説明

アライメント調整機構、および測定装置

【課題】測定子の位置を一定に維持しつつ、プローブのアライメント調整が可能なアライメント調整機構、および測定装置を提供する。
【解決手段】アライメント調整機構10は、X軸方向に沿って平行な第一、第二調整端辺を有する調整板40と、調整板40に設けられるプローブ固定部60と、プローブ固定部60に固定されるプローブ8と、Y軸方向の移動が規制されるとともに、X軸方向に沿って平行な第一、第二基部端辺を有する補強板30と、調整板40をY軸方向に押圧するY方向調整ネジ70と、第一調整端辺および第一基部端辺、第二調整端辺および第二基部端辺を連結する調整連結部521と、を具備し、プローブ8の測定子8Cは、初期状態で、第一調整端辺および第一基部端辺を含む第一傾斜面、および第二調整端辺および第二基部端辺を含む第二傾斜面の交線上に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プローブのアライメントを調整するアライメント調整機構、および測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸部の先端に測定子が設けられたプローブと、測定対象とを相対移動させながら、測定子を測定対象の測定部位に接触させて、測定子が測定対象に接触したときの座標位置から測定対象の形状を測定する測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の装置は、測定物の表面粗さを測定する非接触粗さプローブと、スタイラスを有するタッチ信号プローブと備えている。そして、スタイラスが変位するとタッチ信号発生手段によりタッチ信号が出力される構成が採られている。
【0003】
ところで、上記のようなプローブを用いて、例えばネジ穴や深穴などの穴の周面形状や円筒度、穴深さなどを測定する場合、図16に示すように、穴901の軸心に対してプローブ8の軸部8Bが傾斜していると、軸部8Bが穴901の周壁に接触し、検査対象物またはプローブ8が損傷するおそれがある。このような問題を解決するために、スタイラスの姿勢調整(アライメント調整)を実施する構成が考案されている。
【0004】
図17は、従来のプローブのアライメント調整機構を示す図である。図18は、従来の他のプローブのアライメント調整機構を示す図である。
【0005】
図17に示すように、従来のアライメント調整機構は、プローブ8を保持するプローブホルダ902の一端部においてピン903が形成され、測定装置本体904に固定された台座部905の軸受け906により回動自在に保持されている。一方、プローブホルダ902の他端側には、当該プローブホルダ902を台座部905側に付勢する引張バネ907が設けられるとともに、押込みねじ908が挿通されている。そして、この押込みねじ908の押込み寸法に応じて、プローブホルダ902がピン903を中心として回動され、プローブ8のアライメント調整が実施される。
また、図18に示す例は、測定装置本体904に固定されるゴニオステージ909にプローブ8を固定する構成である。具体的には、ゴニオステージ909は、円弧状の第一摺動面910Aを有する第一ステージ910と、この第一ステージ910の第一摺動面910Aに摺接可能な円弧状の第二摺動面911Aを有する第二ステージ911とを備え、第二ステージ911にプローブ8が固定される。そして、第二ステージ911の第二摺動面911Aを第一ステージ910の第一摺動面910Aに対して摺動させることで、プローブ8のアライメント調整を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−142141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、プローブ8のアライメント調整を実施する際、上記図17や図18に示す従来の構成では、アライメント調整により測定子8Cの位置が大きく変位してしまう。特に、微細形状測定においては、顕微鏡によりプローブ8の測定子8Cの位置状態を確認しながらアライメント調整を実施する必要があるが、上記のように測定子8Cの位置が大きく変位すると、測定子が顕微鏡の視認可能範囲から外れてしまい、顕微鏡の位置調整をも再度行う必要があるなど、煩雑な作業が発生するという問題がある。また、図18に示すようなゴニオステージを用いた構成では、特に数mm単位の微小形状を測定する測定装置に取り付ける場合、第二ステージ911の回動角度の制御や、第一および第二ステージ910,911各摺接面910A,911Aの製造が困難であるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題に鑑みて、測定子の位置を一定に維持しつつ、プローブのアライメント調整が可能なアライメント調整機構、および測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアライメント調整機構は、第一方向に沿って互いに平行となる第一調整端辺および第二調整端辺を有する調整板と、前記調整板に一体に設けられるプローブ固定部と、プローブ固定部に固定され、軸部、および軸部の先端に形成される測定子を有するプローブと、測定装置本体に連結されるとともに、前記第一方向に沿って互いに平行となる第一基部端辺および第二基部端辺を有する基部と、前記調整板を、当該調整板の面方向に平行で、かつ前記第一方向に直交する第二方向に略沿って押圧する傾斜調整手段と、前記第一調整端辺および前記第一基部端辺、前記第二調整端辺および前記第二基部端辺をそれぞれ連結する調整連結部と、を具備し、前記基部は、前記第二方向に対して移動が規制された状態で前記測定装置本体に連結されており、前記測定子は、前記傾斜調整手段により前記調整板が押圧されていない状態において、前記調整板の前記第一調整端辺および前記基部の前記第一基部端辺を含む第一傾斜面、および前記調整板の前記第二調整端辺および前記基部の前記第二基部端辺を含む第二傾斜面の交線上に配置されることを特徴とする。
【0010】
この発明では、プローブ固定部が一体的に設けられる調整板と、第二方向に沿う移動が規制された基部とを調整連結部により連結する。このようなアライメント調整機構では、基部が第二方向に対してその移動が規制されているため、傾斜調整手段により傾斜板が第二方向に沿って押圧されると、調整板の第一調整端辺および第二調整端辺は、それぞれ第一基部端辺および第二基部端辺を中心として揺動し、調整板が傾斜する。これにより、調整板に一体に設けられるプローブ固定部、およびプローブ固定部に固定されるプローブも傾斜し、アライメント調整が実施される。
この時、測定子が、第一調整端辺および第一基部端辺により形成される第一傾斜面と、第二調整端辺および第二基部端辺により形成される第二傾斜面との交線上に配置されるように、基部および調整板の位置、寸法が設定されている。このような構成では、調整板の変位による測定子の変位量を小さくすることができる。
すなわち、例えば図17に示すような従来の構成では、測定子8Cはピン903を中心とした円弧上を移動し、図18に示す従来の構成では、測定子8Cは、各摺接面910A,911Aの中心点を回転中心とした円弧上を移動するが、これらの円弧中心は測定子8Cから離れて位置するため、アライメント調整時の測定子8Cの変位量が大きくなる。これに対して、本発明では、調整板を押圧すると、第一調整端辺は第一基部端辺を中心軸として揺動し、第二調整端辺は第二基部端辺を中心軸として揺動し、調整板全体では、第一傾斜面および第二傾斜面の交線を略中心軸として揺動する。したがって、上記のように、初期状態において測定子が第一傾斜面および第二傾斜面の交線上に配置されていれば、傾斜板が揺動により傾斜した場合でも、測定子は第一傾斜面および第二傾斜面の交線近傍で僅かに移動するのみであり、従来のように大きく変位することがない。したがって、顕微鏡で測定子の位置を確認しながらプローブのアライメント調整を実施する場合でも、顕微鏡の視認可能範囲から測定子が外れるなどの不都合を防止でき、より容易にプローブのアライメント調整を実施することができる。また、調整板を第二方向に沿って押圧するだけの簡単な構成となるため、例えば図18に示すゴニオステージのような複雑な構成や制御が不要となり、より小型のアライメント調整機構を提供することができる。
【0011】
本発明のアライメント調整機構では、前記調整連結部は、前記第一傾斜面および前記第二傾斜面に沿って配置されることが好ましい。
本発明において、調整連結部は、第一傾斜端辺および第一基部端辺、第二傾斜端辺および第二基部端辺をそれぞれ連結するものであれば、いかなる形状に形成されていてもよいが、第一傾斜面および第二傾斜面に沿って配置されることで、より簡単な構成にでき、装置の小型化も容易となる。
【0012】
ここで、本発明のアライメント調整機構では、前記調整連結部は、板ばねであり、前記傾斜調整手段により前記調整板が押圧されていない位置状態に前記調整板を付勢することが好ましい。
この発明では、第一傾斜面および第二傾斜面に沿って、基部および調整板を連結する板ばねが配置される。調整連結部としては、第一調整端辺および第一基部端辺間、第二調整端辺および第二基部端辺間にそれぞれ複数の線状の弾性部材で連結してもよいが、この場合、傾斜調整手段による押圧で、各弾性部材に係る応力がそれぞれ異なる場合がある。このような場合、各弾性部材での撓み寸法が異なり、傾斜調整手段により調整板を第二方向に押圧した場合でも、調整板が第一方向に対して傾斜する場合があり、アライメント調整が困難となることがある。一方、第一傾斜面および第二傾斜面に沿う板状部材により、第一調整端辺および第一基部端辺間、第二調整端辺および第二基部端辺間をそれぞれ連結した場合、傾斜調整手段による押圧力が板状の調整連結部に一様に分散され、第一方向に対して調整板が傾斜することがない。
また、調整連結部を板状部材とする構成において、第一傾斜面および第二傾斜面に硬板を配置し、この硬板と、基部および調整板の各端辺を板ばねにより連結する構成としてよいが、さらに、調整連結部を板ばねで構成することで、部品点数を削減でき、より簡単な構成にすることができる。
【0013】
本発明のアライメント調整機構では、前記調整板を、当該調整板の面方向に平行で、かつ前記第二方向に略沿って押圧する第二傾斜調整手段を備え、前記基部は、装置本体に固定されるとともに、前記第二方向に平行となる第三基部端辺および第四基部端辺を有する基部固定部と、前記第二方向に平行となる第五基部端辺および第六基部端辺を有するとともに、前記第一基部端辺および前記第二基部端辺を有する基部揺動部と、前記第三基部端辺および前記第五基部端辺、前記第四基部端辺および前記第六基部端辺を連結する基部連結部と、を備え、前記測定子は、前記傾斜調整手段および前記第二傾斜調整手段により前記調整板が押圧されていない状態において、前記第一傾斜面および第二傾斜面の交線と、前記第三基部端辺と前記第五基部端辺とを含む第三傾斜面、および前記第四基部端辺と前記第六基部端辺とを含む第四傾斜面の交線との交点上に配置されることが好ましい。
【0014】
この発明では、基部固定部は、装置本体に固定されるため、第一および第二方向の双方に対してその移動が規制される。また、このアライメント調整機構では、この基部固定部の第二方向に沿う第三基部端辺および第四基部端辺と、基部揺動部の第二方向に沿う第五基部端辺および第六基部端辺とが、連結されている。ここで、基部は、上述したように、第二方向への移動が規制されているため、傾斜調整手段により調整板を第二方向に沿って押圧した場合でも、基部揺動部は第二方向に移動しない。一方、第二傾斜調整手段により調整板を第一方向に沿って押圧すると、調整板に調整連結部を介して連結される基部揺動部も調整板に連動して変位する。この時、基部揺動部の第五基部端辺および第六基部端辺は、それぞれ基部固定部の第三基部端辺および第四基部端辺を中心として揺動し、基部揺動部が傾斜する。これにより、基部揺動部と連結される調整板、調整板に一体に設けられるプローブ固定部、およびプローブ固定部に固定されるプローブも傾斜し、アライメント調整が実施される。
ここで、測定子は、第一傾斜面と第二傾斜面との交線、および第三傾斜面と第四傾斜面との交線の交点上に配置されるように、基部および調整板の位置、寸法が設定されている。したがって、調整板を第一方向に沿って押圧した場合でも第二方向に押圧した場合でも、調整板の変位による測定子の変位量を小さくすることができ、プローブを第一方向だけでなく、第二方向に対しても、測定子の位置をほぼ一定に保ったまま傾斜させることができ、より精度よくアライメント調整を実施することができる。
【0015】
本発明の測定装置は、第一方向に沿って互いに平行となる第一調整端辺および第二調整端辺を有する調整板と、前記調整板に一体に設けられるプローブ固定部と、プローブ固定部に固定され、軸部、および軸部の先端に形成される測定子を有するプローブと、測定装置本体に連結されるとともに、前記第一方向に沿って互いに平行となる第一基部端辺および第二基部端辺を有する基部と、前記調整板を、当該調整板の面方向に平行で、かつ前記第一方向に直交する第二方向に略沿って押圧する傾斜調整手段と、前記第一調整端辺および前記第一基部端辺、前記第二調整端辺および前記第二基部端辺をそれぞれ連結する調整連結部と、前記測定子が被測定物に接触した際の位置を検出して、前記被測定物の形状を測定する測定手段と、を具備し、前記基部は、前記第二方向に対して移動が規制された状態で前記測定装置本体に連結されており、前記測定子は、前記傾斜調整手段により前記調整板が押圧されていない状態において、前記調整板の前記第一調整端辺および前記基部の前記第一基部端辺を含む第一傾斜面、および前記調整板の前記第二調整端辺および前記基部の前記第二基部端辺を含む第二傾斜面の交線上に配置されることを特徴とする。
【0016】
この測定装置では、上記アライメント調整機構と同様に、初期状態において測定子が第一傾斜面および第二傾斜面の交線上に配置されているため、傾斜板が揺動により傾斜した場合でも、測定子は第一傾斜面および第二傾斜面の交線近傍で僅かに移動するのみで、その位置がほぼ変動しない。したがって、顕微鏡で測定子の位置を確認しながらプローブのアライメント調整を実施する場合でも、顕微鏡の視認可能範囲から測定子が外れるなどの不都合を防止でき、より容易にプローブのアライメント調整を実施することができる。また、調整板を第二方向に沿って押圧するだけの簡単な構成となるため、例えば図18に示すゴニオステージのような複雑な構成や制御が不要となり、より小型のアライメント調整機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る測定装置である形状測定装置の概略を示す全体図。
【図2】本実施形態のアライメント調整機構の構成を示す斜視図。
【図3】本実施形態のアライメント調整機構をX軸方向から見た正面図。
【図4】本実施形態のアライメント調整機構をY軸方向から見た側面図。
【図5】本実施形態の板ばねの形状を示す平面図。
【図6】本実施形態の板ばねにより連結された調整板および補強板を示す斜視図。
【図7】本実施形態のX軸方向から見たアライメント調整機構の初期状態を示す正面図。
【図8】図7において、Y方向調整ネジを調整し、調整板を+Y軸方向に押圧した傾斜状態を示す正面図。
【図9】本実施形態のY軸方向から見たアライメント調整機構の初期状態を示す側面図。
【図10】図9において、X方向調整ネジを調整し、調整板を+X軸方向に押圧した傾斜状態を示す側面図。
【図11】本実施形態のアライメント調整機構の側面の初期状態のモデル図。
【図12】本実施形態のアライメント調整機構の側面の傾斜状態のモデル図。
【図13】本実施形態のアライメント調整機構の側面の傾斜状態のモデル図。
【図14】本実施形態のアライメント調整機構の寸法例を示す図。
【図15】比較例である従来のアライメント調整機構の寸法例を示す図。
【図16】プローブが穴の一部に接触した状態を示す図。
【図17】従来のプローブのアライメント調整機構を示す図。
【図18】従来の他のプローブのアライメント調整機構を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[測定装置である形状測定装置の構成]
図1は、本実施形態に係る測定装置である形状測定装置の概略を示す全体図である。
本実施形態に係る形状測定装置100は、図1に示すように、基台1と、被測定物を載置し前後方向(Y軸方向)へ移動可能に設けられたテーブル2と、このテーブル2を跨いで基台1の両側に設けられた門形フレーム3と、この門形フレーム3のクロスレール4に左右方向(X軸方向)へ移動可能に設けられたXスライダ5と、このXスライダ5に上下方向(Z軸方向)へ昇降可能に設けられたZスライダ6と、このZスライダ6の下端に設けられるとともに、プローブ8が固定されたアライメント調整機構10と、を備えて構成されている。この形状測定装置では、図示しない制御装置に接続され、制御装置により、テーブル2のY軸方向への移動、Xスライダ5のX軸方向への移動、およびZスライダのZ軸方向への移動が制御される。この制御装置は、プローブ8とテーブル2とを相対移動させながら、プローブ8の測定子8C(図2参照)を被測定物の測定部位に接触させ、測定子8Cが被測定物に接触したときの座標値を読み取り、被測定物の形状を測定する。
【0019】
〔アライメント調整機構の構成〕
図2は、アライメント調整機構10の構成を示す斜視図であり、図3は、アライメント調整機構10をX軸方向から見た正面図であり、図4は、アライメント調整機構10をY軸方向から見た側面図である。
図2ないし図4に示すように、プローブ8は、プローブ本体8Aと、軸部8Bと、測定子8Cと、を備えている。
プローブ本体8Aは、アライメント調整機構10のプローブ固定部60の固定面62Aに対して直交する角度に固定される。
軸部8Bは、例えば超硬合金により形成される。また、プローブ本体8Aに対して傾斜可能、かつプローブ固定部60の固定面に対して直交する基本姿勢に復帰可能に設けられる。
すなわち、本実施形態の形状測定装置100では、測定子8Cを被測定物の測定部位に接触させることで、その接触位置の座標を読み取る。この時、測定子8Cが接触した否かは、測定子8Cが被測定物に接触した際の軸部8Bの傾斜状態を検出することで、判断可能となる。このため、軸部8Bとしては、例えば超硬合金により形成されて、測定子8Cが被測定物に接触した際には、プローブ本体8Aに対して傾斜可能で、かつ測定子8Cが被測定物から離れた際には、プローブ固定部60の固定面に対して直交する基本姿勢に復帰可能に設けられる。
なお、測定子8Cが接触した否かは、測定子8Cを微振動させておき、測定子8Cが被測定物に接触した際の振動状態を検出することでも判断可能となる。この場合においても、測定子8Cを微振動させる必要があるため、軸部8Bは、プローブ固定部60の固定面に対して直交する基本姿勢を中心として、振動可能に形成される必要があり、つまり、プローブ本体8Aに対して傾斜可能、かつプローブ固定部60の固定面に対して直交する基本姿勢に復帰可能に設けられている。
測定子8Cは、例えば軸部8Bの先端に球状に一体形成される。
【0020】
そして、形状測定装置100では、上記のように、測定子8Cが被測定物に当接して軸部8Bが一定量傾いた際に、接触信号が測定手段である制御装置(図示せず)に出力され、この制御装置により接触信号に応じた被測定物の測定面の形状が、演算により測定される。
なお、形状測定装置100は、上記のように、測定子8Cを微振動させ、その振動に変化が生じた際に、接触信号が制御装置に出力される構成としてもよい。この場合でも、制御装置は、接触信号に応じた被測定物の測定面の形状を演算により測定することができる。
【0021】
アライメント調整機構10は、プローブ8の姿勢(角度)を調整するもので、図2ないし図4に示すように、外装筒部11(図1、図2参照)と、基部固定部20と、基部揺動部を構成する補強板30と、調整板40と、基部連結部および調整連結部を構成する板ばね50と、プローブ固定部60と、傾斜調整手段としてのY方向調整ネジ70と、第二傾斜調整手段としてのX方向調整ネジ80と、を備えている。
なお、基部固定部20、補強板30、板ばね50を構成するX方向板ばね53A,53Bにより本発明の基部が構成される。また、本発明の第一方向とは、本実施の形態におけるX軸方向を指し、本発明の第二方向とは本実施の形態におけるY軸方向を指す。
【0022】
基部固定部20、補強板30、および調整板40は、図2ないし図4に示すように、調整ネジ70,80により調整板40が押圧されていない状態で、XY平面、YZ平面、ZX平面に対して、それぞれ一対の平行面を有する直方体形状(板形状)に形成されている。ここで、基部固定部20のX軸方向に沿う幅寸法は、補強板30のX軸方向に沿う幅寸法より大きく形成され、調整板40のY軸方向に沿う幅寸法は、補強板30のY軸方向に沿う幅寸法より大きく形成されている。また、基部固定部20のY軸方向に沿う幅寸法は、補強板30におけるY軸方向に沿う幅寸法と略同一寸法に形成され、調整板40のX軸方向に沿う幅寸法は、補強板30におけるX軸方向に沿う幅寸法に形成されている。
なお、本実施の形態では、基部固定部20のY軸方向の寸法、および調整板40のX軸方向の寸法は、上記のような寸法に形成される例を示すが、これに限定されず、外装筒部11内に収納可能であり、傾斜により板ばね50に干渉しない程度の大きさ寸法であれば、いかなる寸法に形成されていてもよい。
【0023】
これらの基部固定部20、補強板30、および調整板40は、Z軸方向に沿って、基部固定部20、調整板40、補強板30の順で配置される。具体的には、Zスライダ6の下端面に基部固定部20が固定され、この基部固定部20から所定隙間寸法を介して、調整板40が配置され、さらに所定隙間寸法を介して補強板30が配置される。この時、調整ネジ70,80により調整板40が押圧されていない状態で、基部固定部20、補強板30、および調整板40の各XY端面の中心点が、Z軸上またはZ軸に平行する直線上に位置するように各々配置される。
ここで、基部固定部20のXY端面のうち調整板40に対向する下面側で、Y軸方向に沿う一対の端辺がそれぞれ、第三基部端辺23(+X側)、第四基部端辺24(−X側)を構成する。また、補強板30のX軸方向に沿う一対の端辺がそれぞれ、第一基部端辺31(+Y側)、第二基部端辺32(−Y側)を構成し、Y軸方向に沿う一対の端辺がそれぞれ、第五基部端辺35(+X側)、第六基部端辺36(−X側)を構成する。さらに、調整板40のX軸方向に沿う一対の端辺がそれぞれ、第一調整端辺41(+Y側)、第二調整端辺42(−Y側)を構成する。
そして、これらの基部固定部20、補強板30、および調整板40は、板ばね50により連結されることで、各々の高さ位置に保持される。
【0024】
図5は、板ばね50の形状を示す平面図である。図6は、板ばね50により連結された調整板40および補強板30を示す斜視図である。
板ばね50は、底部51、一対のY方向板ばね52A,52B、および一対のX方向板ばね53A,53Bを備えている。この板ばね50は、例えば熱膨張率の小さいインバー材などにより、厚みが0.1mmに形成されている。
底部51は、補強板30のXY面と略同一矩形状に形成され、補強板30の下面に、例えばネジ止めなどにより固定されている。
【0025】
Y方向板ばね52A,52Bは、図5に示すように、底部からY軸方向に延出形成されている。このY方向板ばね52A,52Bは、それぞれ底部51に連続する調整連結部521と、調整連結部521に連続する調整当接部522と、調整当接部522に連続する調整固定部523とを有し、調整固定部523にはネジ穴524が形成されている。そして、Y方向板ばね52Aは、図6に示すように、補強板30の第一基部端辺31、調整板40の第一調整端辺41、調整板40の上面のX軸に沿う端辺に略沿って折り曲げ加工され、調整板40の上面にねじ止めにより固定される。Y方向板ばね52Bも同様に、補強板30の第二基部端辺32、調整板40の第二調整端辺42、および調整板40の上面のX軸に沿う端辺に略沿って折り曲げ加工され、調整板40の上面にねじ止めにより固定される。この時、Y方向板ばね52Bは、プローブ固定部60の後述する固定片61と、調整板40とに挟持された状態で、調整板40の上面にねじ止め固定される。これにより、Y方向板ばね52A,52Bの調整連結部521は、それぞれ第一基部端辺31と第一調整端辺41とを含む第一傾斜面、第二基部端辺32と第二調整端辺42とを含む第二傾斜面に沿って配置される。
ここで、調整板40に押圧力が作用していない初期状態で、Y方向板ばね52A,52Bの調整連結部521に沿う第一傾斜面および第二傾斜面の交線上に測定子8Cが配置されており、Y方向板ばね52A,52Bは、補強板30および調整板40の相対位置関係が前記初期状態となるように、調整板40をY軸方向に付勢する。
一方、調整連結部521は、X軸と平行する面上に配置されるため、X軸方向に対して撓むことがない。すなわち、調整板40は、補強板30に対してX軸方向への移動が規制される。したがって、調整板40がX方向調整ネジ80によりX軸方向に沿って押圧されると、補強板30は、調整板40と同一方向に同一距離だけ一体的にX軸方向に略沿って揺動する。
【0026】
X方向板ばね53A,53Bは、図5に示すように、底部51からX軸方向に延出形成されている。このX方向板ばね53A,53Bは、それぞれ底部51に連続する基部連結部531と、基部連結部531に連続する基部固定部532とを有し、基部固定部532には、それぞれネジ穴533が形成され、基部連結部531には、それぞれX方向調整ネジ80が挿通される調整ネジ孔534が形成されている。そして、X方向板ばね53Aは、図6に示すように、補強板30の第五基部端辺35、および基部固定部20の第三基部端辺23に略沿って折り曲げ加工され、基部固定部20の+X側のYZ端面にねじ止めにより固定される。X方向板ばね53Bも同様に、補強板30の第六基部端辺36、および基部固定部20の第四基部端辺24に沿って折り曲げ加工され、基部固定部20の−X側のYZ端面にねじ止めにより固定される。これにより、X方向板ばね53A,53Bの基部連結部531は、それぞれ第三基部端辺23と第五基部端辺35とを含む第三傾斜面、第四基部端辺24と第六基部端辺36とを含む第四傾斜面に沿って配置される。
ここで、調整板40に押圧力が作用していない初期状態で、X方向板ばね53A,53Bの基部連結部531に沿う第三傾斜面および第四傾斜面の交線上に測定子8Cが配置される。すなわち、測定子8Cは、第一傾斜面および第二傾斜面の交線と、第三傾斜面および第四傾斜面の交線との交点上に配置されている。そして、X方向板ばね53A,53Bは、補強板30および基部固定部20の相対位置関係が初期状態となるように、補強板30をX軸方向に付勢する。
一方、基部連結部531は、Y軸と平行する面上に配置されるため、Y軸方向に対して撓むことがない。すなわち、補強板30は、基部固定部20に対してY軸方向への移動が規制される。したがって、調整板40がY方向調整ネジ70によりY軸方向に沿って押圧された場合でも補強板30は変位せず、調整板40のみがY軸方向に略沿って揺動する。
【0027】
プローブ固定部60は、図3に示すように、断面略コ字状に形成され、コ字一端側に固定片61、プローブ固定部60のコ字他端側にプローブ本体8Aを固定する固定面62Aが下面側に形成されるプローブ固定端62、および固定片61とプローブ固定端62とを連結するプローブ連結部63とを備えている。
固定片61は、上述したように、板ばね50のY方向板ばね52Bを介して調整板40にねじ止めされている。これにより、プローブ固定部60と調整板40とが一体となり、X方向調整ネジ80やY方向調整ネジ70により調整板40が傾斜されると、調整板40と同一傾斜角度でプローブ固定部60が傾斜し、プローブ8のアライメント調整が実施される。
プローブ固定端62は、下面側の固定面62Aにプローブ本体8Aが固定される。ここで、本実施の形態では、プローブ本体8Aは、調整板40がX方向調整ネジ80やY方向調整ネジ70により押圧されていない初期状態において、このプローブ固定端62は、固定面62AのZ軸上に固定され、プローブ本体8Aおよび軸部8BがZ軸に沿って配置される。
プローブ連結部63は、固定片61とプローブ固定端62とを連結する部分であり、初期状態において、XZ平面に平行な平面状に形成される。また、プローブ連結部63は、Y方向板ばね52Bの調整連結部521に当接して配置される。
【0028】
Y方向調整ネジ70は、Y軸方向に沿って一対設けられており、一方のY方向調整ネジ70の先端が板ばね50のY方向板ばね52Aの調整当接部522に当接し、他方のY方向調整ネジ70の先端がプローブ固定部60のプローブ連結部63に当接する。ここで、Y方向板ばね52Aの調整当接部522は、調整板40の+Y側のXZ端面に当接し、プローブ連結部63は、Y方向板ばね52Bの調整当接部522を介して調整板40の−Y側のXZ端面に当接しているため、Y方向調整ネジ70を軸方向に沿って進退させると、調整板40が押圧され、Y軸方向に略沿って、変位する。また、これらのY方向調整ネジ70は、例えば、軸周面に雄ネジが形成され、例えば外装筒部11に形成される雌ネジ穴に螺合されており、ねじ込みにより容易に位置調整が可能となっている。
【0029】
図7は、X軸方向から見たアライメント調整機構10の初期状態を示す正面図であり、図8は、図7において、Y方向調整ネジ70を調整し、調整板40を+Y軸方向に押圧した傾斜状態を示す正面図である。
具体的には、図8に示すように、Y方向調整ネジ70による押圧により、調整板40の第一調整端辺41は、第一基部端辺31を中心軸として回動し、調整板40の第二調整端辺42は、第二基部端辺32を中心軸として回動する。ここで、上記したように、調整板40のY方向幅寸法は、補強板30のY方向幅寸法より大きく、第一傾斜面および第二傾斜面がZ軸に対して傾斜している。また、補強板30は、上記したように、Y軸と平行する面状のX方向板ばね53A,53Bにより基部固定部20に連結されており、Y軸方向への移動が規制されている。このため、調整板40がY軸方向に沿って押圧力を受けた際、補強板30が移動せず、調整板40が補強板30に対してY軸に略沿う方向に揺動する。この時、Y方向板ばね52Aの調整連結部521の回動角度と、Y方向板ばね52Bの調整連結部521の回動角度とが異なる角度となるため調整板40が傾斜する。例えば、図7に示すような初期状態において、第一傾斜面および第二傾斜面と、Z軸となす角度がそれぞれαyであった場合でも、傾斜板がY方向調整ネジ70により押圧された傾斜状態では、図8に示すように、第一傾斜面とZ軸との傾斜角度βy、および第二傾斜面とZ軸との傾斜角度θyは、異なる角度となることで、調整板40が所定の角度δyだけ傾斜される。これにより、調整板40とプローブ固定部60を介して一体的に固定されるプローブ8も角度δyだけ傾斜される。
【0030】
X方向調整ネジ80は、X軸方向に沿って一対設けられており、それぞれ、X方向板ばね53A,53Bに設けられる調整ネジ孔534に挿通され、一方のX方向調整ネジ80の先端が+X側のYZ端面に、他方のY方向調整ネジ70の先端が−X側のYZ端面に当接し、調整板40を挟持している。また、これらのX方向調整ネジ80は、例えば、軸周面に雄ネジが形成され、例えば外装筒部11に形成される雌ネジ穴に螺合されて、所定位置に位置決めされる。そして、これらのX方向調整ネジ80の螺合状態に応じて、調整板40がX軸方向に押圧され、X軸に略沿って変位する。
【0031】
図9は、Y軸方向から見たアライメント調整機構10の初期状態を示す側面図であり、図10は、図9において、X方向調整ネジ80を調整し、調整板40を+X軸方向に押圧した傾斜状態を示す側面図である。
具体的には、調整板40は、補強板30に対してX軸方向への移動が規制されているため、X方向調整ネジ80により調整板40が押圧されて変位すると、調整板40も同変位量だけ変位する。この時、補強板30の第五基部端辺35は、基部固定部20の第三基部端辺23を中心軸として回動し、第六基部端辺36は、第四基部端辺24を中心軸として回動する。ここで、上記したように、基部固定部20のX方向幅寸法は、補強板30のX方向幅寸法より大きく、第三傾斜面および第四傾斜面がZ軸に対して傾斜している。このため、調整板40がX軸方向に沿って押圧力を受けると、X方向板ばね53Aの基部連結部531の回動角度と、X方向板ばね53Bの基部連結部531の回動角度とが異なる角度となり、補強板30が傾斜する。例えば、図9に示すような初期状態において、第三傾斜面および第四傾斜面と、Z軸となす角度がそれぞれαxであった場合でも、調整板40がX方向調整ネジ80により押圧された傾斜状態では、図10に示すように、第三傾斜面とZ軸との傾斜角度βx、および第四傾斜面とZ軸との傾斜角度θxは、異なる角度となり、補強板30が所定の角度δxだけ傾斜される。また、上記のように、調整板40は、面状のY方向板ばね52A,52Bにより補強板30に連結され、補強板30に対してX軸方への移動が規制されているため、補強板30と一体的に調整板40も角度δxだけ傾斜される。
【0032】
また、上述のようなY方向調整ネジ70やX方向調整ネジ80のねじ込み量を制御装置により制御可能としてもよく、このような構成では、調整板40のX軸方向およびY軸方向への押圧力を電子制御により微調整することで、プローブ8のアライメントをより精密に調整することができる。
【0033】
〔プローブのアライメント調整方法、およびアライメント調整原理〕
上記のような形状測定装置100において、プローブ8のアライメントを調整するには、X方向調整ネジ80およびY方向調整ネジ70のねじ込み量を調整し、調整板40の傾斜を調整する。本実施の形態では、図7および図8に示すように、X軸に直交するYZ平面方向でのプローブ8のアライメント調整は、Y方向調整ネジ70のねじ込み量を調整することで実施され、図9および図10に示すように、Y軸に直交するXZ平面方向でのプローブ8のアライメントは、X方向調整ネジ80のねじ込み量を調整することで実施され、これらY方向調整ネジ70およびX方向調整ネジ80の双方を調整することで、プローブ8を3次元に対して所望の角度に調整することが可能となる。そして、これらのY方向調整ネジ70およびX方向調整ネジ80のねじ込み量の調整では、測定者がプローブ8の先端部の傾斜状態を、図示しない顕微鏡により確認することで実施する。この時、上記形状測定装置100では、プローブ8のアライメント調整時の測定子8Cの移動量が僅かであり、顕微鏡の視認有効範囲から測定子8Cが飛び出る不都合がなく、容易かつ迅速にプローブ8のアライメント調整を実施することができる。
【0034】
これは、初期状態において、プローブ8の測定子8Cが、第一傾斜面および第二傾斜面の交線と、第三傾斜面および第四傾斜面の交線との交点上に配置される構成のためであり、このような構成では、以下のような原理により、測定子8Cが移動する。
図11ないし図13は、本発明のアライメント調整機構10の原理を説明するモデル図である。図11は、アライメント調整機構10の側面の初期状態のモデル図であり、図12および図13は、アライメント調整機構10の側面の傾斜状態のモデル図である。なお、ここでは、説明を簡略化するために、X方向調整ネジ80により調整板40をX軸方向に押圧した場合のみを例示するが、Y方向調整ネジ70により調整板40をY軸方向に押圧した場合も同様の原理によりアライメント調整が実施される。
図11ないし図13において、点A,B,C,D,E,Gは、それぞれ初期状態における測定子8C、補強板30の第五基部端辺35、第六基部端辺36、基部固定部20の第三基部端辺23、第四基部端辺24、プローブ本体8Aとプローブ固定端62との接続点(プローブ接続点)の座標位置を示し、測定子8Cの座標位置Aが原点にあるものとする。なお、ここでは、説明の簡略化のため、補強板30や板ばね50、プローブ固定端62の厚み寸法を無視し、プローブ接続点Gが、補強板30の第三基部端辺23および第四基部端辺24の中点に位置するものとする。
また、プローブの軸部の長さをh1、基部固定部20および補強板30の距離をh2とし、第三傾斜面BDおよび第四傾斜面CEはそれぞれZ軸に対して角度αで傾斜しているものとする。
このようなモデルでは、各点A〜Gの座標位置は、それぞれ以下のようになる。
A(xa,za)=(0,0)
B(xb,zb)=(h1tanα,h1)
C(xc,zc)=(−h1tanα,h1)
D(xd,zd)=((h1+h2)tanα,h1+h2)
E(xe,ze)=(−(h1+h2)tanα,h1+h2)
G(xg,zg)=(0,h1)
また、基部固定部20の第三基部端辺23および第四基部端辺24を結ぶ線分EDの寸法は、ED=2(h1+h2)tanαとなり、第三基部端辺23および第五基部端辺35の距離、第四基部端辺24および第六基部端辺36の距離は、EC=DB=h2/cosαとなり、補強板30の第三基部端辺23および第四基部端辺24を結ぶ線分CBの寸法は、CB=2CG=2GB=2h1tanαとなる。
【0035】
ここで、図12のように、調整板40を押圧して補強板30を傾斜させた際、第四傾斜面がZ軸に対して角度βだけ傾斜されたものとする。また、この時の第三傾斜面がZ軸に対して角度θだけ傾斜し、プローブ8がZ軸に対してδだけ傾斜する傾斜状態になったとする。また、測定子8C、補強板30の第五基部端辺35、第六基部端辺36、プローブ接続点がそれぞれ、A´,B´,C´,G´に移動したとすると、点B´,C´,G´の座標は以下のように表せる。
B´(xb´,zb´)=((h1+h2)tanα−h2sinθ/cosα,h1+h2−h2cosθ/cosα)
C´(xc´,zc´)=(−(h1+h2)tanα+h2sinβ/cosα,h1+h2−h2cosβ/cosα)
G´(xg´,zg´)=(h2(sinβ−sinθ)/2cosα,h1+h2−h2(cosβ−cosθ)/cosα)
【0036】
また、図12において、点B´を通りX軸と平行な直線において、点E,C´,Dから垂線を下ろし、それぞれ点K,L,H´とすると、線分KH´は、次式(1)により表すことができる。
【0037】
【数1】

【0038】
ここで、線分KL,LB´,B´H´は、それぞれ、次式(2)〜(4)式により表される。
【0039】
【数2】

【0040】
上記(2)〜(4)式を(1)式に代入することで、次式(5)が導き出される。
【0041】
【数3】

【0042】
また、上記式(5)から第一傾斜面の傾斜角度θは、次式(6)のように導き出される。
【0043】
【数4】

【0044】
ここで、式(6)により2つの解θ1およびθ2(θ1<θ2)が求められる。一方、算出される角度θ1、θ2を図示すると、図13に示すようになる。図13に示すように、第五基部端辺35が第六基部端辺36を越えた位置に変位することはないため、アライメント調整時に第一傾斜面の傾斜角度θ=θ1となる。
さらに、補強板30の傾斜角度、すなわち線分C´B´の傾きは、(zC´−zB´)/(xC´−xB´)により求められる。また、Y方向板ばね52A,52Bにより、X軸方向に対しては、調整板40と補強板30とが一体的に変位し、調整板40にプローブ固定部60が固定され、このプローブ固定部60にプローブ8が固定されているため、補強板30の傾斜と同じ傾斜でプローブ8も傾斜する。また、プローブ固定部60のプローブ固定端62に対してプローブ8が垂直に設けられているため、プローブ8の傾きは、−(xC´−xB´)/(zC´−zB´)となる。したがって、プローブ8の傾斜角度δは、次式(7)により算出される。
【0045】
【数5】

【0046】
この式(7)、プローブ8の接続点G´の座標から、傾斜状態の測定子8Cの座標位置A´の座標(xA´,zA´)を次式(8)(9)に示すように導き出すことができる。
【0047】
【数6】

【0048】
ここで、図14に示すような寸法のアライメント調整機構10の測定子8Cの変位量を実施例として例示する。また、比較例として、図15に示す従来のゴニオステージを用いたアライメント調整機構の寸法例を例示する。
図14は、初期状態の第三傾斜面および第四傾斜面の傾斜角度をそれぞれ10(deg)とし、h1=h2=16(mm)に設定した例である。このようなアライメント調整機構10において、調整板40を押圧して、X方向板ばね53Bの基部連結部531の傾斜角度を12(deg)にした場合、上記式(6)によりθ=8.024(deg)、式(7)により、δ=1.99(deg)、式(8)および式(9)により測定子8Cの移動後の座標位置(xA´,zA´)が(xA´,zA´)=(-0.0006900,0.0198799)であると算出できる。すなわち、プローブ8は、1.99(deg)傾斜し、測定子8Cは、−X軸方向に約0.69μm、+Z軸方向に19.8μm移動すると算出できる。
【0049】
また、図15に示すように、図14のアライメント調整機構10のZ軸方向寸法と同一厚み寸法(16mm)のゴニオステージ(エドモンド・オプティクス社製:商品コード 55838−J,曲率半径R=47mm)を用い、ゴニオステージの下面中央に図14と同一寸法(16mm)のプローブ8を固定した。そして、上記アライメント調整機構を上記図14と同様の角度(2(deg))だけプローブ8を傾斜させ、測定子の位置を算出すると、測定子8Cの移動後の座標位置は、(xA´,zA´)=(OA´sin2°,OA´−OA´cos2°)=(2.34,0.041)となる。すなわち、測定子は、+X軸方向に2.34mm、+Z軸方向に0.041mmだけ移動すると算出される。
【0050】
以上に示すように、図15に示すような従来のアライメント調整機構では、プローブ8のアライメントによる測定子の移動量が大きくなるが、図14に示すような本発明のアライメント調整機構10では、測定子8Cの移動量を極めて小さくすることができ、顕微鏡の有効範囲内でプローブ8のアライメント調整が十分に実施可能であることが分かる。
【0051】
なお、図11ないし図13において、調整板40のX軸方向への押圧によるプローブ8のアライメント調整に対して説明したが、調整板40のY軸方向への押圧によるプローブ8のアライメント調整に対しても同様の原理により、プローブ8の傾斜角度δおよび測定子8Cの座標位置を算出することができる。すなわち、調整板40のY軸方向への押圧によるプローブ8のアライメント調整では、調整板40の第一調整端辺41を点B、第二調整端辺42を点Cとし、Y軸方向に対して補強板30と基部固定部20との相対位置が変化しないため、補強板30の第一基部端辺31を点D、第二基部端辺32を点Eとし、線分BCを線分DEより短く、かつ線分BCを線分DEより+Z軸側に配置することで置換することができ、上記したX軸方向に対するアライメント調整と略同様の原理にて、アライメント調整が実施可能となる。したがって、アライメント調整量に対して、測定子8Cの移動量を十分に小さくすることができる。
【0052】
〔実施の形態の作用効果〕
上述したように、上記実施の形態の形状測定装置100のアライメント調整機構10では、Zスライダ6の下端面に基部固定部20が固定され、この基部固定部20から所定寸法離れた位置に補強板30が設けられている。そして、基部固定部20の一対のYZ端面のY軸に平行する第三基部端辺23、第四基部端辺24と、補強板30の一対のYZ端面のY軸に平行する第五基部端辺35、第六基部端辺36とが、板ばね50のX方向板ばね53A,53Bにより連結され、補強板30がX軸方向に対して移動が規制されている。また、この補強板30から所定寸法離れた位置に、調整板40が配置され、調整板40のXZ端面のX軸に平行する第一調整端辺41、第二調整端辺42と、補強板30のXZ端面のX軸に平行する第一基部端辺31、第二基部端辺32とが、板ばね50のY方向板ばね52A,53Bにより連結されている。また、調整板40には、プローブ固定部60が固定され、このプローブ固定部60にプローブ8が固定されており、初期状態において、第一調整端辺41および第一基部端辺31により形成される第一傾斜面と、第二調整端辺42および第二基部端辺32により形成される第二傾斜面との交線上に、プローブ8の測定子8Cが配置される。さらに、調整板40はY軸方向に沿ってY方向調整ネジ70が配置され、Y方向調整ネジ70により押圧されることで調整板40が揺動可能となる。
このような構成により、調整板40は、Y方向調整ネジ70により押圧されることで、揺動され、押圧量に応じて傾斜する。ここで、補強板30がY軸方向に対して移動が規制されて変位しないので、調整板40の第一調整端辺41は、補強板30の第一基部端辺31を中心軸として、また調整板40の第二調整端辺42は、補強板30の第二基部端辺32を中心軸として回動し、調整板40が傾斜する。この時、調整板40は、第一傾斜面および第二傾斜面の交線または、この交線近傍を揺動中心として、揺動する。したがって、この交線上に測定子8Cが配置されていれば、測定子8Cの変位を小さくすることができる。したがって、測定者が顕微鏡を用いてプローブ8の先端の測定子8Cの状態を確認しながら、アライメント調整を実施する場合でも顕微鏡の有効視認可能範囲から測定子が外れることがなく、顕微鏡の移動や、倍率の変更など煩雑な作業を伴うことなく、測定子8Cのアライメント調整を実施することが可能となる。また、Y方向調整ネジ70のねじ込み量で調整板40の押圧量を調整してプローブ8のアライメント調整を実施する簡単な構成であるため、例えば数mm単位の小型の被測定物の形状を測定する場合でも、容易にアライメント調整機構10を小型化することができ、その制御も容易にできる。
【0053】
また、基部固定部20および補強板30は、板ばね50のX方向板ばね53A,53Bにより連結されている。これにより、補強板30は、基部固定部20に対してX軸方向に対して揺動可能となる。また、測定子8Cは、初期状態において、第一調整端辺41および第一基部端辺31により形成される第一傾斜面と、第二調整端辺42および第二基部端辺32により形成される第二傾斜面との交線上に配置されている。さらに、調整板40はX軸方向に沿ってX方向調整ネジ80が配置され、X方向調整ネジ80により調整板40が押圧されることで補強板30がX軸方向に揺動可能となる。
このため、上記のようなY軸方向に対するプローブの傾斜調整に加えて、X軸方向に対する傾斜調整も可能となり、X方向調整ネジ80およびY方向調整ネジ70の双方のねじ込み量を適宜設定することで、プローブのアライメント調整をより精度よく実施することができる。
【0054】
また、板ばね50は、第一傾斜面および第二傾斜面に沿う一対の面状の調整連結部521と、第三傾斜面および第四傾斜面に沿う一対の面状の基部連結部531とを備え、基部固定部20に対する補強板30の配置状態、補強板30に対する調整板40の配置状態が初期状態となるように付勢している。このため、Y方向調整ネジ70やX方向調整ネジ80により加えられる押圧力を面状の基部連結部531や調整連結部521の面全体に分散されることとなる。したがって、例えばY方向調整ネジ70による調整板40の押圧により、補強板30がY軸方向に移動したり、X方向調整ネジ80による調整板40の押圧により、調整板40が補強板30に対してX軸方向に移動したりすることがなく、プローブ8のアライメント調整をより精度よく実施することができる。
また、板ばね50は、底部51、底部51からX軸方向に延出するX方向板ばね53A,53B、および底部51からY軸方向に延出するY方向板ばね52A,52Bを備え、X方向板ばね53A,53Bに基部連結部531が形成され、Y方向板ばね52A,52Bに調整連結部521が形成されている。したがって、複数の板ばね部材を用い、基部固定部20、補強板30、調整板40をそれぞれ連結する構成に比べて、部品点数を少なくできるとともに、製造効率も向上できる。
さらに、板ばね50としてインバー材を用いることで、熱膨張などによる変形を防止できる。特に、小型のアライメント調整機構10では、板ばね50のとして熱膨張率の大きい素材などを用いると、熱膨張による板ばね50の変形により調整板40が傾斜し、精度の高いアライメント調整が困難となるが、本実施の形態では、このような板ばね50の変形を抑えることができ、調整板40および補強板30は、Y方向調整ネジ70およびX方向調整ネジ80のねじ込み量のみにより変位されることとなり、その他の要因により傾斜されることがない。したがって、プローブのアライメント調整をより精度よく実施することができる。
【0055】
〔その他の実施の形態〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0056】
例えば、上記実施の形態において、一枚の板ばね50を折り曲げ加工することで、平面状の基部連結部531および調整連結部521が構成される例を示したが、基部連結部531および調整連結部521は、面状に形成されているものでなくてもよい。例えば。調整連結部521は、第一調整端辺41および第一基部端辺31、第二調整端辺42および第二基部端辺32を連結するものであり、基部連結部531は、第三基部端辺23および第五基部端辺35、第四基部端辺24および第六基部端辺36を連結するものであれば、例えば円弧上に形成されているものであってもよい。
また、板ばね50を折り曲げ加工することで、これらの基部連結部531および調整連結部521を形成する例を示したが、これに限定されず、例えば、調整連結部521は、第一傾斜面および第二傾斜面に沿ってそれぞれ配置される板部材を配置し、第一傾斜面に配置される板部材と、調整板40の第一調整端辺41および補強板30の第一基部端辺31と板ばねで連結し、第二傾斜面に配置される板部材と、第二調整端辺42および第二基部端辺32とを板ばねで連結するものであってもよい。同様に、基部連結部材としても、第三傾斜面および第四傾斜面のそれぞれに板部材を配置し、これらの板部材と補強板30や基部固定部20を板ばねで連結する構成としてもよい。
【0057】
また、一枚の板ばね50を折り曲げ加工することにより、基部連結部531および調整連結部521を形成したが、例えば第一傾斜面、第二傾斜面、第三傾斜面、および第四傾斜面に沿ってそれぞれ別部材となる板ばねを配置し、基部連結部531および調整連結部521を形成する構成としてもよい。
【0058】
Y方向調整ネジ70およびX方向調整ネジ80として、外周面に雄ネジを形成し、外装筒部11に形成される雌ネジ孔に螺合される構成としたが、これに限定されず、例えばその他部材によりねじ込み量を設定する構成としてもよく、制御装置によりこれらのY方向調整ネジ70およびX方向調整ネジ80のねじ込み量が調整可能な構成としてもよい。
さらには、傾斜調整手段として、Y方向調整ネジ70およびX方向調整ネジ80を例示したが、これに限定されない。例えば、Y軸方向およびX軸方向に沿って進退自在に設けられるピン部材であり、例えばモータなどの駆動力により軸方向に沿って進退される構成などとしてもよい。
【0059】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、プローブのアライメントを調整するアライメント調整機構、およびプローブを用いて被測定物の形状を測定する測定装置に利用できる。
【符号の説明】
【0061】
6…測定装置本体であるスライダ、8…プローブ、8B…軸部、8C…測定子、10…アライメント調整機構、20…基部を構成する基部固定部、23…第三基部端辺、24…第四基部端辺、30…基部を構成する基部揺動部としての補強板、31…第一基部端辺、32…第二基部端辺、35…第五基部端辺、36…第六基部端辺、40…調整板、41…第一調整端辺、42…第二調整端辺、50…基部連結部および調整連結部を備える板ばね、60…プローブ固定部、70…傾斜調整手段としてのY方向調整ネジ、80…第二傾斜調整手段としてのX方向調整ネジ、100…測定装置としての形状測定装置、521…調整連結部、531…基部連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に沿って互いに平行となる第一調整端辺および第二調整端辺を有する調整板と、
前記調整板に一体に設けられるプローブ固定部と、
前記プローブ固定部に固定され、軸部、および軸部の先端に形成される測定子を有するプローブと、
測定装置本体に連結されるとともに、前記第一方向に沿って互いに平行となる第一基部端辺および第二基部端辺を有する基部と、
前記調整板を、当該調整板の面方向に平行で、かつ前記第一方向に直交する第二方向に略沿って押圧する傾斜調整手段と、
前記第一調整端辺および前記第一基部端辺、前記第二調整端辺および前記第二基部端辺をそれぞれ連結する調整連結部と、を具備し、
前記基部は、前記第二方向に対して移動が規制された状態で前記測定装置本体に連結されており、
前記測定子は、前記傾斜調整手段により前記調整板が押圧されていない状態において、前記調整板の前記第一調整端辺および前記基部の前記第一基部端辺を含む第一傾斜面、および前記調整板の前記第二調整端辺および前記基部の前記第二基部端辺を含む第二傾斜面の交線上に配置される
ことを特徴とするアライメント調整機構。
【請求項2】
請求項1に記載のアライメント調整機構において、
前記調整連結部は、前記第一傾斜面および前記第二傾斜面に沿って配置される
ことを特徴とするアライメント調整機構。
【請求項3】
請求項2に記載のアライメント調整機構において、
前記調整連結部は、板ばねであり、前記傾斜調整手段により前記調整板が押圧されていない位置状態に前記調整板を付勢する
ことを特徴とするアライメント調整機構。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のアライメント調整機構において、
前記調整板を、当該調整板の面方向に平行で、かつ前記第二方向に略沿って押圧する第二傾斜調整手段を備え、
前記基部は、
装置本体に固定されるとともに、前記第二方向に平行となる第三基部端辺および第四基部端辺を有する基部固定部と、
前記第二方向に平行となる第五基部端辺および第六基部端辺を有するとともに、前記第一基部端辺および前記第二基部端辺を有する基部揺動部と、
前記第三基部端辺および前記第五基部端辺、前記第四基部端辺および前記第六基部端辺を連結する基部連結部と、を備え、
前記測定子は、前記傾斜調整手段および前記第二傾斜調整手段により前記調整板が押圧されていない状態において、前記第一傾斜面および第二傾斜面の交線と、前記第三基部端辺と前記第五基部端辺とを含む第三傾斜面、および前記第四基部端辺と前記第六基部端辺とを含む第四傾斜面の交線との交点上に配置される
ことを特徴とするアライメント調整機構。
【請求項5】
第一方向に沿って互いに平行となる第一調整端辺および第二調整端辺を有する調整板と、
前記調整板に一体に設けられるプローブ固定部と、
プローブ固定部に固定され、軸部、および軸部の先端に形成される測定子を有するプローブと、
測定装置本体に連結されるとともに、前記第一方向に沿って互いに平行となる第一基部端辺および第二基部端辺を有する基部と、
前記調整板を、当該調整板の面方向に平行で、かつ前記第一方向に直交する第二方向に略沿って押圧する傾斜調整手段と、
前記第一調整端辺および前記第一基部端辺、前記第二調整端辺および前記第二基部端辺をそれぞれ連結する調整連結部と、
前記測定子が被測定物に接触した際の位置を検出して、前記被測定物の形状を測定する測定手段と、を具備し、
前記基部は、前記第二方向に対して移動が規制された状態で前記測定装置本体に連結されており、
前記測定子は、前記傾斜調整手段により前記調整板が押圧されていない状態において、前記調整板の前記第一調整端辺および前記基部の前記第一基部端辺を含む第一傾斜面、および前記調整板の前記第二調整端辺および前記基部の前記第二基部端辺を含む第二傾斜面の交線上に配置される
ことを特徴とする測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−7774(P2011−7774A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62239(P2010−62239)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】