説明

アルコール除菌シート用薬液およびそれを含むアルコール除菌シート

【課題】拭き取りがスムーズで、汚れ落ちが良好で、拭き取り後の乾燥が速く、拭き跡が残らず、拭きむらがなく、そしてアルコール臭がきつくない、アルコール除菌シートを得るための薬液を提供すること。
【解決手段】本発明の薬液は、非イオン性界面活性剤(a)0.01〜1質量%、炭素数が2〜4の2価アルコール(b)0.05〜1質量%、およびエタノール(c)30〜70質量%を含有し、該非イオン性界面活性剤(a)は、アルキルエーテル型およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型からなる群から選択される少なくとも1種であり、該非イオン性界面活性剤(a)のエチレンオキサイドの付加モル数は20〜100であり、そして該非イオン性界面活性剤(a)のHLBは13〜20である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール除菌シート用薬液およびそれを含むアルコール除菌シートに関する。より詳細には、机、家具、床などの表面や金属、ガラス、樹脂、塗装などの表面の清拭除菌を目的とするアルコール除菌シート用薬液およびそれを含むアルコール除菌シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、O−157やノロウイルスなどによる食中毒の問題がマスコミなどで取り上げられる機会が増え、生活居住環境の衛生面に注意を払う人が多くなっている。アルコールは殺菌に即効性があり、安全性にも優れ、しかも残存性がないことから手指などの除菌消毒に広く使用されてきた。最近では、一般消費者もアルコールを机、家具、床などの身のまわりの清拭剤および除菌剤として使用する傾向が高まり、アルコールの清拭剤や除菌剤としての需要が高まっている。
【0003】
アルコールを清拭剤や除菌剤として用いる場合、スプレーなどを用いてアルコール液を拭き取り対象部分に吹きかけた後、乾いた布や紙で液を拭き取る方法がある。しかし、より簡便な方法として、アルコールを含む薬液を不織布などに含浸させたウェットシートをそのまま清拭除菌に用いる方法が主流となっている。このようなアルコール除菌シートは、使用したいときにすぐに使用でき、薬液をまわりへ飛散させることなく拭き取り対象部分にのみ使用することができ、かつ薬液の使用と拭き取りとで除菌を効果的に行うことができるという特徴を有している。しかし、アルコール除菌シートを用いる場合も、拭き取り後、拭き取り対象部分に薬液が残存し、薬液が乾いた後も汚れに由来する凝集物が拭き跡として残存し、拭きむらが目立つという問題がある。
【0004】
アルコールを薬液の主成分とするアルコール除菌シート用薬液として、特許文献1には、パラオキシ安息香酸ブチルとプロピレングリコールなどの保湿剤とを特定の割合でアルコールに組み合わせた液状消毒剤が開示され、これは皮膚刺激や気管支刺激が低く、金属腐食や繊維浸食のおそれも低いことが記載されている。特許文献2および3には、シルクタンパク質などを特定の割合でアルコールに組み合わせた除菌剤が開示され、除菌効果を長時間保つことができ、生体表面への保護効果を併せ持つことが記載されている。
【0005】
一方、アルコール除菌シートとして、特許文献4には、カチオン性ポリマー除菌剤を特定の割合でアルコール類に組み合わせた薬液を含浸させた拭取り用シートが開示され、これは取り扱いが簡単で除菌効果が高いことが記載されている。
【0006】
しかし、これらの薬液やアルコール除菌シートは、拭き取り性や汚れ落ちに問題があるだけでなく、特に濃色で光沢のある机やガラスなどを清拭したときに、拭き跡や拭きむらが目立つという問題がある。また、アルコールを含有する割合が多い場合は、アルコール臭がきつくなり、比較的少ない場合は、薬液の拭き取り後の乾燥が遅くなるという問題がある。
【特許文献1】特開平7−252105号公報
【特許文献2】特開2000−319169号公報
【特許文献3】特開2002−114616号公報
【特許文献4】特開2004−188091号公報
【特許文献5】特開平03−90008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、拭き取りがスムーズで、汚れ落ちが良好で、拭き取り後の乾燥が速く、拭き跡が残らず、拭きむらがなく、そしてアルコール臭がきつくない、アルコール除菌シート用薬液およびそれを含むアルコール除菌シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために研究を重ねたところ、特定の非イオン性界面活性剤および特定の多価アルコールを特定の割合でエタノールに組み合わせること、より好適には、特定の抗菌殺菌剤を特定の割合でさらに組み合わせることによって、上記の目的を達成するアルコール除菌シート用薬液が得られることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明のアルコール除菌シート用薬液は、非イオン性界面活性剤(a)0.01〜1質量%、炭素数が2〜4の2価アルコール(b)0.05〜1質量%、およびエタノール(c)30〜70質量%を含有し、該非イオン性界面活性剤(a)は、アルキルエーテル型およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型からなる群から選択される少なくとも1種であり、該非イオン性界面活性剤(a)のエチレンオキサイドの付加モル数は20〜100であり、そして該非イオン性界面活性剤(a)のHLBは13〜20である。なお、残余の成分は水性溶媒である。必要に応じて、以下の抗菌殺菌剤(d)および添加剤が含まれる。
【0010】
ある実施態様においては、上記薬液はさらに、抗菌殺菌剤(d)0.001〜0.1質量%を含有し、そして該抗菌殺菌剤(d)は、カチオン系殺菌剤およびグレープフルーツ種子エキスからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0011】
本発明のアルコール除菌シートは、基材、および該基材に含浸させた上記薬液からなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアルコール除菌シート用薬液を用いることによって、拭き取りがスムーズで、汚れ落ちが良好で、拭き取り後の乾燥が速く、拭き跡が残らず、拭きむらがなく、そしてアルコール臭がきつくない、アルコール除菌シート用薬液およびそれを含むアルコール除菌シートを得ることができる。このアルコール除菌シートは、机、家具、床などの表面や金属、ガラス、樹脂、塗装などの表面の清拭除菌に利用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のアルコール除菌シート用薬液は、非イオン性界面活性剤(a)、炭素数が2〜4の2価アルコール(b)、およびエタノール(c)を特定の割合で含有する。この薬液は、さらに必要に応じて、これらの成分に加えて抗菌殺菌剤(d)、添加剤などを含有する。
【0014】
1.アルコール除菌シート用薬液を構成する成分
(1)非イオン性界面活性剤(a)
本発明に用いられる非イオン性界面活性剤(a)(以下、a成分という場合がある)は、アルキルエーテル型およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型からなる群から選択される少なくとも1種であり、いずれもエチレンオキサイドの付加モル数が20〜100であり、そしてHLBが13〜20である。
【0015】
アルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤は、炭素数が8〜20、好ましくは10〜18の高級脂肪族アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど、好ましくはエチレンオキサイドを付加することにより得られる。好ましい例としては、ポリオキシエチレン(30モル)ラウリルエーテルなどが挙げられ、市販品としては、日油株式会社製「ノニオン K−230」などが挙げられる。一方、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型の非イオン性界面活性剤は、硬化ヒマシ油にエチレンオキサイドを付加することにより得られる。好ましい例としては、ポリオキシエチレン(40モル)硬化ヒマシ油などが挙げられ、市販品としては、日油株式会社製「ユニオックス HC−40」などが挙げられる。得られる薬液の、拭き跡が残らず、そして拭きむらがない点からアルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤がより好ましい。
【0016】
非イオン性界面活性剤(a)のエチレンオキサイドの付加モル数は20〜100、好ましくは20〜80、より好ましくは20〜60である。付加モル数が20未満の場合、得られる薬液は、拭き跡が残り易くなり、そして拭きむらが生じ易くなる。100を超える場合、得られる薬液は、配合が困難になるとともに、拭き取り後の乾燥が遅くなる。
【0017】
非イオン性界面活性剤(a)のエチレンオキサイドのHLBは13〜20、好ましくは13〜18である。HLBが13未満の場合、得られる薬液は、拭き跡が残り易くなり、そして拭きむらが生じ易くなる。
【0018】
本発明の薬液中には、非イオン性界面活性剤(a)が、0.01〜1質量%、好ましくは0.01〜0.7質量%、より好ましくは0.03〜0.5質量%含有される。0.01質量%未満の場合、得られる薬液は、汚れ落ちが不十分となり、拭き跡が残り、拭きむらが目立ち、そしてアルコール臭がきつくなる。1質量%を超える場合、得られる薬液は、拭き取り後の乾燥が遅くなり、そして拭き跡が残る。
【0019】
(2)炭素数が2〜4の2価アルコール(b)
本発明に用いられる炭素数が2〜4の2価アルコール(b)(以下、b成分という場合がある)は、1分子内に水酸基を2個有する水溶性の化合物である。炭素数が5以上の2価アルコールの場合、得られる薬液は、拭き取り後の乾燥が遅くなり、そしてアルコール臭がきつくなる。炭素数が2〜4の2価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコールなどが挙げられる。得られる薬液の、拭き取り後の乾燥が速く、そしてアルコール臭がきつくない点からプロピレングリコールがより好ましい。
【0020】
本発明の薬液中には、炭素数が2〜4の2価アルコール(b)が、0.05〜1質量%、好ましくは0.1〜0.7質量%、より好ましくは0.3〜0.7質量%含有される。0.05質量%未満の場合、得られる薬液は、拭き跡が残り、そして拭きむらが目立つ。1質量%を超える場合、得られる薬液は、拭き取り後の乾燥が極端に遅くなる。
【0021】
(3)エタノール(c)
本発明に用いられるエタノール(c)(以下、c成分という場合がある)は、合成で得られたものまたは発酵で得られたもののいずれでもよく、一般に95%一級または99%特級などとして市場に流通しているものが利用できる。
【0022】
本発明の薬液中には、エタノール(c)が、30〜70質量%、好ましくは35〜65質量%、より好ましくは40〜60質量%含有される。30質量%未満の場合、得られる薬液は、殺菌の即効性がなくなるだけでなく、拭き取り後の乾燥が極端に遅くなる。70質量%を超える場合、得られる薬液は、乾燥が速すぎて安定性や拭き取り性が悪くなるとともに、アルコール臭がきつくなる。
【0023】
(4)抗菌殺菌剤(d)
本発明の薬液は、拭き取りがスムーズで、汚れ落ちが良好で、拭き取り後の乾燥が速く、拭き跡が残らず、拭きむらがなく、そしてアルコール臭がきつくないという効果を損なわずに、より高い除菌効果を発揮するために、好ましくは抗菌殺菌剤(d)(以下、d成分という場合がある)を含有し得る。
【0024】
本発明に用いられる抗菌殺菌剤(d)は、カチオン系殺菌剤およびグレープフルーツ種子エキスからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0025】
カチオン系殺菌剤は、分子内に四級化した窒素原子を有する化合物であり、殺菌力を有する。カチオン系殺菌剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウムなどが挙げられる。
【0026】
グレープフルーツ種子エキスは、ミカン科のグレープフルーツ(Citrus paradisi Macf)の種子から、各種溶媒を用いて抽出して得られるエキスであり、溶媒(抽出溶媒、希釈溶媒など)以外の成分のことをいう。グレープフルーツ種子エキスとしては、「Desfan−10」(ティックファイン株式会社製)、「カルファ」(カルファケミカル株式会社製)などの市販のものを用いることができる。「Desfan−10」には、溶媒として水が90.5質量%およびグリセリンが6.25質量%含まれているので、グレープフルーツ種子エキスは、3.25質量%含まれる。
【0027】
グレープフルーツ種子エキスは、抗菌性を有することが示されている(特許文献5)。特に、得られる薬液の、抗菌性、安定性、使用感などの点で、未熟果の種子から抽出したエキスが好ましい。グレープフルーツ種子エキスは、例えば以下のように製造される。
【0028】
まず、グレープフルーツの種子を、必要に応じて、粉砕、乾燥などの処理を行う。グレープフルーツは、いずれの産地のものでも用いることができる。次いで、種子またはその粉砕、乾燥などの処理物を、水、アルコール類、炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類またはハロゲン化炭化水素類、およびこれらの混合溶媒に浸漬して抽出するか、あるいは浸漬し加熱還流して抽出する。抽出溶媒としては、水またはアルコールが好ましく用いられる。アルコールとしては、一価アルコールおよび多価アルコールのいずれもが用いられる。より好ましくは、水、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールまたはグリセリン、およびこれらの混合溶媒であり、さらに好ましくは水またはグリセリン、およびこれらの混合溶媒である。
【0029】
本発明の薬液中に、抗菌殺菌剤(d)が含まれる場合、その含有量は0.001〜0.1質量%であり、好ましくは0.003〜0.1質量%、より好ましくは0.005〜0.1質量%である。0.001質量%未満の場合、十分な添加効果が得られない。0.1質量%を超える場合、得られる薬液は、拭き跡が残り易くなる。
【0030】
(5)添加剤など
本発明のアルコール除菌シート用薬液には、本発明の性能を損なわない範囲の割合で、化粧料、清拭剤などに通常用いられる添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、ワセリン、固形パラフィンなどの炭化水素系油;牛脂、豚脂、魚油などの天然油脂類;トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルなどの合成トリグリセライド;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、オレイン酸エチル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オクチルドデシルなどのエステル油;ミツロウ、カルナウバロウなどのロウ類;直鎖および環状のジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン誘導体;セラミド、コレステロール、蛋白誘導体、ラノリン、ラノリン誘導体、レシチンなどの油性基剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、アルカノールアミドなどの本発明の成分以外の非イオン性界面活性剤;石鹸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アシルメチルタウリン塩、アシルグルタミン酸塩、アシルグリシン塩、アシルザルコシン塩、アシルイセチオン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アミドエーテル硫酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩などの陰イオン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アミドアミノ酸塩、アルキルイミノジ酢酸塩などの両性界面活性剤;アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミンオキシドなどの半極性界面活性剤;塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウムなどの本発明の成分以外の陽イオン性界面活性剤;アルキルアミンまたはアミドアミンの塩酸塩および酢酸塩;タルク、カオリン、セリサイト、雲母、バーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、珪ソウ土、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸バリウム、珪酸ストロンチウム、硫酸バリウム、タングステン酸金属塩、シリカ、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、セラミックスなどの無機物の粉末;結晶セルロース、ポリエチレン、ポリ四フッ化エチレンなどの有機物の粉末;酸化チタン、酸化亜鉛、赤色酸化鉄(ベンガラ)、黄土、カーボンブラック、コバルトバイオレット、酸化クロム、群青などの無機顔料;酸化チタン被覆雲母、魚燐箔、着色酸化チタン被覆雲母などのパール顔料;アルミニウムパウダー、カッパーパウダーなどの金属粉末顔料;赤色201号、赤色227号、橙色204号、黄色205号、青色404号などの化粧品用色素;赤色3号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、青色1号などの食品添加物用色素;ジルコニウム、クロロフィル、β−カロチンなどの天然色素;アルギン酸、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム、ヒアルロン酸などの水溶性高分子;硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどの無機または有機塩類;酸およびアルカリなどのpH調整剤;本発明の成分以外の殺菌剤;キレート剤;抗酸化剤;紫外線吸収剤;動植物由来の天然エキス;香料などが挙げられる。
【0031】
本発明のアルコール除菌シート薬液の溶媒としては、上記の各成分を溶解または分散させることが可能であり、人体に無害な溶媒が用いられる。例えば、水(精製水など)などの水性溶媒が利用される。
【0032】
2.アルコール除菌シート用薬液およびそれを含むアルコール除菌シート
本発明のアルコール除菌シート用薬液は、上記非イオン性界面活性剤(a)、炭素数が2〜4の2価アルコール(b)、エタノール(c)および水性溶媒を含み、そして必要に応じて、抗菌殺菌剤(d)、添加剤などを含み得る。通常、本発明のアルコール除菌シート用薬液は、上記非イオン性界面活性剤(a)、炭素数が2〜4の2価アルコール(b)およびエタノール(c)を、精製水などの水性溶媒に、上記所定の割合で溶解または分散することによって調製される。さらに必要に応じて、上記薬液に、抗菌殺菌剤(d)、および添加剤を所定の割合で溶解または分散させてもよい。
【0033】
本発明のアルコール除菌シート用薬液は、基材に含浸させることによって、アルコール除菌シートとして利用される。基材としては、例えば、天然繊維または合成繊維からなる不織布、紙などがある。具体的には、レーヨン、パルプなどの親水繊維と、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成繊維とを一種または数種配合した、湿潤強度が高いスパンレース不織布などが用いられる。基材として用いられるシートの大きさは、使用部位、あるいは収納する容器または包装体に応じて、適宜設定されるが、通常、150×200mm程度である。シート100質量部に対して、本発明の薬液を約100〜300質量部の割合で含浸させることにより、アルコール除菌シートが得られる。
【0034】
本発明の薬液を用いて調製されたアルコール除菌シートは、乾燥防止の観点から、容器に収納される。このような容器としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂で形成された比較的硬質なものであって、取り出し口には、突出したアルコール除菌シートを乾燥させないように、容器全体を密封できるような蓋体が形成されている容器が好ましい。あるいは、上記アルコール除菌シートは、不透液性のフィルム状の包装体(例えば、詰め替え用の態様として用いられる)などに積層して収納してもよい。さらにこのアルコール除菌シートの積層体が収納された包装体を、硬質な容器に収納して使用する、いわゆる詰め替え方式で使用してもよい。具体的には、特開2000−79074号公報に記載の方法などが採用される。
【実施例】
【0035】
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【0036】
以下の実施例および比較例で調製された各薬液について、以下の(1)〜(5)の方法により評価した。なお、以下の評価に用いる清拭ウェットシートは、スパンレースで目付け40gの不織布を150×200mmの大きさに裁断し、不織布(シート)100質量部に対して、薬液280質量部を含浸させて作成した。
【0037】
(1)拭き取り性および汚れ落ち
25才〜52才の15名の女性および5名の男性をパネラーとし、アルコール除菌シートを使用して机、家具などを拭いたときの拭き取り性および汚れ落ちについて以下のように判定した。
2点:拭き取りがスムーズであり、汚れが軽く拭き取れたと感じる場合
1点:拭き取り時にややすべりが悪い、またはやや汚れを落とし難いと感じる場合
0点:拭き取り時にすべりが悪い、または明らかに汚れを落とし難いと感じる場合
【0038】
20名の平均値を求めて、以下の基準で拭き取り性および汚れ落ちを評価した。
○:拭き取り性および汚れ落ちが良好(平均点1.5点以上)
×:拭き取り性および汚れ落ちが劣る(平均点1.5点未満)
【0039】
(2)拭き取り後の乾燥の速さ
25才〜52才の15名の女性および5名の男性をパネラーとし、アルコール除菌シートを使用して机、家具などを拭いた後の乾燥度合いについて以下のように判定した。
2点:拭き取り後の乾燥が速いと感じる場合
1点:拭き取り後の乾燥がやや遅いと感じる場合
0点:拭き取り後の乾燥が遅いと感じる場合
【0040】
20名の平均値を求めて、以下の基準で乾燥の速さを評価した。
○:拭き取り後の乾燥が速い(平均値1.5点以上)
×:拭き取り後の乾燥が遅い(平均点1.5点未満)
【0041】
(3)拭き跡
25才〜52才の15名の女性および5名の男性をパネラーとし、アルコール除菌シートを使用して机、家具などを拭いたときの拭き跡について以下のように判定した。
2点:拭き跡が残らないと感じる場合
1点:拭き跡がやや残ると感じる場合
0点:拭き跡が目立つと感じる場合
【0042】
20名の平均値を求めて、以下の基準で拭き跡を評価した。
○:拭き跡が残らない(平均値1.5点以上)
×:拭き跡が残る(平均点1.5点未満)
【0043】
(4)拭きむら
25才〜52才の15名の女性および5名の男性をパネラーとし、アルコール除菌シートを使用して机、家具などを拭いたときの拭きむらについて以下のように判定した。
2点:拭きむらがないと感じる場合
1点:拭きむらがややあると感じる場合
0点:拭きむらが目立つと感じる場合
【0044】
20名の平均値を求めて、以下の基準で拭きむらを評価した。
○:拭きむらがない(平均値1.5点以上)
×:拭きむらがある(平均点1.5点未満)
【0045】
(5)アルコール臭
25才〜52才の15名の女性および5名の男性をパネラーとし、アルコール除菌シートを使用して机、家具などを拭いたときのアルコール臭について以下のように判定した。
2点:アルコール臭がほとんど気にならないと感じる場合
1点:アルコール臭がやや気になると感じる場合
0点:アルコール臭がきついと感じる場合
【0046】
20名の平均値を求めて、以下の基準でアルコール臭を評価した。
○:アルコール臭がきつくない(平均値1.5点以上)
×:アルコール臭がきつい(平均点1.5点未満)
【0047】
(実施例1〜7)
表1に示す各成分を表1に示す割合で混合してアルコール除菌シート用薬液を得た(これらを各々薬液1〜7とする)。得られた薬液1〜7を用いて、(1)拭き取り性および汚れ落ち、(2)拭き跡、(3)拭きむら、(4)アルコール臭、および(5)拭き取り後の乾燥の速さについて、上記試験方法により評価した。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
(比較例1〜7)
表2に示す各成分を表2に示す割合で混合してアルコール除菌シート用薬液を得た(これらを各々薬液8〜14とする)。得られた薬液8〜14を用いて、上記(1)〜(5)の試験方法により評価した。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜7のアルコール除菌シート用薬液1〜7はいずれも、拭き取りがスムーズで、汚れ落ちが良好で、拭き取り後の乾燥が速く、拭き跡が残らず、拭きむらがなく、そしてアルコール臭がきつくなかった。
【0052】
一方、表2の結果から明らかなように、比較例1〜7の清拭ウェットシート用薬液8〜14は、十分な効果が得られなかった。すなわち、比較例1では、a成分が含まれていないため、拭き取り性および汚れ落ちが不十分であり、拭き跡が残り、拭きむらがあり、そしてアルコール臭がきつかった。比較例2では、a成分の含有量が本発明の範囲を超えているため、拭き取り後の乾燥が速く、そして拭き跡が残った。比較例3では、b成分が含まれていないため、拭き跡が残り、そして拭きむらがあった。比較例4では、b成分の含有量が本発明の範囲を超えているため、拭き取り後の乾燥が遅かった。比較例5および6では、a成分に代えて、a成分以外の界面活性剤が用いられている。比較例5では、拭き取り性および汚れ落ちが不十分であり、拭き取り後の乾燥が遅く、そしてアルコール臭がきつかった。比較例6では、拭き取り後の乾燥が遅く、拭き跡が残り、拭きむらがあり、そしてアルコール臭がきつかった。比較例7では、b成分に代えて、b成分以外の多価アルコールが用いられているため、拭き取り後の乾燥が速く、拭き跡が残り、拭きむらがあり、そしてアルコール臭がきつかった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のアルコール除菌シート用薬液を用いることによって、アルコール除菌シートが提供される。このアルコール除菌シートは、拭き取りがスムーズで、汚れ落ちが良好で、拭き取り後の乾燥が速く、拭き跡が残らず、拭きむらがなく、そしてアルコール臭がきつくない。このアルコール除菌シートは、机、家具、床などの表面や金属、ガラス、樹脂、塗装などの表面の清拭除菌に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非イオン性界面活性剤(a)0.01〜1質量%、
炭素数が2〜4の2価アルコール(b)0.05〜1質量%、および
エタノール(c)30〜70質量%
を含有する、アルコール除菌シート用薬液であって、
該非イオン性界面活性剤(a)が、アルキルエーテル型およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型からなる群から選択される少なくとも1種であり、該非イオン性界面活性剤(a)のエチレンオキサイドの付加モル数が20〜100であり、そして該非イオン性界面活性剤(a)のHLBが13〜20である、薬液。
【請求項2】
さらに、抗菌殺菌剤(d)0.001〜0.1質量%を含有し、そして該抗菌殺菌剤(d)が、カチオン系殺菌剤およびグレープフルーツ種子エキスからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の薬液。
【請求項3】
基材、および該基材に含浸させた請求項1または2に記載の薬液からなる、アルコール除菌シート。

【公開番号】特開2010−126488(P2010−126488A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303138(P2008−303138)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】