説明

アライメント装置

【課題】上面に高低差がある被加工物であってもアライメントマークを鮮明に撮像できるようにする。
【解決手段】被加工物の加工予定ラインに対応して存在するアライメントマークを検出するアライメント装置1に、撮像手段3を外周側から包囲する位置に配設された照明手段5を備え、照明手段5には円周方向に均等配設された4つ以上の発光源50a〜50dを備え、切替手段6によってそれぞれの発光源の点灯または消灯を個別に制御して切り替えることができる構成とする。被加工物10の被撮像面10aに凹凸があっても、発光源を個別に点灯または消灯させることにより、影がない状態で撮像を行うことができ、鮮明な画像を取得してアライメントマークを確実に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物に形成されたアライメントマークを撮像して検出するアライメント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス、樹脂、セラミックス等からなる基板は、切削装置、レーザー加工装置等の加工装置によって加工が施されて分割され、各種電子部品に利用されている。
【0003】
これらの加工装置を用いて被加工物の加工を行うにあたっては、被加工物の加工位置(加工予定ライン)を予め検出するアライメント作業が行われる。近年は、加工装置が自動でアライメント作業を行うオートアライメントが主流となっている。
【0004】
オートアライメントを行うに際しては、加工すべき位置を検出するための目印となるアライメントマークを予め被加工物に形成しておく。そして、アライメントマークの画像情報を予め加工装置に記憶させておくとともに、アライメントマークから加工開始位置までの距離に関する情報も記憶させておく。
【0005】
こうしてアライメントマークの画像情報及びアライメントマークから加工開始位置までの距離の情報が加工装置に記憶された後、加工時は、加工装置に備えた撮像手段で被加工物を撮像してアライメントマークを検出するとともに、アライメントマークから加工開始位置までの距離を勘案して加工開始位置を求め、その位置を加工することとしている。
【0006】
被加工物には、アライメントマークが形成されていないものもある。例えば、セラミックス層と電極層とを交互に積層して最上位層にセラミックス層を積層してなるセラミックスチップコンデンサシートには、アライメントマークが形成されていない。そこで、セラミックスチップコンデンサシートを加工して分割するにあたっては、セラミックスチップコンデンサシートの端部にV溝や片V溝の溝を形成し、溝の傾斜面から電極を露出させてこれをアライメントマークとして利用している。そして、露出させた電極を検出した後、その電極から加工すべき位置までの距離を加工装置に記憶させ、その情報をもとに、セラミックスチップコンデンサシートを個々のチップに分割している。分割により形成された各チップは、その後、焼結されてセラミックスコンデンサとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−204716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、セラミックスコンデンサシートは、セラミックスチップコンデンサが形成された部分が他の部分よりも上方に突出しており、上面に高低差がある。このように、上面に高低差がある被加工物におけるアライメントマークの撮像時には、光の当たり方によっては影が形成されるため、アライメントマークを明確に認識することが困難な場合がある。したがって、鮮明に撮像を行うためには、照明の光量調整を行うことが必要であった。このような問題は、セラミックスコンデンサシートに限らず、上面に高低差がある他の被加工物についても同様に生じうる。
【0009】
本発明は、このような問題にかんがみなされたもので、上面に高低差がある被加工物であってもアライメントマークを鮮明に撮像できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、被加工物の加工予定ラインに対応して存在するアライメントマークを検出するアライメント装置に関するもので、被加工物に対し被加工物の上方から被加工物の上面へ接近する方向に相対移動させてアライメントマークに焦点を合わせて撮像する撮像手段と、リング形状に形成されるとともに撮像手段を外周側から包囲する位置に配設され撮像領域を照らす照明手段とを備え、照明手段は、円周方向に均等配設された4つ以上の発光源からなり、それぞれの発光源の点灯または消灯を個別に制御して切り替える切替手段を具備する。
【0011】
このアライメント装置には、撮像手段によって取得した画像のコントラストを調整する電圧調整手段を備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るアライメント装置は、撮像手段を外周側から包囲する位置に照明手段が配設され、照明手段には円周方向に均等配設された4つ以上の発光源を備え、切替手段によってそれぞれの発光源の点灯または消灯を個別に制御して切り替えることができる構成としたため、被加工物の被撮像面に凹凸があっても、発光源を個別に点灯または消灯させることにより、影がない状態で撮像を行うことができる。したがって、鮮明な画像を取得することができ、アライメントマークを確実に検出することができる。特に、表面に凹凸がある積層ウェーハやV溝の斜面からアライメントマークが露出している樹脂基板などが被加工物である場合に適している。
【0013】
また、撮像手段によって取得した画像のコントラストを調整する電圧調整手段を備えることにより、アライメントマークをより鮮明に撮像することができため、より確実にアライメントマークを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】アライメント装置の一例及び被加工物の第一の例を示す斜視図である。
【図2】V溝撮像時に影が形成された状態の例を示す平面図である。
【図3】V溝撮像時に影が形成された状態の別の例を示す平面図である。
【図4】V溝の一方の斜面を撮像する状態を示す正面図である。
【図5】V溝の他方の斜面を撮像する状態を示す正面図である。
【図6】第二の例の照明手段を用いてV溝の斜面を撮像する状態を示す平面図である。
【図7】第二の例の照明手段を用いてV溝の他の斜面を撮像する状態を示す平面図である。
【図8】アライメント装置の一例及び被加工物の別の例を示す斜視図である。
【図9】凹凸のある被加工物の撮像時に凹部の両側に影ができた状態を示す平面図である。
【図10】凹凸のある被加工物の凸部のエッジを撮像する状態を示す平面図である。
【図11】凹凸のある被加工物の凸部のエッジを撮像する状態を示す正面図である。
【図12】凹凸のある被加工物の凸部の他のエッジを撮像する状態を示す平面図である。
【図13】凹凸のある被加工物の凸部の他のエッジを撮像する状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すアライメント装置1は、被加工物を保持する保持手段2を備えている。保持手段2は、水平方向に移動可能となっている。
【0016】
保持テーブル2の上方には、撮像手段3が配設されている。撮像手段3は、被加工物10の上面10aに対して接近及び離反する方向に相対移動可能となっている。撮像手段3には表示手段4が接続されており、撮像手段3が取得した画像を表示手段4に表示させることができる。
【0017】
撮像手段3を外周側から包囲する位置には、リング形状に形成され撮像領域を照らす照明手段5が配設されている。照明手段5は、リング状に配列された複数の発光源50a、50、50c、50dを備えている。発光源50a、50b、50c、50dは、円周方向に均等間隔に配設されている。なお、発光源は、円周方向に少なくとも4つ配置されていればよいが、5個以上備えていてもよい。
【0018】
発光源50a〜50dは切替手段6と接続されており、切替手段6は、それぞれの発光源50a〜50dを個別に制御して点灯及び消灯を切り替えることができる。また、発光源50a〜50dは、電圧調整手段7と接続されており、電圧調整手段7における電圧調整により、発光源50a〜50dの光量を個別に調整することができる。
【0019】
半導体ウェーハ等の通常の被加工物には、加工すべき位置を認識するためのアライメントマークが加工予定ラインに対応して形成されており、アライメントマークと加工予定ラインとが所定の位置関係にあるため、アライメントマークを検出することで、加工予定ラインの位置も求めることができる。しかし、被加工物10のように表面10aにアライメントマークが形成されていないタイプのものもある。このような被加工物10については、断面V字型のV溝100、101を縦横に直交させた状態で形成し、V溝100、101の斜面から電極を露出させる。そして、その露出した電極をアライメントマークとして使用する。このV溝100,101は、先端がV字型に尖った切削ブレードを所定深さ切り込ませて切削することにより形成することができる。
【0020】
例えば、図1に示したように、V溝100とV溝101との交差部102を撮像するときは、交差部102の直上に撮像手段3を位置させる。そうすると、4つの発光源50a、50b、50c、50dは、撮像手段3を包囲しているため、交差部102を周囲から包囲する位置に位置する。すなわち、交差部102を中心とする円弧上に発光源50a〜50dが位置する状態となる。
【0021】
例えば、V溝100が延びる方向をX軸方向、V溝101が延びる方向をY軸方向とすると、X軸方向に対向する発光源50aと発光源50cとが交差部102を照らす際の光路51a、51cは、X軸方向に平行となる。一方、Y軸方向に対向する発光源50bと発光源50dとが交差部102を照らす際の光路51b、51dは、Y軸方向に平行となる。
【0022】
例えば、発光源50aを点灯させてV溝101を照らすと、図2に示すように、発光源50aの光路51a(図1参照)と同じ方向に傾斜する斜面101aには光が当たらずに影が形成され、発光源50aと対向する他方の斜面101bには光が当たる。なお、図2においては、影が形成される部分に斜線を付している。
【0023】
一方、発光源50cを点灯させてV溝101を照らすと、図3に示すように、発光源50cと対向する斜面101aには光が当たるが、発光源50cの光路51c(図1参照)と同方向に傾斜する斜面101bには光が当たらずに影が形成される。なお、図3においては、影が形成される部分に斜線を付している。
【0024】
このように、発光源の光路と同じ方向に傾斜するV溝100、101の斜面には光が当たらず影ができるため、影が生じた部分を撮像しても、アライメントマークとしての電極を検出できないことがある。そこで、撮像対象の斜面の向きに応じ、切替手段6による制御の下で、点灯させる発光源を切り替える。
【0025】
例えば、V溝100を撮像する場合は、斜面100aを撮像する場合と斜面100bを撮像する場合とで点灯させる発光源を切り替える。具体的には、図4に示すように、斜面100aを撮像する場合は、発光源50dを点灯させるとともに、少なくとも発光源50bを消灯させる。また、図5に示すように、斜面100bを撮像する場合は、発光源50bを点灯させるとともに、少なくとも発光源50dを消灯させることにより、撮像対象の斜面を明るく照らすようにする。
【0026】
同様に、図2に示したV溝101を撮像する場合は、斜面101aを撮像する場合は発光源50cを点灯させるとともに、少なくとも発光源50aを消灯させ、斜面101bを撮像する場合は、発光源50aを点灯させるとともに、少なくとも発光源50cを消灯させる。
【0027】
このように、斜面の向きと発光源の光路の向きとの関係に応じて発光源の点灯及び消灯を切り替える制御を行うことで、各斜面に形成された電極を十分に照らすことができる。そして、電極を十分に照らした状態で、電極に撮像手段3の焦点を合わせて撮像を行うと、鮮明な画像を取得することができ、アライメントマークを確実に検出することができる。また、取得した画像における電極の鮮明度が十分でない場合は、図1に示した電圧調整手段7を用いて各発光源の光量を調節して画像のコントラストを調整することにより、電極を確実に検出できる画像を取得することができる。
【0028】
図6に示す照明手段8のように、発光源80a〜80xを円弧状に多数配設した構成としてもよい。この場合も、照明手段8は撮像手段3を外周側から包囲しており、撮像するV溝100の斜面と発光源の光路との関係から発光源の点灯及び消灯を切替手段6が制御する。例えば、図6に示すように、V溝100の斜面100aを撮像するときは、斜面100aに対して対面する方向に位置する複数の発光源80a、80b、80cを点灯させ、その他の発光源は消灯する。また、図7に示すように、V溝101の斜面101bを撮像するときは、斜面101bに対して対面する方向に位置する発光源80g、80h、80iを点灯させ、その他の発光源は消灯する。
【0029】
このように、発光源が多数ある場合は、一度の撮像で複数の発光源を点灯させることにより、V溝の斜面をより明るく照らして撮像を行い、アライメントマークをより確実に検出することができる。なお、この場合も、電圧調整手段7によるコントラスト調整を行うことができる。
【0030】
次に、図8に示すように、表面に凸部110と凹部111とが形成されたウェーハ11の表面に形成されているアライメントマークを検出する方法について説明する。ウェーハ11は、例えばセラミックス層と電極層とを交互に積層し、最上位層にセラミックス層からなる凸部110が積層されて形成されている。凹部111は加工予定ラインであり、凹部111を縦横に切断することにより個々のデバイスが形成される。
【0031】
図9に示すように、凸部110のエッジ112をアライメントマークとする場合は、エッジ112の上方に撮像手段3を位置させる。このとき、4つの発光源50a〜50dがすべて点灯していると、図9に示すように、すべての凹部111の両側に影113が形成されるため、エッジ112を認識できないおそれがある。
【0032】
そこで、図10に示すように、エッジ112に対向する位置にある発光源50cのみを点灯させ、他の発光源を消灯させる。そうすると、図11に示すように、エッジ112の側部には影ができないため、エッジ112に撮像手段3の焦点を合わせて撮像すると、エッジ112を確実に検出することができる。
【0033】
凹部111を挟んでエッジ112に対面する位置にある図12に示すエッジ113をアライメントマークとする場合は、エッジ113に対向する発光源50aのみを点灯させ、他の発光源を消灯させる。そうすると、図13に示すように、エッジ113の側部には影ができないため、エッジ113を鮮明に撮像して確実に検出することができる。
【0034】
なお、図8に示した凹部111にアライメントマークが形成されている場合もある。その場合は、4方向の光源をそれぞれ個別に発光させて撮像を行ってそれぞれについて画像情報を取得し、4つの画像情報を比較して、アライメントマークが最も鮮明に写っている画像を撮った時に点灯させていた発光源を選択して点灯させるようにすると、確実にアライメントマークを検出することができる。また、この場合は、複数の発光源を同時に点灯させることが望ましい場合もある。また、必要に応じて電圧調整手段7によるコントラスト調整も行う。
【0035】
このようにしてアライメントマークを検出した後、アライメントマークと所定の位置関係にある加工予定ラインを縦横に切断することにより、個々のデバイスを形成することができる。
【0036】
本発明のアライメント装置によってアライメントマークを検出する対象の被加工物は、特に限定はされないが、本発明は、MEMS等の表面に構造物が形成される半導体ウェーハや樹脂基板といった被加工物を対象とする場合に特に適している。
【符号の説明】
【0037】
1:アライメント装置
2:保持手段
3:撮像手段
4:表示手段
5:照明手段 50a〜50d:発光源
6:切替手段
7:電圧切替手段
8:照明手段 80a〜80x:発光源
10,11:被加工物
100,101:V溝
100a,100b,101a,101b:斜面
102:交差部
110:凸部 111:凹部 112,113:エッジ(アライメントマーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の加工予定ラインに対応して存在するアライメントマークを検出するアライメント装置であって、
被加工物に対し、該被加工物の上方から該被加工物の上面へ接近する方向に相対移動させて該アライメントマークに焦点を合わせて撮像する撮像手段と、
リング形状に形成されるとともに該撮像手段を外周側から包囲する位置に配設され撮像領域を照らす照明手段とを備え、
該照明手段は、円周方向に均等配設された4つ以上の発光源からなり、
それぞれの発光源の点灯または消灯を個別に制御して切り替える切替手段
を具備することを特徴とするアライメント装置。
【請求項2】
前記撮像手段によって取得した画像のコントラストを調整する電圧調整手段を備えた
請求項1に記載のアライメント装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−245603(P2012−245603A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121746(P2011−121746)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】