説明

アレルギー性鼻炎およびアレルギー性結膜炎を処置するためのTNFαのインヒビターおよび抗ヒスタミン薬の使用

被験体におけるアレルギー性結膜炎およびアレルギー性鼻炎を処置する方法が開示され、この方法は、薬学的に有効な量のHアンタゴニストおよび抗TNFa化合物を含む組成物をこの被験体に局所投与する工程を包含する。一局面において、このアレルギー性結膜炎は、季節性アレルギー性結膜炎;通年性アレルギー性結膜炎;巨大乳頭性結膜炎;春季結膜炎;および萎縮性角結膜炎からなる群より選択される。一局面において、このHアンタゴニストは、セチリジン;アゼラスチン;レボカバスチン;エメダスチン;オロパタジン;エピナスチン;ベポタスチン;ミゾラスチン;デスロラタジン;レボセチリジン;およびジメチンデンからなる群より選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、一般的に、腫瘍壊死因子α(TNFα)のインヒビター、抗ヒスタミン薬、医薬、ならびにアレルギー性結膜炎およびアレルギー性鼻炎の処置の分野に関する。より特には、本発明は、被験体のアレルギー性結膜炎およびアレルギー性鼻炎を処置または予防する方法に関し、この方法は、薬学的な有効量の抗TNFα剤および抗ヒスタミン剤を含む組成物を局所投与する工程を含む。
【背景技術】
【0002】
2.関連分野の説明
工業国において、人口の10〜15%超が、アレルギー性鼻炎および/または結膜炎に罹患している。アレルギー性鼻炎および/または結膜炎は、IgE抗体によって媒介されるI型アレルギー応答である。抗原に対するアレルギー応答の一部として、IgEが産生され、これは、IgEに特異的な高親和性Fcレセプターを介してマスト細胞および好塩基球の表面に結合する。IgE−分子を架橋する抗原は、予め形成された媒介物質(例えば、ヒスタミン)、脂質媒介物質の形成および放出、ならびにサイトカインの産生を含む細胞応答をもたらす。マスト細胞とその媒介物質は、アレルギー性炎症の開始および媒介の中心をなすと見なされ得る。
【0003】
アレルギー性鼻炎の臨床的な症状としては、くしゃみ、鼻づまり、鼻のかゆみ(nasal itching)および鼻漏が挙げられる。アレルギー性結膜炎の臨床的な症状としては、涙目の分泌物(watery discharge)、充血(redness)および眼瞼の浮腫が挙げられる。これらの症状は、迷惑な(nuisance)レベルから衰弱させるレベルまで強度が変動し得る。
【0004】
アレルギー性鼻炎は、しばしば、アレルギー性結膜炎、ならびに喘息、副鼻腔炎、アトピー性皮膚炎および鼻ポリープの存在のようなほかの障害または状態と同時に存在する。これらの全ては、生活の質の顕著な悪化をしばしばもたらし得る。
【0005】
ヒスタミンは、アレルギー性鼻炎およびアレルギー性結膜炎に関与してきた。ヒスタミンは、鼻粘膜の壁に存在するマスト細胞から放出される重要な媒介物質である。放出されると、ヒスタミンは、局所的なヒスタミンHレセプターに競合的に結合し、くしゃみ、鼻のかゆみおよび鼻の膜(nasal membrane)の腫脹を引き起こすことが知られている。抗ヒスタミン薬の主要な作用は、標的臓器の部位のHヒスタミンレセプターに競合的に結合し、それによってこれらのレセプターへヒスタミンが結合する能力をブロックする能力に関する。ヒスタミンレセプターへ結合する抗ヒスタミン化合物は、これら状態の徴候および症状を処置するのに有用であることが見出されている。これらの薬物の大半は、ヒスタミンに構造的に関連し、そのレセプターに結合し、それによってヒスタミンとそのレセプターとの相互作用を妨害する化合物である。
【0006】
従来のHレセプターアンタゴニスト(「Hアンタゴニスト」)は、アレルギー性結膜炎およびアレルギー性鼻炎を処置するために、抗ヒスタミン剤として広範に使用されている。Hアンタゴニストは、これらの状態に付随するかゆみ、くしゃみおよび炎症を含む、徴候および症状の一部を標的とする。Hレセプターアンタゴニストの1つの制限は、それらが、症状の一次的な短期間の軽減しか提供しない、単なる抗ヒスタミン薬であるということである。
【0007】
アレルギー性鼻炎のための他の治療としては、ロイコトリエンレセプターアンタゴニスト、うっ血除去薬、鼻用(nasal)コルチコステロイド、鼻腔内抗ヒスタミン薬、鼻腔内クロモリンおよび鼻腔内抗コリン作用剤(anticholinergic agent)が挙げられる。しかしながら、これらの治療は、ステロイド関連副作用(鼻用コルチコステロイド)、および直接的な抗ヒスタミン作用の不在(鼻腔内クロモリン、ロイコトリエンアンタゴニストおよび鼻腔内抗コリン作用剤)が挙げられる不利を有する。
【0008】
腫瘍壊死因子α(TNFα)は、アレルギー性鼻炎および結膜炎を含む、免疫応答および炎症応答において中心的な役割を担うことが示されているサイトカインである。TNFαは、17kDタンパク質サブユニットの可溶性ホモトリマーである(Smith、1987)。TNFαは、他の細胞型とともに、単核細胞およびマクロファージから得られる。TNFαの調節は、アレルギー性結膜炎、およびTNFαの活性化に関連する他の状態のための治療ストラテジとして提唱されている。
【0009】
アレルギー性結膜炎およびアレルギー性鼻炎の広範な発生数は、この状態の徴候および症状を緩和するのに有効な治療を発見することに対する継続的な必要性が存在することを意味する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要旨
本発明は、アレルギー性結膜炎およびアレルギー性鼻炎を処置するための新規な処方物および方法を提供することによって先行技術の欠点を克服する。特に、本発明者らは、Hアンタゴニストと抗−TNFα化合物との組み合わせによるアレルギー性鼻炎またはアレルギー性結膜炎の処置が、即時の軽減および長期間の軽減の両方を提供することを見出した。
【0011】
上記のアレルギー性結膜炎は、季節性アレルギー性結膜炎、通年性(perennial)アレルギー性結膜炎、春季結膜炎、巨大乳頭性結膜炎または萎縮性角結膜炎であり得る。
【0012】
特定の実施形態において、処置または予防される疾患はアレルギー性結膜炎であり、投与は、被験体の眼瞼の眼または眼周囲の皮膚の表面への局所的なものである。他の特定の実施形態において、処置または予防される疾患はアレルギー性鼻炎であり、治療剤は、例えば、点滴薬またはエアロゾルによって、鼻へ局所的に投与される。
【0013】
アレルギー性鼻炎およびアレルギー性結膜炎のための種々の広範な処置が利用可能であるが、多くは顕著な制限または副作用を有する。例えば、抗ヒスタミン製品は、抗ヒスタミン性であるのみで、アレルギー応答の炎症成分には対処せず、一方、鼻用コルチコステロイドは、ステロイド副作用が付随する。アレルギー性結膜炎およびアレルギー性鼻炎に対するより有効な治療に対する必要性が存在する。
【0014】
本発明者らは、被験体におけるアレルギー性結膜炎またはアレルギー性鼻炎を処置または予防するための新規な方法を特定し、この方法は、抗ヒスタミン薬と抗−TNFα化合物とを含む組成物の薬学的な有効量をこの被験体に投与する工程を包含する。
【0015】
いかなる理論にも拘束されることを望まないが、Hアンタゴニストと抗−TNFα化合物との組み合わせが、Hアンタゴニストに起因する、くしゃみ、浮腫、鼻のかゆみおよび鼻漏のような急性アレルギー作用からの即時の軽減、ならびにTNFα化合物に起因するアレルギー性炎症およびうっ血からの保護を提供すると考えられている。本発明の組み合わせ製品は、ステロイド誘発性副作用のリスクが全くない。
【0016】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなる。しかしながら、詳細な説明および具体的な実施例が、本発明の好ましい実施形態を示している一方で、例示のみの目的によって示されていることが理解されるべきである。なぜなら、本発明の精神および範囲内の種々の変更および改変が、この詳細な説明から当業者に明らかとなるからである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
例示的な実施形態の説明
本明細書で使用される場合、「a」または「an」は、1つ以上を意味し得る。特許請求の範囲において本明細書で使用される場合、語「含む(comprising)」と組み合わせて使用される時、語「a」または「an」は、1つまたは1つより多いを意味し得る。本明細書で使用される場合、「別の(another)」は、少なくとも第二以上のもの(a second or more)を意味し得る。
【0018】
A.Hアンタゴニスト
放出された場合、ヒスタミンは、局所的なヒスタミンHレセプターに競合的に結合し、くしゃみ、鼻のかゆみおよび鼻の膜の腫脹を引き起こすことが知られている。「第一世代抗ヒスタミン薬」とは、標的臓器の部位のHヒスタミンレセプターに競合的に結合し、それによって、これらのレセプターに結合するヒスタミンの能力をブロックする薬剤をいう。これらのいわゆる第一世代抗ヒスタミン薬の例としては、ブロムフェニラミン、ジフェンヒドラミン、プロメタジンおよびヒドロキシジンが挙げられる。
【0019】
第一世代抗ヒスタミン薬は、くしゃみ、かゆみ、および初期のアレルギー応答の他の症状を予防および軽減するのに有効であることが証明されているが、アレルギー性鼻炎の代表的な症状である鼻づまりの軽減にさほど効果が見出されていない。
【0020】
抗ヒスタミン薬の鎮静性の(sedating)副作用は、いわゆる第二世代抗ヒスタミン薬の開発および市販を刺激した。例としては、ロラタジン、セチリジン、テルフェナジン、アステミゾール、アゼラスチン、フェキソフェナジンが挙げられる。これらの薬剤は、第一世代抗ヒスタミン薬よりも脂肪親和性が低く、このことは、血液脳関門を横切り、それによって鎮静を引き起こすそれらの能力に低減を付与する。これらの第二世代抗ヒスタミン薬のうちのいくつかは、抗コリン作用性効果の同時の減損、したがって鼻漏を制御する効力の低下を有する。
【0021】
抗ヒスタミン薬の第三世代としては、第二世代抗ヒスタミン薬の代謝産物または異性体のいずれかである薬剤が挙げられる。例としては、デスロラタジン(desloratadine)およびレボセチリジン(levocetirizine)が挙げられる。第二世代抗ヒスタミン薬と比較したこれらの利点は、改善された安全性のプロファイルおよび抗ムスカリン/抗コリン作用性効果の低下に見られる。
【0022】
局所(鼻用)ヒスタミンH−レセプターアンタゴニスト、アゼラスチン、レボカバスチンおよびジメチンデン(dimetinden)は、確立された抗鼻炎治療である。アゼラスチンは、広いスペクトルの抗アレルギー活性を有する、薬理学的に異なるヒスタミンH−レセプターアンタゴニストである。アゼラスチンおよびレボカバスチンは、鼻スプレー処方物として世界中で利用可能であり、アレルギー性鼻炎の処置に関して認可されている。アゼラスチンはまた、米国において非アレルギー性血管運動神経性鼻炎を処置するために利用可能である。
【0023】
好ましいHレセプターアンタゴニストとしては、セチリジン、アゼラスチン、レボカバスチン、エメダスチン、オロパタジン、エピナスチン、ベポタスチン、ミゾラスチン(mizolastine)、デスロラタジン、レボセチリジンおよびジメチンデンが挙げられる。エメダスチン、エピナスチンおよびオロパタジンが最も好ましい。
【0024】
B.抗−TNF
「抗−TNF化合物」とは、インビボまたはインビトロでTNF活性を低下させるか、ブロックするか、阻害するか、無効にするか(abrogate)または妨害する薬剤をいうように本明細書で定義される。したがって、例えば、抗−TNFαは、TNFαの作用をブロックするか、減じるか、または阻害する薬剤である。例えば、この抗−TNFαは、TNFα合成のインヒビター(例えば、PDE4インヒビター、JAK3インヒビターまたはp38キナーゼインヒビター)、TNFαアンタゴニスト(例えば、小分子)(例えば、TNFレセプターへのTNFαの結合を阻害する薬剤)、抗体(例えば、抗−TNF抗体または抗−TNFレセプター抗体)またはTNFαシンク(sink)(例えば、可溶性レセプター)であり得る。一般的に、抗−TNFαは、小分子、ペプチド、タンパク質、抗体、DNA、RNA(例えば、siRNAまたはmRNA)またはオリゴヌクレオチドであり得る。当業者は、このクラスの薬剤に精通している。
【0025】
腫瘍壊死因子(TNF)は、活性化されたマクロファージ(TNF−α)、マスト細胞および一部のT細胞(TNF−β)によって産生されるサイトカインであり、これは、炎症活性、免疫調節活性、増殖活性、細胞傷害活性および抗ウイルス活性を含む広範な範囲の生物学的活性を誘発する。本明細書で使用される用語「ヒトTNFα」とは、17kDの分泌形態および26kDの膜結合形態として存在するヒトサイトカインをいうことが意図され、その生物学的に活性な形態は、非共有結合的に結合した17kDの分子の三量体からなる。ヒトTNFαの構造は、Pennicaら(1984);Davisら(1987);およびJonesら(1989)にさらに記載される。
【0026】
例えば、「抗−TNFα」としては、TNFαを結合し得る薬剤(例えば、抗−TNFα抗体)が挙げられる。抗−TNFαとして、TNFαに特異的に結合するレセプター分子も挙げられる。抗−TNFαとしてはまた、TNFα合成および/またはTNFα放出を防止または阻害し得る薬剤も挙げられる。
【0027】
本明細書に示される方法に包含される特定のTNFαアンタゴニストとしては、エタネルセプト(Wyeth−Ayerst Laboratories/ImmunexからENBREL(RTM)として販売される);インフリキシマブ(CentocorからREMICADE(RTM)として販売される抗−TNFキメラMab);D2E7ヒトMab(Cambridge Antibody Technology);アダリムマブ(adalimumab)(AbbottによってHUMIRA(RTM)として販売される)、CDP−870、CDP−571、Humicade(米国特許第5,994,510号に記載されるヒト化Mabである(Celltech));PEG化可溶性TNFαレセプター−1(Amgen);TNF結合タンパク質であるTBP−1(Ares Serono);抗−TNFαポリクローナル抗体であるPASSTNF−α(RTM)(Verigen);TNFR−Ig融合タンパク質であるイエネルセプト(ienercept)(RocheからTENEFUSE(RTM)として販売される);CytoTAb(RTM)(Protherics);小分子TNFα変換酵素インヒビターであるTACE(Immunex);小分子TNF mRNA合成インヒビター(Nereus);PEG化p75 TNFR Fcムテイン(Immunex);およびTNFαアンチセンスインヒビターが挙げられる。
【0028】
当業者は、抗−TNFαとして分類され得るクラスの薬剤に精通している。抗−TNFαの例に関するさらなる詳細は、以下に示される。
【0029】
1.TNFα合成のインヒビター
a.PDE4インヒビター
環状ヌクレオチド特異的ホスホジエステラーゼ(PDE)は、種々の環状ヌクレオシド一リン酸(cAMPおよびcGMPを含む)の加水分解を触媒する酵素の1ファミリーを代表する。PDE酵素は、cAMPまたはcGMPの加水分解に対するそれらの特異性、カルシウム、カルモジュリンまたはcGMPによる制御に対するそれらの感受性および種々の化合物によるそれらの選択的な阻害にしたがって、11のファミリーにグループ分けされ得る。PDE4はcAMP特異的であり、その阻害は、気道の弛緩、抗炎症活性および抗うつ活性を引き起こす。PDE4酵素ファミリーは4つの遺伝子から構成され、これらは、PDE4A、PDE4B、PDE4CおよびPDE4Dと呼ばれるPDE4酵素の4つのアイソフォームを生成する(Wangら、1997)。ホスホジエステラーゼ(PDE)のインヒビターは、TNFα合成を阻害する薬剤の1クラスである。
【0030】
PDE4アイソエンザイムは、細胞の細胞質ゾルに局在し、いかなる既知の膜様構造にも結合しない。PDE4アイソエンザイムは、アデノシン5’−一リン酸(AMP)へのcAMPの加水分解を触媒することによってcAMPを特異的に不活化する。cAMP活性の制御は、炎症および記憶を含む多くの生物学的プロセスにおいて重要である。
【0031】
PDE4アイソエンザイムのインヒビター(例えば、ロリプラム(rolipram)、ピクラミラスト(piclamilast)、CDP−840およびアリフロ(ariflo)は、TNFα合成を阻害する強力な抗炎症剤である。ロリプラムのような化合物に加えて、キサンチン誘導体(例えば、ペントキシフィリン、デンブフィリン(denbufylline)およびテオフィリン)はPDE4を阻害する。
【0032】
本明細書に示される方法によって包含されることが企画されるPDE4のさらなるインヒビターとしては、N−置換ジアリールアミン化合物のピリジンN−オキシドアナログ(米国特許第7,087,625号に記載される)、置換8−アリールキノリンホスホジエステラーゼ−4インヒビター(米国特許第6,740,666号に記載される)、アルキン−アリールホスホジエステラーゼ−4インヒビター(米国特許第6,743,802号に記載される)、1−アリール−1,8−ナフチリジン−4−オンホスホジエステラーゼインヒビター(米国特許第6,677,351号および同第6,541,480号に記載される)、ヒドロキシインドール(米国特許第RE38,624号、同第6,613,794号および同第6,602,890号に記載される)、フタラジン誘導体(米国特許第6,589,951号に記載される)、三環式フタラジン誘導体(米国特許第6,525,055号に記載される)、ベンザジン誘導体(米国特許第6,358,973号に記載される)、テトラヒドロフラニルオキシ置換基を有するベンズアミド(米国特許第6,303,789号)、ジアゼピノインドロン(米国特許第6,239,130号に記載される)、1−オキソ−1−3−置換フェニル−1,4−ジヒドロ−1,8−ナフチリジン−3−カルボキサミドホスホジエステラーゼ−4インヒビター(米国特許出願公開第20060058316号に記載される)、N−置換ジアリールアミン(米国特許出願公開第20050222207号に記載される)、アルキン−アリールホスホジエステラーゼ−4インヒビター(米国特許出願公開第20050070569号に記載される)およびナフチリジン誘導体(米国特許出願公開第20040254212号に記載される)が挙げられる。この段落に示される特許および特許出願の各々は、その全体が参考として本明細書に具体的に援用される。
【0033】
PDE4のさらなるインヒビターが、当業者に公知の任意の方法を使用して同定され得る。このような方法の例としては、米国特許第6,909,002号および米国特許出願公開第20060019981号(これらの各々は、その全体が参考として本明細書に援用される)に示される方法が挙げられる。
【0034】
b.JAK3インヒビター
TNFα産生を阻害する薬剤の別のクラスとしては、Janusキナーゼ3(JAK3)インヒビターが挙げられる。JAK3は、共通鎖(common chain)(gammac)を使用するサイトカインレセプターからのシグナル変換を媒介する。gammacまたはJAK3をコードする遺伝子の突然変異は、免疫欠損をもたらす。Janusキナーゼ3(Jak3)は、造血細胞で発現されるチロシンキナーゼであり、これは、共通のγ鎖と結合し、インターロイキン−2(IL−2)、IL−4、IL−7、IL−9、IL−15およびIL−21を含むサイトカインのファミリーのためのシグナル伝達に必要とされる;Jak3またはγ共通鎖のいずれかの欠損は、重症複合型免疫不全(SCID)をもたらす。JAK3は、樹状細胞のサイトカイン産生および生存を負に制御することが見出されている(Yamaokaら、2005)。
【0035】
例示的なJAK3インヒビターとしては、タクロリムス、CP−690550、WHI−P131、WHIP−97、WHIP−154、AG490、PS−608504およびPNU156804が挙げられる。さらなる例示的なJAK3インヒビターとしては、
【0036】
【化1】

2−(1H−ベンズイミダゾール−1−イル)−9−[1(R)−(3−ピリジル)エチル]−8,9−ジヒドロ−7H−プリン−8−オン;
【0037】
【化2】

2−(1H−ベンズイミダゾール−1−イル)−9−[4−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1(R)−イル]−8,9−ジヒドロ−7H−プリン−8−オン;
【0038】
【化3】

1−[9−[6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−4(R)−イル]−8−オキソ−8,9−ジヒドロ−7H−プリン−2−イル]−1H−ベンズイミダゾール−6−カルボニトリル;
【0039】
【化4】

1−[9−[7−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−4(R)−イル]−8−オキソ−8,9−ジヒドロ−7H−プリン−2−イル]−1H−ベンズイミダゾール−6−カルボニトリル;および
【0040】
【化5】

2−(1H−ベンズイミダゾール−1−イル)−9−[5,8−ジフルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−4(R)−イル]−8,9−ジヒドロ−7H−プリン−8−オンが挙げられる。
【0041】
c.p38キナーゼインヒビター
p38キナーゼインヒビターは、既知のクラスの化合物である。適切なp38キナーゼインヒビターとしては、3(5)−ヘテロアリール置換ピラゾール(米国特許第5,932,425号)が挙げられる。さらなるp38キナーゼインヒビターとしては、1−(5−tert−ブチル−2−p−トリル−2H−ピラゾール−3−イル)−3−[4−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)ナフタレン−1−イル]尿素(BIRB 796);SB202190;SB203580;VX−745;およびVX−702が挙げられる。なお他のp38キナーゼインヒビターとしては、米国特許第7,189,731号;同第7,183,287号;同第7,173,129号;同第7,135,575号;同第7,067,540号;同第6,979,693号;同第6,696,471号;同第6,630,485号;同第6,579,874号;同第6,479,507号;同第6,444,696号;および同第6,316,464号(これらの全体の内容は、参考として各々具体的に援用される)に開示されるものが挙げられる。
【0042】
2.TNFアンタゴニスト
「TNFアンタゴニスト」とは、TNFレセプターへのTNFの結合を阻害するか、または減じる薬剤をいうように本明細書で定義される。この薬剤は、例えば、小分子、ペプチド、タンパク質、抗体、DNAまたはRNAであり得る。
【0043】
a.抗体
特定の実施形態において、上記のTNFαアンタゴニストは抗体である。用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、キメラ抗体、可溶性形態または結合形態で標識され得る抗体に対する抗−イディオタイプ(抗−Id)抗体、ならびに、任意の公知の技術(例えば、酵素開裂、ペプチド合成または組換え技術だが、これらに限定されない)によって提供される、それらのフラグメント、領域または誘導体を包含するように本明細書で定義される。抗−TNF抗体としては、TNFレセプターに対するTNFの結合が阻害されるように、TNFまたはTNFレセプターの一部に結合することができる抗体が挙げられる。抗−TNFα抗体とは、TNFαレセプターへのTNFαの結合が阻害されるように、TNFαレセプターに対するTNFαの一部に結合することができる抗体をいう。
【0044】
「ポリクローナル抗体」とは、抗原で免疫化された動物の血清から得られる抗体分子の不均質な集団をいうように本明細書で定義される。「モノクローナル抗体」は、抗原に特異的な抗体の実質的に均質な集団を含み、この集団は、実質的に同様なエピトープ結合部位を含む。Mabは、当業者に公知な方法によって取得され得る。例えば、KohlerおよびMilstein、1975;米国特許第4,376,110号;Ausubelら、1992);HarlowおよびLane 1988;Colliganら、1993(これらの内容は、参考として各々本明細書に具体的に援用される)を参照のこと。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、GILD、およびそれらの任意のサブクラスを含む、任意の免疫グロブリンクラスであり得る。本発明のmAbを生成するハイブリドーマは、インビトロ、インサイチュまたはインビボで培養され得る。インビボまたはインサイチュでの高力価のmAbの生成は、これを現行の好ましい生成方法にする。
【0045】
「キメラ抗体」は、分子の異なる部分が異なる動物種から得られる、分子(例えば、マウスmAbに由来する可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有するもの)であり、これらは、適用における免疫原性を低減し、生成における収量を増大させるために主に使用される。キメラ抗体およびそれらの生成方法は、当該分野において公知である。生成の例示的な方法は、Cabillyら、1984;Boulianneら、1984;およびNeubergerら、1985(これらの各々は、それらの全体が参考として本明細書に援用される)に記載される。
【0046】
「抗−イディオタイプ抗体」(抗−Id)は、抗体の抗原結合部位と一般的に結合する固有の決定基を認識する抗体である。Id抗体は、mAbの供給源と同一の種および遺伝型の動物(例えば、マウス系統)を、抗−Idが調製されるmAbで免疫化することによって調製され得る。免疫化された動物は、これらのイディオタイプ決定基に対する抗体(抗−Id抗体)を産生することによって、免疫化した抗体のイディオタイプ決定基を認識し、そして応答する。このような抗体を生成する例示的な方法は、米国特許第4,699,880号(これは、参考として全体的に本明細書に援用される)に見出される。本発明の抗−TNF抗体は、重鎖定常領域、重鎖可変領域、軽鎖可変領域および軽鎖定常領域のうちの少なくとも1つを含み得、ここで、ポリクローナルAb、モノクローナルAb、それらのフラグメントおよび/または領域は、TNFの一部に結合し、少なくとも1つのTNFの生物学的活性を阻害および/または中和する、少なくとも1つの重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含む。
【0047】
抗−TNF抗体は、ヒトTNFαに対してインビボでの強力な阻害および/または中和活性を有する、高親和性のヒト−マウスキメラ抗−TNF抗体およびそれらのフラグメントまたは領域を含む。このような抗体およびキメラ抗体は、精製された組換えヒトTNFαまたはそのペプチドフラグメントを使用する免疫化によって生成されたものを含み得る。
【0048】
抗−TNFα抗体を含む、抗−TNF抗体および抗−TNF抗体の生成方法についてのさらなる情報は、米国特許出願公開第20060153846号、米国特許出願公開第20060140949号、米国特許出願公開第20060121037号、米国特許出願公開第20060024310号、米国特許出願公開第20060024308号、米国特許出願公開第20060018907号、米国特許出願公開第20050123541号、米国特許第7,101,674号、米国特許第7,060,800号、米国特許第7,057,022号、米国特許第6,991,791号、米国特許第6,835,823号、米国特許第6,790,444号、米国特許第6,277,969号および米国特許第6,270,766号(これらの全体の内容は、参考として各々具体的に援用される)に見出され得る。
【0049】
好ましい抗体は、組換えヒト抗体である。最も好ましいのは、インフリキシマブ(REMICADE(RTM)の活性成分)およびアダリムマブ(HUMIRA(RTM)の活性成分)である。
【0050】
b.他のTNFαアンタゴニスト
他のTNFαアンタゴニストは、TNFの成熟を妨害することによって作用し得る。TNF変換酵素(TACE)の活性を阻害するメタロプロテアーゼインヒビターは、TNFの成熟を妨害することが報告されている。これらのインヒビターの例は、米国特許第5,872,146号(これは、参考として本明細書に援用される)に示される。米国特許第5,981,701号および同第5,695,953号(これらは、参考として本明細書に援用される)は、TNFと相互作用し得、細胞へのTNFの結合を阻害し得る非タンパク質分解性のペプチドを記載する。
【0051】
TNFαアンタゴニストとしてはまた、TNFの、その細胞結合レセプター(cell bound receptor)への結合を競合的に阻害する可溶性TNFレセプターが挙げられる。例えば、エタネルセプト(Immunex Corporation,Seattle,Wash.からENBREL(RTM)として販売される)は、TNFと特異的に結合し、細胞表面TNFレセプターとTNFとの相互作用をブロックする。TNFR1(p55)およびTNFR2(p75)の両方の可溶性の細胞外部分は、天然でTNFαに結合し、単独でかまたは別の分子に結合させて、本明細書に示される別のTNFαアンタゴニストとして使用され得る。これらのレセプターのうちの一方または両方の可溶性フラグメントを組み込むTNFαアンタゴニストは、米国特許第5,482,130号および同第5,514,582号(これらの両方が、参考として本明細書に援用される)に示される。
【0052】
TNFαアンタゴニストとしてはまた、TNFシグナル伝達を阻害する化合物が挙げられる。例えば、これらとしては、TNFレセプターの細胞内ドメインへの結合を阻害し、したがってこのレセプターによるシグナル変換を阻害または調節するポリペプチドが挙げられ得る。これらのインヒビターは、米国特許第5,948,638号;同第5,891,675号;同第5,852,173号;同第5,849,501号;同第5,843,675号;同第5,712,381号;同第5,563,039号;同第5,789,550号;および同第5,708,142号(これらの各々は、参考として本明細書に援用される)に記載される。
【0053】
他の適切なTNFαアンタゴニストとしては、組織内のTNFαのレベルを低減する薬剤が挙げられ、そして、米国特許第5,994,620号;同第5,981,701号;同第5,594,106号;同第5,336,603号および同第4,565,397号(これらの各々は、参考として本明細書に援用される)に記載される化合物が挙げられる。
【0054】
C.疾患の処置
1.定義
「処置」および「処置すること」とは、疾患または健康に関連する状態の治療上の利益を取得する目的のための、被験体への治療剤の投与または適用、あるいは被験体に対する手順または様式の実行をいう。処置することは、状態(state)、障害または状態(condition)を抑制すること(すなわち、疾患または少なくとも1つのその臨床的な症状もしくは不顕性の症状の発症を停止または低減すること)、あるいは疾患を軽減すること(すなわち、状態(state)、障害または状態(condition)またはその臨床的な症状もしくは不顕性の症状のうちの少なくとも1つの後退を引き起こすこと)を含む。処置される被験体に対する利益は、患者または医師に対して統計的に有意であるか、または少なくとも認知できるかのいずれかである。例えば、本発明の文脈において、アレルギー性結膜炎は、眼の表面に薬学的な有効量の抗ヒスタミンおよび抗−TNFを局所的に塗布して、かゆみ、充血および結膜の刺激を低減することによって処置され得る。
【0055】
この出願を通して使用される用語「治療上の利益」または「治療上有効な」とは、被験体の状態の医療処置に関して、被験体の健康を促進または亢進する任意のものをいう。このことは、疾患の徴候または症状の頻度または重篤度の低減を含むが、これに限定されない。例えば、アレルギー性鼻炎の処置に関して、鼻漏の減少が存在する場合、治療上の利益が取得される。
【0056】
「薬学的な有効量」は、状態(state)、障害または状態(condition)を処置するために哺乳動物に投与される場合に、このような処置を達成するのに十分である化合物の量を意味する。「薬学的な有効量」は、化合物、疾患およびその重篤度、ならびに処置されるべき哺乳動物の年齢、体重、身体の状態および応答性に依存して変動する。
【0057】
2.処置されるべき疾患
本明細書に示される方法は、アレルギー性結膜炎またはアレルギー性鼻炎の処置に適用され得る。結膜炎は、個体の一方または両方の眼の結膜を冒す炎症疾患である。症状および徴候としては、眼の充血、流涙、分泌物、刺激およびかゆみが挙げられる。アレルギー性結膜炎は、季節性アレルギー性結膜炎、通年性アレルギー性結膜炎、巨大乳頭性結膜炎、萎縮性角結膜炎または春季結膜炎であり得る。鼻炎は、鼻の内層(lining)の炎症であり、これは、アレルギーまたは他の因子(例えば、タバコの煙、温度の変化、運動およびストレス)によって引き起こされ得る。症状としては、くしゃみ、鼻づまり、鼻のかゆみおよび鼻漏が挙げられる。
【0058】
D.薬学的組成物および投与の経路
本発明の一実施形態は、Hアンタゴニストおよび抗−TNFα化合物を含む組成物の薬学的な有効量を被験体に投与することによって、アレルギー性結膜炎またはアレルギー性鼻炎を処置する方法を含む。投与は、眼または鼻に対して局所的である。本明細書に使用されるように、眼に対する局所的な投与は、眼に滴下もしくは配置されるか、または眼瞼の下に配置される局所組成物、ならびに眼周囲の皮膚および眼瞼の表面に塗布される組成物を含む。本明細書に使用されるように、鼻に対して局所的な投与は、鼻孔および鼻道(nasal passage)への垂下(drop)または噴霧によって組成物を送達する工程を含む。
【0059】
組成物に含まれるか、または本明細書に示される方法で適用される薬物の量は、薬学的に有効ないかなる量でもあり、選択した薬物の個性および効力を含む多くの因子に依存する。当業者は、薬物の薬学的に有効な用量を決定することに関与する因子に精通している。
【0060】
特定の実施形態において、治療剤(抗−TNFαおよび/または抗ヒスタミン薬)の総濃度は、処方物中、約5%(w/v)以下である。一般的に、本発明の組成物中の、Hアンタゴニストの濃度は、0.0001%〜0.5%(w/v)、好ましくは0.01%〜0.2%(w/v)、そして最も好ましくは0.05%〜0.2%(w/v)である一方、抗−TNFα化合物の濃度は、0.0001%〜5%(w/v)、好ましくは0.001%〜1%(w/v)、そして最も好ましくは0.01%〜0.5%(w/v)である。
【0061】
1.眼科用処方物
特定の実施形態において、上記組成物は、哺乳動物の眼への局所適用に適切である。例えば、眼科投与(ophthalmic administration)に関して、処方物は、溶液、懸濁物、ゲルまたは軟膏であり得る。この組成物は、好ましくは、点滴薬の形態での水溶液に、眼への局所適用のために処方される。用語「水性」は、代表的に、そのキャリアが、>50重量%の程度の水、より好ましくは>75重量%の程度の水、そして特に>90重量%の程度の水である水性組成物を意味する。これらの点滴薬は、好ましくは無菌であり得、したがって処方物の静菌成分が不要とされ得る、単回用量のアンプルから送達され得る。これらの点滴薬は、特に、その組成が保存剤成分を含む場合に、多回用量容器からも送達され得る。あるいは、この点滴薬は、処方物が送達される場合に、処方物から保存剤を抽出するデバイス(このようなデバイスは、当該分野で公知である)を好ましくは含み得る、多回用量ボトルから送達され得る。
【0062】
他の局面において、本発明の成分は、眼瞼の下に配置される溶解性の挿入物(dissolvable insert)を形成する濃縮ゲルまたは同様なビヒクルとして眼に送達され得る。
【0063】
加えて、上記の成分は、スキンクリーム、ゲル、軟膏またはローション処方物で眼瞼の外側および眼周囲の皮膚に配置され得る。
【0064】
活性成分に加えて、本発明の組成物は、賦形剤を含み得る。例えば、この組成物は、1つ以上の薬学的に受容可能な緩衝剤、保存剤(保存補助剤(preservative adjunct)を含む)、張度調整剤(tonicity−adjusting agent)、界面活性剤、可溶化剤、安定化剤、鎮痛増進剤(comfort−enhancing agent)、ポリマー、皮膚軟化薬、pH調整剤および/または滑沢剤を含み得る。
【0065】
適切な緩衝剤としては、リン酸塩、ホウ酸塩、クエン酸塩および酢酸塩などが挙げられる。保存剤の例としては、四級アンモニウム化合物、例えば、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンゾドデシニウムもしくはポリクオタニウム(polyquaternium)−1が挙げられる。保存剤の他の例としては、過ホウ酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、例えば、メチルパラベンもしくはプロピルパラベンのようなパラベン、例えば、クロロブタノール、ベンジルアルコールもしくはフェニルエタノールのようなアルコール、例えば、クロルヘキシジンもしくはポリヘキサメチレンビグアナイドのようなグアニジン誘導体、過ホウ酸ナトリウムまたはソルビン酸が挙げられる。適切な張度調整剤としては、マンニトール、塩化ナトリウム、グリセリンおよびソルビトールなどが挙げられる。適切な界面活性剤としては、イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤が挙げられるが、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート、ポリエトキシ化ヒマシ油誘導体およびオキシエチル化三級オクチルフェノールホルムアルデヒドポリマー(チロキサポール))が好ましい。適切なキレート剤としては、エデト酸ナトリウムなどが挙げられる。適切な抗酸化剤としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸塩、BHAおよびBHTが挙げられる。
【0066】
局所的な眼科用組成物は、好ましくは等張であるか、あるいは、蒸発および/または疾患によって引き起こされるあらゆる涙の高張性に対処するために、わずかに低張である。本発明の組成物は、一般的に220〜320mOsm/kgの範囲の重量オスモル濃度を有し、そして好ましくは、235〜260mOsm/kgの範囲の重量オスモル濃度を有する。本発明の組成物は、5〜9、好ましくは、6.5〜7.5、そして最も好ましくは6.8〜7.4の範囲のpHを有する。
【0067】
特定の実施形態において、治療剤は、1つ以上の代用涙液(tear substitute)を含む組成物中に処方される。種々の代用涙液が、当該分野で公知であり、それらとしては、グリセロール、プロピレングリコールおよびエチレングリコールのような単量体のポリオール;ポリエチレングリコールのような重合体のポリオール;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびヒドロキシプロピルセルロースのようなセルロースエステル;デキストラン(例えば、デキストラン70);水溶性タンパク質(例えば、ゼラチン);ビニルポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびポビドン);およびカルボマー(例えば、カルボマー934P、カルボマー941、カルボマー940およびカルボマー974P)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の処方物は、コンタクトレンズまたは他の眼科用製品と共に使用され得る。
【0068】
2.鼻用処方物
特定の実施形態において、本発明の組成物は、鼻に局所的に投与される。局所的な鼻用組成物は既知であり、これとしてはエアロゾルおよび水性のスプレーまたはミスト(mist)が挙げられる。眼科用組成物の場合と同様に、鼻用組成物は、賦形剤を含み得る。例えば、この組成物は、1つ以上の薬学的に受容可能な緩衝剤、保存剤(保存補助剤を含む)、張度調整剤、界面活性剤、可溶化剤、安定化剤、鎮痛増進剤、ポリマー、皮膚軟化薬、pH調整剤および/または滑沢剤を含み得る。
【実施例】
【0069】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含められている。以下の実施例に開示される技術が、本発明の実施において良好に機能する、本発明者によって発見された技術を代表し、したがって、本発明の実施のための好ましい様式を構成するとみなされ得ることが当業者によって認識されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示を鑑みて、多くの変更が、開示される具体的な実施形態になされ得、依然として本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を取得し得ることを認識すべきである。
【0070】
実施例1−局所的な眼科用組成物
【0071】
【表1】

*組成物が、多回用量の使用のために包装される場合。
【0072】
実施例2−局所的な鼻用組成物
【0073】
【表2】

*組成物が、多回用量の使用のために包装される場合。
【0074】
実施例3−軟膏組成物
【0075】
【表3】

実施例4−ローション組成物
【0076】
【表4】

実施例5−水性ゲル組成物
【0077】
【表5】

本明細書に開示され、特許請求される方法の全ては、本開示を鑑みて過度の実験を行うことなく実行され得る。本発明の方法は好ましい実施形態に関して記載されているが、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、変形が、本明細書に記載される方法の工程または工程の順序に適用され得ることが、当業者に明らかである。より具体的には、化学的および生理学的の両方で関連する特定の薬剤が、本明細書に記載の薬剤の代わりに使用され得るが、同一または同様な結果が達成されることが明らかである。当業者に明らかな、全てのこのような同様な置換および改変が、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神、範囲および概念内であるとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト被験体のアレルギー性結膜炎またはアレルギー性鼻炎を処置するための方法であって、該方法は、該被験体の眼または鼻に、薬学的に有効な量のHアンタゴニストおよび薬学的に有効な量の抗−TNFα化合物を含む組成物を局所投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記アレルギー性結膜炎が、季節性アレルギー性結膜炎;通年性アレルギー性結膜炎;巨大乳頭性結膜炎;春季結膜炎;および萎縮性角結膜炎からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Hアンタゴニストが、セチリジン;アゼラスチン;レボカバスチン;エメダスチン;オロパタジン;エピナスチン;ベポタスチン;ミゾラスチン;デスロラタジン;レボセチリジン;およびジメチンデンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記Hアンタゴニストが、エメダスチン;オロパタジン;およびエピナスチンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗−TNFα化合物が、TNFα合成のインヒビターおよびTNFαアンタゴニストからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗−TNFα化合物が、TNFα合成のインヒビターからなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記抗−TNFα化合物が、PDE4インヒビター;JAK3インヒビター;およびp38キナーゼインヒビターからなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗−TNFα化合物が、PDE4インヒビターからなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗−TNFα化合物が、JAK3インヒビターからなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記抗−TNFα化合物が、タクロリムス;CP−690550;WHI−P131;WHIP−97;WHIP−154;AG490;PS−608504;PNU156804;2−(1H−ベンズイミダゾール−1−イル)−9−[1(R)−(3−ピリジル)エチル]−8,9−ジヒドロ−7H−プリン−8−オン;2−(1H−ベンズイミダゾール−1−イル)−9−[4−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1(R)−イル]−8,9−ジヒドロ−7H−プリン−8−オン;1−[9−[6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−4(R)−イル]−8−オキソ−8,9−ジヒドロ−7H−プリン−2−イル]−1H−ベンズイミダゾール−6−カルボニトリル;1−[9−[7−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−4(R)−イル]−8−オキソ−8,9−ジヒドロ−7H−プリン−2−イル]−1H−ベンズイミダゾール−6−カルボニトリル;および2−(1H−ベンズイミダゾール−1−イル)−9−[5,8−ジフルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−4(R)−イル]−8,9−ジヒドロ−7H−プリン−8−オンからなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗−TNFα化合物が、p38キナーゼインヒビターからなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記抗−TNFα化合物が、TNFαアンタゴニストからなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記抗−TNFα化合物が、抗−TNFα抗体からなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記抗−TNFα化合物が、インフリキシマブおよびアダリムマブからなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗−TNFα化合物がエタネルセプトである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記抗−TNFα化合物が、エタネルセプト;インフリキシマブ;およびアダリムマブからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記Hアンタゴニストの薬学的に有効な量が、0.001%〜1%(w/v)である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記Hアンタゴニストの薬学的に有効な量が、0.05%〜0.2%(w/v)である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗−TNFα化合物の薬学的に有効な量が、0.1%〜8%(w/v)である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記抗−TNFα化合物の薬学的に有効な量が、1%〜5%(w/v)である、請求項19に記載の方法。

【公表番号】特表2010−523695(P2010−523695A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503203(P2010−503203)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/059885
【国際公開番号】WO2008/127975
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】