説明

アルミン酸塩を基にした新規な緑色蛍光体

式M1-xEuxAly1+3y/2[式中、Mは、Ba、Sr、Ca、Mg、Mn、Zu、Cu、Cd、SmおよびTmからなる群より選ばれる少なくとも一つの2価金属であり、0.1<x<0.9かつ0.5≦y≦12である]を有する、新規なアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体が開示される。蛍光体は、約280〜420nmの範囲の波長を有する実質的に不可視の放射を吸収し、約500〜550nmの範囲の波長を有する可視の緑色光を放出するように、構成されている。特定の実施態様では、蛍光体は、2価アルカリ土類金属のMgを含有し、Mnもまた存在する場合がある。本発明のアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体の新規な特徴は、それが放出するように構成されることができる波長の範囲が比較的狭いことであって、一実施態様では、この範囲は、約518〜520nmである。これに代わる一実施態様では、蛍光体は、ピーク波長が約40nm以下の半値全幅を有する、可視光を放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施態様は、一般的には、アルミン酸塩を基にした新規な緑色蛍光体(本明細書では緑色蛍光体と称する)に関する。具体的には、本発明の実施態様は、ディスプレイの用途、たとえば液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)および陰極線管(CRT)ディスプレイでのバックライティングの用途ばかりでなく、孤立した緑色LED、白色光照明系、信号灯およびポインタ向けの用途における、アルミン酸塩を基にした新規な緑色蛍光体の使用も対象とする。
【背景技術】
【0002】
本発明の実施態様は、当技術の緑色LEDに代わるものを提供する緑色蛍光体に関する。緑色LEDは、UV、青色および赤色LEDに対応する効率より周知のとおり低い効率であるという短所を有し、その上、緑色LEDが放出する放射は、波長の移動を示して、温度を上昇させることがあり、それが望ましくない特性となっている。しかし、蛍光体に励起放射を供給するUVないし青色の発光ダイオードに接続して用いられる緑色蛍光体は、緑色LEDの問題の多くに対処する装置を提供する。そのような装置は、LEDが放出するUVないし青色光を、緑色蛍光体を介して緑色に変換することができるという、いわゆる周波数逓降過程という利点を有する。具体的には、緑色蛍光体を利用するそのような装置は、青色LEDに匹敵する効率を供給することができる(ここで、「効率」とは、初めに励起エネルギーとして与えられた光子の数に対する、蛍光体によって放射された光子の数を意味する)。当然、当業者には、LEDの励起が電気エネルギーで実施されるため、この意味では「効率」が電力の変換を意味することが理解されよう。
【0003】
緑色蛍光体は、以前から当技術に記載されている。これらの組成物の開発の初期段階では、発光材料は、適切な活性化物質を組み込んだ基本材料を用いて創出できることが公知であった。基本材料は、アルミン酸塩酸化物またはアルカリ土類金属ケイ酸塩であり、活性化物質は、+2価状態の希土類元素ユウロピウム(たとえばEu2+)であった。たとえば、H. Langeによる米国特許第3,294,699号明細書中の初期の開示は、酸化ユウロピウム(II)で活性化されたアルミン酸ストロンチウム組成物を記載していて、アルミン酸ストロンチウムに加えられる酸化ユウロピウムの量は、約2〜8モル%であった。具体的な発光材料は、0.9SrO・Al23・0.03EuOであって、これは、365mμ(ナノメートル)での水銀線によって励起されたとき、約520mμの緑色領域にピーク応答を有する、広帯域スペクトルで光を放出することが示された。
【0004】
この開示の後、ユウロピウムで活性化される数多くの異なるアルミン酸組成物が文献に掲載された。これらの組成物は、数多くの異なる最終使用の用途に関連して記載されたが、発光特性に関するユウロピウムのいわゆる消光効果を考慮すると、これらの蛍光体組成物中に現れるユウロピウムの量は、従来は、比較的低レベルに保たれていた。
【0005】
信号機の緑色光としてか、または自動車の表示装置の用途に用いるための照明系が、A.M. Srivastava他による米国特許第6,555,958号明細書に記載されている。この特許に開示されたのは、ケイ酸塩およびアルミン酸の双方を基にした青緑色の蛍光体であって、アルミン酸塩を基にした組成物は、一般的には、式AAlO:Eu2+(Aは、Ba、SrまたはCaの少なくとも一つを含む)で表される。この特許に開示された好適組成物は、AAl24:Eu2+であって、Aは、少なくとも50%のBa、好ましくは少なくとも80%のBa、および20%以下のSrを含んだ。AがBaを含んだときは、蛍光体のピーク放出波長は、約505nmであり、蛍光体の量子効率は、「高い」であった。AがSrを含んだときは、蛍光体のピーク放出波長は、約520nmであり、蛍光体の量子効率は、「かなり高い」であった。従って、505nmに最も近いピーク放出波長を得るため、かつ最高の相対的量子効率を得るためには、Aは、Baを含むのが最も好ましいことがこの特許によって開示された。更に明らかにされたのは、アルカリ土類のアルミン酸塩蛍光体では、アルカリ土類の格子サイト上のユウロピウム活性化物質が、蛍光体が(A1-xEux)Al24[式中、0<x≦0.2である]と記載されてもよいように置き換わることであった。最も好適な蛍光体組成物は、(Ba1-xEux)Al24[式中、0<x≦0.2である]であった。この特許に開示された組成物は、マグネシウムまたはマンガンを含まなかった。
【0006】
アルカリ土類がその分子中にフッ素原子を含まないマグネシウム含有化合物である、アルカリ土類のアルミン酸塩化合物が、K. Kitamura他による米国特許第5,879,586号明細書に開示された。この蛍光体の希土類成分は、式(Ce1-wTbw)MgxAlyz[式中、0.03≦w≦0.6;0.8≦x≦1.2;9≦y≦13;かつ15≦z≦23である]によって、セリウムおよびテルビウムであった。このテルビウム含有化合物は、「高輝度緑色光」を放出すると報告されたが、相対強度およびピーク放出波長は示されず、この緑色放出化合物は、活性化希土類元素としてユーロピウムを含有しなかった。アルカリ土類としてのストロンチウムおよび活性化物質としてのユーロピウムに基づく「高輝度青緑色」放出蛍光体は、式(Sr4(1-w)Eu4w)Alxy[式中、0.01≦w≦0.6;11≦x≦17;かつ20≦y≦30である]で表されるが、やはり、相対強度およびピーク放出波長は示されなかった。
【0007】
チオガレートを基にした緑色蛍光体が、開示されている。G.O. Mueller他による米国特許第6,686,691号明細書には、緑色蛍光体および青色LEDを含む装置(緑色蛍光体は、青色LEDからの青色光を吸収する)が開示された。一実施態様では、緑色蛍光体は、ホストの硫化物材料;換言すれば、硫化物イオンを有する格子を基にしたものである。好適なホスト硫化物材料は、SrGa24のようなチオガレートであり、希土類のユウロピウムによって活性化されたとき、緑色蛍光体SrGa24:Euは、約535nmの最大波長で約575lm/Wの発光当量値を有するスペクトルを示した。SrGa24ホスト中のドーパント(希土類Eu)の濃度は、好ましくは、約2〜4モル%であった。緑色蛍光体に励起放射を供給する青色LEDは、約450〜480nmの波長で放射を放出する(In,Ga)Nダイオードであった。
【0008】
LCD用バックライトとして用いられる、ストロンチウムチオガレートを基にした類似の蛍光体が、公開された米国特許願第2004/0061810号明細書にC.H. Loweryによって記載されている。この開示では、LEDダイの活性領域が放出する光を吸収するように選ばれた、波長変換材料は、上記のストロンチウムチオガレート蛍光体またはニトリドケイ酸塩蛍光体であることができた。ストロンチウムチオガレート蛍光体は、主放出波長が約542nmであった。波長変換材料は、LEDダイからの青色光を約420〜460nmの領域でか、または他の実施態様では、約380〜420nmの範囲の領域で吸収した。やはり、緑色発光蛍光体を含むこれらの装置は、緑色LEDで遭遇する問題、たとえば高温安定性、および温度で誘導される色彩変動を排除した。
【0009】
T. Ezuhara他による米国特許第6,805,814号明細書は、緑色発光蛍光体、またはプラズマディスプレイにおける使用を記載しており、蛍光体は、式M11-a211-bMna+b18-(a+b)/2[式中、M1は、La、YおよびGdのうち少なくとも一つであり、M2は、AlおよびGaのうち少なくとも一つである]で示される。蛍光体がAlを含有する(たとえば、蛍光体がアルミン酸塩である)場合、アルミナは、99.9%以上の純度、およびαアルミナ、または水酸化アルミニウムのような中間体アルミナいずれかの結晶構造を有する。これらの緑色発光蛍光体のピーク放出波長は、示されなかった。励起波長は、真空紫外内であった。
【0010】
先行技術の緑色蛍光体は、二つの短所:すなわち(1)広帯域スペクトルで大量に放出し、それは、一般的には、より高い演色を白色照明源で達成するには望ましいが、液晶ディスプレイ(LCD)のバックライティング、プラズマディスプレイパネル(PDP)および陰極線管(CRT)には適切ではないこと;ならびに(2)先行技術の緑色蛍光体のルミネッセンス強度(たとえば明るさ)および変換効率は、適切であるとはいえないことを有する。本発明の目的とする「広帯域スペクトル」は、約80nmより広い半値全幅(FWHM)を示すスペクトルでのピークとして記載される場合がある。ディスプレイの用途には、色空間は、その色座標で表されるような個々の赤(R)、緑(G)および青(B)成分の位置に依存する。より広い色空間、または当技術に公知のような「広色域ディスプレイ」を達成するには、好ましくは約80nm未満のFWHMをピークが有する約520nmのピーク波長で、かつ照度を犠牲にせずに明るい青緑色の少なくともいくつかを網羅するスペクトルの帯域幅で、放出する緑色蛍光体を提供するのが望ましい。
【0011】
したがって、当技術に必要とされることは、x=0.193かつy=0.726という値の前後の色座標、518nm前後のピーク放出波長を有する緑色蛍光体であって、狭い波長範囲、および当技術に公知のいかなる緑色蛍光体によって供給されるものより強い放出強度で放出する蛍光体である。本発明の緑色蛍光体と高い効率のUVおよび青色のGaNを基にしたLEDとを結合することで、安定した色の非常に効率的な緑色LEDが提供される場合がある。
【0012】
発明の要約
本発明の実施態様は、一般式M1-xEuxAly1+3y/2[式中、Mは、Ba、Sr、Ca、Mg、Mn、Zu、Cu、Cd、SmおよびTmからなる群より選ばれる少なくとも一つの2価金属であり、0.1<x<0.9かつ0.5≦y≦12である]で示される、アルミン酸塩を基にした緑色蛍光体を対象とする。本発明の一実施態様では、Mは、M’Mgで表される場合がある。もう一つの実施態様では、0.3≦x≦0.6である。本実施態様のアルミン酸塩を基にした蛍光体は、約280〜420nmの範囲の波長の放射を吸収し、500〜550nm、515〜530nmおよび518〜520nmの範囲の波長の可視光を放出するように構成されている。これらのアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体は、ピーク波長が、いくつかの実施態様では約80nm以下の、またその他の実施態様では約40nm以下の半値全幅を有する、可視光を発する場合がある。
【0013】
本発明のアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体は、アルミン酸塩の様々なホスト構造を有する。いかなる一つの蛍光体でも、同時にいくつかのアルミン酸塩の構造であってもよく、その場合、異なるアルミン酸塩の構造が異なる相として現れる。本発明のアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体の一実施態様では、蛍光体の式は、(M1-xEux4Al1425となるように、yの値が3.5である。
【0014】
本発明のアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体は、マグネシウムを含んでいてもよいため、M1-xEuxAlyOである一般式は、M1-x-wMgwEuxAly1+3y/2[式中、0<w<1]となる。Mがマンガン(Mn)である場合については、蛍光体の一般式は、Mn1-x-wMgwEuxAly1+3y/2となる。これらの蛍光体の特定の例は、Mn0.5-wMgwEu0.5Aly1+3y/2[式中、0.0≦w≦0.5かつ2≦y≦5である]である。その他の実施態様では、0.2≦w≦0.3かつ2≦y≦5;w=0.2かつ2≦y≦5;w=0.25かつ2≦y≦5;w=0.3かつ2≦y≦5である。蛍光体のアルミン酸塩の相は、yの値によって規定されてもよく、y=2であるときは、蛍光体は、Mn0.5-wMgwEu0.5Al24となり;y=3.5であるときは、蛍光体は、Mn0.5-wMgwEu0.5Al3.56.25となり;y=4であるときは、蛍光体は、Mn0.5-wMgwEu0.5Al47となり;y=5であるときは、蛍光体は、Mn0.5-wMgwEu0.5Al58.5となる。その他の例示的な蛍光体は、MgMnEu2Al1425およびMg0.6Mn0.4EuAl1017である。
【0015】
本発明の実施態様は、上記の蛍光体から放射される可視放射、および上記の蛍光体を含む緑色蛍光体を基にしたLEDを包含する。更なる実施態様は、本発明の緑色蛍光体に基づく表示装置であって、表示装置は、RGBバックライトディスプレイ、テレビジョン、モニタ、携帯電話、PDA、ナビゲーションディスプレイ、ゲーム、装飾光、信号を包含する。本発明のアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体は、一般にディスプレイ産業に利点を、また特に赤−青−緑(RGB)バックライティングの用途に利点を供給するが、それは、本発明の緑色蛍光体に基づく緑色LEDの電力変換効率が、バックライティング系の赤および青色成分のLEDのそれに良好に適合するからである。追加的な利点は、各RGBユニットでは、現在のRGBディスプレイのバックライティング系に時々必要とされる二つ以上の緑色LEDに代えて、唯一の緑色LEDが必要とされるにすぎないことである。
【0016】
本発明のアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体は、プラズマディスプレイパネル(PDP)にも用いてもよい。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明の実施態様は、一般的には、新規なアルミン酸塩緑色蛍光体(本明細書では緑色蛍光体と呼ぶ)を対象とする。本実施態様の新規なアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体は、様々なディスプレイの用途に特に役立つ。これらのディスプレイの用途は、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)および陰極線管(CRT)ディスプレイでのバックライティングを非限定的に包含する。加えて、それらは、孤立したいかなる緑色LEDの使用、たとえば装飾光、看板灯、信号灯および指示標識にも適用可能であり、白色光照明系にも有用である場合がある。
【0018】
本発明のアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体の化学的性質を詳しく考察する前に、そのような蛍光体がどのようにRGBディスプレイの用途の世界に適合する場合があるということの、一般化された考察を供給することが有用である場合がある。これは、図1A〜Cならびに図2を参照することによって、模式的に行ってもよい。
【0019】
図1Aは、ディスプレイおよびRGBバックライトの用途のための本発明の照明系の、一実施態様の模式的表現である。図1Aを参照すると、本発明の例示的なアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体11Aに励起放射を供給するために、紫外線(UV)発光ダイオード(LED)チップ10が用いられて、UVLED10は、実質的に電磁スペクトルの不可視領域の380〜420nmで放出する。UVLED10から吸収された光の波長変換の結果として、緑色光12Aが蛍光体11Aから放射される。図1Aのディスプレイバックライティングの一部として同様に模式的に示されているのは、赤色光14Aを放出する赤色LEDチップ13A、および青色光16Aを放出する青色LEDチップ15Aである。図1Aに示した構成の設計、および本発明のアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体11Aの選択の目的は、ディスプレイにおける緑色光12Aの光強度出力を、赤色光14Aおよび青色光16Aのそれと実質的に適合させることである。
【0020】
図1Bは、ディスプレイ用途のための本発明の照明系の、もう一つの実施態様の模式的表現であって、今度は、可視青色LED17を用いて、アルミン酸塩を基にした緑色蛍光体11Bを励起して、緑色光12Bがディスプレイのバックライティング部分に寄与する。可視青色LED17は、約420nmより長い波長で、また特定の実施態様では約450nmの波長の光を放出する。新規なアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体11Bは、図1Aに示した緑色蛍光体11Aと同じ蛍光体であっても、またはなくてもよい。いくつかの実施態様では、緑色蛍光体11Bは、ケイ酸塩を基にした緑色蛍光体、またはケイ酸塩およびアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体の組合せであってもよい。前の場合と同様に、赤色光14Aは、赤色LED13Aから生成される。
【0021】
図1Cは、ディスプレイ用途のための本発明の照明系の、更にもう一つの実施態様の模式的表現であって、今度は、ただ一つの放射源で異なる3個の蛍光体を励起する。この場合、UVLED10Cが、同じ不可視380〜420nm放射を本発明のアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体、青色蛍光体18および赤色蛍光体19に供給する。緑色蛍光体11Cは、緑色光12Cを放出し;青色蛍光体18は、青色光16Cを放出し;赤色蛍光体19は、赤色光14Cを放出する。
【0022】
図1A〜Cの模式図が表す構成のそれぞれで、バックライトディスプレイの緑色光は、緑色蛍光体から放出されるが、赤色光および青色光が生成される方式は、変化する。いくつかの場合に、赤および/または青色光は、適切な波長のLEDから直接生じる場合があるが、他の場合は、赤色光および/または青色光は、一つの蛍光体から放出される場合がある。
【0023】
それぞれがアルミン酸塩を基にした新規な緑色蛍光体を用いる、図1A〜Cに描かれたような構成を供給する目的は、図2を参照することによって理解される場合がある。図2は、先行技術のLED、および本発明の緑色蛍光体を基にしたLEDの電力変換効率を、放出された光の波長に対してプロットした模式的グラフであって、先行技術に対する電力変換効率の改良を示している。効率の改良で、本発明の緑色蛍光体を基にしたLEDは、ディスプレイの用途に用いられる赤および青色蛍光体ならびに/または赤および青色LEDの電力変換効率を良好に適合させる。
【0024】
図2を参照すると、電力変換効率は、縦軸に模式的にプロットされている(変換効率は、本明細書ではLEDへの電力入力に対する放出される光の比として定義される)。参照番号20で示されるのは、青色LEDの代表的な、しばしば約40〜50%という効率であって、赤色LEDが代表的に示すのとほぼ同じ効率でもある。しかし、図2の曲線21の形状は、LEDの電力変換が、より長い波長で放出するように変化するにつれて劇的に低下すること;換言すれば、変換効率は、波長が400nmの紫から450nmの青に、次いで530nmの緑に、最終的には約550nmに位置する黄色の「ギャップ」へと増加するにつれて低下する。よって、図2に22で模式的に示された先行技術の緑色LEDの変換効率は、代表的な青色LEDが達成する効率の僅か約20%であるにすぎない。言い換えれば、電力変換の改良は、本発明の緑色蛍光体による緑色LEDを用いて達成することができ、そのような改良は、参照番号23で縦棒によって表される。電力変換のそのような強化は、以前は当技術に公知ではなかった。本実施態様の強化された電力変換は、約300〜410nmの波長で励起放射を放出する近UVLEDを含む励起源で認められる場合がある。本発明の一実施態様では、緑色蛍光体は、約80%の量子効率を有し、近UVLEDは、約40〜50%の電力変換を有し;この実施態様では、緑色蛍光体LEDは、32〜40%の電力変換を有するであろう。これは、現在のGaNを基にした緑色LEDのほぼ2倍の電力変換である。
【0025】
一般にディスプレイ産業に、および特にRGBバックライトの用途に、本発明の緑色蛍光体LEDを提供することの利点があるが、それは、そうすれば、3種類の赤−青−緑(RGB)LEDのすべての電力変換効率が、良好に適合するからである。追加的な利点は、各RGBユニットでは、現在のRGBディスプレイのバックライティング系に時々必要とされる二つ以上の緑色LEDに代えて、唯一の緑色LEDが必要とされるにすぎないことである。
【0026】
本発明の実施態様を以下の順序で記載するであろう。初めに、新規なアルミン酸塩を基にした蛍光体の一般的な説明を、蛍光体中のアルカリ土類含量、およびアルカリ土類の比率が照明特性に対して有する効果を考察しつつ提示する。特に、式Mg1-xMnxEuAl1017で表されるMnおよびMgなるアルカリ土類の相対量について、考察を与えることにする。次に、例示的な蛍光体の放出特性を、MがMn、Ca、Ba、Znの一つまたはそれ以上であって、Mnが代わりの2価アルカリ土類元素で置き換えられた、例示的な組成物M0.5Mg0.5EuAl1017について考察するであろう。本発明の組成物の励起特性も、やはりMnおよびMgの比が変動する例について、また2価金属がMn、Ca、BaおよびZnであることができる場合について考察する。最後に、蛍光体の加工および製造法を考察するであろう。
【0027】
本発明の緑色蛍光体のアルカリ土類含量
本発明の実施態様によれば、アルミン酸塩を基にした緑色蛍光体は、式M1-xEuxAly1+3y/2[式中、Mは、Ba、Sr、Ca、Mg、Mn、Zu、Cu、Cd、SmおよびTmからなる群より選ばれる少なくとも一つの2価金属である]を有する。2価アルカリ土類金属およびユウロピウムの相対含量は、0.1<x<0.9によって表される。蛍光体に対するホストとして働くアルミン酸塩の種類は、化学量論0.5<y<12によって表される。本発明の実施態様によれば、蛍光体を活性化するために、高められたユウロピウム含量が存在する;すなわち、以下に考察するとおり、先行技術における組成物より高められた含量が存在する。本発明のアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体の新規な特徴は、ユウロピウム含量が約0.3重量%より多いことであって、その計算は、組成物中の2価アルカリ土類元素に対するユウロピウムの総重量の関数として、ユウロピウム含量についてされる。
【0028】
本発明の一実施態様では、アルミン酸塩を基にした蛍光体は、0.2≦x≦0.5である、上に示した一般式で記載されてもよい。
【0029】
本発明のアルミン酸塩を基にした蛍光体は、約280〜420nmの範囲の波長の放射を吸収し、500〜550nmの範囲の波長を有する可視光を放出するように構成されている。代替的な実施態様では、蛍光体は、約515〜530nmの範囲のピーク波長を有するか、または518〜520nmの範囲の波長での可視光を放出する。本発明のアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体は、従来の蛍光体より狭いピーク放出波長範囲を有して、本実施態様の蛍光体は、約40nm以下の半値全幅を有するピーク波長の可視光を放出する。
【0030】
本発明による一連の例示的な組成物の放出スペクトルを、組成物Mg1-xMnxEuAl1017について図3に示して、MnおよびMgの相対量を、これらの2価アルカリ土類元素の含量の効果を示すように変動させた。たとえば、約20%のMnおよび80%のMg(百分率は、それぞれのアルカリ土類の量を、存在する2価のアルカリ土類の総量の百分率として表す)という相対含量を有する組成物、すなわちこの系列の中間の放出強度を示す組成物で開始すると、強度は、Mgに対するMnの相対含量を初めに50/50、次いで40/60に増加させるにつれて上昇する。この40%Mnおよび60%Mgという含量を有する後者の組成物は、この系列の最大の放出強度を示す。ここから、放出強度は、Mn含量を、更に60%Mnおよび40%Mgまで、次いで更に80%Mnおよび20%Mgまで増加させるにつれて、低下する。当業者には、これらの組成物のそれぞれについてのピーク放出の波長は、マンガンに対するマグネシウムの比とは無関係に、約520の波長を中心としたままであることが明らかであろう。
【0031】
当業者には、マグネシウムは、本発明のアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体の組成物の必須成分であることが明白であろう。しかし、本発明の蛍光体のマンガン成分への代替的な置き換えは、Ca、BaおよびZnである。Ca、BaおよびZnを本発明の組成物に置換する結果を図4に示し、これは、式M0.5Mg0.5EuAl1017で表される蛍光体の、400nmの光で励起したときの放出スペクトルである。上に列挙した元素からの放出強度の順序は、図3の以前の事例と同様であるが、ピーク放出強度は、約520nmの波長を中心としている。
【0032】
本発明の緑色蛍光体のアルミン酸塩構造
本発明のアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体は、異なる様々なアルミン酸塩構造に基づいてもよい。本発明の一実施態様では、新規なアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体は、式M1-xEuxAly1+3y/2を有していて;yは、AlおよびOの相対含量を変化させて、ホストのアルミン酸塩構造に影響を及ぼすことの効果を示す。式のこの表示では、yの値は、0.5以上、かつ12以下である。この実験は、2価アルカリ土類元素に対するアルミニウムの比を変化させることと同等であることに留意されたい。
【0033】
当業者は、yの値、したがってまたアルミン酸塩構造に関しては無限に多くの可能性があることを認識されようが、本開示では、可能である構造の多様性に注意を促すために、ある範囲の具体的な例を提供することにする。たとえば、yは、0.67、2、3.5、4、5、8および12をとってもよい。以下の段落は、yの値を変化させることに由来する場合がある、アルミン酸塩を基にした緑色蛍光体を例示する。
【0034】
たとえば、蛍光体が式(M1-xEux3Al26を有するように、yが3分の2、または0.67に等しい、本発明の実施態様によるアルミン酸塩蛍光体を与えてもよい。この蛍光体は、本発明のその他の実施態様とは異なるアルミン酸塩構造を有する。
【0035】
あるいは、蛍光体が式(M1-xEux3Al24を有するように、yが2に等しい、本発明の実施態様による本発明のアルミン酸塩蛍光体を与えてもよい。この蛍光体は、本発明のその他の実施態様とは異なるアルミン酸塩構造を有する。
【0036】
あるいは、蛍光体が式(M1-xEux4Al1425を有するように、yが3.5に等しい、本発明の実施態様による本発明のアルミン酸塩蛍光体を与えてもよい。この蛍光体は、本発明のその他の実施態様とは異なるアルミン酸塩構造を有する。
【0037】
あるいは、蛍光体が式(M1-xEux)Al47を有するように、yが4に等しい、本発明の実施態様による本発明のアルミン酸塩蛍光体を与えてもよい。この蛍光体は、本発明のその他の実施態様とは異なるアルミン酸塩構造を有する。
【0038】
あるいは、蛍光体が式(M1-xEux2Al1017を有するように、yが5に等しい、本発明の実施態様による本発明のアルミン酸塩蛍光体を与えてもよい。この蛍光体は、本発明のその他の実施態様とは異なるアルミン酸塩構造を有する。
【0039】
あるいは、蛍光体が式(M1-xEux)Al813を有するように、yが8に等しい、本発明の実施態様による本発明のアルミン酸塩蛍光体を与えてもよい。この蛍光体は、本発明のその他の実施態様とは異なるアルミン酸塩構造を有する。
【0040】
あるいは、蛍光体が式(M1-xEux)Al1219を有するように、yが12に等しい、本発明の実施態様による本発明のアルミン酸塩蛍光体を与えてもよい。この蛍光体は、本発明のその他の実施態様とは異なるアルミン酸塩構造を有する。
【0041】
言うまでもなく、当業者には、上記のアルミン酸塩構造のいかなる組合せも、本発明の緑色蛍光体には存在することができ、上記の構造中のyの値は、両端を含めて0.5〜12のいかなる値もとることができることが理解されよう。換言すれば、yは、整数値をとる必要も、特定のいかなる蛍光体を通じても一定である必要もない。
【0042】
近UVないし青色のLEDの放射源
一般に、本発明のアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体は、約420nmより長い波長を有する励起放射に特別に高感度ではないが、本発明者らが同時に開発したケイ酸塩を基にした緑色蛍光体は高感度である。本発明の実施態様によれば、近UVないし青色発光LEDは、電磁スペクトルの実質的に不可視の部分である光、たとえば約420nmまでの波長を有する放射を放出する。そのようなLEDは、その接合が420nmおよびそれ以下の放出波長を有する、適切なII−V、II−VIまたはIV−IV半導体の層化に基づくいかなる半導体ダイオードも含んでもよい。たとえば、このLEDは、GaN、ZnSeまたはSiC半導体に基づく少なくとも一つの半導体層を含有してもよい。LEDは、望みであれば、一つ以上の量子井戸を活性領域に含有してもよい。好ましくは、LEDの活性領域は、GaN、AlGaNおよび/またはInGaN半導体層を含むp−n接合を含んでもよい。このp−n接合は、ドーピングされていない薄いInGaN層、または一つ以上のInGaN量子井戸によって隔離されてもよい。LEDは、300〜420nm、好ましくは340〜405nmの放出波長を有してもよい。たとえば、LEDは、以下の波長を有してもよい:350、355、360、365、370、380、390または405。
【0043】
本実施態様の近UVないし青色発光素子は、本明細書では、「LED」と一般的に記載されるが、当業者には、励起放射源がLED、レーザダイオード、面発光レーザダイオード、共振空洞発光ダイオード、無機エレクトロルミネセンス素子および有機エレクトロルミネセンス素子の少なくとも一つであってもよい(いくつかを同時に作動させようと考えられる場合)ことが理解されよう。
【0044】
本発明のアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体の利点は、励起できる波長範囲が広いことである。これらの概念は、図6および7に図示されている。図6を参照すると、式Mg1-xMnxEuAl1017を有する一系列のアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体についての放出スペクトルが、それぞれ0.2、0.3、0.4、0.5、0.6および0.8に等しいxの値に対して示されている。当業者には、これらの蛍光体は、約280〜420nmの波長の放射を吸収することができ、よって、電磁スペクトルの不可視部分で励起を供給する近UVないし青色LEDに用いるのに最も適合することが観察されよう。この吸収のピークは、約330nmの波長で生じるが、広い範囲の波長の範囲の有意な吸収が存在して、その範囲は、約320〜400nmに広がっている。この実験における例示的なアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体は、約517nmの波長で緑色光を放出した。
【0045】
図6のデータは、吸収が、約0.4のxの値を有する組成物について、換言すれば、2価アルカリ金属の内容の原子数で40%がマンガンであり、残る60%がマグネシウムであるとき、最高であることを示している。吸収は、マンガン原子の含量が約20〜60%の範囲の組成物についても高い(極めて高くはないが)。
【0046】
本発明のアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体の2価アルカリ土類成分を変動させることの効果を、図7に示す。一連の蛍光体は、一般式(M0.5Mg0.5Eu)Al1017(Mは、Mn、Ba、CaまたはZnのいずれかである)によって記載することができた。図6で試験された一連の蛍光体と同様に、これらの組成物は、約280〜420nmの範囲の波長を有する、実質的に不可視の放射を吸収して、ピーク吸収は、約320〜400nmの範囲の波長で生じた。
【0047】
図7のデータは、吸収が、マンガンをマグネシウムと対にさせる2価アルカリ土類元素として有する組成物について最高であって、バリウム、カルシウムおよび亜鉛の順で吸収が減少することを示している。
【0048】
RGBバックライティングディスプレイの青色および赤色LED
当技術に公知の多くの青色蛍光体は、本発明のアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体と結合して用いて、RGBバックライティングディスプレイを構成してもよい。2価ユウロピウムで活性化されるバリウム−マグネシウム−アルミン酸塩(BAM)蛍光体は、本発明のRGBバックライティングを用途とするアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体と結合して用いてもよい。本発明の緑色蛍光体とともに用いてもよいBAM蛍光体の例は、米国特許第4,110,660号明細書に開示されていて、BaF2、LiF、Al(OH)3およびEu23を含有する混合物が、水素雰囲気中、約760〜899℃(1,400〜1,650°F)の範囲の温度で3〜6時間焼成される。本発明の緑色蛍光体とともに用いてもよい公知のもう一つの青色蛍光体は、K. Takahashiへの米国特許第4,161,457号明細書に記載されている。この特定の蛍光体は、式aMgO.bBaO.cAl23.dEuO[式中、a、b、cおよびdは、条件a+b+c+d=10を満足する数であり、0<a≦2.00;0.25≦b≦2.00;6.0≦c≦8.5;0.05≦d≦0.30である]で表される。当然、当業者には、K. Takahashiのそれに類似するその他多くの青色蛍光体組成物を本発明の緑色蛍光体とともに用いてもよいことが認識されよう。
【0049】
本発明の緑色蛍光体と結合してRGBバックライティングディスプレイに用いてもよい、その他の青色蛍光体は、R.P. Raoが米国特許第6,187,225号明細書に開示したような、活性化物質としての3価のTm、Li+、および共活性化物質としての任意量のアルカリ土類元素を用いるリン酸ランタン蛍光体によって例示される。そのような例示的な青色蛍光体は、式(La1-x-zTmxLixAEz)PO4[式中、0.001≦x≦0.05;0.01≦y≦0.05;かつ0≦z≦0.05である]で表し得る。より具体的には、Tm3+およびLi+でドーピングされたリン酸ランタン蛍光体を用いた青色蛍光体、特にゾル−ゲル/キセロゲルおよび固体法によって製造されたそれは、本発明の一部であると考えられる。
【0050】
もう一つの実施態様では、本発明の青色蛍光体は、ホスト材料としての式(Bax1-x1-0.25yMg1-yAl10+y17+0.25yで一般的に表される化合物を、活性化物質としてのEuとともに含んでいてもよくて、ここでMは、Ca、SrまたはCaおよびSrを表す。そのような青色蛍光体は、K. Ono他が米国特許第6,576,157号明細書に記載していて、化学量論量の構成元素は、0.5≦x≦1かつ0.05≦y≦0.15の関係によって表され、また蛍光体は、真空紫外放射によって励起される。
【0051】
多相構造のEu2+で活性化されるLa、Mgアルミン酸塩蛍光体が製造されている。米国特許第4,249,108号明細書は、出発材料のLa23、MgO、Al(OH)3およびEu23を、約1,500〜1,650℃で約1〜5時間、還元雰囲気中で焼成される場合があることを明らかにしている。本発明の緑色蛍光体とともに用い得る更なる青色蛍光体は、米国特許第5,611,959号明細書に開示されたものを包含して、ここでは、アルミン酸塩蛍光体が、Ba、SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素;Euである活性化物質;Mgおよび/またはZn;ならびに場合によりMnを含むと教示された。この蛍光体は、それぞれの酸化物および/または水酸化物を、還元性雰囲気中、1,200〜1,700℃の温度で2〜40時間にわたって焼成することによって製造される場合がある。
【0052】
赤色蛍光体は、CaS:Eu2+、SrS:Eu2+、MgO*MgF*GeO:Mn4+およびMxSiyz:Eu2+からなる群より選ばれて、Mは、Ca、Sr、BaおよびZnからなる群より選ばれ、Z=2/3x+4/3yであり、かつ赤色蛍光体は、放射源からの放射の少なくとも一部を吸収し、約590〜690nmの範囲の波長にピーク放出強度を有する光を放出するように構成されている。
【0053】
白色光LED照明系
本実施態様の緑色蛍光体は、白色LEDの一部を構成してもよい。そのような系には、一つ以上の放射源を用いてもよい。たとえば、近UVまたは実質的に不可視の放射源を用いて、上に記載された本発明のアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体を励起してもよく、この同じか、または第二の放射源を用いて、赤、青、青緑もしくは黄色の蛍光体のいずれか(組合せてか、または単独の)を励起してもよい。赤、青、青緑または黄色蛍光体のいずれか、もしくはすべてを励起するために、第二の放射源は、約380〜420nmで放射する、近UVと異なる、実質的に不可視の放射源であってもよいか、あるいは、同様に赤、青、青緑または黄色蛍光体のいずれか、もしくはすべてを励起するのに、400nmおよびそれより長い波長を放射する青色LEDであってもよい。たとえば、第二の放射源は、約410〜500nmの範囲の波長を有する放射を放出してもよい。いずれにせよ、緑色蛍光体は、不可視放射源からの放射の少なくとも一部を吸収し、約500〜550nmの範囲の波長にピーク放出強度を有する光を放出するように構成される。
【0054】
そのような白色光LED照明系に用いてもよい黄色蛍光体は、本発明者らによる以前の二つの開示に記載されている。これらは、2004年8月4日付け米国特許願「白色発光ダイオード(LED)のための新規な蛍光体系」(代理人整理番号第034172-011号)、および2004年9月22日付け米国特許願「ケイ酸塩を基にした新規な黄緑色蛍光体」(代理人整理番号第034172-014号)であって、ともに引用により本明細書に援用される。この黄色蛍光体は、放射源からの放射の少なくとも一部を吸収し、約530〜590nmの範囲の波長にピーク放出強度を有する光を放出するように構成される。
【0055】
蛍光体の製造方法
本発明の実施態様の新規アルミン酸塩を基にした蛍光体を製作する方法は、いかなる一つの製作方法にも限定されないが、たとえば、(1)出発材料を混合すること;(2)出発材料混合物を焼成すること;および(3)焼成された材料に対して、微粉化および乾燥をはじめとする様々な加工を実行することを包含する3工程法で製作してもよい。出発材料は、様々な種類の粉末、たとえばアルカリ土類金属化合物、アルミニウム化合物およびユウロピウム化合物を含んでいてもよい。アルカリ土類金属化合物の例は、アルカリ土類金属の炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、酸化物、シュウ酸塩およびハロゲン化物を包含する。アルミニウム含有化合物の例は、その硝酸塩、フッ化物および酸化物を包含する。ユウロピウム化合物の例は、酸化ユウロピウム、フッ化ユウロピウムおよび塩化ユウロピウムを包含する。
【0056】
出発材料は、望みの最終組成物が達成されるようにして混合する。たとえば、一実施態様では、アルカリ土類、アルミニウム(および/またはゲルマニウム)含有化合物およびユウロピウム化合物を、適切な比率で混合し、次いで焼成して、望みの組成物を達成する。混合した出発材料は、第二の工程で焼成し、混合された材料の反応性を高めるために(焼成のいかなる段階または様々な段階でも)、フラックスを用いてよい。フラックスは、様々な種類のハロゲン化物およびホウ素化合物を含んでよくて、その例は、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、フッ化ユウロピウム、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化ユウロピウム、塩化アンモニウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムおよびそれらの混合物を包含する。ホウ素含有フラックス化合物の例は、ホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸ストロンチウム、ホウ酸バリウムおよびホウ酸カルシウムを包含する。
【0057】
いくつかの実施態様では、フラックス化合物を、モル百分率の数字が約0.01〜0.2モル%の範囲であり、値は、代表的には、両端を含めて約0.01〜0.2モル%の範囲であってもよい。
【0058】
出発材料を混合するための(フラックスを伴うか、またはフラックスなしの)様々な方法は、すり鉢の使用、ボールミルによる混合、V字形混合機を用いる混合、クロスロータリーミキサーを用いる混合、ジェットミルを用いる混合、および撹拌機を用いる混合を包含する。出発材料は、乾式混合または湿式混合のいずれに付してもよい(乾燥混合とは、溶媒を用いずに混合することを意味する)。湿式混合法に用いてもよい溶媒は、水または有機溶媒を包含し、有機溶媒は、メタノールまたはエタノールのいずれでもよい。
【0059】
出発材料の混合物は、当技術に公知の無数の手法によって焼成してもよい。焼成には、電気炉またはガス炉のような加熱装置を用いてもよい。加熱装置は、出発材料混合物が望みの温度で望みの時間長焼成される限り、いかなる特定の種類にも限定されない。いくつかの実施態様では、焼成温度は、約800〜1,600℃の範囲であってもよい。焼成時間は、約10分〜1,000時間の範囲であってもよい。焼成雰囲気は、空気、低圧雰囲気、真空、不活性気体雰囲気、窒素雰囲気、酸素雰囲気、酸化性雰囲気から選んでもよく、かつ/または組成物は、還元雰囲気中、100〜1,600℃で約2〜10時間焼成してもよい。
【0060】
アルミン酸塩を基にした緑色蛍光体を製造する一つの方法は、式M1-xEuxAly1+3y/2[式中、Mは、Ba、Sr、Ca、Mg、Mn、Zu、Cu、Cd、SmおよびTmからなる群より選ばれる少なくとも一つの2価金属であり、0.1<x<0.9かつ2≦y≦12である]を有する緑色蛍光体の製造を対象とする。蛍光体を製造する方法は、ゾル−ゲル法または固体反応法のいずれの一方であってもよい。この方法では、金属硝酸塩を用いて、緑色蛍光体の2価金属成分ばかりでなく、アルミン酸塩を基にした緑色蛍光体のアルミニウム成分も与えてもよい。2価金属成分を供給する金属硝酸塩は、Ba(NO32、Mg(NO32またはMn(NO32であってもよく、アルミニウムを供給する金属硝酸塩は、Al(NO33であってもよい。
【0061】
この方法は、金属酸化物を用いて、アルミン酸塩を基にした緑色蛍光体の酸素成分を供給する工程を更に含む。
【0062】
方法の一例は、以下の工程を含む:
(a)Ba(NO32、Mg(NO32、Mn(NO32、Al(NO33およびEu23からなる群より選ばれる原料を供給する工程;
(b)Eu23を20%硝酸溶液に溶解し、次いで、望みの量の金属硝酸塩を混合して、酸塩水溶液を形成する工程;
(c)硝酸塩溶液にアンモニウムを加え、硝酸塩溶液のpHを約8の値に調整する工程;
(d)工程(c)の溶液を加熱して、ゲルを形成する工程;
(e)工程(d)のゲルを約700℃に加熱して、硝酸塩混合物を酸化物混合物に分解する工程;
(f)工程(e)の酸化物混合物を、ボールミル内で約0.05モルまたは6重量%のAlF3・3H2Oと混合して、粉末を形成する工程;
(g)工程(f)の粉末を、N2中約5%のH2の雰囲気中、1,500℃で約6時間焼結する工程。
【0063】
次に、CIE色度図の一般化された説明を、本発明の黄緑色蛍光体がCIE色度図に現れる個所の説明とともに示すことにする。
【0064】
CIE色度図上の色度座標およびCRI
色の質は、異なる数多くの格付け体系によって測定することができる。色度は、色相および彩度によって色を定義する。CIEは、国際照明委員会(Commission International de l'Eclairage)によって開発された色度座標系である。CIE色度座標は、「1931CIE」色空間内で色を定義する座標である。これらの座標は、x、y、zとして定義され、三つの三刺激値の合計に対する三つの標準的原色X、Y、Z(三刺激値)の比である。CIE表は、三刺激値のその合計に対するx、y、zなる比のプロットを含む。減算した座標x、y、zの合計が1になる状況では、代表的には、二次元のCIE(x、y)プロットが用いられる。
【0065】
本発明の緑色蛍光体に関係のあるディスプレイ用途については、色空間は、色空間内のその位置という面では赤、緑および青色光の成分に無関係である。本実施態様の緑色蛍光体は、当技術では「広色域ディスプレイ」と呼ばれるRGBバックライティングディスプレイに好都合な、より広い色空間を生成するのに特に役立つ。本発明の一実施態様によれば、アルミン酸塩を基にした緑色蛍光体は、x=0.193およびy=0.726という色座標を有する。この値の範囲内の色座標は、明らかに、ディスプレイ産業のための利点を有する。
【0066】
上に開示された本発明の例示的な実施態様の多くの変更が、当業者には容易に思い付かれる。したがって、本発明は、付記された請求項の対象範囲内に属するすべての構造および方法を包含すると解される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1A】実質的に不可視の(380〜420nm)LEDを用いて、緑色蛍光体を励起する(よって、先行技術の緑色LEDに置き換わる)、ディスプレイ用途のための本発明の照明系の一実施態様の模式的表現であって、本発明の効率的な緑色蛍光体を基にしたLEDが、同様にディスプレイに用いられている青および赤色LEDによる電力変換効率に実質的に見合うように構成されている。
【図1B】ディスプレイ用途のための本発明の照明系のもう一つの実施態様の模式的表現であって、今度は、可視青色LED(約420〜450nmで作動する)を用いて、ケイ酸塩を基にした緑色蛍光体を励起し、緑色蛍光体からの緑色光、および吸収されなかった青色光を供給するが、赤色LEDは、図1Aと同じである。
【図1C】ディスプレイ用途のための本発明の照明系のもう一つの実施態様の模式的表現であって、今度は、同一の不可視の380〜420nmの放射源を用いて、異なる3種類の赤、緑および青色蛍光体を励起する。
【図2】既存のLEDの電力変換効率を波長に対してプロットした模式的グラフであって、先行技術に対する本発明の緑色蛍光体を基にしたLEDの電力変換効率のいかなる改良が、赤および青色LEDの効率に良好に適合させることができるかを示す。
【図3】本発明の実施態様による、一連の例示的な組成物の発光スペクトルを示すグラフであり、この場合は組成物がMg1-xMnxEuAl1017であって、MnおよびMgの相対量が変動している;図は、これらの例示的な化合物のピーク放出波長が520nm前後であることを示している。
【図4】式M0.5Mg0.5EuAl1017(式中Mは、Mn、Ca、Ba、Znからなる群より選ばれる)で一般的に表される、一連の例示的な組成物の発光スペクトルを示すグラフである;グラフの目的は、Mnを、これに代わる2価のアルカリ土類元素と置き換えた効果を示している。
【図5】式Mg0.25Mn0.25Eu0.5Aly1.5y+1で表される、一連の例示的な組成物の放出スペクトルを示すグラフであって、yは、AlおよびOの相対含量を変化させて、ホストのアルミン酸塩構造に影響を及ぼすことの効果を示す(この実験は、2価のアルカリ土類元素に対するアルミニウムの比を変化させることと同等であることに留意されたい)。
【図6】式Mg1-xMnxEuAl1017で一般的に表される、一連の例示的な組成物の励起スペクトルを示すグラフであって、xの値は、約0.2〜0.8の範囲である。
【図7】式(M0.5Mg0.5Eu)Al1017で一般的に表される、一連の例示的な組成物の励起スペクトルを示すグラフであって、Mは、Mn、Ba、CaおよびZnからなる群より選ばれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式M1-xEuxAly1+3y/2[式中、Mは、Ba、Sr、Ca、Mg、Mn、Zu、Cu、Cd、SmおよびTmからなる群より選ばれる少なくとも一つの2価金属であり、0.1<x<0.9かつ0.5≦y≦12である]で示される、アルミン酸塩を基にした緑色蛍光体であって、蛍光体が約280〜420nmの範囲の波長の放射を吸収し、約500〜550nmの範囲の波長を有する可視光を放出するように構成された、蛍光体。
【請求項2】
0.3≦x≦0.6である、請求項1記載のアルミン酸塩を基にした蛍光体。
【請求項3】
約515〜530nmの範囲のピーク波長を有する可視光を放出する、請求項1記載のアルミン酸塩を基にした蛍光体。
【請求項4】
約40nm以下の半値全幅を有するピーク波長の可視光を放出する、請求項1記載のアルミン酸塩を基にした蛍光体。
【請求項5】
蛍光体の式が(M1-xEux4Al1425となるように、y=3.5である、請求項1記載のアルミン酸塩を基にした蛍光体。
【請求項6】
蛍光体の式がM1-x-wMgwEuxAly1+3y/2であって、0<w<1である、請求項1記載のアルミン酸塩を基にした蛍光体。
【請求項7】
MがMnであるときに、蛍光体の式がMn1-x-wMgwEuxAly1+3y/2である、請求項6記載のアルミン酸塩を基にした蛍光体。
【請求項8】
蛍光体の式がMn0.5-wMgwEu0.5Aly1+3y/2であって、0.0≦w≦0.5かつ2≦y≦5である、請求項7記載のアルミン酸塩を基にした蛍光体。
【請求項9】
蛍光体の式がMn0.5-wMgwEu0.5Aly1+3y/2であって、w=0.25かつ2≦y≦5である、請求項7記載のアルミン酸塩を基にした蛍光体。
【請求項10】
蛍光体の式がMn0.5-wMgwEu0.5Al3.56.25となるように、y=3.5である、請求項7記載のアルミン酸塩を基にした蛍光体。
【請求項11】
請求項1〜10の蛍光体のいずれかが放出する可視放射。
【請求項12】
緑色蛍光体を基にしたLEDであって、
約280〜420nmの範囲の波長を有する放射を放出するように構成された放射源と;
放射源からの放射の少なくとも一部を吸収し、約500〜550nmの範囲の波長にピーク強度を有する緑色光を放出するように構成された、請求項1記載の緑色蛍光体と
を含むLED。
【請求項13】
RGBバックライトディスプレイ、テレビジョン、モニタ、携帯電話、PDA、ナビゲーションディスプレイ、ゲーム、装飾光、信号からなる群より選ばれ、式M1-xEuxAly1+3y/2[式中、Mは、Ba、Sr、Ca、Mg、Mn、Zu、Cu、Cd、SmおよびTmからなる群より選ばれる少なくとも一つの2価金属であり、0.1<x<0.9かつ0.5≦y≦12である]で示される、アルミン酸塩を基にした緑色蛍光体を含む表示装置であって、蛍光体が、約280〜420nmの範囲の波長の放射を吸収し、約500〜550nmの範囲の波長を有する可視光を放出するように構成されている、表示装置。
【請求項14】
図1A、BまたはCに示されたスキームによる表示装置であって、式M1-xEuxAly1+3y/2[式中、Mは、Ba、Sr、Ca、Mg、Mn、Zu、Cu、Cd、SmおよびTmからなる群より選ばれる少なくとも一つの2価金属であり、0.1<x<0.9かつ0.5≦y≦12である]で示される、アルミン酸塩を基にした緑色蛍光体を含み、蛍光体が、約280〜420nmの範囲の波長の放射を吸収し、約500〜550nmの範囲の波長を有する可視光を放出するように構成されている、表示装置。
【請求項15】
約410〜500nmの範囲の波長を有する放射を放出するように構成された放射源と;
放射源からの放射の少なくとも一部を吸収し、約500〜550nmの範囲の波長にピーク強度を有する光を放出するように構成された、請求項1記載の緑色蛍光体と;
放射源からの放射の少なくとも一部を吸収し、約530〜590nmの範囲の波長にピーク強度を有する光を放出するように構成された黄色蛍光体と
を含む白色LED。
【請求項16】
約410〜500nmの範囲の波長を有する放射を放出するように構成された放射源と;
放射源からの放射の少なくとも一部を吸収し、約500〜550nmの範囲の波長にピーク強度を有する光を放出するように構成された、請求項1記載の緑色蛍光体と;
CaS:Eu2+、SrS:Eu2+、MgO*MgF*GeO:Mn4+およびMxSiyz:Eu2+[式中、Mは、Ca、Sr、BaおよびZnからなる群より選ばれ、Z=2/3x+4/3yである]からなる群より選ばれ、放射源からの放射の少なくとも一部を吸収し、約590〜690nmの範囲の波長にピーク強度を有する光を放出するように構成された赤色蛍光体と
を含む白色LED。
【請求項17】
式M1-xEuxAly1+3y/2[式中、Mは、Ba、Sr、Ca、Mg、Mn、Zu、Cu、Cd、SmおよびTmからなる群より選ばれる少なくとも一つの2価金属であり、0.1<x<0.9かつ0.5<y<12である]で示される、アルミン酸塩を基にした緑色蛍光体を製造する方法であって、ゾル−ゲル法および固体反応法からなる群より選ばれる方法。
【請求項18】
金属硝酸塩を用いて、緑色蛍光体の2価金属成分を供給する工程を更に含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
金属硝酸塩を用いて、アルミン酸塩を基にした緑色蛍光体のアルミニウム成分を供給する工程を更に含む、請求項17記載の方法。
【請求項20】
金属硝酸塩が、Ba(NO32、Mg(NO32およびMn(NO32からなる群より選ばれる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
金属硝酸塩が、Al(NO33である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
金属酸化物を用いて、アルミン酸塩を基にした緑色蛍光体の酸素成分を供給する工程を更に含む、請求項17記載の方法。
【請求項23】
式M1-xEuxAly1+3y/2[式中、Mは、Ba、Sr、Ca、Mg、Mn、Zu、Cu、Cd、SmおよびTmからなる群より選ばれる少なくとも一つの2価金属であり、0.1<x<0.9かつ0.5<y<12である]で示される、アルミン酸塩を基にした緑色蛍光体を製造する方法であって、
(a)Ba(NO32、Mg(NO32、Mn(NO32、Al(NO33およびEu23からなる群より選ばれる原料を供給する工程と;
(b)Eu23を20%硝酸溶液に溶解し、次いで、所望の量の金属硝酸塩を混合して、硝酸塩水溶液を形成する工程と;
(c)硝酸塩溶液にアンモニウムを加え、硝酸塩溶液のpHを約8の値に調整する工程と;
(d)工程(c)の溶液を加熱して、ゲルを形成する工程と;
(e)工程(d)のゲルを約700℃に加熱して、硝酸塩混合物を酸化物混合物に分解する工程と;
(f)工程(e)の酸化物混合物を、ボールミル内で6重量%のAlF3・3H2Oと混合して、粉末を形成する工程と;
(g)工程(f)の粉末を、N2中約5%のH2の雰囲気中、1500℃で約6時間焼結する工程と
を含む方法。
【請求項24】
プラズマディスプレイパネル(PDP)における、請求項1記載のアルミン酸塩を基にした緑色蛍光体。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−527151(P2008−527151A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551485(P2007−551485)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/002001
【国際公開番号】WO2006/076737
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(506358764)インテマティックス・コーポレーション (40)
【氏名又は名称原語表記】INTEMATIX CORPORATION
【Fターム(参考)】