説明

アリールアミン化合物、アリールアミン化合物の合成方法、有機電界発光素子

【課題】有機電界発光素子を構成する有機材料として好適に用いられるアリールアミン化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示されるアリールアミン化合物。
【化1】


ただし一般式(1)中におけるLは炭素数3以上の脂環族炭化水素基を示し、Arは炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリーレン基を示し、Ar1およびAr2はそれぞれ炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基を示し、またnは1以上の整数を示すと共に、nが2以上の場合には全てのArがL中の異なる炭素原子を介在してLに連結している。このアリールアミン化合物は、有機電界発光素子の有機層を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子用の有機材料として好適に用いられるアリールアミン化合物、その合成方法、およびこれを用いた有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量で高効率のフラット型表示装置として、有機電界発光素子を用いた表示装置が注目されている。有機電界発光素子は、自発光素子であるため、これを用いた表示装置は、応答速度が高速であると共に、視野角依存性がなく、しかも低消費電力化が可能である。
【0003】
また、このような構成の有機電界発光素子は自発光素子であるため、この有機電界発光素子を用いて表示装置を構成する場合、有機電界発光素子の長寿命化および信頼性の確保が最も重要な課題の一つである。このため、有機電界発光素子を構成する有機材料に関する研究が取り進められている。
【0004】
例えば、有機電界発光素子における発光材料としては、アリールアミンを置換基として有する化合物が発光材料として好適に用いられている。また芳香族炭化水素の代表的な骨格として青色発光を示すピレン誘導体が知られており、例えば、ジフェニルアミノピレン(D−1)が青色発光材料として開示されている(下記特許文献1)。
【0005】
また、上述した有機電界発光素子の課題の一つに輝度劣化がある。そして、その劣化要因としては、従来から指摘されているような有機材料の分解や酸化の他に、有機材料の結晶化に伴う薄膜の不均一化が考えられている。したがって、輝度劣化を抑制するには、有機材料の結晶化を抑制することが望まれており、その指標として有機材料のガラス転移温度(Tg)の向上が求められてきた。
【0006】
有機材料のガラス転移点を向上させる方法として、例えば分子骨格的に剛直性であることが知られているアダマンタンを用いる方法がある。例えば,1,1−ビス(4−ジーp−トリアミノフェニル)シクロヘキサンは、有機電界発光素子における正孔輸送材料として公知な材料であるが、その中心骨格をシクロヘキサン部位からアダマンタン部位に代え、このアダマンタンの2級炭素に2つのアリールアミノ基を結合させた構成が提案されている。そして、このような構成とすることにより、正孔輸送材料のガラス転移温度が向上し、耐結晶性および耐熱性が向上するとしている(下記特許文献2および特許文献3参照)。さらに、このようなアダマンタンの2級炭素に2つのアリールアミノ基を結合させた構成の有機材料は、発光層を構成するホスト材料としても機能するとしている(下記特許文献4参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平5-21161号公報
【特許文献2】特開平7−145116号公報
【特許文献3】特開2001−110572号公報
【特許文献4】特開2002−270374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上説明したように、有機電界発光素子の有機層を構成する材料には、発光材料として好適な色純度を有する材料や、ガラス転移温度(Tg)が高く耐熱性の高い材料、さらにはこれらを併せ持つ材料の開発が進められている。
【0009】
しかしながら、上述した何れの材料であっても、有機電界発光素子に必要とされる耐熱性や発光特性の点で充分な特性を得ることができていないのが実状であり、さらなる耐熱性の向上や、発光材料であればこれに加えてさらなる色純度の向上が求められている。例えば、上述したアリールアミンを置換基として有する化合物は、耐熱性に劣るため、素子劣化が早いと言う課題があった。
【0010】
そこで本発明は、有機電界発光素子を構成する有機材料として好適に用いられるアリールアミン化合物を提供すること、さらには特定のアリールアミン化合物の合成方法を提供すること、およびこのアリールアミン化合物を用いて有機層を構成することにより、色純度や素子劣化を抑えることができる有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するための本発明のアリールアミン化合物は、一般式(1)で示されるように、脂環族炭化水素基にアリーレン基を介してアリールアミノ基を結合させてなるアリールアミン化合物である。
【化8】

【0012】
上記一般式(1)中において、Lは、炭素数3以上の脂環族炭化水素基を示し、一例としてはアダマンタンが好適に用いられる。
【0013】
また一般式(1)中におけるArは、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリーレン基を示す。このアリーレン基は、ヘテロアリーレン基を含み、一例としてフェニレン基であることが好ましい。
【0014】
さらにAr1およびAr2は、それぞれ炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基を示す。これらのアリール基は、ヘテロアリール基を含む。そしてAr1とAr2とは、それぞれが異なる基であっても良い。
【0015】
そしてnは、1以上の整数を示す。特にそしてnが2以上の場合には、窒素(N)を含むn個の化合物基の全てがL中の異なる炭素原子を介在してLに結合していることとする。このように、Nを含む化合物基を異なる炭素原子に対して結合させることにより、このアリールアミン化合物を発光材料として用いた場合に、Nを含む化合物基からなる発色団が近接することによる二分子相互作用が抑えられ、励起状態においては一分子発光のみを取り出した色純度の良好な発光を得ることができる。つまり、特許文献2〜4で説明した構成の化合物を発光材料に用いようとした場合には、2級炭素に2つのアリールアミノ基が結合しているため、二分子相互作用が発生して二分子発光(例えばダイマー発光)が伴うため、自己会合による長波長化に起因する色純度の劣化が生じるのである。
【0016】
ここで、一般式(1)中におけるLとしては、アダマンタンが好適に用いられる。このような一般式(2)のアリールアミン化合物において、nは1≦n≦4の整数である。そして、nが2以上の場合、窒素(N)を含むn個の化合物基の全てがアダマンタンの異なる炭素原子に結合していることとになる。このような構成においてn個の化合物基がアダマンタンにおける3級炭素のみに結合していることが好ましい。
【化9】

【0017】
分子骨格的に剛直性であるアダマンタンを備えたことにより、このアリールアミン化合物の耐熱性が向上し、ガラス転移点を向上させることができる。そして、n個の化合物基を、アダマンタンの3級炭素のみに結合させた構成では、nが2以上の整数であっても、n個の化合物の複数が同一の炭素に結合することはない。
【0018】
また、この一般式(2)のArは、置換または無置換のフェニレン基であることが好ましく、この場合一般式(3)に示すアリールアミン化合物が示される。Arをフェニレン基とすることにより、一般式(2)を得るための合成収率を高めることができ、工業的観点では有利となる。
【化10】

【0019】
尚、一般式(1)〜一般式(3)中において、Ar1,Ar2は、同様の基を示すが、中、n個の化合物基において、各Ar1が同一であっても異なっていても良く、同じくAr2が同一であっても異なっていても良い。ただし、n個の化合物基の全てが同一であることにより、このアリールアミン化合物の合成が容易になる。
【0020】
そして、本発明はこのような上述したアリールアミン化合物の合成方法、さらにはこのアリールアミン化合物を用いて有機層が構成された有機電界発光素子でもある。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、脂環族炭化水素基にアリーレン基を介してアリールアミノ基を結合させてなるアリールアミン化合物において、n個の化合物基の全てを脂環族炭化水素基中の異なる炭素原子に結合させた新規な構成としたことにより、例えばこのアリールアミン化合物を用いて色純度の良好な発光材料を構成することが可能になると共に、耐熱性の良好な有機層を構成することが可能になる。したがって、このアリールアミン化合物を有機電界発光素子の有機層に用いることにより、有機電界発光素子における色純度の向上を図ることができると共に素子劣化を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下本発明の実施の形態を、アリールアミン化合物、アリールアミン化合物の合成方法、有機電界発光素子の順に説明する。
【0023】
<アリールアミン化合物>
上記一般式(1)〜(3)を用いて示されるアリールアミン化合物のさらに具体的な例を示す。
【0024】
本発明のアリールアミン化合物を示す一般式(1)におけるLは、炭素数3以上の脂環族炭化水素基で示される連結基であり、2つのアリール基Ar1,Ar2を備えたアミノ基をアリーレン基Arに結合させたn個の化合物基を連結している。nは、1以上の整数を示すが、Lが有する結合可能な炭素原子の数以下の整数であり、2以上であればより好ましい。そしてnが2以上の場合には、窒素(N)を含むn個の化合物基の全てがL中の異なる炭素原子を介在してLに連結していることとする。また、nが2以上の場合、n個の化合物基はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。
【化11】

【0025】
そして、例えば一般式(1)中のn=2の場合には以下のような構成部位L1〜L20を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【表1】

【0026】
また例えば一般式(1)中のn=3の場合には、以下のような構成部位L21〜L39を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【表2】

【0027】
以上のうち、脂環族炭化水素基Lとしてアダマンタンを用いたL20,L39が好適に示される。また脂環族炭化水素基Lとしてアダマンタンを用いたその他の例としては、アダマンタンにおける4つの3級炭素に1つづつ、n個の化合物基(アミノ基を含む化合物基)が連結する構成が示される。これらのアダマンタンを用いた例は、一般式(2)の例ともなる。
【化12】

【0028】
次に、一般式(1)および一般式(2)中におけるArは、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリーレン基を示す。このアリーレン基は、ヘテロアリーレン基を含むが、一例としてフェニレン基であることが好ましい。
【0029】
また一般式(1)および一般式(2)中におけるAr1およびAr2は、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基を示す。このアリール基は、ヘテロアリール基を含む。そして、Ar1およびAr2は、同一であっても異なっても良い。また、nが2以上の場合、n個の化合物基における各Ar1は同一であっても異なっていても良く、各Ar1は同一であっても異なっていても良い。
【0030】
このようなAr1およびAr2として用いられるアリール基の一例を以下に示す。尚、Arとして用いられるアリーレン基は、以下に示す基の2置換基が用いられる。
【0031】
すなわちAr1およびAr2として用いられるアリール基は、例えば,フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、フルオレニル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、1−クリセニル基6−クリセニル基,2−フルオランテニル基,3−フルオランテニル基,2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基等が挙げられる。
【0032】
また、Ar1およびAr2として用いられるヘテロアリール基の例としては、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、などが挙げられる.
【0033】
このうち、Arとして、アリーレン基を用いた好ましい例が、下記一般式(3)の例となる。
【化13】

【0034】
また以上示した一般式(1)〜(3)中におけるL,Ar,Ar1,Ar2に対して置換をしてもよいものとしては,直鎖アルキル基,分岐鎖アルキル基,環状アルキル基,ハロゲン、ヒドロキシル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、シアノ基、ニトロ基、またはシリル基などが挙げられる。
【0035】
また、上記のカルボニル基は、アルデヒド基、ケトン基およびカルボキシル基を含む。そして、上記のアルキル基は、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、環状アルキル基を含む。
【0036】
以下、上記一般式(1)で表される代表的な構造例を下記表3-1〜表6に示すが、本発明はこれらの分子骨格に限定されるものではなく、一般式(1)を用いて説明した範囲であれば良い。
【0037】
先ず、下記表3-1および表3-2には、一般式(1)においてn=1の場合、すなわち炭素数3以上の脂環族炭化水素Lに対して、アミノ基を含む化合物基が1つのみ連結された構成の一例を示す。特に表3-2は、一般式(1)におけるLがアダマンタンである一般式(2)の一例である。
【表3−1】

【表3−2】

【0038】
下記表4-1〜表4-3には、一般式(1)においてn=2の場合についての、L、Ar、Ar1、およびAr2の組み合わせの一例を示す。特に表4-2および表4-3には、一般式(1)におけるLがアダマンタンである一般式(2)の一例を示した。中でも、表4-2には、アダマンタンの3級炭素のみに化合物基が結合される構成の一例を示した。
【表4−1】

【表4−2】

【表4−3】

【0039】
下記表5は、一般式(1)においてn=3の場合についての、L、Ar、Ar1、およびAr2の組み合わせの一例を示す。ここで示した例は、特に一般式(2)および一般式(3)の一例にも対応する。またこれらの例は、アダマンタンの3級炭素のみに化合物基が結合される構成の例である。
【表5】

【0040】
下記表6は、一般式(1)においてn=4の場合についての、L、Ar、Ar1、およびAr2の組み合わせの一例を示した。ここで示した例は、特に一般式(2)および一般式(3)の一例にも対応する。またこれらの例は、アダマンタンの3級炭素のみに化合物基が結合される構成の例である。
【表6】

【0041】
<アリールアミン化合物の合成方法>
次に、上述したアリールアミン化合物の合成方法を説明する。ここでは、特に一般式(3)で示したアダマンタンを備えたアリールアミン化合物の合成方法を説明する。
【0042】
すなわち、下記一般式(3)で示されるアダマンタンを備えたアリールアミン化合物を合成する場合には、下記一般式(4)で表される中間体を経由することが好ましい。
【化14】

【0043】
ここで、先に述べたように、一般式(3)中におけるAr1およびAr2はそれぞれ炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基を示し、nは1≦n≦4の整数であると共にnが2以上の場合にはn個の化合物基の全てがアダマンタンにおける異なる3級炭素のみに結合している。そして、一般式(4)中におけるXはハロゲンまたは水酸基を示し、nは一般式(3)中のnと同一である。また、一般式(4)と一般式(3)とで、アダマンタンに対するn個の化合物基の結合位置も同一であることとする。
【0044】
一般式(4)中におけるXとしてのハロゲンには、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられるがこの中でも臭素もしくはヨウ素が好ましい。
【0045】
そして、一般式(4)の中間体は、例えばルイス酸を触媒としたフリーデルクラフト反応によって得ることができる。すなわち、原料であるハロゲン化アダマンタンに対してハロゲン化ベンゼンもしくはフェノールをルイス酸と接触させることによって、一般式(2)で示される中間体が合成される。この際、ハロゲン化アダマンタンは、一般式(3)および一般式(4)におけるアダマンタンの置換部位と同じ部位にハロゲンが置換されていることとする。
【0046】
またここで触媒として用いるルイス酸は、従来公知の各種のもの、例えば、四塩化チタン、四塩化スズ、四塩化ケイ素、四塩化ジルコニウム、三塩化鉄、三塩化ガリウム、三塩化ホウ素、四塩化ハフニウム、四塩化ゲルマニウム、三塩化アルミニウム、三塩化インジウム、五塩化アンチモン等の金属ハロゲン化物が挙げられるが、これらの中でも三塩化アルミニウム、三塩化鉄が好ましい。
【0047】
以上のような合成方法においては、ハロゲン化アダマンタンに対して0.1〜10モル%、より好ましくは1〜5モル%程度の割合で、触媒としてのルイス酸が用いられる。また、反応温度は、−10℃〜100℃,好ましくは0℃〜60℃であることが好ましい。
【0048】
そして、一般式(4)の中間体から一般式(3)のアリールアミン化合物を合成する場合には、下記合成式(1)に示すように、一般式(3)と同様のアリール基Ar1,Ar2を備えた特定の2級アミンとのカップリング反応を利用する。ただし、このカップリング反応は、一般式(4)のXがハロゲンもしくは水酸基をトリフレート化した置換基の場合である。
【化15】

【0049】
また以上のようなカップリング反応としては、例えば銅触媒を用いるウルマン反応、さらにはパラジウム触媒/リン系助触媒を用いるカップリング反応も有用である。
【0050】
このうち、パラジウム触媒/リン系助触媒によるカップリング反応において、パラジウム触媒としては、例えばPd(OAc)2(酢酸パラジウム(II))、Pd2(dba)3(トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(O))、Pd(dba)2(ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(O))、およびPd(dppf)Cl2((1,1’−ビス−(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)ジクロロパラジウム(II))等が用いられる。
【0051】
また、リン系配助触媒としては、例えばP(t−Bu)3(トリ−t−ブチルホスフィン)、BINAP((2,2’−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル)、P(o−Tol)3(トリ−o−トレイルホスフィン)、DPPF(1,1’−ビス−(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)、DPPP(1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)プロパン)等、塩基として、NaOtBu、CsCO3、K2CO3、NaOPh(ナトリウムフェノキシド)等が挙げられる。
【0052】
そして、この反応における上記パラジウム触媒の使用量は、原料1モルに対しパラジウム換算で通常0.000001〜100モル%の範囲内で行われ、より好ましくは、0.0001〜10モル%の範囲内である。ただし、パラジウム化合物の触媒残渣は、合成される有機材料に対して影響を及ぼすため、反応が促進される範囲の使用量であれば少ないほどよい。
【0053】
また、このようなパラジウム触媒/リン系助触媒を用いるカップリング反応は、有機溶媒を用いる均一溶解状態もしくはスラリー状態、水と有機溶媒の二層系混合状態で適用される。ここで有機溶媒としてはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラハイドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどの酸エステル類、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホトリアミド等を挙げることができる。この中でも好ましい溶媒としてはベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素溶媒が挙げられる。
【0054】
反応温度は、通常0〜200℃程度、好ましくは50〜150℃であり、そのとき反応雰囲気としては空気の他、窒素、二酸化炭素、アルゴンなどの不活性ガスなどが挙げられ、特に不活性ガス雰囲気下で反応することが好ましい。
【0055】
以上においては、一般式(1)に示したアリールアミン化合物のうち一般式(3)に示したアダマンタンを備えたアリールアミン化合物を合成する方法を説明したが、一般式(3)を含む一般式(1)に示したアリールアミン化合物は、例えば次のa)〜d)の方法の組み合わせによって合成することができる。
【0056】
a)ハロゲン化された多環系脂環族炭化水素化合物にマグネシウムを用いたグリニヤー反応によって置換基を導入させる合成方法。
b)ハロゲン化アリールを有する多環系脂環族炭化水素化合物に対し,芳香族アミン化合物を銅触媒存在下でウルマン反応によってカップリングさせる方法。
c)ボロン酸、もしくはボロン酸エステル化された芳香族アリールアミンとハロゲン化された多環系脂環族炭化水素化合物とを、パラジウムに代表される遷移金属触媒によってカップリングさせる方法。
d)ハロゲン化された多環系脂環族炭化水素に対してルイス酸の存在下、特定の芳香族化合物とフリーデルクラフト反応によって合成させる方法。
【0057】
そして、以上のようにして合成されたアリールアミン化合物は、次に説明するように、有機電界発光素子の有機層を構成する材料として用いられるものであり、有機電界発光素子の製造プロセスに供する前に純度を高めておくことが好ましく、該純度が95%以上、より好ましくは99%以上とするのがよい。かかる高純度の有機化合物を得る方法としては有機化合物の合成後の精製である再結晶法、再沈殿法、もしくはシリカやアルミナを用いたカラム精製のほかに、昇華精製やゾーンメルト法による公知の高純度化方法を用いることができる。
【0058】
また、これらの精製方法を繰り返し行うことや異なる精製法を組み合わせて行うことで本発明における有機発光材料中の未反応物、反応副生成物、触媒残渣、もしくは残存溶媒などの混合物を低減させ、よりデバイス特性の優れた有機電界発光素子を得ることが可能となる。
【0059】
さらに本発明のアリールアミン化合物は、光や酸素といった外因から以下に掲げるa)〜c)の保管方法をとることによって、その酸化、分解からの劣化反応を抑制し、特にこの有機発光材料を用いて構成される有機電界発光素子において、より優れた発光特性をもたらすことだけでなく、製造装置の負荷の軽減などに効果を発揮する。
【0060】
a)有機発光材料を合成した後、速やかに冷所に静置させる。その保管温度は−100℃から100℃の範囲が好ましく、より好ましくは−50℃から50℃の温度範囲で保管させる。
b)有機発光材料を合成した後、速やかに遮光性を有する容器に保管する。
c)有機発光材料を合成した後、合成した有機発光材料を窒素、二酸化炭素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で保管する。
【0061】
<有機電界発光素子>
次に、上述したアリールアミン化合物を用いた有機電界発光素子(有機EL素子)の構成を、図1に基づいて詳細に説明する。
【0062】
図1に示す有機電界発光素子11は、基板12上に陽極13、有機層14、および陰極15をこの順に積層してなり、基板12と反対側から光を取り出す上面発光型の素子として構成されている。
【0063】
ここで、基板12は、その一主面側に有機電界発光素子11が配列形成される支持体であって、公知のものであって良く、例えば、石英、ガラス、金属箔、もしくは樹脂製のフィルムやシートなどが用いられるこの中でも石英やガラスが好ましく、樹脂製の場合には、その材質としてポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表されるメタクリル樹脂類、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル類、もしくはポリカーボネート樹脂などが挙げられるが、透水性や透ガス性を抑える積層構造、表面処理を行うことが必要である。
【0064】
この基板12上に設けられる陽極13には、効率良く正孔を注入するために電極材料の真空準位からの仕事関数が大きいもの、例えばクロム(Cr)、モリブテン(Mo)、タングステン(W)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、酸化スズ(SnO2)とアンチモン(Sb)との合金、ITO(インジウムチンオキシド)、InZnO(インジウ亜鉛オキシド)、酸化亜鉛(ZnO)とアルミニウム(Al)との合金、さらにはこれらの金属や合金の酸化物等が、単独または混在させた状態で用いられる。この陽極13は例えばスパッタリング法等により作製することができる。
【0065】
そして、この有機電界発光素子11を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合には、陽極13は画素毎にパターニングされ、基板12に設けられた駆動用の薄膜トランジスタに接続された状態で設けられている。また、この陽極13の上には、ここでの図示を省略したが絶縁膜が設けられ、この絶縁膜の開口部から、各画素の陽極13の表面が露出されるように構成されていることとする。
【0066】
そして、この陽極13上に設けられた有機層14が、本発明に特有のアリールアミン化合物を用いて構成された層となる。この有機層14は、例えば陽極13側から順に、正孔注入層14a、正孔輸送層14b、発光層14c、および電子輸送層14dの4層を積層してなるものである。
【0067】
そして、本発明の有機電界発光素子11においては、正孔輸送層14b、発光層14c、および電子輸送層14dの少なくとも一層が、上述したアリールアミン化合物を用いて構成されているのである。特に、発光層14cが、上述したアリールアミン化合物を用いて構成されることが好ましい。
【0068】
ここで、正孔注入層14aおよび正孔輸送層14bは、それぞれ発光層14cへの正孔注入効率を高めるためのものである。このような正孔注入層14a、もしくは正孔輸送層14bの材料としては、例えば、ベンジン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキザゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、あるいはこれらの誘導体、または、ポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマー、オリゴマーあるいはポリマーを用いることができる。
【0069】
具体的には、α−ナフチルフェニルフェニレンジアミン、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリン、金属ナフタロシアニン、4、4、4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、N、N、N’、N’−テトラキス(p−トリル)p−フェニレンジアミン、N、N、N’、N’−テトラフェニル−4、4’−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾール、4−ジ−p−トリルアミノスチルベン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリ(2、2’−チエニルピロール)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
そして、発光層14cは、陽極13と陰極15による電圧印加時に、陽極13と陰極15のそれぞれから正孔および電子が注入され、さらにこれらが再結合する領域である。このような発光層14cは、発光効率が高い材料、例えば、低分子蛍光色素、蛍光性の高分子、金属錯体等の有機材料から構成されている。具体的には、例えば、アントラセン、ナフタレン、インデン、フェナントレン、ピレン、ナフタセン、トリフェニレン、アントラセン、ペリレン、ピセン、フルオランテン、アセフェナントリレン、ペンタフェン、ペンタセン、コロネン、ブタジエン、クマリン、アクリジン、スチルベン、あるいはこれらの誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体、トリ(ジベンゾイルメチル)フェナントロリンユーロピウム錯体ジトルイルビニルビフェニルが挙げられる。
【0071】
中でも、この発光層14cに、一般式(1)〜一般式(3)を用いて説明した上述のアリールアミン化合物が発光材料(蛍光性ドーパント)としてとして添加されることが好ましい。そして、この際の発光材料(アリールアミン化合物)の添加量は、20体積%以下であることとする。また、このようなアリールアミン化合物からなる発光材料をゲスト材料として組み合わせて用いられるホスト材料としては、アントラセン誘導体を用いることが好ましい。これにより、ホストから蛍光性ドーパントに対して高効率なエネルギー移動を促し、高い発光効率を得ることが可能となる。
【0072】
また、電子輸送層14dは、陰極15から注入される電子を発光層14cに輸送するためのものである。電子輸送層14dの材料としては、例えば、キノリン、ペリレン、フェナントロリン、ビススチリル、ピラジン、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、フルオレノン、またはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。具体的には、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(略称Alq3 )、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、アントラセン、ペリレン、ブタジエン、クマリン、アクリジン、スチルベン、1,10−フェナントロリンまたはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。
【0073】
これらの各層は、例えば真空蒸着法や、スピンコート法などの方法によって形成することができる。特に、発光層14cの形成においては、発光層14cでの発光スペクトルの制御を目的として、発光層14cを形成する際に微量の蛍光分子の共蒸着を行っても良い。この場合、例えば蛍光分子として、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、ナフタセン誘導体、ベリレン誘導体、クマリン誘導体、ピラン系色素等の有機物質を微量含む有機薄膜により発光層14cを形成するようにしてもよい。
【0074】
尚、有機層14は、このような層構造に限定されることはなく、少なくとも発光層14cと共に、陽極13と発光層14cとの間に、正孔輸送層14aまたは正孔注入層14bを有する構成であれば、必要に応じた積層構造を選択することができる。
【0075】
また、発光層14cは、正孔輸送性の発光層や電子輸送性の発光層として有機電界発光素子11に設けられていても良い。さらに、以上の有機層14を構成する各層、例えば正孔注入層14a、正孔輸送層14b、発光層14c、および電子輸送層14dは、それぞれが複数層からなる積層構造であっても良い。
【0076】
そして、このような有機層14を構成する有機化合物は、電場が印加されることによって蛍光やリン光が発光する化合物を用いることのほかに、電子、若しくは正孔(ホール)の輸送能を有する化合物が適宜用いられることとする。
【0077】
次に、このような構成の有機層14上に設けられる陰極15は、例えば、有機層14側から順に第1層15a、第2層15bを積層させた2層構造で構成されている。
【0078】
第1層15aは、仕事関数が小さく、かつ光透過性の良好な材料を用いて構成される。このような材料としては、例えばリチウム(Li)の酸化物である酸化リチウム(Li2O)や、セシウム(Cs)の酸化物である酸化セシウム(Cs2O)、さらにはこれらの酸化物の混合物を用いることができる。また、第1層15aは、このような材料に限定されることはなく、例えば、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属、リチウム、セシウム等のアルカリ金属、さらにはインジウム(In)、マグネシウム(Mg)等の仕事関数の小さい金属、さらにはこれらの金属の酸化物等を、単体でまたはこれらの金属および酸化物の混合物や合金として安定性を高めて使用しても良い。
【0079】
第2層15bは、例えば、MgAgなどの光透過性を有する層を用いた薄膜により構成されている。この第2層15bは、さらに、アルミキノリン錯体、スチリルアミン誘導体、フタロシアニン誘導体等の有機材料を含有した混合層であっても良い。この場合には、さらに第3層としてMgAgのような光透過性を有する層を別途有していてもよい。
【0080】
以上の陰極15を構成する各層は、真空蒸着法、スパッタリング法、更にはプラズマCVD法などの手法によって形成することができる。また、この有機電界発光素子11を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合、陰極15は、有機層14とここでの図示を省略した上述の絶縁膜とによって、陽極13と絶縁された状態で基板12上にベタ膜状に形成され、各画素の共通電極として用いられる。
【0081】
なお、陰極15は上記のような積層構造に限定されることはない。この積層構造は電極各層の機能分離(例えば電子注入を促進させる無機層と電極を司る無機層との機能分離)を行った際に必要なものである。したがって、第2層15bのみで構成したり、第1層15aを形成した後にITOなどの透明電極を形成したりすることも可能であり、作製されるデバイスの構造に応じて最適な組み合わせ、積層構造を取れば良いことは言うまでもない。
【0082】
そして上記した構成の有機電界発光素子11に印加する電流は通常、直流であるが、パルス電流や交流を用いてもよい。電流値、電圧値は、素子は介しない範囲内であれば特に制限はないが、有機電界発光素子の消費電力や寿命を考慮すると、なるべく小さい電気エネルギーで効率良く発光させることが望ましい。
【0083】
なお、図1に示した有機電解発光素子においては、陽極13にITO等よりなる透明電極を用いることにより上下の両サイドから光を取り出す構成であっても良い。
【0084】
また、この有機電界発光素子11が、キャビティ構造となっている場合、有機層14と透明材料あるいは半透明材料からなる電極層との合計膜厚は、発光波長によって規定され、多重干渉の計算から導かれた値に設定されることになる。そして、TFTが形成された基板上に上面発光型の有機電界発光素子を設けた、いわゆるTAC(Top Emitting Adoptive Current drive )構造では、このキャビティ構造を積極的に用いることにより、外部への光取り出し効率の改善や発光スペクトルの制御を行うことが可能である。
【0085】
以上のように構成された有機電界発光素子11においては、一般式(1)〜(3)を用いて説明したように、脂環族炭化水素基にアリーレン基を介してアリールアミノ基を結合させてなるアリールアミン化合物において、n個の化合物基の全てを脂環族炭化水素基中の異なる炭素原子に結合させた新規な構成のアリールアミン化合物を発光材料として用いて有機層14における発光層14cを構成している。これにより、Nを含む化合物基からなる発色団が近接することによる二分子相互作用が抑えられ、励起状態においては一分子発光のみを取り出したアリールアミノ基に特有の高い傾向性に基づく電界発光が、色純度良好に得ることができる。したがって、有機電界発光素子における色純度の向上を図ることが可能になる。
【0086】
特に、上記アリールアミン化合物として、一般式(1)中におけるAr1もしくはAr2にナフタレンやピレンを用いることにより青色発光領域の発光効率の向上を図ることが可能になる。そして、このような本発明の有機電界発光素子と共に、赤色発光素子および緑色発光素子を1組にして画素を構成することにより、色再現性の高いフルカラー表示が可能になる。
【0087】
またこれと共に、特にこのアリールアミン化合物を、アダマンタンを備えた構成とすることにより、このアリールアミン化合物の耐熱性が向上し、ガラス転移点を向上させることができる。この結果、有機電界発光素子における素子劣化を抑えて発光寿命の向上を図ることが可能になる。
【0088】
尚、以上の実施形態においては、本発明のアリールアミン化合物を発光層(電子輸送性発光層、正孔輸送性発光層、および両電荷輸送性発光層を含む)の構成材料として用いることのみを説明した。しかしながら、本発明のアリールアミン化合物が、上述したように耐熱性に優れており、また、アミノ基を備えたことで特に正孔輸送性を有していることからすれば、この有機発光材料を、発光層以外の層、例えば正孔輸送層さらには正孔注入層等を構成する材料として用いることもでき、これによってこれらの層における耐久性の向上を図ることが可能になる。特に、一般式(1)中におけるAr1およびAr2としてフェニル、ナフチルおよびそれらの誘導体を用いれば耐熱性が良好で正孔輸送性に優れた正孔輸送層を構成することが可能になる。
【実施例】
【0089】
次に、本発明のアリールアミン化合物の合成例、およびこのアリールアミン化合物を用いた本発明の有機電界発光素子の実施例について具体的に説明する。尚ここでは先ず、本発明のアリールアミン化合物の合成例1〜7を説明し、次いで合成したアリールアミン化合物を用いた各実施例の有機電界発光素子および各比較例の有機電界発光素子の作製手順、さらにはこれらの評価結果を説明する。
【0090】
<合成例1> 構造式(2)-12の合成
先ず、下記合成式(2)を参照し、次のようにして中間体C1を合成した。
【化16】

【0091】
メカニカルスターラーを装着させた100mlの三口フラスコを窒素で十分に置換した後に、1,3−ジブロモアダマンタン(11g,40mmol)、ブロモベンゼン20mlを順次溶媒に加えた後にルイス酸として三塩化鉄(640mg,4mmol)を加えた。室温で3時間攪拌した後に、50℃まで昇温させ、さらに6時間反応させた。反応終了後、アセトンを加え、析出した固体をさらにアセトンで十分に洗浄し、中間体C1として1,3−ビス(4−ブロモフェニル)アダマンタンを得た。中間体C1の収率は65%であった。
【0092】
その後、下記合成式(3)を参照し、以下のようにして構造式(2)-12のアリールアミン化合物を合成した。
【化17】

【0093】
先ず、メカニカルスターラーを装着させた200mlの三口フラスコを窒素で十分に置換した後に、中間体C1(2.1g、4.7mmol)、N−フェニル−N−(1−ナフチル)アミン(2.9g,9.9mmol)、銅、および炭酸カリウムを加え、マントルヒーターで200℃に加熱攪拌させた。反応は8時間行い、反応終了後に室温まで冷却し、トルエンを注ぎ入れた。有機層を水で3回洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。この溶液を濃縮させた後にヘキサン/トルエンの混合溶媒にてシリカカラムを通し、黄色固体3.5gを構造式(2)-12のアリールアミン化合物として収率80%で得た。
【0094】
得られた固体を1H−NMR、13C−NMR、およびFD−MSにて測定を行い、目的物である構造式(2)-12であることを確認した。得られた構造式(2)-12のアリールアミン化合物の物性を以下のように測定した。
ガラス転移点(DSC):120℃
加熱重量減少温度(TG):420℃
UV/Vis(1,4−ジオキサン中):λmax=340nm
蛍光波長(1,4−ジオキサン中):446nm
【0095】
ここで、有機ELの正孔輸送材料として知られている下記N、N’−ビス(1−ナフチル)−N、N’−ジフェニル[1、1’-ビフェニル]−4、4’―ジアミン(α−NPD)のガラス転移温度は95℃であることから、上記合成例1で得られた構造式(2)-12のアリールアミン化合物は、良好な耐熱性を有していることが確認された。
【化18】

【0096】
<合成例2> 構造式(2)-13の合成
合成例1において合成式(3)に示したN−フェニル−N−(1−ナフチル)アミンの代わりに、N−フェニル−N−(2−アンスリル)アミンを用いたほかは合成例1と同様の手順で合成を行い、構造式(2)-13のアリールアミン化合物を得た。
【0097】
<合成例3> 構造式(2)-16の合成(その1)
合成例1において合成式(3)に示したNーフェニルーN−(1−ナフチル)アミンの代わりにN−フェニル−N−(3−フルオランテニル)アミンを用いたほかは合成例1と同様の手順で合成を行い、構造式(2)-16のアリールアミン化合物を得た。
【0098】
<合成例4> 構造式(2)-15の合成
先ず、合成例1において合成式(2)を用いて説明したと同様にして中間体C1を合成した。
【0099】
その後、下記合成式(4)を参照し、以下のようにして構造式(2)-15のアリールアミン化合物を合成した。
【化19】

【0100】
先ず、メカニカルスターラーを装着させた500mlの三口フラスコを窒素で十分に置換した後に、上記で合成した中間体C1(2.1g、4.7mmol)、N−フェニル−N−ピレニルアミン(2.9g,9.9mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド(480mg、5mmol)を100mLのトルエンに溶解させた。
【0101】
その混合溶液を窒素にて10分間バブリングを行い溶液中の溶存酸素を十分に排気させた。続いてパラジウム触媒成分として酢酸パラジウム(25mg、120μmol)を一括で加え、攪拌しながらトルエン20mlに溶解させたトリ(t-ブチルフォスフィン)(95mg、470μmol)を滴下し、全量の投入が終了した後に昇温を開始して還流温度で8時間反応させた。
【0102】
反応終了後に室温まで冷却し、有機層を水で5回洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。この溶液を濃縮させた後にヘキサン/トルエンの混合溶媒にてシリカカラムを通し、黄色固体3.5gを構造式(2)-15のアリールアミン化合物として収率85%でを得た。
【0103】
得られた固体を1H−NMR、13C−NMR、およびFD−MSにて測定を行い、目的物である構造式(2)-15であることを確認した。得られた構造式(2)-15のアリールアミン化合物の特性を以下のように測定した。尚、図2には、合成した構造式(2)-15の吸収スペクトルと蛍光スペクトルとを室温で測定した結果を示す。
ガラス転移点(DSC):169℃
加熱重量減少温度(TG):520℃
UV/Vis(1,4−ジオキサン中):λmax=403nm(図2参照)
蛍光波長(1,4−ジオキサン中):468nm(図2参照)
【0104】
ここで、測定された蛍光波長が468nmであることから、上記のように合成された構造式(2)-15のアリールアミン化合物は、有機電界発光素子の発光材料、とりわけ青色発光材料として有用であることが各にされた。
【0105】
<合成例5> 構造式(3)-6の合成
合成例4において、合成式(2)に示した1,3−ジブロモアダマンタンの代わりに1,3,5−トリブロモアダマンタンを用いたほかは、合成例4と同様の手順で合成を行い、構造式(3)-6のアリールアミン化合物を得た。
【0106】
<合成例6> 構造式(4)-2の合成(その1)
合成例4において、合成式(2)に示した1,3−ジブロモアダマンタンの代わりに1,3,5,7−テトラブロモアダマンタンを用いたほかは、合成例4と同様の手順で合成を行い、構造式(4)-2のアリールアミン化合物を得た。
【0107】
<合成例7> 構造式(2)-16の合成(その2)
先ず、下記合成式(5)を参照し、次のようにして中間体C2を合成した。
【化20】

【0108】
すなわち、合成例1において、合成式(2)に示したブロモベンゼンの代わりにフェノールを用い、反応温度を80℃として行った以外は合成式(2)を用いて説明したと同様の手順を行い、中間体C2として1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンを得た。中間体C2の収率は51%であった。
【0109】
その後、下記合成式(6)を参照し、以下のようにして中間体C3を合成した。
【化21】

【0110】
先ず、メカニカルスターラーを装着させた500mlの三口フラスコを窒素で十分に置換した後に、中間体C2である1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン(6.4g、20mmol)を100mlのクロロホルムに溶解させ氷温まで冷却させた。攪拌しながらピリジン4gを注いだ後にトリフルオロメタン無水スルホン酸(11g,42mmol)を30分かけて滴下し、全量投入後に一時間氷温で反応させ、さらに室温で8時間反応させた。
【0111】
反応終了後にピリジンをエバポレートし,続いてトルエンを注ぎ入れ有機層を水で3回洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。この溶液を濃縮させた後にヘキサン/トルエンの混合溶媒にてシリカカラムを通し、中間体C3を収率62%で得た。
【0112】
次に、下記合成式(7)を参照し、以下のようにして構造式(2)-16のアリールアミン化合物を合成した。
【化22】

【0113】
先ず、メカニカルスターラーを装着させた300mlの三口フラスコをアルゴンで十分に置換した後に、溶媒として100mlのTHFを注ぎ、続いて、中間体C3(5.8g、10mmol)、3−フルオランテニルフェニルアミン(6.5g、22mmol)を加え、さらに触媒として酢酸パラジウム(90mg、0.4mmol)、BINAP(370mg、0.6mmol)、および炭酸セシウム(7.2g、22mmol)を加えて、ゆっくりと70℃まで昇温させた。反応は70℃で30時間行った。反応終了後水で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後に濃縮し、トルエン/酢酸エチル混合溶媒にてシリカカラムを通し、構造式(2)−16の固体化合物5g(収率57%)を得た。
【0114】
得られた固体を1H−NMR、13C−NMR、およびFD−MSにて測定を行い、目的物である構造式(2)-16であることを確認した。得られた構造式(2)-16のアリールアミン化合物の物性を以下のように測定した。
ガラス転移点(DSC):165℃
加熱重量減少温度(TG):510℃
UV/Vis(1,4−ジオキサン中):λmax=485nm
蛍光波長(1,4−ジオキサン中):531nm
【0115】
上記のように蛍光波長は531nmであることから、本合成例で示された構造式(2)-16のアリールアミン化合物は有機電界発光素子の発光材料、とりわけ緑色発光材料として有用であることが確認された。
【0116】
<実施例1>透過型発光素子
合成例1によって得られた構造式(2)-12のアリールアミ1化合物を用い、以下のように透過型の有機電界発光素子(図1参照)を作製した。
【0117】
膜厚が190nmのITO透明電極(陽極13)を有するガラス基板(ITO基板12)を、中性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄した。このITO基板を乾燥後、さらにUV/オゾン処理を10分間行った。次いで、このITO基板を蒸着装置の基板ホルダーに固定した後、蒸着槽を1.4×10-4Paに減圧した。
【0118】
そして先ず、ITO透明電極上に、構造式(2)-12のアリールアミン化合物を、蒸着速度0.2nm/secで65nmの厚さに蒸着し、正孔輸送層14bを形成した。
【0119】
次いで、下記ADN(9,10-di-(2-naphthyl)anthracene)を蒸着速度約0.2nm/secで35nmの厚さに蒸着し、発光層14cを形成した。
【化23】

【0120】
次に、下記Alq3(Tris-(8-hydroxy-Quinolinato)-aluminium)を蒸着速度0.2nm/secで15nmの厚さに蒸着し、電子輸送層14dを形成した。
【化24】

【0121】
以上のようにして、正孔輸送層14b、発光層14c、および電子輸送層14dを順次積層してなる有機層14を形成した後、陰極15の第1層15aとして、LiFよりなる膜を真空蒸着法により約0.1nmの膜厚で形成した。最後に、真空蒸着法により、第2層15a上に陰極15の第2層15bとして膜厚70nmのMgAg膜を蒸着速度薬0.4nm/secで形成し、有機電界発光素子11を作製した。
【0122】
こうして作製した有機電界発光素子11を直流電圧駆動したところ、構造式(2)-12は正孔輸送層として機能し、発光層を構成するADN由来の青色の発色を確認した。発光輝度は電圧7.1Vで460cd/m2であった。また、この素子を温度60℃で6時間保存した後に直流電圧駆動したところ、電圧に対する発光輝度の劣化は認められなかった。
【0123】
<比較例1>
実施例1において正孔輸送層を構成する材料として公知である、下記N、N’−ビス(1−ナフチル)−N、N’−ジフェニル[1、1’-ビフェニル]−4、4’―ジアミン(α−NPD)を使用した以外は、実施例1と全く同様に有機電界発光素子を作製し、同様の評価を行った。
【化25】

【0124】
こうして作製した有機電界発光素子を直流電圧駆動したところ、発光層を構成するADN由来の青色の発色が確認され、電圧6.9Vで440cd/m2で実施例1と同水準であった。しかし,この素子を温度60℃で6時間保存した後に直流電圧駆動したところ,発光輝度440cd/m2における電圧は7%上昇し、素子の劣化が認められた。
【0125】
<実施例2>上面発光型発光素子
合成例4によって得られた構造式(2)-15のアリールアミン化合物を用い、以下のように上面発光型の有機電界発光素子(図1参照)を作製した。
【0126】
先ず、30mm×30mmのガラス板からなる基板12上に、陽極13としてクロム(Cr)よりなる膜(膜厚約100nm)を形成し、さらに二酸化ケイ素(SiO2)を蒸着させることにより2mm×2mmの発光領域以外を絶縁膜でマスクした有機電界発光素子用のセルを作製した。
【0127】
次に、真空蒸着法により、有機層14の正孔注入層14aとして、下記m−MTDATAよりなる膜を12nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)で形成した。ただし、m−MTDATAは、4、4'、4”−トリス(フェニル−m−トリルアミノ)トリフェニルアミンである。
【化26】

【0128】
次いで、正孔輸送層14bとして、上記α−NPDよりなる膜を12nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)で形成した。ただし、α−NPDは、N、N’−ビス(1−ナフチル)−N、N’−ジフェニル[1、1’-ビフェニル]−4、4’―ジアミンである。
【0129】
このようにして形成された正孔注入層14aおよび正孔輸送層14b上に、ホスト材料として上記9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(ADN)を蒸着し、膜厚26nmの膜を形成した。その際、ADNには合成例4で合成された構造式(2)-15のアリールアミン化合物をドーパント材料として相対膜厚比で4%ドーピングして発光層14cとした。
【0130】
次いで、電子輸送層14dとして、上記Alq3(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)を10nmの膜厚で蒸着した。
【0131】
以上のようにして、正孔注入層14a、正孔輸送層14b、発光層14c、および電子輸送層14dを順次積層してなる有機層14を形成した後、陰極15の第1層15aとして、LiFよりなる膜を真空蒸着法により約0.3nm(蒸着速度0.01nm/sec.)の膜厚で形成した。最後に、真空蒸着法により、第2層15a上に陰極15の第2層15bとして膜厚10nmのMgAg膜を形成した。
<実施例3,4>
図1の発光層14cのドーパント材料として、下記表7に記載したように、構造式(2)-13のアリールアミン化合物または構造式(2)-16のアリールアミン化合物を用いたこと以外は、実施例2と全く同様に有機電界発光素子を作製した。
【0132】
【表7】

【0133】
<比較例2>
図1の発光層14cのドーパント材料として、下記D−1(特開平5-21161号公報)の化合物をした使用した以外は、実施例2と全く同様に有機電界発光素子を作製した。
【化27】

【0134】
≪評価結果≫
実施例2〜4よび比較例2で作製した有機電界発光素子の評価として、これらの素子を25.0m2で直流駆動した場合の発光特性の測定と、さらに窒素雰囲気中において60/cm2での連続駆動(duty:50)における輝度の半減寿命の測定を行った。この結果を、上記表7に合わせて記す。
【0135】
この表7から、本発明の構造式(2)-15のアリールアミン化合物をゲストに用いて発光層を構成した実施例2の有機電界発光素子では、電流密度25mA/cm2の直流駆動で輝度530Cd/m2の青色発光が確認された。駆動電圧は5.3V、電流効率は2.1Cd/A、半減寿命は1300時間であった。また、特に色度が(0.13,0.08)と純度の高い青色が得られた。
【0136】
また、本発明の構造式(2)-13、構造式(2)-16のアリールアミン化合物をゲストに用いて発光層を構成した実施例3,4の有機電界発光素子においても、電流密度25.0mA/cm2の直流駆動で1220Cd/m2以上の高輝度での青緑もしくは緑色の発光が確認され、半減寿命も2000時間以上と長寿命であった。特に構造式(2)-16のアリールアミン化合物を発光材料として用いた実施例4においては色座標上で高い純度の緑色発光が得られた。
【0137】
この結果から、本発明のアリールアミン化合物を発光材料として用いて構成された有機電界発光素子の色純度の向上が確認された。して、これらの材料を用いた有機電界発光素子を、それぞれの色度に応じて青色発光素子または緑色発光素子として用い、青色発光素子、緑色発光素子、および赤色発光素子を1組にして画素を構成することにより、色再現性の高いフルカラー表示が可能になる。
【0138】
これに対して、発光層のゲスト材料として公知材料であるD−1を用いた比較例1の有機電界発光素子は、電流効率および半減寿命ともに、本発明を適用した実施例2〜4と比較すると悪いものであった。
【0139】
<実施例5>透過型発光素子
合成例5によって得られた構造式(3)-6のアリールアミン化合物を用い、以下のように透過型の有機電界発光素子(図1参照)を作製した。
【0140】
真空蒸着装置中に、190nmの厚さのITOからなる陽極13が一表面に形成された30mm×30mmのガラス基板をセッティングした。
【0141】
蒸着マスクとして、複数の2.0mm×2.0mmの単位開口を有する金属マスクを基板に近接して配置し、真空蒸着法により、有機層14の正孔注入層14aとして、上記m−MTDATAよりなる膜を30nmの膜厚で形成した。次いで、正孔輸送層14bとして、上記α−NPDよりなる膜を35nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)で形成した。
【0142】
このようにして形成された正孔注入層14aおよび正孔輸送層14b上に、ホスト材料として上記ADNを蒸着し、膜厚40nmの膜を形成した。その際、ADNに構造式(3)-6のアリールアミン化合物を発光材料(ドーパント材料)として相対膜厚比で3体積%ドーピングして発光層14cとした。
【0143】
次いで、電子輸送層14dとして、上記Alq3を20nmの膜厚で蒸着した。
【0144】
以上のようにして、正孔注入層14a、正孔輸送層14b、発光層14c、および電子輸送層14dを順次積層してなる有機層14を形成した後、陰極15の第1層15aとして、LiFよりなる膜を真空蒸着法により約0.3nm(蒸着速度0.01nm/sec.)の膜厚で形成した。最後に、真空蒸着法により、第2層15a上に陰極15の第2層15bとして膜厚70nmのMgAg膜を形成した。
【0145】
<実施例6,7>
実施例5においての発光層14cに発光材料として添加した構造式(3)-6のアリールアミン化合物のドーパント濃度を下記表8に記載した割合で成膜したほかは、実施例5と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【表8】

【0146】
<実施例8>
実施例5においての発光層14cに添加した発光材料を、構造式(3)-6から構造式(4)-2のアミノアリール化合物に変更したほかは、実施例5と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0147】
<比較例3>
実施例5において、発光層14cに添加した発光材料を上記D−1(特開平5-21161号公報)の化合物に変更した以外は、実施例5と全く同様に有機電界発光素子を作製した。
【0148】
≪評価結果≫
表8に示した結果から、本発明の有機発光材料を発光層14cの、特にドーパント材料として20体積%以下の範囲で含有させた実施例5〜8では、色純度を維持し、従来の青色発光材料としての公知材料である比較例3とに比べ、発光輝度および発光効率が高く維持されることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】本発明の有機電界発光素子の構成を説明する断面図である。
【図2】合成例4で合成した構造式(2)-15の吸収スペクトルと蛍光スペクトルである。
【符号の説明】
【0150】
11…有機電界発光素子、12…基板、13…陽極、14…有機層、15…陰極、14c…発光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるアリールアミン化合物。
【化1】

[ただし一般式(1)中におけるLは炭素数3以上の脂環族炭化水素基を示し、Arは炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリーレン基を示し、Ar1およびAr2はそれぞれ炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基を示し、nは1以上の整数を示すと共に、nが2以上の場合には窒素(N)を含むn個の化合物基の全てがL中の異なる炭素原子を介在してLに連結している。]
【請求項2】
請求項1記載のアリールアミン化合物において、
前記式(1)中のLはアダマンタンである下記一般式(2)に示すアリールアミン化合物。
【化2】

[ただし一般式(2)中におけるnは1≦n≦4の整数であると共にnが2以上の場合には窒素(N)を含むn個の化合物基の全てがアダマンタンの異なる炭素原子に結合している。]
【請求項3】
請求項2記載のアリールアミン化合物において、
前記一般式(2)中のn個の化合物基がアダマンタンにおける3級炭素のみに結合している
ことを特徴とするアリールアミン化合物。
【請求項4】
請求項2記載のアリールアミン化合物において、
前記一般式(2)中のArが置換または無置換のフェニレン基である下記一般式(3)に示すアリールアミン化合物。
【化3】

【請求項5】
請求項1記載のアリールアミン化合物において、
前記一般式(1)中のnは2以上の整数である
ことを特徴とするアリールアミン化合物。
【請求項6】
請求項5記載のアリールアミン化合物において、
前記一般式(1)中、Lに結合するn個の化合物基の全てが同一である
ことを特徴とするアリールアミン化合物。
【請求項7】
下記一般式(3)で表されるアダマンタンを備えたアリールアミン化合物の合成方法であって、
下記一般式(4)で表される中間体を経由する
ことを特徴としたアリールアミン化合物の合成方法。
【化4】

[ただし一般式(3)中におけるAr1およびAr2はそれぞれ炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基を示し、一般式(3)および一般式(4)中のnは1≦n≦4の整数であると共にnが2以上の場合には窒素(N)を含むn個の化合物基の全てがアダマンタンの異なる3級炭素のみに結合しており、また一般式(4)中におけるXはハロゲンまたは水酸基を示す。]
【請求項8】
請求項7記載のアリールアミン化合物の合成方法において、
ハロゲン化アダマンタンと、ハロゲン化ベンゼンまたはフェノールとをルイス酸存在下で反応させることにより、前記一般式(4)の中間体を得る
ことを特徴とするアリールアミン化合物の合成方法。
【請求項9】
陽極と陰極との間に少なくとも発光層を備えた有機層を狭持してなる有機電界発光素子において、
前記有機層が、下記一般式(1)で示されるアリールアミン化合物を用いて構成されている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【化5】

[ただし一般式(1)中におけるLは炭素数3以上の脂環族炭化水素基を示し、Arは炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリーレン基を示し、Ar1およびAr2はそれぞれ炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基を示し、nは1以上の整数を示すと共に、nが2以上の場合には窒素(N)を含むn個の化合物基の全てがL中の異なる炭素原子を介在してLに連結している。]
【請求項10】
請求項9記載の有機電界発光素子において、
前記アリールアミン化合物は、前記式(1)中のLがアダマンタンである下記一般式(2)に示すアリールアミン化合物である
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【化6】

[ただし一般式(2)中におけるnは1≦n≦4の整数であると共にnが2以上の場合には窒素(N)を含むn個の化合物基の全てがアダマンタンの異なる炭素原子に結合している。]
【請求項11】
請求項10記載の有機電界発光素子において、
前記アリールアミン化合物は、前記一般式(2)中のArが置換または無置換のフェニレン基である下記一般式(3)に示すアリールアミン化合物である
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【化7】

【請求項12】
請求項9記載の有機電界発光素子において、
前記アリールアミン化合物が、前記発光層を構成する材料として用いられている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項13】
請求項12記載の有機電界発光素子において、
前記アリールアミン化合物が、発光材料として前記発光層に含有されている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項14】
請求項13記載の有機電界発光素子において、
前記発光層中に、前記アリールアミン化合物からなる発光材料が20体積%以下の割合で含有されている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項15】
請求項13記載の有機電界発光素子において、
前記発光層中には、アントラセン誘導体がホスト材料として含有されている
ことを特徴とする有機電界発光素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−77064(P2007−77064A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266217(P2005−266217)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】