説明

アルキレンオキシド付加炭化水素アミドの改良製造方法

【課題】アルキレンオキシド付加炭化水素アミドを製造する方法において、アミン副生物含有量を2重量%以下にする方法を提供する。
【解決手段】アミン副生物含有量が2重量%以下のアルキレンオキシド付加炭化水素アミドを製造する下記の工程からなる方法:
a)C4〜C30の脂肪酸または脂肪酸の低級アルキルエステルをアンモニア、又はモノ或はジヒドロキシ炭化水素アミンと反応させて、炭化水素アミドを生成させる、
b)炭化水素アミドをアルキレンオキシドと反応させる、そして
c)工程b)の生成物を、水、酸性の水または無機塩を含む水またはそれらの混合物を用いて約5℃乃至95℃の温度で抽出して、アミン副生物含有量が2重量%以下のアルキレンオキシド付加炭化水素アミドを生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキレンオキシド付加炭化水素アミドを製造する方法に関する。特には、本発明は、アルキレンオキシド付加炭化水素アミドの製造方法からアミン副生物を低減してアミン副生物を2重量%以下にする方法を包含するものである。
【背景技術】
【0002】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドは、効力のある清浄性を示す。炭化水素燃料、例えばガソリンまたはディーゼル燃料の沸点範囲にある燃料におけるそれらの存在の有用性は、内燃機関の堆積物を防止し、オクタン要求値の増加を抑制し、更にはオクタン要求値を低減することでよく知られている。アルキレンオキシド付加炭化水素アミドを含む燃料を使用すると、車両の運転性が上がると考えられている。
【0003】
特許文献1には、炭化水素水と乳化剤を含む燃料であって、乳化剤が非イオン性乳化剤で、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドと炭素原子数9〜21のカルボン酸アミドとの付加物からなる燃料が開示されている。
【0004】
特許文献2には、ポリエーテルアルコール含有モノアミド化合物を添加剤として燃料組成物に使用すること、およびこれら化合物を使用して吸入弁堆積物を減少させ、オクタン要求値の増加を抑制し、更にはオクタン要求値を低減することが開示されている。
【0005】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドの製造は、当該分野の熟練者には熟知されている如何なる方法でも行うことができる。例えば、脂肪酸エステルをモノ又はジヒドロキシ炭化水素アミンと反応させて、まず中間反応生成物としてヒドロキシル化脂肪酸アミドを生じさせることにより始めてもよい。次に、中間体をエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドと更に反応させることにより、アルキレンオキシド付加炭化水素アミドを得ることができる。しかし、反応の過程で低分子量の副生物、特にアミン副生物、例えばプロポキシル化ジエタノールアミンなどのアルコキシル化アミンが生成して、アルキレンオキシド付加炭化水素アミドの特性とは正反対の不利益を与える。そのようなアミン副生物は、極性を持ち、塩基性で水溶性であり、その結果、燃料貯蔵タンクの水底および金属表面に蓄積する傾向がある。燃料タンクの水底は、多数の蓄積した化合物の隠れ場となることで悪名高い。適当な条件下では、ある種の低分子量アミンは存在するある種の別の化合物、例えば酸性腐食防止剤と反応して、おそらくは、ろ過器や流量計等のような分配系統内で潜在的に堆積物を形成しうる塩やガムが生成することがある。内燃機関内では、アミン副生物と燃料組成物中の他の添加剤成分との間で相互作用が生じることがあり、それがエンジン摩耗あるいはスラッジやワニスの蓄積を増加させるために、エンジン性能を更に悪化させうる。アルキレンオキシド付加炭化水素アミドの製造から生じたアミン副生物の除去は、これら物質が水性抽出液と乳濁液を形成する傾向があるために煩雑である。よって、アルキレンオキシド付加炭化水素アミドを含む添加剤パッケージからアミン副生物を最少にすることが強く望まれている。
【0006】
【特許文献1】米国特許第4297107号明細書、ボーンケ、1981年10月27日発行、
【特許文献2】米国特許第6312481号明細書、リン、外、2001年11月6日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、アルキレンオキシド付加炭化水素アミドの製造方法に関する。特には、本発明は、アルキレンオキシド付加炭化水素アミドの製造方法から、アミン副生物、特にプロポキシル化ジエタノールアミンなどのアルコキシル化アミンを低減して、アミン副生物含有量を2重量%以下にする方法を包含している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の方法は、下記の工程からなる:
a)C4〜C30の脂肪酸または脂肪酸の低級アルキルエステルを、アンモニア、またはモノあるいはジヒドロキシ炭化水素アミンと反応させて、炭化水素アミドを生成させる工程、
b)炭化水素アミドをアルキレンオキシドと反応させる工程、そして
c)工程b)の生成物を、水、酸性水または無機塩を含む水またはそれらの組合せを用いて約5℃乃至95℃の温度で抽出して、アミン副生物含有量が2重量%以下、好ましくは1.5重量%以下、より好ましくは1.0重量%以下としたアルキレンオキシド付加炭化水素アミドを生じさせる工程。
【0009】
別の態様では、本発明は、本発明の方法により製造された、アミン副生物含有量が2重量%以下のアルキレンオキシド付加炭化水素アミドに関する。
【発明の効果】
【0010】
数ある要因のうちでも、本発明は、本明細書に記載する独特な方法を用いることによって、アルキレンオキシド付加炭化水素アミドの製造からアミン副生物、例えばプロポキシル化ジエタノールアミンなどのアルコキシル化アミンを有効に低減して、アミン副生物含有量を2重量%以下にすることができるという発見に基づいている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上述したように、本発明は、アルキレンオキシド付加炭化水素アミドの製造方法に関する。特には、本発明は、アルキレンオキシド付加炭化水素アミドの製造方法から、アルコキシル化アミン、特にプロポキシル化ジエタノールアミンなどのアルコキシル化アミンを低減して、アミン副生物含有量を2重量%以下にする方法に関する。
【0012】
本発明について詳細に述べる前に、以下の用語は、特に断わらない限りは以下の意味を有する。
【0013】
[定義]
「アミノ」は、−NH2基を意味する。
【0014】
「炭化水素基」は、主として炭素と水素とからなる有機基を意味し、脂肪族、脂環式、芳香族またはそれらの組合せ、例えばアラルキルまたはアルカリールであってもよい。そのような炭化水素基は、脂肪族不飽和、すなわちオレフィン又はアセチレン不飽和を含んでいてもよいし、また少量のヘテロ原子、例えば酸素または窒素、または塩素などのハロゲンを含んでいてもよい。脂肪族カルボン酸と結合して用いられるなら、炭化水素基はオレフィン不飽和も含んでいる。
【0015】
「アルキル」は、直鎖および分枝鎖両方のアルキル基を意味する。
【0016】
「低級アルキル」は、炭素原子数1〜約6のアルキル基を意味し、第一級、第二級及び第三級アルキル基を包含する。代表的な低級アルキル基としては例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、およびn−ヘキシル等が挙げられる。
【0017】
「アルケニル」は、不飽和があるアルキル基を意味する。
【0018】
「アルキレンオキシド」は、下記式を有する化合物を意味する:
【0019】
【化1】

【0020】
(ただし、R1およびR2はそれぞれ独立に、水素または炭素原子数1〜約6の低級アルキルである。)
【0021】
[方法]
本発明のアルキレンオキシド付加炭化水素アミドの製造方法について、これより以下に記載する。
【0022】
本発明の第一工程は、下記構造を有する炭化水素アミドを製造することにある:
【0023】
【化2】

【0024】
(ただし、Rは、炭素原子数約3〜29、好ましくは約5〜23、より好ましくは約5〜19の炭化水素基であり、
R’は、炭素原子数約1〜10、好ましくは約2〜5、より好ましくは約2〜3の二価アルキレン基であり、そして
aは、0〜2の整数である。好ましくは、aは0である。)
【0025】
炭化水素アミドは一般に、脂肪酸または脂肪酸の低級アルキルエステルと、アンモニアまたはモノ又はジヒドロキシ炭化水素アミンとの反応生成物である。
【0026】
炭化水素基Rは、アルキルまたはアルケニルであることが好ましく、より好ましくはアルキルである。
【0027】
脂肪酸または脂肪酸の低級アルキルエステルの酸部は、RCO−(Rは上に定義した通りである)であることが好ましく、その代表としては、カプリル、カプロン、カプリン、ラウリン、ミリスチン、パルミチン、ステアリン、オレイン、リノール等がある。酸は飽和であることが好ましいが、不飽和の酸が存在していてもよい。
【0028】
酸部を保持する反応体は天然油であることが好ましい:ヤシ、ババスーヤシ、パーム核、パーム、オリーブ、ヒマシ、ピーナッツ、ナタネ、牛脂、豚脂、ラード油、鯨脂、ヒマワリ等。一般に、使用することができる油は数種類の酸部を含み、油の原料によってその数や種類が異なる。
【0029】
脂肪酸低級アルキルエステルの低級アルキル基は、脂肪酸の低級アルキルエステルから誘導することができる。低級アルキルエステルは、炭素原子数が好ましくは約1〜6、より好ましくは約1〜4、最も好ましくは約1〜2の低級アルキル基を有し、例えばメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、およびヘキシルエステルがある。好ましくは、低級アルキルエステルはメチルエステルである。
【0030】
酸部は、完全にエステル化した化合物もしくは完全にはエステル化していない化合物として供することができ、例えばグリセリルトリステアレート、グリセリルジラウレート、グリセリルモノオレエート等がある。ジオールおよびポリアルキレングリコールを含むポリオールのエステルも用いることができ、例えばマンニトール、ソルビトール、ペンタエリトリトール、ポリオキシエチレンポリオール等のエステルがある。
【0031】
アンモニア、または第一級又は第二級アミン窒素を持つモノ又はジヒドロキシ炭化水素アミンが反応して、本発明の炭化水素アミドを生成させることができる。一般に、モノ又はジヒドロキシ炭化水素アミンは、下記式により特徴付けることができる:
HN(R’OH)2-bb
(ただし、R’は前に定義した通りであり、そしてbは0または1である。)
【0032】
代表的なアミンとしては、これらに限定されるものではないが、エタノールアミン、ジエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ブタノールアミン等を挙げることができる。好ましくは、アミンは、エタノールアミン、ジエタノールアミン、プロパノールアミンおよびジプロパノールアミンからなる群より選ばれる。ジエタノールアミンが最も好ましい。
【0033】
反応は一般に、反応体を約100℃乃至200℃、好ましくは約120℃乃至155℃、より好ましくは約140℃乃至155℃で、1乃至約10時間、好ましくは約4時間維持することにより遂行することができる。溶媒中で、好ましくは生成物が使用されることになる最終組成物と混合性がある溶媒中で反応を行うことができる。反応を加速したり、反応温度を下げたり、またピペラジンなどの副生成物を最少にするために、カリウムまたはナトリウムメトキシドなどの塩基触媒も使用することができる。触媒は、使用したなら、反応の最後に、中和/水抽出、中和/沈殿およびろ過またはこれら二つの方法の混合を含む熟練者には知られた好適な技術によって取り除くことができる。
【0034】
本発明の実施に用いることができる代表的な反応生成物としては、下記の酸部を持つエステルとアルカノールアミンとから生成するものが挙げられる:
【0035】
表 1
───────────────────────
エステルの酸部 アミン
───────────────────────
ラウリン酸 プロパノールアミン
ラウリン酸 ジエタノールアミン
ラウリン酸 エタノールアミン
ラウリン酸 ジプロパノールアミン
パルミチン酸 ジエタノールアミン
パルミチン酸 エタノールアミン
ステアリン酸 ジエタノールアミン
ステアリン酸 エタノールアミン
───────────────────────
【0036】
その他の使用できるアルカノールアミンとの混合反応生成物は、次のような油の酸成分から生成させることができる:ヤシ、ババスーヤシ、パーム核、パーム、オリーブ、ヒマシ、ピーナッツ、ナタネ、牛脂、豚脂、鯨脂、トウモロコシ、タル、綿実等。
【0037】
本発明の好ましい一観点では、(i)脂肪酸の低級アルキルエステルと(ii)ジエタノールアミンとの反応により、所望の反応生成物を製造することができる。
【0038】
代表的な脂肪酸低級アルキルエステルとしては、低級アルキル基が炭素原子約1〜6個、好ましくは約1〜4個、より好ましくは約1〜2個を含む、脂肪酸の低級アルキルエステルが挙げられる。低級アルキルエステルはメチルエステルであることが好ましい。これらの酸は、式RCOOH(ただし、Rは、炭素原子約7〜15個、好ましくは約11〜13個、より好ましくは約11個を含むアルキル炭化水素基である)により特徴付けることができる。
【0039】
用いることができる脂肪酸低級アルキルエステルの代表的なものとしては、トリラウレート、トリステアレート、トリパルミテート、ジラウレート、モノステアレート、ジラウレート、テトラステアレート、トリラウレート、モノパルミテート、ペンタステアレート、モノステアレートがある。
【0040】
エステルとしては、酸部が次のような天然油により代表されるような混合物であるものを挙げることができる:ヤシ、ババスーヤシ、パーム核、パーム、オリーブ、ヒマシ、ピーナッツ、ナタネ、牛脂、豚脂(葉)、ラード油、鯨脂。
【0041】
好ましいエステルは、次のような酸部を含むヤシ油の低級アルキルエステルである:
【0042】
表 2
──────────────
脂肪酸部 重量%
──────────────
カプリル 8.0
カプリン 7.0
ラウリル 48.0
ミリスチン 17.5
パルミチン 8.2
ステアリン 2.0
オレイン 6.0
リノール 2.5
──────────────
【0043】
本発明に適した所望のアルキルアミドの例としては、これらに限定されるものではないが、オクチルアミド(カプリルアミド)、ノニルアミド、デシルアミド(カプリンアミド)、ウンデシルアミドドデシルアミド(ラウリルアミド)、トリデシルアミド、テトラデシルアミド(ミリスチルアミド)、ペンタデシルアミド、ヘキサデシルアミド(パルミチルアミド)、ヘプタデシルアミド、オクタデシルアミド(ステアリルアミド)、ノナデシルアミド、エイコシルアミド(アルキルアミド)、またはドコシルアミド(ベヘニルアミド)を挙げることができる。所望のアルケニルアミドの例としては、これらに限定されるものではないが、パルミトオレインアミド、オレイルアミド、イソオレイルアミド、エライジルアミド、リノリルアミド、リノレイルアミドを挙げることができる。アルキル又はアルケニルアミドは、ヤシ油脂肪酸アミドであることが好ましい。
【0044】
脂肪酸エステルとアルカノールアミンから炭化水素アミドを製造することについては、例えば米国特許第4729769号(シュリクト、外)に記載されていて、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0045】
この方法の第二工程では、第一工程で生成した中間体の炭化水素アミドにアルキレンオキシドを付加する。炭化水素アミドに付加するアルキレンオキシドは、炭素原子数約2〜5のアルキレン基から誘導する。アルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよびペンチレンオキシドからなる群より選ばれることが好ましい。エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドが特に好ましい。さらに、アルキレンオキシドの混合物も望ましく、例えばエチレンオキシドとプロピレンオキシドの混合物を使用して、本発明のアルキレンオキシド付加炭化水素アミドを生成させることができる。エチレンオキシドとプロピレンオキシドの混合物の場合には、それぞれのモル比を約1:5乃至5:1で使用することができる。
【0046】
炭化水素アミドに付加するアルキレンオキシドの所望のモル数は、炭化水素アミド1モル当りアルキレンオキシド約1乃至30モルの範囲にある。より好ましくは、約2乃至20モルの範囲が特に望ましい。最も好ましくは、炭化水素アミドモル当りアルキレンオキシドのモル範囲として、約2乃至10モルの範囲が最も好ましい。
【0047】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドは、ヤシ油脂肪酸アミドをエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドと反応させるアルキレンオキシド付加反応から誘導することが好ましい。しかし、本発明で燃料添加剤として使用できるアルキレンオキシド付加炭化水素アミドはまた、様々な種類および種々のモル数のアルキレンオキシドが様々な種類の炭化水素アミドに付加した混合生成物であってもよい。最も好ましくは、ヤシ油脂肪酸アミドをプロピレンオキシドと反応させるアルキレンオキシド付加反応から、アルキレンオキシド付加炭化水素アミドを誘導する。
【0048】
本発明の方法の最終工程は、アミン副生物含有量を低減することにある。上述した反応の過程では、前記の背景技術で述べたように燃料分配系統に悪影響を及ぼすような種々のアミン副生物が生成しうる。これらアミン副生物は、ジエタノールアミンまたはアルコキシル化ジエタノールアミンまたはそれらの混合物の形を取っていると考えられる。特に配慮すべきなのはプロポキシル化ジエタノールアミンである。アミン副生物は、水、酸性水または無機塩を含む水、またはそれらの混合物を用いた抽出により、有効に除去することができる。無機塩を含む水の無機塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、臭素、塩素、ヨウ素、酢酸、アンモニウムおよび硫酸塩の誘導体であることが好ましく、より好ましくはナトリウム、カリウム、塩素、アンモニウムおよび硫酸塩であり、そして最も好ましくは塩化ナトリウムである。この抽出操作は、酸性アルミナ、シリカゲルまたはケイ酸マグネシウム(商品名:フロリシル(Florisil)、マグネソル(Magnesol))などの酸性の固体担体に通すろ過を使用するよりもずっと効果がある。本発明の方法は、水、無機塩を含む水、またはそれらの組合せを用いた抽出を利用することが好ましい。抽出の有効性は、洗浄回数、洗浄毎に使用する抽出剤、すなわち水または無機塩を含む水の量、温度、抽出時間等により影響される。一般に、アルキレンオキシド付加炭化水素アミドは、水/塩化ナトリウム溶液を用いて、約5℃乃至95℃で、好ましくは約5℃乃至50℃で、より好ましくは約5℃乃至30℃の範囲の温度で、約10乃至120分の範囲の時間をかけて抽出される。この抽出工程後に得られる最終アルキレンオキシド付加炭化水素アミドは、アミン副生物の含有量が、特にプロポキシル化ジエタノールアミンなどのアルコキシル化アミンが、一般に2重量%以下で、好ましくは1.5重量%以下で、より好ましくは1.0重量%以下となる。
【0049】
[アルキレンオキシド付加炭化水素アミド]
本発明は更に、上述したように本発明の方法により製造された、炭化水素アミドモル当りアルキレンオキシドを約1乃至30モル、好ましくは約2乃至20モル、より好ましくは約2乃至10モル有し、アミン副生物含有量が2重量%以下のアルキレンオキシド付加炭化水素アミドにも関する。アミン副生物含有量が2重量%以下のアルキレンオキシド付加炭化水素アミドは、下記の構造を有する:
【0050】
【化3】

【0051】
(ただし、Rは、炭素原子数約3〜29、好ましくは約5〜23、より好ましくは約5〜19の炭化水素基であり、
R’は、炭素原子数約1〜10、好ましくは約2〜5、より好ましくは約2〜3の二価アルキレン基であり、
R”は、炭素原子数約2〜5、好ましくは約2〜3の二価アルキレン基であり、
cおよびdは独立に、0または1、好ましくは両方とも1であり、そして
eおよびfは独立に、約0〜20の整数であって、eとfの総和は約1〜40の範囲にある。)
【0052】
炭化水素基Rは、アルキルまたはアルケニルであることが好ましく、より好ましくはアルキルである。eおよびfは独立に約0〜15の整数であって、eとfの総和は約1〜30の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、eおよびfは独立に約0〜10の整数であって、eとfの総和は約1〜20の範囲にある。
【実施例】
【0053】
本発明について以下の実施例により更に説明するが、これらは特に有利な方法の態様を示すものである。実施例は、本発明を説明するために記されるのであって、本発明を限定しようとするものではない。
【0054】
[実施例1]
次の実施例では、本発明のアミン副生物含有量が2重量%以下のアルキレンオキシド付加炭化水素アミドの代表的な製造方法を説明する。
【0055】
1a)ココアミド−DEAの製造
機械的撹拌器と温度計を備えたフラスコに、メチルココエート、すなわちヤシ油のメチルエステル2000グラム(g)を、グリセロール0.05重量%以下と共に入れた。次いで、ジエタノールアミン(DEA)926gを加えた。混合物を約150℃で約4時間加熱した。反応時間の終わりに混合物を約95℃まで冷却し、そして約450mmHgの減圧下でストリップしてメタノールを除去した。生成物のDEA含有量は、2.0重量%以下であった。
【0056】
1b)プロポキシル化ココアミド−DEAの製造
代表的なプロポキシル化ココアミド−DEAの製造では、機械的撹拌器と温油冷却ジャケットを備えたオートクレーブに、実施例1aのココアミド−DEA2000gを充填する。次いで、水酸化カリウム37gを加える。オートクレーブを約120℃に加熱し、30mmHg以下の減圧にして生成した水を除去する。オートクレーブを窒素を用いて大気圧にした後、プロピレンオキシド1548gを約4時間かけて加える。プロピレンオキシドの充填が終了したのち約6時間で反応が完了する。オートクレーブを約95℃まで冷却し、そしてフロリシル、水およびろ過助剤で処理することにより触媒を取り除く。混合物をブフナーロートでろ過する。ガスクロマトグラフィーで測定すると、生成物は一般に、プロポキシル化−DEA(PO−DEA)を約2乃至25重量%含んでいる。
【0057】
[実施例2(水/NaClによる2回洗浄、トルエン、80℃)]
機械的撹拌器と温度計を備えたフラスコに、実施例1に記載した操作と同様にして製造したPO−DEA含有量が約23.2重量%のプロポキシル化ココアミド−DEA200g、およびトルエン110gを入れた。混合物に、約80℃の水200gおよび飽和塩化ナトリウム溶液26.8gを加えた。約80℃で30分間混合した後、混合を止めた。相を30分で分離させた。底部の水性相を取り除いた。有機相を水と飽和塩化ナトリウムでもう1回洗浄し、相分離させた。二回目の水性相を取り除いて、一回目の水性相と一緒にした。有機相を約95−100℃、<30mmHgの減圧下で30分間、あるいは有機相中のトルエンと水が全部除去されるまで、回転式で蒸発させた。ストリップした生成物を計量し、分析した。水性相中の水溶性部分も、液/液抽出器具を用いて酢酸エチルで抽出した。ガスクロマトグラフィーで測定したところ、PO−DEA含有量が約23.2重量%から約1.6重量%に効率良く減少した。
【0058】
[実施例3(水/NaClによる2回洗浄、20−30℃、溶媒無し)]
機械的撹拌器と温度計を備えたフラスコに、実施例1に記載した操作と同様にして製造したPO−DEA含有量が約23.2重量%のプロポキシル化ココアミド−DEA200g、水200g、および飽和塩化ナトリウム溶液26.8gを入れた。20−30℃で30分間混合した後、混合を止めた。相を30分で分離させた。底部の水性相を取り除いた。頂部の有機相を水と飽和塩化ナトリウムでもう1回洗浄し、相分離させた。有機相を約95−100℃、<30mmHgの減圧下で30分間、回転式で蒸発させた。ストリップした生成物を計量し、ガスクロマトグラフィーで分析した。PO−DEA含有量は、約23.2重量%から約1.4重量%に効率良く減少した。
【0059】
[実施例4(低PO−DEA含有量、NaCl無し、溶媒有り)]
NaClを使用しなかったこと以外は、実施例2に記載したようにして実施例4の操作を行った。PO−DEA2.8重量%を含むプロポキシル化ココアミド−DEAを水で洗浄した。しかし、水洗は溶媒を用いたが、NaClは用いないで行った。PO−DEA含有量は、2.8重量%から1.0重量%に効率良く減少した。
【0060】
[実施例5(低PO−DEA含有量、NaCl無し、溶媒無し)]
実施例2に記載したようにして実施例5の操作を行ったが、溶媒もNaClも使用しなかった。PO−DEA含有量は、2.8重量%から0.9重量%に効率良く減少した。
【0061】
[比較例A(ケイ酸マグネシウムによる除去)]
機械的撹拌器と温度計を備えたフラスコに、PO−DEA含有量が約2.8重量%のプロポキシル化ココアミド−DEA100グラム、ケイ酸マグネシウム(ダラス・カンパニーのマグネソルHMR-LS)15g、ろ過助剤(セライト503)1.5g、および水5gを入れた。95℃で2時間混合したのち混合を止め、そして生成物をろ過し、ガスクロマトグラフィーで分析した。PO−DEA含有量は、2.3重量%にしか減少しなかった。
【0062】
[比較例B(ケイ酸マグネシウムによる水無しでの除去)]
水を加えないで、比較例Aを繰り返した。PO−DEA含有量は、2.0重量%に減少した。
【0063】
[比較例C(ケイ酸マグネシウムによる低温、水無しでの除去)]
水を加えないで50℃で、比較例Aを繰り返した。PO−DEA含有量は、2.2重量%に減少した。
【0064】
[比較例D(シリカゲルによる除去)]
機械的撹拌器と温度計を備えたフラスコに、PO−DEA含有量が約2.8重量%のプロポキシル化ココアミド−DEA75g、シリカゲル11.3g、および水3.8gを入れた。95℃で2時間混合したのち混合を止め、そして生成物をろ過し、ガスクロマトグラフィーで分析した。PO−DEA含有量は、2.1重量%にしか減少しなかった。
【0065】
[比較例E(シリカゲルによる低温での除去)]
50℃で、比較例Dを繰り返した。PO−DEA含有量は、2.5重量%に減少した。
【0066】
[比較例F(シリカゲルによる低温、水なしでの除去)]
50℃で水を用いないで、比較例Dを繰り返した。PO−DEA含有量は、2.2重量%に減少した。
【0067】
[比較例G(酸性アルミナによる除去)]
機械的撹拌器と温度計を備えたフラスコに、PO−DEA含有量が約2.8重量%のプロポキシル化ココアミド−DEA75g、および酸性アルミナ(アルドリッチ・アクティベイテッド・ブロックマン1)11.3gを入れた。95℃で2時間混合したのち混合を止め、そして生成物をろ過し、ガスクロマトグラフィーで分析した。PO−DEA含有量は、2.2重量%にしか減少しなかった。
【0068】
[比較例H(酸性アルミナによる低温での除去)]
50℃で、比較例Gを繰り返した。PO−DEA含有量は、2.2重量%に減少した。
【0069】
[比較例I(オレイン酸による除去)]
フラスコに、プロポキシル化ジエタノールアミン(PO−DEA)含有量が約2.8重量%のプロポキシル化ココアミド−DEA50g、およびオレイン酸5.0gを入れた。混合物を100℃で1時間混合した。終了後、混合物をガスクロマトグラフィーで分析した。処理後のPO−DEA含有量は、2.7重量%であった。
【0070】
[比較例J(オレイン酸による低温での除去)]
50℃で、比較例Iを繰り返した。PO−DEA含有量は、2.5重量%に減少した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミン副生物含有量が2重量%以下のアルキレンオキシド付加炭化水素アミドを製造するための、下記の工程からなる方法:
a)C4〜C30の脂肪酸または脂肪酸の低級アルキルエステルを、アンモニアまたはモノあるいはジヒドロキシ炭化水素アミンと反応させて、炭化水素アミドを生成させる工程、
b)炭化水素アミドをアルキレンオキシドと反応させる工程、そして
c)工程b)の生成物を、水、酸性の水、または無機塩を含む水、またはそれらを組合せて用い、約5℃乃至95℃の温度で抽出して、アミン副生物含有量が2重量%以下のアルキレンオキシド付加炭化水素アミドを得る工程。
【請求項2】
脂肪酸がC6〜C24の脂肪酸である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脂肪酸がC6〜C20の脂肪酸である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
脂肪酸がヤシ油脂肪酸である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
脂肪酸低級アルキルエステルの低級アルキル基が炭素原子数約1〜6である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
脂肪酸低級アルキルエステルの低級アルキル基が炭素原子数約1〜4である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
脂肪酸の低級アルキルエステルの低級アルキル基が炭素原子数約1〜2である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
低級アルキルエステルがメチルエステルである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
モノ或はジヒドロキシ炭化水素アミンが、エタノールアミン、ジエタノールアミン、プロパノールアミンおよびジプロパノールアミンからなる群より選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
炭化水素アミンがジヒドロキシ炭化水素アミンである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ジヒドロキシアミン炭化水素アミンがジエタノールアミンである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
炭化水素アミドがヤシ油脂肪酸アミドである請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ヤシ油脂肪酸アミドが、ヤシ油脂肪酸またはその低級アルキルエステルとジエタノールアミンとの反応により得られるものである請求項12に記載の方法。
【請求項14】
アルキレンオキシドが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ペンチレンオキシド、およびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項15】
アルキレンオキシドが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
アルキレンオキシドがプロピレンオキシドである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、炭化水素アミド1モル当りアルキレンオキシド約1乃至30モルを有する請求項1に記載の方法。
【請求項18】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、炭化水素アミド1モル当りアルキレンオキシド約2乃至20モルを有する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、炭化水素アミド1モル当りアルキレンオキシド約2乃至10モルを有する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、ヤシ油脂肪酸アミドとエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドとの反応から誘導されたものである請求項1に記載の方法。
【請求項21】
工程b)の生成物を抽出する温度が約5℃乃至50℃である請求項1に記載の方法。
【請求項22】
工程b)の生成物を抽出する温度が約5℃乃至30℃である請求項1に記載の方法。
【請求項23】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、アミン副生物を1.5重量%以下で含む請求項1に記載の方法。
【請求項24】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、アミン副生物を1.0重量%以下で含む請求項1に記載の方法。
【請求項25】
アミン副生物が、ジエタノールアミン、アルコキシル化ジエタノールアミンまたはそれらの混合物であってもよい請求項1に記載の方法。
【請求項26】
アルコキシル化ジエタノールアミンがプロポキシル化ジエタノールアミンである請求項25に記載の方法。
【請求項27】
下記の工程からなる方法により製造された生成物:
a)C4〜C30の脂肪酸または脂肪酸の低級アルキルエステルをモノ又はジヒドロキシ炭化水素アミンと反応させて、炭化水素アミドを生成させる工程、
b)炭化水素アミドをアルキレンオキシドと反応させる工程、そして
c)工程b)の生成物を、水、酸性の水、または無機塩を含む水、またはそれらの組合せを用いて約5℃乃至95℃の温度で抽出して、アミン副生物含有量が2重量%以下のアルキレンオキシド付加炭化水素アミドを生じさせる工程。
【請求項28】
脂肪酸がC6〜C24の脂肪酸である請求項27に記載の方法により製造された生成物。
【請求項29】
脂肪酸がC6〜C20の脂肪酸である請求項27に記載の方法により製造された生成物。
【請求項30】
脂肪酸がヤシ油脂肪酸である請求項29に記載の方法により製造された生成物。
【請求項31】
脂肪酸低級アルキルエステルの低級アルキル基が炭素原子数約1〜6である請求項27に記載の方法により製造された生成物。
【請求項32】
脂肪酸低級アルキルエステルの低級アルキル基が炭素原子数約1〜4である請求項31に記載の方法により製造された生成物。
【請求項33】
脂肪酸低級アルキルエステルの低級アルキル基が炭素原子数約1〜2である請求項32に記載の方法により製造された生成物。
【請求項34】
低級アルキルエステルがメチルエステルである請求項33に記載の方法により製造された生成物。
【請求項35】
モノ又はジヒドロキシ炭化水素アミンが、エタノールアミン、ジエタノールアミン、プロパノールアミンおよびジプロパノールアミンからなる群より選ばれる請求項27に記載の方法により製造された生成物。
【請求項36】
炭化水素アミンがジヒドロキシ炭化水素アミンである請求項35に記載の方法により製造された生成物。
【請求項37】
ジヒドロキシ炭化水素アミンがジエタノールアミンである請求項36に記載の方法により製造された生成物。
【請求項38】
炭化水素アミドがヤシ油脂肪酸アミドである請求項27に記載の方法により製造された生成物。
【請求項39】
ヤシ油脂肪酸アミドが、ヤシ油脂肪酸またはその低級アルキルエステルとジエタノールアミンとの反応により得られたものである請求項38に記載の方法により製造された生成物。
【請求項40】
アルキレンオキシドが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ペンチレンオキシド、およびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項27に記載の方法により製造された生成物。
【請求項41】
アルキレンオキシドが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項40に記載の方法により製造された生成物。
【請求項42】
アルキレンオキシドがプロピレンオキシドである請求項41に記載の方法により製造された生成物。
【請求項43】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、炭化水素アミド1モル当りアルキレンオキシド約1乃至30モルを有する請求項27に記載の方法により製造された生成物。
【請求項44】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、炭化水素アミド1モル当りアルキレンオキシド約2乃至20モルを有する請求項43に記載の方法により製造された生成物。
【請求項45】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、炭化水素アミド1モル当りアルキレンオキシド約2乃至10モルを有する請求項44に記載の方法により製造された生成物。
【請求項46】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、ヤシ油脂肪酸アミドとエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドとの反応から誘導されたものである請求項27に記載の方法により製造された生成物。
【請求項47】
工程b)の生成物を抽出する温度が約5℃乃至50℃である請求項27に記載の方法により製造された生成物。
【請求項48】
工程b)の生成物を抽出する温度が約5℃乃至30℃である請求項27に記載の方法により製造された生成物。
【請求項49】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、アミン副生物含有量が1.5重量%以下である請求項27に記載の方法により製造された生成物。
【請求項50】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、アミン副生物含有量が1.0重量%以下である請求項27に記載の方法により製造された生成物。
【請求項51】
アミン副生物が、ジエタノールアミン、アルコキシル化ジエタノールアミンまたはそれらの混合物である請求項27に記載の方法により製造された生成物。
【請求項52】
アルコキシル化ジエタノールアミンがプロポキシル化ジエタノールアミンである請求項51に記載の方法により製造された生成物。

【公開番号】特開2006−143728(P2006−143728A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334823(P2005−334823)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】