説明

アレイアンテナ式のCVDプラズマ装置

【課題】アレイアンテナ式のCVDプラズマ装置1の生産性を高いレベルまで向上させつつ、薄膜の品質を高めること。
【解決手段】予め設定した配設方向の一端部側の基板エリアAとフロント壁9の壁面との間及び前記配設方向の他端部側の基板エリアAとリア壁11の内壁面との間に、片側に基板Wからの輻射熱を吸収可能な吸収面45fを有しかつ基板Wを冷却する冷却パネル41がそれぞれ配設され、隣接する基板エリアA間に、両側に基板Wからの輻射熱を吸収可能な吸収面57fを有しかつ基板Wを冷却する中間冷却パネル53が配設されたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空雰囲気中でプラズマを発生させつつ、プラズマによって分解された材料ガスの成分をガラス基板等の基板の表面に付着させることにより、基板の表面に薄膜を成膜するアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池等に用いられるガラス基板等の基板の大面積化(大型化)に伴い、大面積基板(大型基板)の成膜に適したアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置について種々の開発がなされている(特許文献1から特許文献3参照)。そして、先行技術に係るアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置の構成等に説明すると、次のようになる。
【0003】
先行技術に係るアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置は、真空チャンバーを具備しており、この真空チャンバーは、内部を真空状態に減圧可能である。また、真空チャンバーの外側の適宜位置には、真空チャンバーの内部側へ材料ガスを供給するガス供給源が設けられている。
【0004】
真空チャンバーの内部には、プラズマを発生させる複数のアレイアンテナが予め設定した配設方向に間隔を置いて配設されている。また、各アレイアンテナは、垂直状態で同一平面上に前記配設方向に直交する方向に間隔を置いて配設された複数本のアンテナ素子を備えており、各アレイアンテナの両側には、垂直状態の基板をセット可能な基板エリアがそれぞれ形成されている。そして、真空チャンバーの外側の適宜位置には、各アレイアンテナに高周波電力を供給する高周波電源が配設されている。
【0005】
従って、各基板エリアに基板をセットした状態で、真空チャンバーの内部を真空状態に減圧すると共に、ガス供給源によって真空チャンバーの内部側へ材料ガスを供給する。そして、高周波電源によって各アレイアンテナに高周波波電力を供給することにより、各アレイアンテナの周辺にプラズマを発生させつつ、プラズマによって分解された材料ガスの成分を各基板の表面に付着させる。これにより、各基板の表面に非結晶シリコン膜又は微結晶シリコン膜等の薄膜を成膜(形成)することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−143592号公報
【特許文献2】特開2007−262541号公報
【特許文献3】特開2003−86581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、アレイアンテナ式のCVDプラズマ装置の生産性を高いレベルまで向上させるには、高周波電源から各アレイアンテナに供給される高周波電力を大きくして、各アレイアンテナの周辺のプラズマ密度を高くする必要がある。一方、各アレイアンテナ周辺のプラズマ密度を高めると、成膜処理中に真空チャンバーの内部の温度が過度に上昇して、基板の表面温度を適正な温度(温度範囲)に保つことが困難になり、非結晶シリコン膜又は微結晶シリコン膜等の薄膜の品質の低下を招くことになる。
【0008】
つまり、アレイアンテナ式のCVDプラズマ装置の生産性を高いレベルまで向上させつつ、薄膜の品質を高めることは容易でないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成のアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特徴は、真空雰囲気中でプラズマを発生させつつ、プラズマによって分解された材料ガスの成分を基板の表面に付着させることにより、基板の表面に薄膜を成膜(形成)するアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置において、内部を真空状態に減圧可能な真空チャンバーと、前記真空チャンバーの内部側へ材料ガスを供給するガス供給源と、前記真空チャンバーの内部に予め設定した配設方向に間隔を置いて配設され、同一平面上に前記配設方向に直交する方向に間隔を置いて配設された複数本のアンテナ素子を備え、両側に基板をセット可能な基板エリアがそれぞれ形成され、プラズマを発生させる複数のアレイアンテナと、各アレイアンテナ(各アレイアンテナにおける各アンテナ素子)に高周波電力を供給する高周波電源と、前記配設方向の一端部側の前記基板エリアと前記真空チャンバーの内壁面との間及び前記配設方向の他端部側の前記基板エリアと前記真空チャンバーの内壁面との間にそれぞれ配設され、片側(前記基板エリアに対向する側)に基板からの輻射熱を吸収可能な吸収面を有し、基板を冷却する冷却パネル(第1冷却パネル)と、隣接する前記基板エリア間に配設され、両側に基板からの輻射熱を吸収可能な吸収面(中間吸収面)をそれぞれ有し、基板を冷却する中間冷却パネル(第2冷却パネル)と、を具備したことを要旨とする。
【0011】
なお、特許請求の範囲及び明細書において、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、別部材を介して間接的に設けられたことを含む意であって、「配設され」とは、直接的に配設されたことの他に、別部材を介して間接的に配設されたことを含む意である。また、「アンテナ素子」には、誘導結合型電極、容量結合型電極等が用いられる。
【0012】
本発明の特徴によると、各基板エリアに基板をセットした状態で、前記真空チャンバーの内部を真空状態に減圧すると共に、前記ガス供給源によって前記真空チャンバーの内部側へ材料ガスを供給する。そして、前記高周波電源によって各アレイアンテナに高周波波電力を供給することにより、各アレイアンテナの周辺にプラズマを発生させつつ、プラズマによって分解された材料ガスの成分を各基板の表面に付着させる。これにより、各基板の表面に薄膜を成膜することができる。
【0013】
ここで、成膜処理中に、各冷却パネルを適宜に作動させることにより、前記配設方向の端部側(一端部側又は他端部側)の前記基板エリアにセットされた基板(端部側の基板)からの輻射熱を前記冷却パネルの前記吸収面によって吸収して、端部側の基板を冷却する。また、各中間冷却パネルを適宜に作動させることにより、前記配設方向の中間側の前記基板エリアにセットされた基板(中間側の基板)からの輻射熱を前記中間冷却パネルの前記吸収面によって吸収して、中間側の基板を冷却する。これにより、前記高周波電源から各アレイアンテナに供給される高周波電力を大きくして、各アレイアンテナの周辺のプラズマ密度を高めても、各基板の表面温度が過度に上昇することを抑えて、各基板の表面温度を適正な温度(温度範囲)に保つことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、各アレイアンテナの周辺のプラズマ密度を高めても、各基板の表面温度を適正な温度に保つことができるため、前記アレイアンテナ式のCVDプラズマ装置の生産性を高いレベルまで向上させつつ、薄膜の品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置の側面断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係るアレイアンテナ式のVCDプラズマ装置の正面断面図である。
【図3】図3は、図1におけるIII-III線に沿った断面図である。
【図4】図4は、図1におけるIV-IV線に沿った断面図である。
【図5】図5は、サーキュレータ及びその周辺の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図1から図5を参照して説明する。なお、図面中、「FF」は前方向、「FR」は後方向、「L」は左方向、「R」は右方向、「U」は上方向、「D」は下方向をそれぞれ指してある。
【0017】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係るアレイアンテナ方式のCVDプラズマ装置1は、真空雰囲気中でプラズマを発生させつつ、プラズマによって分解された材料ガスの成分を基板Wの表面に付着させることにより、基板Wの表面に非結晶シリコン膜又は微結晶シリコン膜等の薄膜(図示省略)を成膜(形成)する装置である。
【0018】
アレイアンテナ式のCVDプラズマ装置1は、箱型の真空チャンバー3を具備しており、この真空チャンバー3は、真空圧を発生させる真空ポンプ等の真空圧発生源5に接続されてあって、内部を真空状態に減圧可能である。また、真空チャンバー3は、箱型のチャンバー本体7の備えており、このチャンバー本体7は、正面側(前側)にフロント開口部7a、背面側(後側)にリア開口部7b、両側面側(左側及び右側)にサイド開口部7cをそれぞれ有している。更に、チャンバー本体7の正面側には、フロント開口部7aを開閉するフロント壁9が設けられており、チャンバー本体7の背面側には、リア開口部7bを開閉するリア壁11が設けられている。そして、チャンバー本体7の両側面側には、サイド開口部7cを開閉するサイド壁(ゲートバルブを含む)13がそれぞれ設けられており、チャンバー本体7の上側には、天井壁15が設けられている。なお、フロント壁9の内壁面、リア壁11の内壁面、サイド壁13の内壁面、及び天井壁15の内壁面は、それぞれ真空チャンバー3の内壁面に相当する。
【0019】
真空チャンバー3の外側の適宜位置には、真空チャンバー3の内部側へ材料ガスを供給するガス供給ポンプ等のガス供給源17が配設されている。
【0020】
真空チャンバー3の内部には、プラズマを発生させる複数のアレイアンテナ19が予め設定した配設方向(本発明の実施形態にあっては、真空チャンバー3の奥行き方向(前後方向))に間隔を置いて配設されている。また、各アレイアンテナ19は、垂直状態で同一平面上に前記配設方向に直交する方向(本発明の実施形態にあっては、真空チャンバー3の幅方向(左右方向))へ間隔を置いて配設された複数本のアンテナ素子としてのU字形状の複数本の誘導結合型電極21を備えており、各アレイアンテナ19の片側又は両側には、垂直状態の基板Wをセット可能な基板エリアAが形成されている。そして、真空チャンバー3の外側の適宜位置には、各アレイアンテナ19(各アレイアンテナ19における各誘導結合型電極21)に高周波電力を供給する高周波電源23が配設されている。
【0021】
図2に示すように、各誘導結合型電極21は、上端部が天井壁15にコネクタ25を介して着脱可能に連結されかつ高周波電源23の供給側(非接地側)に電気的に接続された第1電極棒27と、上端部が天井壁15にコネクタ29を介して着脱可能に連結されかつ第1電極棒27に対して平行であってかつ高周波電源23の接地側に電気的に接続された第2電極棒31と、第1電極棒27の下端部と第2電極棒31の下端部との間に電気的に接続するように連結された接続金具33とを備えている。また、各第1電極棒27は、前述の特許文献1(特開2004−143592号公報)に示すように、外側にセラミックス又は樹脂等の誘電体からなる外筒(図示省略)を有しており、各第2電極棒31の内部は、ガス供給源17に接続可能であって、各第2電極棒31の外周面には、基板エリアAに向かって材料ガスを噴出する複数の噴出孔(図示省略)が上下方向(第2電極棒31の長手方向)に沿って形成されている。
【0022】
なお、アレイアンテナ19に複数本のアンテナ素子としてU字形状の複数本の誘導結合型電極21を用いる代わりに、I字形状の複数本の誘導結合型電極又は複数本の容量結合型電極等を用いても構わない。
【0023】
図1及び図2に示すように、真空チャンバー3の内部の床面には、左右方向へ延びた一対のガイドレール35が設けられており、一対のガイドレール35には、台車37が左右方向へ移動可能に設けられている。換言すれば、真空チャンバー3の内部の床面には、台車37が一対のガイドレール35を介して左右方向へ移動可能に設けられている。また、台車37は、チャンバー本体7のサイド開口部7cを介して真空チャンバー3の内部に送り出し及び引き出し可能である。そして、台車37には、垂直状態の1枚又は2枚の基板Wを保持する枠状の複数の基板ホルダ39が前後方向に間隔を置いて立設されてある。なお、台車37を真空チャンバー3の内部における基準の台車送り出し位置(図2に示す位置)に送り出すことによって、各基板エリアAに基板Wがセットされるようになっている。
【0024】
図1及び図3に示すように、フロント壁9の内壁面及びリア壁11の内壁面には、基板Wを冷却する矩形の冷却パネル(第1冷却パネル)41がブラケット43を介してそれぞれ垂直に配設されおり、換言すれば、前端部側(前記配設方向の一端部側)の基板エリアAとフロント壁9の内壁面との間及び後端部側(前記配設方向の他端部側)の基板エリアAとリア壁11の内壁面との間には、冷却パネル41がブラケット43を介してそれぞれ垂直に配設されている。そして、各冷却パネル41の具体的な構成は、次のようになる。
【0025】
各冷却パネル41は、フロント壁9の内壁面又はリア壁11の内壁面にブラケット43を介して設けられた矩形の冷却パネル本体(第1冷却パネル本体)45を備えており、この冷却パネル本体45は、アルミ等の金属により構成されている。また、冷却パネル本体45は、片側(基板エリアAに対向する側)に基板Wからの輻射熱を吸収可能な吸収面45fを有してあって、冷却パネル本体45の吸収面45fには、アルミナ等のセラミックスのコーティング処理が施されている(図中において、コーティング処理を施した部位には、グレー着色を施してある)。更に、冷却パネル本体45の内部には、温調した冷却油(冷熱媒の一例)を循環させるための蛇行状の循環流路(第1循環流路)47が形成されており、冷却パネル本体45の吸収面45fは、冷却油の循環により温度制御可能になっている。そして、冷却パネル本体45の左側上端部には、循環流路47に冷却油を導入する導入管(第1導入管)49が一体的に設けられており、この導入管49は、フロント壁9の左部及びリア壁11の左部を気密的に挿通してある。更に、冷却パネル本体45の右側上端部には、循環流路47から冷却油を導出する導出管(第1導出管)51が設けられており、この導出管51は、フロント壁9の右部及びリア壁11の右部を気密的に挿通してある。
【0026】
なお、各冷却パネル41がフロント壁9の内壁面又はリア壁11の内壁面に垂直に配設される代わりに、一方のサイド壁13の内壁面に垂直に配設されるようにしても構わない。
【0027】
図1及び図4に示すように、天井壁15の内壁面における各隣接する基板エリアA間には、基板Wを冷却する矩形の中間冷却パネル(第2冷却パネル)53がブラケット55を介して垂直に配設されている。そして、各中間冷却パネル53の具体的な構成は、次のようになる。
【0028】
各中間冷却パネル53は、天井壁15の内壁面にブラケット55を介して設けられた矩形の中間冷却パネル本体(第2冷却パネル本体)57を備えており、この中間冷却パネル本体57は、アルミ等の金属により構成されている。また、中間冷却パネル本体57は、両側(前側及び後側)に基板Wからの輻射熱を吸収可能な吸収面57fをそれぞれ有してあって、中間冷却パネル本体57の各吸収面57fには、アルミナ等のセラミックスのコーティング処理が施されている(図中において、コーティング処理を施した部位には、グレー着色を施してある)。更に、中間冷却パネル本体57の内部には、温調した冷却油(冷熱媒の一例)を循環させるための蛇行状の中間循環流路(第2循環流路)59が形成されており、中間冷却パネル本体57の吸収面57fは、冷却油の循環により温度制御可能になっている。そして、中間冷却パネル本体57の左側上端部には、中間循環流路59に冷却油を導入する中間導入管(第2導入管)61が一体的に設けられており、この中間導入管61は、天井壁15の左部を気密的に挿通してある。更に、中間冷却パネル本体57の右側上端部には、中間循環流路59から冷却油を導出する中間導出管(第2導出管)63が一体的に設けられており、この中間導出管63は、天井壁15の右部を気密的に挿通してある。
【0029】
なお、各中間冷却パネル53が天井壁15の内壁面に垂直に配設される代わりに、一方のサイド壁13の内壁面に垂直に配設されるようにしても構わない。
【0030】
図3及び図5に示すように、真空チャンバー3の外側には、各冷却パネル本体45の循環流路47及び各中間冷却パネル本体57の中間循環流路59に温調した冷却油を循環させるサーキュレータ(循環ユニット)65が配設されている。そして、サーキュレータ65の往き側は、各冷却パネル41の導入管49及び各中間冷却パネル53の中間導入管61に往き回路(往き配管)67を介して接続されてあって、サーキュレータ65の戻り側は、各冷却パネル41の導出管51及び各中間冷却パネル53の中間導出管63に戻り回路(戻り配管)69を介して接続されている。また、サーキュレータ65は、サーキュレータ65の戻り側に配設されかつ冷却油と外気等とを熱交換する熱交換器71と、サーキュレータ65の往き側に配設されかつ冷却油を加熱するヒーター73と、熱交換器71とヒーター73との間に配設されかつ冷却油を圧送するポンプ75とを備えている。
【0031】
本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0032】
まず、サーキュレータ65によって各冷却パネル本体45の循環流路47及び各中間冷却パネル本体57の中間循環流路59に温調した冷却油を循環させる(換言すれば、各冷却パネル41及び各中間冷却パネル53を適宜に作動させる)ことにより、真空チャンバー3の内部の温度を所定の温度(本発明の実施形態にあっては、例えば100〜300℃)まで昇温させる。次に、台車37を真空チャンバー3の内部における基準の台車送り出し位置に送り出すことにより、各基板Wを対応する基板エリアAにセットする。続いて、真空圧発生源5によって真空チャンバー3の内部へ真空状態に減圧する。また、ガス供給源17によって真空チャンバー3の内部側へ材料ガスを供給することにより、各第2電極棒31の各噴出孔から基板エリアAに向かって材料ガスを噴射する。そして、高周波電源23によって各アレイアンテナ19に高周波波電力を供給することにより、各アレイアンテナ19の周辺にプラズマを発生させつつ、プラズマによって分解された材料ガスの成分を各基板Wの表面に付着させる。これにより、各基板Wの表面に非結晶シリコン膜又は微結晶シリコン膜等の薄膜を成膜(形成)することができる。
【0033】
ここで、成膜処理中に、サーキュレータ65によって各冷却パネル本体45の循環流路47に温調した冷却油を循環させることにより、前側(前記配設方向の一端部側)及び後側(前記配設方向の他端部側)の基板エリアAにセットされた基板(端部側の基板)Wからの輻射熱を冷却パネル本体45の吸収面45fによって吸収して、端部側の基板Wを冷却する。また、サーキュレータ65によって各中間冷却パネル本体57の中間循環流路59に温調した冷却油を循環させることにより、中間側(前記配設方向の中間側)の基板エリアAにセットされた基板(中間側の基板)Wからの輻射熱を中間冷却パネル本体57の吸収面57fによって吸収して、中間側の基板Wを冷却する。これにより、高周波電源23から各アレイアンテナ19に供給される高周波電力を大きくして、各アレイアンテナ19の周辺のプラズマ密度を高めても、各基板Wの表面温度が過度に上昇することを抑えて、各基板Wの表面温度を適正な温度範囲(本発明の実施形態にあっては、例えば150〜300℃)に保つことができる。
【0034】
特に、各冷却パネル本体45の吸収面45f及び各中間冷却パネル本体57の吸収面57fにセラミックスのコーティング処理が施されているため、各冷却パネル本体45の吸収面45f及び各中間冷却パネル本体57の吸収面57fの熱吸収率を高めて、各基板Wの表面温度が過度に上昇することを十分かつ確実に抑えることができる。
【0035】
従って、本発明の実施形態によれば、各アレイアンテナ19の周辺のプラズマ密度を高めても、各基板Wの表面温度を適正な温度範囲に保つことができるため、アレイアンテナ式のCVDプラズマ装置1の生産性を高いレベルまで向上させつつ、薄膜の品質を高めることができる。
【0036】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限るものでなく、次のように種々の態様で実施可能である。
【0037】
即ち、各冷却パネル本体45の吸収面45fが冷却油の循環より温度制御可能にする代わりに、熱源(冷熱源)からの熱伝達又はヒートパイプによる熱伝達により温度制御可能にしても構わない。同様に、各中間冷却パネル本体57の吸収面57fを冷却油の循環により温度制御可能にする代わりに、熱源からの熱伝達又はヒートパイプによる熱伝達により温度制御可能にしても構わない。また、冷却油の代わりに、冷却水等の別の冷熱媒(熱媒)を各冷却パネル本体45の循環流路47及び各中間冷却パネル本体57の中間循環流路59に循環させるようにしても構わない。
複数のアレイアンテナ19の前記配設方向を真空チャンバー3の奥行き方向(前後方向)とする代わりに、上下方向としても構わない。この場合には、各アレイアンテナ19における複数本の誘導結合型電極21は水平状態で同一平面上に前記配設方向に直交する方向(左右方向)へ間隔を置いて配設されると共に、各アレイアンテナ19の片側又は両側に水平状態の基板Wをセット可能な基板エリア(図示省略)が形成されることになる。また、冷却パネル41は前記配設方向の一端側の基板エリアと真空チャンバー3の内壁面との間及び前記配設方向の他端側の基板エリアと真空チャンバー3の内壁面との間にそれぞれ水平に配設されると共に、中間冷却パネル53は各隣接する基板エリアの間に水平に配設されることになる。
【0038】
そして、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0039】
A 基板エリア
W 基板
1 アレイアンテナ式のCVDプラズマ装置
3 真空チャンバー
5 真空圧発生源
7 チャンバー本体
7a チャンバー本体のフロント開口部
7b チャンバー本体のリア開口部
7c チャンバー本体のサイド開口部
9 フロント壁
11 リア壁
13 サイド壁
15 天井壁
17 ガス供給源
19 アレイアンテナ
21 誘導結合型電極
23 高周波電源
27 第1電極棒
31 第2電極棒
33 接続金具
35 ガイドレール
37 台車
39 基板ホルダ
41 冷却パネル
43 ブラケット
45 冷却パネル本体
45f 冷却パネル本体の吸収面
47 循環流路
49 導入管
51 導出管
53 中間冷却パネル
55 ブラケット
57 中間冷却パネル本体
57f 中間冷却パネル本体の吸収面
59 中間循環流路
61 中間導入管
63 中間導出管
65 サーキュレータ
71 熱交換器
73 ヒーター
75 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空雰囲気中でプラズマを発生させつつ、プラズマによって分解された材料ガスの成分を基板の表面に付着させることにより、基板の表面に薄膜を成膜するアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置において、
内部を真空状態に減圧可能な真空チャンバーと、
前記真空チャンバーの内部側へ材料ガスを供給するガス供給源と、
前記真空チャンバーの内部に予め設定した配設方向に間隔を置いて配設され、同一平面上に前記配設方向に直交する方向に間隔を置いて配列された複数本のアンテナ素子を備え、両側に基板をセット可能な基板エリアがそれぞれ形成され、プラズマを発生させる複数のアレイアンテナと、
各アレイアンテナに高周波電力を供給する高周波電源と、
前記配設方向の一端部側の前記基板エリアと前記真空チャンバーの内壁面との間及び前記配設方向の他端部側の前記基板エリアと前記真空チャンバーの内壁面との間にそれぞれ配設され、片側に基板からの輻射熱を吸収可能な吸収面を有し、基板を冷却する冷却パネルと、
隣接する前記基板エリア間に配設され、両側に基板からの輻射熱を吸収可能な吸収面をそれぞれ有し、基板を冷却する中間冷却パネルと、を具備したことを特徴とするアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置。
【請求項2】
各冷却パネルの内部に冷熱媒を循環させるための循環流路が形成され、前記中間冷却パネルの内部に冷熱媒を循環させるための中間循環流路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置。
【請求項3】
各冷却パネルの前記吸収面及び前記中間冷却パネルの前記吸収面にセラミックスのコーティング処理が施されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のうちのいずれかの請求項に記載のアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置。
【請求項4】
各アレイアンテナにおける各アンテナ素子は、U字状又は棒状の誘導結合型電極であることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載のアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−44044(P2013−44044A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184517(P2011−184517)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】