説明

アルコール含有水溶液の脱水方法および脱水システム。

【課題】アルコール含有水溶液の脱水方法および脱水システムにおいて、単位時間当たりの処理能力を向上させるとともに、二酸化炭素を排出せずに、エネルギー効率を向上させる。
【解決手段】本発明に係るアルコール含有水溶液の脱水方法は、アルコール含有水溶液を、燃料電池を作動させた際に発生する熱により気化させて蒸気とする第1工程と、蒸気をアルコール成分と水成分とを分離可能な膜に供給し、水成分が分離されてアルコール濃度が上昇した処理液と、アルコール成分が分離されてアルコール濃度が低下した処理液とを得る第2工程と、アルコール濃度が低下した処理液を、燃料電池を作動させた際に発生する電気を用いて電気分解し、当該電気分解により生成した水素および酸素を、それぞれ、燃料電池の燃料ガスおよび酸化剤ガスとして再利用する第3工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール含有水溶液の脱水方法および脱水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
とうもろこしやサトウキビなど、いわゆる「バイオマス原料」から製造されるエタノールは「バイオエタノール」と称される。このバイオエタノールは、カーボンニュートラル、すなわち、燃焼時に発生する二酸化炭素の量が植物原料であるが故にゼロであるとされる、という観点から注目を浴びている。バイオエタノールは、従来の燃料に一定割合で混合して用いられることが想定され、温暖化の原因のひとつとして考えられている二酸化炭素の排出量削減に貢献するであろうと期待されている。バイオエタノールの製法はすでに確立されており、そのプロセスは、主に原料の発酵、蒸留、脱水の3工程から成る。このうち蒸留工程と脱水工程では多量のエネルギーを消費するため、これらの工程における消費エネルギーをいかに低減させるかが技術的な課題となっている。
【0003】
この課題を解決するためのひとつの方法として、水分またはアルコール成分を選択的に透過させる分離膜を利用した浸透気化膜法によって高濃度のアルコール溶液を得る方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、同様に、水分またはアルコール成分を選択的に透過させる分離膜を利用した蒸気透過法をバイオエタノール製造の脱水工程に応用する技術が開示されている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−184628号公報
【非特許文献1】青木、池田ら,製品&技術:膜,32(4),p.234−237(2007)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された浸透気化膜法による分離技術は、一般に、単位時間当たりの処理能力が小さい、という問題がある。
【0007】
また、非特許文献1に記載された蒸気透過法を利用した分離技術においては、通常、蒸気を発生させるのに、燃焼により発生する熱や電気的に発生する熱を用いるが、このエネルギーをいかに小さくするかという課題を有している。さらに、燃焼により発生する熱を用いる場合は、その際に環境にとって削減されるのが好ましいとされている二酸化炭素が発生するという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、アルコール含有水溶液の脱水方法および脱水システムにおいて、単位時間当たりの処理能力を向上させるとともに、二酸化炭素を排出せずに、エネルギー効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、燃料電池を作動させた際に発生する熱を利用してアルコール含有水溶液を蒸気とし、この蒸気を、水選択透過性またはアルコール選択透過性の膜などのアルコール成分と水成分とに分離可能な膜に供給して脱水することにより、単位時間当たりの処理能力を向上させるとともに、二酸化炭素を排出せずに、エネルギー効率を向上させることができることを見出した。
【0010】
また、本発明者らは、脱水の際に排出される排水(低濃度アルコール水溶液)を、運転している燃料電池が作る電気で電気分解して水素と酸素を生成し、これらを運転中の燃料電池の燃料ガスや酸化剤ガスとして利用するか、あるいは、アルコール成分と水成分とに分離可能な膜に供給する蒸気の温度を適切に制御することで、アルコール水溶液の脱水工程のエネルギー効率を顕著に向上させることができることも見出した。
【0011】
本発明者らは、以上のような知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明のある観点によれば、アルコール含有水溶液を、燃料電池を作動させた際に発生する熱により気化させて蒸気とする第1工程と、前記蒸気をアルコール成分と水成分とを分離可能な膜に供給し、水成分が分離されてアルコール濃度が上昇した処理液と、アルコール成分が分離されてアルコール濃度が低下した処理液とを得る第2工程と、前記アルコール濃度が低下した処理液を、前記燃料電池を作動させた際に発生する電気を用いて電気分解し、当該電気分解により生成した水素および酸素を、それぞれ、前記燃料電池の燃料ガスおよび酸化剤ガスとして再利用する第3工程と、を含むアルコール含有水溶液の脱水方法が提供される。
【0013】
前記第2工程で、前記蒸気の温度を100℃以上200℃以下となるように調整することが好ましい。
【0014】
また、本発明の他の観点によれば、アルコール含有水溶液を、燃料電池を作動させた際に発生する熱により気化させて蒸気とする第1工程と、前記蒸気をアルコール成分と水成分とを分離可能な膜に供給し、水成分が分離されてアルコール濃度が上昇した処理液と、アルコール成分が分離されてアルコール濃度が低下した処理液とを得る第2工程と、を含み、前記第1工程で、前記蒸気の温度を100℃以上200℃以下となるように調整するアルコール含有水溶液の脱水方法が提供される。
【0015】
前記アルコール含有水溶液の脱水方法において、前記燃料電池の作動温度を100℃以上250℃以下とすることが好ましい。
【0016】
前記アルコール含有水溶液の脱水方法において、前記燃料電池は、酸をマトリックスに含浸させたものを電解質として用いた酸ドープ型燃料電池であることが好ましい。
【0017】
前記アルコール含有水溶液の脱水方法において、前記第1工程で、前記アルコール含有水溶液を発熱している前記燃料電池に間接的に接触させることが好ましい。
【0018】
前記アルコール含有水溶液の脱水方法において、前記アルコール含有水溶液として、バイオマスを原料として得られるものを使用してもよい。
【0019】
また、本発明のさらに他の観点によれば、燃料ガスおよび酸化剤ガスを用いて作動し、熱および電気を発生する燃料電池と、発熱している前記燃料電池に、アルコール含有水溶液を直接的または間接的に接触させ、前記アルコール含有水溶液を気化させる気化手段と、前記気化手段により気化された前記アルコール含有水溶液の蒸気をアルコール成分と水成分とを分離可能な膜を有し、水成分が分離されてアルコール濃度が上昇した処理液と、アルコール成分が分離されてアルコール濃度が低下した処理液と、に分離する膜分離装置と、前記アルコール濃度が低下した処理液を、前記燃料電池を作動させた際に発生する電気を用いて電気分解する電解槽と、を備え、前記電気分解により生成した水素および酸素を、それぞれ、前記燃料電池の燃料ガスおよび酸化剤ガスとして再利用するアルコール含有水溶液の脱水システムが提供される。
【0020】
前記アルコール含有水溶液の脱水システムは、前記蒸気の温度を100℃以上200℃以下となるように調整する蒸気温度調節手段をさらに備えていてもよい。
【0021】
また、本発明のさらに他の観点によれば、燃料ガスおよび酸化剤ガスを用いて作動し、熱および電気を発生する燃料電池と、発熱している前記燃料電池に、アルコール含有水溶液を直接的または間接的に接触させ、前記アルコール含有水溶液を気化させる気化手段と、前記気化手段により気化された前記アルコール含有水溶液の蒸気をアルコール成分と水成分とを分離可能な膜を有し、水成分が分離されてアルコール濃度が上昇した処理液と、アルコール成分が分離されてアルコール濃度が低下した処理液と、に分離する膜分離装置と、前記蒸気の温度を100℃以上200℃以下となるように調整する蒸気温度調節手段と、を備えるアルコール含有水溶液の脱水システムが提供される。
【0022】
前記アルコール含有水溶液の脱水システムにおいて、前記燃料電池の作動温度は、100℃以上250℃以下であることが好ましい。
【0023】
前記アルコール含有水溶液の脱水システムにおいて、前記燃料電池は、酸をマトリックスに含浸させたものを電解質として用いた酸ドープ型燃料電池であることが好ましい。
【0024】
前記アルコール含有水溶液の脱水システムは、前記燃料電池の周囲の一部または全部を覆うフッ素樹脂で形成されたカバーをさらに備え、前記気化手段は、前記アルコール含有水溶液を前記カバーに接触させるようにしてもよい。
【0025】
前記アルコール含有水溶液の脱水システムにおいて、前記アルコール含有水溶液として、バイオマスを原料として得られるものを使用してもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、アルコール含有水溶液の脱水方法および脱水システムにおいて、従来の蒸気発生方法のように大きなエネルギーを用いることがなく、別途燃料を用いて熱を発生させる必要もないため、単位時間当たりの処理能力を向上させるとともに、二酸化炭素を排出せずに、エネルギー効率を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0028】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水方法および脱水システムについて詳細に説明する。
【0029】
(アルコール含有水溶液の脱水方法)
本発明の第1の実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水方法は、水選択透過性またはアルコール選択透過性の膜などのアルコール成分と水成分とを分離可能な膜に供給するアルコール含有水溶液の蒸気の生成に燃料電池の排熱を利用し、かつ燃料電池が作り出す電気を用いて、膜脱水の際に発生する排水を電気分解して燃料電池を作動させるための燃料ガスと酸化剤ガスを作り出す、というものである。
【0030】
従来は、電気や燃焼によって熱を発生させ、その熱でアルコール含有水溶液を気化させて蒸気を発生させていた。そのため、従来の技術では、熱を発生させるためのエネルギーを以下に小さくするかという課題を有しており、さらに、燃焼により熱を発生させる場合には、COを発生するという問題もあった。加えて、従来の浸透気化膜法、蒸気透過法でアルコール含有水溶液を脱水する場合には、その副生成物として、少量のアルコールを含んだ多量の排水が発生するが、これをいかに処理するかという課題もあった。従って、これらの問題を総合的に解決する技術の開発が望まれていた。
【0031】
これに対して、本実施形態では、蒸気を発生させるために燃料電池の排熱を利用するためにCOの発生がなく、さらに、燃料電池の作動による電気エネルギーを用いてその燃料電池体を作動させるための燃料ガスおよび酸化剤ガスを製造することができ、しかも、そのガスは脱水の工程で発生する排水を原料として生成されるため、排水量の低減化にも貢献することができる。このように、本実施形態によれば、従来技術が有していた問題点を総合的に解決することができる。
【0032】
具体的には、本実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水方法は、下記(1)〜(3)の工程を含む。
(1) アルコール含有水溶液を、燃料電池を作動させた際に発生する熱(排熱)により気化させて蒸気とする工程
(2) 工程(1)で気化させた蒸気をアルコール成分と水成分とを分離可能な膜に供給し、水成分が分離されてアルコール濃度が上昇した処理液(以下、「高濃度アルコール水溶液」という。)と、アルコール成分が分離されてアルコール濃度が低下した処理液(以下、「低濃度アルコール水溶液」という。)と、を得る(脱水)工程
(3) 工程(2)で得られた低濃度アルコール水溶液(排水)を、燃料電池を作動させた際に発生する電気を用いて電気分解し、当該電気分解により生成した水素を運転中の燃料電池の燃料ガスとして、当該電気分解により生成した酸素を運転中の燃料電池の酸化剤ガスとして再利用する工程
【0033】
以下、上記(1)〜(3)の工程について詳細に説明する。
【0034】
<工程(1)について>
本実施形態において、アルコール含有水溶液とは、アルコール類、特にエタノールを含む水溶液を指す。ただし、アルコール含有水溶液には、アルコール成分以外の成分が含まれていてもよい。
【0035】
また、本実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水方法は、バイオマスを原料として得られるアルコール含有水溶液に対して特に好適である。ここで、バイオマスとは、主に植物に由来する原料であり、トウモロコシ、麦、米、サツマイモ、ジャガイモ、テンサイ、サトウキビ等を指す。
【0036】
本実施形態において、燃料電池とは、2種の電極A、Bと電解質との積層体からなる膜電極接合体を基本構成要素として構成される電池を指す。その電池反応の本質は、燃料ガスが一方の電極Aで反応してイオンと電子とに分離され、発生した電子は外部回路を通じて電極Bに達し、発生したイオンは電解質を通過して電極Bに達し、この電子とイオンが電極Bで酸化剤ガスと反応する、というものである。燃料電池は、この電池反応の結果として電気エネルギーを得るデバイスである。
【0037】
電極で反応する燃料ガスとしては水素が好適である。また、水素以外の燃料としては、メタノール、エタノール等のアルコールや、ヒドラジンや、ジメチルエーテルなどを用いることもできる。また、水素を燃料ガスとして用いる場合は、水素ガスの中に水蒸気等の他の気体成分が含まれていてもよい。
【0038】
酸化剤ガスとしては酸素を含んだ気体を利用することが好ましく、最も理想的なものは酸素ガスである。また、酸素を20質量%ほど含む空気も利用することができる。また、本実施形態においては、空気を酸化剤ガスとして用いる場合は、本実施形態によって得られる酸素をこれに追添して空気中の酸素濃度を高めることができる。この方法は、作動させる燃料電池の発電効率を高めることができるので好ましい。
【0039】
本実施形態において、燃料電池の種類としては、高分子電解質型燃料電池、リン酸型燃料電池、アルカリ型燃料電池、溶融塩型燃料電池などを選択することができる。このうち、燃料電池を作動させた際に発生する熱が大きいことが特徴である、リン酸型燃料電池、アルカリ型燃料電池、溶融塩型燃料電池は、本実施形態では特に好適である。ここで、リン酸型燃料電池とは、リン酸を高分子膜や無機多孔体のマトリックスに含浸させたものを電解質に用いた燃料電池を指す。また、アルカリ型燃料電池とは、水酸化カリウム水溶液のようなアルカリ水溶液を高分子膜や無機多孔体のマトリックスに含浸させたものを電解質に用いた燃料電池を指す。また、溶融塩型燃料電池とは、炭酸リチウムや炭酸ナトリウムなどの混合アルカリ溶融塩を電解質に用いた燃料電池を指す。
【0040】
本実施形態において、燃料電池を作動させた際に発生する熱(排熱)とは、燃料電池の電極で反応が起きる際に発生する熱を指す。また、この熱を利用してアルコール含有水溶液を気化させて蒸気とする方法としては、発熱している燃料電池本体にアルコール含有水溶液を直接的または間接的に接触させる方法があるが、電池の破壊(ショート等)を防止する観点から、このうち間接的に接触させる方法が推奨される。
【0041】
本実施形態においては、アルコール含有水溶液を気化させた蒸気の温度を100℃以上200℃以下に調整することが好ましい。蒸気の温度を100℃以上に保持することによって、アルコール含有水溶液の蒸気化を効率よく行うことができる。また、蒸気の温度を200℃以下とすることにより、発生する蒸気を供給する膜によるアルコール成分と水成分との分離効果が低下することを抑制することができる。
【0042】
本実施形態においては、燃料電池の作動温度を100℃以上250℃以下とすることが好ましい。ここで、作動温度とは、燃料電池のユニットの表面温度を指す。一般的に、リン酸型燃料電池、アルカリ型燃料電池、溶融塩型燃料電池を作動させると、その作動温度は100℃以上となるので、本実施形態では、これらの種類の燃料電池を採用することが推奨される。燃料電池の作動温度を100℃以上に保持することによって、アルコール含有水溶液の蒸気化を効率よく行うことができる。また、燃料電池の作動温度を250℃以下とすることにより、発生する蒸気を供給する膜によるアルコール成分と水成分との分離効果が低下することを抑制することができる。
【0043】
このような観点から、本実施形態においては、リン酸を高分子膜や無機多孔体のマトリックスに含浸させたものを電解質として用いたリン酸型燃料電池に代表される酸ドープ型燃料電池の使用が特に推奨される。ここで、酸ドープ型燃料電池とは、リン酸、ホスホン酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホイミド酸、リンタングステン酸、またはこれらの混合物などの酸を、高分子膜や無機多孔体のマトリックスに含浸させたものを電解質として用いた燃料電池を指す。この酸ドープ型燃料電池の高分子膜の素材としては、例えば、上記の酸に対する親和性の高い、ポリベンズイミダゾール類、ポリ(ピリジン類)、ポリ(ピリミジン類)、ポリイミダゾール類、ポリベンゾチアゾール類、ポリベンゾオキサゾール類、ポリオキサジアゾール類、ポリキノリン類、ポリキノキサリン類、ポリチアジアゾール類、ポリ(テトラザピレン類)、ポリオキサゾール類、ポリチアゾール類、ポリビニルピリジン類、ポリビニルイミダゾール類、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0044】
<工程(2)について>
本実施形態において、アルコール成分と水成分とを分離可能な膜とは、アルコール含有水溶液の蒸気を膜に透過させたとき、水成分が分離されてアルコール濃度の上昇した処理液(高濃度アルコール水溶液)と、アルコール成分が分離されてアルコール濃度の低下した処理液(低濃度アルコール水溶液)と、を得ることができる選択透過性を有する膜であり、例えば、アルコール選択透過性の膜や水選択透過性の膜である。このような機能を有する膜としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド等の親水性ポリマーを素材とした膜、スルホン酸基のような親水性官能基を有するフッ素系ポリマーを素材とした膜、スルホン酸基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、のような親水性官能基を有するエンジニアリングプラスチックを素材とした膜、あるいはこれら親水性のポリマー素材を高分子多孔質や無機多孔質の表面に薄膜として積層させた複合膜などが挙げられる。また、親水性のゼオライトや疎水性のゼオライトを含む膜もアルコールや水に対する選択透過性が高く、本実施形態に係る選択透過性を有する膜として好適である。このような膜は、多孔質支持体の表面にゼオライトの薄膜を形成させることで得ることができる。
【0045】
本実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水方法を実機で実現するためには、例えば、後述するように、上記のような選択透過性を有する膜を備える膜分離装置を使用する。
【0046】
<工程(3)について>
本実施形態において、低濃度アルコール水溶液を、燃料電池からを作動させた際に発生する電気によって電気分解するとは、膜分離装置における脱水工程で発生する低濃度アルコール水溶液を電解槽に導入し、この電解槽の電極に、燃料電池を作動させることによって発生した電気を通して、低濃度アルコール水溶液中に含まれる水を電解することを指す。電解のための電圧は、水が電解を始める電圧以上であれば良い。このような電圧を得るためには、燃料電池で得られる電圧をトランスなどにより調整すればよい。低濃度アルコール水溶液の電解を実行すると、陰極側からは水素が、陽極側からは酸素が発生する。本実施形態においては、これらの電極から発生した水素および酸素を、それぞれ、燃料ガスおよび酸化剤ガスとして燃料電池に戻して再利用する。
【0047】
この工程(3)(電解)で得られるガスは、燃料電池の運転に必要な燃料ガスや酸化剤ガスの全量をまかなえるわけではないが、予め準備しなければならない燃料ガスおよび酸化剤ガスの量を低減させることができる。また、酸化剤ガスとして空気を利用している場合には、空気中の酸素濃度をあげることによって、燃料電池の発電効率を高めることに寄与できる。なお、電解される低濃度アルコール水溶液は、その一部をアルコール含有水溶液の原料タンクに戻し、残りの部分を工程(3)における電解に供しても良い。
【0048】
(アルコール含有水溶液の脱水システム)
以上、本実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水方法について詳細に説明したが、続いて、このようなアルコール含有水溶器の脱水方法を実施するための脱水システムについて説明する。
【0049】
本実施形態に係るアルコール含有水溶器の脱水システムは、燃料電池と、気化手段と、膜分離装置と、電解槽と、を備える。
【0050】
本実施形態に係る燃料電池は、燃料ガスおよび酸化剤ガスを用いて作動し、熱および電気を発生するデバイスである。この燃料電池の詳細については、本実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水方法の説明において述べたので、ここではその説明を省略する。
【0051】
気化手段は、発熱している燃料電池に、アルコール含有水溶液を直接的または間接的に接触させ、アルコール含有水溶液を気化させる。この気化手段としては、発熱している燃料電池本体にアルコール含有水溶液を直接的または間接的に接触させる手段があるが、このうち間接的に接触させる手段が推奨される。燃料電池本体とアルコール含有水溶液を間接的に接触させる手段としては、燃料電池本体を熱伝導性が高く、かつ耐熱性のあるカバーで覆い、このカバーにアルコール含有水溶液を接触させる方法が簡便である。このようなカバーに利用できる素材のひとつとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(商品名:テフロン(登録商標))等のフッ素樹脂が挙げられる。
【0052】
膜分離装置は、気化手段により気化されたアルコール含有水溶液の蒸気をアルコール成分と水成分とを分離可能な膜を有し、水成分が分離されてアルコール濃度が上昇した処理液(高濃度アルコール水溶液)と、アルコール成分が分離されてアルコール濃度が低下した処理液(低濃度アルコール水溶液)と、に分離する。アルコール成分と水成分とを分離可能な膜の詳細については、本実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水方法の説明において述べたので、ここではその説明を省略する。なお、この膜分離装置で処理されたアルコール含有水溶液の蒸気は、選択透過性を有する膜がアルコール選択透過性であれば、膜の二次側蒸気(膜透過後の蒸気)を冷却して液化したものが高濃度アルコール水溶液となる。また、選択透過性を有する膜が水選択透過性であれば、膜の一次側蒸気(膜透過前の蒸気)を冷却して液化したものが高濃度アルコール水溶液となる。
【0053】
電解槽は、膜分離装置で処理された後の低濃度アルコール水溶液を、燃料電池を作動させた際に発生する電気を用いて電気分解する。そして、この電気分解により生成した水素および酸素は、それぞれ、燃料電池の燃料ガスおよび酸化剤ガスとして再利用される。この際に用いる電解槽としては、公知の技術によるもので良い。
【0054】
また、本実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水システムは、気化手段により気化された蒸気の温度を100℃以上200℃以下となるように調整する蒸気温度調節手段をさらに備えていてもよい。
【0055】
このような本実施形態に係る脱水システムにおいては、燃料電池と膜分離装置とは、それぞれ、処理されるアルコール含有水溶液が燃料電池の熱によって蒸気となり、この蒸気が膜分離装置に導入され、燃料電池から発生した電気が電解槽に送られるように接続され、電解槽で発生した水素と酸素が燃料電池に供給されるような関係に配置されている。以下、図1を参照しながら、このような本実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水システムの具体的な構成例について説明する。なお、図1は、本発明の第1の実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水システムの構成の一例を示す説明図である。
【0056】
図1に示すように、図中央の燃料電池ユニット1は、燃料電池カバー2にその周囲が覆われており、燃料電池カバー2の中に収納されている。図1の例においては、燃料電池ユニット1は、ポリベンズイミダゾールの高分子膜にリン酸を含浸させた電解質膜を用いたリン酸ドープ型燃料電池であり、その出力は30キロワットである。燃料電池カバー2は、テフロン(登録商標)製であり、燃料電池ユニット1の表面と燃料電池カバー2とが接するように配置されている。蒸気密閉タンク3は、その内部で、アルコール含有水溶液が気化して蒸気となり、ここで発生した蒸気が後述する膜分離装置5や電解槽6に送られる。なお、この図1の例では、燃料電池カバー2及び蒸気密閉タンク3が本実施形態に係る気化手段を構成している。貯蔵タンク4は、アルコール含有水溶液を貯蔵しておくためのタンクであり、送液ポンプ12とバルブ23、24によって液量を調整されて、アルコール含有水溶液が、貯蔵タンク4から蒸気密閉タンク3に送られる。本例において、アルコール含有水溶液は、濃度95質量%のエタノール水溶液である。
【0057】
膜分離装置5は、アルコール成分と水成分とを分離する能力を有した膜が収納されている。本例では、膜として水成分を選択的に透過する管状のゼオライト膜を用いている。この膜分離装置5としては、例えば、その処理能力が、アルコール濃度の上昇した処理液(高濃度アルコール水溶液)を1日当たりおよそ1トン得られるものを用いる。この膜分離装置5の構造を図2に示している。図2に示すように、この膜分離装置5は、アルコール成分と水成分とを分離する能力を有した膜として、管状の無機多孔体35の内表面にゼオライトよりなる膜(ゼオライト膜36)を積層させた構造を有し、このゼオライト膜36は、水を選択的に透過させる。膜分離装置5の膜の一次側蒸気入口39からアルコール含有水溶液の蒸気を導入すると、蒸気は膜の一次側37に至る。膜の二次側38を真空にすると、蒸気中の水分がゼオライト膜36、無機多孔体35の順で管状の膜を透過し、膜の二次側蒸気出口41から排出される。膜の一次側37にある蒸気は脱水されてアルコール濃度の高い状態となり、膜の二次側蒸気出口41から排出される。膜分離装置5から、図1中下側に伸びているラインはバルブ26と連結されているが、ここが膜の一次側蒸気の排出ラインとなり、排出した蒸気が冷却装置17により液化し、バルブ27を経由して一次側処理液貯蔵タンク9に貯蔵される。使用する膜が水選択透過性であれば、この一次側処理液貯蔵タンク9内の処理液がアルコール濃度の上昇した処理液(高濃度アルコール水溶液)となる。
【0058】
電解槽6は、陽極部7と陰極部8とを有し、通電によって酸素と水素が発生する。この発生した水素および酸素は、それぞれ、燃料電池を作動させる燃料ガスおよび酸化剤ガスとして利用される。そのため、発生した酸素と水素が燃料電池に供給されるように、陽極部7は、ガス量調整バルブ21を介して空気または酸素タンク10に連結され、陰極部8は、ガス量調整バルブ22を介して水素タンク11に連結されている。燃料電池ユニット1へ供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスのガス量は、ガス量調整バルブ19とガス量調整バルブ20で調整することができる。また、エアー送気用ブロー13は、空気または酸素タンク10内の酸化剤ガスを用いず、大気中から空気を取り入れるためのものであり、ガス量調整バルブ18と連結されている。
【0059】
また、蒸気密閉タンク3の蒸気の取り出し口側には、蒸気の温度と圧力を調節する蒸気温度・圧力調節器16が連結されており、蒸気温度・圧力調節器16の蒸気密閉タンク3と反対側は、蒸気量調整バルブ25を介して膜分離装置5に連結されている。本例では、蒸気温度・圧力調節器16により、膜分離装置5に送り込まれる蒸気の温度を100℃〜200℃となるように調整する。このような蒸気温度・圧力調節器16としては、例えば、冷媒や空気によって温度を調整する冷却機、電気ヒーター等で加温する加熱機、あるいは、それらの両機能を備えた装置などが挙げられる。
【0060】
冷却装置14、15は、膜分離装置5の二次側蒸気を冷却して液化するものであり、蒸気量調整バルブ29、30を介して膜分離装置5と連結されている。また、液量調整バルブ28は、膜分離装置5の二次側蒸気を系外に排出するためのものである。本例による脱水システムでは、膜分離装置5の二次側蒸気は、そのすべて、またはその一部を電解槽6に送り込むことができ、蒸気の一部を電解槽6に送り込む場合には、蒸気量調整バルブ30(これは三方弁となっている)と液量調整バルブ28を調整し、冷却装置15で液化された二次側蒸気を系外に排出する。真空ポンプ34は、膜分離装置5の二次側を真空に引いて蒸気が膜36透過させるようにするための駆動力を供給する。図1中に破線で示した送電ライン31は、燃料電池ユニット1で発電した電気を電解槽6中の陽極7および陰極8に送り込む送電ラインである。電流・電圧調整器32は、電解槽6における電解電量と電圧を調整する。本例では、電流・電圧調節器32は、例えば、電圧を1.5ボルト〜2.5ボルトに調整する。ただし、本発明においては、燃料電池ユニット1から直接1.5ボルト〜2.5ボルトの電圧を取り出せるようなスタック構造としてもよい。なお、図1には示されていないが、送電ライン31は、途中から分岐して電気の一部を、系を運転するシステムの動力として使用することも可能である。
【0061】
次に、図1に示した脱水システムを使用したアルコール含有水溶液の脱水方法の具体例について説明する。
【0062】
図1の水素タンク11から燃料ガスを、空気または酸素タンク10から酸化剤ガスを燃料電池ユニット1に供給して発電を開始するともに、エタノール含有水溶液を貯蔵タンク4から燃料電池ユニット1のボイラー部分へ供給する。このとき、ガス量調整バルブ19、20、液量調整バルブ23、24、および送液ポンプ12を調整して、燃料電池の作動温度が、例えば150℃付近で一定となるようにする。発生した蒸気は、蒸気温度・圧力調整器16で、例えば、温度が120℃〜150℃、圧力が1MPa以下となるように調整しながら膜分離装置5へ送り込む。真空ポンプ34を駆動させると蒸気が膜36を透過し始める。膜分離装置5から一次側蒸気および二次側蒸気が出てきたら、冷却装置14および17を稼動させ、一次側蒸気は貯蔵タンク9へ貯蔵する。二次側蒸気は電解槽6へ送られる。このときの流量は、蒸気量調整バルブ29、30で調整する。二次側蒸気が液化して得られる排水(エタノール濃度の低下した処理液)が電解槽6に貯まったら、電圧調整器32で電圧を例えば2ボルトとなるように調整しながら送電する。電解槽6で発生した水素と酸素は、ガス量調整バルブ21、22を調整しながら、水素タンク11および空気または酸素タンク10に送り込む。本例では、蒸気の発生量が1日当たり1000キログラム、一次側蒸気を液化してエタノール濃度が上昇した処理液は、エタノール濃度がおよそ99.5質量%、収量が950キログラムとなる。一方、二次側蒸気を液化してエタノール濃度が低下した処理液(排液)は、エタノール濃度がおよそ9質量%、収量が50キログラムとなる。また、本例で、電解によって消費される排液量はおよそ30キログラムであり、排液のおよそ60パーセントを削減することができる。
【0063】
以上説明したような本実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水方法および脱水システムによれば、従来の蒸気発生方法のように大きなエネルギーを用いることなくエネルギー効率を顕著に向上させ、また、二酸化炭素の発生もなく、アルコール含有水溶液、とりわけバイオマスを原料として製造されるアルコール含有水溶液の脱水工程を実施することができる。さらに、燃料電池で発生する電気エネルギーを使って脱水の際に発生する排水を電気分解し、燃料電池の燃料ガス、酸化剤ガスである水素と酸素を生成することができ、これによって脱水工程における排水量を低減することができる。
【0064】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水方法および脱水システムについて説明する。
【0065】
本発明の第2の実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水方法は、上述した第1の実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水方法とは異なり、工程(3)、すなわち、燃料電池が作り出す電気を用いて、膜脱水の際に発生する排水を電気分解して燃料電池を作動させるための燃料ガスと酸化剤ガスを作り出す工程については、必須ではない。その代わりに、工程(2)において、アルコール成分と水成分とを分離可能な膜に供給する蒸気の温度を100℃以上200℃以下とすることを必須とする。
【0066】
すなわち、本実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水方法は、下記(1)および(2)の工程を含む。
(1) アルコール含有水溶液を、燃料電池を作動させた際に発生する熱(排熱)により気化させて蒸気とする工程
(2) 工程(1)で気化させた蒸気の温度を100℃以上200℃以上となるように調整した後に、その蒸気をアルコール成分と水成分とを分離可能な膜に供給し、水成分が分離されてアルコール濃度が上昇した処理液(以下、「高濃度アルコール水溶液」という。)と、アルコール成分が分離されてアルコール濃度が低下した処理液(以下、「低濃度アルコール水溶液」という。)と、を得る(脱水)工程
【0067】
また、本実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水システムは、上述した第1の実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水システムとは異なり、電解槽は必ずしも備えている必要はない。その代わりに、気化手段により気化され、アルコール成分と水成分とを分離可能な膜に供給する蒸気の温度を100℃以上200℃以下となるように調整する蒸気温度調節手段を備えていることを必須としている。
【0068】
すなわち、本実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水システムは、燃料ガスおよび酸化剤ガスを用いて作動し、熱および電気を発生する燃料電池と、発熱している燃料電池に、アルコール含有水溶液を直接的または間接的に接触させ、アルコール含有水溶液を気化させる気化手段と、気化手段により気化されたアルコール含有水溶液の蒸気をアルコール成分と水成分とを分離可能な膜を有し、水成分が分離されてアルコール濃度が上昇した処理液と、アルコール成分が分離されてアルコール濃度が低下した処理液と、に分離する膜分離装置と、蒸気の温度を100℃以上200℃以下となるように調整する蒸気温度調節手段と、を備えている。
【0069】
このように、本実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水方法および脱水システムによれば、第1の実施形態の場合と同様に、アルコール成分と水成分とに分離可能な膜に供給する蒸気の温度を適切に制御することで、アルコール水溶液の脱水工程のエネルギー効率を顕著に向上させることができる。
【0070】
また、必須とする構成の違い以外の点については、本実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水方法および脱水システムは、上述した第1の実施形態の場合と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るアルコール含有水溶液の脱水システムの構成の一例を示す説明図である。
【図2】同実施形態に係る膜分離装置の構成の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0073】
1 燃料電池ユニット
2 燃料電池カバー
3 蒸気密閉タンク
4 アルコール含有水溶液の貯蔵タンク
5 膜分離装置
6 電解槽
7 陽極部分
8 陰極部分
9 一次側処理液貯蔵タンク
10 空気または酸素タンク
11 水素タンク
12 送液ポンプ
13 エアー送気用ブロアー
14 冷却装置
15 冷却装置
16 蒸気温度・圧力調節器
17 冷却装置
18 ガス量調整バルブ
19 ガス量調整バルブ
20 ガス量調整バルブ
21 ガス量調整バルブ
22 ガス量調整バルブ
23 液量調整バルブ
24 液量調整バルブ
25 蒸気量調整バルブ
26 蒸気量調整バルブ
27 液量調整バルブ
28 液量調整バルブ
29 蒸気量調整バルブ
30 蒸気量調整バルブ
31 送電ライン
32 電圧調整器
33 液量調整バルブ
34 真空ポンプ
35 ゼオライト膜を貼り付けた無機多孔体
36 ゼオライト膜
37 膜の一次側
38 膜の二次側
39 膜の一次側蒸気入口
40 膜の一次側蒸気出口
41 膜の二次側蒸気出口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール含有水溶液を、燃料電池を作動させた際に発生する熱により気化させて蒸気とする第1工程と、
前記蒸気をアルコール成分と水成分とを分離可能な膜に供給し、水成分が分離されてアルコール濃度が上昇した処理液と、アルコール成分が分離されてアルコール濃度が低下した処理液とを得る第2工程と、
前記アルコール濃度が低下した処理液を、前記燃料電池を作動させた際に発生する電気を用いて電気分解し、当該電気分解により生成した水素および酸素を、それぞれ、前記燃料電池の燃料ガスおよび酸化剤ガスとして再利用する第3工程と、
を含むことを特徴とする、アルコール含有水溶液の脱水方法。
【請求項2】
前記第2工程で、前記蒸気の温度を100℃以上200℃以下となるように調整することを特徴とする、請求項1に記載のアルコール含有水溶液の脱水方法。
【請求項3】
アルコール含有水溶液を、燃料電池を作動させた際に発生する熱により気化させて蒸気とする第1工程と、
前記蒸気をアルコール成分と水成分とを分離可能な膜に供給し、水成分が分離されてアルコール濃度が上昇した処理液と、アルコール成分が分離されてアルコール濃度が低下した処理液とを得る第2工程と、
を含み、
前記第1工程で、前記蒸気の温度を100℃以上200℃以下となるように調整することを特徴とする、アルコール含有水溶液の脱水方法。
【請求項4】
前記燃料電池の作動温度を100℃以上250℃以下とすることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のアルコール含有水溶液の脱水方法。
【請求項5】
前記燃料電池は、酸をマトリックスに含浸させたものを電解質として用いた酸ドープ型燃料電池であることを特徴とする、請求項4に記載のアルコール含有水溶液の脱水方法。
【請求項6】
前記第1工程で、前記アルコール含有水溶液を発熱している前記燃料電池に間接的に接触させることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のアルコール含有水溶液の脱水方法。
【請求項7】
前記アルコール含有水溶液は、バイオマスを原料として得られることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のアルコール含有水溶液の脱水方法。
【請求項8】
燃料ガスおよび酸化剤ガスを用いて作動し、熱および電気を発生する燃料電池と、
発熱している前記燃料電池に、アルコール含有水溶液を直接的または間接的に接触させ、前記アルコール含有水溶液を気化させる気化手段と、
前記気化手段により気化された前記アルコール含有水溶液の蒸気をアルコール成分と水成分とを分離可能な膜を有し、水成分が分離されてアルコール濃度が上昇した処理液と、アルコール成分が分離されてアルコール濃度が低下した処理液と、に分離する膜分離装置と、
前記アルコール濃度が低下した処理液を、前記燃料電池を作動させた際に発生する電気を用いて電気分解する電解槽と、
を備え、
前記電気分解により生成した水素および酸素を、それぞれ、前記燃料電池の燃料ガスおよび酸化剤ガスとして再利用することを特徴とする、アルコール含有水溶液の脱水システム。
【請求項9】
前記蒸気の温度を100℃以上200℃以下となるように調整する蒸気温度調節手段をさらに備えることを特徴とする、請求項8に記載のアルコール含有水溶液の脱水システム。
【請求項10】
燃料ガスおよび酸化剤ガスを用いて作動し、熱および電気を発生する燃料電池と、
発熱している前記燃料電池に、アルコール含有水溶液を直接的または間接的に接触させ、前記アルコール含有水溶液を気化させる気化手段と、
前記気化手段により気化された前記アルコール含有水溶液の蒸気をアルコール成分と水成分とを分離可能な膜を有し、水成分が分離されてアルコール濃度が上昇した処理液と、アルコール成分が分離されてアルコール濃度が低下した処理液と、に分離する膜分離装置と、
前記蒸気の温度を100℃以上200℃以下となるように調整する蒸気温度調節手段と、
を備えることを特徴とする、アルコール含有水溶液の脱水システム。
【請求項11】
前記燃料電池の作動温度は、100℃以上250℃以下であることを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載のアルコール含有水溶液の脱水システム。
【請求項12】
前記燃料電池は、酸をマトリックスに含浸させたものを電解質として用いた酸ドープ型燃料電池であることを特徴とする、請求項11に記載のアルコール含有水溶液の脱水システム。
【請求項13】
前記燃料電池の周囲の一部または全部を覆うフッ素樹脂で形成されたカバーをさらに備え、
前記気化手段は、前記アルコール含有水溶液を前記カバーに接触させることを特徴とする、請求項8〜12のいずれかに記載のアルコール含有水溶液の脱水システム。
【請求項14】
前記アルコール含有水溶液は、バイオマスを原料として得られることを特徴とする、請求項8〜13のいずれかに記載のアルコール含有水溶液の脱水システム。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−158166(P2009−158166A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332543(P2007−332543)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】