説明

アルギナーゼの部位指定的ペグ化並びにその抗がん剤及び抗ウイルス剤としての使用

モノペグ化アルギナーゼコンジュゲート及びその生産方法。モノペグ化アルギナーゼは分子量が均一で、がん及びウイルス感染症を治療する治療的効果を示す。かかるアルギナーゼコンジュゲートを生産する方法は、アルギナーゼをコードする遺伝子を遺伝子改変して、PEG部分が予め決められた特異的な意図された部位において酵素に付加できるようにする主ステップを有する。これは酵素の望ましくない部位におけるPEG付加アミノ酸残基を除去する一方で、酵素の所望の部位におけるそれを維持する(又は必要ならば追加する)ことにより達成される。このようにして生産される例示的なモノペグ化アルギナーゼコンジュゲートの2つは、ポリエチレングリコール(PEG)部分が酵素のCys45に部位特異的に共有結合したヒトアルギナーゼI(HAI)及びポリエチレングリコール(PEG)部分が酵素のCys161に部位特異的に共有結合したバチルス・カルドベロックスアルギナーゼ(BCA)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2009年3月26日に出願された米国特許仮出願番号第61/163,863号からの利益を主張するものであり、その内容は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明はアルギナーゼの修飾に関し、酵素の血清又は循環時の半減期を増加させて、その薬物動態学的特性、生体内での生物学的活性、安定性を改善し、生体内での酵素に対する免疫反応(免疫原性)を低減することを目的とする。より具体的には、本発明は酵素をコードする遺伝子を遺伝子改変することを通じたモノポリエチレングリコールのアルギナーゼへの部位特異的な共有結合的コンジュゲーションにより、モノの、部位特異的なペグ化アルギナーゼを生産することに関し、これは例えば、様々ながん及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症などの数種のアルギニン依存性疾患についての有効な手段となるものである。
【背景技術】
【0003】
アルギナーゼ
アルギナーゼは金属活性化型の水酸化物イオンを含有するマンガン金属酵素であり、この水酸化物イオンは加水分解又は水和反応を触媒する金属酵素での重要な求核体である。アルギナーゼは自然に存在するアルギニンをオルニチン及び尿素へと変換する。この酵素は細菌及びヒトを包含する多くの生きている生物中に存在する(Jenkinson他、1996年、Comp Biochem Physiol B Biochem Mol Biol、114:107〜32頁)。
【0004】
アルギナーゼのペグ化
アルギナーゼは治療薬として用いられ、様々な適応症のために非経口的に投与され得る。しかしながら非経口的に投与されたアルギナーゼはタンパク質であり、免疫原性があって薬理学的半減期は短いものであり得る。その結果として、患者の中でタンパク質を治療的に有用な血中レベルに達させるのは難しいことがある。これらの問題はタンパク質をポリエチレングリコール(PEG)などのポリマーにコンジュゲートすることにより克服し得る。
【0005】
不活性な、非毒性の、生分解性ポリマーであるPEGの分子への共有結合的付加はバイオテクノロジー及び医学の中で重要な用途を有する。生物学的及び薬学的に活性のあるタンパク質のペグ化は薬物動態を改善して持続時間の維持をもたらし、安全性を改善し(毒性、免疫原性及び抗原性を低下させる等)、有効性を増加させ、投薬頻度を減少させ、薬剤の溶解性及び安定性を改善し、タンパク質分解を低減し、及び調節された薬剤放出を促進することが報告されている(Roberts他、2002年、Adv Drug Deliv Rev、54:459〜76頁;Harris&Chess、2003年、Nat Rev Drug Discov、2:214〜221頁)。
【0006】
当該技術分野の従来法により生産されたPEG−タンパク質コンジュゲートは不均一な種を含有するが、これらの各々に可変数のPEG分子が付加されており、その数は0からタンパク質が有するアミノ基数までの範囲にわたる。同数のPEG分子が付加された種であったとしても、タンパク質上の付加部位は種ごとに変わり得る。かかる非特異的なペグ化はしかしながら、部分的に又は実質的に不活性なコンジュゲートをもたらすことがある。活性の低減は、PEGが不適当な部位に付加されたときにタンパク質の活性受容体結合ドメインが遮蔽されることによるものであり得る。したがって、元のタンパク質の活性を保持する、均一にペグ化されたタンパク質分子を生産し、臨床での使用に必要な正確で一致した用量の投与を可能にする、より良い方法への明確な需要がある。
【0007】
アミノ酸欠如を通じたがん治療
アミノ酸欠如治療はいくらかのがんの治療に有効な手段である。正常細胞はアルギニンを要求しないが、多くのがん細胞系はこのアミノ酸に対して栄養要求性がある。多種の証拠は、アルギニン分解酵素による又はアルギニン欠乏培地を用いる試験管内でのアルギニン枯渇が広い範囲のがん細胞の迅速な破壊を導くことを示している(Scott他、2000年、Br J Cancer、83:800〜10頁)。しかしタンパク質である酵素の直接的な使用は免疫原性、抗原性及び短い循環半減期の問題がある。
【0008】
アルギニン欠如によるウイルス阻害
ウイルス感染症は毎年数百万人にも上る死亡の主たる原因の1つで、肝炎ウイルス及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)を包含するいくつかのウイルスに直接的に起因し得るものである。しかしながら、現在の抗ウイルス治療にはいくつかの問題がある。第一に、有効な抗ウイルス薬は比較的少ない。現存する抗ウイルス薬の多くは有害な又は望ましくない副作用を引き起こす。最も有効な治療(ワクチン接種など)は単一のウイルス株のみに対して高度に特異的である。しばしばウイルスは薬剤又はワクチンのいずれかに対して耐性となるように変異を起こす。従来技術に関連した問題を持たないウイルス複製を阻害する方法への需要がある。
【0009】
過去30年間にわたる多くの研究は、細胞外のアルギニンが試験管内でのウイルス複製に必要とされることを実証した。歴史的にこれはアルギニンを欠乏した組織培養培地を作製して、アルギニンを含まない培地を達成するための添加物として用いられる血清を透析することにより成し遂げられた。アルギニン欠如を達成するこの方法論を用いることは、アデノウイルス(Rouse他、1963年、Virology、20:357〜365頁)、ヘルペスウイルス(Tankersley、1964年、J Bacteriol、87:609〜13頁)を包含する多様なウイルスファミリーの多くについて複製阻害をもたらした。
【0010】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
後天性免疫不全症候群(AIDS)は致命的な疾病であり、その報告症例は過去数年の間で劇的に増加した。AIDSウイルスは1983年に初めて同定された。AIDSウイルスはいくつかの名称及び頭字語により知られている。AIDSウイルスは三番目に公知になったT−リンパ指向性のウイルス(HTLV−III)で、免疫系の細胞内で複製する能力を有し、重度の細胞破壊を引き起こす。AIDSウイルスはレトロウイルスで、複製の際に逆転写酵素を用いるウイルスである。2つの別個のHIVファミリー、即ちHIV−1及びHIV−2が今までに記述されている。本明細書の中で頭字語“HIV”はヒト免疫不全ウイルスを一般的に呼ぶのに用いられる。HIV複製はアルギニン依存的と思われており、したがってアルギニンの枯渇はHIV複製を阻害する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの目的は、実質的に均一な、アルギナーゼ分子の特異的部位に共有結合したPEG部分を有する、新規のPEG−アルギナーゼコンジュゲートを提供することである。本発明の好ましい実施形態の2つは、Cys45−ヒトアルギナーゼI(HAI)及びCys161−バチルス・カルドベロックス(Bacillus caldovelox)アルギナーゼ(BCA)である。
【0012】
本発明の別の目的は、部位指定的な、モノペグ化アルギナーゼコンジュゲートを生産する方法を提供することであり、このコンジュゲートは強力な抗がん及び抗ウイルス効果を有する。本発明の特定の実施形態の1つは、3つの一般的なステップを含む。第一のステップは、アルギナーゼをコードする遺伝子を遺伝子改変することで、結果として得られるアルギナーゼが所定の位置において単一の遊離システイン残基を有するようにすることである。第二のステップは、改変された遺伝子を選択された系の中で発現させて所望のアルギナーゼを生産することである。発現系はヒト細胞若しくは組織、又は例えば細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞若しくはトランスジェニック動物を包含する他の生物であり得る。第三のステップはアルギナーゼの遊離システイン残基とPEG化合物のマレイミド基(MAL)との間のコンジュゲーションであり、PEG化合物とアルギナーゼの遊離システインとの間の共有結合をもたらす。
【0013】
本発明の別の目的は、アルギニン枯渇を通じてウイルス感染症を治療する方法を提供することである。この治療方法は均一なモノペグ化アルギナーゼをウイルスの複製阻害に利用する。
【0014】
本発明の別の目的は、抗ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の方法を提供することである。この方法は均一なモノペグ化アルギナーゼをHIVの複製阻害に利用する。
【0015】
本発明の別の目的は、バチルス・カルドベロックスアルギナーゼの20位におけるバリン(又はHAI及び他のアルギナーゼ中の相当位置)を別のアミノ酸残基、例えばプロリンで置換することにより、アルギナーゼの酵素活性を増強する方法を提供することである。
【0016】
本発明のなお別の目的は、アルギナーゼの酵素活性を増強する方法を提供することであり、これは野生型の金属補因子であるマンガンをコバルトで置換することにより達成される。
【0017】
本発明を特徴付ける様々な新しい特徴は、本明細書に添付され、その一部を形成する特許請求の範囲の中で詳細に説明されている。本発明、その操作上の利点及びその使用により達成される特定の目的をより良く理解するため、本発明の好ましい実施形態が図示され記述される図面及び以下の記載を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1a】ヒトアルギナーゼIのヌクレオチド配列(配列番号1)を示す図である。
【図1b】本発明による部位指定的なペグ化のためにデザインされたヒトアルギナーゼIの変異ヌクレオチド配列(配列番号2)を示す図である。
【図1c】本発明によるバチルス・カルドベロックスアルギナーゼのヌクレオチド配列(配列番号3)を示す図である。
【図1d】本発明による部位指定的なペグ化のためにデザインされたバチルス・カルドベロックスアルギナーゼの変異ヌクレオチド配列(配列番号4)を示す図である。
【0019】
【図2a】ヒトアルギナーゼIのアミノ酸配列(配列番号5)を示す図である。
【図2b】本発明によるCys45部位指定的なペグ化のためにデザインされたヒトアルギナーゼIの改変アミノ酸配列(配列番号6)を示す図である。
【図2c】バチルス・カルドベロックスアルギナーゼのアミノ酸配列(配列番号7)を示す図である。
【図2d】本発明によるCys161部位指定的なペグ化のためにデザインされたバチルス・カルドベロックスアルギナーゼの改変アミノ酸配列(配列番号8)を示す図である。
【0020】
【図3a】Cys45部位指定的なペグ化のためにデザインされたヒトアルギナーゼI変異体(C168S/C303S)のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列(配列番号9及び10)を示す図である。
【図3b】Cys45部位指定的なペグ化のためにデザインされた6×Hisタグ付加ヒトアルギナーゼI変異体(C168S/C303S)のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列(配列番号11及び12)の配列比較を示す図である。
【図3c】Cys161部位指定的なペグ化のためにデザインされたバチルス・カルドベロックスアルギナーゼ変異体(S161C)のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列(配列番号13及び14)を示す図である。
【図3d】Cys161部位指定的なペグ化のためにデザインされた6×Hisタグ付加バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ変異体(S161C)のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列(配列番号15及び16)の配列比較を示す図である。
【0021】
【図4a】野生型ヒトアルギナーゼIの結晶構造(NCBIウェブサイトからCn3D 4.1ソフトウェアを用いてダウンロードされた)を示す図であり、Cys45は活性部位から離れていることを示している。
【図4b】野生型バチルス・カルドベロックスアルギナーゼの結晶構造を示す図であり、Ser161は活性部位から離れていることを示す。
【0022】
【図5a】6×Hisタグ付加ヒトアルギナーゼI変異体の単一鎖mPEG−マレイミド(20kDa)でのCys45特異的なモノペグ化についてのコンジュゲーション手順を示す図であり、マレイミドの二重結合がスルフヒドリル基とアルキル化反応を起こして、安定なチオエーテル結合を形成することを示している。
【図5b】6×Hisタグ付加バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ変異体のCys161特異的なモノペグ化についての対応する手順を示す。
【0023】
【図6a1】アルギナーゼ遺伝子を含有する大腸菌(E.coli)BL21−DE3による2リットル発酵槽中での発酵の時間経過を表す、回分発酵から得られた結果を示す図である。
【図6a2】アルギナーゼ遺伝子を含有する大腸菌(E.coli)BL21−DE3による2リットル発酵槽中での発酵の時間経過を表す、流加回分発酵から得られた結果を示す図である。
【図6b1】回分発酵の履歴プロットを示す図であり、温度、撹拌速度、pH、溶存酸素値などのパラメーターの変化を示す。
【図6b2】流加回分発酵の履歴プロットを示す図であり、温度、撹拌速度、pH、溶存酸素値などのパラメーターの変化を示す。
【図6c】6×Hisタグ付加ヒトアルギナーゼI変異体のキレート化FFセファロースカラムからの溶出プロファイルを示す図であり、最初のピークはタンパク質の不純物、2番目のピークは精製されたヒトアルギナーゼIである。
【図6d】6×Hisタグ付加バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ変異体のキレート化FFセファロースカラムからの溶出プロファイルを示す図であり、最初のピークはタンパク質の不純物、2番目のピークは精製されたバチルス・カルドベロックスアルギナーゼである。
【0024】
【図7a】6×Hisタグ付加ヒトアルギナーゼI変異体に関係した異なる画分のSDS−PAGE分析を示す図である。
【図7b】6×Hisタグ付加バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ変異体に関係した異なる画分のSDS−PAGE分析を示す図である。
【0025】
【図8a】ペグ化されていないヒトアルギナーゼI変異体及びCys45ペグ化ヒトアルギナーゼI変異体のSDS−PAGE分析を示す図である(レーン1:タンパク質分子量マーカー、レーン2:ペグ化されていないヒトアルギナーゼI変異体、レーン3:Cys45ペグ化ヒトアルギナーゼI(HAI−PEG20))。
【図8b】ペグ化されていないバチルス・カルドベロックスアルギナーゼ変異体及びCys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼのSDS−PAGE分析を示す図である(レーン1:タンパク質分子量マーカー、レーン2:ペグ化されていないバチルス・カルドベロックスアルギナーゼ変異体、レーン3:Cys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ(BCA−PEG20))。
【0026】
【図9a】BALB/cマウスに腹腔内注入された単一用量のペグ化されていない及びCys45ペグ化ヒトアルギナーゼI(HAI−PEG20)の薬物動態学的プロファイルを示す図である。
【図9b】BALB/cマウスに腹腔内注入された単一用量のペグ化されていない及びCys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ(BCA−PEG20)の薬物動態学的プロファイルを示す図である。
【0027】
【図10a】BALB/cマウスに腹腔内注入された単一用量のCys45ペグ化ヒトアルギナーゼI(HAI−PEG20)の14日目までの薬力学的プロファイルを示す図である。
【図10b】BALB/cマウスに腹腔内注入された単一用量のCys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ(BCA−PEG20)の14日目までの薬力学的プロファイルを示す図である。
【0028】
【図11a】異なる薬剤を注入された、Hep3Bヒト肝臓がん細胞を異種移植されたBALB/cヌードマウスの試験期間中の平均体重(±s.e.m.)を示す図である。
【図11b】Cys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼを注入された、MCF−7ヒト乳がん細胞を異種移植されたBALB/cヌードマウスの試験期間中の平均体重(±s.e.m.)を示す図である。
【図11c】異なる薬剤を注入された、A549肺がん細胞を異種移植されたBALB/cヌードマウスの試験期間中の平均体重(±s.e.m.)を示す図である。
【図11d】異なる薬剤を注入された、HCT−15結腸直腸がん細胞を異種移植されたBALB/cヌードマウスの試験期間中の平均体重(±s.e.m.)を示す図である。
【0029】
【図12a】Hep3Bヒト肝臓腫瘍細胞を皮下に移植されたBALB/cヌードマウスでのペグ化されていない及びCys45ペグ化ヒトアルギナーゼI(HAI−PEG20)の生体内での活性(効力)を示す図である。
【図12b】MCF−7ヒト乳がん細胞を皮下に異種移植されたBALB/cヌードマウスでのCys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ(BCA−PEG20)の生体内での活性を示す図である。
【図12c】A549肺がんの異種移植を皮下に有するBALB/cヌードマウスでのCys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼの生体内での効力を示す図である。
【図12d】A549肺がんの異種移植を皮下に有するBALB/cヌードマウスでのCys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼの生体内での効力を示す図である(データは腫瘍体積増加倍率の平均値±s.e.mで表される)。
【図12e】HCT−15結腸直腸がんの異種移植を皮下に有するBALB/cヌードマウスでのCys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼの生体内での効力を示す図である。
【図12f】HCT−15結腸直腸がんの異種移植を皮下に有するBALB/cヌードマウスでのCys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼの生体内での効力を示す図である(データは腫瘍体積増加倍率の平均値±s.e.mで表される)。
【0030】
【図13】Cys45ペグ化ヒトアルギナーゼI(HAI−PEG20)についてのHIV阻害アッセイを示す図である。
【0031】
【図14】アジドチミジン(AZT)についてのHIV阻害アッセイを示す図である。
【0032】
【図15】Cys45ペグ化ヒトアルギナーゼI(HAI−PEG20)の細胞毒性を示す図である。
【0033】
【図16】異なる金属補因子、即ちMn2+及びCo2+を伴うヒトアルギナーゼIの定常状態反応速度の比較を示す図である。
【0034】
【図17】バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ(BCA)のV20P変異体及びMn2+(BCAWTMn2+)又はCo2+で置き換えた野生型BCAの定常状態反応速度の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
ヒトアルギナーゼI遺伝子(HAI)のクローニング
ヒトアルギナーゼIの遺伝子配列は図1a(配列番号1)に示される。6×Hisタグ付加ヒトアルギナーゼI(HAI)の遺伝子はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりpAED4/HAIプラスミドから生成され、以下のオリゴヌクレオチドを用いることで5’末端においてNdeI認識部位、3’末端においてBamHI認識部位が生成された。
【化1】


PCR産物はNdeI及びBamHIで切断され、pET3a発現プラスミドベクター(Strategene)中にサブクローニングされた。
【0036】
pET3a大腸菌発現プラスミドベクターはT7プロモーターを含有する。T7プロモーターは遺伝子10のリーダー断片の上流に位置する。正確な配列はヒトアルギナーゼIの全コード領域(図1a)をDNA塩基配列決定することで確認された。このプラスミドはpET3a/HAIと呼ばれる。
【0037】
バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ遺伝子(BCA)のクローニング
バチルス・カルドベロックスアルギナーゼの遺伝子配列は図1c(配列番号3)に示される。6×Hisタグ付加バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ(BCA)の遺伝子はpUC57/BCAプラスミドからNdeI及びBamHI制限酵素を用いて切り出された。挿入断片はpET3a発現プラスミドベクター(Strategene)中にサブクローニングされた。
【0038】
正確な配列はバチルス・カルドベロックスアルギナーゼの全コード領域(図1c)を塩基配列決定することで確認された。このプラスミドはpET3a/BCAと呼ばれる。
【0039】
HAIの変異誘発
プラスミドpET3a/HAIはQuikChange(登録商標) site−directed mutagenesisキット(Strategene)に従って部位指定的な変異誘発のための鋳型として用いられた。Cys168及びCys303残基に対するコドンは、以下の変異誘発プライマー(それぞれ配列番号19、20、21及び22)を用いることでそれぞれSer168及びSer303に対するコドンに変異した。
Ser168に対するコドンに変異するCys168に対するコドン
【化2】


Ser303に対するコドンに変異するCys303に対するコドン
【化3】

【0040】
変異プラスミドは最初にコンピテント大腸菌のTop10細胞中に形質転換された。変異プラスミドの配列はDNA塩基配列決定により確認された。部位指定的なペグ化のためにデザインされたHAI変異体の遺伝子配列は図1b(配列番号2)に示される。変異プラスミドは次いでタンパク質発現のため、大腸菌BL21−DE3細胞中に形質転換された。野生型HAIのアミノ酸配列は図2a(配列番号5)に示される。C168S/C303S変異体のアミノ酸配列は図2b(配列番号6)、図3a(配列番号10)及び図3b(配列番号12)に示される。図2bに示されるように、ヒトアルギナーゼIの中の2つのシステイン残基はセリン残基により置換された。これら2つのセリン残基は下線を引かれている。唯一存在するCysはCys45である。この変異体はC168S/C303Sと称され、ただ1つの単一のCys残基(これも下線を引かれている)のみを含有する。野生型HAIの結晶構造は図4aに示される。この構造に基づいて、C168S/C303S変異体を構築するための合理的なタンパク質薬剤デザインが作製された。図2dでは、バチルス・カルドベロックスアルギナーゼの中の1つのセリン残基がシステイン残基に置き換えられたことを示す。このシステイン残基は下線を引かれている。6×Hisタグ領域もまた下線を引かれており、C末端に配置されている。この変異体はS161Cと称される。
【0041】
6×Hisタグ付加アルギナーゼの発現及び精製
6×Hisタグ付加ヒトアルギナーゼIをコードする変異アルギナーゼ遺伝子を含有するプラスミドを内部に有する大腸菌BL21−DE3は37℃で一晩、80μg/mLのアンピシリンを含有するLB培地中で培養された。接種菌液は1:25に希釈されてOD600が約0.8になるまで振とうフラスコ中で培養されるか、又は接種菌液は1:10に希釈されてOD600が約15になるまで発酵槽中で培養された。細胞は次いで0.4mMのIPTGで4時間誘導された。細菌細胞は遠心分離により回収され、50mM Tris、0.1M NaCl、10mM MnCl、pH7.4中に再懸濁され、高圧ホモゲナイゼーションにより破砕された。
【0042】
6×Hisタグ付加ヒトアルギナーゼIはバッファーA(0.02Mリン酸ナトリウム、0.5M NaCl、pH7.4)で平衡化されたキレート化FFセファロース(GE Healthcare)カラム(5.0cm×9cm、総容積176mL)により精製された。6×Hisタグ付加アルギナーゼは0.15から0.25M勾配のイミダゾールで溶出された(図6a及び図6b)。流速は20mL/分であった。精製されたアルギナーゼを含有する画分(図7a及び図7b)が回収された。精製されたアルギナーゼの収率はおよそ280mg/L細胞培養であった。
【0043】
上述の6×Hisタグ付加ヒトアルギナーゼIの場合の手法と全く同じ手法が、精製された6×Hisタグ付加バチルス・カルドベロックスアルギナーゼを得るために繰り返された。
【0044】
6×Hisタグ付加アルギナーゼの部位指定的なペグ化
図5aは6×Hisタグ付加ヒトアルギナーゼI変異体の単一鎖mPEG−マレイミド(20kDa)でのCys45特異的なモノペグ化についてのコンジュゲーション手順を示し、これは“HAI−PEG20”と呼ばれる。マレイミドの二重結合はスルフヒドリル基とアルキル化反応を起こして、安定なチオエーテル結合を形成する。図5bは6×Hisタグ付加バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ変異体の単一鎖mPEG−マレイミド(20kDa)でのCys161特異的なモノペグ化についてのコンジュゲーション手順を示し、これは“BCA−PEG20”と呼ばれる。6×Hisタグ付加アルギナーゼ1gは0.02Mリン酸ナトリウム、0.5M NaCl、pH7.4中で、Millipore Tangential Flow Filtrationシステム(500mL)を用いて10K(カットオフ)膜(Millipore)により透析濾過された。アルギナーゼ濃度は最終的に約2mg/mLに希釈された。還元剤のトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン、TCEPが1モルのアルギナーゼに対してモル量で10モル超、還元のために添加され、溶液は室温で4時間、穏やかに撹拌された。1モルのアルギナーゼに対してモル量で20モル超のmPEG−マレイミド又はmPEG−MAL(20kDa)(Sunbright)が還元されたアルギナーゼに対して添加され、4℃で一晩撹拌された。
【0045】
部位指定的なペグ化の進捗はSDS−PAGE(図8a及び図8b)によりモニターされた。上述の条件下で、ヒトアルギナーゼI上の45位におけるシステインの遊離スルフヒドリル基は安定なチオエーテル結合を通じてmPEG−MAL(20kDa)の活性化されたマレイミド基に特異的に連結された。コンジュゲーションの最終産物は主にCys45ペグ化ヒトアルギナーゼI、コンジュゲートされていないヒトアルギナーゼI及びmPEG−MAL(20kDa)を含む。同様にバチルス・カルドベロックスアルギナーゼについて、161位のシステイン残基が安定なチオエーテル結合を通じてmPEG−MAL(20kDa)の活性化されたマレイミド基に特異的に連結された。
【0046】
mPEG−MAL(20kDa)ペグ化アルギナーゼはmPEG−MAL(5kDa)ペグ化アルギナーゼに対して半減期が長い点で有利であり、mPEG−MAL(40kDa)ペグ化アルギナーゼに対して溶解性が良い点で有利である。
【0047】
2リットル発酵槽中での回分発酵
アルギナーゼ遺伝子を含有する大腸菌BL21−DE3株は−80℃で保存された。回分発酵及び流加回分発酵のための種菌液を調製するため、前述の株の凍結ストック100μLが80mLの発酵培地を含有する250mLフラスコ中に移された。細菌培養液は37℃、pH7.0でオービタルシェーカーの中で回転数250rpmで培養された。培養はOD600nmが5.5〜6.0に達したおよそ8〜10時間時で停止された。種菌液12mL(1%)は1200mLのオートクレーブされた強化発酵培地を含有する2L発酵槽中に導入された。回分発酵は温度37℃で行われた。pHは水酸化ナトリウム及び塩酸を添加することにより7.0に維持された。溶存酸素レベルは空気を1〜4L/分で導入すること及び発酵槽の撹拌速度を300〜1200rpmに調整することにより、30%より高い空気飽和度に調節された。イソプロピル−β−D−チオガラクト−P(IPTG)100mMは、バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ(BCA)タンパク質発現の誘導物質であるが、OD600nmがおよそ11.0であった5時間時に発酵ブロス中に終濃度0.5mMで導入された。IPTG誘導の後、発酵はOD600nmがおよそ16.4であった9時間時まで続けられた。発酵細胞はBCAの分離及び精製のため、IPTG誘導後4時間時に収集された。前述の株はおよそ105mg/L発酵培地の量の活性型BCAを生産した。発酵の時間経過は図6a1にプロットされる。温度、撹拌速度、pH及び溶存酸素値などのパラメーターの変化を示す、この回分発酵の履歴プロットは図6b1に表される。
【0048】
2L発酵槽中での流加回分発酵
高細胞密度培養での流加回分発酵は37℃、pH7.0で行われ、溶存酸素は全発酵プロセスの間、30%より高い空気飽和度に維持された。種菌液を調製するための手順は上記の回分発酵のそれと同様であった。発酵は初期には回分培養戦略で、5mL(1%)の種菌液を500mLのオートクレーブされた強化発酵培地を含有する2L発酵槽中に導入することにより開始された。溶存酸素は回分培養期間中の増殖相の間、30%前後の空気飽和度に徐々に減少した。いったん溶存酸素レベルが80%より高く上昇したら、これは炭素源の枯渇を表しており、PO stat流加回分戦略が強化培地供給を追加して開始された。この戦略の中で、供給速度は60%を下回る溶存酸素レベルを維持するように調製され、これは最小限ではあるが適切な量の炭素源を発酵プロセスの間、提供した。イソプロピル−β−D−チオガラクト−P(IPTG)100mMはOD600nmがおよそ100であった18時間時に発酵ブロス中に終濃度0.5mMで導入された。IPTG誘導の後、発酵はOD600nmがおよそ186.8であった28時間時まで続けられた。発酵細胞はBCAの分離及び精製のため、IPTG誘導後10時間時に収集された。前述の株は発酵培地1リットルあたりおよそ1489.6mg量の活性型BCAを生産し、これは異なる型のアルギナーゼについての他の全ての報告された収率より高い。発酵の時間経過は図6a2にプロットされる。温度、撹拌速度、pH及び溶存酸素値などのパラメーターの変化を示す、この回分発酵の履歴プロットは図6b2に表される。
【0049】
回分発酵と流加回分発酵との比較
下の表1は回分発酵と流加回分発酵との結果を比較している。比較は、培養液のOD600、細胞乾燥重量及び培養液1リットルあたりのBCA収率の点で流加回分発酵が回分操作より大きく優れていることを実証している。
【表1】

【0050】
部位指定的ペグ化アルギナーゼの精製
アフィニティーニッケルイオンカラムクロマトグラフィーは6×Hisタグ付加部位指定的ペグ化アルギナーゼをmPEG−MAL(20kDa)から分離するのに以下に述べられるように用いられた。コンジュゲーションの最終産物はバッファーA(0.02Mリン酸ナトリウム、0.5M NaCl、pH7.4)で平衡化されたキレート化FFセファロース(GE Healthcare)カラム(5.0cm×9cm、総体積176mL)上にロードされた。カラムはカラム体積の5倍のバッファーAで洗浄され、遊離mPEG−MAL(20kDa)が除去された。ペグ化アルギナーゼは30%から100%までの塩勾配の、カラム体積の5倍のバッファーB(0.02Mリン酸ナトリウム、0.5M NaCl、0.5Mイミダゾール、pH7.4)を用いて溶出された。溶出液のタンパク質含量は280nmの波長でモニターされた。カラムは流速20mL/分で溶出され、ペグ化アルギナーゼ画分が回収された。プールされた画分はPBSバッファー(Gibco)中で透析濾過され、4〜6mg/mLに濃縮された。動物試験の前に、タンパク質薬剤の中のエンドトキシンはQ−filter(Sartoris)を用いて除去された。
【0051】
部位指定的ペグ化アルギナーゼの試験管内での細胞毒性
Cys45ペグ化ヒトアルギナーゼI及びCys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼの試験管内での細胞毒性は、異なるヒトがん細胞(黒色腫、肝細胞癌、胃腺癌、結腸直腸腺癌、膵臓癌、膵臓腺癌及びT細胞白血病)中での標準MTTアッセイにより試験された。
【0052】
既知数の細胞(5000)は96ウェルプレートの各ウェル内で、5%COインキュベーター中で37℃で、異なる濃度のCys45ペグ化ヒトアルギナーゼI及びCys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼの存在下で68時間インキュベートされた。68時間の薬剤インキュベーション後、50μgのMTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド、テトラゾール)溶液が各ウェル内に添加され、さらに4時間インキュベートされた。上清が捨てられ、100μLの10%SDS/0.01M HClが各ウェル内に添加され、次いで一晩インキュベートされた。吸光度は540nmにおいてマイクロプレートリーダー(Bio−Rad)により記録された。50%の細胞増殖を阻害するのに必要な各薬剤の濃度(IC50)が異なるがん細胞系について決定された。実験は3連で実施された。
【0053】
Cys45ペグ化ヒトアルギナーゼI及びCys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼの異なる細胞系についてのIC50値が計算され、結果が表2に記載されている。バチルス・カルドベロックスアルギナーゼは抗がん応答について全く知られておらず、したがってその抗がん特性及び効力を実証した最初の機会である。様々な黒色腫細胞系(SK−MEL−2、SK−MEL−28、A375)で、Cys45ペグ化ヒトアルギナーゼIのIC50値はCys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼのそれと比較して低かった。異なる肝細胞癌細胞系(HepG2、Hep3B、PLC/PRF/5)の中で、HepG2細胞はCys45ペグ化ヒトアルギナーゼI及びCys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼのいずれに対しても最も感受性であった。まとめると、検査された全ての肝臓がん(HCC)及び黒色腫細胞系はBCA−PEG20及びHAI−PEG20により効率的に阻害された。
【0054】
Cys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼはまた、胃腺癌、結腸直腸腺癌、膵臓癌、膵臓腺癌及びT細胞白血病を包含する他の5つのがん細胞系について検査された。胃腺癌細胞系の場合、Cys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼのMKN−45細胞に対するIC50(0.798U/mL)はAGS細胞(0.662U/mL)と同様であった。異なる結腸直腸腺癌細胞系(WiDr、HT−29、SW1116)の中で、WiDr細胞及びHT−29細胞はCys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼに感受性であった。膵臓癌細胞系(PANC−1)と膵臓腺癌細胞系(BxPC−3)とを比較すると、Cys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼのIC50はPANC−1細胞では4倍低かった。T細胞白血病細胞系(Jurkat、Clone E6−1)の場合は、Cys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼのIC50(0.41U/mL)はまた他のがん細胞系と比較すると低かった。まとめると、検査された全てのがん細胞系はHAI−PEG20及びBCA−PEG20処理に感受性であった(及びこれらにより阻害された)。
【表2】

【0055】
部位指定的ペグ化アルギナーゼによるアルギニン枯渇
Cys45ペグ化ヒトアルギナーゼI及びCys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼの薬力はBALB/c正常マウスを用いて試験された。試験は薬物動態試験(後述)と一緒に行われた。それ故、プロトコールは同じままである。再度、回収された血液サンプルは速やかに13,200rpmで5分間遠心分離され、血漿層が回収されてAmino Acid Analyzer(Biochrom30、Biochrom Ltd.、England)を用いたさらなる解析が行われた。
【0056】
図10aに示されるように、オルニチンレベルはCys45ペグ化ヒトアルギナーゼI注入後に上昇し始め、3日目まで高いレベル(>150μM)に留まった。アルギニンは6時間時(0日目)を始めに完全に枯渇され、アルギナーゼ投与後6.8±2.3日で現れ始めた。これはHAI−PEG20が血中のアルギニンを効率的に枯渇させたことを指し示す。
【0057】
Cys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ(BCA−PEG20)の場合、オルニチンレベルはまた上昇し始め、3日目まで高いレベル(>170μM)に留まった(図10b)。アルギニンは6時間時(0日目)を始めに完全に枯渇され、アルギナーゼ投与後6.7±2.1日で現れ始めた。これはBCA−PEG20が血中のアルギニンを効率的に枯渇させたことを指し示す。
【0058】
両ペグ化アルギナーゼ(Cys45ペグ化ヒトアルギナーゼI及びCys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ)は同様の薬力学的プロファイルを示した。
【0059】
肝臓がんに対する生体内での抗腫瘍有効性
ペグ化されていないヒトアルギナーゼI(HAI)及びCys45ペグ化ヒトアルギナーゼI(HAI−PEG20)の肝臓がんに対する生体内での抗腫瘍有効性が次いで試験された。
【0060】
BALB/cヌードマウス数匹は肝細胞癌Hep3B細胞を腹腔内に注入(i.p.)され、生体内で維持された。次いで30匹のBALB/cヌードマウスは各々、生体内で維持されたがん細胞約1×10個を右の腋窩に皮下注入された。触知可能な直径5mmの腫瘍が増殖したら、マウスは3つの異なる群に分けられた(表3参照)。薬剤又はPBSバッファーは0日目に始まって8週間、週に1回、腹腔内に投与された。体重及び腫瘍寸法(L:腫瘍の長径の長さ、W:腫瘍の短径の長さ)は週に2回測定された。腫瘍体積(1/2×L×W)が計算されて、時間に対してプロットされた。60日後又は腫瘍直径が2.5cmに達した時、マウスは安楽死させられた。マウスの生存率は試験終了時に記録された。
【表3】

【0061】
図11aに示されるように、PBS対照群、Cys45ペグ化ヒトアルギナーゼI群及びペグ化されていないヒトアルギナーゼI群の平均体重はそれぞれ25.9±0.2g、25.0±0.2g及び25.5±0.2gであり、各群について実験期間全体を通じて有意な変化はなかった。
【0062】
腫瘍体積の点では、Cys45ペグ化ヒトアルギナーゼI(HAI−PEG20)は47日目から腫瘍増殖率をPBS対照群と比較して有意に低減させたが(p<0.01)、ペグ化されていないヒトアルギナーゼI(HAI)は有意な効果を何ら示さなかった(p>0.05)(図12a)。
【0063】
乳がんに対する生体内での抗腫瘍有効性
乳がんに対するCys161ペグ化バチルスアルギナーゼ(BCA−PEG20)の生体内での抗腫瘍有効性が次に決定された。
【0064】
胸腺欠損のヌードBALB/cマウス(6〜8週齢)は滅菌条件下、12時間の明暗周期で、オートクレーブされた飼料を自由摂取で供給されて飼育された。マウスは実験開始前に少なくとも1週間馴化された。各ヌードマウスはMCF−7ヒト乳がん細胞1×10個を右の腋窩に皮下注入された。触知可能な直径5mmの腫瘍が増殖したら、マウスは2つの異なる群にランダムに分けられた(表4)。薬剤又は対照溶媒(PBS)は0日目から始まって週1回、腹腔内に注入された。腫瘍寸法(L:長径、W:それに直交する直径)及び体重は毎月曜日、水曜日及び金曜日にノギスで測定された。腫瘍体積は式(1/2×L×W)で計算され、腫瘍体積の増加倍率が0日目を参照して計算された。結果は時間に対してプロットされた。18日目又は腫瘍直径が2.5cmに達した時、マウスは安楽死させられ、最終的な腫瘍及び体重が記録された。
【表4】

【0065】
図11bに示されるように、対照群(18.76±0.50)及びCys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ(19.76±0.66)の平均体重には実験期間全体を通じて有意な差は認められなかった(図11b)。Cys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼはPBS対照群と比較して有意に腫瘍増殖を抑制し、腫瘍体積の増加倍率を低減させた(2元配置ANOVA:p<0.0001、図12b)。ボンフェローニ法での事後検定を用いると、低減は低減率が2.8倍を超えた15日目(p<0.01)から始まって統計的に有意である。
【0066】
肺がんに対する生体内での抗腫瘍有効性
胸腺欠損のヌードBALB/cマウス(6〜8週齢)は滅菌条件下、12時間の明暗周期で、オートクレーブされた飼料を自由摂取で供給されて飼育された。マウスは実験開始前に少なくとも1週間馴化された。各ヌードマウスはA549ヒト肺がん細胞5×10個をマトリゲル増殖補助剤と共に右の腋窩に皮下注入された。触知可能な直径約5mmの腫瘍が増殖したら、マウスは3つの異なる群にランダムに分けられた(表5)。薬剤又は対照溶媒(PBS)は0日目から始まって週1回、腹腔内に注入された。腫瘍寸法(L:長径、W:それに直交する直径)及び体重は毎月曜日、水曜日及び金曜日にノギスで測定された。腫瘍体積は式(1/2×L×W)で計算され、腫瘍体積の増加倍率(相対的腫瘍体積)が0日目を参照して計算された。
【表5】

【0067】
異なる群間の平均体重には実験期間全体を通じて有意な差は認められず、最後の記録は実験終了時において対照群では23.98±2.68g、ペグ化されていないバチルス・カルドベロックスアルギナーゼでは23.68±1.50g及びCys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼでは23.16±2.08gであった(図11c)。
【0068】
Cys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ(BCA−PEG20)はしかしながら、溶媒対照群と比較して、腫瘍体積の進行性変化(図12c)及び腫瘍体積倍率(図12d)の点で腫瘍増殖を統計的に有意に抑制した。2元配置ANOVAは両パラメーターについてp値<0.0001を示したが、ボンフェローニ法での事後検定は腫瘍体積については28日目(p<0.05)から始まって35日目(p<0.001)まで、相対的腫瘍体積については30日目から始まって35日目まで(全ての時点についてp<0.01)までの差を指し示した。ペグ化されていないバチルス・カルドベロックスアルギナーゼ(BCA)は同用量の処方においても両パラメーターについて統計的な有意差のある同程度の抗肺がん効果を示した(2元配置ANOVA、両者ともp<0.0001)。
【0069】
結腸直腸がんに対する生体内での抗腫瘍有効性
結腸直腸がんに対するペグ化されていない(BCA)及びCys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ(BCA−PEG20)の生体内での抗腫瘍有効性は次のように決定された。
【0070】
胸腺欠損のヌードBALB/cマウス(6〜8週齢)は滅菌条件下、12時間の明暗周期で、オートクレーブされた飼料を自由摂取で供給されて飼育された。マウスは実験開始前に少なくとも1週間馴化された。各ヌードマウスは生体内で維持されたHCT−15ヒト結腸直腸がん細胞約3mmを右の腋窩に皮下移植された。安定に触知可能な腫瘍が直径約5mmに増殖したら、マウスは5つの異なる群にランダムに分けられた(表6)。アルギナーゼ薬剤又は対照溶媒(PBS)の腹腔内投与は週に2回、5−フルオロウラシルの腹腔内投与は週に1回、0日目から行われた。腫瘍寸法(L:長径、W:それに直交する直径)及び体重は毎月曜日、水曜日及び金曜日にノギスで測定された。腫瘍体積は式(1/2×L×W)で計算され、腫瘍体積の増加倍率(相対的腫瘍体積)が0日目を参照して計算された。結果は時間に対してプロットされた。マウスは実験終了時又は腫瘍直径が2.5cmに達した時に安楽死させられた。
【表6】

【0071】
異なる群間の平均体重には実験期間全体を通じて有意な差は認められず、最後の記録は実験終了時において対照群では24.3±0.9g、ペグ化されていないバチルス・カルドベロックスアルギナーゼ群では22.1±1.0g、Cys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ群では24.2±0.7g、Cys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ+5−フルオロウラシル群では23.5±1.2g及び5−フルオロウラシル群では24.5±1.4gであった(図11d)。
【0072】
Cys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ(BCA−PEG20)及びペグ化されていないバチルス・カルドベロックスアルギナーゼ(BCA)はいずれも3つ全てのアルギナーゼ薬剤処理群で腫瘍増殖を統計的に有意に抑制した(図12e及び図12f)。薬剤組み合わせ群(Cys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ+5−フルオロウラシル)について、2元配置ANOVAは腫瘍体積倍率及び腫瘍体積についていずれの場合もp<0.0001で有意差を示した。ボンフェローニ法での事後検定はさらに腫瘍体積倍率について36日目から40日目まで有意差を正確に示した。Cys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ単独群については、2元配置ANOVAは腫瘍体積倍率及び腫瘍体積について、それぞれp=0.0005及びp=0.0011で有意性を示した。ボンフェローニ法での事後検定は腫瘍体積倍率については38日目から始まって40日目まで、腫瘍体積については40日目に差を指し示した。ペグ化されていないバチルス・カルドベロックスアルギナーゼ群について、腫瘍体積倍率及び腫瘍体積についてのp値はそれぞれ0.0202及び<0.0001であった。5−フルオロウラシル群は腫瘍体積倍率の点で有意な腫瘍抑制を示さなかった(図12f)。薬剤組み合わせ群は腫瘍体積及び腫瘍体積倍率についてCys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ単独群(それぞれp<0.0001及びp=0.0120)及び5−フルオロウラシル単独群(それぞれp=0.0158及びp=0.0434)の両群よりも統計的に有意に低い結果になった。結果はCys161ペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ及び5−フルオロウラシルの相乗的な治療的効果を指し示した。
【0073】
乳がん転移に対する生体内での阻害的有効性
マウス転移乳がん細胞系(4T1)の細胞1×10個は6〜8週齢の野生型BALB/cマウスの4番鼠径部乳房脂肪パッド内に同所性に注入された。腫瘍が平均5mmに達した時、マウスは2つの異なる処理群に分割された(表7)。BCA−PEG20(250U/マウス)又は対照溶媒(PBS)は0日目から始まって週に2回、腹腔内に注入された。体重は毎週測定された。3週間後、マウスは屠殺されて肺転移について分析された。肺転移の数はPBSで洗浄した後に解剖顕微鏡下で数えられた。
【0074】
異なる群間の平均体重には実験期間全体を通じて有意な差は認められず、最後の記録は実験終了時において対照群では21.8g、BCA−PEG20群では21.5gであった。
【0075】
結果はBCA−PEG20がPBS溶媒群と比較して自発性の肺腫瘍小結節形成を低減させたことを表す。自発性の肺転移はPBS群では数えるには多すぎる数だったが、BCA−PEG20処理群では平均でわずか4小結節のみが見出された(表8)。結果はBCA−PEG20によるアルギニン枯渇は乳房腫瘍転移を阻害することを示す。
【表7】


【表8】

【0076】
HIVに対する効果(HAI−PEG20)
Cys45ペグ化ヒトアルギナーゼI(HAI−PEG20)のヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する50%阻害濃度(IC50)は、HIVに対するその効果の尺度として決定された。
【0077】
抗ウイルス薬の効率はウイルス複製についての細胞培養モデルを用いることで推定され得る。HIV複製アッセイはH9細胞及びHIV−1のRF株を利用する。H9細胞はヒトTリンパ球由来で、CXCR4を用いるHIV−I単離株による感染に高度に感受性であり、感染後数日で明確な細胞変性効果の兆候を示す。HIV−1のRF株はCXCR4を用いるクラスBの単離株で、H9細胞中で高レベルに複製する。
【0078】
H9細胞は4枚の96ウェルプレートに生存細胞5×10個/mLで播種され、培養液は37℃でインキュベートされた。翌日、2枚の96ウェルプレートにHIV−1が感染多重度0.005(1ウェルあたり50μL)で接種された。
【0079】
感染から24時間後、感染された96ウェルプレート1枚の細胞は組織培養培地(10%RPMI)中で終濃度1U/mL、10U/mL及び50U/mLに希釈されたCys45ペグ化ヒトアルギナーゼI(HAI−PEG20)で処理された。各薬剤濃度について8反復が検査され、1ウェルあたり100μLが添加された。
【0080】
アジドチミジン(AZT)はこのアッセイについての基準薬として、用量応答が得られることを保証するために用いられた。これは10%RPMI中で適切に希釈され(0.01、0.1及び1μg/mL)、2枚目の感染プレートに添加された。各薬剤濃度について8反復が検査され、1ウェルあたり100μLが添加された。
【0081】
細胞毒性対照は並行して設定された。これは3つの薬剤濃度(1U/mL、10U/mL及び50U/mL、薬剤濃度あたり8反復)で処理された非感染細胞の96ウェルプレート1枚からなる。これにより細胞毒性濃度(CC50)決定が可能になる。
【0082】
残りの96ウェルプレートは組織培養培地のみが接種されて陰性対照として働いた。
【0083】
感染から5日後、プレートは細胞変性効果について実験され、薬剤のIC50は薬剤処理及び非処理細胞中の合胞体細胞数を比較することで決定された。
【0084】
結果はHIVのRF株を接種したH9細胞はウイルス感染を起こしたが、組織培養培地のみが接種されたH9細胞は試験全体を通じて健常なままであったことを示す。細胞変性効果は、HIVを感染されて全濃度のCys45ペグ化ヒトアルギナーゼI(HAI−PEG20)で処理されたH9培養物において認められた。ペグ化酵素が終濃度1U/mLで処理された感染ウェルの8個中8個(8/8)が細胞変性効果を示した。酵素が終濃度10U/mLで処理された感染ウェルについては、6/8のウェルが細胞変性効果を示した。薬剤が最も高い終濃度50U/mLで検査された場合、3/8のウェルが細胞変性効果を示した。これらの結果は表9及び図13に示される。薬剤のIC50はおよそ37U/mLであることが見出された。
【0085】
基準薬のAZTが感染ウェルに0.01μg/mLで添加された場合、7/8のウェルが細胞変性効果を示した。AZTが0.1μg/mLで処理された感染ウェルについては6/8のウェルが細胞変性効果を示し、1μg/mLで検査された場合は2/8のウェルが細胞変性効果を示した。これらの結果は図14に図示される。AZTのIC50は0.58μg/mLであることが見出された。
【表9】

【0086】
表10は細胞毒性対照についての生存率カウントを提示する。細胞毒性検査の中で全ウェルが細胞毒性の兆候を示し、それ故、生存率カウントはCys45ペグ化ヒトアルギナーゼIの各濃度について1ウェルに対して実施された。最も高い濃度は50U/mL及び10U/mLの各々について細胞生存率30%及び39%という結果になった。1U/mLについては、細胞生存率は58%であった。これに基づいて8ウェル全てについて細胞生存率が評価され、平均値は48.9%と決定された。細胞が96ウェルプレート上に播種された場合の細胞の細胞生存率(96.8%)に基づくと、これは細胞生存率の50%低減に近い。これらの結果は表10及び図15に示され、HAI−PEG20がHIV複製に対する阻害効果を有することを明確に実証している。
【0087】
【表10】

【0088】
試験管内での抗がん効果
異なるアルギニン枯渇酵素の抗がん効力に対する試験管内でのがん細胞培養試験は様々ながんのタイプについて行われた。
【0089】
細胞増殖アッセイ:各がん細胞系について、100μL培養培地中の細胞(5×10個)が96ウェルプレートのウェルに播種され、24時間標準の方法によりインキュベートされた。培養培地はアルギナーゼ又はアルギニンデイミナーゼ(ADI)のうちの1つを異なる濃度で含有する培地で置換された。プレートはさらに3日間、37℃、95%空気/5%COの雰囲気中でインキュベートされた。代謝的に生存している細胞画分はMTTアッセイにより決定され、このMTTアッセイを行うことで培養液中の生存細胞数が推定された。Prism4.0(Graphpad Software)での非線形回帰がシグモイド用量応答曲線をあてはめるのに用いられ、細胞増殖の50%阻害を達成するのに必要な各アルギニン分解酵素の量(U/mL、unit/ml又はμg/mLの点からの)がIC50として定義された。
【0090】
RT−PCR試験:全RNAは培養液中で培養されたがん細胞系からQiagen RNeasyキットを用いて抽出された。逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)について、RNAは最初にiScript cDNA Synthesisキット(Bio−Rad、CA)により製造業者の説明書に従ってcDNAに逆転写された。簡潔には、5□gの全RNAは42℃で30分間RTに供された。cDNAの2μL分は次いで0.5ユニットのiTaq DNAポリメラーゼ(Bio−Rad、CA)を含有する反応混合液50μLを用いて増幅された。PCRはDNA thermal MyCycler(Bio−Rad、CA)中で実施された。以下の隣接プライマーが用いられた。
【0091】
(a)ヒトASS(448bpの産物):
【化4】

【0092】
(b)ヒトASL(218bpの産物):
【化5】

【0093】
(c)ヒトOTC(221bpの産物):
【化6】

【0094】
(d)ヒトGAPDH(306bpの産物):
【化7】

【0095】
反応産物は1%アガロースゲル電気泳動に供された。電気泳動及びエチジウムブロマイドでの染色後、全てのPCR産物のバンド強度はLumi−Imager(Boehringer Mannheim、IN)により分析され、相対的mRNA発現レベルがハウスキーピング遺伝子であるGADPHでの正規化により推定された。
【0096】
結果が指し示すように、アルギナーゼ及びADIは全て効果のあるアルギニン分解酵素である。意外なことに我々は、ここで検査された全てのがん細胞系はアルギナーゼ感受性であるが、多くのがん細胞系は実際にはADI処理に耐性であることを見出した。アルギナーゼはアルギニンをオルニチン及び尿素に変換するのに対し、ADIはアルギニンをシトルリン及びアンモニアに変換するという事実がこの差の原因であることが本発明の中で発見された。がん細胞がASS陽性及びASL陽性である場合、シトルリンはアルギニンに再循環されることができ、これが薬剤耐性につながる。最も著しいことに、がん細胞がOTC陰性の場合、それらはASS陽性及びASL陽性であったとしても細胞の中でオルニチンをアルギニンに再循環できない。本発明により提供されるこのガイドラインは全ての我々のデータと一致しており、他の研究グループからのデータも同様であることが見出されている。このガイドラインの下では、例えばがん細胞がASS陰性若しくはASL陰性又はその両方のいずれかである場合、それらはアルギナーゼ感受性及びADI感受性であろう。他方、がん細胞がASS陽性及びASL陽性の両方であるがOTC陰性の場合、それらはアルギナーゼ感受性及びADI耐性であろう。それ故、アルギナーゼはADIより広範な抗がん適用を有すると思われる。その上、アンモニア(ADI反応からの産物)は尿素(アルギナーゼ反応からの産物)より毒性である。したがって、本発明のアルギナーゼ抗がん剤はADIより安全と思われる。
【0097】
試験管内での抗がん有効性の結果は表11a〜11gに要約される。表11aに指し示されるように、検査された全ての黒色腫細胞系はアルギナーゼ処理に感受性であった。アルギナーゼが培養培地に添加された場合、アルギニンはオルニチン及び尿素に変換された。これらの細胞は全てOTC陰性であって、上で議論されたガイドラインに従うとこれらの細胞は細胞の中でアルギナーゼ反応産物であるオルニチンをアルギニンに再循環できす、それ故に細胞はアルギニン欠如のために阻害される。IC50値によると、検査された全てのアルギナーゼはがん細胞の増殖阻害に対して非常に有効であった。
【0098】
検査された全ての黒色腫細胞系はASS陽性及びASL陽性であったにも関わらずASS発現レベルは低かったが、これはASS活性アッセイを実施することで確認され得る。低いASS発現レベルは、何故これらの細胞系が全てADI処理に感受性であったかを説明する。B16はマウス黒色腫細胞系で、またアルギナーゼ及びADIの両方に感受性である。したがって、ADIが黒色腫細胞を死滅させるのは低レベルのASS発現が原因であった一方、アルギナーゼが黒色腫細胞を死滅させるのはそれらがOTC陰性なのが理由であると思われる。
【0099】
表11bの中で、検査された全ての白血病細胞系はアルギナーゼ処理に感受性であったことが示される。検査されたこれらのがん細胞のうちいくらかはOTC陰性であって、上で議論されたガイドラインに従うとこれらの細胞は細胞の中でアルギナーゼ反応産物であるオルニチンをアルギニンに再循環できす、それ故に細胞はアルギニン欠如のために阻害される。IC50値によると、検査された全てのアルギナーゼは白血病がん細胞の増殖阻害に対して非常に有効であった。ADI処理については検査された全4つの白血病細胞系はRPMI8226細胞系を除いて感受性であったが、RPMI8226細胞系がADI処理に耐性であったのは多分ASS陽性及びASL陽性の両方であるという事実が原因である。それ故、白血病細胞を阻害するにはアルギナーゼはADIよりも有利である。
【0100】
表11cは検査された全ての結腸直腸がん細胞系はアルギナーゼ処理に感受性であったことを示す。検査されたこれら全てのがん細胞はOTC陰性であった。上で議論されたガイドラインに従えばこれらの細胞は細胞の中でアルギナーゼ反応産物であるオルニチンをアルギニンに再循環できす、それ故に細胞はアルギニン欠如のために阻害される。IC50値によると、検査された全てのアルギナーゼは結腸直腸がん細胞の増殖阻害に対して非常に有効であった。ADI処理については検査された結腸直腸がん細胞系のうち2つ(WiDr及びHT29)だけが感受性であって、その他の2つ(SW1116及びHCT15)はADI処理に耐性であったが、これらが耐性であったのは多分ASS陽性及びASL陽性の両方であるという事実が原因である。HT29については、RT−PCRのデータによるとASS陽性及びASL陽性であったにも関わらずASS活性アッセイを実施することで確認されるようにASS発現レベルは低かったが、これは何故この細胞系がADI処理に感受性であるかを説明する。
【0101】
表11cにまた示されるように、最も著しいことに検査された全ての膵臓がん細胞系はアルギナーゼ処理に感受性であった。検査されたこれら全てのがん細胞はOTC陰性であった。上で議論されたように、これらの細胞は細胞の中でアルギナーゼ反応産物であるオルニチンをアルギニンに再循環できす、それ故に細胞はアルギニン欠如のために阻害される。IC50値によると、検査された全てのアルギナーゼは膵臓がん細胞の増殖阻害に対して非常に有効であった。ADI処理については検査された膵臓がん細胞系のうち1つ(Panc1)だけが感受性であり、その他の2つ(BxPC3及びHPAFII)はADI処理に耐性であった。明らかに、膵臓がん細胞を阻害するにはアルギナーゼはADIより良好である。
【0102】
表11dは検査された全ての胃がん細胞系はアルギナーゼ処理に感受性であったことを示す。検査されたこれら全てのがん細胞はOTC陰性であって、したがって上で議論されたように、これらの細胞は細胞の中でアルギナーゼ反応産物であるオルニチンをアルギニンに再循環できす、それ故に細胞はアルギニン欠如のために阻害される。IC50値が指し示すように、検査された全てのアルギナーゼは胃がん細胞の増殖阻害に対して非常に有効であった。はっきりと対照的に、検査された全ての胃がん細胞系はADI処理に耐性であったが、多分それらがASS陽性及びASL陽性の両方であるという事実が原因である。これと同様の結果が検査された肝臓がん(即ちHCC)細胞系について表11eに示されるように得られた。
【0103】
表11eはまた、検査された網膜芽細胞腫がん細胞系Y79はアルギナーゼ処理に感受性であったがADI処理に耐性であったことを示しており、これは多分それらがASS陽性及びASL陽性の両方であるという事実が原因である。
【0104】
表11fは検査された肺がん細胞系A549はアルギナーゼ処理に感受性であったことを示す。検査されたこれらのがん細胞はOTC陰性であった。この細胞はまたADI処理に感受性であり、これは多分それらがASS陰性又はASL陰性のいずれかであるという事実が原因である。対照的に表11fにまた示されるように、検査された全ての子宮頸がん細胞系はアルギナーゼ処理に感受性であって(それらは全てOTC陰性であった)、しかし検査された子宮頸がん細胞系の2つ(SiHa及びC−33A)だけがADI処理に感受性でその他の3つ(HeLa、ME180、CC3)は耐性であったが、これは多分それらがASS陽性及びASL陽性の両方であるという事実が原因である。
【0105】
乳がん細胞についての結果が表11gに示される。表が示すように、検査された全ての乳がん細胞系はアルギナーゼ処理に感受性であった(それらは全てOTC陰性であった)。著しいことに、検査された乳がん細胞系の1つ(MDA−MB−231)だけがADI処理に感受性でその他の3つ(MCF−7、ZR−75−1、Hs578T)は耐性であった。
【0106】
表11gにまた示されるのは前立腺がん細胞系についての結果であり、アルギナーゼ処理及びADI処理の両方に感受性であることが見出された。上で議論されたように、かかる結果はこの細胞系がOTC陰性及びASS陰性の両方であるという事実により説明され得る。
【表11】


【表12】


【表13】


【表14】


【表15】


【表16】


【表17】

【0107】
表11について、“+”=mRNAがRT−PCRにより検出されたことであり、相当する遺伝子が発現していることを指し示す。“−”=mRNAがRT−PCRにより検出されなかったことであり、相当する遺伝子が発現していないことを指し示す。“R”は細胞系がADI耐性でIC50値が推定され得なかったことを指し示す。“L”は細胞系が比較的低いレベルのASS発現を有し、それ故に細胞系がADI感受性のままであることを指し示す。
【0108】
以下の仮説及び作業モデルにより束縛されることは望まないが、出願人は以下の仮説及び作業モデルは本発明の実験データと一致するものであり、したがって本明細書に開示される本発明のさらなる利用についての有用なガイドであると考えている(図18も参照)。
【0109】
何故OTC陰性がん細胞はアルギナーゼ感受性であるがADI耐性であり得るかを説明する仮説及び作業モデル。アルギナーゼが培養培地中に添加又はペグ化アルギナーゼが血液中(体内)に注入されると、アルギニンはアルギナーゼ酵素反応によりオルニチン及び尿素に変換される。形成されたオルニチンは次いでがん細胞の中へ進む。正常な細胞と異なりがん細胞は増殖が速く、正常な細胞よりも一層多くのアルギニンをタンパク質合成及び他の細胞プロセスのために必要とする。がん細胞がOTC陽性、ASS陽性及びASL陽性であるなら、オルニチンはアルギニンへと再循環され得る。それ故、がん細胞は未だアルギニンを有していてアルギニン欠乏ではなく、がんの増殖は阻害されない。他方、OTC陰性、ASS陰性若しくはASL陰性又はこれらの欠乏の任意の組み合わせであるか、又はこれら遺伝子のうち任意のものの発現レベルが低いがん細胞では、オルニチンからアルギニンへの合成(又は再循環)経路は遮断され、それ故にがん細胞はアルギニンを欠如し、したがってがん細胞の増殖は阻害されてがん細胞の死が起こり得る。
【0110】
OTC陰性である肝臓がん細胞についての仮説及び作業モデル。尿素回路の遺伝子発現及びペグ化アルギニンデイミナーゼ(ADI−PEG)及びペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ(BCA−PEG20)に対する耐性に関するモデル。肝臓がん細胞は尿素回路酵素であるアルギニノコハク酸合成酵素(ASS)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)及びアルギナーゼ(ARG)を発現するが、オルニチントランスカルバモイラーゼ(OTC)を欠如している。血流中のBCA−PEG20はアルギニンを枯渇させてオルニチンを生成するが、オルニチンは細胞に入るもののOTCが存在しないため尿素回路を通じて再循環されない。ADI−PEGはアルギニンをシトルリンに変換し、シトルリンは肝臓がん細胞内への取り込み後にASS及びASLにより容易にアルギニンに再び変換され得る。それ故、このモデルにおいて肝臓がん細胞はBCA−PEG20処理に感受性である(BCA−PEG20により阻害される)が、ADI−PEG処理に耐性である。
【0111】
OTC陰性であるがん細胞についての仮説及び作業モデル。がん細胞中の遺伝子発現及びペグ化アルギニンデイミナーゼ(ADI−PEG)及びペグ化バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ(BCA−PEG20)に対する耐性に関するモデル。アルギナーゼ(ARG)を発現しないがん細胞の場合、がん細胞は酵素であるアルギニノコハク酸合成酵素(ASS)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)を発現するが、オルニチントランスカルバモイラーゼ(OTC)を欠如している。血流中のBCA−PEG20はアルギニンを枯渇させてオルニチンを生成するが、オルニチンは細胞に入るもののOTCが存在しないため再循環されない。ADI−PEGはアルギニンをシトルリンに変換し、シトルリンはがん細胞内への取り込み後にASS及びASLにより容易にアルギニンに再び変換され得る。それ故、このモデルにおいてがん細胞はBCA−PEG20処理に感受性である(BCA−PEG20により阻害される)が、ADI−PEG処理に耐性である。このモデルは一般的にがん細胞に適用され得る。
【0112】
コバルトを金属補因子として用いることによるアルギナーゼ活性のさらなる亢進方法
野生型アルギナーゼの金属補因子はマンガン(Mn2+)である。驚くべきことに、マンガンをコバルトで置き換えることで酵素の活性は劇的に亢進されることが本発明により発見された。バチルス・カルドベロックスアルギナーゼ(BCA)又はヒトアルギナーゼI(HAI)のいずれかが先に述べられたように発現された。精製方法は、10mMの金属イオン(CoSO又はMnSO)がニッケルアフィニティークロマトグラフィー前の添加の代わりにニッケルアフィニティークロマトグラフィーからの精製タンパク質溶出液に添加されたこと以外は前述と同じであった。アルギナーゼ酵素を含有する溶出された画分は10mMの金属と50〜55℃で15分間インキュベートされた後、0.45μmのシリンジフィルターを通して濾過が行われた。次いで溶液は限外濾過により保存バッファーと交換された。
【0113】
ジアセチルモノオキシン(DAMO)アッセイは異なる金属補因子を伴うヒトアルギナーゼの反応速度パラメーターを決定するのに用いられた。全ての酵素反応はpH7.4で行われた。結果は図16に示される。Mn2+又はCo2+で置き換えられた組換えヒトアルギナーゼI(HAI)即ちhuArgの定常状態反応速度はリン酸ナトリウムバッファー中でpH7.4、25℃で測定された。Mn2+を伴うHAI(HAI Mn2+)即ちhuArg Mn2+及びCo2+を伴うHAI(HAI Co2+)即ちhuArg Co2+のKmはそれぞれ1.83mM及び0.19mMである。Km値がHAI Co2+即ちhuArg Co2+においておよそ10倍改善されることから、その特異的活性は10倍改善されており、アルギニンを枯渇させるのにHAI Mn2+即ちhuArg Mn2+よりも一層効率的な薬剤である。
【0114】
遺伝子改変のさらなる改変によるアルギナーゼ活性の亢進
驚くべきことに、BCAの20位は酵素活性を改善するために他のアミノ酸で置き換えられ得ることが本発明により発見された。野生型配列中の20番目のアミノ酸残基であるバリンはプロリン(又は例えばセリン若しくはグリシンといった他の任意のアミノ酸で、BCAの特異的活性を改善するもの)で部位指定的な変異誘発(例えばコドンGTT[バリン]をCCG[プロリン]に)により置き換えられた。変異体遺伝子は詳細な試験のためにクローニングされ、発現されて精製された。代表的なかかる変異体酵素はバリンをプロリンで置換することで作られたが、これは“BCA変異体V20P”又は“bcArg V20P変異体”と呼ばれる。BCA変異体V20P及びMn2+又はCo2+を伴うBCAの定常状態反応速度はリン酸ナトリウムバッファー中でpH7.4、25℃で測定され、図17に示された。Mn2+を伴うBCA変異体V20P(BCA変異体V20P Mn2+)及びCo2+を伴うBCA変異体V20P(BCA変異体V20P Co2+)のKm値はそれぞれおよそ1.29mM及び0.18mMである。Mn2+を伴うBCA(BCAWTMn2+)のKmはおよそ3.2mMである。それ故、補因子としてCo2+を伴うBCA変異体V20P[Km=0.18mM]は、アルギニンを枯渇させるのにBCA(BCAWTMn2+)[Km=3.2mM]よりも一層効率的な薬剤である。
【0115】
BCA変異体V20Pを用いた試験管内でのがん細胞系試験
細胞増殖アッセイは次のように行われた。
【0116】
2.5×10個のSk−mel−28(EMEM)、5×10個のHEK293(EMEM)、MCF−7(EMEM)、HCT−15(RPMI)、Hep3B(DMEM)、PANC−1(DMEM)、Hela(DMEM)及びA549(DMEM)細胞は96ウェルプレートの各ウェルの培養培地100μL中に播種され、一晩プレートに付着させられた。翌日、培養培地は異なる濃度のBCA及びBCA変異体V20Pタンパク質薬剤を含有する培地で置換された。2×10個のJurkat(RPMI)浮遊細胞はタンパク質薬剤を添加する日に96ウェルプレートの各ウェルの培養培地50μL中に播種され、異なる濃度の50μLのタンパク質薬剤が直接的に各ウェルに添加された。細胞はさらに3日間、37℃で95%空気/5%COの雰囲気中でインキュベートさせられた。MTT細胞増殖アッセイ(Invitrogen)は次いで培養液中の生存細胞数を推定するために実施された。簡潔には、5mg/mLの水可溶性のMTT試薬10μLが100μLの培養培地に添加され、37℃で4時間インキュベートされた。MTTは細胞により紫色のホルマザンへと化学的に還元され、次いで酸性化SDS(10%SDS中の0.01N HCl)により組織培養培地中に溶解される。開裂産物ホルマザンの濃度は次いでその吸光度を分光光度計で570nmフィルターにより読み取ることで測定された。細胞増殖のデータは対照のパーセンテージとして表された。Prism4.0(Graphpad Software)での非線形回帰がシグモイド用量応答曲線をあてはめるのに用いられ、50%の細胞増殖阻害を達成するのに必要なタンパク質薬剤の量がIC50として定義された。結果は表12に示される。相当する酵素活性は表13に示される。
【表18】


【表19】

【0117】
結果はBCA変異体のV20Pは試験管内での薬剤有効性試験において様々なタイプのがん細胞を死滅させるのにより一層効率的であることを示す。
【0118】
本発明の基本的な新規の特徴はその好ましい実施形態に適用されるように記述され、詳細に説明されたが、形式及び図示された実施形態の詳細における様々な省略、置き換え及び変更は、当業者により本発明の趣旨から逸脱しないでなされ得ることが理解されるであろう。本発明は上述の例として提示されただけの実施形態により限定されず、様々な方法で、添付の特許請求の範囲により定義される保護の範囲内で改変され得る。
【図1A】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め決められた位置においてアルギナーゼに共有結合的に付加したPEG部分を含み、分子量の点で均一である、PEG−アルギナーゼコンジュゲート。
【請求項2】
前記PEG部分と前記アルギナーゼの比が実質的に1である、請求項1に記載のPEG−アルギナーゼコンジュゲート。
【請求項3】
前記PEG部分が10,000から30,000の間の範囲の分子量を有する、請求項1に記載のPEG−アルギナーゼコンジュゲート。
【請求項4】
前記PEG部分がおよそ20,000の分子量を有する、請求項3に記載のPEG−アルギナーゼコンジュゲート。
【請求項5】
前記予め決められた位置が前記アルギナーゼのCys45であり、前記アルギナーゼがヒトアルギナーゼIである、請求項1に記載のPEG−アルギナーゼコンジュゲート。
【請求項6】
前記予め決められた位置が前記アルギナーゼのCys161であり、前記アルギナーゼがバチルス・カルドベロックス(Bacillus caldovelox)アルギナーゼである、請求項1に記載のPEG−アルギナーゼコンジュゲート。
【請求項7】
前記PEG部分がポリエチレングリコールである、請求項1に記載のPEG−アルギナーゼコンジュゲート。
【請求項8】
前記PEG部分が一本鎖である、請求項1に記載のPEG−アルギナーゼコンジュゲート。
【請求項9】
前記PEG部分が分岐鎖である、請求項1に記載のPEG−アルギナーゼコンジュゲート。
【請求項10】
(a)アルギナーゼ上の付加位置を少なくとも1つ指定するステップであって、前記位置におけるアミノ酸残基がPEG部分と共有結合を形成するためのものである上記ステップ、
(b)前記アルギナーゼをコードする遺伝子を改変するステップであって、前記付加位置におけるアミノ酸残基に対するコドンがシステインに対するものである場合、前記コドンはシステインをコードするように変えられ、且つ前記遺伝子が、アルギナーゼから露出されてPEG部分と共有結合を形成することが可能である前記付加位置にないシステイン残基をコードする第二のコドンを有する場合、前記第二のコドンはシステインでないアミノ酸をコードするように変えられる上記ステップ、
(c)前記アルギナーゼを生産するために前記遺伝子を宿主において発現させるステップ、及び
(d)分子量が均一なPEG−アルギナーゼコンジュゲートを生産するために前記アルギナーゼの前記付加位置における前記アミノ酸と前記PEG部分との間の共有結合を通じて前記アルギナーゼタンパク質をPEG部分とコンジュゲートさせるステップ
を含む、PEG−アルギナーゼコンジュゲートを作製する方法。
【請求項11】
ステップ(c)で生産される前記アルギナーゼが単一のシステイン残基を含有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(c)で用いられる前記宿主が細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞及びトランスジェニック動物からなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記遺伝子がヒトアルギナーゼIをコードしており、ステップ(c)で生産される前記アルギナーゼの前記付加位置における前記アミノ酸残基がCys45である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記遺伝子がバチルス・カルドベロックス(Bacillus caldovelox)アルギナーゼをコードしており、ステップ(c)で生産される前記アルギナーゼの前記付加位置における前記アミノ酸残基がCys161である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記共有結合が前記付加位置における前記アミノ酸からのチオ基と前記PEG部分からのマレイミド基との間に形成されるチオエーテル結合である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記PEG部分がおよそ20,000の分子量を有し、直鎖又は分岐鎖のいずれかを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
分子量が均一なPEG−アルギナーゼコンジュゲート及び薬学的に許容される担体、添加剤又は補助剤を含む、医薬組成物。
【請求項18】
前記PEG−アルギナーゼがヒトアルギナーゼIとPEG部分との間に形成され、前記ヒトアルギナーゼIが前記PEG部分に共有結合的に付加するためのシステイン残基を45位においてただ1つ有する、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記PEG−アルギナーゼがバチルス・カルドベロックス(Bacillus caldovelox)アルギナーゼとPEG部分との間に形成され、前記バチルス・カルドベロックス(Bacillus caldovelox)アルギナーゼが前記PEG部分に共有結合的に付加するためのシステイン残基を161位においてただ1つ有する、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
アルギニン依存性疾患を治療するために用いられる、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記アルギニン依存性疾患がADI感受性又は実質的にOTC発現を伴わないADI耐性のいずれかのがんである、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記アルギニン依存性疾患がHIV、C型肝炎ウイルス及びB型肝炎ウイルスからなる群より選択されるウイルスによる感染症である、請求項20に記載の医薬組成物。

【図1b】
image rotate

【図1c】
image rotate

【図1d】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図2c】
image rotate

【図2d】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図3c】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図16】
image rotate

【図3d】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図6a1】
image rotate

【図6a2】
image rotate

【図6b1】
image rotate

【図6b2】
image rotate

【図6c】
image rotate

【図6d】
image rotate

【図7a】
image rotate

【図7b】
image rotate

【図8a】
image rotate

【図8b】
image rotate

【図9a】
image rotate

【図9b】
image rotate

【図10a】
image rotate

【図10b】
image rotate

【図11a】
image rotate

【図11b】
image rotate

【図12a】
image rotate

【図12b】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公表番号】特表2012−521201(P2012−521201A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501126(P2012−501126)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/CN2010/071357
【国際公開番号】WO2010/124547
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(511231768)ザ ホン コン ポリテクニック ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】