説明

アミラーゼ変異体

【課題】新規アミラーゼ変異体の提供。
【解決手段】親酵素と比べて改良された洗浄及び/又は皿洗い性能をもつその親α−アミラーゼ酵素の変異体であって、その親酵素の1以上のアミノ酸残基が異なるアミノ酸残基により置換されており、そして/又は、その親α−アミラーゼの1以上のアミノ酸残基が欠失されており、そして/又は1以上のアミノ酸残基がその親α−アミラーゼ酵素に付加されているような変異体。但し、その変異体は、親バチルス・リケニフォルミス(B. Licheniformis)α−アミラーゼの197 位におけるメチオニン残基が、その修飾だけが行われるとき、アラニン又はトレオニンにより置換されているものとは異なる。本変異体は、洗浄及び皿洗いに有用であることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、改良された洗浄及び/又は皿洗い性能をもつアミラーゼ変異体(variants)に、その変異体をコードする DNA構築物に、そしてその DNA構築物を宿すベクターと細胞に関する。さらに、本発明は、そのアミラーゼ変異体の生産方法及びそのアミラーゼ変異体を含んで成る洗剤添加物と洗剤組成物に関する。最後に、本発明は、繊維糊抜き(desizing)のためのそのアミラーゼ変異体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
長年にわたりα−アミラーゼ酵素はさまざまな異なる目的のために使用されてきたが、その中で最も重要なのは、デンプン液化、繊維糊抜き、製紙及びパルプ産業におけるデンプン修飾、及び醸造及びベーキングである。益々重要になっているα−アミラーゼのさらなる使用は、洗浄又は皿洗いの間のデンプンのよごれ(starchy stains)の除去である。
【0003】
近年、特定用途、例えばデンプン液化及び繊維糊抜きに関して改良された特性をもつα−アミラーゼ変異体を構築する試みが行われてきた。
【0004】
例えば、米国特許第5,093,257 号は、バチルス・ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus )α−アミラーゼのN−末端部分とバチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼのC−末端部分を含んで成るキメラα−アミラーゼについて開示している。このキメラα−アミラーゼは、それらの親α−アミラーゼと比べて、ユニークな特性、例えば異なる熱安定性をもつと言われている。しかしながら、特に記載されたキメラα−アミラーゼの全てがそれらの親α−アミラーゼと比べて減少された酵素活性をもつことが示された。
【0005】
欧州特許第252666号は、一般式Q−R−L{式中、Qがバチルス・アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)由来の特定α−アミラーゼの57N−末端アミノ酸残基と少なくとも75%相同性である55〜60アミノ酸残基のN−末端ポリペプチド残基であり、Rが特定のポリペプチドであり、そしてLが特定のバチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼの395 C−末端アミノ酸残基と少なくとも75%相同性である 390〜400 アミノ酸を含んで成るC−末端ポリペプチドである。}により表されるハイブリッド・アミラーゼについて記載している。
【0006】
Suzuki et al. (1988)は、バチルス・アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)α−アミラーゼの特定領域がバチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼの対応領域と置換されているキメラα−アミラーゼについて開示している。このキラメα−アミラーゼは熱安定性に責任を負う領域を同定する目的をもって構築された。このような領域は、バチルス・アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)α−アミラーゼのアミノ酸残基 177−186 とアミノ酸残基 255−270 を含むことが見い出された。このキメラα−アミラーゼにおけるアミノ酸残基の変更は、それらの熱安定性以外の酵素の特性に影響を及ぼさないようであった。
【0007】
WO91/00353 は、少なくともこのアミノ酸残基においてそれらの親α−アミラーゼとは異なるα−アミラーゼ突然変異体(mutants)について開示している。その特許出願中で開示されたα−アミラーゼ突然変異体は、それらのアミノ酸置換のためにデンプンの分解及び/又は繊維糊抜きにおいて改良された用途特性を示すと言われている。これらの突然変異体のいくつかは改良された安定性を示すが、酵素活性における改良は全く報告又は提示されていない。例示された突然変異体だけが、親バチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼから調製され、そして以下の突然変異:H133 Y又はH133 Y+T149 Iの中の1を担持している。他の示唆された突然変異体はA111 Tである。
【0008】
FR2,676,456 は、His133の近位のアミノ酸残基及び/又はAla209の近位のアミノ酸残基がより疎水性のアミノ酸残基により置換されている、バチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼの突然変異体について開示している。得られたα−アミラーゼ突然変異体は、改良された熱安定性をもつと言われそして繊維、製紙、醸造及びデンプン液化産業において有用である。
【0009】
欧州特許第285123号は、ヌクレオチド配列のランダム突然変異誘発の実施方法について開示している。このような配列の例として、バチルス・ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus )α−アミラーゼをコードするヌクレオチド配列について述べられている。突然変異されるとき、低いpH値において改良された活性をもつα−アミラーゼが得られる。
【0010】
上記文献のいずれにおいても、α−アミラーゼ突然変異体であって洗剤産業に関して改良された特性をもつものを構築することができるということについて述べられ又は示唆さえもされていない。
【0011】
欧州特許第525610号は、イオン・テンシド(tensides)に対して改良された安定性をもつ突然変異体酵素に関する。これらの突然変異体酵素は、その親酵素の表面部分内のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基により置換することにより作られている。EP525610中に特別に記載された突然変異体酵素はプロテアーゼである。アミラーゼは、イオン・テンシドに対して改良された安定性を得ることができる酵素の例として述べられているが、アミラーゼのタイプ、その起源又は特定の突然変異体は特定されていない。
【0012】
本発明の優先日において公開されていないWO94/02597 は、酸化剤の存在中改良された安定性と活性を示す新規のα−アミラーゼ突然変異体について開示している。この突然変異体のα−アミラーゼにおいては、1以上のメチオニン残基が Cysと Metとは異なるアミノ酸残基と置換されている。このα−アミラーゼ突然変異体は、洗剤及び/又は皿洗浄添加物として並びに繊維糊抜きのために有用であると言及されている。
【0013】
WO94/18314(本発明の優先日後に公開されたもの)は、バチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼのM197位置における突然変異を含む、酸化安定性α−アミラーゼ突然変異体について開示している。
【0014】
欧州特許第368341号は、場合により、洗浄及び皿洗いのためのα−アミラーゼとの組合せにおける、プルラナーゼ(pullulanase)及び他のデンプン分解酵素の使用について記載している。
【0015】
本発明の目的は、それらの親α−アミラーゼと比べて改良された洗浄及び/又は皿洗い性能を発揮するα−アミラーゼ変異体を提供することである。このような変異体α−アミラーゼは、それらを、それらの親α−アミラーゼよりも低い投与量において使用することができるという利点をもつ。さらに、これらのα−アミラーゼ変異体は、今日知られたα−アミラーゼ洗剤酵素によっては困難を伴って得られることができないデンプンのよごれを除去することができる。
【発明の開示】
【0016】
発明の簡単な開示
本発明者らは、驚ろくべきことに、その1以上のアミノ酸残基を修飾することによりα−アミラーゼの洗浄及び/又は皿洗い性能を改良することができることを発見した。本発明はこの発見に基づく。
【0017】
従って、第1態様においては、本発明は、その親酵素と比べて改良された洗浄及び/又は皿洗い性能をもつ親α−アミラーゼの変異体であって、その親酵素の1以上のアミノ酸残基が異なるアミノ酸残基により置換されており、そして/又はその親α−アミラーゼの1以上のアミノ酸残基が欠失されており、そして/又は1以上のアミノ酸残基がその親α−アミラーゼ酵素に添加されているものに関する。但し、この変異体は、上記修飾だけが行われるとき、親バチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼの 197位におけるメチオニン残基がアラニン又はトレオニンにより置換されているものとは異なる。
【0018】
WO94/02597 の開示であって、本発明者らが知る限り、アラニン又はトレオニンによる(Novo Nordisk A/S, Denmarkから入手可能な)Termamyl(登録商標)として知られたバチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼの 197位に位置するメチオニン残基の置換が改良された性能をもたらすことが示されているものを除いて、α−アミラーゼの洗浄及び/又は皿洗い性能がその生来のα−アミラーゼの1以上のアミノ酸残基を修飾することにより改良されることができるということについて示唆又は開示する先の開示は全く存在しない。
【0019】
本文脈において、洗浄及び皿洗いに関して使用される用語“性能(performance)”は、それぞれ、洗浄又は皿洗いの間の、デンプンのよごれ、すなわちデンプンを含むよごれの改良された除去を意味すると意図される。この性能は、慣用の洗浄及び皿洗い実験において測定されることができ、そしてその改良は、その親の非修飾α−アミラーゼの性能に比べて評価される。好適な洗浄及び皿洗いテストの例を、以下の材料及び方法のセクション中、そして実施例中に与える。比活性、基質特異性、km,Vmax,pI,最適pH、最適温度、熱活性化、洗剤に対する安定性、等を単独又は組合せにおいて含むα−アミラーゼ変異体のさまざまな異なる特徴がその改良された特性の提供に含まれるということが理解されるであろう。当業者は、その変異体の性能が、上記特徴に基づいて単独では予言されることができないが、洗浄及び/又は皿洗いテストに同伴されなければならないであろうことを知るであろう。
【0020】
本文脈中、用語“変異体(variant)”は、用語“突然変異体(mutant)”と互換性をもって使用される。用語“変異体”は、ハイブリッドα−アミラーゼ、すなわち少なくとも2つの異なる親α−アミラーゼの部分を含んで成るα−アミラーゼを含むと意図される。
【0021】
さらなる態様においては、本発明は、本発明に係るα−アミラーゼ変異体をコードする DNA配列を含んで成る DNA構築物、その DNA構築物を担持する組換え発現ベクター、その DNA構築物又はベクターにより形質転換された細胞、並びに、そのα−アミラーゼ変異体の生産を誘導する条件下でその細胞を培養し、その後そのα−アミラーゼ変異体をそのカルチャーから回収することによるそのα−アミラーゼ変異体の製造方法に関する。
【0022】
さらなる態様においては、本発明は、親α−アミラーゼに比べて、改良された洗浄及び/又は皿洗い性能をもつその親α−アミラーゼの変異体の製造方法であって、
a)その親α−アミラーゼの変異体をコードする遺伝子を含む細胞集団を構築し、
b)少なくとも1の洗浄及び/又は皿洗い条件を刺激する条件下でα−アミラーゼ活性についてその細胞集団をスクリーニングし、
c)段階b)において選択された条件下でその親α−アミラーゼと比べて改良された活性をもつその親α−アミラーゼの変異体をコードする遺伝子を含む細胞を上記集団から単離し、
d)適当な培養基中で好適な条件下、段階c)において単離された細胞を培養し、そして
e)段階d)において得られたカルチャーから上記α−アミラーゼ変異体を回収する、を含んで成る方法に関する。
【0023】
本文脈中、用語“少なくとも1の洗浄及び/又は皿洗い条件を刺激する”は、例えば、洗浄又は皿洗いの間に行き渡る温度又はpH、並びにその洗浄又は皿洗い処理において使用されるべき洗剤組成物の化学組成物の刺激を示すことを意図される。用語“化学組成物”は、着目の洗剤組成物の1、又は2以上の組合せの、構成成分を含むことを意図される。多数の異なる洗剤組成物の構成成分をさらに以下に列記する。
【0024】
段階a)において言及した“細胞集団”は、親α−アミラーゼをコードする DNA配列をクローニングし、そして本明細書中に記載するように部位指定又はランダム突然変異誘発にその DNAを供することにより構築されることができる。
【0025】
さらなる態様においては、本発明は、その親酵素のいずれに比べても改良された洗浄及び/又は皿洗い性能をもつハイブリッドα−アミラーゼの製造方法であって、
a)親α−アミラーゼの中の1のα−アミラーゼ遺伝子又は対応cDNAのN−末端コーディング領域と他の親α−アミラーゼのα−アミラーゼ遺伝子又は対応cDNAのC−末端コーディング領域とをインビボ又はインビトロにおいて組換えて、組換え体を作り、
b)その親α−アミラーゼのいずれかに比べて改良された洗浄及び/又は皿洗い性能をもつハイブリッドα−アミラーゼを作り出す組換え体を選択し、
c)適当な培養基中好適な条件下段階b)において選択された組換え体を培養し、そして
d)段階c)において得られたカルチャーから上記ハイブリッドα−アミラーゼを回収すること、を含んで成る方法に関する。
最後の態様においては、本発明は、特に洗浄又は皿洗いにおける、洗剤酵素としての本発明に係るα−アミラーゼ変異体の使用、そのα−アミラーゼ変異体を含んで成る洗剤添加物及び洗剤組成物、並びに繊維糊抜きのための本発明に係るα−アミラーゼ変異体の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
発明の詳細な説明
命名法
本説明とクレームにおいては、アミノ酸残基のための慣用の1文字及び3文字コードを使用する。訳を容易にするために、本発明に係るα−アミラーゼ変異体を以下の命名法の使用により記載する:元のアミノ酸:位置:置換アミノ酸。
【0027】
この命名法に従えば、例えば、30位におけるアラニンのアスパラギンによる置換は:
Ala30Asn又はA30N
のように示され、同じ位置におけるアラニンの欠失は:
Ala30* 又はA30*
のように示され、そして追加のアミノ酸残基、例えばリシンの挿入は:
Ala30AlaLys又はA30AK
のように示される。
【0028】
アミノ酸残基、例えばアミノ酸残基30−33の連続ストレッチの欠失は(30−33) * として示される。
特定のアミラーゼが他のα−アミラーゼと比較して“欠失(deletion)”を含み、そして挿入がこのような位置において行われる場合、これは、36位におけるアスパラギン酸の挿入については:
*36Asp 又は *36D
のように示される。
多数の突然変異は+の印により分けられる、すなわち:
Ala30Asp+Glu34Ser又はA30N+E34S
は、30と34位において突然変異があり、それぞれ、アラニンとグルタミン酸がアスパラギンとセリンに置換されていることを示す。
【0029】
1以上の他のアミノ酸残基が所定の位置において挿入されることができるとき、それは、
A30N,E又は
A30N又はA30E
のように示される。
【0030】
さらに、修飾に好適な位置が、いずれの特定の修飾が示唆されずに本明細書中に同定されるとき、いずれかのアミノ酸残基がその位置に存在するアミノ酸残基の代わりに用いられることができる。従って、例えば、30位におけるアラニンの修飾について言及されるが特定されないとき、アラニンは欠失されるか、いずれかの他のアミノ酸、すなわち
R,N,D,A,C,Q,E,G,H,I,L,K,M,F,P,S,T,W,Y,Vの中の1のいずれかの代わりに置換されることができると理解されるべきである。
【0031】
親α−アミラーゼとそれらの変異体
本発明に係るα−アミラーゼ変異体は、好ましくは、微生物起源の親α−アミラーゼに基づいて調製される。従って、親α−アミラーゼは、バクテリア起源を有することも又は糸状菌若しくは酵母を含む真菌由来であることもできる。この親α−アミラーゼは、洗剤酵素として慣用されるものであることも、又はその用途が未だ示唆されていないものであることもできる。
【0032】
特に重要なのは、グラム陽性バクテリアの株、例えばバチルス(Bacillus)の株由来である親α−アミラーゼである。バチルスα−アミラーゼは、一般に、洗剤用途に関して所望の特性をもつことが発見されている。
【0033】
より特に、親バクテリアα−アミラーゼは、バチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)の株由来のα−アミラーゼ、バチルス・アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)の株由来のα−アミラーゼ、バチルス・ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus )の株由来のα−アミラーゼ又はバチルス・サブチリス(B. subtilis )の株由来のα−アミラーゼから選ばれることができる。本文脈中、“由来(derived from)”は、着目の生物の株による生産される又は生産されることができるα−アミラーゼだけでなく、このような株から単離されたDNA 配列によりコードされ、そしてそのDNA 配列により形質転換された宿主生物内で生産されたα−アミラーゼをも示すと意図される。最後に、この用語は、合成及び/又はcDNA起源のDNA 配列によりコードされ、そして着目のα−アミラーゼの同定特徴を有するα−アミラーゼを示すと意図される。
【0034】
バチルス種により作られる多数のα−アミラーゼがそのアミノ酸レベルに基づき高く相同であることが発見されている。例えば、配列番号:2に示すアミノ酸配列を含んで成るバチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼが、配列番号:4に示すアミノ酸配列を含んで成るバチルス・アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)と約89%の相同であり、そして配列番号:6に示すアミノ酸配列を含んで成るバチルス・ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus )α−アミラーゼと約79%相同であることが発見されている。
【0035】
しかしながら、これらの酵素の他の特性は、かなり異なっている。従って、一般に、上述のバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼは、高い最適pH、他のバチルスα−アミラーゼと比べて異なる特異性、及び通常優れた基質結合性を示す低kmをもつことが判明している。一方、バチルス・アミロリクエファシエンス及びバチルス・ステアロサーモフィラスα−アミラーゼは、上記バチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼのものと比べて高い比活性及び異なるデンプン分解パターンをもつ。このバチルス・ステアロサーモフィラスα−アミラーゼは、バチルス・アミロリクエファシエンスα−アミラーゼよりも良好な洗浄及び/又は皿洗い性能を発揮するが、バチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼのひじょうに満足できる性能に匹敵する性能は発揮しない。
【0036】
本発明において、満足できる性能のバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼの洗浄及び/又は皿洗い性能が、他の上述のより低い性能のバチルスα−アミラーゼの中の1内において相同アミノ酸領域に対応するようにα−アミラーゼのアミノ酸配列内の特定のアミノ酸残基又は領域を修飾することにより、さらに、そしてかなり改良されることができることが、驚ろくべきことに発見された。
従って、本発明に従って、改良された洗浄及び/又は皿洗い性能をもつα−アミラーゼ変異体を製造するために、バチルス種、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・アミロリクエファシエンス及びバチルス・ステアロサーモフィラスによる生産されるα−アミラーゼの間に観察される高程度のアミノ酸配列相同性を使用することができることが驚ろくべきことに発見された。さらに、特に、本変異体は、他の相同α−アミラーゼの対応又は相同位置内に存在する1以上のアミノ酸残基への1以上の特定アミノ酸残基の修飾に基づいて調製される。
【0037】
言及を容易にするために、それぞれ、配列番号2,4と6に示すアミノ酸配列の整列を以下に示す。α−アミラーゼ配列の各々のアミノ酸番号付けも以下に与える。この整列から、配列内の相同位置(及びこれ故相同アミノ酸残基)を容易に同定することができる。
【0038】
【化1】

【0039】
【化2】

【0040】
【化3】

【0041】
本発明は、(Novo Nordisk A/S, DenmarkからTermamyl(登録商標)として商業的に入手可能な)配列番号:2に示すアミノ酸配列をもつバチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼの修飾に基づき説明されるけれども、そのα−アミラーゼのアナログが、改良された洗浄及び/又は皿洗い性能をもつ変異体を作出するために付随して修飾されることができると理解されるであろう。従って、バチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼの特定の修飾に言及するときは、類似のα−アミラーゼも同様に修飾されることができると理解されるであろう。
【0042】
本文脈中、用語“アナログ(analogue)”は、
i)配列番号:2に示す配列と少なくとも60%の相同性をもち、そして/又は
ii)そのα−アミラーゼに対して生じた抗体と免疫交差反応性を示し、そして/又は
III)そのα−アミラーゼをコードする DNA配列であってその DNA配列が配列番号:1に示されるものと同一のプローブとバイブリダイズするDNA 配列によりコードされる、α−アミラーゼを示すことを意図される。
【0043】
配列番号:2に示す配列をもつバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼの上記アナログの特性i)は、第2配列からの第1配列の誘導を示すそのアナロとバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼとの間の同一性の程度を示すと意図される。特に、ポリペプチドは、その対応アミノ酸配列の比較が約60%を上廻る、例えば70%,80%,85%,90%又はさらに95%を上廻る配列同一性の程度を表す場合、バチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼと相同であると考えられる。配列比較は、公知のアルゴリズム、例えばLipman and Pearson(1985)により記載されたものを介して行われることができる。
【0044】
上記特性i)により定められるような配列番号:2に示すアミノ酸配列を含んで成るバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼの上記アナログはそれ故、バチルス・リケニフォルミスよりも他のバチルス種から、例えばバチルス・アミロリクエファシエス又はバチルス・ステアロサーモフィラスから誘導される相同α−アミラーゼを含んで成ることを意図される。さらに、このアナログは、配列番号:2に示すものとは異なるが、相同であるアミノ酸配列をもつバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼであることができる。このようなα−アミラーゼの例は、EP252666中に記載されたバチルス・リケニフォルミス(ATCC27811)、並びにWO91/00353 及びWO94/18314 中に同定されたものにより作られたものである。配列番号:2中に示すアミノ酸配列を含んで成るバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼのアナログの他の特定の例は、(Solvayから入手可能な)Optitherm(登録商標)及び Takatherm(登録商標)、(Gist-Brocadesから入手可能な)Maxamyl(登録商標)、(Genencorから入手可能な)SpezymAA(登録商標)、並びに(Daiwaから入手可能な)Keistase(登録商標)である。
【0045】
最後に、α−アミラーゼ・アナログは、遺伝子操作されたα−アミラーゼ、例えば上述の従来技術文献中に記載されたものの中のいずれか、又は先に特定したバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼの中のいずれかの変異体であることができる。典型的には、遺伝子操作されたα−アミラーゼは、1以上の特性、例えば熱安定性、酸/アルカリ安定性、温度、最適pH、その他を改良するために調製されるであろう。
【0046】
配列番号:2に示すアミノ酸配列を含んで成るバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼの上記アナログの特性ii)とiii )は以下のように測定されることができる。
【0047】
上記アナログの特性ii)、すなわち免疫学的交差反応性は、配列番号:2に示すアミノ酸配列を含んで成るバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼの少なくとも1のエピトープに対して作られ又はそれと反応性の抗体を使用して検定されることができる。モノクローナル又はポリクローナルのいずれかであることができる抗体は、例えばHudson et al., 1989 により記載されたような本分野において公知の方法により調製されることができる。この免疫学的交差反応性は、本分野において公知の検定を使用して測定されることができる。それらの例は、例えばHudson et al., 1989 により記載されたような、ウェスタン・ブロゥティング又は放射免疫抗散検定である。これに関して、それぞれアミノ酸配列番号:2,4と6をもつα−アミラーゼの間の免疫学的交差反応性が発見された。
【0048】
先に定めた特性iii )に従ってアナログの特徴付けにおいて使用されるオリゴヌクレオチド・プローブは、好適には、それぞれ、バチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼをコードし又は構成する配列番号:1と2に示す全体又は部分的ヌクレオチド又はアミノ酸配列に基づき調製されることができる。ハイブリダイゼーションをテストするために好適な条件は、5×SSC 中に前浸透し、そして20%ホルムアミド、5×Denhardt's溶液、50mMリン酸ナトリウム、pH6.8 、及び50μgの変性音波処理ウシ胸腺 DNAの溶液中で〜40℃において1時間前ハイブリダイゼーションし、その後〜40℃において18時間100 μM ATPを補った同一溶液中でのハイブリダイゼーションを行うこと、又は例えば Sambrook et al., 1989により記載された他の方法を含む。
【0049】
本発明者らは、驚ろくべきことに、配列番号:2に示すアミノ酸配列を含んで成るバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼのN−末端部分内の1以上のアミノ酸残基の修飾が得られた変異体α−アミラーゼの改良された洗浄及び/又は皿洗い性能をもたらすことを発見した。
【0050】
この発見は、空間モデル(spatial model)におけるα−アミラーゼのN−末端部分がその分子の活性部位から遠くの位置にあり、この活性領域にほとんど重要でないという点で驚ろくべきことである。バチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼの空間モデルは、骨組(scaffold)として、タンパク質データバンク、 Brook-haven National Laboratoriesから、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)α−アミラーゼX−線構造、2TAA. PDBを使用して構築された。このB−バレル“ドメイン(domain)”付近の領域だけが構築された。このモデルは、アスペルギルス・オリザエα−アミラーゼのものと比較して、バチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼのN−末端部分内に2つの小さな欠失及びその中央部分内の大きな挿入(30残基)を取り込むことにより作られた。
【0051】
上記発見に従って、そして特定の態様においては、本発明は、配列番号:2に示すアミノ酸配列を含んで成る親α−アミラーゼの変異体、又はその親α−アミラーゼのアナログの変異体であって、その変異体が改良された洗浄及び/又は皿洗い性能をもち、そしてその親α−アミラーゼのN−末端、特にその成熟α−アミラーゼのアミノ酸配列の50N−末端アミノ酸残基内に少なくとも1の置換、欠失又は付加を含んで成るものに関する。
【0052】
より特に、配列番号:2に示すアミノ酸配列を含んで成る親バチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼの変異体、又はその親α−アミラーゼのアナログの変異体であって、その親α−アミラーゼの17−35位、例えば20−35位内にある少なくとも1のアミノ酸残基が置換又は欠失されており、又は17−35位(例えば20−35位)内にあるアミノ酸セグメント内で少なくとも1のアミノ酸がその親α−アミラーゼに付加されているものが、重要であることが判明した。
【0053】
このセグメントは、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・アミロリクエファシエンス及びバチルス・ステアロサーモフィラス由来のα−アミラーゼのその他の高保存N−末端部分内の比較的低程度の相同性の領域を構成する。バチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼのこの領域内のアミノ酸置換、特にバチルス・アミロリクエファシエンス及びバチルス・ステアロサーモフィラスα−アミラーゼ内の相同位置内にあるアミノ酸残基への置換は、改良された特性をもつα−アミラーゼ変異体を導く。
【0054】
特に、配列番号:2に示すアミノ酸配列を含んで成るバチルス・リケニフォルミスのアミノ酸残基29−35により定められる領域は、様々なバチルスα−アミラーゼの間に相同性が全く存在しない多数の位置を含んで成る。従って、本発明に係るバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼ変異体は、その親α−アミラーゼの29−35位にある少なくとも1のアミノ酸残基が置換又は欠失され、又は29−35位にあるアミノ酸セグメント内でその親α−アミラーゼに少なくとも1のアミノ酸が付加されている変異体であることができる。
【0055】
より特に、本発明に係るバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼ変異体は、以下の位置の中の1以上内にあるアミノ酸残基が修飾され、すなわち、先に説明したように欠失され、又は、いずれかの他のアミノ酸残基により置換されているものであることができる:
N17,R23,S29,A30,Y31,A33,E34,H35。
【0056】
本発明に係るバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼ変異体の好ましい例として、以下の突然変異の中の少なくとも1を含んで成る変異体を挙げることができる:
R23K,T
S29A
A30E,N
Y31H,N
A33S
E34D,S
H35I,L
又はこれらの突然変異のいずれかの組合せ。
【0057】
以下、実施例1中、多数の異なるバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼ変異体であって、バチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼのN−末端領域内に1以上のアミノ酸置換又は欠失により修飾されたものの構築について記載する。これらの変異体の全てがそれらの親α−アミラーゼに比べて改良された洗浄及び/又は皿洗い性能をもつことが発見された。
【0058】
さらに、配列番号:2に示すアミノ酸配列又はそのアナログを含んで成るバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼの、着目の他の特定アミノ酸残基又は領域も、これらのアミノ酸残基又は領域の好ましい修飾と共に、以下に列記する。従って、さらなる態様においては、本発明は、バチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼ変異体であって以下に列記するアミノ酸残基の少なくとも1の修飾を含んで成るものに関する。この変異体は、以下に述べる特定アミノ酸修飾の、少なくとも1、又は2以上の組合せを含んで成る:
a)1,2,3及び/又は15位にあるアミノ酸残基の修飾;従って、着目のバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼ変異体は、親α−アミラーゼのA1,N2,L3又はM15位における突然変異、好ましくは突然変異A1V,M15T,L N2* ,L3V又はA1* +N2* の中の1以上を含んで成るものである;
【0059】
b)アミノ酸残基51−58にわたる領域にあるアミノ酸残基、特にその51,52及び/又は58にあるアミノ酸残基の修飾、例えば以下の突然変異:Q51R,A52S,A58P,Vの中の少なくとも1;
c)アミノ酸残基H68の修飾、特に以下の突然変異:H68N,Qの中の1;
d)85及び/又は88位にあるアミノ酸残基の修飾、特に突然変異S85Q,K88Qの中の少なくとも1;
e)94−104 領域内にあるアミノ酸残基、特にその94,95,96,99,103 及び/又は104 位にあるアミノ酸残基の修飾、例えば以下の突然変異:N96Q,G99Q,I 103F,N 104Dの中の少なくとも1;
【0060】
f) 121 −136 領域内にあるアミノ酸残基、特にその121, 127,128, 131,133,及び/又は 134位にあるアミノ酸残基の修飾、例えば突然変異D121 N,R 127Q,V 128E,G 131E,E 132T,H 133Y,L 134Q,K 136Qの中の少なくとも1;
g)140, 142,148 及び/又は 152位にあるアミノ酸残基の修飾、例えば以下の突然変異:H 140K,H 142D,D 152S,S 148Nの中の少なくとも1;
【0061】
h) 142 −148 領域内にあるアミノ酸残基の修飾、特にその領域内のアミノ酸残基の全て又は実質的な部分の欠失;
i)172 −178 領域内にあるアミノ酸残基、特に172, 175,177及び/又は 178位にあるアミノ酸残基の修飾、例えば以下の突然変異:N 172S,F177FRG,Q178IE の中の少なくとも1;
j)アミノ酸残基S187 ,A209 及び/又はT217 の修飾、特に突然変異S 187D,A 209V及び/又はT 217K;
k)アミノ酸残基R242 の修飾、特に突然変異R 242P;
【0062】
l)246 −251 領域内にあるアミノ酸残基、特に246, 247,250及び/又は 251にあるアミノ酸残基の修飾、例えばH24A,Y,E 250Q,S,K 251A,Q;
m)アミノ酸残基E255 の修飾、特に突然変異E 255P;
n)260 −269 領域内にあるアミノ酸残基、特に260, 264,265, 267,268 及び/又は 269にあるアミノ酸残基の修飾、例えば以下の突然変異:A 260G,N 265Y,A 269Kの中の少なくとも1;
【0063】
o)290 −293 領域内にあるアミノ酸残基、特に290, 291及び/又は 293位にあるアミノ酸残基の修飾、例えば以下の突然変異:Y29F,N,Q 291K,H 293Q,Yの中の少なくとも1;
p)314 −320 領域内にあるアミノ酸残基、特に315, 318及び/又は 320位にあるアミノ酸残基の修飾、例えば以下の突然変異:K 315D,L 318T及び/又はS 320A;
q)アミノ酸残基T341 及び/又はQ360 の修飾、特に突然変異T 341P及び/又はQ 360C;
r)369 −383 領域内にあるアミノ酸残基、特に370, 371,372, 373,374, 375,376, 379及び/又は 382位にあるアミノ酸残基の修飾、例えば以下の突然変異: 370* , 371* , 372* ,(370 −372)* ,S 373P,Q 374P,R 375Y,A 379S,H 382Sの中の少なくとも1;
【0064】
s)393, 398及び/又は 409位にあるアミノ酸残基の修飾、例えば突然変異Q 393D,A39T,P及び/又はV 409I;
t)416 −421 領域内にあるアミノ酸残基、特に419, 420及び/又は 421位にあるアミノ酸残基の修飾、例えば以下の突然変異:V 419K,A 420P,N 421Gの中の少なくとも1;
u)アミノ酸残基A435 及び/又はH450 の修飾、特に突然変異A 435S及び/又はH 450Y;
v)458 −465 領域内にあるアミノ酸残基、特に458, 459及び/又は 461位にあるアミノ酸残基の修飾、例えば少なくとも1の以下の突然変異:P 459T,V46K,Tの中の少なくとも1;
w)そのアミノ酸配列の追加のアミノ酸残基の欠失又は置換並びに/又はその配列内、又はそのアミノ酸配列のC−末端及び/又はN−末端における少なくとも1のアミノ酸残基の付加を含む少なくとも1のさらなる突然変異との組合せにおけるアミノ酸残基M197の修飾。
【0065】
上記w)中に定めるα−アミラーゼ変異体の特定のサンプルは、その中に定めたいずれかの他の突然変異と共に、突然変異M 197T,G,I,L,A,S,N,Cの中の1を含んで成る変異体を含む。
先に言及したバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼの空間モデルに基づき、上記h)中に述べた欠失は、その活性部位への改良された接近可能性をもたらし、それによりいずれかの実質的な程度にその熱活性化を変更せずにその基質特異性を改良することができるということも現在企図されている。
【0066】
通常、酵素内の追加のプロリン残基の挿入はたぶん、多数のプロリン残基がその酵素の構造を高温においてより硬くするために、高温におけるその酵素の安定性をもたらすことが発見されている。本発明において、驚ろくべきことに、バチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼ内の追加のプロリン残基の挿入は、高温において得られた変異体の不安定化をもたらすことが判明した。従って、プロリン残基の挿入により、得られた変異体の最適温度は低下する。
【0067】
驚ろくべきことに、低下した最適温度をもつバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼのプロリン置換変異体がかなり、改良された洗浄及び/又は皿洗い性能を示すことが発見された。
親α−アミラーゼがバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼであるとき、プロリンにより置換されるべき非−プロリン・アミノ酸残基は、好ましくは、他のα−アミラーゼ、例えばバチルス・アミロリクエファシエンス又はバチルス・ステアロサーモフィラスα−アミラーゼにおいて、プロリンにより占有される位置に位置する。
【0068】
従って、重要な態様においては、本発明の変異体は、1以上の非−プロリン残基がプロリン残基と置換されるものである。親α−アミラーゼがバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼであるとき、着目の突然変異は:
R 242P,E 255P,T 341P,S 373P,Q 374P,A 420P,Q 482Pを含む。
【0069】
最後に、先に述べたバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼの空間モデルに基づいて、その基質結合領域内の以下のアミノ酸置換により調製された変異体が皿洗い/洗浄性能に関して改良された(より高い)最適pHをもつことが企図される:
R23E,D,K 106E,D, I 135E,D, K 156E,D, V 186E,D, Y 198E,D, Y 193E,D, Q 178E,D, K 234E,D, K 237E,D及び/又はQ 360E,D。
【0070】
上述のように、類似アミラーゼの1例は、バチルス・アミロリクエファシエンスα−アミラーゼである。他は、バチルス・ステアロサーモフィラスα−アミラーゼである。バチルス・アミロリクエファシエンスα−アミラーゼとバチルス・ステアロサーモフィラスα−アミラーゼのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号:4と配列番号:6に示す。用語バチルス・アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)α−アミラーゼとバチルス・ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus )α−アミラーゼは、それぞれ、これらのα−アミラーゼのアナログであって:
i)それぞれ、配列番号4と6に示す配列と、少なくとも60%の相同性、例えば少なくとも70%,75%,80%,85%,90%又は95%の相同性をもつアミノ酸配列をもち、そして/又は
ii)上記のα−アミラーゼに対して作られた抗体と免疫学的交差反応性を示し、そして/又は
iii)上記のα−アミラーゼをコードする DNA配列であってそれぞれ、配列番号3と5に示すものと同一のプローブとハイブリダイズする DNA配列によりコードされているもの、のアナログを含むと意図される。
【0071】
特性i)−iii )は、バチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼとの関係において先に説明したようなやり方で理解されるべきである。配列番号:4中に示すアミノ酸配列を含んで成るバチルス・アミロリクエファシエンスα−アミラーゼのアナログの特定の例は、(Novo Nordisk A/S から入手可能な)BAN(登録商標)、(Solvayから入手可能な)Optiamyl(登録商標)、(Gist-Brocades から入手可能な)Dexlo(登録商標)及びRapidase(登録商標)並びにKazuzase(登録商標)(Showa Denkoから入手可能な混合α−アミラーゼとプロテアーゼ製品)である。配列番号:6に示すアミノ酸配列を含んで成るバチルス・ステアロサーモフィラスα−アミラーゼのアナログの特定の例は、(Novo Nordisk A/S から入手可能な)Liquozyme 280 L(登録商標)と(Enzyme BioSystems から入手可能な)G−zyme 995(登録商標)である。
【0072】
改良された洗浄及び/又は皿洗浄性能をもつ変異体の調製のための本明細書中に開示された原理が密に関係するバチルス・アミロリクエファシエンスとバチルス・ステアロサーモフィラスα−アミラーゼの変異体の調製のために使用されることができることも企図される。従って、例えば、上述のバチルス・リケニフォルミス・アミノ酸残基に相同なバチルス・アミロリクエファシエンス又はバチルス・ステアロサーモフィラスα−アミラーゼ内の位置にあるアミノ酸残基は、類似のアミノ酸残基により置換され、それにより改良された性能をもつ新規の変異体を生ぜしめることができる。
【0073】
相同位置は、1次構造(先に与えた配列番号:2,4と6の間の比較)又は着目のα−アミラーゼの3次構造の比較により同定されることができる。
【0074】
3次構造における相同位置は、他のα−アミラーゼ、例えばアスペルギルス・オリザエ(A. oryzae )α−アミラーゼ構造(上記)又はアスペルギルス・ニガー(A. niger)α−アミラーゼ構造(Boel et al., 1990, Biochemistry 29, pp. 6244-6249)の確立された結晶構造との比較により決定されることができる。
【0075】
さらに、改良された洗浄及び/又は皿洗浄性能をもつα−アミラーゼ変異体の調製のための上記の原理は、他のα−アミラーゼ、例えばバチルス・サブチリス由来又はアスペルギルス株、例えばアスペルギルス・ニガーの株由来の変異体、例えばデンマーク国特許出願第DK5126/87中に記載されたα−アミラーゼ、又はアスペルギルス・オリザエの株由来の変異体、例えば、配列番号:7に示すアミノ酸配列をもつ商業的に入手可能なFungamyl(登録商標)( Novo Nordisk A/S),Mycolase(登録商標)(Gist-Brocades), Clarase (Solvay)、及び Phlowzyme(登録商標)(Enzyme BioSystems)を調製するために使用されることができる。
【0076】
上述のように、本発明に係るα−アミラーゼ変異体は、ハイブリッドα−アミラーゼであることができる。従って、さらなる態様においては、改良された洗浄及び/又は皿洗浄性能をもつ本発明に係る変異体は、少なくとも2の親α−アミラーゼから誘導される部分的アミノ酸配列の組合せを含んで成るハイブリッドα−アミラーゼである。ハイブリッド・アミラーゼの文脈中、用語“改良された洗浄及び/又は皿洗い性能”は、そのハイブリッドの性能が、同様の条件下でテストされるときその親アミラーゼのいずれのものよりも良好であることを示すと意図される。
【0077】
本発明者らが知る限り、改良された洗浄及び/又は皿洗い性能をもつハイブリッドα−アミラーゼの先の開示又は示唆は全く存在しない。事際、ハイブリッドα−アミラーゼは、洗浄又は皿洗いにおける使用のために先に全く開示又は示唆されていない。
【0078】
好ましくは、ハイブリッドの親α−アミラーゼの中の少なくとも1は、微生物α−アミラーゼ(他の親、例えば哺乳類起源をもつもの);より好ましくは、その親α−アミラーゼの全ては微生物起源を有する。1の態様においては、ハイブリッドα−アミラーゼは、少なくとも2のバクテリアのα−アミラーゼから得られる、少なくとも1のバクテリアと1の真菌α−アミラーゼから得られる、又は少なくとも2の真菌α−アミラーゼから得られる、部分的アミノ酸配列の組合せを含んで成る。
【0079】
本発明に係るハイブリッドα−アミラーゼの好ましい例は、バチルス・リケニフォルミスの株由来のα−アミラーゼのC−末端部分と、バチルス・アミロリクエファシエンスの株又はバチルス・ステアロサーモフィラスの株由来のα−アミラーゼのN−末端部分を含んで成るものである。
【0080】
好ましくは、バチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼ及び/又はバチルス・アミロリクエファシエンス及び/又はバチルス・ステアロサーモフィラスα−アミラーゼは、それぞれ、配列番号:2,4と6に示すアミノ酸配列を含んで成るもの、又は、以下さらに詳細に定めるような上記α−アミラーゼのいずれかのアナログである。本発明に係るハイブリッドα−アミラーゼは、2つの親α−アミラーゼ、並びに3以上の親α−アミラーゼの部分的配列を含んで成ることができると理解されるであろう。さらに、本発明に係るハイブリッドα−アミラーゼは、その親α−アミラーゼの各々の1,2又はそれ以上の部分、例えば、第1親α−アミラーゼのN−末端部分、第2親α−アミラーゼの中間体部分、及び場合によりその第1、第3又はさらなる親α−アミラーゼのさらなる中間部分、並びに最後にこれらの親α−アミラーゼのいずれかのC−末端部分を含んで成ることができる。
【0081】
特に好ましい本発明に係るハイブリッドα−アミラーゼは、配列番号:2に示すアミノ配列又は本明細書中に定めるようなそのアナログを含んで成るバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼのC−末端部分の少なくとも 410、例えば 415、例えば少なくとも 430、少なくとも 445、例えば 446、又は少なくとも 460のアミノ酸残基を含んで成るものである。このハイブリッドα−アミラーゼのN−末端部分は好ましくはバチルス・アミロリクエファシエンス又はバチルス・ステアロサーモフィラスα−アミラーゼ由来である。
【0082】
さらなる態様においては、本発明は、例えば部位特異的又はランダム突然変異誘発により調製された1以上の突然変異をさらに含んで成る先に定めたようなハイブリッドα−アミラーゼに関する。特に重要なのは、配列番号:2に示すアミノ酸配列をもつα−アミラーゼのC−末端部分であって、その中で197 位にあるメチオニン残基が他のアミノ酸残基により置換されているものを含んで成る上述のようなハイブリッドα−アミラーゼである。所望の突然変異の特定の例は、M 197T,M 197G,M 197L,M 197A,M 197NとM 197Sである。
【0083】
本発明に従って、α−アミラーゼ変異体(及びハイブリッドα−アミラーゼ)についての先に示したアミノ酸配列の修飾のいずれか1を適宜、上述の他の修飾の中のいずれか1と組み合せることができることに注目すべきである。
【0084】
本発明者らは、所定の酵素の洗浄及び/又は皿洗い性能と所定の反応において得られる加水分解速度との間に明らかな関係が存在することを発見した。
【0085】
より特に、その加水分解速度がより大きくなれば、得られる洗浄及び/又は皿洗い性能がより良好になることが発見された。従って、いずれの理論にも拘束されないが、本発明に係るα−アミラーゼ変異体により得られる洗浄及び/又は皿洗い性能の改良がその親α−アミラーゼのものと比べるとき、類似条件下でテストされるとき、それぞれ、その変異体と親α−アミラーゼについて得られる加水分解速度を比較することにより直接的に予言されることができることが企図される。この加水分解速度は、ミカエリス−メンテン式の使用により計算されることができる。以下の実施例11参照。
【0086】
実施例11に与える等式から、低い基質濃度において、その加水分解速度がVmax に正比例し、そしてKmに反比例することは明らかであろう。
【0087】
従って、本発明に係るα−アミラーゼ変異体は、好ましくは、低基質濃度において、その親α−アミラーゼよりも高い加水分解速度をもつものである。あるいは、本発明に係るα−アミラーゼ変異体は、好ましくは、同一条件下でテストされるとき、その親α−アミラーゼよりも高いVmax 及び/又は低いKmをもつものである。ハイブリッドα−アミラーゼの場合には、上記比較のために使用されるべき親α−アミラーゼは最良性能をもつ親酵素の中の1でなければならない。
【0088】
Vmax ,KmとVは、よく知られた手順により、例えば以下の実施例11中に記載された方法により、測定されることができる。
【0089】
α−アミラーゼ変異体の調製方法
遺伝子に突然変異を導入するいくつかの方法が本分野において公知である。(例えば、本明細書中に開示するバチルスα−アミラーゼの機能的アナログをコードする)α−アミラーゼ−コーディングDNA 配列のクローニングの簡単な討議の後、このα−アミラーゼ−コーディング配列内の特定部位における突然変異生成方法を討議する。
【0090】
α−アミラーゼをコードする DNA配列のクローニング
親α−アミラーゼをコードする DNA配列を、本分野においてよく知られたさまざまな方法を使用して、着目のα−アミラーゼを作り出すいずれかの細胞又は微生物から単離することができる。まず、調査すべきα−アミラーゼを生産する生物から染色体 DNA又はメッセンジャー RNAを使用して、ゲノム DNA及び/又はcDNAライブラリーを構築しなければならない。次に、α−アミラーゼのアミノ酸配列が既知である場合、相同な、標識されたオリゴヌクレオチド・プローブを合成し、そして着目の生物から調製されたゲノム・ライブラリーからα−アミラーゼ−コーディング・クローンを同定するために使用する。あるいは、既知のα−アミラーゼ遺伝子に相同な配列を含む標識されたオリゴヌクレオチド・プローブを、低緊縮ハイブリダイゼーション及び洗浄条件を使用して、α−アミラーゼ−コーディング・クローンを同定するためのブローブとして使用することができるであろう。
【0091】
α−アミラーゼ−コーディング・クローンを同定するためのさらに他の方法は、発現ベクター、例えばプラスミド内にゲノムDNA の断片を挿入し、得られたゲノム DANライブラリーによりα−アミラーゼ−陰性バクテリアを形質転換し、そして次にα−アミラーゼについての基質を含む寒天上にその形質転換されたバクテリアをプレーティングして、それによりα−アミラーゼを発現するクローンを同定せしめることを含む。
【0092】
あるいは、上記酵素をコードする DNA配列を、確立された標準方法、例えばS. L. Beaucage and M. H. Caruthers(1981)により記載されたホスホアミジット法又はMatthes et al.(1984)により記載された方法により合成的に製造することができる。このホスホアミジット法においては、オリゴヌクレオチドは、例えば自動DNA 合成装置内で、合成され、精製され、アニールされ、ライゲートされ、そして適当なベクター内にクローン化される。
【0093】
最後に、この DNA配列は、標準的な技術に従って、(適宜、全 DNA配列のさまざまな部分に対応する断片)合成、ゲノム又はcDNA起源の断片のライゲーションにより調製された、混合ゲノムと合成起源、混合合成とcDNA起源又は混合ゲノムとcDNA起源を有することができる。上記DNA 配列を例えばUS4,638,202 又はR. K. Saiki et al.(1988)中に記載されているように、特定のプライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により調製することもできる。
【0094】
部位指定突然変異誘発
一旦、α−アミラーゼ−コーディング DNA配列が単離され、そして突然変異の所望の部位が同定されれば、突然変異を合成オリゴヌクレオチドを使用して導入することができる。これらのオリゴヌクレオチドは、所望の突然変異部位に隣接するヌクレオチド配列を含み;突然変異体ヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド合成の間に挿入される。特定の方法においては、α−アミラーゼ−コーディング配列を橋かけするDNA の一本鎖ギャップがそのα−アミラーゼ遺伝子を担持するベクター内で作られる。次に、所望の突然変異を担持する合成オリゴヌクレオチドが、一本鎖 DNAの相同部分にアニールされる。次にその残りのギャップが、 DNAポリメラーゼIによりフィル・インされ、そしてその構築物がT4リガーゼを使用してライゲートされる。この方法の特定の例は、Morinaga et al. (1984)中に記載されている。 US, 4,760,025はそのカセットの僅かな変更を行うことにより多突然変異をコードするオリゴヌクレオチドの導入について記載している。しかしながら、さらに多様な突然変異がMorinaga法によりいずれか1回で導入されることができる。なぜなら、多数の、さまざまな長さのオリゴヌクレオチドが導入されることができるからである。
【0095】
α−アミラーゼ−コーディング DNA配列内への他の突然変異方法は、Nelson and Long (1989)中に記載されている。それは、 PCR反応におけるプライマーの1として化学的に合成されたDNA 鎖により導入された所望の突然変異を含む PCR断片の3段階生成を含む。この PCR−生成断片から、突然変異を担持する DNA断片が制限エンドヌクレアーゼによる解裂により単離され、そして発現プラスミド内に再挿入されることができる。
【0096】
ランダム突然変異
ランダム突然変異を、好適な物理的又は化学的突然変異誘発剤、例えばUV照射、メタンスルホン酸エチル(EMS)、重亜硫酸ナトリウム又は本分野において公知のいずれかの他の突然変異誘発剤にその DNA配列を供し、又は特定領域内への突然変異の導入のために縮重オリゴヌクレオチドを使用した PCRの使用による指定ランダム突然変異誘発にその DNA配列を供することにより、親α−アミラーゼをコードする DNA配列内に導入することができる。
【0097】
ハイブリッドα−アミラーゼの製造方法
部位特異的突然変異誘発の変法として、親α−アミラーゼの中の少なくとも2のハイブリッドであるα−アミラーゼ変異体と着目の対応遺伝子の関連部分を併合することにより調製することができる。
【0098】
天然酵素を上述のようにランダム又は部位指定突然変異誘発により遺伝子修飾することができる。あるいは、1の酵素の一部を他の一部により置換してキメラ酵素を得ることができる。この置換は、慣用のインビトロ遺伝子スプライシング技術又はインビボ組換え又は両技術の組合せのいずれかにより達成されることができる。慣用のインビトロ遺伝子スプライシング技術を使用するとき、α−アミラーゼ−コーディング配列の所望の部分を、適当な部位特異的制限酵素を使用して欠失し;そのコーディング配列の欠失部分を次に、新規α−アミラーゼをコードするキメラ・ヌクレオチド配列が作り出されるように、異なるα−アミラーゼ・コーディング配列の所望部分の挿入により置換することができる。あるいは、α−アミラーゼ遺伝子を、例えば、 Higuchi et al. 1988により記載されたPCR重層伸張法の使用により、融合することができる。
【0099】
このインビボ組換え技術は、高相同領域(DNA配列の同一性)をもつ異なる DNAセグメントが、組換えられ、すなわち DNAを破壊及び交換し、そしてその相同領域内に新たな結合を確立することができるという事実に基づく。従って、2つの異なるが相同なアミラーゼ酵素のためのコーディング配列が宿主細胞を形質転換するために使用されるとき、インビボにおける相同配列の組換えは、キメラ遺伝子配列の生産をもたらすであろう。宿主細胞によるこれらのコーディング配列の翻訳は、キメラ・アミラーゼ遺伝子生成物の生産をもたらすであろう。特定のインビボ組換え技術が US5,093,257と EP252,666中に記載されている。
【0100】
バチルス・リケニフォルミスからの及びバチルス・アミロリクエファシエンスからのα−アミラーゼ遺伝子はその DNAレベルにおいて約70%の相同性である、そしてインビボ遺伝子又はプライシングによるハイブリッド形成に好適である。
【0101】
他の態様においては、ハイブリッド酵素は本分野において知られた標準的な化学的方法により合成されることができる。例えば、Hunkapiller et al.(1984)を参照のこと。従って、上記アミノ酸配列をもつペプチドは、全体的又は部分的に合成され、そして結合されて本発明に係るハイブリッド酵素を作ることができる。
【0102】
本発明に係る変異体についてのスクリーニング又は選択
本発明に係る(ハイブリッドを含む)変異体についてのスクリーニング又は選択は、好適には、その変異体のデンプン分解活性を測定し、例えばデンプン含有寒天プレート上で変異体をコードする DNA配列により形質転換された宿主細胞を増殖させ、そしてデンプン分解宿主細胞を同定することにより、行われることができる。さらに、その選択又はスクリーニングは、好適には、洗浄及び/又は皿洗い性能に関して重要な1以上のパラメーターをテストすることを含むことができる。このようなパラメーターは、例えば、比活性、基質特異性、熱活性化、最適pH、最適温度、慣用の洗剤組成物の構成成分に対する抵抗性(例えば以下にさらに述べるタイプのもの)並びに洗浄及び/又は皿洗い性能のために重要であると考えられるいずれかの他のパラメーターを含む。これらのパラメーターの全ては、よく知られた原理に従って測定されることができる。最後に、この変異体の性能を、例えば以下の物質及び方法セクション中に記載するように、好適な洗浄及び/又は皿洗い検定の使用によりテストすることができる。
【0103】
α−アミラーゼ変異体の発現
本発明に従って、上記方法又は本分野において知られたいずれかの他の方法により作られた突然変異α−アミラーゼ−コーディングDNA 配列は、典型的には、プロモーター、オペレーター、リボソーム結合部位、翻訳開始シグナル、及び場合によりリプレッサー遺伝子又は各種アクチベーター遺伝子をコードする調節配列を含む発現ベクターを使用して、酵素形態において発現されることができる。
【0104】
本発明に係るα−アミラーゼ変異体をコードする DNA配列を担持する組換え発現ベクターは、便利には組換え DNA手順に供されることができるいずれかのベクターであることができ、そしてベクターの選択は、しばしば、それが導入されるべき宿主細胞に依存するであろう。従って、このベクターは、自律複製ベクター、すなわち染色体外存在物として存在するベクターであって、その複製が染色体複製から独立しているもの、例えばプラスミド、バクテリオファージ、又は染色体外要素、ミニ染色体又は人工染色体であることができる。あるいは、このベクターは、宿主細胞内に導入されたとき、宿主細胞ゲノム内に組み込まれ、そしてその中にそれが組み込まれた染色体と共に複製されるものであることができる。
【0105】
ベクター内では、 DNA配列は好適なプロモーター配列に作用可能な状態で接続されなければならない。このプロモーターは、選択された宿主細胞内で転写活性を示すいずれかの DNAであることができ、そして、その宿主細胞に相同(homologous)又は異種のいずれかのタンパク質をコードする遺伝子から得られることができる。特にバクテリア宿主内で、本発明のα−アミラーゼが変異体をコードするDNA 配列の転写を指令するのに好適なプロモーターの例は、大腸菌(E. coli )の lacオペロンのプロモーター、ストレプトミセス・コエリカラー(Streptomyces coelicolor)アミラーゼ遺伝子 dagAプロモーター、バチルス・リケニフォルミス(Bachillus licheniformis )α−アミラーゼ遺伝子(amy L)のプロモーター、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)麦芽生成アミラーゼ遺伝子(amy M)のプロモーター、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus Amyloliquefaciens )α−アミラーゼ(amy Q)のプロモーター、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)xyl A及びxyl B遺伝子のプロモーター等である。真菌宿主における転写のために、有用なプロモーターの例は、アスペルギルス・オリザエ(A. oryzae )TAKAアミラーゼ、リゾムコー・メイヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼA、アスペルギルス・ニガー(A. niger)中性α−アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(A. niger)の酸安定性α−アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(A. niger)グルコアミラーゼ、リゾムコー・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ、アスペルギルス・オリザエ(A. oryzae )アルカリ性プロテアーゼ、アスペルギルス・オリザエ(A. oryzae )トリオース・ホスフェート・イソメラーゼ又はアスペルギルス・ニジュランス(A. nidulans )アセトアミダーゼをコードする遺伝子から得られたものである。
【0106】
本発明に係る発現ベクターは、好適な転写ターミネーターを含んで成ることもでき、そして真核生物においては、本発明に係るα−アミラーゼ変異体をコードするDNA 配列に作用可能な状態で接続されたポリアデニレーションを含んで成ることができる。終結とポリアデニレーション配列は、好適には、プロモーターと同一源から得られることができる。
【0107】
上記ベクターは、そのベクターが着目の宿主細胞内で複製することを可能にするDNA 配列をさらに含んで成る。このような配列の例は、プラスミドpVC19, pACYC177, pVB110, pE194,pAMB1及びpIJ702の複製起点である。
【0108】
上記ベクターは、選択マーカー、例えばその生成物が宿主細胞における欠陥を補償する遺伝子、例えばバチルス・サブチリス又はバチルス・リケニフォルミス由来のdal 遺伝子、又は抗生物質耐性、例えばアンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール又はテトラマイシン耐性を付与するものを含んで成ることもできる。さらに、ベクターは、アスペルギルス選択マーカー、例えばamd S,arg B,nia D及びsC、ハイグロマイシン耐性を作り出すマーカーを含んで成ることができ、又はその選択は、例えばWO91/17243 中に記載されるように、同時形質転換により達成されることができる。
【0109】
細胞内発現がいくつかの点で有利であることができるけれども、例えば宿主細胞として特定のバクテリアを使用するとき、その発現は、一般には、細胞外であることが好ましい。一般に、本明細書中に述べるバチルスα−アミラーゼは、その培養基中への発現プロテアーゼの分泌を許容するプレ領域を含んで成る。適宜、このプレ領域は、その対応プレ領域をコードするDNA 配列の置換により便利には達成される、異なるプレ領域又はシグナル配列により置換されることができる。
【0110】
α−アミラーゼ変異体をコードする本発明に係るDNA 構築物、プロモーター、ターミネーターと他要素を、それぞれ、ライゲートし、そして複製に必要な情報を含む好適なベクター内にそれを挿入するために使用される手順は、当業者によく知られている(例えば、Sambrook et al. (1989)参照)。
【0111】
上述のように本発明に係る DNA構築物又は発現ベクターのいずれかを含んで成る本発明に係る細胞を、有利には、本発明に係るα−アミラーゼ変異体の組換え生産において宿主細胞として使用される。この細胞は、便利には、宿主染色体内に(1以上のコピーにおいて)DNA構築物を組み込むことにより、上記変異体をコードする本発明に係る DNA構築物により形質転換されることができる。この組み込みは、一般的に有利であると考えられる。なぜなら、その DNA配列が細胞内でより安定して維持される傾向をもつからである。このDNA 構築物の宿主染色体内への組み込みは、慣用法に従って、例えば相同的又は異種組換えにより、行われることができる。あるいは、上記細胞を、異なるタイプの宿主細胞に関して上述したような発現ベクターにより形質転換することができる。
【0112】
本発明に係る細胞は、より高等な生物:例えば哺乳類又は昆虫の細胞であることができが、好ましくは微生物細胞、例えばバクテリア又は(酵母を含む)真菌細胞である。
【0113】
好適なバクテリアの例は、グラム陽性バクテリア、例えばバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis )、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・アルカロフィラス(Bacillus alkalophilus)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens )、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans )、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans )、バチルス・ラウタス(Bacillus lautus)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis )、又はストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)又はストレプトミセス・ムリナス(Streptomyces murinus )、又はグラム陽性バクテリア、例えば大腸菌(E. coli )である。上記バクテリアの形質転換は例えばプロトプラスト形質転換により又はそれ自体公知のやり方でコンピテント細胞を使用することにより行われることができる。
【0114】
この酵母生物は、好ましくは、サッカロミセス(Saccharomyces )又はシゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces )、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)から選ばれることができる。糸状菌は有利には、アスペルギルス(Aspergillus )の種、例えばアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)又はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger )に属することができる。真菌細胞は、それ自体公知のやり方で、プロトプラスト形成及びそのプロトプラストの形質転換、その後のその細胞壁の再生を含む方法により形質転換されることができる。アスペルギルス宿主細胞の形質転換に好適な手順はEP238023号中に記載されている。
【0115】
さらなる態様においては、本発明は、本発明に係るα−アミラーゼ変異体の製造方法であって、その変異体の生産を誘導する条件下で上述のように宿主細胞を培養し、そしてその細胞及び/又は培養基からその変異体を回収することを含んで成る方法に関する。
【0116】
上記細胞を培養するために使用する方法は、着目の宿主細胞を増殖させ、そして本発明に係るα−アミラーゼ変異体の発現を得るのに好適ないずれかの慣用培地であることができる。好適な培地は、商業的な供給者から入手可能であり、又は公開された処方に従って(例えばAmerican Type Culture Collectionのカタログ中に記載されたようなもの)に従って調製されることができる。 宿主細胞から分泌されたα−アミラーゼ変異体は、便利には、遠心分離又は濾過による培地からの細胞の分離、及び硫酸アンモニウムのような塩による培地のタンパク質成分の沈殿、その後のクロマトグラフィー手順、例えばイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティー・クロマトグラフィーの使用その他を含むよく知られた手順により、その培養基から回収されることができる。
【0117】
皿洗い及び洗浄のための洗剤添加物及び組成物
それらの改良された洗浄及び/又は皿洗い性能のために、本発明に係る(ハイブリッドを含む)α−アミラーゼ変異体は、特に、洗剤組成物、例えばpH7−13のレンジ、特にpH8−11のレンジ内での性能を意図された洗剤組成物中への取り込みに十分に好適なものである。
【0118】
本発明に従って、本α−アミラーゼ変異体が、洗剤組成物の成分として添加されることができる。そのまま、それは洗剤添加物の形態でその洗剤組成物中に含まれることができる。この洗剤組成物及び洗剤添加物は、さらに、洗剤中で慣用される1以上の他の酵素、例えばプロテアーゼ、リパーゼ、デンプン分解酵素、(ペルオキシダーゼを含む)オキシダーゼ、又はセルラーゼを含んで成ることができる。
【0119】
洗浄及び/又は皿洗い性能における実質的な改良が、α−アミラーゼが他のデンプン分解酵素、例えばプルラナーゼ、イソ−アミラーゼ、ベータ−アミラーゼ、アミログルコシダーゼ又はCTGaseと併合されるときに、得られることができることが発見された。所定の目的に好適な商業的に入手可能なデンプン分解酵素の例は、全てNovo Nordisk A/S から入手可能な、 AMG(登録商標), Novamyl(登録商標)及び Promozyme(登録商標)である。
【0120】
従って、特定の態様においては、本発明は、(上述のものの中から選ばれた)少なくとも1の他の酵素と共に本発明に係るα−アミラーゼ変異体を含んで成る洗剤添加物に関する。
特定の態様においては、本発明は洗剤添加物を提供する。酵素は、1以上の酵素を含む別個の添加物を添加し、又はこれらの酵素の全てを含んで成る併用添加物を添加することにより、洗剤組成物中に含まれることができる。本発明に係る洗剤添加物、すなわち、別個の添加物又は併合添加物は、例えば、粒状物、液体、スラリーその他として配合されることができる。好ましい洗剤添加物は、粒状物(特に非発塵性粒状物)、液体(特に安定化液体)、スラリー又は保護酵素である。
【0121】
非発塵性粒状物は、例えば US4,106,991と US4,661,452中に開示されたように製造され、そして場合により、本分野において公知の方法によりコートされることができる。洗剤酵素は、粒状化の前又は後に混合されることができる。
【0122】
液体酵素調製物は、確立された方法に従って例えば、ポリオール、例えばプロピレン・グリコール、糖又は糖アルコール、乳酸又はホウ酸の添加により安定化されることができる。他の酵素安定化剤は、本分野においてよく知られている。保護された酵素は、EP238216中に開示された方法に従って調製されることができる。
【0123】
さらなる態様においては、本発明は、本発明に係る(ハイブリッドを含む)α−アミラーゼ変異体を含んで成る洗剤組成物に関する。
本発明に係る洗剤組成物は、いずれかの便利な形態において、例えば粉末、粒状物又は液体として存在することができる。液体洗剤は、典型的には、例えばEP特許 120,659中に開示するように90%までの水と0−20%の有機溶媒を含む水性であることができる。
【0124】
洗浄洗剤組成物
洗浄洗剤組成物(すなわち、洗濯洗浄に有用な組成物)は、アニオン、非イオン、カチオン、両性又はこれらのタイプの混合物であることができる界面活性剤を含む。洗剤は、通常0−50%のアニオン界面活性剤、例えば直鎖アルキルベンゼン・スルホネート、α−オレフィンスルホネート、アルキル・スルフェート、アルコール・エトキシ・スルフェート又は石けんを含むであろう。それは、0−40%の非イオン界面活性剤、例えば非フェノール・エトキシレート又はアルコール・エトキシレートを含むこともできる。さらに、それは、(例えば、WO92/06154 中に記載されるように)N−(ポリヒドロキシアルキル)−脂肪酸アミド界面活性剤を含むことができる。
【0125】
洗剤は、1〜40%の洗剤ビルダー、例えばゼオタイト、ジ−若しくはトリホスフェート、ホスホネート、シトレート、NTA ,EDTA又はATPA、無水コハク酸アルケニル、又はシリケートを含むことができ、又はそれはビルドされない(すなわち、本質的に洗剤ビルダーを含まない)ことができる。
【0126】
本発明に係る洗剤組成物は、上記酵素のため慣用の安定化剤、例えばポリオール、例えばポリエチレン・グリコール、糖又は糖アルコール、乳酸、ホウ酸、ホウ酸誘導体、例えば芳香族ホウ酸エステルを使用して安定化されることができ、そして上記組成物は例えばWO92/19709 又はWO92/19708 中に記載されたように配合されることができる。他の酵素安定化剤も本分野においてよく知られている。
【0127】
本発明に係る洗剤組成物は漂白剤、例えば過ホウ酸塩、過炭酸塩及び/又は活性化剤、テトラアセチル・エチレン・ジアミン、又はノナノイルオキシベンゼン・スルホネートを含むことがてき、そして例えばWO92/07057 中に記載されたように配合されることができる。 本発明に係る洗剤組成物は、他の慣用の洗剤成分、例えば解膠ポリマー(deflocculating polymers)、布コンディショナー、発泡剤、消泡剤、抗−腐食剤、よごれ懸濁剤、封鎖剤、抗−よごれ再沈着剤、染料、静菌剤、光学増白剤及び芳香剤、並びに上述のような酵素を含むこともできる。
【0128】
本発明の範囲内にあり、かつ本発明に係るα−アミラーゼ変異体を含む洗剤組成物の特定の形態は以下のものを含む:
a)ホスフェート・ビルダー、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、シリケート、使用における所望のpHに調整するためのアルカリ、及び中性無機塩を含む洗剤粉末として配合された洗剤組成物。
b)ゼオライト・ビルダー、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、アクリル又は当量ポリマー、シリケート、使用において所望のpHに調整するためのアルカリ、及び中性無機塩を含む洗剤粉末として配合された洗剤組成物。
【0129】
c)アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、有機酸、アルカリを含んで成り、7と11の間の値に調整された使用におけるpHをもつ水性洗剤液体として配合された洗剤組成物。
d)線形アルコキシレート第1アルコール、ホスフェート・ビルダー、アルカリから本質的に成る液体非イオン界面活性剤を含んで成り、7と11の間の値に調整された使用におけるpHをもつ、非水性洗剤液体として配合された洗剤組成物。
【0130】
e)アオニン界面活性剤非イオン界面活性剤、ホスフェート・ビルダー、ナトリウム・シリケート、及び僅かな又は実質的に1:ゼロの中性無機塩を含む少なくとも 600g/lのバルク密度をもつ粒状物の形態にある洗剤粉末として配合されたコンパクト洗剤組成物。
【0131】
f)アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤、ゼオライト・ビルダー、ナトリウム・シリケート、及び僅かな又は実質的にゼロの中性無機塩を含む、少なくとも 600g/lのバルク密度をもつ粒状物の形態における洗剤粉末として配合されたコンパクト洗剤組成物。
g)アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、アクリル・ポリマー、脂肪酸石けん、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、粘土粒子、及び珪酸ナトリウムを含む洗剤粉末として配合された洗剤組成物。
【0132】
h)5−65重量%の界面活性剤、0−50重量%のビルダー及び0−30重量%の電解質を含んで成る液体コンパクト洗剤。
i)線形アルキル・ベンゼン・スルホネート、牛脂アルキル・スルフェート、C4-5 アルキル・スルフェート、C4-5 アルコール7回エトキシル化(7 times ethoxylated)、牛脂アルコール11回エトキシル化、分散剤、シリコーン液、クエン酸ナトリウム、クエン酸、ゼオラクト、マレイン酸アクリル酸コポリマー、DETMPA、セルラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、デンプン分解酵素、珪酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、PVP 、過ホウ酸及び促進剤を含んで成るコンパクト粒状洗剤。
【0133】
j)ナトリウム線形C1-2 アルコール・ベンゼン・スルホネート、硫酸ナトリウム、ゼオライトA、ニトリロトリ酢酸ナトリウム、セルラーゼ、PVP , TAED、ホウ酸、過ホウ酸及び促進剤を含んで成る粒状洗剤。
k)C12-14 アルケニル・コハク酸、クエン酸モノヒドレート、ナトリウムC12-15 アルキル・スルフェート、C12-15 アルコール2回エトキシル化のナトリウム・スルフェート、C12-15 アルコール7回エトキシル化、C12-15 アルコール5回エトキシル化、ジエチレン・トリアミン・ペンタ(メチレン・ホスホン酸)、オレイン酸、エタノール、プロパンジオール、プロテアーゼ、セルラーゼ、PVP 、石けん泡抑制剤(suds supressor)、NaOH、過ホウ酸塩及び促進剤を含んで成る洗体洗剤。
【0134】
さらに、本発明に係るα−アミラーゼ変異体がその中に有利に含まれることができる好適な洗剤組成物の例は、EP373850,EP378261,WO92/19709 ,EP381397,EP486073,WO92/19707, EP407225 、及びWO92/13054 中に記載された洗剤組成物を含んで成る。
【0135】
皿洗い組成物
皿洗い洗剤組成物は、アニオン、非イオン、カチオン、両性又はこれらのタイプの混合物であることができる界面活性剤を含んで成る。この洗剤は、0−90%の非イオン界面活性剤、例えば低−〜非発泡エトキシル化プロポキシル化直鎖アルコールを含むであろう。
この洗剤組成物は、無機及び/又は有機タイプの洗剤ビルダー塩を含むことができる。この洗剤ビルダーは、リン含有及び非リン含有タイプに亜分割されることができる。洗浄組成物は通常1〜90%の洗剤ビルダーを含む。
【0136】
リン含有無機アルカリ洗剤ビルダーの例は、存在するとき、水溶性塩、特にアルカリ金属ピロホスフェート、オルトホスフェート、ポリホスフェート、及びホスホネートを含む。無リン無機ビルダーの例は、存在するとき、水溶性アルカリ金属カーボネート、ボレート及びシリケート並びにさまざまなタイプの水不溶性結晶又は非晶質アルミノ・シリケートを含み、ゼオライトのものが最もよく知られた代表である。
【0137】
好適な有機ビルダーの例は、アルカリ金属、アンモニウム及び置換アンモニウム、シトレート、スクシネート、マロネート、脂肪酸スルホネート、カルボキシメトキシ・スクシネート、アンモニウム・ポリアセテート、カルボキシレート、ポリカルボキシレート、アミノポリカルボキシレート、ポリアセチル・カルボキシレート及びポリヒドロキシスルホネートを含む。
【0138】
他の好適な有機ビルダーは、ビルダー特性をもつことが知られている高分子量ポリマー及びコポリマー、例えば適当なポアクリル酸、ポリマレイン及びポリアクリル/ポリマレイン酸コポリマー及びそれらの塩を含む。
【0139】
皿洗い洗剤組成物は、塩素/臭素タイプ又は酸素タイプの漂白剤を含むことができる。無機塩素/臭素タイプ漂白剤の例は、次亜塩素酸及び次亜臭素酸リチウム、ナトリウム又はカルシウム並びに塩素化リン酸3ナトリウムである。有機塩素/臭素タイプ漂白剤の例は複素環式N−ブロモ及びN−クロロ・イミド、例えばトリクロロイソシアヌル、トリブロモイソシアヌル、ジブロモイソシアヌル及びジクロロイソシアヌル酸、並びに水可溶化カチオン、例えばカリウム及びナトリウムとのそれらの塩である。ヒダントイン化合物も好適である。
【0140】
酸素漂白剤も、例えば無機過酸塩の形態で、好ましくは、漂白前駆体を用いて又はペルオキシ酸化合物として、好ましい。好適なペルオキシ漂白化合物の典型的な例は、アルカリ金属過ホウ酸塩、テトラヒドレート及びモノヒドレートの両方、アルカリ金属過炭酸塩、過珪酸塩並びに過リン酸塩である。好ましい活性物質材料はTAED及びグリセロール・トリアセテートである。
【0141】
本発明に係る皿洗い洗剤組成物は、酵素のための慣用の安定化剤、例えばポリオール、例えば、プロピレン・グリコール、糖又は糖アルコール、乳酸、ホウ酸、又はホウ酸誘導体、例えば芳香族ホウ酸エステルを使用して安定化されることができる。
【0142】
本発明に係る皿洗い洗剤組成物は、他の慣用の洗剤成分、例えば、解膠材料、増量材料、消泡剤、抗腐食剤、よごれ懸濁剤、封鎖剤、抗よごれ再沈着剤、脱水剤、染料、殺菌剤、蛍光剤、増粘剤及び芳香剤を含むこともできる。
【0143】
最後に、本発明に係るα−アミラーゼ変異体は、単独で又は少なくとも1のデンプン分解酵素、例えば先に定めたものの中の1と共に使用され、慣用の皿洗い洗剤、例えば、以下の特許公開のいずれかに記載された洗剤の中のいずれかの中で使用されることができる:
EP 551670,EP 533239,WO 9303129,EP 507404,US 5141664,
GB 2247025,EP 414285,GB 2234980,EP 408278,GB 2228945,
GB 2228944,EP 387063,EP 385521,EP 373851,EP 364260,
EP 349314,EP 331370,EP 318279,EP 318204,GP 2204319,
EP 266904,US 5213706,EP 530870,CA 2006687,EP 481547,
EP 337760,WO 93/14183,US 5223179,WO 93/06202,WO 93/05132,WO
92/19707,WO 92/09680,WO 92/08777,WO 92/06161,
WO 92/06157,WO 92/06156,WO 91/13959,EP 399752,US 4941988,US
4908148。
【0144】
繊維糊抜き
繊維加工産業においては、α−アミラーゼは伝統的に、織る間に横糸ヤーン上の保護コーティングとして役立つデンプン含有糊の除去を容易にするために糊抜き工程における補助剤として使用されている。
【0145】
織り後の糊コーティングの完全な除去は、その布が洗浄され、漂白され、そして染色されるその後の工程における最適結果を保護するのに重要である。酵素デンプンの分解は、それが繊維材料に対しいずれの有害な効果を含まないので好ましい。
加工費用を減少し、そして工場処理量を増加させるために、この糊抜き工程はしばしば洗浄及び漂白段階と併合される。このような場合、非酵素的補助剤、例えばアルカリ又は酸化剤は、典型的にはそのデンプンを破壊するために使用される。なぜなら伝統的なα−アミラーゼは高pHレベル及び漂白剤とあまり適合しない。このデンプン糊の非酵素的破壊は、使用されるより過激な化学物質のためにいくつかの繊維ダメージを導く。
【0146】
従って、時間短縮同時糊抜き/洗浄/漂白工程における酵素的糊分解の利点を保持するために、高pHにおいて酸化(漂白)剤に対する改良された抵抗性又はそれとの適合性をもつα−アミラーゼ酵素を使用することが望ましいであろう。
本発明に係るα−アミラーゼ変異体が酸化剤に対する改良された抵抗性をもつことが発見される:そしてそれ故、特に今日使用される非酵素的アルカリ又は酸化剤の置換のために、先に記載されたような糊抜き工程において有用であることができることも企図される。
【0147】
以下の実施例は本発明をさらに説明し、そしてそれらは、いかなる方法においても請求に係る本発明の範囲を限定するものと意図されない。
【0148】
材料及び方法
α−アミラーゼ活性の測定
α−アミラーゼ活性をNovo Units(NU)に換算して本明細書中に与える。1000NU〔すなわち、1キロ・ノボα−アミラーゼ・ユニット(kNU)〕は、1時間当り標準条件(3)±0.05℃;Ca含量0.0003M;pH5.6)下、5.26グラムのデンプン乾燥物質(Merck Amylum可溶性、Erg. B. 6バッチNo.9947275)をデキストリン化する酵素量である。NUの定義に関するさらなる細目は、Novo Nordisk A/S, Novo Alle′, DK-2880 Bagsvaerd, Denmarkから入手可能である小冊子(“AF9/6”)中に与えられる。
α−アミラーゼ活性の測定を、Phadebas錠剤(Pharmacia Diagnostics により供給されたPhadebas(登録商標)Amylase Test)を基質として使用する−Termamyl(登録商標)活性の測定のためにNovo Nordisk A/S により開発された−方法により行う。この基質は、ウシ血清アルブミンとバッファー物質と混合され、そして錠剤にされた架橋不溶性青色デンプン・ポリマーである。水への懸濁後、デンプンをα−アミラーゼにより加水分解して可溶性の青色断片を得る。620nm において測定された得られた青色溶液の吸収は、α−アミラーゼ活性の関数であり;この酵素活性は酵素標準のものと比較される。この方法のための標準条件は:
温度:37℃
pH:7.3
反応時間:15分間
カルシウム:0.15nM
【0149】
本法に関するさらなる詳細は、Novo Nordisk A/S, Novo Alle′, DK-2880 Bagsvard, Denmark から入手可能である小冊子(“AF207 /1”)中に与えられる。
【0150】
還元糖の測定のための Somogyi法
本法は、糖が銅(II)イオンを酸化銅(I)であってモリブデン酸ヒ素と反応して分光光度計により測定される青色を作り出すものに還元するとい原理に基づく。検査されるべき溶液は、リッター当り50と 600mgの間のグルコースを含まなければならない。
【0151】
1mlの糖溶液を1mlの銅試薬と混合し、そして20分間沸騰水中に置く。得られた混合物を冷却し、そして1mlのNelso's 呈色試薬と10mlの脱イオン水と混合する。 520nmにおける吸光度を測定する。
領域0−2においては、吸光度は糖の量に比例する。従ってこれを以下のように計算することができる:
【0152】
【数1】

【0153】
【数2】

【0154】
試薬
Somogyi's 銅試薬
35.1gの Na2HPO4・2H2O と40.0gの酒石酸カリウムナトリウム(KNaC4H4O2 ・4H2O)を 700mlの脱イオン水に溶解する。 100mlの1N水酸化ナトリウムと80mlの10%硫酸銅(II)(CuSO4・5H2O)を添加し、 180gの無水硫酸ナトリウムを上記混合物中に溶解し、そしてその容量を脱イオン水により1lにもっていく。
【0155】
Nelson's呈色試薬
50gのモリブデン酸アンモニウムを 900mlの脱イオン水に溶解する。次に42mlの濃硫酸(Merck)を添加し、次に6gのヒ素酸水素2ナトリウムm7水和物を50mlの脱イオン水に溶解し、そしてその容量を脱イオン水により1lにもっていく。
溶液を使用前37℃において24−28時間静置しなければならない。ガラス栓を備えた褐色ガラス瓶内に暗所においてそれを保存しなければならない。
【0156】
3 標準
100mgのグルコース(May & Baker 、無水)を1lの脱イオン水に溶解する。
文献:J. Biol. Chem. 153, 375 (1944)。
【0157】
kmの測定
様々な基質濃度におけるアミラーゼによる触媒される加水分解の速度を、基質として可溶性デンプン(Merck 1252、)を用いるSomogyi-Nelson法を使用して測定した。この加水分解測定を、異なる基質濃度(1%, 0.5%,0.3 %,0.25%及び 0.2%デンプン溶液)下で測定した。還元糖の数をSomogyi-Nelson法を使用して測定し、そして作られたグルコース当量/アミラーゼmg×時間として測定してその加水分解速度を得た。データを、ミカエリス−メンテンとラインウェーバー−バーク式に従ってプロットした。これらの式からVmax とkmを容易に計算することができる。
【0158】
洗濯洗浄
洗剤:商業的な欧州強力液体コンパクト洗剤(HDL)
洗剤投与量:5g/l
よごれ: Cibacron Blue 3GA着色ポテト・デンプン
水硬度:18゜dH
時間:20分間
pH(洗浄時):約7.8
評価: 660nmにおける反射
【0159】
自動皿洗浄
1)洗浄条件
アミラーゼ:バチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼ(配列番号:2)
M 197T
QL37
アミラーゼ投与量:0−0.72mg酵素タンパク質/洗浄液l
洗剤:標準欧州タイプ自動皿洗い洗剤
洗剤投与量: 4.2g/洗浄液l
よごれ:プレートとガラス上のコーン・デンプン
皿洗い:55℃プログラム、Bancknecht GS 1272
pH:皿洗浄の間10.3
【0160】
2)評価
プレートとガラスからのデンプン・フィルムの除去(RSF )を0〜6の以下のスケールに基づいてヨウ素により着色した後に評価する:
【0161】
【表1】

【0162】
ミニ皿洗い検定
デンプン材料の懸濁液を煮沸し、そして20℃に冷却する。冷却デンプン懸濁物を小さな個々に同定されたガラスプレート(約2×2cm)上に適用し、そして乾燥キャビネット内で60−140 ℃のレンジ内での温度において乾燥させる。検定目的のために、55℃の温度をもつ標準欧州タイプ自動皿洗い洗剤の溶液(5g/l)を調製する。洗剤を1分間の溶解時間に供し、その後、着目のアミラーゼ変異体を、0.5mg /mlの酵素濃度を与えるように(マグネチック・スターラーを備えたビーカー内に入れられた)洗剤溶液に添加する。同時に、小さな支持クランプに保持された計量されたガラス・プレートを上記アミラーゼ/洗剤溶液中に実質的に垂直位置に浸漬し、これを次に55℃において15分間撹拌する。このガラス・プレートを次にアミラーゼ/洗剤溶液から取り出し、蒸留水で濯ぎ、乾燥キャビネット内で60℃において乾燥させ、そして再計量する。〔Termamyl(登録商標)(係数100)に対する係数として表される〕着目のアミラーゼ変異体の性能を次に、以下のように、処理の前後におけるこのガラス・プレートの重量における差異から測定する:
【0163】
【数3】

【実施例】
【0164】
実施例
実施例1
本実施例において、多数の異なるバチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)変異体をコードするDNA の構築について記載する。各変異体を、その親バチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼに比較したそのアミノ酸修飾により言及する。
【0165】
プラスミドpDN1528(図1B)をこれらの構築のために使用した。このプラスミドは、バチルス・サブチリス(B. subtilis )プラスミドpVB110(Gryczan et al., 1978)の誘導体であり、そしてpVB110の複製起点、クロラムフェニコール耐性を付与する cat遺伝子、配列番号:1に示す DNA配列をもつバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼをコードする遺伝子(=amy L)を含む。このバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼ・プロモーター(amy Lプロモーター)はこのamy L遺伝子を転写する。
【0166】
amy L変異体I:(1−2)* +L3Vの構築
残基1と2の欠失、及びバリンによるロイシン3の置換を、テンプレートとして(プラスミド pDN1528上にある)amy L遺伝子とプライマーとして2つのオリゴヌクレオチドを使用して DNAの断片の PCR増幅によりamy L内に同時に導入した。この5′プライマー #6079は、残基1−3の領域とユニークPst I制限部位をカバーする。このプライマーの配列を表1に与える:
他のプライマー1C(表1)を上記突然変異誘発プライマーに対し3′に位置し、そしてamy L上と同一配列をもつ。
【0167】
PCRを、(74℃において30秒間、50℃において30秒間、そして73℃において60秒間)の30サイクル、その後の73℃における 600秒間として行った。
増幅された DNA断片を精製し、そして制限酵素Pst IとSac IIにより消化した。得られたPst I−Sac II DNA断片を、同一ユニーク制限酵素により消化されたプラスミド pDN1528とライゲートした。得られたプラスミドは、所望の突然変異をもつ変異体amy L遺伝子を担持し、そしてその変異体タンパク質はこの構築物から発現されることができる。
【0168】
amy L変異体II:(1−2)* +L3V+M15Tの構築
トレオニンによるメチオニン15の置換を、テンプレートとしてamy L変異体((1−2)* +L3V)及び表1中に列記する突然変異誘発プライマー#6164 と#6173 を使用して重複・伸長突然変異誘発(Higuchi et al., 1988)により行った。従って、得られた遺伝子は残基1と2の欠失、L3V及びM15Tを含む。
【0169】
PCR反応(反応A)において、 480塩基対の DNA断片を2つの DNAプライマーの使用により増幅した。所望のヌクレオチド変異を含む#6164(表1)と1のフランキング・プライマー、1Cを参照のこと。別の PCR反応(反応B)を、プライマー1Bとプライマー #6173の使用によりその突然変異部位の反対側に 140塩基対の DNAの断片を増幅した。これらの PCR反応は(94℃において30秒間、50℃において30秒間、及び73℃において60秒間)の25サイクル、その後の73℃における 600秒間であった。反応AとBから増幅された断片はこの突然変異部位付近に重複し、そしてより長い DNA断片を PCR反応し:(94℃において30秒間、50℃において30秒間、そして73℃において60秒間)の20サイクル、その後の73℃における 600秒間において、上記2つのフランキング・プライマー、1Bと1Cだけの使用により増幅した。反応C DNAをPst IとSac II制限エンドヌクレアーゼにより消化し、そして得られた 360塩基対Pst I−Sac II DNA断片を同一ユニーク制限酵素により消化したプラスミド pDN1528内にサブクローン化した。
【0170】
amy L変異体III :(1−2)* +L3V+M15T+R23K+S29A+A30E+Y31H+A33S+E34D+H35I
A)部位特異的突然変異誘発によるもの
上述のように構築したamy L変異体II((1−2)* +L3V+M15T)をコードする DNA配列において、以下のアミノ酸置換を先に記載したような重複伸長法により同時導入した:R23K,S29A,A30E,Y31H,A33S,E34D,及びH35I。
【0171】
プライマーICとReg 1Aを反応Aにおいて使用し、そしてプライマー1BとReg 1Bを反応Bにおいて使用した。 PCR反応のための条件は、先述のものと同一であり、そして PCR反応Cを類似の方法で行った。上記突然変異の全てを上述のように pDN1528内の360塩基対のPst I−Sac II断片上にクローン化した。
【0172】
このamy L変異体を以下の別法により調製することができる:
B)α−アミラーゼ遺伝子融合によるamy L変異体III の調製
遺伝子融合を行うために使用なプラスミドはひじょうに類似しており、そして全てがバチルス発現ベクター、 pDN1380に基づく(図1A参照)。
【0173】
pDN1380はプラスミドpUB110からの複製起点、ポリリンカーの前にあるDiderichsen and Christiansen(1988)により記載された麦芽生成性α−アミラーゼ・プロモーター(P−ベータ・プロモーター)、及び上記クローニング・ベクターpC194(例えばErlich,1977参照)からのクロラムフェニコール・アセチル・トランスフェラーゼをコードする cat遺伝子を含む。
【0174】
アミラーゼ・コーディング遺伝子は、そのアミラーゼ遺伝子が上記P−ベータ・プロモーターから転写されるような方法でpDN1380内でクローン化されなければならない。配列番号:3に示すDNA 配列をもつバチルス・アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)α−アミラーゼ遺伝子を含む得られたプラスミド pDN1681 (amy Q)、配列番号:5に示す DNA配列をもつバチルス・ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus )α−アミラーゼ遺伝子を含むプラスミド pND1750(amy S)及び配列番号:1に示す DNA配列をもつバチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼを含むプラスミド pDN1700(amy L)を得ることができる。
【0175】
【化4】

【0176】
上記アミラーゼ遺伝子融合をHiguchi et al. 1988 により記載されたような PCR重複伸長法により構築することができる。
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を、プライマーQBとpUB110 oriの間にある pDN1681(amy Q95′−末端)の断片を増幅するために使用することができる(反応A)。別のPCR(反応B)において、amy Lの3′−末端を pDN1700内のプライマーQAとプライマーcat 1の間の断片として増幅することができる。この2つの精製断片を、上記全領域に隣接するプライマー、すなわちpUB110 oriとcat 1の存在中、第3 PCR(反応C)において使用することができる。
【0177】
この第3反応において増幅された断片を、精製し、制限エンドヌクレアーゼEcoRIとSph Iにより消化し、そして制限エンドヌクレアーゼEcoRIとSph Iによる消化によりプラスミド pDN1380から得られた 2.6Kb断片とライゲートすることができる。プロテアーゼ−及びアミラーゼ−弱(protease-and amylase-weak)バチルス・サブチリス株(例えばWO92/11357 中に記載された株SHA273)を、上記ライゲートされたプラスミドにより形質転換することができ、デンプン分離性形質転換体をデンプン−含有アガロース・プレート上で選択し、そしてその増幅された DNA配列を確かめることができる。
ポリメラーゼ連鎖反応を、Higuchi et al. 1988 により記載されたように標準的な条件下で行うことができる。
【0178】
反応AとBは(94℃において60秒間、45℃において60秒間、そして73℃において90秒間)の15サイクル、その後の73℃における600秒間である。反応Cは(94℃における60秒間、50℃における60秒間、そして73℃における90秒間)の15サイクル、その後の73℃における 600秒間である。
【0179】
実施例B)中に記載した構築物からの成熟タンパク質内のアミノ酸配列は、実施例A)からの成熟タンパク質の配列と同一であるが、その DNA配列は、その遺伝子の5′末端において異なる。さらに、実施例A)における構築物はamy Lシグナル配列をもち、一方、構築物B)はバチルス・アミロリクエファシエンスα−アミラーゼのシグナル配列をもつ。
【0180】
実施例2
上記実施例1中のA)又はB)に記載したように調製したamy L変異体III と部位特異的突然変異M 197Tを、上記のamy L変異体III ((1−2)* +L3V+M15T+R23K+S29A+A30E+Y31H+A33S+E34D+H35I)をコードする DNA配列内にM197 Tを含むKpn I−Sal I断片をサブクローニングすることにより併合した。
【0181】
Kpn IとSal Iはバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼ・コーディング配列内にあるユニーク制限部位であり、そしてこのKpn I−Sal I断片は、WO94/02597 中に記載されたようなNelson and Long 突然変異誘発により調製されたM 197T突然変異を含む 534塩基対断片を構成する。同一部位、Kpn IとSal Iも上記バチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼ変異体III 内でユニークであり、そしてそれ故、その 534塩基対断片は、amy L変異体III から得られたベクター断片Kpn I/Sal I内に直接的にクローン化されることができる。得られた DNAは、追加の突然変異をもつamy L変異体III をコードする。
【0182】
別法において、M 197T突然変異は、Nelson and Long (1981)により記載され、そしてさらにWO94/02597 中に例示された方法により、以下の突然変異誘発プライマー配列を用いて、配列番号:1をコードするバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼ内に導入されることができる:
5′−CGGCATACGT CAAATAATCATAGTTGC−3′
(上記下線ヌクレオチドが突然変異M 197Tを導く。)。
【0183】
実施例3
多数の他の突然変異を、以下の表1に列記するオリゴヌクレオチドを使用して、類似の方法によりバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼをコードする配列番号:1に示す DNA配列内に導入した。突然変異の組合せを、可能であればサブクローニングにより、又はTermamyl(登録商標)変異体テンプレート上で行われる突然変異誘発により行った。
【0184】
E 255PをHiguchi et al., 1988により記載された方法により構築した:
テンプレート:pDN1528 内のamy L
PCR A:プライマーE255P,A及び2C。標準条件:25サイクルの(94℃において30秒間、50℃において30秒間、及び73℃において60秒間)その後73℃において600 秒間。
PCR B:プライマーE 255P,B及び2B。標準条件。
PCR C:標準C反応:20サイクル(94℃において30秒間、50℃において30秒間、及び73℃において60秒間)その後73℃において 600秒間。
【0185】
上記突然変異を 330塩基対Kpn I−BssHII断片として pDN1528内にサブクローン化した。
T 341Pをamy L変異体Iと同様に構築した。1の PCR反応をプライマーT 341Pと3Cの使用によりamy L変異体III の上で行った。 210塩基対Sal I−Tth111I断片を pDN1528内にサブクローン化した。
【0186】
S 373PをHiguchi et al., 1988により記載された方法により構築した:
テンプレート: pDN1528内のamy L。
PCR A:プライマーS37P,A及び3C。標準条件:25サイクルの(94℃における30秒間、50℃における30秒間、及び73℃における60秒間)その後の73℃における 600秒間。
PCR B:プライマーS 373P,B及び3B。標準条件。
PCR C:標準C反応:20サイクルの(94℃における30秒間、50℃における30秒間、及び73℃における60秒間)その後の73℃における 600秒間。突然変異を 210塩基対Sal I−Tth111I断片として pDN1528内にサブクローン化した。
【0187】
S 374PをHiguchi et al., 1988により記載された方法により構築した:
テンプレート: pDN1528内のamy L。
PCR A:プライマーS374 P,A及び3C。標準条件:25サイクルの(94℃における30秒間、50℃における30秒間、及び73℃における60秒間)その後の73℃における 600秒間。
PCR B:プライマーQ374 P,B及び3B。標準条件。
PCR C:標準C反応:20サイクルの(94℃における30秒間、50℃における30秒間、及び73℃における60秒間)その後の73℃における 600秒間。突然変異を 210塩基対Sal I−Tth111I断片として pDN1528内にサブクローン化した。
【0188】
S14SNをHiguchi et al., 1988により記載された方法により構築した:テンプレート:pDN1528 内のamy L。
PCR A:プライマーS148N,A及び2C。標準条件:25サイクルの(94℃における30秒間、50℃における30秒間、及び73℃における60秒間)その後の73℃における600 秒間。
PCR B:プライマーS 148N,B及び1B。上記の標準条件。
PCR C:標準C反応:20サイクルの(94℃における30秒間、50℃における30秒間、及び73℃における60秒間)その後の73℃における 600秒間。突然変異を 120塩基対Kpn I−Sac II断片として pDN1528内にサブクローン化した。
【0189】
L 230I,V 233AをHiguchi et al., 1988により記載された法により構築した:
テンプレート: pDN1528内のamy L。
PCR A:プライマーL230 I+V 233A,A及び2C。標準条件:
25サイクルの(94℃における30秒間、50℃における30秒間、及び73℃における60秒間)その後の73℃における 600秒間。
PCR B:プライマーL230 I+V233 A,B及び2B。上記の標準条件。PCR C:標準C反応:20サイクルの(94℃における30秒間、50℃における30秒間、及び73℃における60秒間)その後の73℃における 600秒間。突然変異を 330塩基対Kpn I−BssHII断片として pDN1528内にサブクローン化した。
【0190】
A 209VをHiguchi et al., 1988により記載された方法により構築した:
テンプレート:pDN1528 内のamy L。
PCR A:プライマーA 209V,A及び2C。標準条件:25サイクルの(94℃における30秒間、50℃における30秒間、及び73℃における60秒間)その後の73℃における 600秒間。
PCR B:プライマーA209 V,B及び1B。条件:25サイクルの(94℃における30秒間、50℃における30秒間、及び73℃における60秒間)その後73℃における600 秒間。
PCR C:フランキング・プライマーだけによる標準C反応:20サイクルの(94℃における30秒間、50℃における30秒間、及び73℃における60秒間)その後の73℃における 600秒間。突然変異を330 塩基対Kpn I−BssHII断片として pDN1528内にサブクローン化した。
【0191】
表1
以下のプライマーを上記のような各種変異体の構築のために使用した。これらのプライマーの3′末端は pDN1528の部分と同一配列をもち、そしてそれらは全て50℃を上廻る溶融温度をもつ。
【0192】
1B:アミノ酸:(−20)−(−13)、すなわちシグナル配列に対応する。
5′ GGT ACT ATC GTA ACA ATG GCC GAT TGC TGA CGC TGT TAT TTG C3′
2B:アミノ酸:149 −155 に対応する。
5′ GGG GTA CTA GTA ACC CGG GCC ATA CAG CGA TTT TAA ATG G3′
3B:アミノ酸:320 −326 に対応する。
5′ GGG GTA CTA GTA ACC CGG GCC GGT TAC ATT TGT CGA TAA CC 3′
1C:アミノ酸:167 −161 に対応する。
5′CTC GTC CCA ATC GGT TCC GTC 3′
2C:アミノ酸:345 −339 に対応する。
5′GGC TTA AAC CAT GTT TGG AC 3′
3C(=pUB110ori):3′to amyLに対し3′にアニールする。
5′CAC TTC AAC GCA CCT TTC AGC 3′
【0193】
(1−2)* +L3V
#6079
5′CCT CAT TCT GCA GCA GCG GCG GTT AAT GGG ACG CTG ATG CAG 3′
【0194】
M15T
#6164 :5′GAA TGG TAC ACG CCC AAT GAC GG 3′
#6173 :5′CC GTC ATT GGG CGT GTA CCA TTC 3′
【0195】
amy L変異体III :(1−2)* +L3V+M15T+R23K+S29A+A30E+Y31H+A33S+E34D+H35I
Reg 1A:5′GCG GAA CAT TTA TCG GAT ATC GGT ATT ACT GCC GT
C TGG ATT C 3′
Reg1B:5′ATT ACC GAT ATC CGA TAA ATG TTC CGC GTC GTT TT
G CAA ACG TTT CCA ATG TTG 3′
【0196】
E255 P
A:GAA AAA ACG GGG AAG CCA ATG TTT ACG GTA GC
B:GC TAC CGT AAA CAT TGG CTT CCC CGT TTT TTC
【0197】
T 341P
CG CTT GAG TCG ACT GTC CAA CCA TGG TTT AAG CCG CTT GC
【0198】
S 373P
A:GG ACG AAA GGA GAC CCC CAG CGC GAA ATT C
B:G AAT TTC GCG CTG GGG GTC TCC TTT CGT CCC G
【0199】
Q 374P
A:CG AAA GGA GAC TCC CCT CGC GAA ATT CCT GCC TTG
B:CAA GGC AGG AAT TTC GCG AGG GGA GTC TCC TTT CG
【0200】
S 148N
A:5′GGG CGC GGC AAC ACA TAC AGC 3′
B:5′GCT GTA TGT GTT GCC GCG CCC 3′
【0201】
L2301,V 233A
A:5′C CGG ATT GAT GCT GCG AAA CAC ATT AAA TTT TCT TTT TT
G 3′
B:5′T GTG TTT CGC AGC ATC AAT CCG GAA ACC GTC CAA TTG C
3′
【0202】
A 209V
A:5′GAC CAT CCT GAC GTC GTA GCA GAA ATT AAG 3′
B:5′TTC TGC TAC GAC GTC AGG ATG GTC ATA ATC 3′
【0203】
実施例4
DNA融合によるハイブリッドα−アミラーゼSL68の調製
使用するプラスミドを上記amy L変異体III 実施例1B)について記載したものと同様の方法で構築する。但し:
1)反応AはプラスミドpDN1750 、プライマーSB及び pUB110oriを含み、
2)反応Bはプラスミド pDN1700、プライマーSA及びプライマーcat 1を含み、
3)反応Aと反応Bは15Hイクルの(93℃において60秒間、50℃において60秒間、及び73℃において90秒間)その後73℃において 600秒間である。反応Cは上述のようである(実施例1B)参照)。
4)PCR Cから精製された断片をSphIにより連続的に、そして EcoRIにより部分的に消化し、そしてその精製された 3.3kb断片を上記同一制限エンドヌクレアーゼにより完全に消化された pDN1380内にサブクローン化する。
【0204】
制限エンドヌクレアーゼ消化、 DNA断片の精製、ライゲーション、バチルス・サブチリスの形質転換、及び DNA配列限定をよく知られた技術に従って行う。バチルス・サブチリスの形質転換をDubnau et al. (1971)により記載されたように行った。
【0205】
実施例5
α−アミラーゼ変異体の発酵と精製
上記実施例1−4中に記載されたように構築されたDNA 配列によりコードされたα−アミラーゼ変異体を以下のように製造した:
上記発現プラスミドを宿すバチルス・サブチリス株を−80℃ストックから25mg/mlクロラムフェニコールを含むLB寒天プレート上に画線し、そして37℃において一夜増殖させる。
【0206】
これらのコロニーを 500ml振とうフラスコ内の25mg/mlクロラムフェニコールを補った100mlBPX倍地に移す。
【0207】
【表2】

【0208】
上記培養を5日間270rpm、37℃において振とうする。
100 −200ml の上記発酵ブロスを濾過助剤と共に圧力フィルターを使用して濾過する。濾過後、アミラーゼを80%飽和硫酸アンモニウムを使用して沈殿させる。この沈殿物を洗浄し、そして可溶化し、そしてAmicon限界濾過ユニット及び25mM Tris pH5.6 を使用し脱塩する。この脱塩サンプルをS−セファロースF.F.を使用してイオン変換に供する。このアミラーゼを0〜200mM のNaClの線形グランジエントを使用して溶出する。この溶出液をAmiconユニットを使用して脱塩し、そして25mM Tris バッファー中pH9においてQ−セファロースF.F.上に適用する。アミラーゼの溶出を0−200mM NaClのグラジエントを使用して行う。
【0209】
実施例6
実施例1と2にそれぞれ記載したように構築されたamy L変異体III とamy L変異体+M 197Tの特性
酸化安定性の測定
amy L変異体III とamy L変異体III +M 197Tを含む原濾過培養ブロスを、 pH9.0における50mMの Britton−Robinsonバッファー中(上記材料及び方法セッション中に記載されたα−アミラーゼ活性検定により測定された)100NU/mlのアミラーゼ活性に希釈し、そして40℃においてインキュベートした。その後H2O2を 200mMの濃度まで添加し、そしてそのpH値を 9.0に再調整した。その活性を15秒後、及び5,15,及び30分後に測定した。上記amy L変異体III +M 197T突然変異体はamy L変異体III に比べて200mM H2O2,pH9.0 に対して改良された抵抗性を示すことが判明した。
【0210】
比活性
Termamyl(登録商標),amy L変異体III とamy L変異体III +M 197Tの比活性を上記材料及び方法セクション中に記載したように測定した。amy L変異体III +M 197Tの比活性はamy L変異体III のものと比べて20%程改良されたことが見出された。amy L変異体III はTermamyl(登録商標)と比べて40%高い比活性を示すことが見出された。
【0211】
さらに、その比活性は、それぞれ、温度とpHの関数として測定された。図2と8から、amy L変異体III +M 197TはpH4.5 〜pH9.0のレンジ内でその親酵素(Termamyl(登録商標))に比べて増加された比活性をもつことが明らかである。さらに、その温度特性は、Ph9おいて10℃下方に変位された。たとえpH10.1におけるその活性がTermamyl(登録商標)に比べて減少されても、45℃におけるADD (自動皿洗い洗剤)におけるamy L変異体III の性能は、高く改良される(図9)。これはたぶん、この温度特性の下方変異に依る。
【0212】
pH/活性特性
amy L変異体III とamy L変異体III +M 197TのpH/活性特性を上記材料及び方法セクション中に記載したように測定し、そのインキュベーションが60℃において、かつ上記関連pH値において行われたというだけの差異がある。これらの結果は、その活性が1mg酵素当りの活性として与えられる図5から明らかである。
【0213】
保存安定性の測定
α−アミラーゼ変異体amy L変異体III +M 197Tの保存安定性と、その変異体とその親α−アミラーゼのそれぞれを、各洗浄における12gの洗剤(1.5mg酵素タンパク質)と一緒に1リッターの洗液(主洗浄において3リッター)当り 0.5mg酵素タンパク質の投与量に対応する量においてその洗剤に、添加することにより測定した。この混合物を、0,1,2,3,4,及び6週間30℃/60%相対湿度(r.h.)において保存した。保存後、それらのサンプルの分析的活性をその性能と同様に測定した。その性能を、各洗浄中(酵素と洗剤を含む)各保存ブラスの全内容物を使用することによりテストした。そのよごれは、プレート及びガラス上のコーン・スターチであり、そしてその皿洗いを Cylindaククロマシンを使用して55℃において行った。この保存安定性を図10と11に示す。amy L変異体III +M 197Tはその親酵素よりも有意により安定であった。
【0214】
実施例7
自動皿洗い
それらの親α−アミラーゼのものと比較した本発明に係るα−アミラーゼ変異体皿洗い性能を自動皿洗いテストにおいて評価した。 このα−アミラーゼ変異体は、その調製について上記実施例1に記載するamy L変異体III 及び(WO94/02597 中に記載されたようなトレオニン残基によりバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼの 197位にあるメチオニン残基を置換することにより調製された(配列番号:2))α−アミラーゼ変異体M 197Tであった。
【0215】
上記自動皿洗いテストを上記材料及び方法セクション中に記載されたように行った。
得られた結果を図2に示す、これから、amy L変異体III とそのα−アミラーゼ突然変異体M 197Tが実質的に改良されたデンプン除去を示し、そしてそれ故の、その親α−アミラーゼのものに対して皿洗い性能を示すことが明らかである。
【0216】
実施例8
洗濯洗浄
実施例1に記載したように調製したamy L変異体III 及びその親α−アミラーゼの洗浄性能を、以下のアミラーゼ投与量:0/0.21/0.43/0.86mg酵素タンパク質/l を使用して上記材料及び方法セクション中に記載した条件下で測定した。
【0217】
得られた結果は図4から明らかである。この図において示される反射率の差は、その関連酵素により洗浄された布きれから得られた反射率と、酵素なしで洗浄された布きれについて得られた反射率から計算された。より特に、この反射率の差は、酵素を用いて得られた反射率から、酵素なしで得られた反射率を引いたものである。
図4から、本発明に係るα−アミラーゼ変異体がその親α−アミラーゼに対してかなり改良されたデンプン除去を発揮する。換言すれば、このα−アミラーゼ変異体がその親α−アミラーゼのものと比べて改良された洗浄性能をもつことが明らかである。
【0218】
実施例9
実施例1〜5に記載した多数のバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼ変異体の皿洗い性能を、上記材料及び方法中に記載したミニ皿洗い検定において検定した。
変異体のいくつかを、さまざまな経過日においてテストし、そしてこれ故、上記各種α−アミラーゼ変異体について得られた結果は直接的には比較されることができない。しかしながら、各変異体をその親α−アミラーゼに対しテストし、そしてその親α−アミラーゼ(Termamyl(登録商標)、係数100)に対する性能係数をこれ故実験的に立証した。
全変異体がそれらの親α−アミラーゼに比較したとき(デンプンのしみを除去するそれらの能力により計測されるような)改良された皿洗い性能をもつことが明らかである。
【0219】
【表3】

【0220】
【表4】

【0221】
実施例10
実施例1−5に記載した多数のバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼ変異体の皿洗い性能を、以下の表に掲げるさまざまな商業的に入手可能な洗剤を使用して、上記材料及び方法セクション中に記載される洗濯洗浄検定によりテストした。
【0222】
上記IX(c=0.5 におけるdR)は、 0.5mg/l のTermamyl(登録商標)により洗浄された布きれについての反射率差により、 0.5mg/l の着目のα−アミラーゼ変異体により洗浄された布きれについての反射率差(実施例8参照)を割ることにより得られた(パーセンテージとして表された)係数である。c=0.2 におけるdRとc=0.1 におけるdRは、それぞれ、 0.2と0.1mg /l の酵素濃度についての対応係数(IX)値である。
【0223】
全変異体が、それらの親α−アミラーゼに対して(デンプンのしみを除去するためのそれらの能力により計測されるような)改良された洗浄性能をもつことは明らかである。
【0224】
【表5】

【0225】
【表6】

【0226】
【表7】

【0227】
実施例11
Vmax , KmとVの測定
それぞれ、アミノ酸配列番号:2,4と6を含んで成るα−アミラーゼ、並びにα−アミラーゼ変異体III 及びそれぞれ実施例1−4中に記載されたハイブリッドα−アミラーゼSL68のKmとVmax を、上記材料及び方法セクション中に記載されたように測定した。
【0228】
以下のVmax とKm値を得た:
【表8】

【0229】
各々の酵素について得た加水分解速度は、低基質濃度において、以下のミカエリス−メンテン式:
V=Vmax ×[S]/[S]+Km
{[S]<<Kmのとき、これをV=Vmax ×[S]/Kmに近似することができる。}に基づき測定されることができる。
【0230】
この式から、高い加水分解速度(V)は、Kmが減少し、そして/又はVmax が増加するときに得られることができる。
洗浄の間、基質濃度はKmよりもかなり低いということを仮定するのが妥当であり、そしてそれ故、上述のKmとVmax についての値に基づき、先に列記した各々の変異体の加水分解速度を測定することができる。以下の値を見い出した:
【0231】
【表9】

【0232】
上記表から、amy L変異体III の加水分解速度が、SL68のものよりも高く、このSL68は、さらに配列番号:2に示すアミノ酸配列をもつバチルス・リケニフォルミスα−アミラーゼ(親酵素)のものよりも高いことが明らかである。
【0233】
本明細書中に引用する文献
Suzuki et al., the Journal of Biological Chemistry, Vol. 264, No. 32, lssue of November 15, pp. 18933-18938 (1989).
B. Diderichsen and L. Christiansen, バチルス・ステアロサーモフィラスからの麦芽生成α−アミラーゼのクローニング,FEMS Microbiol. letters: 56: pp. 53-60 (1988).
Hudson et al., Practical Immunology, Third edition (1989), Blackwell Scientific Publications.
Lipman and Pearson (1985) Science 227 , 1435.
Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor, 1989.
S.L. Beaucage and M.H. Caruthers, Tetrahedron Letters 22,1981, pp. 1859-1869.
Matthes et al., The EMBO J. 3 , 1984, pp. 801-805.
R.K. Saiki et al., Science 239 , 1988, pp. 487-491.
Morinaga et al., 1984, Biotechnology 2 , pp. 646-639.
Nelson and Long, Analytical Biochemistry 180 , 1989, pp.
147-151.
【0234】
Hunkapiller et al., 1984, Nature 310 , pp. 105-111.
R. Higuchi, B. Krummel, and R.K. Saiki (1988). DNA断片のインビトロ調製及び特異的突然変異誘発の一般的方法:タンパク質とDNA の相互作用の研究Nucl. Acids Res. 16, pp. 7351-7367.
Dubnau et al., 1971, J. Mol. Biol. 56, pp. 209-221.
Gryczan et al., 1978, J. Bacteriol. 134 , pp. 318-239.
S.D. Erlich, 1977, Proc. Natl. Acad. Sci. 74, pp. 1680-1682.
Boel et al., 1990, Biochemistry 29, pp. 6244-6249.
【0235】
配列表
以下の配列番号:1,3,5において、上記関連α−アミラーゼ遺伝子の5′コーディング配列及び3′配列を図示する。この5′配列は、小文字で置かれた配列の最初の分割部分であり、そのコーディング配列は、その配列の中間部分であり、ここで、そのシグナル配列は、小文字で書かれており、そしてその成熟α−アミラーゼをコードする配列は、大文字で書かれており、そしてその3′配列は、小文字で書かれた配列の第3分割部分である。
【0236】
【化5】

【0237】
【化6】

【0238】
【化7】

【0239】
【化8】

【0240】
【化9】

【0241】
【化10】

【0242】
【化11】

【0243】
【化12】

【0244】
【化13】

【0245】
【化14】

【0246】
【化15】

【図面の簡単な説明】
【0247】
【図1A】図1Aは、プラスミド pDN1380の制限地図であり、
【図1B】図1Bは、プラスミド pDN1528の制限地図であり、
【図2】図2は、pH10.5及び55℃においてテストしたときの、親α−アミラーゼと比較したM 197Tとamy L変異体III の改良された皿洗い性能を示すグラフであり、
【図3】図3は、温度の関数としての、自動皿洗い洗剤(5g/l)(pH10.1)中のE 255PとS 373Pに比較したTermamyl(登録商標)の温度/活性特性を示すグラフであり(0.41 Phadebas Units =1NV)、
【図4】図4は、実施例8に記載するような洗濯洗浄の間に得られる酵素の各種濃度についての反射差を示す。この反射差は、関連酵素により洗浄された布きれ(smatch)について得られた反射と酵素なしで洗浄された布きれについて得られた反射から計算され、
【図5】図5は、60℃において測定されたTermamyl(登録商標)のものと比較した本発明に係るamy L変異体III とamy L変異体III +M 197TのpH/活性特性(活性/mg酵素)を示す、
【図6】図6は、フルースケール皿洗い性能評価(55℃,4g/lの標準欧州タイプ自動皿洗い洗剤)におけるTermamyl(登録商標)と比較したE 255P,S 373P,Q 374Pの性能投与量/応答曲線を示すグラフであり、
【図7】図7は、mg酵素に従うTermamyl(登録商標)に比較したamy L変異体III +M 197Tの温度/活性特性を示し(50mM Britton-Robinson バッファー、0.1mM CaCl2 , 55℃)、
【図8】図8は、Termamyl(登録商標)に比較した本発明に係るamy L変異体III +M 197Tの温度/活性特性を示し(pH9.0, 100mM Glycineバッファー、0.1mM CaCl2)、
【図9】図9は、Termamyl(登録商標)に比較した本発明に係るamy L変異体III +M 197Tの皿洗浄性能を示し(pH10.3,4g/lの標準欧州タイプ自動皿洗い洗剤)、そして
【図10】図10と11は、洗剤組成物中Termamyl(登録商標)と比較したamy L変異体III +M 197Tの30℃/60相対湿度における標準欧州タイプ自動皿洗い洗剤中での保存後に得られた結果を示す。
【図11】図10と11は、洗剤組成物中Termamyl(登録商標)と比較したamy L変異体III +M 197Tの30℃/60相対湿度における標準欧州タイプ自動皿洗い洗剤中での保存後に得られた結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親酵素と比べて改良された洗浄及び/又は皿洗い性能をもつその親バチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼ酵素の変異体であって、当該変異体は、以下の:
a)(1+2)*+L3V
(1+2)*+L3V+M15T
(1+2)*+L3V+M15T+R23K+S29A+Y31H+A33S+E34D+H35I;
b)148位に位置するアミノ酸残基;
c)アミノ酸残基L230,V233又はR242の内の少なくとも1つ;
d)アミノ酸残基255;
e)アミノ酸残基T341;
f)373及び374位に位置するアミノ酸残基の内の少なくとも1つ;
から成る群から選ばれる、配列番号2に対応する位置における当該親の修飾、置換又は欠失を含む、前記変異体。
【請求項2】
以下の突然変異:L230I,V233A,R242P,E255P,T341P,S373P,Q374Pの内の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の変異体。
【請求項3】
M197及びA209位における突然変異をさらに含む、請求項1又は2に記載の変異体。
【請求項4】
以下の突然変異:M197T,G,I,A,L,S,N,C又はA209Vの内の1つを含む、請求項3に記載の変異体。
【請求項5】
バチルス・リケニフォルミス(B. Licheniformis)の株由来のα−アミラーゼのC−末端部分及びバチルス・アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)の株又はバチルス・ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus )の株由来のα−アミラーゼのN−末端部分を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の変異体。
【請求項6】
バチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼのC−末端部分の少なくとも 430アミノ酸残基を含む、請求項に記載の変異体。
【請求項7】
−配列番号4に示すアミノ酸配列をもつバチルス・アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)α−アミラーゼの37N−末端アミノ酸残基に対応するアミノ酸セグメント及び配列番号2に示すアミノ酸配列をもつバチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼの445 C−末端アミノ酸残基に対応するアミノ酸セグメント、又は
−配列番号6に示すアミノ酸配列をもつバチルス・ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus )α−アミラーゼの68N−末端アミノ酸残基に対応するアミノ酸セグメント及び配列番号2に示すアミノ酸配列をもつバチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼ415 C−末端アミノ酸残基に対応するアミノ酸セグメント、
を含む、請求項に記載の変異体。
【請求項8】
以下の突然変異:
T231P+Q374P;
A1*+N2*+L3V+M15T+R23K+S29A+A30E+Y31H+A33S+E34D+H35I+E255P;
A1*+N2*+L3V+M15T+R23K+S29A+A30E+Y31H+A33S+E34D+H35I+M197T;
A1*+N2*+L3V+M15T+R23K+S29A+A30E+Y31H+A33S+E34D+H35I+E255P+
Q374P;
A1*+N2*+L3V+M15T+R23K+S29A+A30E+Y31H+A33S+E34D+H35I+E255P+
Q374P+T341P;
A1*+N2*+L3V+M15T+R23K+S29A+A30E+Y31H+A33S+E34D+H35I+E255P+
M197I;
A1*+N2*+L3V+M15T+R23K+S29A+A30E+Y31H+A33S+E34D+H35I+E255P+
M197N;
A1*+N2*+L3V+M15T+R23K+S29A+A30E+Y31H+A33S+E34D+H35I+E255P+
M197S;
A1*+N2*+L3V+M15T+R23K+S29A+A30E+Y31H+A33S+E34D+H35I+E255P+
Q374P+T341P+M197I;
A1*+N2*+L3V+M15T+R23K+S29A+A30E+Y31H+A33S+E34D+H35I+E255P+
M197T
の1を含む、請求項1に記載の変異体。
【請求項9】
その親α−アミラーゼのものよりも高い加水分解速度を示す、請求項1〜8のいずれか1項に記載のα−アミラーゼ変異体。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載のα−アミラーゼ変異体をコードする DNA配列を含む DNA構築物。
【請求項11】
請求項10に記載の DNA構築物を担持する組換え発現ベクター。
【請求項12】
請求項10に記載の DNA構築物又は請求項11に記載のベクターにより形質転換された細胞。
【請求項13】
微生物である、請求項12に記載の細胞。
【請求項14】
バクテリア又は真菌(fungus)である、請求項13に記載の細胞。
【請求項15】
グラム陽性バクテリア、例えばバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis )、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・アルカロフィラス(Bacillus alkalophilus)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens )、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans )、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans )、バチルス・ラウタス(Bacillus lautus)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis )、又はストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)又はストレプトミセス・ムリナス(Streptomyces murinus )、又はグラム陰性バクテリア、例えば大腸菌(E. coli )である、請求項14に記載の細胞。
【請求項16】
請求項1〜のいずれか1項に記載のα−アミラーゼ変異体の製造方法であって、請求項1215のいずれか1項に記載の細胞を、そのα−アミラーゼ変異体の生産を誘導する条件下で培養し、そしてそのα−アミラーゼ変異体をその後に培養物から回収する前記方法。
【請求項17】
繊維糊抜き、洗浄及び/又は皿洗いのための、請求項1〜のいずれか1項に記載のα−アミラーゼ変異体の使用。
【請求項18】
場合により非発塵性粒状物、安定化された液体又は保護された酵素の形態にある、請求項1〜のいずれか1項に記載のα−アミラーゼ変異体を含む洗剤添加物。
【請求項19】
0.02〜 200mgの酵素タンパク質/添加物1gを含む、請求項18に記載の洗剤添加物。
【請求項20】
他の酵素、例えばプロテアーゼ、リパーゼ、ペルオキシダーゼ、他のデンプン分解酵素及び/又はセルラーゼをさらに含む、請求項18又は19に記載の洗剤添加物。
【請求項21】
請求項1〜のいずれか1項に記載のα−アミラーゼ変異体を含む洗剤組成物。
【請求項22】
他の酵素、例えばプロテアーゼ、リパーゼ、ペルオキシダーゼ、他のデンプン分解酵素及び/又はセルラーゼをさらに含む、請求項21に記載の洗剤組成物。
【請求項23】
請求項1〜のいずれか1項に記載のα−アミラーゼ変異体を含む手洗い又は自動皿洗い用洗剤組成物。
【請求項24】
他の酵素、例えばプロテアーゼ、リパーゼ、ペルオキシダーゼ、他のデンプン分解酵素及び/又はセルラーゼをさらに含む、請求項23に記載の皿洗い用洗剤組成物。
【請求項25】
請求項1〜のいずれか1項に記載のα−アミラーゼ変異体を含む手洗い又は自動洗濯用洗浄組成物。
【請求項26】
他の酵素、例えばプロテアーゼ、リパーゼ、ペルオキシダーゼ、デンプン分解酵素及び/又はセルラーゼをさらに含む、請求項25に記載の洗濯用洗浄組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−330262(P2007−330262A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187147(P2007−187147)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【分割の表示】特願平7−511196の分割
【原出願日】平成6年10月5日(1994.10.5)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】