説明

アポトーシス亢進のための組成物と方法

本発明は、哺乳動物のアポトーシス亢進に有用な組成物、および同様の組成物の使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、哺乳動物のアポトーシス亢進に有用な組成物、および同様の組成物の使用方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
アポトーシスまたはプログラム細胞死は脊椎動物と同様に無脊椎動物での発達および恒常性に重要な役割を持つ一般的および生化学的な調節機能である。未熟な細胞死を引き起こすアポトーシス異常は様々な発育性疾患に関与している。結果的に細胞死欠乏となるアポトーシス欠損は、癌および慢性ウイルス感染に関与している(Thompson等, (1995) Science 267, 1456-1462)。
アポトーシスにおけるある重要なエフェクター分子の一つがカスパーゼである(アスパラギン酸特異的プロテアーゼを含むシステイン)。カスパーゼはアスパラギン酸残基後を切断する強力なプロテアーゼであり、活性化されると細胞内から生細胞タンパク質を消化する。カスパーゼはとても強力なプロテアーゼなので、未熟な細胞死を予防するためにこのタンパク質ファミリーの厳重なコントロールが重要である。一般に、カスパーゼは主として不活性型チモーゲンとして合成され、活性化されるにはタンパク質分解過程を要する。このタンパク質分解過程はカスパーゼ調節の唯一の手段である。二次的機能はカスパーゼに結合して阻害するタンパク質ファミリーが介する。
【0003】
カスパーゼを阻害する分子ファミリーはアポトーシス阻害因子(IAP)である(Deveraux等, J Clin Immunol (1999), 19:388-398)。IAPは本来そのP35タンパク質を代用する機能的能力によってバキュロウイルスにおいて発見された抗アポトーシス遺伝子である(Crook等. (1993) J Virology 67, 2168-2174)。IAPはショウジョウバエからヒトにわたる生物体において記述されている。器官に関係なく構造的に、IAPは1から3のバキュロウイルスIAPリピート(BIR)ドメインを含み、それらのほとんどはカルボキシル末端RINGフィンガーモチーフも有している。BIRドメイン自体は4つのαヘリックスおよび3つのβ鎖を含む約70残基のzinc結合ドメインであり、zincイオンを配位するシステインとヒスチジンを有する(Hinds等, (1999) Nat. Struct. Biol. 6, 648-651)。カスパーゼを阻害し従ってアポトーシスを抑制することによって抗アポトーシス効果の原因となっていると考えられているのがBIRドメインである。例として、ヒトX染色体結合型IAP(XIAP)はカスパーゼ3、カスパーゼ7およびApaf-1チトクロームC媒介カスパーゼ9活性化を阻害する(Deveraux等, (1998) EMBO J. 17, 2215-2223)。カスパーゼ3および7はXIAPのBIR2ドメインにより阻害されるのに対して、XIAPのBIR3ドメインはカスパーゼ9活性の阻害を担っている。
【0004】
黒色腫IAP(ML−IAP)は黒色腫におけるIAP発現を強く上方制御する(Vucic等, (2000) Current Bio 10:1359-1366)。タンパク質構造の決定により、ヒトXIAP、C−IAP1およびC−IAP2に存在するドメインに対応する顕著な相同性を示すML−IAP BIRおよびRINGフィンガードメインが明らかにされた。ML−IAPのBIRドメインはXIAPのBIR2およびBIR3、C-IAP1およびC-IAP2に最も類似性があり、欠損解析に示されるようにアポトーシス阻害を担っていると思われる。さらに、Vucic等はML−IAPが化学療法剤誘導性アポトーシスを阻害することを明らかにした。アドリアマイシンおよび4-第三ブチルフェノール(4−TBP)等の薬剤をML−IAPを過剰発現する黒色腫の細胞培養系で試験すると、正常メラニン細胞対照と比較して化学療法剤が細胞を死滅する影響が著しく低かった。ML−IAPが抗アポトーシス活性を示す機構はカスパーゼ3、7、および9の阻害によるものである。ML−IAPはカスパーゼ1、2、6、または8を有効に阻害しなかった。
【0005】
アポトーシスは多様な相互因子を持つ厳密に制御された経路であるので、IAP自体が調節を受けるという発見は特異なことではなかった。ショウジョウバエDrosophilaでは、Reaper (rpr)、頭部退行欠損(Head Involution Defective)(hid)およびGRIMタンパク質が物理的に相互作用し、ショウジョウバエのIAPファミリーの抗アポトーシス活性を阻害する。哺乳動物では、タンパク質SMAC/DIABLOがIAPを遮断するように働き、アポトーシスが進行する。正常なアポトーシスではSMACが活性型になると、ミトコンドリアから細胞質に放出され、物理的にIAPに結合してIAPがカスパーゼに結合するのを阻害することが示された。このIAPの阻害により、カスパーゼは活性化された状態であるためアポトーシスが進行する。興味深いことに、IAP阻害因子間の配列相同性は、進行した活性型タンパク質のN末端に4アミノ酸モチーフがあることを示している。このテトラアミノ酸はBIRドメインの疎水性ポケット(pocket)内に結合していると思われ、BIRドメインのカスパーゼへの結合を崩壊する(Chai等, (2000) Nature 406:855-862, Liu等, (2000) Nature 408:1004-1008, Wu等, (2000) Nature 408 1008-1012)。
【0006】
上述のようなアポトーシス研究の進歩にもかかわらず、癌の進行を抑制することを目的として哺乳動物におけるアポトーシス亢進能を有した付加的診断および治療用薬剤の需要が高い。例えば、XIAPはほとんどの成人組織で発現されており(Duckett等, (1996) EMBO J. 15, 2685-2694)、それ故に癌治療に用いられる薬剤によりアンタゴニストは健康細胞に感作してアポトーシスを起こすであろう。ML−IAPは黒色腫に特異的であることが知られているため(Vucic等, (2000) Current Bio 10:1359-1366)、ML−IAP特異的であるIAPアンタゴニストの開発に有用性がある。したがって、本出願では、ML−IAPの構造へ結合する際の様々なペプチドにおける特異的なアミノ酸相互作用を明示するために、未処理のペプチドライブラリーおよび合成ペプチドライブラリーのファージディスプレイが用いられる。ペプチドSAR(構造活性化関係)実験と組み合わせて、選択したML−IAPを有するペプチドの共結晶化により、結合親和性および/または選択性の増加をもたらすペプチドを決定する。
【0007】
(発明の概要)
一実施態様では、本発明は好ましくは特異的に前記または後記するBIRドメイン(BIRドメイン結合オリゴペプチド;以降、BDBオリゴペプチド)に結合するオリゴペプチドを提供する。任意に本発明のBDBオリゴペプチドは、例えば、メイタンシノイド又はカリケアマイシンを含む毒素のような成長阻害剤又は細胞障害性剤、抗生物質、放射性同位体、核溶解性酵素等と場合によってはコンジュゲートされうる。本発明のBDBオリゴペプチドはCHO細胞または細菌細胞内で任意で産生され、好ましくは結合した細胞の死を誘導する。診断目的のために、本発明のBDBオリゴペプチドを検出可能に標識したり、固形支持体に接着させたりしていてよい。
【0008】
本発明の一実施態様では、本発明はここに示す結合オリゴペプチドの何れかをコードするDNAを含むベクターを提供する。そのようなベクターを含む宿主細胞も又提供する。例として宿主細胞はCHO細胞、大腸菌細胞、又は酵母菌細胞でもよい。さらに、ここに示す何れかの結合オリゴペプチドの生成工程を提供し、目的のオリゴペプチドの発現に適した条件下で宿主細胞を培養して細胞培養物から目的のオリゴペプチドを回収することを含む。
【0009】
他の実施態様では、発明は、好ましくは前述又は後述の任意のBIRドメインに特異的に結合する小有機分子(BIRドメイン結合小有機分子、以降BDB小分子)を提供する。選択的に、本発明のBDB結合有機分子は、例えば、メイタンシノイド又はカリケアマイシンを含む毒素のような成長阻害剤又は細胞障害性剤、抗生物質、放射性同位体、核溶解性酵素等と場合によってはコンジュゲートされうる。本発明のBDB小有機分子は好ましくは結合した細胞のアポトーシスを誘導する。診断を目的として、本発明のBDB小有機分子を検出可能に標識したり、固形支持体に接着させたりしていてよい。
更なる実施態様では、発明は、ここに示すようにキメラBDBオリゴペプチドを含む組成物に関する。もしくは、キメラBDBオリゴペプチドは細胞膜を越えてBDBオリゴペプチドの輸送を円滑にするペプチド又は小分子に融合したBDBオリゴペプチドに関する。又、発明は、担体と組み合わせたキメラBDBオリゴペプチド、ここに示すBDBオリゴペプチド、又はここに示すBDB小有機分子に関する。場合によっては、担体は薬理学的受容性のある担体である。
【0010】
他の実施態様では、発明は、容器と、容器内に包含する組成物とを含む製造品であり、ここでいう組成物がここに示すキメラBDBポリペプチド、ここに示すBDBオリゴペプチド、又はここに示すBDB小有機分子を含みうる製造品に関する。さらに、製造品は、容器に貼付したラベル、または、容器内に包含するパッケージ挿入物であって、腫瘍の治療的処置または診断的検出を目的とした組成物の使用を示しているものを選択的に含みうる。
【0011】
本発明の他の実施態様では、キメラBDBポリペプチド、BDBオリゴペプチド、又はBDB小有機分子に応答する治療条件で有効な医薬の調製を目的として、ここに示すキメラBDBポリペプチド、ここに示すBDBオリゴペプチド、又はここに示すBDB小有機分子の使用を示唆するものである。
本発明の他の実施態様では、キメラBDBポリペプチド、BDBオリゴペプチド、又はBDB小有機分子に応答する治療条件で有効な医薬の調製を目的として、ここに示すキメラBDBポリペプチド、ここに示すBDBオリゴペプチド、又はここに示すBDB小有機分子の使用に関し、ML−IAPのBIRドメイン特異的なものである。
【0012】
1.更なる実施態様
本発明の他の実施態様では、BIRドメインを含むIAPポリペプチドを発現する細胞の成長を阻害する方法に関し、該方法は細胞にIAPポリペプチドに結合するBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子を作用させ、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子のIAPポリペプチドへの結合によりIAPポリペプチドを発現する細胞の成長が阻害されることを含む。好ましい実施態様では、細胞は癌細胞であり、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子のIAPポリペプチドへの結合によりIAPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスが誘導されるものである。選択的にIAPポリペプチドがML−IAPである。
本発明の方法に用いるBDBオリゴペプチド及びBDB小有機分子は選択的に、例えば、メイタンシノイド又はカリケアマイシンを含む毒素のような成長阻害剤又は細胞障害性剤、抗生物質、放射性同位体、核溶解性酵素等と場合によってはコンジュゲートされうる。本発明の方法に用いるBDBオリゴペプチド及びBDB小有機分子は選択的にCHO細胞、細菌細胞、又は合成物内で生成されうる。
【0013】
さらに本発明の他の実施態様は、IAPポリペプチドを発現する細胞を含む癌性腫瘍を有する哺乳動物の治療的処置方法に関し、該方法はIAPポリペプチドに結合するBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子の治療的有効量を哺乳動物に投与することによって、結果的に腫瘍を効果的に治療することを含みうる。選択的にIAPポリペプチドがML−IAPである。本発明の方法に用いるBDBオリゴペプチド及びBDB小有機分子は選択的に、例えば、メイタンシノイド又はカリケアマイシンを含む毒素のような成長阻害剤又は細胞障害性剤、抗生物質、放射性同位体、核溶解性酵素等と場合によってはコンジュゲートされうる。本発明の方法に用いるBDBオリゴペプチド及びBDB小有機分子は選択的にCHO細胞、細菌細胞、又は合成物内で生成されうる。
さらに本発明の他の実施態様は、IAPポリペプチドの含有が推測される試料においてIAPポリペプチドの存在を決定する方法に関し、該方法は試料をIAPポリペプチドに結合するBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子に曝し、試料中のBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子のIAPポリペプチドへの結合を決定することを含み、この結合の存在により試料中のIAPポリペプチドの存在が示唆されるものである。選択的に試料はIAPポリペプチドの発現が予測される細胞(癌細胞であってもよい)を含みうる。本発明の方法に用いるBDBオリゴペプチド及びBDB小有機分子は選択的に検出可能に標識したり、固形支持体に接着させたりしていてよい。
【0014】
本発明の更なる実施態様では、哺乳動物における腫瘍の存在を診断する方法に関し、該方法は、(a)前記哺乳動物から得られた組織細胞の試験試料、及び(b)同じ組織源又は型の既知の正常な非癌性細胞のコントロール試料中における、IAPポリペプチドをコードする遺伝子の発現のレベルを検出することを含んでなり、コントロール試料と比較して、試験試料中のIAPポリペプチドのより高いレベルの発現が、試験試料が得られた哺乳動物での腫瘍の存在を示す。
本発明の他の実施態様は、哺乳動物における腫瘍の存在を診断する方法に関し、該方法は、(a)哺乳動物から得られた組織細胞の試験試料を、IAPポリペプチドと結合する抗体、オリゴペプチド又は小有機分子と接触させ、(b)試験試料中での、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子とIAPポリペプチドの間で形成される複合体を検出することを含んでなり、複合体の形成が、哺乳動物での腫瘍の存在を示す。場合によっては、用いられるBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は、検出可能に標識されたり、固体支持体に付着されたりするか、及び/又は組織細胞の試験試料が癌牲腫瘍を有すると思われる個体から得られる。
【0015】
本発明の更に他の実施態様は、IAPポリペプチドの改変、好ましくは増加された発現又は活性に関連した細胞増殖性疾患を治療又は予防する方法に関し、該方法はそのような治療を必要とする患者に、有効量のIAPポリペプチドのアンタゴニストを投与することを含んでなる。好ましくは、細胞増殖性疾患は癌であり、IAPポリペプチドのアンタゴニストはBDBオリゴペプチド、又はBDB小有機分子である。細胞増殖性疾患の効果的な治療又は予防はIAPポリペプチドを発現する細胞の直接の死滅化又は成長阻害の結果又はIAPポリペプチドをアンタゴナイズしてアポトーシス誘導剤への感受性を与えることによるものでありうる。
【0016】
本発明の更に他の実施態様はIAPポリペプチドを発現する細胞へBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子を結合させる方法に関し、該方法は、IAPポリペプチドを発現する細胞を、該BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子に、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子が該IAPポリペプチドに結合するのに適した条件下で接触させ、それらの結合を可能にすることを含んでなる。
【0017】
本発明の他の実施態様は、(a)BDBオリゴペプチド、又は(b)BDB小有機分子の、(i)癌又は腫瘍の治療的処置又は診断的検出、又は(ii)細胞増殖性疾患の治療的処置又は防止に有用な医薬の製造における使用に関する。
本発明の他の実施態様は、癌細胞の成長を阻害する方法に関し、ここで、上記癌細胞の成長はIAPポリペプチドの成長増強効果に少なくとも部分的に依存し、該方法は、IAPポリペプチドに結合するBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子にIAPポリペプチドを接触させることを含んでなり、それによってIAPポリペプチドのアポトーシス阻害活性をアンタゴナイズし、次には癌細胞の成長を阻害する。好ましくは癌細胞の成長は完全に阻害される。更により好ましくは、IAPポリペプチドへのBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子の結合は癌細胞のアポトーシスを誘導する。本発明の方法に使用されるBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は、例えば、メイタンシノイド又はカリケアマイシンを含む毒素のような成長阻害剤又は細胞障害性剤、抗生物質、放射性同位体、核溶解性酵素等と場合によってはコンジュゲートされうる。本発明の方法に用いられるBDBオリゴペプチドは、場合によってはCHO細胞、細菌細胞又は合成物中で産生され得る。
【0018】
本発明の更に他の実施態様は、哺乳動物において腫瘍を治療的に処置する方法に関し、ここで、上記腫瘍の成長はIAPポリペプチドの成長増強効果に少なくとも部分的に依存し、該方法は、IAPポリペプチドに結合する抗体、オリゴペプチド又は小有機分子を哺乳動物に投与することを含んでなり、それによって上記IAPポリペプチドの成長増強活性をアンタゴナイズし、腫瘍の効果的な治療的処置をもたらす。本発明の方法において使用されるBDBオリゴペプチド及びBDB小有機分子は、例えば、メイタンシノイド又はカリケアマイシンを含む毒素のような成長阻害剤又は細胞障害性剤、抗生物質、放射性同位体、核溶解性酵素等と場合によってはコンジュゲートされうる。本発明の方法に用いられるBDBオリゴペプチドは、場合によってはCHO細胞、細菌細胞又は合成物中で産生され得る。
【0019】
本発明のさらに他の実施態様は、ML−IAP BIRドメインの結晶構造の使用方法に関し、該結晶構造はBIRドメインと潜在的阻害剤との作用残基を同定するために利用する。このような作用残基及び隣接残基はここで詳述する技術により置換の候補となる。このような変異が起こると、ここで述べるように変異のパネルはスクリーニングに用いられ、一以上の関連アッセイにより適当なIAP阻害物質が更なる開発のために選択されうる。
【0020】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
定義
ここで詳述した様々なオリゴペプチドを表すために用いられる「単離した」とは、同定され、天然環境の成分から分離及び/又は回収したオリゴペプチドを意味する。その天然環境の汚染成分とは、一般的にオリゴペプチドを診断又は治療へ用いる際の妨げとなる物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性の溶質でありうる。好ましい実施態様では、オリゴペプチドは(1)スピンカップシークエネーターを用いてN末端又は内在アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度に、又は(2)クーマシーブルー又は、好ましくは銀染色を用いた非還元又は還元条件下にてSDS−PAGEにより均一になるまで精製される。しかしながら通常単離したポリペプチドは少なくとも一つの精製工程により調製されるであろう。
「コントロール配列」という用語は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列と、リボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
【0021】
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されているなら、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合したDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読み取りフェーズにあることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
【0022】
「エピトープタグ」なる用語は、ここで用いられるときは、「タグポリペプチド」と融合したBDBポリペプチドを含んでなるキメラポリペプチドを意味する。タグポリペプチドは、その抗体が産生され得るエピトープを提供するのに十分な残基を有し、その長さは融合するポリペプチドの活性を阻害しないよう充分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。場合によっては、タグポリペプチドは細胞内へのキメラBDBオリゴペプチドの挿入を容認する担体ポリペプチドである。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8〜50のアミノ酸残基(好ましくは、約10〜20の残基)を有する。
【0023】
「IAP阻害物質」はアポトーシスタンパク質阻害物質(IAP)の抗アポトーシス活性を遮断する分子である。天然に生じるIAPポリペプチドの例として、哺乳動物のSMAC/DIABLOタンパク質、及びショウジョウバエのHID、RPR及びGRIMタンパク質がある。
ここでの目的に対する「活性な」又は「活性」とは、天然又は天然に生じるIAP阻害物質の生物学的的活性を保持するBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子の形態を意味し、その中で、「生物学的」活性とは、天然又は天然発生IAPが保持する抗原性エピトープに対する抗体の生成を誘導する能力以外の、天然又は天然発生IAP阻害物質によって引き起こされる生物機能を意味する。
【0024】
「IAP」又はアポトーシスタンパク質阻害物質は物理的に作用して活性を遮断することにより細胞のアポトーシスを阻害する分子であり、アポトーシス経路内のカスパーゼ分子である。IAP分子の例としてML−IAP(登録番号:BIR7_HUMAN)、XIAP、NAIP、C−IAP1及びC−IAP2がある。構造的にIAPは一以上のBIRドメインを含み、多くのIAPはカルボキシル末端RINGフィンガードメインを含む。
「カスパーゼ」はアスパラギン酸のC末端側でポリペプチド基質を切断するシステインプロテアーゼポリペプチドとして定義する。
「BIRドメイン含有ポリペプチド」は、特異的に結合して阻害することのできるタンパク質構造を含むポリペプチド、カスパーゼである。特に、ML−IAPのBIRドメインは登録番号:BIR7_HUMANで示す配列のアミノ酸87−168である。
【0025】
「アンタゴニスト」なる用語は最も広い意味で用いられ、IAPポリペプチドの生物学的活性を部分的又は完全に遮断、阻害、又は中和する任意の分子が含まれる。同じように、「薬剤」という用語は最も広い意味で用いられ、天然のIAPポリペプチド阻害物質の生物学的活性を模倣する任意の分子が含まれる。適切な薬剤又はアンタゴニスト分子には、特にBDBポリペプチド、BDB小有機分子が含まれる。IAPポリペプチドのアンタゴニストを同定する方法は、IAPポリペプチドと候補アンタゴニスト分子を接触させ、そして通常はIAPポリペプチドに関連している一又は複数の生物学的活性の検出可能な変化を測定することが含まれ得る。
「オリゴペプチド」は3〜30アミノ酸残基の長さの短いアミノ酸配列であり、オリゴペプチドに特定の立体配座の特性又はタンパク質分解耐性等の特定の生物学的活性を与えるために、単独又は天然に生じるアミノ酸残基と組み合わせて用いられる天然に生じるアミノ酸残基及び非天然に生じる残基類似体を包含する。
【0026】
「治療する」又は「治療」又は「緩和」とは、治療上の処置及び予防的療法又は防護的療法の双方を称し、その目的は、標的である病的症状又は疾患を防ぐか又は衰え(小さく)させることである。治療を必要とするものには、疾患に罹りやすいものと同時に疾患に既に罹っているもの、又は疾患が予防されるべきものを含む。本発明の方法に従ってBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子の治療量を投与された後に、患者が次の一又は複数のものについて観察可能な及び/又は測定可能な以下のような減少又は消失を示したならば、被検体又は哺乳動物は、IAPポリペプチド発現癌に関して成功裏に「治療された」ことになる:癌細胞の数の減少、又は癌細胞の消失;腫瘍の大きさの減少;軟部組織及び骨への癌の広がりを含む、末梢器官への癌細胞の浸潤の阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止);腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止);腫瘍成長のある程度の阻害;及び/又は特定の癌に関連している一又は複数の症状のある程度の緩和;疾病率及び死亡率の減少、及び生活の質問題の改善。ある程度、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は、生存癌細胞の成長を防ぐ及び/又は死滅させることができ、それは、細胞増殖抑制及び/又は細胞毒性であり得る。これらの兆候又は症状の低減は、また、患者が感じることができる。
【0027】
疾患における成功裏の治療及び改善を評価することに関する上記のパラメーターは、医師にとってよく知られている日常的手法によって容易に測定が可能である。癌治療では、有効性は、例えば、病気の進行までの時間(TTP)の算定及び/又は反応速度(RR)を確かめることによって測定できる。転移は、ステージング試験によって、骨のスキャン及び骨への広がりを確かめるためのカルシウムレベル及び他の酵素に関する試験によって確かめることができる。CTスキャンは、また、領域の骨盤及びリンパ節への広がりを探索することで行うことができる。胸のX線、及び既知の方法による肝臓の酵素レベルの測定を、それぞれ肺及び肝臓への転移を探索するために用いる。疾患をモニタリングする他の常套的方法には、経直腸的超音波断層法(TRUS)及び経直腸的針生検(TRNB)が含まれる。
「慢性」投与とは、初期の治療効果(活性)を長期間にわたって維持するようにするために、急性態様とは異なり連続的な態様での薬剤の投与を意味する。「間欠」投与とは、中断無く連続的になされるのではなく、むしろ本質的に周期的になされる処理である。
癌の治療、症状の緩和又は診断のための「哺乳動物」とは、哺乳動物に分類される任意の動物を意味し、ヒト、家畜用及び農場用動物、動物園、スポーツ、又はペット動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどを含む。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
一又は複数の更なる治療薬と「組み合わせた」投与とは、同時(同時期)及び任意の順序での連続した投与を含む。
【0028】
ここで用いられる「担体」は、製薬的に許容されうる担体、賦形剤、又は安定化剤を含み、用いられる服用量及び濃度でそれらに曝露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性である。生理学的に許容されうる担体は、水性pH緩衝溶液であることが多い。生理学的に許容されうる担体の例は、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸塩のバッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;疎水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;グルコース、マンノース又はデキストランを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(登録商標)を含む。
【0029】
「固相」又は「固体支持体」とは、本発明のBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子が接着又は付着できる非水性マトリクスを意味する。ここに包含される固相の例は、部分的又は全体的にガラス(例えば、径の調整されたガラス)、ポリサッカリド(例えばアガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール及びシリコーンで形成されたものを含む。或る実施態様では、前後関係に応じて、固相はアッセイ用プレートのウェル;その他では精製用カラム(例えばアフィニティクロマトグラフィーカラム)を含むことができる。また、この用語は、米国特許第4275149号に記載されたような別々の粒子の不連続な固相も含む。
「リポソーム」は、哺乳動物への薬物(例えばBDBオリゴペプチド)輸送に有用な、脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤を含む種々のタイプの小胞体である。リポソームの成分は、通常は細胞膜の脂質配向に類似した2層構造に配列される。
ここで定義されている「小」分子又は「小」有機分子とは、約500ダルトン未満の分子量である。
【0030】
ここに開示するBDBオリゴペプチド、BDB小有機分子の「有効量」とは、特に述べた目的を実施するために十分な量のことである。「有効量」は、述べられた目的に関連して、経験的及び常套的な形で決定することができる。
「治療的有効量」という用語は、患者又は哺乳動物の疾患又は疾病を「治療」するのに効果的なBDBオリゴペプチド、BDB小有機分子又は他の薬剤の量を指す。癌の場合、治療的に有効量の薬は癌細胞の数を減じ;腫瘍の大きさを減じ;末梢器官への癌細胞の浸潤を阻害(すなわち、ある程度まで減速、好ましくは停止)し;腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度まで減速及び好ましくは停止)し;腫瘍成長をある程度まで阻害し;及び/又は癌に関連する一又は複数の症状をある程度まで緩和する。「治療する」のここでの定義を参照せよ。薬が存在する癌細胞の成長を妨げ及び/又は死滅させる程度まで、それは、細胞分裂停止及び/又は細胞障害性であり得る。
【0031】
BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子の「成長阻害量」は、細胞、特に腫瘍、例えば癌細胞の成長をインビトロ又はインビボで阻害できる量である。腫瘍性細胞成長の阻害の目的のためのBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子の「成長阻害量」は、経験的及び常套的な形で決定することができる。
BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子の「細胞障害性量」は、細胞、特に腫瘍、例えば癌細胞をインビトロ又はインビボで破壊できる量である。腫瘍性細胞成長の阻害の目的のためのBDB結合オリゴペプチド又はBDB小有機分子の「細胞障害性量」は、経験的及び常套的な形で決定することができる。
【0032】
「BDBオリゴペプチド」は、よく知られた技術を用いて過度の実験をすることなしに同定することができる。この点において、ポリペプチド標的に特異的に結合する能力のあるオリゴペプチドのオリゴペプチドライブラリーを検索する技術は当分野でよく知られていることを注記する(例えば、米国特許第5556762号、同第5750373号、同第4708871号、同第4833092号、同第5223409号、同第5403484号、同第5571689号、同第5663143号;PCT公開第WO84/03506号、及びWO84/03564号;Geysen等, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81:3998-4002 (1984);Geysen等, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 82:178-182 (1985);Geysen等, in Synthetic Peptides as Antigens, 130-149 (1986);Geysen等, J. Immunol. Meth., 102:259-274 (1987);Schoofs等, J. Immunol., 140:611-616 (1988), Cwirla,S.E.等(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6378;Lowman,H.B.等 (1991) Biochemistry, 30:10832;Clackson,T.等 (1991) Nature, 352:624;Marks,J.D.等 (1991) J. Mol. Biol., 222:581;Kang,A.S.等 (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:8363、及びSmith, G.P. (1991) Current Opin. Biotechnol., 2:668参照)。
【0033】
「BDB小有機分子」とは、ここに記載されるようなIAPポリペプチドに、好ましくは特異的に結合する、ここに定義されるようなオリゴペプチド又は抗体以外の有機分子である。BDB小有機分子は既知の方法(例えばPCT公開第WO00/00823号及びWO00/39585号参照)を用いて同定され、化学的に合成されうる。BDB小有機分子は通常、約2000ダルトン未満の大きさであり、あるいは約1500、750、500、250又は200ダルトン未満の大きさであり、ここに記載される様なIAPポリペプチドに、好ましくは特異的に結合する能力のあるこのような有機分子は、よく知られた技術を用いて過度の実験をすることなしに同定されうる。この点において、ポリペプチド標的に結合する能力のある分子の有機分子ライブラリーを検索する技術は当分野でよく知られていることを注記する(例えばPCT公開第WO00/00823号及びWO00/39585号参照)。
【0034】
腫瘍関連ポリペプチド標的等の対象のIAPポリペプチドに「結合する」BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子がIAPポリペプチドを発現している細胞又は組織を標的とする診断及び/又は治療剤として有用であり、他のタンパク質と有意には交差反応しないように十分な親和性でBIRドメインと結合するものである。そのような実施態様では、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子の「非標的」タンパク質との結合の程度は、蛍光偏光法、蛍光標示式細胞分取器(FACS)分析又は放射免疫沈降(RIA)によって定量して、その特定の標的タンパク質とのBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子の結合の約10%よりも低いであろう。標的分子へのBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子の結合に関して、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープと「特異的に結合」又は「特異的に結合する」、又はそれに対して「特異的である」という用語は、非特異的な相互作用とは測定して異なる結合を意味する。特異的な結合は、例えば、一般に結合活性を持たない類似した構造の分子であるコントロール分子の結合性と比較して、分子の結合性を定量することによって測定することができる。例えば、特異的な結合性は、標的、例えば過剰の非標識標的に類似したコントロール分子との競合によって定量することができる。この場合、プローブに対する標識標的の結合が過剰の非標識標的によって競合的に阻害されるならば、特異的結合が表示される。ここで使用される特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープと「特異的に結合」又は「特異的に結合する」、又はそれに対して「特異的である」という用語は、例えば標的に対して少なくとも約10−4M、あるいは少なくとも約10−5M、あるいは少なくとも約10−6M、あるいは少なくとも約10−7M、あるいは少なくとも約10−8M、あるいは少なくとも約10−9M、あるいは少なくとも約10−10M、あるいは少なくとも約10−11M、あるいは少なくとも約10−12M、あるいはそれ以上のKdを持つ分子によって示されうる。一実施態様では、「特異的に結合する」という用語は、如何なる他のポリペプチド又はポリペプチドエピトープへ実質的に結合することなく分子が特定のポリペプチド又は特定のポリペプチドのエピトープに結合する結合を意味する。
【0035】
「IAPポリペプチドを発現する腫瘍細胞の成長を阻害する」BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子、又は「成長阻害」BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は、適切なIAPポリペプチドを発現又は過剰発現する癌細胞の測定可能な程の成長阻害を引き起こすものである。好ましい成長阻害BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は、一般的には、試験されたBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子で処理されていない腫瘍細胞であるコントロールといった適切なコントロールと比較して、20%より多く、好ましくは約20%から約50%、そしてさらに好ましくは50%よりも多く(例えば、約50%から約100%)でBIRドメイン含有発現腫瘍細胞の成長を阻害する。インビボでの腫瘍細胞の成長阻害は、下記の実験実施例に記載しているような種々の方法で確かめることができる。
【0036】
「アポトーシスを誘導する」BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化、及び/又は膜小胞の形成(アポトーシス体と呼ばれる)等により決定されるようなプログラム細胞死を誘導するものである。細胞は、通常、IAPポリペプチドを過剰発現しているものである。好ましくは、細胞は腫瘍細胞、例えば前立腺、乳房、卵巣、胃、子宮内膜、肺、腎臓、結腸、、メラノーマ、又は膀胱細胞である。アポトーシスに伴う細胞のイベントを評価するために種々の方法が利用できる。例えば、ホスファチジルセリン(PS)転位置をアネキシン結合により測定することができ;DNA断片化はDNAラダーリングにより評価することができ;DNA断片化に伴う細胞核/クロマチン凝結は低二倍体細胞の何らかの増加により評価することができる。好ましくは、アネキシン結合アッセイにおいて、アポトーシスを誘導するBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は、未処理細胞の約2〜50倍、好ましくは約5〜50倍、最も好ましくは約10〜50倍のアネキシン結合を誘導するという結果を生じるものである。
【0037】
「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には調節されない細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指す又は記述する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病又はリンパ様悪性腫瘍が含まれる。このような癌のより特定の例には、扁平細胞癌(squamous cell cancer)(例えば扁平上皮細胞癌)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平癌腫(squamous carcinoma)を含む肺癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌を含む胃(gastric)又は腹部(stomach)癌、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸管癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿道癌、肝癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓(kidney)又は腎(renal)癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝臓癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、多発性骨髄腫及びB細胞リンパ腫、脳、並びに頭部及び頸部の癌、及び関連した転移が含まれる。
「細胞増殖性疾患」及び「増殖性疾患」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖を伴う疾患を意味する。一実施態様では、細胞増殖性疾患は癌である。
ここで用いられる「腫瘍」は、悪性又は良性に関わらず、全ての腫瘍形成細胞成長及び増殖、及び全ての前癌性及び癌性細胞及び組織を意味する。
【0038】
「BIRドメイン含有発現細胞」は、内因性又は形質移入されたIAPポリペプチドを発現する。「IAPポリペプチド発現癌」は、IAPポリペプチドを有する細胞を含む癌である。場合によって、「IAPポリペプチド発現癌」は、その細胞内に十分なレベルのIAPポリペプチドを生成し、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子はそれへ結合することができ、癌に関して治療的効果を有する。他の実施態様では、選択的に「BIRドメイン含有発現癌」は、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子アンタゴニストが結合することができ、癌に対して治療的有効量を有するように十分なレベルのIAPポリペプチドを産生及び分泌する。IAPポリペプチドを「過剰発現」する癌は、同じ組織型の非癌性細胞と比較して、その細胞表面に顕著により高いレベルのIAPポリペプチドを有するものである。そのような過剰発現は、遺伝子増幅又は増大した転写又は翻訳によって生じ得る。IAPポリペプチド過剰発現は、診断又は予後アッセイにおいて、細胞内に存在するIAPタンパク質の増大したレベルを評価することによって定量されうる(例えば、IAPポリペプチドをコードする単離された核酸から、組み換えDNA技術を用いて調製することができる単離されたIAPポリペプチドに対して調製した抗IAPポリペプチド抗体を用いた免疫組織化学アッセイを介して;FACS分析など)。あるいは、又は付加的に、例えば、IAPコード化核酸又はその相補鎖と一致する核酸ベースプローブを使用する蛍光インサイツハイブリダイゼーション;(FISH;1998年10月に公開の国際公開98/45479を参照せよ)、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、又はリアルタイム定量PCR(RT-PCR)等のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を介して、細胞のIAPポリペプチドコード化核酸又はmRNAのレベルを測定してもよい。また、例えば、抗体ベースアッセイを用いて、血清のような生物学的体液中に流れている抗原を測定することによって、IAPポリペプチド過剰発現を研究してもよい(同じく、例えば、1990年6月12日に発行の米国特許第4933294号;1991年4月18日に公開の国際公開91/05264;1995年3月28日に発行の米国特許第5401638号;Sias等, J. Immunol. Methods 132: 73-80(1990)を参照せよ)。上記のアッセイとは別に、種々のインビボアッセイは、熟練技術者に入手可能である。例えば、患者の体の中にある細胞を、例えば、放射活性アイソトープのような検出可能な標識で選択的に標識した抗体に曝してもよく、患者の細胞への抗体の結合は、例えば、放射活性の外部スキャンニングによって、又は以前に抗体へ曝した患者から取り出した生検を分析することによって評価することができる。
【0039】
「標識」という語は、ここで用いられる場合、「標識化」BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子を作製するために、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子に直接的又は間接的に結合させる検出可能な化合物又は組成物を意味する。標識はそれ自身によって検出可能でもよく(例えば、放射性同位元素標識又は蛍光標識)、あるいは、酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物又は組成物の化学的変換を触媒してもよい。
ここで用いられる「細胞障害性剤」という用語は、細胞の機能を阻害又は阻止し及び/又は細胞破壊を生ずる物質を指す。この用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体)、化学治療薬、例えばメトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド類(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤、酵素及びその断片、例えば核溶解性酵素、抗生物質、及び毒素、例えばその断片及び/又は変異体を含む小分子毒素又は細菌、糸状菌、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素、そして下記に開示する種々の抗腫瘍又は抗癌剤を含むように意図されている。他の細胞障害性薬が下記に記載されている。殺腫瘍性剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
【0040】
ここで用いられる際の「成長阻害剤」は、細胞、特にIAP発現癌細胞の成長をインビトロ又はインビボの何れかで阻害する化合物又は組成物を意味する。よって、成長阻害剤は、S期でIAP発現細胞の割合を有意に減少させるものである。成長阻害剤の例は、細胞周期の進行を(S期以外の位置で)阻害する薬剤、例えばG1停止又はM期停止を誘導する薬剤を含む。古典的なM期ブロッカーは、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン類、及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンを含む。またG1停止させるこれらの薬剤は、S期停止にも波及し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びアラ-Cである。更なる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn及びIsrael, 編, Chapter 1, 表題「Cell cycle regulation, oncogene, and antineoplastic drugs」, Murakami等, (WB Saunders: Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。タキサン類(パクリタキセル及びドセタキセル)は、共にイチイに由来する抗癌剤である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、ローン・プーラン ローラー)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、ブリストル-マイヤー スクウィブ)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体から微小管の集合を促進し、脱重合を防ぐことによって微小管を安定化にし、その結果細胞の有糸分裂を阻害する。
【0041】
「ドキソルビシン」はアントラサイクリン抗生物質である。ドキソルビシンの完全な化学名は、(8S-シス)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リキソ-ヘキサピラノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-8-(ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-5,12-ナフタセンジオンである。
【0042】
「サイトカイン」なる用語は、一つの細胞集団から放出され、他の細胞に細胞間メディエータとして作用するタンパク質の一般用語である。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカインに含まれるのは、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インシュリン;プロインシュリン;レラキシン;プロレラキシン;糖タンパク質ホルモン、例えば濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体化ホルモン(LH);肝臓成長因子;線維芽成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子-α及び-β;ミューラー阻害因子;マウス生殖腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-β等の神経成長因子;血小板成長因子;TGF-α及びTGF-β等のトランスフォーミング成長因子(TGFs);インシュリン様成長因子-I及びII;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン-α、-β、及び-γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSFs)、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF);及び顆粒球-CSF(G-CSF);インターロイキン(ILs)、例えばIL-1、IL-1a、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12;腫瘍壊死因子、例えばTNF-α及びTNF-β;及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子である。ここで用いられる際、用語サイトカインには、天然供給源から、又は組換え細胞培養からのタンパク質、及び天然配列サイトカインの生物学的に活性な等価物が含まれる。
【0043】
「パッケージ挿入物」という用語は、効能、用途、服用量、投与、配合禁忌及び/又はその治療薬の用途に関する警告についての情報を含む、治療薬の商業的包装を慣習的に含めた指示書を指す。
【0044】
(本発明の組成物及び方法)
メイタンシン及びメイタンシノイド
好ましい一実施態様では、本発明のBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は一又は複数のメイタンシノイド分子と結合している。
メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害するように作用する分裂阻害剤である。メイタンシンは、最初、東アフリカシラブMaytenus serrataから単離されたものである(米国特許第3896111号)。その後、ある種の微生物がメイタンシノイド類、例えばメイタンシノール及びC-3メイタンシノールエステルを生成することが発見された(米国特許第4151042号)。合成メイタンシノール及びその誘導体及び類似体は、例えば米国特許第4137230号;同4248870号;同4256746号;同4260608号;同4265814号;同4294757号;同4307016号;同4308268号;同4308269号;同4309428号;同4313946号;同4315929号;同4317821号;同4322348号;同4331598号;同4361650号;同4364866号;同4424219号;同4450254号;同4362663号;及び同4371533号に開示されており、その開示は出典を明示してここに取り込まれる。
【0045】
カリケアマイシン
対象の他の免疫コンジュゲートには、1つ又は複数のカリケアマイシン分子と結合したBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子が含まれる。抗生物質のカリケアマイシンファミリーはサブ-ピコモルの濃度で二重鎖DNA破壊を生じることができる。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製については、米国特許第5712374号、同5714586号、同5739116号、同5767285号、同5770701号、同5770710号、同5773001号、同5877296号(全て、American Cyanamid Company)を参照のこと。使用可能なカリケアマイシンの構造類似体には、限定するものではないが、γ、α、α、N-アセチル-γ、PSAG及びθ(Hinman等, Cancer Research, 53:3336-3342(1993)、Lode等 Cancer Research, 58:2925-2928(1998)及び上述したAmerican Cyanamidの米国特許)が含まれる。BDBオリゴペプチドが結合可能な他の抗腫瘍剤は、葉酸代謝拮抗薬であるQFAである。カリケアマイシン及びQFAは双方とも、細胞内に作用部位を有し、原形質膜を容易に通過しない。よって抗体媒介性インターナリゼーションによるこれらの薬剤の細胞への取込により、細胞障害効果が大きく向上する。
【0046】
他の細胞障害剤
本発明のBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子と結合可能な他の抗腫瘍剤には;アドリアマイシン(ドキソルビシン)、4-第三ブチルフェノールエトポシド、タキソール、カンプトセシン、メトトレキセート、ビンクリスチン又はタモキシフェン、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン及び5-フルオロウラシル、米国特許第5053394号、同5770710号に記載されており、集合的にLL-E33288複合体として公知の薬剤のファミリー、並びにエスペラマイシン(esperamicine)(米国特許第5877296号)が含まれる。
使用可能な酵素活性毒及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。
【0047】
腫瘍を選択的に破壊するため、BDBオリゴペプチドは高い放射性を有する原子を含有してよい。放射性コンジュゲートしたタンパク質を生成するために、種々の放射性同位元素が利用される。例には、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位元素が含まれる。コンジュゲートが診断用に使用される場合、それはシンチグラフィー研究用の放射性原子、例えばTc99m又はI123、又は核磁気共鳴(NMR)映像(磁気共鳴映像、MRIとしても公知)用のスピン標識、例えばヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含有し得る。
放射-又は他の標識が、公知の方法でコンジュゲートに導入される。例えば、BDBオリゴペプチドは生物合成されるか、又は例えば水素の代わりにフッ素-19を含む適切なアミノ酸前駆体を使用する化学的なアミノ酸合成により合成される。標識、例えばTc99m又はI123、Re186、Re188及びIn111は、ペプチドのシステイン残基を介して結合可能である。イットリウム-90はリジン残基を介して結合可能である。IODOGEN法(Fraker等(1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80:49-57)は、ヨウ素-123の導入に使用することができる。他の方法の詳細は、「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」(Chatal, CRC Press 1989)に記載されている。
【0048】
抗体と細胞障害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)がBDBオリゴペプチドに放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照されたい。リンカーは細胞中の細胞障害剤の放出を容易にするための「切断可能リンカー」であってよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ過敏性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカーが使用され得る(Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992);米国特許第5208020号)。
別法として、BDBオリゴペプチド及び細胞障害剤を含有する融合タンパク質は、例えば組換え技術又はペプチド合成により作製される。DNAの長さは、コンジュゲートの所望する特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により離間しているか、又は互いに隣接しているコンジュゲートの2つの部分をコードする領域をそれぞれ含有する。
さらに他の実施態様において、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)にBDBオリゴペプチドをコンジュゲートし、ここで抗体-レセプターコンジュゲートを患者に投与し、続いて清澄剤を使用し、循環から未結合コンジュゲートを除去し、細胞障害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0049】
A.BDBオリゴペプチド
本発明のBDBオリゴペプチドはここで記載される様なIAPポリペプチドに、好ましくは特異的に、結合するオリゴペプチドである。BDBオリゴペプチドは、既知のオリゴペプチド合成法を用いて化学的に合成することができ、あるいは組換え技術を用いて調製及び生成することができる。BDBオリゴペプチドは通常、少なくとも約3のアミノ酸長であり、或いは少なくとも約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100のアミノ酸長以上であり、このようなオリゴペプチドはここに記載される様なIAPポリペプチドに対して好ましくは特異的に結合する能力がある。BDBオリゴペプチドは、よく知られた技術を用いて過度の実験をすることなしに同定することができる。この点において、ポリペプチド標的に特異的に結合する能力のあるオリゴペプチドのオリゴペプチドライブラリーを検索する技術は当分野でよく知られていることを注記する(例えば、米国特許第5556762号、同第5750373号、同第4708871号、同第4833092号、同第5223409号、同第5403484号、同第5571689号、同第5663143号;PCT公開第WO84/03506号、及びWO84/03564号;Geysen等, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81:3998-4002 (1984);Geysen等, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 82:178-182 (1985);Geysen等, in Synthetic Peptides as Antigens, 130-149 (1986);Geysen等, J. Immunol. Meth., 102:259-274 (1987);Schoofs等, J. Immunol., 140:611-616 (1988), Cwirla,S.E.等(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6378;Lowman,H.B.等 (1991) Biochemistry, 30:10832;Clackson,T.等 (1991) Nature, 352:624;Marks,J.D.等 (1991) J. Mol. Biol., 222:581;Kang,A.S.等 (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:8363、及びSmith, G.P. (1991) Current Opin. Biotechnol., 2:668参照)。
【0050】
この点において、バクテリオファージ(ファージ)ディスプレイは、大きなオリゴペプチドライブラリーを検索して、ポリペプチド標的に特異的に結合する能力のあるこれらライブラリーのメンバーを同定することを可能にするよく知られた技術の一つである。ファージディスプレイは、様々なポリペプチドがバクテリオファージ粒子の表面上のコートタンパク質に融合タンパク質として表示されることによる技術である(Scott,J.K.及びSmith G. P. (1990) Science 249:386)。ファージディスプレイの有用性は、選択的にランダム化されたタンパク質変異体(又はランダムクローンcDNA)の大きなライブラリーを標的分子に高い親和性で結合するこれらの配列について素早く効果的に分類することができる点にある。ファージでのペプチド(Cwirla,S.E.等 (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6378)又はタンパク質(Lowman,H.B.ら (1991) Biochemistry, 30:10832; Clackson,T.ら (1991) Nature, 352: 624; Marks,J.D.等 (1991), J. Mol. Biol., 222:581; Kang,A.S.等 (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:8363)ライブラーリのディスプレイは、特異的に結合する特性を有するものについて無数のポリペプチド又はオリゴペプチドをスクリーニングするために使用されている(Smith, G.P. (1991) Current Opin. Biotechnol., 2:668)。ランダム突然変異体のファージライブラリーの分類は、多数の変異体を構築して増殖させる方法、標的レセプターを用いた親和性精製の方法、及び結合環境の結果を評価する手段を必要とする。米国特許第5223409号、同第5403484号、同第5571689号、及び同第5663143号。
【0051】
ほとんどのファージディスプレイ法は繊維状ファージを使用していたが、λファージディスプレイシステム(WO95/34683;米国特許第5627024号)、T4ファージディスプレイシステム(Ren, Z-J.ら (1998) Gene 215:439; Zhu, Z. (1997) CAN 33:534; Jiang, J.等 (1997) can 128:44380; Ren, Z-J.等 (1997) CAN 127:215644; Ren, Z-J. (1996) Protein Sci. 5:1833; Efimov, V.P.等 (1995) Virus Genes 10:173)及びT7ファージディスプレイシステム(Smith,G.P.及びScott,J.K. (1993) Methods in Enzymology,217, 228-257; 米国特許第5766905号)も知られている。
現在、基礎的なファージディスプレイ構想の多くの他の改良及び変形が開発されている。これらの改良は、選択された標的分子への結合についてペプチドライブラリーをスクリーニングするための、及びこれらのタンパク質が所望の特性をスクリーニングする潜在能力で機能性タンパク質をディスプレイするためのディスプレイシステムの能力を増強する。ファージディスプレイ反応のための組み換え反応手段について記載があり(WO98/14277)及びファージディスプレイライブラリーは二分子相互作用(WO98/20169;WO98/20159)及び拘束性へリックスペプチドの特性(WO98/20036)を分析及び制御するために使用されている。WO97/35196は、リガンドが標的分子に結合しうる第一の溶液、及び親和性リガンドが標的分子に結合しない第二の溶液とファージディスプレイライブラリーを接触させて結合リガンドを選択的に単離する、親和性リガンドの単離方法を記載する。WO97/46251は、親和性精製抗体でランダムファージディスプレイライブラリーをバイオパニングし、次いで結合ファージを単離し、続いてマイクロプレートのウェルでマイクロパニングして高親和性結合ファージを単離する方法を記載する。黄色ブドウ球菌(Staphlylococcus aureus)タンパク質Aの親和性タグとしての使用も報告されている(Li等, (1998) Mol Biotech., 9:187)。WO97/47314は、ファージディスプレイライブラリーでもよいコンビナトリアルライブラリーを用いて酵素特異性を識別するための基質サブトラクションライブラリーの使用を記載している。ファージディスプレイに用いる洗浄剤における使用に適した酵素を選択する方法はWO97/09446に記載される。特異的に結合するタンパク質を選択する更なる方法は、米国特許第5498538号、同第5432018号、及びWO98/15833に記載されている。
ペプチドライブラリーの作製及びこれらのライブラリーのスクリーニングの方法は、米国特許第5723286号、同第5432018号、同第5580717号、同第5427908号、同第5498530号、同第5770434号、同第5734018号、同第5698426号、同第5763192号、及び同第5723323号に記載される。
【0052】
また、ここに記載するようにキメラBDBオリゴペプチドを生成するために他のポリペプチド配列と融合したBDBオリゴペプチドも取り込まれる。ショウジョウバエタンパク質ANTENNAPEDIAの研究により三つめの螺旋状ドメインの16アミノ酸が細胞膜を越えて転座しており細胞質内に挿入していることを発見した (Prochiantz A., (1996) Curr. Opinion Neurobiol. (5):629-34, Derossi等, (1998) Trends Cell Biol. (8) 84-87)。このペプチドはペネトラチン(Penetratin)(RQIKIWFQNRRMKWKK-NH2 (SEQ ID NO:54))と命名された。細胞膜転座が起こるメカニズムはまだ定義されていないが、分解することなく細胞質からANTENNAPEDIAペプチドが回収されることとその低細胞毒性であることにより、細胞に作用しうるキメラ分子を生成するために他のペプチド配列に融合して、活性を損なうことなく簡単に内部移行しうることが示される。このようなキメラ分子は、化学的結合反応が不要であることに有益性があり、キメラは直接的合成又はプラスミド発現ベクターへの挿入の何れかによる。さらに、ペネトラチン配列は修飾、例としてビオチン化又はリン酸化を加えて融合させ得ることにも有用性がある。さらに、エピトープタグ配列を加えることにより抗体を用いたキメラ分子回収を亢進することができる。ペネトラチン/SMAC融合を合成し、IAPとの相互作用を成功裏に示す(Arnt等, (2002) Jour. Bio. Chem. 277 (46) 44236-4424300)。Arnt等はSMACの4〜8アミノ酸をペネトラチン配列に融合し、ビオチン化転位を加えた。30分のインキュベーション後、SMAC/ペネトラチン融合ポリペプチドをストレプトアビジン−アガロースにより回収し、結合分子をSDS−PAGEにより精製し、免疫ブロット法により分析した。この実験によりSMAC/ペネトラチン融合ポリペプチドは試験した細胞系のXIAP及びcIAP1への結合を示した。さらに、この研究班はSMAC/ペネトラチン融合ポリペプチドがカスパーゼ活性が増強するにつれてIAPの効果的阻害剤として働くことを証明した。ペネトラチンはここで明確に記載するように、内部移行することが立証された他のオリゴペプチド、TAT転写因子、Herpes、VP22、FGF−2及びラクトフェリンも又、組み込まれる。
【0053】
B.BDB小有機分子
BDB小有機分子とは、ここに記載されるようなIAPポリペプチドに、好ましくは特異的に結合する、ここに定義されるようなオリゴペプチド又は抗体以外の有機分子である。BDB小有機分子は既知の方法(例えばPCT公開第WO00/00823及びWO00/39585号参照)を用いて同定され、化学的に合成されうる。BDB小有機分子は通常、約2000ダルトンの大きさ未満であり、あるいは約1500、750、500、250又は200ダルトンの大きさであり、ここに記載される様なIAPポリペプチドに、好ましくは特異的に結合する能力のあるこのような有機分子は、よく知られた技術を用いて過度の実験をすることなしに同定されうる。この点において、ポリペプチド標的に結合する能力のある分子の有機分子ライブラリーを検索する技術は当分野でよく知られていることを注記する(例えばPCT公開第WO00/00823及びWO00/39585号参照)。BDB小有機分子は、例えばアルデヒド、ケトン、オキシム、ヒドラゾン、セミカルバゾン、カルバジド、一級アミン、二級アミン、三級アミン、N置換ヒドラジン、ヒドラジド、アルコール、エーテル、チオール、チオエーテル、ジスルフィド、カルボン酸、エステル、アミド、尿素、カルバミン酸塩、炭酸塩、ケタール、チオケタール、アセタール、チオアセタール、ハロゲン化アリール、アリールスルホン酸、ハロゲン化アルキル、アルキルスルホン酸、芳香族化合物、複素環化合物、アニリン、アルケン、アルキン、ジオール、アミノアルコール、オキサゾリジン、オキサゾリン、チアゾリジン、チアゾリン、エナミン、スルホンアミド、エポキシド、アジリジン、イソシアン酸塩、塩化スルホニル、ジアゾ化合物、酸塩化物等であり得る。
【0054】
C.所望する特性を有するBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子のスクリーニング
IAPポリペプチドに結合するオリゴペプチド及び有機分子を生成する技術を、上記にて記載した。所望するような、所定の生物学的特性を有する抗体、オリゴペプチド又は有機分子をさらに選択することができる。
本発明のBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子の成長阻害効果を、例えば、内因的又はIAP遺伝子によるトランスフェクション後のいずれかでIAPポリペプチドを発現する細胞を用いる当該分野で周知の方法によって評価することができる。例えば、適切な腫瘍細胞株及びIAP形質移入細胞は、数日間(例えば、2−7)、種々の濃度の本発明のBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子で処理し、クリスタル・バイオレット又はMTTで染色、又は幾つかの他の比色アッセイによって分析し得る。増殖を測定するその他の方法は、本発明のBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子の存在又は非存在下で処理した細胞の3H-チミジン取り込みを比較することによる。処理の後、細胞を収集し、DNAへ取り込まれた放射能をシンチレーションカウンターで定量化した。適切なポジティブコントロールには、細胞株の成長を阻害することが知られている成長阻害抗体、オリゴペプチド又は小有機分子でその選択した細胞株を処理することが含まれる。インビボでの成長阻害は、当該分野で知られている種々の方法で確かめることができる。好ましくは、腫瘍細胞は、IAPポリペプチドを過剰発現するものである。好ましくは、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は、ある実施態様では約0.5から30μg/mlの抗体濃度で、未処理腫瘍細胞と比べて約25−100%、より好ましくは約30−100%、そしてさらにより好ましくは約50−100%又は70−100%のIAP発現腫瘍細胞のアポトーシスをインビトロ又はインビボで引き起こす。
【0055】
細胞死を誘発するBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子を選択するために、例えばヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルー又は7AADの取込みにより示される膜インテグリティの損失度合いを対照と比較して求める。PI取込みアッセイは、補体及び免疫エフェクター細胞の不在下で行われる。IAPポリペプチド発現細胞腫瘍細胞を、培地のみ、又は適切なBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子を含有する培地でインキュベートする。細胞を3日間インキュベートする。各処理に続いて、細胞を洗浄し、細胞凝塊除去のために35mmのストレーナキャップ付き12x75チューブ(チューブ当たり1ml、処理グループ当り3チューブ)に等分する。次いで、チューブへPI(10μg/ml)を与える。サンプルをFACSCAN(登録商標)フローサイトメータとFACSCONVERT(登録商標)セルクエスト(CellQuest)ソフトウエア(Becton Dickinson)を使用して分析してもよい。PI取込みによって測定されるような、統計的に有意なレベルの細胞死を誘発するBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は、細胞死誘発BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子として選択することができる。
【0056】
関心のあるIAPポリペプチド上のBIRドメインへ結合するBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子を選択するために、AnalystTM HT 96-384 (Molecular Devices Corp.) 等の偏光装置が用いられる。蛍光偏光親和性測定器の試料は、50mM Tris(pH 7.2)、120mM NaCl、1%ウシグロブリン及び0.05%オクチルグルコシド等の偏光緩衝液に5-カルボキシフルオレセイン結合ペプチドを最終濃度3〜5nMになるように添加して調製する。インキュベーション工程の後、96穴黒色HE96プレート(Molecular Devices Corp.)上で反応液を標準的なカットオフフィルタを用いて蛍光性色素(lex = 485 nm; lem = 530 nm)を測定する。見かけのKd値をEC50値から求めることができる。阻害定数(Ki)は以前詳述されているように決定することができる(Keating等, (2000) Proceedings of SPIE: In vitro diagnostic instrumentation Cohn, G.E., Ed. p128-137)。
【0057】

【0058】
BDBオリゴペプチドの機能の実質的修飾は、(a)置換領域のBDBオリゴペプチド骨格の構造、例えばシート又は螺旋配置、(b)標的部位の電荷又は分子疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持しながら、それらの効果において有意に異なる置換基を選択することにより達成される。天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいてグループに分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン, met, ala, val, leu, ile;
(2)中性の親水性:cys, ser, thr;
(3)酸性:asp, glu;
(4)塩基性:asn, gln, his, lys, arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly, pro; 及び
(6)芳香族:trp, tyr, phe。
非保存的置換は、これらの分類の1つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。また、そのように置換された残基は、保存的置換部位、又はより好ましくは、残された(非保存)部位に導入されうる。
変異は、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャンニング、及びPCR突然変異誘発等のこの分野で知られた方法を用いてなすことができる。部位特異的突然変異誘発[Carter等, Nucl. Acids Res., 13: 4331 (1986); Zoller等, Nucl. Acids Res., 10: 6487 (1987)]、カセット突然変異誘発[Wells等, Gene, 34: 315 (1985)]、制限的選択突然変異誘発[Wells等, Philos. Trans. R. Soc. London SerA, 317: 415 (1986)]又は他の知られた技術をクローニングしたDNAに実施して、BDBオリゴペプチド変異体DNAを作成することもできる。
【0059】
また、隣接配列に沿って一又は複数のアミノ酸を同定するのにスキャンニングアミノ酸分析を用いることができる。好ましいスキャンニングアミノ酸は比較的小さく、中性のアミノ酸である。そのようなアミノ酸は、アラニン、グリシン、セリン、及びシステインを含む。アラニンは、ベータ炭素を越える側鎖を排除し変異体の主鎖構造を変化させにくいので、この群の中で典型的に好ましいスキャンニングアミノ酸である[Cunningham及びWells, Science, 244: 1081-1085 (1989)]。また、アラニンは最もありふれたアミノ酸であるため典型的には好ましい。さらに、それは埋もれた及び露出した位置の両方に見られることが多い[Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.); Chothia, J. Mol. Biol., 150: 1 (1976)]。アラニン置換が十分な量の変異体を生じない場合は、アイソテリック(isoteric)アミノ酸を用いることができる。
BDBオリゴペプチドの適切なコンフォメーションを維持することに関与していない任意のシステイン残基も、分子の酸化的安定性を向上させ、異常な架橋を防ぐために、概してセリンと置換され得る。逆に、BDBオリゴペプチドの安定性を向上させるために、それにシステイン結合(複数でも)を加えてもよい。
【0060】
特に好ましい型の置換変異体は、親BDBオリゴペプチドの一又は複数の残基の置換を含む。一般的に、更なる開発のために得られた変異体は、それらが生成された親BDBオリゴペプチドと比較して向上した生物学的特性を有している。そのような置換変異体を生成する簡便な方法には、ファージディスプレイを使用する親和性成熟がふくまれる。簡潔に言えば、BDBオリゴペプチド作用部位を変異させてその部位にアミノ酸置換を生成させる。このように生成されたBDBオリゴペプチド変異体は、繊維状ファージ粒子から、各粒子内に充填されたM13の遺伝子III産物への融合物として一価形態で表示される。ファージ表示変異体は、ついで、ここに開示されるようなそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。改変の候補となる領域部位を同定するために、アラニンスキャンニング突然変異誘発を実施し、BDBオリゴペプチド結合に有意に寄与する高頻度可変領域残基を同定することができる。加えて、BDBオリゴペプチド/BIRドメイン複合体の結晶構造を分析してBDBオリゴペプチドとIAPポリペプチドBIRドメインとの接点を同定するのが有利である場合もある。このような接触残基及び隣接残基は、ここで詳しく記述した技術による置換の候補である。そのような変異体が生成されたら、変異体のパネルにここに記載するようなスクリーニングを施し、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つBDBオリゴペプチドを更なる開発のために選択することができる。
【0061】
2.宿主細胞の選択及び形質転換
宿主細胞を、ここに記載したIAPポリペプチド生成のための発現又はクローニングベクターで形質移入又は形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適当に変性された常套的栄養培地で培養する。培養条件、例えば培地、温度、pH等々は、過度の実験をすることなく当業者が選ぶことができる。一般に、細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコール、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M.Butler編 (IRL Press, 1991)及び上掲のSambrook等に見出すことができる。
真核生物細胞形質移入及び原核生物細胞形質転換の方法、例えば、CaCl、CaPO、リポソーム媒介及びエレクトロポレーションは当業者に知られている。用いられる宿主細胞に応じて、その細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。前掲のSambrook等に記載された塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションが、一般的に原核生物に対して用いられる。アグロバクテリウム・トゥメファシエンスによる感染が、Shaw等, Gene, 23:315(1983)及び1989年6月29日公開の国際公開89/05859に記載されているように、或る種の植物細胞の形質転換に用いられる。このような細胞壁のない哺乳動物の細胞に対しては、Graham及びvan der Eb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈降法が用いられる。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な態様は米国特許第4,399,216号に記載されている。酵母菌中への形質転換は、典型的には、Van Solingen等, J. Bact., 130:946 (1977)及びHsiao等, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 76:3829 (1979)の方法に従って実施される。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷の細胞、又はポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチン等を用いる細菌プロトプラスト融合もまた用いることもできる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keown等, Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)及び Mansour等, Nature, 336:348-352 (1988)を参照のこと。
【0062】
ここに記載のベクターにDNAをクローニングあるいは発現するために適切な宿主細胞は、原核生物、酵母菌、又は高等真核生物細胞である。適切な原核生物には、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性微生物、例えば大腸菌のような腸内細菌科が含まれる。種々の大腸菌株が公に利用可能であり、例えば、大腸菌K12株MM294(ATCC31446);大腸菌X1776(ATCC31537);大腸菌株W3110(ATCC27325)及びK5772(ATCC53635)である。他の好ましい原核動物宿主細胞は、大腸菌属、例えば大腸菌(E. coli)、エンテロバクター、エルビニア(Erwinia)、クレブシエラ(Klebsiella)、プロテウス(Proteus)、サルモネラ、例えばネズミチフス菌(Salmonella Typhimurium)、セラチア、例えばセラチア・マルセサンス(Serratia marcescans) 、及び赤痢菌、並びに桿菌、例えばバチルス・スブチルス(B. subtilis)及びバチルス・リチェニフォルミス(B. licheniformis)(例えば、1989年4月12日発行のDD266710に記載されたバチルス・リチェニフォルミス41P)、シュードモナス、例えば緑膿菌及びストレプトマイセスなどの腸内細菌科を含む。これらの例は限定ではなく例示である。株W3110は、組換えDNA生成物発酵のための共通の宿主株であるので一つの特に好ましい宿主又は親宿主である。好ましくは、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌する。例えば、株W3110を、宿主にとって内因性のタンパク質をコードする遺伝子の遺伝子変異をもたらすように修飾してもよく、そのような宿主の例としては、完全な遺伝子型tonAを有する大腸菌W3110株1A2;完全な遺伝子型tonA ptr3を有する大腸菌W3110株9E4;完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15 (argF−lac)169 degP ompT kanrを有する大腸菌W3110株27C7(ATCC 55,244);完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15 (argF-lac)169 degP ompT rbs7 ilvG kanrを有する大腸菌W3110株37D6;非カナマイシン耐性degP欠失変異を持つ37D6株である大腸菌W3110株40B4;及び1990年8月7日発行の米国特許第4946783号に開示された変異周辺質プロテアーゼを有する大腸菌株を含む。あるいは、クローニングのインビトロ法、例えばPCR又は他の核酸ポリメラーゼ反応が好ましい。
【0063】
完全長BDBオリゴペプチド、及びBDBオリゴペプチド融合タンパク質は、治療用のBDBオリゴペプチドが細胞傷害剤(例えば、毒素)と結合し、そのコンジュゲートそのものが腫瘍細胞の破壊において有効性を示す場合など、特にグリコシル化が必要ない場合に、細菌で産生させることができる。大腸菌での産生が、より迅速でより費用効率的である。細菌でのBDBオリゴペプチドの発現については、例えば、米国特許第5648237号(Carter等)、米国特許第5789199号(Joly等)、及び翻訳開始部位(TIR)及び発現と分泌を最適化するシグナル配列を記載している米国特許第5840523号(Simmons等)を参照のこと。これら特許は、ここに参考文献として取り入れられている。発現の後、BDBオリゴペプチドは、大腸菌細胞ペーストから可溶性分画へ分離し、精製することができる。
【0064】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、BDBオリゴペプチドコード化ベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシアは、通常用いられる下等真核生物宿主微生物である。他に、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)(Beach及びNurse, Nature, 290: 140 [1981]; 1985年5月2日公開の欧州特許第139383号);クリュイベロミセス宿主(Kluyveromyces hosts)(米国特許第4943529号; Fleer等, Bio/Technology, 9: 968-975 (1991))、例えばクリュイベロミセスラクチス(K. lactis)(MW98-8C, CBS683, CBS4574; Louvencourt等, J. Bacteriol., 154(2): 737-742 [1983])、クリュイベロミセス・フラギリス(K. fragilis)(ATCC12424)、クリュイベロミセス・ブルガリクス(K. bulgaricus)(ATCC16045)、クリュイベロミセス・ウィケラミイ(K. wickeramii)(ATCC24178)、クリュイベロミセス・ワルチイ(K. waltii)(ATCC56500)、クリュイベロミセス・ドロソフィラルム(K. drosophilarum)(ATCC36906; Van den Berg等, Bio/Technology, 8: 135 (1990))、クリュイベロミセス・テモトレランス(K. thermotolerans)及びクリュイベロミセス・マルキシアナス(K. marxianus);ヤロウィア(yarrowia)(欧州特許第402226号);ピシア・パストリス(Pichia pastoris)(欧州特許第183070号; Sreekrishna等, J. Basic Microbiol, 28: 265-278 [1988]);カンジダ;トリコデルマ・レーシア(Trichoderma reesia)(欧州特許第244234号);アカパンカビ(Case等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76: 5259-5263 [1979]);シュワニオマイセス(Schwanniomyces)、例えばシュワニオマイセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)(1990年10月31日公開の欧州特許第394538号);及び糸状真菌、例えば、ニューロスポラ、ペニシリウム、トリポクラジウム(Tolypocladium)(1991年1月10日公開の国際公開91/00357);及びアスペルギルス宿主、例えばアスペルギルス・ニダランス(Ballance等, Biochem. Biophys. Res. Commun., 112: 284-289 [1983]; Tilburn等, Gene, 26: 205-221 [1983]; Yelton等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 1470-1474 [1984])及びアスペルギルス・ニガー(Kelly及びHynes, EMBO J., 4: 475-479 [1985])が含まれる。ここで好ましいメチロトロピック(C1化合物資化性、Methylotropic)酵母は、これらに限られないが、ハンセヌラ(Hansenula)、カンジダ、クロエケラ(Kloeckera)、ピシア(Pichia)、サッカロミセス、トルロプシス(Torulopsis)、及びロドトルラ(Rhodotorula)からなる属から選択されたメタノールで成長可能な酵母を含む。この酵母の分類の例示である特定の種のリストは、C. Anthony, The Biochemistry of Methylotrophs, 269 (1982)に記載されている。
【0065】
グリコシル化BDBオリゴペプチドの発現に適した宿主細胞は、多細胞生物から由来のものである。非脊椎動物細胞の例には、植物細胞、例えば綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト及びタバコの細胞培養と同様に、ショウジョウバエS2及びヨトウ(spodoptera)Sf9等の昆虫細胞が含まれる。多くのバキュロウイルス株及び変異体、及びヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(幼虫(caterpillar))、ネッタイシマカ(蚊)、ヒトスジシマカ(蚊)、キイロショウジョウバエ(ショウジョウバエ)、及びカイコ等の宿主に対応する許容性昆虫宿主細胞が同定されている。種々のトランスフェクション用のウィルス株、例えばオートグラファ・カルフォルニカ(Autographa californica)NPVのL−1変異株、カイコNPVのBm-5株が公に入手でき、このようなウィルスは、本発明に係るウィルスとして、特に、ヨトウガ細胞のトランスフェクションのために使用してもよい。
【0066】
しかし、最大の関心は脊椎動物細胞に向けられ、培養(組織培養)した脊椎動物細胞の増殖がルーチン作業となった。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40(COS−7,ATCC CRL1651)で形質転換させたサル腎CV1細胞株;ヒト胚芽腎細胞株(293又は懸濁培養で成長するようにサブクローン化された293細胞,Graham等,J.Gen Virol.,36:59 (1977));ベビーハムスター腎細胞(BHK,ATCC CCL10);チヤイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO,Urlaub等, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.,23:243-251 (1980));サル腎細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO−76,ATCC CRL-1587);ヒト頚管腫瘍細胞(HELA,ATCC CCL2);イヌ腎細胞(MDCK,ATCC CCL34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A,ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL75);ヒト肝細胞(Hep G2,HB 8065);マウス乳房腫瘍細胞(MMT 060562,ATCC CCL51);TRI細胞(Mather等,Annals N.Y.Acad.Sci.,383:44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝臓癌細胞(HepG2)である。
宿主細胞は、BDBオリゴペプチド生成のために上述の発現又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターを誘発し、形質転換体を選出し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適切に修正した通常の栄養培地で培養される。
【0067】
3.複製可能なベクターの選択及び使用
BDBオリゴペプチドをコードする核酸(例えば、cDNA又はゲノムDNA)は、クローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター内に挿入される。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、又はファージの形態とすることができる。適切な核酸配列が、種々の手法によってベクターに挿入される。一般に、DNAはこの分野で周知の技術を用いて適当な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、一又は複数のシグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列を含む。これらの成分の一又は複数を含む適当なベクターの作成には、当業者に知られた標準的なライゲーション技術を用いる。
【0068】
BDBオリゴペプチドは直接的に組換え手法によって生成されるだけではなく、シグナル配列あるいは成熟タンパク質あるいはポリペプチドのN-末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種性ポリペプチドとの融合ペプチドとしても生成される。一般に、シグナル配列はベクターの成分であるか、ベクターに挿入されるBDBオリゴペプチド-コード化DNAの一部である。シグナル配列は、例えばアルカリフォスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppあるいは熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列であってよい。酵母の分泌に関しては、シグナル配列は、酵母インベルターゼリーダー、アルファ因子リーダー(酵母菌属(Saccharomyces)及びクリュイベロミセス(Kluyveromyces)α因子リーダーを含み、後者は米国特許第5,010,182号に記載されている)、又は酸ホスフォターゼリーダー、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー(1990年4月4日発行の欧州特許第362179号)、又は1990年11月15日に公開された国際公開90/13646に記載されているシグナルであり得る。哺乳動物細胞の発現においては、哺乳動物シグナル配列は、同一あるいは関連種の分泌ポリペプチド由来のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダーのようなタンパク質の直接分泌に使用してもよい。
【0069】
発現及びクローニングベクターは共に一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。そのような配列は多くの細菌、酵母及びウイルスについてよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミド開始点は酵母に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。
発現及びクローニングベクターは、典型的には、選べるマーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードしており、例えばバシリのD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子がある。
【0070】
哺乳動物細胞に適切な選べるマーカーの例は、DHFRあるいはチミジンキナーゼのように、BDBオリゴペプチド-コード化核酸を取り込むことのできる細胞成分を同定することのできるものである。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、Urlaub等により, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980)に記載されているようにして調製され増殖されたDHFR活性に欠陥のあるCHO株化細胞である。酵母菌中での使用に好適な選択遺伝子は酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である[Stinchcomb等, Nature, 282:39(1979);Kingsman等, Gene, 7:141(1979);Tschemper等, Gene, 10:157(1980)]。trp1遺伝子は、例えば、ATCC番号44076あるいはPEP4-1のようなトリプトファンで成長する能力を欠く酵母菌の突然変異株に対する選択マーカーを提供する[Jones, Genetics, 85:12 (1977)]。
【0071】
発現及びクローニングベクターは、通常、BDBオリゴペプチド-コード化核酸配列に作用可能に結合し、mRNA合成を方向付けるプロモーターを含む。種々の有能な宿主細胞により認識されるプロモーターが知られている。原核生物宿主との使用に適したプロモーターはβ-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系[Chang等, Nature, 275:615 (1978); Goeddel等, Nature, 281:544 (1979)]、アルカリフォスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系[Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057 (1980); 欧州特許第36,776号]、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーター[deBoer等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25 (1983)]を含む。細菌系で使用するプロモーターもまたBDBオリゴペプチドをコードするDNAと作用可能に結合したシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列を有する。
酵母宿主との使用に適したプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ[Hitzeman 等, J. Biol. Chem., 255:2073 (1980)]又は他の糖分解酵素[Hess 等, J. Adv. Enzyme Reg., 7:149 (1968);Holland, Biochemistry, 17:4900(1978)]、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
【0072】
他の酵母プロモーターとしては、成長条件によって転写が制御される付加的効果を有する誘発的プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸フォスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素のプロモーター領域がある。酵母菌での発現に好適に用いられるベクターとプロモーターは欧州特許第73657号に更に記載されている。
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからのBDBオリゴペプチド転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス(1989年7月5日公開の英国特許第2211504号)、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及びサルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、及び熱衝撃プロモーターから得られるプロモーターによって、このようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り制御される。
【0073】
より高等の真核生物によるBDBオリゴペプチドをコードするDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増強され得る。エンハンサーは、通常は約10から300塩基対で、プロモーターに作用してその転写を増強するDNAのシス作動要素である。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製開始点の後期側のSV40エンハンサー(100−270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。エンハンサーは、BDBオリゴペプチドコード化配列の5’又は3’位でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5’位に位置している。
【0074】
また真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの通常は5’、時には3’の非翻訳領域から取得できる。これらの領域は、BDBオリゴペプチドをコードするmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。
組換え脊椎動物細胞培養でのBDBオリゴペプチドの合成に適応化するのに適切な他の方法、ベクター及び宿主細胞は、Gething等, Nature, 293:620-625 (1981); Mantei等, Nature, 281:40-46 (1979); 欧州特許第117060号;及び欧州特許第117058号に記載されている。
【0075】
4.宿主細胞の培養
本発明のBDBオリゴペプチドを生成するために用いられる宿主細胞は種々の培地において培養することができる。市販培地の例としては、ハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地((MEM),シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM),シグマ)が宿主細胞の培養に好適である。また、Ham等, Meth. Enz. 58:44 (1979), Barnes等, Anal. Biochem. 102:255 (1980), 米国特許第4767704号;同4657866号;同4927762号;同4560655号;又は同5122469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国特許再発行第30985号に記載された任意の培地も宿主細胞に対する培養培地として使用できる。これらの培地はいずれも、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシン(商品名)薬)、微量元素(マイクロモル範囲の最終濃度で通常は存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は同等のエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含まれてもよい。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について以前から用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0076】
D.BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子を用いる診断及び治療
癌におけるIAP発現を定量するために、種々の診断アッセイが利用可能である。一実施態様では、IAPポリペプチド過剰発現は、免疫組織化学(IHC)によって分析される。腫瘍生検からのパラフィン包埋組織切片をIHCアッセイへ供してもよいし、次のようなIAPタンパク質染色強度基準と合致させてもよい:
スコア0 - 染色が観察されないか、又は腫瘍細胞の10%未満で観察される。
スコア1+ - わずかに/弱く認知できる程度の染色が腫瘍細胞の10%を越えて検出される。
スコア2+ - 弱いないしは中程度の染色が腫瘍細胞の10%を越えて観察される。
スコア3+ - 中程度から強い染色が腫瘍細胞の10%を越えて観察される。
IAPポリペプチド発現に関して0又は1+スコアの腫瘍は、IAPが過剰発現していないことを特徴としうるものであるのに対し、2+又は3+スコアの腫瘍はIAPが過剰発現していることを特徴としうる。
【0077】
別に、又は付加的に、FISHアッセイ、例えばINFORM(登録商標)(Ventana, Arizonaから販売)又はPATHVISION(登録商標)(Vysis, Illinois)を、ホルマリン固定、パラフィン包埋された腫瘍組織で実施して、腫瘍におけるIAP過剰発現の程度(生じているならば)を測定してもよい。
IAP過剰発現又は増幅は、インビボ診断アッセイを使用して評価することができ、例えば検出される分子に結合し、検出可能な標識(例えば、放射性同位体又は蛍光標識)が付けられた分子(例えば抗体、オリゴペプチド又は有機分子)を投与し、標識の局在化について患者を外部スキャニングする。
上に記載したように、本発明のBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子には、種々の非治療的用途がある。本発明のBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は、IAPポリペプチドを発現している癌の診断及び染色にとって有用である(例えば、ラジオイメージングで)。また、例えば、他の細胞の精製の工程として混合細胞の集団からIAP発現細胞を死滅させて除去する等の、インビトロでのIAPポリペプチドの検出及び定量化のために、このBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は有用である。
【0078】
現在、癌の段階に応じて、癌の治療には、次の治療:外科手術による癌組織の除去、放射線治療、及び化学治療の一つ、又はそれらを組合せたものが含まれる。BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子による治療は、特に、化学治療における副作用や毒素に対する耐性がない老年の患者、及び放射線治療の有用性に限界がある転移性疾患において所望されている。本発明の腫瘍標的化BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は、疾患の初期診断時及び再発中におけるIAP-発現癌の緩和に有用である。治療用途に関しては、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は、単独で、あるいは例えば、ホルモン、抗血管形成、又は放射標識された化合物と共に、又は外科手術、寒冷療法、及び/又は放射線治療と組み合わせてもよく、使用してもよい。BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子による治療は、従来的治療の前又は後のいすれかに連続させて、他の形態の従来的治療と共に実施することができる。化学療法剤、例えばタキソテレ(登録商標)(ドセタキセル)、タキソール(登録商標)(パクリタキセル)、エストラムスチン及びミトキサントロンは、癌、特に危険性の少ない患者の癌治療に使用される。癌を治療又は緩和するための本発明の方法において、上述した一又は複数の化学療法剤による治療と組合せて、癌患者にBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子を投与することができる。特に、パクリタキセル及び改変誘導体との組合せ治療が考えられる(例えば、欧州特許第0600517号を参照のこと)。BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は治療的有効量の化学療法剤と共に投与されるであろう。他の実施態様では、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は化学療法剤、例えばパクリタキセルの活性及び効力を高めるための化学治療と組合せて投与される。医師用卓上参考書(PDR)には、種々の癌治療に使用されるこれらの薬剤の用量が開示されている。治療的に有効な上述の化学療法剤の投薬計画及び用量は、治療される特定の癌、疾患の程度、及び当該技術分野の医師によく知られている他の因子に依存し、医師が決定することができる。
【0079】
特定の一実施態様では、細胞障害剤に結合したBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子を含有する毒素コンジュゲートを患者に投与する。好ましい実施態様では、細胞障害剤は、癌細胞内の核酸を標的とするか、又はこれに干渉する。このような細胞障害剤の例は、上述されており、メイタンシノイド、カリケアマイシン、リボヌクレアーゼ及びDNAエンドヌクレアーゼを含む。
BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子又はその毒性コンジュゲートは、公知の方法、例えばボーラス、もしくは一定時間にわたる連続注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液包内、くも膜下腔内、経口、局所的、又は吸入経路により、ヒトの患者に投与される。BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子の静脈内又は皮下投与が好ましい。
【0080】
他の治療計画をBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子の投与と組合せてもよい。組合せ投与には、別々の製剤又は単一の医薬製剤を使用する同時投与、及び好ましくは両方(又は全ての)活性剤が同時にその生物学的活性を働かせる時間があるいずれかの順での連続投与が含まれる。このような組合せ治療により、結果として相乗的治療効果が生じることが好ましい。例として、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子と、プロ-アポトーシスポリペプチドAPO2L/TRAIL(登録番号:TN10_HUMAN)との組合せ投与がある。前立腺腫瘍細胞系において、SMACcDNAの腫瘍細胞への形質移入により腫瘍細胞のAPO2L/TRAILへの感受性が高まり、XIAP、c-IAP1及びc-IAP2の減少を引き起こす(Ng 等, (2002) Mol. Cancer Ther. (12) 1051-1058)。さらに、この実験によりジャーカット細胞のSMAC過剰発現によりAPO2L/TRAIL誘導アポトーシスに著しい感受性を示すことが示唆された(Guo等, (2002) Blood 99, 3419-3426)。異なる実験では、U87MG神経膠種細胞を胸腺欠損マウスの線条体に移植して、腫瘍を形成させた後に、SMACペプチドとAPO2L/TRAILを組み合わせて投与した。APO2L/TRAIL単独投与では腫瘍の大きさが減少するのに対して、SMACペプチドとAPO2L/TRAIL組合せ投与では完全に根絶した(Fulda等, (2002) Nature Medicine (8) 808-815)。また、SMACペプチドとAPO2L/TRAIL組合せ処置マウスは、APO2L/TRAIL単独処置マウス又は対照マウスよりも顕著に長く生存した。
【0081】
また、特定の癌に関連した他の腫瘍抗原に対する抗体の投与と共に、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子の投与を組合せることが望ましい。
他の実施態様では、本発明の治療方法は、異なる化学療法剤の混合物の同時投与を含む、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子と一又は複数の化学療法剤又は成長阻害剤との組合せ投与を含む。化学療法剤には、リン酸エストラムスチン、プレドニムスチン、シスプラチン、5-フルオロウラシル、メルファラン、シクロホスファミド、ヒドロキシ尿素及びヒドロキシ尿素タキサン類(hydroxyureataxanes)(例えばパクリタキセル及びドキセタキセル)及び/又はアントラサイクリン抗生物質が含まれる。このような化学療法剤の調製及び投与スケジュールは製造者の注意書きに従い使用されるか、又は熟練した実務者により経験的に決定される。このような化学療法の調製及び投与スケジュールは、Chemotherapy Service編 M.C.Perry, Williams & Wilkins, Baltimore, MD(1992)にも記載されている。
BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は、抗ホルモン化合物;例えばタモキシフェン等の抗-エストロゲン化合物;抗-プロゲステロン、例えばオナプリストン(onapristone)(欧州特許第616812号を参照);又は抗アンドロゲン、例えばフルタミドを、このような分子に対して既知の用量で組合せてもよい。治療される癌がアンドロゲン非依存性癌である場合、患者は予め抗アンドロゲン治療を受け、癌がアンドロゲン非依存性になった後、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子(及び場合によってはここに記載した他の薬剤)を患者に投与してもよい。
【0082】
しばしば、心臓保護剤(治療に関連する心筋の機能不全を防止又は低減するため)又は一又は複数のサイトカインを患者に同時投与することも有益なことである。上述した治療摂生に加えて、抗体、オリゴペプチド又は有機分子治療の前、同時又は治療後に、外科的に癌細胞を取り除くか、及び/又は放射線治療を施してもよい。上述した任意の同時投与される薬剤の適切な用量は現在使用されている量であり、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子と薬剤の組合せ作用(相乗作用)に応じてより少なくしてもよい。
【0083】
疾患の予防又は治療のための投与量及び方式は、公知の基準に従い、医師により選択されるであろう。BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子の適切な用量は、上記のような治療される疾患の種類、疾患の重症度及び過程、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子を予防目的で投与するのか治療目的で投与するのか、過去の治療、患者の臨床歴及びBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子の応答性、手当てをする医師の裁量に依存するであろう。BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は一度に又は一連の処置にわたって患者に適切に投与される。好ましくは、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は静脈注入又は皮下注射により投与される。BDBオリゴペプチドの患者への投与の他に、本出願は遺伝子治療によるBDBオリゴペプチドの投与を考察する。BDBオリゴペプチドをコードする核酸の投与は「BDBオリゴペプチドの治療的有効量を投与する」という表現に含まれる。例えば、遺伝子治療を用いた細胞内抗体の産生に関する、1996年3月14日に公開された国際公開第96/07321号を参照のこと。
【0084】
核酸(場合によってはベクター内に含まれたもの)を患者の細胞に入れるために:インビボ及びエキソビボという2つの主要な方法がある。インビボ送達では、核酸は、通常はBDBオリゴペプチドが必要とされている部位に直接注入される。エキソビボ処理では、患者の細胞を取り出し、核酸をこれらの単離された細胞に導入し、修飾された細胞を患者に、直接、又は例えば患者に埋め込まれる多孔性膜にカプセル化して投与する(米国特許第4892538号及び第5283187号参照)。核酸を生細胞に導入するために利用可能な種々の技術がある。これらの技術は、核酸が培養された細胞にインビトロで移入されるか、又は対象とする宿主にインビボで移入されるかによって異なる。哺乳動物細胞にインビトロで核酸を移入するのに適した技術は、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈降法などの使用を含む。遺伝子のエキソビボ送達に通常用いられるベクターはレトロウイルスベクターである。
【0085】
現在好まれているインビボ核酸移入技術は、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、単純ヘルペスIウイルス、又はアデノ関連ウイルス)、及び脂質ベースの系(例えば、遺伝子の脂質媒介移入に有用な脂質は、DOTMA、DOPE、及びDC-Cholである)での形質移入を含む。現在知られている遺伝子マーキング及び遺伝子治療プロトコールの概説については、Anderson等, Science, 256:808-813 (1992)を参照のこと。また、国際公開第93/25673号及びそこに引用された参考文献も参照。
【0086】
本BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は、哺乳動物におけるIAP-発現癌の治療又は一又は複数の癌の徴候の緩和に有用である。このような癌には、前立腺癌、尿道癌、肺癌、乳癌、結腸癌及び卵巣癌、特に前立腺癌腫(prostate adenocarcinoma)、腎細胞癌腫、結腸直腸腺癌、肺腺癌、肺細胞の扁平癌腫、及び胸膜中皮腫が含まれる。癌には、上述した任意の転移性癌が含まれる。BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は、哺乳動物においてIAPポリペプチドを発現している癌細胞の少なくとも一部に結合可能である。好ましい実施態様では、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は、インビボ又はインビトロで細胞のIAPポリペプチドに結合して、IAP発現腫瘍細胞を破壊又は死滅させるか、又はこのような腫瘍細胞の成長を阻害するのに効果的である。
【0087】
本発明は、本発明のBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子と担体を含有する組成物を提供する。癌の治療のために、組成物はその治療の必要性に応じて患者に投与することができ、ここで組成物は一又は複数のBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子を含有し得る。さらなる実施態様においては、組成物は、他の療法剤、例えば化学療法剤を含む成長阻害剤又は細胞障害剤とこれらのBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子を組合せて含有することもできる。また本発明は、本発明のBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子と担体を含有する製剤も提供する。一実施態様では、製剤は製薬的に許容可能な担体を含有する治療用製剤である。
また、本発明は、BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子の治療的有効量を、哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるIAPポリペプチド-発現癌の治療又は癌の一又は複数の徴候を緩和するのに有用な方法を提供する。BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子治療組成物は、医師の指示通りに、短い期間(急性)又は慢性的に、又は間欠的に投与することができる。また、IAPポリペプチド-発現細胞の成長を阻害し、該細胞を殺傷する方法も提供される。
【0088】
本発明は少なくとも一つのBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子を含有するキット又は製造品も提供する。BDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子を含有するキットは、例えば細胞殺傷アッセイへの用途が見出されている。例えば、IAPの単離及び精製のためには、キットはビーズ(例えばセファロースビース)に結合したBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子を含有することができる。インビトロにおけるIAPの検出及び定量化にBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子を含有するキットを提供することもできる。検出に有用なこのようなBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子は、蛍光又は放射標識などの標識が付されて提供され得る。
【0089】
E.製造品及びキット
本発明の他の実施態様は、IAP発現癌の治療に有用な物質を含有する製造品である。この製造品は容器と容器に付与又は添付されるラベル又はパッケージ挿入物を含んでなる。好適な容器は、例えば、ビン、バイアル、シリンジ等を含む。容器は、ガラス又はプラスチックなどの多様な材料から形成されてよい。容器は、癌の状態の治療に有効な組成物を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針で貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも一つの活性剤は本発明のBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子である。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が癌の治療のために使用されることを示す。ラベル又はパッケージ挿入物は、癌患者にBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子組成物を投与する際の注意書きをさらに含む。製造品はさらに、製薬的に許容可能なバッファー、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を含む第2の容器を具備してもよい。さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
【0090】
種々の目的、例えばIAP発現細胞殺傷アッセイ、又は細胞からのIAPポリペプチドの精製に有用なキットも提供される。IAPポリペプチドの単離及び精製において、キットはビーズ(例えばセファロースビーズ)に結合したBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子を含むことが可能である。インビトロにおけるIAPポリペプチドの検出及び定量化のためのBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子を含むキットを提供することもできる。製造品と同様、キットも容器と容器に付与又は添付されるラベル又は能書を含んでなる。容器には少なくとも1つの本発明のBDBオリゴペプチド又はBDB小有機分子を含有する組成物が収容されている。希釈液及びバッファー、コントロール抗体、オリゴペプチド、又は小有機分子等を収容する付加的な容器を具備していてもよい。ラベル又は能書は、組成物についての記載、並びに意図するインビトロ又は診断での使用に関する注意書きを提供するものである。
【0091】
この発明は、IAPポリペプチド(アゴニスト)の効果を防ぐものを同定するための化合物をスクリーニングする方法を含む。アンタゴニスト薬候補に関するスクリーニングアッセイは、IAPポリペプチドに結合する又は複合体化する化合物を同定するように設計されている。そのようなスクリーニングアッセイには、化学的ライブラリのハイスループットスクリーニングを施すことができるアッセイが含まれ、それらアッセイを特に小分子薬剤候補の同定に適したものにする。
このアッセイは、タンパク質-タンパク質結合アッセイ、生化学スクリーニングアッセイ、免疫アッセイ、そして細胞ベースアッセイを含む、当該分野で良く特徴付けられている種々の形式で行うことができる。
アンタゴニストに関する全てのアッセイは、これら両成分が相互作用するのに十分な条件下及び時間にわたって薬候補をIAPポリペプチドと接触させることを必要とする点で共通である。
【0092】
結合アッセイにおいて、相互作用は結合であり、形成された複合体は単離されるか、又は反応混合物中で検出される。特別な実施態様では、ここに同定された遺伝子にコードされるIAPポリペプチド又は薬候補が、共有又は非共有結合により固相、例えばマイクロタイタープレートに固定化される。非共有結合は、一般的に固体表面をIAPポリペプチドの溶液で被覆し乾燥させることにより達成される。あるいは、固定化すべきIAPポリペプチドに特異的な固定化抗体、例えばモノクローナル抗体を固体表面に固着させるために用いることができる。アッセイは、固定化成分、例えば固着成分を含む被覆表面に、検出可能な標識で標識されていてもよい非固定化成分を添加することにより実施される。反応が完了したとき、未反応成分を例えば洗浄により除去し、固体表面に固着した複合体を検出する。最初の非固定化成分が検出可能な標識を有している場合、表面に固定化された標識の検出は複合体形成が起こったことを示す。最初の非固定化成分が標識を持たない場合は、複合体形成は、例えば、固定化された複合体に特異的に結合する標識抗体の使用によって検出できる。
【0093】
アンタゴニストをアッセイするために、IAPポリペプチドを組成物とともに添加して特定の活性についてスクリーニングを行うと、IAPポリペプチド存在下で組成物が所望の活性を阻害することが、組成物がIAPポリペプチドに対するアンタゴニストであることを示唆する。または、IAPポリペプチドとIAPポリペプチドの潜在的アンタゴニストを拮抗的阻害アッセイに好適な条件下で混合することによりアンタゴニストを検出することができる。IAPポリペプチドは放射性活性などにより標識して、拮抗物質に結合したIAPポリペプチド分子数により潜在的アンタゴニストの効果を決定する。
潜在的アンタゴニストには、IAPポリペプチドのBIRドメインに結合して、それによりIAPポリペプチドの正常な生物学的活性を遮断するBDBオリゴペプチド及びBDB小有機分子が含まれる。このようなペプチドは、化学的に合成でき、及び/又は組換えDNA技術によって生成できる。例えば、Marasco等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 7889-7893 (1993)参照。
ここでの製剤は、治療すべき特定の徴候に必要な場合に1つ以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものも含んでよい。あるいは、又はそれに加えて、組成物は、細胞障害性薬、サイトカイン、化学療法剤、又は成長阻害剤のようなその機能を高める薬剤を含んでもよい。これらの分子は、適切には、意図する目的に有効な量の組み合わせで存在する。
以下の実施例は例示するためにのみ提供されるものであって、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。
本明細書で引用した全ての特許及び参考文献の全体を、出典明示によりここに取り込む。
【実施例】
【0094】
実施例で言及されている市販試薬は、特に示さない限りは製造者の使用説明に従い使用した。ATCC受託番号により以下の実施例及び明細書全体の中で特定されている細胞の供給源はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニアである。
【0095】
実施例1:タンパク質発現及び精製
ML−IAP BIR(アミノ酸残基63−179)、X−IAP BIR2(C202A及びC213Gの変異を持つアミノ酸残基124−240(Sun等, (1999) Nature 401, 818-822))、及びX−IAP BIR3(アミノ酸残基241−356、Sun等, (2000) J. Biol Chem. 275, 33777-33781))をコードする配列を細菌内発現のためにpET15bベクター(NovagenTM)にサブクローニングした。pET15b−XIAPBIR2C202AC218G、pET15b−XIAPBIR3、及びpET15b−MLIAPBIRベクターを大腸菌(Escherichia coli)系BL21(DE3)に導入した。一晩培養した培養物を1:100に希釈し、50mg/mlのカルベニシリンを添加したLB培地にてA600で0.5〜0.7になるまで30度で勢いよく振盪培養した。イソプロピルb−D−チオガラクトシド(IPTG)を最終濃度1mMとなるように添加し、30度で4時間成育させた。凍結細胞ペレットの1litreを5mMのイミダゾールを加えた緩衝液A100ml(50mM Tris[pH 8.0]、300mM NaCl、5mM b−メルカプトエタノール、0.5mM PMSF、2mMベンザミジン)に懸濁して、30分氷上に置いた。ミクロフルイダイザーに繰返し通すことによって細胞を溶解した。溶解物を30分間15000で遠心分離した。上澄をNi−アガロースカラム(Qiagen)に通し、10mMのイミダゾールを加えた10カラム量の緩衝液Aで洗浄し、300mMのイミダゾールを加えた10カラム量の緩衝液Aにて溶出させた。BIRタンパク質を含む分画を貯蔵した。最終濃度5mM DTT及び100mM酢酸亜鉛となるように添加した。貯蔵物を濃縮して、Superdex 75TM (Pharmacia) サイズカラムに通した。1カラム量あたり50mM Tris 8.0、300mM NaCl、0.5mM PMSF、2mM ベンザミジン、5mM DTT、50mM 酢酸亜鉛、1mM アジ化ナトリウム内にタンパク質を溶出させた。BIRタンパク質を含む分画を貯蔵して、50mM Tris(pH 8.0)、120mM NaCl、5mM DTT、0.5mM PMSF、2mM ベンザミジン、50mM 酢酸亜鉛、1mM アジ化ナトリウムを含む緩衝液の異なる4つを透析した。タンパク質を濃縮して、更なる解析のために−80度で保存した。
【0096】
実施例2:多価天然ポリペプチドファージライブラリーの構築
前述した方法(Sidhu等, (2000) Methods Enzymology 328, 333-363)により、6、8、14、または20の残基をそれぞれ含む融合タンパク質をコードする翻訳領域の発現を制御するIPTG誘導Ptacプロモーターを含むファジミドベクターを用いてライブラリーを構築した。
【0097】
実施例3:BIR結合ファージの選択
免疫吸着プレート(Nunc MaxisorpTM)を室温で1時間、50mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH 9.6)中の5μg/mlのBIRドメイン(ML−IAP BIR、又はXIAP−BIR2、又はBIR3)にてコートし、その後1時間リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の0.2% BSAにて遮断した。プレートをPBS、0.05% Tween20にて洗浄した。4つの天然ペプチドファージライブラリーからファージを貯蔵し、BIRドメインでコートした免疫吸着プレート上で結合選択を3工程で行った。第1工程では、4.8 mlのファージ混合液(1mlあたり〜1013ファージのPBS、0.05% Tween20、0.2% BSA(BSA/Tween 緩衝液))を48コーティングウェル(100μl/ウェル)に添加した。室温での2時間の振盪インキュベーション後、プレートを0.05% Tween20のPBSにて洗浄して結合しなかったファージを除去した。結合したファージは0.2Mグリシン,pH2.0(100μl/ウェル)にて溶出させ、ファージ溶出物を1/6量の1.0M Tris, pH 8.0を添加して中和した。溶出したファージをM13−VCSTMヘルパーファージ(Stratagene)と共にXL1−blueTM大腸菌細胞(Stratagene)中での増殖により溶出したファージを一昼夜増幅して、PEG/NaCl沈降法により回収した。選択手法の第2工程は遮断緩衝液及びファージ混合液の両方においてBSAの代わりに0.2%カゼインを用いるのに対して、第3工程は第1工程と同様に行った。各工程で得られた個々のファージクローンを単一ポイントファージELISA(実施例4を参照)によりBIRドメイン特異的結合について解析した。BIRドメインに結合してBSAでは結合が見られないポジティブクローンをDNA配列解析の対象とした。
【0098】
実施例4:単一ポイントファージELISA
ファジミドを内部に持つ大腸菌XL1−青色コロニーの各々を96ウェル形状の1.2ml培養チューブ中の成長培地500μl(50μg/mlカルベニシリン及び1010pfu/mlのVCS−M13ヘルパーファージを添加した2YT)に拾い上げる。一昼夜の成育後、チューブ試験管立てを10分間2500rpmで遠心分離した。ファージ上澄(300μl)を96ウェルプレートに移し、単一ポイントファージELISAに直接用いた。ファージELISAに、96−ウェルMaxisorpTM免疫プレート(NUNC)をBSAで遮断した5μg/mlの捕獲標的タンパク質100μlでコートして洗浄した(実施例3に記述)。ファージ上澄(50μl)を各々のウェルに添加し、1時間室温にて振盪培養した。プレートは0.05% Tween20のPBSにて8回洗浄し、1:10000の西洋ワサビペルオキシダーゼ/抗M13抗体コンジュゲート(Pharmacia)を含むBSA/Tween緩衝液50μl中で30分間インキュベーションした後、0.05% Tween20TMのPBSにて8回及びPBSにて2回洗浄した。プレートをテトラメチルベンジジン基質を用いて現像し(TMB, Kirkegaard及びPerry, Gaithersburg, MD)、1.0 M HPO (50μl)にて欠失し、450nmでの分光光度を計測した。
【0099】
実施例5:ペプチド合成及び結合アッセイ
ペプチド合成。手動又は自動(Milligen 9050TM)何れかの固相合成法にてFmoc化学性を利用したPEGポリスチレン樹脂の0.2mMスケールでペプチドを合成した。0.1%トリフルオロ酢酸を添加したH2Oアセトニトリル勾配のHPLCを用いて精製を行った。熱スプレー質量分析法により各ペプチドの質量を求めた。
合成したペプチドの解析のために、AnalystTMHT 96−384(Molecular Devices Corp.)にて分極実験を行った。蛍光分極親和性測定のために、分極緩衝液(50mM Tris[pH 7.2]、120mM NaCl、1%ウシグロブリン及び0.05%オクチルグルコシド)中のML−IAP−BIR、XIAP−BIR3、又はXIAP−BIR2の何れかを5−カルボキシ蛍光色素結合ペプチド[AVPFAK(5−FAM)K(Hid−FAM)又はAVPIAQKSEK(5−FAM)(SMAC−FAM)]に対して1:2、3〜5nMの最終濃度となるように加えて試料を調整した。室温で10分間インキュベーションした後、96ウェル黒色HE96TMプレート(Molecular Devices Corp.)中で蛍光色素(λex=485nm;λem=530nm)について標準的なカットオフフィルターを用いて反応液を測定した。見かけのKd値をEC50値より決定した。ML−IAP−BIR、XIAP−BIR3又はXIAP−BIR2タンパク質をSMAC−FAMに対してはそれぞれ1、1〜2、又は30μMで、Hid−FAMに対してはそれぞれ0.2、0.5、又は30μMで、分極緩衝液中の連続的に希釈したアンタゴニストとプローブを含むウェルに添加することによって競合実験を行った。10分間のインキュベーションの後、試料を計測した。ペプチドに対する阻害係数(Ki)を以前に記載したように決定した(Keating等, (2000) Proceedings of SPIE: In vitro diagnostic instrumentation Cohn, G.E., Ed. p128-137)。ペプチド結合アッセイの結果を以下の表1に示す。
【0100】
表1:ファージ由来ペプチドのKi値


a SMAC-由来対照ペプチド。ペプチド溶解を確実にするためにKSEのC末端に付加した6残基ファージ選択的配列に一致した他の合成ペプチド。
【0101】
実施例6:結晶化及びデータ収集
10mM MES, pH6.5中の凍結乾燥粉末からペプチドを元に戻した。ML−IAP−BIRタンパク質(貯蔵緩衝液中で20mg/ml)に2:1モル以上でペプチドを添加した。ペプチド/タンパク質複合体を1:1の割合でウェル溶液(50 mM Na酢酸塩、pH5.0、5%(v/v) PEG300、5mM DTT)に混合し、ウェル溶液に対して蒸気拡散することによって平衡化した。混合により速効性沈殿物が形成され、1日で油性の泡沫状の膜が生じ、続く1週間で小さな桿状の結晶に成長する。また、沈殿剤としてエタノール、イソプロパノール、又はt−ブタノールを用いて大きくした;PEG300は凍結防止剤としても働くので好ましい。
結晶は結晶化ドロップの膜から分離し、50mM 酢酸Na、pH5.0及び10%(v/v) PEG300を含む安定剤に移し、20分後に20%PEGを含む同様の溶液に移した。第二低温安定剤に移してさらに20分後に液体窒素にて結晶を凍結した。HKL2000TM(又はそれぞれDENZOTM及びSCALEPACKTM)を用いてデータ集積と処理を行った。
【0102】
実施例7:構造決定及び精製
タンパク質内の天然亜鉛結合の変則的散乱を利用したMAD相を用いて、AEAVPWKSE(配列番号:9)ペプチド複合体の構造を解析した。亜鉛部位はMADデータから予想されるパターソンマップにおいて明らかに変則的かつ分散して存在しており、5つの部位はCNXTM(Accelrys, Inc.)のパターソン検索方法にて見つけられた。溶媒フリッピング(CNXTMを使用)を含む集積修飾により容易に解釈可能な密度を生成した。次にDIAP(PDB登録コード1JD4)のBIRドメイン(217〜310残基)を非対称性単位の5つの各コピーの集積に手動で置き、強固体(rigid-body)を精製した。モデルのアミノ酸配列をML−IAPのものに変え、その結果生じたモデルを、CNXTM、分散したマップの検討、モデルの再構築(結合ペプチドの構築を含む)を用いて、擬似アニーリング、ポジショナル精製、及び個々の原子B因子精製といったいくつかの工程の対象とした。AVPIAQKSE(配列番号:1)及びAEVVAVKSE(配列番号:10)の両方の複合体構造はMADフェーズ(phase)データ(15%より小さい交差R因子)と十分同形で、Fo(新しいペプチド)−Fo(MADピーク波長)マップ, 精製した AEAVPWKSE(配列番号:9)複合体構造を用いたフェーズの検討により、明らかに新しいペプチドを求めるためにはモデルが必須であることを示した。これらの変化 (主に結合ペプチド内の新しいアミノ酸への置換と、Lys121の高次構造の調節) を起こして、その結果生じたモデルをポジショナル精製及びB因子精製の一工程に用いる。
【0103】
実施例8:IAP結合ペプチドの選択
ML−IAP及びXIAPのBIRドメインに結合するペプチド配列の多様性を確認するために、遺伝子VIIIファージコートタンパク質上に線状ペプチドを表出する多価M-13ファージライブラリをML−IAP−BIR、XIAP−BIR2、及びXIAP−BIR3について選別する。線状X、X、X14、及びX20ライブラリーを用意し、8×1010メンバーをライブラリーに与えて結合させた。各タンパク質標的について4工程の選別を行い、計96個のクローンが単一ポイントファージELISA解析のために単離された。XIAP−BIR2及び−BIR3によりBSAへの結合がみられないがBIRドメインに対して強い結合を示すクローンが得られた。シークエンスにより、ポジティブクローンの95%がX6及びX8ライブラリーに由来していることが明示され、このことからペプチドはタンパク質ドメイン内の局在したエピトープに結合していることが示唆された。
新たに結合したX及びXライブラリー(4×1010メンバー)を用いて選別と増幅を4工程行った後、ML−IAPについての単一ポイント解析にポジティブを示し、BSAへの結合を示さないクローンを単離した(図3)。
これらの実験において、ライブラリーの大きさはX及びXライブラリーの理論的多様性よりも大きい。よって、8N末端部位のすべてのポジティブアミノ酸結合体を含むライブラリーからコンセンサス配列が得られた。ML−IAP−BIR及びXIAP−BIR3の両方についての選別から類似の配列を得た(図3)。両者の場合において、アラニン残基はN末端に一つだけみられる。クローンのおよそ50%は2番目がValであり、90%以上は3番目にProを持つ。4番目の位置には強い選択的バイアスである芳香の疎水性残基として最も一般的にはフェニルアラニン、二番目に一般的な残基としてトリプトファンが存在する。その他の部位にはバイアスが認められないことから、4つのN末端残基がBIR結合に最も重要であることが示唆される。ML−IAP−BIR及びXIAP−BIR3、AVPFのコンセンサス配列はHidのN末端と一致している(図1)。
XIAP−BIR2についての選別結果は、ML−IAP−BIR及びXIAP−BIR3のものと有意に異なる。アラニンは先と同様にN末端に高い保存性を有するが、2番目には酸性アミノ酸であるグルタミン酸が位置する。ML−IAP−BIR及びXIAP−BIR3の3番目の位置には多くの場合プロリンが配位するのに対して、小さい疎水性残基であるグリシン、アラニン、及びバリンは選択的に位置する。4番目には、疎水性残基のバリン及びイソロイシンよりML−IAP−BIR及びXIAP−BIR3にあるようなより大きな芳香性アミノ酸が配位する。
【0104】
実施例9:ファージ由来ペプチドの結合親和性
異なるBIRドメインに対するこれらペプチドの相対的親和性を比較するために、代表的ペプチドを合成し、プローブとしてSMAC由来5-カルボキシ蛍光色素標識ペプチド(SMAC−FAM)を用いた蛍光色素局在化に基づく競合アッセイにより親和性を決定した(表1)。それら標識タンパク質に対するファージ選択ペプチドの親和性は一般的にSMAC由来ペプチドに対するものよりもわずかに高い。XIAP−BIR2への結合について選択されたペプチドはXIAP−BIR3に比較してML−IAP−BIRに対して10倍より大きい特異性を示す。これらペプチドはML−IAP−BIRへの結合に対してSMAC由来ペプチドよりおよそ10倍弱いが、XIAP−BIR3への結合に対しては100倍よりも弱い。
【0105】
実施例10:SMAC及びファージ由来ペプチドに結合したML−IAP BIRの構造
さらに、いくつかのファージ由来ペプチドにみられる特異性の相違を理解するために、SMAC由来ペプチド(AVPIAQKSE (配列番号:1))及び対象とする2つの異なるペプチド(AEAVPWKSE (配列番号:9)及びAEVVAVKSE (配列番号:10))それぞれとの複合体におけるML−IAPのBIRドメインを結晶化した。分解能2.2〜2.8Åの構造を決定した(表2)。それぞれの場合で、結晶の非対称性単位においてML−IAP−BIRの5つのコピーがあり(図2);最終的な原子モデルにはタンパク質残基72−169(プロトマーA)、 72−171(プロトマーB−D)、及び78−171(プロトマーE)を含む。驚くことに、5つのBIRドメインのうちの一つ(プロトマーE)しかSMAC結合ポケットのペプチドに結合しない;結合したペプチドは残基1’−4’に強い電子集積を有し、C末端の5つの残基には集積を有さない。プロトマーA−Dは近接したプロトマーと残基Ala73−Thr74−Leu75−Ser76を介してSMAC結合ポケットである四量体を形成する。さらに、ヘプタエチレングリコール分子により中心にある多くのチロシンと相互作用してこの四量体を安定化する。
ペプチド結合ドメイン、2つの異なる高次構造にみられる残基116−119において障害となるN末端領域を除いて、各非対称性単位内の5つのBIRドメインは残基79−115及び120−168の重合に0.45Å以下の平均バックボーンペアワイズRMS偏差(average backbone pairwise RMS deviations)でとても類似している。ML−IAPのBIRドメインは5つのαヘリックス、3本鎖のβシート、及び3システインと1ヒスチジン残基によってキレート化される亜鉛原子を含む(図4)。よって、構造がXIAP−BIR3/SMAC(Wu等, (2000) Nature 408, 1008-1012)、XIAP−BIR2/カスパーゼ−3(Riedl等., (2001) Cell 104, 791-800)、及びDIAP1-BIR2/GrimとHid (Wu等, (2001) Mol. Cell 8, 95-104)との複合体を含むペプチド結合BIRドメインのものと、すべてのC-α原子に対して0.7Åより小さいRMS偏差で類似している。
【0106】
ML−IAP−BIRとSMAC−及びファージ由来ペプチドとの結合相互作用は、XIAP−BIR3に結合するSMAC由来ペプチドにみられるものと本質的に同一であり(Wu等, (2000) Nature 408, 1008-1012)、ペプチドのN末端の4つの残基のみでタンパク質と接する(図5)。ペプチドのN末端は、アスパラギン酸138及びグルタミン酸143のカルボキシル基側鎖にアミノ基のAla1'が水素結合して酸性となっている。ペプチド残基2’−4’は、Val/Glu2’アミドとGln132カルボニル基、Val/Glu2’カルボニル基とGln132アミド間の水素結合、Ile/Val4’アミドとGly130カルボニル基との長い水素結合(N−O間が〜3.3Å)により、ML−IAP−BIRの逆行性βシートに向かって高度にねじれて伸展している。ファージ由来ペプチド複合体においてはGlu2’のカルボキシル基側鎖とSer133の水酸基側鎖間に水素結合が付加されうる。
さらに、ペプチドとML−IAP−BIR間の疎水性作用により相互作用が安定化される。Ala1’のメチル基はLeu131、Trp134、及びGlu143の側鎖により形成される疎水性ポケットに囲まれる。ペプチド残基2’(Val/Glu2’)の側鎖は各々3つの複合体内のSer133のβメチレンとファンデルワールス作用を生じる。3複合体において残基3’は異なり、それぞれの場合において異なる疎水性作用を生じる。SMAC由来ペプチドでのPro3’はVal2’の側鎖と同様にTrp147とファンデルワールス作用を生じる。AEVVAVKSE (配列番号:10)のVal3’の側鎖はTrp147及びPhe148の側鎖により限定される疎水性溝に容易に適応するのに対して、AEAVPWKSE(配列番号:9)ペプチドのAla3’のメチル基側鎖はタンパク質と有意なファンデルワールス作用を有さない。また、結晶構造でみられるML−IAP分子間の相互作用にみられるように、ML−IAP−BIRではペプチドのこの部位にLeuが容認される(図2)。最終的にペプチド残基4’(Ile/Val4’)の側鎖は、Gly130−Gln132により限定される疎水性ポケット、及びThr116、Lys121、及びArg123の脂肪族性部位を相互作用する。ファージ由来ペプチドとの複合体において、Ile4’がより小さいVal4’へと置き換わることにより空位のスペースを埋めるためにLys121がSMACペプチド複合体内の位置から移動していたことから、このポケットにいくらかの自由度があることが示唆される。
【0107】
表2:データ収集及び精製統計

各例での空間群及び単位細胞はP3、a=83.8、b=83.8、c=94.3。括弧内の数は最も高い分解能殻の統計である。全てのデータはBijvoet mates separateを保つ大きさであった。AVPIAQKSE(配列番号:1)構造は非対称ユニットの5分子を有し、全部で3997のタンパク質原子、368の水、5の亜鉛原子、及び1のヘプタエチレングリコール分子を持つ。また、他の構造も非対称ユニットの5分子を有し、ほぼ同じ数の原子を持つ。
b Rcryst = Σ|(Fobs) - (Fcalc)|/Σ(Fobs)。
c RfreeはRcrystと同様に定義されるが、モデル精製に用いられなかった全反射の試験的セット5%を含む。
【0108】
実施例11:位置的スキャニング
ファージ選択及び続くML−IAP−BIR/ペプチド複合体の構造解析により、ペプチド修飾によりXIAP−BIR3に比較してML−IAPに対する結合親和性及び選択性が増すであろうことが示唆される。より系統的な方法で2’、3’及び4’位での置換の影響を試験するために、SMAC由来ペプチドAVPIAQKSE (配列番号:1)に一連の単一点突然変異を入れて合成し、ML−IAP−BIR及びXIAP−BIR3両方に対する結合を測定した。ML−IAP−BIRへ結合するAVPIAQKSE (配列番号:1)のK値に対して相対的な変異型ペプチドのK値をプロットしたものを図6に、ML−IAP−BIR、XIAP−BIR2及びXIAP−BIR3へ結合するペプチドのK値を表3に示す。ML−IAP−BIR及びXIAP−BIR3の両方へ結合するこれらの残基は、アラニンに置換したときにはその親和性が10倍以下になることからその重要性が強調される。他の天然アミノ酸置換の中には、4’位のPhe及びTrpは結果的にSMAC由来ペプチドに比較して親和性が増加する。
いくつかの変異は結果としてXIAP−BIR3に比較してML−IAP−BIR特異性を改善する。特に、2’位でのGlu又はAspを持つ変異型ペプチドはML−IAP−BIR選択性を7〜8倍にする。Pro3’をVal、Ile又はLeuへ置換すると、ML−IAP−BIR特異性が10倍より大きく上がる。構造を元にしたモデリングにより、Pro3’を(2S, 3S)-3-メチルピロリジン-2-カルボキシル酸[(3S)-メチル-プロリン]に置換すると、Val、Ile又はLeu置換ペプチドに比較してML−IAP−BIR親和性が改善される一方でこれらアミノ酸により与えられた特異性の利点を維持したペプチドとなるであろうことが示唆された。結果としてできたペプチドは初めのSMAC由来ペプチドよりML−IAP−BIRへの親和性を7倍以上有し(0.5μMと比較したときのK=70nM)、XIAP−BIR3と比較してML−IAP−BIR特異性を100倍有する。
4’位での非天然アミノ酸置換の多くも又結果的にML−IAP−BIR特異性を改善する。ホモフェニルアラニン(X12)(〜7倍)に続いて、2−ナフチルアラニン(X1)、4−アミノ−フェニルアラニン(X4)、及び4−フェニル−フェニルアラニン(X14)に大きな特異性亢進がみられる。4つすべての場合においてXIAP−BIR3への結合親和性を減少させたのに対して、これらの置換のうち2−ナフチルアラニンのみがSMAC由来ペプチド(〜3倍減少)と比較してML−IAP−BIR親和性を著しく減少させた。
【0109】
表3:ポジショナル走査ペプチド相同性のKi値



a 非天然アミノ酸は以下のように表す:X、 (3S)-メチル-プロリン;X1、 2-ナフチルアラニン;X2、フェニルアラニン-4-スルホン酸;X3、4-ニトロ-フェニルアラニン;X4、4-アミノ-フェニルアラニン;X5、3-メトキシ-フェニルアラニン;X6、シクロヘキシルアラニン;X7、シクロペンチルアラニン;X9、3,5-ジブロモ-チロシン;X10、4-ヨード-フェニルアラニン;X12、ホモフェニルアラニン;X13、4-ケトフェニル-フェニルアラニン;X14、4-フェニル-フェニルアラニン。
【0110】
実施例12:フェニルエチルアミンスキャン
一連のフェネチルアミン誘導体(表4)を手動又は自動何れかの合成機(QuestTM)により合成した。N−メチルピロリジン中の2%酢酸のシアノホウ化水素ナトリウム(3等価)を用いて12時間でフェネチルアミンを還元的にArgoGel−MB−CHOTM樹脂(0.45mmol/g)にアミン化した。アミノ酸であるアラニン、バリン、及びプロリンは標準的Fmoc化学法を用いて付加した。フェネチルアミンペプチドはトリフルオロ酢酸を用いて樹脂から切断し、0.1%トリフルオロ酢酸とHOアセトニトリル勾配を用いたHPLCにより精製した。各物質の質量は熱スプレー質量分析法により確認した。
ファージディスプレイデータ、ペプチドアラニンスキャンデータ(データは示していない)、及びML-IAP-BIR/ペプチド複合体のX線結晶構造により、4つのN末端ペプチド残基がML-IAP-BIRへの高い結合親和性を十分有することが示され、XIAP−BIR3についての以前の結果と一致する(Wu等, (2000) Nature 408, 1008-1012、Liu等, (2000) Nature 408, 1004-1008、Kipp等,. (2002) Biochemistry 41, 7344-7349)。
また、結晶構造の検討により、そのような4残基ペプチドのC末端カルボキシル基がペプチド結合に有意に関与していないことが示唆された。さらに、4’位での置換の効果を探求するために、アミノ酸を選択的にフェニルエチルアミン誘導体に置換した一連の化合物を合成し、ML−IAP−BIR及びXIAP−BIR3への結合についてペプチドAVPI及びAVPFと比較した。ML−IAP−BIRへ結合するAVPIのK値と比較した化合物のK値をプロットしたものを図7に示す(また、ML−IAP−BIR、XIAP−BIR2及びXIAP−BIR3へ結合する化合物のK値を表4に示す)。
【0111】
前述のように9残基のSMAC由来ペプチドの前後におけるP4アミノ酸スキャンのために、4残基ペプチドの前後のIle4’をPheへ置換すると、ML−IAP−BIR及びXIAP−BIR3の両方に対する結合親和性が有意に改善される。Pheに構造的にとても類似している(S)-2-アミノ-3-フェニル-1-プロパノール(X32)又は(S)α-(メトキシメチル)-フェニルエチルアミン(X38)への置換は結果的に、4残基ペプチドAVPFでみられるのと同様な結合親和性をもたらす。加えて、いくつかのフェニルエチルアミン誘導体への置換は結果的に、ML−IAP−BIR特異性を改善する。最も特異性が亢進するのは、2,2-ジフェニルエチルアミン(X24)(〜9倍)、続いてトランス(1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル-1-アミン(X28a)、及び(1R,2S)-ノルエフェドリン(X29)へ置換したときにみられる。これらの置換のうち、2,2-ジフェニルエチルアミンはペプチドAVPI(〜10倍改善)又はAVPF(〜3倍改善)よりもML−IAP−BIRに対して著しく高い親和性を示す。
ペプチド残基4’を2,2-ジフェニルエチルアミンに置換することによって生じる特異性及び親和性の改善をより完全に理解するために、SMAC由来とファージ由来ペプチドとの複合体に用いたのと同様な手順によりML−IAP−BIRをAVPX24と結晶化した。ML−IAP−BIR/AVPX24複合体についてのデータはスタンフォードシンクロトロン照射実験(Stanford Synchrotron Radiation Laboratory)の9−1線(beamline)で集積した。AEAVPWKSE(配列番号:9)複合体からあらかじめ決定したML−IAP−BIRの構造(ペプチドを含まない)を用いて、AVPX24分子を容易に配置できるFo − Fcの異なる電子密度マップを作製した。2,2-ジフェニルエチルアミン分子部分の2つのフェニルリングの位置はあいまいであった。そして、複合体をRefmacを用いた位置的及び個々の原子B因子精製の一工程の対象とした。
【0112】
2.3Åの分解度で構造を決定した(表2)。AVPX24内のAla1’、Val2’、及びPro3’の結合高次構造は、ML−IAP−BIR/AVPIAQKSE(配列番号:1)複合体でみられるものとほぼ同じである(図8)。2,2-ジフェニルエチルアミン分子部分のフェニルリングの一つは、タンパク質残基Thr116、Lys121−Arg123、及びGly130−Gln132と広く作用するように疎水性P4ポケット内に包まれている。対照的に、ML−IAP−BIR/AVPIAQKSE(配列番号:1)複合体のIle4’側鎖はタンパク質残基Lys121、及びGly130−Gln132にしか作用しない。2,2-ジフェニルエチルアミン分子部分の二つめのフェニルリングは、Lys121の疎水性側鎖に作用する一端を持つタンパク質の表面上にある。よって、AVPIのIle4’のAVPX24の2,2-ジフェニルエチルアミンへの置換によりみられるML-IAP-BIRへの親和性の10倍の増加は後者の複合体の二つのフェニルリングにみられる付加的疎水性作用によって説明できる。同様に、AVPFと比較したときの3倍の親和性増加は第二フェニルリングとタンパク質との付加的な疎水性作用の結果であるようである。
【0113】
表4:P4アミノ酸/フェニルエチルアミンスキャンのKi値


aフェニルエチルアミン誘導体は以下に示すとおりである:X24、2,2-ジフェニル・エチルアミン;X25、(1S,2S)−(+)-2-アミノ-1-フェニル-1,3-プロパンジオール;X26、3-トリフルオロメチルフェニルエチルアミン;X27、(1R,2R)-(-)-2-アミノ-1-フェニル-1,3-プロパンジオール;X28a、トランス-(1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル-1-アミン;X28b、トランス-(1S,2R)-2-フェニルシクロプロピル-1-アミン;X29、(1R,1S)-(+)-ノルエフェドリン;X31、β-メチルフェニルエチルアミン;X32、(S)-(-)-2-アミノ-3-フェニル-1-プロパノール;X33、(R)-(-)-2-アミノ-1-フェニルエタノール;X34、3-エトキシフェニルエチルアミン;X36、5-ブロモ-2-メトキシフェニルエチルアミン;X37、3-フルオロフェニルエチルアミン;X38、(S)-(+)-α-(メトキシメチル)-フェニルエチルアミン;X39、3-クロロフェニルエチルアミン;X40、2-エトキシフェニルエチルアミン。すべてのデータ(AVPX24を除く)はBijvoet mates separateを保つ大きさであった。
【0114】
実施例13:ジペプチドアイソスタースキャン
ML−IAP−BIR/ペプチド複合体の結晶構造に基づく分子モデル研究により、Smac由来ペプチドAVPIAQKSE(配列番号:1)のVal2’及びPro3’が、タンパク質のVal2’及びGln132間にみられる主鎖対主鎖の水素結合を維持するジペプチドアイソスターに置き換わっていることが示唆された。この仮説を試験するために図10Aに示す化合物を合成した。
IAQKSEアミノ酸配列を標準的なFmoc化学法を用いて樹脂上に合成した。(3S)-Fmoc-3-アミノ-1-カルボキシメチル-カプロラクタム(NeosystemTM)をPyBopカップリング(12時間)を用いてこの配列に添加した。アラニンは標準的なペプチド化学法を用いて付加し、ペプチドはトリフルオロ酢酸を用いて樹脂から切断し、0.1%トリフルオロ酢酸とH2Oアセトニトリル勾配を用いたHPLCにより精製した。この結果、配列A(Xaa)IAQKSE(配列番号:53)、Xaaはこの実施例で示す一のジペプチドアイソスターである配列となった。各物質の質量は熱スプレー質量分析法により確認した。この結果できた化合物をML−IAP−BIR及びXIAP−BIR3への結合について試験するために、プローブとして5−カルボキシ蛍光色素コンジュゲートHidペプチド[AVPFAK(5−FAM)K, Hid−FAM]を用いた蛍光色素局在化に基づく競合アッセイを用いた。ML−IAP−BIR及びXIAP−BIR3への結合に対するK値はそれぞれ15.3及び39.8μMであった。よって、そのようなジペプチドアイソスターを含むペプチドはIAPタンパク質に対する結合能及びアンタゴナイズ能を有する。Smac由来ペプチドAVPIAQKSE(配列番号:1)と比較してこの化合物が有するML−IAP−BIRへの結合親和性における30倍未満への減少が結果的に、Pro3’の側鎖とタンパク質間の作用の減少を部分的にもたらしているようである。よって、関連したジペプチドアイソスター、例として[3R,6S,10R]-6-アミノオクタヒドロ-5-オキソ-チアゾロ[3,2-a]アゼピン-3-カルボキシル酸、又は[3R,6S,9R]-6-アミノヘキサヒドロ-5-オキソ-チアゾロ[3,2-a]ピリジン-3-カルボキシル酸がSmac由来ペプチドAVPIAQKSE(配列番号:1)のPro3’とタンパク質間にみられるのと同様な作用を再導入することによってML−IAP−BIRへの結合親和性を改善したと予測される。さらに、構造に基づくモデリングにより、図10B−10Eに示すような[3R,6S,10R]-6-アミノオクタヒドロ-5-オキソ-2,2-ジメチル-チアゾロ[3,2-a]アゼピン-3-カルボキシル酸、又は[3R,6S,9R]-6-アミノヘキサヒドロ-5-オキソ-2,2-ジメチル-チアゾロ[3,2-a]ピリジン-3-カルボキシル酸等のジペプチドアイソスターにメチル基を導入するとXIAP−BIR3と比較してML−IAP−BIRへの親和性及びML−IAP−BIR特異性がさらに改善されるであろうことが示唆される(実施例11に記載のようにSmac由来ペプチドAVPIAQKSE(配列番号:1)内のPro3’を(3S)-メチル-プロリンに置換した)。
【0115】
実施例14:スクリーニングのためのML-IAP変異型
核磁気共鳴(NMR)に基づく方法は、ML−IAP−BIRに弱く結合する化合物を同定し、薬剤発見過程におけるリード化合物として用いられるより強力なアンタゴニスト開発の助けとなりうる。特に、SAR−by−NMR(NMRによる構造的活性関係(structure-activity relationship by NMR))法及びその変法は薬剤発見NMRに広く適用されている(Shuker等, (1996) Science 274, 1531-1534)。
そのような方法は、タンパク質の化学変化を利用して、タンパク質上の結合部位を標的とした低親和性のリガンドを同定することに基づく。そのような化学変化マッピング法の必須条件は、二次元異核集積スペクトル(15N,H− 又は13C,H−集積スペクトルの何れか)におけるタンパク質共鳴の適度な分解能、及び好ましくは配列特異的な配置である。残念なことに、ML−IAP−BIRドメインはNMR分光法に必要な濃度範囲に著しく集積しているため質の悪いNMRスペクトルしか得られず、低親和性リガンドを同定するためのタンパク質化学変化マッピング法を行うことができない。
しかし、ML−IAP−BIRの結晶の非対称性単位の検討により、溶液相にみられる集積の原因となっているプロトマーA−Dにより形成される四量体内の疎水性領域が明らかとなる。よって、疎水性アミノ酸を持つX線結晶構造によって同定される領域内の疎水性アミノ酸のいくつかが置換すると、溶液集積が減少し、したがってML−IAP−BIRのNMRスペクトルの質が改善することが予測される。この仮説を試験するために、ML−IAP−BIR残基Phe81及びLeu89(図2)をそれぞれGlu及びAspに変異させた。野生型及びPhe81Glu/Leu89Asp変異型ML−IAP−BIRタンパク質の15N,H−異核単一量子干渉性(HSQC)スペクトルを比較すると、四量体領域の残基の変異により劇的にスペクトルの質が改善した(図9)。このような変異の結果、NMRを元としたスクリーニング法に使用可能なML−IAP−BIR変異型となる。
【0116】
実施例15:アポトーシスアッセイ
0.2μgのレポータープラスミドpCMV−βgal+0.2μgのFas、TNFR1、DR4又はDR5をコードするプラスミド及び1.6μgのバキュロウイルスP35又はヒトIAPベクターをコードするプラスミドを過渡的にMCF7細胞に形質移入した。アドリアマイシン又は4−TBP処理のため、レポータープラスミドpCMV−βgal及び対照ベクター又はIAPを過渡的にMCF7細胞に形質移入した。形質移入から4時間後、アドリアマイシン(ドキソルビシン、Sigma)又は4−TBP(Aldrich)を指示濃度で培地に添加した。Pan等, (1997) Science 277:815-818に記載の通りにアポトーシスアッセイを16時間後に行った。黒色腫細胞系(888,624)又はメラニン細胞(NHEM細胞)を指示濃度の4−TBPで5時間処理して、プロピジウムヨウ化物及びアネキシンV(Clontech)染色によるFACS分析によりその生存を評価した。このアッセイを用いてML−IAPの抗アポトーシス活性を遮断するSMACペプチドを検索した(Vucic等, (2002) J.Biol. Chem. 277; 12275-12279)。SMAC様ペプチドはML−IAPの抗アポトーシス活性を遮断する。0.15mgのレポータープラスミドpCMV−βgal(β−ガラクトシダーゼ)及び0.85mgのベクター単独、ML−IAP又はX−IAPの何れかをコードするプラスミドを過渡的にMCF7細胞に形質移入した。形質移入後、SMAC-アンテナペディア(ペネトラチン(penetratin);RQIKIWFQNRRMKWKK−NH2(配列番号:54))融合タンパク質又は他の示したペプチド−アンテナペディア融合(50mM)を添加し、3時間後に細胞をアドリアマイシン(0.5mg/ml)に曝した。形質移入の24時間後、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル-b-D-ガラクトピラノシド(X−Gal)で染色された細胞の形態について調べた。データ(平均±標準偏差)は全β-ガラクトシダーゼ陽性細胞(n=3)のうちの機能としての活発なアポトーシス細胞の割合を表す。このデータを図11に示す。
【0117】
上記の文書による明細書は、当業者に本発明を実施できるようにするために十分であると考えられる。寄託した実施物は、本発明のある側面の一つの例示として意図されており、機能的に等価なあらゆるコンストラクトがこの発明の範囲内にあるため、寄託されたコンストラクトにより、本発明の範囲が限定されるものではない。ここでの物質の寄託は、ここに含まれる文書による説明が、そのベストモードを含む、本発明の任意の側面の実施を可能にするために不十分であることを認めるものではないし、それが表す特定の例証に対して請求の範囲を制限するものと解釈されるものでもない。実際、ここに示し記載したものに加えて、本発明を様々に改変することは、前記の記載から当業者にとっては明らかなものであり、添付の特許請求の範囲内に入るものである。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】活性化ヒト、マウス、及びツメガエルのカスパーゼ−9、活性化哺乳動物のSMAC/DIABLO、HtrA2/Omi、及びショウジョウバエReaper、Hid、Grim、及びSickleの小サブユニットの9つのN末端残基のアミノ酸配列。
【図2】(A)ドメイン間の相互作用を表すML−IAP−BIR/AVPIAQKSE複合体の結晶非対称ユニットにおけるML−IAP−BIRの5コピーの構造図を示す。疎水性作用領域の残基Phe81及びLeu89をCPK予想図に示す。プロモーターEに結合したSMAC由来のペプチドをstick予想図に示す。(B)対称性の関連タンパク質分子のペプチドAVPIAQKSE(配列番号:1)又は残基Gly72−Ala73−Thr74−Leu75−Ser76が占めるペプチド結合部位の最小四角形の重なりを示す立体図。ペプチドとタンパク質間の水素結合を細い線で示す。
【図3】XIAP−BIR2、XIAP−BIR3及びML−IAP−BIRに対するファージについて選択された結合ペプチドのアミノ酸優先(偏りについて矯正)。
【図4】SMAC由来ペプチド AVPIAQKSE(配列番号:1)複合体におけるML−IAP−BIRの全体構造。5つのαヘリックス(残基87−92、105−110、140−147、152−158、及び160−168)及び三本鎖のβシート(残基113−115、122−124、及び130−132)を含んでなる第二構造。また、3つのCys及び1つのHis残基(Cys124、Cys127、Cys151、及びHis144)によりキレート化したzinc原子を示す。
【図5A】ML−IAP−BIRのペプチド結合部位の溶媒集積表面を示す。また、SMAC由来ペプチド結合も示す。
【図5B】ML−IAP−BIRとペプチド AVPIAQKSE (配列番号:1)、AEAVPWKSE(配列番号:19)とAEVVAVKSE(配列番号:10)の複合体のペプチド結合部位の最小四角形の重なり(タンパク質残基78−170及びペプチド残基1’−4’を介す)を示す立体図。ペプチドとタンパク質間の水素結合を細い線で示す。
【図5C】ML−IAP−BIR、XIAP−BIR3及びXIAP−BIR2の構造に基づく配列。ML−IAP−BIRの第二構造は配列の上に示す。アステリスクで示す残基はML−IAP−BIR/AVPIAQKSE複合体構造においてSMAC由来ペプチドの4オングストローム内である。
【図6A】2’残基置換を持つSMAC由来ペプチドのML−IAP−BIR(黒)またはXIAP−BIR3(灰色)への結合を相対的に表した値K[K(変異型ペプチド/タンパク質)/K(SMACペプチド/ML−IAP−BIR]のログプロット。SMAC−FAM又はHid−FAM何れかのプローブを用いた蛍光偏光競合アッセイによりK値を決定した(材料及び方法に示す)。プローブに対するK値は、ML−IAP−BIRへの結合ではそれぞれ0.15及び0.038μM、XIAP−BIR3への結合ではそれぞれ0.26及び0.11μMである。非天然アミノ酸は以下に示す通りである:βMe-Pro、(3S)-メチル・プロリン;X1、2-ナフチルアラニン;X2、フェニルアラニン-4-スルホン酸;X3、4-ニトロフェニルアラニン;X4、4-アミノ-フェニルアラニン;X5、3-メトキシ-フェニルアラニン;X6、シクロヘキシルアラニン;X7、シクロペンチルアラニン;X9、3,5-ジブロモ-チロシン;X10、4-ヨードフェニルアラニン;X12、ホモ・フェニルアラニン;X13、4-ケトフェニル-フェニルアラニン;X14、4-フェニル-フェニルアラニン。
【図6B】3’残基置換を持つSMAC由来ペプチドのML−IAP−BIR(黒)またはXIAP−BIR3(灰色)への結合を相対的に表した値K[K(変異型ペプチド/タンパク質)/K(SMACペプチド/ML−IAP−BIR]のログプロット。SMAC−FAM又はHid−FAM何れかのプローブを用いた蛍光偏光競合アッセイによりK値を決定した(材料及び方法に示す)。プローブに対するK値は、ML−IAP−BIRへの結合ではそれぞれ0.15及び0.038μM、XIAP−BIR3への結合ではそれぞれ0.26及び0.11μMである。非天然アミノ酸は以下に示す通りである:βMe-Pro、(3S)-メチル・プロリン;X1、2-ナフチルアラニン;X2、フェニルアラニン-4-スルホン酸;X3、4-ニトロフェニルアラニン;X4、4-アミノ-フェニルアラニン;X5、3-メトキシ-フェニルアラニン;X6、シクロヘキシルアラニン;X7、シクロペンチルアラニン;X9、3,5-ジブロモ-チロシン;X10、4-ヨードフェニルアラニン;X12、ホモ・フェニルアラニン;X13、4-ケトフェニル-フェニルアラニン;X14、4-フェニル-フェニルアラニン。
【図6C】4’残基置換を持つSMAC由来ペプチドのML−IAP−BIR(黒)またはXIAP−BIR3(灰色)への結合を相対的に表した値K[K(変異型ペプチド/タンパク質)/K(SMACペプチド/ML−IAP−BIR]のログプロット。SMAC−FAM又はHid−FAM何れかのプローブを用いた蛍光偏光競合アッセイによりK値を決定した(材料及び方法に示す)。プローブに対するK値は、ML−IAP−BIRへの結合ではそれぞれ0.15及び0.038μM、XIAP−BIR3への結合ではそれぞれ0.26及び0.11μMである。非天然アミノ酸は以下に示す通りである:βMe-Pro、(3S)-メチル・プロリン;X1、2-ナフチルアラニン;X2、フェニルアラニン-4-スルホン酸;X3、4-ニトロフェニルアラニン;X4、4-アミノ-フェニルアラニン;X5、3-メトキシ-フェニルアラニン;X6、シクロヘキシルアラニン;X7、シクロペンチルアラニン;X9、3,5-ジブロモ-チロシン;X10、4-ヨードフェニルアラニン;X12、ホモ・フェニルアラニン;X13、4-ケトフェニル-フェニルアラニン;X14、4-フェニル-フェニルアラニン。
【図7】4’残基で選択的アミノ酸又はフェニルエチルアミンへの置換を持つSMAC由来ペプチドのML−IAP−BIR(黒)またはXIAP−BIR3(灰色)への結合を相対的に表した値K[K(置換ペプチド/タンパク質)/K(AVPI/ML−IAP−BIR]のログプロット。Hid−FAMプローブを用いた蛍光偏光アッセイによりK値を決定した(記載の通り)。フェニルエチルアミン誘導体は以下に示すとおりである:X24、2,2-ジフェニル・エチルアミン;X25、(1S,2S)-(+)-2-アミノ-1-フェニル-1,3-プロパンジオール;X26、3-トリフルオロメチルフェニルエチルアミン;X27、(1R,2R)-(-)-2-アミノ-1-フェニル-1,3-プロパンジオール;X28a、トランス-2-(1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル-1-アミン;X28b、トランス-(1S,2R)-(-)-2-アミノ-1-フェニルシクロプロピル-1-アミン;X29、(1R,1S)-(+)-ノルエフェドリン;X31、β-メチルフェニルエチルアミン;X32、(S)-(-)-2-アミノ-3-フェニル-1-プロパノール;X33、(R)-(-)-2-アミノ-1-フェニルエタノール;X34、3-エトキシフェニルエチルアミン;X36、5-ブロモ-2-メトキシフェニルエチルアミン;X37、3-フルオロフェニルエチルアミン;X38、(S)-(+)-α-(メトキシメチル)-フェニルエチルアミン;X39、3-クロロフェニルエチルアミン;X40、2-エトキシフェニルエチルアミン。
【図8】AVPX24とML−IAP−BIRの複合体の結晶構造からのペプチド結合部位の溶剤可触性表面を表す(ここでX24は2,2-ジフェニルエチルアミン)。結合ペプチド-フェニルエチルアミン誘導体は細い線で示す。
【図9】Bruker DRX−600 NMR分光計により25度で得られた50 mMリン酸カルシウム(pH 7.2)、150mM塩化ナトリウム溶液中の(A)0.6mM ML−IAP−BIR及び(B)0.6mM Phe81Glu/Leu89Asp変異型ML−IAP−BIRの15N,H−HSQCスペクトル。
【図10】IAPタンパク質に結合及び拮抗することのできるジペプチドアイソスターの構造を示す。図10AはXaaが(3S)-3-アミノ-1-カルボキシメチル-カプロラクタムである配列A(Xaa)IAQKSEを示し、図10B−Eに任意のジペプチドアイソスターを示す。
【図11】SMAC様ペプチドはML−IAPの抗アポトーシス活性を遮断する。IAPを形質導入した細胞はアドリアマイシンで処理したときアポトーシス減少を示す。アドリアマイシンとBDBオリゴペプチドを組み合わせて添加するとアポトーシス量が増加する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ML−IAPに特異的に結合し、ML−IAPがカスパーゼ活性に対して有する阻害作用を放出する、単離したBDBオリゴペプチド。
【請求項2】
N2 はGluまたはAsp
N3 はVal、Ile、Leuまたは(2S, 3S)-3-メチルピロリジン-2-カルボン酸[(3S)-メチル-プロリン]
はホモフェニルアラニン、4-アミノ-フェニルアラニン、4-フェニル-フェニルアラニン、2,2-ジフェニルエチルアミン、(1S,2S)-(+)-2-アミノ-1-フェニル-1,3-プロパンジオール、3-トリフルオロメチルフェニルエチルアミン、(1R,2R)-(-)-2-アミノ-1-フェニル-1,3-プロパンジオール、トランス-2-フェニルシクロプロピルアミン、(1R,1S)-(+)-ノルエフェドリン、β-メチルフェニルエチルアミン、(S)-(-)-2-アミノ-3-フェニル-1-プロパノール、(R)-(-)-2-アミノ-1-フェニルエタノール、3-エトキシフェニルエチルアミン、5-ブロモ-2-メトキシフェニルエチルアミン、3-フルオロフェニルエチルアミン、(S)-(+)-α-(メトキシメチル)-フェニルエチルアミン、3-クロロフェニルエチルアミン、または、2-エトキシ・フェニルエチルアミンである、
配列AN2N3N4を含んでなる単離したBDBオリゴペプチド。
【請求項3】
AVGVPWKSE(配列番号:6)、AEAVAWKSE(配列番号:7)、ATAVIEKSE(配列番号:8)、AEAVPWKSE(配列番号:9)、AEVVAVKSE(配列番号:10)およびAQAVAWKSE(配列番号:11)よりなる群から選択した単離したBDBオリゴペプチド。
【請求項4】
さらにジペプチドアイソスターを含んでなる、請求項1ないし3に記載のBDBオリゴペプチド。
【請求項5】
細胞膜を越えて運搬する異種性配列に融合した、請求項1ないし4に記載のBDBオリゴペプチド。
【請求項6】
細胞障害性薬剤に結合している、請求項1ないし5に記載のBDBオリゴペプチド。
【請求項7】
細胞障害性薬剤が毒素、抗生物質、放射性同位元素および核酸分解酵素よりなる群から選択したものである、請求項6に記載のBDBオリゴペプチド。
【請求項8】
細胞に投与したときアポトーシスを誘導する、請求項7に記載のBDBオリゴペプチド。
【請求項9】
細胞のアポトーシスを増加する方法であって、請求項1ないし6に記載のオリゴペプチドの有効量を前記細胞に作用させ、該アポトーシスが増加する方法。
【請求項10】
前記細胞が癌細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞が黒色腫細胞、乳がん細胞、結腸直腸癌細胞、肺癌細胞、卵巣の癌細胞、中枢神経系癌細胞、肝臓癌細胞、膀胱癌細胞、膵臓癌細胞、頸部癌細胞および白血病細胞よりなる群から選択したものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第二細胞障害性薬剤を投与することを含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
APO2/TRAILポリペプチドを投与することを含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
第二細胞障害性薬剤がアドリアマイシン(ドキソルビシン)、4-第三ブチルフェノール、エトポシド、タキソール、カンプトセシン、MTX、ビンクリスチン、タモキシフェン、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン、5‐フルオロウラシルまたはエスペラミシンである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
担体と混合した、請求項1ないし6に記載の組成物。
【請求項16】
前記担体が薬剤的に受容性のある担体である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
(a)容器;と
(b)容器内に包含する請求項1ないし6に記載の組成物
(c)該容器に貼付したラベル、または、該容器内に包含するパッケージ挿入物であって、癌の治療的処置または診断的検出を目的とした組成物の使用を示しているもの
を含んでなる製造品。
【請求項18】
IAPポリペプチドのアンタゴニストを検索する方法であって:
(a)共結晶構造を形成するためにML-IAPポリペチドのBIR領域を有する潜在的アンタゴニストを共結晶化し、潜在的アンタゴニストが該BIR領域に結合するかどうかを決定し;
(b)アンタゴニスト未処理細胞と比較して、該アンタゴニストにより細胞のアポトーシスが増加するかどうかを決定する
ことを含んでなる方法。
【請求項19】
共結晶構造を形成するためにML−IAPポリペチドのBIR領域を有する潜在的アンタゴニストを共結晶化し、潜在的アンタゴニストが該BIR領域と結合するかどうかを決定することを含んでなるML−IAPポリペプチドのアンタゴニストを検索する方法であって、ここでの結合は、共結晶構造に2.8オングストロームと同じかまたはより小さい候補分子と接ぎ当てた特異的アミノ酸残基との間に少なくとも一の接触がある場合に起こる方法。
【請求項20】
ML−IAPポリペプチドの潜在的アンタゴニストを検索する方法であって:
(a)共結晶構造を形成するためにML−IAPポリペチドのBIR領域を有する潜在的アンタゴニストを共結晶化し、潜在的アンタゴニストが該BIR領域に結合するかどうかを決定し;
(b)該潜在的アンタゴニストによりカスパーゼに対する該ML−IAPの結合が阻害されるかどうかを決定する
ことを含んでなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−514963(P2006−514963A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568261(P2004−568261)
【出願日】平成15年2月7日(2003.2.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/003799
【国際公開番号】WO2004/072641
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】