説明

アンカ打ち込み治具及びアンカ打ち込み治具を用いたアンカ施工方法

【課題】 拡張部打ち込み式アンカの機械打ち込みを可能とする。
【解決手段】 本体打ち込み式アンカの打ち込み治具20であり、アンカ本体8の被打撃端面10に当接する打撃部22を先端側に備えた治具本体21と、治具本体21から後方へ突設して設けられ、六角軸シャンクスリーブ31と工具を着脱するチャック部32を備え、回転と打撃を同時に行う回転・打撃動作が可能な穿孔機械30への取り付け部26を有し、取り付け部26は、穿孔機械30のチャック部32に着脱自在に係止されて少なくとも軸方向の移動が拘束される係止部27と、係止部27から後方へ延設され、前記六角軸シャンクスリーブ31に挿脱自在で、係止部27がチャック部32に係止された状態にあるとき、後端が前記六角軸シャンクスリーブ31の底に届く長さを有する丸軸シャンク部28を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンカ打ち込み治具及びアンカ打ち込み治具を用いたアンカ施工方法に係り、とくに拡張部打ち込み式アンカを穿孔機械を用いて打撃モードと打撃・回転モードのいずれでも打ち込み可能としたアンカ打ち込み治具及びアンカ打ち込み治具を用いたアンカ施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート打設後に各種の物を取り付ける為に使用されるあと施工アンカの中に、拡張部打ち込み式アンカがある。この拡張部打ち込み式アンカの内、本体打ち込み式と呼ばれるタイプの従来の施工法は、図1に示すようにまず、ビット工具1を装着した電動ドリル(図示せず)によりコンクリートの母材2にアンカホール3を穿孔し(図1(1))、アンカホール1の内部を吸引機械4で清掃後(図1(2))、本体打ち込み式アンカ5を、円筒状で内面6にめねじ部7を有するアンカ本体8の先端にコーン9が嵌められた状態でアンカホール3に挿入し(図1(3))、アンカ本体8の打込み端面10に専用の打ち込み工具11を当て、手ハンマ12を持って叩き打設する(図2(1))。アンカ本体8の先端側に設けられた拡張部13がコーン9に嵌まりながら外側に拡開し、母材2に食い込んで固定される。打設が完了したら、所望の取り付け部材14とワッシャ15を介装して、ボルト16をアンカ本体8のめねじ部7にねじ止めする(図2(2))。
【0003】
また、拡張部打ち込み式アンカの内、スリーブ打ち込み式と呼ばれるタイプの従来の施工法は、コンクリートの母材にアンカホールを電動ドリルで穿孔し、ホール内を清掃後、スリーブ打ち込み式アンカを、アンカ本体としてのテーパ付ボルトに円筒状のスリーブが被嵌された状態でアンカホールに挿入し、スリーブの打ち込み端面に専用の打ち込み工具を当て、手ハンマを持って叩き打設する。スリーブの先端側に設けられた拡張部がテーパ付ボルトのテーパ部に嵌まりながら外側に拡開し、コンクリートの母材に食い込んで固定される。打設が完了したら、所望の取り付け部材とワッシャを介装して、ナットをテーパ付ボルトのおねじにねじ止めする。
【0004】
あと施工アンカには、他に自穿孔アンカと呼ばれるタイプがあり、中空で先端にビットを有するボルト状のアンカ本体を、取り付け部材とワッシャを介装してコンクリート母材に電動回転機械で回して埋め込み、更にアンカ本体の中心に拡張ピンを手ハンマで打ち込みアンカ本体の先端側に設けられた拡張部を拡開して固定するものである。
【0005】
従来の拡張部打ち込み式アンカは、専用の打ち込み工具を持って手ハンマで打ち込み作業を行い、拡張部の拡開、すなわちアンカの固定を手ハンマを介して伝わる感触で判断するため、熟練作業者が必要となり、作業者の熟練度によって、施工結果にばらつきが生じる恐れがある。また、人力作業では、足場上で天井や側壁面に対して手ハンマで叩いて打ち込みを行う場合に、苦渋作業となり、施工結果にばらつきが生じ易かったり、施工時間が掛かったりしていた。
自穿孔アンカについては、アンカの回転から拡張ピンの打設までを、1台の電動機械で行えるようにしたアダプターが開発されているが(下記特許文献1参照)、回転動作と打撃動作を切り換えて施工することを前提としているため、電動機械には、回転モードと打撃モードを選択的に切り換え可能なタイプしか使用できない。また、適用対象も自穿孔アンカに限定され、拡張部打ち込み式には使用できず、アダプタの構造も複雑で、経済性、耐久性が劣る欠点がある。
【0006】
【特許文献1】特開2002−61299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した従来技術の問題に鑑み、拡張部打ち込み式アンカの機械打ち込みが可能で、適用対象の穿孔機械の種類の制約も少ない、アンカ打ち込み治具及びアンカ打ち込み治具を用いたアンカ施工方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、先端側に拡張部を有する円筒部材を打ち込み、母材内で拡張部を拡開させる拡張部打ち込み式アンカの打ち込み治具であって、前記円筒部材の被打撃端面に当接する打撃部を先端側に備えた棒状の治具本体と、治具本体の後端から後方へ突設して設けられ、シャンクスリーブと工具を着脱するチャック部を備えた打撃動作または回転と打撃を同時に行う回転・打撃動作が可能な穿孔機械への取り付け部と、を有し、取り付け部は、前記穿孔機械の前記チャック部に着脱自在に係止されて少なくとも軸方向の移動が拘束される係止部と、前記係止部から後方へ延設され、前記シャンクスリーブ内に挿脱自在で、係止部が前記チャック部に係止された状態にあるとき、後端が前記シャンクスリーブの底に届く長さを有する丸軸シャンク部とを含むことを特徴としており、前記治具本体の打撃部には、複数の突起を設けても良く、この複数の突起は等間隔に設けるようにしても良い。拡張部打ち込み式アンカが本体打ち込み式アンカであり、前記円筒部材がアンカ本体の場合、前記治具本体の先端に、前記アンカ本体の内径と略同径でアンカ本体の内部に挿脱自在な突出部を設けておくと良い。また、拡張部打ち込み式アンカがスリーブ打ち込み式アンカであり、前記円筒部材が、先端にテーパ部を有するアンカ本体に被嵌されたスリーブの場合、前記治具本体の先端に、前記アンカ本体を内部に挿入可能な穴部を設ける。
【0009】
他の発明では、先端側に拡張部を有する円筒部材を打ち込み、母材内で拡張部を拡開させる拡張部打ち込み式アンカと、シャンクスリーブと工具を着脱するチャック部を備え、打撃動作または回転と打撃を同時に行う回転・打撃動作が可能な穿孔装置と、前記拡張部打ち込み式アンカの前記円筒部材の被打撃端面に当接する打撃部を先端側に備えた棒状の治具本体と、治具本体の後端から後方へ突設して設けられ、前記穿孔装置への取り付け部と、を有し、取り付け部は、前記穿孔機械の前記チャック部に着脱自在に係止されて軸方向の移動が拘束される係止部と、前記係止部から後方へ延設され、前記シャンクスリーブ内に挿脱自在で、係止部が前記チャック部に係止された状態にあるとき、後端が前記シャンクスリーブの底に届く長さを有する丸軸シャンク部と、を含むアンカ打ち込み治具と、を用意し、母材にアンカホールを穿孔して前記拡張部打ち込み式アンカを挿入し、前記アンカ打ち込み治具の取り付け部の丸軸シャンク部を前記穿孔機械のシャンクスリーブに挿入するとともに、係止部をチャック部に係止させた状態で、アンカ打ち込み治具の打撃部を拡張部打ち込み式アンカの円筒部材の被打撃端面に当てて打撃動作または回転・打撃動作モードで打撃すること、を特徴としており、前記治具本体の打撃部には複数の突起を設けても良く、この複数の突起は等間隔に設けるようにしても良い。拡張部打ち込み式アンカが本体打ち込み式アンカであり、前記円筒部材がアンカ本体の場合、前記治具本体の先端に、前記アンカ本体の内径と略同径でアンカ本体の内部に挿脱自在な突出部を設けておくと良い。また、拡張部打ち込み式アンカがスリーブ打ち込み式アンカであり、前記円筒部材が、先端にテーパ部を有するアンカ本体に被嵌されたスリーブの場合、前記治具本体の先端に、前記アンカ本体を内部に挿入可能な穴部を設ける。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機械の打撃力を利用して誰でも素早く確実にアンカの打設ができるので、手ハンマを用いた人力による打ち込みのように、作業員の疲労、熟練度による施工結果のばらつきが少ない。また、機械の回転力は伝えず、打撃力のみ伝達するための治具の構造が簡単で経済性・耐久性が良い。また、本体打ち込み式アンカ、スリーブ打ち込み式アンカなど、先端側に拡張部を有する円筒部材を打設する種々のタイプのアンカに適用でき、打撃動作モードで動作する打撃機械や、打撃動作モードまたは打撃と回転を同時に行う打撃・回転動作モードで動作する打撃・回転機械など種々の穿孔機械を用いることができる。また、他の発明によれば、治具の打撃部に設けた突起でアンカの被打撃端面に打撃痕を形成し、打設済か否かの施工管理に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本体打ち込み式アンカを対象としたアンカ打ち込み治具の場合、棒状の治具本体先端部の打撃部から、円筒状のアンカ本体の内径と略同径でアンカ本体の内部に挿入自在な突出部を設け、打撃部の打ち込み端面はアンカ本体の被打撃端面と同じ円環状とすることで、打撃機械または回転・打撃機械等の穿孔機械に取り付けたアンカ打ち込み治具でアンカ本体を打設する際、突出部をアンカ本体に挿入することで、衝撃で治具本体の打撃部がアンカ本体の被打撃端面から外れるのを防ぎ、安定した打設動作が可能となる。スリーブ打ち込み式アンカを対象としたアンカ打ち込み治具の場合、治具本体の打ち込み端面から、アンカ本体の外径と略同径でアンカ本体を内部に挿入自在な穴部を設け、打ち込み端面はスリーブの被打撃端面と同じ円環状とすることで、打撃機械または回転・打撃機械に取り付けたアンカ打ち込み治具でアンカ本体を打設する際、アンカ本体を穴部に挿入することで、治具本体がアンカ本体に衝突することなく、確実にスリーブの打設を実行できる。治具本体の打撃部に、超硬ビットの突起を等間隔に複数設けて、打設によりアンカの円筒部材の打設端面に形成される打撃痕(圧痕)の有無により、打設済のアンだげカと未打設のアンカとの識別を容易にできる。治具のシャンクは丸軸とし、シャンクスリーブが断面角形または丸形の打撃機械に取り付けた場合、打撃動作モードで打設できる。シャンクスリーブが断面多角形または丸形の打撃・回転機械に取り付けた場合、打撃動作モードまたは打撃と回転を同時に行う打撃・回転動作モードのいずれでも打設できる。
【実施例1】
【0012】
図3は本発明の一つの実施例に係るアンカ打ち込み治具の正面図、図4は右側面図、図5は左側面図である。20は全体が略棒状に形成されたアンカ打ち込み治具(以下、「治具」と略す)であり、拡張部打ち込み式アンカの内、本体打ち込み式アンカ(図1の符号5参照)を適用対象とする。21は中実で円柱状の治具本体であり、アンカ本体(図1の符号8参照)の外径と同一の直径を有し、先端部(図3の左側)がアンカ本体の被打撃面に当接する打撃部22となっている。23は治具本体21の先端の打ち込み端面であり、24は打ち込端面23から前方に突設された突出部であり、治具本体21と同心でアンカ本体の内径と略同径で僅かに小さい直径を有し、アンカ本体の内部に挿脱自在に挿入できるようになっている。打ち込み端面23は円環状になっており、25は打ち込み端面23に等間隔離してロウ付けで固着された超硬ビットから成る打撃痕形成用の4つの突起である。26は治具本体21の後端側(図3の右側)から後方へ突設して設けられ、断面が正六角形の六角軸シャンクスリーブ(図6乃至図8の符号31参照)と工具を着脱するチャック部(図6の符号32参照)を備えた打撃機械または回転・打撃機械(図6の符号30参照)等の穿孔機械へ取り付けるための取り付け部である。取り付け部26の内、27は打撃機械または回転・打撃機械の前記チャック部32に着脱自在に係止されて軸方向の移動が拘束される係止部であり、断面が六角形に形成されている。28は六角軸シャンクスリーブの内接円より僅かに小さい径を有する丸軸シャンク部であり、係止部27から後方へ延設され、回転・打撃機械の前記六角軸シャンクスリーブ31の中に挿脱自在に形成されている。丸軸シャンク部28は、係止部27が前記チャック部32に係止された状態にあるとき、先端が前記六角軸シャンクスリーブ31の底に届く長さを有し、六角軸シャンクスリーブ31の底から打撃力を受けられるようになっている。但し、丸軸シャンク部28の径が六角軸シャンクスリーブ31の内接円より僅かに小さいので(図8参照)、六角軸シャンクスリーブ31が軸回りに回転しても丸軸シャンク部28が相対的に滑って該丸軸シャンク部28に回転力が伝わらないようになっている。
【0013】
図6乃至図8は本体打ち込み式アンカの機械施工方法の説明図であり、以下、これらの図を用いて治具20の使用法を説明する。ここでは、穿孔機械の一つの打撃・回転機械の例として六角軸シャンクスリーブと工具を着脱するチャック部を備えた電動ハンマドリルを用いる。
(1)準備
予め、コンクリート等の母材2に、ビットを取り付けた電動ハンマドリルを持ち、該電動ハンマドリルにより、所定深さのアンカホール3を穿孔し(図6(1)参照)、アンカホール3の内部を吸引機械により清掃後、本体打ち込み式アンカ5を挿入しておく。本体打ち込み式アンカ5は、円筒状で内面6にめねじ部7を有するアンカ本体8の先端にコーン9が嵌めてある(図6(2)参照)。
【0014】
(2)拡張部の拡開
次に、ビットを外した電動ハンマドリル30に治具20を取り付ける。具体的には、治具20の丸軸シャンク部28を電動ハンマドリル30の六角軸シャンクスリーブ31に挿入し、かつ係止部27をチャック部32に係止させ治具20の軸方向移動を拘束する(図6(2)参照)。電動ハンマドリル30を持って治具20の突出部24をアンカ本体8のめねじ部7に挿入しながら、打撃部22の打ち込み端面23の突起25をアンカ本体8の被打撃端面10に当て、電動ハンマドリル30により打撃・回転を作動させる(図6(3)参照)。打撃・回転動作時、六角軸シャンクスリーブ31は回転動作と丸軸シャンク部28の端面(図3の右端面)に対する打撃動作を同時に行うが、丸軸シャンク部28が六角軸シャンクスリーブ31に対し軸回りに滑るので回転はせず、打撃力のみ丸軸シャンク部28に伝わり、治具本体21の打撃部22がアンカ本体8の被打撃端面10を打撃し、アンカ本体8を打設する。アンカ本体8の先端側の拡張部11がコーン9に嵌り込み、外側への拡開していく。アンカ本体8の被打撃端面10が母材1と面一となれば拡開が完了するので電動ハンマドリル30と治具20を取り外し(図7(1)参照)、更に治具20をアンカ本体8から離す(図7(2)参照)。複数の本体打ち込み式アンカを機械施工する場合、上記した(1)と(2)の作業を必要数分だけ行う。
【0015】
(3)打撃痕
図7(3)に示す如く、打設済の本体打ち込み式アンカ5a乃至5cのアンカ本体8a乃至8cの被打撃端面10には4つの突起25による4つの打撃痕(圧痕)40が打設済アンカの目印として残るので、複数のアンカを施工する場合に未打設のアンカ(図7(3)の本体打ち込み式アンカ5d、アンカ本体8d参照)を容易に判別でき、施工管理がし易く作業能率が向上する。
(4)取り付け部材の固定
アンカ本体8のめねじ部7に所望の取り付け部材12と、ワッシャ13を介してボルト14をねじ止めすることで、施工が完了する(図7(4)参照)。
【0016】
なお、図9に示す如く電動ハンマドリル30AがSDSシャンクスリーブ31Aを有する場合は、回転力は伝達せず、打撃力のみ伝達するSDS用アタッチメント41を電動ハンマドリル30Aに取り付け、該SDS用アタッチメント41に取り付け部26を取り付けることで治具20により、本体打ち込み式アンカ5の機械施工が可能である。
【0017】
この実施例によれば、電動ハンマドリル等の穿孔機械の打撃力を利用して誰でも素早く確実に本体打ち込み式アンカの打設ができるので、手ハンマを用いた人力による打ち込みのように、作業員の疲労、熟練度による施工結果のばらつきが少ない。また、回転力は伝えず、打撃力のみ伝達するための構造が簡単で経済性・耐久性が良い。また、打撃動作モードで動作する打撃機械や、打撃動作モードまたは打撃と回転を同時に行う打撃・回転動作モードで動作する打撃・回転機械など種々の穿孔機械を用いることができる。また、治具20の打撃部22に設けた突起23で本体打ち込み式アンカ5の被打撃端面10に打撃痕(圧痕)が形成されるため、打設済か否かの施工管理が容易となる。
【実施例2】
【0018】
図10は本発明の他の実施例に係るアンカ打ち込み治具の正面図、図11は右側面図、図12は左側面図である。20Aは全体が略棒状に形成されたアンカ打ち込み治具(以下、「治具」と略す)であり、拡張部打ち込み式アンカの内、スリーブがテーパ付ボルトに被嵌されたスリーブ打ち込み式アンカ(図13の符号参照)を適用対象とする。21Aは円柱状の治具本体であり、スリーブ(図13の符号参照)の外径と同一の直径を有し、先端部(図10の左側)がスリーブの被打撃面に当接する打撃部22Aとなっている。23は治具本体21Aの先端の打ち込み端面であり、24Aは打ち込端面23から穿設された円柱状の穴部であり、治具本体21Aと同心でアンカ本体の内径と略同径で僅かに小さい直径を有し、アンカ本体の内部に挿脱自在に挿入できるようになっている。打ち込み端面23は円環状になっており、25は打ち込み端面23に等間隔離してロウ付けで固着された超硬ビットから成る打撃痕形成用の4つの突起である。26は本体治具21の後端側(図3の右側)から後方へ突設して設けられ、断面が六角形の六角軸シャンクスリーブ(図13の符号31参照)と工具を着脱するチャック部(図13の符号32参照)を備えた打撃機械または回転・打撃機械(図13の符号30参照)等の穿孔機械へ取り付けるための取り付け部である。この取り付け部26は、図3と全く同様に構成されている。
【0019】
図13と図14はスリーブ打ち込み式アンカの施工方法の説明図であり、以下、これらの図を用いて治具20Aの使用法を説明する。ここでは、穿孔機械の一つの打撃・回転機械の例として六角軸シャンクスリーブと工具を着脱するチャック部を備えた電動ハンマドリルを用いる。
(1)準備
予め、コンクリート等の母材2に、ビットを取り付けた電動ハンマドリルを持ち、該電動ハンマドリルにより、所定深さのアンカホール3を穿孔し(図13(1)参照)、アンカホール3の内部を吸引機械により清掃後、スリーブ打ち込み式アンカ50を挿入しておく。スリーブ打ち込み式アンカ50は、先端側にテーパ部51を有するアンカ本体としてのテーパ付ボルト52にスリーブ53が被嵌してある(図13(2)参照)。スリーブ53の先端側には拡張部54が設けられており、テーパ付ボルト52にはおねじ部55が設けられている。
【0020】
(2)拡張部の拡開
次に、ビットを外した電動ハンマドリル30に治具20Aを取り付ける。具体的には、治具20Aの丸軸シャンク部28を電動ハンマドリル30の六角軸シャンクスリーブ31に挿入し、かつ係止部27をチャック部32に係止させ治具20の軸方向移動を拘束する(図13(2)参照)。電動ハンマドリル30を持って治具20Aの穴部24Aにテーパ付ボルト52のおねじ部55を挿入しながら、打撃部22Aの打ち込み端面23の突起25をスリーブ53の被打撃端面56に当て、電動ハンマドリル30により打撃・回転を作動させる(図13(3)参照)。打撃・回転動作時、六角軸シャンクスリーブ31は回転動作と丸軸シャンク部28の端面(図10の右端面)に対する打撃動作を同時に行うが、丸軸シャンク部28が六角軸シャンクスリーブ31に対し軸回りに滑るので回転はせず、打撃力のみ丸軸シャンク部28に伝わり、治具本体21Aの打撃部22Aがスリーブ53の被打撃端面56を打撃により打設する。スリーブ53の先端側の拡張部54がテーパ部51に嵌り込み、外側への拡開していく。スリーブ53の被打撃端面56が母材2と面一となれば拡開が完了するので電動ハンマドリル30と治具20Aを取り外し(図14(1)参照)、更に治具20Aをテーパ付ボルト52から離す(図14(2)参照)。複数のスリーブ打ち込み式アンカを施工する場合、上記した(1)と(2)の作業を必要数分だけ行う。
【0021】
図14(3)に示す如く、打設済のスリーブ打ち込み式アンカ50a乃至50cのスリーブ53a乃至53cの被打撃端面56には治具本体21Aの4つの突起25による4つの打撃痕(圧痕)57が打設済アンカの目印として残るので、複数のアンカを施工する場合に未打設のアンカ(図14(3)のスリーブ打ち込み式アンカ50d、スリーブ53a乃至53c参照)を容易に判別でき、施工管理がし易く作業能率が向上する。
(4)取り付け部材の固定
テーパ付ボルト52のおねじ部55に所望の取り付け部材60と、ワッシャ61を介してナット62をねじ止めすることで、施工が完了する(図14(4)参照)。
【0022】
なお、図15に示す如く打撃動作モードと打撃・回転動作モードとを切り替え可能な動作電動ハンマドリル30AがSDSシャンクスリーブ31Aを有するタイプの場合は、回転力は伝達せず、打撃力のみ伝達するSDS用アタッチメント41を電動ハンマドリル30Aに取り付け、該SDS用アタッチメント41に取り付け部26を取り付けることで治具20Aにより、スリーブ打ち込み式アンカ50の機械施工が可能である。
【0023】
この実施例によれば、電動ハンマドリル等の穿孔機械の打撃力を利用して誰でも素早く確実にスリーブ打ち込み式アンカの打設ができるので、手ハンマを用いた人力による打ち込みのように、作業員の疲労、熟練度による施工結果のばらつきが少ない。また、回転力は伝えず、打撃力のみ伝達するための構造が簡単で経済性・耐久性が良い。また、打撃動作モードで動作する打撃機械や、打撃動作モードまたは打撃と回転を同時に行う打撃・回転動作モードで動作する打撃・回転機械など種々の穿孔機械を用いることができる。また、治具20Aの打撃部22Aに設けた突起25でスリーブ打ち込み式アンカ50の被打撃端面56に打撃痕(圧痕)57が形成されるため、打設済か否かの施工管理が容易となる。
【0024】
なお、上記した各実施例では治具20、20Aを電動ハンマドリル30に取り付ける場合で説明したが、打撃動作モードのみ有する電動ハンマでの施工も可能であり、また、電動式でなくエア式の打撃機械または打撃・回転機械を用いることもできる。加えて、打撃機械または打撃・回転機械のシャンクスリーブは必ずしも六角軸タイプでなくてもよく、丸軸タイプでも使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、本体打ち込み式アンカ、スリーブ打ち込み式アンカなど、先端に拡張部を有する円筒状のアンカ本体を打ち込み、母材内で拡張部を拡開させる拡張部打ち込み式アンカに適用できる。また、打撃動作モードまたは打撃動作と回転動作を同時に行う打撃・回転動作モードで作動可能な各種の穿孔機械に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来の手ハンマを用いた人力によるアンカ施工方法の説明図である。
【図2】従来の手ハンマを用いた人力によるアンカ施工方法の説明図である。
【図3】本発明に係る本体打ち込み式アンカ用のアンカ打ち込み治具の正面図である(実施例1)。
【図4】図3の左側面図である。
【図5】図3の右側面図である。
【図6】本体打ち込み式アンカの機械施工方法を示す一部破断した説明図である。
【図7】本体打ち込み式アンカの機械施工方法を示す一部破断した説明図である。
【図8】図6のVIII−VIII´線に沿った断面図である。
【図9】本体打ち込み式アンカの機械施工方法の説明図である。
【図10】本発明に係るスリーブ打ち込み式アンカ用のアンカ打ち込み治具の正面図である(実施例2)。
【図11】図10の左側面図である。
【図12】図10の右側面図である。
【図13】スリーブ打ち込み式アンカの機械施工方法の説明図である。
【図14】スリーブ打ち込み式アンカの機械施工方法の説明図である。
【図15】スリーブ打ち込み式アンカの機械施工方法の説明図である。
【符号の説明】
【0027】
2 母材
3 アンカホール
5、5a〜5d 本体打ち込み式アンカ
8、8a〜8d アンカ本体
9 コーン
10、56 被打撃端面
11、54 拡張部
20、20A アンカ打ち込み治具
21、21A 治具本体
22、22A 打撃部
23 打ち込み端面
24 突出部
24A 穴部
25 突起
26 取り付け部
27 係止部
28 丸軸シャンク部
30、30A 電動ハンマドリル
31 六角軸シャンクスリーブ
31A SDSシャンクスリーブ
32 チャック部
40、57 打撃痕
50 スリーブ打ち込み式アンカ
51 テーパ部
52 テーパ付ボルト
53 スリーブ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に拡張部を有する円筒部材を打ち込み、母材内で拡張部を拡開させる拡張部打ち込み式アンカの打ち込み治具であって、
前記円筒部材の被打撃端面に当接する打撃部を先端側に備えた棒状の治具本体と、
治具本体の後端から後方へ突設して設けられ、シャンクスリーブと工具を着脱するチャック部を備えた打撃動作または回転と打撃を同時に行う回転・打撃動作が可能な穿孔機械への取り付け部と、
を有し、
取り付け部は、前記穿孔機械の前記チャック部に着脱自在に係止されて少なくとも軸方向の移動が拘束される係止部と、
前記係止部から後方へ延設され、前記シャンクスリーブ内に挿脱自在で、係止部が前記チャック部に係止された状態にあるとき、後端が前記シャンクスリーブの底に届く長さを有する丸軸シャンク部と、
を含むこと、
を特徴とするアンカ打ち込み治具。
【請求項2】
前記治具本体の打撃部に打撃痕形成用の複数の突起を設けたこと、
を特徴とする請求項1記載のアンカ打ち込み治具。
【請求項3】
先端側に拡張部を有する円筒部材を打ち込み、母材内で拡張部を拡開させる拡張部打ち込み式アンカと、
シャンクスリーブと工具を着脱するチャック部を備え、打撃動作または回転と打撃を同時に行う回転・打撃動作が可能な穿孔装置と、
前記拡張部打ち込み式アンカの前記円筒部材の被打撃端面に当接する打撃部を先端側に備えた棒状の治具本体と、治具本体の後端から後方へ突設して設けられ、前記穿孔装置への取り付け部と、を有し、取り付け部は、前記穿孔機械の前記チャック部に着脱自在に係止されて軸方向の移動が拘束される係止部と、前記係止部から後方へ延設され、前記シャンクスリーブ内に挿脱自在で、係止部が前記チャック部に係止された状態にあるとき、後端が前記シャンクスリーブの底に届く長さを有する丸軸シャンク部と、を含むアンカ打ち込み治具と、を用意し、
母材にアンカホールを穿孔して前記拡張部打ち込み式アンカを挿入し、
前記アンカ打ち込み治具の取り付け部の丸軸シャンク部を前記穿孔機械のシャンクスリーブに挿入するとともに、係止部をチャック部に係止させた状態で、アンカ打ち込み治具の打撃部を拡張部打ち込み式アンカの円筒部材の被打撃端面に当てて打撃動作または回転・打撃動作モードで打撃すること、
を特徴とするアンカ打ち込み治具を用いたアンカ施工方法。
【請求項4】
前記アンカ打ち込み治具本体の打撃部に打撃痕形成用の複数の突起を設けておくこと、
を特徴とする請求項3記載のアンカ打ち込み治具を用いたアンカ施工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−169751(P2006−169751A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360788(P2004−360788)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000129758)株式会社ケー・エフ・シー (120)
【Fターム(参考)】