説明

アリルアルコールの製造方法

アリルアルコールを製造する方法が開示されている。この方法は、プロピレン、酢酸及び酸素を反応させて反応混合物を生成する。反応混合物が蒸留されて、プロピレンを含有する気体ストリームと、アリルアセテート、酢酸、アクロレイン及びアリルジアセテートを含有する液体ストリームとが生成される。液体ストリームが蒸留されて、アクロレインを含有する軽ストリームと、アリルアセテートや酢酸や水を含有するサイドドローと、酢酸及びアリルジアセテートを含有する底部ストリームとが生成される。底部ストリームが気化されてアリルジアセテートを含有する重ストリームが除去される。サイドドローが加水分解されてアリルアルコールが生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン、酢酸及び酸素を反応させてアリルアセテートを製造し、かつアリルアセテートを加水分解してアリルアルコールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アリルアルコールは、貴重な化学中間体である。アリルアルコールは、プロピレンのアセトキシル化及びそれに続く生成アリルアセテートの加水分解によって生成される。アリルアセテートを生成するためのアセトキシル化は、パラジウム触媒の存在下における気相中で、プロピレン、酢酸及び酸素を反応させることによって実行される。反応混合物は、典型的に、プロピレン、酸素、二酸化炭素を含有して一般的にアセトキシル化反応に再利用される気体ストリームと、アリルアセテート、酢酸及び水を含有する液体ストリームとに分離される。しかし、液体ストリームは、重不純物を含有する傾向がある。このような不純物は、アリリデンジアセテートまたは1,1−ジアセトキシ−2−プロペンとして知られるアリルジアセテートである。アリルジアセテートのような重不純物は、アリルアセテートを加水分解する後続の工程で用いられる固体酸化物触媒を不活性化し得る。液体ストリームが加水分解される前に分解することによってアリルジアセテートを除去することが、いくつかの文献で開示されている。例えば、日本の特許出願である01−250338号、2−096548号、61−238745号及び53−071009号が挙げられる。さらに、同時継続中の出願である、2009年2月5日に出願された12/322650号、及び2009年12月17日に出願された12/653677号が挙げられる。
【0003】
同時継続中の出願である12/322650号には、気相中の混合物を固体酸化触媒と接触させてアリルジアセテートをアクロレインに変換させ、かつアクロレインを反応生成物から除去するアリルジアセテートを含有するアセトキシル化混合物を精製する方法が開示されている。同時継続中の出願である12/653677号には、高圧でアセトキシル化混合物を蒸留してアリルアセテートを精製してプロピレンを除去し、アリルアセテート、酢酸、アクロレイン、アリルジアセテート及び3−アセトキシプロピオンアルデヒドを含有する第1底部混合物を生成する方法が示唆されている。第1底部混合物は、フラッシュ蒸留され、生成蒸気は、アリルジアセテートを分解するために固体酸化触媒と接触される。アリルアセテート、酢酸及びアクロレインを含有するフラッシュ生成物は、アクロレインを除去しかつアリルアセテート及び酢酸を含有する第2底部混合物を生成するために蒸留される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特許出願01−250338号
【特許文献2】日本国特許出願2−096548号
【特許文献3】日本国特許出願61−238745号
【特許文献4】日本国特許出願53−071009号
【特許文献5】米国特許出願12/322650号
【特許文献6】米国特許出願12/653677号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、より効率的な手法でアリルジアセテートのような重不純物を除去するより経済的な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アリルアルコールを製造する方法である。この方法は、パラジウム担持触媒の存在下でプロピレン、酢酸及び酸素を反応させて反応混合物を生成する工程を含む。反応混合物は蒸留されて、プロピレンを含有する気体ストリームと、アリルアセテート、酢酸、アクロレイン及びアリルジアセテートを含有する液体ストリームとが生成される。液体ストリームは蒸留されて、アクロレインを含有する軽ストリーム、アリルアセテート、酢酸及び水を含有するサイドドロー、及びアリルジアセテートと酢酸とを含有する底部ストリームが生成される。底部ストリームは蒸留されて、アリルジアセテートを含有する重ストリームが除去される。サイドドローは加水分解されて、アリルアルコールが生成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る方法でアリルアルコールを生成する工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
工程は、プロピレン、酢酸及び酸素(アセトキシル化反応)を含有するフィードを反応させることを含む。アセトキシル化反応は、一般的に、パラジウム触媒、好適にはパラジウム担持触媒の存在下で実行される。パラジウム担持触媒は、一般に、0.1〜5.0質量%、好適には0.3〜1.5質量%のパラジウムを含有する。さらに、触媒は、第11族の元素、すなわち金、銅、銀及びこれらの混合物である。金、銅、または銀の含有量は、担持触媒の0〜5.0質量%の範囲、好適には0.02〜1.0質量%の範囲である。
【0009】
触媒は、付加的に活性剤を含有していてもよい。活性剤は、アルカリまたはアルカリ土類金属化合物であり、例えば水酸化物類、アセテート類、硝酸塩類、炭酸塩、及びカリウム、ナトリウム、セシウム、マグネシウム、バリウムの重炭酸塩、及びこれらに類するものが挙げられる。カリウム及びセシウム塩が活性剤には好適である。活性剤の含有量は、担持触媒の0〜15質量%、好適には1.5〜10質量%の範囲であってもよい。
【0010】
パラジウム担持触媒は、担体を含有する。好適な担体は、アルミナ、シリカ、チタニア、カーボン、及びこれに類するもの、及びこれらの混合物を含む。好適には、担体は、少なくとも1m2/gの表面積、及び0.1〜1.5mL/gの細孔体積を有する。
【0011】
触媒は、多数の手法によって調製されてもよい。これらの手法の例は、米国特許第3925452号、5011980号、6303536号及び米国特許出願公開2006/0167307号及び2006/0247462号に開示されている。
【0012】
触媒の調製では、担体は同時にまたは連続的に、パラジウム化合物、任意的に第11族の金属塩、及び任意的に活性剤で浸漬される。浸漬は、好適には水溶液で実行される。
【0013】
好適なパラジウム化合物は、塩化パラジウム、クロロパラジウム酸ナトリウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、これに類するもの、及びこれらの混合物である。好適な第11族の金属塩類は、塩化物、硝酸塩及び硫酸塩を含む。例としては、四塩化金酸、四塩化金ナトリウム、塩化銅、硝酸銅、硫酸銅、硝酸銀、これに類するもの、及びこれらの混合物が挙げられる。好適な活性剤は、水酸化物類、炭酸塩類、重炭酸塩類、アルカリ及びアルカリ土類金属のメタケイ酸塩類、これに類するもの、及びこれらの混合物である。
【0014】
担体を浸漬する1の手法は、担体と、パラジウム混合物及び第11族の金属塩の双方を含有する水溶液とを接触させることを含む。他の手法では、担体は、パラジウム化合物及び分離工程の第11族の金属塩と接触される。
【0015】
触媒の調製では、定着剤が用いられてもよい。定着剤が用いられる場合は、パラジウム混合物及び第11族の金属塩類を担体に固着する点で有用である。好適な定着剤は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウム化合物、例えば、これらの水酸化物、炭酸塩類、重炭酸塩類、メタケイ酸類、及びこれらに類するもの、及びこれらの混合物を含む。定着剤は、担体がパラジウム化合物及び任意的な第11族の金属塩で浸漬されている間または浸漬された後に担体に接触されてもよい。
【0016】
浸漬された担体は、通常、非還元性雰囲気でか焼(高温で加熱されること)される。好適には、か焼は、100〜600℃の範囲、より好適には250〜500℃の範囲の温度で実行される。か焼に適した非還元性ガスは、ヘリウム、窒素、アルゴン、酸素、空気、二酸化炭素、及び類するもの、及びこれらの混合物を含む。好適には、か焼は、窒素、酸素、空気またはこれらの混合物で実行される。
【0017】
か焼に続いて、生成材料は、少なくともパラジウムの一部及び第11族の金属が用いられる場合は、これらが0価の対応する元素に変換されるように、通常は還元される。この還元は、生成材料に還元剤が接触せしめられて実行される。好適な還元剤は、水素、一酸化炭素、オレフィン類、アルデヒド類、アルコール類、ヒドラジン類、これらに類するもの、及びこれらの混合物である。還元に用いられる温度は、20〜700℃の範囲である。還元剤としては、水素ガスが好適である。一般的には、水素、及びアルゴン、ヘリウム、窒素、これらに類するものといった他のガスを含有したガス混合物が用いられる。還元温度は、好適には300〜700℃の範囲、より好適には450〜550℃の範囲である。
【0018】
アセトキシル化反応へのフィードは、プロピレンを含有する。フィード中のプロピレンの濃縮率は、一般に、20〜80mol%であり、好適には40〜70mol%である。反応器へのフィードは、反応器に進入する全てのストリーム、新たなプロピレン、新たな酸素、新たな酢酸及び再循環ストリームを含む。50mol%超のポリプロピレン容量が、特に望ましい。商業的に入手可能なポリマーグレードプロピレン及びケミカルグレードプロピレンが、プロピレン源として好適である。プロピレン源は、好適には、90mol%の純度、最も好適には、少なくとも94mol%の純度を有している。
【0019】
フィードは、酢酸を含有している。フィード中における酢酸の濃縮率は、典型的には8〜25mol%、好適には10〜18mol%である。
【0020】
フィードは、酸素を含有している。フィード中における酸素の濃縮率は、典型的には1〜8mol%、好適には2〜6mol%である。酸素は、窒素といった不活性ガスが混合された状態で工程に供給されてもよい。空気が用いられてもよい。工程に用いられる酸素源は、少なくとも90mol%の純度、より好適には95mol%の純度を有している。フィード中で許容された酸素濃縮率は、燃焼の限界点で決定される。フィードの燃焼の限界点は、温度、圧力及びその成分に依存する。
【0021】
フィードは、希釈剤を含有している。希釈剤は、反応器内で起爆性混合物が形成されることを抑制することに有用であり、温度上昇をコントロールする。好適な希釈剤の例としては、プロパン、窒素、ヘリウム、アルゴン、これに類するもの、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0022】
フィードは、水を含有していてもよい。フィード中における水の濃縮率は、典型的には0〜15mol%、より好適には5〜10mol%である。
【0023】
反応は、固定層反応器または流動層反応器、これに類するもので実行される。固定層反応器が好適である。一の実施の形態では、多管固定層反応器が用いられる。典型的な管の直径は、1〜4インチである(米国特許第3970713号)。
【0024】
フィードは、反応状態でガス状である。従って、酢酸及び反応器に進入する水の量は、反応のために選択された温度と圧力の下でフィードが気相となるように調整されている。反応は、一般的に100〜250℃の範囲、好適には120〜200℃の範囲の温度で実行される。一般的に、反応圧力は、15〜450psigの範囲、好適には30〜150psigの範囲である。
【0025】
フィードは、好適には10〜15000h-1の範囲、より好適には300〜8000h-1の範囲の空間速度で触媒を通過する。プロピレンの変換は、一般的には3〜15%、酢酸は9〜45%である。酸素の変換は90%にもなり得る。
【0026】
アセトキシル化反応は、アリルアセテート、プロピレン、酸素、酢酸、水、アリルジアセテート、二酸化炭素、及び用いられる場合は不活性ガスを含有する混合物を生成する。プロピレンからのアリルジアセテートの選択は、1%以下、例えば0.01〜1%、より好適には0.1〜0.5%であることが好適である。
【0027】
反応混合物は、プロピレン、二酸化炭素、酸素を含有する気体ストリーム、及びアリルアセテート、水、酢酸、アクロレイン、アリルジアセテートを含有する液体ストリームを生成するために蒸留される。任意の通常の蒸留を用いることができる。蒸留カラムは、多くの好適なトレイデザインを有する。例えば、バブルキャップトレイ、バルブトレイ、シーブトレイ、ランダムパッキング及びストラクチャパッキングが挙げられる。典型的に用いられるカラムは、12〜20のステージを有し、100〜300psiで還流蒸留比率が2〜5の間で稼働する。好適には、気体ストリームはアセトキシル化反応に再利用される。気体ストリーム中に存在する二酸化炭素の少なくとも一部を、例えばカリとともに除去する必要がある(米国特許第3970713号及び4409396号)。気体ストリームを再利用する種々の手法が存在する。一の例では、気体ストリームは、気体ストリームが反応器に進入する前に、反応器に酢酸の必要量が充填されるように、酢酸気化器(詳細は後述する)に供給される。
【0028】
液体ストリームは一般的に、5〜30質量%のアリルアセテート、2〜20質量%の水、10〜70質量%の酢酸、0.01〜2質量%のアクロレイン、及び0.01〜5質量%のアリルジアセテートを含有している。
【0029】
液体ストリームは、アクロレインを含有する軽ストリームと、アリルアセテートや酢酸及び水を含有するサイドドローと、酢酸やアリルジアセテートを含有する底部ストリームとを生成するために蒸留される。通常の任意の蒸留が用いられる。典型的に用いられるカラムは、10〜25のステージを有し、20〜75psiで還流供給比率が2〜5の間で稼働する。好適には、サイドドローは、サイドドローが、例えば、一般的に0.01質量%より少ない、より好適には0.005質量%より少ないアクロレインの極めて低い濃縮を含有することを確実にするために、液体ストリームの進入地点の下流の地点で取得される。典型的には、サイドドローは、5〜30質量%のアリルアセテート、10〜70質量%の酢酸、及び0.1質量%より少ないアリルジアセテートを含有する。底部ストリームは、典型的には、80〜99質量%の酢酸、0.5〜10質量%のアリルジアセテート及び他の重化合物を含有する。
【0030】
底部ストリームは、酢酸気化器で気化される。底部ストリームに加えて、新たな酢酸、及びアリルアセテート加水分解と分離工程(後述する)から戻った酢酸が、酢酸気化器に好適に供給される。少なくとも、新たなプロピレン及び再生した気体ストリームが酢酸気化器の底部部分に供給され、酢酸の反応器への進入に先立って、酢酸の気化を補助する。典型的には、気化器は、トレイ型蒸留カラムである。気化器は、典型的には80〜140℃、好適には90〜130℃の温度で操作される。重ストリームは、気化器の底部部分から得られ、典型的には2〜20質量%のアリルジアセテート、好適には5〜15質量%のアリルジアセテートを含有している。
【0031】
工程は、酸化触媒の存在下で、アリルアセテートをアリルアルコールに加水分解し、加水分解生成混合物を生成するためのサイドドローの反応を含む。加水分解反応は、一般的に、50〜150℃の温度でかつ15〜200psigの圧力下で実行される。硫酸、スルホン酸類、リン酸、ヘテロポリ酸類、シリカ−アルミナ類といった酸化触媒、または酸性イオン交換樹脂が用いられる。好適には、固体酸化触媒が用いられる。より好適には、酸性イオン交換樹脂が用いられる。
【0032】
加水分解生成混合物は、アリルアルコールと酢酸とを分離するように加工される。酢酸は、好適には、アセトキシル化反応で再利用される。典型的には、アリルアルコールと酢酸との分離は、共沸蒸留によって実行される。好適な方法は米国特許第4743707号及び米国出願公開2009/0166174で開示され、これらを参考として引用する。
【0033】
本発明は、分解反応器を用いることなく、プロセスストリームからアリルジアセテートのような重不純物を除去する。その代わりに、酢酸気化器を用いることによって、重不純物を効率的に分離する。
【0034】
(実施例1)
本発明に係るアリルアルコールを単位年当たりで50000トン製造する一の提案された工程を、図1に示す。反応器101には、米国の同時継続中の出願(出願番号第12/586966号、出願日2009年9月30日)の実施例3に開示されているように、触媒が充填されている。新たなプロピレン(5mol%のプロパンを含有する)は、ライン3を介して酢酸気化器105に供給される。プロピレン、プロパン、酸素、アルゴン及び二酸化炭素を含有する蒸留カラム102から再循環される気体ストリームは、ライン5を介して二酸化炭素除去セクション106に供給され、この二酸化炭素除去セクション106において、ライン16を介して二酸化炭素の80%が除去される。気体ストリームの残余分は、ライン15を介して気化器105に進入する。新たなプロピレンと再循環される気体ストリームは、気化器105に進入する前に混合される。
【0035】
新たな酢酸は、ライン2を介して気化器105に進入する。酢酸、水及びアリルジアセテートを含有する再循環ストリームは、ライン12を介して気化器105に進入する。ライン12のストリームは、気化器105に供給される前にライン2の新たな酢酸と混合される。気化器105は、5〜20のトレイを備えたカラムであって、114℃及び最高90psigで稼働される。気化器105は、液体循環ポンプ(図示しない)を備え、新たな及び再循環される酢酸を循環及び加熱する。気化器105から出る気体ストリームは、ライン1で新たな酸素(0.1mol%のアルゴンを含有する)と混合され、ライン13を介してアセトキシル化反応器101に供給される。アセトキシル化反応は、145℃でかつ80psigで実行される。ガスの単位時間当たりの空間速度は、2200h-1で制御される。アセトキシル化反応器からの反応混合物は、ライン4を介して蒸留カラム102に供給される。カラム102は15のステージを有し、還元率2〜5%の間において200psigで操作される。アセトキシル化反応混合物は、カラム102の頂上から10番目のステージに進入する。カラム102はさらに、余剰の水の除去用のデカンタを備える。酢酸、アリルアセテート、アリルジアセテート及びアクロレインを含有するカラム102からの液体ストリームは、ライン6を介して蒸留カラム103に供給される。プロピレン、プロパン、酸素及びアルゴンを含有するカラム102からの気体ストリームは、ライン5を介して酢酸気化器105において再利用される。酢酸、アリルアセテート、アリルジアセテート及びアクロレインを含有するカラム102からの液体ストリームは、ライン6を介して蒸留カラム103に供給される。カラム103は、15のステージを有し、およそ35psigで操作される。液体ストリームは、カラム103の頂上から9番目のステージに進入する。還流供給率は、およそ3:1である。水及びアクロレインを含有するカラム103からの軽ストリームは、ライン7を介してオーバヘッドとして扱われる。酢酸及びアリルジアセテートを含有する底部ストリームは、ライン8を介してカラム103から排出される。アリルアセテート、酢酸及び水を含有する気体サイドドローは、ライン9を介してカラム103の頂上から13番目のステージから取り出され、濃縮され、加水分解され及び分離セクション104に供給される。セクション104の詳細は、図示していない。アリルアセテートの加水分解は、酸性イオン交換樹脂の存在下で発生する。加水分解生成物は、(ライン10における)アリルアルコール生成物と、酢酸及び水を含有してライン8で底部ストリームと混合されて気化器105において再循環される(ライン11における)再循環ストリームとに分離される。アリルジアセテート及び酢酸を含有する重滞留物は、ライン14を介して気化器105から排出される。これらストリームの成分と流率を、表1に示す。
【0036】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリルアルコールを製造する方法であって、
(a)プロピレン、酢酸及び酸素を含有するフィードを反応させて反応混合物を生成する工程と、
(b)該反応混合物を蒸留して、プロピレンを含有する気体ストリームと、アリルアセテート、酢酸、アクロレイン及びアリルジアセテートを含有する液体ストリームとを生成する工程と、
(c)該液体ストリームを蒸留して、アクロレインを含有する軽ストリームと、アリルアセテートや酢酸や水を含有するサイドドローと、酢酸及びアリルジアセテートを含有する底部ストリームとを生成する工程と、
(d)酢酸気化器で底部ストリームを気化してアリルジアセテートを含有する重ストリームを除去する工程と、
(e)サイドドローを加水分解してアリルアルコールを生成する工程と、
を有することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記工程(a)は、
パラジウム触媒の存在下で実行されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程(a)は、
パラジウム担持触媒の存在下で実行されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
気体ストリームの少なくとも一部が酢酸気化器に供給されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程(a)は、
モル濃度の選択性が0.01〜1%のプロピレンからアリルジアセテートを生成することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程(a)は、
モル濃度の選択性が0.1〜0.5%のプロピレンからアリルジアセテートを生成することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
底部ストリームが1〜10質量%のアリルジアセテートを含有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
重ストリームは、2〜20質量%のアリルジアセテートを含有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
重ストリームは、5〜15質量%のアリルジアセテートを含有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
酢酸気化器は、トレイ式蒸留カラムであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
酢酸気化器は、塔頂温度が90〜130℃で操作されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
前記工程(e)は、
固体酸化触媒の存在下で実行されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
前記固体酸化触媒は、
イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項12に記載の製造方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2013−520500(P2013−520500A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555028(P2012−555028)
【出願日】平成23年2月11日(2011.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2011/024480
【国際公開番号】WO2011/106173
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(505341095)ライオンデル ケミカル テクノロジー、 エル.ピー. (61)
【氏名又は名称原語表記】LYONDELL CHEMICAL TECHNOLOGY, L.P.
【Fターム(参考)】