説明

アリールエーテルオリゴマー及びアリールエーテルオリゴマーの製造方法

アリールエーテルオリゴマーを含有するアリール組成物。これらの組成物は、Ullmannエーテル反応により1種以上のジブロモベンゼンと1種以上のジヒドロキシベンゼンの反応により調製されてもよい。該オリゴマーは、2つ以上のベンゼン環を有してもよく、末端ハロゲン−例えば臭素(Br)−又はヒドロキシル(OH)基を含んでもよい。これらのオリゴマーは、臭素化されて熱可塑性ポリマー用の難燃剤組成物を形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリールエーテルオリゴマー及びアリールエーテルオリゴマーを製造するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デカブロモジフェニルオキサイド(deca)、およびデカブロモジフェニルエタン(deca−DPE)は、市販の入手可能な物質であり、難燃性の各種ポリマー樹脂のシステムに広く用いられている。これらの物質の構造は次の通りである。
【化1】

【0003】
ハイインパクトポリスチレン(HIPS)やポリオレフィンのような、燃焼を遅くすることが難しいポリマー樹脂中に、deca及びdeca−DPEを用いることの一つの利点は、その物質が非常に高い(82〜83%)臭素含有量を持つことである。これは全般的な配合の中で低レベルの負荷を可能とし、これは同様にそのポリマーの物性における難燃剤の任意の負の効果を、最小にすることに役立つのである。
【0004】
decaの工業的な成功にもかかわらず、同等または更に効果的な、代替ハロゲン化難燃剤材料の開発に著しい関心が残されており、これは経済的な圧力のためだけでなくまた、より少ない難燃剤の使用量を可能とするためであり、これは同様に更に改良された性能を与えるものである。ブルーミングを起こさない処方、又はより良い物性などの改良された特性は、ポリマー又はオリゴマーの難燃剤配合物を作ることによって、もしかすると対処することができるのである。これらのタイプの物質は、樹脂と難燃剤の間の相溶性に依存しそしてそれ故に、ベースの樹脂ポリマー中でよく絡み合うようになり、より少ないブルーミングの傾向を示すのである。
【0005】
数多くの市販で入手可能な難燃剤物質があり、これらはハロゲン化されたモノマーの、オリゴマー又はポリマーと考えられる。これらのモノマーの例として、テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)、およびジブロモスチレン(DBS)を含み、これらは次のような構造を持っている。
【化2】

【0006】
商業的には、TBBPA及びDBSは一般に、これらのモノマー状の形態では用いられず、オリゴマー又はポリマー状の化学種に変換される。一つのクラスのオリゴマーは、TBBPAを基にした臭素化されたカーボネートオリゴマーである。Chemtura社(例として、Great Lakes BC−52(商標)、Great Lakes BC−52HP(商標)及びGreat Lakes BC−58(商標)を含み)及びTeijin Chemical(FireGuard7500及びFireGuard8500)から、市販され入手することができる。これらの製品は主として、ポリカーボネート、及びポリエステル用の難燃剤として用いられる。
【0007】
TBBPAとエピクロロヒドリンの縮合を基にした、臭素化エポキシオリゴマーは市場で入手することができ、そしてDainippon Ink chemicalsよりEpiclon(登録商標)シリーズとして、そしてまたICL Industrial製品より(例としてF−2016、及びF−2100)、そして他の供給会社からも販売されている。臭素化エポキシオリゴマーは、単独で、そして他の難燃剤とブレンドされ、いずれも各種熱可塑性樹脂用難燃剤としての用途を見出している。
【0008】
TBBPAを基にした、臭素化ポリマー難燃剤の他のクラスとしては、TBBPAと1,2−ジブロモエタンのコポリマー、Teijin FG−3000が例示される。このアラルキルエーテルは、ABS及び他のスチレンポリマーにその用途を見出している。このポリマー上のアリール又はメトキシのような、代替末端基はまた、米国特許第4,258,175号、及び米国特許5,530,044号の記載物質として例示されているようによく知られている。非反応性の末端基が、難燃剤の熱安定性を改良するため特許請求されている。
【0009】
TBBPAはまた、例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテルとの反応による、他の二官能エポキシ樹脂化合物との連鎖延長反応によって、多くの他の異なるタイプのエポキシ樹脂コポリマーのオリゴマーに変換される。これらのタイプのエポキシ樹脂生成物の代表例は、Dow Chemical社による、D.E.R(商標)539であり、或いはHexion社によるEpon(商標)828である。これらの製品は主に、プリント回路基板の製造に用いられる。
【0010】
DBSはChemtura社によって自家消費用に作られており、そしてポリ(ブロモスチレン)タイプの難燃剤を作るための、幾つかの異なるポリマー種(Great Lakes PDBS−80(商標)、Great Lakes PBS−64HW(商標)、及びFiremaster CP44−HF(商標)として販売されている。これらの物質はホモポリマー又はコポリマーを表す。その上に、類似の臭素化ポリスチレンタイプの難燃剤としては、Albemarle Chemical社から(Saytex(登録商標)HP−3010、Saytex(登録商標)Hp−7010、及びPyroChek 68PB)が市販されている。これら全てのポリマー生成物は、ポリアミド及びポリエステルのような難燃性熱可塑性樹脂に用いられている。
【0011】
しかしながら、現在のハロゲン化ポリマー物質の一つの鍵となる欠点は、それらの比較的低いハロゲン含有量にあり、これは難燃剤としての効果をより小さくし、そしてその結果一般的に、それを含む難燃剤処方の、例えば衝撃強度のような望ましい物理特性に負の効果を与えてしまう。例えば、deca及びdeca−DPEは82〜83%の臭素を含んでいるのに、上記の臭素化モノマーを基にするオリゴマー又はポリマーは、その物質に依存するが、一般に52%〜68%の範囲の臭素含有量を有している。それゆえ、これは一般にポリマー処方中の難燃剤の負荷レベルを、decaに要求されるそれよりも著しく高くすることを必要とし、しばしば処方に対して劣った物性を生じてしまう。
【0012】
難燃剤がまた衝撃を及ぼす他の考慮すべき事柄としては、処方された樹脂の最終的な性質に関するものである。これらの考慮すべき事柄は難燃剤の熱的安定性であり、そしてホスト樹脂との共溶性を含むものである。これらの他の考慮すべき事柄は、相対的に一定である状態では、臭素の含有量そしてこの故に難燃剤の負荷レベルが、全体の調合物の性質に大きな影響を与える。
【0013】
難燃剤物質に対する要求を処理するため、目標とする樹脂の機械的な性質を下げないために、我々はここで、ハロゲン化されたそして特に臭素化された、アリールエーテルのオリゴマーとして分類することのできる系統の物質を開発したのである。特に、これらのハロゲン化されたアリールエーテルオリゴマーを用いるとき、HIPSやポリオレフィンのような樹脂に優れた機械的な性質を結果としてもたらすことを、そしてこの物質がまたポリアミドやポリエステルのようなエンジニアリングサーモプラスチックスに優れた性質を与えることを見出したのである。アリールエーテルオリゴマーは、現在市販で入手できるオリゴマーやポリマーよりもより高いレベルでハロゲン化することができ、そしてこれは、これらの機械的な性質特性にプラスの効果を与えるのである。これらのアリールエーテルオリゴマーは、ハロゲン化が低レベルであっても、許容される機械特性を有する配合物を与えることをまた見出したのである。
【0014】
日本未審査特許出願公報2−129137号は、ポリマーが、次に示すようなハロゲン化ビス(4−フェノキシフェニル)エーテルと配合された、難燃性ポリマー組成物を開示している。
【化3】


(Xはハロゲン原子であり、a及びdは1〜5の範囲の数であり、そしてb及びcは1〜4の範囲の数である)
しかしながら、難燃剤は、別個の化合物としてビス(4−フェノキシフェニル)エーテルを臭素化することによって作られており、そしてオリゴマー物質はアリールエーテルモノマーを重合することによっては得られていない。対照的に、本発明における如く、オリゴマーの分布を有する物質を用いることが難燃剤としての挙動特性を改良すると信じられる。
【0015】
米国特許第3,760,003号は、一般式:
【化4】


(各Xは独立してCl又はBrであり、各mは独立して0〜5の整数であり、各pは独立して0〜4の整数であり、nは2〜4の整数であり、及び化合物の50重量%以上はハロゲンである)を有するハロゲン化ポリフェニルエーテル難燃剤を開示している。エーテル前駆体はまた個別の非重合性物質のようであり、触媒としての鉄粉及び任意で臭化メチレンの存在下で臭素との反応によりハロゲン化される。反応が完結すると、過剰な臭素はすぐに蒸発し、所望の固体生成物が後に残る。
【0016】
「Synthesis and Stationary Phase Properties of Bromo Phenyl Ethers」,Journal Chromatography,267(1983),293−301頁,Dhancsar他、と題する文献において、2〜7のベンゼン環を含むフェニルエーテルの、特定の位置の臭素化の方法が開示されている。このエーテルは、オリゴマーとの分布を有していない別個の化合物であると思われ、そして生成物は有機化合物の分離には有用であると言われているが、難燃剤として使用する可能性について何ら言及していない。
【0017】
米国特許出願公報2008/0269416号−国際公開第2008/134294号に対応−は、次の繰り返しモノマー単位:
【化5】


(Rは、水素又はアルキル、特にC〜Cのアルキルであり、Halはハロゲン、普通は臭素であり、mは少なくとも1であり、nは0〜3であり、そしてxは少なくとも2以上であり例えば3〜100,000で、例えば5〜20である)を含むハロゲン化アリールエーテルオリゴマーを記載している。これらのオリゴマーは、中間オリゴマー組成物を臭素化することにより調製されてもよい。米国特許出願公報2008/0269416号や国際公開第2008/134294号の例8において、ヨウ化銅(すなわちCuI)触媒の存在下で、1:1モル比のレゾルシノールと1,4−ジブロモベンゼンのUllmannエーテル反応により、中間オリゴマー組成物が調製される。米国特許出願公報2008/0269416号や国際公開第2008/134294号の例9において、3−ブロモフェノールをオリゴマー化することにより、中間オリゴマー組成物が調製される。米国特許出願公報2008/0269416号や国際公開第2008/134294号の例10において、4−ブロモフェノールをオリゴマー化することにより、中間オリゴマー組成物が調製される。
【0018】
2008年12月19日提出の我々の同時係属米国仮特許出願第61/139,282号において、少なくとも、一般式:
【化6】


(各Xは独立してCl又はBrであり、各mは独立して1〜5の整数であり、各pは独立して1〜4の整数であり、nは1〜5の整数であり、並びに第一及び第二エーテルのnは異なる)を有する第一及び第二ハロゲン化非重合性フェニルエーテルを含有する難燃剤ブレンドを、我々は記載している。臭素化は、ジクロロメタン中でブレンドされたエーテル前駆体の溶液であってさらに塩化アルミニウム触媒を含有している溶液に臭素を加えることにより都合よく達成する。反応温度は30℃に保たれ、及びHBr排ガスがウォータートラップで捕捉される。HBr発生が弱まった後、後処理をしてオフホワイト固体の生成物を得る。
【0019】
国際公開第2008/156928号は、ペンダントカルバゾリル基を有する臭素化ポリアリールエーテルから作られるオプトエレクトロニクスポリマー組成物を開示している。ビフェノールとジハロゲン化モノマーとの求核置換縮合反応により、有用なポリアリールエーテルが作られる。生じるポリアリールエーテルは、次いで、臭素で芳香族求電子置換がなされ、その後にカルバゾール化合物で芳香族求核置換がなされる。臭素置換は、典型的には、エーテルのクロロホルム溶液へ臭素を滴加した後メタノールで析出させることにより達成される。
【0020】
Ullmannエーテル反応経由のアリールエーテルの合成は、かなり広範に概説されており、100年以上の間知られている。この主題の記事として、Ley,S.V.及びThomas,A.W.Angew.Chem.Int.Ed.2003,42,5400−5449、Sawyer,J.S.、Tetrahedron,2000,56,5045−5065、Lindley,James,Tetrahedron,1984,40(9),1433−1456、並びにFrlan,R.及びKikelj,D.,Synthesis,2006,14,2271−2285が挙げられる。この主題の情報の大部分は、アリールハライド及びフェノキシドからジアリールエーテルを作ることを取り扱っており、とても僅かにのみ、この技術を用いてポリマー又はオリゴマーを作ることの研究をカバーしている。Staudinger,H.及びStaiger,F.,Ann.1935,517,67を引用している、1945年の概説:Ungnade,H.E.,Chemical Reviews,1946,38,405−414では、適切なアリールハライド及びフェノキシドを用いた段階的構築により短鎖オリゴマー型アリールエーテルが作られることが開示された。このケースで、例えば、著者らは4環α,ω−ジブロモアリールエーテルとフェノキシドカリウムの反応を用いて6環アリールエーテル種を作った。この方法で作られた他の短鎖オリゴマーもHammann,W.C.及びSchisla,R.M.,J.Chem.Eng.Data,1970,15(2),352−355により報告されている。
【0021】
アリールエーテルのポリマー又はオリゴマーの調製は、一般的に、ハロフェノールのホモ重合又はアリールジハライドとアリールジフェノールの共重合のどちらかにより行われている。Ullmann化学を用いたブロモフェノールの重合の以前のやり方の1つでは、US3,228,910及びFR1,301,174に記載されているようなStamatoff(DuPont)のやり方がされていた。これらの特許では、フェノキシナトリウムが溶解している不活性溶媒で反応が行われることが言及された。このケースで、ジメチルアセトアミド、m−ジメトキシベンゼン又はニトロベンゼンのような溶媒が用いられた。触媒は塩化第一銅−ピリジン錯体であった。van Dort,H.M.ら,European Polymer Journal,1968,4,275−287に記載されたように、1968年に、van Dortらは、塩化第一銅−ピリジン触媒の錯体を用いて、ジメトキシベンゼン中200℃以下の温度で、フェノールのナトリウム塩を反応させることにより、Ullmann条件下で、パラ−ブロモフェノールから高分子を作った。Jurek,M.J.及びMcGrath,J.E.Polymer Preprints,1987,28(1),180−181に記載されたように、Jurek及びMcGrathにより、p−ブロモフェノールを用いたもう1つの重合合成がなされた。このケースでは、彼らは、触媒として塩化第一銅−キノリン錯体を用い、溶媒としてベンゾフェノンを用い、210℃以下の反応温度を用いた。彼らはまた、トルエンなどの共沸溶媒を用いて、ブロモフェノールと塩基の反応中に形成される水を留去した。フェノートが形成され水が留去されるとすぐに、トルエンは反応系から取り出され、必要な高温で重合が進行する。
【0022】
このルートによるメタ置換を有するアリールエーテルオリゴマーへの到達は容易ではない。なぜなら、ブロモフェノール出発物のメタ異性体は、ブロモフェノールのパラ異性体よりも少ない量しか利用できない。ここに記載する代わりのアプローチの態様は、より容易にメタ置換へ導くことができる。なぜなら、レゾルシノールのケースでは、その物質は既にメタ置換されているからである。
【0023】
Kellerらが、アリールジハライドとアリールジフェノールの反応によるアリールエーテルオリゴマーの形成に関して、一連の論文を発表している。これらの論文には、Dominguez,D.D.及びKeller,T.M.,High Performance Polymers,2006,18,283−304、Laskoski,M.;Dominguez,D.D.及びKeller,T.M.,J.Polym.Sci.A:Polym.Chem.,2006,44,4559−4565、並びにLaskoski,M.;Dominguez,D.D.及びKeller,T.M.,Polymer,2006,47,3727−3733が挙げられる。これらの発表の主たる焦点は、アリールエーテルスペーサー基により反応性モノマー基が分離されている熱硬化性シアネートエステル又はフタロニトリル系樹脂を作ることである。そのアリールエーテル合成では、彼らはトルエンやDMFを用いる上記のような溶媒系で、(レゾルシノールなどの)ジフェノールを(1,3−ジブロモベンゼンなどの)アリールジハライドと反応させる方法を用いており、そこでは反応で形成した水をトルエンを用いて共沸している。彼らは、ヨウ化第一銅−1,10−フェナントロリン錯体、又はトリフェニルホスフィン−臭化銅錯体、のいずれかを触媒系として用いており、炭酸カリウムを塩基として用いている。全てのケースで、過剰のジフェノールを用いて反応が行われ、形成するオリゴマーは合成中の次の工程のために反応性末端基を有したであろう。Marcoux,J.F.;Doye,S.及びBuchwald,S.L.,J.Am.Chem.Soc.,1997,119,10539に記載されるように10年前にBuchwald及び共同研究者により開発された炭酸セシウム系の代わりに、より安価な炭酸カリウム塩がこの溶媒系で使用可能であったことを、彼らは示した。反応で炭酸塩を用いることの欠点の一つは、使用される過剰の固体塩基を生成物の仕上げの工程で処理する必要がある、ということである。反応濃度によっては、固体塩基は、生じるひどい懸濁を取り扱うという問題を作り出すこともある。Kellerらの2つの特許、すなわち、US6,891,014B2及びUS6,756,470B2は、過剰のジフェノールを用いて反応が進行して、所望のオリゴマー性ヒドロキシルアリールエーテルフタロニトリル末端生成物の調製のための中間体として、反応性末端ヒドロキシル基を有するオリゴマーを形成することも、記載している。けれども、これらの特許は、ジフェノールがジハロベンゼンと1:1モル比で、又は、ジハロベンゼンとジフェノールの過剰モルの系で、反応し得ることも、言及している。特に、US6,891,014B2第6カラム第16〜20行で、及びUS6,756,470B2第6カラム第32〜35行で、2:1モル比のm−ジヨードベンゼン及びヒドロキノリンが反応して3つのベンゼン環を有する平均鎖のオリゴマーを形成することが、述べられている。
【0024】
他の例は、アリールエーテルオリゴマーがジフェノール体とアリールジハライドの反応から調製されるという文献にある。1985年にLindleyらによる報告、すなわち、Lindley,P.M.;Picklesimer,L.G.;Evans,B.;Arnold,F.E.及びKane,J.J.「Arylether Sulfone Oligomers with Aceetylene Termination from the Ullmann Ether Reaction」in ACS Symp.Ser.282,Ch.3,1985,31−42では、ヨウ化第一銅存在下のピリジン中、又は酸化第一銅存在下のコリジン中、のどちらかで、炭酸カリウムが用いられた。大過剰のアリールジブロミドを用いることにより3超のベンゼン環を有するオリゴマーの形成が最小化できることが言及された。Lindleyはさらに、アリールエーテルオリゴマーの形成のための鎖の長さは反応化学量論の調整により制御され得ることを、報告している。Hedberg,F.L.;Unroe,M.R.;Lindley,P.M.及びHunsaker,M.E.,「Wright Patterson Air Force Base Technical Report AFWAL−TR−85−4041」,1985を参照されたい。レゾルシノール及び1,3−ジブロモベンゼンを1:10及び1:2のモル比で用いて、オリゴマーが得られた。レゾルシノール対1,3−ジブロモベンゼンのモル比が1:2である単一反応では、49重量%の収率が報告されている。
【0025】
FarnhamらによるUS特許、すなわち、US3,332,909は、二価フェノールとジブロモベンゼン系化合物の反応からポリアリーレンポリエーテルが作られ得ることを開示している。彼らは、アルカリ金属水酸化物が使用されて二価フェノールの金属塩が作られ得ることを、及び反応で形成した水がトルエンなどの共沸溶媒の助けで留去され得ることを、言及しており、そこでは主溶媒としてベンゾフェノンを用い、塩化第一銅−ピリジ錯体第一銅塩を触媒として用いている。1989年の特許で、すなわち、US4,870,153で、Matznerらは、ピリジン錯体として第一銅ハライド触媒を用いて、ベンゾフェノンのような溶媒中で、180〜220℃の範囲の反応温度という、同様のアプローチによるポリ(アリールエーテル)の合成を開示している。両著者は、ブロモベンゼンなどの一官能性化合物を加えることを、反応終了により残ったフェノール種をエンドキャップする前に、実施してもいて、並びに、2つの反応剤の化学量論が1:1の5%以内である必要があることを、若しくは分子量がとても小さいことを、言及してもいる。
【0026】
1998年の論文で、すなわち、Lee,J.I.;Kwon,L.Y.;Kim,J.−H.;Choi,K.−Y.及びSuh,D.H.Die Angewandte Makromolekulare Chemie,1998,254,27−32で、Leeらは、CuCl−ピリジン錯体を用い、炭酸カリウム又はNaOHのどちらかを塩基として用い、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中で、及び水を留するためにトルエンを共沸溶媒として用いた、ポリマー形成を論じている。
【0027】
上で論じたアプローチは、反応を完結するために24時間近い反応時間を、又は200℃近い反応温度を要する。それ故、使用する触媒系又は溶媒系を改善することが望ましかった。
【0028】
Ullmannエーテル反応のための銅触媒系における改善は、ここ20年に一層さかんに、多様なモノハロベンゼンとあるフェノールから単純なアリールエーテルを作るための反応で、行われているようである。大多数の報告で使われている触媒は第一銅塩である。メカニズムの論文で、すなわち、Weingarten,H.J.,Org.Chem.,1964,29,3624−3626で、そのような触媒が挙がっており、第二銅種が反応中に第一銅種に転換すること、及び第一銅が活性触媒種であること、が言及された。イギリス特許で、すなわち、Wedemeyer,K.及びAdolphen,G.,GB1,415,945(1975)で、クロロフェノールと過剰のジクロロベンゼンの反応による小アリールエーテルの合成分子の合成で、酸化第二銅、酸化第一銅、臭化第一銅、又は臭化第二銅、などを用いて、議論がされた。それらでは、リーズナブルな反応収率を達成するために、塩基不足状態が必要であり、及び、最大70〜75%収率を達成するために、存在する遊離フェノールの約30%が必要であった。
【0029】
アリールエーテルオリゴマー又はポリマーのUllmann反応において、第一銅ではなく第二銅塩を用いることの有利性は、公知文献に記載されていないようである。酸化第二銅、酸化第一銅、及びヨウ化第一銅の分子量は、それぞれ、79.55、143.1、及び190.5g/モルである。それ故に、等モル比では、より少ない酸化第二銅が要求される。
【0030】
Ullmannエーテル合成の進歩に影響する重要なファクターの一つに、適切な配位子系の選択がある。Chang,J.W.W.ら,Tet.Lett.,2008,49,2018−2022で公開された最近の研究で、フェノール及びヨードベンゼンを用いる配位子を加えることなしにジアリールエーテルを作るための反応で、95%超の収率を達成するために10%のCuI触媒が必要であり、及び反応は22hかかったことが示された。ブロモベンゼン又はより少ない触媒の使用は、有意に収率を低下させた。Williams,A.L.;Kinney,R.E.及びBridger,R.F.,J.Org.Chem.,1967,32,2501−2505で公開されたもう一つの研究で、ブロモベンゼンとともに反応剤としてレゾルシノールを用いて、Williamsにより、配位子と溶媒の錯化能が反応経路に重要な効果を持つことが示された。ピリジンでの反応は70%の収率だった一方、91%ピリジン/9%2,2’−ビピリジンでの反応はたった31%の収率だった。興味深いことに、彼らは、反応中の過剰塩基は触媒を破壊すると言い、95%の化学量論量の塩基を用いて反応を行った。
【0031】
Ullmannエーテル反応での配位子の効果についての他の報告がいくつかある。Goodbrand,H.B.及びHu,N.−X.,J.Org.Chem.,1999,64,670−674で、Goodbrandは、アミン合成のためのUllmann反応で3.5%の塩化第一銅とともに加えた3.5%の1,10−フェナントロリンが反応を大きく加速させたことを示した。種々の他の配位子研究が文献から見つけることが出来、例えば、Rao,H.ら,Chem.Eur.J.,2006,12,3636−3646、Wang,B.−A.ら,Chinese J.Chem.,2006,24,1062−1065、Ma,D.及びCai,Q.,Org.Lett.,2003,5,3799、Cristau,H.−J.ら,Org.Lett.,2004,6(6),913−916、Ghosh,R.及びSamuelson,A.G.,New J.Chem.,2004,28,1390−1393が挙げられる。言及されたいくつかの配位子には、種々のピリジンベースの構造、つまり、ジメチルグリシン(アミノ酸)、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオン、イミダゾール類、などが挙げられる。それらの配位子の一つ、ジメチルグリシン(DMG)は、ポリマー又はオリゴマーの合成にはこれまで使われていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0032】
ここで記載する発明的主題の一態様には、アリール組成物が挙げられる。アリール組成物はアリールエーテルオリゴマーを含んでもよい。アリール組成物は、式:
【化7】


(nは0又は少なくとも1で、RはOH又はハロゲンで、RはOH、ハロゲン又は式:
【化8】


(RはOH又はハロゲン)のフェノキシ基である)を有してもよい。
【0033】
アリール組成物は、例えば、単一ベンゼン環を有する式(I)の化合物を20重量%以下で含んでもよい。単一ベンゼン環を有するそのような化合物は、nが0でRがOH又はハロゲンである式(I)の化合物に相当する。アリール組成物は、例えば、2以下のベンゼン環を有する式(I)の化合物を30重量%以下で含んでもよい。2以下のベンゼン環を有する化合物は、(i)nが1でRがOH若しくはハロゲン、又は(ii)nが0でRが式(II)のフェノキシ基であるようにn及びRの両方が選択される、のどちらかである、式(I)の化合物に相当する。アリール組成物は、例えば、少なくとも3つのベンゼン環を有する式(I)の化合物を70重量%以上で含んでもよい。3つのベンゼン環を有する化合物は、(i)nが2でRがOH若しくはハロゲン、又は(ii)nが1でRが式(II)のフェノキシ基であるようにn及びRの両方が選択される、のどちらかである、式(I)の化合物に相当する。アリール組成物は、3つのベンゼン環を有する式(I)の化合物や3つ以上のベンゼン環を有する式(I)の化合物の混合物を含み、3つのベンゼン環を有する式(I)の化合物の重量は3つ以上のベンゼン環を有する式(I)の化合物の重量より小さくてもよい。式(I)の化合物の平均分子量は少なくとも400であってもよい。式(I)の化合物は、平均で、少なくとも2重量%のハロゲン−例えば2重量%〜35重量%のハロゲン−を有してもよい。
【0034】
、R又はRがOH又はハロゲンであるオリゴマーは、OH又はハロゲンで末端されている又はエンドキャップされていると言ってもよい。オリゴマーが3つ以上のベンゼン環を有する場合、オリゴマーのほとんどは、OHよりもむしろハロゲンで末端化されているだろう。特に、3つ以上のベンゼン環をもつオリゴマーのほとんどは2つのハロゲンで末端化され、これらのオリゴマーのより少数が2つのOHで末端化され、もしあればこれらのオリゴマーのわずかだけが1つのハロゲン及び1つのOH基で末端化されているだろう。また、3つ以上のベンゼン環を有しているオリゴマーのほとんどが、偶数(例えば、4、6、8等)よりもむしろ奇数(例えば、3、5、7等)のベンゼン環を有するだろう。アリール組成物には、1つ又は2つのベンゼン環をもつ化合物を除去することにより調製されるものが含まれる。例えば、アリール組成物には、1つのベンゼン環をもつ式(I)の化合物が1.0重量%未満含まれてもよい。
【0035】
ここに記載する発明的主題事項のもう一つの態様には、アリールエーテルオリゴマーを作るための方法が挙げられる。その方法は、1種以上のジブロモベンゼンなどのジハロベンゼンを1種以上のレゾルシノールなどのジヒドロキシベンゼンの塩と反応させる工程を備えてもよい。ジハロベンゼンのモル数は、ジヒドロキシベンゼンの塩のモル数を超えてもよい。例えば、ジハロベンゼンのモル数対レゾルシノールの塩のモル数の比は、約1.1〜約1.9−例えば約1.1〜約1.6−であってもよい。
【0036】
ジハロベンゼンをレゾルシノールの塩と反応させるための触媒は、酸化第二銅などの銅含有組成物、又は酢酸第二銅などの第二銅塩、であってもよい。
【0037】
アリールエーテルオリゴマーを調製するための特定の方法として、酸化第二銅触媒の存在下ジハロベンゼンをレゾルシノールのカリウム塩と反応させることが挙げられる。レゾルシノールのカリウム塩は、
(a)ジハロベンゼン、レゾルシノール、KOH(例えば固体KOH又はKOH水溶液として)、及び溶媒を混合することにより反応混合物を調製する工程、並びに、
(b)工程(a)の反応混合物を加熱して還流して水を留去する工程、
の工程により調製されてもよい。
オリゴマーが形成された後に、1つのベンゼン環(例えば、未反応ジハロベンゼン又はレゾルシノール)をもつ化合物及び2つのみのベンゼン環をもつ化合物は、例えば洗浄若しくは蒸留又は洗浄と蒸留により、生成物の混合物から除去されて、3つ以上のベンゼン環を有するオリゴマーであるオリゴマー性生成物を得てもよい。ジブロモベンゼンをレゾルシノールのカリウム塩と反応させることにより形成するオリゴマー生成物を回収するために用いられる工程の例として、
(c)KBr塩を工程(b)の生成物の混合物からろ過により取り除く工程;
(d)溶媒を工程(c)の生成物の混合物から取り出して有機残渣を形成する工程、
(e)工程(d)の有機残渣を塩基(例えばNaOH)の希釈水溶液で洗浄してその後水で洗浄する工程、並びに、
(f)残ったジブロモベンゼンを工程(e)で洗浄した有機残渣から蒸留により留去する工程、
の工程が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
ここで記載されるアリール組成物は、特にここで記載されるアリールオリゴマーは、中間体として用いられて難燃剤組成物を形成してもよい。具体的には、これらのアリール組成物は、臭素化されて難燃剤組成物−特に可燃性高分子ポリマー用の−を形成してもよい。そのような高分子ポリマーには、ポリスチレンなどの熱可塑性ポリマー、ポリ(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、ポリカーボネート,ポリオレフィン,ポリエステル及びポリアミド、並びにエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン及びゴムなどの熱硬化性ポリマーが挙げられる。難燃剤組成物を作るためのアリール組成物を臭素化するための方法は、熱可塑性ポリマー用の難燃剤としてそのような臭素化されたアリール組成物を使用するための方法とともに、米国特許出願公開番号US2008/0269416に記載されており、国際公開番号WO2008/134294に対応し、そこの臭素化方法の記載は、引用により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0039】
用語「オリゴマー」はここでは1種以上のモノマーのオリゴマー化により形成される化合物を意味するのに用いられ、前記モノマー(単数又は複数)由来の繰り返し単位を有し、前記繰り返し単位の数には関係ない。オリゴマーは、分子量の分布を有するだろう。具体的には、ここで記載される方法により形成されるオリゴマーは、平均少なくとも3つのベンゼン環を有してもよい。これらのオリゴマー−特にハロゲンがBrであるもの−の平均分子量は、少なくとも400グラム/モル、例えば少なくとも600グラム/モル、例えば少なくとも800グラム/モル、であってもよい。分子量は、ポリスチレン標準GPCクロマトグラフィーにより測定されてもよい。
【0040】
式(I)の化合物は、具体的には、2つ以上のベンゼン環を有している式(I)の化合物は、特に、3つ以上のベンゼン環を有している式(I)の化合物は、平均で、2重量%〜35重量%のハロゲンを有してもよい。言い換えれば、式(I)の化合物で化学的に結合したハロゲンの重量は、式(I)の化合物の全重量に基づき、2重量%〜35重量%、例えば5重量%〜30重量%、例えば10重量%〜25重量%、であってもよい。
【0041】
ここに記載されるアリール組成物は、(1)オリゴマーを調製するのに使われる未反応モノマー、及び(2)これらのモノマーから生成されるオリゴマー、の混合物を含有してもよい。これらの未反応モノマーには、ジハロベンゼン、具体的には、1,2−ジブロモベンゼン(すなわち、オルト−ジブロモベンゼン)、1,3−ジブロモベンゼン(すなわち、メタ−ジブロモベンゼン)、若しくは1,4−ジブロモベンゼン(すなわち、パラ−ジブロモベンゼン)又はそれらの混合物などの、少なくとも1種のジブロモベンゼンが挙げられる。未反応モノマーには、1,2−ジヒドロキシベンゼン(すなわち、ピロカテロール又はオルト−ジヒドロキシベンゼン)、1,3−ジヒドロキシベンゼン(すなわち、レゾルシノール、レゾルシン、メタ−ジヒドロキシベンゼン又は3−ヒドロキシフェノール)、若しくは1,4−ジヒドロキシベンゼン(すなわち、ヒドロキノリン又はパラ−ジヒドロキシベンゼン)又はそれらの混合物などのジヒドロキシベンゼンも挙げることができる。
【0042】
ジブロモベンゼンをジヒドロキシベンゼンと反応させることにより形成されるアリール組成物は、式:
【化9】


(nは0又は少なくとも1で、RはOH又はBrで、RはOH、Br又は式:
【化10】


(RはOH又はBr)のフェノキシ基である)を有してもよい。
【0043】
ジハロベンゼンをジヒドロキシベンゼンと反応させることにより形成した反応生成物は、限られた量の軽質最終物を有してもよく、つまりそれは比較的少量の未反応モノマー及びダイマー(すなわち、2つのベンゼン環をもつ化合物)である。例えば、式(I)のアリール組成物は、30重量%以下の、例えば、20重量%以下の、例えば、10重量%以下の、1つのベンゼン環を及び/又は2つのベンゼン環をもつ化合物を、含有してもよい。未反応モノマーは、例えば全アリール組成物の1重量%未満の濃度で生成物の混合物中に存在してもよい。場合により、未反応モノマー(例えば、ただ1つのベンゼン環をもつ化合物である、ジブロモベンゼン又はジヒドロキシベンゼン)は、完全に、又は少なくとも全アリール組成物の0.1重量%未満の濃度に、蒸留などの分離技術によって、反応生成物から除去されてもよい。モノマー及びオリゴマー−特にヒドロキシル基を有するダイマー−種を、NaOHなどの水溶性塩基で反応生成物を洗浄し続いて水で生成物を洗浄することにより、除去することもできる。特にそのような洗浄処理の後に、生じる式(I)のアリール組成物は、2つ以下のベンゼン環をもつ化合物を2重量%未満含有してもよい。回収した未反応モノマー及び回収したダイマーは、リサイクルされ、新鮮な反応剤供給原料とともにオリゴマー化反応器に供給されてもよい。
【0044】
ジブロモベンゼンなどのジハロベンゼンをジヒドロキシベンゼンと反応させることにより形成した反応生成物葉、比較的大量の中質及び重質最終物−すなわち3つ以上のベンゼン環を有している化合物−を有してもよい。そのような中質及び重質最終物は、式(I)の化合物を80重量%以上含有してもよい。けれども、この混合物の重質最終物は、制限されてもよい。例えば、ジブロモベンゼンをジヒドロキシベンゼンと反応させることにより形成した反応生成物は、5つ以上のベンゼン環をもつ式(I)の化合物を80重量%未満有してもよい。
【0045】
ジブロモベンゼンをジヒドロキシベンゼンと反応させることにより形成した反応生成物は、例えば分子量Mw=600〜2000で及びポリスチレン標準GPCクロマトグラフィーにより測定される多分散性が1.4〜2.5であってもよい。
【0046】
式(I)の化合物は、末端ハロゲン置換基及び末端ヒドロキシル置換基を有してもよい。末端ヒドロキシル置換基−すなわち、式(I)のR、R又はRがOHである化合物−よりも、より多くの末端ハロゲン置換基−すなわち、式(I)のR、R又はRがハロゲンである化合物−があってもよい。OH基に比べ過剰なハロゲン基をもつそのような化合物は、過剰モル数のジハロベンゼンを不足モル数のジヒドロキシベンゼン(例えば、レゾルシノール)と反応されることにより作られてもよい。例えば、そのような化合物は、そのような化合物が合わさるための適切な反応混合物でのジハロベンゼン対ジヒドロキシベンゼン(例えば、レゾルシノール)のモル比が約1.1:1〜約1.9:1、例えば約1.1:1〜約1.6:1、である場合に、形成されてもよい。
【0047】
少量の意図しない生成物が、例えば1重量パーセント以下のものが、副反応で生じるかもしれない可能性がある。そのような副反応は、末端OH又はハロ基(例えば、R又はRが水素である式(I)の化合物)が不足している、又は内部フェニレン基が直接つながってビフェニル結合を形成している、オリゴマーを少量生じるかもしれない。式(I)で記載される主たる線形分子に加えて環状オリゴマー生成物が少量生成される可能性がある。
【0048】
特に、レゾルシノール(すなわち、1,3−ジヒドロキシベンゼン)が反応剤として使われる場合、式(I)の化合物がオリゴマー中にメタフェニレン基を有してもよい。
【0049】
ジハロベンゼンとジヒドロキシベンゼンの反応を促進するために、触媒及び塩基を通常使用する。塩基は、ジヒドロキシベンゼンの酸性フェノール基(すなわち、ヒドロキシル基)からプロトンを外す能力がある。外されたプロトンが、塩基からのカチオン−特に、一価カチオン−で置換されて塩を形成してもよい。特定の塩基の例としては、水酸化カリウムがある。反応混合物に触媒を導入する前に、ジヒドロキシベンゼンが塩に変換されてもよい。ジヒドロキシベンゼンの塩は、モノ塩(すなわち、1つの末端一価カチオン及び1つの末端ヒドロキシル基を有する化合物)若しくはジ塩(すなわち、2つの末端一価カチオンを有するが末端ヒドロキシル基を有さない化合物)又はモノ塩とジ塩の混合物、であってもよい。
【0050】
オリゴマーを形成するために使われるジハロベンゼン及びジヒドロキシベンゼンは、これらの化合物の個別の異性体又はそれらの混合物であってもよい。ジブロモベンゼン異性体の混合物の例として、10:45:45の重量比又はモル比の、1,2−、1,3−及び1,4−ジブロモベンゼンの混合物がある。
【0051】
反応で使われるジハロベンゼンの総モル数は、ジヒドロキシベンゼンの総モル数を超えてもよい。そのような過剰モル数のジハロベンゼンの使用は、末端ヒドロキシル基よりも多くの末端ハロゲン基をもつオリゴマーの形成を促進する。ジハロベンゼン(ジハロベンゼン異性体の混合物を含む)対ジヒドロキシベンゼン(ジヒドロキシベンゼン異性体の混合物を含む)のモル比は、約1.1:1〜約1.9:1、例えば約1.1:1〜約1.6:1、であってもよい。これらの比を計算すると、ジヒドロキシベンゼンが、例えば塩基と接触する前に、プロトン化された形であってもよく、又は塩基と接触した後に形成される塩の形であってもよいことが、理解されるだろう。塩基として使用されてジヒドロキシベンゼンの塩を形成し得る組成物には、KOH、NaOH、KCO、CsCO及びKPOが含まれる。これらの塩基組成物は、水溶液などの液体の形で又は固体の形で、反応混合物に加えられてもよい。
【0052】
ジヒドロキシベンゼンの塩は、ジヒドロキシベンゼン、塩基の水溶液及び溶媒の混合物を形成することにより調製されてもよい。この混合物は、ジハロベンゼン及び/又は水と共沸物を形成できる液体を含んでもよい。この混合物は、その後に加熱されて還流し共沸的に水が留去されてもよい。水とともに共沸を形成することができる液体は、トルエンであってもよい。溶媒は、ジメチルホルムアミドであってもよい。塩基中の一価カチオンの数対ジヒドロキシベンゼンのヒドロキシル基のプロトンの数は、約0.9:1〜約1.25:1であってもよい。例えば、塩基としてKOHが用いられた場合、KOH対ジヒドロキシベンゼンのモル比は、約1.8:1〜約2.5:1、例えば約2.1:1〜約2.5:1、であってもよい。共沸を形成することができる液体の少なくとも50%は、共沸的に留去される水とともに反応混合物から取り出されてもよい。場合により、水とともに共沸を形成することができる液体は省略されてもよく、水が直接反応外へ留去されてもよい。ジハロベンゼン及びジヒドロキシベンゼンの反応剤を、反応混合物に、一気に又は段階的に加えてもよい。段階的な加え方の例として、ジハロベンゼン反応剤の第1部をまず反応混合物に加えて、オリゴマーが形成して、その後にジハロベンゼンの最終部を反応混合物に加えてもよい。
【0053】
式(I)の化合物を形成する反応で用いられる触媒は、銅含有触媒であってもよい。そのような銅含有触媒の例として、銅(I)化合物(すなわち、第一銅化合物)及び銅(II)化合物(すなわち、第二銅化合物)が挙げられる。これらの化合物は酸化物又は塩であってもよい。銅含有触媒の具体的な例として、CuI、CuBr、CuO、CuO及び酢酸第二銅が挙げられる。銅含有触媒対ジヒドロキシベンゼン(プロトン化された形で又は塩の形でのどちらか)のモル比は、例えば約0.01:1〜約0.04:1であってもよい。.
【0054】
銅含有触媒を、都合のよい段階で反応混合物に入れてもよい。例えば、水が除去−例えば上記のような共沸除去−された後に、銅含有触媒を反応混合物に加えてもよい。場合により、水除去の前に反応混合物に銅含有触媒を加えてもよい。
【0055】
ジブロモベンゼン、ジヒドロキシベンゼン(場合により塩の形で)及び触媒を含有する反応混合物を、式(I)のオリゴマーを形成する条件下で反応させてもよい。その条件として、少なくとも5時間の反応時間での140℃超の温度、好ましくは150℃超の温度、の条件が挙げられる。
【0056】
銅含有触媒は、式(I)のオリゴマーの形成を促進するために、場合により配位子と合わせてもよい。そのような配位子の例として、1,10−フェナントロリン、ジメチルグリシン、1−ブチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール及びDL−アラニンが挙げられる。銅含有触媒対配位子のモル比は1:3〜約3:1であてもよい。
【0057】
反応の生成物は、都合のよい手段で回収されてもよい。例えば、ジヒドロキシベンゼンのカリウム塩が反応剤として使われる場合、反応の副生成物はKBrである。このKBr塩は、ろ過により生成物の混合物から除かれ得る。その後溶媒は反応混合物から取り出されて有機残渣を形成してもよい。残渣は、もし必要なら水不混和溶媒に溶解されてもよい。その後この有機残渣は、NaOHなどの水溶性塩基を希釈したもので、その後に遊離フェノール性末端オリゴマー鎖を除去するために水洗浄により、洗浄されてもよい。この洗浄水は、収量を改善するために連続反応に戻されリサイクルされてもよい。場合により、遊離フェノール性末端オリゴマー鎖の量を最小化するのを助けるために、反応保持期間の終わりにブロモベンゼンなどのアリールハライドの添加により反応混合物を終結処理してもよい。最終的に、残ったジブロモベンゼン及び/又はブロモベンゼン並びにレゾルシノール低沸点物質は、蒸留によって洗浄済み有機残渣から除去されてもよい。蒸留により回収される反応性物質は、必要に応じて反応混合物に戻されリサイクルされてもよい。
【実施例】
【0058】
(例1〜15:銅触媒スクリーニング)
例1〜15では、表1に示すように、レゾルシノール(RC)及びパラ−ジブロモベンゼン(PDBB)の重合のために種々の銅触媒系をスクリーニングした。パラ−ジブロモベンゼン(PDBB)が1,4−ジブロモベンゼンと同一化合物であることは理解されるだろう。以下の条件で反応を行った。
【0059】
等モル量のRC及びPDBBを窒素下で反応フラスコに充填した。ジメチルホルムアミド(DMF)(12.6g/RCの1g)及びトルエン(3g/RC1g)を加えた後KOH(2.0モル/RC1モル)の水溶液を加えた。初期発熱の後、反応物を加熱して還流し、共沸的に水を除去した。そして、DMFの還流温度に達するまで(153℃)、トルエンを連続蒸留により除去した。無水DMFを反応フラスコに戻して、トルエン除外中に蒸留されたDMFを補って、DMF12.6g/RC1gの比を維持した。そして、触媒を加え、及び20時間還流状態に反応を保持した後に分析用にサンプリングした。
【0060】
高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により試料を分析した。HPLC分析は、アリール(すなわち、ベンゼン)環の数に基づく種々のオリゴマー鎖に対応する一連のピークを示す。各鎖長に存在するいくつかのピークがあり、さらなる試験で、オリゴマー鎖の末端基の異質を明らかにした。質量分析により、HPLCピークの性質を確認した。アリールブロミドにより若しくはアリール水酸化物により又はそれには及ばないがアリール−水素により主成分に存在する異種が鎖末端化されたことが明らかになった。これらは、クロマトグラフの終わりに共溶出するより大きな分子量のオリゴマーとともに約8環種にまで見ることができた。
【0061】
オリゴマー性難燃剤物質を作る目的のために、3環種及びより大きなものの量を最大化すること並びに2環種(ダイマー)及び出発物質化合物の量を最小化することが望ましいであろう。HPLC分析でHPLC面積%により表1に総じるように、これらの群の物質を追跡した。
【表1】

【0062】
表1のデータが示しているのは、CuCl、CuCl及び特にCuBrが所望生成物ピーク(3環種以上)の生成が最少量であることである。2モル%の使用で、CuO及びCuOはCuIより若干良好に機能して、約82%の生成物を与えた。4モル%で、これらの触媒系は、それぞれ、87.0、90.2、及び90.4%の生成物を与えた。4モル%より多いCuOの使用では、さらなる利益がなかった。
【0063】
(例16〜18:触媒及び配位子スクリーニング反応)
【表2】


表2に示すように、銅触媒をさらなる配位子物質とともに用いてアリールエーテルカップリング反応がさらに行われた。反応条件は、例1〜15で記載したものと同一であった。
【0064】
表2のデータが示しているのは、1,10−フェナントロリン(phen)及びジメチルグリシン(DMG)が3環種以上のオリゴマー性成分を最大量有する生成物を与える配位子としての使用に最も可能性を示したことである。配位子なしで4モル%の触媒の使用は、配位子プラス2モル%の触媒を使用する系とおよそ同じ量の生成物を与えた。そのため、ある配位子の使用は、銅触媒の量を減少することを可能とする。CuO(銅(II)種)の使用は、銅(I)触媒が等モル%使用レベルで使用された時と少なくとも同じくらい良好な結果を与えた。このことは、分子量対Cu(I)触媒で有意な利点を供給しており、それ故、全体としてより低い使用レベル及び経済的利点を供給している。
【0065】
(例49〜68:アリール末端処理を有する、触媒及び配位子スクリーニング反応)
表1及び表2で実施された最適化反応は、1:1(RC:PDBB)の化学量論量のRC及びPDBBを用いた。この1:1比は、このタイプの系で考えられる最大の分子量を理論的には生成するだろう。けれども、その反応のタイプは、OH末端サイトを有するオリゴマー鎖を多量に残すだろう。これらのOH末端サイトは連続的化学反応に有用かもしれないが、これらのOH末端サイトは、これらのオリゴマー−特にその臭素化物−を難燃剤化合物として使用するのに悪影響をもたらすかもしれない。
【0066】
OH末端サイトの量を減らすために、反応の化学量論を変更して反応中にPDBBが過剰となるようにした。この場合に、PDBBは、鎖伸長剤として及びエンドキャップとしての両方に機能できた。HPLC分析により及びブロモでエンドキャップした又はヒドロキシでエンドキャップした化合物を含む、形成する異なる3環種の試験により、エンドキャップ化効率の追跡が実施された。これら3環化合物のエンドキャップ化効率における傾向は、系全体で見られる傾向と同様であろう。
【0067】
表3での反応条件は以下の通りである。RC及びPDBBを示したモル比で窒素下で反応フラスコに充填した。DMF(12.6g/RC1g)及びトルエン(3g/RC1g)を加えた後KOH(2.0モル/RC1モル)の水溶液を加えた。初期発熱の後、反応物を加熱して還流し、共沸的に水を除去した。そして、DMFの還流温度に達するまで(153℃)、トルエンを連続蒸留により除去した。無水DMFを反応フラスコに戻して、トルエン除外中に蒸留されたDMF分を補って、DMF12.6g/RC1gの比を維持した。そして、触媒を加え、及び20時間還流状態に反応を保持した後に分析用にサンプリングした。
【表3】

【0068】
表3のデータが示しているのは、過剰のPDBBの使用が臭素末端3環オリゴマー群を増加させてヒドロキシル末端鎖の量を大きく減少させることである。そのデータはまた、DMG配位子系を使用した時でさえもヒドロキシル末端鎖の量が減少して10時間未満に反応時間を減らすことができたことも示している。表4に示すように、表3と同反応条件下で、いくつかのさらなる触媒及び配位子の系が1:1.5のRC:PDBBのモル比で調べられた。
【0069】
表3及び4のCuO触媒系データは、ジメチルグリシン(DMG)が最小の反応時間で3環以上のオリゴマーを最大量与えることを示している。イミダゾール、ジメチルグリオキシム、サルコシン及びDL−アラニンなどのような、いくつかの他の配位子もまた、良好に働いた。
【0070】
例64〜66では、酢酸第二銅が「可溶性」(均一性)銅触媒系として使用され、そこでは添加配位子有り無しの両方が行われ、この反応で非常に良好な性能を示した。その性能は、DMG配位子を併用することによりさらに増強された。例67及び68では、2種の不均一銅触媒(Cu/アルミナ、及びCu/Pd−C)は、20時間の反応時間で、3環以上を含む成分をたった12%及び1%得ただけであった。
【表4】

【0071】
(例69〜80:塩基のタイプと収量への効果)
無水炭酸塩又はリン酸塩の使用をUllmannエーテルカップリング反応で使用できることを示す参考文献が数多くある。実際、多くのUllmannエーテルカップリング反応が、良好な反応速度及び収量を与えるための塩基としてCsCOの使用が必要であることを開示している。例69〜80では、表5に示すように、反応での種々の塩基の効果が、DMF溶媒中での6時間の還流後の反応混合物の分析によって比較された。
【0072】
これらの反応で、RC(1.0当量)及びPDBB(1.55当量)を窒素下で反応フラスコに充填した。DMF(12.6g/RC1g)を溶媒として使用した。水酸化物塩基用には、ルエン(3g/RC1g)を加えた後塩基(2.25モル/RCの1モル)の水溶液を加えた。初期発熱の後、反応物を加熱して還流し、共沸的に水を除去した。そして、DMFの還流温度に達するまで(153℃)、トルエンを連続蒸留により除去した。トルエン除外中に蒸留されたDMFを補ってDMF9.0g/RCの1gの比にする必要があった場合には、無水DMFを反応フラスコに戻した。その他の塩基用には、トルエンを用いて蒸留したが、思っていた通り、共沸の水は確認されなかった。塩基の量は、全ケースで2.25モル/RC1モルであった。そして、CuO(0.02当量)及びDMG(0.03当量)を加え、8時間還流状態に反応を保持した。試料を取り出し、塩化メチレン/5%HCl洗浄で単離し、有機層をHPLCで分析した。
【表5】

【0073】
例69では、塩基としてKOHが使用され、少なくとも3つのベンゼン環を有するオリゴマーが、試験された他の塩基に対して最大量形成された。対照的に、水酸化ナトリウムの反応(例70)では、少なくとも3つのベンゼン環を有するオリゴマーの生成量は最小であり、非常に高いレベルで2環種が生成された。
【0074】
次に、表6に示すように、KOH化学量論量を変えて収率への影響を調べた。例69〜73に記載したように反応を実施した。KBr塩をろ過することにより反応物質をワークアップして、DMFを除外して、溶媒中の有機残渣を希釈NaOHで洗浄して、その後、残った出発物質の蒸留がされた。この方法は、OH末端種を本質的に含まないオリゴマーを得る。
【表6】

【0075】
収率対KOH当量のデータは、およそ2.25当量までのKOHで収率の改善を明らかに示している。KOHが多いほどエンドキャップとしてのPDBBの利用がより完全なものとなるのが明らかであり、そのため、塩基洗浄により除去されるOH末端物質の量を最小化し、より高い全体収率となるであろう。
【0076】
(例81〜90:溶媒選択と反応濃度の最適化)
例81〜88では、1:1(RC:PDBB)の化学量論量のRC及びPDBBを含む反応で、種々の溶媒を使用した。結果を表7に示す。もし溶媒が共沸による水除去工程を経たならば、KOHが塩基として使用された。もし溶媒がその技術に適していなかったならば、リン酸塩又は炭酸塩が使用された。
【表7】

【0077】
他よりも良好に溶媒の働きを持つファクターは、溶媒中でのレゾルシノール塩の可溶性に関連する。レゾルシノール塩をあまり良く溶解しない溶媒は、概してひどい結果となった。溶媒のなかにはHPLCによる生成物アッセイの観点で良好な結果を与えるものもあったが、炭酸塩又はリン酸塩が使われた時、反応系はひどい懸濁となり、生成物単離が非常に問題となった。
【0078】
例89及び90では、DMFを溶媒として用い、溶媒濃度を変えた。結果を表8に示す。RC:PDBBの化学量論量を1:1.55にして、これらの反応を行った。そのデータは、両ケースで反応が3環以上の生成物へ高い変換率で進行するが、高濃度であるほどOH末端物質の量が少ないことを示しており、すなわち、より高濃度反応ほど反応が同時間枠でさらに前進した。
【表8】

【0079】
(オリゴマー性分子量分布を定量する比較例)
表9に示すように、前述の好ましい化学量論量(PDBB/RC=1.55)での代表的な例(例77)及びいくつかの新しい例を比較して、詳細に分析して、分子量分布への主だった反応パラメータの影響を調べた。反応は、特に指示がない限り、例77のために前述したように行った。データは、ポリスチレン標準でGPCにより測定した分子量を示している。データは、クロマトで分離される異なる分子量種の個々のグルーピングのHPLC面積%分析も示している。これらのピークの決定が、分離LCMS分析に基づいてなされた。
【表9】

【0080】
表9からのHPLC分析で、どのように物質が他のオリゴマー化号物と比べるかを決めるために多様なオリゴマー鎖長の比が準備され得る。この分析に基づく比は、第1近似としての実際の重量%比と同程度であるべきです。表9の例のHPLC面積は、パラ−ジブロモベンゼン対レゾルシノールの比が1.55対1であった場合に3より多いベンゼン環をもつオリゴマーの量が3つのベンゼン環をもつオリゴマーの量を超えたことを示している。対して、表9の例92のHPLC面積は、パラ−ジブロモベンゼン対レゾルシノールの比が2.0対1であった場合に3つのベンゼン環をもつオリゴマーの量が3より多いベンゼン環をもつオリゴマーの量を超えたことを示している。
【0081】
(例93〜96:有機ハロゲン量)
反応を実施して、有機臭素(oBr)含有量に関するRC:PDBBの化学量論量の効果を調べた。なぜなら、エンドキャップとして機能するために過剰のPDBBを使用することが概して高い有機臭素量の生成物を生み出すであろうからである。反応手順は例49〜68のために記したのと同じとした。その結果を表10に示す。ともに示したのは、推定の有機塩素(oCl)及び有機ヨウ素(oI)レベルであり、それは、もし使用されたアリールブロミドに代わってアリールクロリド又はアリールヨージドで置き換えた場合に期待されるだろう。有機臭素、有機塩素及び有機ヨウ素(すなわち、oBr,oCl and oI)が式(I)の化合物に化学的に結合(すなわち、共有結合)されるBr、Cl及びIを意味することは、理解されるだろう。
【表10】

【0082】
これらのデータは、エンドキャップとして機能するための過剰のPDBBの使用は生成物中の有機Brの量を実際増加させることを示している。
【0083】
前記の議論で報告した全収率は、ワークアップ後単離物質の実際の重量に基づいており、使用されたレゾルシノール及びジブロモベンゼンのモル数に基づいて以下に示すように計算されている。それらの出発物質量は、理論上得られるK−RC塩及びKBr塩の量を計算して使用されている。そして、理論収量は、マスバランスに基づいており、そこでは
KBrのモル数=2×RC塩のモル数
である。それは、PDBBが過剰に使用されているからである。
理論質量=(K−RC塩の重量+PDBBの重量−KBrの重量)
収率%=実際の質量/理論質量×100%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリールエーテルオリゴマーを含有するアリール組成物であって、式:
【化1】


(nは0又は少なくとも1で、RはOH又はハロゲンで、RはOH、ハロゲン又は式:
【化2】


(RはOH又はハロゲン)のフェノキシ基である)を有する、
アリール組成物であり、
該アリール組成物は、3つのベンゼン環を有する式(I)の化合物と3を超えるベンゼン環を有する式(I)の化合物の混合物を含有し、並びに2つのベンゼン環を有する式(I)の化合物を30重量%未満含有し、
式(I)の化合物の平均分子量は少なくとも400であり、並びに、
式(I)の化合物は、平均で、ハロゲンを2重量%〜35重量%含む、
アリール組成物。
【請求項2】
1つのベンゼン環を有する式(I)の化合物を1.0重量%未満含有する、請求項1に記載のアリール組成物。
【請求項3】
ジブロモベンゼンをレゾルシノールの塩、好ましくはレゾルシノールのカリウム塩、と反応させることにより調製される、請求項1に記載のアリール組成物。
【請求項4】
平均分子量Mw=200〜6000であり、ポリスチレン標準でGPCクロマトグラフィーにより測定した多分散性が1.4〜2.5である、請求項1に記載のアリール組成物。
【請求項5】
アリールエーテルオリゴマーを調製するための方法であって、ジハロベンゼンをジヒドロキシベンゼンの塩、好ましくはレゾルシノールのカリウム塩、と反応させる工程を備え、
ジハロベンゼンのモル数はジヒドロキシベンゼンの塩のモル数を超え、及び、
ジハロベンゼンのモル数対ジヒドロキシベンゼンの塩のモル数の比は約1.1:1〜約1.9:1である、
方法。
【請求項6】
ジハロベンゼンをジヒドロキシベンゼンの塩と反応させることにより生成される反応生成物から、1つ又は2つのベンゼン環を有するアリール化合物を除去する工程をさらに備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ジハロベンゼンが1,4−ジブロモベンゼンであり、1,4−ジブロモベンゼンが銅含有触媒の存在下レゾルシノールのカリウム塩と反応する、請求項5に記載の方法であって、好ましくは、銅含有触媒は酸化第二銅及び第二銅塩からなる群から選択される、
方法。
【請求項8】
第二銅塩が酢酸第二銅である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ジヒドロキシベンゼン塩が、
(a)1,4−ジブロモベンゼン、レゾルシノール、KOH水溶液、及び溶媒を混合することにより反応混合物を調製する工程、並びに、
(b)工程(a)の反応混合物を加熱して還流して水を留去する工程、
の工程により調製されるレゾルシノールのカリウム塩である、請求項7の方法であって、
工程(a)で、1,4−ジブロモベンゼン対レゾルシノールのモル比が、約1.1:1〜約1.6:1であり、並びに、
KOH対レゾルシノールのモル比が、約1.8:1〜約2.5:1、好ましくは2.1:1〜2.5:1、である、
方法。
【請求項10】
(c)KBr塩を工程(b)の生成物の混合物からろ過により除去する工程、
(d)溶媒を工程(c)の生成物の混合物から取り出して有機残渣を形成する工程、
(e)工程(d)の有機残渣を塩基の希釈水溶液で洗浄してその後水で洗浄する工程、並びに、
(f)残った1,4−ジブロモベンゼンを工程(e)で洗浄した有機残渣から蒸留により留去する工程、
をさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(c)の反応混合物へ、配位子を銅含有触媒とともに加える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
配位子が、1,10−フェナントロリン、ジメチルグリシン、1−ブチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール及びDL−アラニンからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
銅含有触媒対レゾルシノールのモル比が約0.01:1〜約0.04:1である、請求項12に記載の方法であって、
銅含有触媒対配位子のモル比が約1:3〜約3:1である、
方法。

【公表番号】特表2012−526150(P2012−526150A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510048(P2012−510048)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/039573
【国際公開番号】WO2011/014317
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(508201282)ケムチュア コーポレイション (69)
【Fターム(参考)】