされた強度又は位相プロファイルにより弱められる。これにより、再構成品質は可視領域自体において向上される。
【0126】
本発明は、液晶セルを有する変調器及びエレクトロウェッティングセル又は他の種類のセルを有する変調器において適用可能である。SLM及び従ってホログラフィック又は裸眼立体ディスプレイは、反射型又は透過型であってもよい。本発明で説明するディスプレイは直視型ディスプレイである。
【0127】
MEMSを用いた反射ピストンマイクロミラーアレイがSLMとして使用される場合、変調器セルに反射率傾斜が与えられるため、アポダイゼーションマスクのアレイが実現可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−光を回折する変調器セルのマトリクスを有する少なくとも1つの制御可能な空間光変調器であり、前記光変調器の遠視野において個々に事前定義済みの強度プロファイルを実現する空間光変調器と、
−十分にコヒーレントな光の位相及び/又は振幅を変調する各変調器セルがアポダイゼーションマスクに割り当てられるアポダイゼーションマスクのアレイと、
−同一のアポダイゼーション関数を有するアポダイゼーションマスクに割り当てられる少なくとも1つの規定された変調器セルグループと、
−前記少なくとも1つの変調器セルグループに対して設定され且つ実現される前記事前定義済みの強度プロファイルに従って前記変調器セルグループに対して前記アポダイゼーション関数を設定する複素振幅透過率であり、前記事前定義済みの強度プロファイルが少なくとも1つの高次回折における光度及び/又は前記光変調器により放射される迷光の光度の低下を含む複素振幅透過率とを備えることを特徴とするホログラフィック直視型ディスプレイ。
【請求項2】
前記アポダイゼーション関数は、少なくとも1次元で前記複素振幅透過率の位相及び/又は絶対値の一定でないプロファイルを示すことを特徴とする請求項1記載のホログラフィック直視型ディスプレイ。
【請求項3】
前記アポダイゼーション関数は、変調器セルの中央で最大値を有し、変調器セルのエッジに向かって徐々に低下する複素振幅透過率を有することを特徴とする請求項2記載のホログラフィック直視型ディスプレイ。
【請求項4】
前記アポダイゼーション関数は、所定の形状、サイズ及び幾何学的配置に依存し且つ変調器セルの現在固有の複素振幅透過率に依存して計算されることを特徴とする請求項2記載のホログラフィック直視型ディスプレイ。
【請求項5】
前記アポダイゼーション関数は、別個の走査点において前記複素振幅透過率を記述する数値により前記走査点において規定され、前記走査点は、前記アポダイゼーションマスクにより空間分解可能である相互距離を示すことを特徴とする請求項1記載のホログラフィック直視型ディスプレイ。
【請求項6】
少なくとも2つの制御可能な光変調器は共にはさまれ、各光変調器は専用のアポダイゼーションマスクを有するか又は前記少なくとも2つの光変調器は共通のアポダイゼーションマスクを有することを特徴とする請求項1記載のホログラフィック直視型ディスプレイ。
【請求項7】
前記少なくとも2つの光変調器の一方は、エレクトロウェッティングセルを含むプリズムアレイを形成するように設計されることを特徴とする請求項6記載のホログラフィック直視型ディスプレイ。
【請求項8】
前記エレクトロウェッティングセルのプリズムアレイは前記アポダイゼーションマスクを含むことを特徴とする請求項7記載のホログラフィック直視型ディスプレイ。
【請求項9】
前記所定の変調器セルグループの前記アポダイゼーションマスクは、前記回折光の前記遠視野の所定の区間において事前定義済みの強度値を有する強度プロファイルを設定することを特徴とする請求項1記載のホログラフィック直視型ディスプレイ。
【請求項10】
前記遠視野の前記所定の区間は、少なくとも1次元で負の回折次数又は正の回折次数のみを含むことを特徴とする請求項9記載のホログラフィック直視型ディスプレイ。
【請求項11】
全ての変調器セルは、同一のアポダイゼーション関数を有することを特徴とする請求項1記載のホログラフィック直視型ディスプレイ。
【請求項12】
変調器セルは観察者の左眼又は右眼に割り当てられ、変調器セルは前記光変調器に対する観察者距離範囲において前記観察者の眼にそれぞれ割り当てられる可視領域を生成する所定の変調器セルグループを形成し、前記アポダイゼーションマスクを使用して設定される前記一方のグループの前記強度プロファイルは前記他方のグループの前記観察者の眼の位置において最小にされ且つその逆も成り立つことを特徴とする請求項1記載のホログラフィック直視型ディスプレイ。
【請求項13】
前記アポダイゼーションマスクは、複素振幅透過率が絶対定数値を有する可変位相関数として形成されるアポダイゼーション関数を示すことを特徴とする請求項1記載のホログラフィック直視型ディスプレイ。
【請求項14】
前記アポダイゼーションマスクは、迷光を好適に低減するように複素振幅透過率が2進表現であるアポダイゼーション関数を示すことを特徴とする請求項1記載のホログラフィック直視型ディスプレイ。
【請求項15】
前記アポダイゼーション関数を判定するために、計算ユニットにおいて計算ルーチンとして実行され且つ検索されるためにメモリユニットに結果を提供する反復処理が使用されることを特徴とする請求項1記載のホログラフィック直視型ディスプレイ。
【請求項16】
前記反復処理は、変換が前記光変調器の平面と前記遠視野におけるそのフーリエ平面との間で実行されるフーリエ変換を含み、前記変調器セルで回折される前記光は、前記遠視野の前記所定の区間において所定の強度値に近似されることを特徴とする請求項9及び15記載のホログラフィック直視型ディスプレイ。
【請求項17】
前記アポダイゼーションマスクは、投影リソグラフィ法、干渉リソグラフィ法又はグレースケールリソグラフィ法により製造される振幅マスクであることを特徴とする請求項1記載のホログラフィック直視型ディスプレイ。
【請求項18】
前記アポダイゼーションマスクは、高分子又はガラス基板における屈折率変調又は表面形状を生成することにより製造される位相マスクであることを特徴とする請求項1記載のホログラフィック直視型ディスプレイ。
【請求項19】
1つの原色にそれぞれ割り当てられる前記変調器セルは、所定の変調器セルグループを形成することを特徴とする請求項1から18の少なくとも1項に記載のホログラフィック直視型ディスプレイ。
【請求項20】
前記遠視野の前記所定の区間は、前記強度値を最小にする全ての原色に対する同一の回折角の範囲を含むことを特徴とする請求項19記載のホログラフィック直視型ディスプレイ。
【請求項21】
アレイに配置され且つ請求項1記載の制御可能な空間光変調器の変調器セルのマトリクスに割り当てられるアポダイゼーションマスクに対するアポダイゼーション関数を判定する方法であって、前記方法は反復処理ステップで実行されることを特徴とする方法。
【請求項22】
−所定のグループの変調器セルの回折次数の位置を判定する処理ステップと、
−前記遠視野における好適な回折次数又はその区間において個々に事前定義済みの強度プロファイルを規定する処理ステップと、
−前記所定のグループの単一の変調器セルに対する初期のアポダイゼーション関数を規定する処理ステップと、
−前記遠視野において、その区間の前記好適な回折次数において前記事前定義済みの強度プロファイルに近似するために前記アポダイゼーション関数の複素振幅透過率を段階的に最適化する処理ステップと
を含むことを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
変調器セルの複素振幅透過率は、前記変調器セルのアパーチャ内及びアパーチャ外の多数の走査点を規定することにより判定され、
前記遠視野における前記強度プロファイルは、同一数の走査点において前記複素振幅透過率のフーリエ変換の二乗絶対値により判定され、
更なる処理ステップにおいて、
−前記変調器セルの前記アパーチャ外の前記走査点がゼロに設定され、
−前記複素振幅透過率のフーリエ変換が前記遠視野における前記フーリエ平面に対して実行され、
−前記遠視野の前記好適な回折次数又はその区間における前記走査点の振幅が前記走査点における前記事前定義済み強度値の平方根に対応する値に設定され、
−前記遠視野の複素値の逆フーリエ変換が前記光変調器の平面に対して実行されるように前記アポダイゼーション関数の前記複素振幅透過率の前記段階的な最適化が行われることを特徴とする請求項22記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−525638(P2011−525638A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515251(P2011−515251)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050476
【国際公開番号】WO2009/156191
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(507230267)シーリアル テクノロジーズ ソシエテ アノニム (89)
【氏名又は名称原語表記】SEEREAL TECHNOLOGIES S.A.
【Fターム(参考)】