説明

アリウム属植物素材およびその製造方法

【課題】 シクロアリインが高濃度に含有されたアリウム属植物素材の製造方法を提供すること。
【解決手段】 予め加熱処理したかまたはしていないネギ、タマネギ等のアリウム属植物1をpH7以上12以下となるように調整するアルカリ処理過程P1と、得られたアルカリ処理物2を加熱処理する加熱処理過程P2を経て、シクロアリインを乾物換算で0.5重量%以上含有するアリウム属植物素材3を製造する。アルカリ処理過程P1では、塩基性アミノ酸または揮発性アルカリを用いる。アリウム属植物1は、アルカリ処理過程P1の前に破砕処理がなされていないものを用いる。加熱処理過程P2では、65℃以上で1分間以上の加熱処理条件とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアリウム属植物素材およびその製造方法に係り、特に、刺激性の由来であるイソアリインを減少させシクロアリイン含有量を高めることのできる、アリウム属植物素材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロアリインは硫黄原子を含む環状アミノ酸であり、フィブリン溶解作用、血糖低下作用、血中脂質低下作用等の生理活性を有することが知られている(非特許文献1、2)。シクロアリインは、加熱、または/およびアルカリ処理により、含硫アミノ酸イソアリインから変換されることが知られている(非特許文献3)。なおイソアリインは、タマネギの催涙成分を初めとするネギ属野菜の種々の含硫刺激成分の前駆体としても知られている。
【0003】
さて従来、タマネギ(Allium cepa L.)において、タマネギ中に高濃度に含有されるイソアリインに着目し、イソアリインからシクロアリインに変換する原理を応用した、シクロアリイン高含有タマネギエキスおよびその製造法が特許されている(特許文献1)。また、一定期間温度50〜85℃、湿度70〜95%で放置し、自己醗酵により熟成させる醗酵黒タマネギとその製造方法(特許文献2)、長期間加温貯蔵したシクロアリイン高含有ニンニクおよびその処理方法(特許文献3)が特許されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3613178号公報「環状含硫黄アミノ酸高含有タマネギエキス及びその製造方法」
【特許文献2】特許第4076229号公報「原料の生タマネギより柔らかくかつ生タマネギの当初の形状を保持する醗酵黒タマネギ及びその加工物並びにこれらの製造方法」
【特許文献3】特許第4070138号公報「加工ニンニク、およびその処理方法」
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Agarwal, R. K., Dewar, H. A., Newell, D. J. and Das, B.(1977). Controlled trial of the effect of cycloalliin on the fibrinolytic activity of venous blood. Atherosclerosis,, 27, 347-351.
【非特許文献2】Yanagita, T., Han, S. Y., Wang, Y. M., Tsuruta, Y., and Anno, T. (2003). Cycloalliin, a cyclic sulfur imino acid, reduces serum triacylglycerol in rats. Nutrition. 19, 140-143.
【非特許文献3】Ueda, Y., Tsubuku, T. and Miyajima, R. (1994). Composition of sulfur-containing components in onion and their flavor characters. Biosci. Biotech. Biochem., 58, 108-110.Biocience, Biotechnology and Biochemistry, 58, 108-110(1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて上述各特許文献開示技術は、タマネギやニンニクからシクロアリインを高濃度に含有したエキス等を得る技術である。しかし、タマネギと同じアリウム属の主要作物であるネギ(長ネギ、Allium fistulosum L.)におけるイソアリインおよびシクロアリインの含有量については特に明確となっておらず、したがって、ネギ(長ネギ。以下も同様。)を原料としてシクロアリインを高濃度に含有したネギ素材およびその製造方法については、これまでのところ知られていない。
【0007】
またタマネギ等の場合であっても、従来開示されている技術は、25日程度放置して自己醗酵で醗酵・熟成させ黒色化させる処理(特許文献2)をのぞけば、破砕処理(カット長5mm以上の切断処理以外の物理的細分化処理をいう。)を経て一定の均質化された形態を得るものである。タマネギや長ネギに施す細分化処理を切断処理程度に留めることによって、カットネギなどの形態にて元の形態を残したシクロアリイン高含有食品素材その他の素材を得る技術は、未だに提案されたことがない。
【0008】
さらに、特許文献1開示技術では、Brix70換算値で0.1%以上のシクロアリインを含有するタマネギエキスが開示されている。液体状の形態ではなく固体状の形態でシクロアリインを高度に含有した食品等素材とその製造方法は、未だに提案されたことがない。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の状況を踏まえ、従来シクロアリイン含有状態が不明であったネギにおいて、シクロアリインが高濃度に含有された素材を効率的に得る方法を編み出し、さらにその方法をタマネギにも応用して、タマネギについても従来よりシクロアリインが高濃度に含有された素材を効率的に得る方法を提供することである。
【0010】
換言すれば本発明の課題は、ネギを原料としたシクロアリインを高濃度に含有したネギ素材およびその製造方法を提供することである。また、タマネギや長ネギに施す細分化処理を切断処理程度に留めることによって、カットネギなど元の形態を固体状の形態で残した高シクロアリイン含有食品素材その他の素材およびその製造方法を提供することである。さらにいえば、ネギ、タマネギ以外のアリウム属植物にも適用可能な上記製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者は、特に破砕処理(カット長5mm以上の切断処理以外の物理的細分化処理をいう。)を加えることなく、ネギまたはタマネギにアルカリを添加し、加熱することにより刺激性の由来であるイソアリインを減少させシクロアリイン含有量を高められることを見出し、本発明の完成に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0012】
〔1〕 シクロアリインを乾物換算で0.5重量%以上含有することを特徴とする、アリウム属植物素材。
〔2〕 アルカリ処理および加熱処理を含む過程によって得られることを特徴とする、〔1〕に記載のアリウム属植物素材。
〔3〕 前記シクロアリイン含有量が1.0重量%以上であり、前記アリウム属植物がネギ(長ネギ、Allium fistulosum L.)であることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載のアリウム属植物素材。
〔4〕 前記シクロアリイン含有量が0.5重量%以上であり、前記アリウム属植物がタマネギ(Allium cepa L.)であることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載のアリウム属植物素材。
〔5〕 破砕処理(カット長5mm以上の切断処理以外の物理的細分化処理をいう。)がなされていない形態を備えていることを特徴とする、〔1〕ないし〔4〕のいずれかに記載のアリウム属植物素材。
〔6〕 予め加熱処理したかまたはしていないアリウム属植物をpH7以上12以下となるように調整するアルカリ処理過程と、同時かまたはその後の加熱処理過程とからなり、シクロアリインを乾物換算で0.5重量%以上含有するアリウム属植物素材を得る、アリウム属植物素材の製造方法。
〔7〕 前記アルカリ処理過程では、塩基性アミノ酸または揮発性アルカリの少なくとも一方を用いることを特徴とする、〔6〕に記載のアリウム属植物素材の製造方法。
【0013】
〔8〕 前記アリウム属植物はネギ(長ネギ、Allium fistulosum L.)またはタマネギ(Allium cepa L.)であることを特徴とする、〔7〕に記載のアリウム属植物素材の製造方法。
〔9〕 前記加熱処理過程では、65℃以上で1分間以上の加熱処理がなされることを特徴とする、〔7〕または〔8〕に記載のアリウム属植物素材の製造方法。
〔10〕 前記加熱処理過程では、50℃以上で加熱乾燥処理がなされることを特徴とする、〔7〕または〔8〕に記載のアリウム属植物素材の製造方法。
〔11〕 製造過程中に加熱乾燥処理またはその他の乾燥処理のなされる過程が含まれることにより、乾燥状態の素材が得られることを特徴とする、〔8〕ないし〔10〕のいずれかに記載のアリウム属植物素材の製造方法。
〔12〕 前記アリウム属植物は、前記アルカリ処理過程の前に破砕処理(カット長5mm以上の切断処理以外の物理的細分化処理をいう。)がなされていないことを特徴とする、〔6〕ないし〔11〕のいずれかに記載のアリウム属植物素材の製造方法。
〔13〕 〔6〕ないし〔12〕のいずれかに記載のアリウム属植物素材の製造方法の製造過程中に、小麦粉や調味料など製造目的に応じた所定の副原料が混合される混合過程を備え、シクロアリインを乾物換算で0.1重量%以上含有するアリウム属植物素材利用加工食品・飼料・医薬品またはその他の製品を得ることを特徴とする、アリウム属植物素材利用製品の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアリウム属植物素材およびその製造方法は上述のように構成されるため、これによれば、従来シクロアリイン含有状態が不明であったネギにおいて、シクロアリインが高濃度に含有された素材を効率的に得ることができる。さらにその方法はタマネギにも応用することができ、タマネギについても、従来よりシクロアリインが高濃度に含有された素材を効率的に得ることができる。
【0015】
つまり本発明によれば、ネギやタマネギを原料としたシクロアリインを高濃度に含有し、食品、飼料、医薬等種々の用途に利用可能な植物素材を得ることができる。特に、施す細分化処理を、アリイナーゼの作用を実質的に抑制できる切断処理程度に留めることで、カットネギなど元の形態を固体状の形態で残した高シクロアリイン含有食品素材その他の素材を得ることができる。またこの場合は、アルカリ処理過程の前にアリイナーゼ失活のための加熱処理を行う必要がない。
【0016】
また本発明によれば、シクロアリインを乾物換算で0.5重量%以上含有するネギ素材、タマネギ素材を得ることができる。特にネギ(長ネギ)の場合にはシクロアリインを乾物換算で1.0重量%以上含有する素材を得ることができる。
なお以上の各効果は特にネギおよびタマネギについて述べたが、これら同様にイソアリインを含有する他のアリウム属植物においても本発明は適用可能であり、その場合も上記各効果を得ることが期待できる。たとえばタマネギ、ネギ、ワケギ、リーキ、ニンニク、ラッキョウ、エシャロット、ツリーオニオン、アサツキ、チャイブ、ニラ、ヤグラネギ、ノビル、ギョウジャニンニク等の食用の栽培品種、ギガンチウム、クリストフィなどの園芸用の栽培品種、ギョウジャニンニク、ヒメニラ、ニラ、カンケイニラ、イトラッキョウ、キイイトラッキョウ、ミヤマラッキョウ、ノビル、ヤマラッキョウ、アサツキ、エゾネギ、ヒメエゾネギ、シブツアサツキ、シロウマアサツキ、イズアサツキ等の自生種である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のアリウム属植物素材の製造方法の構成を示すフロー図である。
【図2A】イソアリイン標品溶液成分に与える温度およびpHの効果を示すグラフである(pH5.9)。
【図2B】イソアリイン標品溶液成分に与える温度およびpHの効果を示すグラフである(pH8.9)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のアリウム属植物素材は、アルカリ処理および加熱処理を含む過程によって得られ、シクロアリインを乾物換算で0.5重量%以上含有する、高シクロアリイン含有素材であることを、主たる構成とする。アリウム属植物としてネギを用いた場合は、1.0重量%以上もの高いシクロアリイン含有量の素材を得ることができる。また、アリウム属植物としてタマネギを用いた場合は、0.5重量%以上もの高いシクロアリイン含有量の素材を得ることができる。
なお後述実施例においては、アリウム属植物のうち特にネギ(長ネギ)およびタマネギについて実施例に詳述するが、本発明はイソアリインをネギ等と同様に含有するものであれば、たとえばワケギ、リーキ、ニンニク、ラッキョウ、エシャロット、ツリーオニオン、アサツキ、チャイブ、ニラ、ヤグラネギ、ノビル、ギョウジャニンニク等の食用の栽培品種、ギガンチウム、クリストフィなどの園芸用の栽培品種、ギョウジャニンニク、ヒメニラ、ニラ、カンケイニラ、イトラッキョウ、キイイトラッキョウ、ミヤマラッキョウ、ノビル、ヤマラッキョウ、アサツキ、エゾネギ、ヒメエゾネギ、シブツアサツキ、シロウマアサツキ、イズアサツキ等の自生種など、他のアリウム属植物にも適用することができる。
【0019】
本発明アリウム属植物素材は、従来技術のように破砕処理(カット長5mm以上の切断処理以外の物理的細分化処理をいう。以下、同じ。)を経ることなく、元の植物体の形態の少なくとも一部を残した固体状の高シクロアリイン含有素材とすることができる。
【0020】
図1は、本発明のアリウム属植物素材の製造方法の構成を示すフロー図である。図示するように本方法は、予め加熱処理したかまたはしていないアリウム属植物1を、pH7以上12以下となるように調整するアルカリ処理過程P1と、それにより得られたアルカリ処理物2を加熱処理する加熱処理過程P2を経て、シクロアリインを乾物換算で0.5重量%以上含有するアリウム属植物素材3を製造するものである。
【0021】
アルカリ処理過程P1では、塩基性アミノ酸または揮発性アルカリの少なくとも一方を用いるものとすることができる。このいずれかを用いることで、より良好な植物素材3を得ることができるからである。しかしながら本発明がこれに限定されるものではなく、原料とするアリウム属植物1をpH7以上12以下となるように調整可能なものであれば、あらゆるアルカリの使用を排除しない。
【0022】
またアリウム属植物1は、アルカリ処理過程P1の前に破砕処理がなされていないものとすることができる。また、アリウム属植物としては特にネギまたはタマネギを用いることによって、シクロアリイン含量の高い植物素材3を得ることができる。
【0023】
加熱処理過程P2では、65℃以上で1分間以上の加熱処理条件とすることができる。なお加熱処理条件は、80℃以上で1分間以上としてもよい。また、これと同等の効果をより低い温度で得るには、たとえば70℃以上で10分間以上の加熱処理条件としてもよい。いずれにせよ、「65℃以上で1分間以上の加熱処理条件」を満たすことが望ましい。あるいはまた、50℃以上で加熱乾燥処理を行うものとすることもできる。これらの加熱処理条件によって、より良好な植物素材3を得ることができるからである。しかしながら他の条件とすることも、本発明からは除外されない。なお製造過程中に、加熱乾燥処理またはその他の乾燥処理のなされる過程(図示せず)が含まれることによって、植物素材3として乾燥状態の素材を得ることができる。
【0024】
また、製造過程中の適した段階に、小麦粉や調味料など製造目的に応じた所定の副原料が混合される混合過程(図示せず)を設けることによって、シクロアリインを乾物換算で0.1重量%以上含有するアリウム属植物素材利用加工食品・飼料・医薬品またはその他の製品を得ることも可能である。
【0025】
本発明の製造方法に基づき、ネギまたはタマネギを原料として、たとえば次のような具体的な方法によって、高いシクロアリイン含有量の植物素材を得ることができる。
<1>生ネギにpH7〜12となるようにアルカリを加え、65〜100℃で1〜30分間加熱して、植物素材を得る(なお本願においては、「A〜B」は「A以上B以下」の意とする。以下同様。)。
<2>生ネギにpH7〜12となるように塩基性アミノ酸か揮発性アルカリの少なくともいずれか一方を加え、65〜100℃で1〜30分間加熱したものを乾燥して、乾燥植物素材を得る。
<3>生タマネギにpH7〜12となるように塩基性アミノ酸か揮発性アルカリの少なくともいずれか一方を加え、65〜100℃で1〜30分間加熱したものを乾燥して、乾燥植物素材を得る。
<4>生ネギおよび生タマネギにpH7〜12となるように塩基性アミノ酸か揮発性アルカリの少なくともいずれか一方を加え、65〜100℃で1〜30分間加熱したものを乾燥して、ネギ・タマネギ複合乾燥植物素材を得る。
【0026】
<5>加熱後のネギにpH7〜12となるように塩基性アミノ酸か揮発性アルカリの少なくともいずれか一方を加え、65〜100℃で1〜30分間加熱して、植物素材を得る。
<6>加熱後のタマネギにpH7〜12となるように塩基性アミノ酸か揮発性アルカリの少なくともいずれか一方を加え、65〜100℃で1〜30分間加熱して、植物素材を得る。
<7>加熱後のネギおよびタマネギにpH7〜12となるように塩基性アミノ酸か揮発性アルカリの少なくともいずれか一方を加え、65〜100℃で1〜30分間加熱して、ネギ・タマネギ複合植物素材を得る。
【0027】
<8>生ネギにpH7〜12となるように塩基性アミノ酸か揮発性アルカリの少なくともいずれか一方を加え、50〜200℃で加熱乾燥して、乾燥植物素材を得る。
<9>生タマネギにpH7〜12となるように塩基性アミノ酸か揮発性アルカリの少なくともいずれか一方を加え、50〜200℃で加熱乾燥して、乾燥植物素材を得る。
<10>生ネギおよび生タマネギにpH7〜12となるように塩基性アミノ酸か揮発性アルカリの少なくともいずれか一方を加え、50〜200℃で加熱乾燥して、ネギ・タマネギ複合乾燥植物素材を得る。
【0028】
<11>加熱後のネギにpH7〜12となるように塩基性アミノ酸か揮発性アルカリの少なくともいずれか一方を加え、50〜200℃で加熱乾燥して、乾燥植物素材を得る。
<12>加熱後のタマネギにpH7〜12となるように塩基性アミノ酸か揮発性アルカリの少なくともいずれか一方を加え、50〜200℃で加熱乾燥して、乾燥植物素材を得る。
<13>加熱後のネギおよびタマネギにpH7〜12となるように塩基性アミノ酸か揮発性アルカリの少なくともいずれか一方を加え、50〜200℃で加熱乾燥して、ネギ・タマネギ複合乾燥植物素材を得る。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例によってさらに説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。なお、本発明完成の研究過程において行った複数の実験例と参考的実験の例である参考例、およびそれらから得られた成果たる種々の発案を踏まえてより実用性を備えたものとして着想された発明に係る複数の実施例を、それぞれ詳述する。なおまた、特に記さない限り、実施例中で表記される「%」は「重量%」である。
【0030】
〔実験例1〕 材料ネギ(生ネギ)および処理済みネギ(加工ネギ)中の成分含有量評価
本研究を通じて、生ネギ等の多水分の試料は凍結乾燥後粉砕した粉末試料、乾燥品等の低水分系試料はそのまま粉砕して粉末試料とし、粉末試料について分析評価した。分析評価は、陽イオン交換カラムを用いたHPLC法(後述参考文献1)により、粉末試料中の含有量を測定し、別に105℃減量法により測定した粉末試料中水分値により、乾物換算%として算出した。
【0031】
生の多水分試料を凍結乾燥粉末化して分析材料としたのは、試料の取扱い易さを考慮したためであるが、本実験例でその妥当性について検討した。本検定材料としては、同一個体から、成分的に同等の複数の分析試料を得るためにタマネギを使用した。
一個のタマネギ(北海道産)の表皮を剥き、同心円上に垂直に8分割した。得られた8片は、同一個体の相当部位であることから、成分的に同等と考えられる。このうち3片を生材料としての成分分析、3片を凍結乾燥後粉末化した試料の成分分析、残り2片を生材料(多水分試料)の水分測定用とした。生試料の分析結果と凍結乾燥粉末試料の分析結果について、両者の比較を容易にするため乾物換算値として、表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表1に示すように、凍結乾燥前の生試料と凍結乾燥した試料粉末の分析結果は、特に本発明の目的成分であるシクロアリインの分析結果について、本明細書で述べる諸事項の結果に影響を与える程度の差を示さなかった。すなわち、略同等であった。本実験の目的は、凍結乾燥によって、本発明に関連するイソアリイン、シクロアリインの分析値に差が生じるか否かを明らかにすることであったから、この2成分およびイソアリイン分解酵素(アリイナーゼ、EC 4.4.1.4)を含有するネギについても、本実験結果を準用できる。このことから、以下同様に分析評価を実施した。
<参考文献1 山崎賀久, 徳永隆司,奥野智旦(2005), ニンニク中のフレーバ前駆体,S-アルケニルシステイン誘導体,のHPLC分析, 日本食品科学工学会誌, 52, 160-166.>
【0034】
〔実験例2〕細断程度と放置後の成分含有量
本発明の目的成分であるシクロアリインは、イソアリインから変換されるものとされている(非特許文献3、参考文献2)。さらに、このイソアリインは組織が破砕処理された際に、イソアリインとは別の組織に存在する酵素アリイナーゼと接触し、その作用で分解・減少するとされている(参考文献1)。このため当然に、細断程度が強くなるほど、すなわちイソアリインとアリイナーゼの接触程度が多くなるほど、イソアリインの減少程度は大きくなるものと推定される。そこで、原料の細断程度について検討した。
<参考文献2 Ichikawa, M., Ide, N. and Ono, K. (2006). Changes in organosulfur compounds in garlic cloves during storage. Journal of Agricultural and Food Chemistry, 54, 4849-4854. >
【0035】
実験例1と同様に、成分組成および酵素活性が同一の実験材料が得られることから、本実験例でも実験材料としてタマネギを使用した。一個のタマネギ(北海道産)の表皮を剥き、同心円上に垂直に4分割した。このうち1片は、切断直後にばらすことなく凍結し、凍結乾燥した(カットなしタマネギ相当)。1片はさらに垂直に4分割した後水平方向に2分割し手でバラバラにした(1/32分割タマネギ)。残りの4分割タマネギの1片はみじん切り(3mm角程度)に、1片は家庭用ミキサーにてペースト状とした。このようにして得られた、'1/32分割タマネギ'、'みじん切りタマネギ'、'タマネギペースト'は、平皿の上に置き、室温下に3時間放置しアリイナーゼを作用させた後凍結し、凍結乾燥した。得られた凍結乾燥試料4点について実験例1と同様に分析した結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
表2に示すように、アリイナーゼの作用によって、みじん切りまで細かくした試料でイソアリイン含有量低下が顕著となり、さらにペースト状態まで極細かくした場合には、イソアリインが残存しない結果であった。このことから、イソアリインの加熱結果として得られる目的成分シクロアリインの収量が高まらず、みじん切りやペースト状になるまで破砕処理する場合は、処理前に加熱失活等によってアリイナーゼの作用を抑えなくては、本発明の目的を達成できないことが判明した。
【0038】
一方、1/4カットと1/32カットの差異が極僅かであることから、本発明の目的であるシクロアリインを高収率で得ることに関しては、アリイナーゼの作用について、少なくとも1/32カット・室温・3時間程度の条件であれば、アリイナーゼの作用を実用上無視できることが判明した。
【0039】
特に1/4カットは、非破壊の生タマネギを想定しアリイナーゼの作用を最低限にするため、カット後直ちに冷凍処理したが、1/32カットとの間に差異が認められないことから、1/32カット相当より大きいサイズにカットし、カット直後に冷凍した凍結乾燥試料であれば、実験例1の結果と併せて、非破壊の生タマネギと略同等とみなしてよいことが示された。
【0040】
〔実験例3〕 材料ネギ(生ネギ)のカットサイズ効果
実験例1および2の結果を踏まえ、ネギについて、カットサイズが加熱処理効果(シクロアリイン収量)に与える影響について検討した。実験は、ほぼ同等の太さ(直径約1.5cm、青森県産)のネギの軟白部分を所定の長さにカットし、2.5時間室温下に放置後各々200gを真空包装(古川製作所製、FVC−II型)し、スチームヒータで95℃、90分間加熱することにより行った。加熱処理済み試料は流水で冷却、凍結、凍結乾燥した後粉末として、上述の方法で分析した。結果を表3に示す。
【0041】
【表3】

【0042】
まず、生ネギ中のイソアリイン含有量は乾物換算で3.43%であり、実験例1および2で示されたタマネギ中の含有量より高かった。したがって、ネギはシクロアリインを得るための素材として好適であると考えられた。実際、表3に示したように、加熱処理によって乾物換算で1.3%以上のシクロアリインが得られることが判明した。
【0043】
生カットネギ中のイソアリインは、実験例2の生タマネギ同様破砕処理によってアリイナーゼの作用により減少するものと推定された。また、表3の結果から、ネギの細断程度に関しても、カット長5mmの試料とカット長100mmの試料の加熱処理後のシクロアリインおよびイソアリイン2成分の含有量は略同等であった。すなわち、みじん切りのように細かくなく少なくともカット長が5mm以上ある場合には、カット後2時間半以内であれば、ネギの場合もタマネギ同様、アリイナーゼの作用によるシクロアリインの減収を実用上無視できると判明した。
【0044】
〔参考例1〕 従来のネギ調理・加工品中の成分含有量
特許文献1によってタマネギの加熱効果の概要は判明している。しかしネギについては関連する知見が見あたらなかった。そこで、家庭や飲食店等での汁物・鍋物などの一般的な調理を想定したカットネギ(約2cm長、以下同じ。)の加熱(蒸煮)試験を実施した。ネギ(青森県産)をカットし、よく混合した上で、約100gずつを真空包装し、98℃に設定したスチームオーブン(FMI製 OD−10.10M(P)型)で加熱し、所定時間経過後に順次抜き取り、流水で冷却した後凍結乾燥した。一連の凍結乾燥試料を実験例1と同様に分析した結果を、表4に示す。
【0045】
【表4】

【0046】
ここで、実験材料を真空包装して加熱処理したのは、水煮した場合の水に溶出した成分回収や処理済み試料の経時的抜取りなどの、実験実施上の便を考えたためである。真空包装試料の加熱の妥当性を検討するため、ネギを包装したものと同一の真空包装用袋に、ネギの代わりに水100gを封入し、ネギと同時に加熱して、その水温を測定することにより、処理中のネギの品温の参考値とした。その温度経過は、開始時(24℃)、1分後(29℃)、2分後(66℃)、3分後(84℃)、4分後(93℃)、5分後(95℃)となり、以後96℃程度で安定し、バラ状態のカットネギを鍋等の開放系で蒸煮するのとほぼ同等と考えられた。このため、以下の試験例でも適宜真空包装材料の加熱試験を実施している。
【0047】
表4に示すとおり、ネギのシクロアリイン含有量は、生相当(蒸煮前)では0.20%だったものが、60分間の蒸煮時には1.43%となっており、蒸煮時間とともに増加することがわかった。また同時に、シクロアリインの前駆体であるイソアリインの含有量は、生の4.24%から60分間の蒸煮時の0.76%に減少した。この結果から、ネギを蒸煮していくにしたがって、イソアリインからシクロアリインへ成分が変換し、蒸煮30分間以上を行ったネギではシクロアリイン含有量が生の数倍に高まることが明らかとなった。
【0048】
蒸煮30分間以上のネギは、鍋物やスープ等でクタクタに軟らかくなったネギに相当するものであり、それ自体特段目新しいものではなく、人類がネギを蒸煮して食べることを始めたときから、その生理活性について無意識のままシクロアリインを摂取してきたといえる。また換言すれば、人類の食の歴史により、本発明成果品の安全性が証明されるものであるともいえる。ただし、30分間以上蒸煮したネギは緑色が退色し外見が悪くなること、軟化して食感が悪くなることなど、食品としての品質は劣ることとなった。
【0049】
〔参考例2〕 ネギとタマネギの加熱効果の差異
以上述べたように、ネギにおいてシクロアリイン増加(強化)処理が有望であることが判明したことから、タマネギについても同様に適合するか否かについて、両者同時処理により検討した。まず、生ネギ(青森県県産)は約2cm長にカットしたものを100gずつ真空包装し、生タマネギ(北海道産)は垂直に6分割したものを手でバラバラにして100gずつ真空包装し、両者同時に95℃設定のスチームオーブンにて所定の加熱処理をした。加熱終了後流水で冷却し、凍結乾燥後、上述の分析方法で分析した。その結果を表5に示す。これによれば、加熱前のイソアリイン含有量に違いがあるため、処理により得られるシクロアリイン含有量にはネギとタマネギ間で差が生じたが、両者はほぼ同様に考えてよいことを再確認できた。つまり、シクロアリイン増加(強化)処理は、タマネギについても同様に有望であることが判明した。
【0050】
【表5】

【0051】
〔参考例3〕 従来のネギ加工食品中の成分含有量
次に、食品加工業での食品製造を想定した処理を実施した。ネギは土壌由来の微生物が多いことと、組織内のpHが弱酸性域であることから、通常実施される湯や蒸気を使用した100℃以下の加熱殺菌では完全な殺菌は期待できない。このため従来より、ネギの加工食品としては、原料ネギの水分含有量を減少させて微生物の生育を抑えることによって保存性を高めた加工食品、いわゆる乾燥ネギが主体である。
【0052】
野菜の乾燥方法としては、野菜に直接温風をあてて乾燥する温風乾燥が、設備費用等が少ないために最も一般的である。また、粉末やフレークなど乾燥後の形状が問題とならない場合には、被乾燥品を一旦ペースト状などの流動体にした上で熱板上に皮膜状に延ばして乾燥するドラム乾燥を初めとする、皮膜乾燥も実施されている。また食品加工においては、野菜全般に共通することだが、軟化・変色等の品質低下の要因となる酵素を失活させその後の品質低下を防ぐ目的で、主処理に先立ち野菜組織の軟化が実用上問題にならない程度の短時間(数分間以内)の蒸煮前処理(広義のブランチング、以下、本処理をブランチングという。)をすることも多い。
【0053】
以上のことを踏まえ、食品製造業でのネギの加工例として、下記に示す条件で、ブランチングを実施しないカットネギの温風乾燥、ブランチングを実施したカットネギの温風乾燥について試験を実施した。温風乾燥試験は、乾燥機としてヤマト科学製DNF64を使用し、各処理試験材料200g、乾燥条件80℃・11時間で実施した。乾燥済み試料を粉砕後、上述の方法にて分析した。分析結果を表6に示す。
【0054】
【表6】

【0055】
表6中の処理記号gは、ブランチングを実施せず温風乾燥機で乾燥しただけの最も簡易な温風乾燥カットネギを想定した処理である。本処理のような簡易乾燥法においても、乾燥前のカットネギの0.20%(f)に比較し、シクロアリイン含有量が0.70%(g)に増加していることが認められた。さらに、ブランチング(98℃、5分間)を実施した後同様に温風乾燥したものでは、1.07%に増加しており(i)、シクロアリイン含有量に対するブランチング効果が認められた。
【0056】
得られた温風乾燥ネギは、ブランチングの有無に関わらず褐変が進行し、食品としての外見品質は劣った。表6に示す各乾燥処理の中で、処理記号hで示したブランチング後凍結乾燥したカットネギは、乾燥品の品質が他の乾燥法に比較して優れており、現在、市販乾燥ネギの主流となっているものである。ただし、本乾燥ネギ(h)はブランチング以外には加熱処理がなされていないことから、他の乾燥法と比較して、成分的には残存するイソアリイン含有量が高く、シクロアリイン含有量が極低い結果であった。
【0057】
〔参考例4〕 その他のネギ加工食品中の成分含有量
参考例3に述べたとおり、ネギに付着する微生物は100℃以下では完全に殺菌されない。このため、食品製造業等で対応可能な100℃以上の温度で加熱する殺菌方法である加圧殺菌(レトルト殺菌)を実施し、この処理に伴うカットネギ中のシクロアリイン含有量変化について検討した。加圧殺菌は、生カットネギ(茨城県産)200gを真空包装し、レトルト殺菌機(平山製作所、HLM−36型)を使用し所定条件で処理した。処理の終了した試料は凍結乾燥し、上述の方法で分析した。分析結果を表7に示す。
【0058】
【表7】

【0059】
表7によれば、110℃以上の条件では、短時間であってもシクロアリイン含有量を高めることが可能であると認められる。ただしレトルト処理実施後のネギは、いずれも茶色く変色して組織が極軟らかくなっており、一般健常者向けの食品としては不適当と判断された。
【0060】
〔参考例5〕 生ネギの部位別成分含有量
以上、これまでの参考例で検討してきたとおり、ネギは、温風乾燥では製品の褐変、レトルト処理では製品の軟化により食品としての商品価値は低くなるものの、医薬品や健康増進食品、飼料等の原料としては有効に使用可能である。特に、収穫されたネギは、出荷のため葉先端部が切除され、一般に60cm程度の長さに調製される。この場合、60cmより先端の葉身分は通常廃棄される。このため、調製によりどの程度が廃棄されるのか、先端部を切除されていない生ネギについて、部位別に、重量、シクロアリインおよびイソアリインの含有量を調査、検討した。
【0061】
調査は、生ネギ(青森県産)を根際から15cmずつ切断し、生重量を測定し、3cm長程度にカットし、一部を生水分測定用、一部を凍結乾燥粉末の成分分析用に供した。成分分析は、上述の方法にて実施した。調査結果を表8に示す。
【0062】
【表8】

【0063】
表8に示すように、廃棄される部分が生重量比で全体の1割強を占め、シクロアリインおよびイソアリインも、出荷部分(0−60cm)よりは少ないものの、相当量含有されていることが判明した。このことから、従来廃棄されている部分を下記本発明のように処理し、シクロアリイン含有量を高めることができれば、シクロアリイン素材として有効に利用することができ、廃棄手数・経費の削減と相まって、その産業的な価値は極めて大きいといえる。
【0064】
〔参考例6〕 アルカリ処理がシクロアリイン収量に与える効果
これまでの参考例で検討してきたとおり、生ネギや生タマネギから加熱のみによってシクロアリイン高含有ネギ素材を得ようとする場合、所要処理時間を数十分間以上と長くすることが必要であるが、それによって処理後のネギは変色や軟化などが発生し、食品としての品質を低下させる結果となる。したがって加熱処理時間をより短時間(数分間程度)とすることが可能な処理方法が望まれる。ところでシクロアリインについては、アルカリ性域においてイソアリインからの変換が促進されることが報告(非特許文献3)されている。そこで、アルカリ処理がカットネギの成分含有量に与える実用的効果について検討した。
【0065】
試験は、カット生ネギ(青森県産)をスチームオーブンで95℃、5分間ブランチングした後、同重量の水を加えカッターミキサー(愛豊鉄鋼製、MX−44)でペースト状とし、このペーストにアルカリを添加してpHを7.9〜9.9の範囲に調整した。このpH調整済ペーストをそれぞれ200gずつ袋詰めし、上述の方法同様スチームオーブンで95℃、5分間加熱し、水冷後塩酸で中和後、凍結乾燥試料について上述の成分分析を実施した。分析結果を表9に示す。
【0066】
【表9】

【0067】
その結果、表9に示すとおり、本来の弱酸性域(pH6程度)よりpHが高い場合には、5分間の加熱だけでシクロアリイン含有量が顕著に高まることが明らかとなった。さらに、より高収率をもたらす至適pHはpH9程度であることも判明した。
【0068】
〔参考例7〕 アルカリ・加熱処理がイソアリインからのシクロアリイン生成反応に与える効果
生ネギや生タマネギ中には、アミノ酸と反応(アミノカルボニル反応)する糖分など、イソアリインやシクロアリインと反応する別成分の存在もあり得ることから、後述する実施例に先立って、精製したイソアリイン標品を用いたモデル試験を、参考例として実施した。
【0069】
タマネギから精製単離したイソアリイン標品の水溶液(4g/L相当)を0.2Mリン酸カリウム溶液(pH=5.9または8.9)と同容量混合した(以下、各々pH6液、pH9液という)。pH6液は、生ネギ、生タマネギ中のpHおよびイソアリイン濃度にほぼ相当する。pH6液は25℃および90℃、pH9液は25℃、40℃、65℃および90℃の条件下に置き、イソアリインおよびシクロアリイン濃度を上述のHPLC法で経時的に分析した。25℃および40℃は、分析機の自動試料注入機(Waters製、717plus)の温度設定で、65℃および90℃は、ブロックヒータ(太洋製、TAH−1B)の温度設定で、それぞれ実施した。
【0070】
図2A、2Bは、イソアリイン標品溶液成分に与える温度およびpHの効果を示すグラフである(図2AはpH5.9、図2BはpH8.9)。なお、pH9液のイソアリインの消長については、本発明の目的成分ではないこと、pH6液同様シクロアリインと反比例的に減少すること、および図が煩雑になることから割愛した。
【0071】
図2Aに示されるとおり、pH6液(生ネギに相当)では、イソアリインからシクロアリインへの変換が室温下(25℃)では進行せず、加熱することによって本変換が進行し、変換が終了するまで90℃で2時間程度必要であることが判明した。一方、pH9液では、室温下(25℃)でも徐々に反応が進行し、90℃では15分間程度で変換反応が完了することが判明した。すなわち、アルカリによる反応促進効果が明らかとなった。
【0072】
また、25℃と90℃の中間である50〜60℃の温度帯においても、90℃よりは反応の進行は遅いものの数時間程度の実用的な処理時間でシクロアリインの蓄積量が最大値に到達すると推定された。これは、アルカリ処理を実施した生ネギや生タマネギを、組織が軟化しない温度帯で必要時間加温処理すれば、略生状態でシクロアリインを高濃度に蓄積させることができることを意味する。また同時に、アリイナーゼ活性の残存程度に関わらず、刺激成分の前駆体でもあるイソアリイン含有量を極少水準にすることができ、刺激性のほとんどない、加工ネギや加工タマネギの創出が可能なことも意味するものである。
【0073】
〔実験例・参考例の要約と発明の着眼点〕
上記の実験例および参考例により、ネギおよびタマネギにはイソアリインが高濃度に含有され、ネギを加熱することによって、イソアリインから血栓予防効果等の生理活性が報告されているシクロアリインへの変換が促進され、シクロアリイン含有量が加熱前の数倍にまで蓄積することが、初めて明らかとなった。
【0074】
タマネギの加熱については既に従来例(特許文献1)があることから、まずネギで検討することとした。充分なシクロアリインを得るために長時間(90℃以上で、30分間以上)の加熱を実施した場合、処理後のネギは変色・軟化により食品としての品質は劣化する。品質の確保が可能な時間内にシクロアリイン高含有ネギを得、加熱を完了するためには、アルカリ処理が有効であることも判明した。
【0075】
アルカリ処理については、タマネギにおいても有効であるとされているが、従来技術においては、アルカリ処理を実施して所定のシクロアリイン量を確保した後に、酸で中和するか、あるいは酸性化処理を行うこととしている。そして、この酸による中和処理を前提として、アルカリ剤は比較的任意に選択できるものともしている(特許文献1)。
【0076】
本願発明者は、これまで不明であったネギ中のイソアリイン含有量について、タマネギと比較して劣らない含有量を示すことに着目し、タマネギと比較しつつ、イソアリインを効率的にシクロアリインに変換することで健康増進効果が高く産業的にも有益なネギ素材の開発を試みた。この過程で、ネギについてのみならずタマネギについても有用な、新規な技術・発明を完成するに至った。
【0077】
まず、ネギについてもタマネギ(非特許文献3)同様、アルカリおよび加熱処理は極めて有効であった。ただし、タマネギについての従来技術では上述のように、アルカリ処理後の煩雑な中和処理を必要としており、これを省略することができれば産業上有益であると考えられる。
【0078】
さらに着眼されたことは、タマネギから搾汁し、その搾汁液を濃縮することが要件である先行技術(特許文献1)では、搾汁効率を高めるためにタマネギを破砕してしまうことから、原形をとどめることができない。しかし使用方法によっては、汁物の具などカット状態の形態を残すことがより望ましい場合も多い。カット状のネギやタマネギの組織にアルカリを浸透させることは、減圧下アルカリ溶液に浸積するなどの方法によって比較的容易に行えるが、浸透させたアルカリをカットした原形をとどめたまま酸で中和することは極めて困難である。つまり、中和処理の省略ではなく、中和困難な場合における対応方法も課題としてあげられる。
【0079】
本願発明者は、このような課題を解決するために種々の研究を重ねてきた。そして、得られた多くの発案の中から実用性の高い方法として、
○「アンモニア(水)等の揮発性アルカリ剤を使用する方法」と、
○「アルギニン等の人体をも構成する塩基性アミノ酸を使用する方法」を完成させるに至ったものである。これは、アルカリ処理後の酸による中和(酸性化)処理の必要がなく、ネギにとっては全く新規な解決手段であり、タマネギにとっても従来技術より優れた解決手段である。
【0080】
以下、実施例によりその詳細を説明する。なお以下の実施例では、本発明の要件でない小麦粉や調味料等の食品素材は混合していないが、本発明は、その他の食品素材混合の有無およびその種類等に限定されるものではない。具体的には、アルカリ添加によるpHと加熱条件が所定の範囲内であることが重要である。
【0081】
〔実施例1〕 ネギの揮発性アルカリ剤処理によるシクロアリイン含有量変化
アルカリ処理する場合、原理的にはアンモニア(気体でも、水溶液でも可)を初めとする揮発性アルカリ剤を使用し、シクロアリイン増加を確実にするために加熱(乾燥)処理を実施すれば、加熱により揮発性アルカリ剤は揮発してしまい、処理後のネギ素材には残存しないものと考えられた。
【0082】
これを実証するために、ペースト状の素材を加熱しながら最終的には板海苔状の乾燥品を得ることのできるホットプレートを、加熱装置として採用した。カット生ネギ(青森県産)をスチームオーブンで95℃・5分間ブランチングしてアリイナーゼを失活させた後、同重量の加水をした上でカッターミキサー(愛豊鉄鋼製、MX−44)を用いてペースト状態にしたネギ素材を一旦室温まで放冷し、そのペーストに適宜アンモニア水を加え、pH水準の異なるアルカリ性ペーストを調製した。このペースト50mLを家庭用焼き肉ホットプレート(象印製、1350W、温度設定160℃(実測値))に広げ入れ、板海苔状まで加熱・乾燥した(所要時間:約5分間)。得られた乾燥品は粉砕機で粉砕し、pH未調整の未乾燥試料は凍結乾燥して粉砕し、上述の分析法で分析した。分析結果を表10に示す
【0083】
【表10】

【0084】
得られた乾燥品は、いずれのpH水準のものも、処理中にアンモニアが揮発してしまい、官能的にはアンモニアの残存は知覚できなかった。表10に示すとおり、成分的には、調整したpHが高いほどシクロアリイン収量は高まり、pH≧7.9で所定のイソアリインを含有する乾燥素材となった。一方、シクロアリインの前駆体であるイソアリインはpH未調整のpH=6.0の場合、未加熱とホットプレート加熱で比較すると、加熱により極端に減少しており、シクロアリイン含有量があまり高まっていないこととも併せ、ホットプレート加熱・乾燥においてはアルカリ調整が必須という結果であった。
【0085】
〔実施例2〕 ネギペーストのアンモニアpH調整とドラム乾燥効果
次に、より効率的な乾燥(アンモニア除去)を目的として、ドラムドライヤーによる皮膜乾燥を実施した。カット生ネギ(青森県産)をスチームオーブンで95℃・5分間ブランチングしてアリイナーゼを失活させた後、直ちに半重量の加水をしてカッターミキサーでペースト状態にし、そのペーストを1.5kgずつステンレスボールに小分けして、個々に適宜アンモニア水を加え、pH水準の異なるアルカリ性ペーストを調製した。品温が冷める前のペーストをアルカリ性にし、反応時間をとることによって、乾燥前にシクロアリインへの変換を促進することを目的として、本ペーストを室温下で2.5時間静置した(2.5時間の品温推移:約50℃→約35℃)。静置の終了したペーストをドラムドライヤー(ジョンソンボイラー製、JM−T−P)で、クリアランス0.2mm、ドラム温度130℃、ドラム回転2.5rpmの条件にて乾燥した。得られた乾燥品は粉砕機で粉砕し、原料カットネギおよびpH未調整の未乾燥ペーストは凍結乾燥して粉砕し、上述の分析法で分析した。分析結果を表11に示す。
【0086】
【表11】

【0087】
この間、乾燥工程で揮発するアンモニアは、pH<9.2のペースト乾燥時にはあまり強く感じなかった不快臭が、pH=9.8に調整したペーストの乾燥時に独特の不快臭が強く感じられた。したがって安全を考慮すると、pH>9に調整する際には換気設備が必要と考えられた。得られた乾燥品については、いずれのpH水準のものも処理中にアンモニアが揮発してしまい、官能的にはアンモニアの残存は知覚できなかった。
【0088】
表11に示されるとおり、成分的には、調整したpHが高いほどシクロアリイン収量は高まり、pH≧7.8で所定のシクロアリインを含有する乾燥素材となった。一方、シクロアリインの前駆体であるイソアリインは、pH=5.9の場合の未加熱と加熱乾燥品で比較すると、加熱により極端に減少しており、シクロアリイン含有量に変化がないこととも併せ、ドラムドライにおいてはアルカリ調整が必須という結果であった。この理由は、参考例7の結果も考慮すると、ドラムドライの場合、被乾燥品の加熱時間が数十秒であるため、イソアリインからシクロアリインへ変換するのには短時間過ぎるためと判断された。
【0089】
本実施例で得られた乾燥ネギ素材は、茶色く変色し、食品そのものとしては総合的に見て品質が充分に高いものであるとはいえない。ただし参考例5に示したように、出荷調整時の廃棄部分や規格外品を比較的低価格の材料として適用すれば、アルカリ剤としてアンモニアは比較的安価であること、ドラムドライヤー等の皮膜乾燥装置はランニングコストが低く処理能力が高い等の利点があることと相まって、医薬品や健康増進食品等の原料としては有効に使用可能である。さらに、ネギ類特有の辛みの原因であるイソアリインがシクロアリインへの変換で減少しているとともに、アリイナーゼが加熱により失活していることから、刺激性が極弱で飼料用としても有望である。したがって、産業上の利用価値は極めて大きいものであると結論される。
【0090】
〔実施例3〕 生ネギのpH調整によるアリイナーゼ活性抑制効果
実施例1および2の応用例として、生ネギのpH調整によるアリイナーゼ活性抑制効果について検討した。ニンニクのアリイナーゼについてはpH>9.5で酵素活性がほぼ抑制されることが報告されている(参考文献3)。一方、これまで検討してきたように、シクロアリインを高収率で得るためには、ネギペーストをアルカリ調整することが効果的である。したがって、生ネギのペースト化の際に同時にアルカリを添加してpH>9.5とすることによって、アリイナーゼの活性を抑制でき、かつ、酵素活性によるイソアリインの消失を防止することができる。このpH>9.5の状態で生ペーストを加温してシクロアリインを充分蓄積した後に中和すれば、その後にアリイナーゼの活性が戻ったとしても何ら問題はない。
<参考文献3 Stoll, A. and Seebeck, E. (1951). Chemical investigations on alliin, the specific principle of garlic. Advan. Enzymol., 11, 377-400.>
【0091】
また、実施例1および2のようにアルカリとしてアンモニアを採用すれば、加熱乾燥により、中和することなくアルカリを除去可能である。つまり、生ネギのペースト化時に同時にアルカリを添加してpH>9.5とすれば、ブランチング処理を省略でき、より簡便にシクロアリイン素材の製造が可能となる。以下、詳細に説明する。
【0092】
カット生ネギ(青森県産、約3.5kg)に半重量の水および52mLのアンモニア水を加え、カッターミキサーで5分間処理してペースト状態にした(pH=9.7)。同様に、垂直に1/8にカットした生タマネギ(北海道産、約3.3kg)に半重量の水および55mLのアンモニア水を加え、カッターミキサーで5分間処理してペースト状態にした(pH=9.6)。ネギペースト、タマネギペーストを各1kgずつ2袋、耐熱性プラスチック袋に封入し、この計4袋を約95℃の湯約50Lで30分間湯煎した(最終品温:約78℃)。袋詰めしないペーストは室温下に30分間放置した(品温:約18℃)。ネギおよびタマネギの、無加温および加温(湯煎)ペースト計4材料をドラムドライヤーで乾燥した後、粉末とした。なお、装置および運転条件は、実施例2と同様に行った。無処理のカットネギおよびカットタマネギは凍結乾燥粉末とし、これらの粉末試料を上述のように分析した。分析結果を表12に示す。
【0093】
【表12】

【0094】
表12に示されるとおり、生ネギおよび生タマネギともペースト化する際にアルカリ添加によりpH≧9.5であれば、ペースト中のアリイナーゼの活性が抑制されることによりイソアリインが残存し、そのペーストをドラムドライで処理した乾燥品のシクロアリイン含有量が高まることが明らかである。表12において、ドラムドライ処理品のシクロアリイン含有量からみたペースト化時のアルカリ添加効果が生ネギと生タマネギにおいて異なるのは、ネギとタマネギのアリイナーゼの作用pH範囲が多少異なるためと考えられる。
【0095】
本実施例の条件により、タマネギにおいては充分な効果が得られる。一方ネギについても一定の効果が得られるが、さらにアルカリ添加量を増やし、たとえばpH=10とするなどより高いpH条件とすることによって、より望ましい効果が得られる。また、ドラムドライ処理前に加熱し、ペースト中のシクロアリインをあらかじめ高めておく前処理方法についても、表12に示したとおり、ネギとタマネギの両方でその効果が確認された。
【0096】
〔実施例4〕 ネギの塩基性アミノ酸処理によるシクロアリイン含有量変化
食品をアルカリ処理する場合、アルギニン等の塩基性アミノ酸を使用すれば、これらは人体を構成するアミノ酸でもあることから、処理後に塩基性アミノ酸が食品中に残存したとしても、何ら問題とはならない。むしろアミノ酸は、栄養面その他人体に種々の好影響を与えるものであるから、その含有量を高めることは食品において望ましい。特に、カット形状を残したままの製品とする際には、アルカリ処理後に酸による中和処理が困難であることから、塩基性アミノ酸による処理方法の意義・有用性が一層高いものと考えられる。本実施例では、塩基性アミノ酸添加がカットネギのシクロアリイン含有量に与える効果について検討した。
【0097】
カットネギ(青森県産)100gと0〜2%(w/v)のアルギニン水溶液を100g入れ真空包装した。この真空包装済みの袋を95℃設定のスチームオーブンで3〜10分間加熱後水冷し、袋内容物を全量ミキサーにかけてペースト化したものを凍結乾燥し、上述の方法で成分分析を実施した。分析結果を表13に示す。なお、参考のため凍結乾燥前の試料ペーストのpH値を表13に付した。
【0098】
【表13】

【0099】
表13に示されるとおり、添加アルギニン濃度0.5%の場合でも、5分間の加熱でシクロアリイン含有量を処理前の4倍以上に増加させることができた。また、添加アルギニン濃度2%の場合では、3分間の加熱で同様の含有量とすることができた。なお、本試験において添加アルギニン濃度は、製品の味に影響を与えない0.5〜2%の範囲に設定した。また加熱時間は、野菜等で酵素失活のために実施するブランチングを想定し、3〜10分間に設定した。短時間で加熱を完了しているため、処理後のカットネギは外見・食感とも処理前に近く、そのままでも鍋物等の調理に活用でき、また、凍結乾燥することにより従来と同等の高品質な凍結乾燥カットネギとすることができるものだった。本実施例で得たカットネギを実際に凍結乾燥して味噌汁の具として試食したところ、数名による達観評価において、アルギニン無添加のネギと2%アルギニンを添加したネギとの間に差異が全く認められない結果であった。
【0100】
なお、本実施例において塩基性アミノ酸としてアルギニンを使用しているが、添加分が残存しても人体に影響のないアミノ酸であれば、リジンなど他の塩基性アミノ酸であってもかまわない。また本実施例において、効率的にアルギニン溶液をネギ内の空気と置換し浸透させるために真空包装を採用したが、本処理は真空包装に限定されず、各種減圧容器等、ネギ内に効率的にアルギニン溶液を浸透させる目的を達成できるものであれば、適宜使用可能である。特に、減圧釜などのように減圧および加熱の両機能を有する装置であれば、加熱アルギニン溶液にネギを投入し、減圧しながら加熱することなどで、より効率的な処理が可能となる。
【0101】
〔実施例5〕 ネギとタマネギの塩基性アミノ酸処理によるシクロアリイン含有量変化
上述のとおり、塩基性アミノ酸添加がカットネギおよびカットタマネギに与える効果についても同等と推定されが、確認試験を実施した。ネギ(青森県産)は2cm長にカットしたものを供試した。タマネギ(北海道産)は、垂直に8分割した上で鱗茎を手でバラバラにし、表皮を除外して供試した。アルギニン添加量は、ネギは2%(w/v)水溶液を試料ネギと同重量添加、タマネギは3%(w/v)水溶液を試料タマネギと同重量添加した。アルギニン添加は真空包装により実施した。ブランチングは、スチームオーブンで95℃、5分間実施した。アルギニン添加・ブランチング済みのペーストのpHは、ネギでpH=9.9、タマネギでpH=10.0であった。皮膜乾燥は、アルギニンを添加してブランチングしたものをペースト化して、実施例1と同様の条件でホットプレートを用いて加熱・乾燥した。以上、各処理によって得られた試料を、多水分試料は凍結乾燥後粉末化、乾燥試料はそのまま粉末化し、上述の方法と同様の成分分析に供した。分析結果を表14に示す。表14に示されるとおり、アルギニン(ARG)処理により、カットタマネギに関してもカットネギ同様の効果が得られることが確認できた。
【0102】
【表14】

【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によれば、ネギやタマネギをはじめとするアリウム属植物素材を原料としたシクロアリインを高濃度に含有した素材を得ることができる。特に、シクロアリインを乾物換算で1.0重量%以上含有するネギ素材、0.5重量%以上含有するタマネギ素材を得ることができる。これら素材は食品、飼料、医薬等の素材として利用することができるため、各関連産業分野において、利用性の高い発明である。
【符号の説明】
【0104】
1…アリウム属植物
2…アルカリ処理物
3…アリウム属植物素材
P1…アルカリ処理過程
P2…加熱処理過程


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロアリインを乾物換算で0.5重量%以上含有することを特徴とする、アリウム属植物素材。
【請求項2】
アルカリ処理および加熱処理を含む過程によって得られることを特徴とする、請求項1に記載のアリウム属植物素材。
【請求項3】
前記シクロアリイン含有量が1.0重量%以上であり、前記アリウム属植物がネギ(長ネギ、Allium fistulosum L.)であることを特徴とする、請求項1または2に記載のアリウム属植物素材。
【請求項4】
前記シクロアリイン含有量が0.5重量%以上であり、前記アリウム属植物がタマネギ(Allium cepa L.)であることを特徴とする、請求項1または2に記載のアリウム属植物素材。
【請求項5】
破砕処理(カット長5mm以上の切断処理以外の物理的細分化処理をいう。)がなされていない形態を備えていることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載のアリウム属植物素材。
【請求項6】
予め加熱処理したかまたはしていないアリウム属植物をpH7以上12以下となるように調整するアルカリ処理過程と、同時かまたはその後の加熱処理過程とからなり、シクロアリインを乾物換算で0.5重量%以上含有するアリウム属植物素材を得る、アリウム属植物素材の製造方法。
【請求項7】
前記アルカリ処理過程では、塩基性アミノ酸または揮発性アルカリの少なくとも一方を用いることを特徴とする、請求項6に記載のアリウム属植物素材の製造方法。
【請求項8】
前記アリウム属植物はネギ(長ネギ、Allium fistulosum L.)またはタマネギ(Allium cepa L.)であることを特徴とする、請求項7に記載のアリウム属植物素材の製造方法。
【請求項9】
前記加熱処理過程では、65℃以上で1分間以上の加熱処理がなされることを特徴とする、請求項7または8に記載のアリウム属植物素材の製造方法。
【請求項10】
前記加熱処理過程では、50℃以上で加熱乾燥処理がなされることを特徴とする、請求項7または8に記載のアリウム属植物素材の製造方法。
【請求項11】
製造過程中に加熱乾燥処理またはその他の乾燥処理のなされる過程が含まれることにより、乾燥状態の素材が得られることを特徴とする、請求項8ないし10のいずれかに記載のアリウム属植物素材の製造方法。
【請求項12】
前記アリウム属植物は、前記アルカリ処理過程の前に破砕処理(カット長5mm以上の切断処理以外の物理的細分化処理をいう。)がなされていないことを特徴とする、請求項6ないし11のいずれかに記載のアリウム属植物素材の製造方法。
【請求項13】
請求項6ないし12のいずれかに記載のアリウム属植物素材の製造方法の製造過程中に、小麦粉や調味料など製造目的に応じた所定の副原料が混合される混合過程を備え、シクロアリインを乾物換算で0.1重量%以上含有するアリウム属植物素材利用加工食品・飼料・医薬品またはその他の製品を得ることを特徴とする、アリウム属植物素材利用製品の製造方法。



【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2011−182756(P2011−182756A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54231(P2010−54231)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(309015019)地方独立行政法人青森県産業技術センター (52)
【Fターム(参考)】