アポトーシスを調節するための核酸、ポリペプチド、及びアポトーシスを調節する方法
本発明は、哺乳動物組織、特に哺乳動物の心臓組織内の虚血の発生を識別する方法を提供する。さらに、哺乳動物組織、好ましくは心臓組織内のアポトーシスを低減する方法が提供される。これらの方法は、アポトーシス特異的eIF-5A及び増殖性eIF-5A双方の遺伝子発現レベルを測定して比較し、そしてアポトーシス特異的eIF-5a発現レベルが増殖性eIF-5A発現レベルよりも高い場合には、虚血の発生と相互関連させることを伴う。哺乳動物組織内のアポトーシスを低減する方法の場合、アポトーシス特異的eIF-5Aの発現を阻害する作用物質が提供される。好ましい作用物質は、ヒトアポトーシス特異的eIF-5Aに対するアンチセンス・オリゴヌクレオチドである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年7月23日付けで出願された米国特許出願第10/200,148号の部分継続出願であり、該米国特許出願第10/200,148号は、2002年5月7日付けで出願された米国特許出願第10/141,647号の部分継続出願であり、該米国特許出願第10/141,647号は、2001年7月23日付けで出願された米国特許出願第9/909,796号の部分継続出願である。
【0002】
本発明は、アポトーシス特異的な真核開始因子-5A(eIF-5A)及びデオキシハイプシン・シンターゼ(deoxyhypusine synthase)(DHS)核酸及びポリペプチド、並びにアポトーシス特異的eIF-5A及びDHSを使用して細胞内のアポトーシスを調節する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アポトーシスは、明確な形態的特徴、例えば細胞収縮、クロマチン凝縮、核断片化、及び膜泡状突起形成を特徴とする、遺伝的にプログラミングされた細胞事象である。Kerr他(1972)Br. J. Cancer, 26, 239-257;Wyllie他(1980) Int. Rev. Cytol., 68, 251-306。アポトーシスは、正常な組織発達及びホメオスタシスにおいて重要な役割を果たし、またアポトーシス・プログラムの欠陥は、神経変性障害及び自己免疫障害から新生組織形成に至る広範囲のヒトの障害に関与すると考えられる。Thompson(1995) Science, 267, 1456-1462;Mullauer他(2001) Mutat. Res, 448, 211-231。アポトーシス細胞の形態的特徴は明確に定義されてはいるものの、このプロセスを調節する分子経路は、解明され始めたばかりである。
【0004】
アポトーシスにおいて重要な役割を果たすと考えられる1つのタンパク質群は、ほとんどのアポトーシス経路に必要とされると思われる、カスパーゼと呼ばれるシステイン・プロテアーゼから成る属である。Creagh & Martin(2001) Biochem. Soc. Trans, 29, 696-701;Dales他(2001) Leuk. Lymphoma, 41, 247-253。カスパーゼは、種々の細胞タンパク質を開裂することによりアポトーシス刺激に応答して、アポトーシスをトリガーする。その結果、細胞収縮、膜泡状突起形成及びDNA断片化を含む古典的なアポトーシス発現が生じる。Chang & Yang (200) Microbiol. Mol. Biol. Rev., 64, 821-846。
【0005】
アポトーシス促進タンパク質、例えばBax又はBakも、カスパーゼ活性化分子、例えばミトコンドリア・サイトクロームcを放出し、これによりアポトーシスを介して細胞死を促進することにより、アポトーシス経路において重要な役割を演じる。Martinou & Green (2001) Nat. Rev. Mol. Cell. Biol., 2, 63-67;Zou他(1997) Cell, 90, 405-413。抗アポトーシス・タンパク質、例えばBcl-2は、アポトーシス促進タンパク質Bax及びBakの活性に拮抗することにより、細胞の生存を促進する。Tsujmoto (1988) Genes Cells, 3, 697-707;Kroemer (1997) Nature Med., 3, 614-620。Bax:Bcl-2の比は、細胞の運命の1つの決定のしかたであると考えられ、過剰のBaxはアポトーシスを促進し、そして過剰のBcl-2は細胞の生存を促進する。Salomons他(1997) Int. J. Cancer, 71, 959-965;Wallace-Brodeur & Lowe (1999) Cell Mol. Life Sci., 55, 64-75。
【0006】
アポトーシスに関与する別の重要なタンパク質は、腫瘍サプレッサー遺伝子p53によってコードされるタンパク質である。このタンパク質は転写因子であり、この転写因子はおそらくはBaxのアップレギュレーションによって、細胞成長を調節し、そして損傷されて遺伝子的に不安定な細胞にアポトーシスを誘発する。Bold他(1997) Surgical Oncology, 6, 133-142;Ronen他、1996;Schuler及びGreen(2001) Biochem. Soc. Trans., 29, 684-688;Ryan他(2001) Curr. Opin. Cell Biol., 13, 332-337;Zoernig他(2001) Biochem. Biophys. Acta, 1555, F1-F37。
【0007】
アポトーシスを蒙った細胞を特徴付ける明確な形態的特徴は、アポトーシスの開始及び進行を評価する数多くの方法を生み出した。これらの検出に関して活用できるアポトーシス細胞の1つのこのような特徴は、フリッパーゼの活性化である。フリッパーゼの活性化の結果、原形質膜の内側リーフレットに通常は局在化されるリン脂質であるホスファチジルセリンが外在化される。Fadok他(1992) J. Immunol., 149, 4029-4035。外在化ホスファチジルセリンを担持するアポトーシス細胞は、蛍光色素に接合されたホスファチジルセリン結合タンパク質、アネキシン(Annexin)Vで染色することにより、検出することができる。アポトーシス・プロセス中に発生する特徴的なDNA断片化は、DNA断片の露出3'-OH末端をフルオレセイン標識デオキシヌクレオチドで標識付けすることにより検出することができる。核酸と結合する蛍光色素、例えばヘキスト(Hoescht) 33258を使用することにより、アポトーシス細胞内のクロマチン凝縮及び核断片化を検出することができる。細胞個体群中のアポトーシス度を、細胞抽出物中に存在するカスパーゼタンパク質分解活性の程度から推論することもできる。
【0008】
遺伝学的に定義されるプロセスとして、他の発生プログラムと同様に、アポトーシスを突然変異によって妨害することができる。アポトーシス経路の変化は、癌を含む多数の疾患プロセスにおいて重要な役割を演じると考えられる。Wyllie他(1980) Int. Rev. Cytol., 68, 251-306;Thompson(1995) Science, 267, 1456-1462;Sen & D'Incalci(1992) FEBS Letters, 307, 122-127;McDonnell他(1995) Seminars in Cancer and Biology, 6, 53-60。癌の発生及び進行に関する調査は、細胞増殖に焦点が当てられるのが伝統的である。しかし、アポトーシスが腫瘍形成において演じる重要な役割が最近明らかになってきている。事実、アポトーシスに関して現在知られているもののほとんどは、腫瘍モデルを用いて得られたものである。それというのもアポトーシスのコントロールは、腫瘍細胞内で何らかの形式で常に変化するからである。Bold他(1997) Surgical Oncology, 6, 133-142。
【0009】
腫瘍発生中に種々のシグナルによって、アポトーシスをトリガーすることができる。細胞外シグナルは成長因子又は生存因子の枯渇、低酸素状態及び電離放射線を含む。アポトーシスをトリガすることができる内部シグナルは、DNA損傷、短縮した短鎖重合体、及び不適切な増殖シグナルを生成する発癌突然変異を含む。Lowe及びLin(2000) Carcinogenesis, 21, 485-495。悪性腫瘍を治療するのに使用される電離放射線、及びほとんど全ての細胞毒性化学治療剤は、内在性アポトーシス・メカニズムをトリガーして細胞死を誘発することにより作用すると考えられる。Rowan及びFisher (1997) Leukemia, 11, 457-465;Kerr他(1994) Cancer, 73, 2013-2026;Martin及びSchwartz(1997) Oncology Research 9,1-5。
【0010】
癌の進行の早期には腫瘍細胞はアポトーシスを誘発する作用物質(例えば電離放射線又は化学治療薬)に対して感受性を有することが、証拠によって示唆される。しかし、腫瘍が進行するにつれて、細胞はアポトーシス刺激に対して耐性になる。Naik他(1996) Genes and Deveopment, 10, 2105-2116。このことにより、なぜ早期癌が、より進行した病変よりも治療に対して良好に応答するかを説明することができる。化学療法及び放射線治療に対して耐性になる後期癌の能力は、アポトーシス刺激に応答する腫瘍細胞の能力を制限する、アポトーシス経路における変化に関連するように思われる。Reed他(1996) Journal of Cellular Biology, 60, 23-32;Meyn他(1996) Cancer Metastasis Reviews, 15, 119-131;Hannun(1997) Blood, 89, 1845-1853;Reed(1995) Toxicology Letters, 82-83, 155-158;Hickman (1996) European Journal of Cancer, 32A, 921-926。化学療法に対する耐性は、慢性リンパ球性白血病における抗アポトーシス遺伝子bcl-2の過剰発現、及び大腸癌におけるアポトーシス促進性bax遺伝子の欠失又は突然変異と相互関連させられている。
【0011】
散在性転移の確立に成功する腫瘍細胞の能力もまた、アポトーシス経路の変化を伴うと思われる。Bold他(1997)Surgical Oncology, 6, 133-142。例えば、腫瘍サプレッサー遺伝子p53における突然変異は、腫瘍の70%に発生すると考えられる。Evan他(1995) Curr. Opin. Cell Biol., 7, 825-834。P53を不活性化する突然変異は、DNA損傷に応答してアポトーシスを誘発する細胞の能力を制限し、細胞を更なる突然変異に対して脆弱なままにする。Ko & Prives(1996) Genes and Development, 10, 1054-1072。
【0012】
従って、アポトーシスは、腫瘍性形質変化及び転移の発生及び進行に密接に関与し、関与するアポトーシス経路をよりよく理解することは、遺伝子治療アプローチを介してアポトーシス経路を調節することによる癌治療のための新しい潜在的な標的をもたらすことができる。Bold他(1997) Surgical Oncology, 6, 133-142。
【0013】
デオキシハイプシン・シンターゼ(DHS)及びハイプシン含有真核翻訳開始因子-5A(eIF-5A)は、細胞の成長及び分化を含む多くの細胞プロセスにおいて重要な役割を演じることが知られている。独自のアミノ酸であるハイプシンは、真性細菌以外の試験済の全ての真核生物及び古細菌中に見いだされ、またeIF-5Aは唯一既知のハイプシン含有タンパク質である。Park(1988) J. Biol. Chem., 263, 7447-7449;Schuemann 及びKlink (1989) System. Appl. Microbiol, 11, 103-107;Bartig他(1990) System. Appl. Microbiol., 13, 112-116;Gordon他(1987a)J. Biol. Chem., 262, 16585-16589。活性eIF-5Aは2つの翻訳後ステップにおいて形成される。すなわち、第1ステップは、デオキシハイプシン・シンターゼによって触媒された前駆体eIF-5Aの特異的リジンのα-アミノ基に、スペルミジンの4-アミノブチル部分を移すことにより、デオキシハイプシン残基を形成することであり;第2ステップは、デオキシハイプシン・ヒドロキシラーゼによってこの4-アミノブチル部分をヒドロキシル化することにより、ハイプシンを形成することを伴う。
【0014】
eIF-5Aのアミノ酸配列は種の間で良好に保存され、そしてeIF-5A中では、ハイプシン残基を取り囲むアミノ酸配列が厳重に保存される。このことは、このような修飾が生き残りにとって重要であることを示唆する。Park他(1993) Biofactors, 4, 95-104。この想定はさらに、今日まで酵母中に見いだされたeIF-5Aの両イソ型の不活性化、又はこれらの活性化において第1ステップを触媒するDHS遺伝子の不活性が、細胞分裂をブロックするという観察により支持される。Schnier他(1991) Mol. Cell. Biol., 11, 3105-3114;Sasaki他(1996) FEBS Lett., 384, 151-154;Park他(1998) J. Biol. Chem., 273, 1677-1683。しかし、酵母中のeIF-5Aタンパク質が枯渇しても、タンパク質合成総量はわずかに減少するだけである。このことは、eIF-5Aがタンパク質合成全体にではなく、mRNAの特異的部分集合の翻訳に必要となることを示唆している。Kang他(1993)、「Effect of initiation factor eIF-5A depletion on cell proliferation and protein synthesis(細胞増殖及びタンパク質合成に対する開始因子eIF-5A枯渇の効果)」(Tuite,M.編、Protein Synthesis and Targeting in Yeast, NATO Series H.)。eIF-5Aと結合するリガンドが高保存モチーフを共有するという最近の発見も、eIF-5Aの重要性を支持する。Xu及びChen(2001) J. Biol. Chem., 276, 2555-2561。加えて、修飾eIF-5Aのハイプシン残基は、RNAとの配列特異的結合にとって不可欠であることが見いだされ、そしてこの結合はリボヌクレアーゼからの保護を可能にしなかった。
【0015】
eIF-5Aに対応する最初のcDNAが、1989年にSmit-McBride他によってヒトからクローニングされ、それ以来、eIF-5Aに対応するcDNA又は遺伝子が、酵母、ラット、ニワトリ胚、アルファルファ及びトマトを含む種々の真核生物からクローニングされている。Smit-McBride他(1989a) J. Biol. Chem., 264, 1578-1583;Schnier他(1991)(酵母);Sano, A.(1995)(Imahori, M.他編)、Polyamines, Basic and clinical Aspects, VNU Science Press, The Netherlands, 81-88(ラット);Rinaudo及びPark(1992) FASEB J., 6, A453(ニワトリ胚);Pay他(1991) Plant Mol. Biol., 17, 927-929(アルファルファ);Wang他(2001) J. Biol. Chem., 276, 17541-17549(トマト)。
【0016】
加えて、eIF-5Aの細胞内枯渇の結果、核内に特異的mRNAが著しく蓄積する。このことは、eIF-5Aが、核から細胞質へ特異的クラスのmRNAを往復させることに関与していることを示す。Liu及びTarkakoff(1997), Molecular Biology of the Cell別冊, 8, 426a. Abstract No. 2476, 第37回American Society for Cell Biology Annual Meeting。核孔に関連する核内フィラメントにeIF-5Aが蓄積され、そしてeIF-5Aが一般の核輸出受容体と相互作用することは、eIF-5Aがポリソームの1成分ではなく、核細胞質シャトル・タンパク質であることをさらに示唆する。Rosorius他(1999) J. Cell Science, 112, 2369-2380。
【0017】
種々のヒト組織及び哺乳動物細胞系において、eIF-5A mRNAの発現が探求されている。例えば、血清剥奪に続いて血清を加えた後、ヒト線維芽細胞中には、eIF-5A発現の変化が観察された。Pang及びChen(1994) J. Cell Physiol., 160, 531-538。老化しつつある線維芽細胞中には、デオキシハイプシン・シンターゼ活性の年齢に関連した減少及び豊富な前駆体eIF-5Aも観察されてはいるが、このことがイソ型の示差的な変化の平均を反映するという可能性は見極められなかった。Chen 及びChen(1997b) J. Cell Physiol., 170, 248-254。
【0018】
研究が示したところによれば、eIF-5Aは、ウィルス・タンパク質、例えばヒト免疫不全ウィルス1型Revタンパク質、及びヒトT細胞白血病ウィルス1型Rexタンパク質の細胞標的であり得る。Rhul他(1993) J. Cell Biol., 123, 1309-1320;Katahira他(1995) J. Virol., 69, 3125-3133。予備研究が示すところによれば、eIF-5Aは、他のRNA結合タンパク質、例えばRevと相互作用することによって、RNAを標的とすることができ、このことは、これらのウィルス・タンパク質が、ウィルスRNAプロセッシングのためにeIF-5Aを補充させることを示唆している。Liu他(1997) Biol. Signals, 6, 166-174。
【0019】
デオキシハイプシン・シンターゼ及びeIF-5Aは、細胞の成長及び老化を含む主要な細胞プロセスにおいて重要な役割を演じることが知られている。例えば、植物中のデオキシハイプシン・シンターゼ発現がアンチセンス低減する結果、葉及び果実の老化が遅れる。このことは、植物中にeIF-5Aの老化誘発イソ型があることを示している。国際公開第01/02592号パンフレット;PCT/US01/44505;米国特許出願第09/909,796号明細書を参照されたい。酵母中のデオキシハイプシン・シンターゼ又はeIF-5Aが不活性化される結果、細胞分裂が阻害される。Schnier他(1991) Mol. Cell. Biol., 11, 3105-3114;Sasaki他(1996) FEBS Lett., 384, 151-154;Park他(1998) J. Biol. Chem., 273, 1677-1683。
【0020】
スペルミジン類似体を使用することにより、in vitroでデオキシハイプシン・シンターゼを阻害すること、並びにタンパク質合成及び細胞成長の阻害に伴う、in vivoでのハイプシンの形成を阻害することに成功している。Jakus他(1993) J. Biol. Chem., 268, 13151-13159;Park他(1994) J. Biol. Chem., 269, 27827-27832。ポリアミン自体、具体的にはプトレッシン及びスペルミジンも、細胞の増殖及び分化において重要な役割を演じるように考えられる。Tabor及びTabor(1984) Annu. Rev. Biochem., 53, 749-790; Pegg(1988) Cancer Res., 48, 759-774。例えば、ポリアミン生合成経路がブロックされた酵母突然変異体は、外生的ポリアミンが提供されない限り成長することはできない。Cohn他(1980)J. Bacteriol., 134, 208-213。
【0021】
ポリアミンはまた、アポトーシス誘発から細胞を保護することが示されている。例えば、スペルミジン及びスペルミンに暴露することにより、胸腺細胞のアポトーシスがブロックされている。このメカニズムは、エンドヌクレアーゼ活性化の防止であるように思われる。Desiderio他(1995) Cell Growth Differ., 6, 505-513; Brune他(1991) Exp. Cell Res., 195,323-329。加えて、外生的ポリアミンは、B細胞受容体媒介性アポトーシス、並びに単細胞寄生生物におけるアポトーシスを抑制することが示されている。Nitta他(2001) Exptl. Cell Res., 265, 174-183;Piacenza他(2001) Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 98, 7301-7306。低濃度のスペルミン及びスペルミジンは、新生ラットの正常な発育中に失われる神経細胞の数を減らすこと、並びに脳虚血中のニューロン損傷から脳を保護することも観察されている。Gilad他(1985) Brain Res., 348, 363-366;Gilad & Gilad(1991) Exp. Neurol., 111, 349-355。ポリアミンはまた、植物組織の老化、プログラミングされた細胞死の形成を阻害する。スペルミジン及びプトレッシンは、カーネーション花及び切断ラディッシュ葉の収穫後老化を遅らせることが示されている。Wang & Baker (1980) HortScience, 15, 805-806(カーネーション花);Altman(1982) Physiol. Plant., 54, 189-193(切断ラディッシュ葉)。
【0022】
しかしその他の研究では、外生的ポリアミンに応答して、アポトーシス誘発が観察されている。例えば、ヒト乳癌細胞系は、アポトーシスを誘発することによりポリアミン類似体に応答し、そして過剰のプトレッシンは、DH23A細胞内でアポトーシスを誘発することが示されている。McCloskey他(1995) Cancer Res., 55, 3233-3236;Tome他(1997) Biochem. J., 328, 847-854。
【0023】
ポリアミンによるこれらの試験の結果は、これらをまとめてみると、eIF-5Aの特異的イソ型の存在が、アポトーシスの誘発において役割を演じることを示唆している。具体的には、このデータは、DHAによって活性化されるeIF-5Aのアポトーシス特異的イソ形が存在するという見方と一致する。このDHS反応がスペルミジンを必要とするという事実は、ポリアミンがカスパーゼ、つまりアポトーシス関連タンパク質分解の主要な実行因子の活性化を導き出すという発見と一致する。Stefanelli他(2000) Biochem. J., 347, 875-880;Stefanelli他(1999) FEBS Lett., 451, 95-98。類似の静脈において、ポリアミン合成のインヒビターはアポトーシスを遅らせることができる。Das他(1997) Oncol. Res., 9, 565-572;Monti他(1998) Life Sci., 72, 799-806;Ray他(2000) Am. J. Physiol, 278, C480-C489;Packham及びCleveland(1994) Mol. Cell Biol.,14, 5741-5747。
【0024】
外生的ポリアミンがアポトーシスを阻害し且つ促進するという発見は、適用されたレベルに応じて、外生的ポリアミンが、eIF-5Aの活性化につながるDHS反応を阻害し、ひいてはアポトーシスを妨げることができ、或いは、毒性であるという理由でアポトーシスを誘発することができるという事実によって説明することができる。低濃度の外生的ポリアミンが植物系及び動物系におけるアポトーシスをブロックするという発見は、低濃度のポリアミン及びこれらの類似体がDHS反応の競合的インヒビターとして作用するという事実と一致する。事実、DHS反応の基質である外生的スペルミジンでさえ、基質阻害によって反応を妨げることになる。Jakus他(1993) J. Biol. Chem., 268, 13153-13159。
【0025】
しかし、全てのポリアミン及びこれらの類似体は、高い濃度において毒性であり、アポトーシスを誘発することができる。このことは、eIF-5Aの推定上のアポトーシス特異的イソ型の活性を阻害する能力があるにもかかわらず、下記2つの理由から発生する。第1に、活性化されたeIF-5Aの半減期が長いことである。Torrelio他(1987) Biochem. Biochem. Biophys. Res. Commun., 145, 1335-1341;Dou及びChen(1990) Biochem. Biphys. Acta., 1036, 128-137。従って、デオキシハイプシン・シンターゼ活性の阻害から生じる活性化アポトーシス特異的eIF-5Aの枯渇が、スペルミジンの毒性効果によるアポトーシスをブロックするのに間に合うように生じることはない。第2に、ポリアミンがデオキシハイプシン反応の競合的インヒビターであり、ひいては、毒性の濃度であっても、この反応を完全にブロックするとは考えられないことである。
【0026】
本発明は、アポトーシス誘発の直前にアップ・レギュレートされたeIF-5A cDNAのクローニングに関する。このアポトーシス特異的eIF-5Aは、アポトーシスを引き起こす疾患における介入に適した標的であると考えられる。それというのも、アポトーシス特異的eIF-5Aは、アポトーシス経路に関与する下流エフェクター及び転写因子の転写後調節レベルで作用すると考えられるからである。具体的には、アポトーシス特異的eIF-5Aは、アポトーシスの下流エフェクター及び転写因子をコードするmRNAを核から、続いてこれらのmRNAが翻訳される細胞質に転座するのを選択的に容易にすると考えられる。アポトーシスを開始するための最終決定は、内部及び外部のアポトーシス促進シグナル及び抗アポトーシス・シグナルの間の複雑な相互作用から生じると考えられる。Lowe及びLin(2000) Carcinogenesis, 21, 485-495。下流アポトーシス・エフェクター及び転写因子の翻訳を容易にする能力によって、アポトーシス関連eIF-5Aは、これらの信号間の関係をアポトーシスに有利なように変えると考えられる。
【0027】
既述のように、抗癌剤がアポトーシスを誘発すること、そして、アポトーシス経路の変化が、薬物誘発型細胞死を軽減できることが十分に確立されている。Schmitt及びLowe(1999) J. Pathol., 187, 127-137。例えば、多くの抗癌剤はp53をアップレギュレートし、そしてp53を失った腫瘍細胞はこれらの薬物に対して耐性になる。しかしほとんど全ての化学治療薬は、投与量が十分であるならば、p53とは無関係にアポトーシスを誘発することができる。このことは、薬物耐性腫瘍においても、アポトーシスに至る経路が完全にはブロックされないことを示す。Wallance-Brodeur及びLowe(1999) Cell Mol. Life Sci., 55,64-75。このことは、アポトーシス関連eIF-5Aの誘発が、突然変異型遺伝子を修正しなくても、p53依存型経路を迂回して、別の経路を促進することによりアポトーシスを誘発することができることを示唆する。
【0028】
アポトーシス関連eIF-5Aの誘発は、癌細胞を選択的に標的にする潜在能力を有する一方、正常な隣接細胞に対する効果をほとんど又は全く有さない。このことが生じる理由は、腫瘍細胞内に発現されるマイトジェン腫瘍遺伝子が、正常細胞内には存在しない特異的mRNA種の形でアポトーシス・シグナルを提供することにある。Lowe他(1993) Cell, 74, 954-967;Lowe及びLin(2000) Carcinogenesis, 21, 485-495。例えばp53-突然変異型腫瘍細胞における野生型p53の復元は、アポトーシスを直接的に誘発し、また、腫瘍細胞系及び異種移植片における薬物感受性を高めることができる(Spitz他、1996;Badie他、1998)。
【0029】
アポトーシス-eIF-5Aの選択性は、eIF-5Aが下流アポトーシス・エフェクター及び転写因子に対応するmRNAの翻訳を、核から細胞質内へのmRNAの転座を媒介することにより、選択的に容易にするという事実から生じる。こうして、アポトーシスeIF-5Aが所定の効果を有するためには、これらのエフェクター及び転写因子に対応するmRNAは転写されなければならない。これらのmRNAが隣接する正常細胞内にではなく癌細胞内に転写されるので、アポトーシス関連eIF-5Aは癌細胞内のアポトーシスを促進し、しかも正常細胞に対するその影響はもしあるとしても最小限に抑えられることが予期できる。こうして、アポトーシス関連eIF-5Aによって腫瘍細胞内のアポトーシス潜在能力を復元すると、腫瘍細胞を選択的に標的にすることにより、癌患者が蒙る毒性及び副作用を減らすことができる。アポトーシス性eIF-5Aの誘発はまた、抗癌剤に対する腫瘍細胞の応答を増強し、そしてこれにより、薬物耐性腫瘍に対するこれらの薬剤の有効性を高める可能性を有する。この結果、より低投与量の抗癌剤で効力が得られるようになり、患者に対する毒性が低減されることになる。
【発明の開示】
【0030】
本発明は、分離且つ/又は精製された、ラットのアポトーシス特異的eIF-5A及びDHS核酸及びポリペプチド及びアンチセンス・オリゴヌクレオチド、並びにアポトーシス特異的eIF-5A及びDHSの発現ベクターを提供する。本発明はまた、分離且つ/又は精製されたアポトーシス特異的eIF-5A(本明細書では、ヒトeIF-5A1又はeIF5aとも呼ばれる)を提供する。本発明はまた、分離且つ/又は精製されたヒトeIF-5A2(本明細書では、増殖性eIF-5A又はeIF5bとも呼ばれる)を提供する。本発明はまた、アポトーシス特異的eIF-5A及びDHSを使用してアポトーシスを調節する方法を提供する。
【0031】
本発明は、哺乳動物組織、特に哺乳動物の心臓組織内の虚血の発生を識別する方法を提供する。さらに、哺乳動物組織、好ましくは心臓組織内のアポトーシスを低減する方法が提供される。これらの方法は、アポトーシス−特異的eIF-5A及び増殖性eIF-5A双方の遺伝子発現レベルを測定して比較し、そしてアポトーシス−特異的eIF-5a発現レベルが増殖性eIF-5A発現レベルよりも高い場合には、虚血の発生と相互関連させることを伴う。哺乳動物組織内のアポトーシスを低減する方法の場合、アポトーシス−特異的eIF-5Aの発現を阻害する作用物質が提供される。
【0032】
本発明は一つには、ラット黄体から分離された、アポトーシスと関与する(アポトーシス特異的)eIF-5Aをコードする完全長cDNAの発見及び特徴付けに基づく。従って1実施態様において、本発明は、ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、分離された核酸を提供する。また、ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチドのアミノ酸配列を含む、精製されたポリペプチドも提供される。ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチドは、ラットに対して特異的な任意のポリペプチドであって、アポトーシスに至りつつある細胞中に異なる状態で発現され、また、スペルミジンの4-アミノブチル部分を、デオキシハイプシン・シンターゼによって触媒された前駆体eIF-5Aの特異的保存リジンのα-アミノ基に移すことにより、デオキシハイプシン残基を形成し、そしてこの4-アミノブチル部分をデオキシハイプシンヒドロキシラーゼによってヒドロキシル化することによりハイプシンを形成し、これによりeIF-5Aを活性化することから生じるポリペプチドを意味する。
【0033】
加えて、核酸及びポリペプチドの、本発明のラット・アポトーシス特異的eIF-5A配列を使用することにより、本明細書中に提供された指針及び当業者によく知られた技術を用いて、他の細胞、組織、器官又は動物からアポトーシス特異的核酸及びポリペプチドを分離することができる。本発明はまた、本発明のラット・アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチドをコードする核酸を検出するための、プライマー又はハイブリッド形成プローブとして好適な核酸分子を提供する。
【0034】
本発明の核酸は、DNA、RNA、DNA/RNAデュプレクッス、タンパク質-核酸(PNA)、又はこれらの誘導体であってよい。本明細書中に使用された核酸又はポリペプチドは、細胞物質を実質的に含有しないか、又は化学的前駆体又はその他の化学物質を含有しない場合に「分離」又は「精製」されていると言われる。言うまでもなく、分離又は精製という用語は、無数のその他の配列断片を含有するライブラリー型の調製を意味するものではない。本発明の核酸又はポリペプチドは、等質になるまで又はその他の純度まで精製することができる。精製レベルは、意図される用途に基づく。重要な特徴は、相当な量の他の成分の存在においてでさえ、この調製が核酸又はポリペプチドの所望の機能を可能にすることである。
【0035】
分離ポリペプチドは、このポリペプチドを自然の状態で発現させる細胞から精製するか、或いはこのポリペプチドを発現させるように変更されている細胞から精製するか(組換え型)、或いは、既知のタンパク質合成法を用いて合成することができる。例えば、タンパク質の組換え生成は、アポトーシスを誘導するeIF-5A又はDHSをコードする核酸分子を発現ベクター内にクローニングすることを伴う。発現ベクターは宿主細胞中に導入され、タンパク質は宿主細胞中に発現される。次いで、標準的なタンパク質精製技術を用いて、任意の好適な精製スキームによって、タンパク質は細胞から分離することができる。
【0036】
好ましくは、本発明のラット・アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチドをコードする分離核酸は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有し、そして本発明の精製ポリペプチドは、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を有する。本発明のラット・アポトーシス特異的eIF-5A核酸及びポリペプチドはまた、それぞれSEQ ID NO:1及びSEQ ID NO:2に対して実質的な配列同一性又は相同性を有する配列、並びにこれらの機能性誘導体及び変異形を包含する。
【0037】
本明細書中に使用される用語「実質的な配列同一性」又は「実質的な相同性」は、或る配列が別の配列と実質的に構造等価又は機能等価であることを示すために使用される。「実質的な配列同一性」又は「実質的な相同性」を有する配列間のいかなる構造的又は機能的な相違点も最小限のものとなる。すなわち、これらの相違点は、所望の用途において指示されるように機能する配列の能力に影響を与えることはない。相違点は、例えば種々異なる種の間のコドン使用頻度における固有の変動によることがある。2つ又は3つ以上の異なる配列間に有意な量の配列オーバーラップ又は類似性がある場合、或いは、配列の長さ又は構造が異なっていても、異なる配列が同様の物理特性を示す場合には、構造的な相違点は最小限と考えられる。このような特性は例えば、定義された条件下でハイブリッド形成する能力、又はタンパク質の場合、免疫交差反応性、類似の酵素活性などを含む。当業者であれば、よく知られた方法によってこれらの特徴のそれぞれを容易に決定することができる。
【0038】
加えて、2つのヌクレオチド配列が約70%以上、より好ましくは80%以上、さらにより好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の配列類似性を相互間に有する場合、これらの配列は「実質的に相補的」である。2つのアミノ酸配列が、ポリペプチドの活性部分間又は機能的に関連する部分間で、約50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは約80%以上、さらにより好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の類似性を有する場合、これらの配列は実質的に相同である。
【0039】
2つの配列の同一性パーセントを決定する際には、これらの配列を最適な比較目的で整列させる(例えば、最適なアラインメントのために、第1及び第2のアミノ酸配列又は核酸配列の一方又は両方にギャップを導入することができ、比較目的のために、非相同配列を無視することができる)。好ましい実施態様の場合、基準配列の長さの最小30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%以上を、比較目的で整列させる。対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドを次いで比較する。第1配列における位置が、第2配列における対応位置と同じアミノ酸又はヌクレオチドによって占有されるときには、これらの分子はその位置において同一である(本明細書中に使用されるアミノ酸又は核酸の「同一性」は、アミノ酸又は核酸の「相同性」と等価である)。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入されるのを必要とするギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮に入れて、これらの配列によって占められた同一位置の数と関数関係にある。
【0040】
配列の比較、及び2つの配列の間の同一性パーセント及び類似性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる(Computational Molecular Biology, Lesk, A. M.編、Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W.編、Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, Griffin, A.M.及びGriffin, H.G.編、Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987;及びSequence Analysis Primer, Gribskov, M.及びDevereux, J.編, M. Stockton Press, New York, 1991)。
【0041】
本発明の核酸及びタンパク質配列をさらに「問合せ配列」として使用することにより、配列データベースに対する探索を行って、例えば他の属の構成員又は関連配列を識別することができる。このような探索は、Altschul他(1990) J. Mol Biol. 215:403-10のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施することができる。BLASTヌクレオチド探索を、NBLASTプログラムで実施することができる。BLASTタンパク質探索をXBLASTプログラムで実施することにより、本発明のタンパク質に対して相同のアミノ酸配列を得ることができる。比較目的でギャップ付きアラインメントを得るために、Alschul他(1997) Nucleic Acid Res.25(17):3389-3402に記載されているように、ギャップ付きBLASTを利用することができる。BLAST及びギャップ付きBLASTプログラムを利用するときには、それぞれのプログラム(XBLAST及びNBLAST)のデフォルト・パラメータを使用することができる。
【0042】
核酸の「機能性誘導体」という用語は、遺伝子又はヌクレオチド配列の相同体又は類似体を意味するように、本明細書中に使用される。機能性誘導体は、本発明に基づいてその有用性を可能にする、所与の遺伝子の機能の少なくとも一部を保持することができる。本明細書中に記載されているようなアポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチドの「機能性誘導体」は、アポトーシス特異的eIF-5A活性の少なくとも一部、又はアポトーシス特異的eIF-5Aに対して特異的な抗体との免疫交差反応性の少なくとも一部を保持する断片、変異形、類似体又は化学誘導体である。アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチドの断片は、分子の任意の部分集合を意味する。
【0043】
機能性変異形は、機能を全く又はほとんど変化させない類似アミノ酸の置換形を含有することもできる。機能にとって不可欠なアミノ酸は、当業者に知られた方法、例えば部位特異的突然変異誘発又はアラニン走査突然変異誘発によって識別することができる(Cunningham他(1989) Science 244:1081-1085)。後者の手順は、分子中の残基毎に単一のアラニン突然変異を導入する。次いで、得られた突然変異分子を、生体活性、例えばキナーゼ活性に関して、或いは、アッセイ、例えばin vitro増殖活性において試験する。構造分析、例えば結晶化、核磁気共鳴又は光アフィニティ標識付けによって、結合パートナー/基質結合にとって重要な部位を見極めることもできる(Smith他(1992)J. Mol. Biol. 224:899-904;de Vos他(1992) Science 255:306-312)。
【0044】
「変異形」は、遺伝子全体又は遺伝子の断片と実質的に類似する分子、例えば1つ又は2つ以上の置換型ヌクレオチドを有するヌクレオチド置換変異形であって、特定遺伝子とハイブリッド形成する能力を維持するか、又は天然型DNAとハイブリッド形成するmRNA転写物をコードする能力を維持するヌクレオチド置換変異形を意味する。「相同体」は、種々異なる動物の属又は種に由来する断片又は変異配列を意味する。「類似体」は、分子全体、その変異形又は断片に実質的に類似する非天然型分子、又は分子全体、その変異形又は断片に関連して機能する非天然型分子を意味する。
【0045】
変異ペプチドは、天然型変異形、並びに当業者によく知られた方法によって製造される変異形を含む。このような変異形は、分子技術及び本明細書中に開示された配列情報を用いて容易に識別/形成することができる。さらに、このような変異形は、本発明のeIF-5A又はDNSタンパク質の配列及び/又はこれらのタンパク質に対する構造相同体に基づいて、他のタンパク質から容易に区別することができる。存在する相同性/同一性の程度は主として、そのタンパク質が機能性変異形であるか又は非機能性変異形であるか、つまりパラローグ群中に存在する分岐量及びオーソローグ間の進化距離に基づく。
【0046】
本発明のeIF-5A又はDNSタンパク質の非天然型変異形を、組換え技術を用いて容易に生成することができる。このような変異形の一例としては、タンパク質のアミノ酸配列における欠失形、付加形及び置換形が挙げられる。例えば、1つの置換形クラスは、保守的アミノ酸置換形である。このような置換形は、類似の特性を有する別のアミノ酸によって、タンパク質中の所与のアミノ酸を置換する置換形である。保守的置換として典型的に見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu及びIleの中からの相互の置換;ヒドロキシル残基Ser及びThrの相互交換;酸性残基Asp及びGluの交換;アミノ酸残基Asn及びGlunの間の置換;塩基性残基Lys及びArgの交換;及び芳香族残基Phe及びThrの間の置換である。どのようなアミノ酸変化が表現型上サイレントであると考えられるかに関する指針が、Bowie他、Science 247:1306-1310(1990)に見いだされる。
【0047】
或いは、本発明のラット・アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチドをコードする核酸は、SEQ ID NO:1に対して相補的なヌクレオチド配列と高緊縮条件下でハイブリッド形成するのも好ましい。本明細書中で使用される「ハイブリッド形成」という用語は、プローブ配列及び標的配列の性質に応じて、当業者には容易に明らかであるように、好適な緊縮条件で核酸をハイブリッド形成することを意味するように一般には使用される。ハイブリッド形成及び洗浄の条件は、当業者によく知られており、そして、インキュベーション時間、温度及び/又は溶液のイオン強度を変化させることにより、所望の緊縮性に応じて、条件が容易に調節される。例えばSambrook, J.他、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbour Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989参照。
【0048】
条件の選択は、ハイブリッドされる配列の長さ、具体的にはプローブ配列の長さ、核酸の相対G-C含量及び許容されるべきミスマッチ量によって決定される。相補度がより低いストランド間の部分ハイブリッド形成が望まれる場合には、緊縮条件は低いことが好ましい。完全な又は完全に近い相補性が望まれる場合には、高緊縮条件が好ましい。典型的な高緊縮条件の場合、ハイブリッド形成溶液は、6X S.S.C., 0.01M EDTA, 1Xデンハルト溶液、及び0.5% SDSを含有する。クローニングされたDNAの断片に関しては、約68℃で約3〜4時間にわたって、また全真核細胞DNAに関しては約12〜16時間にわたって、ハイブリッド形成を行う。緊縮度が低い場合、デュプレックスの溶融温度(Tm)を下回る約42℃まで、ハイブリッド形成温度を低下させる。Tmは、G-C含量及びデュプレックス長、並びに溶液のイオン強度と関数関係にあることが知られている。
【0049】
本明細書中に使用された、DNA又はRNA分子の「対応部分とハイブリッド形成する」の語句は、ハイブリッド形成する分子、例えばオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド又は任意のヌクレオチド配列(センス又はアンチセンス配向)が、別の核酸分子中の配列、すなわち、ほぼ同じサイズを有し、適切な条件下でハイブリッド形成を生じさせるのに十分な配列類似性を有する配列を認識し、そしてこれとハイブリッド形成することを意味する。例えば100ヌクレオチド長センス分子は、2つの配列間に約70%以上の配列類似性がある限り、ヌクレオチド配列のほぼ100ヌクレオチド部分を認識し、そしてこれとハイブリッド形成することになる。いうまでもなく、「対応部分」のサイズはハイブリッド形成におけるいくらかのミスマッチを許すので、「対応部分」は、これとハイブリッド形成する分子よりも小さいか又は大きくてよく、例えば20〜30%だけ大きいか又は小さくてよく、好ましくは約12〜15%以下だけ大きいか又は小さくてよい。
【0050】
加えて、ポリペプチドの機能性変異形は、機能を全く又はほとんど変化させない類似のアミノ酸の置換形を含有することもできる。機能にとって不可欠なアミノ酸は、当業者に既知の方法、例えば部位特異的突然変異誘発又はアラニン走査突然変異誘発によって識別することができる(Cunningham他Science 244:1081-1085(1989))。後者の手順は、分子中の残基毎に単一のアラニン突然変異を導入する。次いで、結果として生じた突然変異分子を、生体活性に関して、或いはアッセイにおいて試験する。
【0051】
例えば、アポトーシス特異的eIF-5Aの類似体は、非天然型タンパク質、又はタンパク質全体又はその断片に対して実質的に類似のペプチド模倣体を意味する。アポトーシス特異的eIF-5Aの化学誘導体は、通常はペプチドの一部又はペプチド断片ではない付加的な化学部分を含有する。ペプチドの標的アミノ酸残基と、選択された側鎖又は末端残基と反応することができる有機誘導体化剤とを反応させることにより、ペプチド又はその断片中に修飾を導入することができる。
【0052】
ラット黄体から分離されたアポトーシス特異的eIF-5Aをコードする全長cDNAを最初に発見して特徴付けすることは、やはりラット黄体から分離されてアポトーシスに関与するDHSをコードする部分長cDNAの発見及び特徴付けにつながった。従って、付加的な実施態様の場合、本発明は、ラット・アポトーシス特異的DHSポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む分離核酸を提供する。また、ラット・アポトーシス特異的DHSポリペプチドのアミノ酸配列を含む精製ポリペプチドも提供される。ラット・アポトーシス特異的DHSポリペプチドは、ラットに対して特異的な任意の好適なポリペプチドであって、アポトーシスに至りつつある細胞中に異なる状態で発現され、また、スペルミジンの4-アミノブチル部分を、不活性eIF-5Aの特異的保存リジンのα-アミノ基に移すことにより、デオキシハイプシン残基の形成を触媒してデオキシハイプシンを形成し、これによりeIF-5Aを活性化するポリペプチドを意味する。
【0053】
好ましくは、本発明のラット・アポトーシス特異的DHSポリペプチドをコードする分離核酸は、SEQ ID NO:6のヌクレオチド配列を有し;本発明の精製ポリペプチドは、SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を有する。本発明のラット・アポトーシス特異的DHS核酸及びポリペプチドはまた、前述のそれぞれSEQ ID NO:6及びSEQ ID NO:7に対して実質的な配列同一性又は相同性を有する配列、並びにこれらの機能性誘導体及び変異形を包含する。或いは、本発明の分離核酸は、前述のSEQ ID NO:6の相補配列と高緊縮条件下でハイブリッド形成する核酸配列を有するのも好ましい。
【0054】
本明細書中に記載されたラット・アポトーシス特異的eIF-5A配列の核酸及びポリペプチドと同様に、本発明のラット・アポトーシス特異的DHS配列の核酸及びポリペプチドを使用することにより、ヒトを含む他の動物から、アポトーシス特異的DHS核酸及びポリペプチドを分離することができる。動物及びヒトからこのようなDHS配列を分離することは、種を横切る最小80%以上の配列類似性に基づいて、当業者に知られた方法及び本明細書中に示した指針を用いて達成することができる。本発明はまた、本発明のラット・アポトーシス特異的DHSポリペプチドをコードする核酸を検出するための、プライマー又はハイブリッド形成プローブとして好適な核酸分子を提供する。
【0055】
アポトーシス特異的eIF-5A及びDHSは、疾患プロセスの根底を成すアポトーシスを含む、アポトーシスの調節に好適な標的である。それというのは、これがアポトーシス経路に関与する下流エフェクター及び転写因子の転写後調節に際して作用すると思われるからである。こうして、本発明はまた、アポトーシス特異的eIF-5A及びDHS機能を調節する作用物質を細胞に投与することにより、細胞におけるアポトーシスを調節する方法を提供する。当業者には明らかなように、この作用物質はアポトーシス特異的eIF-5A機能だけを調節するか、アポトーシス特異的DHS機能だけを調節するか、又はアポトーシス特異的eIF-5A機能及びDHS機能の両方を調節する物質であってよい。
【0056】
細胞内のアポトーシス特異的eIF-5A及び/又はDHS機能の正常レベルを任意に好適に変更することにより、アポトーシスを調節することができる。ここで意図されるように、修飾又は変更は完全又は部分的であってよく、転写又は翻訳のコントロールの変化、又は細胞内のアポトーシス特異的eIF-5A及び/又はDHS機能を変更するその他の変化を含むことができる。アポトーシス特異的eIF-5A又はDHS機能は、スペルミジンの4-アミノブチル部分を、DHSによって触媒された前駆体eIF-5Aの特異的保存リジンのα-アミノ基に移すことにより、デオキシハイプシン残基を形成し、そしてこの4-アミノブチル部分をデオキシハイプシンヒドロキシラーゼによってヒドロキシル化することによりハイプシンを形成し、これによりeIF-5Aを活性化することに関連する任意の活性を意味する。
【0057】
本発明の1実施態様の場合、作用物質はアポトーシス特異的eIF-5A及び/又はDHS機能を阻害し、これによりアポトーシスを阻害することができる。アポトーシスの阻害は、アポトーシスにとって特徴的な明確に定義された形態的特徴、例えば収縮、クロマチン凝縮、核断片化、及び膜泡状突起形成のうちのいずれか又は全ての強度及び/又は数を減小させ、且つ/又はその開始を遅らせることを意味する。
【0058】
アポトーシス特異的eIF-5A及び/又はDHS機能を阻害することができる1つの作用物質はアンチセンス・オリゴヌクレオチドである。好ましくは、アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチド及び/又はアポトーシス特異的DHSポリペプチドの一部をコードするヌクレオチド配列を有する。アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチド及び/又はDHSポリペプチドをコードする多くの好適な核酸配列が当業者に知られている。例えば、SEQ ID NO:1, 3, 4, 5, 11, 15, 19, 20及び21(アポトーシス特異的eIF-5A核酸配列)、SEQ ID NO:6及び8(アポトーシス特異的DHS核酸配列)、SEQ ID NO:12及び16 eIF-5A(アポトーシス特異的ポリペプチド配列)、及びSEQ ID NO:7(アポトーシス特異的DHSポリペプチド配列)、又はこれらの一部が、好適な配列を提供する。本明細書中に記載された方法に従って、既知の配列をプローブとして使用して、その他の好適な配列を見いだすことができる。
【0059】
従って、本発明はまた、アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチド及び/又はアポトーシス特異的DHSポリペプチドの一部、又はその相補形をコードするアンチセンス・オリゴヌクレオチドを提供する。本発明のオリゴヌクレオチドは、RNA又はDNA、例えばcDNA、ゲノムDNA、又は合成RNA又はDNAの形態を成すことができる。DNAは二本鎖又は一本鎖であってよく、そして一本鎖の場合、これはコーディング鎖又は非コーディング鎖であってよい。オリゴマー化合物をその標的核酸と特異的ハイブリッド形成する結果、その核酸の正常機能を妨害することになるようなハイブリッド形成を、一般に「アンチセンス」と呼ぶ。妨害されるべきDNAの機能は複製及び転写を含む。妨害されるべきRNAの機能は、全ての機能、例えばタンパク質翻訳部位へのRNAの転座、RNAからのタンパク質の翻訳、RNAのスプライシングによる1つ又は2つ以上のmRNA種の産出、及びRNAによって関与又は促進することができる触媒活性を含む。このようなアンチセンス・オリゴヌクレオチドの全体的な効果は、アポトーシス特異的eIF-5A及び/又はDHSの発現を阻害し、且つ/又は、生成される活性化アポトーシス特異的eIF-5Aの量を抑制することである。
【0060】
或いは、アポトーシス特異的DHSによるアポトーシス特異的eIF-5Aの活性化は、DHS酵素反応を阻害する化学物質を投与することにより、阻害することができる。例えば、PGF-2αの注射によってアポトーシスを誘発した後、DHS反応のインヒビターであるスペルミジンで動物を処理すると、アポトーシスを反映するDNAラダー形成の開始がラット黄体中で遅らされる(図18〜19)。Jakus他(1993) J. Biol. Chem. 268: 13151-13159。
【0061】
アポトーシス特異的eIF-5A DNA, RNA又はタンパク質を分解する作用物質、或いは、アポトーシス特異的DHS DNA, RNA又はタンパク質を分解する作用物質を添加することにより、アポトーシスを阻害又は実質的に低減し、これにより、アポトーシス特異的DHSによるアポトーシス特異的eIF-5Aの活性化を防止することもできる。本発明の別の実施態様の場合、内在性哺乳動物アポトーシス特異的DHS、アポトーシス特異的eIF-5A、又はその両方の発現が、リボザイムを使用することにより阻害される。好適な薬物の例は、アポトーシス特異的DHSによるアポトーシス特異的eIF-5Aの活性化を阻害する薬物、デオキシハイプシン・ヒドロキシラーゼによるアポトーシス特異的eIF-5Aの活性化を阻害する薬物、アポトーシス特異的DHSの転写及び/又は翻訳を阻害する薬物、アポトーシス特異的デオキシハイプシン・ヒドロキシラーゼの転写及び/又は翻訳を阻害する薬物、及びアポトーシス特異的eIF-5Aの転写及び/又は翻訳を阻害する薬物を含む。アポトーシス特異的DHSによるeIF-5Aの活性化を阻害する薬物は、スペルミジン、1,3-ジアミノ-プロパン、1,4-ジアミノ-ブタン(プトレッシン)、1,7-ジアミノ-ヘプタン、又は1,8-ジアミノ-オクタンである。
【0062】
細胞内のアポトーシス特異的eIF-5Aをコードする遺伝子を不活性化することにより、アポトーシス特異的eIF-5Aを阻害することも可能である。細胞内の遺伝子を削除することにより、又は遺伝子中に欠失形又は突然変異形を導入し、これにより遺伝子を不活性化することにより、このような不活性化が発生し得る。内在性アポトーシス特異的eIF-5Aの発現が生じないように、遺伝子中に別のDNA断片を挿入することにより、遺伝子を不活性化することもできる。同様に、細胞内のアポトーシス特異的DHSをコードする遺伝子を不活性化することにより、アポトーシス特異的eIF-5Aを阻害することも可能である。真核細胞内の遺伝子中への突然変異形、例えば欠失形及び挿入形の導入方法は、当業者に知られており、例えば米国特許第5,464,764号明細書に記載されている。細胞内の遺伝子の突然変異に有用なオリゴヌクレオチド及び発現ベクターは、当業者によく知られた技術及び本明細書中に提供された指針に従って形成することができ;例えばアンチセンス・オリゴヌクレオチドを形成して発現させるのに有用な方法を用いることにより、細胞内の遺伝子を突然変異させるのに有用なオリゴヌクレオチド及び発現ベクターを形成することができる。
【0063】
細胞内のアポトーシス特異的eIF-5Aをコードする遺伝子の発現を抑制することにより、アポトーシス特異的eIF-5Aの発現を阻害することも可能である。このような不活性化はコ・サプレッションを介して、例えばコ・サプレッションが発生するように、アポトーシス特異的eIF-5Aをコードするヌクレオチド配列を細胞内に導入することにより達成することができる。同様に、細胞内のアポトーシス特異的DHSをコードする遺伝子の発現をコ・サプレッションを介して抑制することにより、アポトーシス特異的eIF-5Aの活性化を阻害することも可能である。コ・サプレッションに有用なオリゴヌクレオチド及び発現ベクターは、当業者によく知られた技術及び本明細書中に提供された指針に従って形成することができ;例えばアンチセンス・オリゴヌクレオチドを形成して発現させるのに有用な方法を用いることにより、コ・サプレッションに有用なオリゴヌクレオチド及び発現ベクターを形成することができる。コ・サプレッション法は当業者に知られており、例えば米国特許第5,686,649号明細書に記載されている。
【0064】
(例えば、アンチセンス、突然変異又はコ・サプレッションを介した)阻害の1つの結果は、内在性の翻訳可能なアポトーシス特異的eIF-5A又はDHSをコーディングするmRNAの量が低減することである。従って、生成されたアポトーシス特異的DHSタンパク質の量は低減され、これにより、活性化eIF-5Aの量が低減され、このことはアポトーシス特異的タンパク質の翻訳を低減する。アポトーシスはこうして阻害又は遅延される。それというのも、アポトーシス開始のために新規のタンパク質合成が必要となるからである。
【0065】
本発明の別の実施態様の場合、作用物質はアポトーシス特異的eIF-5A又はDHSの機能を誘発し、これによりアポトーシスを誘発することができる。アポトーシスの誘発は、アポトーシスにとって特徴的な明確に定義された形態的特徴、例えば収縮、クロマチン凝縮、核断片化、及び膜泡状突起形成のうちのいずれか又は全ての強度及び/又は数を増大し、又はその開始を加速することを意味する。
【0066】
アポトーシス特異的eIF-5A及び/又はDHSの機能を誘発する任意の好適な作用物質を使用することができる。当業者には明らかなように、アポトーシス特異的eIF-5Aの不活性形及び活性形を投与することができる。不活性形又はハイプシンで修飾されていない形が投与される場合、天然型アポトーシス特異的DHSがeIF-5Aを活性化することになる。アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチド及び/又はDHSポリペプチドをコードする多くの好適な核酸配列が当業者に知られている。例えば、SEQ ID NO:1, 3, 4, 5, 11, 15, 19, 20及び21(アポトーシス特異的eIF-5A核酸配列)、SEQ ID NO:6及び8(アポトーシス特異的DHS核酸配列)、SEQ ID NO:12及び16 eIF-5A(アポトーシス特異的ポリペプチド配列)、及びSEQ ID NO:7(アポトーシス特異的DHSポリペプチド配列)、又はこれらの一部が、好適な配列を提供する。本明細書中に記載された方法に従って、既知の配列をプローブとして使用して、その他の好適な配列を見いだすことができる。
【0067】
例えば、ネイクド(naked)核酸(ネイクド(naked)DNAベクター、例えばオリゴヌクレオチド又はプラスミド)、又は組換えにより生成されたポリペプチドを含むポリペプチドを細胞に投与することができる。組換えにより生成されたポリペプチドは、eIF-5A又はDHSタンパク質をコードするDNA配列が、下記に詳述する好適な発現ベクター内に挿入されることを意味する。宿主に発現ベクターをトランスフェクトし、その後、発現ベクターは所望のポリペプチドを生成する。続いて、宿主細胞からポリペプチドを分離する。組換えアポトーシスを誘発するeIF-5Aタンパク質は、Chinese Hamster Ovary(CHO)細胞内で形成し、当業者によって組換えDHSを使用して活性化することができる。Wang他(2001) J. Biol. Chem. 276, 17541-17549;Eriksson他(2001) Semin. Hematol., 38, 24-31。ポリペプチドは合成であってもよく、合成型ポリペプチドは、周知のタンパク質合成法を用いて合成される。
【0068】
リガンド、例えば広範囲な細胞内への取込みを媒介する炭疽菌に由来するリガンドを使用して、ポリペプチド取込みを容易にすることができる。Liu他(2001) J. Biol. Chem., 276, 46326-46332。リポソームを使用して、組換えタンパク質を哺乳動物の標的細胞、組織及び器官に投与することもできる。タンパク質を吸蔵するリポソームを静脈内投与する。特異的細胞受容体に対するリガンドをリポソーム中に組み入れることにより、目標を達成することができる。例えばKaneda, Adv Drug Delivery Rev 43:197-205(2000)。
【0069】
アポトーシス特異的eIF-5A又はDHSの機能を誘発することができる1つの好ましい作用物質は、発現ベクターである。従って、本発明は、アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチド及び/又はDHSポリペプチドをコードする核酸に作用連関されたプロモーターを有する発現ベクターを提供する。本発明の発現ベクターは、RNA又はDNA、例えばcDNA、ゲノムDNA、又は合成RNA又はDNAの形態を成すことができる。DNAは二本鎖又は一本鎖であってよく、そして一本鎖の場合、これはコーディング鎖又は非コーディング鎖であってよい。任意の適切な発現ベクター(例えばPouwels他、Cloning Vectors: A Laboratory Manual (Elsevior, N.Y.:1985)参照)を使用することができる。好ましくは、発現ベクターは、アポトーシス特異的(関連)eIF-5Aポリペプチド及び/又はアポトーシス特異的(関連)DHSポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に作用連関されたプロモーター配列を有する。
【0070】
発現ベクター内で、所望の核酸とプロモーターとは、プロモーターが核酸の発現を駆動できるように作用連関されている。核酸が発現されるならば、いかなる好適なプロモーターをも使用することができる。このような好適なプロモーターの例は、種々のウィルス・プロモーター、真核プロモーター、及び構成的活性プロモーターを含む。この作用連関が維持される限り、発現ベクターは2つ以上の核酸(例えばアポトーシス特異的eIF-5A及びDHSの両方をコードする核酸)を含むことができる。発現ベクターは任意には、その他の要素、例えばポリアデニル化配列、リボソーム入口部位、転写調節要素(例えばエンハンサー、サイレンサーなど)、ベクター又は転写物の安定性、又は細胞内の所望の転写物の翻訳又はプロセッシングを増強するためのその他の配列(例えば分泌シグナル、リーダーなど)、又は任意のその他の好適な要素を含むことができる。
【0071】
発現ベクターは、ウィルス、例えばアデノウィルス、アデノ随伴ウィルス、ヘルペスウィルス、レトロウィルス又はレンチウィルスから誘導することができる。本発明の発現ベクターは、宿主細胞内にトランスフェクトすることができる。宿主細胞の一例としては、細菌種、バキュロウィルス系を含む哺乳動物又は昆虫宿主細胞系(例えばLuckow他, Bio/Technology, 6, 47(1988))、及び確立された細胞系、例えば293, COS-7, C127, 3T3, CHO, HeLa, BHKなどが挙げられる。
【0072】
アデノウィルス・ベクターが好ましい。なぜならば、プラスミドやその他のウィルス・ベクター(例えば単純ヘルペスウィルス)と異なり、アデノウィルス・ベクターは、分裂細胞及び非分裂細胞の両方において遺伝子導入を達成し、しかも心臓血管関連部位、例えば心筋、血管内皮、及び骨格筋におけるタンパク質の発現レベルが高いからである。さらに、アデノウィルス・ベクターによって導入された遺伝子は、上染色体位置で機能し、ひいては宿主ゲノムの重要部位内に導入遺伝子を不適切に挿入するリスクはほとんどない。アデノウィルス・ベクターはまた、ウィルス複製に必要とされる1つ以上の遺伝子機能に欠けていることが望ましい。アデノウィルス・ベクターは、アデノウィルス・ゲノムのE1, E2及び/又はE4領域の1つ以上の必須遺伝子機能に欠けていることが好ましい。ベクターは加えて、アデノウィルス・ゲノムのE3の少なくとも一部に欠けていることがより好ましい(例えばE3領域のXbaIの欠失)。
【0073】
培地にウィルスを添加するだけで、培養された細胞に組換えアデノウィルスを供給することができる。ウィルス粒子を血流中又は所望の細胞内に直接に注入することにより、宿主細胞/ヒトの感染を達成することができる。ウィルスをリポソーム(例えばLipofectin, Life Technologies)又はポリエチレングリコールと複合することにより、血清中のウィルスの半減期を延長することができる。アデノウィルス・ベクターは通常、ウィルス線維タンパク質のノブ・ドメインとコクサッキーウィルス及びアデノウィルス受容体CARとの間の相互作用を介して、細胞に入る。或る特定の細胞受容体に対して特異的なリガンドを発現させるようにウィルスを遺伝子工学的に作成することにより、ウィルスベクターを特異的細胞に指向させるか、又はCARを発現させない細胞に指向させることができる。
【0074】
別の実施態様の場合、内在性のアポトーシス特異的eIF-5A、又はアポトーシス特異的DHS、又はその両方の転写を化学的にアップレギュレートすることにより、或いは、アポトーシス特異的eIF-5Aの活性化を化学的に増強することにより、アポトーシスを開始又は増強することができる。このような1実施態様の場合、PGF-2αを動物/ヒトの癌細胞又は腫瘍に投与することにより、DHS及びeIF-5Aの転写をアップレギュレートする。
【0075】
アポトーシス特異的eIF-5Aは、疾患プロセスの根底を成すアポトーシスを含む、アポトーシスの調節に適した標的である。それというのも、アポトーシス特異的eIF-5Aは、アポトーシス経路に関与する下流エフェクター及び転写因子の転写後調節に際して作用すると思われるからである。アポトーシス特異的eIF-5A及びDHSを単独で、又は組み合わせて調節する本発明の方法は、動物の細胞内で達成することができ、アポトーシスの誘導又は増強をもたらし、そして細胞をアポトーシスに至らしめることができないことによって生じた疾患、又は細胞をアポトーシスに至らしめることができないことに関連する病因を有する疾患の治療及び予防のための新規の方法、及び組成物を提供する。
【0076】
多くの重大なヒト疾患は、アポトーシスのコントロールにおける異常によって引き起こされる。これらの異常は細胞数を病理学的に増大させ(例えば癌)、或いは、細胞の損傷損失(例えば変性疾患)をもたらす。非限定的な例として、本発明の方法及び組成物を用いることにより、下記アポトーシス関連疾患及び障害を予防又は治療することができる:神経/神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋委縮性側索硬化(ルー・ゲーリック病)、自己免疫障害(例えば関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、運動ニューロン障害、虚血、心臓虚血、慢性心不全、発作、乳児脊髄性筋萎縮症、心不全、腎不全、アトピー性皮膚炎、敗血症及び敗血性ショック、エイズ、肝炎、緑内障、糖尿病(1型及び2型)、喘息、網膜色素変性、骨粗鬆症、異種移植片拒絶症、及び火傷。
【0077】
ガン細胞を有する動物又は腫瘍を患う動物に対する治療のために、それぞれ癌細胞を殺すのに十分な量で、又は腫瘍の進行を阻害するのに十分な量で、本発明の方法を用いることができる。このことを成し遂げるのに十分な量が、治療有効量として定義される。この使用に対して効果的な量は、疾患の重症性、及び動物自身の免疫系の全身状態に依存する。
【0078】
腫瘍成長の阻害は、腫瘍の進行、例えば、腫瘍の成長、侵襲、転移及び/又は再発の防止又は低減を意味する。本発明の方法を用いることにより、例えば、乳房、心臓、肺、小腸、大腸、脾臓、腎臓、膀胱、頭部及び頸部、卵巣、前立腺、脳、膵臓、皮膚、骨、骨髄、血液、胸腺、子宮、睾丸、子宮頸又は肝臓の腫瘍を含む任意の相応の腫瘍を治療することができる。本発明の組成物及び方法を用いて、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを治療することができる。こうして本発明の方法は、in vitro、ex vivo又はin vivoで実施することができる。
【0079】
投与計画はまた、その動物の疾患状態及び状況とともに変化し、また、典型的には1日当たり単回のボーラス投与又は連続輸液から、1日当たり複数回の投与(例えば4〜6時間毎)の範囲に及び、又は治療及び動物の状態に応じて指示される。但し念のため述べておくが、本発明は特定の投与量には限定されない。
【0080】
本発明の場合、投与に際しては、任意の好適な方法又はルート、例えば経口、静脈内、腹腔内、皮下、又は筋内投与を用いることができる。投与されるアンタゴニストの投与量は、例えば投与される分子のタイプ、治療される腫瘍のタイプ及び重症性及び投与ルートを含む、数多くのファクターに依存する。しかし強調しておくが、本発明は特定の方法又は投与ルートに限定されるものではない。
【0081】
別の1実施態様の場合、本発明の方法を1種又は2種以上の伝統的な治療との組み合わせで用いることができる。例えば好適な抗新生物薬、例えば化学治療薬又は放射線を用いることができる。付加的な別の実施態様の場合、本発明の方法は1種又は2種以上の好適なアジュバント、例えばサイトカイン(例えばIL-10及びIL-13)又はその他の免疫促進剤との組み合わせで用いることができる。
【0082】
別の実施態様の場合、アポトーシス特異的eIF-5A及び増殖性eIF-5A(eIF-5b)の発現レベルを測定することにより、アポトーシスに関連又は付随する障害(例えば心臓組織の虚血)を診断することができる。増殖性eIF-5A(eIF-5b)とアポトーシス特異的eIF-5Aとは、これらが異なるプロモータによって異なる位置から転写される点で異なり;しかし、これら2つは構造的には相同であり、カルボキシ末端が異なっている。本発明の診断方法は、所与の細胞内に存在する増殖性eIF-5Aの量を、同じ細胞内に存在するアポトーシス特異的eIF-5Aの量と比較することを伴う。遺伝子発現レベルは、増殖性eIF-5A及びアポトーシス特異的eIF-5A双方に関して測定され、そして互いに比較される。細胞は、これが正常に機能している間は、アポトーシス特異的eIF-5A(本明細書中ではeIF-5A1とも呼ばれる)と同量の、又はこれよりも多量の増殖性eIF-5A(本明細書中ではeIF-5A2とも呼ばれる)を有することになる。しかし、死に至らしめられつつある又は虚血のようにストレスを加えられている細胞の場合、アポトーシス特異的eIF-5Aは、増殖性eIF-5Aよりも高いレベルで発現される。こうして、アポトーシス特異的eIF-5Aの発現レベルの増大を検出することにより、アポトーシスに関連又は付随する障害(例えば虚血)を識別又は診断する方法が提供される。
【0083】
図46は、心臓組織における虚血を誘発する前及び誘発した後にアポトーシス特異的eIF-5a(eIF5a)及び増殖性eIF-5A(eIF5b)のレベルを測定した試験の結果を示す。実施例6も参照されたい。虚血前では、アポトーシス特異的eIF-5a(eIF5a)及び増殖性eIF-5A(eIF5b)はほぼ同様であり、低レベルであった。虚血誘発後にはアポトーシス特異的eIF-5a(eIF5a)のレベルは、増殖性eIF-5A(eIF5b)のレベルよりも著しく増大する。
【0084】
アポトーシス特異的eIF-5a(eIF5a)及び増殖性eIF-5A(eIF5b)の発現レベルが正常組織中では比較的低レベルであり、互いに相対的なバランスをとっていることを知り、アポトーシス特異的eIF-5a(eIF5a)の遺伝子発現レベルの増大をモニタリングして検出することにより、細胞又は組織にストレスを加える種々の疾患又は症状、例えば虚血を診断する方法が提供される。
【0085】
さらに、遺伝子発現レベルを測定することによりこれらの状態が検出可能になることによって、このような状態の治療方法が提供される。例えば、当業者に知られた方法によって、或いはアポトーシス特異的eIF-5a(eIF5a)の遺伝子発現レベルの増大を検出することによって、心臓中の虚血が検出されると、遺伝子発現レベルを阻害又は低減するであろう作用物質を提供し、ひいては細胞死の発生率を低くすることができる。
【0086】
アポトーシス特異的eIF-5a(eIF5a)に対するアンチセンス・オリゴヌクレオチドの使用を含む、アポトーシス特異的eIF-5a(eIF5a)の遺伝子発現レベルを阻害又は低減する作用物質は本明細書において上述した通りである。好ましいアンチセンス・オリゴヌクレオチドは、アポトーシス特異的eIF-5aをコードするヌクレオチド配列、例えば一例としてはSEQ ID NO:3又は4として挙げられたヌクレオチド配列のコーティング・ストランドに対して相補的なオリゴヌクレオチドを含む。
【0087】
或る癌細胞の場合、正常な調節メカニズムがうまく働かなくなり、増殖性eIF-5Aの量に対するアポトーシス特異的eIF-5Aの量が変化する(アポトーシス特異的eIF-5Aのレベルが、増殖性eIF-5Aよりも高くなるように増大する)。このことは、細胞内の任意の表現型変化の前に、細胞を癌性であると診断することを潜在的に可能にする。
【0088】
加えて、虚血性心臓組織において、増殖性eIF-5Aの量に対するアポトーシス特異的eIF-5Aの量は、アポトーシス特異的eIF-5Aのレベルが、増殖性eIF-5Aの量に対して増大するように変化する。
【0089】
さらに別の実施態様の場合、アポトーシス特異的eIF-5Aに対する増殖性eIF-5Aの比を、薬物スクリーニングにおいて用いることができる。このような方法はまた、所与の細胞内に存在する増殖性eIF-5Aの量を、同じ細胞内に存在するアポトーシス特異的eIF-5Aの量と比較することを伴う。アポトーシス特異的eIF-5Aに対する増殖性eIF-5Aの基準比は、細胞を薬物候補と接触させた後のアポトーシス特異的eIF-5Aに対する増殖性eIF-5Aの比と比較されることになる。接触後の、アポトーシス特異的eIF-5Aに対する増殖性eIF-5Aの比に変化が生じた場合には、アポトーシス調節活性を有する候補薬を識別することが可能になる。アポトーシス調節活性を有する候補薬は、アポトーシスの阻害又は誘発によって、アポトーシスと関連する疾患を治療するのに有用であり得る。加えて、アポトーシス特異的eIF-5Aに対する増殖性eIF-5Aの比の変化を利用して、アポトーシスを調節することができ、このことは、異常なアポトーシスに関連したものとして本明細書中に記載された症状のいずれかを治療するのに有用である場合がある。
【0090】
この方法を用いて、多数の潜在的候補、すなわちライブラリーを効果的にスクリーニングすることにより、アポトーシスを調節するライブラリーの構成員を識別することができる。この方法を用いて任意の候補又は候補ライブラリーをスクリーニングすることができる。例えば、アポトーシス・モジュレーターとして見込みがある生体応答修飾物質を、この方法を使用して、明確なアポトーシス調節活性に関してスクリーニングすることができる。このような生体応答修飾物質は、シグナル伝達経路を変化させるモノクローナル抗体、サイトカイン、例えばTRAIL(Apo2リガンド)、レチノイド/ステロイド属核受容体のためのリガンド、及びタンパク質キナーゼと結合してこれを阻害する小分子化合物を含む。
【0091】
好適な1候補は、抗腫瘍活性を有するタンパク質キナーゼC-アルファ・アンチセンス・オリゴヌクレオチド、ISIS 3521(ISIS Pharmaceuticals, Inc., Carlsbad, CA)である。他の特異的候補は、カスパーゼ(Idun Pharmaceuticals, San Diego, CA)(癌及び神経変性疾患を招く種々の細胞型においてアポトーシスをトリガーして実行する重要な役目を演じることが知られている);GENASENSE(登録商標)(Genta, Inc., Berkeley Heights, NJ)(Bcl-2の生成をブロックするアンチセンス薬物である);INGN 241(Introgen Therapeutics, Inc., Houston, TX)(P53を標的とする遺伝子治療薬である);リトゥキシマブ(rituximab)(IDEC Corporation,日本国大阪)(抗CD20モノクローナル抗体である);及び心臓血管疾患及び癌のための一般的なアポトーシス駆動型治療薬(AEgera Therapeutics Inc., Quebec, Canada)を含む。
【0092】
言うまでもなく、本発明の核酸及びポリペプチドは、予防又は治療の目的で動物に使用される場合、製薬上許容可能な担体を付加的に含む組成物の形態で投与されることになる。好適な製薬上許容可能な担体は、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、並びにこれらの組み合わせを含む。製薬上許容可能な担体はさらに、少量の補助剤、例えば湿潤剤又は乳化剤、保存剤又は緩衝剤を含むことができる。これらは結合タンパク質の保管寿命又は効果を高める。当業者によく知られた注射組成物は、哺乳動物への投与後に活性成分を急速に、又は持続的に、又は遅延させた状態で放出するのを可能にするように調製することができる。
【0093】
本発明の組成物は種々の形態であってよい。これらの形態は例えば、固形、半固形及び液状投与形態、例えば錠剤、丸剤、粉剤、溶液、分散体又は懸濁液、リポソーム、座剤、注射液及び輸液を含む。好ましい形態は、意図された投与様式及び治療用途に依存する。
【0094】
このような組成物は、製薬分野においてよく知られた態様で調製することができる。組成物を製造する際に、有効成分は通常、担体と混合されるか、担体によって希釈されるか、且つ/又は、例えばカプセル、カシェ、紙又はその他の容器の形態を成すことができる担体内に封入されることになる。担体が希釈剤として作用する場合、担体は固形、半固形又は液状材料であってよく、この材料は活性成分のためのビヒクル、賦形剤又は媒質として作用する。従って、組成物は錠剤、トローチ剤、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、エアロゾル(固形物として、又は液体媒質中)、例えば最大10重量%の活性化合物を含有する軟膏、軟質及び硬質ゼラチンカプセル剤、座剤、注射液、懸濁液、滅菌パッケージ済粉剤及び局所用パッチ剤の形態を成してよい。
【0095】
以上、全体的に本発明を説明してきたが、一例として挙げる下記の実施例を参照すれば、本発明がより明らかになる。これらの実施例は、本発明の理解を助けるために示すものであり、本発明の範囲を限定することを決して意図してはおらず、またそのように解釈すべきではない。実施例は一般的な方法の詳細な説明を含まない。このような方法は当業者に知られており、数多くの刊行物に記載されている。一般的な方法の詳細な説明、例えばベクター及びプラスミドの構成、このようなベクター及びプラスミド内への、ポリペプチドをコードする核酸の挿入、宿主細胞内へのプラスミドの導入、及び遺伝子及び遺伝子生成物の発現及び発現決定の際に採用される方法は、Sambrook, J.他(1989)、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Pressを含む、数多くの刊行物から得ることができる。本明細書中で述べられる全ての参考文献全体を引用する。
【実施例】
【0096】
実施例1
この実施例は、アポトーシス特異的発現を示すラットeIF-5A核酸をコードする完全長cDNAの分離及び特徴付けを示す。
【0097】
〈過剰排卵及びラット黄体におけるアポトーシス誘発〉
50IUのPMSG(妊馬血清ゴナドトロピン)を、そして60〜65時間後に50IUのHCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を皮下注射することにより、未成熟(21〜30日齢)雌ラットに過剰排卵させた。HCGによる処理から数日後、500mgのPGF-2αを皮下注射することにより、黄体アポトーシスを誘発した。PGF-2α処理後の種々の時点(例えば1, 8及び24時間)でラットを犠牲にし、黄体を取り出し、そして液体窒素中に置いた。PGF-2α処理直前にラットを犠牲にすることにより、対照黄体組織を得た。
【0098】
〈ラット卵巣黄体細胞の分散〉
過剰排卵から6〜9日後、500mgのPGF-2αを多部位皮下注射することにより、ラットを処理した。15〜30分後、過剰排卵ラットから卵巣を取り出し、氷上のEBSS(Gibco)中に置き、ブロット乾燥させ、そして秤量した。結合組織をトリミングにより除去し、そして卵巣を剃刀の刃で細かく刻み、そしてEBSS 2Xで2回洗浄した。EBSS 5ml中の6.5mgのコラゲナーゼ(Sigma, カタログ#C 5138)を渦流形成することにより、コラゲナーゼ溶液を調製した。50ml三角フラスコ内のEBSS中の5mlのコラゲナーゼに、8つの卵巣から刻まれた組織を添加し、Diamedピペット内に数回引き込むことにより、穏やかに撹拌した。次いで、刻まれた組織を有するフラスコを、95%空気、5%CO2下で静かに震盪させながら(GFLインキュベータ上の位置45)、20分間にわたって37℃で水浴内に置いた。
【0099】
このインキュベーションに続いて、フラスコを氷上に置き、そして細胞懸濁液をプラスチックの移動ピペットで、Swiss Nitex Nylon Monofilament (75m)を備えたNitexフィルター上に移した。濾液を15ml Falcon試験管内に捕集した。コラゲナーゼ溶液(6.5mg コラゲナーゼ/5ml EBSS)の第2アリコート(2.5ml)を、50ml三角フラスコ内に残っている刻み組織に添加し、ピペットを用いて静かに撹拌し、10分間にわたってインキュベートし、そして上述のように濾過した。2種の濾液を合体させ、そして室温で5分間にわたって、臨床用遠心分離機内で遠心分離した。約2mlの上澄み以外の全てを取り出して廃棄し、そして沈澱した細胞を、残存している2mlの上澄み中に再懸濁させた。
【0100】
MEM 5mlを添加することにより、細胞を2回洗浄し、そして上述のように遠心分離して再懸濁させた。洗浄した細胞を、50ml三角フラスコ内にグルタミン10mmを含有するMEM 30ml中に再懸濁させ、そして95%空気、5%CO2下で震盪させることなしに、37℃で1時間にわたってインキュベートした。次いで、上述のように遠心分離することにより細胞を沈澱させ、そして10mMのグルタミンを含有するMEM中に再懸濁させた。
【0101】
分散された細胞の濃度を、血球計を用いて測定し、そしてトリパンブルー色素を使用して生存可能性を評価した。2〜5 x 105個の細胞のアリコートを、12 x 75mm 試験管内に入れ、そして95%空気、5%CO2下で、震盪させることなしに、37℃で2〜5時間にわたってインキュベートした。DNAラダー形成度を評価することにより、この期間におけるアポトーシスの進行をモニタリングした。
【0102】
〈DNAラダー形成による、ラット黄体中のアポトーシスの視覚化〉
DNAラダー形成によって、アポトーシス度を見極めた。製造元の指示書に従ってQIAamp DNA Blood Kit (Qiagen)を使用して、分散された黄体細胞から、又は摘出された黄体組織から、ゲノムDNAを分離した。PGF-2α処理によるアポトーシス誘発前、並びにアポトーシス誘発から1時間後及び24時間後に、黄体組織を摘出した。DNA 500ngを、0.2μCi[α-32P]dCTP、1mM Tris、0.5mM EDTA、3単位のクレノウ酵素、及びそれぞれ0.2pMのdATP、dGTP及びdTTPと一緒に、30分間にわたって室温でインキュベートすることにより、分離されたDNAに末端標識付けを施した。Sambrook他に従って、1ml Sepadex G-50カラムに試料を通すことにより、組み入れられなかったヌクレオチドを除去した。次いで試料をTris-アセテート-EDTA(1.8%)ゲル電気泳動法によって分離した。ゲルを真空下で、30分間にわたって室温で乾燥させ、そして24時間にわたって-80℃でx線フィルムに当てた。
【0103】
1試験の場合、過剰排卵させたラット黄体中のアポトーシス度を、PGF-2αの注射から0, 1又は24時間後に試験した。0時間対照の場合、PGF-2α注射なしで卵巣を除去した。図16に示すように、アポトーシスと関連するヌクレアーゼ活性を反映する低分子量DNA断片は、PGF-2α処理前に摘出された対照黄体組織中では明らかでないが、しかし、アポトーシス誘発後1時間以内には認識可能であり、そして、アポトーシス誘導から24時間後までには明白となる。この図面では、上側の図は、ラット黄体アポトーシス特異的DHS cDNAの32P-dCTP標識3'-未翻訳領域でプローブされたノーザン・ブロットのオートラジオグラフである。下側の図は、臭化エチジウムで染色された、総RNAのゲルを示す。各レーンは10μg RNAを含有する。データは、血清回収に続いてeIF-5A転写物のダウンレギュレーションが生じることを示す。
【0104】
別の試験の場合、対応する対照動物を、PGF-2αの代わりに生理食塩水で処理した。生理食塩水又はPGF-2αによる処理から15分後に、動物から黄体を取り出した。動物からの組織取り出し後3時間目及び6時間目に、黄体からゲノムDNAを分離した。PGF-2α処理済動物からの組織取り出しから6時間後に、DNAラダー形成、及びゲノムDNAの末端標識増大が明らかになるが、組織取り出し後3時間目ではこれは明らかでない。図17を参照されたい。黄体がPGF-2α処理から15分後に摘出され、EBSS(Gibco)中のin vitro条件下で6時間にわたって維持されると、アポトーシスを反映するDNAラダー形成がやはり明らかになる。アポトーシスと関連するヌクレアーゼ活性も、ゲノムDNAのより広い範囲の末端標識から明らかである。
【0105】
別の試験の場合、500μgのPGF-2αを皮下注射することにより、過剰排卵を誘発した。等容積の生理食塩水で対照ラットを処理した。15分〜30分後、卵巣を摘出し、コラゲナーゼとともに刻んだ。PGF-2αで処理されたラットに由来する分散された細胞を、10mmグルタミン+10mmスペルミジン中で1時間にわたってインキュベートし、そしてスペルミジンなしの10mmグルタミン中でさらに5時間にわたってインキュベートする(レーン2)か、或いは、10mmグルタミン+10mmスペルミジン中で1時間にわたってインキュベートし、そして10mmグルタミン+1mmスペルミジン中でさらに5時間にわたってインキュベートした(レーン3)。生理食塩水で処理されたラットに由来する対照細胞を、コラゲナーゼと一緒に分散し、そして1時間にわたって、そしてさらに5時間にわたってグルタミンだけの中でインキュベートした。クレノウ酵素を使用して、それぞれの試料に由来する500ナノグラムのDNAを[α-32P]-dCTPで標識付けし、1.8%アガロース・ゲル上で分離し、そして24時間にわたってフィルムに当てた。その結果を図18に示す。
【0106】
さらに別の試験の場合、体重100g当たり1mgのスペルミジンを、過剰排卵させたラットに皮下注射し、500μgのPGF-2αの皮下注射の24, 12及び2時間前に、体重100g当たり0.333mgの等しい3回投与量で供給した。対照ラットを3つの集合、つまり:注射なし;スペルミジン注射3回、PGF-2αはなし;PGF-2α処理前に等容積の食塩水を3回注射、の集合に分けた。プロスタグランジン処理から1時間35分後又は3時間45分後に、ラットから卵巣を摘出し、これらをDNAの分離のために使用した。クレノウ酵素を使用して、それぞれの試料に由来する500ナノグラムのDNAを[α-32P]-dCTPで標識付けし、1.8%アガロース・ゲル上で分離し、そして24時間にわたってフィルムに当てた:レーン1、注射なし(レーン3〜5と同時に動物を犠牲にした);レーン2、スペルミジンを3回注射(レーン3〜5と同時に動物を犠牲にした);レーン3、生理食塩水を3回注射後に、PGF-2αを注射(PGF-2α処理から1時間35分後に動物を犠牲にした);レーン4、スペルミジンを3回注射後にPGF-2αを注射(PGF-2α処理から1時間35分後に動物を犠牲にした);レーン5、スペルミジンを3回注射後にPGF-2αを注射(PGF-2α処理から1時間35分後に動物を犠牲にした);レーン6、スペルミジンを3回注射後にPGF-2αを注射(PGF-2α処理から3時間45分後に動物を犠牲にした);レーン7、スペルミジンを3回注射後にPGF-2αを注射(PGF-2α処理から3時間45分後に動物を犠牲にした)。結果を図19に示す。
【0107】
〈RNA分離〉
PGF-2αのアポトーシス誘発後の種々の時点でラットから摘出された黄体組織から、総RNAを分離した。手短に言えば、組織(5g)を液体窒素中で粉砕した。粉砕された粉末を30mlのグアニジニウム緩衝液(4M グアニジニウムイソチオシアネート、2.5mM NaOAc pH8.5, 0.8% β-メルカプトエタノール)と混合した。混合物を4つのMracloth 層を通して濾過し、そして4℃で30分間にわたって10,000gで遠心分離した。次いで上澄みに、20時間にわたって塩化セシウム密度勾配遠心分離を11,200gで施した。ペレット化されたRNAを75% エタノールですすぎ、600mlのDEPC処理水中に再懸濁させ、そして1.5mlの95%エタノール及び60mlの3M NaOAcでRNAを-70℃で析出した。
【0108】
〈ゲノムDNA分離及びラダー形成〉
製造元の指示書に従ってQIAamp DNA Blood Kit (Qiagen)を使用して、抽出された黄体組織から、又は分散された黄体細胞から、ゲノムDNAを分離した。DNA 500ngを、0.2μCi[α-32P]dCTP、1mM Tris、0.5mM EDTA、3単位のクレノウ酵素、及びそれぞれ0.2pMのdATP、dGTP及びdTTPと一緒に、30分間にわたって室温でインキュベートすることにより、DNAに末端標識付けを施した。Maniatis他によって記載された方法に従って、1ml Sephadex G-50カラムに試料を通すことにより、組み入れられなかったヌクレオチドを除去した。次いで試料をTris-アセテート-EDTA(2%)ゲル電気泳動法によって分離した。ゲルを真空下で、30分間にわたって室温で乾燥させ、そして24時間にわたって-80℃でx線フィルムに当てた。
【0109】
〈プラスミドDNA分離、DNA配列決定〉
上述のSambrook他によって記載されたアルカリ溶菌法を用いて、プラスミドDNAを分離した。ジデオキシ配列決定法を用いて、完全長ポジティブcDNAクローンを配列決定した。Sanger他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74:5463-5467。オープン・リーディング・フレームを蓄積して、BLASサーチ(GenBank, Bethesda, MD)を用いて分析し、そしてBCM Search Launcher:Multiple Sequence Alignments Pattern-Induced Multiple Alignment Method(F. Corpet, Nuc. Acids Res., 16:10881-10890, (1987))を用いて、配列アラインメントを達成した。配列及び配列アラインメントを図5〜11に示す。
【0110】
〈ラット黄体RNAのノーザン・ブロット・ハイブリッド形成〉
アポトーシスの種々の段階におけるラット黄体から分離された20ミリグラムの総RNAを、1%変性ホルムアルデヒド・アガロース・ゲル上で分離し、そしてナイロン膜上に固定化した。ランダム・プライマー・キット(Boehringer)を使用して32P-dCTPで標識付けされた完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5A cDNA(SEQ ID NO:1)を使用することにより、膜7 x 107をプローブした。或いは、ランダム・プライマー・キット(Boehringer)を使用して32P-dCTPで標識付けされた完全長ラット・アポトーシス特異的DHS cDNA(SEQ ID NO:6)を使用することにより、膜(7 x 107 cpm)をプローブした。膜を1 x SSC、0.1% SDSにより室温で1回、そして0.2 x SSC、0.1% SDSにより65℃で3回洗浄した。膜を乾燥させ、そして一晩にわたって-70℃でX線フィルムに当てた。
【0111】
図から明らかなように、eIF-5A及びDHSは両方とも、黄体組織をアポトーシス化する際にアップレギュレートされる。アポトーシス特異的eIF-5Aの発現量は、PGF-2α処理によるアポトーシス誘発後に著しく高められる。すなわちアポトーシス特異的eIF-5Aの発現量は、ゼロ時点においては低く、処理から1時間以内に著しく増大し、処理から8時間以内にはさらに増大し、そして処理から24時間以内には僅かに増大した(図14)。DHSの発現量は、ゼロ時点においては低く、処理から1時間以内に著しく増大し、処理から8時間以内にはさらに増大し、そして処理から24時間以内には再び僅かに増大した(図15)。
【0112】
〈酵母、菌類及びヒトeIF-5A配列に基づくプライマーを使用した、アポトーシス性ラット黄体RT-PCR生成物の生成〉
酵母、菌類及びヒトeIF-5A配列から構成された一対のオリゴヌクレオチド・プライマーを使用するRT-PCRによって、アポトーシス性ラット黄体RNA鋳型から、遺伝子の3'末端に対応する部分長アポトーシス特異的eIF-5A配列(SEQ ID NO:11)を生成した。ラットeIF-5A遺伝子の3'末端を分離するために使用される上流プライマーは、20ヌクレオチド縮重プライマー:TCSAARACHGGNAAGCAYGG3'(SEQ ID NO:9)であり、上記中、SはC及びGから選択され;RはA及びGから選択され;HはA, T及びCから選択され;YはC及びTから選択され;そしてNは任意の核酸である。ラットeIF-5A遺伝子の3'末端を分離するために使用される下流プライマーは、42ヌクレオチド:5'GCGAAGCTTCCATGGCTCGAGTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT3'(SEQ ID NO:10)を含有する。逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を実施した。手短に言えば、5mgの下流プライマーを使用して、cDNAの第1ストランドを合成した。次いで、上流プライマー及び下流プライマーの両方を使用するRT-PCRの鋳型として、第1ストランドを使用した。
【0113】
アガロース・ゲル上でのRT-PCR生成物の分離は、900bp断片の存在を明らかにした。この断片をpBluescript(登録商標)(Stratagene Cloning Systems, LaJolla, CA)中に、平滑末端ライゲーションを用いてサブクローニングし、そして配列決定した(SEQ ID NO:11)。3'末端のcDNA配列はSEQ ID NO:11であり、3'末端のアミノ酸配列はSEQ ID NO:12である。図1〜2を参照されたい。
【0114】
アポトーシス性ラット黄体RNA鋳型から、RT-PCTによって、遺伝子の5'末端に対応して3'末端とオーバーラップする部分長アポトーシス特異的eIF-5A配列(SEQ ID NO:15)を生成した。5'プライマーは、ヒトeIF-5A配列から構成された配列5'CAGGTCTAGAGTTGGAATCGAAGC3'(SEQ ID NO:13)を有する24-マーである。3'プライマーは、3'末端RT-PCR断片に従って構成された配列5'ATATCTCGAGCCTTG ATTGCAACAGCTGCC3'(SEQ ID NO:14)を有する30-マーである。逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を実施した。手短に言えば、5mgの下流プライマーを使用して、cDNAの第1ストランドを合成した。次いで、上流プライマー及び下流プライマーの両方を使用するRT-PCRの鋳型として、第1ストランドを使用した。
【0115】
アガロース・ゲル上でのRT-PCR生成物の分離は、500bp断片の存在を明らかにした。この断片をpBluescript(登録商標)(Stratagene Cloning Systems, LaJolla, CA)中に、上流プライマー内に存在するXbaIクローニング部位及び下流プライマー内に存在するXhoIクローニング部位を用いてサブクローニングし、そして配列決定した(SEQ ID NO:15)。5'末端のcDNA配列はSEQ ID NO:15であり、5'末端のアミノ酸配列はSEQ ID NO:16である。図2を参照されたい。
【0116】
ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aの3'及び5'端部の配列(それぞれSEQ ID NO:11及びSEQ ID NO:15)はオーバーラップし、完全長cDNA配列(SEQ ID NO:1)を生じさせる。この完全長配列を整列させ、GeneBankデータベースの配列と比較する。図1〜3を参照されたい。cDNAクローンは、算出分子量16.8KDaの154アミノ酸ポリペプチド(SEQ ID NO:2)をコードする。RT-PCRによって得られたラット・アポトーシス特異的黄体eIF-5A遺伝子の完全長cDNAに対応するヌクレオチド配列SEQ ID NO:1を図3に示す。対応する誘導されたアミノ酸配列はSEQ ID NO:2である。eIF-5Aの誘導された完全長アミノ酸を、ヒト及びマウスのeIF-5aと整列させる。図8〜10を参照されたい。
【0117】
〈ヒトDHS配列に基づくプライマーを使用した、アポトーシス性ラット黄体RT-PCR生成物の生成〉
ヒトDHS配列から構成された一対のオリゴヌクレオチド・プライマーを使用するRT-PCRによって、アポトーシス性ラット黄体RNA鋳型から、遺伝子の3'末端に対応する部分長アポトーシス特異的DHS配列(SEQ ID NO:6)を生成した。5'プライマーは、配列5'GTCTGTGTATTATTGGGCCC3'(SEQ ID NO:17)を有する24-マーである。3'プライマーは、配列5'GCGAAGCTTCCATGGCTCTAGTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT3'(SEQ ID NO:18)を有する42-マーである。逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を実施した。手短に言えば、5mgの下流プライマーを使用して、cDNAの第1ストランドを合成した。次いで、上流プライマー及び下流プライマーの両方を使用するRT-PCRの鋳型として、第1ストランドを使用した。
【0118】
アガロース・ゲル上でのRT-PCR生成物の分離は、606bp断片の存在を明らかにした。この断片をpBluescript(登録商標)(Stratagene Cloning Systems, LaJolla, CA)中に、平滑末端ライゲーションを用いてサブクローニングし、そして配列決定した(SEQ ID NO:6)。RT-PCRによって得られたラット・アポトーシス特異的黄体DHS遺伝子の部分長cDHAに対応するヌクレオチド配列(SEQ ID NO:6)を図4に示す。対応する誘導されたアミノ酸配列はSEQ ID NO:7である。
【0119】
〈ゲノムDNAの分離及びサザン分析〉
摘出されたラット卵巣から、サザン・ブロッティングのためのゲノムDNAを分離した。ほぼ100mgの卵巣組織を小片に細分化して15mlの管内に入れた。組織懸濁液を静かに振盪させながら、細胞を1mlのPBSで2回洗浄し、次いでピペットを使用して、PBSを除去した。組織を2.06mlのDNA緩衝液(0.2M Tris-HCl pH 8.0及び0.1mM EDTA)中に再懸濁し、そして240μlの10% SDS及び100μlのプロテイナーゼK(Boehringer Manheim; 1mg/ml)を添加した。組織を45℃で一晩にわたって、振盪水浴内に入れた。次の日に、さらに100μlのプロテイナーゼK(10mg/ml)を添加し、そして組織懸濁液を45℃で更なる4時間にわたって水浴内でインキュベートした。インキュベーション後、組織懸濁液を、フェノール:クロロホルム:イソ-アミルアルコール(25:24:1)で1回、そして等容積のクロロホルム:イソ-アミルアルコール(24:1)で1回抽出した。抽出に続いて10分の1の容積の3M酢酸ナトリウム(pH5.2)と2容積のエタノールとを添加した。ブンゼン・バーナーを用いてフック内にシールされて形成されたガラス・ピペットを使用することにより、溶液からDNAスレッドを引き出し、そしてDNAを清浄なミクロ遠心分離管内に移した。DNAを70%エタノール中で一度洗浄し、そして10分間にわたって空気乾燥させた。DNAぺレットを500μlの10mM Tris-HCl(pH8.0)中に溶解させ、10μlのμlのRNアーゼA(10mg/ml)を添加し、そしてDNAを1時間にわたって37℃でインキュベートした。DNAをフェノール:クロロホルム:イソ-アミルアルコール(25:24:1)で1回抽出し、10分の1の容積の3M酢酸ナトリウム(pH5.2)と2容積のエタノールとを添加することにより、DNAを抽出した。10分間にわたって13,000 x gで4℃で遠心分離することにより、DNAをぺレット化した。DNAぺレットを70%エタノール中で1回洗浄し、そしてDNAを4℃で一晩にわたって回転させることにより、200μlの10mM Tris-HCl(pH8.0)中に溶解させた。
【0120】
サザン・ブロット分析に際して、ラット卵巣から分離されたゲノムDNAを、内在性遺伝子中では切断しないか、又は一度だけしか切断しない種々の制限酵素で消化した。これを達成するために、10μgのゲノムDNA、10μlの10X反応緩衝液、及び100Uの制限酵素を5〜6時間にわたって総反応容積200μlで反応させた。消化されたDNAを0.7%アガロース・ゲル上にローディングし、これに40ボルトで6時間にわたって、そして15ボルトで一晩にわたって電気泳動を施した。電気泳動後、ゲルを10分間にわたって0.2N HCl中で脱プリン化し、続いて変性溶液(0.5M NaOH, 1.5M NaCl)中で15分間の洗浄を2回、そして中和緩衝液(1.5M NaCl, 0.5M Tris-HCl pH7.4)中で15分間の洗浄を2回行った。DNAをナイロン膜に移し、そして膜をハイブリッド形成溶液{40% ホルムアミド、6 X SSC、5Xデンハルト溶液(1 Xデンハルト溶液は0.02% Ficoll, 0.02% PVP、及び0.02%BSA)、0.5% SDS、及び1.5mgの変性サケ精子DNA}中で前ハイブリッド形成した。ラットeIF-5A cDNAの3'UTRの700bp PCR断片(650bpの3'UTR、及び50bpのコーディング)に、ランダム・プライミングによって[a-32P]-dCTPを標識付けし、これを1 X 106cpm/mlで膜に加えた。
【0121】
同様に、ラットDHS cDNAの606bp PCR断片(450bpのコーティング、及び156bpの3'UTR)に、[α-32P]-dCTPをランダム・プライム標識付けし、これを1 X 106cpm/mlで第2の同一膜に加えた。ブロットを42℃で一晩にわたってハイブリッドし、次いで42℃で2 X SSC及び0.1% SDSによって2回洗浄し、そして42℃で1 X SSC及び0.1% SDSによって2回洗浄した。次いでブロットを3〜10日間にわたってフィルムに当てた。
【0122】
ラット黄体ゲノムDNAを、図20で示すような制限酵素で切断し、そして、32P-dCTP標識付き完全長eIF-5A cDNAでプローブした。高緊縮性条件下でのハイブリッド形成は、完全長cDNAプローブと、各制限酵素で消化されたDNA試料に対応するいくつかの制限断片とのハイブリッド形成を明らかにし、eIF-5Aのいくつかのイソ形の存在を示した。特に注目すべきなのは、ラット・ゲノムDNAが、アポトーシス特異的eIF-5Aのオープン・リーディング・フレーム内の制限部位を有するEcoRVで消化されたときに、eIF-5Aのアポトーシス特異的イソ形の2つの制限断片がサザン・ブロットにおいて検出できることであった。これら2つの断片は、図20に二重矢印で示されている。eIF-5Aのアポトーシス特異的イソ形に対応する制限断片は、EcoR1及びBamH1で標識付けされたレーン、つまりオープン・リーディング・フレーム内に切断部位がない制限酵素において単一の矢印で示されている。これらの結果は、アポトーシス特異的eIF-5Aがラットにおける単一のコピー遺伝子であることを示唆する。図5〜13に示すように、eIF-5Aは種を横切って高保守的であり、従って、任意の種内のイソ形間の保存量が顕著であることが予期される。
【0123】
図21は、32P-dCTP標識付き部分長ラット黄体アポトーシス特異的DHS cDNAでプローブされたラット・ゲノムDNAを示すサザン・ブロットである。ゲノムDNAをEcoRV、つまり、プローブとして使用された部分長cDNAを切断しない制限酵素で切断した。2つの制限断片が明らかであり、遺伝子の2つのコピーがあること、又は遺伝子がEcoRV部位を有するイントロンを含有すること、を示す。
【0124】
実施例2
この実施例は、アポトーシス特異的eIF-5A及びDHSによるアポトーシスの調節を実証する。
【0125】
〈COS-7細胞の培養、及びRNAの分離〉
野生型T抗原をコードするSV40の突然変異体で形質転換された、アフリカ・ミドリザル腎臓線維芽様細胞系であるCOS-7を、全てのトランスフェクション系試験に使用した。1リットル当たり0.584グラムのL-グルタミン、1リットル当たり4.5グラムのグルコース及び0.37%の重炭酸ナトリウムを有するDulbeccoの改質イーグル培地中で、COS-7を培養した。培地に10% ウシ胎仔血清(FBS)及び100単位のペニシリン/ストレプトマイシンを補充した。5%CO2及び95%空気の湿潤環境において37℃で、細胞を成長させた。0.25%トリプシン及び1mM EDTAの溶液で付着細胞を取り外すことにより、細胞を3〜4日ごとに継代培養した。取り外された細胞を、新鮮な培地を有する新しい培養皿内に分割比1:10で小分けした。
【0126】
RNAの分離のために使用されるべきCOS-7細胞を、150mm組織培養皿(Corning)内で成長させた。トリプシン-EDTAの溶液でこれらを取り外すことにより、細胞を収穫した。取り外した細胞を遠心分離管内に捕集し、そして3000rmpで5分間にわたって遠心分離することによりぺレット化した。上澄みを除去し、そして細胞ぺレットを液体窒素中で急速冷凍した。製造元の指示書に従ってGenElute Mammalian Total RNA Miniprep kit(Sigma)を使用して、冷凍細胞からRNAを分離した。
【0127】
〈組換えプラスミドの構成、及びCOS-7細胞のトランスフェクション〉
図21に示す、哺乳動物エピトープ標識発現ベクターpHM6(Roche Molecular Biochemicals)を使用して、センス配向のラット・アポトーシスeIF-5Aの完全長コード配列と、アンチセンス配向のラット・アポトーシスeIF-5Aの3'未翻訳領域(UTR)とを担持する組換えプラスミドを構成した。ベクターは下記のものを含有する:CMVプロモーター-ヒト・サイトメガロウィルス即時-初期プロモーター/エンハンサー;HA-インフルエンザ凝集素に由来するノナペプチド・エピトープ標識;BGH pA-ウシ成長ホルモン・ポリアデニル化シグナル;fl ori- fl起源;SV40 ori-SV40初期プロモーター及び起源;Neomycin-ネオマイシン耐性(G418)遺伝子;SV40pA-SV40ポリアデニル化シグナル;Col E1-Co1E1起源;Ampicillin-アンピシリン耐性遺伝子。pBluescriptにおいて起源ラットeIF-5A RT-PCR断片からPCRを行うことにより、ラット・アポトーシスeIF-5Aの完全長コード配列及びラット・アポトーシスeIF-5Aの3'UTRを増幅した(SEQ ID NO:1)。完全長eIF-5Aを増幅するために使用されるプライマーは下記の通りであった:順方向5'GCCAAGCTTAATGGCAGATGATTTGG3'(HIND3)(SEQ ID NO:22)及び逆方向5'CTGAATTCCAGTTATTTTGCCATGG3'(ECOR1)(SEQ ID NO:23)。3'UTRラットeIF-5Aを増幅するために使用されるプライマーは下記の通りであった:順方向5'AATGAATTCCGCCATGACAGAGGAGGC3'(EcoR1)(SEQ ID NO:24)及び逆方向5'GCGAAGCTTCCATGGCTCGAGTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT3'(HIND3)(SEQ ID NO:10)。
【0128】
アガロース・ゲル電気泳動後に分離された完全長ラットeIF-5A PCR生成物は430bp長であるのに対し、3'UTRラットeIF-5A PCR生成物は697bp長であった。両PCR生成物をpHM6のHind 3及びEcoR1部位中にサブクローニングすることにより、pHM6-完全長eIF-5A及びpHM6-アンチセンス3'UTReIF-5Aを形成した。多クローニング部位の上流側に存在するインフルエンザ凝集素(HA)に由来するノナペプチド・エピトープ標識と一緒にイン・フレームで、完全長ラットeIF-5A PCR生成物をサブクローニングすることにより、抗-[HA]-ペルオキシダーゼ抗体を使用した組換えタンパク質の検出を可能にした。ヒト・サイトメガロウィルス即時-初期プロモーター/エンハンサーによって発現を駆動し、これにより哺乳動物細胞系における高レベルの発現を保証する。プラスミドはまた、安定的なトランスフェクタントの選択を可能にするネオマイシン耐性(G418)遺伝子、及びSV40大型T抗原、例えばCOS-7を発現させる細胞中のエピソーム複製を可能にするSV40初期プロモーター及び起源を特徴とする。
【0129】
トランスフェクション試験に使用されるべきCOS-7細胞を、24ウェル型細胞培養プレート(Corning)内に培養することにより、細胞をタンパク質抽出のために使用するか、或いは、4チャンバ型培養スライド(Falcon) 内に培養することにより、細胞を染色のために使用した。10%FBSが補充されているがしかしペニシリン/ストレプトマイシンを欠いているDMEM培地中で、細胞を密集率50%〜70%になるまで成長させた。42.5μlの無血清DMEM中にプラスミドDNA 0.32μgを希釈し、そして混合物を15分間にわたって室温でインキュベートすることにより、24ウェル型プレートの1つのウェル又は培養スライドに十分なトランスフェクション培地を調製した。トランスフェクション試薬LipofectAMINE(Gibco, BRL)1.6μlを無血清DMEM42.5μl中に希釈し、そして室温で5分間にわたってインキュベートした。5分後、LipofectAMINE混合物をDNA混合物に添加し、室温で30〜60分間にわたって一緒にインキュベートした。トランスフェクション培地を上塗りする前に、トランスフェクトされるべき細胞を無血清DMEMで1回洗浄し、そして細胞を成長チャンバ内に4時間戻した。
【0130】
インキュベーション後、0.17mlのDMEM + 20% FBSを細胞に添加した。細胞をさらに40時間培養した後、アポトーシスを誘発してその後染色するか、或いはこれらの細胞を収穫してウェスタン・ブロット分析に使用した。対照として、偽トランスフェクションも実施した。この偽トランスフェクションでは、トランスフェクション培地からプラスミドDNAを省いた。
【0131】
〈タンパク質抽出及びウェスタン・ブロッティング〉
PBS(8g/ NaCl, 0.2g/L KCl, 1.44g/L Na2HPO4、及び0.24g/L KH2PO4)中で細胞を2回洗浄し、次いで高温SDSゲル装入用緩衝液150μl (50mM Tris-HCl pH 6.8, 100mM ジチオトレイトール、2% SDS、0.1%ブロモフェノール・ブルー、及び10%グリセロール)を添加することにより、トランスフェクト済細胞から、ウェスタン・ブロッティングのためにタンパク質を分離した。細胞溶解物をミクロ遠心分離管中に捕集し、10分間にわたって95℃で加熱し、次いで10分間にわたって13,000 x gで遠心分離した。上澄みを新鮮なミクロ遠心分離管に移し、そして使用準備ができるまで-20℃で保存した。
【0132】
ウェスタン・ブロッティングに際しては、2.5又は5μgの総タンパク質を12% SDS-ポリアクリルアミド・ゲル上で分離した。分離されたタンパク質をポリビニリデンジフルオリド膜に移した。次いで、膜を1時間にわたってブロッキング溶液(5%脱脂粉乳、PBS中0.02%アジ化ナトリウム)中でインキュベートし、PBS-T(PBS + 0.05% Tween-20)中で15分間にわたって3回洗浄した。膜をPBS-T中で4℃で一晩にわたって保存した。翌日室温まで加熱したあと、膜を30秒間にわたって1μg/mlのポリビニルアルコール中でブロックした。膜を脱イオン水中で5回すすぎ、次いでミルクのPBS5%溶液中で30分間にわたってブロックした。一次抗体をミルクのPBS5%溶液中で30分間にわたって前インキュベートした後、膜と一緒にインキュベートした。
【0133】
いくつかの一次抗体を使用した。抗-[HA]-ペルオキシダーゼ抗体(Roche Molecular Biochemicals)を1:5000の希釈率で使用することにより、組換えタンパク質の発現を検出した。この抗体はペルオキシダーゼに接合されるので、二次抗体は必要でなく、ブロットを洗浄して化学発光により発色させた。使用された他の一次抗体は、p53(Ab-6)、Bcl-2(Ab-1)、及びc-Myc(Ab-2)を認識する、Oncogeneから入手されたモノクローナル抗体である。p53に対するモノクローナル抗体は、0.1μg/mlの希釈率で使用され、そしてBcl-2及びc-Mycに対するモノクローナル抗体は両方とも、0.83μg/mlの希釈率で使用される。60〜90分間にわたって一次抗体と一緒にインキュベートした後、膜をPBS-T中で15分間にわたって3回洗浄した。次いで、二次抗体をミルクのPBS1%溶液中に希釈し、そして膜と一緒に60〜90分間にわたってインキュベートした。p53(Ab-6)を一次抗体として使用したときには、二次抗体は、希釈率1:1000でアルカリ性ホスファターゼ(Rockland)に接合されたヤギ抗マウスIgGであった。Bcl-2(Ab-1)及びc-Myc(Ab-2)を一次抗体として使用したときには、二次抗体として、ペルオキシダーゼ(Sigma)に接合されたウサギ抗マウスIgGを希釈率1:5000で使用した。二次抗体と一緒にインキュベートした後、膜をPBS-T中で3回洗浄した。
【0134】
2つの検出法、すなわち比色分析法及び化学発光法を用いることにより、ブロットを発色させた。アルカリ性ホスファターゼに接合された二次抗体とともに、一次抗体としてp53(Ab-6)を使用した場合にのみ、比色分析法を使用した。0.33mg/mLのニトロ・ブルー・テトラゾリウム、0.165mg/mLの5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート、100mM NaCl、5mM MgCl2及び100mM Tris-HCl(pH9.5)の溶液中で暗所においてブロットをインキュベートすることにより、結合された抗体を視覚化した。ブロットをPBS中の2mM EDTA中でインキュベートすることにより、色反応を停止させた。抗-[HA]-ペルオキシダーゼBcl-2(Ab-1)及びc-Myc(Ab-2)を含む全てのその他の一次抗体に対して、化学発光検出法を用いた。ECL Plus Westernブロッティング検出キット(Amersham Pharmacia Biotech)を使用することにより、ペルオキシダーゼに接合された抗体を検出した。手短に言えば、膜を軽くブロット乾燥させ、次いで40:1の試薬Aと試薬Bとの混合物と一緒に5分間にわたって暗所でインキュベートした。膜をブロット乾燥させ、アセテート・シート間に入れ、10秒〜10分間の時間にわたってX線フィルムに当てた。
【0135】
〈COS7細胞におけるアポトーシス誘発〉
トランスフェクトされたCOS-7においてアポトーシスを誘発するために、2つの方法、つまり血清剥奪及びアクチノマイシンD streptomyces sp(Calbiochem)処理を利用した。両処理に関して、トランスフェクションから40時間後に培地を取り出した。血清窮乏試験に際しては、培地を、血清がなく抗生物質もないDMEMと置き換えた。10% FBSが補充されている、抗生物質なしのDMEM中で成長した細胞を、対照として使用した。アクチノマイシンDによるアポトーシス誘発に際しては、培地を、10% FBS及びメタノール中に溶解された1μg/mlアクチノマイシンDが補充されている、抗生物質なしのDMEMと置き換えた。10% FBS及び等容積のメタノールが補充されている、抗生物質なしのDMEM中で対照細胞を成長させた。両方法に関して、ヘキスト(Hoescht)又はアネキシン(Annexin) V-Cy3で染色することにより、48時間後にアポトーシス細胞のパーセンテージを検出した。図22に示したように、アポトーシス誘発はまた、ノーザン・ブロット分析によって確認された。
【0136】
〈ヘキスト(Hoescht)染色〉
核染色剤ヘキスト(Hoescht)を使用して、トランスフェクトされたCOS-7細胞の核を標識付けすることにより、形態的特徴、例えば核の断片化及び縮合に基づいてアポトーシス細胞を識別した。無水メタノールと氷酢酸との3:1混合物から成る固定剤を、使用直前に調製した。培養スライド上で成長するCOS-7細胞の培地に、等容積の固定剤を添加し、そして2分間にわたってインキュベートした。細胞から培地/固定剤混合物を取り出し、廃棄し、そして1mlの固定剤を細胞に添加した。5分後、固定剤を廃棄し、そして1mlの新鮮な固定剤を細胞に添加し、そして5分間にわたってインキュベートした。固定剤を廃棄し、そして細胞を4分間にわたって空気乾燥させた後、1mlのヘキスト(Hoescht)染色剤(PBS中の0.5μg/ml ヘキスト(Hoescht) 33258)を添加した。暗所における10分間のインキュベーション後、染色溶液を廃棄し、そしてスライドを脱イオン水で1分間にわたって3回洗浄した。洗浄後、1mlのマッキルバイン(McIlvaine)緩衝液(0.021Mクエン酸、0.058M Na2HPO4.7H2O;pH5.6)を細胞に添加し、そしてこれらを20分間にわたって暗所にインキュベートした。緩衝液を廃棄し、細胞を暗所で5分間にわたって空気乾燥させ、培養スライドのウェルを分離するチャンバを除去した。蛍光用培地を組み込んだVectashield(Vector Laboratories)を数滴、スライドに添加し、カバースリップを被せた。UVフィルターを使用して、蛍光顕微鏡下で、染色された細胞を見た。明るく染色又は断片化された核を有する細胞をアポトーシス細胞としてスコアリングした。
【0137】
〈アネキシン(Annexin) V-cy3染色〉
アネキシン(Annexin) V-Cy3アポトーシス検出キット(Sigma)を使用して、アポトーシス細胞上の外在化ホスファチジルセリンを蛍光標識付けした。下記改変とともに、製造元の指示に従ってキットを使用した。手短に言えば、4つのチャンバ培養スライド上で成長するトランスフェクト済COS-7細胞を、PBSで2回洗浄し、そして1 X 結合緩衝液で3回洗浄した。150μlの染色溶液(1 X 結合緩衝液中の1μg/ml AnnCy3)を添加し、そして細胞を10分間にわたって暗所でインキュベートした。次いで染色溶液を除去し、そして細胞を1 X 結合緩衝液で5回洗浄した。チャンバ壁を培養スライドから除去し、数滴の1 X 結合緩衝液を細胞上に置き、カバースリップを被せた。緑フィルターを使用した蛍光顕微鏡分析法によって、染色された細胞を分析することにより、ポジティブに染色された(アポトーシス)細胞の赤蛍光を視覚化した。可視光下で細胞数をカウントすることにより、総細胞個体数を検出した。
【0138】
実施例3
この実施例は、アポトーシス特異的eIF-5A及びDHSによるアポトーシスの調節を実証する。
【0139】
前述の実施例に記載された一般的な手順及び方法を用いて、図23は、COS-7細胞の一時的トランスフェクションの手順を示すフローチャートである。このフローチャートにおいて、血清なしの培地中の細胞を、lipofectAMINE中のプラスミドDNA中で4時間にわたってインキュベートし、血清を添加し、そしてこれらの細胞をさらに40時間にわたってインキュベートした。次いで、分析の前にさらに48時間にわたって、血清を含有する通常の培地中で細胞をインキュベートする(すなわち更なる処理はない)か、48時間にわたって血清を剥奪することにより分析前にアポトーシスを誘発するか、或いは、48時間にわたってアクチノマイシンで処理することにより、分析前にアポトーシスを誘発した。
【0140】
図22は、pHM6をトランスフェクトした後の、COS-7細胞中の外来タンパク質の一次的発現を示すウェスタン・ブロットである。偽トランスフェクション、又はpHM6-LacZ、pHM6-アンチセンス3'rF5A(pHM6-アンチセンス3'UTRラット・アポトーシスeIF-5A)、又はpHM6-センスrF5A(pHM6-完全長ラット・アポトーシスeIF-5A)、によるトランスフェクションから48時間後に、COS-7細胞からタンパク質を分離した。各試料から5μgのタンパク質をSDS-PAGEによって断片化し、PVDF膜に移し、そして抗-[HA]-ペルオキシダーゼでウェスタン・ブロットした。結合された抗体を化学発光によって検出し、30秒間にわたってX線フィルムに当てた。LacZ(レーン2)及びセンス・ラット・アポトーシスeIF-5A(レーン4)の発現を明らかに見ることができる。
【0141】
上述のように、COS-7細胞に偽トランスフェクトするか又はpHM6-センスrF5A(pHM6-完全長ラットeIF-5A)をトランスフェクトした。トランスフェクトから40時間後、48時間にわたって血清を回収することにより、細胞にアポトーシスを誘発した。蛍光測定等質カスパーゼ・アッセイ・キット(Roche Diagnostics)を使用して、トランスフェクト細胞抽出物中のカスパーゼ・タンパク質分解活性を測定した。また、Frag DNA断片化アポトーシス検出キット(Oncogene)を使用して、DNA断片化を測定した。この検出キットは、フルオレセイン標識付きデオキシヌクレオチドで、DNA断片の露出3'-OH末端に標識付けする。
【0142】
付加的なCOS-7細胞に偽トランスフェクトするか又はpHM6-センスrF5A(pHM6-完全長ラットeIF-5A)をトランスフェクトした。トランスフェクションから40時間後、血清を含有する通常の培地中でさらに48時間にわたって細胞を成長させる(すなわち更なる処理はない)か、48時間にわたって血清を回収することによりアポトーシスを誘発するか、或いは、48時間にわたって0.5μg/mlのアクチノマイシンDで処理することによりアポトーシスを誘発した。アポトーシスを伴う核断片化を示すヘキスト(Hoescht) 33258で、又は、アポトーシスを伴うホスファチジルセリン暴露を示すアネキシン(Annexin) V-Cy3で細胞を染色した。また、緑フィルターを使用した蛍光顕微鏡分析法によって、染色された細胞を見てカウントすることにより、アポトーシスを蒙った細胞のパーセンテージを測定した。可視光下で総細胞個体数をカウントした。
【0143】
図25は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、カスパーゼ活性の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す図である。ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aの発現の結果、カスパーゼ活性は60%だけ増大した。
【0144】
図26は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、DNA断片化の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す図である。ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aの発現の結果、DNA断片化は273%だけ増大した。図27は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、核断片化の増大により反映されるアポトーシスの検出を示す図である。ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aを発現させる細胞中の断片化核の発生率が増大する。図28は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、核断片化の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す図である。ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aの発現の結果、非血清窮乏試料及び血清窮乏試料における、対照に対する核断片化の増加率は、それぞれ27%及び63%であった。
【0145】
図29は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、ホスファチジルセリン暴露により反映されるアポトーシスの検出を示す図である。図30は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、ホスファチジルセリン暴露の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す図である。ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aの発現の結果、非血清窮乏試料及び血清窮乏試料における、対照に対するホスファチジルセリン暴露の増加率は、それぞれ140%及び198%であった。
【0146】
図31は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、核断片化の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す図である。ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aの発現の結果、未処理試料及び処理済試料における、対照に対する核断片化の増加率は、それぞれ115%及び62%であった。図32は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を一時的にトランスフェクトされたCOS-7細胞に、アポトーシスを誘発するための更なる処理が施されている、又はいない条件下での、アポトーシスの増強を比較した図である。
【0147】
実施例4
この実施例は、アポトーシス特異的eIF-5A及びDHSの投与後のアポトーシス活性の調節を実証する。
【0148】
さらに、COS-7細胞に、偽トランスフェクトするか、又はpHM6-LacZをトランスフェクトするか、又はpHM6-センスrF5A(pHM6-完全長ラットeIF-5A)をトランスフェクトし、そしてこれらの細胞を40時間にわたってインキュベートした。各試料から5μgのタンパク質抽出物をSDS-PAGEによって断片化し、PVDF膜に移し、そしてBcl-2を認識するモノクローナル抗体でウェスタン・ブロットした。ペルオキシダーゼに接合されたウサギ抗マウスIgGを二次抗体として使用し、そして、結合された抗体を化学発光及びX線フィルム暴露により検出した。その結果を図32に示した。pHM6-センスrF5Aをトランスフェクトされた細胞中で検出可能なBcl-2は、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞中で検出可能なBcl-2よりも少ない。従って、Bcl-2はダウンレギュレートされている。
【0149】
付加的なCOS-7細胞に、偽トランスフェクトするか、又はアンチセンス3'rF5A((ラット・アポトーシスeIF-5AのpHM6-アンチセンス3'UTR)をトランスフェクトするか、又はpHM6-センスrF5A(pHM6-完全長ラット・アポトーシスeIF-5A)をトランスフェクトした。トランスフェクションから40時間後に、48時間にわたって血清を回収することにより、細胞にアポトーシスを誘発した。各試料から5μgのタンパク質抽出物をSDS-PAGEによって断片化し、PVDF膜に移し、そしてBcl-2を認識するモノクローナル抗体でウェスタン・ブロットした。ペルオキシダーゼに接合されたウサギ抗マウスIgGを二次抗体として使用し、そして、結合された抗体を化学発光及びX線フィルム暴露により検出した。
【0150】
またさらに、COS-7細胞に、偽トランスフェクトするか、又はpHM6-LacZをトランスフェクトするか、又はpHM6-センスrF5A(pHM6-完全長ラットeIF-5A)をトランスフェクトし、そしてこれらの細胞を40時間にわたってインキュベートした。各試料から5μgのタンパク質抽出物をSDS-PAGEによって断片化し、PVDF膜に移し、そしてp53を認識するモノクローナル抗体でウェスタン・ブロットした。アルカリ性ホスファターゼに接合されたヤギ抗マウスIgGを二次抗体として使用し、そして、結合された抗体を比色分析により検出した。
【0151】
最後に、COS-7細胞に、偽トランスフェクトするか、又はpHM6-LacZをトランスフェクトするか、又はpHM6-センスrF5A(pHM6-完全長ラットeIF-5A)をトランスフェクトし、そしてこれらの細胞を40時間にわたってインキュベートした。各試料から5μgのタンパク質抽出物をSDS-PAGEによって断片化し、PVDF膜に移し、そしてp53を認識するモノクローナル抗体でプローブした。対応するタンパク質ブロットを抗-[HA]-ペルオキシダーゼでプローブすることにより、ラット・アポトーシス特異的eIF-5A発現レベルを測定した。アルカリ性ホスファターゼに接合されたヤギ抗マウスIgGを二次抗体として使用し、そして、結合された抗体を化学発光により検出した。
【0152】
図33は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時の、Bcl-2のダウン・レギュレーションを示す図である。上側の図はクーマシー・ブルー染色タンパク質ブロットを示し、下側の図は対応するウェスタン・ブロットを示す。pHM6-センスrF5Aをトランスフェクトされた細胞中で検出可能なBcl-2は、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞中で検出可能なBcl-2よりも少ない。
【0153】
図34は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをアンチセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトしたときのBcl-2のアップレギュレーションを示す。上側の図はクーマシー・ブルー染色タンパク質ブロットを示し、下側の図は対応ウェスタン・ブロットを示す。pHM6-アンチセンス3'rF5Aをトランスフェクトされた細胞中で検出可能なBcl-2は、偽トランスフェクトされた細胞、又はpHM6-センスrF5Aをトランスフェクトされた細胞中で検出可能なBcl-2よりも少ない。
【0154】
図35は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトしたときのc-Mycのアップレギュレーションを示す。上側の図はクーマシー・ブルー染色タンパク質ブロットを示し、下側の図は対応ウェスタン・ブロットを示す。pHM6-センスrF5Aをトランスフェクトされた細胞中で検出可能なc-Mycは、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞、又は偽トランスフェクトされた細胞中で検出可能なc-Mycよりも多い。
【0155】
図36は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトしたときのp53のアップレギュレーションを示す。上側の図はクーマシー・ブルー染色タンパク質ブロットを示し、下側の図は対応ウェスタン・ブロットを示す。pHM6-センスrF5Aをトランスフェクトされた細胞中で検出可能なp53は、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞、又は偽トランスフェクトされた細胞中で検出可能なp53よりも多い。
【0156】
図37は、COS-7細胞中のpHM6-完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aの発現に対するp53アップレギュレーションの依存を示す。抗-[HA]-ペルオキシダーゼでプローブされたウェスタン・ブロットにおいて、上側の図は、クーマシー・ブルーで染色されたタンパク質ブロットを示し、下側の図は、対応ウェスタン・ブロットを示す。第1トランスフェクションにおいて検出可能なラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aは、第2トランスフェクションにおいて検出可能なラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aよりも多い。抗-p53でプローブされたウェスタン・ブロットにおいて、Aにおける上側の図は、クーマシー・ブルーで染色された対応タンパク質ブロットを示し、下側の図は、p53によるウェスタン・ブロットを示す。第1のトランスフェクションに関して、pHM6-センスrF5Aをトランスフェクトされた細胞中で検出可能なp53は、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞、又は偽対照をトランスフェクトされた細胞中で検出可能なp53よりも多い。ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aの発現がより少ない第2トランスフェクションの場合、pHM6-センスrF5A、pHM6-LacZ又は偽対照をトランスフェクトされた細胞間のp53レベルの差は検出できなかった。
【0157】
実施例5
この実施例は、アポトーシス特異的eIF-5Aが、活性p53を有する細胞(RKO細胞)及び活性p53を有さない細胞(PKO-E6)中にアポトーシスを誘発することができることを実証する。このことは、アポトーシス特異的eIF-5Aが、p53経路以外の経路を通ってアポトーシスを開始することができることを示す。このことはまた、アポトーシス特異的eIF-5Aが上流側で作用しており、広範囲の種々異なるタイプの癌をおそらく殺すことができるという我々の主張を支援する。
【0158】
この実施例は、eIF-5Aの活性側が、おそらくはRNA結合ドメインを含有するタンパク質のカルボキシ末端(すなわち、切断型eIF-5Aを伴う試験参照)であることを示す。
【0159】
さらにこの実施例は、ヒトeIF-5A2がアポトーシスを誘発することができないことから、これが増殖性eIF-5Aである可能性が高いことを実証する。従って、ヒト・データバンクにおける2つのeIF-5A遺伝子のうち、アポトーシス特異的eIF-5Aがアポトーシス遺伝子であり、eIF-5A2が増殖遺伝子であると考えられる。
【0160】
〈RKO及びRKO-E6細胞の培養〉
RKO(American Type Culture Collection CRL-2577)、すなわち野生型p53を発現させる結腸癌細胞系、及びRKO-E6(American Type Culture Collection CRL-2578)、すなわち正常p53レベル及び機能を減小させるヒト・パピローマ・ウィルスE6腫瘍細胞が安定的に組み入れられたRKOから誘導された細胞系を、トランスフェクションに基づく試験のために使用した。RKO及びRKO-E6細胞を、非必須アミノ酸、アール(Earle)塩、及びL-グルタミンを有する最小必須培地Eagle(MEM)内に培養した。培地には、10%ウシ胎仔血清(FBS)及び100単位のペニシリン/ストレプトマイシンを補充した。5%CO2及び95%空気の湿潤環境において37℃で、細胞を成長させた。0.25%トリプシン及び1mM EDTAの溶液で付着細胞を取り外すことにより、細胞を3〜4日ごとに継代培養した。取り外された細胞を、新鮮な培地を有する新しい培養皿内に分割比1:10〜1:12で小分けした。
【0161】
〈ヒトeIF5A2のクローニング〉
Genbankから入手可能なヒトeIF5A2(寄託番号XM_113401)の配列に対して構成されたプライマーを使用して、RKO細胞から分離されたRNAから、RT-PCRによってヒトeIF5A2を分離した。図38は、RKO細胞から分離されたヒトeIF-5Aと、ヒトelF-5A2の配列とのアラインメントを示す。GenElute Mammalian Total RNA Miniprep Kit(Sigma)を使用して、RKO細胞からRNAを分離した。eIF5A2を増幅するために使用された順方向プライマーは、配列5' AAACTACCATCTCCCCTGCC3'(SEQ ID NO:25)を有し、そして逆方向プライマーは、配列5' TGCCCTACACAGGCTGAAAG3'(SEQ ID NO:26)を有した。結果として生じる936bp PCR生成物をpGEM-T Easy Vector(Promega)中にサブクローニングし、そして配列決定した。
【0162】
次いで、pGEM-T Easy-eIF 5A2構造を鋳型として使用して、哺乳動物発現ベクターpHM6(Roche)内にイン・フレームでサブクローニングされるべきeIF5A2 PCR断片を生成した。ヒトeIF5A2を増幅するために使用された順方向プライマーは、5'ATCAAGCTTGCCCACCATGGCAGACG3'(SEQ ID NO:27)であり、逆方向プライマーは、5'AACGAATTCCATGCCTGATGTTTCCG3'(SEQ ID NO:28)であった。その結果生じる505bpのPCR生成物をHind 3及びEcoR 1で消化し、pHM6のHind 3部位及びEcoR1部位中にサブクローニングした。
【0163】
〈pHM6切断型eI5A1の構成〉
eIF5A1のカルボキシ末端領域がそのアポトーシス誘発活性にとって重要であるかどうかを見極めるために、カルボキシ末端欠失型eIF5A1を構成した。pBS-ラットeIF5A1を鋳型として使用したPCRによって、アミノ酸1〜127をコードする切断型eIF5A1を生成した。順方向プライマーは、5'GCCAAGCTTAATGGCAGATGATTTGG3'(SEQ ID NO:22)であり、逆方向プライマーは、5'TCCGAATTCGTACTTCTGCTCAATC3'(SEQ ID NO:29)であった。その結果生じる390bpのPCR生成物をEcoR 1及びHind 3で消化し、pHM6のEcoR1部位及びHind 3部位中にサブクローニングした。
【0164】
〈トランスフェクション〉
トランスフェクション試験に使用されるべきRKO又はRKO-E6細胞を8ウェル・チャンバ培養スライド(Falcon)内で培養して、細胞をヘキスト(Hoescht)染色のために使用するか、或いは、6ウェル・プレート内で培養して、細胞をフロー・サイトメトリーによって分析した。10%FBSが補充されているがしかしペニシリン/ストレプトマイシンを欠いているMEM培地中で、細胞を密集率70%〜80%になるまで成長させた。22μlの無血清DMEM中にプラスミドDNA 0.425μgを希釈し、そして混合物を15分間にわたって室温でインキュベートすることにより、8ウェル型培養スライドの1つのウェルに十分なトランスフェクション培地を調製した。トランスフェクション試薬LipofectAMINE(Gibco, BRL)0.85μlを無血清MEM22μl中に希釈し、そして室温で5分間にわたってインキュベートした。5分後、LipofectAMINE混合物をDNA混合物に添加し、室温で30〜60分間にわたってインキュベートした。トランスフェクション培地に44μlのMEMを添加して細胞にこれを上塗りする前に、トランスフェクトされるべき細胞を無血清DMEMで1回洗浄した。細胞を成長チャンバ内に4時間戻した。インキュベーション後、88μlのMEM + 20% FBSを細胞に添加した。細胞をさらに44時間にわたって培養し、次いで前述のようにヘキスト(Hoescht) 33258で染色した。別の一連の試験の場合、トランスフェクションから24時間後に、8ウェル型培養スライド中のRKO又はRKO-E6を、0.25μg/mlのアクチノマイシンDで処理し、そして20時間後にヘキスト(Hoescht)で染色した。試薬全てが4.81倍だけ増大する以外は同様に、6ウェル型プレート内でもトランスフェクションを行った。6ウェル型プレート内でトランスフェクトされたRKO細胞をトランスフェクションから48時間後に収穫し、そして下記のようなフロー・サイトメトリーによって分析するために固定した。
【0165】
〈トランスフェクション効率の測定〉
トランスフェクション効率は、pHM6-LacZがトランスフェクトされた細胞を5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド(X−GAL)で染色することによって測定した。ブルー染色された細胞はLacZを発現させる、トランスフェクトされた細胞であり、トランスフェクション効率を、ブルー染色された細胞数/細胞総数として算出した。トランスフェクション後、トランスフェクトされた細胞を、トランスフェクション後48時間にわたって染色した。細胞をPBSで2回洗浄してから、0.5%グルテラルデヒド/PBS中で10分間にわたって室温で固定した。細胞を1mMのMgCl2/PBSで3回洗浄してから、ブルーに染色された細胞が現れるまで染色溶液[5mMのK4Fe(CN)6.3H20、5mMのK3Fe(CN)6、PBS中1mMのMgCl2、0.1%X-GAL]と一緒にインキュベートした。
【0166】
〈ヘキスト(Hoescht)染色〉
核染色剤ヘキスト(Hoescht)を使用して、トランスフェクトされたRKO及びRKO-E6細胞の核を標識付けすることにより、核の断片化及び縮合に基づいてアポトーシス細胞を識別した。無水メタノールと氷酢酸との3:1混合物から成る固定剤を、使用直前に調製した。培養スライド上で成長する細胞の培地に、等容積の固定剤を添加し、そして2分間にわたってインキュベートした。細胞から培地/固定剤混合物を取り出し、廃棄し、そして1mlの固定剤を細胞に添加した。5分後、固定剤を廃棄し、そして1mlの新鮮な固定剤を細胞に添加し、そして5分間にわたってインキュベートした。固定剤を廃棄し、そして細胞を4分間にわたって空気乾燥させた後、1mlのヘキスト(Hoescht)染色剤(PBS中の0.5μg/ml ヘキスト(Hoescht) 33258)を添加した。暗所における10分間のインキュベーション後、染色溶液を廃棄し、そしてスライドを脱イオン水で1分間にわたって3回洗浄した。洗浄後、1mlのMcIlvaine緩衝液(0.021Mクエン酸、0.058M Na2HPO4.7H2O;pH5.6)を細胞に添加し、そして20分間にわたって暗所にインキュベートした。緩衝液を廃棄し、細胞を暗所で5分間にわたって空気乾燥させ、培養スライドのウェルを分離するチャンバを除去した。蛍光用培地を組み込んだVectashield(Vector Laboratories)を数滴、スライドに添加し、カバースリップを被せた。UVフィルターを使用して、蛍光顕微鏡下で、染色された細胞を見た。明るく染色又は断片化された核を有する細胞をアポトーシス細胞としてスコアリングした。
【0167】
〈フロー・サイトメトリーによるDNA断片化検出〉
アポトーシスの過程で発生するDNA断片を、フルオレセイン-FragELTM DNA断片化検出キット(Oncogene Research Products)を使用して、フルオレセイン-標識付けデオキシヌクレオチドで標識付けした。6ウェル型培養プレート中の、種々の構造をトランスフェクトされた細胞を、メーカーの指示書に従い、トランスフェクションから48時間後、トリプシン化によって収穫し、固定し、標識付けした。手短に説明すると、4℃において5分間にわたって1000xgで細胞をペレット化し、PBS(8g/LのNaCl、0.2g/LのKCl、1.44g/LのNa2HPO4、及び0.24g/LのKH2PO4)中で1回洗浄した。細胞を4%ホルムアルデヒド/PBS中に再懸濁させ、室温で10分間にわたってインキュベートした。細胞を再度ペレット化し、1mlの80%エタノール中に再懸濁させ、4℃で保存した。分析当日、1mlの固定細胞(1x106細胞/ml)をミクロ遠心分離管に移し、細胞を5分間にわたって1000xgで遠心分離した。ペレット化した細胞を200μlの1X TBS(20mMのTris pH7.6、140mMのNaCl)中に再懸濁させ、室温で10〜15分間にわたってインキュベートした。次いで、細胞を再度ペレット化し、100μlの20μg/mlのプロテイナーゼK中に再懸濁させ、室温で5分間にわたってインキュベートした。細胞をペレット化し、100μlの1X TdT平衡バッファ中に再懸濁させ、室温で10〜30分間にわたってインキュベートした。次いで、遠心分離によって細胞をペレット化し、60μlのTdT標識付け反応混合液中に再懸濁させ、暗所で1〜1.5時間にわたってインキュベートした。インキュベートした後、遠心分離によって細胞をペレット化し、200μlの1 X TBS中で2回洗浄した。最終容積0.5mlの1 X TBS中に細胞を再懸濁させ、488nmアルゴン・イオン・レーザー光源を備えたフロー・サイトメーターで分析した。
【0168】
〈タンパク質抽出とウェスタン・ブロッティング〉
ウェスタン・ブロッティングのため、細胞をPBS中で2回洗浄した後、150μlの高温SDSゲル-ローディング緩衝液(50mMのTris-HCL、pH6.8、100mMのジチオスレイトール、2%SDS、0.1%ブロモフェノール・ブルー、及び10%グリセロール)を加えることによってタンパク質を分離した。細胞溶解物をミクロ遠心分離管に回収し、10分間にわたって95℃に加熱した後、13,000Xgで10分間にわたって遠心分離した。上澄みを新しいミクロ遠心分離管に移し、使用準備ができるまで-20℃で保存した。
【0169】
ウェスタン・ブロッティングを行うため、タンパク質総量から5μg又は10μgずつ12%SDS-ポリアクリルアミド・ゲル上に分割した。分割されたタンパク質をポリビニリデン・ジフルオライド膜へ移した。次いで、この膜をブロッキング溶液(5%脱脂粉乳、アジ化ナトリウムの0.02%PBS溶液)中で1時間にわたってインキュベートし、PBS-T(PBS+0.05%Tween-20)中で15分間にわたって3回洗浄した。膜を4℃のPBS-T中で一晩保存した。翌日室温に温めた後、1μg/mlのポリビニル・アルコール中で30秒間にわたって、膜をブロックした。脱イオン水で膜を5回にわたってリンスした後、ミルクの5%PBS溶液中で30秒間にわたってブロックした。膜と一緒にインキュベートする前に、一次抗体をミルクの5%PBS溶液/0.025%Tween-20中で前インキュベートした。
【0170】
膜に、Oncogeneから入手した、p53(Ab-6)を認識するモノクローナル抗体、又はニワトリから得たヒトeIF5A1のc-末端と相同の合成ペプチド(アミノ-CRLPEGDLGKEIEQKYD-カルボキシ)(SEQ ID NO:30)に対するポリクローナル抗体をブロットした。p53に対するモノクローナル抗体は0.1μg/mlの希釈率で、eIF5A1に対する抗体は1:1000の希釈率で使用した。一次抗体と共に60〜90分間にわたってインキュベートした後、膜をPBS-Tで15分間にわたって3回洗浄した。次いで、二次抗体をミルクの1%PBS溶液/0.025% Tween-20で希釈し、膜と共に60〜90分間にわたってインキュベートした。p53(Ab-6)を一次抗体として使用した場合、使用する二次抗体はアルカリホスファターゼ(Rockland)と接合したヒツジの1:1000希釈抗マウスIgGであった。一次抗体として抗eIF5A1を使用した場合、ペルオキシダーゼと接合したラビット抗ニワトリIgY(Gallus Immunotech)を1:10000の希釈率で使用した。二次抗体と共にインキュベートした後、膜をPBS-Tで3回洗浄した。
【0171】
ブロットを発色させるのに2つの検出方法、即ち、比色分析法及び化学発光検出法を採用した。比色分析法は、p53(Ab-6)をアルカリホスファターゼ接合二次抗体との関連で一次抗体として使用する場合にのみ採用した。0.33mg/mLのニトロ・ブルー・テトラゾリウム、0.165mg/mLの5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート、100mMのNaCl、5mMのMgCl2、及び100mMのTris-HCl(pH9.5)の溶液中で、ブロットを暗所でインキュベートすることによって、結合抗体を可視化した。EDTAの2mM PBS中でブロットをインキュベートすることによって呈色反応を停止させた。抗[HA]-ぺルオキシダーゼ及び抗eIF5A1を含む他のすべての一次抗体に対しては化学発光検出法を採用した。ペルオキシダーゼ接合抗体の検出にはECL Plus Westernブロッティング検出キット(Amersham Pharmacia Biotech)を使用した。手短に言えば、膜を軽くブロット乾燥させてから、試薬Aと試薬Bの40:1混合物と共に暗所で5分間にわたってインキュベートした。膜をブロット乾燥させ、アセテート・シート間に挟み、10秒〜30分間にわたってX線フィルムに当てた。
【0172】
図39は、一時的なトランスフェクションに続いてRKO及びRKO-E6細胞中に発生するアポトーシスのパーセンテージを示すグラフである。RKO及びRKO-E6細胞には、pHM6-LacZ又はpHM6-eIF5A1を一時的にトランスフェクトした。24時間後、細胞を0.25μg/mlのアクチノマイシンD又は等容積のメタノール(対照)で処理した。20時間後、細胞をHoeschtで染色し、UVフィルタを使用する蛍光顕微鏡で観察した。凝縮クロマチンのため鮮明に染色されている細胞はアポトーシス性であると評定した。実験の結果、アクチノマイシンDで処理されてpHM6-eIF5A1をトランスフェクトされたRKO細胞は、アクチノマイシンDで処理されない、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞と比較して240%のアポトーシス増大を示した。アクチノマイシンDで処理されてpHM6-eIF5A1をトランスフェクトされたRKO-E6細胞は、アクチノマイシンDで処理されない、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞と比較して105%のアポトーシス増大を示した。
【0173】
図40は、一時的なトランスフェクションに続いてRKO細胞中に発生するアポトーシスのパーセンテージを示すグラフである。RKO細胞には、pHM6-LacZ、pHM6-eIF5A1、pHM6-eIF5A2又はpHM6切断型eIF5A1を一時的にトランスフェクトした。pHM6-eIF5A1をトランスフェクトされた細胞は、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞と比較して25%のアポトーシス増大を示した。この増大は、pHM6-eIF5A2又はpHM6切断型eIF5A1に関しては明らかでなかった。
【0174】
図41は、一時的なトランスフェクションに続いてRKO細胞中に発生するアポトーシスのパーセンテージを示すグラフである。RKO細胞はトランスフェクトしないままにするか、或いはRKO細胞に、pHM6-LacZ又はpHM6-eIF5A1を一時的にトランスフェクトした。トランスフェクション効率の補正後、pHM6-eIF5A1をトランスフェクトされた細胞の60%がアポトーシス性であった。
【0175】
図42は、一時的なトランスフェクションに続いてフルオレセイン結合デオキシヌクレオチドで標識付けし、488nmアルゴン・イオン・レーザー光源を備えたフロー・サイトメーターで分析した。ゲートE下に発生する蛍光は非アポトーシス細胞からのものであり、ゲートF下に発生する蛍光はアポトーシス進行中の細胞からのものである。RKO細胞アポトーシスのフロー・サイトメトリー分析の結果を示す。RKO細胞はトランスフェクトしないままにするか、或いはRKO細胞に、pHM6-LacZ、pHM6-eIF5A1、pHM6-eIF5A2又はpHM6切断型eIF5A1を一時的にトランスフェクトした。48時間後、細胞を収穫し、固定した。アポトーシスを反映する断片化DNAを表は、各ゲートのピーク下面積を基準として計算された、アポトーシスを被った細胞のパーセンテージを示す。トランスフェクトされていない細胞中のバックグラウンド・アポトーシス及びトランスフェクション効率の補正後、pHM6-eIF5A1をトランスフェクトされた細胞の80%がアポトーシスを示した。pHM6-LacZ、pHM6-eIF5A2又はpHM6切断型eIF5A1をトランスフェクトされた細胞は、アポトーシスのバックグラウンド・レベルしか示さなかった。
【0176】
図43は、0, 3, 7, 24及び48時間にわたって0.25μg/mlのアクチノマイシンDで処理されたRKO細胞から抽出されたタンパク質のウェスタン・ブロットを示す。タンパク質総量から5μg(抗eIF5A1)又は10μg(抗p53)ずつ12%SDS-ポリアクリルアミド・ゲル上に分割し、分割されたタンパク質をポリビニリデン・ジフルオライド膜へ移した。上側の図は、抗p53を一次抗体として使用したウェスタン・ブロットを示す。中央の図は、抗eIF5A1を一次抗体として使用したウェスタン・ブロットを示す。下側の図は、等しいローディングを示すための化学発光検出に続いて、クーマシー・ブルーで染色される抗eIF5A1ブロットに使用される膜を示す。p53及びeIF5A1は、アクチノマイシンDで処理することにより両方ともアップレギュレートされる。
【0177】
実施例6
図47は、ヒト心臓の拍動と、次いで誘発される心臓発作をシミュレートするため心臓組織上で実施される試験を概略的に示している。図49は研究室試験台の構成を示す。弁置換手術中に除去されたヒト心臓組織の薄片を電極に取付けた。心拍の強さを容易に測定できるようにするため、心臓組織に小さい錘を取付けた。電極が組織に電気的刺激を加えることによって、拍動を開始させた。虚血が誘発される前に、心臓組織中におけるアポトーシス特異的eIF-5A(eIF-5a)及び増殖性eIF-5A(eIF5b)双方に関連する遺伝子発現レベルを測定した。図46参照。虚血誘発前の心臓組織においては、eIF-5a及び5eIFbの発生レベルはいずれも低く、双方のレベルは互いに平衡状態であった。この段階では、心臓へのバッファ中に供給される酸素及び二酸化炭素はそれぞれ92.5%及び7.5%であった。次いで、酸素レベルを低下させ、窒素レベルを上昇させることによって、虚血を、最終的には「心臓発作」を誘発させた。心臓組織は拍動を停止した。次いで、再び酸素レベルを正常に戻し、心臓組織に電気的刺激を加えて脈動させることにより、再び心拍を開始させた。「心臓発作」後、アポトーシス特異的eIF-5a及び増殖性eIF-5A(eIF5b)の発現レベルを再度測定した。この時点で、アポトーシス特異的eIF-5Aの発現レベルが著しく増大したのに対して、増殖性eIF-5A(eIF5b)の発現レベルの増大が著しく低下した。図46を参照されたい。
【0178】
「心臓発作」後、取付けられている錘の圧縮/移動が小さいことで示されるように、心臓の拍動は微弱であり、アポトーシス特異的eIF-5Aの存在が原因となって心臓組織が急速に死滅しつつあることを示唆した。
【0179】
EKGの結果を図48に示す。図の左側は正常な心拍を示す(虚血前の心臓組織)。「心臓発作」(直線)及び心拍再開後、EKGから明らかなように、筋肉細胞死滅のため、活性が低下する。EKGは心拍強さの相対的な損失をも示す。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】図1は、ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aの3'末端のヌクレオチド配列、及び誘導されたアミノ酸配列を示す図である。
【図2】図2は、ラット・アポトーシス特異的eIF-5A cDNAの5'末端のヌクレオチド配列、及び誘導されたアミノ酸配列を示す図である。
【図3】図3は、ラット黄体アポトーシス特異的eIF-5A完全長cDNAのヌクレオチド配列を示す図である。
【図4】図4は、ラット・アポトーシス特異的DHS cDNAの3'末端のヌクレオチド配列、及び誘導されたアミノ酸配列を示す図である。
【図5】図5は、ラット黄体アポトーシス特異的eIF-5A cDNAの完全長ヌクレオチド配列と、ヒトeIF-5Aのヌクレオチド配列(寄託番号BC000751又はNM_001970、SEQ ID NO:3)とのアラインメントを示す図である。
【図6】図6は、ラット黄体アポトーシス特異的eIF-5A cDNAの完全長ヌクレオチド配列と、ヒトeIF-5Aのヌクレオチド配列(寄託番号NM-020390、SEQ ID NO:4)とのアラインメントを示す図である。
【図7】図7は、ラット黄体アポトーシス特異的eIF-5A cDNAの完全長ヌクレオチド配列と、マウスeIF-5Aのヌクレオチド配列(寄託番号BC003889)とのアラインメントを示す図である。マウス・ヌクレオチド配列(寄託番号BC003889)はSEQ ID NO:5である。
【図8】図8は、ラット黄体アポトーシス特異的eIF-5Aの誘導された完全長アミノ酸配列と、ヒトeIF-5Aの誘導されたアミノ酸配列(寄託番号BC000751又はNM_001970)とのアラインメントを示す図である。
【図9】図9は、ラット黄体アポトーシス特異的eIF-5Aの誘導された完全長アミノ酸配列と、ヒトeIF-5Aの誘導されたアミノ酸配列(寄託番号NM_020390)とのアラインメントを示す図である。
【図10】図10は、ラット黄体アポトーシス特異的eIF-5Aの誘導された完全長アミノ酸配列と、マウスeIF-5Aの誘導されたアミノ酸配列(寄託番号BC003889)とのアラインメントを示す図である。
【図11】図11は、ラット黄体アポトーシス特異的DHS cDNAの部分長ヌクレオチド配列と、ヒトDHSのヌクレオチド配列(寄託番号BC000333又はNM_001970、SEQ ID NO:8)とのアラインメントを示す図である。
【図12】図12は、ラット黄体アポトーシス特異的eIF-5A cDNAを示す制限地図である。
【図13】図13は、部分長ラット・アポトーシス特異的DHS cDNAを示す制限地図である。
【図14】図14は、ラット黄体アポトーシス特異的eIF-5A cDNAの32P-dCTP標識付き3'末端でプローブされた総RNAを示すノーザン・ブロット(図14A)、及び臭化エチジウム染色ゲル(図14B)である。
【図15】図15は、ラット黄体アポトーシス特異的DHS cDNAの32P-dCTP標識付き3'末端でプローブされた総RNAを示すノーザン・ブロット(図15A)、及び臭化エチジウム染色ゲル(図15B)である。
【図16】図16は、PGF-2αの注射後に過剰排卵ラット黄体におけるアポトーシス度が試験されたDNAラダー形成試験を示す図である。
【図17】図17は、PGF-2αによるラットの処理後にDNAラダー形成を示す、アポトーシスに至りつつあるラット黄体から分離されたゲノムDNAのアガロース・ゲルを示す図である。
【図18】図18は、プロスタグランジンF-2α(PGF-2α)に対する暴露前にスペルミジンで処理されたラットにおいて、過剰排卵ラット黄体の分散細胞中のアポトーシス度が試験されたDNAラダー形成試験を示す図である。
【図19】図19は、スペルミジン及び/又はPGF-2αで処理されたラットにおいて、過剰排卵ラット黄体中のアポトーシス度が試験されたDNAラダー形成試験を示す図である。
【図20】図20は、32P-dCTP標識付き部分長ラット黄体アポトーシス特異的eIF-5A cDNAでプローブされたラット・ゲノムDNAを示すサザン・ブロットである。
【図21】図21は、哺乳動物エピトープ標識発現ベクターであるpHM6(Roche Molecular Biochemicals)を示す図である。
【図22】図22は、ラット黄体アポトーシス特異的DHS cDNAの32P-dCTP標識3'-未翻訳領域でプローブされた血清の回収によってアポトーシスを誘発した後で、COS-7細胞から分離された総RNAを示すノーザン・ブロット(図22A)、及び臭化エチジウム染色ゲル(図22B)である。
【図23】図23は、COS-7細胞の一時的トランスフェクションの手順を示すフローチャートである。
【図24】図24は、pHM6のトランスフェクションに続いて行われる、COS-7細胞中の外来タンパク質の一時的発現を示すウェスタン・ブロットである。
【図25】図25は、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、カスパーゼ活性の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す図である。
【図26】図26は、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、DNA断片化の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す図である。
【図27】図27は、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、核断片化の増大により反映されるアポトーシスの検出を示す図である。
【図28】図28は、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、核断片化の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す図である。
【図29】図29は、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、ホスファチジルセリン暴露により反映されるアポトーシスの検出を示す図である。
【図30】図30は、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、ホスファチジルセリン暴露の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す図である。
【図31】図31は、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、核断片化の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す図である。
【図32】図32は、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時の、アポトーシスの増強を示す図である。
【図33】図33は、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時の、Bcl-2のダウン・レギュレーションを示す図である。図33Aはクーマシー・ブルー染色タンパク質ブロットであり、図33Bは対応するウェスタン・ブロットである。
【図34】図34は、Bcl-2をプローブとして使用して、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをアンチセンス配向で含有するpHM6が一時的にトランスフェクトされたCOS-7細胞を示すクーマシー・ブルー染色タンパク質ブロット、及び対応ウェスタン・ブロットである。
【図35】図35は、c-Mycをプローブとして使用して、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6が一時的にトランスフェクトされたCOS-7細胞を示すクーマシー・ブルー染色タンパク質ブロット、及び対応ウェスタン・ブロットである。
【図36】図36は、p53をプローブとして使用して、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6が一時的にトランスフェクトされたCOS-7細胞を示すクーマシー・ブルー染色タンパク質ブロット、及び対応ウェスタン・ブロットである。
【図37】図37Aは、COS-7細胞中のpHM6-完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5A発現に対するp53アップレギュレーションの依存を示す図である。
【図38】図37Bは、抗-[HA]-ペルオキシダーゼ・プローブをプローブとして使用した、COS-7細胞中のpHM6-全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aの発現を示すクーマシー・ブルー染色タンパク質ブロット及び対応ウェスタン・ブロットである。
【図39】図37Cは、p53プローブを使用したときの、COS-7細胞中のpHM6-全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aの発現を示すクーマシー・ブルー染色タンパク質ブロット及び対応ウェスタン・ブロットである。
【図40】図38は、RKO細胞から分離されたヒトEIF5A2と、ヒトelF5A2(Genbank 寄託番号XM_113401)の配列とのアラインメントを示す図である。
【図41】図39は、一時的なトランスフェクションに続いてRKO及びRKO-E6細胞中に発生するアポトーシスのパーセンテージを示すグラフである。RKO及びRKO-E6細胞には、pHM6-LacZ又はpHM6-eIF5A1を一時的にトランスフェクトした。アクチノマイシンDで処理され、pHM6-eIF5A1をトランスフェクトされたRKO細胞は、アクチノマイシンDで処理されない、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞と比較して240%のアポトーシス増大を示した。アクチノマイシンDで処理されてpHM6-eIF5A1をトランスフェクトされたRKO-E6細胞は、アクチノマイシンDで処理されない、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞と比較して105%のアポトーシス増大を示した。
【図42】図40は、一時的なトランスフェクションに続いてRKO細胞中に発生するアポトーシスのパーセンテージを示すグラフである。RKO細胞には、pHM6-LacZ、pHM6-eIF5A1、pHM6-eIF5A2又はpHM6切断型eIF5A1を一時的にトランスフェクトした。pHM6-eIF5A1をトランスフェクトされた細胞は、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞と比較して25%のアポトーシス増大を示した。この増大は、pHM6-eIF5A2又はpHM6切断型eIF5A1に関しては明らかでなかった。
【図43】図41は、一時的なトランスフェクションに続いてRKO細胞中に発生するアポトーシスのパーセンテージを示すグラフである。RKO細胞はトランスフェクトしないままにするか、或いはRKO細胞に、pHM6-LacZ又はpHM6-eIF5A1を一時的にトランスフェクトした。トランスフェクション効率の補正後、pHM6-eIF5A1をトランスフェクトされた細胞の60%がアポトーシス性であった。
【図44】図42は、一時的なトランスフェクションに続いてRKO細胞アポトーシスのフロー・サイトメトリー分析の結果を示す。RKO細胞はトランスフェクトしないままにするか、或いはRKO細胞に、pHM6-LacZ、pHM6-eIF5A1、pHM6-eIF5A2又はpHM6切断型eIF5A1を一時的にトランスフェクトした。表は、各ゲートのピーク下面積を基準として計算された、アポトーシスを蒙った細胞のパーセンテージを示す。トランスフェクトされていない細胞中のバックグラウンド・アポトーシス及びトランスフェクション効率の補正後、pHM6-eIF5A1をトランスフェクトされた細胞の80%がアポトーシスを示した。pHM6-LacZ、pHM6-eIF5A2又はpHM6切断型eIF5A1をトランスフェクトされた細胞は、アポトーシスのバックグラウンド・レベルしか示さなかった。
【図45】図43は、0, 3, 7, 24及び48時間にわたって0.25μg/mlのアクチノマイシンDで処理されたRKO細胞から抽出されたタンパク質のウェスタン・ブロットを示す。上側の図は、抗p53を一次抗体として使用したウェスタン・ブロットを示す。中央の図は、抗eIF5A1を一次抗体として使用したウェスタン・ブロットを示す。下側の図は、等しいローディングを示すための化学発光検出に続いて、クーマシー・ブルーで染色される抗eIF5A1ブロットに使用される膜を示す。p53及びeIF5A1は、アクチノマイシンDで処理することにより両方ともアップレギュレートされる。
【図46】図44は、アポトーシス特異的eIF-5A(eIF5a)及び増殖性eIF-5A(eIF5b)の両方が心臓組織内に発現されることを示す棒グラフである。心臓組織は、冠動脈バイパス・グラフト(CABG)を受けた患者から採取した。eIF5aの遺伝子発現レベル(明るいグレーの棒)をeIF5b(暗いグレーの棒)と比較する。X軸は患者識別番号である。Y軸は18sのpg/ng{リボソームRNA 18S(ナノグラム)に対するメッセージRNA(ピコグラム)}である。
【図47】図45は、アポトーシス特異的eIF-5A(eIF5a)及び増殖性eIF-5A(eIF5b)の両方が心臓組織内に発現されることを示す棒グラフである。心臓組織は、弁置換を受けた患者から採取した。eIF5aの遺伝子発現レベル(明るいグレーの棒)をeIF5b(暗いグレーの棒)と比較する。X軸は患者識別番号である。Y軸は18sのpg/ng{リボソームRNA 18S(ナノグラム)に対するメッセージRNA(ピコグラム)}である。
【図48】図46は、虚血前心臓組織及び虚血後心臓組織における、アポトーシス特異的eIF-5A(eIF5a)対増殖性eIF-5A(eIF5b)のリアルタイムPCRによって測定された遺伝子発現レベルを示す棒グラフである。Y軸は18sのpg/ng{リボソームRNA 18S(ナノグラム)に対するメッセージRNA(ピコグラム)}である。
【図49】図47は、心臓組織上で実施される試験を概略的に示している。心臓組織を、正常酸素レベルに暴露し、アポトーシス特異的eIF-5A(eIF5a)及び増殖性eIF-5A(eIF5b)を測定した。後に、心臓組織に供給される酸素量を低くし、こうして心臓組織内に低酸素症及び虚血を誘発し、そして最終的には心臓発作を誘発した。アポトーシス特異的eIF-5A(eIF5a)及び増殖性eIF-5A(eIF5b)の発現レベルを測定して、心臓組織が虚血によって損傷される前の心臓組織の発現レベルと比較した。
【図50】図48は、虚血誘発前及び誘発後の心臓組織のEKGを示す図である。
【図51】図49は、図47に示された試験の設備を有する研究所試験台を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年7月23日付けで出願された米国特許出願第10/200,148号の部分継続出願であり、該米国特許出願第10/200,148号は、2002年5月7日付けで出願された米国特許出願第10/141,647号の部分継続出願であり、該米国特許出願第10/141,647号は、2001年7月23日付けで出願された米国特許出願第9/909,796号の部分継続出願である。
【0002】
本発明は、アポトーシス特異的な真核開始因子-5A(eIF-5A)及びデオキシハイプシン・シンターゼ(deoxyhypusine synthase)(DHS)核酸及びポリペプチド、並びにアポトーシス特異的eIF-5A及びDHSを使用して細胞内のアポトーシスを調節する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アポトーシスは、明確な形態的特徴、例えば細胞収縮、クロマチン凝縮、核断片化、及び膜泡状突起形成を特徴とする、遺伝的にプログラミングされた細胞事象である。Kerr他(1972)Br. J. Cancer, 26, 239-257;Wyllie他(1980) Int. Rev. Cytol., 68, 251-306。アポトーシスは、正常な組織発達及びホメオスタシスにおいて重要な役割を果たし、またアポトーシス・プログラムの欠陥は、神経変性障害及び自己免疫障害から新生組織形成に至る広範囲のヒトの障害に関与すると考えられる。Thompson(1995) Science, 267, 1456-1462;Mullauer他(2001) Mutat. Res, 448, 211-231。アポトーシス細胞の形態的特徴は明確に定義されてはいるものの、このプロセスを調節する分子経路は、解明され始めたばかりである。
【0004】
アポトーシスにおいて重要な役割を果たすと考えられる1つのタンパク質群は、ほとんどのアポトーシス経路に必要とされると思われる、カスパーゼと呼ばれるシステイン・プロテアーゼから成る属である。Creagh & Martin(2001) Biochem. Soc. Trans, 29, 696-701;Dales他(2001) Leuk. Lymphoma, 41, 247-253。カスパーゼは、種々の細胞タンパク質を開裂することによりアポトーシス刺激に応答して、アポトーシスをトリガーする。その結果、細胞収縮、膜泡状突起形成及びDNA断片化を含む古典的なアポトーシス発現が生じる。Chang & Yang (200) Microbiol. Mol. Biol. Rev., 64, 821-846。
【0005】
アポトーシス促進タンパク質、例えばBax又はBakも、カスパーゼ活性化分子、例えばミトコンドリア・サイトクロームcを放出し、これによりアポトーシスを介して細胞死を促進することにより、アポトーシス経路において重要な役割を演じる。Martinou & Green (2001) Nat. Rev. Mol. Cell. Biol., 2, 63-67;Zou他(1997) Cell, 90, 405-413。抗アポトーシス・タンパク質、例えばBcl-2は、アポトーシス促進タンパク質Bax及びBakの活性に拮抗することにより、細胞の生存を促進する。Tsujmoto (1988) Genes Cells, 3, 697-707;Kroemer (1997) Nature Med., 3, 614-620。Bax:Bcl-2の比は、細胞の運命の1つの決定のしかたであると考えられ、過剰のBaxはアポトーシスを促進し、そして過剰のBcl-2は細胞の生存を促進する。Salomons他(1997) Int. J. Cancer, 71, 959-965;Wallace-Brodeur & Lowe (1999) Cell Mol. Life Sci., 55, 64-75。
【0006】
アポトーシスに関与する別の重要なタンパク質は、腫瘍サプレッサー遺伝子p53によってコードされるタンパク質である。このタンパク質は転写因子であり、この転写因子はおそらくはBaxのアップレギュレーションによって、細胞成長を調節し、そして損傷されて遺伝子的に不安定な細胞にアポトーシスを誘発する。Bold他(1997) Surgical Oncology, 6, 133-142;Ronen他、1996;Schuler及びGreen(2001) Biochem. Soc. Trans., 29, 684-688;Ryan他(2001) Curr. Opin. Cell Biol., 13, 332-337;Zoernig他(2001) Biochem. Biophys. Acta, 1555, F1-F37。
【0007】
アポトーシスを蒙った細胞を特徴付ける明確な形態的特徴は、アポトーシスの開始及び進行を評価する数多くの方法を生み出した。これらの検出に関して活用できるアポトーシス細胞の1つのこのような特徴は、フリッパーゼの活性化である。フリッパーゼの活性化の結果、原形質膜の内側リーフレットに通常は局在化されるリン脂質であるホスファチジルセリンが外在化される。Fadok他(1992) J. Immunol., 149, 4029-4035。外在化ホスファチジルセリンを担持するアポトーシス細胞は、蛍光色素に接合されたホスファチジルセリン結合タンパク質、アネキシン(Annexin)Vで染色することにより、検出することができる。アポトーシス・プロセス中に発生する特徴的なDNA断片化は、DNA断片の露出3'-OH末端をフルオレセイン標識デオキシヌクレオチドで標識付けすることにより検出することができる。核酸と結合する蛍光色素、例えばヘキスト(Hoescht) 33258を使用することにより、アポトーシス細胞内のクロマチン凝縮及び核断片化を検出することができる。細胞個体群中のアポトーシス度を、細胞抽出物中に存在するカスパーゼタンパク質分解活性の程度から推論することもできる。
【0008】
遺伝学的に定義されるプロセスとして、他の発生プログラムと同様に、アポトーシスを突然変異によって妨害することができる。アポトーシス経路の変化は、癌を含む多数の疾患プロセスにおいて重要な役割を演じると考えられる。Wyllie他(1980) Int. Rev. Cytol., 68, 251-306;Thompson(1995) Science, 267, 1456-1462;Sen & D'Incalci(1992) FEBS Letters, 307, 122-127;McDonnell他(1995) Seminars in Cancer and Biology, 6, 53-60。癌の発生及び進行に関する調査は、細胞増殖に焦点が当てられるのが伝統的である。しかし、アポトーシスが腫瘍形成において演じる重要な役割が最近明らかになってきている。事実、アポトーシスに関して現在知られているもののほとんどは、腫瘍モデルを用いて得られたものである。それというのもアポトーシスのコントロールは、腫瘍細胞内で何らかの形式で常に変化するからである。Bold他(1997) Surgical Oncology, 6, 133-142。
【0009】
腫瘍発生中に種々のシグナルによって、アポトーシスをトリガーすることができる。細胞外シグナルは成長因子又は生存因子の枯渇、低酸素状態及び電離放射線を含む。アポトーシスをトリガすることができる内部シグナルは、DNA損傷、短縮した短鎖重合体、及び不適切な増殖シグナルを生成する発癌突然変異を含む。Lowe及びLin(2000) Carcinogenesis, 21, 485-495。悪性腫瘍を治療するのに使用される電離放射線、及びほとんど全ての細胞毒性化学治療剤は、内在性アポトーシス・メカニズムをトリガーして細胞死を誘発することにより作用すると考えられる。Rowan及びFisher (1997) Leukemia, 11, 457-465;Kerr他(1994) Cancer, 73, 2013-2026;Martin及びSchwartz(1997) Oncology Research 9,1-5。
【0010】
癌の進行の早期には腫瘍細胞はアポトーシスを誘発する作用物質(例えば電離放射線又は化学治療薬)に対して感受性を有することが、証拠によって示唆される。しかし、腫瘍が進行するにつれて、細胞はアポトーシス刺激に対して耐性になる。Naik他(1996) Genes and Deveopment, 10, 2105-2116。このことにより、なぜ早期癌が、より進行した病変よりも治療に対して良好に応答するかを説明することができる。化学療法及び放射線治療に対して耐性になる後期癌の能力は、アポトーシス刺激に応答する腫瘍細胞の能力を制限する、アポトーシス経路における変化に関連するように思われる。Reed他(1996) Journal of Cellular Biology, 60, 23-32;Meyn他(1996) Cancer Metastasis Reviews, 15, 119-131;Hannun(1997) Blood, 89, 1845-1853;Reed(1995) Toxicology Letters, 82-83, 155-158;Hickman (1996) European Journal of Cancer, 32A, 921-926。化学療法に対する耐性は、慢性リンパ球性白血病における抗アポトーシス遺伝子bcl-2の過剰発現、及び大腸癌におけるアポトーシス促進性bax遺伝子の欠失又は突然変異と相互関連させられている。
【0011】
散在性転移の確立に成功する腫瘍細胞の能力もまた、アポトーシス経路の変化を伴うと思われる。Bold他(1997)Surgical Oncology, 6, 133-142。例えば、腫瘍サプレッサー遺伝子p53における突然変異は、腫瘍の70%に発生すると考えられる。Evan他(1995) Curr. Opin. Cell Biol., 7, 825-834。P53を不活性化する突然変異は、DNA損傷に応答してアポトーシスを誘発する細胞の能力を制限し、細胞を更なる突然変異に対して脆弱なままにする。Ko & Prives(1996) Genes and Development, 10, 1054-1072。
【0012】
従って、アポトーシスは、腫瘍性形質変化及び転移の発生及び進行に密接に関与し、関与するアポトーシス経路をよりよく理解することは、遺伝子治療アプローチを介してアポトーシス経路を調節することによる癌治療のための新しい潜在的な標的をもたらすことができる。Bold他(1997) Surgical Oncology, 6, 133-142。
【0013】
デオキシハイプシン・シンターゼ(DHS)及びハイプシン含有真核翻訳開始因子-5A(eIF-5A)は、細胞の成長及び分化を含む多くの細胞プロセスにおいて重要な役割を演じることが知られている。独自のアミノ酸であるハイプシンは、真性細菌以外の試験済の全ての真核生物及び古細菌中に見いだされ、またeIF-5Aは唯一既知のハイプシン含有タンパク質である。Park(1988) J. Biol. Chem., 263, 7447-7449;Schuemann 及びKlink (1989) System. Appl. Microbiol, 11, 103-107;Bartig他(1990) System. Appl. Microbiol., 13, 112-116;Gordon他(1987a)J. Biol. Chem., 262, 16585-16589。活性eIF-5Aは2つの翻訳後ステップにおいて形成される。すなわち、第1ステップは、デオキシハイプシン・シンターゼによって触媒された前駆体eIF-5Aの特異的リジンのα-アミノ基に、スペルミジンの4-アミノブチル部分を移すことにより、デオキシハイプシン残基を形成することであり;第2ステップは、デオキシハイプシン・ヒドロキシラーゼによってこの4-アミノブチル部分をヒドロキシル化することにより、ハイプシンを形成することを伴う。
【0014】
eIF-5Aのアミノ酸配列は種の間で良好に保存され、そしてeIF-5A中では、ハイプシン残基を取り囲むアミノ酸配列が厳重に保存される。このことは、このような修飾が生き残りにとって重要であることを示唆する。Park他(1993) Biofactors, 4, 95-104。この想定はさらに、今日まで酵母中に見いだされたeIF-5Aの両イソ型の不活性化、又はこれらの活性化において第1ステップを触媒するDHS遺伝子の不活性が、細胞分裂をブロックするという観察により支持される。Schnier他(1991) Mol. Cell. Biol., 11, 3105-3114;Sasaki他(1996) FEBS Lett., 384, 151-154;Park他(1998) J. Biol. Chem., 273, 1677-1683。しかし、酵母中のeIF-5Aタンパク質が枯渇しても、タンパク質合成総量はわずかに減少するだけである。このことは、eIF-5Aがタンパク質合成全体にではなく、mRNAの特異的部分集合の翻訳に必要となることを示唆している。Kang他(1993)、「Effect of initiation factor eIF-5A depletion on cell proliferation and protein synthesis(細胞増殖及びタンパク質合成に対する開始因子eIF-5A枯渇の効果)」(Tuite,M.編、Protein Synthesis and Targeting in Yeast, NATO Series H.)。eIF-5Aと結合するリガンドが高保存モチーフを共有するという最近の発見も、eIF-5Aの重要性を支持する。Xu及びChen(2001) J. Biol. Chem., 276, 2555-2561。加えて、修飾eIF-5Aのハイプシン残基は、RNAとの配列特異的結合にとって不可欠であることが見いだされ、そしてこの結合はリボヌクレアーゼからの保護を可能にしなかった。
【0015】
eIF-5Aに対応する最初のcDNAが、1989年にSmit-McBride他によってヒトからクローニングされ、それ以来、eIF-5Aに対応するcDNA又は遺伝子が、酵母、ラット、ニワトリ胚、アルファルファ及びトマトを含む種々の真核生物からクローニングされている。Smit-McBride他(1989a) J. Biol. Chem., 264, 1578-1583;Schnier他(1991)(酵母);Sano, A.(1995)(Imahori, M.他編)、Polyamines, Basic and clinical Aspects, VNU Science Press, The Netherlands, 81-88(ラット);Rinaudo及びPark(1992) FASEB J., 6, A453(ニワトリ胚);Pay他(1991) Plant Mol. Biol., 17, 927-929(アルファルファ);Wang他(2001) J. Biol. Chem., 276, 17541-17549(トマト)。
【0016】
加えて、eIF-5Aの細胞内枯渇の結果、核内に特異的mRNAが著しく蓄積する。このことは、eIF-5Aが、核から細胞質へ特異的クラスのmRNAを往復させることに関与していることを示す。Liu及びTarkakoff(1997), Molecular Biology of the Cell別冊, 8, 426a. Abstract No. 2476, 第37回American Society for Cell Biology Annual Meeting。核孔に関連する核内フィラメントにeIF-5Aが蓄積され、そしてeIF-5Aが一般の核輸出受容体と相互作用することは、eIF-5Aがポリソームの1成分ではなく、核細胞質シャトル・タンパク質であることをさらに示唆する。Rosorius他(1999) J. Cell Science, 112, 2369-2380。
【0017】
種々のヒト組織及び哺乳動物細胞系において、eIF-5A mRNAの発現が探求されている。例えば、血清剥奪に続いて血清を加えた後、ヒト線維芽細胞中には、eIF-5A発現の変化が観察された。Pang及びChen(1994) J. Cell Physiol., 160, 531-538。老化しつつある線維芽細胞中には、デオキシハイプシン・シンターゼ活性の年齢に関連した減少及び豊富な前駆体eIF-5Aも観察されてはいるが、このことがイソ型の示差的な変化の平均を反映するという可能性は見極められなかった。Chen 及びChen(1997b) J. Cell Physiol., 170, 248-254。
【0018】
研究が示したところによれば、eIF-5Aは、ウィルス・タンパク質、例えばヒト免疫不全ウィルス1型Revタンパク質、及びヒトT細胞白血病ウィルス1型Rexタンパク質の細胞標的であり得る。Rhul他(1993) J. Cell Biol., 123, 1309-1320;Katahira他(1995) J. Virol., 69, 3125-3133。予備研究が示すところによれば、eIF-5Aは、他のRNA結合タンパク質、例えばRevと相互作用することによって、RNAを標的とすることができ、このことは、これらのウィルス・タンパク質が、ウィルスRNAプロセッシングのためにeIF-5Aを補充させることを示唆している。Liu他(1997) Biol. Signals, 6, 166-174。
【0019】
デオキシハイプシン・シンターゼ及びeIF-5Aは、細胞の成長及び老化を含む主要な細胞プロセスにおいて重要な役割を演じることが知られている。例えば、植物中のデオキシハイプシン・シンターゼ発現がアンチセンス低減する結果、葉及び果実の老化が遅れる。このことは、植物中にeIF-5Aの老化誘発イソ型があることを示している。国際公開第01/02592号パンフレット;PCT/US01/44505;米国特許出願第09/909,796号明細書を参照されたい。酵母中のデオキシハイプシン・シンターゼ又はeIF-5Aが不活性化される結果、細胞分裂が阻害される。Schnier他(1991) Mol. Cell. Biol., 11, 3105-3114;Sasaki他(1996) FEBS Lett., 384, 151-154;Park他(1998) J. Biol. Chem., 273, 1677-1683。
【0020】
スペルミジン類似体を使用することにより、in vitroでデオキシハイプシン・シンターゼを阻害すること、並びにタンパク質合成及び細胞成長の阻害に伴う、in vivoでのハイプシンの形成を阻害することに成功している。Jakus他(1993) J. Biol. Chem., 268, 13151-13159;Park他(1994) J. Biol. Chem., 269, 27827-27832。ポリアミン自体、具体的にはプトレッシン及びスペルミジンも、細胞の増殖及び分化において重要な役割を演じるように考えられる。Tabor及びTabor(1984) Annu. Rev. Biochem., 53, 749-790; Pegg(1988) Cancer Res., 48, 759-774。例えば、ポリアミン生合成経路がブロックされた酵母突然変異体は、外生的ポリアミンが提供されない限り成長することはできない。Cohn他(1980)J. Bacteriol., 134, 208-213。
【0021】
ポリアミンはまた、アポトーシス誘発から細胞を保護することが示されている。例えば、スペルミジン及びスペルミンに暴露することにより、胸腺細胞のアポトーシスがブロックされている。このメカニズムは、エンドヌクレアーゼ活性化の防止であるように思われる。Desiderio他(1995) Cell Growth Differ., 6, 505-513; Brune他(1991) Exp. Cell Res., 195,323-329。加えて、外生的ポリアミンは、B細胞受容体媒介性アポトーシス、並びに単細胞寄生生物におけるアポトーシスを抑制することが示されている。Nitta他(2001) Exptl. Cell Res., 265, 174-183;Piacenza他(2001) Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 98, 7301-7306。低濃度のスペルミン及びスペルミジンは、新生ラットの正常な発育中に失われる神経細胞の数を減らすこと、並びに脳虚血中のニューロン損傷から脳を保護することも観察されている。Gilad他(1985) Brain Res., 348, 363-366;Gilad & Gilad(1991) Exp. Neurol., 111, 349-355。ポリアミンはまた、植物組織の老化、プログラミングされた細胞死の形成を阻害する。スペルミジン及びプトレッシンは、カーネーション花及び切断ラディッシュ葉の収穫後老化を遅らせることが示されている。Wang & Baker (1980) HortScience, 15, 805-806(カーネーション花);Altman(1982) Physiol. Plant., 54, 189-193(切断ラディッシュ葉)。
【0022】
しかしその他の研究では、外生的ポリアミンに応答して、アポトーシス誘発が観察されている。例えば、ヒト乳癌細胞系は、アポトーシスを誘発することによりポリアミン類似体に応答し、そして過剰のプトレッシンは、DH23A細胞内でアポトーシスを誘発することが示されている。McCloskey他(1995) Cancer Res., 55, 3233-3236;Tome他(1997) Biochem. J., 328, 847-854。
【0023】
ポリアミンによるこれらの試験の結果は、これらをまとめてみると、eIF-5Aの特異的イソ型の存在が、アポトーシスの誘発において役割を演じることを示唆している。具体的には、このデータは、DHAによって活性化されるeIF-5Aのアポトーシス特異的イソ形が存在するという見方と一致する。このDHS反応がスペルミジンを必要とするという事実は、ポリアミンがカスパーゼ、つまりアポトーシス関連タンパク質分解の主要な実行因子の活性化を導き出すという発見と一致する。Stefanelli他(2000) Biochem. J., 347, 875-880;Stefanelli他(1999) FEBS Lett., 451, 95-98。類似の静脈において、ポリアミン合成のインヒビターはアポトーシスを遅らせることができる。Das他(1997) Oncol. Res., 9, 565-572;Monti他(1998) Life Sci., 72, 799-806;Ray他(2000) Am. J. Physiol, 278, C480-C489;Packham及びCleveland(1994) Mol. Cell Biol.,14, 5741-5747。
【0024】
外生的ポリアミンがアポトーシスを阻害し且つ促進するという発見は、適用されたレベルに応じて、外生的ポリアミンが、eIF-5Aの活性化につながるDHS反応を阻害し、ひいてはアポトーシスを妨げることができ、或いは、毒性であるという理由でアポトーシスを誘発することができるという事実によって説明することができる。低濃度の外生的ポリアミンが植物系及び動物系におけるアポトーシスをブロックするという発見は、低濃度のポリアミン及びこれらの類似体がDHS反応の競合的インヒビターとして作用するという事実と一致する。事実、DHS反応の基質である外生的スペルミジンでさえ、基質阻害によって反応を妨げることになる。Jakus他(1993) J. Biol. Chem., 268, 13153-13159。
【0025】
しかし、全てのポリアミン及びこれらの類似体は、高い濃度において毒性であり、アポトーシスを誘発することができる。このことは、eIF-5Aの推定上のアポトーシス特異的イソ型の活性を阻害する能力があるにもかかわらず、下記2つの理由から発生する。第1に、活性化されたeIF-5Aの半減期が長いことである。Torrelio他(1987) Biochem. Biochem. Biophys. Res. Commun., 145, 1335-1341;Dou及びChen(1990) Biochem. Biphys. Acta., 1036, 128-137。従って、デオキシハイプシン・シンターゼ活性の阻害から生じる活性化アポトーシス特異的eIF-5Aの枯渇が、スペルミジンの毒性効果によるアポトーシスをブロックするのに間に合うように生じることはない。第2に、ポリアミンがデオキシハイプシン反応の競合的インヒビターであり、ひいては、毒性の濃度であっても、この反応を完全にブロックするとは考えられないことである。
【0026】
本発明は、アポトーシス誘発の直前にアップ・レギュレートされたeIF-5A cDNAのクローニングに関する。このアポトーシス特異的eIF-5Aは、アポトーシスを引き起こす疾患における介入に適した標的であると考えられる。それというのも、アポトーシス特異的eIF-5Aは、アポトーシス経路に関与する下流エフェクター及び転写因子の転写後調節レベルで作用すると考えられるからである。具体的には、アポトーシス特異的eIF-5Aは、アポトーシスの下流エフェクター及び転写因子をコードするmRNAを核から、続いてこれらのmRNAが翻訳される細胞質に転座するのを選択的に容易にすると考えられる。アポトーシスを開始するための最終決定は、内部及び外部のアポトーシス促進シグナル及び抗アポトーシス・シグナルの間の複雑な相互作用から生じると考えられる。Lowe及びLin(2000) Carcinogenesis, 21, 485-495。下流アポトーシス・エフェクター及び転写因子の翻訳を容易にする能力によって、アポトーシス関連eIF-5Aは、これらの信号間の関係をアポトーシスに有利なように変えると考えられる。
【0027】
既述のように、抗癌剤がアポトーシスを誘発すること、そして、アポトーシス経路の変化が、薬物誘発型細胞死を軽減できることが十分に確立されている。Schmitt及びLowe(1999) J. Pathol., 187, 127-137。例えば、多くの抗癌剤はp53をアップレギュレートし、そしてp53を失った腫瘍細胞はこれらの薬物に対して耐性になる。しかしほとんど全ての化学治療薬は、投与量が十分であるならば、p53とは無関係にアポトーシスを誘発することができる。このことは、薬物耐性腫瘍においても、アポトーシスに至る経路が完全にはブロックされないことを示す。Wallance-Brodeur及びLowe(1999) Cell Mol. Life Sci., 55,64-75。このことは、アポトーシス関連eIF-5Aの誘発が、突然変異型遺伝子を修正しなくても、p53依存型経路を迂回して、別の経路を促進することによりアポトーシスを誘発することができることを示唆する。
【0028】
アポトーシス関連eIF-5Aの誘発は、癌細胞を選択的に標的にする潜在能力を有する一方、正常な隣接細胞に対する効果をほとんど又は全く有さない。このことが生じる理由は、腫瘍細胞内に発現されるマイトジェン腫瘍遺伝子が、正常細胞内には存在しない特異的mRNA種の形でアポトーシス・シグナルを提供することにある。Lowe他(1993) Cell, 74, 954-967;Lowe及びLin(2000) Carcinogenesis, 21, 485-495。例えばp53-突然変異型腫瘍細胞における野生型p53の復元は、アポトーシスを直接的に誘発し、また、腫瘍細胞系及び異種移植片における薬物感受性を高めることができる(Spitz他、1996;Badie他、1998)。
【0029】
アポトーシス-eIF-5Aの選択性は、eIF-5Aが下流アポトーシス・エフェクター及び転写因子に対応するmRNAの翻訳を、核から細胞質内へのmRNAの転座を媒介することにより、選択的に容易にするという事実から生じる。こうして、アポトーシスeIF-5Aが所定の効果を有するためには、これらのエフェクター及び転写因子に対応するmRNAは転写されなければならない。これらのmRNAが隣接する正常細胞内にではなく癌細胞内に転写されるので、アポトーシス関連eIF-5Aは癌細胞内のアポトーシスを促進し、しかも正常細胞に対するその影響はもしあるとしても最小限に抑えられることが予期できる。こうして、アポトーシス関連eIF-5Aによって腫瘍細胞内のアポトーシス潜在能力を復元すると、腫瘍細胞を選択的に標的にすることにより、癌患者が蒙る毒性及び副作用を減らすことができる。アポトーシス性eIF-5Aの誘発はまた、抗癌剤に対する腫瘍細胞の応答を増強し、そしてこれにより、薬物耐性腫瘍に対するこれらの薬剤の有効性を高める可能性を有する。この結果、より低投与量の抗癌剤で効力が得られるようになり、患者に対する毒性が低減されることになる。
【発明の開示】
【0030】
本発明は、分離且つ/又は精製された、ラットのアポトーシス特異的eIF-5A及びDHS核酸及びポリペプチド及びアンチセンス・オリゴヌクレオチド、並びにアポトーシス特異的eIF-5A及びDHSの発現ベクターを提供する。本発明はまた、分離且つ/又は精製されたアポトーシス特異的eIF-5A(本明細書では、ヒトeIF-5A1又はeIF5aとも呼ばれる)を提供する。本発明はまた、分離且つ/又は精製されたヒトeIF-5A2(本明細書では、増殖性eIF-5A又はeIF5bとも呼ばれる)を提供する。本発明はまた、アポトーシス特異的eIF-5A及びDHSを使用してアポトーシスを調節する方法を提供する。
【0031】
本発明は、哺乳動物組織、特に哺乳動物の心臓組織内の虚血の発生を識別する方法を提供する。さらに、哺乳動物組織、好ましくは心臓組織内のアポトーシスを低減する方法が提供される。これらの方法は、アポトーシス−特異的eIF-5A及び増殖性eIF-5A双方の遺伝子発現レベルを測定して比較し、そしてアポトーシス−特異的eIF-5a発現レベルが増殖性eIF-5A発現レベルよりも高い場合には、虚血の発生と相互関連させることを伴う。哺乳動物組織内のアポトーシスを低減する方法の場合、アポトーシス−特異的eIF-5Aの発現を阻害する作用物質が提供される。
【0032】
本発明は一つには、ラット黄体から分離された、アポトーシスと関与する(アポトーシス特異的)eIF-5Aをコードする完全長cDNAの発見及び特徴付けに基づく。従って1実施態様において、本発明は、ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、分離された核酸を提供する。また、ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチドのアミノ酸配列を含む、精製されたポリペプチドも提供される。ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチドは、ラットに対して特異的な任意のポリペプチドであって、アポトーシスに至りつつある細胞中に異なる状態で発現され、また、スペルミジンの4-アミノブチル部分を、デオキシハイプシン・シンターゼによって触媒された前駆体eIF-5Aの特異的保存リジンのα-アミノ基に移すことにより、デオキシハイプシン残基を形成し、そしてこの4-アミノブチル部分をデオキシハイプシンヒドロキシラーゼによってヒドロキシル化することによりハイプシンを形成し、これによりeIF-5Aを活性化することから生じるポリペプチドを意味する。
【0033】
加えて、核酸及びポリペプチドの、本発明のラット・アポトーシス特異的eIF-5A配列を使用することにより、本明細書中に提供された指針及び当業者によく知られた技術を用いて、他の細胞、組織、器官又は動物からアポトーシス特異的核酸及びポリペプチドを分離することができる。本発明はまた、本発明のラット・アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチドをコードする核酸を検出するための、プライマー又はハイブリッド形成プローブとして好適な核酸分子を提供する。
【0034】
本発明の核酸は、DNA、RNA、DNA/RNAデュプレクッス、タンパク質-核酸(PNA)、又はこれらの誘導体であってよい。本明細書中に使用された核酸又はポリペプチドは、細胞物質を実質的に含有しないか、又は化学的前駆体又はその他の化学物質を含有しない場合に「分離」又は「精製」されていると言われる。言うまでもなく、分離又は精製という用語は、無数のその他の配列断片を含有するライブラリー型の調製を意味するものではない。本発明の核酸又はポリペプチドは、等質になるまで又はその他の純度まで精製することができる。精製レベルは、意図される用途に基づく。重要な特徴は、相当な量の他の成分の存在においてでさえ、この調製が核酸又はポリペプチドの所望の機能を可能にすることである。
【0035】
分離ポリペプチドは、このポリペプチドを自然の状態で発現させる細胞から精製するか、或いはこのポリペプチドを発現させるように変更されている細胞から精製するか(組換え型)、或いは、既知のタンパク質合成法を用いて合成することができる。例えば、タンパク質の組換え生成は、アポトーシスを誘導するeIF-5A又はDHSをコードする核酸分子を発現ベクター内にクローニングすることを伴う。発現ベクターは宿主細胞中に導入され、タンパク質は宿主細胞中に発現される。次いで、標準的なタンパク質精製技術を用いて、任意の好適な精製スキームによって、タンパク質は細胞から分離することができる。
【0036】
好ましくは、本発明のラット・アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチドをコードする分離核酸は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有し、そして本発明の精製ポリペプチドは、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を有する。本発明のラット・アポトーシス特異的eIF-5A核酸及びポリペプチドはまた、それぞれSEQ ID NO:1及びSEQ ID NO:2に対して実質的な配列同一性又は相同性を有する配列、並びにこれらの機能性誘導体及び変異形を包含する。
【0037】
本明細書中に使用される用語「実質的な配列同一性」又は「実質的な相同性」は、或る配列が別の配列と実質的に構造等価又は機能等価であることを示すために使用される。「実質的な配列同一性」又は「実質的な相同性」を有する配列間のいかなる構造的又は機能的な相違点も最小限のものとなる。すなわち、これらの相違点は、所望の用途において指示されるように機能する配列の能力に影響を与えることはない。相違点は、例えば種々異なる種の間のコドン使用頻度における固有の変動によることがある。2つ又は3つ以上の異なる配列間に有意な量の配列オーバーラップ又は類似性がある場合、或いは、配列の長さ又は構造が異なっていても、異なる配列が同様の物理特性を示す場合には、構造的な相違点は最小限と考えられる。このような特性は例えば、定義された条件下でハイブリッド形成する能力、又はタンパク質の場合、免疫交差反応性、類似の酵素活性などを含む。当業者であれば、よく知られた方法によってこれらの特徴のそれぞれを容易に決定することができる。
【0038】
加えて、2つのヌクレオチド配列が約70%以上、より好ましくは80%以上、さらにより好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の配列類似性を相互間に有する場合、これらの配列は「実質的に相補的」である。2つのアミノ酸配列が、ポリペプチドの活性部分間又は機能的に関連する部分間で、約50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは約80%以上、さらにより好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の類似性を有する場合、これらの配列は実質的に相同である。
【0039】
2つの配列の同一性パーセントを決定する際には、これらの配列を最適な比較目的で整列させる(例えば、最適なアラインメントのために、第1及び第2のアミノ酸配列又は核酸配列の一方又は両方にギャップを導入することができ、比較目的のために、非相同配列を無視することができる)。好ましい実施態様の場合、基準配列の長さの最小30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%以上を、比較目的で整列させる。対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドを次いで比較する。第1配列における位置が、第2配列における対応位置と同じアミノ酸又はヌクレオチドによって占有されるときには、これらの分子はその位置において同一である(本明細書中に使用されるアミノ酸又は核酸の「同一性」は、アミノ酸又は核酸の「相同性」と等価である)。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入されるのを必要とするギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮に入れて、これらの配列によって占められた同一位置の数と関数関係にある。
【0040】
配列の比較、及び2つの配列の間の同一性パーセント及び類似性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる(Computational Molecular Biology, Lesk, A. M.編、Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W.編、Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, Griffin, A.M.及びGriffin, H.G.編、Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987;及びSequence Analysis Primer, Gribskov, M.及びDevereux, J.編, M. Stockton Press, New York, 1991)。
【0041】
本発明の核酸及びタンパク質配列をさらに「問合せ配列」として使用することにより、配列データベースに対する探索を行って、例えば他の属の構成員又は関連配列を識別することができる。このような探索は、Altschul他(1990) J. Mol Biol. 215:403-10のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施することができる。BLASTヌクレオチド探索を、NBLASTプログラムで実施することができる。BLASTタンパク質探索をXBLASTプログラムで実施することにより、本発明のタンパク質に対して相同のアミノ酸配列を得ることができる。比較目的でギャップ付きアラインメントを得るために、Alschul他(1997) Nucleic Acid Res.25(17):3389-3402に記載されているように、ギャップ付きBLASTを利用することができる。BLAST及びギャップ付きBLASTプログラムを利用するときには、それぞれのプログラム(XBLAST及びNBLAST)のデフォルト・パラメータを使用することができる。
【0042】
核酸の「機能性誘導体」という用語は、遺伝子又はヌクレオチド配列の相同体又は類似体を意味するように、本明細書中に使用される。機能性誘導体は、本発明に基づいてその有用性を可能にする、所与の遺伝子の機能の少なくとも一部を保持することができる。本明細書中に記載されているようなアポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチドの「機能性誘導体」は、アポトーシス特異的eIF-5A活性の少なくとも一部、又はアポトーシス特異的eIF-5Aに対して特異的な抗体との免疫交差反応性の少なくとも一部を保持する断片、変異形、類似体又は化学誘導体である。アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチドの断片は、分子の任意の部分集合を意味する。
【0043】
機能性変異形は、機能を全く又はほとんど変化させない類似アミノ酸の置換形を含有することもできる。機能にとって不可欠なアミノ酸は、当業者に知られた方法、例えば部位特異的突然変異誘発又はアラニン走査突然変異誘発によって識別することができる(Cunningham他(1989) Science 244:1081-1085)。後者の手順は、分子中の残基毎に単一のアラニン突然変異を導入する。次いで、得られた突然変異分子を、生体活性、例えばキナーゼ活性に関して、或いは、アッセイ、例えばin vitro増殖活性において試験する。構造分析、例えば結晶化、核磁気共鳴又は光アフィニティ標識付けによって、結合パートナー/基質結合にとって重要な部位を見極めることもできる(Smith他(1992)J. Mol. Biol. 224:899-904;de Vos他(1992) Science 255:306-312)。
【0044】
「変異形」は、遺伝子全体又は遺伝子の断片と実質的に類似する分子、例えば1つ又は2つ以上の置換型ヌクレオチドを有するヌクレオチド置換変異形であって、特定遺伝子とハイブリッド形成する能力を維持するか、又は天然型DNAとハイブリッド形成するmRNA転写物をコードする能力を維持するヌクレオチド置換変異形を意味する。「相同体」は、種々異なる動物の属又は種に由来する断片又は変異配列を意味する。「類似体」は、分子全体、その変異形又は断片に実質的に類似する非天然型分子、又は分子全体、その変異形又は断片に関連して機能する非天然型分子を意味する。
【0045】
変異ペプチドは、天然型変異形、並びに当業者によく知られた方法によって製造される変異形を含む。このような変異形は、分子技術及び本明細書中に開示された配列情報を用いて容易に識別/形成することができる。さらに、このような変異形は、本発明のeIF-5A又はDNSタンパク質の配列及び/又はこれらのタンパク質に対する構造相同体に基づいて、他のタンパク質から容易に区別することができる。存在する相同性/同一性の程度は主として、そのタンパク質が機能性変異形であるか又は非機能性変異形であるか、つまりパラローグ群中に存在する分岐量及びオーソローグ間の進化距離に基づく。
【0046】
本発明のeIF-5A又はDNSタンパク質の非天然型変異形を、組換え技術を用いて容易に生成することができる。このような変異形の一例としては、タンパク質のアミノ酸配列における欠失形、付加形及び置換形が挙げられる。例えば、1つの置換形クラスは、保守的アミノ酸置換形である。このような置換形は、類似の特性を有する別のアミノ酸によって、タンパク質中の所与のアミノ酸を置換する置換形である。保守的置換として典型的に見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu及びIleの中からの相互の置換;ヒドロキシル残基Ser及びThrの相互交換;酸性残基Asp及びGluの交換;アミノ酸残基Asn及びGlunの間の置換;塩基性残基Lys及びArgの交換;及び芳香族残基Phe及びThrの間の置換である。どのようなアミノ酸変化が表現型上サイレントであると考えられるかに関する指針が、Bowie他、Science 247:1306-1310(1990)に見いだされる。
【0047】
或いは、本発明のラット・アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチドをコードする核酸は、SEQ ID NO:1に対して相補的なヌクレオチド配列と高緊縮条件下でハイブリッド形成するのも好ましい。本明細書中で使用される「ハイブリッド形成」という用語は、プローブ配列及び標的配列の性質に応じて、当業者には容易に明らかであるように、好適な緊縮条件で核酸をハイブリッド形成することを意味するように一般には使用される。ハイブリッド形成及び洗浄の条件は、当業者によく知られており、そして、インキュベーション時間、温度及び/又は溶液のイオン強度を変化させることにより、所望の緊縮性に応じて、条件が容易に調節される。例えばSambrook, J.他、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbour Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989参照。
【0048】
条件の選択は、ハイブリッドされる配列の長さ、具体的にはプローブ配列の長さ、核酸の相対G-C含量及び許容されるべきミスマッチ量によって決定される。相補度がより低いストランド間の部分ハイブリッド形成が望まれる場合には、緊縮条件は低いことが好ましい。完全な又は完全に近い相補性が望まれる場合には、高緊縮条件が好ましい。典型的な高緊縮条件の場合、ハイブリッド形成溶液は、6X S.S.C., 0.01M EDTA, 1Xデンハルト溶液、及び0.5% SDSを含有する。クローニングされたDNAの断片に関しては、約68℃で約3〜4時間にわたって、また全真核細胞DNAに関しては約12〜16時間にわたって、ハイブリッド形成を行う。緊縮度が低い場合、デュプレックスの溶融温度(Tm)を下回る約42℃まで、ハイブリッド形成温度を低下させる。Tmは、G-C含量及びデュプレックス長、並びに溶液のイオン強度と関数関係にあることが知られている。
【0049】
本明細書中に使用された、DNA又はRNA分子の「対応部分とハイブリッド形成する」の語句は、ハイブリッド形成する分子、例えばオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド又は任意のヌクレオチド配列(センス又はアンチセンス配向)が、別の核酸分子中の配列、すなわち、ほぼ同じサイズを有し、適切な条件下でハイブリッド形成を生じさせるのに十分な配列類似性を有する配列を認識し、そしてこれとハイブリッド形成することを意味する。例えば100ヌクレオチド長センス分子は、2つの配列間に約70%以上の配列類似性がある限り、ヌクレオチド配列のほぼ100ヌクレオチド部分を認識し、そしてこれとハイブリッド形成することになる。いうまでもなく、「対応部分」のサイズはハイブリッド形成におけるいくらかのミスマッチを許すので、「対応部分」は、これとハイブリッド形成する分子よりも小さいか又は大きくてよく、例えば20〜30%だけ大きいか又は小さくてよく、好ましくは約12〜15%以下だけ大きいか又は小さくてよい。
【0050】
加えて、ポリペプチドの機能性変異形は、機能を全く又はほとんど変化させない類似のアミノ酸の置換形を含有することもできる。機能にとって不可欠なアミノ酸は、当業者に既知の方法、例えば部位特異的突然変異誘発又はアラニン走査突然変異誘発によって識別することができる(Cunningham他Science 244:1081-1085(1989))。後者の手順は、分子中の残基毎に単一のアラニン突然変異を導入する。次いで、結果として生じた突然変異分子を、生体活性に関して、或いはアッセイにおいて試験する。
【0051】
例えば、アポトーシス特異的eIF-5Aの類似体は、非天然型タンパク質、又はタンパク質全体又はその断片に対して実質的に類似のペプチド模倣体を意味する。アポトーシス特異的eIF-5Aの化学誘導体は、通常はペプチドの一部又はペプチド断片ではない付加的な化学部分を含有する。ペプチドの標的アミノ酸残基と、選択された側鎖又は末端残基と反応することができる有機誘導体化剤とを反応させることにより、ペプチド又はその断片中に修飾を導入することができる。
【0052】
ラット黄体から分離されたアポトーシス特異的eIF-5Aをコードする全長cDNAを最初に発見して特徴付けすることは、やはりラット黄体から分離されてアポトーシスに関与するDHSをコードする部分長cDNAの発見及び特徴付けにつながった。従って、付加的な実施態様の場合、本発明は、ラット・アポトーシス特異的DHSポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む分離核酸を提供する。また、ラット・アポトーシス特異的DHSポリペプチドのアミノ酸配列を含む精製ポリペプチドも提供される。ラット・アポトーシス特異的DHSポリペプチドは、ラットに対して特異的な任意の好適なポリペプチドであって、アポトーシスに至りつつある細胞中に異なる状態で発現され、また、スペルミジンの4-アミノブチル部分を、不活性eIF-5Aの特異的保存リジンのα-アミノ基に移すことにより、デオキシハイプシン残基の形成を触媒してデオキシハイプシンを形成し、これによりeIF-5Aを活性化するポリペプチドを意味する。
【0053】
好ましくは、本発明のラット・アポトーシス特異的DHSポリペプチドをコードする分離核酸は、SEQ ID NO:6のヌクレオチド配列を有し;本発明の精製ポリペプチドは、SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を有する。本発明のラット・アポトーシス特異的DHS核酸及びポリペプチドはまた、前述のそれぞれSEQ ID NO:6及びSEQ ID NO:7に対して実質的な配列同一性又は相同性を有する配列、並びにこれらの機能性誘導体及び変異形を包含する。或いは、本発明の分離核酸は、前述のSEQ ID NO:6の相補配列と高緊縮条件下でハイブリッド形成する核酸配列を有するのも好ましい。
【0054】
本明細書中に記載されたラット・アポトーシス特異的eIF-5A配列の核酸及びポリペプチドと同様に、本発明のラット・アポトーシス特異的DHS配列の核酸及びポリペプチドを使用することにより、ヒトを含む他の動物から、アポトーシス特異的DHS核酸及びポリペプチドを分離することができる。動物及びヒトからこのようなDHS配列を分離することは、種を横切る最小80%以上の配列類似性に基づいて、当業者に知られた方法及び本明細書中に示した指針を用いて達成することができる。本発明はまた、本発明のラット・アポトーシス特異的DHSポリペプチドをコードする核酸を検出するための、プライマー又はハイブリッド形成プローブとして好適な核酸分子を提供する。
【0055】
アポトーシス特異的eIF-5A及びDHSは、疾患プロセスの根底を成すアポトーシスを含む、アポトーシスの調節に好適な標的である。それというのは、これがアポトーシス経路に関与する下流エフェクター及び転写因子の転写後調節に際して作用すると思われるからである。こうして、本発明はまた、アポトーシス特異的eIF-5A及びDHS機能を調節する作用物質を細胞に投与することにより、細胞におけるアポトーシスを調節する方法を提供する。当業者には明らかなように、この作用物質はアポトーシス特異的eIF-5A機能だけを調節するか、アポトーシス特異的DHS機能だけを調節するか、又はアポトーシス特異的eIF-5A機能及びDHS機能の両方を調節する物質であってよい。
【0056】
細胞内のアポトーシス特異的eIF-5A及び/又はDHS機能の正常レベルを任意に好適に変更することにより、アポトーシスを調節することができる。ここで意図されるように、修飾又は変更は完全又は部分的であってよく、転写又は翻訳のコントロールの変化、又は細胞内のアポトーシス特異的eIF-5A及び/又はDHS機能を変更するその他の変化を含むことができる。アポトーシス特異的eIF-5A又はDHS機能は、スペルミジンの4-アミノブチル部分を、DHSによって触媒された前駆体eIF-5Aの特異的保存リジンのα-アミノ基に移すことにより、デオキシハイプシン残基を形成し、そしてこの4-アミノブチル部分をデオキシハイプシンヒドロキシラーゼによってヒドロキシル化することによりハイプシンを形成し、これによりeIF-5Aを活性化することに関連する任意の活性を意味する。
【0057】
本発明の1実施態様の場合、作用物質はアポトーシス特異的eIF-5A及び/又はDHS機能を阻害し、これによりアポトーシスを阻害することができる。アポトーシスの阻害は、アポトーシスにとって特徴的な明確に定義された形態的特徴、例えば収縮、クロマチン凝縮、核断片化、及び膜泡状突起形成のうちのいずれか又は全ての強度及び/又は数を減小させ、且つ/又はその開始を遅らせることを意味する。
【0058】
アポトーシス特異的eIF-5A及び/又はDHS機能を阻害することができる1つの作用物質はアンチセンス・オリゴヌクレオチドである。好ましくは、アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチド及び/又はアポトーシス特異的DHSポリペプチドの一部をコードするヌクレオチド配列を有する。アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチド及び/又はDHSポリペプチドをコードする多くの好適な核酸配列が当業者に知られている。例えば、SEQ ID NO:1, 3, 4, 5, 11, 15, 19, 20及び21(アポトーシス特異的eIF-5A核酸配列)、SEQ ID NO:6及び8(アポトーシス特異的DHS核酸配列)、SEQ ID NO:12及び16 eIF-5A(アポトーシス特異的ポリペプチド配列)、及びSEQ ID NO:7(アポトーシス特異的DHSポリペプチド配列)、又はこれらの一部が、好適な配列を提供する。本明細書中に記載された方法に従って、既知の配列をプローブとして使用して、その他の好適な配列を見いだすことができる。
【0059】
従って、本発明はまた、アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチド及び/又はアポトーシス特異的DHSポリペプチドの一部、又はその相補形をコードするアンチセンス・オリゴヌクレオチドを提供する。本発明のオリゴヌクレオチドは、RNA又はDNA、例えばcDNA、ゲノムDNA、又は合成RNA又はDNAの形態を成すことができる。DNAは二本鎖又は一本鎖であってよく、そして一本鎖の場合、これはコーディング鎖又は非コーディング鎖であってよい。オリゴマー化合物をその標的核酸と特異的ハイブリッド形成する結果、その核酸の正常機能を妨害することになるようなハイブリッド形成を、一般に「アンチセンス」と呼ぶ。妨害されるべきDNAの機能は複製及び転写を含む。妨害されるべきRNAの機能は、全ての機能、例えばタンパク質翻訳部位へのRNAの転座、RNAからのタンパク質の翻訳、RNAのスプライシングによる1つ又は2つ以上のmRNA種の産出、及びRNAによって関与又は促進することができる触媒活性を含む。このようなアンチセンス・オリゴヌクレオチドの全体的な効果は、アポトーシス特異的eIF-5A及び/又はDHSの発現を阻害し、且つ/又は、生成される活性化アポトーシス特異的eIF-5Aの量を抑制することである。
【0060】
或いは、アポトーシス特異的DHSによるアポトーシス特異的eIF-5Aの活性化は、DHS酵素反応を阻害する化学物質を投与することにより、阻害することができる。例えば、PGF-2αの注射によってアポトーシスを誘発した後、DHS反応のインヒビターであるスペルミジンで動物を処理すると、アポトーシスを反映するDNAラダー形成の開始がラット黄体中で遅らされる(図18〜19)。Jakus他(1993) J. Biol. Chem. 268: 13151-13159。
【0061】
アポトーシス特異的eIF-5A DNA, RNA又はタンパク質を分解する作用物質、或いは、アポトーシス特異的DHS DNA, RNA又はタンパク質を分解する作用物質を添加することにより、アポトーシスを阻害又は実質的に低減し、これにより、アポトーシス特異的DHSによるアポトーシス特異的eIF-5Aの活性化を防止することもできる。本発明の別の実施態様の場合、内在性哺乳動物アポトーシス特異的DHS、アポトーシス特異的eIF-5A、又はその両方の発現が、リボザイムを使用することにより阻害される。好適な薬物の例は、アポトーシス特異的DHSによるアポトーシス特異的eIF-5Aの活性化を阻害する薬物、デオキシハイプシン・ヒドロキシラーゼによるアポトーシス特異的eIF-5Aの活性化を阻害する薬物、アポトーシス特異的DHSの転写及び/又は翻訳を阻害する薬物、アポトーシス特異的デオキシハイプシン・ヒドロキシラーゼの転写及び/又は翻訳を阻害する薬物、及びアポトーシス特異的eIF-5Aの転写及び/又は翻訳を阻害する薬物を含む。アポトーシス特異的DHSによるeIF-5Aの活性化を阻害する薬物は、スペルミジン、1,3-ジアミノ-プロパン、1,4-ジアミノ-ブタン(プトレッシン)、1,7-ジアミノ-ヘプタン、又は1,8-ジアミノ-オクタンである。
【0062】
細胞内のアポトーシス特異的eIF-5Aをコードする遺伝子を不活性化することにより、アポトーシス特異的eIF-5Aを阻害することも可能である。細胞内の遺伝子を削除することにより、又は遺伝子中に欠失形又は突然変異形を導入し、これにより遺伝子を不活性化することにより、このような不活性化が発生し得る。内在性アポトーシス特異的eIF-5Aの発現が生じないように、遺伝子中に別のDNA断片を挿入することにより、遺伝子を不活性化することもできる。同様に、細胞内のアポトーシス特異的DHSをコードする遺伝子を不活性化することにより、アポトーシス特異的eIF-5Aを阻害することも可能である。真核細胞内の遺伝子中への突然変異形、例えば欠失形及び挿入形の導入方法は、当業者に知られており、例えば米国特許第5,464,764号明細書に記載されている。細胞内の遺伝子の突然変異に有用なオリゴヌクレオチド及び発現ベクターは、当業者によく知られた技術及び本明細書中に提供された指針に従って形成することができ;例えばアンチセンス・オリゴヌクレオチドを形成して発現させるのに有用な方法を用いることにより、細胞内の遺伝子を突然変異させるのに有用なオリゴヌクレオチド及び発現ベクターを形成することができる。
【0063】
細胞内のアポトーシス特異的eIF-5Aをコードする遺伝子の発現を抑制することにより、アポトーシス特異的eIF-5Aの発現を阻害することも可能である。このような不活性化はコ・サプレッションを介して、例えばコ・サプレッションが発生するように、アポトーシス特異的eIF-5Aをコードするヌクレオチド配列を細胞内に導入することにより達成することができる。同様に、細胞内のアポトーシス特異的DHSをコードする遺伝子の発現をコ・サプレッションを介して抑制することにより、アポトーシス特異的eIF-5Aの活性化を阻害することも可能である。コ・サプレッションに有用なオリゴヌクレオチド及び発現ベクターは、当業者によく知られた技術及び本明細書中に提供された指針に従って形成することができ;例えばアンチセンス・オリゴヌクレオチドを形成して発現させるのに有用な方法を用いることにより、コ・サプレッションに有用なオリゴヌクレオチド及び発現ベクターを形成することができる。コ・サプレッション法は当業者に知られており、例えば米国特許第5,686,649号明細書に記載されている。
【0064】
(例えば、アンチセンス、突然変異又はコ・サプレッションを介した)阻害の1つの結果は、内在性の翻訳可能なアポトーシス特異的eIF-5A又はDHSをコーディングするmRNAの量が低減することである。従って、生成されたアポトーシス特異的DHSタンパク質の量は低減され、これにより、活性化eIF-5Aの量が低減され、このことはアポトーシス特異的タンパク質の翻訳を低減する。アポトーシスはこうして阻害又は遅延される。それというのも、アポトーシス開始のために新規のタンパク質合成が必要となるからである。
【0065】
本発明の別の実施態様の場合、作用物質はアポトーシス特異的eIF-5A又はDHSの機能を誘発し、これによりアポトーシスを誘発することができる。アポトーシスの誘発は、アポトーシスにとって特徴的な明確に定義された形態的特徴、例えば収縮、クロマチン凝縮、核断片化、及び膜泡状突起形成のうちのいずれか又は全ての強度及び/又は数を増大し、又はその開始を加速することを意味する。
【0066】
アポトーシス特異的eIF-5A及び/又はDHSの機能を誘発する任意の好適な作用物質を使用することができる。当業者には明らかなように、アポトーシス特異的eIF-5Aの不活性形及び活性形を投与することができる。不活性形又はハイプシンで修飾されていない形が投与される場合、天然型アポトーシス特異的DHSがeIF-5Aを活性化することになる。アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチド及び/又はDHSポリペプチドをコードする多くの好適な核酸配列が当業者に知られている。例えば、SEQ ID NO:1, 3, 4, 5, 11, 15, 19, 20及び21(アポトーシス特異的eIF-5A核酸配列)、SEQ ID NO:6及び8(アポトーシス特異的DHS核酸配列)、SEQ ID NO:12及び16 eIF-5A(アポトーシス特異的ポリペプチド配列)、及びSEQ ID NO:7(アポトーシス特異的DHSポリペプチド配列)、又はこれらの一部が、好適な配列を提供する。本明細書中に記載された方法に従って、既知の配列をプローブとして使用して、その他の好適な配列を見いだすことができる。
【0067】
例えば、ネイクド(naked)核酸(ネイクド(naked)DNAベクター、例えばオリゴヌクレオチド又はプラスミド)、又は組換えにより生成されたポリペプチドを含むポリペプチドを細胞に投与することができる。組換えにより生成されたポリペプチドは、eIF-5A又はDHSタンパク質をコードするDNA配列が、下記に詳述する好適な発現ベクター内に挿入されることを意味する。宿主に発現ベクターをトランスフェクトし、その後、発現ベクターは所望のポリペプチドを生成する。続いて、宿主細胞からポリペプチドを分離する。組換えアポトーシスを誘発するeIF-5Aタンパク質は、Chinese Hamster Ovary(CHO)細胞内で形成し、当業者によって組換えDHSを使用して活性化することができる。Wang他(2001) J. Biol. Chem. 276, 17541-17549;Eriksson他(2001) Semin. Hematol., 38, 24-31。ポリペプチドは合成であってもよく、合成型ポリペプチドは、周知のタンパク質合成法を用いて合成される。
【0068】
リガンド、例えば広範囲な細胞内への取込みを媒介する炭疽菌に由来するリガンドを使用して、ポリペプチド取込みを容易にすることができる。Liu他(2001) J. Biol. Chem., 276, 46326-46332。リポソームを使用して、組換えタンパク質を哺乳動物の標的細胞、組織及び器官に投与することもできる。タンパク質を吸蔵するリポソームを静脈内投与する。特異的細胞受容体に対するリガンドをリポソーム中に組み入れることにより、目標を達成することができる。例えばKaneda, Adv Drug Delivery Rev 43:197-205(2000)。
【0069】
アポトーシス特異的eIF-5A又はDHSの機能を誘発することができる1つの好ましい作用物質は、発現ベクターである。従って、本発明は、アポトーシス特異的eIF-5Aポリペプチド及び/又はDHSポリペプチドをコードする核酸に作用連関されたプロモーターを有する発現ベクターを提供する。本発明の発現ベクターは、RNA又はDNA、例えばcDNA、ゲノムDNA、又は合成RNA又はDNAの形態を成すことができる。DNAは二本鎖又は一本鎖であってよく、そして一本鎖の場合、これはコーディング鎖又は非コーディング鎖であってよい。任意の適切な発現ベクター(例えばPouwels他、Cloning Vectors: A Laboratory Manual (Elsevior, N.Y.:1985)参照)を使用することができる。好ましくは、発現ベクターは、アポトーシス特異的(関連)eIF-5Aポリペプチド及び/又はアポトーシス特異的(関連)DHSポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に作用連関されたプロモーター配列を有する。
【0070】
発現ベクター内で、所望の核酸とプロモーターとは、プロモーターが核酸の発現を駆動できるように作用連関されている。核酸が発現されるならば、いかなる好適なプロモーターをも使用することができる。このような好適なプロモーターの例は、種々のウィルス・プロモーター、真核プロモーター、及び構成的活性プロモーターを含む。この作用連関が維持される限り、発現ベクターは2つ以上の核酸(例えばアポトーシス特異的eIF-5A及びDHSの両方をコードする核酸)を含むことができる。発現ベクターは任意には、その他の要素、例えばポリアデニル化配列、リボソーム入口部位、転写調節要素(例えばエンハンサー、サイレンサーなど)、ベクター又は転写物の安定性、又は細胞内の所望の転写物の翻訳又はプロセッシングを増強するためのその他の配列(例えば分泌シグナル、リーダーなど)、又は任意のその他の好適な要素を含むことができる。
【0071】
発現ベクターは、ウィルス、例えばアデノウィルス、アデノ随伴ウィルス、ヘルペスウィルス、レトロウィルス又はレンチウィルスから誘導することができる。本発明の発現ベクターは、宿主細胞内にトランスフェクトすることができる。宿主細胞の一例としては、細菌種、バキュロウィルス系を含む哺乳動物又は昆虫宿主細胞系(例えばLuckow他, Bio/Technology, 6, 47(1988))、及び確立された細胞系、例えば293, COS-7, C127, 3T3, CHO, HeLa, BHKなどが挙げられる。
【0072】
アデノウィルス・ベクターが好ましい。なぜならば、プラスミドやその他のウィルス・ベクター(例えば単純ヘルペスウィルス)と異なり、アデノウィルス・ベクターは、分裂細胞及び非分裂細胞の両方において遺伝子導入を達成し、しかも心臓血管関連部位、例えば心筋、血管内皮、及び骨格筋におけるタンパク質の発現レベルが高いからである。さらに、アデノウィルス・ベクターによって導入された遺伝子は、上染色体位置で機能し、ひいては宿主ゲノムの重要部位内に導入遺伝子を不適切に挿入するリスクはほとんどない。アデノウィルス・ベクターはまた、ウィルス複製に必要とされる1つ以上の遺伝子機能に欠けていることが望ましい。アデノウィルス・ベクターは、アデノウィルス・ゲノムのE1, E2及び/又はE4領域の1つ以上の必須遺伝子機能に欠けていることが好ましい。ベクターは加えて、アデノウィルス・ゲノムのE3の少なくとも一部に欠けていることがより好ましい(例えばE3領域のXbaIの欠失)。
【0073】
培地にウィルスを添加するだけで、培養された細胞に組換えアデノウィルスを供給することができる。ウィルス粒子を血流中又は所望の細胞内に直接に注入することにより、宿主細胞/ヒトの感染を達成することができる。ウィルスをリポソーム(例えばLipofectin, Life Technologies)又はポリエチレングリコールと複合することにより、血清中のウィルスの半減期を延長することができる。アデノウィルス・ベクターは通常、ウィルス線維タンパク質のノブ・ドメインとコクサッキーウィルス及びアデノウィルス受容体CARとの間の相互作用を介して、細胞に入る。或る特定の細胞受容体に対して特異的なリガンドを発現させるようにウィルスを遺伝子工学的に作成することにより、ウィルスベクターを特異的細胞に指向させるか、又はCARを発現させない細胞に指向させることができる。
【0074】
別の実施態様の場合、内在性のアポトーシス特異的eIF-5A、又はアポトーシス特異的DHS、又はその両方の転写を化学的にアップレギュレートすることにより、或いは、アポトーシス特異的eIF-5Aの活性化を化学的に増強することにより、アポトーシスを開始又は増強することができる。このような1実施態様の場合、PGF-2αを動物/ヒトの癌細胞又は腫瘍に投与することにより、DHS及びeIF-5Aの転写をアップレギュレートする。
【0075】
アポトーシス特異的eIF-5Aは、疾患プロセスの根底を成すアポトーシスを含む、アポトーシスの調節に適した標的である。それというのも、アポトーシス特異的eIF-5Aは、アポトーシス経路に関与する下流エフェクター及び転写因子の転写後調節に際して作用すると思われるからである。アポトーシス特異的eIF-5A及びDHSを単独で、又は組み合わせて調節する本発明の方法は、動物の細胞内で達成することができ、アポトーシスの誘導又は増強をもたらし、そして細胞をアポトーシスに至らしめることができないことによって生じた疾患、又は細胞をアポトーシスに至らしめることができないことに関連する病因を有する疾患の治療及び予防のための新規の方法、及び組成物を提供する。
【0076】
多くの重大なヒト疾患は、アポトーシスのコントロールにおける異常によって引き起こされる。これらの異常は細胞数を病理学的に増大させ(例えば癌)、或いは、細胞の損傷損失(例えば変性疾患)をもたらす。非限定的な例として、本発明の方法及び組成物を用いることにより、下記アポトーシス関連疾患及び障害を予防又は治療することができる:神経/神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋委縮性側索硬化(ルー・ゲーリック病)、自己免疫障害(例えば関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、運動ニューロン障害、虚血、心臓虚血、慢性心不全、発作、乳児脊髄性筋萎縮症、心不全、腎不全、アトピー性皮膚炎、敗血症及び敗血性ショック、エイズ、肝炎、緑内障、糖尿病(1型及び2型)、喘息、網膜色素変性、骨粗鬆症、異種移植片拒絶症、及び火傷。
【0077】
ガン細胞を有する動物又は腫瘍を患う動物に対する治療のために、それぞれ癌細胞を殺すのに十分な量で、又は腫瘍の進行を阻害するのに十分な量で、本発明の方法を用いることができる。このことを成し遂げるのに十分な量が、治療有効量として定義される。この使用に対して効果的な量は、疾患の重症性、及び動物自身の免疫系の全身状態に依存する。
【0078】
腫瘍成長の阻害は、腫瘍の進行、例えば、腫瘍の成長、侵襲、転移及び/又は再発の防止又は低減を意味する。本発明の方法を用いることにより、例えば、乳房、心臓、肺、小腸、大腸、脾臓、腎臓、膀胱、頭部及び頸部、卵巣、前立腺、脳、膵臓、皮膚、骨、骨髄、血液、胸腺、子宮、睾丸、子宮頸又は肝臓の腫瘍を含む任意の相応の腫瘍を治療することができる。本発明の組成物及び方法を用いて、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを治療することができる。こうして本発明の方法は、in vitro、ex vivo又はin vivoで実施することができる。
【0079】
投与計画はまた、その動物の疾患状態及び状況とともに変化し、また、典型的には1日当たり単回のボーラス投与又は連続輸液から、1日当たり複数回の投与(例えば4〜6時間毎)の範囲に及び、又は治療及び動物の状態に応じて指示される。但し念のため述べておくが、本発明は特定の投与量には限定されない。
【0080】
本発明の場合、投与に際しては、任意の好適な方法又はルート、例えば経口、静脈内、腹腔内、皮下、又は筋内投与を用いることができる。投与されるアンタゴニストの投与量は、例えば投与される分子のタイプ、治療される腫瘍のタイプ及び重症性及び投与ルートを含む、数多くのファクターに依存する。しかし強調しておくが、本発明は特定の方法又は投与ルートに限定されるものではない。
【0081】
別の1実施態様の場合、本発明の方法を1種又は2種以上の伝統的な治療との組み合わせで用いることができる。例えば好適な抗新生物薬、例えば化学治療薬又は放射線を用いることができる。付加的な別の実施態様の場合、本発明の方法は1種又は2種以上の好適なアジュバント、例えばサイトカイン(例えばIL-10及びIL-13)又はその他の免疫促進剤との組み合わせで用いることができる。
【0082】
別の実施態様の場合、アポトーシス特異的eIF-5A及び増殖性eIF-5A(eIF-5b)の発現レベルを測定することにより、アポトーシスに関連又は付随する障害(例えば心臓組織の虚血)を診断することができる。増殖性eIF-5A(eIF-5b)とアポトーシス特異的eIF-5Aとは、これらが異なるプロモータによって異なる位置から転写される点で異なり;しかし、これら2つは構造的には相同であり、カルボキシ末端が異なっている。本発明の診断方法は、所与の細胞内に存在する増殖性eIF-5Aの量を、同じ細胞内に存在するアポトーシス特異的eIF-5Aの量と比較することを伴う。遺伝子発現レベルは、増殖性eIF-5A及びアポトーシス特異的eIF-5A双方に関して測定され、そして互いに比較される。細胞は、これが正常に機能している間は、アポトーシス特異的eIF-5A(本明細書中ではeIF-5A1とも呼ばれる)と同量の、又はこれよりも多量の増殖性eIF-5A(本明細書中ではeIF-5A2とも呼ばれる)を有することになる。しかし、死に至らしめられつつある又は虚血のようにストレスを加えられている細胞の場合、アポトーシス特異的eIF-5Aは、増殖性eIF-5Aよりも高いレベルで発現される。こうして、アポトーシス特異的eIF-5Aの発現レベルの増大を検出することにより、アポトーシスに関連又は付随する障害(例えば虚血)を識別又は診断する方法が提供される。
【0083】
図46は、心臓組織における虚血を誘発する前及び誘発した後にアポトーシス特異的eIF-5a(eIF5a)及び増殖性eIF-5A(eIF5b)のレベルを測定した試験の結果を示す。実施例6も参照されたい。虚血前では、アポトーシス特異的eIF-5a(eIF5a)及び増殖性eIF-5A(eIF5b)はほぼ同様であり、低レベルであった。虚血誘発後にはアポトーシス特異的eIF-5a(eIF5a)のレベルは、増殖性eIF-5A(eIF5b)のレベルよりも著しく増大する。
【0084】
アポトーシス特異的eIF-5a(eIF5a)及び増殖性eIF-5A(eIF5b)の発現レベルが正常組織中では比較的低レベルであり、互いに相対的なバランスをとっていることを知り、アポトーシス特異的eIF-5a(eIF5a)の遺伝子発現レベルの増大をモニタリングして検出することにより、細胞又は組織にストレスを加える種々の疾患又は症状、例えば虚血を診断する方法が提供される。
【0085】
さらに、遺伝子発現レベルを測定することによりこれらの状態が検出可能になることによって、このような状態の治療方法が提供される。例えば、当業者に知られた方法によって、或いはアポトーシス特異的eIF-5a(eIF5a)の遺伝子発現レベルの増大を検出することによって、心臓中の虚血が検出されると、遺伝子発現レベルを阻害又は低減するであろう作用物質を提供し、ひいては細胞死の発生率を低くすることができる。
【0086】
アポトーシス特異的eIF-5a(eIF5a)に対するアンチセンス・オリゴヌクレオチドの使用を含む、アポトーシス特異的eIF-5a(eIF5a)の遺伝子発現レベルを阻害又は低減する作用物質は本明細書において上述した通りである。好ましいアンチセンス・オリゴヌクレオチドは、アポトーシス特異的eIF-5aをコードするヌクレオチド配列、例えば一例としてはSEQ ID NO:3又は4として挙げられたヌクレオチド配列のコーティング・ストランドに対して相補的なオリゴヌクレオチドを含む。
【0087】
或る癌細胞の場合、正常な調節メカニズムがうまく働かなくなり、増殖性eIF-5Aの量に対するアポトーシス特異的eIF-5Aの量が変化する(アポトーシス特異的eIF-5Aのレベルが、増殖性eIF-5Aよりも高くなるように増大する)。このことは、細胞内の任意の表現型変化の前に、細胞を癌性であると診断することを潜在的に可能にする。
【0088】
加えて、虚血性心臓組織において、増殖性eIF-5Aの量に対するアポトーシス特異的eIF-5Aの量は、アポトーシス特異的eIF-5Aのレベルが、増殖性eIF-5Aの量に対して増大するように変化する。
【0089】
さらに別の実施態様の場合、アポトーシス特異的eIF-5Aに対する増殖性eIF-5Aの比を、薬物スクリーニングにおいて用いることができる。このような方法はまた、所与の細胞内に存在する増殖性eIF-5Aの量を、同じ細胞内に存在するアポトーシス特異的eIF-5Aの量と比較することを伴う。アポトーシス特異的eIF-5Aに対する増殖性eIF-5Aの基準比は、細胞を薬物候補と接触させた後のアポトーシス特異的eIF-5Aに対する増殖性eIF-5Aの比と比較されることになる。接触後の、アポトーシス特異的eIF-5Aに対する増殖性eIF-5Aの比に変化が生じた場合には、アポトーシス調節活性を有する候補薬を識別することが可能になる。アポトーシス調節活性を有する候補薬は、アポトーシスの阻害又は誘発によって、アポトーシスと関連する疾患を治療するのに有用であり得る。加えて、アポトーシス特異的eIF-5Aに対する増殖性eIF-5Aの比の変化を利用して、アポトーシスを調節することができ、このことは、異常なアポトーシスに関連したものとして本明細書中に記載された症状のいずれかを治療するのに有用である場合がある。
【0090】
この方法を用いて、多数の潜在的候補、すなわちライブラリーを効果的にスクリーニングすることにより、アポトーシスを調節するライブラリーの構成員を識別することができる。この方法を用いて任意の候補又は候補ライブラリーをスクリーニングすることができる。例えば、アポトーシス・モジュレーターとして見込みがある生体応答修飾物質を、この方法を使用して、明確なアポトーシス調節活性に関してスクリーニングすることができる。このような生体応答修飾物質は、シグナル伝達経路を変化させるモノクローナル抗体、サイトカイン、例えばTRAIL(Apo2リガンド)、レチノイド/ステロイド属核受容体のためのリガンド、及びタンパク質キナーゼと結合してこれを阻害する小分子化合物を含む。
【0091】
好適な1候補は、抗腫瘍活性を有するタンパク質キナーゼC-アルファ・アンチセンス・オリゴヌクレオチド、ISIS 3521(ISIS Pharmaceuticals, Inc., Carlsbad, CA)である。他の特異的候補は、カスパーゼ(Idun Pharmaceuticals, San Diego, CA)(癌及び神経変性疾患を招く種々の細胞型においてアポトーシスをトリガーして実行する重要な役目を演じることが知られている);GENASENSE(登録商標)(Genta, Inc., Berkeley Heights, NJ)(Bcl-2の生成をブロックするアンチセンス薬物である);INGN 241(Introgen Therapeutics, Inc., Houston, TX)(P53を標的とする遺伝子治療薬である);リトゥキシマブ(rituximab)(IDEC Corporation,日本国大阪)(抗CD20モノクローナル抗体である);及び心臓血管疾患及び癌のための一般的なアポトーシス駆動型治療薬(AEgera Therapeutics Inc., Quebec, Canada)を含む。
【0092】
言うまでもなく、本発明の核酸及びポリペプチドは、予防又は治療の目的で動物に使用される場合、製薬上許容可能な担体を付加的に含む組成物の形態で投与されることになる。好適な製薬上許容可能な担体は、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、並びにこれらの組み合わせを含む。製薬上許容可能な担体はさらに、少量の補助剤、例えば湿潤剤又は乳化剤、保存剤又は緩衝剤を含むことができる。これらは結合タンパク質の保管寿命又は効果を高める。当業者によく知られた注射組成物は、哺乳動物への投与後に活性成分を急速に、又は持続的に、又は遅延させた状態で放出するのを可能にするように調製することができる。
【0093】
本発明の組成物は種々の形態であってよい。これらの形態は例えば、固形、半固形及び液状投与形態、例えば錠剤、丸剤、粉剤、溶液、分散体又は懸濁液、リポソーム、座剤、注射液及び輸液を含む。好ましい形態は、意図された投与様式及び治療用途に依存する。
【0094】
このような組成物は、製薬分野においてよく知られた態様で調製することができる。組成物を製造する際に、有効成分は通常、担体と混合されるか、担体によって希釈されるか、且つ/又は、例えばカプセル、カシェ、紙又はその他の容器の形態を成すことができる担体内に封入されることになる。担体が希釈剤として作用する場合、担体は固形、半固形又は液状材料であってよく、この材料は活性成分のためのビヒクル、賦形剤又は媒質として作用する。従って、組成物は錠剤、トローチ剤、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、エアロゾル(固形物として、又は液体媒質中)、例えば最大10重量%の活性化合物を含有する軟膏、軟質及び硬質ゼラチンカプセル剤、座剤、注射液、懸濁液、滅菌パッケージ済粉剤及び局所用パッチ剤の形態を成してよい。
【0095】
以上、全体的に本発明を説明してきたが、一例として挙げる下記の実施例を参照すれば、本発明がより明らかになる。これらの実施例は、本発明の理解を助けるために示すものであり、本発明の範囲を限定することを決して意図してはおらず、またそのように解釈すべきではない。実施例は一般的な方法の詳細な説明を含まない。このような方法は当業者に知られており、数多くの刊行物に記載されている。一般的な方法の詳細な説明、例えばベクター及びプラスミドの構成、このようなベクター及びプラスミド内への、ポリペプチドをコードする核酸の挿入、宿主細胞内へのプラスミドの導入、及び遺伝子及び遺伝子生成物の発現及び発現決定の際に採用される方法は、Sambrook, J.他(1989)、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Pressを含む、数多くの刊行物から得ることができる。本明細書中で述べられる全ての参考文献全体を引用する。
【実施例】
【0096】
実施例1
この実施例は、アポトーシス特異的発現を示すラットeIF-5A核酸をコードする完全長cDNAの分離及び特徴付けを示す。
【0097】
〈過剰排卵及びラット黄体におけるアポトーシス誘発〉
50IUのPMSG(妊馬血清ゴナドトロピン)を、そして60〜65時間後に50IUのHCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を皮下注射することにより、未成熟(21〜30日齢)雌ラットに過剰排卵させた。HCGによる処理から数日後、500mgのPGF-2αを皮下注射することにより、黄体アポトーシスを誘発した。PGF-2α処理後の種々の時点(例えば1, 8及び24時間)でラットを犠牲にし、黄体を取り出し、そして液体窒素中に置いた。PGF-2α処理直前にラットを犠牲にすることにより、対照黄体組織を得た。
【0098】
〈ラット卵巣黄体細胞の分散〉
過剰排卵から6〜9日後、500mgのPGF-2αを多部位皮下注射することにより、ラットを処理した。15〜30分後、過剰排卵ラットから卵巣を取り出し、氷上のEBSS(Gibco)中に置き、ブロット乾燥させ、そして秤量した。結合組織をトリミングにより除去し、そして卵巣を剃刀の刃で細かく刻み、そしてEBSS 2Xで2回洗浄した。EBSS 5ml中の6.5mgのコラゲナーゼ(Sigma, カタログ#C 5138)を渦流形成することにより、コラゲナーゼ溶液を調製した。50ml三角フラスコ内のEBSS中の5mlのコラゲナーゼに、8つの卵巣から刻まれた組織を添加し、Diamedピペット内に数回引き込むことにより、穏やかに撹拌した。次いで、刻まれた組織を有するフラスコを、95%空気、5%CO2下で静かに震盪させながら(GFLインキュベータ上の位置45)、20分間にわたって37℃で水浴内に置いた。
【0099】
このインキュベーションに続いて、フラスコを氷上に置き、そして細胞懸濁液をプラスチックの移動ピペットで、Swiss Nitex Nylon Monofilament (75m)を備えたNitexフィルター上に移した。濾液を15ml Falcon試験管内に捕集した。コラゲナーゼ溶液(6.5mg コラゲナーゼ/5ml EBSS)の第2アリコート(2.5ml)を、50ml三角フラスコ内に残っている刻み組織に添加し、ピペットを用いて静かに撹拌し、10分間にわたってインキュベートし、そして上述のように濾過した。2種の濾液を合体させ、そして室温で5分間にわたって、臨床用遠心分離機内で遠心分離した。約2mlの上澄み以外の全てを取り出して廃棄し、そして沈澱した細胞を、残存している2mlの上澄み中に再懸濁させた。
【0100】
MEM 5mlを添加することにより、細胞を2回洗浄し、そして上述のように遠心分離して再懸濁させた。洗浄した細胞を、50ml三角フラスコ内にグルタミン10mmを含有するMEM 30ml中に再懸濁させ、そして95%空気、5%CO2下で震盪させることなしに、37℃で1時間にわたってインキュベートした。次いで、上述のように遠心分離することにより細胞を沈澱させ、そして10mMのグルタミンを含有するMEM中に再懸濁させた。
【0101】
分散された細胞の濃度を、血球計を用いて測定し、そしてトリパンブルー色素を使用して生存可能性を評価した。2〜5 x 105個の細胞のアリコートを、12 x 75mm 試験管内に入れ、そして95%空気、5%CO2下で、震盪させることなしに、37℃で2〜5時間にわたってインキュベートした。DNAラダー形成度を評価することにより、この期間におけるアポトーシスの進行をモニタリングした。
【0102】
〈DNAラダー形成による、ラット黄体中のアポトーシスの視覚化〉
DNAラダー形成によって、アポトーシス度を見極めた。製造元の指示書に従ってQIAamp DNA Blood Kit (Qiagen)を使用して、分散された黄体細胞から、又は摘出された黄体組織から、ゲノムDNAを分離した。PGF-2α処理によるアポトーシス誘発前、並びにアポトーシス誘発から1時間後及び24時間後に、黄体組織を摘出した。DNA 500ngを、0.2μCi[α-32P]dCTP、1mM Tris、0.5mM EDTA、3単位のクレノウ酵素、及びそれぞれ0.2pMのdATP、dGTP及びdTTPと一緒に、30分間にわたって室温でインキュベートすることにより、分離されたDNAに末端標識付けを施した。Sambrook他に従って、1ml Sepadex G-50カラムに試料を通すことにより、組み入れられなかったヌクレオチドを除去した。次いで試料をTris-アセテート-EDTA(1.8%)ゲル電気泳動法によって分離した。ゲルを真空下で、30分間にわたって室温で乾燥させ、そして24時間にわたって-80℃でx線フィルムに当てた。
【0103】
1試験の場合、過剰排卵させたラット黄体中のアポトーシス度を、PGF-2αの注射から0, 1又は24時間後に試験した。0時間対照の場合、PGF-2α注射なしで卵巣を除去した。図16に示すように、アポトーシスと関連するヌクレアーゼ活性を反映する低分子量DNA断片は、PGF-2α処理前に摘出された対照黄体組織中では明らかでないが、しかし、アポトーシス誘発後1時間以内には認識可能であり、そして、アポトーシス誘導から24時間後までには明白となる。この図面では、上側の図は、ラット黄体アポトーシス特異的DHS cDNAの32P-dCTP標識3'-未翻訳領域でプローブされたノーザン・ブロットのオートラジオグラフである。下側の図は、臭化エチジウムで染色された、総RNAのゲルを示す。各レーンは10μg RNAを含有する。データは、血清回収に続いてeIF-5A転写物のダウンレギュレーションが生じることを示す。
【0104】
別の試験の場合、対応する対照動物を、PGF-2αの代わりに生理食塩水で処理した。生理食塩水又はPGF-2αによる処理から15分後に、動物から黄体を取り出した。動物からの組織取り出し後3時間目及び6時間目に、黄体からゲノムDNAを分離した。PGF-2α処理済動物からの組織取り出しから6時間後に、DNAラダー形成、及びゲノムDNAの末端標識増大が明らかになるが、組織取り出し後3時間目ではこれは明らかでない。図17を参照されたい。黄体がPGF-2α処理から15分後に摘出され、EBSS(Gibco)中のin vitro条件下で6時間にわたって維持されると、アポトーシスを反映するDNAラダー形成がやはり明らかになる。アポトーシスと関連するヌクレアーゼ活性も、ゲノムDNAのより広い範囲の末端標識から明らかである。
【0105】
別の試験の場合、500μgのPGF-2αを皮下注射することにより、過剰排卵を誘発した。等容積の生理食塩水で対照ラットを処理した。15分〜30分後、卵巣を摘出し、コラゲナーゼとともに刻んだ。PGF-2αで処理されたラットに由来する分散された細胞を、10mmグルタミン+10mmスペルミジン中で1時間にわたってインキュベートし、そしてスペルミジンなしの10mmグルタミン中でさらに5時間にわたってインキュベートする(レーン2)か、或いは、10mmグルタミン+10mmスペルミジン中で1時間にわたってインキュベートし、そして10mmグルタミン+1mmスペルミジン中でさらに5時間にわたってインキュベートした(レーン3)。生理食塩水で処理されたラットに由来する対照細胞を、コラゲナーゼと一緒に分散し、そして1時間にわたって、そしてさらに5時間にわたってグルタミンだけの中でインキュベートした。クレノウ酵素を使用して、それぞれの試料に由来する500ナノグラムのDNAを[α-32P]-dCTPで標識付けし、1.8%アガロース・ゲル上で分離し、そして24時間にわたってフィルムに当てた。その結果を図18に示す。
【0106】
さらに別の試験の場合、体重100g当たり1mgのスペルミジンを、過剰排卵させたラットに皮下注射し、500μgのPGF-2αの皮下注射の24, 12及び2時間前に、体重100g当たり0.333mgの等しい3回投与量で供給した。対照ラットを3つの集合、つまり:注射なし;スペルミジン注射3回、PGF-2αはなし;PGF-2α処理前に等容積の食塩水を3回注射、の集合に分けた。プロスタグランジン処理から1時間35分後又は3時間45分後に、ラットから卵巣を摘出し、これらをDNAの分離のために使用した。クレノウ酵素を使用して、それぞれの試料に由来する500ナノグラムのDNAを[α-32P]-dCTPで標識付けし、1.8%アガロース・ゲル上で分離し、そして24時間にわたってフィルムに当てた:レーン1、注射なし(レーン3〜5と同時に動物を犠牲にした);レーン2、スペルミジンを3回注射(レーン3〜5と同時に動物を犠牲にした);レーン3、生理食塩水を3回注射後に、PGF-2αを注射(PGF-2α処理から1時間35分後に動物を犠牲にした);レーン4、スペルミジンを3回注射後にPGF-2αを注射(PGF-2α処理から1時間35分後に動物を犠牲にした);レーン5、スペルミジンを3回注射後にPGF-2αを注射(PGF-2α処理から1時間35分後に動物を犠牲にした);レーン6、スペルミジンを3回注射後にPGF-2αを注射(PGF-2α処理から3時間45分後に動物を犠牲にした);レーン7、スペルミジンを3回注射後にPGF-2αを注射(PGF-2α処理から3時間45分後に動物を犠牲にした)。結果を図19に示す。
【0107】
〈RNA分離〉
PGF-2αのアポトーシス誘発後の種々の時点でラットから摘出された黄体組織から、総RNAを分離した。手短に言えば、組織(5g)を液体窒素中で粉砕した。粉砕された粉末を30mlのグアニジニウム緩衝液(4M グアニジニウムイソチオシアネート、2.5mM NaOAc pH8.5, 0.8% β-メルカプトエタノール)と混合した。混合物を4つのMracloth 層を通して濾過し、そして4℃で30分間にわたって10,000gで遠心分離した。次いで上澄みに、20時間にわたって塩化セシウム密度勾配遠心分離を11,200gで施した。ペレット化されたRNAを75% エタノールですすぎ、600mlのDEPC処理水中に再懸濁させ、そして1.5mlの95%エタノール及び60mlの3M NaOAcでRNAを-70℃で析出した。
【0108】
〈ゲノムDNA分離及びラダー形成〉
製造元の指示書に従ってQIAamp DNA Blood Kit (Qiagen)を使用して、抽出された黄体組織から、又は分散された黄体細胞から、ゲノムDNAを分離した。DNA 500ngを、0.2μCi[α-32P]dCTP、1mM Tris、0.5mM EDTA、3単位のクレノウ酵素、及びそれぞれ0.2pMのdATP、dGTP及びdTTPと一緒に、30分間にわたって室温でインキュベートすることにより、DNAに末端標識付けを施した。Maniatis他によって記載された方法に従って、1ml Sephadex G-50カラムに試料を通すことにより、組み入れられなかったヌクレオチドを除去した。次いで試料をTris-アセテート-EDTA(2%)ゲル電気泳動法によって分離した。ゲルを真空下で、30分間にわたって室温で乾燥させ、そして24時間にわたって-80℃でx線フィルムに当てた。
【0109】
〈プラスミドDNA分離、DNA配列決定〉
上述のSambrook他によって記載されたアルカリ溶菌法を用いて、プラスミドDNAを分離した。ジデオキシ配列決定法を用いて、完全長ポジティブcDNAクローンを配列決定した。Sanger他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74:5463-5467。オープン・リーディング・フレームを蓄積して、BLASサーチ(GenBank, Bethesda, MD)を用いて分析し、そしてBCM Search Launcher:Multiple Sequence Alignments Pattern-Induced Multiple Alignment Method(F. Corpet, Nuc. Acids Res., 16:10881-10890, (1987))を用いて、配列アラインメントを達成した。配列及び配列アラインメントを図5〜11に示す。
【0110】
〈ラット黄体RNAのノーザン・ブロット・ハイブリッド形成〉
アポトーシスの種々の段階におけるラット黄体から分離された20ミリグラムの総RNAを、1%変性ホルムアルデヒド・アガロース・ゲル上で分離し、そしてナイロン膜上に固定化した。ランダム・プライマー・キット(Boehringer)を使用して32P-dCTPで標識付けされた完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5A cDNA(SEQ ID NO:1)を使用することにより、膜7 x 107をプローブした。或いは、ランダム・プライマー・キット(Boehringer)を使用して32P-dCTPで標識付けされた完全長ラット・アポトーシス特異的DHS cDNA(SEQ ID NO:6)を使用することにより、膜(7 x 107 cpm)をプローブした。膜を1 x SSC、0.1% SDSにより室温で1回、そして0.2 x SSC、0.1% SDSにより65℃で3回洗浄した。膜を乾燥させ、そして一晩にわたって-70℃でX線フィルムに当てた。
【0111】
図から明らかなように、eIF-5A及びDHSは両方とも、黄体組織をアポトーシス化する際にアップレギュレートされる。アポトーシス特異的eIF-5Aの発現量は、PGF-2α処理によるアポトーシス誘発後に著しく高められる。すなわちアポトーシス特異的eIF-5Aの発現量は、ゼロ時点においては低く、処理から1時間以内に著しく増大し、処理から8時間以内にはさらに増大し、そして処理から24時間以内には僅かに増大した(図14)。DHSの発現量は、ゼロ時点においては低く、処理から1時間以内に著しく増大し、処理から8時間以内にはさらに増大し、そして処理から24時間以内には再び僅かに増大した(図15)。
【0112】
〈酵母、菌類及びヒトeIF-5A配列に基づくプライマーを使用した、アポトーシス性ラット黄体RT-PCR生成物の生成〉
酵母、菌類及びヒトeIF-5A配列から構成された一対のオリゴヌクレオチド・プライマーを使用するRT-PCRによって、アポトーシス性ラット黄体RNA鋳型から、遺伝子の3'末端に対応する部分長アポトーシス特異的eIF-5A配列(SEQ ID NO:11)を生成した。ラットeIF-5A遺伝子の3'末端を分離するために使用される上流プライマーは、20ヌクレオチド縮重プライマー:TCSAARACHGGNAAGCAYGG3'(SEQ ID NO:9)であり、上記中、SはC及びGから選択され;RはA及びGから選択され;HはA, T及びCから選択され;YはC及びTから選択され;そしてNは任意の核酸である。ラットeIF-5A遺伝子の3'末端を分離するために使用される下流プライマーは、42ヌクレオチド:5'GCGAAGCTTCCATGGCTCGAGTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT3'(SEQ ID NO:10)を含有する。逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を実施した。手短に言えば、5mgの下流プライマーを使用して、cDNAの第1ストランドを合成した。次いで、上流プライマー及び下流プライマーの両方を使用するRT-PCRの鋳型として、第1ストランドを使用した。
【0113】
アガロース・ゲル上でのRT-PCR生成物の分離は、900bp断片の存在を明らかにした。この断片をpBluescript(登録商標)(Stratagene Cloning Systems, LaJolla, CA)中に、平滑末端ライゲーションを用いてサブクローニングし、そして配列決定した(SEQ ID NO:11)。3'末端のcDNA配列はSEQ ID NO:11であり、3'末端のアミノ酸配列はSEQ ID NO:12である。図1〜2を参照されたい。
【0114】
アポトーシス性ラット黄体RNA鋳型から、RT-PCTによって、遺伝子の5'末端に対応して3'末端とオーバーラップする部分長アポトーシス特異的eIF-5A配列(SEQ ID NO:15)を生成した。5'プライマーは、ヒトeIF-5A配列から構成された配列5'CAGGTCTAGAGTTGGAATCGAAGC3'(SEQ ID NO:13)を有する24-マーである。3'プライマーは、3'末端RT-PCR断片に従って構成された配列5'ATATCTCGAGCCTTG ATTGCAACAGCTGCC3'(SEQ ID NO:14)を有する30-マーである。逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を実施した。手短に言えば、5mgの下流プライマーを使用して、cDNAの第1ストランドを合成した。次いで、上流プライマー及び下流プライマーの両方を使用するRT-PCRの鋳型として、第1ストランドを使用した。
【0115】
アガロース・ゲル上でのRT-PCR生成物の分離は、500bp断片の存在を明らかにした。この断片をpBluescript(登録商標)(Stratagene Cloning Systems, LaJolla, CA)中に、上流プライマー内に存在するXbaIクローニング部位及び下流プライマー内に存在するXhoIクローニング部位を用いてサブクローニングし、そして配列決定した(SEQ ID NO:15)。5'末端のcDNA配列はSEQ ID NO:15であり、5'末端のアミノ酸配列はSEQ ID NO:16である。図2を参照されたい。
【0116】
ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aの3'及び5'端部の配列(それぞれSEQ ID NO:11及びSEQ ID NO:15)はオーバーラップし、完全長cDNA配列(SEQ ID NO:1)を生じさせる。この完全長配列を整列させ、GeneBankデータベースの配列と比較する。図1〜3を参照されたい。cDNAクローンは、算出分子量16.8KDaの154アミノ酸ポリペプチド(SEQ ID NO:2)をコードする。RT-PCRによって得られたラット・アポトーシス特異的黄体eIF-5A遺伝子の完全長cDNAに対応するヌクレオチド配列SEQ ID NO:1を図3に示す。対応する誘導されたアミノ酸配列はSEQ ID NO:2である。eIF-5Aの誘導された完全長アミノ酸を、ヒト及びマウスのeIF-5aと整列させる。図8〜10を参照されたい。
【0117】
〈ヒトDHS配列に基づくプライマーを使用した、アポトーシス性ラット黄体RT-PCR生成物の生成〉
ヒトDHS配列から構成された一対のオリゴヌクレオチド・プライマーを使用するRT-PCRによって、アポトーシス性ラット黄体RNA鋳型から、遺伝子の3'末端に対応する部分長アポトーシス特異的DHS配列(SEQ ID NO:6)を生成した。5'プライマーは、配列5'GTCTGTGTATTATTGGGCCC3'(SEQ ID NO:17)を有する24-マーである。3'プライマーは、配列5'GCGAAGCTTCCATGGCTCTAGTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT3'(SEQ ID NO:18)を有する42-マーである。逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を実施した。手短に言えば、5mgの下流プライマーを使用して、cDNAの第1ストランドを合成した。次いで、上流プライマー及び下流プライマーの両方を使用するRT-PCRの鋳型として、第1ストランドを使用した。
【0118】
アガロース・ゲル上でのRT-PCR生成物の分離は、606bp断片の存在を明らかにした。この断片をpBluescript(登録商標)(Stratagene Cloning Systems, LaJolla, CA)中に、平滑末端ライゲーションを用いてサブクローニングし、そして配列決定した(SEQ ID NO:6)。RT-PCRによって得られたラット・アポトーシス特異的黄体DHS遺伝子の部分長cDHAに対応するヌクレオチド配列(SEQ ID NO:6)を図4に示す。対応する誘導されたアミノ酸配列はSEQ ID NO:7である。
【0119】
〈ゲノムDNAの分離及びサザン分析〉
摘出されたラット卵巣から、サザン・ブロッティングのためのゲノムDNAを分離した。ほぼ100mgの卵巣組織を小片に細分化して15mlの管内に入れた。組織懸濁液を静かに振盪させながら、細胞を1mlのPBSで2回洗浄し、次いでピペットを使用して、PBSを除去した。組織を2.06mlのDNA緩衝液(0.2M Tris-HCl pH 8.0及び0.1mM EDTA)中に再懸濁し、そして240μlの10% SDS及び100μlのプロテイナーゼK(Boehringer Manheim; 1mg/ml)を添加した。組織を45℃で一晩にわたって、振盪水浴内に入れた。次の日に、さらに100μlのプロテイナーゼK(10mg/ml)を添加し、そして組織懸濁液を45℃で更なる4時間にわたって水浴内でインキュベートした。インキュベーション後、組織懸濁液を、フェノール:クロロホルム:イソ-アミルアルコール(25:24:1)で1回、そして等容積のクロロホルム:イソ-アミルアルコール(24:1)で1回抽出した。抽出に続いて10分の1の容積の3M酢酸ナトリウム(pH5.2)と2容積のエタノールとを添加した。ブンゼン・バーナーを用いてフック内にシールされて形成されたガラス・ピペットを使用することにより、溶液からDNAスレッドを引き出し、そしてDNAを清浄なミクロ遠心分離管内に移した。DNAを70%エタノール中で一度洗浄し、そして10分間にわたって空気乾燥させた。DNAぺレットを500μlの10mM Tris-HCl(pH8.0)中に溶解させ、10μlのμlのRNアーゼA(10mg/ml)を添加し、そしてDNAを1時間にわたって37℃でインキュベートした。DNAをフェノール:クロロホルム:イソ-アミルアルコール(25:24:1)で1回抽出し、10分の1の容積の3M酢酸ナトリウム(pH5.2)と2容積のエタノールとを添加することにより、DNAを抽出した。10分間にわたって13,000 x gで4℃で遠心分離することにより、DNAをぺレット化した。DNAぺレットを70%エタノール中で1回洗浄し、そしてDNAを4℃で一晩にわたって回転させることにより、200μlの10mM Tris-HCl(pH8.0)中に溶解させた。
【0120】
サザン・ブロット分析に際して、ラット卵巣から分離されたゲノムDNAを、内在性遺伝子中では切断しないか、又は一度だけしか切断しない種々の制限酵素で消化した。これを達成するために、10μgのゲノムDNA、10μlの10X反応緩衝液、及び100Uの制限酵素を5〜6時間にわたって総反応容積200μlで反応させた。消化されたDNAを0.7%アガロース・ゲル上にローディングし、これに40ボルトで6時間にわたって、そして15ボルトで一晩にわたって電気泳動を施した。電気泳動後、ゲルを10分間にわたって0.2N HCl中で脱プリン化し、続いて変性溶液(0.5M NaOH, 1.5M NaCl)中で15分間の洗浄を2回、そして中和緩衝液(1.5M NaCl, 0.5M Tris-HCl pH7.4)中で15分間の洗浄を2回行った。DNAをナイロン膜に移し、そして膜をハイブリッド形成溶液{40% ホルムアミド、6 X SSC、5Xデンハルト溶液(1 Xデンハルト溶液は0.02% Ficoll, 0.02% PVP、及び0.02%BSA)、0.5% SDS、及び1.5mgの変性サケ精子DNA}中で前ハイブリッド形成した。ラットeIF-5A cDNAの3'UTRの700bp PCR断片(650bpの3'UTR、及び50bpのコーディング)に、ランダム・プライミングによって[a-32P]-dCTPを標識付けし、これを1 X 106cpm/mlで膜に加えた。
【0121】
同様に、ラットDHS cDNAの606bp PCR断片(450bpのコーティング、及び156bpの3'UTR)に、[α-32P]-dCTPをランダム・プライム標識付けし、これを1 X 106cpm/mlで第2の同一膜に加えた。ブロットを42℃で一晩にわたってハイブリッドし、次いで42℃で2 X SSC及び0.1% SDSによって2回洗浄し、そして42℃で1 X SSC及び0.1% SDSによって2回洗浄した。次いでブロットを3〜10日間にわたってフィルムに当てた。
【0122】
ラット黄体ゲノムDNAを、図20で示すような制限酵素で切断し、そして、32P-dCTP標識付き完全長eIF-5A cDNAでプローブした。高緊縮性条件下でのハイブリッド形成は、完全長cDNAプローブと、各制限酵素で消化されたDNA試料に対応するいくつかの制限断片とのハイブリッド形成を明らかにし、eIF-5Aのいくつかのイソ形の存在を示した。特に注目すべきなのは、ラット・ゲノムDNAが、アポトーシス特異的eIF-5Aのオープン・リーディング・フレーム内の制限部位を有するEcoRVで消化されたときに、eIF-5Aのアポトーシス特異的イソ形の2つの制限断片がサザン・ブロットにおいて検出できることであった。これら2つの断片は、図20に二重矢印で示されている。eIF-5Aのアポトーシス特異的イソ形に対応する制限断片は、EcoR1及びBamH1で標識付けされたレーン、つまりオープン・リーディング・フレーム内に切断部位がない制限酵素において単一の矢印で示されている。これらの結果は、アポトーシス特異的eIF-5Aがラットにおける単一のコピー遺伝子であることを示唆する。図5〜13に示すように、eIF-5Aは種を横切って高保守的であり、従って、任意の種内のイソ形間の保存量が顕著であることが予期される。
【0123】
図21は、32P-dCTP標識付き部分長ラット黄体アポトーシス特異的DHS cDNAでプローブされたラット・ゲノムDNAを示すサザン・ブロットである。ゲノムDNAをEcoRV、つまり、プローブとして使用された部分長cDNAを切断しない制限酵素で切断した。2つの制限断片が明らかであり、遺伝子の2つのコピーがあること、又は遺伝子がEcoRV部位を有するイントロンを含有すること、を示す。
【0124】
実施例2
この実施例は、アポトーシス特異的eIF-5A及びDHSによるアポトーシスの調節を実証する。
【0125】
〈COS-7細胞の培養、及びRNAの分離〉
野生型T抗原をコードするSV40の突然変異体で形質転換された、アフリカ・ミドリザル腎臓線維芽様細胞系であるCOS-7を、全てのトランスフェクション系試験に使用した。1リットル当たり0.584グラムのL-グルタミン、1リットル当たり4.5グラムのグルコース及び0.37%の重炭酸ナトリウムを有するDulbeccoの改質イーグル培地中で、COS-7を培養した。培地に10% ウシ胎仔血清(FBS)及び100単位のペニシリン/ストレプトマイシンを補充した。5%CO2及び95%空気の湿潤環境において37℃で、細胞を成長させた。0.25%トリプシン及び1mM EDTAの溶液で付着細胞を取り外すことにより、細胞を3〜4日ごとに継代培養した。取り外された細胞を、新鮮な培地を有する新しい培養皿内に分割比1:10で小分けした。
【0126】
RNAの分離のために使用されるべきCOS-7細胞を、150mm組織培養皿(Corning)内で成長させた。トリプシン-EDTAの溶液でこれらを取り外すことにより、細胞を収穫した。取り外した細胞を遠心分離管内に捕集し、そして3000rmpで5分間にわたって遠心分離することによりぺレット化した。上澄みを除去し、そして細胞ぺレットを液体窒素中で急速冷凍した。製造元の指示書に従ってGenElute Mammalian Total RNA Miniprep kit(Sigma)を使用して、冷凍細胞からRNAを分離した。
【0127】
〈組換えプラスミドの構成、及びCOS-7細胞のトランスフェクション〉
図21に示す、哺乳動物エピトープ標識発現ベクターpHM6(Roche Molecular Biochemicals)を使用して、センス配向のラット・アポトーシスeIF-5Aの完全長コード配列と、アンチセンス配向のラット・アポトーシスeIF-5Aの3'未翻訳領域(UTR)とを担持する組換えプラスミドを構成した。ベクターは下記のものを含有する:CMVプロモーター-ヒト・サイトメガロウィルス即時-初期プロモーター/エンハンサー;HA-インフルエンザ凝集素に由来するノナペプチド・エピトープ標識;BGH pA-ウシ成長ホルモン・ポリアデニル化シグナル;fl ori- fl起源;SV40 ori-SV40初期プロモーター及び起源;Neomycin-ネオマイシン耐性(G418)遺伝子;SV40pA-SV40ポリアデニル化シグナル;Col E1-Co1E1起源;Ampicillin-アンピシリン耐性遺伝子。pBluescriptにおいて起源ラットeIF-5A RT-PCR断片からPCRを行うことにより、ラット・アポトーシスeIF-5Aの完全長コード配列及びラット・アポトーシスeIF-5Aの3'UTRを増幅した(SEQ ID NO:1)。完全長eIF-5Aを増幅するために使用されるプライマーは下記の通りであった:順方向5'GCCAAGCTTAATGGCAGATGATTTGG3'(HIND3)(SEQ ID NO:22)及び逆方向5'CTGAATTCCAGTTATTTTGCCATGG3'(ECOR1)(SEQ ID NO:23)。3'UTRラットeIF-5Aを増幅するために使用されるプライマーは下記の通りであった:順方向5'AATGAATTCCGCCATGACAGAGGAGGC3'(EcoR1)(SEQ ID NO:24)及び逆方向5'GCGAAGCTTCCATGGCTCGAGTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT3'(HIND3)(SEQ ID NO:10)。
【0128】
アガロース・ゲル電気泳動後に分離された完全長ラットeIF-5A PCR生成物は430bp長であるのに対し、3'UTRラットeIF-5A PCR生成物は697bp長であった。両PCR生成物をpHM6のHind 3及びEcoR1部位中にサブクローニングすることにより、pHM6-完全長eIF-5A及びpHM6-アンチセンス3'UTReIF-5Aを形成した。多クローニング部位の上流側に存在するインフルエンザ凝集素(HA)に由来するノナペプチド・エピトープ標識と一緒にイン・フレームで、完全長ラットeIF-5A PCR生成物をサブクローニングすることにより、抗-[HA]-ペルオキシダーゼ抗体を使用した組換えタンパク質の検出を可能にした。ヒト・サイトメガロウィルス即時-初期プロモーター/エンハンサーによって発現を駆動し、これにより哺乳動物細胞系における高レベルの発現を保証する。プラスミドはまた、安定的なトランスフェクタントの選択を可能にするネオマイシン耐性(G418)遺伝子、及びSV40大型T抗原、例えばCOS-7を発現させる細胞中のエピソーム複製を可能にするSV40初期プロモーター及び起源を特徴とする。
【0129】
トランスフェクション試験に使用されるべきCOS-7細胞を、24ウェル型細胞培養プレート(Corning)内に培養することにより、細胞をタンパク質抽出のために使用するか、或いは、4チャンバ型培養スライド(Falcon) 内に培養することにより、細胞を染色のために使用した。10%FBSが補充されているがしかしペニシリン/ストレプトマイシンを欠いているDMEM培地中で、細胞を密集率50%〜70%になるまで成長させた。42.5μlの無血清DMEM中にプラスミドDNA 0.32μgを希釈し、そして混合物を15分間にわたって室温でインキュベートすることにより、24ウェル型プレートの1つのウェル又は培養スライドに十分なトランスフェクション培地を調製した。トランスフェクション試薬LipofectAMINE(Gibco, BRL)1.6μlを無血清DMEM42.5μl中に希釈し、そして室温で5分間にわたってインキュベートした。5分後、LipofectAMINE混合物をDNA混合物に添加し、室温で30〜60分間にわたって一緒にインキュベートした。トランスフェクション培地を上塗りする前に、トランスフェクトされるべき細胞を無血清DMEMで1回洗浄し、そして細胞を成長チャンバ内に4時間戻した。
【0130】
インキュベーション後、0.17mlのDMEM + 20% FBSを細胞に添加した。細胞をさらに40時間培養した後、アポトーシスを誘発してその後染色するか、或いはこれらの細胞を収穫してウェスタン・ブロット分析に使用した。対照として、偽トランスフェクションも実施した。この偽トランスフェクションでは、トランスフェクション培地からプラスミドDNAを省いた。
【0131】
〈タンパク質抽出及びウェスタン・ブロッティング〉
PBS(8g/ NaCl, 0.2g/L KCl, 1.44g/L Na2HPO4、及び0.24g/L KH2PO4)中で細胞を2回洗浄し、次いで高温SDSゲル装入用緩衝液150μl (50mM Tris-HCl pH 6.8, 100mM ジチオトレイトール、2% SDS、0.1%ブロモフェノール・ブルー、及び10%グリセロール)を添加することにより、トランスフェクト済細胞から、ウェスタン・ブロッティングのためにタンパク質を分離した。細胞溶解物をミクロ遠心分離管中に捕集し、10分間にわたって95℃で加熱し、次いで10分間にわたって13,000 x gで遠心分離した。上澄みを新鮮なミクロ遠心分離管に移し、そして使用準備ができるまで-20℃で保存した。
【0132】
ウェスタン・ブロッティングに際しては、2.5又は5μgの総タンパク質を12% SDS-ポリアクリルアミド・ゲル上で分離した。分離されたタンパク質をポリビニリデンジフルオリド膜に移した。次いで、膜を1時間にわたってブロッキング溶液(5%脱脂粉乳、PBS中0.02%アジ化ナトリウム)中でインキュベートし、PBS-T(PBS + 0.05% Tween-20)中で15分間にわたって3回洗浄した。膜をPBS-T中で4℃で一晩にわたって保存した。翌日室温まで加熱したあと、膜を30秒間にわたって1μg/mlのポリビニルアルコール中でブロックした。膜を脱イオン水中で5回すすぎ、次いでミルクのPBS5%溶液中で30分間にわたってブロックした。一次抗体をミルクのPBS5%溶液中で30分間にわたって前インキュベートした後、膜と一緒にインキュベートした。
【0133】
いくつかの一次抗体を使用した。抗-[HA]-ペルオキシダーゼ抗体(Roche Molecular Biochemicals)を1:5000の希釈率で使用することにより、組換えタンパク質の発現を検出した。この抗体はペルオキシダーゼに接合されるので、二次抗体は必要でなく、ブロットを洗浄して化学発光により発色させた。使用された他の一次抗体は、p53(Ab-6)、Bcl-2(Ab-1)、及びc-Myc(Ab-2)を認識する、Oncogeneから入手されたモノクローナル抗体である。p53に対するモノクローナル抗体は、0.1μg/mlの希釈率で使用され、そしてBcl-2及びc-Mycに対するモノクローナル抗体は両方とも、0.83μg/mlの希釈率で使用される。60〜90分間にわたって一次抗体と一緒にインキュベートした後、膜をPBS-T中で15分間にわたって3回洗浄した。次いで、二次抗体をミルクのPBS1%溶液中に希釈し、そして膜と一緒に60〜90分間にわたってインキュベートした。p53(Ab-6)を一次抗体として使用したときには、二次抗体は、希釈率1:1000でアルカリ性ホスファターゼ(Rockland)に接合されたヤギ抗マウスIgGであった。Bcl-2(Ab-1)及びc-Myc(Ab-2)を一次抗体として使用したときには、二次抗体として、ペルオキシダーゼ(Sigma)に接合されたウサギ抗マウスIgGを希釈率1:5000で使用した。二次抗体と一緒にインキュベートした後、膜をPBS-T中で3回洗浄した。
【0134】
2つの検出法、すなわち比色分析法及び化学発光法を用いることにより、ブロットを発色させた。アルカリ性ホスファターゼに接合された二次抗体とともに、一次抗体としてp53(Ab-6)を使用した場合にのみ、比色分析法を使用した。0.33mg/mLのニトロ・ブルー・テトラゾリウム、0.165mg/mLの5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート、100mM NaCl、5mM MgCl2及び100mM Tris-HCl(pH9.5)の溶液中で暗所においてブロットをインキュベートすることにより、結合された抗体を視覚化した。ブロットをPBS中の2mM EDTA中でインキュベートすることにより、色反応を停止させた。抗-[HA]-ペルオキシダーゼBcl-2(Ab-1)及びc-Myc(Ab-2)を含む全てのその他の一次抗体に対して、化学発光検出法を用いた。ECL Plus Westernブロッティング検出キット(Amersham Pharmacia Biotech)を使用することにより、ペルオキシダーゼに接合された抗体を検出した。手短に言えば、膜を軽くブロット乾燥させ、次いで40:1の試薬Aと試薬Bとの混合物と一緒に5分間にわたって暗所でインキュベートした。膜をブロット乾燥させ、アセテート・シート間に入れ、10秒〜10分間の時間にわたってX線フィルムに当てた。
【0135】
〈COS7細胞におけるアポトーシス誘発〉
トランスフェクトされたCOS-7においてアポトーシスを誘発するために、2つの方法、つまり血清剥奪及びアクチノマイシンD streptomyces sp(Calbiochem)処理を利用した。両処理に関して、トランスフェクションから40時間後に培地を取り出した。血清窮乏試験に際しては、培地を、血清がなく抗生物質もないDMEMと置き換えた。10% FBSが補充されている、抗生物質なしのDMEM中で成長した細胞を、対照として使用した。アクチノマイシンDによるアポトーシス誘発に際しては、培地を、10% FBS及びメタノール中に溶解された1μg/mlアクチノマイシンDが補充されている、抗生物質なしのDMEMと置き換えた。10% FBS及び等容積のメタノールが補充されている、抗生物質なしのDMEM中で対照細胞を成長させた。両方法に関して、ヘキスト(Hoescht)又はアネキシン(Annexin) V-Cy3で染色することにより、48時間後にアポトーシス細胞のパーセンテージを検出した。図22に示したように、アポトーシス誘発はまた、ノーザン・ブロット分析によって確認された。
【0136】
〈ヘキスト(Hoescht)染色〉
核染色剤ヘキスト(Hoescht)を使用して、トランスフェクトされたCOS-7細胞の核を標識付けすることにより、形態的特徴、例えば核の断片化及び縮合に基づいてアポトーシス細胞を識別した。無水メタノールと氷酢酸との3:1混合物から成る固定剤を、使用直前に調製した。培養スライド上で成長するCOS-7細胞の培地に、等容積の固定剤を添加し、そして2分間にわたってインキュベートした。細胞から培地/固定剤混合物を取り出し、廃棄し、そして1mlの固定剤を細胞に添加した。5分後、固定剤を廃棄し、そして1mlの新鮮な固定剤を細胞に添加し、そして5分間にわたってインキュベートした。固定剤を廃棄し、そして細胞を4分間にわたって空気乾燥させた後、1mlのヘキスト(Hoescht)染色剤(PBS中の0.5μg/ml ヘキスト(Hoescht) 33258)を添加した。暗所における10分間のインキュベーション後、染色溶液を廃棄し、そしてスライドを脱イオン水で1分間にわたって3回洗浄した。洗浄後、1mlのマッキルバイン(McIlvaine)緩衝液(0.021Mクエン酸、0.058M Na2HPO4.7H2O;pH5.6)を細胞に添加し、そしてこれらを20分間にわたって暗所にインキュベートした。緩衝液を廃棄し、細胞を暗所で5分間にわたって空気乾燥させ、培養スライドのウェルを分離するチャンバを除去した。蛍光用培地を組み込んだVectashield(Vector Laboratories)を数滴、スライドに添加し、カバースリップを被せた。UVフィルターを使用して、蛍光顕微鏡下で、染色された細胞を見た。明るく染色又は断片化された核を有する細胞をアポトーシス細胞としてスコアリングした。
【0137】
〈アネキシン(Annexin) V-cy3染色〉
アネキシン(Annexin) V-Cy3アポトーシス検出キット(Sigma)を使用して、アポトーシス細胞上の外在化ホスファチジルセリンを蛍光標識付けした。下記改変とともに、製造元の指示に従ってキットを使用した。手短に言えば、4つのチャンバ培養スライド上で成長するトランスフェクト済COS-7細胞を、PBSで2回洗浄し、そして1 X 結合緩衝液で3回洗浄した。150μlの染色溶液(1 X 結合緩衝液中の1μg/ml AnnCy3)を添加し、そして細胞を10分間にわたって暗所でインキュベートした。次いで染色溶液を除去し、そして細胞を1 X 結合緩衝液で5回洗浄した。チャンバ壁を培養スライドから除去し、数滴の1 X 結合緩衝液を細胞上に置き、カバースリップを被せた。緑フィルターを使用した蛍光顕微鏡分析法によって、染色された細胞を分析することにより、ポジティブに染色された(アポトーシス)細胞の赤蛍光を視覚化した。可視光下で細胞数をカウントすることにより、総細胞個体数を検出した。
【0138】
実施例3
この実施例は、アポトーシス特異的eIF-5A及びDHSによるアポトーシスの調節を実証する。
【0139】
前述の実施例に記載された一般的な手順及び方法を用いて、図23は、COS-7細胞の一時的トランスフェクションの手順を示すフローチャートである。このフローチャートにおいて、血清なしの培地中の細胞を、lipofectAMINE中のプラスミドDNA中で4時間にわたってインキュベートし、血清を添加し、そしてこれらの細胞をさらに40時間にわたってインキュベートした。次いで、分析の前にさらに48時間にわたって、血清を含有する通常の培地中で細胞をインキュベートする(すなわち更なる処理はない)か、48時間にわたって血清を剥奪することにより分析前にアポトーシスを誘発するか、或いは、48時間にわたってアクチノマイシンで処理することにより、分析前にアポトーシスを誘発した。
【0140】
図22は、pHM6をトランスフェクトした後の、COS-7細胞中の外来タンパク質の一次的発現を示すウェスタン・ブロットである。偽トランスフェクション、又はpHM6-LacZ、pHM6-アンチセンス3'rF5A(pHM6-アンチセンス3'UTRラット・アポトーシスeIF-5A)、又はpHM6-センスrF5A(pHM6-完全長ラット・アポトーシスeIF-5A)、によるトランスフェクションから48時間後に、COS-7細胞からタンパク質を分離した。各試料から5μgのタンパク質をSDS-PAGEによって断片化し、PVDF膜に移し、そして抗-[HA]-ペルオキシダーゼでウェスタン・ブロットした。結合された抗体を化学発光によって検出し、30秒間にわたってX線フィルムに当てた。LacZ(レーン2)及びセンス・ラット・アポトーシスeIF-5A(レーン4)の発現を明らかに見ることができる。
【0141】
上述のように、COS-7細胞に偽トランスフェクトするか又はpHM6-センスrF5A(pHM6-完全長ラットeIF-5A)をトランスフェクトした。トランスフェクトから40時間後、48時間にわたって血清を回収することにより、細胞にアポトーシスを誘発した。蛍光測定等質カスパーゼ・アッセイ・キット(Roche Diagnostics)を使用して、トランスフェクト細胞抽出物中のカスパーゼ・タンパク質分解活性を測定した。また、Frag DNA断片化アポトーシス検出キット(Oncogene)を使用して、DNA断片化を測定した。この検出キットは、フルオレセイン標識付きデオキシヌクレオチドで、DNA断片の露出3'-OH末端に標識付けする。
【0142】
付加的なCOS-7細胞に偽トランスフェクトするか又はpHM6-センスrF5A(pHM6-完全長ラットeIF-5A)をトランスフェクトした。トランスフェクションから40時間後、血清を含有する通常の培地中でさらに48時間にわたって細胞を成長させる(すなわち更なる処理はない)か、48時間にわたって血清を回収することによりアポトーシスを誘発するか、或いは、48時間にわたって0.5μg/mlのアクチノマイシンDで処理することによりアポトーシスを誘発した。アポトーシスを伴う核断片化を示すヘキスト(Hoescht) 33258で、又は、アポトーシスを伴うホスファチジルセリン暴露を示すアネキシン(Annexin) V-Cy3で細胞を染色した。また、緑フィルターを使用した蛍光顕微鏡分析法によって、染色された細胞を見てカウントすることにより、アポトーシスを蒙った細胞のパーセンテージを測定した。可視光下で総細胞個体数をカウントした。
【0143】
図25は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、カスパーゼ活性の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す図である。ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aの発現の結果、カスパーゼ活性は60%だけ増大した。
【0144】
図26は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、DNA断片化の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す図である。ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aの発現の結果、DNA断片化は273%だけ増大した。図27は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、核断片化の増大により反映されるアポトーシスの検出を示す図である。ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aを発現させる細胞中の断片化核の発生率が増大する。図28は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、核断片化の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す図である。ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aの発現の結果、非血清窮乏試料及び血清窮乏試料における、対照に対する核断片化の増加率は、それぞれ27%及び63%であった。
【0145】
図29は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、ホスファチジルセリン暴露により反映されるアポトーシスの検出を示す図である。図30は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、ホスファチジルセリン暴露の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す図である。ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aの発現の結果、非血清窮乏試料及び血清窮乏試料における、対照に対するホスファチジルセリン暴露の増加率は、それぞれ140%及び198%であった。
【0146】
図31は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、核断片化の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す図である。ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aの発現の結果、未処理試料及び処理済試料における、対照に対する核断片化の増加率は、それぞれ115%及び62%であった。図32は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を一時的にトランスフェクトされたCOS-7細胞に、アポトーシスを誘発するための更なる処理が施されている、又はいない条件下での、アポトーシスの増強を比較した図である。
【0147】
実施例4
この実施例は、アポトーシス特異的eIF-5A及びDHSの投与後のアポトーシス活性の調節を実証する。
【0148】
さらに、COS-7細胞に、偽トランスフェクトするか、又はpHM6-LacZをトランスフェクトするか、又はpHM6-センスrF5A(pHM6-完全長ラットeIF-5A)をトランスフェクトし、そしてこれらの細胞を40時間にわたってインキュベートした。各試料から5μgのタンパク質抽出物をSDS-PAGEによって断片化し、PVDF膜に移し、そしてBcl-2を認識するモノクローナル抗体でウェスタン・ブロットした。ペルオキシダーゼに接合されたウサギ抗マウスIgGを二次抗体として使用し、そして、結合された抗体を化学発光及びX線フィルム暴露により検出した。その結果を図32に示した。pHM6-センスrF5Aをトランスフェクトされた細胞中で検出可能なBcl-2は、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞中で検出可能なBcl-2よりも少ない。従って、Bcl-2はダウンレギュレートされている。
【0149】
付加的なCOS-7細胞に、偽トランスフェクトするか、又はアンチセンス3'rF5A((ラット・アポトーシスeIF-5AのpHM6-アンチセンス3'UTR)をトランスフェクトするか、又はpHM6-センスrF5A(pHM6-完全長ラット・アポトーシスeIF-5A)をトランスフェクトした。トランスフェクションから40時間後に、48時間にわたって血清を回収することにより、細胞にアポトーシスを誘発した。各試料から5μgのタンパク質抽出物をSDS-PAGEによって断片化し、PVDF膜に移し、そしてBcl-2を認識するモノクローナル抗体でウェスタン・ブロットした。ペルオキシダーゼに接合されたウサギ抗マウスIgGを二次抗体として使用し、そして、結合された抗体を化学発光及びX線フィルム暴露により検出した。
【0150】
またさらに、COS-7細胞に、偽トランスフェクトするか、又はpHM6-LacZをトランスフェクトするか、又はpHM6-センスrF5A(pHM6-完全長ラットeIF-5A)をトランスフェクトし、そしてこれらの細胞を40時間にわたってインキュベートした。各試料から5μgのタンパク質抽出物をSDS-PAGEによって断片化し、PVDF膜に移し、そしてp53を認識するモノクローナル抗体でウェスタン・ブロットした。アルカリ性ホスファターゼに接合されたヤギ抗マウスIgGを二次抗体として使用し、そして、結合された抗体を比色分析により検出した。
【0151】
最後に、COS-7細胞に、偽トランスフェクトするか、又はpHM6-LacZをトランスフェクトするか、又はpHM6-センスrF5A(pHM6-完全長ラットeIF-5A)をトランスフェクトし、そしてこれらの細胞を40時間にわたってインキュベートした。各試料から5μgのタンパク質抽出物をSDS-PAGEによって断片化し、PVDF膜に移し、そしてp53を認識するモノクローナル抗体でプローブした。対応するタンパク質ブロットを抗-[HA]-ペルオキシダーゼでプローブすることにより、ラット・アポトーシス特異的eIF-5A発現レベルを測定した。アルカリ性ホスファターゼに接合されたヤギ抗マウスIgGを二次抗体として使用し、そして、結合された抗体を化学発光により検出した。
【0152】
図33は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時の、Bcl-2のダウン・レギュレーションを示す図である。上側の図はクーマシー・ブルー染色タンパク質ブロットを示し、下側の図は対応するウェスタン・ブロットを示す。pHM6-センスrF5Aをトランスフェクトされた細胞中で検出可能なBcl-2は、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞中で検出可能なBcl-2よりも少ない。
【0153】
図34は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをアンチセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトしたときのBcl-2のアップレギュレーションを示す。上側の図はクーマシー・ブルー染色タンパク質ブロットを示し、下側の図は対応ウェスタン・ブロットを示す。pHM6-アンチセンス3'rF5Aをトランスフェクトされた細胞中で検出可能なBcl-2は、偽トランスフェクトされた細胞、又はpHM6-センスrF5Aをトランスフェクトされた細胞中で検出可能なBcl-2よりも少ない。
【0154】
図35は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトしたときのc-Mycのアップレギュレーションを示す。上側の図はクーマシー・ブルー染色タンパク質ブロットを示し、下側の図は対応ウェスタン・ブロットを示す。pHM6-センスrF5Aをトランスフェクトされた細胞中で検出可能なc-Mycは、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞、又は偽トランスフェクトされた細胞中で検出可能なc-Mycよりも多い。
【0155】
図36は、完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトしたときのp53のアップレギュレーションを示す。上側の図はクーマシー・ブルー染色タンパク質ブロットを示し、下側の図は対応ウェスタン・ブロットを示す。pHM6-センスrF5Aをトランスフェクトされた細胞中で検出可能なp53は、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞、又は偽トランスフェクトされた細胞中で検出可能なp53よりも多い。
【0156】
図37は、COS-7細胞中のpHM6-完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aの発現に対するp53アップレギュレーションの依存を示す。抗-[HA]-ペルオキシダーゼでプローブされたウェスタン・ブロットにおいて、上側の図は、クーマシー・ブルーで染色されたタンパク質ブロットを示し、下側の図は、対応ウェスタン・ブロットを示す。第1トランスフェクションにおいて検出可能なラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aは、第2トランスフェクションにおいて検出可能なラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aよりも多い。抗-p53でプローブされたウェスタン・ブロットにおいて、Aにおける上側の図は、クーマシー・ブルーで染色された対応タンパク質ブロットを示し、下側の図は、p53によるウェスタン・ブロットを示す。第1のトランスフェクションに関して、pHM6-センスrF5Aをトランスフェクトされた細胞中で検出可能なp53は、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞、又は偽対照をトランスフェクトされた細胞中で検出可能なp53よりも多い。ラット・アポトーシス誘発型eIF-5Aの発現がより少ない第2トランスフェクションの場合、pHM6-センスrF5A、pHM6-LacZ又は偽対照をトランスフェクトされた細胞間のp53レベルの差は検出できなかった。
【0157】
実施例5
この実施例は、アポトーシス特異的eIF-5Aが、活性p53を有する細胞(RKO細胞)及び活性p53を有さない細胞(PKO-E6)中にアポトーシスを誘発することができることを実証する。このことは、アポトーシス特異的eIF-5Aが、p53経路以外の経路を通ってアポトーシスを開始することができることを示す。このことはまた、アポトーシス特異的eIF-5Aが上流側で作用しており、広範囲の種々異なるタイプの癌をおそらく殺すことができるという我々の主張を支援する。
【0158】
この実施例は、eIF-5Aの活性側が、おそらくはRNA結合ドメインを含有するタンパク質のカルボキシ末端(すなわち、切断型eIF-5Aを伴う試験参照)であることを示す。
【0159】
さらにこの実施例は、ヒトeIF-5A2がアポトーシスを誘発することができないことから、これが増殖性eIF-5Aである可能性が高いことを実証する。従って、ヒト・データバンクにおける2つのeIF-5A遺伝子のうち、アポトーシス特異的eIF-5Aがアポトーシス遺伝子であり、eIF-5A2が増殖遺伝子であると考えられる。
【0160】
〈RKO及びRKO-E6細胞の培養〉
RKO(American Type Culture Collection CRL-2577)、すなわち野生型p53を発現させる結腸癌細胞系、及びRKO-E6(American Type Culture Collection CRL-2578)、すなわち正常p53レベル及び機能を減小させるヒト・パピローマ・ウィルスE6腫瘍細胞が安定的に組み入れられたRKOから誘導された細胞系を、トランスフェクションに基づく試験のために使用した。RKO及びRKO-E6細胞を、非必須アミノ酸、アール(Earle)塩、及びL-グルタミンを有する最小必須培地Eagle(MEM)内に培養した。培地には、10%ウシ胎仔血清(FBS)及び100単位のペニシリン/ストレプトマイシンを補充した。5%CO2及び95%空気の湿潤環境において37℃で、細胞を成長させた。0.25%トリプシン及び1mM EDTAの溶液で付着細胞を取り外すことにより、細胞を3〜4日ごとに継代培養した。取り外された細胞を、新鮮な培地を有する新しい培養皿内に分割比1:10〜1:12で小分けした。
【0161】
〈ヒトeIF5A2のクローニング〉
Genbankから入手可能なヒトeIF5A2(寄託番号XM_113401)の配列に対して構成されたプライマーを使用して、RKO細胞から分離されたRNAから、RT-PCRによってヒトeIF5A2を分離した。図38は、RKO細胞から分離されたヒトeIF-5Aと、ヒトelF-5A2の配列とのアラインメントを示す。GenElute Mammalian Total RNA Miniprep Kit(Sigma)を使用して、RKO細胞からRNAを分離した。eIF5A2を増幅するために使用された順方向プライマーは、配列5' AAACTACCATCTCCCCTGCC3'(SEQ ID NO:25)を有し、そして逆方向プライマーは、配列5' TGCCCTACACAGGCTGAAAG3'(SEQ ID NO:26)を有した。結果として生じる936bp PCR生成物をpGEM-T Easy Vector(Promega)中にサブクローニングし、そして配列決定した。
【0162】
次いで、pGEM-T Easy-eIF 5A2構造を鋳型として使用して、哺乳動物発現ベクターpHM6(Roche)内にイン・フレームでサブクローニングされるべきeIF5A2 PCR断片を生成した。ヒトeIF5A2を増幅するために使用された順方向プライマーは、5'ATCAAGCTTGCCCACCATGGCAGACG3'(SEQ ID NO:27)であり、逆方向プライマーは、5'AACGAATTCCATGCCTGATGTTTCCG3'(SEQ ID NO:28)であった。その結果生じる505bpのPCR生成物をHind 3及びEcoR 1で消化し、pHM6のHind 3部位及びEcoR1部位中にサブクローニングした。
【0163】
〈pHM6切断型eI5A1の構成〉
eIF5A1のカルボキシ末端領域がそのアポトーシス誘発活性にとって重要であるかどうかを見極めるために、カルボキシ末端欠失型eIF5A1を構成した。pBS-ラットeIF5A1を鋳型として使用したPCRによって、アミノ酸1〜127をコードする切断型eIF5A1を生成した。順方向プライマーは、5'GCCAAGCTTAATGGCAGATGATTTGG3'(SEQ ID NO:22)であり、逆方向プライマーは、5'TCCGAATTCGTACTTCTGCTCAATC3'(SEQ ID NO:29)であった。その結果生じる390bpのPCR生成物をEcoR 1及びHind 3で消化し、pHM6のEcoR1部位及びHind 3部位中にサブクローニングした。
【0164】
〈トランスフェクション〉
トランスフェクション試験に使用されるべきRKO又はRKO-E6細胞を8ウェル・チャンバ培養スライド(Falcon)内で培養して、細胞をヘキスト(Hoescht)染色のために使用するか、或いは、6ウェル・プレート内で培養して、細胞をフロー・サイトメトリーによって分析した。10%FBSが補充されているがしかしペニシリン/ストレプトマイシンを欠いているMEM培地中で、細胞を密集率70%〜80%になるまで成長させた。22μlの無血清DMEM中にプラスミドDNA 0.425μgを希釈し、そして混合物を15分間にわたって室温でインキュベートすることにより、8ウェル型培養スライドの1つのウェルに十分なトランスフェクション培地を調製した。トランスフェクション試薬LipofectAMINE(Gibco, BRL)0.85μlを無血清MEM22μl中に希釈し、そして室温で5分間にわたってインキュベートした。5分後、LipofectAMINE混合物をDNA混合物に添加し、室温で30〜60分間にわたってインキュベートした。トランスフェクション培地に44μlのMEMを添加して細胞にこれを上塗りする前に、トランスフェクトされるべき細胞を無血清DMEMで1回洗浄した。細胞を成長チャンバ内に4時間戻した。インキュベーション後、88μlのMEM + 20% FBSを細胞に添加した。細胞をさらに44時間にわたって培養し、次いで前述のようにヘキスト(Hoescht) 33258で染色した。別の一連の試験の場合、トランスフェクションから24時間後に、8ウェル型培養スライド中のRKO又はRKO-E6を、0.25μg/mlのアクチノマイシンDで処理し、そして20時間後にヘキスト(Hoescht)で染色した。試薬全てが4.81倍だけ増大する以外は同様に、6ウェル型プレート内でもトランスフェクションを行った。6ウェル型プレート内でトランスフェクトされたRKO細胞をトランスフェクションから48時間後に収穫し、そして下記のようなフロー・サイトメトリーによって分析するために固定した。
【0165】
〈トランスフェクション効率の測定〉
トランスフェクション効率は、pHM6-LacZがトランスフェクトされた細胞を5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド(X−GAL)で染色することによって測定した。ブルー染色された細胞はLacZを発現させる、トランスフェクトされた細胞であり、トランスフェクション効率を、ブルー染色された細胞数/細胞総数として算出した。トランスフェクション後、トランスフェクトされた細胞を、トランスフェクション後48時間にわたって染色した。細胞をPBSで2回洗浄してから、0.5%グルテラルデヒド/PBS中で10分間にわたって室温で固定した。細胞を1mMのMgCl2/PBSで3回洗浄してから、ブルーに染色された細胞が現れるまで染色溶液[5mMのK4Fe(CN)6.3H20、5mMのK3Fe(CN)6、PBS中1mMのMgCl2、0.1%X-GAL]と一緒にインキュベートした。
【0166】
〈ヘキスト(Hoescht)染色〉
核染色剤ヘキスト(Hoescht)を使用して、トランスフェクトされたRKO及びRKO-E6細胞の核を標識付けすることにより、核の断片化及び縮合に基づいてアポトーシス細胞を識別した。無水メタノールと氷酢酸との3:1混合物から成る固定剤を、使用直前に調製した。培養スライド上で成長する細胞の培地に、等容積の固定剤を添加し、そして2分間にわたってインキュベートした。細胞から培地/固定剤混合物を取り出し、廃棄し、そして1mlの固定剤を細胞に添加した。5分後、固定剤を廃棄し、そして1mlの新鮮な固定剤を細胞に添加し、そして5分間にわたってインキュベートした。固定剤を廃棄し、そして細胞を4分間にわたって空気乾燥させた後、1mlのヘキスト(Hoescht)染色剤(PBS中の0.5μg/ml ヘキスト(Hoescht) 33258)を添加した。暗所における10分間のインキュベーション後、染色溶液を廃棄し、そしてスライドを脱イオン水で1分間にわたって3回洗浄した。洗浄後、1mlのMcIlvaine緩衝液(0.021Mクエン酸、0.058M Na2HPO4.7H2O;pH5.6)を細胞に添加し、そして20分間にわたって暗所にインキュベートした。緩衝液を廃棄し、細胞を暗所で5分間にわたって空気乾燥させ、培養スライドのウェルを分離するチャンバを除去した。蛍光用培地を組み込んだVectashield(Vector Laboratories)を数滴、スライドに添加し、カバースリップを被せた。UVフィルターを使用して、蛍光顕微鏡下で、染色された細胞を見た。明るく染色又は断片化された核を有する細胞をアポトーシス細胞としてスコアリングした。
【0167】
〈フロー・サイトメトリーによるDNA断片化検出〉
アポトーシスの過程で発生するDNA断片を、フルオレセイン-FragELTM DNA断片化検出キット(Oncogene Research Products)を使用して、フルオレセイン-標識付けデオキシヌクレオチドで標識付けした。6ウェル型培養プレート中の、種々の構造をトランスフェクトされた細胞を、メーカーの指示書に従い、トランスフェクションから48時間後、トリプシン化によって収穫し、固定し、標識付けした。手短に説明すると、4℃において5分間にわたって1000xgで細胞をペレット化し、PBS(8g/LのNaCl、0.2g/LのKCl、1.44g/LのNa2HPO4、及び0.24g/LのKH2PO4)中で1回洗浄した。細胞を4%ホルムアルデヒド/PBS中に再懸濁させ、室温で10分間にわたってインキュベートした。細胞を再度ペレット化し、1mlの80%エタノール中に再懸濁させ、4℃で保存した。分析当日、1mlの固定細胞(1x106細胞/ml)をミクロ遠心分離管に移し、細胞を5分間にわたって1000xgで遠心分離した。ペレット化した細胞を200μlの1X TBS(20mMのTris pH7.6、140mMのNaCl)中に再懸濁させ、室温で10〜15分間にわたってインキュベートした。次いで、細胞を再度ペレット化し、100μlの20μg/mlのプロテイナーゼK中に再懸濁させ、室温で5分間にわたってインキュベートした。細胞をペレット化し、100μlの1X TdT平衡バッファ中に再懸濁させ、室温で10〜30分間にわたってインキュベートした。次いで、遠心分離によって細胞をペレット化し、60μlのTdT標識付け反応混合液中に再懸濁させ、暗所で1〜1.5時間にわたってインキュベートした。インキュベートした後、遠心分離によって細胞をペレット化し、200μlの1 X TBS中で2回洗浄した。最終容積0.5mlの1 X TBS中に細胞を再懸濁させ、488nmアルゴン・イオン・レーザー光源を備えたフロー・サイトメーターで分析した。
【0168】
〈タンパク質抽出とウェスタン・ブロッティング〉
ウェスタン・ブロッティングのため、細胞をPBS中で2回洗浄した後、150μlの高温SDSゲル-ローディング緩衝液(50mMのTris-HCL、pH6.8、100mMのジチオスレイトール、2%SDS、0.1%ブロモフェノール・ブルー、及び10%グリセロール)を加えることによってタンパク質を分離した。細胞溶解物をミクロ遠心分離管に回収し、10分間にわたって95℃に加熱した後、13,000Xgで10分間にわたって遠心分離した。上澄みを新しいミクロ遠心分離管に移し、使用準備ができるまで-20℃で保存した。
【0169】
ウェスタン・ブロッティングを行うため、タンパク質総量から5μg又は10μgずつ12%SDS-ポリアクリルアミド・ゲル上に分割した。分割されたタンパク質をポリビニリデン・ジフルオライド膜へ移した。次いで、この膜をブロッキング溶液(5%脱脂粉乳、アジ化ナトリウムの0.02%PBS溶液)中で1時間にわたってインキュベートし、PBS-T(PBS+0.05%Tween-20)中で15分間にわたって3回洗浄した。膜を4℃のPBS-T中で一晩保存した。翌日室温に温めた後、1μg/mlのポリビニル・アルコール中で30秒間にわたって、膜をブロックした。脱イオン水で膜を5回にわたってリンスした後、ミルクの5%PBS溶液中で30秒間にわたってブロックした。膜と一緒にインキュベートする前に、一次抗体をミルクの5%PBS溶液/0.025%Tween-20中で前インキュベートした。
【0170】
膜に、Oncogeneから入手した、p53(Ab-6)を認識するモノクローナル抗体、又はニワトリから得たヒトeIF5A1のc-末端と相同の合成ペプチド(アミノ-CRLPEGDLGKEIEQKYD-カルボキシ)(SEQ ID NO:30)に対するポリクローナル抗体をブロットした。p53に対するモノクローナル抗体は0.1μg/mlの希釈率で、eIF5A1に対する抗体は1:1000の希釈率で使用した。一次抗体と共に60〜90分間にわたってインキュベートした後、膜をPBS-Tで15分間にわたって3回洗浄した。次いで、二次抗体をミルクの1%PBS溶液/0.025% Tween-20で希釈し、膜と共に60〜90分間にわたってインキュベートした。p53(Ab-6)を一次抗体として使用した場合、使用する二次抗体はアルカリホスファターゼ(Rockland)と接合したヒツジの1:1000希釈抗マウスIgGであった。一次抗体として抗eIF5A1を使用した場合、ペルオキシダーゼと接合したラビット抗ニワトリIgY(Gallus Immunotech)を1:10000の希釈率で使用した。二次抗体と共にインキュベートした後、膜をPBS-Tで3回洗浄した。
【0171】
ブロットを発色させるのに2つの検出方法、即ち、比色分析法及び化学発光検出法を採用した。比色分析法は、p53(Ab-6)をアルカリホスファターゼ接合二次抗体との関連で一次抗体として使用する場合にのみ採用した。0.33mg/mLのニトロ・ブルー・テトラゾリウム、0.165mg/mLの5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート、100mMのNaCl、5mMのMgCl2、及び100mMのTris-HCl(pH9.5)の溶液中で、ブロットを暗所でインキュベートすることによって、結合抗体を可視化した。EDTAの2mM PBS中でブロットをインキュベートすることによって呈色反応を停止させた。抗[HA]-ぺルオキシダーゼ及び抗eIF5A1を含む他のすべての一次抗体に対しては化学発光検出法を採用した。ペルオキシダーゼ接合抗体の検出にはECL Plus Westernブロッティング検出キット(Amersham Pharmacia Biotech)を使用した。手短に言えば、膜を軽くブロット乾燥させてから、試薬Aと試薬Bの40:1混合物と共に暗所で5分間にわたってインキュベートした。膜をブロット乾燥させ、アセテート・シート間に挟み、10秒〜30分間にわたってX線フィルムに当てた。
【0172】
図39は、一時的なトランスフェクションに続いてRKO及びRKO-E6細胞中に発生するアポトーシスのパーセンテージを示すグラフである。RKO及びRKO-E6細胞には、pHM6-LacZ又はpHM6-eIF5A1を一時的にトランスフェクトした。24時間後、細胞を0.25μg/mlのアクチノマイシンD又は等容積のメタノール(対照)で処理した。20時間後、細胞をHoeschtで染色し、UVフィルタを使用する蛍光顕微鏡で観察した。凝縮クロマチンのため鮮明に染色されている細胞はアポトーシス性であると評定した。実験の結果、アクチノマイシンDで処理されてpHM6-eIF5A1をトランスフェクトされたRKO細胞は、アクチノマイシンDで処理されない、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞と比較して240%のアポトーシス増大を示した。アクチノマイシンDで処理されてpHM6-eIF5A1をトランスフェクトされたRKO-E6細胞は、アクチノマイシンDで処理されない、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞と比較して105%のアポトーシス増大を示した。
【0173】
図40は、一時的なトランスフェクションに続いてRKO細胞中に発生するアポトーシスのパーセンテージを示すグラフである。RKO細胞には、pHM6-LacZ、pHM6-eIF5A1、pHM6-eIF5A2又はpHM6切断型eIF5A1を一時的にトランスフェクトした。pHM6-eIF5A1をトランスフェクトされた細胞は、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞と比較して25%のアポトーシス増大を示した。この増大は、pHM6-eIF5A2又はpHM6切断型eIF5A1に関しては明らかでなかった。
【0174】
図41は、一時的なトランスフェクションに続いてRKO細胞中に発生するアポトーシスのパーセンテージを示すグラフである。RKO細胞はトランスフェクトしないままにするか、或いはRKO細胞に、pHM6-LacZ又はpHM6-eIF5A1を一時的にトランスフェクトした。トランスフェクション効率の補正後、pHM6-eIF5A1をトランスフェクトされた細胞の60%がアポトーシス性であった。
【0175】
図42は、一時的なトランスフェクションに続いてフルオレセイン結合デオキシヌクレオチドで標識付けし、488nmアルゴン・イオン・レーザー光源を備えたフロー・サイトメーターで分析した。ゲートE下に発生する蛍光は非アポトーシス細胞からのものであり、ゲートF下に発生する蛍光はアポトーシス進行中の細胞からのものである。RKO細胞アポトーシスのフロー・サイトメトリー分析の結果を示す。RKO細胞はトランスフェクトしないままにするか、或いはRKO細胞に、pHM6-LacZ、pHM6-eIF5A1、pHM6-eIF5A2又はpHM6切断型eIF5A1を一時的にトランスフェクトした。48時間後、細胞を収穫し、固定した。アポトーシスを反映する断片化DNAを表は、各ゲートのピーク下面積を基準として計算された、アポトーシスを被った細胞のパーセンテージを示す。トランスフェクトされていない細胞中のバックグラウンド・アポトーシス及びトランスフェクション効率の補正後、pHM6-eIF5A1をトランスフェクトされた細胞の80%がアポトーシスを示した。pHM6-LacZ、pHM6-eIF5A2又はpHM6切断型eIF5A1をトランスフェクトされた細胞は、アポトーシスのバックグラウンド・レベルしか示さなかった。
【0176】
図43は、0, 3, 7, 24及び48時間にわたって0.25μg/mlのアクチノマイシンDで処理されたRKO細胞から抽出されたタンパク質のウェスタン・ブロットを示す。タンパク質総量から5μg(抗eIF5A1)又は10μg(抗p53)ずつ12%SDS-ポリアクリルアミド・ゲル上に分割し、分割されたタンパク質をポリビニリデン・ジフルオライド膜へ移した。上側の図は、抗p53を一次抗体として使用したウェスタン・ブロットを示す。中央の図は、抗eIF5A1を一次抗体として使用したウェスタン・ブロットを示す。下側の図は、等しいローディングを示すための化学発光検出に続いて、クーマシー・ブルーで染色される抗eIF5A1ブロットに使用される膜を示す。p53及びeIF5A1は、アクチノマイシンDで処理することにより両方ともアップレギュレートされる。
【0177】
実施例6
図47は、ヒト心臓の拍動と、次いで誘発される心臓発作をシミュレートするため心臓組織上で実施される試験を概略的に示している。図49は研究室試験台の構成を示す。弁置換手術中に除去されたヒト心臓組織の薄片を電極に取付けた。心拍の強さを容易に測定できるようにするため、心臓組織に小さい錘を取付けた。電極が組織に電気的刺激を加えることによって、拍動を開始させた。虚血が誘発される前に、心臓組織中におけるアポトーシス特異的eIF-5A(eIF-5a)及び増殖性eIF-5A(eIF5b)双方に関連する遺伝子発現レベルを測定した。図46参照。虚血誘発前の心臓組織においては、eIF-5a及び5eIFbの発生レベルはいずれも低く、双方のレベルは互いに平衡状態であった。この段階では、心臓へのバッファ中に供給される酸素及び二酸化炭素はそれぞれ92.5%及び7.5%であった。次いで、酸素レベルを低下させ、窒素レベルを上昇させることによって、虚血を、最終的には「心臓発作」を誘発させた。心臓組織は拍動を停止した。次いで、再び酸素レベルを正常に戻し、心臓組織に電気的刺激を加えて脈動させることにより、再び心拍を開始させた。「心臓発作」後、アポトーシス特異的eIF-5a及び増殖性eIF-5A(eIF5b)の発現レベルを再度測定した。この時点で、アポトーシス特異的eIF-5Aの発現レベルが著しく増大したのに対して、増殖性eIF-5A(eIF5b)の発現レベルの増大が著しく低下した。図46を参照されたい。
【0178】
「心臓発作」後、取付けられている錘の圧縮/移動が小さいことで示されるように、心臓の拍動は微弱であり、アポトーシス特異的eIF-5Aの存在が原因となって心臓組織が急速に死滅しつつあることを示唆した。
【0179】
EKGの結果を図48に示す。図の左側は正常な心拍を示す(虚血前の心臓組織)。「心臓発作」(直線)及び心拍再開後、EKGから明らかなように、筋肉細胞死滅のため、活性が低下する。EKGは心拍強さの相対的な損失をも示す。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】図1は、ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aの3'末端のヌクレオチド配列、及び誘導されたアミノ酸配列を示す図である。
【図2】図2は、ラット・アポトーシス特異的eIF-5A cDNAの5'末端のヌクレオチド配列、及び誘導されたアミノ酸配列を示す図である。
【図3】図3は、ラット黄体アポトーシス特異的eIF-5A完全長cDNAのヌクレオチド配列を示す図である。
【図4】図4は、ラット・アポトーシス特異的DHS cDNAの3'末端のヌクレオチド配列、及び誘導されたアミノ酸配列を示す図である。
【図5】図5は、ラット黄体アポトーシス特異的eIF-5A cDNAの完全長ヌクレオチド配列と、ヒトeIF-5Aのヌクレオチド配列(寄託番号BC000751又はNM_001970、SEQ ID NO:3)とのアラインメントを示す図である。
【図6】図6は、ラット黄体アポトーシス特異的eIF-5A cDNAの完全長ヌクレオチド配列と、ヒトeIF-5Aのヌクレオチド配列(寄託番号NM-020390、SEQ ID NO:4)とのアラインメントを示す図である。
【図7】図7は、ラット黄体アポトーシス特異的eIF-5A cDNAの完全長ヌクレオチド配列と、マウスeIF-5Aのヌクレオチド配列(寄託番号BC003889)とのアラインメントを示す図である。マウス・ヌクレオチド配列(寄託番号BC003889)はSEQ ID NO:5である。
【図8】図8は、ラット黄体アポトーシス特異的eIF-5Aの誘導された完全長アミノ酸配列と、ヒトeIF-5Aの誘導されたアミノ酸配列(寄託番号BC000751又はNM_001970)とのアラインメントを示す図である。
【図9】図9は、ラット黄体アポトーシス特異的eIF-5Aの誘導された完全長アミノ酸配列と、ヒトeIF-5Aの誘導されたアミノ酸配列(寄託番号NM_020390)とのアラインメントを示す図である。
【図10】図10は、ラット黄体アポトーシス特異的eIF-5Aの誘導された完全長アミノ酸配列と、マウスeIF-5Aの誘導されたアミノ酸配列(寄託番号BC003889)とのアラインメントを示す図である。
【図11】図11は、ラット黄体アポトーシス特異的DHS cDNAの部分長ヌクレオチド配列と、ヒトDHSのヌクレオチド配列(寄託番号BC000333又はNM_001970、SEQ ID NO:8)とのアラインメントを示す図である。
【図12】図12は、ラット黄体アポトーシス特異的eIF-5A cDNAを示す制限地図である。
【図13】図13は、部分長ラット・アポトーシス特異的DHS cDNAを示す制限地図である。
【図14】図14は、ラット黄体アポトーシス特異的eIF-5A cDNAの32P-dCTP標識付き3'末端でプローブされた総RNAを示すノーザン・ブロット(図14A)、及び臭化エチジウム染色ゲル(図14B)である。
【図15】図15は、ラット黄体アポトーシス特異的DHS cDNAの32P-dCTP標識付き3'末端でプローブされた総RNAを示すノーザン・ブロット(図15A)、及び臭化エチジウム染色ゲル(図15B)である。
【図16】図16は、PGF-2αの注射後に過剰排卵ラット黄体におけるアポトーシス度が試験されたDNAラダー形成試験を示す図である。
【図17】図17は、PGF-2αによるラットの処理後にDNAラダー形成を示す、アポトーシスに至りつつあるラット黄体から分離されたゲノムDNAのアガロース・ゲルを示す図である。
【図18】図18は、プロスタグランジンF-2α(PGF-2α)に対する暴露前にスペルミジンで処理されたラットにおいて、過剰排卵ラット黄体の分散細胞中のアポトーシス度が試験されたDNAラダー形成試験を示す図である。
【図19】図19は、スペルミジン及び/又はPGF-2αで処理されたラットにおいて、過剰排卵ラット黄体中のアポトーシス度が試験されたDNAラダー形成試験を示す図である。
【図20】図20は、32P-dCTP標識付き部分長ラット黄体アポトーシス特異的eIF-5A cDNAでプローブされたラット・ゲノムDNAを示すサザン・ブロットである。
【図21】図21は、哺乳動物エピトープ標識発現ベクターであるpHM6(Roche Molecular Biochemicals)を示す図である。
【図22】図22は、ラット黄体アポトーシス特異的DHS cDNAの32P-dCTP標識3'-未翻訳領域でプローブされた血清の回収によってアポトーシスを誘発した後で、COS-7細胞から分離された総RNAを示すノーザン・ブロット(図22A)、及び臭化エチジウム染色ゲル(図22B)である。
【図23】図23は、COS-7細胞の一時的トランスフェクションの手順を示すフローチャートである。
【図24】図24は、pHM6のトランスフェクションに続いて行われる、COS-7細胞中の外来タンパク質の一時的発現を示すウェスタン・ブロットである。
【図25】図25は、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、カスパーゼ活性の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す図である。
【図26】図26は、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、DNA断片化の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す図である。
【図27】図27は、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、核断片化の増大により反映されるアポトーシスの検出を示す図である。
【図28】図28は、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、核断片化の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す図である。
【図29】図29は、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、ホスファチジルセリン暴露により反映されるアポトーシスの検出を示す図である。
【図30】図30は、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、ホスファチジルセリン暴露の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す図である。
【図31】図31は、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時に、核断片化の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す図である。
【図32】図32は、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時の、アポトーシスの増強を示す図である。
【図33】図33は、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6を、COS-7細胞に一時的にトランスフェクトした時の、Bcl-2のダウン・レギュレーションを示す図である。図33Aはクーマシー・ブルー染色タンパク質ブロットであり、図33Bは対応するウェスタン・ブロットである。
【図34】図34は、Bcl-2をプローブとして使用して、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをアンチセンス配向で含有するpHM6が一時的にトランスフェクトされたCOS-7細胞を示すクーマシー・ブルー染色タンパク質ブロット、及び対応ウェスタン・ブロットである。
【図35】図35は、c-Mycをプローブとして使用して、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6が一時的にトランスフェクトされたCOS-7細胞を示すクーマシー・ブルー染色タンパク質ブロット、及び対応ウェスタン・ブロットである。
【図36】図36は、p53をプローブとして使用して、完全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aをセンス配向で含有するpHM6が一時的にトランスフェクトされたCOS-7細胞を示すクーマシー・ブルー染色タンパク質ブロット、及び対応ウェスタン・ブロットである。
【図37】図37Aは、COS-7細胞中のpHM6-完全長ラット・アポトーシス誘発型eIF-5A発現に対するp53アップレギュレーションの依存を示す図である。
【図38】図37Bは、抗-[HA]-ペルオキシダーゼ・プローブをプローブとして使用した、COS-7細胞中のpHM6-全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aの発現を示すクーマシー・ブルー染色タンパク質ブロット及び対応ウェスタン・ブロットである。
【図39】図37Cは、p53プローブを使用したときの、COS-7細胞中のpHM6-全長ラット・アポトーシス特異的eIF-5Aの発現を示すクーマシー・ブルー染色タンパク質ブロット及び対応ウェスタン・ブロットである。
【図40】図38は、RKO細胞から分離されたヒトEIF5A2と、ヒトelF5A2(Genbank 寄託番号XM_113401)の配列とのアラインメントを示す図である。
【図41】図39は、一時的なトランスフェクションに続いてRKO及びRKO-E6細胞中に発生するアポトーシスのパーセンテージを示すグラフである。RKO及びRKO-E6細胞には、pHM6-LacZ又はpHM6-eIF5A1を一時的にトランスフェクトした。アクチノマイシンDで処理され、pHM6-eIF5A1をトランスフェクトされたRKO細胞は、アクチノマイシンDで処理されない、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞と比較して240%のアポトーシス増大を示した。アクチノマイシンDで処理されてpHM6-eIF5A1をトランスフェクトされたRKO-E6細胞は、アクチノマイシンDで処理されない、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞と比較して105%のアポトーシス増大を示した。
【図42】図40は、一時的なトランスフェクションに続いてRKO細胞中に発生するアポトーシスのパーセンテージを示すグラフである。RKO細胞には、pHM6-LacZ、pHM6-eIF5A1、pHM6-eIF5A2又はpHM6切断型eIF5A1を一時的にトランスフェクトした。pHM6-eIF5A1をトランスフェクトされた細胞は、pHM6-LacZをトランスフェクトされた細胞と比較して25%のアポトーシス増大を示した。この増大は、pHM6-eIF5A2又はpHM6切断型eIF5A1に関しては明らかでなかった。
【図43】図41は、一時的なトランスフェクションに続いてRKO細胞中に発生するアポトーシスのパーセンテージを示すグラフである。RKO細胞はトランスフェクトしないままにするか、或いはRKO細胞に、pHM6-LacZ又はpHM6-eIF5A1を一時的にトランスフェクトした。トランスフェクション効率の補正後、pHM6-eIF5A1をトランスフェクトされた細胞の60%がアポトーシス性であった。
【図44】図42は、一時的なトランスフェクションに続いてRKO細胞アポトーシスのフロー・サイトメトリー分析の結果を示す。RKO細胞はトランスフェクトしないままにするか、或いはRKO細胞に、pHM6-LacZ、pHM6-eIF5A1、pHM6-eIF5A2又はpHM6切断型eIF5A1を一時的にトランスフェクトした。表は、各ゲートのピーク下面積を基準として計算された、アポトーシスを蒙った細胞のパーセンテージを示す。トランスフェクトされていない細胞中のバックグラウンド・アポトーシス及びトランスフェクション効率の補正後、pHM6-eIF5A1をトランスフェクトされた細胞の80%がアポトーシスを示した。pHM6-LacZ、pHM6-eIF5A2又はpHM6切断型eIF5A1をトランスフェクトされた細胞は、アポトーシスのバックグラウンド・レベルしか示さなかった。
【図45】図43は、0, 3, 7, 24及び48時間にわたって0.25μg/mlのアクチノマイシンDで処理されたRKO細胞から抽出されたタンパク質のウェスタン・ブロットを示す。上側の図は、抗p53を一次抗体として使用したウェスタン・ブロットを示す。中央の図は、抗eIF5A1を一次抗体として使用したウェスタン・ブロットを示す。下側の図は、等しいローディングを示すための化学発光検出に続いて、クーマシー・ブルーで染色される抗eIF5A1ブロットに使用される膜を示す。p53及びeIF5A1は、アクチノマイシンDで処理することにより両方ともアップレギュレートされる。
【図46】図44は、アポトーシス特異的eIF-5A(eIF5a)及び増殖性eIF-5A(eIF5b)の両方が心臓組織内に発現されることを示す棒グラフである。心臓組織は、冠動脈バイパス・グラフト(CABG)を受けた患者から採取した。eIF5aの遺伝子発現レベル(明るいグレーの棒)をeIF5b(暗いグレーの棒)と比較する。X軸は患者識別番号である。Y軸は18sのpg/ng{リボソームRNA 18S(ナノグラム)に対するメッセージRNA(ピコグラム)}である。
【図47】図45は、アポトーシス特異的eIF-5A(eIF5a)及び増殖性eIF-5A(eIF5b)の両方が心臓組織内に発現されることを示す棒グラフである。心臓組織は、弁置換を受けた患者から採取した。eIF5aの遺伝子発現レベル(明るいグレーの棒)をeIF5b(暗いグレーの棒)と比較する。X軸は患者識別番号である。Y軸は18sのpg/ng{リボソームRNA 18S(ナノグラム)に対するメッセージRNA(ピコグラム)}である。
【図48】図46は、虚血前心臓組織及び虚血後心臓組織における、アポトーシス特異的eIF-5A(eIF5a)対増殖性eIF-5A(eIF5b)のリアルタイムPCRによって測定された遺伝子発現レベルを示す棒グラフである。Y軸は18sのpg/ng{リボソームRNA 18S(ナノグラム)に対するメッセージRNA(ピコグラム)}である。
【図49】図47は、心臓組織上で実施される試験を概略的に示している。心臓組織を、正常酸素レベルに暴露し、アポトーシス特異的eIF-5A(eIF5a)及び増殖性eIF-5A(eIF5b)を測定した。後に、心臓組織に供給される酸素量を低くし、こうして心臓組織内に低酸素症及び虚血を誘発し、そして最終的には心臓発作を誘発した。アポトーシス特異的eIF-5A(eIF5a)及び増殖性eIF-5A(eIF5b)の発現レベルを測定して、心臓組織が虚血によって損傷される前の心臓組織の発現レベルと比較した。
【図50】図48は、虚血誘発前及び誘発後の心臓組織のEKGを示す図である。
【図51】図49は、図47に示された試験の設備を有する研究所試験台を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物組織内の虚血の発生を識別する方法であって、該方法が
a. 該組織内のアポトーシス特異的eIF-5A及び増殖性eIF-5A双方の遺伝子発現レベルを測定し、
b. 該組織内の該アポトーシス特異的eIF-5A発現レベルを、該増殖性eIF-5A発現レベルと比較し、
c. 該アポトーシス特異的eIF-5A発現レベルが該増殖性eIF-5A発現レベルよりも高い場合には、該組織内の虚血の発生と相互関連させる
ことを含む、前記方法。
【請求項2】
前記組織が心臓組織である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
哺乳動物組織内のアポトーシスを低減する方法であって、該方法が
a. 哺乳動物組織内のアポトーシス特異的eIF-5A及び増殖性eIF-5A双方の遺伝子発現レベルを測定し、
b. 該哺乳動物組織内の該アポトーシス特異的eIF-5A発現レベルを、該増殖性eIF-5A発現レベルと比較し、
c. 該アポトーシス特異的eIF-5A発現レベルが該増殖性eIF-5A発現レベルよりも高い場合には、虚血の発生と相互関連させ、
d. アポトーシス特異的eIF-5Aの発現を阻害する作用物質を哺乳動物の心臓組織に提供する
ことを含む、前記方法。
【請求項4】
前記哺乳動物組織が心臓組織である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記作用物質が、アポトーシス特異的eIF-5Aをコードするヌクレオチド配列に対して相補的なオリゴヌクレオチドを含むアンチセンス・オリゴヌクレオチドである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アポトーシス特異的eIF-5Aをコードする前記ヌクレオチド配列が、配列番号3又は4から成る群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項1】
哺乳動物組織内の虚血の発生を識別する方法であって、該方法が
a. 該組織内のアポトーシス特異的eIF-5A及び増殖性eIF-5A双方の遺伝子発現レベルを測定し、
b. 該組織内の該アポトーシス特異的eIF-5A発現レベルを、該増殖性eIF-5A発現レベルと比較し、
c. 該アポトーシス特異的eIF-5A発現レベルが該増殖性eIF-5A発現レベルよりも高い場合には、該組織内の虚血の発生と相互関連させる
ことを含む、前記方法。
【請求項2】
前記組織が心臓組織である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
哺乳動物組織内のアポトーシスを低減する方法であって、該方法が
a. 哺乳動物組織内のアポトーシス特異的eIF-5A及び増殖性eIF-5A双方の遺伝子発現レベルを測定し、
b. 該哺乳動物組織内の該アポトーシス特異的eIF-5A発現レベルを、該増殖性eIF-5A発現レベルと比較し、
c. 該アポトーシス特異的eIF-5A発現レベルが該増殖性eIF-5A発現レベルよりも高い場合には、虚血の発生と相互関連させ、
d. アポトーシス特異的eIF-5Aの発現を阻害する作用物質を哺乳動物の心臓組織に提供する
ことを含む、前記方法。
【請求項4】
前記哺乳動物組織が心臓組織である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記作用物質が、アポトーシス特異的eIF-5Aをコードするヌクレオチド配列に対して相補的なオリゴヌクレオチドを含むアンチセンス・オリゴヌクレオチドである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アポトーシス特異的eIF-5Aをコードする前記ヌクレオチド配列が、配列番号3又は4から成る群から選択される、請求項5に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37A】
【図37B】
【図37C】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42A】
【図42B】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37A】
【図37B】
【図37C】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42A】
【図42B】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【公表番号】特表2006−507816(P2006−507816A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547020(P2004−547020)
【出願日】平成15年10月22日(2003.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/033463
【国際公開番号】WO2004/037984
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(502458132)セネスコ テクノロジーズ,インコーポレイティド (16)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月22日(2003.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/033463
【国際公開番号】WO2004/037984
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(502458132)セネスコ テクノロジーズ,インコーポレイティド (16)
【Fターム(参考)】
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