説明

アルカリ電池用電解液のゲル化剤

【課題】 カルボキシル基含有重合体粒子を用いて形成されたアルカリ電池用電解液のゲルにおいて、離水の発生を抑制する。
【解決手段】 アルカリ電池用電解液のゲル化剤は、カルボキシル基含有重合体粒子からなり、pH7における0.5質量%水溶液の粘度が9,000〜39,000mPa・sである。このゲル化剤は、アルカリ電解液のゲルを形成する際に混入する空気泡が少なく、かつ、混入した空気泡を容易に除去することができる。また、前記カルボキシル基含有重合体粒子は、pH7における0.1質量%水溶液の粘度が2,000〜7,000mPa・sであることが好ましい。この形態のゲル化剤を用いて形成されたアルカリ電解液のゲルは、離水が少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル化剤、特に、アルカリ電池用電解液のゲル化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ電池の電極、特に負極として、亜鉛粉末等の電極作用物質とともにアルカリ電解液をゲル化したものが知られており、そのような電極を形成するための一般的なゲル化剤としてカルボキシメチルセルロースや天然ガム等が知られている。
【0003】
しかし、アルカリ電池用電解液のゲル化剤は、アルカリ電解液による強アルカリ条件下においても長期にわたり安定なゲルを形成可能なことが求められるだけではなく、当該ゲルに対し、良好な電池性能を達成する上で必要な電極作用物質等の分散性を高めることや、アルカリ電池に対して外部からの衝撃が加えられた際に内部を守る耐衝撃性を高める等の各種特性を付与することが同時に求められるものである。そこで、最近は、これらの要請を満足しやすいゲル化剤として、α,β−不飽和カルボン酸類、特にアクリル酸若しくはメタクリル酸またはそれらの塩を主構成単量体成分とするカルボキシル基含有重合体の微粉末または粒状物が多用されるに至っている(例えば、特許文献1,2および3)。
【0004】
ところが、カルボキシル基含有重合体の微粉末等を用いて形成したゲルは、アルカリ電池を常温で長期間保管したときに、アルカリ電解液が浸出して表面に現れる「離水」と呼ばれる現象を起しやすい。この離水は、アルカリ電池の性能を損なうだけではなく、液漏れ現象、すなわち、アルカリ電池の外装缶からアルカリ電解液が漏れ出す現象の原因ともなる。
【0005】
また、上述のカルボキシル基含有重合体の微粉末等は、アルカリ電解液へ添加したときに塊状物(ママコ)を生じやすい。このため、アルカリ電解液のゲル化の際にはアルカリ電解液を高速撹拌しながらカルボキシル基含有重合体の微粉末等を添加することで塊状物の生成を抑制しているが、この方法によると、アルカリ電解液のゲル化の過程で多量の空気が泡状に混入し、生成したゲルが泡噛み状態のものになってしまう。泡噛み状態のゲルは、混入した空気泡の分だけ体積が大きくなることから、アルカリ電池の外装缶内へ充填する際に単位容積当たりの充填率が低くなり、電池性能を高めるのが困難になる。そこで、泡噛み状態のゲルは、混入した空気泡を除去する必要があるが、そのために時間と労力をかけても効果的に空気泡を除去するのは非常に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−123763号公報
【特許文献2】特開2007−294409号公報
【特許文献3】特開2002−184395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、カルボキシル基含有重合体粒子を用いて形成されたアルカリ電池用電解液のゲルにおいて、ゲル形成の際に混入する空気泡が少なく、かつ、混入した空気泡を容易に除去できるようにすることにある。
【0008】
本発明の他の目的は、カルボキシル基含有重合体粒子を用いて形成されたアルカリ電池用電解液のゲルにおいて、ゲル形成の際に混入する空気泡が少なく、かつ、混入した空気泡を容易に除去できるようにするとともに、離水の発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアルカリ電池用電解液のゲル化剤は、カルボキシル基含有重合体粒子からなり、pH7における0.5質量%水溶液の粘度が9,000〜39,000mPa・sである。このゲル化剤は、アルカリ電解液のゲルを形成する際に混入する空気泡が少なく、かつ、混入した空気泡を容易に除去することができる。
【0010】
本発明のアルカリ電池用電解液のゲル化剤の一形態は、pH7における0.1質量%水溶液の粘度が2,000〜7,000mPa・sである。この形態のゲル化剤を用いて形成されたアルカリ電解液のゲルは、離水が少ない。
【0011】
本発明のアルカリ電池用電解液のゲル化剤において、カルボキシル基含有重合体粒子は、通常、α,β−不飽和カルボン酸類を溶解しかつ前記カルボキシル基含有重合体粒子を溶解しない不活性溶媒中において、前記α,β−不飽和カルボン酸類を含む重合性材料を重合することで得られるものである。
【0012】
本発明のアルカリ電池用電極は、アルカリ電解液に対して電極作用物質および本発明のアルカリ電池用電解液のゲル化剤を添加することで得られるゲル体からなる。この電極は、ゲル体に対して配置された集電体を備えていてもよい。本発明のアルカリ電池用電極は、本発明のゲル化剤を用いて形成されるものであるため、離水が少ない。また、本発明のうちの特定のゲル化剤を用いて形成された電極は、ゲル形成の際に混入する空気泡が少なく、かつ、混入した空気泡の除去が容易であることから、ゲル密度を高めることができ、アルカリ電池の電池特性を高めることができる。
【0013】
本発明のアルカリ電池は、本発明のアルカリ電池用電極を備えたものである。このアルカリ電池は、離水による電池性能の低下や液漏れが生じにくい。また、本発明のうちの特定のアルカリ電池用電極を用いたときは、単位容積当たりの当該電極の充填率を高めることができ、それによって電池特性を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるアルカリ電池用電解液のゲル化剤は、形成されたアルカリ電池用電解液のゲルにおいて、離水の発生を抑制するとともに、ゲル形成の際に混入する空気泡が少なく、かつ、混入した空気泡を容易に除去できる。したがって、容積の限られたアルカリ電池の外装缶内への充填率を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明にかかるアルカリ電池用電解液のゲル化剤は、カルボキシル基含有重合体粒子からなる。ここで、カルボキシル基含有重合体は、アルカリ電池用電解液、すなわち後述するアルカリ電解液のゲル化剤として利用可能なものであれば種類が特に限定されるものではないが、通常は、α,β−不飽和カルボン酸類を主な単量体成分として含む重合性材料を重合することで調製されたものである。
【0016】
本発明において好ましいカルボキシル基含有重合体としては、α,β−不飽和カルボン酸類と架橋剤であるエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物とを含む重合性材料を重合することで得られるカルボキシル基含有重合体を挙げることができる。
【0017】
上述の重合性材料において用いられるα,β−不飽和カルボン酸類は、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸およびフマル酸等のα,β−不飽和カルボン酸並びにアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ミリスチル、アクリル酸パルミチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸エイコサニル、アクリル酸ベヘニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ミリスチル、メタクリル酸パルミチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エイコサニルおよびメタクリル酸ベヘニル等のα,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル等を挙げることができる。このうち、重合性材料においては、α,β−不飽和カルボン酸を用いるのが特に好ましい。重合性材料において、α,β−不飽和カルボン酸類は、1種類のものが用いられてもよいし、2種以上のものが併用されてもよい。
【0018】
重合性材料において用いられるエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリオールの2置換以上のアクリル酸エステル類、ポリオールの2置換以上のアリルエーテル類、フタル酸ジアリル、リン酸トリアリル、メタクリル酸アリル、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、1,5−ヘキサジエンおよびジビニルベンゼン等を挙げることができる。ここで、アクリル酸エステル類およびアリルエーテル類を形成するためのポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、サッカロースおよびソルビトールを挙げることができる。
【0019】
エチレン性不飽和を2個以上有する化合物として特に好ましいのは、少量の使用で増粘性の高いゲルを形成可能なゲル化剤を得ることができることから、ポリオールとしてペンタエリスリトールまたはサッカロースを用いたアリルエーテル類である。
【0020】
エチレン性不飽和を2個以上有する化合物は、2種以上のものが併用されてもよい。
【0021】
また、重合性材料において、アルキル基の炭素数が10〜30であるアクリル酸系アルキルエステルをさらに使用することができる。アルキル基の炭素数が10〜30であるアクリル酸系アルキルエステルは、アクリル酸またはメタクリル酸とアルキル基の炭素数が10〜30である高級アルコールとのエステルをいい、例えば、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ミリスチル、アクリル酸パルミチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸エイコサニル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸テトラコサニル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ミリスチル、メタクリル酸パルミチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エイコサニル、メタクリル酸ベヘニル、および、メタクリル酸テトラコサニル等を挙げることができる。アクリル酸系アルキルエステルは、2種類以上のものが併用されてもよい。
【0022】
アルキル基の炭素数が10〜30であるアクリル酸系アルキルエステルとして特に好ましいものとしては、粘度特性に優れたアルカリ電池用電解液のゲルを形成することができることから、例えば、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エイコサニル、メタクリル酸ベヘニル、若しくは、メタクリル酸テトラコサニルまたはこれらの混合物(例えば、メタクリル酸ステアリルが10〜20質量部、メタクリル酸エイコサニル10〜20質量部、メタクリル酸ベヘニルが59〜80質量部およびメタクリル酸テトラコサニルの含有量が1質量部以下の混合物である、日本油脂株式会社の商品名「ブレンマーVMA70」)を挙げることができる。
【0023】
カルボキシル基含有重合体粒子は、ラジカル重合開始剤の存在下において、不活性溶媒中で所定の重合性材料、例えば上述の重合性材料を重合させることで製造することができる。
【0024】
ここで用いられるラジカル重合開始剤は、特に限定されるものではなく、例えば、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドおよび第三級ブチルハイドロパーオキサイド等を挙げることができる。
【0025】
ラジカル重合開始剤の使用量は、α,β−不飽和カルボン酸類100質量部に対して、0.01〜0.45質量部に設定するのが好ましく、0.01〜0.35質量部に設定するのがより好ましい。ラジカル重合開始剤の使用量が0.01質量部未満の場合、反応速度が遅くなり、カルボキシル基含有重合体を経済的に調製するのが困難になる可能性がある。一方、ラジカル重合開始剤の使用量が0.45質量部を超える場合、反応速度が速くなり過ぎる傾向があるため、反応の制御が困難になる。
【0026】
カルボキシル基含有重合体粒子の製造において用いられる不活性溶媒は、重合性材料に含まれるα,β−不飽和カルボン酸類、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物およびアルキル基の炭素数が10〜30であるアクリル酸系アルキルエステルを溶解することはできるが、重合により生成するカルボキシル基含有重合体粒子を溶解しない溶媒をいう。
【0027】
このような不活性溶媒としては、例えば、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、エチレンジクロライド、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、エチルメチルケトンおよびイソブチルメチルケトン等を挙げることができる。このうち、品質が安定しており、入手が容易である観点、使用する溶媒の安全性および環境への負荷に配慮する観点から、ノルマルヘプタン、酢酸エチル、シクロヘキサンまたはノルマルヘキサンを用いるのが特に好ましい。
【0028】
不活性溶媒中において重合性材料を重合する際において、反応雰囲気は、通常、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気に設定するのが好ましい。また、重合時の反応温度は、反応溶液の粘度上昇を抑制し、反応制御を容易にする観点、得られるカルボキシル基含有重合体粒子の嵩密度を制御する観点から、50〜90℃に設定するのが好ましく、55〜90℃に設定するのがより好ましい。さらに、重合時の反応時間は、反応温度によって異なるので一概に決定するのは困難であるが、通常、2〜10時間に設定するのが好ましい。
【0029】
上述の反応終了後、反応溶液を80〜130℃に加熱して不活性溶媒を揮散除去すると、通常、平均粒子径が1〜20μm程度で白色微粉末状のカルボキシル基含有重合体粒子を得ることができる。この工程において、加熱温度が80℃未満の場合は、乾燥に長時間を要するおそれがあり、また、加熱温度が130℃を超えると、本発明のゲル化剤を用いて調製されるゲルの粘度が悪化するおそれがある。
【0030】
本発明において用いられるカルボキシル基含有重合体粒子は、pH7における0.5質量%水溶液の粘度が9,000〜39,000mPa・s、好ましくは10,000〜38,000mPa・sのものである。この粘度が、9,000mPa・s未満の場合は、ゲル形成の際に混入する空気泡が多くなり、39,000mPa・sを超える場合は、離水の少ないアルカリ電解液のゲルを製造するのが困難になる。
【0031】
また、本発明において用いられるカルボキシル基含有重合体粒子は、pH7における0.1質量%水溶液の粘度が2,000〜7,000mPa・s、好ましくは2,000〜6,000mPa・sのものである。この粘度条件を同時に満足するカルボキシル基含有重合体粒子は、離水の少ないアルカリ電解液のゲルを製造しやすくなるとともに、ゲル形成の際に混入する空気泡が少なくなり、また空気泡を容易に除去することができる。
【0032】
なお、pH7における0.5質量%水溶液の粘度およびpH7における0.1質量%水溶液の粘度は、後記する実施例において説明する測定法により測定した値である。
【0033】
上述の各粘度は、重合性材料の重合時において、不活性溶媒中におけるα,β−不飽和カルボン酸類濃度、架橋剤濃度および重合温度を制御することで調整することができる。より具体的には、下記の傾向を参照してα,β−不飽和カルボン酸類濃度、架橋剤濃度および重合温度のバランスを調整することで、上記各粘度の条件を満足するカルボキシル基含有重合体粒子を調製することができる。
【0034】
・不活性溶媒中におけるα,β−不飽和カルボン酸類濃度を低く設定すると、pH7における0.1質量%水溶液の粘度が下降し、かつ、pH7における0.5質量%水溶液の粘度が下降する傾向がある。
・不活性溶媒中におけるα,β−不飽和カルボン酸類濃度を高く設定すると、pH7における0.1質量%水溶液の粘度が上昇し、かつ、pH7における0.5質量%水溶液の粘度が上昇する傾向がある。
・不活性溶媒中における架橋剤濃度を低く設定すると、pH7における0.1質量%水溶液の粘度が上昇し、かつ、pH7における0.5質量%水溶液の粘度が下降する傾向がある。
・不活性溶媒中における架橋剤濃度を高く設定すると、pH7における0.1質量%水溶液の粘度が下降し、かつ、pH7における0.5質量%水溶液の粘度が上昇する傾向がある。
・重合温度を低く設定すると、0.1質量%水溶液の粘度および0.5質量%水溶液の粘度が共に上昇する傾向がある。
・重合温度を高く設定すると、0.1質量%水溶液の粘度および0.5質量%水溶液の粘度が共に下降する傾向がある。
【0035】
前記重合性材料を用いてカルボキシル基含有重合体粒子を製造する場合、α,β−不飽和カルボン酸類の使用量は、通常、不活性溶媒の100容量部に対して6〜25容量部の範囲に設定するのが好ましく、8〜22容量部の範囲に設定するのがより好ましく、13〜20容量部の範囲に設定するのがさらに好ましい。α,β−不飽和カルボン酸類の使用量が6容量部未満の場合、得られるカルボキシル基含有重合体粒子の取得量が少なくなり、非効率であって経済性を欠く可能性がある。逆に、α,β−不飽和カルボン酸類の使用量が25容量部を超える場合、重合反応が進行するに従ってカルボキシル基含有重合体粒子が析出し、反応系を均一に撹拌することが困難になることがあるため、反応の制御が困難になる可能性がある。
【0036】
また、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物、すなわち架橋剤の使用量は、通常、α,β−不飽和カルボン酸類100質量部に対して、0.01〜2質量部に設定するのが好ましく、0.3〜1.5質量部に設定するのがより好ましい。この使用量が0.01質量部未満の場合、得られるカルボキシル基含有重合体粒子を用いて製造されるゲルの粘度が低下し、アルカリ電解液による強アルカリ条件下において長期にわたり安定なゲルを形成できなくなる可能性がある。逆に、2質量部を超える場合、得られるカルボキシル基含有重合体粒子を用いて製造されるゲルに不溶性のゲルが生成しやすくなる可能性がある。
【0037】
また、アルキル基の炭素数が10〜30であるアクリル酸系アルキルエステルの使用量は、α,β−不飽和カルボン酸類100質量部に対して20質量部以下に設定するのが好ましく、1〜10質量部に設定するのがより好ましい。この使用量が20質量部を超える場合、得られるカルボキシル基含有共重合体粒子がアルカリ電解液へ溶解しにくくなり、アルカリ電解液のゲルを製造するのが困難になる可能性がある。
【0038】
本発明に用いられるカルボキシル基含有重合体粒子は、前記重合性材料を用いて、pH7における0.5質量%水溶液の粘度が9,000〜39,000mPa・sであるカルボキシル基含有重合体粒子を直接製造したものを用いることができるが、例えば、粘度特性が異なるカルボキシル基含有重合体粒子を2種以上混合し、前記粘度範囲のカルボキシル基含有重合体粒子を調製したものを用いることもできる。
【0039】
前記カルボキシル基含有重合体粒子を2種以上混合する方法としては、混合後のカルボキシル基含有重合体粒子のpH7における0.5質量%水溶液の粘度が9,000〜39,000mPa・sとなれば特に限定されないが、例えば、pH7における0.5質量%水溶液の粘度が5,000〜11,000mPa・sのカルボキシル基含有重合体粒子(A)とpH7における0.5質量%水溶液の粘度が40,000〜60,000mPa・sのカルボキシル基含有重合体粒子(B)とを混合することにより、本発明に用いられるカルボキシル基含有重合体粒子を調製することができる。
【0040】
前記カルボキシル基含有重合体粒子(A)と前記カルボキシル基含有重合体粒子(B)の混合割合は、カルボキシル基含有重合体粒子(A)100質量部に対して、カルボキシル基含有重合体粒子(B)を好ましくは25〜400質量部であり、より好ましくは30〜300重量部である。
【0041】
なお、混合の際には、一般的な粉体の混合機が使用でき、例えば、リボンブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。
【0042】
上述の方法により製造(調製)したカルボキシル基含有重合体粒子は、通常、平均粒子径が5〜40μm程度の微粉末であるが、ゲルを形成する際に混入する空気泡をさらに減少させる観点から、前記微粉末を凝集した後に粉砕、分級し、粒子径を調整した顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子が好適に用いられる。微粉末を凝集する方法は特に限定されるものではないが、例えば、圧縮造粒方法、湿式造粒法、水蒸気等を用いて前記微粉末を凝集する方法等の造粒(凝集)方法が挙げられる。また、顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子の粒子径は、850〜106μmものが好ましい。
【0043】
なお、前記水蒸気等を用いて微粉末を凝集する方法としては、例えば、国際公開WO2007/132673号パンフレット等を参照することができ、容易に、顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子を製造することができる。
【0044】
本発明のアルカリ電池用電解液のゲル化剤は、アルカリ電解液に対して添加すると、アルカリ電解液のゲル体を調製することができる。ここで、ゲル化可能なアルカリ電解液は、アルカリ電池において用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、水酸化カリウム水溶液や水酸化ナトリウム水溶液等である。
【0045】
また、アルカリ電解液のゲル体を調製するときに、アルカリ電解液に対して本発明のゲル化剤とともに電極作用物質を添加すると、アルカリ電池用のゲル状の電極を得ることができる。この際、電極作用物質を選択することでアルカリ電池用の正極または負極を製造することができる。正極を製造するために用いられる電極作用物質としては、例えば、二酸化マンガン等のマンガン化合物、オキシ水酸化ニッケル、亜鉛およびコバルトのうちの少なくとも一つとニッケルとの共晶物等のニッケル化合物並びに鉄(VI)酸カリウム、鉄(VI)酸ナトリウム、鉄(VI)酸リチウム、鉄(VI)酸セシウム、鉄(VI)酸銀、鉄(VI)酸ストロンチウム、鉄(VI)酸マグネシウム、鉄(VI)酸カルシウム、鉄(VI)酸バリウムおよび鉄(VI)酸亜鉛等の鉄(VI)酸化合物等が挙げられる。一方、負極を製造するために用いられる電極作用物質としては、例えば、インジウム、ビスマス、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、バナジウム、鉄、銅、ジルコニウム、ニオビウム、銀、ガリウム、亜鉛およびスズ等と亜鉛との亜鉛合金のような亜鉛化合物が挙げられる。電極作用物質は、ゲル状の電極において均一に分散させるのが好ましいため、粉末状のものを用いるのが好ましい。
【0046】
なお、上述のようなゲル状の電極を製造する場合、電極の導電性および電極作用物質の安定性を高めることができることから、アルカリ電解液として濃度が34〜45質量%の水酸化カリウム水溶液を用いるのが特に好ましい。
【0047】
上述のようなゲル状の電極は、必要に応じ、アルカリ電池において、集電体を配置して用いることができる。
【0048】
アルカリ電解液のゲル体(以下、「ゲル体」という場合は上述のゲル状の電極を含む)を製造する場合、必要に応じて防腐剤や安定剤等の各種添加剤をアルカリ電解液に対して添加することができる。また、上述のゲル状の電極を製造する場合においては、アルカリ電解液に対して各種の電極用添加剤を添加することもできる。正極を製造する場合の添加剤としては、アルカリ電池の貯蔵時の容量維持率を改善する観点から、例えば、酸化イットリウム、酸化エルビウム、酸化イッテルビウムおよびフッ化カルシウム等を用いることができ、また、導電性を改善する観点から、例えば、黒鉛、アセチレンブラックおよびカーボンブラック等を用いることができる。一方、負極を製造する場合の添加剤としては、ゲル化剤の増粘性向上の観点から、例えば、酸化チタン、酸化ビスマス、酸化銅、酸化インジウム、酸化スズおよび酸化ニオブ等を用いることができる。
【0049】
アルカリ電解液に対して本発明のゲル化剤等を添加してゲル体を製造する際は、塊状物(ママコ)の生成を抑制するために、アルカリ電解液を高速攪拌しながら本発明のゲル化剤等を添加するのが好ましい。
【0050】
アルカリ電池用電解液のゲル化剤の使用量は、電極作用物質等の分散性を高める目的や、アルカリ電池に対して外部からの衝撃が加えられた際に内部を守る耐衝撃性を高める目的等に応じて設定することができるため、限定されるものではないが、通常、アルカリ電解液に対して0.5〜4.0質量%に設定するのが好ましく、1.0〜3.0質量%に設定するのがより好ましい。
【0051】
アルカリ電解液のゲル体の製造では、アルカリ電解液を高速攪拌することから、得られたゲル体は、通常、多量の空気泡が混入し、密度が低下する。このため、ゲル体は、製造時に混入する空気泡が少なく、また、混入した空気泡が除去されているのが好ましい。
【0052】
本発明のアルカリ電池用電解液のゲル化剤のうち、pH7における0.5質量%水溶液の粘度が9,000〜39,000mPa・sの条件を満足するものを用いて得られたゲル体は、ゲル製造時の空気泡の混入量も少なく、各種の脱気法、例えば遠心分離法や減圧脱気法を適用することで混入した空気泡を容易に除去することができ、密度を高めることができる。特に、減圧脱気法では、10〜20torr程度の減圧下にゲル体を配置することで混入した空気泡を容易に除去することができることから、このような減圧環境を設定可能な簡易な装置を用いることで大量のゲル体から効率的に空気泡を除去することができる。
【0053】
本発明のアルカリ電池用電解液のゲル化剤を用いて得られたゲル体は、特に、適度な弾力と固さを持っているときに空気泡の除去が容易になる。特に、減圧脱気法では、減圧によりゲル体中の空気泡が膨張したとき、それを包み込むゲルがある程度膨張した時点で破裂しやすい程度の弾力と固さを持つ場合、全体として容易に空気泡を除去できる。
【0054】
本発明のアルカリ電池は、例えば、金属製の外装缶内に正極と負極とをセパレーターを挟んで物理的に接触しないよう分離した状態で収容し、また、必要に応じて正極または負極に対して集電体を配置した状態で外装缶の両端に正極および負極にそれぞれ連絡する端子が形成されるよう外装缶をガスケット、金属板および金属封口板等で密閉状態に封止した円筒型またはボタン型のものであり、正極および負極の少なくとも一つにおいて本発明のアルカリ電池用電極を用いたものである。
【0055】
本発明のアルカリ電池のうち、円筒型のアルカリ電池においては、通常、負極において本発明にかかるゲル状のアルカリ電池用電極であってゲル体に集電体を配置したものを用いることができ、正極としてアルカリ電池において一般的なものを用いることができる。このような円筒型アルカリ電池の一般的な構造は、例えば、先に挙げた特許文献1に記載のようなものである。一方、ボタン型のアルカリ電池においては、通常、正極および負極の両方において本発明にかかるゲル状のアルカリ電池用電極を用いることができる。このようなボタン型アルカリ電池の一般的な構造は、例えば、先に挙げた特許文献3に記載のようなものである。
【0056】
本発明のアルカリ電池は、本発明のアルカリ電池用電極を用いていることから常温で長期間保管した場合であっても電極においてアルカリ電解液の離水が起こりにくいため、電池性能が損なわれにくく、また、液漏れが生じにくい。また、本発明のアルカリ電池は、pH7における0.5質量%水溶液の粘度が9,000〜39,000mPa・sを満足する本発明のゲル化剤を用いて製造された本発明の電極を用いる場合、当該電極に混入した空気泡を容易に除去して密度を高めることができるため、これまでのゲル状電極を用いる場合よりも単位容積当たりの充填率を高めて、高い電池性能を達成することができる。
【0057】
以下、製造例、実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によってなんら限定されるものではない。
【0058】
[製造例1]
攪拌機、温度計、窒素吹き込み管、添加装置および冷却管を備えた500mL容の丸型セパラブルフラスコ(球径110mm)からなる反応容器を用意した。ここで用いた攪拌機は、4枚パドル型攪拌翼(翼径75mm、翼幅14mm、ピッチ度45度)を備えたものであり、この攪拌翼をセパラブルフラスコの底部から5mm上方に配置したものである。
【0059】
反応容器にノルマルヘプタン107.9g(158.7mL)と酢酸エチル35.7g(39.7mL)との混合溶媒および2,2’−アゾビスメチルイソブチレート0.036g(0.00015モル)を仕込んだ。また、添加装置には、アクリル酸60g(0.83モル、57.1mL)およびペンタエリトリトールアリルエーテル0.33g(0.35mL)とからなる単量体成分をノルマルヘプタン55.3g(81.3mL)と酢酸エチル18.3g(20.3mL)との混合溶媒に溶解した単量体溶液(単量体成分の濃度:36容量%)を仕込んだ。反応容器に仕込んだ溶媒と単量体溶液との合計量における単量体成分の濃度は16容量%である。
【0060】
反応容器の内容物の攪拌を開始し、また、反応容器の内容物中および上部空間に存在している酸素を除去するために、内容物中に窒素ガスを吹き込んだ。そして、反応容器を窒素雰囲気に維持し、添加装置から単量体溶液を300分かけて連続的に添加した。この際、単量体溶液の添加は反応容器の内容物の温度が常温(25℃)のときから開始し、反応温度が75℃まで徐々に上昇するよう制御した。単量体溶液の添加中、粘度が徐々に上昇する反応液スラリーを均一に攪拌できるようになるまで、攪拌機の回転速度を初期の200r/minから毎分50r/minずつ加速した。単量体溶液の添加終了後、75℃に保持して2.5時間反応を継続(熟成)させた。なお、単量体溶液の添加完了時における単量体成分の重合率は78%であった。
【0061】
反応終了後、生成したスラリーを別の容器に移し、110℃に加熱してノルマルヘプタンおよび酢酸エチルを留去したところ、白色微粉末状のカルボキシル基含有重合体粒子57gが得られた。
【0062】
[製造例2]
製造例1で用いたものと同様の反応容器を用意し、これにノルマルヘプタン107.9g(158.7mL)と酢酸エチル35.7g(39.7mL)との混合溶媒および2,2’−アゾビスメチルイソブチレート0.036g(0.00015モル)を仕込んだ。また、添加装置には、アクリル酸60g(0.83モル、57.1mL)とペンタエリトリトールアリルエーテル0.18g(0.19mL)とからなる単量体成分をノルマルヘプタン55.3g(81.3mL)と酢酸エチル18.3g(20.3mL)との混合溶媒に溶解した単量体溶液(単量体成分の濃度:36容量%)を仕込んだ。反応容器に仕込んだ溶媒と単量体溶液との合計量における単量体成分の濃度は16容量%である。
【0063】
反応容器の内容物の攪拌を開始し、また、反応容器の内容物中および上部空間に存在している酸素を除去するために、内容物中に窒素ガスを吹き込んだ。そして、反応容器を窒素雰囲気に維持し、添加装置から単量体溶液を300分かけて連続的に添加した。この際、単量体溶液の添加は反応容器の内容物の温度が常温(25℃)のときから開始し、反応温度が75℃まで徐々に上昇するよう制御した。単量体溶液の添加中、粘度が徐々に上昇する反応液スラリーを均一に攪拌できるようになるまで、攪拌機の回転速度を初期の200r/minから毎分50r/minずつ加速した。単量体溶液の添加終了後、75℃に保持して2.5時間反応を継続(熟成)させた。なお、単量体溶液の添加完了時における単量体成分の重合率は78%であった。
【0064】
反応終了後、生成したスラリーを別の容器に移し、110℃に加熱してノルマルヘプタンおよび酢酸エチルを留去したところ、白色微粉末状のカルボキシル基含有重合体粒子57gが得られた。
【0065】
[製造例3]
攪拌機、温度計、窒素吹き込み管、添加装置および冷却管を備えた500mL容の丸型セパラブルフラスコ(球径110mm)からなる反応容器を用意した。ここで用いた攪拌機は、4枚パドル型攪拌翼(翼径75mm、翼幅14mm、ピッチ度45度)を備えたものであり、この攪拌翼をセパラブルフラスコの底部から5mm上方に配置したものである。
【0066】
反応容器にノルマルヘプタン107.9g(158.7mL)と酢酸エチル35.7g(39.7mL)との混合溶媒および2,2’−アゾビスメチルイソブチレート0.036g(0.00015モル)を仕込んだ。また、添加装置には、アクリル酸60g(0.83モル、57.1mL)およびペンタエリトリトールアリルエーテル0.26g(0.28mL)とからなる単量体成分をノルマルヘプタン55.3g(81.3mL)と酢酸エチル18.3g(20.3mL)との混合溶媒に溶解した単量体溶液(単量体成分の濃度:36容量%)を仕込んだ。反応容器に仕込んだ溶媒と単量体溶液との合計量における単量体成分の濃度は16容量%である。
【0067】
反応容器の内容物の攪拌を開始し、また、反応容器の内容物中および上部空間に存在している酸素を除去するために、内容物中に窒素ガスを吹き込んだ。そして、反応容器を窒素雰囲気に維持し、添加装置から単量体溶液を300分かけて連続的に添加した。この際、単量体溶液の添加は反応容器の内容物の温度が常温(25℃)のときから開始し、反応温度が75℃まで徐々に上昇するよう制御した。単量体溶液の添加中、粘度が徐々に上昇する反応液スラリーを均一に攪拌できるようになるまで、攪拌機の回転速度を初期の200r/minから毎分50r/minずつ加速した。単量体溶液の添加終了後、75℃に保持して2.5時間反応を継続(熟成)させた。なお、単量体溶液の添加完了時における単量体成分の重合率は78%であった。
【0068】
反応終了後、生成したスラリーを別の容器に移し、110℃に加熱してノルマルヘプタンおよび酢酸エチルを留去したところ、白色微粉末状のカルボキシル基含有重合体粒子57gが得られた。
【0069】
[製造例4]
製造例1で得られた白色微粉末状のカルボキシル基含有重合体粒子30gを内面にフッ素樹脂シートを貼付したSUS製容器(11.5×9.3mm)に充填し、85℃、85%RHの恒温恒湿器内(タバイ製LP−25)で8分間処理し、凝集シートを得た。得られた凝集シートをハンマーで3〜5mm程度に粗砕し、ミキサー粉砕後に850μmと106μmの篩いで分級し850μm〜106μmの顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子を得た。
【0070】
[製造例5]
製造例4において、製造例1で得られた白色粉末白色微粉末状のカルボキシル基含有重合体粒子30gを、製造例2で得られた白色粉末白色微粉末状のカルボキシル基含有重合体粒子30gに変更した以外は、製造例4と同様の方法で、850μm〜106μmの顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子を得た。
【0071】
[製造例6]
製造例4において、製造例1で得られた白色粉末白色微粉末状のカルボキシル基含有重合体粒子30gを、製造例3で得られた白色粉末白色微粉末状のカルボキシル基含有重合体粒子30gに変更した以外は、製造例4と同様の方法で、850μm〜106μmの顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子を得た。
【0072】
[実施例1]
製造例4で得られた顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子18.7gと、製造例5で得られた顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子6.3gとを、回転混合機で10分間混合し、顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子25.0gを得た。
【0073】
[実施例2]
製造例4で得られた顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子12.5gと、製造例5で得られた顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子12.5gとを、回転混合機で10分間混合し、顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子を25.0g得た。
【0074】
[実施例3]
製造例4で得られた顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子6.3gと、製造例5で得られた顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子18.7gとを、回転混合機で10分間混合し、顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子を25.0g得た。
【0075】
[実施例4]
製造例6で得られた顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子を、実施例4の顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子とした。
【0076】
[比較例1]
製造例4で得られた顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子を、比較例1の顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子とした。
【0077】
[比較例2]
製造例5で得られた顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子を、比較例2の顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子とした。
【0078】
[評価1]
実施例1〜4および比較例1,2において得られたカルボキシル基含有重合体粒子について、pH7における0.5質量%水溶液の粘度およびpH7における0.1質量%水溶液の粘度をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。なお、各粘度の測定方法は次のとおりである。
【0079】
(pH7における0.5質量%水溶液の粘度)
1L容のガラス製ビーカーに脱イオン交換水およびカルボキシル基含有重合体粒子を仕込み、マグネティックスターラーで3時間攪拌してカルボキシル基含有重合体粒子を溶解させた。得られた溶液に中和用の6質量%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、CTFA(ザ・コスメティック・トイレタリ・アンド・フラグランス・アソシエーション)に準拠したS字翼で毎分200回転の速度で1時間撹拌混合することでカルボキシル基含有重合体の水溶液を調製した。ここで、脱イオン水、カルボキシル基含有重合体粒子および6質量%水酸化ナトリウム水溶液の使用量は、カルボキシル基含有重合体の水溶液においてカルボキシル基含有重合体の濃度が0.5質量%になりかつ水溶液のpHが7になるように設定した。得られたカルボキシル基含有重合体の水溶液について、BH型回転粘度計を用い、ローターはNo.6または7を使用し、毎分20回転、温度25℃の条件下、60秒後の粘度を測定した。なお、ローターの選定は、粘度が10,000〜30,000mPa・sの場合はローターNo.6を使用し、粘度が30,000mPa・Sを超える場合はローターNo.7を使用した。
【0080】
(pH7における0.1質量%水溶液の粘度)
1L容のガラス製ビーカーに脱イオン交換水およびカルボキシル基含有重合体粒子を仕込み、マグネティックスターラーで3時間攪拌してカルボキシル基含有重合体粒子を溶解させた。得られた溶液に中和用の6質量%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、CTFA(ザ・コスメティック・トイレタリ・アンド・フラグランス・アソシエーション)に準拠したS字翼で毎分200回転の速度で1時間撹拌混合することでカルボキシル基含有重合体の水溶液を調製した。ここで、脱イオン水、カルボキシル基含有重合体粒子および6質量%水酸化ナトリウム水溶液の使用量は、カルボキシル基含有重合体の水溶液においてカルボキシル基含有重合体の濃度が0.1質量%になりかつ水溶液のpHが7になるように設定した。得られたカルボキシル基含有重合体の水溶液について、BH型回転粘度計を用い、ローターはNo.4または5を使用し、毎分20回転、温度25℃の条件下、60秒後の粘度を測定した。なお、ローターの選定は、粘度が1,500〜4,000mPa・Sの場合はローターNo.4を使用し、粘度が4,000〜10,000mPa・Sの場合はローターNo.5を使用した。
【0081】
[評価2]
実施例1〜4および比較例1,2において得られたカルボキシル基含有重合体粒子について、35質量%水酸化カリウム水溶液における1.5質量%溶液の粘度および該ゲル溶液に亜鉛粉末を添加した溶液の粘度をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。なお、各粘度の測定方法は次のとおりである。
【0082】
(1.5質量%溶液(35%KOHaq.)の粘度)
500mL容のガラス製ビーカーに35質量%水酸化カリウム溶液197gを仕込み、攪拌下(4枚パドル、300r/min)でカルボキシル基含有重合体粒子3.0gを添加し、室温で3時間攪拌してカルボキシル基含有重合体粒子を溶解させた。溶解したゲル溶液を100mLトールビーカーに入れ、BH型回転粘度計を用い、ローターNo.5を使用し、毎分20回転、温度25℃の条件下、60秒後の粘度を測定した。
【0083】
(1.5質量%溶液(35%KOHaq.)に亜鉛粉末を添加したゲルの粘度)
500mL容のガラス製ビーカーに上記1.5質量%溶液150gを仕込み、攪拌下(フッ素樹脂羽根、200r/min)で亜鉛粉末を270g添加し室温で15分間攪拌し、亜鉛粉末を添加したアルカリ電池用の試験用ゲル状負極を作製した。この試験用ゲル状液を100mLトールビーカーに入れ、BH型回転粘度計を用い、ローターはNo.5または6を使用し、毎分20回転、温度25℃の条件下、60秒後の粘度を測定した。なお、ローターの選定は、粘度が4,000〜10,000mPa・Sの場合はローターNo.5を使用し、粘度が10,000〜30,000mPa・Sの場合はローターNo.6を使用した。
【0084】
(1.5質量%溶液(35%KOHaq.)に亜鉛粉末を添加したゲルの嵩比重)
前述の亜鉛粉末を添加した試験用ゲルを、見掛比重測定用のSUS製カップ(50mmΦ×50mmH)に一杯入れ、余分な試料は金属プレートですり落とし質量(g)を測定した。
嵩比重(g/mL)=測定質量(g)−空容器質量(g)/100(mL)
【0085】
[評価3]
実施例1〜4および比較例1,2において得られたカルボキシル基含有重合体粒子を用いてアルカリ電池用の試験用ゲル状負極を製造し、この試験用ゲル状負極について離水性および空気泡の除去性を評価した。評価方法は次のとおりである。結果を表1に示す。
【0086】
(離水性)
評価2で作製した、亜鉛粉末を添加した35質量%水酸化カリウム試験用負極ゲルを50mLプラスチック製遠沈管に約40mL充填して、室温で30日間放置した。そして、試験用ゲル状負極から離水した浮き水を含む内容物の全体の高さと浮き水を除く試験用ゲル状負極部分のみの高さとをそれぞれノギスで測定し、下記の式に基づいて亜鉛粉末の保持率を算出した。亜鉛粉末の保持率が95%以上であれば、試験用ゲル状負極からの離水が少なく、良好(合格)である。
亜鉛粉末の保持率(%)=試験用ゲル状負極のみの高さ(mm)
/全体の高さ(mm)×100
【0087】
(空気泡の除去性)
評価2で作製した、亜鉛粉末を添加した35質量%水酸化カリウム試験用負極ゲルを100mL(50mmΦ)トールビーカーに約50g(液浸30mm)入れ、真空脱泡装置(VD−VL,ASONE製)を用いて系内を常圧から20torrまで減圧していき、試料界面の高さを測定した。下記の式に基づいて試験用ゲル状負極の高さ上昇率を算出した。高さ上昇率が200%以下であれば、試験用ゲル状電極の製造時に混入した空気泡の除去性が良好(合格)である。
高さ上昇率(%)=減圧後高さ(mm)/減圧前高さ(mm)×100
【0088】
【表1】

【0089】
表1によると、pH7における0.5質量%水溶液の粘度が9,000〜39,000mPa・sである実施例1〜4のカルボキシル基含有重合体粒子をゲル化剤として用いることで製造した試験用ゲル状負極は、亜鉛粉末の保持率が高く、離水が少なく、減圧時の高さ上昇率が小さいことから、ゲルの製造時に混入した空気泡の除去が容易であり、空気泡を除去して密度を高めることで容積の限られたアルカリ電池の外装缶内への充填率を高めることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有重合体粒子からなり、pH7における0.5質量%水溶液の粘度が9,000〜39,000mPa・sである、アルカリ電池用電解液のゲル化剤。
【請求項2】
カルボキシル基含有重合体粒子からなり、pH7における0.1質量%水溶液の粘度が2,000〜7,000mPa・sである、請求項1に記載のアルカリ電池用電解液のゲル化剤。
【請求項3】
カルボキシル基含有重合体粒子が、α,β−不飽和カルボン酸類を溶解しかつ前記カルボキシル基含有重合体粒子を溶解しない不活性溶媒中において、前記α,β−不飽和カルボン酸類を含む重合性材料を重合することで得られるものである、請求項1または2に記載のアルカリ電池用電解液のゲル化剤。
【請求項4】
重合性材料が、架橋剤としてエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を含む、請求項3に記載のアルカリ電池用電解液のゲル化剤。
【請求項5】
α,β−不飽和カルボン酸類がα,β−不飽和カルボン酸であり、かつ、架橋剤がペンタエリスリトールアリルエーテルである、請求項4に記載のアルカリ電池用電解液のゲル化剤。
【請求項6】
アルカリ電解液に対して電極作用物質およびゲル化剤を添加することで得られるゲル体からなり、前記ゲル化剤は、カルボキシ基含有重合体粒子からなり、かつ、pH7における0.5質量%水溶液粘度が9,000〜39,000mPa・sである、アルカリ電池用電極。
【請求項7】
ゲル化剤が、pH7における0.1質量%水溶液の粘度が2,000〜7,000mPa・sである、請求項6に記載のアルカリ電池用電極。
【請求項8】
ゲル体が、製造時に空気泡の混入が少ない、請求項7に記載のアルカリ電池用電極。
【請求項9】
アルカリ電解液が、34〜45質量%の水酸化カリウム水溶液である、請求項8に記載のアルカリ電池用電極。
【請求項10】
ゲル体に対して配置された集電体を備えている、請求項6〜9のいずれか1項に記載のアルカリ電池用電極。
【請求項11】
正極、負極および前記正極と前記負極とに挟まれたセパレータを備え、前記正極および前記負極のうちの少なくても一方は、アルカリ電解液に対して電極作用物質およびゲル化剤を添加することで得られるゲル体からなり、前記ゲル化剤として、カルボキシル基含有重合体粒子からなり、かつ、pH7における0.5質量%水溶液粘度が9,000〜39,000mPa・sのものを用いている、アルカリ電池。
【請求項12】
ゲル化剤が、pH7における0.1質量%水溶液の粘度が2,000〜7,000mPa・sである、請求項11に記載のアルカリ電池。
【請求項13】
ゲル体に集電体が配置されている、請求項11または12に記載のアルカリ電池。

【公開番号】特開2012−124028(P2012−124028A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273865(P2010−273865)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】