説明

アルカノールアミン、その製造方法及びそれを用いたポリウレタン樹脂の製造方法

【課題】 アルカノールアミン、その製造方法、及びそれを用いたポリウレタン製品を生産性、成形性良く得ることができる製造方法を提供する。
【解決手段】 N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N,N’−ジエチルヘキサメチレンジアミン等のアルカノールアミンを用いて、ポリウレタン樹脂を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカノールアミン、その製造方法、及びそれを用いたポリウレタン樹脂の製造方法に関する。
【0002】
本発明のアルカノールアミンは、エポキシ硬化剤、ウレタン原料、界面活性剤、繊維処理剤、紙力増強剤、樹脂改質剤、潤滑油添加剤等として有用であるが、とりわけ、ポリウレタン樹脂製造の際、成形性の良好なポリウレタン樹脂又はポリウレタンフォームを生産性良く製造するためのウレタン原料として極めて有用である。
【背景技術】
【0003】
ポリウレタン樹脂はポリオールとポリイソシアネートとを触媒及び必要に応じて発泡剤、界面活性剤、難燃剤、架橋剤等の存在下に反応させて製造される。
【0004】
発泡剤として水及び/又は低沸点有機化合物を用いるポリウレタンフォームの製造においては、生産性、成形性に優れることから、第3級アミン化合物が広く用いられている。このような第3級アミン化合物としては、例えば、従来公知のトリエチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル等が挙げられる。(例えば、非特許文献1参照)。金属系化合物は生産性、成形性が悪化することより、殆どの場合、第3級アミン触媒と併用されることが多く単独での使用は少ない。
【0005】
前記した第3級アミン触媒は、ポリウレタン製品から揮発性のアミンとして徐々に排出され、例えば、自動車内装材等では揮発性アミンによる臭気問題や他の材料、例えば表皮塩ビの変色問題を引き起こすため使用量が制限されている。
【0006】
この問題を解決する方法として、これら揮発性の第3級アミン触媒に替えて、分子内にポリイソシアネートと反応しうる1級及び2級のアミノ基や水酸基を有するアミン触媒(以下反応型触媒と称する場合がある)を使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0007】
上記の反応型触媒を使用する方法は、ポリイソシアネートと反応した形でポリウレタン樹脂骨格中に固定化されるため上記問題を回避するのに有効であるが、ポリウレタン樹脂の生産性や成形性の低下が問題となっている。
【0008】
この問題を解決する方法としては、これら反応型触媒に替えて、分子内に第3級アミノ基を持った高分子量のアルカノールアミンを使用する方法が提案されている(例えば、特許文献3〜4参照)。
【0009】
しかしながら、特許文献3において好ましいとされる第3級アミノアルコールや、特許文献4において好ましいとされる第3級アミノアルコールのカルボン酸塩では、ポリウレタン樹脂製造における生産性が低く、更には成形性が悪化するため、工業上満足できるものとはいえなかった。
【0010】
【特許文献1】特公昭61−31727号公報
【特許文献2】特開昭63−265909号公報
【特許文献3】特許2756000号公報
【特許文献4】特許3262366号公報
【非特許文献1】岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社 p.118
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、上記の反応型触媒を使用する方法において、ポリウレタン樹脂製造における生産性及び成形性を向上させることができるアルカノールアミン、及びそれを用いたポリウレタン樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は上記問題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、本発明のアルカノールアミンはポリウレタン樹脂製造における生産性と成形性を特異的に著しく改善させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、以下に示すとおりの、アルカノールアミン、その製造方法、及びそれを用いたポリウレタン樹脂の製造方法である。
【0014】
[1]下記一般式(1)で示されることを特徴とするアルカノールアミン。
【0015】
【化1】

[上記式中、R、Rは各々独立して下記一般式(2)
【0016】
【化2】

(上記式中、R、Rは各々独立して水素原子、又は炭素数1〜2のアルキル基を表し、pは1〜2の整数を表す。)
で示される置換基を表す。]
[2]N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N,N’−ジエチルヘキサメチレンジアミン。
【0017】
[3]N、N’−ジエチルアミノヘキサンを、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドによりオキシアルキル化することを特徴とする上記[1]に記載のアルカノールアミンの製造方法。
【0018】
[4]炭素数2〜4のアルキレンオキサイドが、エチレンオキサイド、1,2−プロピレンオキサイド及び1,2−ブチレンオキサイドからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする上記[3]に記載のアルカノールアミンの製造方法。
【0019】
[5]N、N’−ジエチルアミノヘキサンを、プロピレンオキサイドによりオキシアルキル化することを特徴とするN,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N,N’−ジエチルヘキサメチレンジアミンの製造方法。
【0020】
[6]ポリオールとイソシアネートを上記一般式(1)で示されるアルカノールアミンの存在下反応させることを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法。
【0021】
[7]ポリオールとイソシアネートをN,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N,N’−ジエチルヘキサメチレンジアミンの存在下反応させることを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
上記一般式(1)において、R、Rは各々独立して上記一般式(2)で示される置換基を表す。また、上記一般式(1)において、N,N’窒素原子間のアルキレン鎖の炭素数は6である。炭素数が6より小さい場合はウレタン樹脂の成形性が低下するおそれがあり、炭素数が6より大きい場合はウレタン樹脂の生産性が低下する場合がある。N,N’窒素原子上の置換基は、ウレタン樹脂の生産性と成形性を向上させるため、炭素数が2のエチル基であることが肝要である。炭素数が1のメチル基では成形性が低下し、炭素数が2より大きい場合は成形性は良いが生産性が低下する。
【0023】
上記一般式(2)において、R、Rは各々独立して水素原子、又は炭素数1〜2のアルキル基を表し、p値は1〜2の整数である。合成の容易さ及び製造コストの点でRは水素原子、Rはメチル基が好ましい。合成の容易さ及びウレタン樹脂の生産性の点でp値は1が好ましい。
【0024】
本発明の上記一般式(1)で示されるアルカノールアミンは、文献既知の方法にて容易に製造できる。
【0025】
例えば、N、N’−ジエチルアミノヘキサンの活性水素部位にアルキレンオキサイドを付加させることにより製造することができる。N、N’−ジエチルアミノヘキサンは、市販されており容易に入手可能である。
【0026】
本発明の方法において、アルキレンオキサイドとしては特に限定するものではないが、例えば、エチレンオキサイド、1,2−プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド等が挙げられる。
【0027】
本発明の方法により製造されるアルカノールアミンとしては、例えば、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N,N’−ジエチルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N,N’−ジエチルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス(2−ヒドロキシブチル)−N,N’−ジエチルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。また、これらのアルカノールアミンに更にアルキレンオキサイドを反応させ高分子量化したアルカノールアミン類を任意の割合で含んでもよい。
【0028】
本発明のアルカノールアミンは、ポリオールとポリイソシアネートとを、必要に応じて他の発泡剤、界面活性剤、難燃剤、架橋剤、触媒等の存在下に反応させるポリウレタン樹脂の製造方法において、ポリオールや架橋剤の一部として用いられる。本発明のアルカノールアミンをポリウレタン樹脂の製造に用いる場合の使用量は、ポリオール100重量部に対して通常0.1〜30重量部の範囲であるが、好ましくは0.1〜15重量部の範囲である。更に好ましくは、0.1〜10重量部の範囲である。使用量が多いとポリウレタン樹脂が硬くなり過ぎたり、コスト的にも不利である。
【0029】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法は、ポリオールとイソシアネートを上記した本発明のアルカノールアミンの存在下反応させることを特徴とする。また、本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、さらに発泡剤の存在下、ポリオールとイソシアネートを反応させることにより、ポリウレタンフォームを製造することができる。
【0030】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、使用される他のポリオールとしては、例えば、従来公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、更には含リンポリオールやハロゲン含有ポリオール等の難燃ポリオール等が挙げられる。これらのポリオールは単独で使用することもできるし、適宜混合して併用することもできる。
【0031】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン等のアミン類、エタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等の、少なくとも2個以上の活性水素基を有する化合物を出発原料として、これとエチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキサイドとの付加反応により製造されたものが挙げられる[例えば、Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版) Hanser Publishers社(ドイツ)p.42〜53等参照。]。
【0032】
ポリエステルポリオールとしては、二塩基酸(主にアジピン酸)とグリコールやトリオールとの脱水縮合反応から得られるもの、ナイロン製造時の廃物、トリメチロールプロパン、ペンタエリストールの廃物、フタル酸系ポリエステルの廃物、廃品を処理し誘導したポリエステルポリオール等が挙げられる[例えば、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社p.117等参照。]。
【0033】
ポリマーポリオールとしては、例えば、前記ポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体(例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等)をラジカル重合触媒の存在下に反応させた重合体ポリオールが挙げられる。
【0034】
難燃ポリオールとしては、例えば、リン酸化合物にアルキレンオキシドを付加して得られる含リンポリオール、エピクロルヒドリンやトリクロロブチレンオキシドを開環重合して得られる含ハロゲンポリオール、フェノールポリオール等が挙げられる。
【0035】
これらポリオールの平均水酸基価は20〜1000mgKOH/g程度のものが使用できるが、軟質ポリウレタンフォームや半硬質ポリウレタンフォーム製品には20〜100mgKOH/gのものが、スプレー式硬質ポリウレタンフォームには100〜800mgKOH/gのものが好適に使用される。
【0036】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法に使用されるポリイソシアネートは、トルエンジイソシアネート(以下、TDIと称する場合がある。)、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと称する場合がある。)、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類、ジシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類及びこれらの混合体等が挙げられる。これらのうち好ましくはTDIとその誘導体又はMDIとその誘導体であり、これらは混合して使用しても差し支えない。
【0037】
TDIとその誘導体としては、2,4−TDIと2,6−TDIの混合物又はTDIの末端イソシアネートプレポリマー誘導体を挙げることができる。MDIとその誘導体としては、MDIとその重合体のポリフェニルポリメチレンジイソシアネートの混合体、及び/又は末端イソシアネート基をもつジフェニルメタンジイソシアネート誘導体を挙げることができる。
【0038】
これらイソシアネートの内、軟質ポリウレタンフォームや半硬質ポリウレタンフォーム製品にはTDIとその誘導体又はMDIとその誘導体及びこれらの混合品が、スプレー式硬質ポリウレタンフォームにはMDIとその重合体のポリフェニルポリメチレンジイソシアネートの混合体が好適に使用される。
【0039】
これらポリイソシアネートとポリオールの混合割合としては、特に限定するものではないが、イソシアネートインデックス(イソシアネート基/イソシアネート基と反応しうる活性水素基)で表すと、通常60〜400の範囲である。
【0040】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、使用可能な触媒としては、例えば、有機金属触媒、カルボン酸金属塩、第3級アミン類や第4級アンモニウム塩類等を挙げることができる。
【0041】
有機金属触媒としては、鉛、錫、水銀系以外の金属化合物であり、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、オクタン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、オクタン酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、オクタン酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等が好適なものとして挙げられる。鉛、錫、水銀等の重金属は毒性問題や環境問題を引き起こすため、使用量は少ない方が望ましい。
【0042】
カルボン酸金属塩としては、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、カルボン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が挙げられる。カルボン酸としては、特に限定するものではないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、2−エチルヘキサン酸、アジピン酸等の脂肪族モノ及びジカルボン酸類、安息香酸、フタル酸等の芳香族モノ及びジカルボン酸類等が挙げられる。また、カルボン酸塩を形成すべき金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属が好適な例として挙げられる。
【0043】
第3級アミン類としては、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ジメチルアミノプロピルイミダゾール等の第3級アミン化合物類が挙げられる。
【0044】
第4級アンモニウム塩類としては、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、水酸化テトラメチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物、テトラメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類が挙げられる。
【0045】
これら触媒の内、本発明のアルカノールアミンと併用する他の触媒としては、第3級アミン類が好ましい。第3級アミン類の内、トリエチレンジアミンとビス(ジメチルアミノエチル)エーテルが特に好ましい。
【0046】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、触媒の使用量は、使用されるポリオ−ル100重量部に対し、通常0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜10重量部の範囲である。0.01重量部より少ないとポリウレタン樹脂の硬化が遅く、また成形性が悪化する。一方、20重量部を超えると、触媒を増やした効果が得られないだけでなく成形性が悪化する場合がある。
【0047】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法に用いられる発泡剤としては、具体的には、フロン系化合物、低沸点炭化水素、水及びこれらの混合物が挙げられる。フロン系化合物としては、ジクロロモノフルオロエタン(HCFC−141b)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)等が挙げられるが、オゾン層破壊の問題から、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)が好ましい。低沸点炭化水素としては、通常、沸点が0〜70℃の炭化水素が使用され、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン及びこれらの混合物が挙げられる。これら発泡剤のうち、特に好ましいのは水である。
【0048】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、必要であれば、整泡剤として界面活性剤を用いることができる。使用される界面活性剤としては、例えば、従来公知の有機シリコーン系界面活性剤が挙げられ、具体的には、有機シロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体、シリコーン−グリース共重合体等の非イオン系界面活性剤、又はこれらの混合物等が例示される。それらの使用量は、ポリオール100重量部に対して通常0.1〜10重量部である。
【0049】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、必要であれば、架橋剤又は鎖延長剤を用いることができる。架橋剤又は鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等の低分子量の多価アルコール類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子量のアミンポリオール類、又はエチレンジアミン、キシリレンジアミン、メチレンビスオルソクロルアニリン等ポリアミン類を挙げることができる。
【0050】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、必要であれば、難燃剤を用いることができる。使用される難燃剤としては、例えば、リン酸とアルキレンオキシドとの付加反応によって得られるプロポキシル化リン酸、プロポキシル化ジブチルピロリン酸等の含リンポリオールの様な反応型難燃剤、トリクレジルホスフェート等の第3リン酸エステル類、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有第3リン酸エステル類、ジブロモプロパノール、ジブロモネオペンチルグリコール、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン含有有機化合物類、酸化アンチモン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム等の無機化合物等が挙げられる。その量は特に限定されるものではなく、要求される難燃性に応じて異なるが、ポリオール100重量部に対して通常4〜20重量部である。
【0051】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法においては、必要に応じて、着色剤や、老化防止剤、その他従来公知の添加剤等も使用できる。これらの添加剤の種類、添加量は、使用される添加剤の通常の使用範囲でよい。
【0052】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法は、前記原料を混合した混合液を急激に混合、攪拌した後、適当な容器又はモールドに注入して発泡成型することにより行われる。混合、攪拌は一般的な攪拌機や専用のポリウレタン発泡機を使用して実施すれば良い。ポリウレタン発泡機としては高圧、低圧及びスプレー式の機器が使用できる。
【0053】
ポリウレタン樹脂製品としては、発泡剤を使用しないエラストマーや発泡剤を使用するポリウレタンフォームが挙げられるが、中でもポリウレタンフォーム製品の製造が好ましい。ポリウレタンフォーム製品としては、軟質、半硬質、硬質などが挙げられるが、特に自動車内装材として用いられる軟質のカーシート、半硬質のインスツルメントパネルやハンドル及びスプレー式硬質フォームにて製造される断熱建材が好ましい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0055】
実施例1
200mlの攪拌機付きオートクレーブにN,N’−ジエチル−1,6−ジアミノヘキサン(東京化成工業(株)社製)52gを仕込んだ。オートクレーブを密閉、窒素置換後、攪拌下に120℃まで昇温した。続けてプロピレンオキサイド38.6gを1時間かけてポンプで供給した。2時間熟成反応を行った後、100℃/8KPaの条件で減圧して未反応のプロピレンオキサイドを除去した後、冷却して反応液を取り出しN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N,N’−ジエチルヘキサメチレンジアミンを87g得た。
【0056】
CDOD溶媒中でのH−NMR測定結果を以下に示す。
【0057】
δ1.1(t)6H、δ1.2(d)6H、δ1.4−1.7(m)8H、δ2.5−2.8(m)12H、δ3.9(m)2H。
【0058】
実施例2〜実施例4及び比較例1〜比較例4
本発明のアルカノールアミンを用いて半硬質ポリウレタンフォームを製造した例を実施例として、本発明のアルカノールアミンを用いない代わりに各種の架橋剤や触媒を用いて半硬質ポリウレタンフォームを製造した例を比較例として、以下に示す。
【0059】
表1に示した原料配合比にてプレミックスAを調合した。
【0060】
【表1】

1)FA703、三洋化成社製ポリエーテルポリオール
2)イソシアネート(MDI):MR200(日本ポリウレタン社製)
3)INDEX=(NCO基モル数/OH基モル数)×100。
【0061】
プレミックスA 102.8gを300mlポリエチレンカップに取り、表2に示す本発明のアルカノールアミン又は各種の触媒を、各々反応性が下記のゲルタイムで70秒となる量添加し、23℃に温度調整した。別容器で23℃に温度調整したイソシアネート液を、イソシアネートインデックス[=イソシアネート基/OH基(モル比)×100)]が105となる量、プレミックスAのカップの中に入れ、素早く攪拌機にて6000rpmで5秒間攪拌した。混合攪拌した混合液を40℃に温度調節した2リットルのポリエチレンカップに移し発泡中の反応性を測定した。
【0062】
次に、同じ操作にて全フォーム密度が100kg/mになるように、40℃に温度調節したモールド(内寸法、295×305×25mmのアルミ製)内に混合液を入れ蓋をして発泡成形を行った。混合開始から11分後にフォームを脱型し、その1分後にフォームの脱型時硬度を測定した。また成型フォームから、フォーム硬度を測定し比較した。結果を表2にあわせて示す。なお、各測定項目の測定方法は以下のとおりである。
【0063】
(1)反応性の測定項目
クリームタイム:発泡開始時間、フォームが上昇開始する時間を目視にて測定
ゲルタイム:反応が進行し液状物質より、樹脂状物質に変わる時間を測定
ライズタイム:フォームの上昇が停止する時間を目視にて測定。
【0064】
(2)フォームの脱型時硬度
混合開始から11分後にフォームを脱型し、その1分後にフォームの脱型時硬度をSHORE−C硬度計にて測定した。
【0065】
(3)フォームの硬度
混合開始から11分後にフォームを脱型し、その24時間後にフォームの硬度をSHORE−C硬度計にて測定した。
【0066】
(4)フォームの成形性
混合開始から11分後にフォームを脱型し、その24時間後にフォームの外観を観察し、表面及び裏面のボイドの有無について目視にて確認した。表面及び/又は裏面にボイドが無いものは成形性が良いといえる。
【0067】
【表2】

1)N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N,N’−ジエチルヘキサメチレンジアミン(合成品)
2)トリエチレンジアミン33.3%、ジプロピレングリコール66.7%溶液(東ソー(株)社製TEDA−L33)とビス(ジメチルアミノエチル)エーテル70%、ジプロピレングリコール30%(東ソー(株)社製TOYOCAT−ET)の80:20(重量比)の混合液
3)下記一般式(3)で表されるメチルアミンと1,6−ヘキサンジオールの縮合物。
【0068】
【化3】

(式中、nは平均重合度2.7を表す)
4)上記一般式(3)で示されるメチルアミンと1,6−ヘキサンジオールの縮合物の蟻酸塩(モル比1:1)。
【0069】
実施例2〜実施例4は本発明のアルカノールアミンを用いた例であるが、上記表から明らかなとおり、得られるポリウレタンフォームは、脱型時の硬度、つまり生産性が高く、フォームの成形性も良好である。
【0070】
これらに対し、比較例1は汎用の第3級アミン触媒のみを用いた例であるが、得られるポリウレタンフォームは、脱型時の硬度が低い。比較例2及び比較例3はメチルアミンと1,6−ヘキサンジオールの縮合物及びメチルアミンと1,6−ヘキサンジオールの縮合物の蟻酸塩を用いた例であるが、得られるポリウレタンフォームは、脱型時及びフォームの硬度が低くフォームの成形性が劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されることを特徴とするアルカノールアミン。
【化1】

[上記式中、R、Rは各々独立して下記一般式(2)
【化2】

(上記式中、R、Rは各々独立して水素原子、又は炭素数1〜2のアルキル基を表し、pは1〜2の整数を表す。)
で示される置換基を表す。]
【請求項2】
N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N,N’−ジエチルヘキサメチレンジアミン。
【請求項3】
N、N’−ジエチルアミノヘキサンを、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドによりオキシアルキル化することを特徴とする請求項1に記載のアルカノールアミンの製造方法。
【請求項4】
炭素数2〜4のアルキレンオキサイドが、エチレンオキサイド、1,2−プロピレンオキサイド及び1,2−ブチレンオキサイドからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項3に記載のアルカノールアミンの製造方法。
【請求項5】
N、N’−ジエチルアミノヘキサンを、プロピレンオキサイドによりオキシアルキル化することを特徴とするN,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N,N’−ジエチルヘキサメチレンジアミンの製造方法。
【請求項6】
ポリオールとイソシアネートを請求項1に記載のアルカノールアミンの存在下反応させることを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項7】
ポリオールとイソシアネートをN,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N,N’−ジエチルヘキサメチレンジアミンの存在下反応させることを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2008−13485(P2008−13485A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185998(P2006−185998)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】