説明

アルミニウムフィン材

【課題】優れた防菌防黴性と親水性を有し、その持続性にも優れたアルミニウムフィン材を提供すること。
【解決手段】少なくとも一つの表面処理層として、20℃の水に対する溶解度が10mg/100ml以下の防菌防黴剤および、親水性を有する有機−無機の複合化合物または親水性樹脂の混合物質を原材料として用いる防菌防黴性を有する親水性皮膜103を形成することにより、フィン表面に生成する凝縮水を親水性により速やかに流下排出させるとともに、凝縮水に親水性皮膜から防菌防黴剤が徐々に溶出することにより、優れた防菌防黴作用を長い期間にわたって発揮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その表面に塗膜が形成されたアルミニウム(本明細書においてはアルミニウム合金を含むものとする)からなる空気調和機などの熱交換器用フィン材に係り、優れた耐食性と親水性を有し、フィンに加工する際の生産性に優れ、空気調和機などに使用したとき表面に汚染物が付着しても親水性の持続性に優れ、また防菌防黴性に優れたアルミニウムフィン材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機などの熱交換器用フィンには熱伝導性および加工性が優れていることから通常アルミニウムが使用されている。
【0003】
従来この種の熱交換器用フィン材の表面には、下地処理層として、腐食の発生を抑えることを目的に防食皮膜が形成されている。そしてその上の表面処理層として、空気調和機の熱交換器が蒸発器として使われる冷房運転時の室内側熱交換器または暖房運転時の室外側熱交換器のフィンの表面に発生する凝縮水を円滑に落下、排出させることを目的に親水性皮膜が形成されている。近年のこの親水性皮膜はフィン表面が汚染されてもその優れた親水性を維持することを目的に耐汚染性に優れたものが開発使用されている(例えば、特許文献1、特許文献2および非特許文献1参照)。そしてさらにその上の表面処理層として、フィンをプレス加工するときの潤滑性向上などを目的に水溶性樹脂皮膜が形成されるものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
例えば特許文献1のアルミニウムフィン材は、アルミニウム及びアルミニウム合金の上に、溶解性パラメーターが7〜9[cal/cm30.5である高分子化合物と、溶解性パラメーターが12〜16[cal/cm30.5である高分子化合物を必須成分として含み、かつ、表面形態が微細に粗面化された樹脂系皮膜を有することを特徴とする親水性に優れた樹脂系アルミニウムフィン材である。また、特許文献2のアルミニウムフィン材は、第1層として、無機酸化物又は有機―無機複合化合物のいずれか1種からなる耐食皮膜17を形成し、さらにその上に、第2層として、ポリアクリル酸又はポリアクリル酸塩の中のいずれか1種と、分子内にヒドロキシル基を有する水溶性樹脂含を有する厚さ0.1〜10μmの親水性皮膜を形成し、さらにその上に、第3層として、分子内にヒドロキシル基を有する厚さ0.1〜10μmの水溶性樹脂皮膜19が形成されている。そして、非特許文献1では、親水化処理剤の皮膜特性と親水性、汚染性との関係について検討され、処理剤組成の特性として、溶解性パラメーターが汚染物質と大きく異なること、吸水率が高いこと、水への溶出量が少ないことが要求されることが明らかになっている。
【特許文献1】特許第2967855号公報
【特許文献2】特許第3383914号公報
【非特許文献1】村田正博ら著「耐汚染性に優れたアルミフィン用親水化処理剤」塗料の研究 No.138 July 2002、P.60−65
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、表面処理がないアルミニウムフィン材と同様、高温多湿の雰囲気で特に塵芥や埃が多い環境で使用されるとき、フィンの表面に付着する塵芥や埃を栄養源として、カビや細菌が繁殖し、不快臭を発生するという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、優れた親水性およびその持続性を有する
とともに、フィンの表面にカビや細菌が繁殖するのを抑える防菌防黴性を有するアルミニウムフィン材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明のアルミニウムフィン材は、少なくとも一つの表面処理層として、20℃の水に対する溶解度が10mg/100ml以下の防菌防黴剤および、有機高分子物質と無機化合物の親水性を有する複合化合物または親水性樹脂の混合物質を原材料として用いて、防菌防黴性を有する親水性皮膜を形成したものである。
【0008】
これによって、熱交換器が蒸発器として使用されたとき、フィン表面に生成する凝縮水に親水性皮膜から防菌防黴剤が徐々に溶出することにより、優れた防菌防黴作用を長い期間にわたって発揮することができる。
【0009】
また、本発明のアルミニウムフィン材は、防菌防黴性を有する親水性皮膜を0.1〜10μmの厚さで形成し、防菌防黴剤の粒子径を親水性皮膜の厚さより小さく、かつ1μm以下としたものである。
【0010】
これによって、防菌防黴剤はほとんど親水皮膜の中に埋没しているので、親水皮膜の親水性を損なうことがあまりなく、また、防菌防黴剤の粒子径は1μm以下と非常に小さいので、単位重量あたりの表面積が非常に大きく、粒子径が大きい防菌防黴剤に比べてより少量の防菌防黴剤でも同じ溶出速度を得ることができるので、経済的である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアルミニウムフィン材は、熱交換器が蒸発器として使用されたとき、フィン表面に生成する凝縮水に親水性皮膜から防菌防黴剤が徐々に溶出することにより、優れた防菌防黴作用を長い期間にわたって発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
第1の発明のアルミニウムフィン材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる基板上に、少なくとも一つの表面処理層として、20℃の水に対する溶解度が10mg/100ml以下の防菌防黴剤および、有機高分子物質と無機化合物の親水性を有する複合化合物または親水性樹脂の混合物質を原材料として用いる、防菌防黴性を有する親水性皮膜を形成することにより、熱交換器が蒸発器として使用されたとき、フィン表面に生成する凝縮水を親水性により速やかに流下排出させるとともに、凝縮水に親水性皮膜から防菌防黴剤が徐々に溶出することにより、優れた防菌防黴作用を長い期間にわたって発揮することができる。
【0013】
第2の発明は、特に、第1の発明のアルミニウムフィン材において、前記防菌防黴性を有する親水性皮膜の下地表面処理層として、無機酸化物または有機―無機複合化合物または有機高分子化合物のいずれか1種からなる耐食皮膜を形成することにより、フィン材の耐食性を向上させることができる。
【0014】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明のアルミニウムフィン材において、前記防菌防黴性を有する親水性皮膜の上層の表面処理層として、厚さ0.1〜10μmの水溶性樹脂皮膜を形成することにより、水溶性樹脂皮膜によって被覆されたアルミニウムフィン材はコイル形状にした時に板同士が粘着する不具合、さらにはフィンに加工する際に金型と粘着する不具合などを防ぐことができる。また、水溶性樹脂皮膜は下層の親水性皮膜と反応するので、冷房運転時に生成する凝縮水によってほとんど流出するもののわずかに残存するため、汚染物付着時の親水持続性を向上させる効果、作用がある。なお、水溶性樹脂皮膜は、厚さ0.1μm以上でなければ、上記の充分な効果を有せず、また塗装時の作
業性と経済性の観点から10μm以下とすることが望ましい。
【0015】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明のアルミニウムフィン材において、前記防菌防黴性を有する親水性皮膜を0.1〜10μmの厚さで形成することすることにより、優れた親水性と防菌防黴性を経済的に得ることができる。皮膜厚の上限としては、その機能の点からは特に制限されるものではないが、塗装時の作業性を考えると10μm以下であることが望ましい。
【0016】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明のアルミニウムフィン材において、前記防菌防黴性を有する親水性皮膜が吸湿性を有することにより、フィンの表面には蒸発器としての使用時でなくとも空気中の水分を吸着して薄い水膜を形成され、この水膜は汚染物を付着しにくくするので優れた親水性を維持させる効果を有するとともに、防菌防黴剤がこの水膜に徐々に溶出していくので、蒸発器としての使用時でなくとも防菌防黴性を発揮することができる。
【0017】
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか1つの発明のアルミニウムフィン材において、前記防菌防黴性を有する親水性皮膜が、溶解性パラメーターが7〜9[cal/cm30.5である高分子化合物と溶解性パラメーターが12〜16[cal/cm30.5である高分子化合物を必須成分として含むことにより、皮膜形成時の焼付け工程において、皮膜中の溶解性パラメーターが大きく異なる2種以上の成分が層分離現象を生じるので、焼付け乾燥後の表面形態を微細に粗面化させることができ、形態効果によりさらに親水性が向上する。また、熱交換器のフィン表面に付着する汚染物と溶解性パラメーターが大きく異なるものを選択することにより、汚染物の付着を防ぎ、優れた親水性を維持することができる。
【0018】
第7の発明は、特に、第1〜6のいずれか1つの発明のアルミニウムフィン材において、前記防菌防黴性を有する親水性皮膜がポリビニルアルコール、ナイロン、アクリル樹脂のうちいずれかひとつ以上を含有することにより、親水性に優れた樹脂と防菌防黴剤を容易に混合させた物質を原材料として用いることができ、優れた親水性と防菌防黴性を有することができる。
【0019】
第8の発明は、特に、第1〜7のいずれか1つの発明のアルミニウムフィン材において、前記防菌防黴性を有する親水性皮膜が、分子内にヒドロキシル基を有する水溶性樹脂を含有することにより、強固な密着性のある親水皮膜層が形成され、親水性皮膜の密着性が高いので、ヒドロキシル基を含有する水溶性樹脂の流出が抑制され親水持続性を付与することができることに加えて、汚染物が固着しにくく親水持続性が劣化しにくい。
【0020】
第9の発明は、特に、第3〜8のいずれか1つの発明のアルミニウムフィン材において、前記防菌防黴性を有する親水性皮膜の上層に形成する前記水溶性樹脂皮膜が、分子内にヒドロキシル基を有することにより、この水溶性樹脂皮膜のヒドロキシル基は下層皮膜である親水性皮膜の高分子樹脂と反応するので、冷房運転時に生成する凝縮水によってほとんど流出するもののわずかに残存するため、汚染物付着時の親水持続性を向上させる効果をより高める作用がある。
【0021】
第10の発明は、特に、第1〜9のいずれか1つの発明のアルミニウムフィン材において、前記防菌防黴剤の粒子径を、前記防菌防黴性を有する親水性皮膜の膜厚より小さく、かつ1μm以下とすることにより、防菌防黴剤はほとんど親水皮膜の中に埋没しているので、親水皮膜の親水性を損なうことがあまりなく、また、防菌防黴剤の粒子径は1μm以下と非常に小さいので、単位重量あたりの表面積が非常に大きく、粒子径が大きい防菌防黴剤に比べてより少量の防菌防黴剤でも同じ溶出速度を得ることができるので、経済的で
ある。
【0022】
第11の発明は、特に、第1〜10のいずれか1つの発明のアルミニウムフィン材において、防菌防黴剤と有機高分子物質と無機化合物の複合物質または親水性樹脂との混合比が1:9〜5:5である混合物を原材料として用いることにより、長い期間にわたり防菌防黴効果を発揮するに必要な防菌防黴剤の重量を確保することができる。
【0023】
第12の発明は、特に、第1〜11のいずれか1つの発明のアルミニウムフィン材において、前記防菌防黴剤をジンクピリチオンとすることにより、優れた防菌防黴性を長い期間にわって発揮することができる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるアルミニウムフィン材の断面図を示すものである。
【0026】
図1を用いて、アルミニウムフィン材100の構成を以下に説明する。
【0027】
アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる基板101の上に、下地表面処理層として、無機酸化物または有機―無機複合化合物または有機高分子化合物のいずれか1種からなる耐食皮膜102を形成する。
【0028】
次に耐食皮膜102の上層の表面処理層として、20℃の水に対する溶解度が10mg/100ml以下の防菌防黴剤および、有機高分子物質と無機化合物の親水性を有する複合化合物または親水性樹脂の混合物質を原材料として用いる、防菌防黴性を有する親水性皮膜103を形成する。
【0029】
さらに防菌防黴性を有する親水性皮膜103の上層の表面処理層として、厚さ0.1〜10μmの水溶性樹脂皮膜104を形成する。
【0030】
防菌防黴性を有する親水性皮膜103は0.1〜10μmの厚さで形成する。
【0031】
防菌防黴性を有する親水性皮膜103は吸湿性を有する。
【0032】
防菌防黴性を有する親水性皮膜103が、溶解性パラメーターが7〜9[cal/cm30.5である高分子化合物と溶解性パラメーターが12〜16[cal/cm30.5である高分子化合物を必須成分として含む。
【0033】
防菌防黴性を有する親水性皮膜103は、ポリビニルアルコール、ナイロン、アクリル樹脂のうちいずれかひとつ以上を含有する。
【0034】
防菌防黴性を有する親水性皮膜103は、分子内にヒドロキシル基を有する水溶性樹脂を含有する。
【0035】
防菌防黴性を有する親水性皮膜103の上層に形成する前記水溶性樹脂皮膜104は、分子内にヒドロキシル基を有する。
【0036】
防菌防黴剤の粒子径を、防菌防黴性を有する親水性皮膜103の膜厚より小さく、かつ
1μm以下とする。
【0037】
防菌防黴性を有する親水性皮膜103は、防菌防黴剤と有機高分子物質と無機化合物の複合物質または親水性樹脂との混合比が1:9〜5:5である混合物を原材料として用いる。
【0038】
防菌防黴性を有する親水性皮膜103に混合する防菌防黴剤は、各種市販のものなどを用いることができるが、ジンクピリチオンとすることが望ましい。
【0039】
以上のように構成されたアルミニウムフィン材100について、以下その動作、作用を説明する。
【0040】
アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる基板101上に、下地表面処理層として、無機酸化物または有機―無機複合化合物または有機高分子化合物のいずれか1種からなる耐食皮膜を形成することにより、フィン材の耐食性を向上させることができる。
【0041】
耐食皮膜102の上層の表面処理層として、20℃の水に対する溶解度が10mg/100ml以下の防菌防黴剤および、有機高分子物質と無機化合物の親水性を有する複合化合物または親水性樹脂の混合物質を原材料として用いる、防菌防黴性を有する親水性皮膜103を形成することにより、熱交換器が蒸発器として使用されたとき、フィン表面に生成する凝縮水を親水性により速やかに流下排出させるとともに、凝縮水に親水性皮膜103から防菌防黴剤が徐々に溶出することにより、優れた防菌防黴作用を長い期間にわたって発揮することができる。
【0042】
さらに、防菌防黴性を有する親水性皮膜103の上層の表面処理層として、厚さ0.1〜10μmの水溶性樹脂皮膜104を形成することにより、水溶性樹脂皮膜104によって被覆されたアルミニウムフィン材はコイル形状にした時に板同士が粘着する不具合、さらにはフィンに加工する際に金型と粘着する不具合などを防ぐことができる。また、水溶性樹脂皮膜104は下層の親水性皮膜103と反応するので、冷房運転時に生成する凝縮水によってほとんど流出するもののわずかに残存するため、汚染物付着時の親水持続性を向上させる効果、作用がある。なお、水溶性樹脂皮膜104は、厚さ0.1μm以上でなければ、上記の充分な効果を有せず、また塗装時の作業性と経済性の観点から10μm以下とすることが望ましい。
【0043】
防菌防黴性を有する親水性皮膜103を0.1〜10μmの厚さで形成することすることにより、優れた親水性と防菌防黴性を経済的に得ることができる。皮膜厚の上限としては、その機能の点からは特に制限されるものではないが、塗装時の作業性を考えると10μm以下であることが望ましい。
【0044】
防菌防黴性を有する親水性皮膜103が吸湿性を有することにより、フィンの表面には蒸発器としての使用時でなくとも空気中の水分を吸着して薄い水膜を形成され、この水膜は汚染物を付着しにくくするので優れた親水性を維持させる効果を有するとともに、防菌防黴剤がこの水膜に徐々に溶出していくので、蒸発器としての使用時でなくとも防菌防黴性を発揮することができる。
【0045】
防菌防黴性を有する親水性皮膜103が、溶解性パラメーターが7〜9[cal/cm30.5である高分子化合物と溶解性パラメーターが12〜16[cal/cm30.5である高分子化合物を必須成分として含むことにより、皮膜形成時の焼付け工程において、皮膜中の溶解性パラメーターが大きく異なる2種以上の成分が層分離現象を生じるので、焼付け乾燥後の表面形態を微細に粗面化させることができ、形態効果によりさらに親水性が
向上する。また、熱交換器のフィン表面に付着する汚染物と溶解性パラメーターが大きく異なるものを選択することにより、汚染物の付着を防ぎ、優れた親水性を維持することができる。
【0046】
防菌防黴性を有する親水性皮膜103がポリビニルアルコール、ナイロン、アクリル樹脂のうちいずれかひとつ以上を含有することにより、親水性に優れた樹脂と防菌防黴剤を容易に混合させた物質を原材料として用いることができ、優れた親水性と防菌防黴性を有することができる。
【0047】
防菌防黴性を有する親水性皮膜103が、分子内にヒドロキシル基を有する水溶性樹脂を含有することにより、強固な密着性のある親水皮膜層が形成され、親水性皮膜の密着性が高いので、ヒドロキシル基を含有する水溶性樹脂の流出が抑制され親水持続性を付与することができることに加えて、汚染物が固着しにくく親水持続性が劣化しにくい。
【0048】
防菌防黴性を有する親水性皮膜103の上層に形成する水溶性樹脂皮膜104が、分子内にヒドロキシル基を有することにより、この水溶性樹脂皮膜104のヒドロキシル基は下層皮膜である親水性皮膜103の高分子樹脂と反応するので、冷房運転時に生成する凝縮水によってほとんど流出するもののわずかに残存するため、汚染物付着時の親水持続性を向上させる効果をより高める作用がある。
【0049】
防菌防黴性を有する親水性皮膜103の防菌防黴剤の粒子径を、防菌防黴性を有する親水性皮膜103の膜厚より小さく、かつ1μm以下とすることにより、防菌防黴剤はほとんど親水皮膜の中に埋没しているので、親水皮膜103の親水性を損なうことがあまりなく、また、防菌防黴剤の粒子径は1μm以下と非常に小さいので、単位重量あたりの表面積が非常に大きく、粒子径が大きい防菌防黴剤に比べてより少量の防菌防黴剤でも同じ溶出速度を得ることができるので、経済的である。
【0050】
防菌防黴性を有する親水性皮膜103は、防菌防黴剤と有機高分子物質と無機化合物の複合物質または親水性樹脂との混合比が1:9〜5:5である混合物を原材料として用いることにより、長い期間にわたり防菌防黴効果を発揮するに必要な防菌防黴剤の重量を確保することができる。
【0051】
防菌防黴性を有する親水性皮膜103の防菌防黴剤は、防菌性あるいは防黴性のいずれか一方またはその双方を有するものであればよいが、なかでも、持続性を維持するため、20℃の水に対する溶解度が10mg/100ml以下で、かつ、表面処理皮膜の形成時に焼付け乾燥工程やフィン材のプレス成型工程があることから、耐熱性や加工性のある有機系や無機系のものが好ましい。これらの抗菌・防かび剤は、単独でもしくは複数混合して添加される。具体的には、有機系の防菌防黴剤では、主要成分として、イソチアゾリン系、アルデヒド系、ベンズイミダゾール系、脂肪酸グリセリンエステル系、ハロゲン系、カルボン酸系、キノリン系、サルファイド系、スルファミド系、チアゾール系、トリアゾール系、ヒノキチオール、ヒダントイン系、ピリジン系、フェノール系、フタルイミド系、ナフテン酸系、グルタミン酸系、第四アンモニウム塩系、天然物系等を含有する抗菌・防かび剤が挙げられる。一方、無機系の抗菌・防かび剤としては、無機系担体にAg、Cu、Zn等の抗菌性金属を担持したものを主要成分としたものが挙げられる。また、その担体としては、ゼオライト系、シリカゲル系、ガラス系、リン酸カルシウム系、リン酸ジルコニウム系、ケイ酸塩系、酸化チタン系、ウイスカ系、粘土鉱物等が挙げられるが、特に、有機系防菌防黴材のピリジン系のジンクピリチオンは、耐熱性や加工性に優れ、水への溶解性が低く、優れた防菌防黴性を長い期間にわって安全に発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明にかかるアルミニウムフィン材は、フィン材表面の細菌、カビの繁殖を抑えることが可能となるので、空気調和機の熱交換器だけでなく、アルミニウムの建築用のアルミニウム材にも適用でき、また基板はアルミニウムでなく、他の金属やプラスチックの表面処理にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態1におけるアルミニウムフィン材の断面図
【符号の説明】
【0054】
100 アルミニウムフィン材
101 アルミニウム基板
102 耐食皮膜
103 防菌防黴性を有する親水性皮膜
104 水溶性樹脂皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機に用いる熱交換器のフィン材として使用する、アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる基板上に、少なくとも一つの表面処理層として、20℃の水に対する溶解度が10mg/100ml以下の防菌防黴剤および、有機高分子物質と無機化合物の親水性を有する複合化合物または親水性樹脂の混合物質を原材料として用いる、防菌防黴性を有する親水性皮膜を形成したことを特徴とするアルミニウムフィン材。
【請求項2】
前記防菌防黴性を有する親水性皮膜の下地表面処理層として、無機酸化物または有機―無機複合化合物または有機高分子化合物のいずれか1種からなる耐食皮膜を形成したことを特徴とする請求項1記載のアルミニウムフィン材。
【請求項3】
前記防菌防黴性を有する親水性皮膜の上層の表面処理層として、厚さ0.1〜10μmの水溶性樹脂皮膜を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のアルミニウムフィン材。
【請求項4】
前記防菌防黴性を有する親水性皮膜を0.1〜10μmの厚さで形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウムフィン材。
【請求項5】
前記防菌防黴性を有する親水性皮膜が吸湿性を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミニウムフィン材。
【請求項6】
前記防菌防黴性を有する親水性皮膜が、溶解性パラメーターが7〜9[cal/cm30.5である高分子化合物と溶解性パラメーターが12〜16[cal/cm30.5である高分子化合物を必須成分として含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルミニウムフィン材。
【請求項7】
前記防菌防黴性を有する親水性皮膜がポリビニルアルコール、ナイロン、アクリル樹脂のうちいずれかひとつ以上を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルミニウムフィン材。
【請求項8】
前記防菌防黴性を有する親水性皮膜が、分子内にヒドロキシル基を有する水溶性樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のアルミニウムフィン材。
【請求項9】
前記防菌防黴性を有する親水性皮膜の上層形成する前記水溶性樹脂皮膜が、分子内にヒドロキシル基を有することを特徴とする請求項3〜8のいずれか1項に記載のアルミニウムフィン材。
【請求項10】
前記防菌防黴剤の粒子径が、前記防菌防黴性を有する親水性皮膜の膜厚より小さく、かつ1μm以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のアルミニウムフィン材。
【請求項11】
防菌防黴剤と有機高分子物質と無機化合物の複合物質または親水性樹脂との混合比が1:9〜5:5である混合物を原材料として用いたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のアルミニウムフィン材。
【請求項12】
前記防菌防黴剤がジンクピリチオンであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のアルミニウムフィン材。

【図1】
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【公開番号】特開2006−78134(P2006−78134A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265128(P2004−265128)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】