説明

アルコール含有燃料用燃料ポンプの交換警報システム

【課題】最適タイミングで燃料ポンプの交換を促すことで燃料ポンプの作動不良を未然に防止できるアルコール含有燃料用燃料ポンプの交換警報システムを提供する。
【解決手段】吸入口7及び吐出口8が形成されたケース6内に通電部によって電力供給されるモータ部及びポンプ部が配置された燃料ポンプ1の交換警報システムであって、通電部の電流を電流計11により検知して通電部の電流値が予め設定された燃料ポンプ5の正常使用許容範囲を越える前に警告灯12を作動させる。最適なタイミングでユーザに燃料ポンプ5の使用耐久寿命を報知でき、燃料ポンプ5の交換を促すことで燃料ポンプの作動不良を未然に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク内に装着されてアルコール含有燃料をエンジンに圧送する燃料ポンプの交換警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料事情の悪化や排気清浄化等の要請により従来のガソリンに加え、代替燃料としてアルコールを同時に使用可能なシステムが実用化されつつある。このシステムを搭載した自動車等の車両(FFV:Flexible Fuel Vehicle)では、ガソリンは勿論のことアルコールとガソリンの混合燃料、或いはアルコールのみで走行可能である。このFFVで使用される燃料のアルコール濃度(含有率)は燃料タンクに燃料を補給の際、ユーザの要望により0%(ガソリンのみ)から100%(アルコールのみ)の間で変化する。この種のFFV用エンジンでは、例えば燃料中のアルコール濃度が高くなるに従ってアルコール燃料の特性により低温で気化し難く、アルコール濃度センサにより検出されたアルコール濃度に基づきエンジンの燃料噴射量等を可変制御している。
【0003】
一方、エンジンに燃料を供給する燃料ポンプは、燃料タンクの内部に装着されるインタンク式のポンプであって、燃料ポンプ全体が燃料に漬かった状態になり得る。
【0004】
この燃料ポンプは吸入口及び吐出口が形成されたケースの内部にポンプ部及びモータ部が配置されると共に燃料通路が形成される。モータ部の駆動源となる電力が外部から供給される正極ターミナル及び負極ターミナルが組み付けられ、これら正極ターミナル及び負極ターミナルにピグテール等を介してモータ部の整流子に当接するブラシが接続される。そして、外部から正極ターミナル及び負極ターミナルに電力が供給され、ピグテール等を介してブラシに電力が流れ、ブラシから整流子を介して電機子のコイルに電力が供給されてモータ部が駆動し、モータ部によりポンプ部が駆動されて燃料タンク内の燃料を吸入口から吸入して燃料通路を介して吐出口に向けて圧送する。
【0005】
この種の燃料ポンプにおいては正極ターミナル及び負極ターミナルの両ターミナル、ピグテール、ブラシ等の通電部が燃料通路内に露出して燃料に晒される。そして、ガソリン代替燃料であるアルコールには導電性の高い成分が含まれ、その導電性の高いアルコールを含む燃料に晒される陽極側の通電部には電気化学的腐食(以下、電解腐食)が生じ、電解腐食による通電部の減肉による通電抵抗の増大等によって通電部の通電不良を招くことが懸念される。
【0006】
この対策として燃料に晒される導電部の露出を小さくして電解腐食を抑制する燃料ポンプが種々提案されている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、正極ターミナル及び負極ターミナルを樹脂によりモールドすることで燃料通路内における両ターミナルの露出面積を小さくして、両ターミナルの電解腐食を抑制する燃料ポンプが提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2008−64029号公報
【特許文献2】特開2008−64030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1及び特許文献2によると、正極ターミナル及び負極ターミナルを樹脂によりモールドすることで燃料通路内に露出する両ターミナルの露出面積を小さくなり、両ターミナルの電解腐食される部分が抑制できる。
【0009】
しかし、回転する整流子に接するブラシ等の摺動接点やピグテール等の可動配線部を完全に被覆することは困難であり、燃料に晒されるピグテールやブラシ等の通電部の電解腐食に伴い燃料ポンプの交換等のメンテナンスが要求される。
【0010】
この通電部の電解腐食は、通電部内の金属がイオン化して電解質溶液であるアルコール含有燃料中に溶け出す現象で通電部への通電によって促進され、その電解腐食進展速度は燃料のアルコール濃度により異なることから、燃料のアルコール濃度が種々変化するFFVにおいては最適な燃料ポンプの交換タイミングを設定することが極めて困難である。
【0011】
ここで、発明者は、鋭意研究実験により燃料に晒される通電部の電解腐食に伴う通電部の通電抵抗変化等の進展変化する腐食挙動変化に基づいて燃料ポンプの通電部の耐久寿命を推定し得ることを見出した。
【0012】
従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的を、燃料ポンプの通電部の腐食挙動変化に基づき最適タイミングで燃料ポンプの交換を促すことで燃料ポンプの作動不良を未然に防止できるアルコール含有燃料用燃料ポンプの交換警報システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する請求項1に記載のアルコール含有燃料用燃料ポンプの交換警報システムの発明は、燃料タンク内に装着され、吸入口及び吐出口が形成されたケース内に上記吸入口と吐出口を連通する燃料通路が形成されると共に該燃料通路に露出する通電部によって電力供給されるモータ部及びポンプ部が配置されて上記吸入口から吸入した燃料を吐出口から燃料パイプを介してエンジンに供給するアルコール含有燃料用ポンプの交換警報システムにおいて、上記通電部の電気化学的腐食により進展する腐食挙動変化に基づいて該通電部の耐久寿命を推定し、該腐食挙動変化値が予め設定された燃料ポンプの正常使用許容範囲を越える前に警報手段を作動させることを特徴とする。
【0014】
この発明によると、アルコール含有燃料に晒されて電解腐食により進展する燃料ポンプの通電部の腐食挙動変化値が予め設定された燃料ポンプの正常使用許容範囲を越える前に警報手段を作動させることから、燃料中のアルコール濃度の変化にかかわらず最適なタイミングでユーザに燃料ポンプの使用耐久寿命となることを警報手段により報知し、燃料ポンプの交換を促すことができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1のアルコール含有燃料用ポンプの交換警報システムにおいて、上記燃料ポンプの通電部の通電電流を検出する電流検出手段を備え、上記腐食挙動変化が該電流検出手段の検出電流値変化であって、該検出電流値が予め設定された燃料ポンプの正常使用許容範囲を越える前に警報手段を作動させることを特徴とする。
【0016】
この発明によると、燃料ポンプの通電部の通電に伴って次第に通電部が電触腐食によって減肉されて進展する通電部の電流値変化を電流検出手段により検出して通電部の電流値が予め設定された燃料ポンプの正常使用許容範囲を越える前に警報手段を作動させることから、燃料中のアルコール濃度の変化にかかわらず最適なタイミングでユーザに燃料ポンプの使用耐久寿命となることを警報手段により報知し、燃料ポンプの交換を促すことができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1のアルコール含有燃料用ポンプの交換警報システムにおいて、上記燃料ポンプの吐出量を検出する吐出量検出手段を備え、上記腐食挙動変化が該吐出量検出手段の検出吐出量変化であって、該検出吐出量が予め設定された燃料ポンプの正常使用許容範囲を越える前に警報手段を作動させることを特徴とする。
【0018】
この発明によると、燃料ポンプの通電部の通電に伴う電触腐食によって減肉される通電部の電流低下によって低下する燃料ポンプの吐出量を吐出量検出手段により検出して吐出量が燃料ポンプの正常使用許容範囲を越える前に警報手段を作動させることから、燃料中のアルコール濃度の変化にかかわらず最適なタイミングでユーザに燃料ポンプの使用耐久寿命となることを警報手段により報知し、燃料ポンプの交換を促すことができる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1のアルコール含有燃料用ポンプの交換警報システムにおいて、燃料のアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出手段と燃料ポンプの作動時間を検出する通電時間計測手段を備え、燃料の種々のアルコール濃度毎の通電部における電解腐食の進展比率を示すデータベースを参照して上記アルコール濃度検出手段による検出アルコール濃度及び通電時間計測手段による検出作動時間に基づいて上記腐食挙動変化の進展を求め、該腐食挙動変化値が正常使用許容範囲を越える前に警報手段を作動させることを特徴とする。
【0020】
この発明によると、燃料の種々のアルコール濃度毎の通電部に対する電解腐食の進展比率を示すデータベースを参照してアルコール濃度検出手段による検出アルコール濃度及び通電時間計測手段による検出作動時間に基づいて腐食挙動変化の進展を求め、該腐食挙動変化値が正常使用許容範囲を越える前に警報手段を作動させることから、最適なタイミングでユーザに燃料ポンプの使用耐久寿命となることを警報手段により報知し、燃料ポンプの交換を促すことができる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項4のアルコール含有燃料用ポンプの交換警報システムにおいて、上記アルコール濃度検出手段は、FFVのエンジン制御用のアルコール濃度検出手段を兼備することを特徴とする。
【0022】
この発明によると、アルコール含有燃料用ポンプの交換警報システムにおけるアルコール濃度検出手段が、FFVのエンジン制御用のアルコール濃度検出手段を兼備することから、燃料ポンプの交換警報システム専用のアルコール濃度検出手段を省略することが可能になり構成の簡素化及び製造コストの低減が得られる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、アルコール含有燃料に晒されて電解腐食により進展する燃料ポンプの通電部の腐食挙動変化が予め設定された燃料ポンプの正常使用許容範囲を越える前に警報手段を作動させて、最適なタイミングでユーザに燃料ポンプの使用耐久寿命となることを警報手段により報知でき、燃料ポンプの作動不良が未然に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明によるアルコール含有燃料用ポンプの交換警報システムの実施の形態をFFVに搭載される燃料タンク内に燃料ポンプが配設されたインタンク式の燃料ポンプを例に説明する。
【0025】
(第1実施の形態)
第1実施の形態を図1及び図2を参照して説明する。図1は本実施の形態における燃料ポンプ交換警報システムの概要を示す構成図である。
【0026】
燃料タンク1の内部には燃料ポンプ5が装着され、燃料ポンプ5全体が燃料内に漬かった状態になり得る。燃料タンク1にはガソリンは勿論のことアルコールとガソリンの混合燃料、或いはアルコールのみが供給され、燃料のアルコール濃度は0%(ガソリンのみ)から100%(アルコールのみ)の間で変化する。
【0027】
燃料ポンプ5は、周知の既存の燃料ポンプと同様であり詳細な説明を省略するが、吸入口7及び燃料パイプ9に接続される吐出口8が形成されたケース6の内部に図示しないポンプ部及びモータ部が配置されると共に燃料通路が形成され、モータ部の通電部が設けられる。通電部はモータ部の駆動源となる電力が外部から供給される正極ターミナル及び負極ターミナル、これら正極ターミナル及び負極ターミナルにピグテール等を介して整流子に当接するブラシが接続される。そして、外部から正極ターミナル及び負極ターミナルに電力が供給され、ピグテール等を介してブラシに電力が流れ、ブラシから整流子を介して電機子のコイルに電力が供給されてモータ部が駆動し、モータ部によりポンプ部が駆動されて燃料タンク1内の燃料を吸入口7から吸入して燃料通路を介して吐出口8に向けて圧送し、燃料パイプ9を介してエンジン10に供給する。
【0028】
更に、燃料ポンプ5における通電部の電解腐食に伴い進展する腐食挙動変化となる通電部の通電抵抗の変化を検出するための電流検出手段である電流計11、例えば車室内のインストルメントパネルに配設された警報手段となる警告灯12、電流計11により検出された電流値が予め設定された閾値a、即ち電解腐食による通電部の減肉によって燃料ポンプ5の機能が正常使用許容範囲以下となる直前の電流値を越えた際に警告灯12を作動させる制御部となるECU13を備える。
【0029】
ここで、アルコール含有燃料に晒させる燃料ポンプ5の通電部は、燃料ポンプ5の使用に伴う通電によって電解腐食が促進されて次第に減肉され、通電部の通電抵抗が次第に上昇して電流値が次第に下降する。この通電部の通電抵抗の上昇に伴い低下する電流値の進展変化により通電部の電解腐食の進展を推定する。通電部の通電抵抗の上昇により電流値が低下して燃料ポンプ5の機能が正常使用許容範囲以下、即ち燃料ポンプ5の使用耐久寿命となる直前の電流値を上記閾値aとする。この閾値aは、予め通電部の電解腐食による電流値の変化と正常使用許容範囲との相関関係を実験やシミュレーションすることによって設定される。
【0030】
この燃料ポンプ5の使用時間の経過に伴う電流値の進展変化と閾値a、即ち警報灯12の点灯の相関の一例を図2に示す。
【0031】
このように構成された燃料ポンプ交換警報装置は、FFVの運転等により燃料タンク1内においてアルコール含有燃料に晒される燃料ポンプ5の通電部は、通電に伴って次第に電解腐食が促進されて減肉されて進展する通電部の腐食挙動変化値、即ち通電部における電流値の進展変化によって推定し、電流計11により検出される通電部の電流値が予め設定された閾値aに達した際に、ECU13によって警告灯12を作動させてユーザに燃料ポンプ5の使用耐久寿命となることを知らせ、燃料ポンプ5の交換を促す。
【0032】
従って、本実施の形態によると、アルコール含有燃料に晒されて電解腐食する燃料ポンプ5の通電部の腐食挙動変化値である進展する電流値の変化に基づいて警告灯12を点灯させることから、燃料中のアルコール濃度の変化にかかわらず最適なタイミングでユーザに燃料ポンプ5が使用耐久寿命となることを報知し、燃料ポンプ5の交換を促すことができ、燃料ポンプ5の作動不良が未然に防止できる。
【0033】
(第2実施の形態)
第2実施の形態を図3及び図4を参照して説明する。図3は本実施の形態における燃料ポンプ交換警報システムの概要を示す構成図である。なお、図3において図1と対応する部位には同一符号を付することで該部の詳細な説明を省略し、異なる部分を主に説明する。
【0034】
第1実施の形態と同様に燃料タンク1内に燃料ポンプ5が装着され、燃料ポンプ5は、吸入口7及び燃料パイプ9に接続される吐出口8が形成されたケース6の内部に図示しないポンプ部及びモータ部が配置されると共に燃料通路が形成され、モータ部によりポンプ部が駆動されて燃料タンク1内の燃料を吸入口7から吸入して燃料通路を介して吐出口8に向けて圧送し、吐出口8から燃料パイプ9を介してエンジン10に供給する。
【0035】
更に、燃料ポンプ5における通電部の電解腐食に伴う該部の電流低下による燃料ポンプ5の吐出量の変化を腐食挙動変化として検出するための吐出量検出手段となる流量計21が燃料供給回路、本実施の形態では燃料パイプ9に設けられる。流量計21により検出された流量値が予め設定された閾値b、即ち電食腐食による通電部の減肉による電流抵抗の上昇により電流が低下して燃料ポンプ5の進展変化する吐出量が正常使用許容範囲以下となる直前の流量値を閾値bとし、この閾値bを越えた際に警告灯12を点灯作動させる制御部となるECU23を備える。
【0036】
ここで、アルコール含有燃料に晒させる燃料ポンプ5の通電部は、燃料ポンプ5の使用に伴う通電によって電解腐食が促進されて次第に減肉されて通電部の通電抵抗が次第に上昇して電流値が低下する。この電流値の低下に伴って次第に燃料ポンプ5により吐出量が低下する。この燃料ポンプ5の吐出量の進展変化を腐食挙動変化とし、この腐食挙動変化値となる燃料ポンプ5の吐出量の低下の変化により通電部の腐食変化を推定し、燃料ポンプ5の燃料吐出量が正常使用許容範囲以下、即ち燃料ポンプ5の使用耐久寿命となる直前の燃料ポンプ5の吐出量を上記閾値bとする。この閾値bは予め通電部の電解腐食による燃料ポンプ6の吐出量の進展変化と燃料ポンプ5の正常使用許容範囲との相関関係をシミュレーションや実験に基づいて設定される。
【0037】
この燃料ポンプ5の吐出量の進展変化と閾値b、即ち警報灯12の点灯の相関を図4に示す。
【0038】
このように構成された燃料ポンプ交換警報システムは、FFVの運転等により燃料タンク1内においてアルコール含有燃料に晒される燃料ポンプ5の導電部は、通電に伴って次第に電解腐食が促進されて減肉されて変化する燃料ポンプ5の吐出量を流量計21で検出する。その腐食挙動変化値となる流量計21による燃料ポンプ5の吐出量値が予め設定された閾値bに達した際に、ECU23によって警告灯12を作動させてユーザに燃料ポンプ5の使用耐久寿命となる直前であることを知らせ、燃料ポンプ5の交換を促す。
【0039】
従って、本実施の形態によると、アルコール含有燃料に晒される燃料ポンプ5の導電部の電解腐食に伴い変化する燃料ポンプ5の吐出量の進展変化に基づいて警告灯12を点灯させることから、燃料中のアルコール濃度の変化にかかわらず最適なタイミングでユーザに燃料ポンプ5が使用耐久寿命となることを報知し、燃料ポンプ5の交換を促すことができる。
【0040】
(第3実施の形態)
第3実施の形態を図5乃至図7を参照して説明する。図5は本実施の形態における燃料ポンプ交換警報システムの概要を示す構成図である。なお、図5において図1と対応する部位には同一符号を付することで該部の詳細な説明を省略し、異なる部分を主に説明する。
【0041】
第1実施の形態及び第2実施の形態と同様に燃料タンク1内に燃料ポンプ5が装着され、燃料ポンプ5は、吸入口7及び燃料パイプ9に接続される吐出口8が形成されたケース6の内部に図示しないポンプ部及びモータ部が配置されると共に燃料通路が形成され、モータ部によりポンプ部が駆動されて燃料を吸入口7から吸入して燃料通路を介して吐出口8に向けて圧送し、燃料パイプ9を介してエンジン10に供給する。
【0042】
燃料パイプ9等の燃料供給回路に設けられた使用中の燃料のアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出手段であるアルコール濃度センサ31及び燃料ポンプ5の通電時間を検出する通電時間計測手段32を備え、更にこれらアルコール濃度センサ31により検出されたアルコール濃度及び通電時間計測手段32により検出された通電時間により得られる進展する腐食挙動変化値に基づいて燃料ポンプ5が使用耐久寿命になる直前に警告灯12を点灯作動させる制御部となるECU33を備える。
【0043】
ここで、FFVではアルコール濃度センサで使用中の燃料のアルコール濃度を検知してエンジン制御をすることから、このエンジン制御用のアルコール濃度センサを本実施の形態のアルコール濃度センサ31として使用することができる。また、燃料の種々のアルコール濃度に対する燃料ポンプ5の通電部の電解腐食の耐久時間、即ち、通電部の電解腐食による減肉に起因する燃料ポンプ6の耐久時間との相関の一例を図6に示す。この種々のアルコール濃度毎の単位時間あたりの電解腐食による導電部の進展比率をデータベース化して制御部33に記憶し、制御部33においてアルコール検出センサ31により検出されたアルコール濃度と通電時間計測手段32により検出される各アルコール濃度における通電時間に基づいて各アルコール濃度の燃料における作動時間を積算し、アルコール濃度毎の導電部の電食腐食の進展比率を示すデータベースを基に通電部の腐食挙動変化値を演算する。この腐食挙動変化値が予め設定された閾値cに達した際に、ECU33によって警告灯12を作動させる。
【0044】
この閾値cは燃料のアルコール濃度及び作動時間による導電部の電解腐食により進展変化する腐食挙動変化値との相関はシミュレーションや実験により予め設定される。この腐食挙動変化値と閾値c、即ち警報灯12の点灯の相関を図7に示す。
【0045】
このように構成された燃料ポンプ交換警報装置は、FFVの運転等により燃料タンク1内においてアルコール含有燃料に晒される燃料ポンプ5の導電部は、通電に伴って次第に電触腐食が促進されて減肉される腐食変化を、使用される燃料のアルコール濃度と使用時間に基づいて算出した進展変化する腐食挙動変化値が予め設定された閾値cに達した際に、ECU33によって警告灯14を作動させてユーザに燃料ポンプ5の使用耐久寿命になることを知らせ、最適なタイミングでユーザに燃料ポンプ5が使用耐久寿命になることを報知し、燃料ポンプ5の交換を促すことができる。
【0046】
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば上記各実施の形態において警報手段として警告灯を使用したが、ブザー等他の警報手段を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1実施の形態における燃料ポンプ交換警報システムの概要を示す構成図である。
【図2】燃料ポンプの使用時間と通電部の電流値の変化の相関を示す図である。
【図3】第2実施の形態における燃料ポンプ交換警報システムの概要を示す構成図である。
【図4】燃料ポンプの使用時間と吐出量の相関を示す図である。
【図5】第3実施の形態における燃料ポンプ交換警報システムの概要を示す構成図である。
【図6】各燃料のアルコール濃度と燃料ポンプの耐久時間との相関を示す図である。
【図7】燃料ポンプの使用時間と腐食挙動変化値との相関を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 燃料タンク
5 燃料ポンプ
6 ケース
7 吸入口
8 吐出口
9 燃料パイプ
10 エンジン
11 電流計(電流検出手段)
12 警告灯(警報手段)
13 ECU(制御部)
21 流量計(吐出量検出手段)
23 ECU(制御部)
31 アルコール濃度センサ(アルコール濃度検出手段)
32 通電時間計測手段
33 ECU(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内に装着され、吸入口及び吐出口が形成されたケース内に上記吸入口と吐出口を連通する燃料通路が形成されると共に該燃料通路に露出する通電部によって電力供給されるモータ部及びポンプ部が配置されて上記吸入口から吸入した燃料を吐出口から燃料パイプを介してエンジンに供給するアルコール含有燃料用ポンプの交換警報システムにおいて、
上記通電部の電気化学的腐食により進展する腐食挙動変化に基づいて該通電部の耐久寿命を推定し、該腐食挙動変化値が予め設定された燃料ポンプの正常使用許容範囲を越える前に警報手段を作動させることを特徴とするアルコール含有燃料用ポンプの交換警報システム。
【請求項2】
上記燃料ポンプの通電部の通電電流を検出する電流検出手段を備え、上記腐食挙動変化が該電流検出手段の検出電流値変化であって、該検出電流値が予め設定された燃料ポンプの正常使用許容範囲を越える前に警報手段を作動させることを特徴とする請求項1に記載のアルコール含有燃料用ポンプの交換警報システム。
【請求項3】
上記燃料ポンプの吐出量を検出する吐出量検出手段を備え、上記腐食挙動変化が該吐出量検出手段の検出吐出量変化であって、該検出吐出量が予め設定された燃料ポンプの正常使用許容範囲を越える前に警報手段を作動させることを特徴とする請求項2に記載のアルコール含有燃料用ポンプの交換警報システム。
【請求項4】
燃料のアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出手段と燃料ポンプの作動時間を検出する通電時間計測手段を備え、
燃料の種々のアルコール濃度毎の通電部における電解腐食の進展比率を示すデータベースを参照して上記アルコール濃度検出手段による検出アルコール濃度及び通電時間計測手段による検出作動時間に基づいて上記腐食挙動変化の進展を求め、該腐食挙動変化値が正常使用許容範囲を越える前に警報手段を作動させることを特徴とする請求項1に記載のアルコール含有燃料用ポンプの交換警報システム。
【請求項5】
上記アルコール濃度検出手段は、FFVのエンジン制御用のアルコール濃度検出手段を兼備することを特徴とする請求項4に記載のアルコール含有燃料用ポンプの交換警報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−19142(P2010−19142A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179151(P2008−179151)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】