説明

アルキレンオキサイド製造用の増強された安定性、効率及び/又は活性を有する触媒

アルケンの蒸気相エポキシ化によるアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイドの製造用の触媒であって、前記触媒が、不活性耐火性固体状担体上の含浸された銀及び少なくとも1種の効率増強性助触媒を含有し、前記担体が、ジルコニウム成分を含有していない同様の触媒に比較したとき、触媒活性、効率及び安定性の少なくとも一つを増強するために十分な量のジルコニウム成分(実質的にケイ酸ジルコニウムとして存在し、そして残留する)を含む触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願は、2003年10月16日出願の米国仮出願第60/511,975号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、アルケン、特にエチレンの、対応するアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイドへのエポキシ化用の触媒であって、十分な量のジルコニウム成分を実質的にケイ酸ジルコニウムとして、含有させることによって、増強された安定性、効率及び/又は活性を有する触媒に関する。
【背景技術】
【0003】
銀含有触媒の存在下、高温度で、エチレンとの酸素又は酸素含有ガスの反応により、エチレンオキサイドのようなアルキレンオキサイドを製造することは、古くて周知の技術である。例えば、特許文献1には、ある種の金属含有助触媒(promotor)を含む銀触媒の存在下での、エチレンの酸素との反応によるエチレンオキサイドの製造が記載されている。特許文献2に於いて、Leforteは、オレフィンオキサイドが、銀触媒の存在下で、オレフィンを分子状酸素と直接組合せることによって、生成することを開示している。(一般的に使用される製造方法工程の詳細な説明を含む、エチレンオキサイドについての優れた検討は、非特許文献1に記載されている)。
【0004】
触媒は、エチレンオキサイドを製造するためのエチレンの直接酸化に於ける最も重要な要素である。このような触媒の幾つかの周知の基本的成分、即ち活性触媒金属(一般的には上記のような銀)、適当な支持体/担体(例えばα−アルミナ)及び助触媒が存在し、これらの全ては、触媒性能を改良する際に役割を演じ得る。エチレンオキサイドの製造に於ける触媒の重要性のために、エチレンオキサイドを製造する際の触媒効率を改良する多くの努力が費やされてきた。
【0005】
エチレンオキサイド触媒に於ける助触媒として又はこのような触媒のために使用される支持体(即ち担体)への変性剤として、ジルコニウム及び/又はケイ素成分を使用することも知られている。
【0006】
特許文献3には、アルカリ金属成分及び第IVB族成分(但し、第IVB族成分は第IVB族カチオンを有する化合物として添加される)で促進されたレニウム非含有銀触媒が記載されている。第IVB族成分がカチオンである可溶性ジルコニウム化合物が好ましい。
【0007】
特許文献4には、α−アルミナ、酸化物の形の添加されたアルカリ土類金属、酸化物の形のケイ素及びゼロ〜約10%(%)の酸化物の形の添加されたジルコニウムを含む担体上に担持された、レニウム促進化エチレンオキサイド銀触媒が記載されている。特許文献4に於いて、用語「酸化物」は、1種のみの金属から製造された簡単な酸化物並びに示された金属及び1種又はそれ以上の他の金属から製造された複合酸化物を指すように使用されている。担体中に使用されるアルカリ土類金属の量は、酸化物として測定して、0.05〜4重量%(重量%)である。同様に、特許文献5には、α−アルミナ、アルカリ土類金属酸化物、酸化ケイ素及びゼロ〜約15%の酸化物の形のジルコニウムを混合することによって製造された担体上の銀及び助触媒を含む、エチレンオキサイド触媒が記載されている。セラミック成分の粒子サイズは、乾燥担体前駆体の充填密度が焼成担体の充填密度以下であり、それによって有機バーンアウト(burnout)剤の必要性を排除するように選択される。特許文献4及び特許文献5に於いて、担体混合物は、α−アルミナを含有する出発混合物から形成され、そしてアルカリ土類金属酸化物の添加を必要とする。酸化ジルコニウム成分の添加は任意である。
【0008】
ケイ素含有化合物を含有する、エチレンオキサイド触媒のために使用される担体の当該技術分野に於ける幾つかの例が存在している。特許文献6には、触媒の担体が、アルミニウム化合物、ケイ素化合物及びアルカリ金属化合物を、低アルカリ含有量α−アルミナ粉末に添加することによって得られる、エチレンオキサイドの製造方法が記載されている。焼成された後、この混合物は、α−アルミナ担体の外表面及びその細孔の内表面上に、アルカリ金属含有無定形シリカアルミナの被覆層を与えると考えられる。特許文献7には、主としてα−アルミナ、シリカ、ナトリウムから構成され、X線回折分析(XRD)によって検出可能である、Al6Si213の測定可能な酸度及び結晶を有する担体を使用する触媒が記載されている。
【0009】
アルケンエポキシ化用触媒系のパラメーターの幾つかを記載するために、幾つかの用語を一般的に使用する。例えば、「転化率」は、反応を受ける、反応器に供給されたアルケンのモル%として定義される。反応プロセスに於いて異なった化学的実体に転化されるアルケンの全量の、対応するアルキレンエポキシド、即ちアルキレンオキサイドに転化されるモル%は、そのプロセスの「効率」(「選択率」と同義語である)として知られている。%効率×%転化率の積(%2から%に転換するために100%で割る)は、%「収率」、即ち、対応するエポキシドに転化される、供給されるアルケンのモル%である。
【0010】
触媒の「活性」は、多くの方法で定量することができ、一つは、反応器温度を実質的に一定に維持しながら、入口流中に含有されるもの(入口流中のアルキレンエポキシドのモル%は、必ずではないが、典型的にゼロ%である)に対する、反応器の出口流中に含有されるアルキレンエポキシドのモル%であり、そして他のものは、アルキレンエポキシド製造の所定の速度を維持するために必要な温度である。即ち、多くの例に於いて、活性は、ある期間に亘って、特定された一定の温度で製造されるアルキレンエポキシドのモル%で測定される。別法として、活性は、特定された一定のモル%のアルキレンエポキシドの製造を維持するために必要な温度の関数として測定することができる。反応系の有効寿命は、反応剤を反応系に通過させることができる時間の長さであって、その間に、オペレーターが、全ての関連する要因に照らして許容できると考える結果が得られる時間の長さである。
【0011】
本明細書で使用する「失活」は、活性及び/又は効率の永久的損失、即ち活性及び/又は効率に於ける、回復することができない減少を指す。前記のように、アルキレンエポキシド生成物の製造は、温度を上昇させることによって増加させることができるが、製造の特定の速度を維持するために、より高い温度で運転する必要性は、活性失活の代表的なものである。活性及び/又は効率失活は、より高い反応器温度を使用するとき、一層急速に進行する傾向がある。触媒の「安定性」は、失活の速度、即ち、効率及び/又は活性の減少の速度に反比例する。効率及び/又は活性の低下のより低い速度が、一般的に望ましい。
【0012】
満足できると考えられるために、触媒は許容できる活性及び効率を有さなくてはならず、そして触媒は、また、十分な安定性を有さなくてはならず、そうして、これは十分に長い有効寿命を有するであろう。触媒の効率及び/又は活性が、許容できないほど低いレベルまで低下したとき、典型的には、反応器を運転停止し、そして触媒を除去するために部分的に分解しなくてはならない。これは、時間、生産性並びに材料、例えば銀触媒材料及びアルミナ担体のロスになる。更に、触媒を交換しなくてはならず、そして銀を回収するか又は可能な場合に再生しなくてはならない。触媒をその場(in situ)で再生できるときでも、一般的に、ある期間の間、生産を停止しなくてはならない。良くても、触媒の交換又は再生には、触媒を処理するための生産期間に於ける追加のロスが必要であり、悪いと、付随するコストを伴った触媒の交換が必要である。従って、触媒の有効寿命を延長するための手段を見出すことが非常に望ましい。
【0013】
【特許文献1】米国特許第2,040,782号明細書(1936年5月12日付)
【特許文献2】米国再発行特許第20,370号明細書(1937年5月18日付)
【特許文献3】米国特許第5,703,001号明細書
【特許文献4】米国特許第5,145,824号明細書
【特許文献5】米国特許第5,801,259号明細書
【特許文献6】米国特許第6,313,325号明細書
【特許文献7】カナダ国特許第1,300,586号明細書
【非特許文献1】カーク・オスマー、化学技術百科事典(Kirk-Othmer's Encyclopedia of Chemical Technology)、第4版(1994年)、第9巻、第915〜959頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一つの面は、アルケンの蒸気相エポキシ化によるアルキレンオキサイドの製造用の触媒であって、前記触媒が、耐火性固体状担体に含浸された銀及び少なくとも1種の効率増強性助触媒を含有し、前記担体が、ジルコニウム成分を含有していない同様の触媒に比較したときに、触媒活性、効率及び安定性の少なくとも一つを増強するために十分な量のジルコニウム成分を含有し、前記ジルコニウム成分が実質的にケイ酸ジルコニウムとして担体中に存在する触媒である。
【0015】
本発明の別の面は、耐火性固体状担体が、特にインターロッキング小板(platelet)を含んでなる独特の形態を有するα−アルミナである、上記触媒である。
【0016】
本発明の更に別の面は、本発明の改良された触媒を使用するアルケンの蒸気相エポキシ化によるアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの製造方法である。
【0017】
本発明は、如何なる特別の理論によっても拘束されないとして理解されるべきであるが、担体支持体を形成するために使用される他の原材料と共に成分として添加されたケイ酸ジルコニウム(一般的にジルコンとして参照される)は、酸化されるか又は他の方法で実質的な化学変化を受けることなく、焼成プロセスの過酷さを乗りきり、それによって、変性された担体の重要構成部分になり、最終的に、そのような変性担体を使用する本発明の触媒に於いて観察される有利で予想外の特性に寄与すると思われる。
【0018】
本発明の重要な顕著な特徴は、担体を触媒に転換するために、その上に公知の助触媒(及び他の任意の添加剤)と共に、銀を付着(堆積)させる前に、本明細書に記載した方法で担体として使用される不活性耐火性固体状担体(例えばα−アルミナ)を変性するために、他の原材料と共にケイ酸ジルコニウムを使用することである。ケイ酸ジルコニウムは、変性担体中のその存在が、最終的に、本発明の得られる触媒の活性、効率及び/又は安定性を増強するような方法及び十分な量で使用される。ケイ酸ジルコニウムは、本発明の触媒を製造するための種々の製造段階(本明細書に記載した比較的高い温度を含む、複数の焼成又は焙焼段階を含む)を通して、変性担体のための原材料の一部としてのその最初の導入から完成触媒まで、化学的に実質的に同じままである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の触媒を使用して製造されるアルキレンオキサイドは、構造式:
【0020】
【化1】

【0021】
(式中、R1及びR2は、低級アルキル、例えばメチル若しくはエチル又は好ましくは水素である)
によって特徴付けられる。最も好ましくは、アルキレンオキサイドはエチレンオキサイドである。このアルキレンオキサイドは、対応するアルケン、即ちR1HC=CHR2から製造される。下記の検討は、簡潔性及び例示のために、エチレンオキサイド及びエチレンの項目で、そしてこれらを参照して示す。しかしながら、本発明の範囲は、一般的に、適当なアルケンのエポキシ化のための触媒として適用可能である。
【0022】
エチレンオキサイド製造用の商業的に有用な触媒に於いて、その上に銀及び助触媒が載っている担体は、触媒寿命に亘って物理的原形を維持しながら、反応器を通過するガス状反応剤、生成物及びバラストの適切な流れを可能にするための物理的形態及び強度を有していなくてはならない。顕著な触媒の破壊又は磨耗は、圧力低下及び分解のような安全性問題を生じるおそれがあるので、非常に望ましくない。この触媒は、また、反応器内のかなり大きい温度変動に耐えることができなくてはならない。担体の細孔構造(pore structure)及び化学的不活性も、最適触媒性能のために考慮しなくてはならない重要な要因である。耐火性材料、特にα−アルミナは、エチレンオキサイド触媒用の担体として成功裡に使用されてきた。他の多孔質耐火性担体又は材料も、エポキシ化のために導入される反応剤供給物及び生成物エポキシドの存在下で、比較的不活性であり、そして触媒に転換されるときの製造条件に耐えることができる限り、使用することができる。例えば、担体は、α−アルミナ、炭化ケイ素、二酸化ケイ素、ジルコニア、マグネシア、種々のクレー及びこれらの混合物から構成されていてよい。
【0023】
アルケン、例えばエチレンから、アルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイドを製造するために有用である本発明の触媒は、ジルコン変性担体上に担持されている。ケイ酸ジルコニウムとしても知られている天然に産出する物質であるジルコンは、ZrSiO4の化学式を有する。ジルコンは、また、R.Valero、B.Durand、J−L.Guth、T.Chopin、「塩基性フッ素化媒体中での多孔質ジルコンの水熱合成(Hydrothermal Synthesis of Porous Zircon in Basic Fluorinated Medium)」、Microporous and Mesoporous Materials、第29巻(1999年)、第311〜318頁に記載されているような、多くの公知の手順に従って、合成的に製造することができる。一般的に、担体は、担体を製造するために使用される他の原材料と共に導入されるケイ酸ジルコニウムの存在によって変性された、多孔質構造及び比較的高い表面積を有する、α−アルミナのような不活性耐火性担体から製造される。本発明の触媒の製造に於いて、銀は、担体の細孔(pore)全体に付着され、そして銀金属に還元される。助触媒、例えばアルカリ塩を、担体の中に含浸される可溶性銀混合物と共に添加することができ又は別の段階で添加することができる。これらの助触媒は、一般的に、銀と会合されているが、これらは、また、担体上に存在していてもよい。助触媒は、触媒効率、活性及び/又は安定性を改良するために作用する。
【0024】
担体のための原材料は、それらの任意の成分と、本発明の教示に従って担体を製造する間に添加されるべきケイ酸ジルコニウムとの間の反応が制限されるように、十分な純度のものでなくてはならない。このような反応を制限することによって、添加されたケイ酸ジルコニウムが、担体の処理及び担体の触媒への転換を通して、化学的に実質的に変化しないままであることが確実になる。ケイ酸ジルコニウムの酸化ジルコニウム(ZrO2)への部分的分解でも、特に望ましくない反応であり、これは、担体へのケイ酸ジルコニウムの添加からの利益を著しく減少させる。より高いケイ酸ジルコニウム濃度で、ケイ酸ジルコニウムの存在は、焼成担体のX線回折分析の使用によって容易に確認することができる。より低いケイ酸ジルコニウム濃度で、ケイ酸ジルコニウムは、同じ分析によって検出することができない。しかしながら、ジルコニウム及びケイ素の存在は、元素分析、例えばX線蛍光を使用して検出することができる。何れの場合にも、触媒性能及び寿命への有利な影響は、特により低いケイ酸ジルコニウム濃度での、ケイ酸ジルコニウムの存在の主な指標である。
【0025】
更に、ジルコン自体は、その中のどのような不純物も、担体の製造の間のジルコニアへのジルコンの分解を促進しないように、十分な純度のものでなくてはならない。ジルコン中の不純物は、主として、(ジルコニウム及びジルコニウムと共に天然に生じるハフニウム以外の)遷移金属の無機化合物からなり、好ましくは、1.5重量%以下であるように制限される。ジルコン中の不純物として生じる、更に一般的な遷移金属の無機化合物は、遷移金属の酸化物である。一般的な酸化物不純物の2種はチタニア及び酸化鉄である。
【0026】
本発明に於いて、高温度での最終焼成の前に、ジルコンを担体のための他の原材料と混合する。ジルコンは、他の乾燥原材料に粉体(powder)又は粉末(flour)の形でジルコンを添加し、続いて液体原材料を混合し、添加することを含む多くの方法で、含有させることができる。他の原材料へのジルコンの添加の順序は重要ではない。
【0027】
本発明の担体のための適当な形状には、固定床反応器内で使用するために適しているサイズの、球状物(ピル)、チャンク(chunk)、錠剤、片(piece)、ペレット、リング、球、ワゴン車輪、星形の内表面及び/又は外表面を有するトロイド等を含む、広範囲の種々のこのような触媒担体のために公知である任意の形状が含まれる。一般的な商業用固定床エチレンエポキシド反応器は、典型的には、約1〜3インチの外径(OD)で、触媒を15〜45フィートの長さ充填した、複数の平行の細長い管(適当なシェル内で)の形状である。このような固定床反応器に於いて、約0.1インチ〜約0.8インチの直径を有する、丸みを帯びた形状、例えば球、ペレット、リング、錠剤等に成形された担体を使用することが望ましい。
【0028】
エチレンオキサイド触媒で使用するために適している担体を製造するための、多くの公知の方法が存在する。このような方法の幾つかは、例えば米国特許第4,379,134号明細書、米国特許第4,806,518号明細書、米国特許第5,063,195号明細書、米国特許第5,384,302号明細書、米国特許出願第20030162655号明細書等に記載されている。担体材料及び製造方法がジルコンを実質的に分解しない限り、これらの方法を、本発明のジルコン変性担体を製造するために使用することができる。例えば、(ジルコニウム化合物を除いて)少なくとも95%の純度のα−アルミナ担体は、原材料を配合(混合)し、押出し、乾燥し、そして高温焼成することによって製造することができる。この場合に、出発原材料には、通常、異なった特性を有する1種又はそれ以上のα−アルミナ粉末(powder)(類)、物理的強度を与えるためのバインダーとして添加することができる粘土型材料及び焼成工程の間のその除去の後で所望の多孔度を与えるために混合物で使用されるバーンアウト材料(通常、有機化合物)が含まれる。完成担体中の不純物のレベルは、使用する原材料の純度及び焼成段階の間のそれらの揮発の程度によって決定される。一般的な不純物には、シリカ、アルカリ及びアルカリ土類金属酸化物並びに微量の金属及び/又は非金属含有添加物が含まれるであろう。
【0029】
エチレンオキサイド触媒使用のために特に適した特性を有する本発明の担体を製造するための別の方法は、ケイ酸ジルコニウムを、ベーマイトアルミナ(AlOOH)及び/又はγ−アルミナと混合する工程、このアルミナを、酸性成分及びハロゲン化物アニオン(好ましくはフッ化物アニオン)を含有する混合物で解膠して、解膠されたハロゲン化アルミナを提供する工程、この解膠されたハロゲン化アルミナを(例えば押出又はプレスにより)成形して、成形され解膠されたハロゲン化アルミナを提供する工程、この成形され解膠されたハロゲン化アルミナを乾燥して、乾燥成形アルミナを提供する工程並びにこの乾燥成形アルミナを焼成して変性α−アルミナ担体の球状物を提供する工程を含む。
【0030】
上記の方法によって製造された変性α−アルミナ担体は、好ましくは、少なくとも約0.5m2/g(更に好ましくは、約0.7m2/g〜約10m2/g)の比表面積、少なくとも約0.5cc/g(更に好ましくは、約0.5cc/g〜約2.0cc/g)の細孔体積(pore volume)、少なくとも99重量%のα−アルミナの純度(ジルコニウム成分を除く)及び約1〜約50ミクロンの半数(メジアン、median)細孔直径を有する。この場合に、変性α−アルミナ担体は、そのそれぞれが、少なくとも1個の、六角板の形状に近似する層板(lamellate)又は小板(platelet)形態を有する実質的に平らな主表面を有し(幾らかの粒子は、2個又はそれ以上の平らな表面を有する)、その少なくとも50%(数基準)が約50ミクロン未満の主寸法を有する粒子を含む。
【0031】
例示として前記した二つの具体的な方法によって製造されたものを含む、本発明の完成担体に於いて、ケイ酸ジルコニウムは、好ましくは、完成変性アルミナ担体の全重量基準で、約0.01〜約10.0重量%、更に好ましくは約0.1〜約5.0重量%、最も好ましくは約0.3〜約3.0重量%の範囲内の量で存在する。
【0032】
本発明は、如何なる特別の理論によって拘束されるものではないが、担体を製造するために使用される原材料は、あまり有利でない種(species)、特にジルコニア(ZrO2、酸化ジルコニウムとも呼ばれる)の生成になる、添加されたケイ酸ジルコニウムとのこれらの種の反応を最小にするために、大量の反応性カルシウム化合物が含有されていてはならない。担体原材料中のカルシウム化合物の累積濃度は、焼成担体(ジルコニウム成分を除く)が、2000ppmwカルシウム未満、好ましくは350ppmwカルシウム未満を含有するように制限すべきである。
【0033】
更に、ある種の他のアルカリ土類金属化合物も、ジルコニアへのケイ酸ジルコニウムの分解を促進することができる。担体原材料中のアルカリ土類金属化合物の累積濃度は、焼成担体(ジルコニウム成分を除く)が、アルカリ土類金属酸化物として測定された、500ppmwアルカリ土類金属(カルシウム化合物を除く)未満を含有するように制限すべきである。
【0034】
担体のか焼温度(焼成温度)は、純粋状態で1540℃よりも高い温度で起こる、ジルコニアへのジルコンの熱分解を制限するように制御しなくてはならない。
【0035】
アルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド製造用の触媒は、当該技術分野で公知であるようにして、担体に、1種又はそれ以上の銀化合物の溶液を含浸させることによって、本発明の変性担体上で製造することができる。1種又はそれ以上の助触媒を、銀含浸と同時に、銀含浸の前に及び/又は銀含浸の後に含浸させることができる。このような触媒を製造する際に、担体に、触媒の重量の約1〜約70%、更に好ましくは約5〜約50%、最も好ましくは約10〜約40%の範囲内である量で、銀を担体上に担持させることを可能にするために十分な、1種又はそれ以上の銀化合物溶液を、(1回以上)含浸させる。
【0036】
銀粒子サイズは、重要であるが、その範囲は狭くない。適当な銀粒子サイズは、約100〜10,000オングストロームの範囲内であってよい。
【0037】
種々の公知の助触媒、即ち特定の触媒材料、例えば銀と組合せて存在するとき、触媒性能の1個又はそれ以上の面に有利であり又は他の方法で、所望の生成物、例えばエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを製造するための触媒の能力を促進するように作用する材料が存在する。このような助触媒は、それ自体は、一般的に触媒材料とは考えられていない。触媒中のこのような助触媒の存在は、触媒性能への1個又はそれ以上の有利な効果、例えば所望の生成物の製造の速度又は量を増大させること、反応の適当な速度を達成するために必要な温度を低下させること、望まない反応の速度又は量を低下させること等に寄与することが示されてきた。競争反応が反応器内で同時に起こり、プロセス全体の有効性を決定する際の重要な要因は、これらの競争反応を超えて有する制御の尺度である。所望の反応の助触媒と呼ばれる材料は、他の反応、例えば燃焼反応の阻害剤であり得る。顕著なことは、反応全体への助触媒の効果が、所望の生成物、例えばエチレンオキサイドの効率的な製造に有利であることである。触媒中に存在する1種又はそれ以上の助触媒の濃度は、触媒性能への所望の効果、特定の触媒の他の成分、担体の物理的及び化学的特性並びにエポキシ化反応条件に依存して、広範囲に亘って変えることができる。
【0038】
少なくとも2種類の助触媒(promotor)、即ち固体状助触媒及び気体状助触媒が存在する。固体状助触媒は、触媒の使用前に、担体(即ち支持体)の一部として又はそれに適用される銀成分の一部として、触媒の中に含有される。固体状助触媒を触媒の製造の間に添加するとき、助触媒は、銀成分を担体上に付着させる前に、担体に添加することができ、銀成分と同時に添加することができ又は担体上への銀成分の付着に続いて、連続的に添加することができる。エチレンオキサイドを製造するために使用される触媒用の公知の固体状助触媒の例には、カリウム、ルビジウム、セシウム、レニウム、硫黄、マンガン、モリブデン及びタングステンの化合物が含まれる。エチレンオキサイドを製造するための反応の間に、触媒上の助触媒の特別の形は知ることができない。
【0039】
対照的に、気体状助触媒は、蒸気相反応剤、例えばエチレン及び酸素と共に、アルキレンオキサイド(例えばエチレンオキサイド)の製造のための反応器に導入される、気相化合物及び/又はこれらの混合物である。このような助触媒は、また変性剤、阻害剤又は増強剤と呼ばれ、固体状助触媒と連係して又はこれに加えて作用して、所定の触媒の性能を更に増強する。当該技術分野で公知であるように、1種又はそれ以上の塩素含有成分が、気体状助触媒として典型的に使用される。他のハロゲン化物含有成分も、同様の効果をもたらすために使用することができる。当該技術分野で公知であるように、使用する固体状触媒の組成に依存して、1種又はそれ以上の、少なくとも1種の、レドックス半反応対(redox half reaction pair)の効率増強員を発生することができる気体状成分を、気体状助触媒として使用することができる。レドックス半反応対の効率増強員を発生することができる好ましい気体状成分は、好ましくは窒素含有成分である。
【0040】
固体状助触媒は、一般的に、その使用の前に触媒に化学的化合物として添加される。本明細書で使用する用語「化合物」は、表面及び/又は化学結合、例えばイオン結合及び/又は共有結合及び/又は配位結合による、特定の元素と1種又はそれ以上の異なった元素との組合せを指す。用語「イオン性」又は「イオン」は、電気的に帯電した化学単位を指し、「カチオン性」又は「カチオン」は正であり、そして「アニオン性」又は「アニオン」は負である。用語「オキシアニオン性」又は「オキシアニオン」は、別の元素と組合せて少なくとも1個の酸素原子を含有する負に帯電した単位を指す。従って、オキシアニオンは、酸素含有アニオンである。イオンは真空中には存在しないが、触媒に化合物として添加したときに、電荷バランス対イオンと組合せて見出されることが理解される。触媒中にあるとき、助触媒の形は必ずしも知られておらず、そして助触媒は触媒の製造の間に添加された対イオン無しに存在し得る。例えば水酸化セシウムで製造された触媒は、セシウムを含有するように分析できるが、完成した触媒中には水酸化物を分析できない。同様に、アルカリ金属酸化物、例えば酸化セシウム又は遷移金属酸化物、例えばMoO3のような化合物は、イオン性ではないが、触媒製造の間に又は使用中にイオン性化合物に転化できる。理解を容易にするために、固体状助触媒は、反応条件下で触媒中のその形に無関係に、カチオン及びアニオンの用語で参照されるであろう。
【0041】
銀及び任意の1種又はそれ以上の固体状助触媒は、ジルコン変性担体上に比較的均一に分散されていることが望ましい。銀触媒材料及び1種又はそれ以上の助触媒を付着させるための好ましい手順は、(1)本発明に従った多孔質ジルコン変性担体に、溶媒又は可溶化剤、銀錯体及び1種又はそれ以上の助触媒を含む溶液を含浸させる工程並びに(2)その後、含浸担体を処理して、銀塩を銀金属に転化させ、そして銀及び助触媒(群)の、担体の外部及び内部細孔表面上への堆積を実施する工程を含む。銀及び助触媒の付着は、一般的に、担体を高温度に加熱して、担体内の液体を蒸発させ、そして内部及び外部担体表面上への銀及び助触媒の付着を実施することによって達成される。担体の含浸は、これが、被覆手順(これは、一般的に、担体の内部表面上への実質的な銀付着を行うことができない)よりも一層有効に銀を利用するので、銀堆積のための好ましい技術である。更に、被覆された触媒は、機械的摩擦による銀損失を一層受けやすい。
【0042】
担体に含浸させるために使用される銀溶液は、好ましくは、当該技術分野で開示されている銀溶液のような、溶媒又は錯化/可溶化剤中の銀化合物を含む。使用される具体的な銀化合物は、例えば銀錯体、硝酸塩、酸化銀又はカルボン酸銀、例えば酢酸銀、シュウ酸銀、クエン酸銀、フタル酸銀、乳酸銀、プロピオン酸銀、酪酸銀及び高級脂肪酸塩から選択することができる。アミンによって錯化された酸化銀が本発明に於いて使用するための好ましい銀の形である。
【0043】
広範囲の種々の溶媒又は錯化/可溶化剤を、銀を含浸媒体中の所望の濃度まで可溶化するために、使用することができる。この目的のために適しているとして開示されているものの中には、乳酸、アンモニア、アルコール、例えばエチレングリコール並びにアミン及びアミンの水性混合物がある。
【0044】
例えばAg2Oは約30重量%の程度までシュウ酸及びエチレンジアミンの溶液中に溶解させることができる。このような溶液を、約0.7cc/g多孔度の担体上に真空含浸させると、典型的には、触媒の全重量基準で、約25重量%の銀を含有する触媒になる。従って、約25又は30%以上よりも多い銀担持量を有する触媒を得ることを望む場合、所望量の銀が担体上に堆積されるまで、担体を、助触媒と共に又は助触媒無しで、少なくとも2回又はそれ以上の銀の逐次含浸に付すことが、一般的に必要である。或る例に於いては、銀塩の濃度は、最初の含浸溶液に於けるよりも後の含浸溶液に於いてより高い。他の例に於いては、それぞれの含浸の間に、ほぼ等しい量の銀を堆積させる。しばしば、それぞれの含浸に於いて等しい堆積を実施するために、次の含浸溶液中の銀濃度は、最初の含浸溶液中のものよりも高くする必要があろう。別の例に於いて、次の含浸に於いて堆積されるものよりも高い量の銀が、最初の含浸に於いて担体上に堆積される。含浸のそれぞれに続いて、焙焼するか又は他の手順により、銀を不溶性にすることができる。
【0045】
ジルコン変性担体上に製造された触媒には、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属がカチオン助触媒として含有されていてよい。アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の例は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムである。他のカチオン助触媒には、ランタニド系金属を含む第3b族金属イオンが含まれる。幾つかの例に於いて、助触媒は、米国特許第4,916,243号明細書(参照して本明細書に含める)に記載されているように、相乗効率増強を得るために、カチオンの混合物、例えばセシウムと少なくとも1種の他のアルカリ金属との混合物を含む。周期表に対する参照は、CRC化学及び物理学ハンドブック(CRC Handbook of Chemistry & Physics)、第46版、内側裏表紙に於いて、ケミカル・ラバー社(Chemical Rubber Company)、オハイオ州クリーブランド(Cleveland)により刊行されたものに対して行うものとすることに注目されたい。
【0046】
完成触媒中のアルカリ金属助触媒の濃度は、狭くなく、広範囲に亘って変化してよい。特定の触媒のための最適アルカリ金属助触媒濃度は、性能特性、例えば触媒効率、触媒老化の速度及び反応温度に依存するであろう。
【0047】
完成触媒中のアルカリ金属の濃度(カチオン、例えばセシウムの重量基準)は、約0.0005〜1.0重量%、好ましくは約0.005〜0.5重量%で変化してよい。担体又は触媒の表面上に堆積される又は存在するカチオン助触媒の好ましい量は、一般的に、全担体材料上で計算されるカチオンの重量で、約10〜約4000、好ましくは約15〜約3000、更に好ましくは約20〜約2500ppmである。約50〜約2000ppmの量が、しばしば最も好ましい。アルカリ金属セシウムを、他のカチオンとの混合物中に使用するときに、所望の性能を達成するための、セシウムの、任意の他のアルカリ金属及びアルカリ土類金属塩(群)(使用する場合)に対する比は、狭くなく、広範囲に亘って変化してよい。セシウムの他のカチオン助触媒に対する比は、約0.0001:1〜10,000:1、好ましくは約0.001:1〜1,000:1で変化してよい。好ましくは、セシウムは、助触媒としてセシウムを使用する完成触媒中で、全添加アルカリ金属及びアルカリ土類金属の、少なくとも約10、更に好ましくは約20〜100%(重量)を構成する。
【0048】
本発明で使用することができる幾つかのアニオン助触媒の例には、ハロゲン化物、例えばフッ化物及び塩化物並びに周期表の第3b族〜第7b族及び第3a族〜第7a族の5〜83の原子番号を有する、酸素以外の元素のオキシアニオンが含まれる。窒素、硫黄、マンガン、タンタル、モリブデン、タングステン及びレニウムのオキシアニオンの1種又はそれ以上が、幾つかの応用のために好ましい。
【0049】
本発明の触媒中に使用するために適しているアニオン助触媒又は変性剤の種類は、単なる例として、オキシアニオン、例えば硫酸塩、SO4-2、リン酸塩、例えばPO4-3、チタン酸塩、例えばTiO3-2、タンタル酸塩、例えばTa26-2、モリブデン酸塩、例えばMoO4-2、バナジン酸塩、例えばV24-2、クロム酸塩、例えばCrO4-2、ジルコン酸塩、例えばZrO3-2、ポリリン酸塩、マンガン酸塩、硝酸塩、塩素酸塩、臭素酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、タングステン酸塩、チオ硫酸塩、セレート(cerates)等を含む。フッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物を含むハロゲン化物が存在してもよい。
【0050】
多くのアニオンが、錯体化学的性質を有し、1種又はそれ以上の形、例えばオルトバナジン酸塩及びメタバナジン酸塩並びに種々のモリブデン酸塩オキシアニオン、例えばMoO4-2、Mo724-6及びMo27-2で存在し得ることが、よく認められている。オキシアニオンには、また、ポリオキシアニオン構造を含有する混合金属含有オキシアニオンが含まれていてよい。例えばマンガン及びモリブデンは、混合金属オキシアニオンを形成することができる。同様に、アニオン性、カチオン性、元素状又は共有結合形(covalent)で与えられる他の金属を、アニオン性構造の中に入れることができる。
【0051】
オキシアニオン又はオキシアニオンへの前駆体は、担体に含浸させるための溶液中に使用できるが、触媒の製造の状態の間及び/又は使用の間に、特定のオキシアニオン又は最初に存在する前駆体を、他の形に転換させることができる。実際に、元素をカチオン性形又は共有結合形に転換させることができる。多くの例に於いて、分析技術は、存在する種を正確に同定するために十分ではないであろう。本発明は、使用の間に触媒上に最終的に存在し得る正確な種によって限定されることを意図しない。
【0052】
助触媒がレニウムを含むときには、レニウム成分は、種々の形で、例えば金属として、共有結合化合物として、カチオンとして又はアニオンとして与えることができる。増強された効率及び/又は活性を与えるレニウム種は明白ではないが、添加された成分又は触媒の製造の間若しくは触媒として使用する間に発生するものであろう。レニウム化合物の例には、レニウム塩、例えばハロゲン化レニウム、オキシハロゲン化レニウム、レニウム酸塩、過レニウム酸塩、レニウムの酸化物及びレニウムの酸が含まれる。しかしながら、過レニウム酸アルカリ金属、過レニウム酸アンモニウム、過レニウム酸アルカリ土類金属、過レニウム酸銀、他の過レニウム酸塩及び七酸化レニウムも、適切に使用できる。七酸化レニウム、Re27は、水中に溶解したとき、加水分解して、過レニウム酸、HReO4又は過レニウム酸水素になる。従って、本明細書の目的のために、七酸化レニウムは、過レニウム酸塩、即ちReO4であると考えることができる。同様な化学は、モリブデン及びタングステンのような他の金属によって示すことができる。
【0053】
本発明に於いて使用することができる助触媒の他の種類には、マンガン成分が含まれる。多くの例に於いてマンガン成分は、触媒の活性、効率及び/又は安定性を増強することができる。増強された活性、効率及び/又は安定性を与えるマンガン種は、明白ではなく、添加される成分又は触媒製造の間若しくは触媒として使用する間に発生するものであってよい。マンガン成分には、これらに限定されないが、酢酸マンガン、硫酸アンモニウムマンガン、クエン酸マンガン、ジチオン酸マンガン、シュウ酸マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン及びマンガン酸塩アニオン、例えば過マンガン酸塩アニオン等が含まれる。ある種の含浸溶液中でマンガン成分を安定化するために、キレート化化合物、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその適当な塩を添加することが必要であろう。
【0054】
アニオン助触媒の量は、広く、例えば、触媒の全重量基準で約0.0005〜2重量%、好ましくは約0.001〜0.5重量%で変化させることができる。使用するときには、レニウム成分は、しばしば、触媒の全重量基準でレニウムの重量として計算して、少なくとも約1、少なくとも約5、例えば約10〜2000、しばしば20〜1000ppmwの量で与えられる。
【0055】
本発明で使用する触媒のための助触媒は、また、反応条件下で、レドックス半反応対のガス状効率増強員を形成することができるガス状窒素含有成分の存在下で、エポキシ化プロセスで使用されるレドックス半反応対の一員の少なくとも1種の効率増強塩からなる種類のものであってよい。用語「レドックス半反応」は、本明細書に於いて、例えば「化学ハンドブック(Handbook of Chemistry)」、N.A.Lange編、マグローヒル出版社(McGraw-Hill Book Company, Inc.)、第1213〜1218頁(1961年)又は「CRC化学及び物理学ハンドブック」、第65版、CRCプレス社(CRC Press, Inc.)、フロリダ州ボカ・レイトン(Boca Raton)、第D155〜162頁(1984年)に記載されているような種類の、標準又は単極電位としても知られている、標準還元及び酸化電位の表中に示されている方程式中に見出されるもののような半反応を意味するために定義される。用語「レドックス半反応対」は、このような半反応方程式中の酸化又は還元を受ける、原子、分子若しくはイオン又はこれらの混合物の対を指す。レドックス半反応対のような用語は、本明細書に於いて、生じる化学反応の機構ではなくて、所望の性能増強を与える物質の種類のこれらの員を含めるために使用される。好ましくは、このような化合物は、半反応対の一員の塩として触媒に会合するとき、アニオンが、オキシアニオン、好ましくは多価原子のオキシアニオンである塩である。即ち、酸素が結合しているアニオンの原子は、異なった原子に結合するとき、異なった原子価状態で存在することができる。本明細書で使用される用語「塩」は、塩のアニオン成分及びカチオン成分が、固体状触媒中で会合又は結合することを示さず、両成分が反応条件下で触媒中に或る形で存在することのみを示す。カリウムが好ましいカチオンであるが、ナトリウム、ルビジウム及びセシウムも作用でき、そして好ましいアニオンは、硝酸塩、亜硝酸塩及び置換又は他の化学反応を受けることができ、そしてエポキシ化条件下で硝酸塩アニオンを形成することができる他のアニオンである。好ましい塩には、KNO3及びKNO2が含まれ、KNO3が最も好ましい。
【0056】
レドックス半反応対の一員の塩は、エポキシ化反応の効率を増強するために十分な量で、触媒に添加される。正確な量は、使用するレドックス半反応のガス状効率増強員及びその濃度、気相中の他の成分の濃度、触媒中に含有されている銀の量、担体の表面積、プロセス条件、例えば空間速度及び温度並びに担体の形態のような変数に依存して変化するであろう。その代わりに、レドックス半反応対の一員の塩の所望量が、エポキシ化条件下で、特に1種又はそれ以上の気相反応成分との反応によって、触媒中に生成されるように、適当な前駆体化合物を添加することもできる。しかしながら、一般的に、添加する効率増強塩又はその前駆体の濃度の適当な範囲は、カチオンとして計算して、触媒の全重量基準で、約0.01〜約5重量%、好ましくは約0.02〜約3重量%である。最も好ましくは、この塩は、約0.03〜約2重量%の量で添加される。
【0057】
レドックス半反応対の好ましいガス状効率増強員は、2より多い原子価状態で存在することができる元素、好ましくは窒素及び他の元素(好ましくは酸素である)を含有する化合物である。反応条件下でレドックス半反応対の一員を作ることができるガス状成分は、一般的に窒素含有ガス、例えば一酸化窒素、二酸化窒素及び/又は四酸化二窒素、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン又はアンモニア、ニトロパラフィン(例えばニトロメタン)、ニトロ芳香族化合物(特にニトロベンゼン)、N−ニトロ化合物及びニトリル(例えばアセトニトリル)である。これらの触媒中に使用すべき窒素含有ガス状助触媒の量は、触媒の活性及び特に触媒の効率のような性能を増強するために十分な量である。窒素含有ガス状助触媒の濃度は、使用するレドックス半反応対の一員の特定の効率増強塩及びその濃度、酸化を受ける特定のアルケン並びに入口反応ガス中の二酸化炭素の量を含む他の要因によって決定される。例えば、米国特許第5,504,053号明細書には、窒素含有ガス状助触媒がNO(一酸化窒素)であるときには、適当な濃度は、ガス流の約0.1〜約100体積ppmであることが開示されている。
【0058】
幾つかの場合に於いて、反応系中で同じ半反応対の一員、即ち供給物流中の、触媒と会合した効率増強塩助触媒及びガス状助触媒員の両方を、例えば硝酸カリウム及び一酸化窒素の好ましい組合せで使用することが好ましいが、これは、満足できる結果を達成するために、全ての場合に必要ではない。KNO2/N23、KNO3/NO2、KNO3/N24、KNO2/NO、KNO2/NO2のような他の組合せも、同じ系で使用することができる。幾つかの例に於いて、塩及びガス状員は、反応全体の一連の半反応方程式中の最初の反応及び最後の反応を表す、異なった半反応に於いて見出すことができる。
【0059】
何れにしても、固体及び/又はガス状助触媒が、促進量で与えられる。本明細書で使用する用語、触媒のある種の成分の「促進量」は、その成分を含有しない触媒と比較したときに、その触媒の触媒的特性の1個又はそれ以上に於いて改良を与えるために有効に作用する、その成分の量を指す。触媒的特性の例には、とりわけ、操作性(暴走に対する抵抗)、選択率、活性、転化率、安定性及び収率が含まれる。個々の触媒的特性の1個又はそれ以上を、「促進量」によって増強させることができ、一方、他の触媒的特性を増強させることができるか若しくはできないか又は減衰させることができることが、当業者によって理解される。更に、異なった触媒的特性は異なった運転条件で増強できることが理解される。例えば、運転条件の一つのセットで増強された選択率を有する触媒は、異なったセットの条件で運転することができ、この場合には、改良は、選択率ではなくて活性に於いて現れ、エチレンオキサイドプラントのオペレーターは、原料コスト、エネルギーコスト、副生物除去コスト等を考慮に入れることによって、利益を最大にするために、他の触媒的特性を犠牲にしてでも、ある種の触媒的特性の利点を得るために、運転条件を意図的に変更するであろう。
【0060】
助触媒によってもたらされる促進効果は、例えば反応条件、触媒製造技術、担体の表面積及び細孔構造及び表面化学的特性、触媒の銀及び共助触媒含有量、触媒上に存在する他のカチオン及びアニオンの存在のような多数の変数によって影響を受け得る。他の活性剤、安定剤、助触媒、増強剤又は他の触媒改良剤の存在も、促進効果に影響を与え得る。
【0061】
エチレンエポキシ化プロセス条件
ガス再循環付き標準逆混合オートクレーブを、触媒試験のために使用する。使用するプロセス条件に依存して、気相供給濃度に於いて幾つかの変化が存在する。二つのケース、即ち、分子状酸素を供給するために空気が使用される商業的空気タイプエチレンエポキシドプロセスで使用される典型的な条件をシミュレートする空気プロセス条件及び酸素源として純粋な酸素が添加される商業的酸素タイプエチレンエポキシドプロセスに於ける典型的な条件をシミュレートする酸素プロセス条件が示される。それぞれの場合は異なった効率をもたらすが、酸素供給物としての空気では、より低い量の酸素及びエチレンが使用され、これは、酸素源として純粋な酸素が使用されるときのものよりも約2〜5%低い点であるエチレンエポキシドへの効率をもたらすことは、実際的に全ての場合について通例である。Chemical Engineering Progress、第70巻、第5号、第78〜84頁、1974年に於けるJ.M.Bertyによる報文、標題「蒸気相触媒研究用の反応器(Reactor for Vapor Phase-Catalytic Studies)」の図2に記載されている公知の逆混合、底部攪拌「マグネドライブ(Magnedrive)」オートクレーブを、反応器の一つとして使用する。入口条件は以下の通りである。
【0062】
【表1】

【0063】
圧力は、約275psig(ポンド/平方インチ、ゲージ)で一定に維持し、全流量は、約11.3又は22.6SCFH(標準立方フィート/時)に維持する。SCFHは、標準温度及び圧力、即ち0℃及び1気圧での、立方フィート/時を指す。塩化エチル濃度は最高効率を達成するように調節する。温度(℃)及び触媒効率は触媒性能を記載する応答として得られる。
【0064】
エチレンエポキシ化プロセス条件に於いてオートクレーブのために使用した触媒試験手順は、下記の通りである。40又は80ccの触媒を逆混合オートクレーブに装入し、触媒の重量を記録する。逆混合オートクレーブを、10又は20SCFHの窒素流中で、ファンを1500rpmで運転しながら、ほぼ反応温度まで加熱する。次いで、窒素流を停止し、そして前記の供給物流を反応器の中に導入する。次いで全ガス入口流を、40ccの触媒のために11.3SCFH又は80ccの触媒のために22.6SCFHに調節する。温度を、次の数時間に亘って、所望の出口エチレンオキサイド%を与えるように調節し、最適効率は、塩化エチルを調節することによって得られる。出口エポキシド濃度をモニターして、触媒が、そのピーク定常状態性能に達したことを確実にする。塩化エチルを周期的に調節し、エチレンエポキシドに対する触媒の効率及び失活の速度(温度上昇)がこうして得られる。活性及び効率を決定する際に、プロセス及び触媒は、定常状態条件下になくてはならない。
【0065】
上記の手順に従って、触媒効率を報告する単一の試験結果の標準偏差は、約0.3%効率単位である。上記の手順に従って触媒活性を報告する単一の試験結果の典型的な標準偏差は、約1.2℃である。勿論、標準偏差は、試験を実施する際に使用する装置の特性及び技術の正確性に依存し、従って変化するであろう。これらの標準偏差は、本明細書で報告される試験結果に適用されると信じられる。
【0066】
出発担体材料の特性及びこれらの変性の詳細を、表IIに詳記する。表IIIに、触媒組成を含めて、表IIの担体上の触媒製造の詳細を記載する。
【0067】
担体製造
以下の例の担体を下記方法で製造した。ケイ酸ジルコニウム(使用する場合)を、他の固体原材料と共に添加して、乾燥混合物を得た。ジルコンを使用した全ての場合に、これは、約130ミクロンの半数粒子サイズを有する粉末形で導入した。次いで、液体及び追加の乾燥原材料(任意)を添加した。このような添加剤の量は、出発乾燥混合物の重量%として表す。また、水を、押出可能な混合物を得るために十分な量で添加した。このような量は、多数の要因、例えば環境湿度、原材料の水和レベル等に依存する。以下の説明に於いて他の方法で指摘しない限り、この混合物を、軸に沿った1個の開口を有する円筒として又は多分割円筒として押出した。乾燥した後、押出された素地を、α−アルミナへの押出物の完全な転換を確実にするように選択された条件下で、α−アルミナにまで焼成した。1000℃〜1400℃の焼成温度及び45分間〜5時間の焼成時間を使用した。焼成した素地の外側直径寸法は0.31〜0.35インチであり、円筒長さは0.29〜0.34インチでありそして多分割円筒の壁厚さは0.075インチ以下であった。変性担体及び比較担体に於ける物理的特性及びジルコンの近似重量%を、表IIに示す。下記の記載中の全ての%は、重量%である。
【0068】
【表2】

【0069】
担体Aは、最初に0.06重量%のCaOを含有していた焼成アルミナから製造した。このアルミナを、10%酢酸溶液と一緒にし、攪拌しながら100℃で15分間加熱し、次いで濾過し、そして熱脱イオン水で2回真空洗浄した。この浸出したアルミナを100℃で一夜乾燥し、そして0.03%のCaOを含有することが見出された。71.1%のこの浸出アルミナ、22.8%の有機細孔形成バーンアウト、4.5%の押出助剤、<1%の融剤材料及び1.4%の顆粒状ジルコンから、乾燥混合物を製造した。2.1%の追加の押出助剤及び<1%の界面活性剤を、押出可能なブレンドを形成するために十分な水との水性スラリーとして添加した。このブレンドを押出し、乾燥し、そして焼成してα−アルミナにした。最終サンプルには、約2%のジルコンが含有されていた。
【0070】
比較担体Bは、ジルコンを添加しなかった以外は、担体Aと同様の方法で製造した。
【0071】
担体Cは、79.2%のプソイドベーマイト、19.8%のγ−アルミナ及び1%の顆粒状ジルコンの乾燥混合物をブレンドすることによって製造した。5.5%のギ酸及び4.6%の二フッ化アンモニウムを、押出可能なブレンドを形成するために十分な水との水溶液として添加した。混合した後、このブレンドを押出し、乾燥し、そして焼成してα−アルミナにした。最終サンプルには、約1%のジルコンが含有されていた。
【0072】
比較担体Dは、ジルコンを添加しなかった以外は、担体Cについて上に示したのと同じ手順を使用して製造した。
【0073】
担体Eは、75.5%のギブサイト、22.5%のプソイドベーマイト及び2.0%の顆粒状ジルコンの乾燥混合物をブレンドすることによって製造した。この乾燥混合物に、31.4%の、600ミクロンよりも小さい粒子サイズを有するグラファイトを添加した。次いで、1.7%のフッ化アンモニウム、2.0%の硝酸マグネシウム水和物及び1.2%の硝酸を、押出可能なブレンドを形成するための適当量の水との水溶液として添加した。混合した後、このブレンドを押出し、乾燥し、そして焼成してα−アルミナにした。最終サンプルには、約2%のジルコンが含有されていた。
【0074】
比較担体Fは、ジルコンを添加しなかった以外は、担体Eについて上に示したのと同じ手順を使用して製造した。
【0075】
担体Gは、74.8%のギブサイト、22.3%のプソイドベーマイト及び2.9%の顆粒状ジルコンの乾燥混合物をブレンドすることによって製造した。この乾燥混合物に、21.4%の、600ミクロンよりも小さい粒子サイズを有するグラファイトを添加した。次いで、4.6%の硝酸、1.9%の硝酸マグネシウム水和物及び1.6%のフッ化アンモニウムを、押出可能なブレンドを形成するための適当量の水との水溶液として添加した。このブレンドを押出し、乾燥し、そして焼成してα−アルミナにした。最終サンプルには、約3%のジルコンが含有されていた。
【0076】
担体Hは、添加した顆粒状ジルコンの量が、完成担体中に約0.3重量%ジルコンを与えるために十分であった以外は、担体Gと同様の方法で製造した。
【0077】
比較担体Iは、ジルコンを添加しなかった以外は、担体Gと同様の方法で製造した。
【0078】
担体Jは、68.6%のプソイドベーマイト、29.4%のギブサイト及び2.0%のジルコンの乾燥混合物をブレンドすることによって製造した。この混合物に、<1%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを添加した。次いで、5.4%の酢酸及び4.0%のフッ化水素酸を、押出可能なブレンドを形成するための適当量の水との水溶液として添加した。この混合物を押出し、乾燥し、そして焼成してα−アルミナにした。最終サンプルには、約2%のジルコンが含有されていた。
【0079】
比較担体Kは、ジルコンを添加しなかった以外は、担体Jと同様の方法で製造した。
【0080】
担体Lは、98%のプソイドベーマイトと2%の顆粒状ジルコンとの混合物をブレンドすることによって製造した。次いで、5.4%のギ酸及び2.1%のフッ化水素酸を、押出可能なブレンドを形成するための適当量の水との水溶液として添加した。この混合物を押出し、乾燥し、そして焼成してα−アルミナにした。最終サンプルには、約2%のジルコンが含有されていた。
【0081】
比較担体Mは、ジルコンを添加しなかった以外は、担体_と同様の方法で製造した。
【0082】
触媒製造
担体に、典型的には、30重量%の酸化銀、18重量%のシュウ酸、17重量%のエチレンジアミン、6重量%のモノエタノールアミン及び27重量%の蒸留水を含有する第一含浸銀溶液を真空含浸させた。第一含浸溶液は、典型的には、(1)1.14部のエチレンジアミン(高純度グレート)を1.75部の蒸留水と混合する工程、(2)1.16部のシュウ酸二水和物(試薬グレート)を、このエチレンジアミン水溶液に、溶液の温度が40℃を超えないようにして、ゆっくり添加する工程、(3)1.98部の酸化銀をゆっくり添加する工程及び(4)0.40部のモノエタノールアミン(Fe及びClは含まず)を添加する工程によって製造した。
【0083】
担体に、真空下で担体に含浸させるための、適当なストップコックを取り付けた適切なサイズのガラス又はステンレススチール円筒形容器内で含浸させた。含浸溶液を入れるために使用した適当な分離漏斗を、ゴムストッパーを通して、含浸容器の頂部の中に挿入した。担体が入っている含浸容器を、約1〜2インチ水銀(絶対)まで10〜30分間排気し、その後、分離漏斗と含浸容器との間のストップコックを開けることによって、含浸溶液を担体にゆっくり添加した。全部のこの溶液が含浸容器の中に空けられた(約15秒間)後、真空を開放し、そして圧力を大気圧に戻した。溶液の添加に続いて、担体を含浸溶液の中に、環境条件で5〜30分間浸漬したままにし、その後、10〜30分間で過剰の溶液を排出した。
【0084】
次いで、銀含浸した担体を、以下のようにして焙焼して、触媒表面上での銀の還元を行った。含浸担体を、ステンレススチール金網トレーの上に単層で広げ、次いでステンレススチールベルト(渦巻き波)の上に置き、2インチ×2インチ平方の加熱ゾーンに通して2.5分間移動させるか又はより大きいベルト運転のために等価条件を使用した。この加熱帯域を、熱風をベルト及び触媒粒子の周りを通して、266標準立方フィート/時(SCFH)の速度で、上方に通過させることによって、500℃に維持した。加熱帯域内で焙焼した後、触媒を、開放空気中で室温にまで冷却し、秤量した。
【0085】
次に、銀含浸担体に、シュウ酸銀アミン溶液及び助触媒の両方を含有する第二銀含浸溶液を真空含浸させた。第二含浸溶液は、第一含浸からの排出溶液の全部プラス第一溶液の新しいアリコートから構成されているか又は新しい溶液を使用した。水溶液又は生形での助触媒を、攪拌しながら(表IIIに記載した上昇する数字の順序で)添加した。触媒3〜10に於いて、含浸溶液中のマンガンを安定化させるために、2当量の二アンモニウムエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を、マンガン助触媒と共に添加した。触媒11及び12に於いて、同じ目的のために、1過剰当量の二アンモニウムEDTAを添加した。
【0086】
この第二含浸のための含浸、排出及び焙焼工程は、第一含浸と同様にして実施した。
【0087】
2回含浸担体、即ち完成触媒を、再び秤量し、そして第二含浸に於ける担体の重量利得に基づいて、銀の重量%及び助触媒の濃度を計算した(結果を表IIIに示す)。幾つかの場合に、触媒の製造を、装置及び方法の適当なスケールアップを使用して、ここに記載したものよりも大きい規模で実施した。次いで、完成触媒を、エチレンエポキシ化反応に於いて使用し、その結果を以下の例に示す。
【0088】
【表3】

【0089】
【表4】

【0090】
表IV〜Xに於いて、「Mlb EO/CF」は、触媒立方フート当たり製造されたエチレンオキサイド1000ポンドの単位を示す。
【0091】
例1
触媒1及び比較触媒2
それぞれの触媒80cm3(61.4g)を、オートクレーブ反応器に装入し、そして空気プロセス条件−I(表I)下で試験した。出口エチレンオキサイドを、それが1.4モル%まで増加した6日まで、1.2モル%に設定した。表IVは、2重量%のジルコンを含有する触媒(触媒1)の性能を、ジルコンを含有しない触媒(比較触媒2)の性能と比較する。ジルコンを含有する触媒は、より高い初期効率及びより低い初期温度(より高い活性)を有する。
【0092】
【表5】

【0093】
例2
触媒3及び比較触媒4
それぞれの触媒の等重量(63.5g)を、オートクレーブ反応器に装入し、そして表Iに記載した空気プロセス条件−I下で試験した。出口エチレンオキサイドを1.4モル%に設定し、そして温度及び効率を、触媒が老化するまでモニターした。表Vは、触媒立方フート当たり製造されたEOのポンドの関数として、この2種の触媒の性能を比較する。初期効率は、比較触媒よりも低いが、時間の経過と共に、ジルコン含有触媒は、効率及び温度に於いて、より遅い速度で老化する。
【0094】
【表6】

【0095】
例3
触媒5及び比較触媒6
それぞれの触媒の等重量(63.5g)を、オートクレーブ内で、酸素プロセス条件−I(表I)下で試験した。出口エチレンオキサイド濃度を1.0モル%に設定した。触媒5は、ジルコンを含有しない比較触媒6に比較して、より高い効率及びより低い温度を有する。
【0096】
【表7】

【0097】
例4
触媒7、触媒8及び比較触媒9
それぞれの触媒の等重量(63.5g)を、オートクレーブ内で、酸素プロセス条件−I(表I)下で試験した。出口エチレンオキサイド濃度を1.2モル%に設定した。約0.3%のジルコンを含有する触媒8は、最高の効率並びに最低の効率老化及び温度老化を有する。約3%のジルコンを含有する触媒7は、添加したジルコンを含有しない比較触媒9よりも、一層活性で、効率的である。
【0098】
【表8】

【0099】
例5
触媒10及び比較触媒11
それぞれの触媒の等重量(63.5g)を、オートクレーブ内で、酸素プロセス条件−I下で試験した。出口エチレンオキサイド濃度を1.0モル%に設定した。触媒10は、ジルコンを含有しない比較触媒11よりも一層安定な温度を示す。
【0100】
【表9】

【0101】
例6
触媒12及び比較触媒13
それぞれの触媒の等重量(63.5g)を、オートクレーブ内で、酸素プロセス条件−I下で試験した。出口エチレンオキサイド濃度を1.0モル%に設定した。ジルコン有りで製造した触媒12は、最初は効率が低く、活性が低いが、ジルコン無しで製造した比較触媒13よりも著しく低い温度老化を示す。
【0102】
【表10】

【0103】
例7
触媒14及び比較触媒15
それぞれの触媒の30cm3(比較触媒14について26.8g及び触媒15について26.1g)を、オートクレーブ反応器に装入し、そして酸素プロセス条件−II(表1)下で試験した。220℃と255℃との間の温度での初期運転の後、条件を21.3SCFHの全流量のために調節し、そして温度を、1.2モル%の出口エチレンオキサイドを維持するように制御した。ジルコンを含有する触媒14の初期効率は、比較触媒15のものよりも高く、そして効率低下速度は減少する。
【0104】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火性固体状担体に含浸された銀及び少なくとも1種の効率増強性助触媒を含んでなり、前記担体がジルコニウム成分を含有していない類似触媒に比較したときに、触媒活性、効率及び安定性の少なくとも一つを増強するのに十分な量のジルコニウム成分を含有し、前記ジルコニウム成分が実質的にケイ酸ジルコニウムとして担体中に存在するアルケンの蒸気相エポキシ化によるアルキレンオキサイド製造用触媒。
【請求項2】
アルキレンオキサイドがエチレンオキサイドである請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
アルキレンオキサイドがプロピレンオキサイドである請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
含浸された銀が触媒の約2〜60重量%の量で存在する請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
含浸された銀が触媒の約5〜50重量%の量で存在する請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
含浸された銀が触媒の約10〜40重量%の量で存在する請求項5に記載の触媒。
【請求項7】
効率増強性助触媒の少なくとも1種が、少なくとも1種の、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び/又は原子番号が5〜83で周期表の第3b族〜第7b族及び第3a族〜第7a族から選択された、酸素以外の元素のオキシアニオンを含む請求項1に記載の触媒。
【請求項8】
効率増強性助触媒の少なくとも1種がレドックス半反応対の一員である請求項1に記載の触媒。
【請求項9】
効率増強性助触媒の少なくとも1種がレニウム成分である請求項7に記載の触媒。
【請求項10】
ジルコニウム成分を除いた前記耐火性固体状担体が少なくとも95重量%のα−アルミナである請求項1に記載の触媒。
【請求項11】
ジルコニウム成分を除いた前記耐火性固体状担体が約2000ppmwよりも少ないカルシウムを含む請求項10に記載の触媒。
【請求項12】
ジルコニウム成分を除いた前記耐火性固体状担体が約350ppmwよりも少ないカルシウムを含む請求項11に記載の触媒。
【請求項13】
ジルコニウム成分及びカルシウム化合物を除いた前記耐火性固体状担体が、約500ppmwよりも少ない、アルカリ土類金属酸化物として測定されたアルカリ土類金属を含む請求項10に記載の触媒。
【請求項14】
ジルコニウム成分を除いた前記耐火性固体状担体が少なくとも99重量%のα−アルミナである請求項1に記載の触媒。
【請求項15】
ジルコニウム成分を除いた前記耐火性固体状担体が約2000ppmwよりも少ないカルシウムを含む請求項14に記載の触媒。
【請求項16】
ジルコニウム成分を除いた前記耐火性固体状担体が約350ppmwよりも少ないカルシウムを含む請求項15に記載の触媒。
【請求項17】
ジルコニウム成分及びカルシウム化合物を除いた前記耐火性固体状担体が約500ppmwよりも少ない、アルカリ土類金属酸化物として測定されたアルカリ土類金属を含む請求項14に記載の触媒。
【請求項18】
前記耐火性固体状担体がα−アルミナのインターロッキング小板を含む形態を有する請求項14に記載の触媒。
【請求項19】
前記耐火性固体状担体が、少なくとも約0.4m2/gの表面積、少なくとも約0.5cc/gの細孔体積及び約1〜25ミクロンの半数細孔直径を有する請求項1に記載の触媒。
【請求項20】
前記ジルコニウム成分が、担体の全重量基準で、約0.01〜10.0重量%のケイ酸ジルコニウムを含む請求項1に記載の触媒。
【請求項21】
前記ジルコニウム成分が、担体の全重量基準で、約0.1〜5.0重量%のケイ酸ジルコニウムを含む請求項20に記載の触媒。
【請求項22】
前記ジルコニウム成分が、担体の全重量基準で、約0.3〜3.0重量%のケイ酸ジルコニウムを含む請求項21に記載の触媒。
【請求項23】
アルケンの蒸気相エポキシ化によるアルキレンオキサイドの製造のための、請求項1〜22の何れか1項に記載の触媒の使用。
【請求項24】
前記アルキレンオキサイドがエチレンオキサイドである請求項23に記載の使用。

【公表番号】特表2007−508143(P2007−508143A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535563(P2006−535563)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/033219
【国際公開番号】WO2005/039757
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(591123001)ユニオン・カーバイド・ケミカルズ・アンド・プラスティックス・テクノロジー・コーポレイション (85)
【Fターム(参考)】