アンカー部材及びアンカー器具
【課題】アンカー部材のねじ軸からの脱落をより確実に防止することができるアンカー器具及びこれに用いるアンカー部材を提供する。
【解決手段】ねじ軸10に螺合するナット20に取り付けられ、ボード100に形成された挿通孔110に挿通可能なアンカー部材30であって、ナット20を収容しナット20と一体となってねじ軸10の軸心周りに回転するナット収容部33と、ナット収容部33から延設されアンカー部材30が挿通孔110に挿通されてボード100の一面側から他面側へと移動した際にボード100の他面に当接するボード当接部34と、を備える。ナット収容部33にナット20を収容した状態で挿通姿勢と当接姿勢との間でのねじ軸10及びアンカー部材30の相対回転を許容するガイド部を、ナット収容部33からボード当接部34に亘って形成する。
【解決手段】ねじ軸10に螺合するナット20に取り付けられ、ボード100に形成された挿通孔110に挿通可能なアンカー部材30であって、ナット20を収容しナット20と一体となってねじ軸10の軸心周りに回転するナット収容部33と、ナット収容部33から延設されアンカー部材30が挿通孔110に挿通されてボード100の一面側から他面側へと移動した際にボード100の他面に当接するボード当接部34と、を備える。ナット収容部33にナット20を収容した状態で挿通姿勢と当接姿勢との間でのねじ軸10及びアンカー部材30の相対回転を許容するガイド部を、ナット収容部33からボード当接部34に亘って形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカー部材及びこのアンカー部材を用いたアンカー器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、簾やスクリーン等の被吊下物を吊り下げること等を目的として、建物の軒や壁にフック等の被締結物を固定するアンカー器具が種々提案されている。例えば、現在においては、軸部と、軸部の一端部に固着されたアンカー部と、軸部の他端部に形成されたねじ部と、を備えたアンカー器具が提案され、実用化されている。
【0003】
前記構成のアンカー器具を壁に固定する場合には、壁に設けられた挿通孔に軸部を挿通し、アンカー部を壁の一面に当接させ、壁の他面側において、ねじ部に螺合させたナットを締め付けて固定する。このような従来のアンカー器具を採用すると、固定するために壁の両側で作業する必要がある。しかし、壁の両側の作業は作業者一人では行いにくく、作業性が悪いという問題があった。また、複数の作業者によってボードの固定を行うと、作業効率が悪くなるという問題がある。
【0004】
かかる問題を解決すべく、近年においては、アンカー部と、このアンカー部をねじ軸に対する平行姿勢から直交姿勢に向けて付勢する付勢部材と、アンカー部を直交姿勢で停止させるストッパー機構と、アンカー部に取り付けられてねじ軸に螺合するリングと、このリングと軸心を同一にしてアンカー部に形成されるねじ穴と、を有するアンカー部材を有するアンカー器具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−54619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載された構成のアンカー器具は、ねじ軸をリングにのみ螺合させているときに限り、アンカー部材の平行姿勢から直交姿勢への揺動を可能とするものである。このため、アンカー部材のねじ軸への掛かり代が著しく少なく、これによって、アンカー器具をボードに取り付ける作業時やアンカー器具の搬送時等に、アンカー部材がねじ軸から外れ易いという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、アンカー部材のねじ軸からの脱落をより確実に防止することができるアンカー器具及びこれに用いるアンカー部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る第一のアンカー部材は、ねじ軸に螺合するナットに取り付けられ、ボードに形成された挿通孔にナットとともに挿通可能なアンカー部材であって、ねじ軸に螺合しているナットを収容した状態でナットと一体となってねじ軸の軸心周りに回転するナット収容部と、ナット収容部から延設され、アンカー部材が挿通孔に挿通されてボードの一面側から他面側へと移動した際にボードの他面に当接するボード当接部と、を備えるとともに、ナット収容部にナットを収容した状態で、ねじ軸の軸心方向とボード当接部の延設方向とが平行となってアンカー部材が挿通孔に挿通可能な挿通姿勢と、ねじ軸の軸心方向とボード当接部の延設方向とが交差してボード当接部がボードの他面に当接可能な当接姿勢と、の間でのねじ軸及びアンカー部材の相対回転を許容するガイド部が、ナット収容部からボード当接部に亘って形成されるものである。
【0009】
かかる構成を採用すると、アンカー部材のナット収容部に、ねじ軸に螺合したナットを収容させることができる。すなわち、アンカー部材を、ナットを介してねじ軸に取り付けることができる。また、アンカー部材に形成されたガイド部により、アンカー部材とねじ軸との相対回転を実現させることができ、アンカー部材は、ねじ軸に螺合されているナットをナット収容部に収容させた状態で、挿通姿勢と当接姿勢との間で揺動することができる。従って、ナットがねじ軸の端部のみならず中央部に螺合している場合であってもアンカー部材を挿通姿勢と当接姿勢の間で揺動させることができるため、ナットはねじ軸に対して充分な掛かり代を有することとなり、ナット及びアンカー部材がねじ軸から脱落するのを確実に防止することができる。
【0010】
前記アンカー部材において、ボード当接部を、ナット収容部を中心として相互に反対方向に直線状に延在するように一対設けることができる。また、ナット収容部に収容されたナットの上面に対向させてナット収容部から一方のボード当接部の先端部に向けて長孔状に形成される案内孔と、ナットの下面に対向させてナット収容部から他方のボード当接部の先端部まで切り欠かれて形成される案内溝と、を有するガイド部を採用することができる。
【0011】
かかる構成を採用すると、ねじ軸に螺合しているナットをナット収容部に収容した状態で、ねじ軸のうちナットよりも先端側をガイド部の案内孔に挿通させる一方、ナットよりも基端側をガイド部の案内溝に挿通させて、ナット収容部及びボード当接部を有するアンカー部材をねじ軸に対して揺動させることができる。案内溝は切り欠かれて形成されているので、アンカー部材を揺動させる際にねじ軸に当接する虞はない。この結果、相対回転に伴うねじ軸とアンカー部材との干渉が回避されることとなり、アンカー部材をスムーズに揺動させることができる。
【0012】
また、前記アンカー部材において、ナット収容部に、挿通姿勢から当接姿勢に向けてのアンカー部材の揺動を誘発させる揺動誘発部を設けることもできる。
【0013】
かかる構成を採用すると、ナット収容部にナットを収容した状態で、挿通姿勢のアンカー部材をボードの一面側から他面側に向けて挿通させた後、揺動誘発部により、アンカー部材の姿勢を挿通姿勢からアンカーとして機能する当接姿勢へと速やかに変更させることができる。
【0014】
また、前記アンカー部材において、ナットの上面に当接してアンカー部材の姿勢を挿通姿勢と当接姿勢の間の傾斜姿勢とする傾斜面を有する揺動誘発部を採用することができる。
【0015】
かかる構成を採用すると、ボードの一面側から他面側に向けて挿通姿勢のアンカー部材を挿通させるとアンカー部材は挿通孔からの拘束が解除されることとなるが、その後、自重によりナットの上面に傾斜面が当接することとなり、これによってアンカー部材が揺動してねじ軸の軸心に対して傾斜することとなる。この状態でナットに対してねじ軸をねじ込んでいくことにより、アンカー部材はボードの他面に相対的に押圧されることとなって徐々に傾斜姿勢から当接姿勢へと姿勢を変更することとなり、最終的には当接姿勢となってボードの他面に当接することとなる。このように、傾斜面により、アンカー部材に作用する重力のみによって、挿通姿勢にあるアンカー部材を当接姿勢に変更するためのきっかけを付与することができる。
【0016】
また、前記アンカー部材において、ねじ軸に螺合したナットをナット収容部に出し入れ自在とするナット出入口を設けることができる。
【0017】
かかる構成を採用すると、ナットをアンカー部材から自在に着脱することができる。従って、ナットとアンカー部材とをそれぞれ別工程にて製造した後、ナットをねじ軸に螺合させ、その後ナット収容部にナットを収容することにより、ナットを介してアンカー部材をねじ軸に取り付けることができ、アンカー器具の製造が容易となる。また、ナット及びねじ軸と、アンカー部材と、を別々に搬送し、現場でアンカー器具を構成することも可能である。
【0018】
また、前記アンカー部材において、アンカー部材を挿通姿勢から当接姿勢へと揺動させる際に、ねじ軸の軸心方向とボード当接部の延設方向とが直交する直交姿勢よりも余分にアンカー部材を揺動させる遊びをガイド部に設けることもできる。
【0019】
かかる構成を採用すると、アンカー部材は、挿通姿勢から直交姿勢となる間においてねじ軸に対して傾斜する第1の傾斜姿勢となることができ、さらに、直交姿勢よりも余分に揺動してねじ軸に対して傾斜する第2の傾斜姿勢となることができ、ねじ軸に対するアンカー部材の傾斜可能範囲を拡げることができる。この結果、ボードの他面(挿通孔周縁部)が傾斜している場合や他の部材等の存在により段状となっている場合であっても、アンカー部材をボードの他面に当接させて取り付けることができる。
【0020】
また、本発明に係る第二のアンカー部材は、ねじ軸及び頭部を有するボルトの頭部に取り付けられ、ボードに形成された挿通孔に頭部とともに挿通可能なアンカー部材であって、ボルトの頭部を収容する頭部収容部と、頭部収容部から延設され、アンカー部材が挿通孔に挿通されてボードの一面側から他面側へと移動した際にボードの他面に当接するボード当接部と、を備えるとともに、頭部収容部に頭部を収容した状態で、ボルトのねじ軸の軸心方向とボード当接部の延設方向とが平行となってアンカー部材が挿通孔に挿通可能な挿通姿勢と、ボルトのねじ軸の軸心方向とボード当接部の延設方向とが交差してボード当接部がボードの他面に当接可能な当接姿勢と、の間でのねじ軸及びアンカー部材の相対回転を許容するガイド部が、頭部収容部からボード当接部に亘って形成されるものである。
【0021】
かかる構成を採用すると、アンカー部材の頭部収容部に、ねじ軸を有するボルトの頭部を収容させることができる。すなわち、アンカー部材は、ボルトの頭部を介してねじ軸に取り付けられることとなり、ボルトの頭部はねじ軸と一体的に設けられているため、アンカー部材がボルトのねじ軸から脱落するのを確実に防止することができる。また、アンカー部材に形成されたガイド部により、アンカー部材とねじ軸との相対回転を実現させることができ、アンカー部材は、ねじ軸に螺合されているボルトの頭部を頭部収容部に収容させた状態で挿通姿勢と当接姿勢との間で揺動することができる。
【0022】
本発明に係る第一のアンカー器具は、ねじ軸と、このねじ軸に螺合するナットと、このナットに取り付けられるアンカー部材と、を備え、ボードに形成された挿通孔にアンカー部材を挿通させた状態でボードに留付けられるアンカー器具であって、アンカー部材として、本発明に係る第一のアンカー部材を採用したものである。
【0023】
また、本発明に係る第二のアンカー器具は、ねじ軸及び頭部を有するボルトと、このボルトの頭部に取り付けられるアンカー部材と、を備え、ボードに形成された挿通孔にアンカー部材を挿通させた状態でボードに留付けられるアンカー器具であって、アンカー部材として、本発明に係る第二のアンカー部材を採用したものである。
【0024】
前記アンカー器具において、ねじ軸に、挿通孔の内壁に当接して挿通孔の軸心とねじ軸の軸心とを一致させる軸決め部材を螺合することもできる。
【0025】
アンカー部材はねじ軸に対して揺動自在であるため、アンカー部材を当接姿勢としてボードの他面に当接させても、ねじ軸と挿通孔との間の隙間を揺動可能範囲としてねじ軸を揺動させることができるが、軸決め部材によりこの隙間が埋められることとなり、これによってねじ軸の挿通孔内での姿勢を安定させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、アンカー部材のねじ軸からの脱落をより確実に防止することができるアンカー器具及びこれに用いるアンカー部材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係るアンカー器具がボードに固定された状態を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るアンカー器具を構成するナットを示すものであり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るアンカー部材を構成する駒片部材を示すものであり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るアンカー部材を構成する舌片部材を示すものであり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図、(D)は背面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るアンカー部材にナットを収容しアンカー部材を挿通姿勢にした状態を示すものであり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【図6】図5に示した挿通姿勢のアンカー部材を傾斜させた状態を示すものであり、(A)は挿通姿勢に近い傾斜姿勢を示す図、(B)は当接姿勢に近い傾斜姿勢を示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係るアンカー部材を当接姿勢にした状態を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るアンカー部材を示すものであり、(A)はアンカー部材を構成する駒片部材の平面図、(B)はアンカー部材を構成する舌片部材の平面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るアンカー部材を直交姿勢よりも余分に揺動させた状態を示す図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係るアンカー部材を当接姿勢にした状態を示す図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係るアンカー部材を構成する舌片部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るアンカー部材及びこれを用いたアンカー器具について説明する。
【0029】
なお、本実施形態に係るアンカー器具は、建物の外壁に形成される窓等の開口部の前上部を覆う軒がある場合に、この軒に取り付けられて、開口部の前に設けられる被吊下物を吊下可能な吊下具を形成するものである。本実施形態において、「軒」とは、窓等の開口部の上方に庇状に突出するものであって、屋根により形成される軒はもちろん、上階の張出しベランダ、バルコニー、所定の窓前にのみ突出する小庇部材、シャッターボックス等を含むものである。また、被吊下物としては、例えば簾や日除け等のスクリーンのような巻き上げ可能なものや、窓前を緑化すべく窓前に設けられる緑化用ネット等を挙げることができる。本実施形態に係るアンカー器具が取り付けられる軒は、建物の屋根を形成して窓前まで突出するものであって、図1に示すように石膏からなる軒天ボード(以下、単に「ボード」という)100が水平に取り付けられており、ボード100には、アンカー器具を取り付けるための挿通孔110がボード100の一面101側から他面102側へと貫通して設けられているものとする。
【0030】
<第1実施形態>
まず、図1〜図7を用いて、本発明の第1実施形態に係るアンカー器具及びこれに用いられるアンカー部材について説明する。
【0031】
最初に、図1及び図2を用いて、本実施形態に係るアンカー器具1の全体構成について説明する。アンカー器具1は、ねじ軸10と、ねじ軸10に螺合するナット20と、ナット20に取り付けられるアンカー部材30と、アンカー部材30との間でボード100を挟み込む締付け部材40と、円盤状の軸決め部材50と、を備え、ボード100に形成された挿通孔110にアンカー部材30を挿通させた状態でボード100に留付け可能とされている。
【0032】
ねじ軸10は、雄ねじが螺設されている雄ねじ部11と、ボード100への留付け時において雄ねじ部11の下端となる端部に接続される機能部12と、を有している。本実施形態においては、図1に示すように、被吊下物を吊下保持するフックを機能部12として採用している。
【0033】
ナット20は、図2に示すように、ねじ軸10の雄ねじ部11に螺合する雌ねじ部21が内壁に形成されたリング状に形成されており、ねじ軸10の軸心に一致する軸心に対し垂直となる上面22及び下面23と、これら上面22及び下面23の間に形成された側面24と、を有している。本実施形態においては、平面形状が六角形状を呈する六角ナットが採用されている。
【0034】
ねじ軸10及びナット20は、その外径が少なくともボード100に形成される挿通孔110の径よりも小さくなるように形成されており、挿通孔110内を通過してボード100の一面101側から他面102側への移動(又はその逆の移動)が可能となっている。
【0035】
アンカー部材30は、図1に示すように、ねじ軸10に螺合するナット20に取り付けられ、ボード100に形成された挿通孔110にナット20とともに挿通可能に構成されるものである。アンカー部材30は、ナット20を収容した状態でナット20と一体となってねじ軸10の軸心周りに回転するナット収容部33と、アンカー部材30が挿通孔110に挿通されてボード100の一面101側から他面102側へと移動した際にボード100の他面102に当接するボード当接部34と、を有している。
【0036】
また、アンカー部材30は、ナット収容部33にナット20を収容した状態で、挿通姿勢と当接姿勢との間でのねじ軸10及びアンカー部材30の相対回転を許容するガイド部(案内孔35及び案内溝36:図5参照)を有している。ここで、「挿通姿勢」とは、ねじ軸10の軸心方向とアンカー部材30のボード当接部34の延設方向とが平行となって、アンカー部材30が挿通孔110に挿通可能な姿勢を意味する。また、「当接姿勢」とは、ねじ軸10の軸心方向とアンカー部材30のボード当接部34の延設方向とが交差して、ボード当接部34がボード100の他面102に当接可能な姿勢を意味する。なお、アンカー部材30の構成については、後に詳述することとする。
【0037】
締付け部材40は、図1に示すように、ねじ軸10に螺合した円盤状の部材であり、締め付けることでアンカー部材30との間でボード100を挟持するものである。締付け部材40は、少なくとも挿通孔110の直径よりも大きい直径を有して形成されており、締め付けることで挿通孔110等を覆い隠すという機能を果たす。
【0038】
軸決め部材50は、図1に示すように、ねじ軸10に螺合した円盤状の部材であり、アンカー部材30と締付け部材40の間に配置されている。軸決め部材50は、挿通孔110の内径と同一の直径を有しており、挿通孔110に挿入されることによりねじ軸10の軸心と挿通孔110の軸心とを一致させて保持し、ねじ軸10のふらつきを抑制するという機能を果たす。
【0039】
続いて、図3〜図7等を用いて、本実施形態に係るアンカー部材30の構成について説明する。
【0040】
アンカー部材30は、長尺状に形成される駒片部材31(図3)に舌片部材32(図4)を接合して形成したものである。このように駒片部材31と舌片部材32とが接合されることにより、アンカー部材30は、図1に示すように、ねじ軸10に螺合しているナット20をねじ軸10に対してねじ込み可能な状態で収容するナット収容部33と、ナット収容部33から延設されてボード100の他面102に当接するボード当接部34と、を有することとなる。
【0041】
駒片部材31は、図3に示すように、断面コ字状の長尺部材として形成されており、一対の側壁部31aと、一対の側壁部31aを連結する底壁部31bと、を有している。一対の側壁部31a間の間隔は、ナット20の軸心を介して互いに対向する一対の側面24間の幅と同一又は僅かに大きく形成されている。これにより、ナット20は、駒片部材31の一対の側壁部31a間に軸心周りに独立回転不能に収容される。すなわち、ナット20と駒片部材31とは一体的に回転することとなる。
【0042】
駒片部材31の底壁部31bは、底面が平滑に形成されるとともに、長尺方向の一方の端部から中央部に向けて形成された切欠き部31cを有している。切欠き部31cは、底壁部31bの長尺方向に対して垂直な方向の寸法をねじ軸10の外径と同一又は僅かに大きく形成されている。切欠き部31cは、長尺方向において、駒片部材31の底壁部31bの一方の端部から少なくとも両端部間の中間部に至る切欠き長さを有している。また、底壁部31bの長尺方向の両端部には、底面から突出する複数本の爪31dが形成されている。
【0043】
舌片部材32は、図4に示すように、駒片部材31の一対の側壁部31a間の間隔の幅を有する板状片を屈曲形成して形成されており、平板部32aと、平板部32aの一方の端部から傾斜状に延伸される傾斜部32bと、傾斜部32bの端部から平板部32aに平行に延伸される座部32cと、座部32cの端部から直交状に延伸される立上部32dと、立上部32dの端部から直交状に延伸される延伸部32eと、を有して形成されている。立上部32dは、平板部32aを含む平面と座部32cを含む平面の距離と同じ長さ分だけ座部32cから延伸して形成されており、これにより平板部32aと延伸部32eとは略同一平面上に位置している。
【0044】
舌片部材32の傾斜部32bから座部32cに亘って長孔32fが形成されている。長孔32fの幅は、ねじ軸10の外径と同一又は僅かに大きく形成されている。また、舌片部材32の長尺方向の一端を形成する延伸部32eの端部から立上部32dに亘って切欠き部32gが形成されている。切欠き部32gの幅もねじ軸10の外径と同一又は僅かに大きく形成されている。
【0045】
舌片部材32が、駒片部材31の一対の側壁部31a間にて底壁部31bに接合されることにより、アンカー部材30が形成されており、舌片部材32の長孔32fと切欠き部32gは、駒片部材31の切欠き部31cと対向している。具体的には、舌片部材32の長孔32fの座部32c側の端部32hは、駒片部材31の切欠き部31cの中央部側の端部31eよりも切欠き部31cの長尺方向中央側に位置づけられており、平面視で舌片部材32の長孔32fの座部32c側の端部32hと駒片部材31の切欠き部31cの中央部側の端部31eとの間の間隔がねじ軸10の外径に一致もしくは僅かに大きい間隔を有している。また、舌片部材32の切欠き部32gの切欠き縁部は、駒片部材31の切欠き部31cの切欠き縁部に対向した状態で位置付けられている。
【0046】
舌片部材32は、平板部32aのみが駒片部材31の底壁部31bにスポット溶接により接合されており、平板部32aの反対側に位置する延伸部32eと駒片部材31の底壁部31bとは互いに離隔した状態で対向している。また、舌片部材32を構成する材料(例えば金属や樹脂)の弾性復帰力を利用して、舌片部材32の延伸部32eは駒片部材31の底壁部31bに近接離隔自在とされている。
【0047】
図1及び図5に示すように、駒片部材31に舌片部材32を接合することにより、アンカー部材30が形成されることとなる。駒片部材31の底壁部31b及び側壁部31aの中央部と、舌片部材32の傾斜部32b及び座部32c及び立上部32dと、によって、ねじ軸10に螺合しているナット20を収容した状態でナット20とともにねじ軸10に螺合するナット収容部33が形成される。また、駒片部材31の底壁部31b及び側壁部31aの両端部によって、ナット収容部33を中心として相互に反対方向に直線状に延在するように一対のボード当接部34が形成されることとなる。
【0048】
また、舌片部材32の傾斜部32bから座部32cに亘って形成される長孔32fによって、ナット収容部33に収容されたナット20の上面22に対向させてナット収容部33から一方のボード当接部34の先端部に向けて案内孔35が形成される。また、駒片部材31の切欠き部31c及び舌片部材32の切欠き部32gによって、ナット収容部33内に収容されているナット20の下面23に対向させてナット収容部33から他方のボード当接部34の先端部まで切り欠かれて形成される案内溝36が形成されることとなる。
【0049】
舌片部材32の長孔32fにより形成される案内孔35は、図5に示すように、長尺方向に垂直な方向の幅をねじ軸10の外径より大として形成されているため、案内孔35を挿通するねじ軸10の回転を許容する。同様に、駒片部材31及び舌片部材32の切欠き部31c、32gにより形成される案内溝36は、図5に示すように、長尺方向に垂直な方向の幅をねじ軸10の外径より大として形成されているため、案内溝36を挿通するねじ軸10の回転を許容する。
【0050】
このように、案内孔35及び案内溝36によって、アンカー部材30には、ナット収容部33にナット20を収容した状態で、図5に示す挿通姿勢と図7に示す当接姿勢との間でのねじ軸10及びアンカー部材30の相対回転を許容するガイド部が形成されることとなる。
【0051】
また、ナット収容部33には、図5に示す挿通姿勢から図7に示す当接姿勢に向けてのアンカー部材30の揺動を誘発させる揺動誘発部が設けられている。本実施形態において、揺動誘発部は、舌片部材32の傾斜部32b(傾斜面)により形成されている。傾斜部32bにより、挿通姿勢にあるアンカー部材30は、ボード100の挿通孔110を通過中は挿通孔110の内壁に支持されて挿通姿勢を維持することとなるが、挿通孔110を抜け切ると、図6に示すようにねじ軸10が鉛直に伸びている場合は自重により落下し(ねじ軸10が水平に伸びている場合には回転し)、これにより、ナット10の上面22が傾斜部32bに当接して傾斜姿勢に維持されることとなる。
【0052】
また、アンカー部材30は、駒片部材31の底壁部31bと舌片部材32の立上部32d及び延伸部32eによりナット出入口が形成されている。舌片部材32は、平板部32aのみが駒片部材31の底壁部31bに接合されているため、延伸部32eは、駒片部材31の底壁部31bに向けて付勢された状態で駒片部材31の底壁部31bに近接離隔可能とされている。舌片部材32の延伸部32eを駒片部材31の底壁部31bから離隔させることにより、底壁部31bの切欠き縁部から中央部に向かって通路が形成され、この通路にナット20を挿通させることにより、ナット20をナット収容部33に収容することができるようになっている。ここで、駒片部材31の底壁部31bの切欠き縁部側からナット20を収容可能となっているため、底壁部31bの切欠き部31c内を切欠き縁部から中央部に向けてねじ軸10を通過させることができ、これにより、ナット20をねじ軸10の先端部に取り付けた状態でナット20をナット収容部33に収容することができる。
【0053】
次に、図1及び図5〜図7等を用いて、本実施形態に係るアンカー器具1の取付方法について説明する。
【0054】
まず、ねじ軸10に螺合したナット20をアンカー部材30のアンカー収容部33に収容してアンカー器具1を構成する。そして、アンカー部材30の姿勢を図5に示すような挿通姿勢とし、ボード100の挿通孔110に、アンカー部材30とナット20とねじ軸10とを一体的に挿通する。アンカー部材30は、ボード100の挿通孔110を通過中において挿通孔110の内壁に支持されて挿通姿勢を維持する。
【0055】
その後、アンカー部材30が挿通孔110を抜け切ると、挿通孔110からの拘束が解除され、図6に示すように、自重によりアンカー部材30が落下することとなってこのアンカー部材30の傾斜部32bがナット20の上面22に当接し、これによりアンカー部材30が揺動してねじ軸10の軸心に対して傾斜する。この状態でナット20に対してねじ軸10をねじ込んでいくことにより、アンカー部材30は、図1及び図7に示すように、ボード100の他面102に相対的に押圧されて徐々に傾斜姿勢から当接姿勢へと姿勢を変更し、最終的には当接姿勢となってボード100の他面102に当接する。
【0056】
このようにアンカー部材30が当接姿勢となった状態で締付け部材40を締め付けることにより、アンカー部材30と締付け部材40でボード100を挟持し、取り付けを完了する。なお、アンカー部材30が当接姿勢となった段階で、図1に示すようにアンカー器具1の軸決め部材50がボード100の挿通孔110に挿入されており、この軸決め部材50により、ねじ軸10と挿通孔110の軸心とが一致して、ねじ軸10のふらつきが抑制される。
【0057】
以上説明した実施形態に係るアンカー器具1においては、アンカー部材30のナット収容部33に、ねじ軸10に螺合したナット20を収容させることができる。すなわち、アンカー部材30を、ナット20を介してねじ軸10に取り付けることができる。また、アンカー部材30に形成されたガイド部(案内孔35及び案内溝36)により、アンカー部材30とねじ軸10との相対回転を実現させることができ、アンカー部材30は、ねじ軸10に螺合されているナット20をナット収容部33に収容させた状態で、挿通姿勢と当接姿勢との間で揺動することができる。従って、ナット20がねじ軸10の端部のみならず中央部に螺合している場合であってもアンカー部材30を挿通姿勢と当接姿勢の間で揺動させることができるため、ナット20はねじ軸10に対して充分な掛かり代を有することとなり、ナット20及びアンカー部材30がねじ軸10から脱落するのを確実に防止することができる。
【0058】
また、以上説明した実施形態に係るアンカー器具1においては、ねじ軸10に螺合しているナット20をナット収容部33に収容した状態で、ねじ軸10のうちナット20よりも先端側をガイド部の案内孔35に挿通させる一方、ナット20よりも基端側をガイド部の案内溝36に挿通させて、ナット収容部33及びボード当接部34を有するアンカー部材30をねじ軸10に対して揺動させることができる。案内溝36は切り欠かれて形成されているので、アンカー部材30を揺動させる際にねじ軸10に当接する虞はない。この結果、相対回転に伴うねじ軸10とアンカー部材30との干渉が回避されることとなり、アンカー部材30をスムーズに揺動させることができる。
【0059】
また、以上説明した実施形態に係るアンカー器具1においては、ナット収容部33にナット20を収容した状態で、挿通姿勢のアンカー部材30をボード100の一面101側から他面102側に向けて挿通させた後、揺動誘発部(傾斜部32b)により、アンカー部材30の姿勢を挿通姿勢からアンカーとして機能する当接姿勢へと速やかに変更させることができる。すなわち、ボード100の一面101側から他面102側に向けて挿通姿勢のアンカー部材30を挿通させるとアンカー部材30は挿通孔110からの拘束が解除されるが、その後、自重によりアンカー部材30が落下し、ナット20の上面22にアンカー部材30の傾斜部32b(傾斜面)が当接し、これによりアンカー部材30が揺動してねじ軸10の軸心に対して傾斜する。この状態でナット20に対してねじ軸10をねじ込むことにより、アンカー部材30はボード100の他面102に相対的に押圧されて徐々に傾斜姿勢から当接姿勢へと姿勢を変更し、最終的には当接姿勢となってボード100の他面102に当接する。このように、傾斜部32bにより、アンカー部材30に作用する重力のみによって、挿通姿勢にあるアンカー部材30を当接姿勢に変更するためのきっかけを付与することができる。
【0060】
また、以上説明した実施形態に係るアンカー器具1においては、ナット出入口を介して、ナット20をアンカー部材30から自在に着脱することができる。従って、ナット20とアンカー部材30とをそれぞれ別工程にて製造した後、ナット20をねじ軸10に螺合させ、その後ナット収容部33にナット20を収容することにより、ナット20を介してアンカー部材30をねじ軸10に取り付けることができ、アンカー器具1の製造が容易となる。また、ナット20及びねじ軸10と、アンカー部材30と、を別々に搬送し、現場でアンカー器具1を構成することも可能である。
【0061】
また、以上説明した実施形態に係るアンカー器具1においては、ねじ軸10に、挿通孔110の内壁に当接して挿通孔110の軸心とねじ軸10の軸心とを一致させる軸決め部材50を螺合している。アンカー部材30はねじ軸10に対して揺動自在であるため、アンカー部材30を当接姿勢としてボード100の他面102に当接させても、ねじ軸10と挿通孔110との間の隙間を揺動可能範囲としてねじ軸10を揺動させることができるが、軸決め部材50によりこの隙間が埋められることとなり、これによってねじ軸10の挿通孔110内での姿勢を安定させることができる。
【0062】
<第2実施形態>
次に、図8及び図9等を用いて、本発明の第2実施形態に係るアンカー器具について説明する。本実施形態に係るアンカー器具は、第1実施形態に係るアンカー部材30のガイド部(案内孔35及び案内溝36)の構成を変更したものであり、その他の構成については実質的に第1実施形態と共通である。このため、異なる構成を中心に説明することとし、共通する構成については第1実施形態と同様の符号を付して詳細な説明を省略することとする。
【0063】
本実施形態においては、図9に示すアンカー部材30Aを、図5に示すような挿通姿勢から図7に示すような当接姿勢へと揺動させる際に、ねじ軸10の軸心方向とボード当接部34の延設方向とが直交する直交姿勢(図7)よりも余分にアンカー部材30Aを揺動させる「遊び」をガイド部に設けている。
【0064】
具体的には、図8(A)に示すように、駒片部材31Aの切欠き部31Acを第1実施形態における切欠き部31cよりも深くすることにより、切欠き部31Acの中央部側の端部31Aeを第1実施形態における端部31eよりもさらに奥側(他方の端部寄り)に配置する。また、図8(B)に示すように、舌片部材32Aの長孔32Afを第1実施形態における長孔32fよりも長くすることにより、長孔32Afの座部32c側の端部32Ahを第1実施形態における端部32hよりも切欠き部寄りに配置する。
【0065】
このような構成を採用することにより、平面視で舌片部材32Aの長孔32Afの座部32c側の端部32Ahと駒片部材31Aの切欠き部31Acの中央部側の端部31Aeとの間の間隔が拡げられ、いわゆる「遊び」が設けられることとなる。このような遊びにより、ねじ軸10の軸心に対して当接面を直交させた当接姿勢(図7)よりもさらに揺動させた当接姿勢(図9)をとることができる。
【0066】
以上説明した実施形態に係るアンカー器具においては、アンカー部材30Aが、挿通姿勢から直交姿勢となる間においてねじ軸10に対して傾斜する第1の傾斜姿勢となることができ、さらに、直交姿勢よりも余分に揺動してねじ軸10に対して傾斜する第2の傾斜姿勢(図9)となることができ、ねじ軸10に対するアンカー部材30Aの傾斜可能範囲を拡げることができる。この結果、ボードの他面が傾斜している場合や他の部材等の存在により段状となっている場合であっても、アンカー部材30Aをボードの他面に当接させて取り付けることができる。
【0067】
<第3実施形態>
次に、図10及び図11を用いて、本発明の第3実施形態に係るアンカー器具について説明する。本実施形態に係るアンカー器具は、第1実施形態に係るアンカー器具1のナット20をボルト60に変更するとともに、アンカー部材30の舌片部材32の構成を変更したものであり、その他の構成については実質的に第1実施形態と共通である。このため、異なる構成を中心に説明することとし、共通する構成については第1実施形態と同様の符号を付して詳細な説明を省略することとする。
【0068】
本実施形態に係るアンカー器具は、図10に示すように、ねじ軸61及び頭部62を有するボルト60と、ボルト60の頭部62に取り付けられるアンカー部材30Bと、を備え、ボードに形成された挿通孔110にアンカー部材30Bを挿通させた状態でボードに留付けられるものである。
【0069】
本実施形態に係るアンカー部材30Bは、図10に示すように、ボルト60の頭部62を収容する頭部収容部33Bと、頭部収容部33Bから延設され、アンカー部材30Bが挿通孔110に挿通されてボードの一面側から他面側へと移動した際にボードの他面に当接するボード当接部34と、を備えている。また、アンカー部材30Bは、頭部収容部33Bに頭部62を収容した状態で、ボルト60のねじ軸61の軸心方向とボード当接部34の延設方向とが平行となってアンカー部材30Bが挿通孔110に挿通可能な挿通姿勢と、ボルト60のねじ軸61の軸心方向とボード当接部34の延設方向とが交差してボード当接部34がボードの他面に当接可能な当接姿勢と、の間でのねじ軸61及びアンカー部材30Bの相対回転を許容するガイド部が、頭部収容部33Bからボード当接部34に亘って形成されるものである。
【0070】
アンカー部材30Bは、駒片部材31と、図11に示した舌片部材32Bと、を接合して形成したものである。駒片部材31は、第1実施形態で説明したものと同一であるため、詳細な説明を省略する。舌片部材32Bは、第1実施形態における舌片部材32と基本的な構成(平板部32a、傾斜部32Bb、座部32Bc、立上部32d、延伸部32e、切欠き部32g)を共通にしている。本実施形態における舌片部材32Bの傾斜部32Bb及び座部32Bcには、図11に示すように、長孔が形成されていない。ボルト60のねじ軸61は常に頭部62よりも下方に位置するため、ねじ軸61を挿通させる案内孔を形成する必要がないからである。従って、本実施形態においては、駒片部材31及び舌片部材32Bの切欠き部からなる案内溝のみによってガイド部が構成される。
【0071】
以上説明した実施形態に係るアンカー器具においては、アンカー部材30Bの頭部収容部33Bに、ねじ軸61を有するボルト60の頭部62を収容させることができる。すなわち、アンカー部材30Bは、ボルト60の頭部62を介してねじ軸61に取り付けられることとなり、ボルト60の頭部62はねじ軸61と一体的に設けられているため、アンカー部材30Bがボルト60のねじ軸61から脱落するのを確実に防止することができる。また、アンカー部材30Bに形成されたガイド部により、アンカー部材30Bとねじ軸61との相対回転を実現させることができ、アンカー部材30Bは、ねじ軸61に螺合されているボルト60の頭部62を頭部収容部33Bに収容させた状態で挿通姿勢と当接姿勢との間で揺動することができる。本実施形態に係るアンカー器具においては、ねじ軸61に、図示していないナットが螺合されており、このナットを締め付けることにより、ナットとアンカー部材30Bとの間でボード100等を挟持し、これによってアンカー器具をボード100等に固定することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…アンカー器具
10…ねじ軸
20…ナット
22…上面
23…下面
30・30A・30B…アンカー部材
32b…傾斜部(揺動誘発部、傾斜面)
33…ナット収容部
33B…頭部収容部
34…ボード当接部
35…案内孔(ガイド部)
36…案内溝(ガイド部)
40…締付け部材
50…軸決め部材
60…ボルト
61…ねじ軸
62…頭部
100…ボード
101…一面
102…他面
110…挿通孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカー部材及びこのアンカー部材を用いたアンカー器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、簾やスクリーン等の被吊下物を吊り下げること等を目的として、建物の軒や壁にフック等の被締結物を固定するアンカー器具が種々提案されている。例えば、現在においては、軸部と、軸部の一端部に固着されたアンカー部と、軸部の他端部に形成されたねじ部と、を備えたアンカー器具が提案され、実用化されている。
【0003】
前記構成のアンカー器具を壁に固定する場合には、壁に設けられた挿通孔に軸部を挿通し、アンカー部を壁の一面に当接させ、壁の他面側において、ねじ部に螺合させたナットを締め付けて固定する。このような従来のアンカー器具を採用すると、固定するために壁の両側で作業する必要がある。しかし、壁の両側の作業は作業者一人では行いにくく、作業性が悪いという問題があった。また、複数の作業者によってボードの固定を行うと、作業効率が悪くなるという問題がある。
【0004】
かかる問題を解決すべく、近年においては、アンカー部と、このアンカー部をねじ軸に対する平行姿勢から直交姿勢に向けて付勢する付勢部材と、アンカー部を直交姿勢で停止させるストッパー機構と、アンカー部に取り付けられてねじ軸に螺合するリングと、このリングと軸心を同一にしてアンカー部に形成されるねじ穴と、を有するアンカー部材を有するアンカー器具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−54619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載された構成のアンカー器具は、ねじ軸をリングにのみ螺合させているときに限り、アンカー部材の平行姿勢から直交姿勢への揺動を可能とするものである。このため、アンカー部材のねじ軸への掛かり代が著しく少なく、これによって、アンカー器具をボードに取り付ける作業時やアンカー器具の搬送時等に、アンカー部材がねじ軸から外れ易いという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、アンカー部材のねじ軸からの脱落をより確実に防止することができるアンカー器具及びこれに用いるアンカー部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る第一のアンカー部材は、ねじ軸に螺合するナットに取り付けられ、ボードに形成された挿通孔にナットとともに挿通可能なアンカー部材であって、ねじ軸に螺合しているナットを収容した状態でナットと一体となってねじ軸の軸心周りに回転するナット収容部と、ナット収容部から延設され、アンカー部材が挿通孔に挿通されてボードの一面側から他面側へと移動した際にボードの他面に当接するボード当接部と、を備えるとともに、ナット収容部にナットを収容した状態で、ねじ軸の軸心方向とボード当接部の延設方向とが平行となってアンカー部材が挿通孔に挿通可能な挿通姿勢と、ねじ軸の軸心方向とボード当接部の延設方向とが交差してボード当接部がボードの他面に当接可能な当接姿勢と、の間でのねじ軸及びアンカー部材の相対回転を許容するガイド部が、ナット収容部からボード当接部に亘って形成されるものである。
【0009】
かかる構成を採用すると、アンカー部材のナット収容部に、ねじ軸に螺合したナットを収容させることができる。すなわち、アンカー部材を、ナットを介してねじ軸に取り付けることができる。また、アンカー部材に形成されたガイド部により、アンカー部材とねじ軸との相対回転を実現させることができ、アンカー部材は、ねじ軸に螺合されているナットをナット収容部に収容させた状態で、挿通姿勢と当接姿勢との間で揺動することができる。従って、ナットがねじ軸の端部のみならず中央部に螺合している場合であってもアンカー部材を挿通姿勢と当接姿勢の間で揺動させることができるため、ナットはねじ軸に対して充分な掛かり代を有することとなり、ナット及びアンカー部材がねじ軸から脱落するのを確実に防止することができる。
【0010】
前記アンカー部材において、ボード当接部を、ナット収容部を中心として相互に反対方向に直線状に延在するように一対設けることができる。また、ナット収容部に収容されたナットの上面に対向させてナット収容部から一方のボード当接部の先端部に向けて長孔状に形成される案内孔と、ナットの下面に対向させてナット収容部から他方のボード当接部の先端部まで切り欠かれて形成される案内溝と、を有するガイド部を採用することができる。
【0011】
かかる構成を採用すると、ねじ軸に螺合しているナットをナット収容部に収容した状態で、ねじ軸のうちナットよりも先端側をガイド部の案内孔に挿通させる一方、ナットよりも基端側をガイド部の案内溝に挿通させて、ナット収容部及びボード当接部を有するアンカー部材をねじ軸に対して揺動させることができる。案内溝は切り欠かれて形成されているので、アンカー部材を揺動させる際にねじ軸に当接する虞はない。この結果、相対回転に伴うねじ軸とアンカー部材との干渉が回避されることとなり、アンカー部材をスムーズに揺動させることができる。
【0012】
また、前記アンカー部材において、ナット収容部に、挿通姿勢から当接姿勢に向けてのアンカー部材の揺動を誘発させる揺動誘発部を設けることもできる。
【0013】
かかる構成を採用すると、ナット収容部にナットを収容した状態で、挿通姿勢のアンカー部材をボードの一面側から他面側に向けて挿通させた後、揺動誘発部により、アンカー部材の姿勢を挿通姿勢からアンカーとして機能する当接姿勢へと速やかに変更させることができる。
【0014】
また、前記アンカー部材において、ナットの上面に当接してアンカー部材の姿勢を挿通姿勢と当接姿勢の間の傾斜姿勢とする傾斜面を有する揺動誘発部を採用することができる。
【0015】
かかる構成を採用すると、ボードの一面側から他面側に向けて挿通姿勢のアンカー部材を挿通させるとアンカー部材は挿通孔からの拘束が解除されることとなるが、その後、自重によりナットの上面に傾斜面が当接することとなり、これによってアンカー部材が揺動してねじ軸の軸心に対して傾斜することとなる。この状態でナットに対してねじ軸をねじ込んでいくことにより、アンカー部材はボードの他面に相対的に押圧されることとなって徐々に傾斜姿勢から当接姿勢へと姿勢を変更することとなり、最終的には当接姿勢となってボードの他面に当接することとなる。このように、傾斜面により、アンカー部材に作用する重力のみによって、挿通姿勢にあるアンカー部材を当接姿勢に変更するためのきっかけを付与することができる。
【0016】
また、前記アンカー部材において、ねじ軸に螺合したナットをナット収容部に出し入れ自在とするナット出入口を設けることができる。
【0017】
かかる構成を採用すると、ナットをアンカー部材から自在に着脱することができる。従って、ナットとアンカー部材とをそれぞれ別工程にて製造した後、ナットをねじ軸に螺合させ、その後ナット収容部にナットを収容することにより、ナットを介してアンカー部材をねじ軸に取り付けることができ、アンカー器具の製造が容易となる。また、ナット及びねじ軸と、アンカー部材と、を別々に搬送し、現場でアンカー器具を構成することも可能である。
【0018】
また、前記アンカー部材において、アンカー部材を挿通姿勢から当接姿勢へと揺動させる際に、ねじ軸の軸心方向とボード当接部の延設方向とが直交する直交姿勢よりも余分にアンカー部材を揺動させる遊びをガイド部に設けることもできる。
【0019】
かかる構成を採用すると、アンカー部材は、挿通姿勢から直交姿勢となる間においてねじ軸に対して傾斜する第1の傾斜姿勢となることができ、さらに、直交姿勢よりも余分に揺動してねじ軸に対して傾斜する第2の傾斜姿勢となることができ、ねじ軸に対するアンカー部材の傾斜可能範囲を拡げることができる。この結果、ボードの他面(挿通孔周縁部)が傾斜している場合や他の部材等の存在により段状となっている場合であっても、アンカー部材をボードの他面に当接させて取り付けることができる。
【0020】
また、本発明に係る第二のアンカー部材は、ねじ軸及び頭部を有するボルトの頭部に取り付けられ、ボードに形成された挿通孔に頭部とともに挿通可能なアンカー部材であって、ボルトの頭部を収容する頭部収容部と、頭部収容部から延設され、アンカー部材が挿通孔に挿通されてボードの一面側から他面側へと移動した際にボードの他面に当接するボード当接部と、を備えるとともに、頭部収容部に頭部を収容した状態で、ボルトのねじ軸の軸心方向とボード当接部の延設方向とが平行となってアンカー部材が挿通孔に挿通可能な挿通姿勢と、ボルトのねじ軸の軸心方向とボード当接部の延設方向とが交差してボード当接部がボードの他面に当接可能な当接姿勢と、の間でのねじ軸及びアンカー部材の相対回転を許容するガイド部が、頭部収容部からボード当接部に亘って形成されるものである。
【0021】
かかる構成を採用すると、アンカー部材の頭部収容部に、ねじ軸を有するボルトの頭部を収容させることができる。すなわち、アンカー部材は、ボルトの頭部を介してねじ軸に取り付けられることとなり、ボルトの頭部はねじ軸と一体的に設けられているため、アンカー部材がボルトのねじ軸から脱落するのを確実に防止することができる。また、アンカー部材に形成されたガイド部により、アンカー部材とねじ軸との相対回転を実現させることができ、アンカー部材は、ねじ軸に螺合されているボルトの頭部を頭部収容部に収容させた状態で挿通姿勢と当接姿勢との間で揺動することができる。
【0022】
本発明に係る第一のアンカー器具は、ねじ軸と、このねじ軸に螺合するナットと、このナットに取り付けられるアンカー部材と、を備え、ボードに形成された挿通孔にアンカー部材を挿通させた状態でボードに留付けられるアンカー器具であって、アンカー部材として、本発明に係る第一のアンカー部材を採用したものである。
【0023】
また、本発明に係る第二のアンカー器具は、ねじ軸及び頭部を有するボルトと、このボルトの頭部に取り付けられるアンカー部材と、を備え、ボードに形成された挿通孔にアンカー部材を挿通させた状態でボードに留付けられるアンカー器具であって、アンカー部材として、本発明に係る第二のアンカー部材を採用したものである。
【0024】
前記アンカー器具において、ねじ軸に、挿通孔の内壁に当接して挿通孔の軸心とねじ軸の軸心とを一致させる軸決め部材を螺合することもできる。
【0025】
アンカー部材はねじ軸に対して揺動自在であるため、アンカー部材を当接姿勢としてボードの他面に当接させても、ねじ軸と挿通孔との間の隙間を揺動可能範囲としてねじ軸を揺動させることができるが、軸決め部材によりこの隙間が埋められることとなり、これによってねじ軸の挿通孔内での姿勢を安定させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、アンカー部材のねじ軸からの脱落をより確実に防止することができるアンカー器具及びこれに用いるアンカー部材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係るアンカー器具がボードに固定された状態を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るアンカー器具を構成するナットを示すものであり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るアンカー部材を構成する駒片部材を示すものであり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るアンカー部材を構成する舌片部材を示すものであり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図、(D)は背面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るアンカー部材にナットを収容しアンカー部材を挿通姿勢にした状態を示すものであり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【図6】図5に示した挿通姿勢のアンカー部材を傾斜させた状態を示すものであり、(A)は挿通姿勢に近い傾斜姿勢を示す図、(B)は当接姿勢に近い傾斜姿勢を示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係るアンカー部材を当接姿勢にした状態を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るアンカー部材を示すものであり、(A)はアンカー部材を構成する駒片部材の平面図、(B)はアンカー部材を構成する舌片部材の平面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るアンカー部材を直交姿勢よりも余分に揺動させた状態を示す図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係るアンカー部材を当接姿勢にした状態を示す図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係るアンカー部材を構成する舌片部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るアンカー部材及びこれを用いたアンカー器具について説明する。
【0029】
なお、本実施形態に係るアンカー器具は、建物の外壁に形成される窓等の開口部の前上部を覆う軒がある場合に、この軒に取り付けられて、開口部の前に設けられる被吊下物を吊下可能な吊下具を形成するものである。本実施形態において、「軒」とは、窓等の開口部の上方に庇状に突出するものであって、屋根により形成される軒はもちろん、上階の張出しベランダ、バルコニー、所定の窓前にのみ突出する小庇部材、シャッターボックス等を含むものである。また、被吊下物としては、例えば簾や日除け等のスクリーンのような巻き上げ可能なものや、窓前を緑化すべく窓前に設けられる緑化用ネット等を挙げることができる。本実施形態に係るアンカー器具が取り付けられる軒は、建物の屋根を形成して窓前まで突出するものであって、図1に示すように石膏からなる軒天ボード(以下、単に「ボード」という)100が水平に取り付けられており、ボード100には、アンカー器具を取り付けるための挿通孔110がボード100の一面101側から他面102側へと貫通して設けられているものとする。
【0030】
<第1実施形態>
まず、図1〜図7を用いて、本発明の第1実施形態に係るアンカー器具及びこれに用いられるアンカー部材について説明する。
【0031】
最初に、図1及び図2を用いて、本実施形態に係るアンカー器具1の全体構成について説明する。アンカー器具1は、ねじ軸10と、ねじ軸10に螺合するナット20と、ナット20に取り付けられるアンカー部材30と、アンカー部材30との間でボード100を挟み込む締付け部材40と、円盤状の軸決め部材50と、を備え、ボード100に形成された挿通孔110にアンカー部材30を挿通させた状態でボード100に留付け可能とされている。
【0032】
ねじ軸10は、雄ねじが螺設されている雄ねじ部11と、ボード100への留付け時において雄ねじ部11の下端となる端部に接続される機能部12と、を有している。本実施形態においては、図1に示すように、被吊下物を吊下保持するフックを機能部12として採用している。
【0033】
ナット20は、図2に示すように、ねじ軸10の雄ねじ部11に螺合する雌ねじ部21が内壁に形成されたリング状に形成されており、ねじ軸10の軸心に一致する軸心に対し垂直となる上面22及び下面23と、これら上面22及び下面23の間に形成された側面24と、を有している。本実施形態においては、平面形状が六角形状を呈する六角ナットが採用されている。
【0034】
ねじ軸10及びナット20は、その外径が少なくともボード100に形成される挿通孔110の径よりも小さくなるように形成されており、挿通孔110内を通過してボード100の一面101側から他面102側への移動(又はその逆の移動)が可能となっている。
【0035】
アンカー部材30は、図1に示すように、ねじ軸10に螺合するナット20に取り付けられ、ボード100に形成された挿通孔110にナット20とともに挿通可能に構成されるものである。アンカー部材30は、ナット20を収容した状態でナット20と一体となってねじ軸10の軸心周りに回転するナット収容部33と、アンカー部材30が挿通孔110に挿通されてボード100の一面101側から他面102側へと移動した際にボード100の他面102に当接するボード当接部34と、を有している。
【0036】
また、アンカー部材30は、ナット収容部33にナット20を収容した状態で、挿通姿勢と当接姿勢との間でのねじ軸10及びアンカー部材30の相対回転を許容するガイド部(案内孔35及び案内溝36:図5参照)を有している。ここで、「挿通姿勢」とは、ねじ軸10の軸心方向とアンカー部材30のボード当接部34の延設方向とが平行となって、アンカー部材30が挿通孔110に挿通可能な姿勢を意味する。また、「当接姿勢」とは、ねじ軸10の軸心方向とアンカー部材30のボード当接部34の延設方向とが交差して、ボード当接部34がボード100の他面102に当接可能な姿勢を意味する。なお、アンカー部材30の構成については、後に詳述することとする。
【0037】
締付け部材40は、図1に示すように、ねじ軸10に螺合した円盤状の部材であり、締め付けることでアンカー部材30との間でボード100を挟持するものである。締付け部材40は、少なくとも挿通孔110の直径よりも大きい直径を有して形成されており、締め付けることで挿通孔110等を覆い隠すという機能を果たす。
【0038】
軸決め部材50は、図1に示すように、ねじ軸10に螺合した円盤状の部材であり、アンカー部材30と締付け部材40の間に配置されている。軸決め部材50は、挿通孔110の内径と同一の直径を有しており、挿通孔110に挿入されることによりねじ軸10の軸心と挿通孔110の軸心とを一致させて保持し、ねじ軸10のふらつきを抑制するという機能を果たす。
【0039】
続いて、図3〜図7等を用いて、本実施形態に係るアンカー部材30の構成について説明する。
【0040】
アンカー部材30は、長尺状に形成される駒片部材31(図3)に舌片部材32(図4)を接合して形成したものである。このように駒片部材31と舌片部材32とが接合されることにより、アンカー部材30は、図1に示すように、ねじ軸10に螺合しているナット20をねじ軸10に対してねじ込み可能な状態で収容するナット収容部33と、ナット収容部33から延設されてボード100の他面102に当接するボード当接部34と、を有することとなる。
【0041】
駒片部材31は、図3に示すように、断面コ字状の長尺部材として形成されており、一対の側壁部31aと、一対の側壁部31aを連結する底壁部31bと、を有している。一対の側壁部31a間の間隔は、ナット20の軸心を介して互いに対向する一対の側面24間の幅と同一又は僅かに大きく形成されている。これにより、ナット20は、駒片部材31の一対の側壁部31a間に軸心周りに独立回転不能に収容される。すなわち、ナット20と駒片部材31とは一体的に回転することとなる。
【0042】
駒片部材31の底壁部31bは、底面が平滑に形成されるとともに、長尺方向の一方の端部から中央部に向けて形成された切欠き部31cを有している。切欠き部31cは、底壁部31bの長尺方向に対して垂直な方向の寸法をねじ軸10の外径と同一又は僅かに大きく形成されている。切欠き部31cは、長尺方向において、駒片部材31の底壁部31bの一方の端部から少なくとも両端部間の中間部に至る切欠き長さを有している。また、底壁部31bの長尺方向の両端部には、底面から突出する複数本の爪31dが形成されている。
【0043】
舌片部材32は、図4に示すように、駒片部材31の一対の側壁部31a間の間隔の幅を有する板状片を屈曲形成して形成されており、平板部32aと、平板部32aの一方の端部から傾斜状に延伸される傾斜部32bと、傾斜部32bの端部から平板部32aに平行に延伸される座部32cと、座部32cの端部から直交状に延伸される立上部32dと、立上部32dの端部から直交状に延伸される延伸部32eと、を有して形成されている。立上部32dは、平板部32aを含む平面と座部32cを含む平面の距離と同じ長さ分だけ座部32cから延伸して形成されており、これにより平板部32aと延伸部32eとは略同一平面上に位置している。
【0044】
舌片部材32の傾斜部32bから座部32cに亘って長孔32fが形成されている。長孔32fの幅は、ねじ軸10の外径と同一又は僅かに大きく形成されている。また、舌片部材32の長尺方向の一端を形成する延伸部32eの端部から立上部32dに亘って切欠き部32gが形成されている。切欠き部32gの幅もねじ軸10の外径と同一又は僅かに大きく形成されている。
【0045】
舌片部材32が、駒片部材31の一対の側壁部31a間にて底壁部31bに接合されることにより、アンカー部材30が形成されており、舌片部材32の長孔32fと切欠き部32gは、駒片部材31の切欠き部31cと対向している。具体的には、舌片部材32の長孔32fの座部32c側の端部32hは、駒片部材31の切欠き部31cの中央部側の端部31eよりも切欠き部31cの長尺方向中央側に位置づけられており、平面視で舌片部材32の長孔32fの座部32c側の端部32hと駒片部材31の切欠き部31cの中央部側の端部31eとの間の間隔がねじ軸10の外径に一致もしくは僅かに大きい間隔を有している。また、舌片部材32の切欠き部32gの切欠き縁部は、駒片部材31の切欠き部31cの切欠き縁部に対向した状態で位置付けられている。
【0046】
舌片部材32は、平板部32aのみが駒片部材31の底壁部31bにスポット溶接により接合されており、平板部32aの反対側に位置する延伸部32eと駒片部材31の底壁部31bとは互いに離隔した状態で対向している。また、舌片部材32を構成する材料(例えば金属や樹脂)の弾性復帰力を利用して、舌片部材32の延伸部32eは駒片部材31の底壁部31bに近接離隔自在とされている。
【0047】
図1及び図5に示すように、駒片部材31に舌片部材32を接合することにより、アンカー部材30が形成されることとなる。駒片部材31の底壁部31b及び側壁部31aの中央部と、舌片部材32の傾斜部32b及び座部32c及び立上部32dと、によって、ねじ軸10に螺合しているナット20を収容した状態でナット20とともにねじ軸10に螺合するナット収容部33が形成される。また、駒片部材31の底壁部31b及び側壁部31aの両端部によって、ナット収容部33を中心として相互に反対方向に直線状に延在するように一対のボード当接部34が形成されることとなる。
【0048】
また、舌片部材32の傾斜部32bから座部32cに亘って形成される長孔32fによって、ナット収容部33に収容されたナット20の上面22に対向させてナット収容部33から一方のボード当接部34の先端部に向けて案内孔35が形成される。また、駒片部材31の切欠き部31c及び舌片部材32の切欠き部32gによって、ナット収容部33内に収容されているナット20の下面23に対向させてナット収容部33から他方のボード当接部34の先端部まで切り欠かれて形成される案内溝36が形成されることとなる。
【0049】
舌片部材32の長孔32fにより形成される案内孔35は、図5に示すように、長尺方向に垂直な方向の幅をねじ軸10の外径より大として形成されているため、案内孔35を挿通するねじ軸10の回転を許容する。同様に、駒片部材31及び舌片部材32の切欠き部31c、32gにより形成される案内溝36は、図5に示すように、長尺方向に垂直な方向の幅をねじ軸10の外径より大として形成されているため、案内溝36を挿通するねじ軸10の回転を許容する。
【0050】
このように、案内孔35及び案内溝36によって、アンカー部材30には、ナット収容部33にナット20を収容した状態で、図5に示す挿通姿勢と図7に示す当接姿勢との間でのねじ軸10及びアンカー部材30の相対回転を許容するガイド部が形成されることとなる。
【0051】
また、ナット収容部33には、図5に示す挿通姿勢から図7に示す当接姿勢に向けてのアンカー部材30の揺動を誘発させる揺動誘発部が設けられている。本実施形態において、揺動誘発部は、舌片部材32の傾斜部32b(傾斜面)により形成されている。傾斜部32bにより、挿通姿勢にあるアンカー部材30は、ボード100の挿通孔110を通過中は挿通孔110の内壁に支持されて挿通姿勢を維持することとなるが、挿通孔110を抜け切ると、図6に示すようにねじ軸10が鉛直に伸びている場合は自重により落下し(ねじ軸10が水平に伸びている場合には回転し)、これにより、ナット10の上面22が傾斜部32bに当接して傾斜姿勢に維持されることとなる。
【0052】
また、アンカー部材30は、駒片部材31の底壁部31bと舌片部材32の立上部32d及び延伸部32eによりナット出入口が形成されている。舌片部材32は、平板部32aのみが駒片部材31の底壁部31bに接合されているため、延伸部32eは、駒片部材31の底壁部31bに向けて付勢された状態で駒片部材31の底壁部31bに近接離隔可能とされている。舌片部材32の延伸部32eを駒片部材31の底壁部31bから離隔させることにより、底壁部31bの切欠き縁部から中央部に向かって通路が形成され、この通路にナット20を挿通させることにより、ナット20をナット収容部33に収容することができるようになっている。ここで、駒片部材31の底壁部31bの切欠き縁部側からナット20を収容可能となっているため、底壁部31bの切欠き部31c内を切欠き縁部から中央部に向けてねじ軸10を通過させることができ、これにより、ナット20をねじ軸10の先端部に取り付けた状態でナット20をナット収容部33に収容することができる。
【0053】
次に、図1及び図5〜図7等を用いて、本実施形態に係るアンカー器具1の取付方法について説明する。
【0054】
まず、ねじ軸10に螺合したナット20をアンカー部材30のアンカー収容部33に収容してアンカー器具1を構成する。そして、アンカー部材30の姿勢を図5に示すような挿通姿勢とし、ボード100の挿通孔110に、アンカー部材30とナット20とねじ軸10とを一体的に挿通する。アンカー部材30は、ボード100の挿通孔110を通過中において挿通孔110の内壁に支持されて挿通姿勢を維持する。
【0055】
その後、アンカー部材30が挿通孔110を抜け切ると、挿通孔110からの拘束が解除され、図6に示すように、自重によりアンカー部材30が落下することとなってこのアンカー部材30の傾斜部32bがナット20の上面22に当接し、これによりアンカー部材30が揺動してねじ軸10の軸心に対して傾斜する。この状態でナット20に対してねじ軸10をねじ込んでいくことにより、アンカー部材30は、図1及び図7に示すように、ボード100の他面102に相対的に押圧されて徐々に傾斜姿勢から当接姿勢へと姿勢を変更し、最終的には当接姿勢となってボード100の他面102に当接する。
【0056】
このようにアンカー部材30が当接姿勢となった状態で締付け部材40を締め付けることにより、アンカー部材30と締付け部材40でボード100を挟持し、取り付けを完了する。なお、アンカー部材30が当接姿勢となった段階で、図1に示すようにアンカー器具1の軸決め部材50がボード100の挿通孔110に挿入されており、この軸決め部材50により、ねじ軸10と挿通孔110の軸心とが一致して、ねじ軸10のふらつきが抑制される。
【0057】
以上説明した実施形態に係るアンカー器具1においては、アンカー部材30のナット収容部33に、ねじ軸10に螺合したナット20を収容させることができる。すなわち、アンカー部材30を、ナット20を介してねじ軸10に取り付けることができる。また、アンカー部材30に形成されたガイド部(案内孔35及び案内溝36)により、アンカー部材30とねじ軸10との相対回転を実現させることができ、アンカー部材30は、ねじ軸10に螺合されているナット20をナット収容部33に収容させた状態で、挿通姿勢と当接姿勢との間で揺動することができる。従って、ナット20がねじ軸10の端部のみならず中央部に螺合している場合であってもアンカー部材30を挿通姿勢と当接姿勢の間で揺動させることができるため、ナット20はねじ軸10に対して充分な掛かり代を有することとなり、ナット20及びアンカー部材30がねじ軸10から脱落するのを確実に防止することができる。
【0058】
また、以上説明した実施形態に係るアンカー器具1においては、ねじ軸10に螺合しているナット20をナット収容部33に収容した状態で、ねじ軸10のうちナット20よりも先端側をガイド部の案内孔35に挿通させる一方、ナット20よりも基端側をガイド部の案内溝36に挿通させて、ナット収容部33及びボード当接部34を有するアンカー部材30をねじ軸10に対して揺動させることができる。案内溝36は切り欠かれて形成されているので、アンカー部材30を揺動させる際にねじ軸10に当接する虞はない。この結果、相対回転に伴うねじ軸10とアンカー部材30との干渉が回避されることとなり、アンカー部材30をスムーズに揺動させることができる。
【0059】
また、以上説明した実施形態に係るアンカー器具1においては、ナット収容部33にナット20を収容した状態で、挿通姿勢のアンカー部材30をボード100の一面101側から他面102側に向けて挿通させた後、揺動誘発部(傾斜部32b)により、アンカー部材30の姿勢を挿通姿勢からアンカーとして機能する当接姿勢へと速やかに変更させることができる。すなわち、ボード100の一面101側から他面102側に向けて挿通姿勢のアンカー部材30を挿通させるとアンカー部材30は挿通孔110からの拘束が解除されるが、その後、自重によりアンカー部材30が落下し、ナット20の上面22にアンカー部材30の傾斜部32b(傾斜面)が当接し、これによりアンカー部材30が揺動してねじ軸10の軸心に対して傾斜する。この状態でナット20に対してねじ軸10をねじ込むことにより、アンカー部材30はボード100の他面102に相対的に押圧されて徐々に傾斜姿勢から当接姿勢へと姿勢を変更し、最終的には当接姿勢となってボード100の他面102に当接する。このように、傾斜部32bにより、アンカー部材30に作用する重力のみによって、挿通姿勢にあるアンカー部材30を当接姿勢に変更するためのきっかけを付与することができる。
【0060】
また、以上説明した実施形態に係るアンカー器具1においては、ナット出入口を介して、ナット20をアンカー部材30から自在に着脱することができる。従って、ナット20とアンカー部材30とをそれぞれ別工程にて製造した後、ナット20をねじ軸10に螺合させ、その後ナット収容部33にナット20を収容することにより、ナット20を介してアンカー部材30をねじ軸10に取り付けることができ、アンカー器具1の製造が容易となる。また、ナット20及びねじ軸10と、アンカー部材30と、を別々に搬送し、現場でアンカー器具1を構成することも可能である。
【0061】
また、以上説明した実施形態に係るアンカー器具1においては、ねじ軸10に、挿通孔110の内壁に当接して挿通孔110の軸心とねじ軸10の軸心とを一致させる軸決め部材50を螺合している。アンカー部材30はねじ軸10に対して揺動自在であるため、アンカー部材30を当接姿勢としてボード100の他面102に当接させても、ねじ軸10と挿通孔110との間の隙間を揺動可能範囲としてねじ軸10を揺動させることができるが、軸決め部材50によりこの隙間が埋められることとなり、これによってねじ軸10の挿通孔110内での姿勢を安定させることができる。
【0062】
<第2実施形態>
次に、図8及び図9等を用いて、本発明の第2実施形態に係るアンカー器具について説明する。本実施形態に係るアンカー器具は、第1実施形態に係るアンカー部材30のガイド部(案内孔35及び案内溝36)の構成を変更したものであり、その他の構成については実質的に第1実施形態と共通である。このため、異なる構成を中心に説明することとし、共通する構成については第1実施形態と同様の符号を付して詳細な説明を省略することとする。
【0063】
本実施形態においては、図9に示すアンカー部材30Aを、図5に示すような挿通姿勢から図7に示すような当接姿勢へと揺動させる際に、ねじ軸10の軸心方向とボード当接部34の延設方向とが直交する直交姿勢(図7)よりも余分にアンカー部材30Aを揺動させる「遊び」をガイド部に設けている。
【0064】
具体的には、図8(A)に示すように、駒片部材31Aの切欠き部31Acを第1実施形態における切欠き部31cよりも深くすることにより、切欠き部31Acの中央部側の端部31Aeを第1実施形態における端部31eよりもさらに奥側(他方の端部寄り)に配置する。また、図8(B)に示すように、舌片部材32Aの長孔32Afを第1実施形態における長孔32fよりも長くすることにより、長孔32Afの座部32c側の端部32Ahを第1実施形態における端部32hよりも切欠き部寄りに配置する。
【0065】
このような構成を採用することにより、平面視で舌片部材32Aの長孔32Afの座部32c側の端部32Ahと駒片部材31Aの切欠き部31Acの中央部側の端部31Aeとの間の間隔が拡げられ、いわゆる「遊び」が設けられることとなる。このような遊びにより、ねじ軸10の軸心に対して当接面を直交させた当接姿勢(図7)よりもさらに揺動させた当接姿勢(図9)をとることができる。
【0066】
以上説明した実施形態に係るアンカー器具においては、アンカー部材30Aが、挿通姿勢から直交姿勢となる間においてねじ軸10に対して傾斜する第1の傾斜姿勢となることができ、さらに、直交姿勢よりも余分に揺動してねじ軸10に対して傾斜する第2の傾斜姿勢(図9)となることができ、ねじ軸10に対するアンカー部材30Aの傾斜可能範囲を拡げることができる。この結果、ボードの他面が傾斜している場合や他の部材等の存在により段状となっている場合であっても、アンカー部材30Aをボードの他面に当接させて取り付けることができる。
【0067】
<第3実施形態>
次に、図10及び図11を用いて、本発明の第3実施形態に係るアンカー器具について説明する。本実施形態に係るアンカー器具は、第1実施形態に係るアンカー器具1のナット20をボルト60に変更するとともに、アンカー部材30の舌片部材32の構成を変更したものであり、その他の構成については実質的に第1実施形態と共通である。このため、異なる構成を中心に説明することとし、共通する構成については第1実施形態と同様の符号を付して詳細な説明を省略することとする。
【0068】
本実施形態に係るアンカー器具は、図10に示すように、ねじ軸61及び頭部62を有するボルト60と、ボルト60の頭部62に取り付けられるアンカー部材30Bと、を備え、ボードに形成された挿通孔110にアンカー部材30Bを挿通させた状態でボードに留付けられるものである。
【0069】
本実施形態に係るアンカー部材30Bは、図10に示すように、ボルト60の頭部62を収容する頭部収容部33Bと、頭部収容部33Bから延設され、アンカー部材30Bが挿通孔110に挿通されてボードの一面側から他面側へと移動した際にボードの他面に当接するボード当接部34と、を備えている。また、アンカー部材30Bは、頭部収容部33Bに頭部62を収容した状態で、ボルト60のねじ軸61の軸心方向とボード当接部34の延設方向とが平行となってアンカー部材30Bが挿通孔110に挿通可能な挿通姿勢と、ボルト60のねじ軸61の軸心方向とボード当接部34の延設方向とが交差してボード当接部34がボードの他面に当接可能な当接姿勢と、の間でのねじ軸61及びアンカー部材30Bの相対回転を許容するガイド部が、頭部収容部33Bからボード当接部34に亘って形成されるものである。
【0070】
アンカー部材30Bは、駒片部材31と、図11に示した舌片部材32Bと、を接合して形成したものである。駒片部材31は、第1実施形態で説明したものと同一であるため、詳細な説明を省略する。舌片部材32Bは、第1実施形態における舌片部材32と基本的な構成(平板部32a、傾斜部32Bb、座部32Bc、立上部32d、延伸部32e、切欠き部32g)を共通にしている。本実施形態における舌片部材32Bの傾斜部32Bb及び座部32Bcには、図11に示すように、長孔が形成されていない。ボルト60のねじ軸61は常に頭部62よりも下方に位置するため、ねじ軸61を挿通させる案内孔を形成する必要がないからである。従って、本実施形態においては、駒片部材31及び舌片部材32Bの切欠き部からなる案内溝のみによってガイド部が構成される。
【0071】
以上説明した実施形態に係るアンカー器具においては、アンカー部材30Bの頭部収容部33Bに、ねじ軸61を有するボルト60の頭部62を収容させることができる。すなわち、アンカー部材30Bは、ボルト60の頭部62を介してねじ軸61に取り付けられることとなり、ボルト60の頭部62はねじ軸61と一体的に設けられているため、アンカー部材30Bがボルト60のねじ軸61から脱落するのを確実に防止することができる。また、アンカー部材30Bに形成されたガイド部により、アンカー部材30Bとねじ軸61との相対回転を実現させることができ、アンカー部材30Bは、ねじ軸61に螺合されているボルト60の頭部62を頭部収容部33Bに収容させた状態で挿通姿勢と当接姿勢との間で揺動することができる。本実施形態に係るアンカー器具においては、ねじ軸61に、図示していないナットが螺合されており、このナットを締め付けることにより、ナットとアンカー部材30Bとの間でボード100等を挟持し、これによってアンカー器具をボード100等に固定することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…アンカー器具
10…ねじ軸
20…ナット
22…上面
23…下面
30・30A・30B…アンカー部材
32b…傾斜部(揺動誘発部、傾斜面)
33…ナット収容部
33B…頭部収容部
34…ボード当接部
35…案内孔(ガイド部)
36…案内溝(ガイド部)
40…締付け部材
50…軸決め部材
60…ボルト
61…ねじ軸
62…頭部
100…ボード
101…一面
102…他面
110…挿通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ軸に螺合するナットに取り付けられ、ボードに形成された挿通孔に前記ナットとともに挿通可能なアンカー部材であって、
前記ねじ軸に螺合している前記ナットを収容した状態で前記ナットと一体となって前記ねじ軸の軸心周りに回転するナット収容部と、
前記ナット収容部から延設され、前記アンカー部材が前記挿通孔に挿通されて前記ボードの一面側から他面側へと移動した際に前記ボードの前記他面に当接するボード当接部と、を備えるとともに、
前記ナット収容部に前記ナットを収容した状態で、前記ねじ軸の軸心方向と前記ボード当接部の延設方向とが平行となって前記アンカー部材が前記挿通孔に挿通可能な挿通姿勢と、前記ねじ軸の軸心方向と前記ボード当接部の延設方向とが交差して前記ボード当接部が前記ボードの前記他面に当接可能な当接姿勢と、の間での前記ねじ軸及び前記アンカー部材の相対回転を許容するガイド部が、前記ナット収容部から前記ボード当接部に亘って形成される、
アンカー部材。
【請求項2】
前記ボード当接部は、
前記ナット収容部を中心として相互に反対方向に直線状に延在するように一対設けられ、
前記ガイド部は、
前記ナット収容部に収容された前記ナットの上面に対向させて前記ナット収容部から一方の前記ボード当接部の先端部に向けて長孔状に形成される案内孔と、
前記ナットの下面に対向させて前記ナット収容部から他方の前記ボード当接部の先端部まで切り欠かれて形成される案内溝と、を有するものである、
請求項1に記載のアンカー部材。
【請求項3】
前記ナット収容部には、
前記挿通姿勢から前記当接姿勢に向けての前記アンカー部材の揺動を誘発させる揺動誘発部が設けられている、
請求項1又は2に記載のアンカー部材。
【請求項4】
前記揺動誘発部は、
前記ナットの上面に当接して前記アンカー部材の姿勢を前記挿通姿勢と前記当接姿勢の間の傾斜姿勢とする傾斜面を有する、
請求項3に記載のアンカー部材。
【請求項5】
前記ねじ軸に螺合した前記ナットを前記ナット収容部に出し入れ自在とするナット出入口が設けられる、
請求項1から4の何れか一項に記載のアンカー部材。
【請求項6】
前記ガイド部には、
前記アンカー部材を前記挿通姿勢から前記当接姿勢へと揺動させる際に、前記ねじ軸の軸心方向と前記ボード当接部の延設方向とが直交する直交姿勢よりも余分に前記アンカー部材を揺動させる遊びが設けられている、
請求項1から5の何れか一項に記載のアンカー部材。
【請求項7】
ねじ軸と、このねじ軸に螺合するナットと、このナットに取り付けられるアンカー部材と、を備え、ボードに形成された挿通孔に前記アンカー部材を挿通させた状態で前記ボードに留付けられるアンカー器具であって、
前記アンカー部材は、請求項1から6の何れか一項に記載のアンカー部材である、
アンカー器具。
【請求項8】
ねじ軸及び頭部を有するボルトの前記頭部に取り付けられ、ボードに形成された挿通孔に前記頭部とともに挿通可能なアンカー部材であって、
前記ボルトの前記頭部を収容する頭部収容部と、
前記頭部収容部から延設され、前記アンカー部材が前記挿通孔に挿通されて前記ボードの一面側から他面側へと移動した際に前記ボードの前記他面に当接するボード当接部と、を備えるとともに、
前記頭部収容部に前記頭部を収容した状態で、前記ボルトの前記ねじ軸の軸心方向と前記ボード当接部の延設方向とが平行となって前記アンカー部材が前記挿通孔に挿通可能な挿通姿勢と、前記ねじ軸の軸心方向と前記ボード当接部の延設方向とが交差して前記ボード当接部が前記ボードの前記他面に当接可能な当接姿勢と、の間での前記ねじ軸及び前記アンカー部材の相対回転を許容するガイド部が、前記頭部収容部から前記ボード当接部に亘って形成される、
アンカー部材。
【請求項9】
ねじ軸及び頭部を有するボルトと、前記ボルトの前記頭部に取り付けられるアンカー部材と、を備え、ボードに形成された挿通孔に前記アンカー部材を挿通させた状態で前記ボードに留付けられるアンカー器具であって、
前記アンカー部材は、請求項8に記載のアンカー部材である、
アンカー器具。
【請求項10】
前記ねじ軸には、
前記挿通孔の内壁に当接して前記挿通孔の軸心と前記ねじ軸の軸心とを一致させる軸決め部材が螺合されている、
請求項7又は9に記載のアンカー器具。
【請求項1】
ねじ軸に螺合するナットに取り付けられ、ボードに形成された挿通孔に前記ナットとともに挿通可能なアンカー部材であって、
前記ねじ軸に螺合している前記ナットを収容した状態で前記ナットと一体となって前記ねじ軸の軸心周りに回転するナット収容部と、
前記ナット収容部から延設され、前記アンカー部材が前記挿通孔に挿通されて前記ボードの一面側から他面側へと移動した際に前記ボードの前記他面に当接するボード当接部と、を備えるとともに、
前記ナット収容部に前記ナットを収容した状態で、前記ねじ軸の軸心方向と前記ボード当接部の延設方向とが平行となって前記アンカー部材が前記挿通孔に挿通可能な挿通姿勢と、前記ねじ軸の軸心方向と前記ボード当接部の延設方向とが交差して前記ボード当接部が前記ボードの前記他面に当接可能な当接姿勢と、の間での前記ねじ軸及び前記アンカー部材の相対回転を許容するガイド部が、前記ナット収容部から前記ボード当接部に亘って形成される、
アンカー部材。
【請求項2】
前記ボード当接部は、
前記ナット収容部を中心として相互に反対方向に直線状に延在するように一対設けられ、
前記ガイド部は、
前記ナット収容部に収容された前記ナットの上面に対向させて前記ナット収容部から一方の前記ボード当接部の先端部に向けて長孔状に形成される案内孔と、
前記ナットの下面に対向させて前記ナット収容部から他方の前記ボード当接部の先端部まで切り欠かれて形成される案内溝と、を有するものである、
請求項1に記載のアンカー部材。
【請求項3】
前記ナット収容部には、
前記挿通姿勢から前記当接姿勢に向けての前記アンカー部材の揺動を誘発させる揺動誘発部が設けられている、
請求項1又は2に記載のアンカー部材。
【請求項4】
前記揺動誘発部は、
前記ナットの上面に当接して前記アンカー部材の姿勢を前記挿通姿勢と前記当接姿勢の間の傾斜姿勢とする傾斜面を有する、
請求項3に記載のアンカー部材。
【請求項5】
前記ねじ軸に螺合した前記ナットを前記ナット収容部に出し入れ自在とするナット出入口が設けられる、
請求項1から4の何れか一項に記載のアンカー部材。
【請求項6】
前記ガイド部には、
前記アンカー部材を前記挿通姿勢から前記当接姿勢へと揺動させる際に、前記ねじ軸の軸心方向と前記ボード当接部の延設方向とが直交する直交姿勢よりも余分に前記アンカー部材を揺動させる遊びが設けられている、
請求項1から5の何れか一項に記載のアンカー部材。
【請求項7】
ねじ軸と、このねじ軸に螺合するナットと、このナットに取り付けられるアンカー部材と、を備え、ボードに形成された挿通孔に前記アンカー部材を挿通させた状態で前記ボードに留付けられるアンカー器具であって、
前記アンカー部材は、請求項1から6の何れか一項に記載のアンカー部材である、
アンカー器具。
【請求項8】
ねじ軸及び頭部を有するボルトの前記頭部に取り付けられ、ボードに形成された挿通孔に前記頭部とともに挿通可能なアンカー部材であって、
前記ボルトの前記頭部を収容する頭部収容部と、
前記頭部収容部から延設され、前記アンカー部材が前記挿通孔に挿通されて前記ボードの一面側から他面側へと移動した際に前記ボードの前記他面に当接するボード当接部と、を備えるとともに、
前記頭部収容部に前記頭部を収容した状態で、前記ボルトの前記ねじ軸の軸心方向と前記ボード当接部の延設方向とが平行となって前記アンカー部材が前記挿通孔に挿通可能な挿通姿勢と、前記ねじ軸の軸心方向と前記ボード当接部の延設方向とが交差して前記ボード当接部が前記ボードの前記他面に当接可能な当接姿勢と、の間での前記ねじ軸及び前記アンカー部材の相対回転を許容するガイド部が、前記頭部収容部から前記ボード当接部に亘って形成される、
アンカー部材。
【請求項9】
ねじ軸及び頭部を有するボルトと、前記ボルトの前記頭部に取り付けられるアンカー部材と、を備え、ボードに形成された挿通孔に前記アンカー部材を挿通させた状態で前記ボードに留付けられるアンカー器具であって、
前記アンカー部材は、請求項8に記載のアンカー部材である、
アンカー器具。
【請求項10】
前記ねじ軸には、
前記挿通孔の内壁に当接して前記挿通孔の軸心と前記ねじ軸の軸心とを一致させる軸決め部材が螺合されている、
請求項7又は9に記載のアンカー器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−33167(P2011−33167A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182318(P2009−182318)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【出願人】(000154853)株式会社北浦工業 (21)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【出願人】(000154853)株式会社北浦工業 (21)
【Fターム(参考)】
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