説明

アルミニウム貫通箔及びその製造方法

【課題】貫通孔を多数するとともに所望の箔強度を有するアルミニウム箔を提供する。
【解決手段】箔表面から裏面に至る貫通孔を複数有するアルミニウム貫通箔であって、
(1)箔厚みが50μm以下であり、
(2)破断強度が[0.2×箔厚み(μm)]N/10mm以上であり、
(3)[耐力値/破断強度]が50%以上である、
ことを特徴とする高強度アルミニウム貫通箔に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアルミニウム貫通箔に関する。より具体的には、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等の集電体に好適に用いられるアルミニウム貫通箔に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等のエネルギー密度を向上させるためにはより高い電圧が必要である。エネルギー密度を高めるためには、プレドープ技術を利用し、負極電位を下げることが好ましい。プレドープを効率良く行うためには、集電体に貫通孔を設けることが必要である。集電体の貫通孔を通じてリチウムイオンを可逆的に移動可能とすることにより負極活物質にリチウムイオンを担持することができる。
【0003】
貫通孔を有する集電体の作製方法として、例えばパンチング加工、メッシュ加工、エキスパンド加工、網加工等が知られているが、これらの方法で形成される貫通孔の大きさは一般的に0.3mm以上である。ところが、貫通孔を設けるとそれだけ集電体の強度が低下することになり、前記のような比較的大きな孔径では強度低下の問題がより大きくなる。
【0004】
これに対し、比較的微細な貫通孔を有する集電体を用いる電極等が提案されている。例えば、リチウムイオン及び/又はアニオンを可逆的に担持可能な物質からなる正極とリチウムイオンを可逆的に担持可能な物質からなる負極を備えており、かつ、電解液としてリチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液を備えたリチウムイオンキャパシタであって、(1)負極及び/又は正極とリチウムイオン供給源との電気化学的接触によってリチウムイオンが負極及び/又は正極にドーピングされ、(2)正極と負極を短絡させた後の正極の電位が2.0V以下であり、(3)前記正極及び/又は負極が、表裏面を貫通する多数の孔を有し、かつこれらの貫通孔の内接円の平均直径が100μm以下である金属箔からなる集電体を有することを特徴とするリチウムイオンキャパシタが知られている(特許文献1)。
【0005】
また、厚さが20〜45μm及び見掛密度が2.00〜2.54g/cmで、透気度20〜120sの表裏面を貫通する多数の貫通孔を有するアルミニウムエッチング箔よりなる集電体と、この集電体上に、活物質として、リチウムイオン及びアニオンを可逆的に担持可能な物質を含有する塗料が塗布されることによって形成された電極層とを有することを特徴とする塗布電極であって、前記集電体の貫通孔の80%以上が、孔径1〜30μmであることを特徴とする塗布電極が知られている(特許文献2)。その他にも、結晶方位が揃ったアルミニウム箔として、電解コンデンサ用アルミニウム箔が知られている(例えば、特許文献3、特許文献4)。
【0006】
しかしながら、アルミニウム箔に貫通孔を多数形成した場合、必然的にそれだけ箔強度は低下することになる。このことは前記の従来技術においても例外ではなく、箔強度が貫通孔の形成に伴って低下する結果、後工程で活物質をアルミニウム箔に塗工する際において箔切れ又はシワの発生が生じるおそれがある。たとえ問題なく塗工できて製品化したとしても、製品に加わる衝撃等によりアルミニウム箔が破断しやすくなる。これらの問題は、アルミニウム箔の厚みが小さくなるほどより深刻になる。
【0007】
一方、電池及びキャパシタは、高エネルギー密度・高出力密度とともに、軽量・小型化も強く求められている。このような要請に伴って、集電体の厚みもより小さくできるよう求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−141897
【特許文献2】国際公開WO2008/078777
【特許文献3】特開2009−62595
【特許文献4】特開2005−174949
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、集電体等としての性能を高めるためには貫通孔を多数形成することが望まれるものの、それに伴い箔強度の低下、ひいては後工程でのトラブル等を招くことになる。ここで、エッチングに使用する箔の強度を高める方法としては、合金元素添加(例えばFe、Cu、Mn、Mg、Tiなど)による方法のほか、熱処理の条件による方法等があるが、いずれもエッチング性を阻害するので最善の方法とは言えない。エッチング性の阻害とは、エッチングピットの伸びを阻害したり、過剰な溶解が起こり正常な溶解を維持できなくなる状態を言う。従来の3003材等で代表される高強度アルミニウム箔では、表面から裏面までを貫通するピットを多数制御するのは困難である。エッチング前に加工等を行い、強度を付与することも考えられるが、この方法ではエッチングピットの発生又は成長を阻害し、強度と透気度のバランスが悪くなる。
【0010】
以上のように、貫通孔を多数するにもかかわらず、所望の箔強度を発揮できるアルミニウム箔は未だ開発されるに至っていないのが現状である。
【0011】
従って、本発明の主な目的は、貫通孔を多数するとともに所望の箔強度を有するアルミニウム箔を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、貫通孔を有するアルミニウム箔を所定の加工処理を施すことにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、下記のアルミニウム貫通箔及びその製造方法に係る。
1. 箔表面から裏面に至る貫通孔を複数有するアルミニウム貫通箔であって、
(1)箔厚みが50μm以下であり、
(2)破断強度が[0.2×箔厚み(μm)]N/10mm以上であり、
(3)[耐力値/破断強度]が50%以上である、
ことを特徴とする高強度アルミニウム貫通箔。
2. JIS P 8117に準じたガーレ式デンソメータによる透気度試験方法によって測定された透気度が5sec/100ml以上である、前記項1に記載の高強度アルミニウム貫通箔。
3. 貫通孔の内径が0.2〜5μmである、前記項1又は2に記載の高強度アルミニウム貫通箔。
4. 表面積拡大比が、
[0.10×箔厚み(μm)]以上の値である、前記項1〜3のいずれかに記載の高強度アルミニウム貫通箔。
5. Fe:5〜80重量ppm、Si:5〜100重量ppm、Cu:10〜100重量ppmならびに残部:Al及び不可避不純物からなる組成を有する、前記項1〜4のいずれかに記載の高強度アルミニウム貫通箔。
6. アルミニウム貫通箔における垂直貫通孔占有率c(%)と前記箔厚みt(μm)の比率[c/t]が1.4以上である、前記項1〜5のいずれかに記載の高強度アルミニウム貫通箔。
7. 箔表面から裏面に至る貫通孔を複数有するアルミニウム貫通箔に対し、引張加工と曲げ加工とを同時に行う工程を含むことを特徴とする高強度アルミニウム貫通箔の製造方法。
8. 高強度アルミニウム貫通箔が、(1)箔厚みが50μm以下であり、(2)破断強度が[0.2×箔厚み(μm)]N/10mm以上であり、(3)[耐力値/破断強度]が50%以上である、前記項7に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、箔厚みが50μm以下(特に25μm以下)と薄くても、集電体等として優れた特性を得るのに十分な貫通孔を有するとともに、後工程を円滑に行うことができる強度を兼ね備えたアルミニウム貫通箔を提供することができる。すなわち、本発明の高強度アルミニウム貫通箔は、破断強度が[0.2×箔厚み(μm)]N/10mm以上であり、かつ、[耐力値/破断強度](破断強度に対する耐力値の割合)が50%以上という優れた特性を発揮することができる。
【0015】
このようなアルミニウム貫通箔は、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等の集電体として好適に用いることができる。とりわけ、リチウムイオンキャパシタ又はリチウムイオン二次電池が、1)リチウムイオン及び/又はアニオンを可逆的に担持可能な物質からなる正極、2)リチウムイオンを可逆的に担持可能な物質からなる負極及び3)リチウムイオンを含む電解質溶液を含み、かつ、リチウムイオンが正極及び/又は負極にドーピングされるものの集電体として本発明のアルミニウム貫通箔は有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】貫通孔を有するアルミニウム箔の断面を示す模式図である。
【図2】所定の角度を有するエッチングピットを観察するための透明カードの模式図である。
【図3】テンションレベラー装置の一例を示す模式図である。
【図4】実施例においてシワ発生判定のために用いた装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.高強度アルミニウム貫通箔
本発明の高強度アルミニウム貫通箔(本発明Al箔)は、箔表面から裏面に至る貫通孔を複数有するアルミニウム貫通箔であって、
(1)箔厚みが50μm以下であり、
(2)破断強度が[0.2×箔厚み(μm)]N/10mm以上であり、
(3)[耐力値/破断強度]が50%以上である、
ことを特徴とする。
【0018】
本発明Al箔は、箔表面から裏面に至る貫通孔を複数有するものである。図1には、本発明Al箔の断面の模式図を示す。例えば、図1に示すように、本発明Al箔1において、その箔表面11から裏面12に至る貫通孔2を複数有する。このような貫通孔は、エッチング処理を施すことによって形成することができる。
【0019】
貫通孔
貫通孔の内径は、Al箔の用途、使用目的等に応じて適宜設定することができるが、通常は0.2〜5μm、特に0.5〜3μmとすることが好ましい。貫通孔の内径は、エッチング処理時において特にエッチング時間を調整することにより適宜制御することができる。
【0020】
貫通孔の存在割合としては特に限定的ではないが、一般的にはJIS P 8117に準じたガーレ式デンソメータによる透気度試験方法によって測定された透気度が5sec/100ml以上、特に30sec/100ml以上であることが好ましい。かかる透気度を有することにより、本発明Al箔に活物質を塗布しても活物質が裏抜けせず、不必要な部分にも活物質が塗布されることがないため、その対策としての前処理が不要になるという効果が得られる。なお、前記透気度の上限値は特に制限されないが、通常は500sec/100ml程度とすれば良い。
【0021】
本発明Al箔では、アルミニウム貫通箔における垂直貫通孔占有率c(%)と前記箔厚みt(μm)の比率[c/t]が1.4以上であり、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは1.6以上である。このことは、本発明Al箔が、従来のアルミニウム貫通箔と比べて、同じ厚みでもより高い垂直貫通孔占有率を示すものである。すなわち、本発明Al箔は、厚みが薄いにもかかわらず、より高い垂直貫通孔占有率を有するものである。一般に、高純度アルミニウム箔は、厚くが薄くなるほど立方体方位占有率が低くなり、それに伴って垂直貫通孔占有率も低下する。一般的には立方体方位占有率は、箔厚み(μm)%の数値程度の値に相当すると言われている。例えば、箔厚み55μmのアルミニウム箔であれば立方体方位占有率はおよそ55%前後となる。これに対し、本発明では、Fe、Si、Cu等の含有量を制御すること等によって、薄い箔であっても従来技術よりも高い立方体方位占有率を実現させることができる結果、垂直貫通孔占有率をより高くすることが可能となる。
【0022】
前記の垂直貫通孔占有率に関し、本発明Al箔では垂直貫通孔占有率そのものの値については箔厚み等によって変動するので特に限定されないが、一般的には30〜98%、特に40〜98%の範囲内にあれば良い。
【0023】
なお、一般に、水平面から70〜110度の角度をなす貫通孔の割合が、エッチング前のアルミニウム箔の立方体方位占有率とほぼ同じ値となることから、本発明では貫通孔が水平面から70〜110度(すなわち、90度±20度)の範囲の角度をなすものを垂直貫通孔とし、貫通孔の総数に対する垂直貫通孔が占める割合を垂直貫通孔占有率としている。よって、本発明のおける垂直貫通孔占有率は、エッチング前のアルミニウム箔の立方体方位占有率とほぼ同じ値となる。
【0024】
本発明Al箔においては、表面積拡大比が[0.15×箔厚みt(μm)]以上の値、特に[0.17×箔厚みt(μm)]以上の値であることが好ましい。表面拡大比を上記範囲に設定することによって、集電体としての本発明Al箔と活物質との密着性が向上する。
【0025】
また、本発明Al箔では、貫通孔率s(%)=〔測定重量(g)/〔箔厚み(cm)×試料面積(cm)〕〕/アルミニウムの比重(2.70g/cm)が、5≦s≦20の範囲にあることが好ましい。上記範囲内に設定することによって、貫通孔を通じてリチウムイオンを可逆的に移動可能でありながら、強度が低くなりすぎるおそれがない。
【0026】
本発明Al箔の厚みは、通常は50μm以下、好ましくは40μm以下、さらに好ましくは25μm以下とする。上記の厚みに設定することにより、リチウムイオンキャパシタの集電体として好適に用いることができる。なお、厚みの下限値は限定的ではないが、通常は1μm程度とすれば良い。
【0027】
破断強度及び耐力値
本発明Al箔は、破断強度が[0.2×箔厚み(μm)]N/10mm以上であり、好ましくは[0.25×箔厚み(μm)]N/10mm以上である。例えば、箔厚みが50μmの本発明Al箔では、破断強度は10N/10mm以上である。破断強度は、一般的には箔厚みの減少とともに低下するが、本発明ではその低下度合いが小さく、同じ箔厚みでは従来品に比して高い破断強度を示す。本発明Al箔では、厚み30〜50μmでは破断強度は8〜15N/10mm程度と比較的高強度であるが、それ以上の高い破断強度であっても良い。なお、破断強度の上限値は限定的ではないが、箔厚み50μm以下の範囲であれば通常は50N/10mm程度、箔厚み25μm以下の範囲であれば通常は25N/10mm程度である。
【0028】
また、本発明Al箔における[耐力値/破断強度](破断強度に対する耐力値の割合)の値は50%以上、好ましくは70%以上である。前記値が50%未満の場合は、ハンドリング性等が低下する結果、後工程において箔の破断、シワ等の発生を高頻度でもたらすおそれがある。本発明Al箔の耐力値(一般に材料の引っ張り試験を行った時に0.2%伸びた時の抗張力を言う。)は、箔厚みが30〜50μmの範囲内においては通常2〜5N/10mm程度であるが、この範囲を上回る場合も本発明に包含される。本発明では、このような高い耐力値、ひいては前記割合を高くすることにより、ハンドリング性を良くし、箔切れあるいはシワの発生を抑制することができる。
【0029】
組成
本発明Al箔の組成は、上記の特性を有する限りは制限されず、公知のAl箔における組成を採用することもできるが、特にFe:5〜80重量ppm、Si:5〜100重量ppm、Cu:10〜100重量ppmならびに残部:Al及び不可避不純物からなる組成を好適に採用することができる。
【0030】
Feの含有量は、通常5〜80ppm程度とし、好ましくは10〜50ppmとする。Feは、Al−Fe系の化合物として晶出し、圧延性や伸びを改善することができる元素である。また、適度な量のAl−Fe系の化合物は、結晶核発生サイド及びピン止めにより結晶粒を微細化し、薄箔の圧延性を向上させる。
【0031】
Feの含有量が5ppm未満の場合は、上記の効果が得られず、結晶粒の粗大化による箔の強度低下が起こり、孔開箔の強度低下や部位による強度のバラツキを生じやすい。一方、Feの含有量が80ppmを超える場合は、表面に過剰な溶解が起こり、孔開箔の強度低下や部位による強度のバラツキを招く。また、立方体方位の占有率が低くなり、十分な貫通エッチングピット密度が得られなくなる。
【0032】
Siの含有量は、通常5〜100ppm程度とし、好ましくは10〜60ppmとする。Siは、主に、強度を向上させることができる元素である。また、例えば、特に厚みが50μm以下の薄箔への圧延時にはアルミニウム貫通箔の表面のみならず、内部にも圧延加工に伴う瞬間的な温度上昇が発生するが、シリコンの存在により転位の消失を抑制して強度の低下を防ぐことができる。
【0033】
Siの含有量が5ppm未満の場合は、上記の効果が得られず、強度低下が起こり、孔開箔の強度低下や部位による強度のバラツキを生じやすい。また、Siの含有量が100ppmを超える場合は、立方体方位の占有率が低くなり、十分な貫通エッチングピット密度が得られない。
【0034】
Cuの含有量は、通常10〜100ppm程度とし、好ましくは15〜60ppmとする。Cuの含有量が上記範囲に設定されている場合は、特に箔厚み25μm以下に圧延する際の圧延性をより向上させることができる。また、Cuは、塩酸エッチング時の溶解性を向上させ、貫通エッチングピットの形成に寄与する。
【0035】
Cuの含有量が10ppm未満の場合は上記の効果が十分に得られない上、薄箔の圧延性を著しく低下させる。他方、Cuの含有量が100ppmを超える場合は、表面に過剰な溶解が起こり、孔開箔の強度低下や部位による強度のバラツキを招く。また、立方体方位の占有率が低くなり、十分な貫通エッチングピット密度が得られない。
【0036】
本発明Al箔では、上記のような成分のほか、必要に応じてPbが含まれていても良い。Pbは、主としてエッチング処理に使用する電解液とアルミニウム箔との反応を促進し、初期のエッチングピット数を増加させる働きがあることから、いっそう高い貫通エッチング密度を達成することが可能となる。Pbを含有する場合のPb含有量は、通常0.01〜20ppm程度とし、好ましくは0.05〜10ppmとすれば良い。
【0037】
Pbは、主としてエッチング処理に使用する電解液とアルミニウム箔との反応を促進し、初期のエッチングピット数を増加させる働きがあるので、いっそう高い貫通エッチング密度を達成することが可能となる。Pbを含有する場合のPbの含有量は、上記のような効果が達成できるように適宜調整することができるが、通常0.01〜20ppm程度、好ましくは0.05〜10ppmとすれば良い。
【0038】
特に、本発明Al箔では、Pbがアルミニウム箔の表面から深さ0.1μmまでの領域において40〜2000ppmの範囲となるように設定することが望ましい。上記範囲内に設定することによって、貫通エッチング密度をよりいっそう高めることができる。
【0039】
なお、このようなPb含有量の調整は、例えばアルミニウム箔の製造段階においてアルミニウム溶湯に添加するPb量を調節し、さらに焼鈍温度を450℃以上の範囲内で制御することによって実施することができる。
【0040】
残部は実質的にAlと不可避不純物からなる。本発明のアルミニウム合金箔におけるアルミニウム純度は、集電体用として使える範囲内であれば特に制限されない。また、不可避不純物としては、例えばMg、Mn、Zn、Ti、V、Ga、Cr、Zr、B等が含まれていても良い。
【0041】
2.高強度アルミニウム貫通箔の製造方法
本発明Al箔は、次のようにして製造することができる。すなわち、箔表面から裏面に至る貫通孔を複数有するアルミニウム貫通箔に対し、引張加工と曲げ加工とを同時に行う(本発明加工)工程を含むことを特徴とする高強度アルミニウム貫通箔の製造方法により、本発明Al箔を好適に製造することができる。
【0042】
前記アルミニウム貫通箔(原箔)は、公知の方法により調製することもできるが、特に以下の方法に従って調製することが望ましい。
【0043】
まず、鋳造から板圧延(約1mm位)まではほぼ通常の方法で製造することができる。例えば、上記組成を有する原料の溶湯を調製し、溶湯を凝固させることにより鋳塊を製造する。この場合、得られた鋳塊に対して400〜550℃で1〜20時間程度の均質化処理を施すことが好ましい。特に、本発明では、均質化処理温度を550℃以下とすることが望ましい。均質化処理温度を550℃以下とすることによって、50μm以下の箔に圧延して焼鈍した後により高い立方体方位占有率を得ることができる。
【0044】
その後、鋳塊に対して熱間圧延及び冷間圧延を施すことによって350μm程度の厚箔とする。なお、必要に応じて、板表面の不純物又は酸化皮膜を除去する等の目的で板洗浄、箔洗浄等の公知の処理を行っても良い。
【0045】
次いで、前記の厚箔を冷間圧延することによって、薄箔を得る。この場合、圧延後の薄箔の厚みは、最終箔の厚みの110〜130%の厚みとすることが好ましい。なお、冷間圧延の温度自体は、公知の冷間圧延と同様にすれば良く、例えば120℃を超えない温度範囲内で実施することができる。
【0046】
薄箔の圧延時にはアルミニウム箔の表面のみならず内部にも、圧延加工に伴う瞬間的な温度上昇が発生する。また、アルミニウム箔と圧延ロールとの間の摩擦等、機械的ストレスが大きくなると、50μm以下の箔に圧延して焼鈍した後に立方体方位の占有率が低くなるおそれがある。従って、薄箔の圧延(少なくとも最後の圧延(すなわち、最終箔を得るための圧延))は、圧延ロールの平均粗度Raを0.25μm以下、特に0.20μm以下、さらには0.18μm以下とすることが好ましい。この場合、得られる薄箔の平均粗度Raは、圧延ロールと接する面がそれぞれ0.25μm以下、特に0.20μm以下、さらに0.18μm以下となる。
【0047】
本発明では、厚箔を圧延して薄箔を得る場合は、圧延ロールに接触しない面を確保しながら圧延することが好ましい。圧延ロールに接触しない面を確保することにより、結晶粒の動きを阻害する要因を除くことができ、これにより薄い箔であっても高い立方体方位占有率を得ることができる。圧延ロールに接触しない面をつくりだすには、例えばいわゆる合わせ圧延(併せ圧延)を行うことが好ましい。すなわち、箔を2枚又はそれ以上重ね合わせた状態で圧延することにより、圧延ロールに接触しない面を有する薄箔を得ることができる。この場合、最終的に得られる薄箔の厚みを均一化するために、箔を重ね合わせる場合の総厚みは350μm以下とすることが好ましい。重ね合わせた箔の分離は、次の工程である焼鈍の前及び/又は後に実施することができる。この合わせ圧延においても、圧延ロールの平均粗度Raを0.25μm以下、特に0.20μm以下、さらには0.18μm以下とすることが好ましい。
【0048】
上記の冷間圧延を実施した後、必要に応じて、中間焼鈍として150〜350℃(特に150〜300℃)で1〜30時間程度の熱処理を施すことが好ましい。特に前記の熱処理温度は350℃以下とすることが望ましい。熱処理温度を350℃以下とすることによって、50μm以下の箔に圧延して焼鈍した後により高い立方体方位占有率を得ることができる。なお、中間焼鈍の雰囲気は限定的でなく、例えば真空中、大気中、不活性ガス雰囲気中等のいずれであっても良い。
【0049】
次に、前記薄箔をさらに冷間圧延することにより所望の箔厚みをもつ最終箔(最終的な箔厚みをもつ箔)を得る。すなわち、この冷間圧延によって、箔厚み50μm以下の箔を得ることができる。なお、この冷間圧延においても、圧延ロールの平均粗度Raを0.25μm以下、特に0.20μm以下、さらには0.18μm以下とすることが好ましい。
【0050】
本発明では、前記の最終箔に対して焼鈍(最終焼鈍)工程を実施することが好ましい。また、焼鈍工程に先立ち、例えば箔表面の圧延油、不純物、酸化皮膜を除去する等の目的で箔洗浄を行っても良い。洗浄後には乾燥を適宜行っても良い。特に、圧延油が過大に付着したまま高温の焼鈍を行なうと、箔表面の一部がシミ状に黄変し、エッチング処理を行なっても所望の形状のエッチングピットが得られなくなるおそれがある。
【0051】
焼鈍温度は限定的ではないが、通常450℃以上とし、特に450℃以上660℃未満、さらには500〜620℃に設定することが望ましい。焼鈍温度が450℃未満になると立方体方位率が低下し、エッチング処理を行っても所望の形状のエッチングピットが得られなくなるおそれがある。焼鈍時間は、焼鈍温度等にもよるが、一般的には1〜100時間程度とすれば良い。
【0052】
焼鈍雰囲気は、実質的に真空又は不活性ガス雰囲気とすることが望ましい。ただし、昇温及び降温の工程も含め350℃を超える場合には、焼鈍雰囲気中の酸素濃度を工業的に可能な限り低減させることが望ましい。すなわち、10−5Torr以下の減圧下又は酸素を0〜1体積%含む不活性ガス雰囲気とすることが望ましい。10−5Torrを超える真空雰囲気又は焼鈍雰囲気中の酸素濃度が1.0体積%を超える不活性ガス雰囲気の場合は、焼鈍後の箔表面の一部がシミ状に黄変し、エッチング処理を行なっても所望の形状のエッチングピットが得られなくなるおそれがある。焼鈍雰囲気中の酸素濃度を上記のように設定することによって、薄くて均一な熱酸化皮膜が得られ、透気度の制御に寄与することができる。
【0053】
このようにして得られた箔(最終箔)に対してエッチング処理を施すことにより貫通孔を形成させる。エッチング処理の方法は限定的ではなく、1段階のエッチングにより所望の貫通孔を形成しても良いし、2段階又はそれ以上に分けて実施しても良い。
【0054】
本発明では、例えば少なくとも2段階のエッチングとし、1段目のエッチングで貫通孔を形成し、2段目のエッチングで貫通孔の内径を調整することにより、所望の貫通孔を好適に形成することができる。
【0055】
この場合、1段目のエッチングは、好ましくは塩酸を主成分とする電解液中で直流エッチングする。1段目エッチングでは、主にエッチングピットを形成するとともにその密度と形状(貫通形状)を制御することができる。電解液としては、塩酸1〜10重量%が水に溶解した水溶液を使用することができる。この場合、電解液中にはシュウ酸、リン酸、硫酸等を0.001〜0.1重量%加えても良い。また、液温は60〜90℃程度とし、電流密度は0.1〜0.5A/cm程度とする。エッチング方式は、直流エッチングとすることが好ましい。なお、エッチング時間は、箔厚、目標とする透気度等に応じて適宜設定することができる。
【0056】
2段目のエッチングでは、好ましくはケミカルエッチングを実施する。これにより、主としてエッチングピット径を制御することができる。例えば、上記1段目エッチングと同組成・温度の液中で、ケミカルエッチングを行うことができる。エッチング時間は、例えば箔厚、目標とする透気度等に応じて適宜設定することができる。また、必ずしも塩酸を主成分としなくても良く、硝酸を主成分とした電解液中でも良い。また、ケミカルエッチングでなく、電解エッチングとしても良い。さらに必要に応じて、ケミカルエッチングや電解エッチング、エッチング液組成を組み合わせて、「2段目のエッチング」をさらに多段化しても良い。
【0057】
以上のようにして得られた原箔を用いて、本発明加工を実施する。すなわち、原箔に対して引張加工と曲げ加工とを同時に行う。この場合、原箔の箔厚みは、貫通孔が実質的に保持される限りは本発明加工後に多少変化していても良いが、特に箔厚みの変化率は5%以下、特に1%以下、さらには0%とすることが好ましい。すなわち、実質的に原箔の厚みを維持しながら原箔に対して引張加工と曲げ加工とを同時に行うことが最も好ましい。原箔の箔厚みが大幅に変化する(特に大幅に薄くなる)と、貫通孔が変形し、所望の透気度等が得られなくなるので、変化率は上記範囲内に制御する。
【0058】
一般に、原箔は、エッチングピットを箔表面から内部に伸ばし反対面まで貫通させるため、エッチング前においてアルミニウム箔を熱処理(焼鈍)し、完全に再結晶させ、好ましくは1つの細結晶粒が箔断面を貫通することが必要である。このように再結晶させるとアルミニウム箔の強度は著しく低下し、薄い箔に加工した場合のハンドリング性が悪くなる。本発明では、エッチングして貫通性を付与した原箔に引張加工と曲げ加工とを同時に行うことにより、耐力値を高めハンドリング性を良くし、箔切れやシワ発生を抑制することができる。ちなみに、前記の熱処理は400℃以上の高温で実施する必要があるので、一般的にはエッチング前のアルミニウム箔の破断強度は約50N/mm以下、耐力値は約20N/mm以下になる。これらの数値の低下については、例えば、Fe、Si、Cu等の元素添加(合金化)による強度改善も考えられるが、これらの元素はエッチング性を阻害するために多量には添加できず、実際上は合金化による強度改善は難しい。これに対し、本発明加工によれば、エッチング後の原箔に軽度の加工を施すことにより、透気度等に影響を及ぼすことなく強度を改善することができる。すなわち、軽度の引っ張り加工と曲げ加工を同時に行い、加工歪を導入することにより、耐力値を高めることができる。薄箔のハンドリング性はこの耐力値によりほぼ決定されることから、耐力値を高めることによりハンドリング性を向上させることができる。
【0059】
引張加工と曲げ加工とを同時に行う方法は特に制限されず、公知の加工方法(加工装置)を単独又は組合せて用いることができる。例えば、プレス装置による加工、圧延装置による加工、ストレッチャーによる加工等を挙げることができる。これらの方法を用いて、原箔の箔厚みを監視しながらその加工レベルを調節すれば良い。この場合、強度の加工を行うと所望の透気度等が得られなくなるので、軽度のレベルで調整することが好ましい。
【0060】
特に、本発明加工では、テンションレベラーによる加工を採用することが好ましい。テンションレベラーによる場合は、容易かつ確実に、貫通孔を変形させずに箔のタルミ形状をフラットに維持することができるので、本発明加工に最適な方法である。
【0061】
テンションレベラー自体は、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、図3に示すように、原箔20を巻いているローラー21と巻き取り用ローラー22との間に引張矯正及び曲げ矯正を行うための矯正用ローラー23a〜23iが配置された装置である。一般的には、前記の巻き取り用ローラーが駆動ローラーとなる。原箔20を矯正用ローラーの間に通して適度な張力をかけることで均一な歪を付与し、加工硬化を促進することにより、所定の特性を付与することができる。矯正用ローラーの数、各ローラーの直径、位置(高低差、水平方向の間隔)等は適宜調整することができる。特に、テンションレベラーのユニット張力(すなわち、巻き取り用ローラー22及び巻き戻し用ローラー21における張力)を調整することにより、所定の特性を付与することができる。ユニット張力は、用いる原箔の特性(箔厚み、透気度等)、所望の耐力値等により適宜変更することができるが、通常は1〜20N/10mmの範囲内とすれば良い。
【実施例】
【0062】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0063】
なお、各物性の測定方法は、次のようにして実施した。
(1)耐力値及び破断強度
JIS B 7721に準じた引張試験機により引張試験を行なった。10mm巾で長さ150mmの試料を、チャック間距離が50mmとなるように固定し、引張速度10mm/minで10回測定し、その平均値を求めた。0.2%伸びの強度を耐力値とし、破断時の強度を破断強度とした。
【0064】
(2)透気度
JIS P 8117に準じたガーレ式デンソメータによる透気度試験方法によって測定する。
【0065】
(3)シワ発生判定
活物質を塗工した際のシワの発生を次のように判定した。比表面積2000m/g平均粒径6μmの活性炭を90質量%及びPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を10質量%含む活物質をエタノールで混練したスラリー(固形分濃度30%)を、図4に示すようにサポートロール(図4の2個のローラー)の間隔が2mの両面ダイコーターにより、乾燥後の塗布厚みが片面70μmとなるように塗工した。塗工速度は3m/分とし、出側のサポートロール付近でのシワの発生を目視観察した。35分間(約100m)観察し、シワの発生が全く認められなかったものを「○」、一度でも認められたものを「△」、頻繁に認められたものを「×」として評価した。
【0066】
(4)アルミニウム貫通箔(エッチング処理後)の垂直貫通孔占有率
エッチング処理後のアルミニウム貫通箔のLT−ST面(圧延方向に垂直な断面)が観察面となるようにサンプル(10mm幅)をエポキシ樹脂に埋め込み、試料をバフ研磨(ダイヤモンド研磨)する。その後、アルミニウム部分を電解(電解条件:エタノール:過塩素酸=4:1の溶液にて、0℃、定電圧(20V)電解×180秒)にて溶解し、エッチングピット(エッチングピットに入り込んだ樹脂部分)を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察する。そして、無作為に撮影した10視野(倍率500倍)の写真から、図1に示すように各試料の測定長さが写真の寸法で100mmとなる部位を選び、図2に示すような角度測定用透明カードを上記写真に重ね合わせ、下表面から70〜110°(90±20°)の範囲内の角度をもった貫通孔の数を計測し、全体の貫通孔の合計数を目視にてカウントした後、その合計数に対する割合を垂直貫通孔占有率(%)として算出する。
【0067】
(5)貫通孔の内径
倍率を5000倍としたほかは前記(1)と同様の方法にて無作為に10視野の写真を撮影し、各試料の測定面積が写真の寸法で100mm×100mmの範囲を画像解析してエッチングピット数及び総エッチングピット面積を計測し、貫通孔を円形と仮定して貫通孔の内径を算出する。画像解析装置としては、多目的高速画像解析装置「PCA11」(システムサイエンス株式会社製)を用いた。
【0068】
(6)表面積拡大比
エッチング処理後のアルミニウム貫通箔を60℃の陽極酸化処理液(5%アジピン酸アンモニウム溶液)に浸漬し、10Vで陽極酸化処理することにより陽極酸化皮膜を形成させた後、LCRメータを用いて静電容量を測定し、エッチング前のアルミニウム箔の静電容量比から算出する。測定投影面積は、5cm×10cmとした。
【0069】
(7)貫通孔率
貫通孔率s(%)=[(100×測定重量(g))/(箔厚み(cm)×試料面積(cm))]/(アルミニウムの比重(2.70g/cm))を求めた。前記「箔厚み」は、試料4隅と中央部の計5点をマイクロメーターで測定した平均値とする。前記「試料面積」は10cm×5cmとする。前記「測定重量」は試料を電子天秤で秤量した値とする。
【0070】
実施例1
Fe:18重量ppm、Si:20重量ppm、Cu:25ppm、残部:Al及び不可避不純物からなる組成を有する溶湯を調製した後、溶湯を凝固させることにより鋳塊を得た。次いで、前記鋳塊を500℃で10時間の均質化処理を施した。その後、前記鋳塊に対して熱間圧延(温度400℃)及び冷間圧延を施すことによって厚さ65μmまで圧延した。250℃で8時間の中間焼鈍を施した後、さらに冷間圧延を施すことによって厚さ50μmの箔を得た。有機溶剤系洗浄剤(イソプロピレン)で洗浄した後、アルゴンガス中で500℃で10時間の焼鈍した。次いで、塩酸5重量%を含む水溶液を電解液として用い、液温70℃及び電流密度0.3A/cmで直流エッチングを行うことにより、貫通ピット(貫通孔)を多数有するアルミニウム貫通箔を得た。得られたアルミニウム貫通箔は、箔厚み:50μm、耐力値:3.5N/10mm、破断強度:13.2N/10mm、透気度:42sec/100mlであった。
【0071】
次に、上記アルミニウム貫通箔を原箔として用い、これをテンションレベラーにより加工を行った。テンションレベラーとしては、図3に示すように、9本のロールが上下方向に交互に配置されたものであり、各ロールはいずれも直径50mmである。ユニット張力は5N/10mmとした。加工処理が施されたAl箔の箔厚み、[耐力値/破断強度]の値、透気度、活物質を塗工した際のシワ発生判定結果を表1に示し、垂直貫通孔占有率等を表2に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
実施例2
テンションレベラーにより加工に際してユニット張力を8N/10mmとしたほかは、実施例1と同様にしてAl箔を製造した。加工処理が施されたAl箔の箔厚み、[耐力値/破断強度]の値、透気度及びシワ発生判定結果を表1に示し、垂直貫通孔占有率等を表2に示す。
【0075】
実施例3
実施例1と同様にして箔厚み30μmのアルミニウム貫通箔(原箔)を作製した。この箔は、耐力値:2.2N/10mm、破断強度:8.2N/10mm、透気度:36sec/100mlであった。この原箔を用いて、テンションレベラーにより加工に際してユニット張力を3N/10mmとしたほかは、実施例1と同様にしてAl箔を製造した。加工処理が施されたAl箔の箔厚み、[耐力値/破断強度]の値、透気度及びシワ発生判定結果を表1に示し、垂直貫通孔占有率等を表2に示す。
【0076】
実施例4
テンションレベラーにより加工に際してユニット張力を5N/10mmとしたほかは、実施例3と同様にしてAl箔を製造した。加工処理が施されたAl箔の箔厚み、[耐力値/破断強度]の値、透気度及びシワ発生判定結果を表1に示し、垂直貫通孔占有率等を表2に示す。
【0077】
実施例5
実施例1と同様にして箔厚み20μmのアルミニウム貫通箔(原箔)を作製した。この箔は、耐力値:2.1N/10mm、破断強度:7.0N/10mm、透気度:65sec/100mlであった。この原箔を用いて、テンションレベラーにより加工に際してユニット張力を3N/10mmとしたほかは、実施例1と同様にしてAl箔を製造した。加工処理が施されたAl箔の箔厚み、[耐力値/破断強度]の値、透気度及びシワ発生判定結果を表1に示し、垂直貫通孔占有率等を表2に示す。
【0078】
実施例6
テンションレベラーにより加工に際してユニット張力を5N/10mmとしたほかは、実施例5と同様にしてAl箔を製造した。加工処理が施されたAl箔の箔厚み、[耐力値/破断強度]の値、透気度及びシワ発生判定結果を表1に示し、垂直貫通孔占有率等を表2に示す。
【0079】
比較例1
実施例1及び2における原箔について、テンションレベラーにより加工を実施しなかったものについてのAl箔の箔厚み、[耐力値/破断強度]の値、透気度及びシワ発生判定結果を表1に示し、垂直貫通孔占有率等を表2に示す。
【0080】
比較例2
実施例3及び4における原箔について、テンションレベラーにより加工を実施しなかったものについてのAl箔の箔厚み、[耐力値/破断強度]の値、透気度及びシワ発生判定結果を表1に示し、垂直貫通孔占有率等を表2に示す。
【0081】
比較例3
実施例5及び6における原箔について、テンションレベラーにより加工を実施しなかったものについてのAl箔の箔厚み、[耐力値/破断強度]の値、透気度及びシワ発生判定結果を表1に示し、垂直貫通孔占有率等を表2に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箔表面から裏面に至る貫通孔を複数有するアルミニウム貫通箔であって、
(1)箔厚みが50μm以下であり、
(2)破断強度が[0.2×箔厚み(μm)]N/10mm以上であり、
(3)[耐力値/破断強度]が50%以上である、
ことを特徴とする高強度アルミニウム貫通箔。
【請求項2】
JIS P 8117に準じたガーレ式デンソメータによる透気度試験方法によって測定された透気度が5sec/100ml以上である、請求項1に記載の高強度アルミニウム貫通箔。
【請求項3】
貫通孔の内径が0.2〜5μmである、請求項1又は2に記載の高強度アルミニウム貫通箔。
【請求項4】
表面積拡大比が、
[0.10×箔厚み(μm)]以上の値である、請求項1〜3のいずれかに記載の高強度アルミニウム貫通箔。
【請求項5】
Fe:5〜80重量ppm、Si:5〜100重量ppm、Cu:10〜100重量ppmならびに残部:Al及び不可避不純物からなる組成を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の高強度アルミニウム貫通箔。
【請求項6】
アルミニウム貫通箔における垂直貫通孔占有率c(%)と前記箔厚みt(μm)の比率[c/t]が1.4以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の高強度アルミニウム貫通箔。
【請求項7】
箔表面から裏面に至る貫通孔を複数有するアルミニウム貫通箔に対し、引張加工と曲げ加工とを同時に行う工程を含むことを特徴とする高強度アルミニウム貫通箔の製造方法。
【請求項8】
高強度アルミニウム貫通箔が、(1)箔厚みが50μm以下であり、(2)破断強度が[0.2×箔厚み(μm)]N/10mm以上であり、(3)[耐力値/破断強度]が50%以上である、請求項7に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−74468(P2011−74468A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228365(P2009−228365)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】