説明

アルホルモテロールの合成方法

本発明は、式(VI)の化合物又はその塩の製造方法を提供する。該方法は、下記の工程:(i) 4-メトキシフェニルアセトンを式(VIII)のアミンと、還元的アミノ化の条件下で反応させて、式(II)の化合物又はその塩を生成すること、ここで、該還元的アミノ化の間に形成されたイミン中間体の単離は行わず;(ii) 該化合物(II)又はその酸付加塩を、式(III)のα-ハロケトンと縮合して、式(IV)の化合物を生成すること;(iii) 該化合物(IV)を式(V)の化合物に還元すること;及び(iv) 該化合物(V)を式(VI)の化合物に還元すること、ここで、該還元は、(1) 水素移動触媒の存在下での水素供与性化合物;又は(2) 水素化触媒を使用してギ酸アンモニウム、のいずれかの存在下で行われることを含む。式中、R1及びR2は独立して、任意に置換されたアリールアルキルであり、かつHalは、クロロ又はブロモから選択される。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ホルモテロール又は鏡像異性体、及びそれらの酸付加塩の合成に有用な中間体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ホルモテロールは、長時間作用性のβ2-アドレナリン受容体刺激薬であり、最大12時間の長期作用性を有する。化学的には、それは、N-[2-ヒドロキシ-5-[1-ヒドロキシ-2-[[2-(4-メトキシフェニル)プロパン-2-イル]アミノ]エチル]フェニル]-ホルムアミドと命名される。ホルモテロールの構造を下記に示す。
【化1】

【0003】
アスタリスクは、ホルモテロールが分子内に2つのキラル中心を有しており、そのそれぞれが、とり得る2つの立体配置で存在することができることを示している。これは、以下の立体配置:(R,R)、(S,S)、(S,R)及び(R,S)を有する4つのジアステレオマーを生じさせる。
(R,R)及び(S,S)は互いに鏡像関係にあり、したがって、これらは鏡像異性体である。同様に(S,R)及び(R,S)も、他の鏡像異性体の対を形成する。
【0004】
市販のホルモテロールは、(R,R)-及び(S,S)-鏡像異性体の50:50混合物である。(R,R)-ホルモテロールは、非常に良く効くβ2-アドレナリン受容体の完全刺激薬であり、気管支拡張に関与し、抗炎症性を有する。一方、(S,S)-鏡像異性体は、気管支拡張活性は有さず、炎症誘発性である。
【0005】
Muraseらの文献(Chem.Pharm.Bull., 26(4)1123-1129(1978))では、ホルモテロールの4つの異性体全てを合成し、β刺激薬活性が調査された。該方法では、ラセミのホルモテロールは、酒石酸を用いた光学分割にかけられた。
Trofastらの文献(Chirality, 3:443-450(1991))による別の試みでは、ラセミの4-ベンジルオキシ-3-ニトロストリレンオキシドを、光学的に純粋なN-[(R)-1-フェニルエチル]-2-(4-メトキシフェニル)-(R)1-メチルエチルアミンとカップリングさせて中間体のジアステレオマー混合物を生成し、これらをカラムクロマトグラフィーによって分離し、光学的に純粋なホルモテロールに変換した。
【0006】
更に別の試みでは、ラセミのホルモテロールを、キラル化合物を用いることによって分離させた(国際公開公報WO1995/018094)。
WO98/21175には、光学的に純粋な中間体である(R)-N-ベンジル-2-(4-メトキシフェニル)-1-メチルエチルアミン及び(R)-4-ベンジルオキシ-3-ホルムアミドスチレンオキシドを用いた、光学的に純粋なホルモテロールの製造方法が開示されている。
光学的に純粋なホルモテロールの製造はまた、IE000138及びGB2380996にも開示されている。
【0007】
使用、並びに最新のドラッグデリバリーを介した治療上の利益及び使用が増大するにつれ、定量噴霧式吸入器(MDI)には、不純物プロファイルの改善を伴い工業的な規模の拡大に適した、ホルモテロール合成のための新規改良方法を開発するために、更なる研究が必要とされている。
【0008】
(発明の目的)
本発明の目的は、ホルモテロール、その鏡像異性体、及びそれらの酸付加塩の合成に有用な中間体の製造方法を提供することであり、該方法は容易で、経済的で、かつ工業的な規模の拡大に適したものである。
本発明の別の目的は、ホルモテロール、その鏡像異性体、及びそれらの酸付加塩の合成のための改良方法を提供することである。
【発明の概要】
【0009】
本発明の特に好ましい実施態様により、式(VI)の化合物の(R,R)-ジアステレオマー又はその塩の製造方法を提供する。
【化2】

該方法は、下記工程:(i) 4-メトキシフェニルアセトンを式(VIII)のアミンと、還元的アミノ化の条件下で反応させて、式(II)の化合物の(R)-鏡像異性体又はその塩を生成すること、ここで、該還元的アミノ化の間に形成されたイミン中間体の単離は行わず、
【化3】

(ii) 該化合物(II)の(R)-鏡像異性体又はその酸付加塩を、式(III)のα-ハロケトンと縮合して、式(IV)の化合物の(R)-鏡像異性体を生成すること、
【化4】

(iii) 該化合物(IV)の(R)-鏡像異性体を、式(V)の化合物の(R,R)-ジアステレオマーに還元すること、
【化5】

及び(iv) 該化合物(V)の(R,R)-ジアステレオマーを、式(VI)の化合物の(R,R)-ジアステレオマーに還元すること、ここで、該還元は、(1) 水素移動触媒の存在下での水素供与性化合物;又は(2) 水素化触媒を使用してギ酸アンモニウム、のいずれかの存在下で行われること;を含む。式中、R1及びR2は独立して、任意に置換されたアリールアルキルであり、かつHalは、クロロ又はブロモから選択される。
工程(i)、(ii)、(iii)及び(iv)のそれぞれは、下記に詳述される本発明の個々の態様を形成する。また、下記に詳述される本発明の実施態様は、上記の好ましい方法に適用する。
【0010】
本発明の第1の態様により、式(II)の化合物の(R)-若しくは(S)-鏡像異性体、又はその酸付加塩の製造方法を提供する。
【化6】

該方法は、4-メトキシフェニルアセトンを、式(VIII)のアミンを用いて還元的アミノ化して、
【化7】

(式中、R1は、任意に置換されたアリールアルキルである。)化合物(II)又はその酸付加塩を得ることを含む。
【0011】
該還元的アミノ化は、中間体のイミンを介して進行する。先行技術の方法(例えば、WO99/67198)では、該イミンは単離され、次いで、水素化される。有利なことに、本発明の方法において、該イミンは単離されない。すなわち、それは原位置(in situ)で生成される。
【0012】
R1及びR2は、保護基として機能する。R1及び/又はR2が、置換されたアリールアルキルである場合、それらは1つ以上の置換基を含むことができ、それらのいずれも保護基としてのR1及び/又はR2の機能を妨げるものではない。該置換基は、アリール成分及び/又はアルキル成分上のものであってもよい。一実施態様において、該置換基はアルキル成分上にあり、かつC1-3アルキルであり、好ましくは、メチルである。
R1及びR2は独立して、任意に置換されたアリールアルキルであり、これはアルキル基が、アリール基及びアミン部位の窒素に共有結合し(R1の場合)、かつヒドロキシル部位の酸素に共有結合している(R2の場合)ことを意味する。好ましくは、該アリール成分は、C6-10アリールである。好ましくは、該アルキル成分は、C1-6アルキル、より好ましくは、メチル又はエチルである。
【0013】
一実施態様において、R1はアリールアルキルである。該アリールアルキル基は、置換されていてもよい。一実施態様において、該アリールアルキル基は、C6-10アリール-(C1-6)アルキルである。一実施態様において、アリールはフェニルである。別の実施態様において、アルキルはC1〜C6アルキル、好ましくは、C1〜C3アルキル、より好ましくは、メチル又はエチルである。好ましくは、アリールアルキルは、ベンジル又は置換されたベンジル(ここで、該メチル成分が置換されている。)、例えば1-フェニルエチルである。最も好ましくは、アリールアルキルはベンジルである。好ましくは、R2はベンジルである。好適には、R1及びR2の両方ともベンジルである。
好ましくは、Halはブロモである。
【0014】
上に示された化合物(II)は、(R)-鏡像異性体の形態を表している。いくつかの実施態様において、化合物(II)は、下記で(IIA)と呼ばれるラセミの形態で生成され、該方法は、該ラセミ化合物(IIA)を分割剤を用いて分割することを更に含む。特に、化合物(VIII)がベンジルアミンである場合、化合物(II)はラセミの形態で生成され、かつ該方法は、該ラセミ化合物(IIA)を分割することを更に含む。好適には、該分割剤は、L若しくはDマンデル酸、又はL若しくはD酒石酸などのキラル酸であり、該分割により、酸付加塩の形態で化合物(II)が生成される。分割後、任意に該酸付加塩は、遊離塩基、すなわち光学的に純粋な化合物(II)に変換される。該キラル酸のL-又はD-異性体の選択は、化合物(II)の所望する鏡像異性体によって決まる。当業者は、そのような選択を行うことができるであろう。好ましくは、化合物(II)は(R)-鏡像異性体の形態であり、かつ該分割剤はL-マンデル酸である。該分割は、メタノールなどのアルコール溶媒中で行うことができる。典型的には、化合物(II)のキラル酸塩は、分割後に2又は3回結晶化される。
【0015】
他の実施態様において、化合物(II)は、還元的アミノ化から光学的に純粋な形態で直接生成され、かつ更なる分割を必要としない。特に、化合物(VIII)が、(R)-1-フェニルエチルアミンである場合、分割は必要ない。
該還元的アミノ化の2つの好ましい実施態様を、下記スキームに示す。
【化8】

【0016】
一実施態様において、該還元的アミノ化は、標準大気圧、すなわち、約90kPa〜約110kPaの範囲の圧力、典型的には、101kPa周辺の圧力で行われる。
一実施態様において、該還元的アミノ化は、有機溶媒又は水性溶媒又はそれらの混合物中、イオン性化合物を使用して行われる。
該「イオン性化合物」とは、典型的に不活性物質である。該イオン性化合物の目的は、溶液のpHの変化を最小化させ、それによって、反応の間の不純物の形成を制御し、反応速度を促進させることである。こうしたイオン性化合物は、化学反応性を増大させ、これにより、より効率的な方法をもたらすだけでなく、それらの蒸気圧が低いために従来の溶媒よりも不燃焼性でかつ毒性が低い。
【0017】
一実施態様において、該イオン性化合物は、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム-水酸化アンモニウム、クエン酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、リン酸カルシウム、クエン酸塩、リン酸塩、リン酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム三水和物、塩化ナトリウム、ギ酸トリエチルアンモニウム、ギ酸ピリジニウム、過塩素酸ナトリウム、及びギ酸トリエチルアンモニウムからなる群から選択される。記載したイオン性化合物は、単体で又は当業者に公知の他のイオン性化合物と組合せて使用することができる。好ましいイオン性化合物は、酢酸ナトリウム三水和物である。
【0018】
一実施態様において、該還元的アミノ化は、溶媒又は溶媒混合物の存在下で行われる。該溶媒は、極性溶媒であってよく、例えば、該極性溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、n-プロパノール、t-ブタノール、n-ブタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸、及びギ酸からなる群から選択することができる。この実施態様において、好適には、該還元的アミノ化は、約-10℃〜約30℃の範囲の温度で行われる。
一実施態様において、該還元的アミノ化は、10℃未満、好適には、5℃未満の温度で行われる。
【0019】
典型的に、該還元的アミノ化は、還元剤の存在下で行われる。該還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、及びシアノ水素化ホウ素カリウムから選択することができる。
別の実施態様において、化合物(II)は、4-メトキシフェニルアセトンを式(VIII)のアミンと、溶媒又は溶媒混合物中、水素圧下、水素化触媒の存在下で還元的アミノ化することによって製造することができる。言い換えると、該還元的アミノ化は、触媒的水素化の条件下で行われる。
【0020】
一実施態様において、R1はベンジル又は1-フェニルエチルであり、式(VIII)の化合物は、それぞれ(VIIIa)又は(VIIIb)と指定される。
【化9】

驚くべきことに、ベンジル化された式(VIIIa)又は(VIIIb)の化合物の使用は、二量体不純物及び位置異性体の形成を最小化することが見出された。該化合物(VIIIb)は、(R)-又は(S)-鏡像異性体の形態であってもよい。好ましくは、化合物(VIIIb)は、(R)-鏡像異性体の形態である。
【0021】
一実施態様において、化合物(II)及び(VIIIb)は、光学的に純粋である。
本明細書を通して「光学的に純粋」とは、97%より大きい鏡像体過剰率を有することを意味する。好ましくは、98%より大きく、最も好ましくは、99%より大きい。
化合物(II)は、(R)-異性体の形態で上に示されている。また(S)-異性体も、(S)-異性体を生成するために変化させた還元的アミノ化条件を用いて製造することができ、該変化は、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0022】
一実施態様において、実質的に鏡像異性体的に純粋な式(II)の化合物の塩は、少なくとも1当量の塩基と結合して、遊離塩基が生成される。該塩基は、有機又は無機塩基から選択され、好ましくは、水酸化ナトリウムである。
一実施態様において、R1は置換されたアリールアルキル、より好ましくは、1-フェニルエチルである。R1が1-フェニルエチルである場合に、化合物(VIII)は、特定の式(VIIIb)を有する。化合物(II)の(R)-鏡像異性体は、4-メトキシフェニルアセトンを1-フェニルエチルアミンの(R)-鏡像異性体と反応させることによって製造される。あるいは、化合物(II)の(S)-鏡像異性体は、4-メトキシフェニルアセトンを1-フェニルエチルアミンの(S)-鏡像異性体と反応させることによって製造される。
【化10】

【0023】
一実施態様において、ホルモテロールの(R,R)、(S,S)、(R,S)若しくは(S,R)ジアステレオマー、又はその酸付加塩の製造方法を提供する。該方法は、式(II)の化合物の(R)-又は(S)-鏡像異性体を上記方法に従って製造すること、及び該式(II)の化合物の(R)-又は(S)-鏡像異性体をホルモテロールの(R,R)、(S,S)、(R,S)又は(S,R)ジアステレオマーに変換すること、及び任意に該ホルモテロールをその酸付加塩に変換することを含む。該変換は、下記方法のいずれか1つを含むことができる。
【0024】
また、本発明は、上記方法のいずれか1つに従って製造された化合物(II)を提供する。
一実施態様において、上記方法に従って製造された式(II)の化合物は、下記のように化合物(IV)の製造方法に使用することができる。
【0025】
本発明の別の態様により、式(IV)の化合物の(R)-又は(S)-鏡像異性体の製造方法を提供する。該方法は、式(II)のアミンの(R)-若しくは(S)-鏡像異性体又はその酸付加塩を、式(III)のα-ハロケトンと縮合して、式(IV)の化合物の(R)-又は(S)-鏡像異性体を得ることを含む。
【化11】

式中、R1及びR2は独立して、任意に置換されたアリールアルキルであり、かつHalは、クロロ又はブロモを表す。
一実施態様において、化合物(II)は(R)-鏡像異性体の形態であり、かつ化合物(IV)は(R)-鏡像異性体の形態である。
【0026】
R1及びR2は、保護基として機能する。R1及び/又はR2が、置換されたアリールアルキルである場合、それらは1つ以上の置換基を含むことができ、それらのいずれも保護基としてのR1及び/又はR2の機能を妨げるものではない。該置換基は、アリール成分及び/又はアルキル成分上のものであってもよい。一実施態様において、該置換基はアルキル成分上にあり、かつC1-3アルキル、好ましくはメチルである。
R1及びR2は独立して、任意に置換されたアリールアルキルであり、これはアルキル基が、アリール基及びアミン部位の窒素に共有結合し(R1の場合)、かつヒドロキシル部位の酸素に共有結合している(R2の場合)ことを意味する。好ましくは、該アリール成分は、C6-10アリールである。好ましくは、該アルキル成分は、C1-6アルキル、より好ましくは、メチル又はエチルである。
【0027】
一実施態様において、R1はアリールアルキルである。該アリールアルキル基は、置換されていてもよい。一実施態様において、該アリールアルキル基は、C6-10アリール-(C1-6)アルキルである。一実施態様において、アリールはフェニルである。別の実施態様において、アルキルはC1〜C6アルキル、好ましくは、C1〜C3アルキル、より好ましくは、メチル又はエチルである。好ましくは、アリールアルキルは、ベンジル又は置換されたベンジル(ここで、該メチル成分が置換されている。)、例えば1-フェニルエチルである。最も好ましくは、アリールアルキルはベンジルである。好ましくは、R2はベンジルである。好適には、R1及びR2の両方ともベンジルである。
好ましくは、Halはブロモである。
【0028】
一実施態様において、該縮合は、溶媒の存在下で行われる。該溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、t-ブタノール、メチルイソブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、n-ブタノン、トルエン、t-アミルアルコール、アセトニトリル、ジグリム、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、キシレン、及びヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)からなる群から選択される。
【0029】
一実施態様において、該縮合工程は、有機又は無機塩基、例えば、トリエチルアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、又はジイソプロピルエチルアミンなどの存在下で行われる。
一実施態様において、該縮合は、50℃未満、好適には、30℃未満の温度で行われる。
任意に、触媒、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化テトラブチルアンモニウム、18-クラウン6エーテル、硫酸テトラブチルアンモニウム、又はヨウ化テトラブチルアンモニウム、好ましくは、ヨウ化カリウムなどを使用して、該反応速度を促進させることができる。
【0030】
一実施態様において、ホルモテロールの(R,R)、(S,S)、(R,S)若しくは(S,R)ジアステレオマー、又はその酸付加塩の製造方法を提供する。該方法は、式(IV)の化合物の(R)-又は(S)-鏡像異性体を上記方法に従って製造すること、及び該式(IV)の化合物の(R)-又は(S)-鏡像異性体をホルモテロールの(R,R)、(S,S)、(R,S)又は(S,R)ジアステレオマーに変換すること、及び任意に該ホルモテロールをその酸付加塩に変換することを含む。該変換は、下記の方法のいずれか1つを含むことができる。
【0031】
また、本発明は、上記方法のいずれかに従って製造された化合物(IV)を提供する。
一実施態様において、上記方法に従って製造された式(IV)の化合物は、下記のように化合物(V)の製造方法に使用することができる。
【0032】
本発明の別の態様により、式(V)の化合物の(R,R)、(S,R)、(R,S)又は(S,S)ジアステレオマーの製造方法を提供する。該方法は、式(IV)の化合物をキラル的に還元することを含む。
【化12】

【0033】
化合物(IV)は、1つのキラル中心を有しているが、化合物(V)は、2つのキラル中心を有している。したがって、化合物(V)の別のキラル中心は、化合物(IV)の選択的還元によって生成されなければならない。先行技術の方法において、2つのキラル中心から1つを選択的に還元することは開示されていない。本発明の方法は、この選択的還元を達成しており、したがって、有利である。
一実施態様において、化合物(IV)は(R)-鏡像異性体の形態であり、かつ化合物(V)は(R,R)-ジアステレオマーの形態である。
【0034】
R1及びR2は、保護基として機能する。R1及び/又はR2が、置換されたアリールアルキルである場合、それらは1つ以上の置換基を含むことができ、それらのいずれも保護基としてのR1及び/又はR2の機能を妨げるものではない。該置換基は、アリール成分及び/又はアルキル成分上のものであってもよい。一実施態様において、該置換基はアルキル成分上にあり、かつC1-3アルキル、好ましくはメチルである。
R1及びR2は独立して、任意に置換されたアリールアルキルであり、これはアルキル基が、アリール基及びアミン部位の窒素に共有結合し(R1の場合)、かつヒドロキシル部位の酸素に共有結合している(R2の場合)ことを意味する。好ましくは、該アリール成分は、C6-10アリールである。好ましくは、該アルキル成分は、C1-6アルキル、より好ましくは、メチル又はエチルである。
【0035】
一実施態様において、R1はアリールアルキルである。該アリールアルキル基は、置換されていてもよい。一実施態様において、該アリールアルキル基は、C6-10アリール-(C1-6)アルキルである。一実施態様において、アリールはフェニルである。別の実施態様において、アルキルはC1〜C6アルキル、好ましくは、C1〜C3アルキル、より好ましくは、メチル又はエチルである。好ましくは、アリールアルキルは、ベンジル又は置換されたベンジル(ここで、該メチル成分が置換されている。)、例えば1-フェニルエチルである。最も好ましくは、アリールアルキルはベンジルである。好ましくは、R2はベンジルである。好適には、R1及びR2の両方ともベンジルである。
【0036】
一実施態様において、式(IV)の化合物は、(-)-DIP-クロリド、β-イソピノカンフィニル(isopinocamphinyl)-9BBN(R-アルピン-ボラン)、キラルβ-オキソアルジミナトコバルト(II)錯体、ジオキサズアルミニウム(dioxazaluminium)錯体(アミノ酸エステル、LiAlH4及びボランメチルスルフィドから誘導される。)、ジヒドロオキサザボリン、及びキラルオキサザボロリジン触媒から誘導されたオキサザボロリジンの単一の鏡像異性体試薬の触媒量の存在下でのボラン還元剤からなる群から選択されるキラル還元剤を用いてキラル還元される。
【0037】
一実施態様において、該ボラン還元剤はBH3.THF又はボラン-メチルスルフィドである。
一実施態様において、該キラルオキサザボロリジン触媒は、シス-(1R,2S)-アミノインダノール、R-ジフェニルプロリノール、R-メチルオキサザボロリジン(R-ジフェニルプロリノール、トリメチルボロキシン及びメチルボロン酸から誘導される。)、及び非α置換の(R)-インドリン-2-カルボン酸からなる群から選択される。該オキサザボロリジン触媒は、シス-(1R,2S)-アミノインダノール及び2当量のボラン-メチルスルフィドから原位置で生成することができる。好ましくは、該オキサザボロリジン触媒は、ケトン(IV)の1モルあたり約5〜約10%の範囲の量で存在している。
該還元は、エナンチオ選択性が高い(典型的に、少量の触媒を使用した場合でも、98%より高い鏡像体過剰率で単一の異性体が形成される。)。
【0038】
上に示された化合物(IV)は、(R)-鏡像異性体の形態である。該方法に使用するための化合物(IV)はまた、(S)-鏡像異性体の形態であってもよい。
上に示された化合物(V)は、(R,R)-ジアステレオマーの形態である。化合物(V)の他のジアステレオマーは、化合物(II)の適切な鏡像異性体を式(III)のα-ハロケトンと、適切なキラル還元条件下で反応させること、及び下記の式(V)の化合物の(R,R)-ジアステレオマーのための所定の合成手順によって製造され得る。化合物(V)の異なったジアステレオマーを製造するために、化合物(II)のどの鏡像異性体を使用し、かつどのキラル還元剤を使用すべきかは、当業者には周知のことであろう。
【0039】
一実施態様において、化合物(V)の製造方法に使用するための式(IV)の化合物は、上記方法に従って製造される。
また、本発明は、上記方法のいずれか1つに従って製造された化合物(V)を提供する。
【0040】
一実施態様において、ホルモテロールの(R,R)、(S,S)、(R,S)若しくは(S,R)ジアステレオマー、又はその酸付加塩の製造方法を提供する。該方法は、式(V)の化合物を上記方法に従って製造すること、及び該式(V)の化合物の(R,R)、(S,S)、(R,S)又は(S,R)ジアステレオマーを、ホルモテロールの(R,R)、(S,S)、(R,S)又は(S,R)ジアステレオマーに変換すること、及び任意に該ホルモテロールをその酸付加塩に変換することを含む。該変換は、下記方法のいずれか1つを含むことができる。
【0041】
本発明の別の態様により、式(VI)の化合物の(R,R)、(S,S)、(R,S)又は(S,R)ジアステレオマーの製造方法を提供する。該方法は、化合物(V)の(R,R)、(S,S)、(R,S)又は(S,R)ジアステレオマーを還元して、式(VI)の化合物の(R,R)、(S,S)、(R,S)又は(S,R)ジアステレオマーを生成することを含む。
【化13】

本発明の方法は、化合物(V)の立体配置が保持されるので有利である。
一実施態様において、式(V)の化合物の(R,R)ジアステレオマーを還元して、式(VI)の化合物の(R,R)ジアステレオマーを得る。
【0042】
R1及びR2は、保護基として機能する。R1及び/又はR2が、置換されたアリールアルキルである場合、それらは1つ以上の置換基を含むことができ、それらのいずれも保護基としてのR1及び/又はR2の機能を妨げるものではない。該置換基は、アリール成分及び/又はアルキル成分上のものであってもよい。一実施態様において、該置換基はアルキル成分上にあり、かつC1-3アルキルであり、好ましくはメチルである。
R1及びR2は独立して、任意に置換されたアリールアルキルであり、これはアルキル基が、アリール基及びアミン部位の窒素に共有結合し(R1の場合)、かつヒドロキシル部位の酸素に共有結合している(R2の場合)ことを意味する。好ましくは、該アリール成分は、C6-10アリールである。好ましくは、該アルキル成分は、C1-6アルキル、より好ましくは、メチル又はエチルである。
【0043】
一実施態様において、R1はアリールアルキルである。該アリールアルキル基は、置換されていてもよい。一実施態様において、該アリールアルキル基は、C6-10アリール-(C1-6)アルキルである。一実施態様において、アリールはフェニルである。別の実施態様において、アルキルはC1〜C6アルキル、好ましくは、C1〜C3アルキル、より好ましくは、メチル又はエチルである。好ましくは、アリールアルキルは、ベンジル又は置換されたベンジル(ここで、該メチル成分が置換されている。)、例えば1-フェニルエチルである。最も好ましくは、アリールアルキルはベンジルである。好ましくは、R2はベンジルである。好適には、R1及びR2の両方ともベンジルである。
【0044】
該還元は、ニトロ基の還元である。該還元は、鏡像異性体的に選択的である。一実施態様において、該ニトロ還元は、水素移動触媒の存在下で水素供与性化合物を用いて、立体配置を保持した状態で行われる。
好適には、該水素供与性化合物は、ヒドラジン水和物である。
好適には、該水素移動触媒は、FeCl3.6H2O-活性炭、Fe(III)オキシドヒドロキシド、Fe(III)オキシド、Zn-C、Fe-C、Pd-C、Pt-C、ラネーNi、グラファイト、及びクレイからなる群から選択される。
【0045】
一実施態様において、該ニトロ化合物は、アルミナ、シリカゲル、及びクレイなどの固体物質上に担持されたヒドラジン水和物によって還元される。この方法は、反応時間の短縮、より簡単な後処理手順、並びにラセミ化を伴わない選択性及び反応性の向上を提供する。
一実施態様において、該還元は、アルコール溶媒又はジオキサンの還流中で行われる。
【0046】
別の実施態様において、該ニトロ基は、不活性溶媒の存在下で水素化触媒を用いて、ギ酸アンモニウムによってアミン基に還元される。好適には、該不活性溶媒は、アルコール溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、若しくはブタノールなど、又は極性非プロトン性溶媒、例えば、アセトニトリル、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO、若しくはTHFなどから選択される。
【0047】
更に別の実施態様において、該ニトロ基は、PtO2又はPt/Cなどの貴金属触媒の存在下での不均一系触媒水素化によってアミン基に還元される。好適には、該水素化触媒は、炭素、クレイ、シリカ又はアルミナに担持されたパラジウム、ルテニウム又はロジウムなどの貴金属触媒を含む。この実施態様において、好適には該還元は、約25℃〜使用溶媒の約還流温度の範囲の温度で行われる。
【0048】
一実施態様において、化合物(VI)の製造方法に使用するための式(V)の化合物は、上記方法に従って製造される。
また、本発明は、上記方法のいずれか1つに従って製造された化合物(VI)を提供する。
【0049】
一実施態様において、ホルモテロールの(R,R)、(S,S)、(R,S)又は(S,R)ジアステレオマー、又はその酸付加塩の製造方法を提供する。該方法は、式(VI)の化合物を上記方法に従って製造すること、及び該式(VI)の化合物の(R,R)、(S,S)、(R,S)又は(S,R)ジアステレオマーを、ホルモテロールの(R,R)、(S,S)、(R,S)又は(S,R)ジアステレオマーに変換すること、及び任意に該ホルモテロールをその酸付加塩に変換することを含む。該変換は、下記方法のいずれか1つを含むことができる。
【0050】
一実施態様において、化合物(VI)の変換は、化合物(VI)の(R,R)、(S,S)、(R,S)又は(S,R)ジアステレオマーをホルミル化して、化合物(VII)の(R,R)、(S,S)、(R,S)又は(S,R)ジアステレオマーを生成すること;
【化14】

任意に、該化合物(VII)の(R,R)、(S,S)、(R,S)又は(S,R)ジアステレオマーを酸と反応させて、式(VIIa)の化合物の(R,R)、(S,S)、(R,S)又は(S,R)ジアステレオマーを形成すること、及び任意に、該化合物(VIIa)の(R,R)、(S,S)、(R,S)又は(S,R)ジアステレオマーを単離すること
【化15】

(式中、R1及びR2は上記のものであり、HAは式H+A-の酸であり、式中、A-はアニオンである。);
及び該化合物(VII)の(R,R)、(S,S)、(R,S)又は(S,R)ジアステレオマー、又は該化合物(VIIa)の(R,R)、(S,S)、(R,S)又は(S,R)ジアステレオマーを脱保護して、ホルモテロールの(R,R)、(S,S)、(R,S)又は(S,R)ジアステレオマーを得ることを含む。
【0051】
化合物(I)は、(R,R)-ジアステレオマーの形態で上に示されている。化合物(I)の他のジアステレオマーは、化合物(V)の適切なジアステレオマーを出発材料として使用して製造され得る。
化合物(VIIa)において、アニオンA-は、酸付加塩を形成するのに使用される酸に対応する。任意に、該酸は、安息香酸、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、又は酒石酸などのカルボン酸;又は塩酸などの鉱酸である。
【0052】
一実施態様において、式(VII)の化合物の(R,R)-ジアステレオマーは、式(VIIa)の化合物の(R,R)-ジアステレオマーとして、その酸付加塩の形態で単離される。
一実施態様において、式(VII)又は(VIIa)の化合物の(R,R)-ジアステレオマーは、対応するホルモテロールの(R,R)-ジアステレオマーに変換される。好適には、該変換は、適当な脱保護剤を使用するNR1及びOR2基の脱保護を含む。当業者には周知のように、該脱保護剤は該保護基の性質によって決まる。
【0053】
R1及びR2がベンジル基である場合、該脱保護は、貴金属触媒及び水素ガスの存在下での式(VII)又は(VIIa)の化合物の水素化分解を含むことができる。
本発明はまた、上記方法のいずれか1つに従って製造されたホルモテロールの(R,R)、(S,S)、(R,S)又は(S,R)ジアステレオマー、又はその酸付加塩を提供する。
そのように製造された、該ホルモテロール又は鏡像異性体、及びそれらの酸付加塩を、1つ以上の医薬として許容し得る賦形剤をともに配合して、医薬組成物を提供することができる。そのような賦形剤及び組成物は、当業者には周知である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
(発明の詳細な説明)
本発明の好ましい実施態様において、下記の反応スキーム1に示すように、ホルモテロールの(R,R)、(S,S)、(R,S)若しくは(S,R)ジアステレオマー、又はその酸付加塩の改良された合成を提供する。
【化16】

【0055】
化合物(I)、(V)、(VI)及び(VII)は、(R,R)-ジアステレオマーの形態で上に示されている。化合物(II)及び(IV)は、(R)-鏡像異性体の形態で上に示されている。本発明はまた、化合物(I)、(V)、(VI)及び(VII)の(S,S)、(R,S)及び(S,R)ジアステレオマーの製造方法にも関連し、かつ化合物(II)及び(IV)の(S)-異性体の製造方法にも関連することが理解されるであろう。
したがって、好ましい実施態様において、本発明は、下記工程を含む、式Iの(R,R)-ホルモテロール(アルホルモテロールとしても公知)、又はその酸付加塩の製造方法を提供する。
【0056】
式(VIII)のアミンを用いた4-メトキシフェニルアセトンの還元的アミノ化を、適当な還元剤の存在下で行い、
【化17】

(式中、R1は上記のものである。)式(II)の化合物又はその酸付加塩を得る。
【0057】
一実施態様において、R1はベンジルであり、化合物VIIIは式(VIIIa)を有する。別の実施態様において、R1は1-フェニルエチルであり、化合物VIIIは式(VIIIb)を有する。
【化18】

【0058】
化合物(VIIIa)が4-メトキシフェニルアセトンを用いて還元的アミノ化される場合、化合物(II)は、ラセミの形態で生成され、該方法は、還元剤を用いてラセミ化合物(II)を分割すること、及び光学的に純粋な化合物(II)を生成することを更に含む。好ましくは、該分割剤はキラル酸であり、該ラセミ化合物(II)と該酸との反応より、分割された化合物(II)の塩が生成され、次いでこれは、例えば、塩基との反応によって、光学的に純粋な化合物(II)に変換される。好ましくは、R1がベンジルである化合物(II)の(R)-鏡像異性体は、4-メトキシフェニルアセトンを用いて還元的アミノ化を行うこと、該ラセミ化合物(II)をL-マンデル酸とメタノールなどのアルコール溶媒中で反応させて、化合物(II)の(R)-鏡像異性体のL-マンデル酸塩を得ること、及び該塩を化合物(II)の(R)-鏡像異性体の遊離塩基の形態に変換することによって製造される。
【0059】
化合物(VIIIb)が、4-メトキシフェニルアセトンを用いて還元的にアミノ化される場合、化合物(II)は、光学的に純粋な形態で生成されるので、分割の工程は必要ない。
好ましくは、該還元的アミノ化は、標準大気圧で、イオン性化合物を使用して、有機溶媒又は水性溶媒又はそれらの混合物中で行われる。
あるいは、還元的アミノ化は、適当な水素化触媒及び適当な溶媒の存在下での触媒的水素化下で行うことができる。化合物(VIII)及び4-メトキシフェニルアセトンから化合物(II)を製造する工程は、本発明の別の態様を形成する。
【0060】
化合物(II)の(R)-鏡像異性体又はその酸付加塩を、式(III)のα-ハロケトンと縮合して、
【化19】

式(IV)の化合物を得る。
【化20】

式中、R1及びR2は上記のものである。該化合物(IV)の(R)-鏡像異性体を、キラル的に還元して、式Vの化合物の(R,R)-ジアステレオマーを形成する。
【化21】

式中、R1及び R2は、上記のものである。
【0061】
該化合物Vの(R,R)-ジアステレオマーを、水素供与性化合物を用いて還元し、対応する式VIの(R,R)-ジアステレオマーを形成する。
【化22】

該化合物(VI)の(R,R)-ジアステレオマーを、適当なホルミル化剤の存在下でホルミル化して、対応する化合物(VII)の(R,R)-ジアステレオマーを得る。
【化23】

式中、R1及び R2は、上記のものである。
【0062】
任意に、該化合物(VII)の(R,R)-ジアステレオマーを、式(VIIa)のその塩に変換する。
【化24】

式中、R1、R2及びHAは、上記のものである。
【0063】
化合物(VII)の(R,R)-ジアステレオマーを、適当な脱保護条件下で脱保護して、対応する式Iのホルモテロールの(R,R)-ジアステレオマー(アルホルモテロール)を得る。
任意に、式Iのアルホルモテロールを、その医薬として許容し得る塩に変換する。
【0064】
典型的に、該還元的アミノ化は、メタノール、エタノール、IPA、n-プロパノール、t-ブタノール、n-ブタノール、アセトニトリル、THF、DMSO、アセトン、DMF、酢酸、ギ酸、又はそれらの混合物などの溶媒中で行われる。好ましくは、該反応は、約-10℃〜約30℃、好ましくは、約0〜5℃の範囲の温度で行われる。使用される適当な還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、及びシアノ水素化ホウ素カリウムから選択することができる。
【0065】
該イオン性化合物は、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム-水酸化アンモニウム、クエン酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、リン酸カルシウム、クエン酸塩、リン酸塩、リン酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム三水和物、塩化ナトリウム、ギ酸トリエチルアンモニウム、ギ酸ピリジニウム、過塩素酸ナトリウム、及びギ酸トリエチルアンモニウムからなる群から選択することができる。該イオン性化合物は、単体で又は当業者に公知の他のイオン性化合物と組合せて使用することができる。好ましいイオン性化合物は、酢酸ナトリウム三水和物である。酢酸ナトリウム三水和物を添加して、反応混合物のpHを維持し、それによって、反応をより速やかにし、かつ不純物の形成を低減させる。
【0066】
より具体的には、式(VIII)の化合物(式中、R1はベンジル又は1-フェニルエチルである。)は、4-メトキシフェニルアセトンを用いて還元的アミノ化されて、対応する式(II)の化合物が得られる。
【0067】
別の実施態様において、還元的アミノ化は、水素化触媒の存在下で水素を用いて行われる。典型的な水素化触媒は、ラネーニッケル、パラジウム、水酸化パラジウム、パラジウム-活性炭、パラジウム-アルミナ、白金、白金-活性炭、並びにRh(I)及びRu(II)トリフェニルホスフィン錯体から選択することができる。該溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、THF、トルエン、及びそれらの混合物から選択することができる。該反応は、約25℃〜約70℃、好ましくは、約40〜約60℃、より好ましくは、約50〜約55℃の範囲の温度で行うことができる。
【0068】
R1がベンジルである場合、式(II)の化合物は、マンデル酸などの適当な分割剤を用いて更に分割することができ、化合物(II)の(R)-鏡像異性体が得られる。該反応は、メタノールなどのアルコール溶媒中、適当な温度で行うことができる。
化合物(II)は、その酸付加塩、例えば、塩酸塩、マンデル酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩などの形態で単離することができる。
【0069】
典型的に、その遊離塩基又は酸付加塩、好ましくは塩基である光学的に純粋な化合物(II)は、メタノール、エタノール、IPA、t-ブタノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、2-ブタノン、酢酸エチル、トルエン、t-アミルアルコール、アセトニトリル、ジグリム、DMSO、キシレン、又はヘキサメチルリン酸アミド(HMPA)、又はTHFなどの溶媒中で、式(III)の化合物と縮合される。該反応は、冷却から溶媒の還流温度までの温度、好ましくは冷却温度で行うことができる。更に、この反応は、任意に、有機又は無機溶媒のいずれか、例えば、トリエチルアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、又はジイソプロピルエチルアミンの存在下で行い、該反応を促進することができる。一実施態様において、無機塩基が使用される。任意に、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化テトラブチルアンモニウム、18-クラウン-6、硫酸テトラブチルアンモニウム、又はヨウ化テトラブチルアンモニウム、好ましくは、ヨウ化カリウムなどの触媒を使用して、該反応速度を向上させることができる。
【0070】
より具体的には、光学的に純粋な式(II)の化合物(式中、R1はベンジル又は1-フェニルエチルである。)は、化合物(III)(式中、R2はベンジルであり、かつHalはブロモである。)と約20〜30℃で縮合して、対応する式(IV)の化合物を与える。ベンジル化された式(II)の化合物の使用は、二量体不純物の形成を最小化し;このことは、本発明の好ましい実施態様を形成する。
該化合物IIIは、当該分野で公知の、例えば、US3994974記載の方法によって得ることができる。
【0071】
更に、該化合物(IV)は、(-)-DIP-クロリド、β-イソピノカンフィニル-9BBN(R-アルピン-ボラン)などのキラル還元剤を用いて、キラル還元される。該還元は、約1当量のボラン還元剤、例えば、BH3.THF又はボラン-メチルスルフィドの存在下、及び任意に、キラルオキサザボロリジン触媒から誘導されたオキサザボロリジンの単一の鏡像異性体の触媒量の存在下で行うことができ、式Vの化合物が得られる。
【0072】
キラルオキサザボロリジン触媒の例は、シス-(1R,2S)-アミノインダノール、R-ジフェニルプロリノール、R-メチルオキサザボロリジン(R-ジフェニルプロリノール、トリメチルボロキシン、及びメチルボロン酸から誘導される。)、非α置換の(R)-インドリン-2-カルボン酸等である。
【0073】
該化合物Vは、水素移動触媒の存在下で、水素供与性化合物、好ましくは、ヒドラジン水和物を用いることによって、対応する式VIのアミンに還元することができる。適当な水素移動触媒は、FeCl3.6H2O-活性炭、Fe(III)オキシドヒドロキシド又はFe(III)オキシド、Zn-C、Fe-C、Pd-C、Pt-C、ラネーNi、グラファイト、及びクレイである。該ニトロ化合物は、アルミナ、シリカゲル及びクレイなどの固体材料に担持されたヒドラジン水和物を用いて還元される。これらは、反応時間の短縮、より容易な後処理手順、並びにラセミ化を伴わない選択性及び反応性の向上を提供する。該方法に使用される溶媒は、アルコール溶媒又はジオキサンから選択される。
【0074】
あるいは、該ニトロ化合物は、不活性溶媒の存在下で水素化触媒を使用し、水素移動剤としてギ酸アンモニウムを使用することによって、立体配置を保持したままでアミンに還元することができる。使用される適当な不活性溶媒は、アルコール溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、又は極性非プロトン性溶媒、例えば、アセトニトリル、DMF、DMSO、THFから選択することができる。好適には、該水素化触媒は、炭素、クレイ、シリカ又はアルミナに担持された貴金属触媒、例えば、パラジウム、白金、ルテニウム又はロジウムを含む。好適には、該還元は、約25℃〜使用溶媒の約還流温度の範囲の温度で行われる。
【0075】
あるいは、該ニトロ基は、THF、トルエン、アルコール性溶媒、又はそれらの混合物などの適当な溶媒の存在下、PtO2又はPt/Cなどの貴金属触媒の存在下での不均一系触媒水素化によって、選択的にアミン基に還元することができる。該還元は、60℃未満;好ましくは、40℃未満、最も好ましくは、30℃未満の温度で行われる。
【0076】
式VIのアニリンは、ラセミ化することなく、ギ酸又はギ酸/無水酢酸を用いてホルミル化される。本発明の方法において、ギ酸と無水酢酸との混合物が使用される。該ホルミル化は、塩化メチレン、クロロホルム及び塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素、エーテル、酢酸エチルから選択される不活性有機溶媒若しくは溶媒混合物の存在下、又は溶媒の非存在下で行うことができる。好ましくは、該反応は、トルエン-THFの混合物中、冷却から加熱の温度、好ましくは、20〜30℃で行われる。
【0077】
化合物VIIは、式VIIaの化合物としてその酸付加塩の形態で単離することができる。
典型的に、式中、R1はベンジル又は置換されたベンジルであり、式VIIを式Iのアルホルモテロールに脱保護する好ましい方法は、パラジウム、水酸化パラジウム、パラジウム-活性炭、パラジウム-アルミナ、白金、白金-活性炭、及びラネーニッケルなどの触媒を使用する触媒的還元である。使用される溶媒は、酢酸アルキル、低級アルキルアミン、アルコール、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ヘテロ環、ジアルキルエーテル、酸、水と水混和性溶媒との混合物、イオン性液体、ハロゲン化溶媒、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0078】
本発明の方法は、式Iのアルホルモテロールをその医薬として許容し得る塩に変換することを更に含むことができる。該酸付加塩を挙げると、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ピバル酸などの無機酸、及びフマル酸、酒石酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、マンデル酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、クエン酸、メタンスルホン酸、p-ヒドロキシ安息香酸、グルタミン酸、p-トルエンスルホン酸などの有機塩、好ましくは、フマル酸及び酒石酸がある。
【0079】
本発明の方法によって得られるアルホルモテロールは、他のジアステレオマーを含まない。
該ホルモテロールの他のジアステレオマーは、アルホルモテロールの上記の合成手順の後に適切な鏡像異性体を反応させることによって製造することができる。
【0080】
本発明の別の態様により、上記アルホルモテロール又はその酸付加塩を、1つ以上の医薬として許容し得る賦形剤とともに含む医薬組成物を提供する。
本発明の更に別の態様により、薬剤における上記アルホルモテロール又はその酸付加塩の使用を提供する。
本発明のより更なる態様により、喘息又はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療における、上記アルホルモテロール又はその酸付加塩の使用を提供する。
【0081】
本発明のより更なる態様により、喘息又はCOPDの治療用薬剤の製造における、上記アルホルモテロール又はその酸付加塩の使用を提供する。
本発明の別の態様により、それを必要とする患者に上記アルホルモテロール又はその酸付加塩を投与することを含む、喘息及びCOPDの治療方法を提供する。
ここで、本発明を下記の非限定的実施例によって更に例示する。
【実施例】
【0082】
(実施例1)
(工程1. (R)-N-ベンジル-N-(1-メチル-2-p-メトキシフェニルエチル)アミン塩酸塩の製造)
(製造-1)
4-メトキシフェニルアセトン(50kg、0.305M)、酢酸ナトリウム三水和物(62kg、0.455M)を、酢酸(170kg)及びメタノール(160リッター)を含有する反応容器に加えた。該反応塊(reaction mass)を0〜5℃まで冷却した。
ベンジルアミン(36kg、0.336M)を、0〜5℃の温度に維持しながら該反応容器にゆっくりと添加した。0〜5℃で2時間撹拌した後、該反応塊を、10℃未満の温度に維持しながら水素化ホウ素ナトリウム(25kg、0.657M)で処理し、更に2時間撹拌した。該反応塊を水(500リッター)で希釈し、30℃未満で水酸化ナトリウム溶液(水150リッター中70kgの水酸化ナトリウム)で処理した。該反応塊を塩化メチレンで2回(200リッター)抽出し、水で洗浄し、減圧下で濃縮した。得られた残渣を酢酸エチル(200リッター)に溶解し、10〜15℃まで冷却し、該反応塊のpHをIPA+HClを用いて1〜2に調整した。固形物を濾過により単離し、乾燥させて、塩酸塩として標題化合物を得た(50Kg、56.5%)。
【0083】
(製造-2)
4-メトキシフェニルアセトン(200gms、1.219モル)、ベンジルアミン(124gms、1.158モル)、ラネーニッケル(30gms)及びメタノール(1.4リッター)をオートクレーブに導入した。10kgの水素圧を65〜70℃で6〜8時間印加することにより、該反応塊を水素化した。該反応塊を25〜30℃まで冷却した。該触媒を濾過によって除去し、該透明な濾液をIPA-HClを用いて酸性化した。該反応塊を減圧下、50℃未満で濃縮した。酢酸エチル(1.2リッター)を加え、残渣が得られるまで蒸留を続けた。該残渣を、酢酸エチル(0.4リッター)を用いて50℃で30分間撹拌し、次いで、25〜30℃で2時間撹拌した。固形物を濾過により単離し、酢酸エチル(0.2リッター)で洗浄し、乾燥させて、塩酸塩として標題化合物を得た(220gms、62%)。
【0084】
(工程2. (R)-N-ベンジル-N-(1-メチル-2-p-メトキシフェニルエチル)アミンマンデル酸塩の製造)
該塩酸塩(50Kg)を20%水酸化ナトリウム水溶液で処理した。該反応塊をジクロロメタンで抽出し、水で洗浄し、有機抽出物を蒸発させた。得られた残渣をメタノール(500リッター)に溶解させた。L-マンデル酸(26.16Kg、0.172M)を加え、該反応混合物を還流するまで1時間加熱した。該溶液を25〜30℃まで冷却し、18〜20時間撹拌し、マンデル酸塩を濾過した。メタノールから3回の再結晶化を行い、99.9%の鏡像異性体純度を有する、13.5 Kgの標題化合物を得た。
【0085】
(実施例2)
((R)-N-フェニルエチル-N-(1-メチル-2-p-メトキシフェニルエチル)アミン塩酸塩の製造)
実施例1、製造1に記載されたものと同様の方法を使用して、R-(+)-フェニルエチルアミン(500gms、4.132M)から標題化合物を製造した。
収量:500gms(45.16%)。
【0086】
(実施例3)
(R)-N-ベンジル-N-(1-メチル-2-p-メトキシフェニルエチル)アミンマンデル酸塩(13.5Kg、0.033M)を67.5リッターの水中で撹拌した。次いで、該反応塊を、20%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH9〜10に塩基性化し、ジクロロメタン(67.5リッター)に抽出した。該有機抽出物を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させた。
【0087】
(4-ベンジルオキシ-3-ニトロ-α-[N-ベンジル-N-(1-メチル-2-p-メトキシフェニルエチル)アミノ]アセトフェノンの製造)
4-ベンジルオキシ-3-ニトロ-α-ブロモアセトフェノン(12.5Kg、0.0358M)、炭酸カリウム(7.0 Kg、0.050M)、アセトン(125リッター)中のヨウ化カリウム(0.75Kg)、及び(R)-N-ベンジル-N-(1-メチル-2-p-メトキシフェニルエチル)アミン(8.5Kg、0.0334M)を25〜30℃で3時間撹拌した。不溶物を濾過して除去した。該透明な濾液を蒸発させ、残渣をジクロロメタン(7.5リッター)と水(7.50リッター)との間で分配した。有機抽出物を分離し、水で洗浄し、蒸発させて、標題化合物を得た。
【0088】
(実施例4)
(4-ベンジルオキシ-3-ニトロ-α-[N-ベンジル-N-(1-メチル-2-p-メトキシフェニルエチル)アミノメチル]ベンジルアルコールの製造)
テトラヒドロフラン(500ml)及びR-メチルオキサザボロリジン(42ml)を反応容器に加えた。該反応塊を-10℃まで冷却した。ボラン-ジメチルスルフィド錯体(110ml)をゆっくりと添加した。500mlのTHF中の4-ベンジルオキシ-3-ニトロ-α-[N-ベンジル-N-(1-メチル-2-p-メトキシフェニルエチル)アミノ]アセトフェノン(100gms、0.19M)の溶液を、-10〜-5℃で該反応塊にゆっくりと添加した。該反応塊を1.5時間更に撹拌し、2%の水性HCl(500ml)で処理した。該反応塊を1.0リッターのトルエンで抽出し、水で洗浄し、透明な濾液を減圧下、40℃未満で濃縮して、標題化合物(95gms、%)を得た。
【0089】
(実施例5)
(3-アミノ-4-ベンジルオキシ-α-[N-ベンジル-N-(1-メチル-2-p-メトキシフェニルエチル)アミノメチル]ベンジルアルコールの製造)
i) ヒドラジン水和物の使用(標準大気圧)
4-ベンジルオキシ-3-ニトロ-α-[N-ベンジル-N-(1-メチル-2-p-メトキシフェニルエチル)アミノメチル]ベンジルアルコール(100gms、0.19M)、ヒドラジン水和物(50gms、1.56M)、中性のアルミナ(20gms)、チャコール(10gms)、水(50ml)、及びメタノール(500ml)を一緒に混合した。該反応塊を50℃まで加熱した。50mlのメタノール中の塩化第二鉄(2gms、0.012M)の溶液を55〜60℃でゆっくりと導入した。該反応塊をハイフロ(hyflo)で濾過し、該透明な濾液を蒸発させた。得られた残渣を1.0リッターのトルエンに溶解させ、有機抽出物を水で洗浄し、蒸発させて、標題化合物を得た(75gms、79%)。
ii) 5%Pt/Cの使用(触媒的水素化)
4-ベンジルオキシ-3-ニトロ-α-[N-ベンジル-N-(1-メチル-2-p-メトキシフェニルエチル)アミノメチル]ベンジルアルコール(165gms、0.313M)、5%白金-炭素(16.5gms)、及びTHF(0.66リッター)をハイドロジェネータ中で混合した。2kgの圧力を7〜10時間印加することにより、該反応塊を25〜30℃で水素化した。該触媒を濾過により除去し、該透明な濾液を蒸発させた。残渣をトルエン(0.825リッター)に溶解させ、蒸発させて標題化合物を得た(125gms、80%)。
iii) ギ酸アンモニウムの使用
a) DMFにおいて
DMF(500ml)中の4-ベンジルオキシ-3-ニトロ-α-[N-ベンジル-N-(1-メチル-2-p-メトキシフェニルエチル)アミノメチル]ベンジルアルコール(100gms、0.19M)の溶液に、10%Pd/Cを添加した。得られた塊を40℃まで加熱し、ギ酸アンモニウム(36gms、0.57M)を分割して1時間内に添加した。該反応塊を70〜75℃まで1時間ゆっくりと過熱し、次いで、50℃まで冷却した。触媒を濾過により除去し、該透明な濾液を蒸発させた。残渣を水(500ml)中で撹拌し、液体アンモニアを用いて塩基性化した。該反応塊を1.0リッターのトルエンで抽出し、有機抽出物を水で洗浄し、硫化ナトリウムで乾燥させ、蒸発させて標題化合物を得た(80gms、84.21%)。
b) SPDS(特別変性アルコール)において
SPDS(1.0リッター)中の4-ベンジルオキシ-3-ニトロ-α-[N-ベンジル-N-(1-メチル-2-p-メトキシフェニルエチル)アミノメチル]ベンジルアルコール(100gms、0.19M)の溶液に、10%Pd/Cを添加した。得られた塊を40℃まで加熱し、ギ酸アンモニウム(36gms、0.57M)を分割して1時間内に添加した。該反応塊を70℃まで1時間ゆっくりと過熱し、次いで、50℃まで冷却した。触媒を濾過により除去し、該透明な濾液を蒸発させた。残渣を水(500ml)中で撹拌し、液体アンモニアを用いて塩基性化した。該反応塊を1.0リッターのトルエンで抽出し、有機抽出物を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させて標題化合物を得た(78gms、83%)。
【0090】
(実施例6)
(4-ベンジルオキシ-3-ホルミルアミノ-α-[N-ベンジル-N-(1-メチル-2-p-メトキシフェニルエチル)アミノメチル]ベンジルアルコールの製造)
3-アミノ-4-ベンジルオキシ-α-[N-ベンジル-N-(1-メチル-2-p-メトキシフェニルエチル)アミノメチル]ベンジルアルコール(100gms、0.2M)、0.2リッターのトルエン、及び0.2リッターのTHFを反応容器に加えた。該反応塊を15℃まで冷却し、35mlの3:2のギ酸-無水酢酸を、20℃未満に温度を維持しながら導入した。該反応塊を20〜30℃で1時間更に撹拌し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をトルエン(0.65リッター)に溶解させ、液体アンモニアを用いて塩基性化した。該有機層を分離し、水で洗浄し、減圧下35℃未満で濃縮して標題化合物を得た(100gms、94.66%)。
【0091】
(実施例7)
(アルホルモテロールの製造)
4-ベンジルオキシ-3-ホルミルアミノ-α-[N-ベンジル-N-(1-メチル-2-p-メトキシフェニルエチル)アミノメチル]ベンジルアルコール(120gms、0.23M)、10%Pd/C(12gms)、及び変性スピリット(0.6リッター)をオートクレーブに導入した。4kgの水素圧を25〜30℃で3時間印加することにより、該反応塊を水素化した。触媒を濾過により除去し、該透明な濾液を、減圧下40℃未満で濃縮して標題化合物を得た(63gms、80%)。
【0092】
(実施例8)
(アルホルモテロール酒石酸塩の製造)
アルホルモテロール塩基(60gms、0.17M)、480mlのIPA、120mlのトルエン及び60mlの蒸留水中のL(+)-酒石酸(25.6gms、0.17M)を25〜30℃で2時間撹拌し、更に40〜45℃で3時間撹拌した。該反応塊を25〜30℃まで冷却し、更に20℃まで30分間冷却した。得られた固形物を濾過により単離して、標題化合物を得た(60gms、70%)。
該酒石酸塩を温50%IPA-水(0.3リッター)に溶解させ、前述のように冷却し、99%より高い鏡像異性体純度を有するアルホルモテロール酒石酸塩を得た(30gms、50% w/w)。
本発明は、添付の特許請求の範囲内で改良し得ることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(VI)の化合物の(R,R)-ジアステレオマー又はその塩の製造方法であって、
【化1】

(i) 4-メトキシフェニルアセトンを式(VIII)のアミンと、還元的アミノ化の条件下で反応させて、式(II)の化合物又はその塩を生成すること、ここで、該還元的アミノ化の間に形成されたイミン中間体の単離は行われない、
【化2】

(ii) 該化合物(II)の(R)-鏡像異性体又はその酸付加塩を、式(III)のα-ハロケトンと縮合して、式(IV)の化合物の(R)-鏡像異性体を生成すること、
【化3】

(iii) 該化合物(IV)の(R)-鏡像異性体を、式(V)の化合物の(R,R)-ジアステレオマーに還元すること、
【化4】

及び(iv) 該化合物(V)の(R,R)-ジアステレオマーを式(VI)の化合物の(R,R)-ジアステレオマーに還元すること、ここで、該還元は、(1) 水素移動触媒の存在下での水素供与性化合物、又は(2) 水素化触媒を使用してギ酸アンモニウム、のいずれかによって行われる、ことを含み、式中、R1及びR2は独立して、任意に置換されたアリールアルキル、及びHalはクロロ又はブロモから選択される、前記製造方法。
【請求項2】
R2が、ベンジルである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
R1が、ベンジル又は1-フェニルエチルである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
R1がベンジルであり、還元的アミノ化によりラセミの形態の化合物(II)が生成され、かつ前記方法が、該ラセミ化合物(II)をキラル酸で分割して、対応する化合物(II)の酸付加塩を形成することを更に含む、請求項1、2又は3記載の方法。
【請求項5】
前記キラル酸が、(S)-マンデル酸である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
R1が1-フェニルエチルであり、かつ化合物(VIII)が(R)-フェニルエチルアミンであり、還元的アミノ化により化合物(II)の(R)-鏡像異性体が生成される、請求項1、2又は3記載の方法。
【請求項7】
還元的アミノ化が、還元剤、イオン性化合物、及び有機溶媒、水性溶媒、又はそれらの混合物から選択される溶媒の存在下で行われる、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記イオン性化合物が、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム-水酸化アンモニウム、クエン酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、リン酸カルシウム、クエン酸塩、リン酸塩、リン酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ギ酸トリエチルアンモニウム、ギ酸ピリジニウム、過塩素酸ナトリウム、ギ酸トリエチルアンモニウム、又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記還元剤が、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、及びシアノ水素化ホウ素カリウムからなる群から選択され、好ましくは、水素化ホウ素ナトリウムである、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒が、メタノール、エタノール、IPA、n-プロパノール、t-ブタノール、n-ブタノール、アセトニトリル、THF、DMSO、アセトン、DMF、酢酸、ギ酸、又はそれらの混合物、好ましくは、メタノール及び酢酸からなる群から選択される、請求項7、8又は9記載の方法。
【請求項11】
還元的アミノ化が、水素化触媒の存在下で水素を用いて行われる、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記水素化触媒が、ラネーニッケル、パラジウム、水酸化パラジウム、パラジウム-活性炭、パラジウム-アルミナ、白金、白金-活性炭、Rh(I)及びRu(II)トリフェニルホスフィン錯体からなる群から選択され、好ましくは、ラネーニッケルである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記工程(ii)における化合物(II)と化合物(III)のモル比が、約1.5:1、好ましくは、約1.1:1からの範囲である、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記工程(ii)における縮合が、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、t-ブタノール、メチルイソブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、n-ブタノン、トルエン、t-アミルアルコール、アセトニトリル、ジグリム、THF、DMSO、キシレン、及びHMPAからなる群から選択される溶媒;好ましくは、アセトンの存在下で行われる、請求項1〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
前記工程(ii)における縮合が、トリエチルアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、及びジイソプロピルアミンから選択される塩基の存在下で行われる、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記工程(ii)における縮合が、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化テトラブチルアンモニウム、18-クラウン6エーテル、硫酸テトラブチルアンモニウム、及びヨウ化テトラブチルアンモニウムからなる群から選択される触媒の存在下で行われる、請求項1〜15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
前記工程(iii)における化合物(IV)が、(-)-DIP-クロリド、β-イソピノカンフィニル-9BBN(R-アルピン-ボラン)、キラルβ-オキソアルジミナトコバルト(II)錯体、ジオキサズアルミニウム錯体(アミノ酸エステル、LiAlH4及びボランメチルスルフィドから誘導される。)、ジヒドロオキサザボリン、及びキラルオキサザボロリジン触媒から誘導されたオキサザボロリジンの単一の鏡像異性体試薬の触媒量の存在下でのボラン還元剤からなる群から選択されるキラル還元剤を用いてキラル還元される、請求項1〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
前記ボラン還元剤が、BH3.THF又はボラン-メチルスルフィドである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記キラルオキサザボロリジン触媒が、シス-(1R,2S)-アミノインダノール、R-ジフェニルプロリノール、R-メチルオキサザボロリジン(R-ジフェニルプロリノール、トリメチルボロキシン及びメチルボロン酸から誘導される。)、及び非α置換の(R)-インドリン-2-カルボン酸からなる群から選択され、好ましくは、R-メチルオキサザボロリジンである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記工程(iv)における還元が、水素移動触媒の存在下で水素供与性化合物によって行われ、かつ該水素供与性化合物が、ヒドラジン水和物である、請求項1〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
前記工程(iv)における還元が、水素移動触媒の存在下で水素供与性化合物によって行われ、かつ該水素移動触媒が、FeCl3.6H2O-活性炭である、請求項1〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
前記工程(iv)における還元が、水素移動触媒の存在下で水素供与性化合物によって行われ、かつ該還元が、アルコール又はジオキサンから選択される溶媒中で行われる、請求項1〜21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
前記工程(iv)における還元が、水素移動触媒の存在下で水素供与性化合物によって行われ、かつ該水素移動触媒が、アルミナ、シリカゲル又はクレイから選択される固体材料の支持体上にある、請求項1〜22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
前記工程(iv)における還元が、水素化触媒を使用してギ酸アンモニウムによって行われ、かつ該水素化触媒が、炭素、クレイ、シリカ、又はアルミナ上に担持されたパラジウム、白金、ルテニウム、又はロジウムから選択される、請求項1〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
前記還元が、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール又はブタノール、アセトニトリル、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO又はTHFから選択される不活性溶媒の存在下で、水素化触媒使用してギ酸アンモニウムによって行われる、請求項1〜19又は24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
ホルモテロールの(R,R)-ジアステレオマー又はその医薬として許容し得る塩の製造方法であって、請求項1〜25のいずれか一項に従って化合物(VI)の(R,R)-ジアステレオマーを製造すること、該式(VI)の化合物の(R,R)-ジアステレオマーをホルモテロールの(R,R)-ジアステレオマーに変換すること、及び任意に該ホルモテロールの(R,R)-ジアステレオマーをその医薬として許容し得る塩に変換することを含む、前記製造方法。
【請求項27】
前記変換が、化合物(VI)の(R,R)-ジアステレオマーをホルミル化して、化合物(VII)の(R,R)-ジアステレオマーを生成することを含み、
【化5】

式中、R1及びR2は、請求項1〜26のいずれか一項に規定されたものである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記ホルミル化が、ギ酸及び無水酢酸を用いて行われる、請求項27記載の方法。
【請求項29】
化合物(VII)が、式(VIIa)の化合物のように、その酸付加塩の形態で単離され、
【化6】

式中、R1及びR2は、請求項1〜28のいずれか一項に規定されたものであり、かつA-は、アニオンである、請求項27又は28記載の方法。
【請求項30】
前記方法が、化合物(VII)の(R,R)-ジアステレオマーを、対応するホルモテロール(I)の(R,R)-ジアステレオマーに変換することを更に含む、請求項27、28又は29記載の方法。
【請求項31】
前記(R,R)-ホルモテロールへの変換が、脱保護剤を使用してNR1及びOR2基を脱保護することを含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記脱保護が、貴金属触媒の存在下で水素ガスを用いる、式(VII)の化合物の水素化分解を含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記脱保護が、パラジウムベース若しくは白金ベースの触媒、又はラネーニッケルを使用する触媒的還元を含む、請求項31記載の方法。
【請求項34】
前記触媒が、パラジウム、水酸化パラジウム、パラジウム-活性炭、パラジウム-アルミナ、白金、白金-活性炭、及びラネーニッケルからなる群から選択される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記化合物(VII)の脱保護が、溶媒の存在下で行われる、請求項31〜34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
前記溶媒が、酢酸アルキル、C1〜C6アルキルアミン、アルコール、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ヘテロ環、ジアルキルエーテル、酸、水と水混和性溶媒との混合物、イオン性液体、ハロゲン化溶媒、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、変性スピリットである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記ホルモテロールが、その医薬として許容し得る塩に変換される、請求項26〜36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
前記塩が、酒石酸塩である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
請求項26〜38のいずれか一項の方法に従って製造された、(R,R)-ホルモテロール又はその塩。
【請求項40】
請求項39記載のホルモテロールを、1つ以上の医薬として許容し得る賦形剤とともに含む、医薬組成物。
【請求項41】
薬剤における、請求項39記載の(R,R)-ホルモテロール又はその塩の使用。
【請求項42】
喘息又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療における、請求項39記載の(R,R)-ホルモテロール又はその塩の使用。
【請求項43】
喘息又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療用薬剤の製造における、請求項39記載の(R,R)-ホルモテロール又はその塩の使用。
【請求項44】
それを必要とする患者に、請求項39記載の(R,R)-ホルモテロール又はその塩を投与することを含む、喘息又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療方法。
【請求項45】
実施例を参照して実質的に本明細書中に記載される(R,R)-ホルモテロール又はその塩。
【請求項46】
実施例を参照して実質的に本明細書中に記載される方法。

【公表番号】特表2011−523658(P2011−523658A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512193(P2011−512193)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001373
【国際公開番号】WO2009/147383
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(501312451)シプラ・リミテッド (56)
【Fターム(参考)】