説明

アリルインデノピリミジン及びアデノシンA2a受容体拮抗物質としてのそれらの使用

この発明は、新規アリルインデノピリミジン、A、並びにアデノシンA2a受容体の拮抗物質としてのその治療的及び予防的使用に関する。治療される及び/又は予防される疾患としては、パーキンソン病が挙げられる。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2007年10月24日に出願された、米国仮出願第60/982,247号の出願の利益の優先権を主張する。前述の関連米国特許出願の開示全体は、全ての目的のために参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、新規アリルインデノピリミジン並びにその治療的及び予防的使用に関する。治療される及び/又は予防される疾患としては、アデノシンA2a受容体に拮抗することにより寛解する神経変性及び運動性疾患が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
アデノシンA2a受容体のアデノシンは、体内の全ての代謝的に活性な細胞により産生されるプリンヌクレオチドである。アデノシンは、4種のサブタイプの細胞表面受容体(A1、A2a、A2b、及びA3)を介してその作用を発揮し、これらの受容体はGタンパク質結合受容体スーパーファミリーに属する(スタイルズ(Stiles),G.L.Journal of Biological Chemistry、1992年、267巻、6451頁)。A1及びASは抑制性Gタンパク質に結合し、一方A2a及びA2bは刺激性Gタンパク質に結合する。A2a受容体は、主に脳の、ニューロン及びグリア細胞の両方で見られる(線条体及び側坐核で最も高濃度であり、嗅結節、視床下部、及び海馬等の領域で中〜高濃度である)(ロジン(Rosin),D.L.;ロビバ(Robeva),A.;ウッダード(Woodard),R.L.;ガイエネット(Guyenet),P.G.;リンデン(Linden),J.、Journal of Comparative Neurology,1998年、401巻、163頁)。
【0004】
末梢組織では、A2a受容体は、血小板、好中球、血管平滑筋、及び内種皮に見られる(ゲッシ(Gessi),S.;バラーニ(Varani),K.;メリーギ(Merighi),S.;オンギーニ(Ongini),E.;ボアーズ(Bores),P.A.、British Journal of Pharmacology、2000年、129巻、2頁)。線条体は、特に黒質(substantial nigra)で生じるドーパミン作動性ニューロンからの神経支配を通じて、運動活性を制御するための主な脳領域である。線条体は、パーキンソン病(PD)患者におけるドーパミン作動性ニューロン変性の主な標的である。線条体内では、A2a受容体はドーパミンD2受容体と共存し、これは脳内のアデノシン及びドーパミンシグナル伝達の統合に重要な部位であることを示唆する(フィンク(Fink),J.S.;ウィーバー(Weaver),D.Ri;リブキーズ(Rivkees),S.A.;ピーターフロイント(Peterfreund),R.A.;ポラック(Pollack),A.E.;アドラー(Adler),E.M.;レパート(Reppert),S.、Brain Research Molecular Brain Research、1992年、14巻、186頁)。
【0005】
神経化学的研究により、A2a受容体の活性化はその受容体に対するD2作用物質の結合親和性を低下させることが示されている。このD2R及びA2aR受容体−受容体相互作用は、ラットの線条体内(instriatal)膜標本(フェレ(Ferre),S.;コン・オイラー(con Euler),G.;ヨハンソン(Johansson),B.;フレドホルム(Fredholm),B.B.;フクセ(Fuxe),K.、Proceedings of the National Academy of Sciences I of the United States of America、1991年、88巻、7238頁)並びにA2aR及びD2RのcDNAをトランスフェクトした後の線維芽細胞において(サリム(Salim),H.;フェレ(Ferre),S.;ダラール(Dalal),A.;ピーターフロイント(Peterfreund),R.A.;フクセ(Fuxe),K.;ヴィンセント(Vincent),J.D.;レード(Lledo),P.、Journal of Neurochemistry、2000年、74巻、432頁)示されている。インビボ(In viva)では、A2a拮抗物質を用いたA2a受容体の薬理学的遮断は、マウス、ラット、及びサルを含む種々の種で、ドーパミン作動性神経毒MPTP(1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン)誘導性PC)に対して有益な効果を導く(イケダ(Ikeda),K.;クロカワ(Kurokawa),M.;アオヤマ(Aoyana),S.;クワナ(Kuwana),Y.、Journal of Neurochemistry、2002年、80巻、262頁)。
【0006】
更に、A2aの機能を遺伝的に遮断したA2aノックアウトマウスは、神経毒MPTPに曝露したとき運動不全及び神経化学的変化に対して感受性が低いことが見出されている(チェン(Chen),J.F.;スー(Xu),K.;Iペッツァー(I Petzer),J.P.;スティール(Steal),R.;スー(Xu),Y.H.;バイルシュタイン(Beilstein),M.;ソンサーラ(Sonsalla),P.K.;キャスタグノーリ(Castagnoli),K.;キャスタグノーリ(Castagnoli),N.,Jr.;シュウォルシルド(Schwarsschild),M.A.、Journal of Neuroscience、2001年、1 21巻、RC1 43)。
【0007】
ヒトでは、アデノシン受容体拮抗物質テオフィリンは、PD患者において有益な効果を生じさせることが見出されている(マリー(Mally),J.;ストーン(Stone),T.、Journal of the Neurological Sciences、1995年、132巻、129頁)。一貫して、最近の疫学研究は、カフェインを大量に消費することにより、ヒトがPDを発現する可能性が低くなることを示している(アスチェリオ(Ascherio),A.;チャン(Zhang),S.M.;ヘルマン(Hernan),M.A.;カワチ(Kawachi),I.;コルディッツ(Colditz),G.A.;スピーザー(Speizer),F.E.;ウィレット(Willett),W.C.、Annals of Neurology、2001年、50巻、56頁)。要約すると、アデノシンA2a受容体遮断剤は、新しい部類の抗パーキンソン病薬を提供できる(インパナティエロ(Impagnatiello),F.;バスティア(Bastia),E.;オンギーニ(Ongini),E.;モノポリ(Monopoli),A.、Emerging Therapeutic Targets、2000年、4巻、635頁)。
【0008】
2A受容体の拮抗物質は、潜在的に嗜癖の治療に有用な療法である。主な依存性薬物(アヘン、コカイン、エタノール等)は、直接的に又は間接的に、特に側坐核に見られるニューロンのドーパミンシグナル伝達を調節し、側坐核は高濃度のA2Aアデノシン受容体を含有する。依存症は、アデノシンシグナル伝達経路により増強されることが示されており、またA2A受容体拮抗物質の投与により常習性薬物に対する欲求が低下することが示されている(「アルコール依存症及び嗜癖におけるアデノシンA2A受容体及びGi βγサブユニットの重要な役割:細胞生物学から挙動まで(The Critical Role of Adenosine A2A Receptors and Gi βγ Subunits in Alcoholism and Addiction: From Cell Biology to Behavior)」、イワン・ダイヤモンド(Ivan Diamond)及びリナ・ヤオ(Lina Yao)、(The Cell Biology of Addiction、2006年、291〜316頁)、並びに「薬物依存におけるアデノシンシグナル伝達の適応:治療との関連(Adaptations in Adenosine Signaling in Drug Dependence: Therapeutic Implications)」、ステファン(Stephen)P.ハック(Hack)及びマクドナルド(Macdonald)J.クリスティ(Christie)、Critical Review in Neurobiology、15巻、235〜274頁(2003年))。また、アルコール依存症(Alcoholism):Clinical and Experimental Research(2007年)、31(8)、1302〜1307頁も参照のこと。
【0009】
2A受容体拮抗物質を用いて、注意欠陥多動性障害(ADHD)を治療することができ、これはカフェイン(非選択的アデノシン拮抗物質)はADHDの治療に有用であり得、ドーパミンとアデノシンニューロンとの間には多くの相互作用が存在するためである。Clinical Genetics(2000)、58(1)、31〜40頁、及び本明細書中の参考文献。
【0010】
2A受容体の拮抗物質は、潜在的に鬱病の治療に有用な療法である。A2A拮抗物質は、強制水泳及び尾懸垂試験を含む種々の鬱病モデルにおいて活動を誘発することが知られている。陽性応答は、ドーパミン作動性伝達により媒介され、運動刺激剤作用ではなく、逃避指向行動(escape-directed behavior)の延長により引き起こされる。Neurology(2003年)、61巻(suppl 6)、S82〜S87。
【0011】
2A受容体の拮抗物質は、潜在的に不安症の治療に有用な療法である。A2A拮抗物質は、インビボで情動/不安反応を予防することが示されている。Neurobiology of Disease(2007年)、28(2)、197〜205頁。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
化合物Aは、強力なアデノシンA2a受容体の小分子拮抗物質である。
【0013】
【化1】

【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は化合物A、
【0015】
【化2】

並びにその溶媒和物、水和物、互変異性体、及び製薬上許容できる塩類(slat)を提供する。
【0016】
この発明は、更に、被験体に治療的に有効な用量の即時型(instant)医薬組成物を投与することを含む、アデノシンA2a受容体に拮抗することにより寛解する症状を有する被験体を治療する方法を提供する。
【0017】
この発明は、更に、被験体においてアデノシンA2a受容体に拮抗することにより寛解する疾患を引き起こすことが予期される事象の前又は後に、被験体に予防的に有効な用量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、被験体におけるアデノシンA2a受容体に拮抗することにより寛解する疾患を予防する方法を提供する。
【0018】
即時型化合物は、単離し、遊離塩基として用いることができる。それらはまた、単離し、製薬上許容できる塩類として用いることもできる。
【0019】
このような塩類の例としては、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、塩化水素酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ヒドロエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩(palmoic)、2ナフタレンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、シクロヘキサンスルファミン酸塩、及び糖酸塩が挙げられる。
【0020】
この発明はまた、即時型化合物と、製薬上許容できる担体と、を含む医薬組成物を提供する。
【0021】
製薬上許容できる担体は当業者に周知であり、約0.01〜約0.1M、好ましくは0.05Mのリン酸塩バイヤー(buyer)又は0.8%の生理食塩水が挙げられるが、これらに限定されない。このような製薬上許容できる担体は、水性、又は非水性溶液、懸濁液、及びエマルションであってもよい。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、及びオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルである。水性担体としては、水、エタノール、アルコール性/水性溶液、グリセロール、エマルション、又は生理食塩水及び緩衝媒質を含む懸濁液が挙げられる。経口担体は、エリキシル剤、シロップ剤、カプセル、錠剤等であってもよい。典型的な固体担体は、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、マンニトール等のような不活性物質である。非経口担体としては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸化リンゲル及び固定油が挙げられる。静脈内担体としては、流体及び栄養素補充液、リンゲルデキストロースに基づくもののような電解質補充液等が挙げられる。
【0022】
防腐剤、及び例えば抗微生物剤、酸化防止剤、キレート剤、不活性ガス等のような他の添加剤もまた存在してもよい。全ての担体は、必要に応じて、当該技術分野において既知である従来の技術を用いて、崩壊剤、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤等と混合してもよい。
【0023】
この発明は、更に、被験体に治療的に有効な用量の即時型(instant)医薬組成物を投与することを含む、アデノシンA2a受容体に拮抗することにより寛解する症状を有する被験体を治療する方法を提供する。
【0024】
1つの実施形態では、疾患は神経変性又は運動性疾患である。即時型医薬組成物により治療可能な疾患の例としては、制限するわけではないが、パーキンソン病、ハンチントン病、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、アルツハイマー病、及び老年性認知症が挙げられる。
【0025】
1つの好ましい実施形態では、疾患はパーキンソン病である。
【0026】
本明細書で使用するとき、用語「被験体」としては、制限するわけではないが、アデノシンA2a受容体に拮抗することにより寛解する疾患を有する任意の動物又は人工的に改変された動物が挙げられる。好ましい実施形態では、被験体はヒトである。
【0027】
即時型医薬組成物の投与は、当業者に既知の種々の方法のいずれかを用いて効果を及ぼす又は行うことができる。即時型化合物は、例えば、静脈内に、筋肉内に、経口で、及び皮下に投与することができる。好ましい実施形態では、即時型医薬組成物は経口で投与される。更に、投与は、好適な期間にわたって、被験体に複数回投与することを含んでもよい。このような投与計画は、日常的な方法に従って決定することができる。
【0028】
本明細書で使用するとき、医薬組成物の「治療的に有効な用量」は、疾患の進行を止める、逆行させる、又は低減するのに十分な量である。医薬組成物の「予防的に有効な用量」は、疾患を予防する、すなわち、疾患の発症をなくす、改善する、及び/又は遅らせるのに十分な量である。即時型医薬組成物の治療的に及び予防的に有効な用量を決定するための方法は当該技術分野において既知である。ヒトに対して医薬組成物を投与するための有効な用量は、例えば、動物実験の結果から数学的に決定することができる。
【0029】
1つの実施形態では、治療的に及び/又は予防的に有効な用量は、約0.001mg/体重kg〜約200mg/体重kgの即時型医薬組成物を送達するのに十分な用量である。別の実施形態では、治療的に及び/又は予防的に有効な用量は、約0.05mg/体重kg〜約50mg/体重kgを送達するのに十分な用量である。より具体的には、1つの実施形態では、経口用量は、毎日約0.05mg/kg〜約100mg/kgの範囲である。別の実施形態では、経口用量は、毎日約0.05mg/kg〜約50mg/kgの範囲であり、更なる実施形態では、毎日約0.05mg/kg〜約20mg/kgの範囲である。更に別の実施形態では、注入用量は、約数分間〜約数日間の範囲の期間にわたって医薬担体と混合された、阻害物質約1.0μg/kg/分〜約10mg/kg/分の範囲である。更なる実施形態では、局所投与の場合、即時型化合物は、約0.001〜約0.1の薬物/担体比で、医薬担体と組み合わせてもよい。
【0030】
本発明はまた、治療的に有効な用量の式Aの化合物を投与することを含む、哺乳類の嗜癖を治療する方法を提供する。
【0031】
本発明はまた、治療的に有効な用量の式Aの化合物を投与することを含む、哺乳類のADHDを治療する方法を提供する。
【0032】
本発明はまた、治療的に有効な用量の式Aの化合物を投与することを含む、哺乳類の鬱病を治療する方法を提供する。
【0033】
本発明はまた、治療的に有効な用量の式Aの化合物を投与することを含む、哺乳類の不安症を治療する方法を提供する。
【実施例】
【0034】
化合物Aは、当業者に既知の方法により調製することができる。以下の反応スキームは、本発明の代表的な実施例であるということのみを意味し、本発明を限定することは全く意味しない。
【0035】
【化3】

【0036】
化合物Aは、当業者に既知の方法により調製することができる。以下の反応スキームは、本発明の代表的な実施例であるということのみを意味し、本発明の限定であることは全く意味しない。
【0037】
スキーム1は、化合物Aを導く合成経路を示す。アミノピリミジンIで出発し、矢印で示される経路の後に、アミノ(NH2)の保護を、ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下で、テトラヒドロフラン(THF)中のジ−tert−ブチルジカルボネート((Boc)2O)を用いて達成できる。得られたジ−Bocで保護されたIIを、還流させながらベンゼン中の1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン(DBDMH)及び過酸化ベンゾイル(BP)を用いて、ラジカル開始ベンジル臭素化して、対応する臭化ベンジルIIIを得ることができる。次いで、臭化ベンジルIIIを、アセトニトリル(CH3CN)中で、4−メチルホルホリノN−オキシド(NMO)及び4Åの分子篩(ms)を用いて、対応するアルデヒドIVに酸化することができる。得られたアルデヒドIVを、55℃にて、アセトン/水混合物中の過マンガン酸カリウム(KMnO4)を用いて、対応するカルボン酸Vに酸化することができる。次いで、カルボン酸Vを、40℃にて、THF中の1−メチルピペラジン、O−(7−アザベンゾトリアゾル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、及びジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を用いて、対応するアミドVIに変換できる。最終的に、アミドVIを、トリフルオロ酢酸(TFA)を用いて脱保護して、化合物Aを得ることができる。
【0038】
実施例A:工程a
(II):未希釈のジメチルアミノピリジン(850mg、7.0mmol)を、I(20.0g、69.7mmol)及び(Boc)2O(38.0g、174.2mmol)のTHF溶液(300mL)に添加した。2時間後、混合物を酢酸エチル(EtOAc)で希釈し、次いで水及びブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。得られた固体をEtOAc(250mL)に懸濁し、濾過した。固体をEtOAc(2×100mL)で洗浄し、次いで真空中で乾燥させて、25.6gのIIを得た。
【0039】
実施例A:工程b
(III):II(25.6g、52.6mmol)を、加温によりベンゼン(200mL)に完全に溶解させ、次いでジブロモジメチルヒダントイン(8.3g、28.9mmol)及び過酸化ベンゾイル(1.0g、4.2mmol)を順次添加した。混合物を還流させながら16時間加熱した。次いで溶液を室温に冷却し、EtOAcで希釈し、次いで飽和水性NaHCO3、水及びブラインで洗浄した。溶液を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮して、カラムクロマトグラフィーを介して精製した(5〜20% EtOAc/ヘプタン)。最初のクロマトグラフィーにより〜10%のIIを含有する6gのIIIが得られ、2番目のクロマトグラフィーにより更に10%のIIを含有する12gのIIIが得られた。
【0040】
実施例A:工程c
(IV):固体N−メチルモルホリンN−オキシド(2.5g、21.2mmol)を、CH3CN(300mL)のIII(6.0g、10.6mmol)及び4Åms(10.5g)に添加した。18時間後、室温で、混合物を濾過し、濾液をEtOAcで希釈し、水及びブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、クロマトグラフィーを行って、3.6gのIVを得た。
【0041】
実施例A:工程d
(V):固体KMnO4を、IV(3.6g、7.2mmol)のアセトン/水溶液(100mL/25mL)に添加し、得られた混合物を55℃に加熱した。14時間後、混合物を室温に冷却し、濾過した。濾液をEtOAcで希釈し、水及びブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製して、2.1gのVを得た。
【0042】
実施例A:工程e
(VI):未希釈のピペラジン(0.4mL、3.6mmol)を、酸V(1.7g、3.3mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(1.7mL、9.9mmol)、及びHATU(1.3g、3.3mmol)のTHF溶液(60mL)に添加した。得られた混合物を40℃に加熱した。18時間後、混合物を濃縮し、カラムクロマトグラフィーを介して精製して、1.8gのアミドVIを得た。
【0043】
実施例A:工程f
2−アミノ−8−(4−メチル−ピペラジン−1−カルボニル)−4−フェニル−インデノ[1,2−d]ピリミジン−5−オン
【0044】
【化4】

【0045】
(A):次いでアミドVIを25mLのCH2Cl2/TFA(4:1)中で攪拌した。3時間後、混合物を濃縮し、飽和水性NaHCO3で中和し、濾過して、1gの粗Aを得た。固体をカラムクロマトグラフィーを介して精製して、遊離塩基として893mgを得、これをTHFに溶解させ、エーテル中10mLの1N HClに添加し、濃縮し、真空中で乾燥させて、ジ−HCl塩として(A)を得た。1H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δppm 2.34(s,3 H),2.39(br.s.,2 H),2.52(d,J=2.20Hz,2 H),3.46(br.s.,2 H),3.84(br.s.,2 H),5.86(br.s.,2 H),7.46−7.64(m,4 H),7.78(d,J=7.58 Hz,1 H),7.85(s,1 H),8.07(dd,J=7.83,1.71Hz,2H);MS m/e 400(M+H)。
【0046】
アデノシンA2a受容体に対する生物学的アッセイ及び活性リガンド結合アッセイ
ヒトA2aアデノシン受容体を含むHEK293細胞の細胞膜(パーキンエルマー(PerkinElmer)、RB−HA2a)及びラジオリガンドl3H]CGS21680(パーキンエルマー、NET1021)を用いて、A2a受容体のリガンド結合アッセイを実施した。アッセイ緩衝液に、順次、20pLの1:20に希釈した膜、[3H]CGS2168Oを含有するpLアッセイ緩衝液(50mMのTrisHCl、pH7.4 10mMのMgCl2、1mMのEDTA)、50μLの希釈した化合物(4x)又はビヒクル対照を添加することにより、合計体積200μLで、96ウェルポリプロピレンプレート内にて、アッセイを準備した。非特異的結合は、80mMのNECAにより測定した。反応を室温で2時間実行し、その後0.3%のポリエチレンイミンを含有する50mMのTrisHCl、pH7.4に予め浸漬した96ウェルGF/Cフィルタプレートを通して濾過した。次いでプレートを冷50mMのTrisHCl、pH7.4で5回洗浄し、乾燥させ、底部を密閉した。マイクロシンチレーション流体30μlを各ウェルに添加し、上部を密閉した。プレートを、[3H]用のパッカード・トップカウント(Packard Topcount)上でカウントした。マイクロソフト・エクセル(Microsoft Excel)及びグラフパッド・プリズム(GraphPad Prism)プログラムでデータを解析した(バラーニ(Varani),K.;ジェッシ(Gessi),S.;ダルピァッツ(Dalpiaz),A.;ボレア(Borea),P.A.British Journal of Pharmacology、1996年、117巻、1693頁)。ヒトアデノシンA2a受容体を高発現しており、cAMP誘導性ベータ−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子を含むアデノシンA2a受容体機能アッセイCHO−K1細胞を、40〜50K/ウェルで、96ウェル組織培養プレートに播種し、2日間培養した。アッセイ日に、細胞を200pLのアッセイ培地(F−12栄養混合物/0.1% BSA)で1回洗浄した。作用物質アッセイでは、アデノシンA2a受容体作用物質NECAをその後添加し、37℃、5% CO2で5時間細胞をインキュベートし、その後反応を止めた。拮抗物質アッセイの場合、5分間室温で拮抗物質とともに細胞をインキュベートし、続いて50nMのNECAを添加した。次いで、37℃、5% CO2で5時間細胞をインキュベートし、その後PBSで2回細胞を洗浄することにより実験を停止させた。50μLの1xIysis緩衝液(プロメガ(Promega)、5x原液、使用前に1xに希釈する必要がある)を各ウェルに添加し、プレートを−20℃で冷凍した。B−ガラクトシダーゼ酵素熱量アッセイでは、プレートを室温で解凍し、50μLの2xアッセイ緩衝液(プロメガ)を各ウェルに添加した。37℃で1時間、又は妥当なシグナルが現れるまで、発色させた。次いで、150AL 1Mの炭酸ナトリウムで反応を止めた。プレートをVmaxマシーン(モレキュラー・デバイシズ(Molecular Devices))を用いて405nmでカウントした。マイクロソフト・エクセル(Microsoft Excel)及びグラフパッド・プリズム(GraphPad Prism)プログラムでデータを解析した(チェン(Chen),W.B.;シールズ(Shields),T.S.;コーン(Cone),R.、Analytical Biochemistry、1995年、226巻、349頁;スタイルズ(Stiles),G.、Journal of Biological Chemistry、1992年、267巻、6451頁);C57bl/6マウスにおけるハロペリドール誘導性カタレプシー研究(Haloperidol-induced catalepsy study in C57bl/6 mice)成体雄C57bl/6マウス(ACE製9〜12週齢)をげっ歯類用の部屋でケージあたり2匹ずつ飼育した。室温を64〜79度に維持し、湿度は30〜70%、部屋の照明は12時間明期12時間暗期サイクルにした。実験日に、マウスを実験室に移した。マウスにハロペリドール(シグマ(Sigma)H1512、0.3%酒石酸中で1.0mg/mLにし、次いで生理食塩水によって0.2mg/mLに希釈)又はビヒクルを、1.5mg/kg、7.5mL/kgで皮下注射した。次いでマウスを水及び食餌を入手可能なホームケージに入れた。30分後、マウスに10mg/kg、10mL/kgのビヒクル(生理食塩水中0.3%のTween80)又は化合物(化合物、1mg/mL、生理食塩水中0.3%のTween80にし、超音波処理して均一な懸濁液を得た)を経口投与した。次いでマウスを水及び食餌を入手可能なホームケージに入れた。経口投与の1時間後、カタレプシー試験を実施した。垂直な金属ワイヤの格子(1.0平方cm)を試験に用いた。
【0047】
マウスを格子の中に入れ、落ち着くまで数秒間待ち、マウスが後肢を動かすまで不動時間を記録した。マウスをやさしく格子から出し、格子に戻し、再び不動時間を記録した。測定を3回繰り返した。データ解析には3回の測定の平均を用いた。
【0048】
【表1】

【0049】
AMESアッセイ条件
この研究の目的は、インビトロにおける、ミクロソーム活性化系の存在下及び非存在下で処理されたとき、本発明の化合物が細菌の点変異の復帰(reverse-point mutation)を誘導する能力を評価することであった。
【0050】
ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)株TA98、TA100、TA1535、TA1537及び大腸菌株WP2uvrAを用いて、細菌/ミクロソーム活性化プレート導入アッセイにおいて化合物を試験した。この研究は、アロクロール(Aroclor)(登録商標)1254誘導性ラット肝臓ミクロソーム調製物(S9ミックス)による、代謝活性化の非存在下(緩衝液)及び存在下における試験を含んでいた。プレートあたり5、10、25、50、100、250、500、1000、2500、及び5000μgの用量で、両方の代謝条件下における全ての株について化合物を試験した。アミノ酸原栄養性(それぞれ、ネズミチフス菌又は大腸菌に対してヒスチジン又はトリプトファン)の表現型復帰により突然変異を検出した。適切な同時ビヒクル対照で観察される少なくとも2倍の復帰突然変異体頻度の用量依存的増加を誘導する場合(TA1535及びTA1537では3倍)、試験物品は陽性(変異原性)であると考えられる。更に、反応は再現可能であるべきである。コロニー数の用量依存的減少及び/又は菌叢の減少/非存在により毒性を検出した。両方の突然変異及び毒性を比較するためにビヒクル処理プレートが標準して機能した。陽性対照プレートを用いて、試験系の機能性を保証した。
【0051】
許容できる陰性対照及び陽性標識の結果を、S9ミックスの非存在下及び存在下で全ての株について得た。これは、試験系が機能し、反応したことを保証した。
【0052】
AMESアッセイ結果
以下の結果は、本発明の3種の化合物の望ましいAMES陰性特性を示す。アッセイで試験した化合物の全てがAMES陰性であったわけではない。比較のために、望ましくないAMES陽性特性を有する2種の類似分子を示す。このアッセイでは、AMES陰性は望ましい特性であると考えられる。
【0053】
【化5】

【0054】
上述の明細書は、例示を目的として提供される実施例とともに、本発明の原理を教示するが、本発明の実践は、以下の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に含まれる全ての通常の変形、改作及び/又は修正を包含することが理解されるであろう。
【0055】
上記明細書で開示した全ての刊行物は、その全文を参照により本明細書に組み込むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

の化合物、並びにその溶媒和物、水和物、互変異性体、及び製薬上許容できるそれらの塩類。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物と、製薬上許容できる担体と、を含む医薬組成物。
【請求項3】
治療的に有効な用量の請求項1に記載の化合物を被験体に投与することを含む、被験体の適切な細胞内でアデノシンA2a受容体に拮抗することにより寛解する疾患を有する被験体を治療する方法。
【請求項4】
被験体の適切な細胞内でアデノシンA2a受容体に拮抗することにより寛解する疾患を引き起こすことが予期される事象の前又は後に、被験体に予防的に有効な用量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、被験体の適切な細胞内でアデノシンA2a受容体に拮抗することにより寛解する疾患を予防する方法。
【請求項5】
治療的に又は予防的に有効な用量の請求項2に記載の医薬組成物を被験体に投与することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
治療的に又は予防的に有効な用量の請求項2に記載の医薬組成物を被験体に投与することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記疾患が、神経変性疾患又は運動性疾患である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記疾患が、パーキンソン病、ハンチントン病、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、アルツハイマー病、及び老年性認知症からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記疾患が、神経変性疾患又は運動性疾患である、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記疾患が、パーキンソン病、ハンチントン病、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、アルツハイマー病、及び老年性認知症からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記疾患が、パーキンソン病である、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記疾患が、嗜癖である、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記疾患が、ADHDである、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記疾患が、鬱病である、請求項3に記載の方法。
【請求項15】
前記疾患が、不安症である、請求項3に記載の方法。

【公表番号】特表2011−500819(P2011−500819A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531141(P2010−531141)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/080256
【国際公開番号】WO2009/055308
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】