説明

アルコールの感覚印象を強くするためのアルコキシル化フラボンの使用

【課題】アルコールの感覚印象が強くなった飲料の提供。
【解決手段】式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物を用いる


(式中、R〜R10は、互いにそれぞれ独立して、H、メトキシ又はエトキシを示し、
基R〜R10の少なくとも一つは、メトキシ又はエトキシを示す)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール(エタノール)の感覚印象、特に風味印象を強くするための特定のアルコキシル化フラボンの使用に関する。本発明は、更に、エタノール及び特定のアルコキシル化フラボンを含む液体混合物であって、前記フラボンが、アルコールの感覚印象、特に風味印象を強くするような量で含有されている、前記液体混合物に関する。本発明は、また、エタノールの感覚印象、特に風味印象を強くする方法及びエタノールの感覚印象、特に風味印象が強くなった飲料又は固形食品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風味付与成分として又は全体の感覚印象、特に全体の風味印象に関与する成分として、アルコール(エタノール)は、多くの食品、キャンデー、及び特に飲料に含有されている。この場合、できるだけ少量のエタノールを用いて、特定のアルコール感覚印象、特に風味印象を達成することが望ましい。この理由は、例えば、アルコールの負の副作用と、特に飲料における、課税に関する側面であり、多くの国と同様に、これらのアルコール含量に応じて商品に課税されるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の目的は、アルコールの典型的な感覚印象、特に風味印象を強くすることを可能にする物質を開示することであった。好ましくは、これらの物質は、それ自体風味が中性で且つ食品に適合性でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、この目的は、アルコールの感覚印象、特に風味印象を強くするための式Iの化合物の使用によって達成される
【0005】
【化1】

(式I)
(式中、R1〜R10は、互いにそれぞれ独立して、H、メトキシ又はエトキシを示し、
基R1〜R10の少なくとも一つは、メトキシ又はエトキシを示す)。
【発明を実施するための形態】
【0006】
フラボンは、重要な果実色素である。同時に、そのフェノール特性のために、良好な抗酸化剤であり、例えば、果実におけるL-アスコルビン酸を安定化することができる。多くの生理学的性質は、フラボンによるものと考えられる。これらは、常に、広範囲な研究活動の一部であった。このことは、特に、柑橘類の果実に見い出されたポリメトキシル化フラボンにあてはまる。このようにしてポリメトキシル化されたフラボンの既知の供給源は、橙皮油である。その中に含有される典型的なポリメトキシル化フラボンは、4',5,6,7-テトラメトキシフラボン(テトラ-O-メチルスクテラレイン、下記の式Vを参照のこと)、4',5,6,7,8-ペンタメトキシフラボン(タンゲレチン、下記の式IIIを参照のこと)、3',4',5,6,7-ペンタメトキシフラボン(シネンセチン、下記の式VI参照を参照のこと)、3',4',5,6,7,8-ヘキサメトキシフラボン(ノビレチン、下記の式IVを参照のこと)、3,3',4',5,6,7,8-ヘプタメトキシフラボン(ヘプタ-3、下記の式IIを参照のこと)である。主要成分は、更に、3,3',4',5,6,7-ヘキサメトキシフラボン(ヘキサメトキシケルセタゲチン)である。
【0007】
EP 0 605 261には、特定の風味ノートに対して特定のフラボン作用の強化が開示されている。上述の文書に記載されるフラボンの一部は、一般式Iに入るものである。しかしながら、その中に記載されたフラボンがアルコールの感覚印象、特に風味印象を強くすることができることは示されていない。この驚くべき作用は、本文書に記載される本発明の基本的な部分である。
この点について、本出願の範囲内の用語“アルコール”は、特に明記しない限り、用語“エタノール”に等しい。
本出願の範囲内の用語“アルコールの風味印象を強くする”は、アルコール風味を強くする化合物(一般式Iを有する化合物)と混合した一定のアルコール濃度が、より高濃度のアルコールに(明らかに)相当する典型的なエタノール風味に関して風味印象を与えることをテストパネルが再現的に確認することが可能であるという事実を意味する。
【0008】
本発明の使用において、好ましくは、一般式I(式中、R6及びR10はHに等しく且つ/又は基R1〜R10はメトキシ又はHを示し且つ/又は基R1〜R10の少なくとも2、3、4、5、6、7又は8つはメトキシを示す)の化合物が使われる。式I(式中、R6及びR10はHに等しく、基R1〜R10の少なくとも4、5、6又は7つはメトキシを示す)の化合物が好ましい。
本発明によれば、式Iの少なくとも一つの化合物が式II〜VIの化合物からなる群より選ばれる本発明の使用が好ましい:
【0009】
【化2】

(式II)
【0010】
【化3】

(式III)
【0011】
【化4】

(式IV)
【0012】
【化5】

(式V)
【0013】
【化6】

(式VI)。
【0014】
この場合、得られた混合物全体(成分を更に含む)に基づいて、1〜20ppm、好ましくは1〜15ppm、より好ましくは2〜10ppm、更により好ましくは5〜10ppmの式Iの一つ又は複数の化合物の量(即ち、全含量)が、この場合にアルコールを強くする作用が非常に著しいので、本発明の使用に特に適することがわかった。
更に、得られた混合物全体の容量に基づいて、0.5〜50容量%、好ましくは1.5〜40容量%、より好ましくは2.5〜30容量%、更により好ましくは2.5〜20容量%のエタノール含量がアルコールの特に適切な割合であることがわかった。
この場合、式(I)の化合物のアルコール強化作用を最も著しく示すので、本発明に用いられる化合物3,3',4',5,6,7,8-ヘプタメトキシフラボン(式II)が特に最も好ましいことがわかった。本発明の作用を特定の程度まで達成させるために、3,3',4',5,6,7,8-ヘプタメトキシフラボン(式II)の含量は、それぞれの場合において式Iの化合物の全質量に基づき、好ましくは少なくとも30質量%、より好ましくは少なくとも40質量%、更により好ましくは少なくとも50質量%、最も好ましくは少なくとも60質量%でなければならない。
【0015】
低アルコール飲料(LAD)
低アルコール飲料は、アルコール含量が0.5〜15容量%の飲料である;特に、ビール、ワイン、混合ビール飲料、アルコポップス、インスタントアルコポップス、混合ワイン飲料を挙げることができ、そのまま飲める飲料又は楽しむために飲まれるインスタント飲料製品として用意されている。
LADは、なかでも、植物又は特定の植物部分の発酵によって純粋に得られた製品、例えば、ワイン又はビールを含む。LAD中のアルコールは、また、アルコールの製品への直接添加に由来し得る。LADは、更に、発酵によって得られるアルコール部分、例えば、ワイン又はビールと、非アルコール部分、例えば、レモネードで構成されている混合製品でもあり得る。レモネード部分は、従来は、異なる質量割合での甘味料、香味剤、酸性化剤、色素及びビタミン添加剤からなる。甘味料としては、フルクトース、グルコース、スクロース、低カロリー飲料の場合には、人工甘味料、例えば、アセスルファム、アスパルテーム、サッカリン又はシクラメート又はヘスペレチン(甘味増強剤)が個々の物質として又は組み合わせて用いられる。風味付与成分は、通常は、果汁部分、精油、組換え体、薬剤からのエキス又は個々の芳香物質又は香味物質からなる。添加される酸性化剤は、しばしば、クエン酸、リン酸、コハク酸及びフマル酸又は他の認可された酸性化剤である。場合によっては、LADは、色素、例えば、キャラメル、着色してある砂糖、植物エキス又は他の認可された色素とも混合される。飲料の生理的価値を高めるために、ビタミン、例えば、ビタミンA、B、C又はEを添加することもできる。
合計量の2〜20ppm、好ましくは2〜15ppmの式Iの化合物が添加されている0.5〜15容量%のアルコール、好ましくは2.5〜8容量%のアルコールの組み合わせが、風味及び所望のアルコールを強くする作用の点で特に好ましいことがわかった。飲料の種類及びそのアルコール含量によっては、合計量の2〜5ppm又は5〜15ppmでの式I、特に式II〜VIの化合物が更に好ましい。
【0016】
中間アルコール飲料(MAD)
中間アルコール飲料は、アルコール含量が15〜30容量%の飲料である。MADの個々の例としては、例えば、植物又は植物部位のマセレーション、続いてろ過又は蒸留によって得ることができる、リキュールが挙げられる。MADの例としては、更に、混合スピリッツ飲料、果実酒、リキュールワイン、また、他の飲料が挙げられ、そのアルコールは、発酵、続いて蒸留によって得られたものである。
MADは、また、ラウンディング物質が添加された、アルコール飲料、例えば、果実酒又はハーブリキュールの混合製品でもあり得る。
ラウンディング物質は、従来は、甘味料、芳香物質、香味物質、酸性化剤、色素が、異なる質量割合で用いられる。甘味料は、フルクトース、グルコース、スクロース、但し、人工甘味料、例えば、アセスルファム、アスパルテーム、サッカリン又はシクラメート又はヘスペレチンも個々の物質として又は組み合わせて用いられる。芳香物質及び香味物質は、精油、薬剤からのエキス又は個々の物質であり得る。酸性化剤は、通常、クエン酸、リン酸、コハク酸、フマル酸又は他の認可された酸性化剤が添加される。場合によっては、MADは、色素、例えば、キャラメル、着色してある砂糖、植物エキス又は他の認可された色素とも混合される。
15〜30容量%、好ましくは15〜20容量%のアルコール含量で(例えば、従来の市販のリキュールに見ることができる)、好ましくは2〜10ppm、より好ましくは4〜6ppmの添加が選ばれる。式Iの化合物、特に式II〜VIの化合物のこの添加で、エタノール風味印象の有利な強化がこれらの飲料において達成される。
【0017】
高アルコール飲料(HAD)
高アルコール飲料は、アルコール含量が30容量%を超える飲料である;これらの例としては、ウォッカ、ラム、ウイスキー、テキーラ、果実ブランデー又はライが挙げられる。好ましくは、これらのアルコール含量は、30〜50容量%である。
HADは、ラウンディング物質を含有することができる。ラウンディング物質は、従来は、甘味料、芳香物質、香味物質、酸性化剤、色素が、異なる質量割合で用いられる。甘味料は、フルクトース、グルコース、スクロース、但し、人工甘味料、例えば、アセスルファム、アスパルテーム、サッカリン又はシクラメート又はヘスペレチンも個々の物質として又は組み合わせて用いられる。芳香物質及び香味物質は、精油、薬剤のエキス又は個々の物質であり得る。酸性化剤は、通常、クエン酸、リン酸、コハク酸、フマル酸又は他の認可された酸性化剤が添加される。場合によっては、HADは、色素、例えば、キャラメル、着色してある砂糖、植物エキス又は他の認可された色素とも混合される。
30容量%以上、特に15〜20容量%のアルコール含量で(例えば、従来の市販のリキュールに見ることができる)、式Iの化合物の割合が好ましくは1〜5ppm、より好ましくは1〜2ppmの範囲である。これらの添加で、式I、特に式II〜VIの化合物は、エタノール風味印象の特に有利な強化を達成する。
また、エタノール及び下記式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物を含む液体混合物であって、混合物がオレンジジュースを含まないという条件で、液体混合物の容量に基づくエタノール含量が0.5〜50容量%であり且つ液体混合物に基づく式Iの化合物の合計量が1〜20ppm、好ましくは1〜15ppmである、前記混合物も本発明の一部である:
【0018】
【化7】

(式I)
(式中、R1〜R10は、互いにそれぞれ独立して、H、メトキシ又はエトキシを示し、
基R1〜R10の少なくとも一つは、メトキシ又はエトキシを示す)。
【0019】
本発明の液体混合物が柑橘類の果実からのジュースを含まないことが好ましい。この場合、用語“オレンジジュース”と用語“柑橘類の果実からのジュース”には、(適切な場合には単に希釈された)実質的に対応する果実に由来するジュースや問題のそれぞれの果実のジュース濃縮物からのジュースが含まれる。
式Iの化合物の好ましい上記変形例を含み、特に、式Iの化合物が実質的に下記式II〜VIの一つ以上の化合物であり、式IIの化合物が特に最も好ましい、本発明の液体混合物が好ましい
【0020】
【化8】

(式II)
【0021】
【化9】

(式III)
【0022】
【化10】

(式IV)
【0023】
【化11】

(式V)
【0024】
【化12】

(式VI)。
【0025】
本発明の好ましい液体混合物は、ヒト摂取を意図した飲料である混合物である。
好ましい飲料は、この場合、ビール、ライトビール、混合ビール飲料、はちみつ酒、発泡ワイン、ワイン、混合ワイン飲料、スピリッツ、例えば、アルコポップス、ブランデー、カクテル、ロングドリンクス、リキュール及びリキュールワインである。本発明は、従来通りであると感じる(特に、アルコール風味印象を含む)風味印象全体を変えずに、式Iの化合物の本発明による添加時にアルコール含有飲料全体において(いずれの場合においても従来の)アルコール含量を減少させることを可能にする。
本出願において、ヒト摂取を意図した飲料は、簡単にはドイツの食品法のもとで最終消費者に販売することができるものである。品質の落ちた飲料は、特に、上述の定義には入らない。
【0026】
また、本発明の液体混合物を含むキャンデーも本発明の一部である。従来通り、本発明のキャンデーは、リキュール、ブランデー等を充填したプラリーヌのような充填製品である。しかしながら、本発明のキャンデーは、甘い食べ物でもあり得る。
【0027】
また、エタノール風味印象を強くするための方法であって、
a)エタノール又はエタノール含有混合物を調製する工程、
b)工程b)において、オレンジジュース、好ましくは、柑橘類の果実からのジュースが用いられないという条件で、式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物をエタノールの風味印象を強くするような量で添加する工程
を含む、前記方法も本発明の一部である。
【0028】
また、飲料又は固形食品を製造するための方法であって、エタノール風味印象を強くするための本発明の方法を含む、前記方法も本発明の一部である。しかし、原則として、本発明の使用は、アルコール成分の風味のある製造に使用し得る。従って、このことは、液体成分をもはや含まないベーカリー製品又は他の食品にもあてはまる。
【0029】
本発明に従って用いられる一般式Iの好ましいフラボンは、この場合、例えば、市販のフラボン混合物から得ることができる。この点について、橙皮油から得られた市販のポリメトキシフラボン混合物が特に好ましい。従って、式II〜VIの化合物を特に得ることができる、例えば、フラボン含量が60、80質量%以上のポリメトキシフラボン(PMF)の市販の品質を精製することが可能である。
以下の実施例は、本発明をより詳細に確認するものであるが、これらに限定されない。特に明記しない限り、全ての具体例は、質量に関する。
【実施例1】
【0030】
ポリメトキシフラボン(PMF)の濃縮
シトラス・シネンシス(オレンジ)から得られた、フラボン含量がHPLC後に60質量%である市販のPMF品質から出発して、主成分3,3',4',5,6,7,8-ヘプタメトキシフラボン(HMF、式IIに対応する)を抽出濃縮によって高純度の形で得た。
出発物質は、フラボンの全体の割合に基づいて、HMFフラボン含量90%、タンゲレチン4%、ノビレチン2%及びテトラ-O-メチルスクテラレイン1%を有した。フラボンも更に、より少量で存在した。用いられるPMF品質のフラボン割合におけるフラボンの量比は、ガスクロマトグラフィ(GC)によって求めた。
【0031】
第一濃縮工程:
100mlの1:1のエタノール/水混合液を、撹拌しながら水浴中で80°Cに加熱し、12gの所定の出発物質(PMF 60)を添加し、続いて、その混合液を15分間撹拌した。暗褐色に着色した濁った溶液になった。混合液中に含有する溶解されていない粒子をガラスフリットを用いてろ過した。続いて、ろ液を冷却した;室温で、出発製品のある種の結晶をシーディングのために添加し、ろ液を5°Cで24時間保存した。
続いて、晶出したフラボンを吸引ろ過によって除去し、いずれの場合においても20mlのエタノールで二回洗浄し、続いて、乾燥戸棚において50°Cで30分間乾燥した。HPLCは、得られたフラボン混合物の87質量%がHMFからなることを示した(HMF87)。
【0032】
第2濃縮工程(HMFを高純度の形で得る):
第一濃縮工程から得られた品質HMF87を、65:35の比のメタノールと水の混合物で二回再結晶することによって更に濃縮した。これにより、HMFが高純度の形で得ることができた(HPLC純度≧99質量%)(HMF99)。
【実施例2】
【0033】
混合エタノールとヘプタメトキシフラボン(HMF)含有混合物の味見
試験マトリックスに、アルコール含量がそれぞれ4容量%と10容量%の5%ショ糖液を用いた。二つショ糖液の各々に下記を添加した
a)なにも添加しない、
b)2ppmの実施例1からのHMF87、
c)2ppmの実施例1からのHMF99、
d)5ppmの実施例1からのHMF87、
e)5ppmの実施例1からのHMF99。
これらの溶液の全てを、それぞれの場合に5人の専門家からなる専門家パネルが味見した。それぞれの場合に、HMFのない試料及び同一アルコール含量と比較して、HMFを含有する試料においてアルコール印象の極めて著しい強化を検出することができたことについて専門家は一致した。
画分HMF87とHMF99との間に有意差がないことがわかった。
【0034】
実施例3-6(適用例)
特に、異なるアルコール風味及び参照試料と比較した追加のあらゆる風味ノートの評価を求めて、消費者パネルが試験すべき飲料を味見した。
参照は、いずれの場合においても、式IのPMFの以下の組成(HPLC含量)を含むPMF混合物PMF84(シトラス・シネンシス(オレンジ)由来)を添加しないそれぞれの基本飲料を用いた:
51.9質量%の3,5,6,7,8,3',4'-ヘプタメトキシフラボン(式II)
27.9質量%のノビレチン(式IV)
2.7質量%のタンゲレチン(式III)
1.5質量%のシネンセチン(式VI)。
【0035】
実施例3〜6のそれぞれの試験シリーズにおいて、いずれの場合においても、以下のPMF84の割合が参照試料に添加されている、以下の試料を味見した:
a)0ppm(=参照試料)、
b)1ppmのPMF 84、
c)2ppmのPMF 84、
d)5ppmのPMF 84、
e)10ppmのPMF 84、
f)20ppmのPMF 84。
消費者パネルに、コード化された試料の風味が参照試料と比較して味見される、参照試料と5つのコード化された試料(b)〜f)に対応する)を提示した。それぞれの参照試料のアルコール風味の強度は、“ゼロ”によって定義され、コード化された試料を、0(=参照試料との違いがない)〜5(参照試料より非常に強い)の段階に分類した。
【実施例3】
【0036】
2.5容量%のアルコールを含有するLAD
14人又は15人の参加者から構成される消費者パネルに、種々の量のPMF84を添加した、80g/lの砂糖、2g/lのクエン酸、26ml/lのアルコール、96容量%、及び水からなる飲料の風味を評価するように提示し依頼した。参照は、PMF84を添加しない飲料を用いた。
【0037】
参照試料と比較したアルコール風味の強化の作用の評価

【0038】
味見の結果のまとめ
この適用例においてアルコール風味の最適強化は、5-10ppmの範囲である。1-2ppmの添加では、試験参加者の少しの人だけが、アルコール風味の強化を検出することができたことを述べた。20ppmのPMF84の添加では、参加者は、アルコール風味の著しく強くなった検出以外に鋭い辛味ノートを述べている。
【実施例4】
【0039】
5容量%のアルコールを含有するビール
14人の参加者から構成される消費者パネルに、種々の量のPMF84を添加した、900ml/lのアルコールを含まないビール、52ml/lのアルコール、96容量%の炭酸水からなる飲料の風味を評価するように提示し依頼した。参照は、PMF84を添加しない飲料を用いた。
【0040】
参照試料と比較したアルコール風味の強化の作用の評価

【0041】
味見の結果のまとめ
この適用例においてアルコール風味の最適強化は、5-20ppmの範囲である。1-5ppmの添加では、試験参加者の少しの人だけが、アルコール風味強化を検出することができたことを述べた。試験参加者は、ヒリヒリ感、爽快な風味及びわずかな苦味の強化並びにホップノートの強化を述べた。
【実施例5】
【0042】
20容量%のアルコールを含有するリキュール
14人の参加者から構成される消費者パネルに、種々の量のPMF84を添加した、190g/lの砂糖、207ml/lのアルコール、96容量%の水からなる飲料の風味を評価するように提示し依頼した。参照は、PMF84を添加しない飲料を用いた。
【0043】
参照試料と比較したアルコール風味の強化の作用の評価

【0044】
味見の結果のまとめ
この適用例においてアルコール風味の最適強化は、5ppmである。1-2ppmの添加では、試験参加者の少しの人だけが、アルコール風味強化を検出することができたことを述べた。更にまた、5ppmの添加からの飲料がより甘く、わずかにより苦いと述べられている。
【実施例6】
【0045】
37.5容量%のアルコールを含有するウォッカ
14人の参加者から構成される消費者パネルに、種々の量のPMF84を添加した、ウォッカ(銘柄スミルノフウォッカ)、37.5容量%、及び水からなる飲料の風味を評価するように提示し依頼した。参照は、PMF84を添加しない飲料を用いた。
【0046】
参照試料と比較したアルコール風味の強化の作用の評価

【0047】
味見の結果のまとめ
この適用例においてアルコール風味の最適強化は、2-5ppmの範囲である。増加量のPMFの添加で、試験参加者は、ヒリヒリした辛味のある風味を述べている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールの感覚印象、特に風味印象を強くするための式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物の使用:
【化1】

(式I)
(式中、R1〜R10は、互いにそれぞれ独立して、H、メトキシ又はエトキシを示し、
基R1〜R10の少なくとも一つは、メトキシ又はエトキシを示す)。
【請求項2】
式Iの少なくとも一つの化合物が、式II〜VIの化合物からなる群より選ばれる、請求項1に記載の使用:
【化2】

(式II)
【化3】

(式III)
【化4】

(式IV)
【化5】

(式V)
【化6】

(式VI)。
【請求項3】
エタノール及び式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物を含む液体混合物であって、混合物がオレンジジュースを含まないという条件で、液体混合物の容量に基づくエタノール含量が0.1〜50容量%であり且つ液体混合物に基づく式Iの化合物の合計量が1〜20ppmである、前記混合物:
【化7】

(式I)
(式中、R1〜R10は、互いにそれぞれ独立して、H、メトキシ又はエトキシを示し、
基R1〜R10の少なくとも一つは、メトキシ又はエトキシを示す)。
【請求項4】
混合物が、柑橘類の果実からのジュースを含まない、請求項3に記載の液体混合物。
【請求項5】
式Iの化合物が、実質的に式II〜VIの化合物の一つ以上である、請求項3又は4に記載の液体混合物
【化8】

(式II)
【化9】

(式III)
【化10】

(式IV)
【化11】

(式V)
【化12】

(式VI)。
【請求項6】
混合物が、ヒト摂取を意図した飲料である、請求項3〜5のいずれか1項に記載の液体混合物。
【請求項7】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の液体混合物を含むキャンデー。
【請求項8】
エタノール風味印象を強くするための方法であって、
a)エタノール又はエタノール含有混合物を調製する工程、
b)工程b)において、オレンジジュース、好ましくは、柑橘類の果実からのジュースを用いないという条件で、式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物をエタノールの風味印象を強くするような量で添加する工程
を含む、前記方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法を含む、飲料又は固形食品の製造方法。

【公開番号】特開2009−148268(P2009−148268A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−336128(P2008−336128)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(503236223)シムライズ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンジツト・ゲゼルシヤフト (51)
【Fターム(参考)】