説明

アルツハイマー病の予防または治療のための併用療法およびそのキット

本発明はアミノ酸配列X(式中、XはC以外のアミノ酸、XはC以外のアミノ酸、XはC以外のアミノ酸、XはC以外のアミノ酸、XはC以外のアミノ酸、XはC以外のアミノ酸であって、XはDAEFRHではない)を含んでなる化合物の、アルツハイマー病ワクチンの作製における使用に関するもので、該化合物は天然のAβ42N末端配列DAEFRHに特異的な抗体と結合する能力があり、さらにその五量体は天然のAβ42N末端配列DAEFRHに特異的な抗体と結合する能力がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー病の予防または治療方法のための併用療法および該併用療法を実施するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
アミロイドβペプチド(Aβ)はアルツハイマー病(AD)の神経病理学上中心的な役割を担っている〔ロアー等(Roher wt al)、1993年、「β-アミロイド(1-42)は、脳血管アミロイド沈着物の主たる成分;アルツハイマー病の病変への影響」PNAS.,90:10836〕。この病気の家族型はアミロイド前駆体タンパク(APP)およびプレセニリン遺伝子における突然変異と関連している。これら遺伝子における病気関連突然変異は、該ペプチド(Aβ42)の42アミノ酸型の産生を増大させるが、これはアルツハイマー病のアミロイド斑中で見られる主たる形態である。この病気の動物モデルは市販品から入手できる。PDAPP遺伝子組み換えマウスでは突然変異したヒトのAPP(717位のアミノ酸がVに代わってFである)が過剰発現されており、アルツハイマー病における神経病理学上の顕著な特徴が年齢および脳に依存しつつ次第に発達してくる〔ゲームズ等(Games et al.) 1995:「V717Fβアミロイド前駆体タンパクを過剰発現した遺伝子組み換えマウスにおけるアルツハイマー型神経病理学」Nature,373:523〕。
【0003】
ミモトープに依存しない通常のワクチンを用いたワクチン接種の研究がすでになされている。AD型神経病変の発現(6週)前または高齢化の時点(11ヶ月)において遺伝子組み換え動物を凝集Aβ42で免役した:若い動物の免疫化は斑の形成、神経突起のジストロフィー、星状神経膠症の発達を抑制した。高齢化動物の治療は明らかにAD様神経病変を減少させた。この実験的なワクチン化の研究は血液脳関門を通過してアミロイド斑を攻撃可能なAβ42抗体の発展を導いた〔シェンク等(Schenk et al.) 1999:「βアミロイドによる免疫化はPDAPPマウスにおけるアルツハイマー様病変を減少させる。」Nature 400: 173〕。続いて、該アミロイド斑はFc受容体が関与する食作用を含むいくつかのメカニズムにより除去される〔バード等(Bard et al.)、2000:「末梢的に投与されたアミロイドβペプチドに対する抗体は中枢神経系に入ってアルツハイマー病モデルマウスの病変を減少させる」Nature Med, 6: 916〕。このワクチンはまた記憶不足の進行を妨げる〔ヤヌス等(Janus et al.) 2000:「Aβペプチド免疫化はアルツハイマー病モデルにおいて行動上の障害およびアミロイド斑を減少させる」Nature 408:979〕。
【0004】
ADに対する非常に有望な免疫療法が1999年遅くから臨床治験されている。正しいメカニズムはより詳細に特徴づけられる必要があるが、免疫化によって免疫系の引き金が引かれ、該免疫系がアミロイド斑を攻撃しこれらの沈着物を感染したヒト脳より一掃するものと推測される。
【0005】
これら臨床治験は製薬会社エラン(Elan)とそのパートナーであるアメリカンホームプロダクツ(American Home Products)により実施された〔治療用ワクチンAN-1792、アジュバントはQS21〕。第一相試験は2000年成功裡に終了した。軽度から中程度のAD患者被治験者において効果を試験するため、第二相試験が2001年末より開始された。
【0006】
しかしこの第二相試験は幾人かの患者で神経性炎症が見られたため永久的に中止されている〔論説2002「未解決問題?」Nature Med 8: 191〕。その徴候には無菌性髄膜脳炎が含まれ、全世界での治験は直ちに中止となった。最悪の場合は、感染した患者は多くの免疫療法に内在する危険である、自己免疫応答の開始を示すであろう。自己免疫の混乱はAPPの偏在性を与えると予想され、これはタンパク分解性生物と共通して抗原決定基を当然に有する。最近、凝集Aβ42免疫化誘導抗体(ヒトおよびマウス)についての研究が集中的になされ、多くの抗体がAβ42の4位-10位のアミノ酸(Aβ4-10)の小さな領域を認識していることが明らかになった。マウス抗体はAβ原線維生成を阻止し、先在するAβ線維を分解することができた〔マクローリン等(McLaurin) 2002:「アミロイド-βペプチドに対する治療上有効な抗体は、アミロイド-β残基4-10を標的とし、細胞毒性と原線維生成を阻害する」Nature Med 8: 1263〕。注目すべきことに、ヒト抗体は細胞表面に露出したAPPとは反応せず、また他のいずれの非凝集体(該前駆体の分解生成物)とも反応しない〔ホック等(Hock et al.) 2002:「アルツハイマー患者のワクチン化によるβアミロイド特異的抗体の生成」 Nature Med 8: 1270〕。ヒトおよびマウス血清の間には明らかな相違が観察される;ヒト抗体とは対照的にマウス抗体は単量体、オリゴマーおよび線維化Aβを検出できる。これは非常に重要であって、治療効力のための必須要件と考えられ、ヒト抗Aβでは認識できない小さなAβオリゴマーがこの疾患における主たる毒性発現体であるとの証拠が蓄積されている〔ウォルシュ等(Walsh et al.) 2002:「自然に分泌されるアミロイドβタンパクのオリゴマーはin vivoで海馬における長期増強を強力に阻害する」Nature 416: 535〕。こうして、β-アミロイドアミノ酸4-10(Aβ42凝集体に代わり)を含むワクチンによる免疫化が可能性のある新しい戦略となった。効力が未知にもかかわらず、患者は(リニアーB細胞)「自己」エピトープで直接的に免疫されるので、この戦略はまた自己免疫の問題に直面するかもしれない。
【0007】
最近のADワクチン化戦略のこれら失望的な発展にもかかわらず、Aβワクチンは依然としてADとの戦いにおいて最も有望な方法と見なされている。しかし、ADワクチン化には改良と新しい戦略が急ぎ必要である。特に自己反応性T細胞/B細胞を誘導しないようなワクチンが必要である。
【0008】
それでも、アミロイドβの産生、アミロイドβの凝集、または該凝集体により引き起こされる神経毒性事象を妨げる他の療法がまた開発中である。これまで探索されたADに関する治療上の戦略はヴォルフ(Wolfe)の総説論文〔Nature Reviews Drug Discovery 1 (2002 859-866)〕にまとめられている。
【0009】
アミロイドβ斑形成の基礎は内在性膜貫通型の、いわゆるアミロイドβ前駆体(APP)である(その生理的機能は解明されていないが、最近の研究ではAPPはキネシンIのいわゆる膜カーゴ受容体として作用することが示唆されている)。APPはいわゆる分泌酵素によりタンパク質分解され、特にアミノ酸40個の長さのAβペプチド(Aβ40)が生理的に形成される。他に短いまたは長い形状のAβペプチドもまた産生され、特に42アミノ酸のもの(Aβ42)が高い凝集力を有している。その結果、アミロイド斑においては該Aβ42が最も多く存在する形態となる。ひとつの可能なAD治療戦略が、異なる切断(α、そして特にβおよびγ分泌酵素)の原因となる分泌酵素を攻撃することに主として焦点を当てている理由はそこにある。こうして、AD治療において当該酵素類の修飾剤および阻害剤がそれぞれ試みられている(例えば、ベンゾジアゼピン、スルフォンアミド、ベンゾカプロラクタム等)。
【0010】
ADに関わる更なる遺伝子がアポリポタンパク質Eであり、これには三つの対立遺伝子が存在する(APOE2、APOE3およびAPOE4)。総人口と比較して、APOE4のコピーをひとつまたは二つ有する人はADに罹患する危険性がAPOE2のキャリアーよりも高いことが示されている。また、スタチン類、即ちコレステロール生合成を阻害する薬物を服用している人はADに罹患する危険性が有意に少ないことが示された。ADの更なる治療戦略が、例えばスタチン類でもってコレステロール生合成を阻害することに焦点を当てている理由はそこにある。
【0011】
AD治療の更なる側面は、脳の斑におけるアミロイド凝集阻害であり、これは分泌酵素阻害剤により同様に実現され得る。亜鉛が生理学的に該当する濃度で存在するとAβの凝集を誘導し得るので、亜鉛濃度の低下もAD治療の更なる側面として示唆されている。
【0012】
先行技術において提案されているADの更なる治療戦略はAPPの発現阻止とAβクリアランスの増加であり、APPのプロモーター領域と相互作用し得る阻止物質が探索された。Aβクリアランスに関しては、例えばインスリン分解酵素やネプロライシンのようなある種のプロテアーゼの活性増加、またはAβ抗体の末梢適用等が示唆された(デマトス等(De Mattos et al.), PNAS 98(15)(2001), 8850-8855)。しかしながら、これらの試験はマウスモデルにおいて矛盾する結果を既に示した(ヴォルフ(Wolfe), (2002))。最後に、例えば、AD患者の血清中のアミロイドβのレベルを低下させて、既に存在するアミロイド斑を再溶解する試みがなされた。またこの関連では、アフェレーシスを用いて脳内βアミロイドタンパクの斑状沈着物を減少させる提案がなされた(米国特許6551266号;ここではアフェレーシスにより分子量が500kDより大の高分子を除去することが提案されている)が、ADについては示されていない。にもかかわらず、脳細胞中に既に存在する斑状物の溶解はアフェレーシス法では直接的に可能でない(500kDを超える斑状物若しくは分子は血液脳関門を通過できない)。
【0013】
既に述べたように、βアミロイド(Aβ40およびAβ42)斑の存在はADのもっとも特筆すべき病理学的特徴である。Aβの減少がADの予防と治療における第一の薬学的目的とみなされる理由はそこにある。能動的な免疫化で抗Aβ抗体を誘起してアミロイドを除去することを記述したが、そのような免疫化は処置を中止せざるを得ない重篤な副作用によりこれまでのところ成功していない。より最近の前臨床結果は抗体が末梢におけるAβの減少を導き得ることを示し、Aβ周辺の脳動力学を変化させる可能性はあるかも知れない。
【0014】
更に、Aβに高い親和性を有する薬物(例えば、ゲルソリンまたはCM1等)の末梢処置により脳内のAβ量を減少させることが示された(マソーカ等(Masouka et al.), Journal of Neuroscience 2003: 29-33)。従って、血漿中のAβ濃度を減少させ脳内の沈着を減少させ若しくは阻止することのできる一般法として化合物が提案されたことになる。これに基づくと、新たな治療薬の開発が可能であり、その活性は血液脳関門の通過に依存しない。
【0015】
この血漿中Aβの分画により誘発される脳からのAβ流出に対し、血漿中Aβ濃度に与える方法依存的な効果が示された:ゲルソリンは血漿中Aβ濃度を低下させなかった:そのかわり、ゲルソリンの投与および抗Aβモノクローナル抗体による能動的免役化は血漿中Aβ濃度を増加させた。しかしながら、比較的若いAPP遺伝子組み換えマウスを実験で使用した場合にのみ脳内のAβ負荷が減少した;6ヶ月より高齢のマウスを使用した場合、その方法は効果がないことが分かった。これは、高齢マウスの脳ではAβの不溶解度が高くなるためと考えることができる。一方で、長期的な治療が成功する可能性はあるがゲルソリンまたはCM1、および能動的免役化のいずれも長期間の投与に適してはいない。
【発明の開示】
【0016】
そこで本発明の目的は、アルツハイマー病に対して新たな治療および予防の戦略、特に成功裏な免疫化に基づく戦略を提供することである。
従って本発明ではAβ流出誘導薬とAβペプチド特異的アフェレーシスを含む併用療法を提供する。本発明によれば、Aβ流出が誘導(例えば、ゲルソリン、GM1、Aβペプチド特異的な能動的若しくは受動的ワクチン等の薬物により)され、その流出がAβアフェレーシスにより持続される。この関連で、Aβ、Aβ誘導体またはAβミモトープを含むワクチンにより一度または二度分画を誘導するのに十分である。
【0017】
本発明において特に優先度の高い側面がアルツハイマー病(AD)の予防または治療のためのキットである理由がここにあり、該キットは
−血漿中のアミロイドβ(Aβ)の分画を誘導する薬物、および
−血液若しくは血漿流動と接触し、アミロイドβ前駆体タンパク(APP)と結合する受容体を有する固体の担体を含むアフェレーシス器具、を含んでなる。
【0018】
この発明のキットにおいて、APP結合受容体は好ましくは、抗APP抗体、(可溶性)Aβ結合受容体、例えば抗Aβ40抗体または抗Aβ42抗体、APP結合タンパク、特にゲルソリン、アポJまたはアポE、APP結合ペプチド、APP結合ガングリオシド、特にGM1、またはAPP結合核酸、特にアプタマー、または該受容体の混合物から選択される。
該キットにおいて、アフェレーシス担体としては無菌で発熱性物質を除去したカラムが好ましくは使用される。
【0019】
該キットにおいて、血漿中のアミロイドβ(Aβ)分画を誘導する薬剤は好ましくはAβに高い親和性を有する薬剤、特にゲルソリンまたはGM1、Aβ特異的ペプチドリガンドまたは核酸リガンド、Aβ特異的な能動的若しくは受動的ワクチンまたはAβ特異的ヒト化モノクローナル抗体から選択される。
Aβ特異的な能動的ワクチンは好ましくはAβ誘導体またはAβミモトープである。
特に好ましいAβ誘導体はその一部若しくは全体がD-アミノ酸より構成され、および/または天然アミノ酸を含まないペプチドより選択される。
【0020】
Aβミモトープは好ましくは下式ペプチド
【化1】

(式中、Xはアミノ酸であって、Cではなく、
はアミノ酸であって、Cではなく、
はアミノ酸であって、Cではなく、
はアミノ酸であって、Cではなく、
はアミノ酸であって、Cではなく、
はアミノ酸であって、Cではなく、
また、XはDAEFRHではなく、当該ペプチドは天然のN端Aβ42配列のDAEFRHに特異的な抗体に対して結合能力を有し、さらにその5量体は天然のN端Aβ42配列のDAEFRHに特異的な当該抗体に対して結合能力を有する。)
を含み若しくは構成される。
【0021】
特に好ましい式Xのペプチドは;
はGまたは水酸基若しくは負電荷を有するアミノ酸、好ましくはE、Y、S若しくはDであり;
は疎水性アミノ酸または正電荷を有するアミノ酸、好ましくはI、L、V、K、W、R、Y、F、若しくはAであり;
は負電荷を有するアミノ酸、好ましくはD若しくはEであり;
は芳香族アミノ酸またはL、好ましくはY、F、若しくはLであり;
はH、K、Y、F、またはR、好ましくはH、FまたはRであり、
はS、T、N、Q、D、E、R、I、K、YまたはG、好ましくはT、N、D、R、I、またはGである。
【0022】
この関連で、天然に存在するタンパク質中の20アミノ酸は化学的類似体またはD-アミノ酸でもって置き換えることが可能である;例えば、L、I、およびVはNle、Nva、Chaまたはその他の直鎖若しくは環状脂肪族側鎖を有するアミノ酸で置き換えられ、WおよびFは芳香族アミノ酸で、RおよびKはアルカリ性アミノ酸、例えばオルニチンやホモアルギニンで置き換えられる。セリンやスレオニンは末端OH基がある脂肪族および/または芳香族側鎖を有するアミノ酸で置換するのに適している。このような交換の効率と効果は、例えばPCT/EP04/00162に記述された実験モデルにより容易に確認することができる。付け加えると、立体的な検討もまた考慮されるべきである(該ペプチドと抗体の結合に関して、コンピュータモデルを利用して)。
【0023】
特に好適なエピトープは次のエピトープより選択される;EIDYHR、ELDYHR、EVDYHR、DIDYHR、DLDYHR、DVDYHR、DIDYRR、DLDYRR、DVDYRR、DKELRI、DWELRI、YREFFI、YREFRI、YAEFRG、EAEFRG、DYEFRG、ELEFRG、DRELRI、DKELKI、DRELKI、GREFRN、EYEFRG、DWEFRDA、SWEFRT、DKELR、SFEFRG、DAEFRWP、DNEFRSP、GSEFRDY、GAEFRFT、SAEFRTQ、SAEFRAT、SWEFRNP、SWEFRLY、SWELRQA、SVEFRYH、SYEFRHH、SQEFRTP、SSEFRVS、DWEFRD、DAELRY、DWELRQ、SLEFRF、GPEFRW、GKEFRT、AYEFRH、DKE(Nle)R、DKE(Nva)R、およびDKE(Cha)R。
【0024】
本発明に従うと、Aβ42ミモトープはADに対するワクチンとして用いられる;該ミモトープはAβ42に対する抗体産生を誘導するが天然のAPPに対する抗体産生はしない。このミモトープは(モノクローナル)抗体と(市販の)ペプチドライブラリーにより同定することができる〔例えば、ライナク等(Reineke et al.), 2002「不作為に生成させた5520配列のペプチドアレイから、個々の抗体エピトープおよびミモトープの同定」、J. Immunol. Method., 267:37〕。APPを認識せず、アミノ末端アスパラギン酸が異なるAβ種のみを検出する(モノクローナル)抗体が用いられる(そのような抗体の例が、Johnson-Wood et al., 1997「遺伝子組み換えアルツハイマー病マウスモデルにおけるアミロイド前駆体タンパクのプロセシングとAβ42の沈着」PNAS, 94:1550に記載されている)。本発明の過程において、ワクチンに適したミモトープを同定する場合そのような抗体が理想的なツールであることが証明された。そのようなモノクローナル抗体はマウスに直接投与した場合有益な薬効を有することが示されたが(バード等(Bard et al.), 2000「末梢投与したアミロイドβペプチド抗体が中枢神経系に入り、アルツハイマー病マウスモデルにおける病状を軽減する」、Nature Med., 6:916)、ADワクチン化合物を単離するためのミモトープ探索ツールとしての使用が提案されたことはなかった。
【0025】
先行技術においては、すべての努力が天然に存在するAβペプチドに集中していた。上述のとおり、Aβペプチドワクチンの臨床治験は神経炎症的事象により中止された。実際、T細胞エピトープ予測プログラム(MHCクラスI制限エピトープについてのBIMASとMHCクラスII制限エピトープについてのTEPITOPE)は配列中に高いスコアの(自己)エピトープを提案している。このことは、神経炎症的事象が自己免疫の結果であって、そのようなワクチンの一般適用が不適切なものとしてしまうことを意味する。
【0026】
先行技術で提案されたそのようなAβワクチンとは対照的に、本発明に従ったミモトープを含むワクチンによる治療においては自己免疫反応が生じることは予測できない。本発明に従ったミモトープ同定に用いる(モノクローナル)抗体はAPPを認識せず、ミモトープ配列はこれまでの治験で使用され、またはこれからの治験で使用されるであろうAβ42由来の自己配列とは異なるからである。
【0027】
本発明に従って、ミモトープ同定に用いられる抗体はアミノ末端がフリーなアスパラギン酸である、Aβ由来のアミノ酸配列DAEFRH(もとのエピトープ)を検出し、自然のAPPは認識しない。その抗体はモノクローナルまたはポリクローナルな抗体調製物、またはその一部若しくは誘導体の抗体でよく、唯一求められるのはその抗体分子がDAEFRHエピトープを特異的に認識すること、即ち、天然のアミロイド前駆体タンパクのN端延長形態に結合しないことであり、それはDAEFRHエピトープに対する結合能力がAPP分子に対する場合より、少なくとも100倍、好ましくは少なくとも1000倍、さらに好ましくは少なくとも10倍高いことを意味する。その抗体はDAEFRH配列に対して、ジョンソン-ウッド等(Johnson-Wood et al.), 1997に記載された抗体と同程度、またはそれより高い結合能力を示す抗体であってもよい。高い結合能力がより好ましいが、より低い結合能力の抗体〔ジョンソン-ウッド等(Johnson-Wood et al.)の抗体の結合能力の>10%、>50%または>80%〕もまた使用することができる。
【0028】
本発明に従う化合物はDAEFRH配列と同程度の特異性でもってこれらの抗体に結合する。
本発明に従って使用されるミモトープは5から15アミノ酸の好ましい長さを有している。該化合物はワクチン中に単離された(ペプチド)形態で存在してもよいし、例えば、薬学的な担体物質若またはポリペプチド、脂質若しくは炭水化物構造のような他の分子と縮合または複合体化していてもよい。本発明に従うと、ミモトープの長さは好ましくは5から15アミノ酸、6から12アミノ酸残基、特に9から11アミノ酸残基である。しかしながら、そのミモトープは非特異的なリンカー若しくは担体、特にペプチドリンカー若しくはタンパク質単体と縮合する(共有結合的または非共有結合的)ことが可能である。さらに、そのペプチドリンカー若しくはタンパク質単体はヘルパーT細胞エピトープにより構成され、またはこれを含み得る。
【0029】
薬学的に許容される担体は好ましくは、シン等(Singh et al.), Nat. Biotech.,17(1999), 1075-1081(特に該文献の表1に記載のもの)およびオアガン等(O'Hagan et al.), Nature review, Drug Discovery 2(9) (2003), 727-735(特にこれに記載された内因性免疫増強化合物および分配系)に記載されたアジュバント物質またはその混合物のほか、KLH、破傷風トキソイド、アルブミン結合タンパク、ウシ血清アルブミン、デンドリマー(MAP; Biol.Chem., 358; 581)である。その上、該ワクチン組成物は水酸化アルミニウムを含んでもよい。
【0030】
本発明化合物(ミモトープ)および薬学的に許容される担体を含むワクチンは、いずれの適切な適用法、例えば、i.v.、i.p.、i.m.、鼻腔内、経口、皮下等により、そして任意の適切な分配具〔オアガン等(O'Hagan et al.), Nature review, Drug Discovery 2(9) (2003), 727-735〕により投与してもよい。該ワクチンは典型的には本発明化合物を0.1ngから10mg、好ましくは10ngから1mg、特に100ngから100μg、あるいは例えば100fMおよび10μMの間、好ましくは10pMから1μMの間、特に100pMから100nMの間で含む。該ワクチンはまた典型的な補助物質、例えば緩衝液、安定剤等を含んでもよい。
【0031】
本発明に従うと、併用療法の過程で開始後のAβ流出を維持するためアフェレーシス器具が提供される。該器具は血流若しくは血漿流動と接触させることのできる固体の担体を含み、該担体はアミロイドβ前駆体タンパク(APP)結合受容体を含む。本アフェレーシス器具により、AD患者およびADに罹患する危険性のある人々はAPPおよびAPP分解生成物、特にAβ40およびAβ42からアフェレーシスにより特異的に開放され、Aβ隔離効果は第一過程で維持することができる。中枢神経系(CNS)と血漿との間にはAβ42の動的な平衡が存在することが知られている。上記のとおり、マウスモデルにおいて〔デマトス(DeMattos), PNAS 2001、上記参照〕抗Aβ抗体の末梢適用がCNSおよび血漿のAβ42クリアランスに影響し、抗Aβ抗体が血液脳関門を通過することなく脳におけるAβ42の負荷を軽減することを示すことができた。マツオカ等(Matsuoka et al.)(Journal of Neuroscience 2003: 29-33)は、他のAβ42結合分子(ゲルソリンおよびGM1)を末梢適用してその結果を確認した。
【0032】
これを手段として、脳内の便利な部位、即ち、既に血中においてプラークの発達過程を防ぐことができ、言い換えると、その後該タンパクおよび分解ペプチドはそれぞれもはや脳内に戻れずそこで凝集することもできない。脳内におけるプラーク発達の過程はまた、血中のAβ42を捕捉することで阻止可能である。そのようにする場合、患者血漿若しくは血中と接触するアフェレーシス器具の受容体がAβ42またはその他のAPP分解物に特異的であるかどうかは決定的ではなく、唯一の必須事項はAPPおよびそのタンパク分解産物、特にAβ42が該特異的吸着により血中から除去され、その結果「悪玉」の(Aβ42への)タンパク分解が起こらずプラークが発達しないことである。従って、本発明は米国特許6551266号と比較し、まったく異なる適用に基づくアフェレーシスのアプローチであり、即ち、既存の構造的プラーク要素を除去するものでプラーク自身の除去ではない。それに血液のアフェレーシスは脳内のプラークが発達する領域には届かないので、アフェレーシスによるプラーク除去は、アフェレーシスによるAD治療に関し効果がないものとして演繹的に除外することができる。
【0033】
一方、体内におけるAβ枯渇を誘導する他の方法(例えば、末梢抗Aβ抗体を用いる〔デマトス等(DeMattos et al.),PNAS 98(15) (2001), 8850-8855〕)で長期にわたって行われるものに比して、発明の併用療法は自己免疫応答が開始されないという決定的な利点が含まれる。さらに本発明に従うと、体内でのみ(場合により特異的な部位に輸送された後においてのみ)作用する物質を患者に投与する必要はないが、病因物質は選択的に除去され、即ち、病気の原因は体外的に特異的に除去され、不要な体内での反応生成物は除かれる。
【0034】
本発明に従うと、既に存在する既知のアフェレーシス器具はすべての態様において本発明に簡単に適用可能である。特に、固体の担体(およびアフェレーシス器具)を選択するときは、それらの医療適応性を考慮する必要がある。これらの担体、方法および器具類は、例えば、米国特許5,476,715号、6,036,614号、5,817,528号、および6,551,266号に記載されている。相当する市販のアフェレーシス器具は例えば、フレセニウス(Fresenius)、プラズマセレクト(Plasmaselect)、アサヒ(ASAHI)、カネカ(Kaneka)、ブラウン(Braun)等により頒布され、例えばLDL-Therasorb(登録商標)、Immunosorba(登録商標)、Prosorba(登録商標)、HELP(登録商標)、DALI(登録商標)、Bilirubin-Bile-Acid-Absorber BR-350、Prometheus(登録商標)解毒、MARS(登録商標)、MedicapのADAsorb、Plasma FLO等のシステムが提供されている。これらシステムの市販の形態は必ずしも単一のタンパクの特異的除去に向けられている訳ではないが、アフェレーシス分野の専門家であれば本発明に対し容易に適合化、例えば免疫アフェレーシスとして、および/または発明にかかる固体担体(例えばカラムとして)をアフェレーシス器具に組み合わせることが可能である。
【0035】
従って、本発明に従うと、リガンドのAPPおよびその生物学的副生成物、特にAβ42に親和性を有していて、AD患者若しくはADに罹患するリスクのある人の血液または血漿から当該ポリペプチドを除去可能な物質はAPP-結合受容体として理解される。該APPおよびAβ42受容体はそれぞれ、好ましくは(ポリ若しくはモノクローナル)抗体、タンパク質、ガングリオシドまたは核酸である。
抗APP抗体、抗Aβ40抗体若しくは抗Aβ42抗体、APP-結合タンパク、特にゲルソリン、アポJ、アポE、APP-結合ペプチド、APP-結合ガングリオシド、特にGM1、またはAPP−結合核酸、特にアプタマー、またはこれら受容体の混合物が特に好ましい。
【0036】
このような抗体の例は3D6(Aβ1-5)、2H3(Aβ1-12)、2G3(Aβ33-40)、21F2(Aβ33-42)、12H7(Aβ33-42)(ジョンソン-ウッド等(Johnson-Wood et al.), PNAS 1997:1550-1555)、10D5、16C11(バード等(Bard et al.), Nature Medicine 2000:916-919)、デマトス等(DeMattos et al.)(2001)に記載の抗体(m266、m243)のほか同様の特異性を有する抗体である。このような抗体は、例えば、APP、Aβ42またはそのフラグメント若しくは変異体を含むワクチン剤で動物を免疫化し、任意で細胞融合およびクローン選択(モノクローナル抗体で)の手順を加えることにより得られる。
APP-結合タンパク受容体の更なる例は、ゲルソリン(マツオカ等(Matsuoka et al.) 2003、上記参照)、アポJおよびアポE(デマトス等(DeMattos et al.), 2001、上記参照)である。GM1はAPP-結合ガングリオシド受容体(マツオカ等(Matsuoka et al.) 2003、上記参照)の例である。
【0037】
この関連では、APP-結合受容体として作用するペプチドはD-アミノ酸、L-アミノ酸、若しくはD-およびL-アミノ酸の組み合わせを含むことができ、また任意で、環形成や誘導体化等のさらなる修飾を受けていてもよい。適切なペプチド受容体、例えばAβ42は、市販のペプチド・ライブラリーから提供され得る。これらペプチドは好ましくは、少なくとも5アミノ酸、好ましくは6アミノ酸、特に好ましくは少なくとも8アミノ酸の長さを有し、好ましい長さは最大で10アミノ酸、好ましくは最大で14若しくは20アミノ酸である。しかしながら、本発明によれば、より長いペプチドも問題なくAPP-結合受容体として用いることができる。その上、オリゴマー(例えば、ポリエチレンイミンおよびポリリシン)も適切な受容体である。
当然ながら、ファージ・ライブラリー、ペプチド・ライブラリー(上記参照)若しくは構造ライブラリー(例えば異なる構造に関するコンビナトリアル・ケミストリーやハイスループット・スクリーニングによって得られる)もまたこのようなAPP-結合受容体を得るのに適している。
【0038】
さらに、核酸に基づくAPP-結合受容体(「アプタマー」;または「デコイ」オリゴデオキシヌクレオチド、即ち、その配列において転写因子の結合部位を構成するdsオリゴヌクレオチド)を用いることができる。ここで、当該核酸は種々の(オリゴヌクレオチド)ライブラリー(例えば、2-160核酸残基)により検出することができる;例えば、バーグストーラー等(Burgstaller et al.), Curr.Opin.Drug Discov. Dev., 5(5)(2002),690-700; ファムロク等(Famulok et al.), Acc.Chem.Res., 33(2000),591-599; メイヤー等(Mayer et al.), PNAS 98(2001),4961-4965; およびその他多数。核酸の骨格は、例えば天然のリン酸ジエステル化合物により、およびホスホロチオエート、組み合わせまたは化学的変異体(例えばPNAとして)によっても検出可能であり、ここで本発明に従うと、基本的にはU、T、A、C、G、HおよびmCを塩基として使用できる。
【0039】
本発明に従って使用することのできるヌクレオチドの2′-残基は好ましくはH、OHまたは他の保護基であり、2′位の修飾(核酸も修飾が可能)は、オリゴヌクレオチド合成で通常使用されるので、例えば保護基でもって提供される。酸素原子のエーテル化は保護基として理解されるが、2′位の修飾においてOH基は異なるもので置き換えられる。先行技術には両方の場合につき多くの異なる可能性が記述されている;メチル、アリル、プロピル等の保護基(即ち、例えば、2′-OCH、2′-O-CH=CH、等)が特に好まれ;特に好ましい修飾は2′-デオキシ、2′-アミノ、2′-フルオロ、2′-ブロモ、2′-アジドの他セレン等の金属もある。さらに、本発明によれば、アンチセンス技術(リボザイム、RNAi等)のために発展したオリゴヌクレオチドの安定化方法もまた核酸(例えばこの領域をリードするISISとリボザイム・ファーマシューチカルズを、特にその特許文献とホームページを比較せよ)を提供するために用いられる。
【0040】
APP-結合アプタマー(本発明および上記の定義に従うと、Aβ42結合アプタマーをまた含む)がまた、本発明の範囲内における好ましいAPP-結合受容体である理由はここにある。
従って、好ましくはペプチド、抗体または核酸より構成されるAPP-結合受容体は、アルツハイマー病患者およびアルツハイマー病に罹患するリスクのある人においてAPPおよびそのタンパク分解生成物を体外に除去する担体物質として用いられる。
【0041】
本発明を医療の日常診療に使用する場合、本発明に従うすべての担体物質、すべての受容体/担体の組み合わせがその特性を満たし、それぞれ好ましいものであるためには、担体は殺菌され、発熱物質を含まないことが必要である(米国特許6030614号、または5476715号参照)。多孔性ホモポリマー、ビニルを含むモノマーコポリマー若しくはターポリマー(例えば、TSKトヨパールやフラクトゲルTSK等のアクリル酸)、オキシランを含む化合物(例えばエピクロロヒドリン)で修飾(活性化)され、および任意でNH、アミノ若しくはカルボキシルを含む化合物またはCNBrで反応させた担体、EP110,409AやDE36,17,672Aに開示されたCNCL吸着剤等が適切な例である。治療目的に特に好ましい吸着物質は血液細胞の損失を避けるのに適していて、補体系を活性化せず若しくはほとんど活性化しない;そして体外循環における会合体の形成を可能な限り遅らせる。さらに使用された担体物質は受容体結合形態においても殺菌措置、特に飽和エチレンオキシド、飽和グルタルアルデヒド、ガンマ線照射、蒸気、UV、溶媒および/または洗剤による処置に対して十分安定であることが好ましい。セファロース、アガロース、アクリル、ビニル、およびデキストラン等による生成物もまた使用される;これらはAPP-結合受容体との結合に適切な好ましい官能基を有していて既に市販されている。さらに好ましい担体にはモノリス(グリシジルメタクリレートとエチレングリコールジメタクリレート共重合体)も含まれる。
【0042】
受容体と適切な担体との結合には当業者によく知られた化学を用いることができる(例えば、「生物接合テクニック」(Bioconjugate Techniques)、Greg T. Hermanson編、Academic Press,Inc San Diego, CA, 1995, 785 pp)。
さらなる側面によれば、本発明は発明の併用療法の範囲内においてそれぞれの患者の治療に用具を適合させることによる、アルツハイマー病若しくはそのような病気の予防のための治療用具、またはその治療のための発明用具の使用に関する。治療を行う場合、APPポリペプチドを効率よく除去するため、患者にアフェレーシス器具を十分長い時間結合し、患者の血液若しくは血漿の流れをAPP結合受容体を含む固体の担体に接触させてAPPおよび/またはAPPのタンパク質分解物、特にAβ42を結合させる。アフェレーシス治療の過程において、十分な抗凝血と、末梢または中枢の静脈血管のアクセスおよび動静脈瘻は確かに確保され、必要な大量および測定データは記録される。その上、アフェレーシス法の多くは適切な血漿処理前に血漿と血液細胞との一次分離を必要とする。そのような予防的措置が必要な特別な人々は、家族性因子高齢者(>50、>60または>70歳)または別のAD危険因子、特に遺伝子因子を有する人々である。
【0043】
さらに中心的側面によれば、本発明はアルツハイマー病(AD)の予防または治療に関し、ここでアミロイドβ(Aβ)の結晶中への隔離を促す薬物を患者に投与し、該患者はアフェレーシス器具で治療される;該器具は血液若しくは血漿流と接触させる固体の担体を有し、その担体にはアミロイドβ前駆体タンパク(APP)結合受容体が存在してアフェレーシス器具の使用により患者の血中からAPPが除かれる。
該方法は好ましくは本発明のキットにより実施される。
従って本発明はまた、上述のとおりAβミモトープの使用に関し、これはADの治療若しくは予防のための発明の併用治療に用いられる。
本発明は続く実施例によりより詳細に説明されるが、これは決して制限するものではない。
【実施例】
【0044】
1.APP受容体を有する担体の製造
1.1 モノリスカラム
製造者の指示書に従い、CIM(登録商標)エポキシモノリスカラム(BIAセパレーションズ、SI)を0.5M Na-リン酸緩衝液、pH8.0で平衡化し、Aβペプチドに対するモノクローナル抗体も製造者の指示書に従って活性化してCIMカラムと結合させる。このカラムをリン酸緩衝液(+1M NaCl)で数回洗浄し、任意で余ったエポキシ基をブロックする。
品質保証は洗浄および平衡溶出液の制御により行う;溶出液中に活性なエポキシ基および抗体の漏れがないカラムのみを次工程に供し、アフェレーシス器具に取り付ける。
1.2 セファロースカラム
バルクのアガロース原料(セファロースCL4B)を無菌のまま殺菌済みの発熱物質なしの容器に満たして無菌的に洗浄する;ここでそのゲル原料は各洗浄ごとに減圧下で完全に乾燥させる。それから、このセファロースをオートクレーブ中115℃で30分間蒸気にて殺菌する。
【0045】
殺菌処理後、このセファロースを殺菌済み容器の中で60%アセトン-水中にとり、CNBrとトリエチルアミンで活性化する(CNBr 14g/アセトン 96ml;トリエチルアミン 30ml/87%-アセトン 408ml)。それから、アセトン/HCl溶液を加えた(殺菌済み、発熱物質フリーの水 392mL;5N HCl 16.3ml;アセトン 408ml)。活性化セファロースを洗浄し、活性化基の加水分解を防ぐため2時間以内に結合反応に供する。
無菌ろ過した抗体液(それぞれm266およびm243)を反応容器に入れて少なくとも90分間撹拌した。最後に溶出液中に反応生成物が検出できなくなるまで反応溶液を徹底的に洗浄し(等張リン酸緩衝液)、抗体結合セファロースを殺菌済み、発熱物質フリーの焼結ガラス付ガラス製カラムに充填して、最後の品質保証を実施する(反応生成物および重金属等について溶出液分析;粒子分析、発熱、無菌性)。
2.アルツハイマー病患者のアフェレーシス治療の動物モデル
近年、ドイツ国カールスブルグの糖尿病協会「ゲルハルトカッツェ」で、自由に動き回る小動物において実験的なアフェレーシスのための空間体外系が開発された。このアフェレーシス療法は一匹のそして同じ動物に対して繰り返し適用ができる。その上、用いられた動物は次のアフェレーシス療法の長期の評価研究でも利用される。当該実験的アフェレーシス系の使用はいくつかのラット種において成功裏に示された。繰り返しアフェレーシス療法はI型糖尿病およびII型コラーゲン誘発関節炎ラットにおいて体重250g以上の場合耐えることができる。
【0046】
実験的アフェレーシス療法を開始する前に、動物に動脈および静脈カテーテルを取り付ける。アフェレーシスの第一段階で、プラズマフィルターを用いて、血液細胞と血漿を分離する。血液細胞は該動物に直接再灌流する(静脈カテーテルを経由)一方、分離した結晶は動物に再供給する前に実施例1で製造した吸着剤を通過させる。
或いはLDLについてDALIアフェレーシスをするようにそれと同様の全血アフェレーシスも実施してもよい。
3.動物モデルにおける独創的な併用療法
動物モデルにおける併用療法は基本的に、アフェレーシスの前、途中または後にAβの流出が生じるようになされる。さらに、二つの療法の適用の頻度は互いに変化させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルツハイマー病を治療しまたは予防するためのキットで;
-血漿中のアミロイドβ(Aβ)の隔離を誘導する薬物、および
-血液流または血漿流と接触させることができ、アミロイドβ-前駆体タンパク(APP)と結合する受容体を有する固体の担体を含むアフェレーシス器具、を含むキット。
【請求項2】
APP結合受容体が、抗APP抗体、Aβ結合受容体、特に抗Aβ40抗体若しくは抗Aβ42抗体、APP結合タンパク、特にゲルソリン、アポJ若しくはアポE、APP結合ペプチド、APP結合グリコリピド、好ましくはガングリオシド、特にGM1、またはAPP結合核酸、特にアプタマー、およびこれら受容体の混合物から選択されることを特徴とする、請求項1のキット。
【請求項3】
該担体が発熱物質を含まず無菌のカラムであることを特徴とする、請求項1または2のキット。
【請求項4】
血漿中のアミロイドβ(Aβ)の隔離を誘導する該薬物が、Aβに高い親和性を有する薬物、特にゲルソリンまたはGM1、Aβ特異的抗体、ペプチド若しくは核酸、またはAβ特異的な能動的若しくは受動的ワクチンから選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれかのキット。
【請求項5】
該Aβ特異的な能動的ワクチンがAβ誘導体またはAβミモトープである、請求項1から4のいずれかのキット。
【請求項6】
該Aβ誘導体が、その一部若しくは全部がD−アミノ酸および/または非天然アミノ酸で構成されるペプチドから選択される、請求項5のキット。
【請求項7】
該Aβミモトープが下式ペプチド
【化1】

〔式中、XはC以外のアミノ酸、
はC以外のアミノ酸、
はC以外のアミノ酸、
はC以外のアミノ酸、
はC以外のアミノ酸、
はC以外のアミノ酸であって、XはDAEFRHではなく、該ペプチドは天然のN−末端Aβ42配列DAEFRHに特異的な抗体に結合する能力を有し、またその5量体が天然のN末端Aβ42配列DAEFRHに特異的な抗体に結合する能力を有する。〕
を含み、または、により構成されることを特徴とする、請求項5のキット。
【請求項8】
その式Xにおいて、
はG、ヒドロキシル基を有するアミノ酸または負に荷電したアミノ酸であって、好ましくはE、Y、S若しくはDであり;
は疎水性アミノ酸または正に荷電したアミノ酸であって、好ましくはI、L、V、K、W、R、Y、F若しくはAであり;
は負に荷電したアミノ酸であって、好ましくはD若しくはEであり;
は芳香族アミノ酸またはLであって、好ましくはY、F若しくはLであり;
はH、K、Y、FまたはRであって、好ましくはH、F若しくはRであり;
はS、T、N、Q、D、E、R、I、K、YまたはGであって、好ましくはT、N、D、R、I若しくはGであり;
特に同ペプチドが、EIDYHR、ELDYHR、EVDYHR、DIDYHR、DLDYHR、DVDYHR、DIDYRR、DLDYRR、DVDYRR、DKELRI、DWELRI、YREFFI、YREFRI、YAEFRG、EAEFRG、DYEFRG、ELEFRG、DRELRI、DKELKI、DRELKI、GREFRN、EYEFRG、DWEFRDA、SWEFRT、DKELR、DAEFRWP、DNEFRSP、SAEFRTQ、SAEFRAT、SWEFRNP、SWEFRLY、SWELRQA、SVEFRYH、SYEFRHH、SQEFRTP、SSEFRVS、DWEFRD、DAELRY、DWELRQ、SLEFRF、GPEFRW、GKEFRT、またはSFEFRGであることを特徴とする、請求項7のキット。
【請求項9】
アルツハイマー病を予防しまたは治療する方法であって、血漿中のアミロイドβ(Aβ)の隔離を誘導する薬物をヒトに投与し、そのヒトをアフェレーシス器具で治療し、該器具は、血液流または血漿流と接触させることができ、アミロイドβ-前駆体タンパク(APP)と結合する受容体を有する固体の担体を含んでいて、そのアフェレーシス器具によりそのヒトの血中からAPPが除去される方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかのキットが使用される、請求項9の方法。
【請求項11】
ADを予防し又は治療するための請求項1の併用療法で用いる薬物を製造するための、請求項7または8で定義された、Aβミモトープの使用。

【公表番号】特表2008−506665(P2008−506665A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520813(P2007−520813)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/053224
【国際公開番号】WO2006/005706
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(506083604)アフィリス・フォルシュングス−ウント・エントヴィックルングス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (12)
【氏名又は名称原語表記】AFFIRIS Forschungs− und Entwicklungs GmbH
【Fターム(参考)】