説明

アンタゴニストとして作用する、サイロトロピンレセプターに対するヒトモノクローナル抗体

本発明はTSHのアンタゴニストである、TSHRに対する単離抗体を提供する。本発明はまた、本発明の抗体の使用法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサイロトロピン(TSH)レセプター(TSHR)と反応する抗体に関し、限定はされないが、特に、TSHRに結合して、TSHまたはTSHR刺激性抗体によるTSHRへの刺激を阻害できる抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
サイロトロピン、すなわち甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、TSHRを通して甲状腺機能を調節する下垂体ホルモンである(Szkudlinski MW, Fremont V, Ronin C, Weintraub BD 2002 Thyroid-stimulating hormone and TSHR structure-function relationships.
Physiological Reviews 82: 473-502)。TSHRはGタンパク質共役型レセプターであり、ロイシンリッチドメイン(LRD)、切断ドメイン(CD)、および膜貫通ドメイン(TMD)の3つのドメインよりなる(Nunez Miguel R, Sanders J, Jeffreys J, Depraetere H, Evans M, Richards T, Blundell TL, Rees Smith B, Furmaniak J 2004 Analysis of the thyrotropin receptor- thyrotropin interaction by comparative modelling. Thyroid 14: 991-1011)。TSHのTSHRへの結合により、甲状腺ホルモンであるサイロキシン(T4)およびトリヨードサイロニン(T3)の形成および放出への刺激を導くレセプターシグナルを引き起こされる。循環しているT4およびT3の濃度に関わる負のフィードバックのメカニズムは下垂体からのTSHの放出(および視床下部から分泌されるサイロトロピン放出ホルモン)を制御し、これが次に甲状腺刺激、および血清中の甲状腺ホルモンの濃度を制御する。
【0003】
当該技術分野において、ある自己免疫性甲状腺疾患(AITD)の患者がTSHRと反応する自己抗体を有することはよく実証されている(Rees Smith B, McLachlan SM, Furmaniak J 1988 Autoantibodies to the thyrotropin receptor. Endocrine Reviews 9: 106-121)。大部分の場合、これらの自己抗体はTSHRに結合してTSHの作用を模倣することにより、甲状腺を刺激して高濃度のT4およびT3を産生する。これらの自己抗体は、刺激活性またはTSHアゴニスト活性を有する、甲状腺刺激性自己抗体またはTSHR自己抗体(TRAb)として記載されている。上述の甲状腺機能制御の生理的フィードバックメカニズムは、このような甲状腺刺激性自己抗体の存在下、および甲状腺機能亢進または甲状腺中毒症(血清中の過剰な甲状腺ホルモン)の徴候をもつ患者には有効でない。この疾患はグレーブス病として知られる。ある患者において、刺激活性のあるTRAbは後眼窩組織のTSHRとの相互作用に関与し、かつグレーブス病の目の徴候の一因となると考えられている。強力な甲状腺刺激剤として作用するヒトモノクローナル自己抗体(hMAbであるTSHR1)の詳細が、特許出願の国際公開第2004/050708A2号に記載されている。
【0004】
一方AITDのある患者においては、自己抗体はTSHRに結合してTSHのレセプターへの結合を阻止するが、TSHRへの刺激能はもたない。このタイプの自己抗体は遮断活性またはTSHアンタゴニスト活性をもつTRAbとして知られており、血清中に遮断性のTRAbを有する患者は、不活発な甲状腺の症状(甲状腺機能低下症)を有し得る(Rees Smith B, McLachlan SM, Furmaniak J 1988 Autoantibodies to the thyrotropin receptor. Endocrine Reviews 9: 106-121)。特に、妊婦の血清中に遮断活性を有するTRAbが存在すると、これが胎盤を通過して胎児の甲状腺TSHRを遮断する場合があり、新生児甲状腺機能低下症および発育における重篤な結果を引き起こす。さらに、遮断活性を有するTRAbは発症した母親の母乳中に見出され、これが乳児の臨床的な甲状腺機能低下症のさらなる一因となり得る。現在までのところ、TSHアンタゴニスト活性を有
する、TSHRに対するヒトモノクローナル自己抗体は入手不可能である。従って、このタイプの自己抗体がどのようにTSHRと相互作用するか、およびそのTSHRとの相互作用が、刺激性の自己抗体(例えばM22)およびTSHとTSHRとの相互作用とどのように比較されるかについての詳細な研究は限られている。
【0005】
ヒト絨毛性ゴナドトロピンは、妊娠中に産生される、軽度の甲状腺刺激効果をもつホルモンである。
【0006】
刺激活性または遮断活性によりTRAbの性質を特徴づけることは、TSHRへの自己免疫反応に関連する疾患の診断および管理を改善することを目標とする研究において決定的に重要である。特許出願の国際公開第2004/050708A2号に記載されている発明は、強力な刺激活性をもつヒトモノクローナル自己抗体の性質およびそのTSHRとの相互作用についての詳細を提供する。さらに、特許出願の国際公開第2006/016121A号は、少なくとも1つの点突然変異を含む変異TSHR製剤を開示しており、これは患者血清刺激性TSHR自己抗体、患者血清遮断性TSHR自己抗体、およびスクリーニングされた患者体液サンプル中のTSHの識別スクリーニングおよび同定に用いられる。特許出願の国際公開第2004/050708A2号はまた、TSHR遮断活性をもつマウスモノクローナル抗体(9D33)について記載している。9D33は高アフィニティー(2x1010L/mol)でTSHRに結合する、TSH、hMAbであるTSHR1(M22)、および刺激活性または遮断活性をもつ患者血清TRAbの効果的なアンタゴニストである(特許出願国際公開第2004/050708A2号およびSanders J,
Allen F, Jeffreys J, Bolton J, Richards T, Depraetere H, Nakatake N, Evans M, Kiddie A, Premawardhana LD, Chirgadze DY, Miguel RN, Blundell TL, Furmaniak J, Rees Smith B 2005 Characteristics of a monoclonal antibody to the thyrotropin receptor that acts as a powerful thyroid-stimulating autoantibody antagonist. Thyroid 15: 672-682)。このマウスモノクローナル抗体9D33は、遮断活性をもつ患者血清TRAbの特性の少なくとも幾つかを示すものの、これは実験動物をTSHRで免役することにより作られたマウス抗体であり、ヒトにおけるTSHRへの自己免疫反応過程で産生されるTSHR自己抗体を真に表し得ない。マウスモノクローナル抗体として、9D33はヒトにおけるin vivo応用のためにヒト化される必要がある。このことは、ヒト化の過程に関わる費用および複雑化を考慮すれば不利であり得る。
【0007】
本発明は、患者血清中のTSHおよび刺激性TRAbの効果的なアンタゴニストである、TSHRに対するヒトモノクローナル自己抗体(5C9)の産生および特性に由来する。5C9は、甲状腺機能低下症および高濃度のTSHR自己抗体を有する患者の末梢リンパ球から単離された。このリンパ球をエプスタイン・バーウィルス(EBV)の感染により不死化させ、安定クローンを作製するために陽性クローンをマウス/ヒト細胞株と融合した。クローン培養の上清からIgGを精製し、5C9IgGのTSHRへの結合能、およびTSHR活性への影響を評価した。特に、TSHRへのTSHの結合の阻害、およびTSHのサイクリックAMP刺激活性の阻害に対する5C9の能力について調べた。さらに、刺激性または遮断性の患者血清TRAbのTSHRへの結合の阻害、およびそれらの生物活性の阻害に対する5C9の能力もまた評価した。加えて、TSHR抗体、TSH、および関連化合物のアッセイにおける5C9の使用も検討した。5C9の、重鎖(HC)および軽鎖(LC)の可変領域(V領域)の遺伝子の配列を決定し、相補性決定領域(CDR)を特定した。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第一の態様によれば、TSHのアンタゴニストである、TSHRに対する単離されたヒト抗体が提供される。
【0009】
本発明の第二の態様によれば、TSHのアンタゴニストである、TSHRに対する単離されたヒト化抗体が提供される。
【0010】
本発明の第一または第二の態様いずれかによる抗体は、「本発明による抗体」である。
【0011】
本発明による抗体は甲状腺刺激性抗体のアンタゴニストであってよい。
【0012】
本発明による抗体は、TSHアンタゴニストである患者血清TSHR自己抗体のTSHアンタゴニスト特性を有してよい。
【0013】
本発明による抗体は、TSHのアンタゴニストおよび甲状腺刺激性抗体のアンタゴニストであってよい。
【0014】
本発明による抗体は、甲状腺刺激性抗体のアンタゴニストである患者血清TSHR自己抗体のアンタゴニスト特性を有してよい。
【0015】
本発明による抗体は、TSH、M22、またはTSHRへの刺激活性をもつ抗体または遮断活性をもつ抗体による、TSHRまたはその一部への結合の阻害剤であってよい。TSHRの一部はLRDまたはその実質的な一部を含んでよい。好ましくは、このような結合を阻止する抗体である。
【0016】
本発明による抗体は、モノクローナルもしくはリコンビナント抗体であってよいか、またはTSHのアンタゴニストであるその断片を含むかもしくはその断片からなってよい。本発明による抗体は、図2に示されるCDR1、CDR2、またはCDR3から選択される1または2以上のCDR、またはこれらCDRに実質的な相同性を有する1または2以上のアミノ酸配列を含むVH領域を含んでよい。さらに、またはあるいは、本発明による抗体は図3に示されるCDR1、CDR2、またはCDR3から選択される1または2以上のCDR、またはこれらCDRに実質的な相同性を有する1または2以上のアミノ酸配列を含むVL領域を含んでよい。
【0017】
本発明による抗体は、ヒト完全長TSHRに対し、約1010L/molの結合アフィニティーを有してよい。本発明による抗体は、好ましくはヒト完全長TSHRに対し、約109L/molの結合アフィニティーを有する。
【0018】
本発明は当業者が、刺激性および遮断性TSHR自己抗体の発生および産生を推進する免疫メカニズムを理解するのに役立つ。さらに、本発明は当業者が、TSHR自己抗体の甲状腺刺激活性を有するものと遮断活性を有するものの間の分子的相違を理解するのに役立つ。さらに、本発明の医学的治療法および薬理学的組成物は甲状腺関連疾患に対する新しい治療法を提供する。
【0019】
本発明による好ましい抗体は5C9である。5C9は、甲状腺刺激ホルモンレセプターの恒常的活性、すなわち甲状腺刺激ホルモンまたはM22の非存在下での試験システムにおけるサイクリックAMPの産生を阻害することが予想外に見出された。これは特に、甲状腺内に残存、または転移した甲状腺癌細胞の治療、とりわけこれらの細胞が甲状腺刺激ホルモンレセプターの恒常的活性の結果としてさらに迅速に増殖し得る再増殖を防止または遅延させることに有利である。
【0020】
ここで用いられる「抗体(単数形:antibody)」および類似語、例えば「抗体(複数形:antibodies)」の語は、状況に従い、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、単鎖抗体、多重特異性抗体のような免疫グロブリンを基礎とした結合部分を包含し、かつ当業者
によってこのような免疫グロブリンを基礎とした結合部分へ置換されてもよい結合部分、例えばドメイン抗体、二重特異性抗体、IgGΔCH2、F(ab’)2、Fab、scFv、VL、VH、dsFv、ミニボディ(Minibody)、トリアボディ(Triabody)、テトラボディ(Tetrabody)、(scFv)2、scFv−Fc、F(ab’)3もまた包含する(Holliger P, Prospero T, Winter G 1993 "Diabodies: small bivalent and bispecific antibody fragments" Proc Natl Acad Sci USA 90: 6444-6448.)、(Carter PJ 2006 "Potent antibody therapeutics by design" Nat Rev Immunol 6: 343-357)。
【0021】
「TSHR」との語は、図4に示されるアミノ酸配列を有する完全長のヒト甲状腺刺激ホルモンレセプター、またはその変異体または断片で、甲状腺刺激ホルモンレセプターとの高い相同性を有するものに適用される。好ましくはこのような変異体および断片は、図4に示されるアミノ酸配列と70から99.9%の相同性を有する。
【0022】
本発明の他の態様によれば、
a)本発明の第一の態様による抗体をコードするヌクレオチド配列;
b)図2または3に示される抗体VHドメイン、抗体VLドメイン、またはCDRのアミノ酸配列をコードする、図2または3に示されるヌクレオチド配列;または
c)a)またはb)のヌクレオチド配列と高い相同性を有し、かつ少なくとも約109L/molのアフィニティーでTSHRに結合する抗体をコードするヌクレオチド配列を含むヌクレオチドが提供される。
【0023】
本発明の他の態様によれば、上記本発明の態様によるヌクレオチドを含むベクターが提供される。
【0024】
該ベクターはプラスミド、ウィルスまたはその断片であってよい。当業者には多くの異なるタイプのベクターが知られている。
【0025】
本発明の他の態様によれば、本発明による抗体;ヌクレオチドまたは/ベクターを含む、単離細胞が提供される。該単離細胞は本発明による抗体を発現してよい。好ましくは、該単離細胞は本発明による抗体を分泌する。好ましくは、本発明による単離細胞は安定へテロ−ハイブリドーマ細胞株由来である。
【0026】
本発明のさらなる態様によれば、TSHR自己抗体の規定濃度を含み、かつ本発明による抗体を含む組成物が提供される。このような組成物は、TSHアンタゴニスト活性をもつTSHR自己抗体の規定濃度を含んでよく、かつ本発明による抗体を含む。
【0027】
あるいは、本発明のこの態様による組成物は、甲状腺刺激性抗体のアンタゴニストであるTSHR自己抗体の規定濃度を含んでよく、かつ本発明による抗体を含む。組成物は、甲状腺刺激性抗体のアンタゴニストである、TSHアンタゴニスト活性をもつTSHR自己抗体の規定濃度を含んでよく、かつ本発明による抗体を含む。
【0028】
本発明の他の態様によれば、甲状腺関連疾患の治療のために哺乳類被療体に投与するための、本発明による抗体を薬理学的に許容される担体と共に含む医薬組成物が提供される。該甲状腺関連疾患は、甲状腺活動亢進症、グレーブス眼病、新生児甲状腺機能亢進症、ヒト絨毛性ゴナドトロピン誘導性甲状腺機能亢進症、前頚骨粘液水腫、甲状腺癌、および甲状腺炎から選択されてよい。
【0029】
本発明による医薬組成物は、ヒトへの投与に適してよい。好ましくは本発明による医薬組成物は、被療体の免疫システムにおいて有意な有害作用をもたない。
【0030】
本発明による医薬組成物は、さらなる甲状腺刺激ホルモンレセプターアンタゴニストを含んでよい。適切な、さらなる甲状腺刺激ホルモンレセプターアンタゴニストは、国際公開第2004/050708号に開示されている9D33である。
【0031】
本発明による医薬組成物のために様々な形式が企図される。甲状腺関連疾患の治療における使用のための本発明による医薬組成物は、注射用の形式であってよい。前頚骨粘液水腫の治療における使用のための本発明による医薬組成物は、好ましくは局所用の形式である。グレーブス眼病の治療における使用のための本発明による医薬組成物は、好ましくは点眼薬の形式である。
【0032】
本発明の医薬組成物は、本発明の発明に従ったいずれかの抗体を、いずれかの薬理学的に許容される担体、アジュバント、またはビヒクルと共に含む。本発明の医薬組成物に使用されてよい薬理学的に許容される担体、アジュバント、およびビヒクルは、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンのような血清タンパク質、リン酸塩のような緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、硫酸プロタミンのような塩または電解質、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースを基礎とした物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロック重合体、ポリエチレングリコール、および羊毛脂を含むがこれらに限定されない。
【0033】
本発明の医薬組成物は、経口で、吸入噴霧により非経口で、点眼薬により局所的に、経直腸、経鼻、口腔経由で、経膣で、または埋め込み型リザーバー経由で投与されてよい。好ましくは経口投与、または注射による投与である。ここで用いられる「非経口」との語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、包膜内、病巣内、および頭蓋内への注射または注入方法を含む。
【0034】
該医薬組成物は、例えば水性または油性の無菌注射用懸濁液のような、無菌注射用製剤の形であってよい。この懸濁液は当該技術分野で公知の方法により、適切な分散剤または湿潤剤(例えば、Tween80)および懸濁剤を用いて処方されてよい。該無菌注射用製剤はまた、無毒性の非経口投与可能な希釈剤または溶媒、例えば1,3−ブタンジオール溶液としての無菌注射用溶液または懸濁液であってよい。許容されるビヒクルおよび溶媒のうちで使用されてよいものは、マンニトール、水、リンゲル液および生理食塩水である。さらに、従来から、無菌の固定油が溶媒または懸濁化剤として使用されている。この目的のため、合成モノ−またはジグリセリドを含む、いずれの無菌性固定油も使用されてよい。オレイン酸のような脂肪酸およびそのグリセリド誘導体は、オリーブオイルまたはヒマシ油のような天然の薬理学的に許容される油、特にこれらのポリオキシエチル化された形として、注射液の製剤に有用である。これらの油溶液または懸濁液はまた、Ph. Helvまたは類似アルコールのような長鎖アルコール希釈液または分散剤を含んでよい。
【0035】
本発明の医薬組成物は、カプセル、錠剤、および水性懸濁液および溶液を含むがこれらに限定されない、いずれかの経口に使用可能な剤形により経口投与されてよい。経口使用のための錠剤の場合、一般に用いられる担体はラクトースおよびコーンスターチを含む。ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤もまた、典型的に添加される。カプセルの形による経口投与のための有用な希釈剤は、ラクトースおよび乾燥コーンスターチを含む。水性懸濁液を経口投与する場合、有効成分は乳化剤および懸濁剤と組み合わされる。必要に応じ、特定の甘味料および/または香料および/または着色料が添加されてよい。
【0036】
本発明の医薬組成物はまた、直腸内投与のための坐薬の形で投与されてよい。これらの
組成物は、本発明の化合物を適切な非刺激性の賦形剤と混合することにより調製できる。この賦形剤は室温では固体であるが直腸温では液体であることにより、有効成分を放出するために直腸内で溶解し得る。このような物質はココアバター、蜜ろうおよびポリエチレングリコールを含むが、これらに限定されない。
【0037】
本発明の医薬組成物の局所投与は、望ましい治療が局所投与により容易に利用できる部位または臓器に関わる場合に特に有用である。皮膚への局所投与のために該医薬組成物は、担体中に懸濁または溶解した有効成分を含む適切な軟膏剤により処方されなければならない。本発明の化合物の局所投与のための担体は、ミネラルオイル、鉱油、ホワイトペトロリアム(white petroleum)、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水を含むがこれらに限定されない。あるいは該医薬組成物は、担体中に懸濁または溶解した有効成分を含む適切なローションまたはクリームにより処方できる。適切な担体は、ミネラルオイル、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水を含むがこれらに限定されない。本発明の医薬組成物はまた、直腸坐薬製剤または適切な浣腸製剤により下部腸管に局所投与されてよい。局所的な経皮パッチもまた、本発明に含まれる。
【0038】
本発明の医薬組成物は、経鼻エアロゾルまたは吸入により投与されてよい。このような組成物は医薬品処方の技術分野における公知の方法により調製され、ベンジルアルコールまたはその他の適切な保存料、生物学的利用能を増強させるための吸収促進剤、フッ化炭素、および/またはその他の当該技術分野で公知の可溶化剤または分散剤を用いた、生理食塩水溶液として調製されてよい。
【0039】
本発明のさらなる態様によれば、本発明による1または2以上の単離細胞を培養することにより該細胞が抗体を発現することを含む、本発明による抗体の産生方法が提供される。好ましくは、該抗体は該細胞により分泌される。
【0040】
本発明のさらなる態様によれば、哺乳類被療体、または該被療体由来の細胞における甲状腺関連疾患の治療方法が提供され、該方法は該被療体、または該細胞を本発明による抗体に接触させることを含む。
【0041】
本発明の他の態様によれば、哺乳類被療体の甲状腺中のTSHRを刺激する甲状腺刺激性自己抗体の阻害方法が提供され、該方法は該被療体を本発明による抗体に接触させることを含む。好ましくは、甲状腺刺激性自己抗体のTSHRへの結合が阻止される。
【0042】
本発明の他の態様によれば、哺乳類被療体の甲状腺外TSHRに結合する甲状腺刺激性自己抗体の阻害方法が提供され、該方法は該被療体を本発明による抗体に接触させることを含む。該甲状腺外TSHRは、該被療体の後眼窩組織および/または前頚骨組織に存在してよい。本発明による抗体は、該方法において使用される際、甲状腺外TSHRに結合するTSHR自己抗体を好ましく遮断する。
【0043】
本発明の他の態様によれば、甲状腺内にあるか、または転移した甲状腺癌を、被療体内か、または被療体由来の甲状腺細胞において治療する方法が提供され、該方法は細胞内の恒常的甲状腺刺激ホルモンレセプター活性を阻害するために、癌性細胞を本発明による抗体に接触させることを含む。好ましくは、甲状腺癌細胞の再増殖は阻止または遅延される。
【0044】
恒常的な甲状腺活性による甲状腺活動亢進症を、被療体内か、または被療体由来の甲状腺細胞において治療する方法もまた提供され、該方法は恒常的な甲状腺活性による甲状腺
活動亢進を阻害するために、被療体または甲状腺細胞を本発明による抗体に接触させることを含む。
【0045】
上記本発明の様々な方法において治療される被療体は、好ましくはヒトである。
【0046】
本発明の他の態様によれば、甲状腺関連疾患の治療における本発明による抗体の使用が提供される。あるいは、甲状腺関連疾患の治療のための薬剤の調製における本発明による抗体の使用が提供される。
【0047】
医学的治療における使用のための、本発明による抗体もまた提供される。特に、甲状腺関連疾患の治療における使用のための、本発明による抗体の使用が提供される。該甲状腺関連疾患は、甲状腺活動亢進症、グレーブス眼病、新生児甲状腺機能亢進症、ヒト絨毛性ゴナドトロピン誘導性甲状腺機能亢進症、前頚骨粘液水腫、甲状腺癌、および甲状腺炎から選択されてよい。
【0048】
本発明の他の態様によれば、TSHR関連アミノ酸配列を有するポリペプチドへの、試験されるTSHR抗体の結合を決定することを含む、TSHR抗体を特徴付けるための方法が提供され、ここで該方法は本発明による抗体の使用を含む方法工程に関わる。好ましくは、該方法はTSHR抗体の該ポリペプチドへの結合において、本発明による抗体の効果を決定することを含む。TSHR関連アミノ酸配列を有する該ポリペプチドは、好ましくは完全長のヒトTSHRを含む。
【0049】
本発明の他の態様によれば、TSHR関連アミノ酸配列を有するポリペプチドへの、試験されるTSH、または関連分子の結合を決定することを含む、TSHおよび関連分子を特徴付けるための方法が提供され、ここで該方法は本発明による抗体の使用を含む方法工程に関わる。
【0050】
上記のTSHR抗体、またはTSHを特徴付けるための方法および関連方法はELISA形式によるものであってよい。
【0051】
本発明の他の態様によれば、アンタゴニストとして作用するTSHR自己抗体の結合に関わるTSHRアミノ酸を決定する方法が提供され、該方法は、本発明による抗体が結合する第一のTSHR関連アミノ酸配列を有するポリペプチドを提供すること、該TSHR関連アミノ酸配列において少なくとも1個のアミノ酸を改変すること、およびこのような改変の効果を抗体の結合において決定することを含む。
【0052】
本発明による抗体を改変するための方法は、該抗体の少なくとも1個のアミノ酸を改変すること、およびこのような改変の効果をTSHR関連配列への結合において決定することを含む。改変TSHR抗体は、TSHRに対する増強されたアフィニティーを有するものが好ましく選択される。
【0053】
本発明の他の態様によれば、TSHRに結合する甲状腺刺激性抗体を阻害する分子を同定するための方法が提供され、該方法は、本発明による少なくとも1種の抗体を参照として提供することを含む。試験される分子は、TSHRに結合する甲状腺刺激性抗体を阻止するものが好ましく選択される。
【0054】
TSHRに結合する甲状腺遮断性抗体を阻害する分子を同定するための方法もまた提供され、該方法は、本発明による少なくとも1種の抗体を参照として提供することを含む。好ましくは、TSHRに結合する甲状腺遮断性抗体を阻止する分子が選択される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
これより本発明による抗体および方法を、例としてのみの目的で、添付する図1から図4への参照により記述する。
【0056】
【図1−1】TSHRをコートしたチューブへの125I−5C9IgG、125I−TSH、または125I−M22の結合における、グレーブス病の患者(n=40)および健常血液ドナー(n=10)からの血清の効果の比較を図示する一連の3グラフ。 a.125I−5C9IgG対125I−TSH結合
【図1−2】TSHRをコートしたチューブへの125I−5C9IgG、125I−TSH、または125I−M22の結合における、グレーブス病の患者(n=40)および健常血液ドナー(n=10)からの血清の効果の比較を図示する一連の3グラフ。 b.125I−5C9IgG対125I−M22IgG結合
【図1−3】TSHRをコートしたチューブへの125I−5C9IgG、125I−TSH、または125I−M22の結合における、グレーブス病の患者(n=40)および健常血液ドナー(n=10)からの血清の効果の比較を図示する一連の3グラフ。 c.125I−TSH対125I−M22IgG結合
【図2−1】5C9重鎖(HC)の可変領域配列の配列を示す。 a.5C9HCのオリゴヌクレオチド配列を、注釈なし、および注釈付きの形式で示す。注釈付きの形式では、PCRプライマーに使用した配列を下線で示し、個々の相補性決定領域(CDR)を四角で囲み、定常領域を太字で示す。
【図2−2】5C9重鎖(HC)の可変領域配列の配列を示す。 b.オリゴヌクレオチド配列由来の5C9HCのアミノ酸配列を、注釈なし、および注釈付きの形式で示す。
【図3−1】5C9軽鎖(LC)の可変領域配列の配列を示す。 a.5C9LCのオリゴヌクレオチド配列を、注釈なし、および注釈付き(図2の通り)の形式で示す。
【図3−2】5C9軽鎖(LC)の可変領域配列の配列を示す。 b.オリゴヌクレオチド配列由来の5C9LCのアミノ酸配列を、注釈なし、および注釈付きの形式で示す。
【図4】ヒトTSHR(受入番号P16473、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?db=protein&val=62298994)のコンセンサスアミノ酸配列を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0057】
方法
リンパ球分離およびヒトモノクローナルTSHR自己抗体5C9のクローニング
モノクローナル自己抗体5C9は通常、国際公開第2004/050708A2号に記載された方法を用いて分離した。リンパ球は最初に、産後甲状腺機能低下症で高濃度のTRAbを有する患者から集めた血液サンプルより分離した(地域の倫理委員会の承認を得た)。該リンパ球はエプスタイン・バーウィルス(EBV)(European Collection of Cell Cultures - ECACC; Porton Down, SP4 OJG5,UK)に感染させ、国際公開第2004/050708A2号に記載されているように、マウスマクロファージフィーダー層上で培養した。TSHR自己抗体を分泌する不死化リンパ球はマウス/ヒトのハイブリッド細胞株であるK6H6/B5(ECACC)と融合させ、単一コロニーを得るため、限界希釈による4回のクローニングを行った。クローニングの様々な段階における、細胞培養上清
中のTSHR自己抗体の存在は、125Iで標識したTSHのTSHRへの結合の阻害により検出した(国際公開第2004/050708A2号)。TSHR自己抗体を産生する単一クローンを増殖させ、自己抗体の精製のために培養上清を回収した。
【0058】
5C9IgG製剤の精製および標識化
5C9IgGは、Sanders J, Jeffreys J, Depraetere H, Evans M, Richards T, Kiddie A, Brereton K, Premawardhana LD, Chirgadze DY, Nunez Miguel R, Blundell TL, Furmaniak J, Rees Smith B 2004 Characteristics of a human monoclonal autoantibody
to the thyrotropin receptor: sequence structure and function. Thyroid 2004 14: 560-570に記載されている、MabSelect(商標)(GE Healthcare、英国)によるプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いて培養上清より精製し、純度はSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)により評価した。
【0059】
5C9の重鎖アイソタイプは、放射拡散アッセイ(The Binding Site;バーミンガム、B29 6AT、英国)を用いて決定し、軽鎖のアイソタイプは、抗ヒトカッパ鎖、および抗ヒトラムダ鎖特異的マウスモノクローナル抗体(Sigma-Aldrich Company Ltd;プール、英国)を用いたウェスタンブロッティングにより決定した。
【0060】
20mmol/Lの酢酸ナトリウム(pH4.5)中における10mg/mLの5C9IgGを、製造者(Perbio Science UK Ltd、クラムリントン、英国)の指示に従い調製した固定化ペプシンと共に、室温で4時間半、振とうしながらインキュベートした。その後、固定化ペプシンを遠心(1000xg、室温で5分間)により除去し、上清を300mmol/LのNaCl,10mmol/LのTris−HCl、pH7.5に対し、4℃においてオーバーナイトで透析した。5C9F(ab’)2および少量のインタクトなIgGを含む透析された混合物は、Sephacryl S-300 High Resolution Matrix(GE Healthcare、チャルフォント・セント・ジャイルズ、英国)を用いて分離した。この方法で精製された5C9F(ab’)2製剤は、SDS−PAGEおよびHPLCゲルろ過分析での判断によればインタクトなIgGを含まなかった。
【0061】
さらにF(ab’)2は、最終濃度100mmol/LのL−システインを用い、37℃、1時間で還元した。この反応は、最終濃度50mmol/Lのヨードアセトアミドにより、室温、30分間で停止させた。F(ab’)は、上記のようにSephacryl S-300カラムを用いて精製した。この方法で精製されたF(ab’)製剤は、SDS−PAGEおよびHPLCゲルろ過分析での判断によればF(ab’)2を含まなかった。
【0062】
さらに、5C9IgGをマーキュリーパパイン(Sigma、英国)により、1:100の酵素/タンパク質の比において処理し、50mmol/LのNaCl,Tris−HCl、pH9.0中へ透析し、Fab製剤からインタクトなIgGまたはFcを分離するため、陰イオン交換セファロース(GE Healthcareから入手したQ-Sepharose Fast flow)カラムを通した。SDS−PAGEおよびゲルろ過(Sephacryl S- 300カラム;上記)による分析は、該Fab製剤中にインタクトなIgGは検出されないことを示した。
【0063】
5C9IgGは、Sanders J, Oda Y, Roberts S, Kiddie A, Richards T, Bolton J, McGrath V, Walters S, Jaskolski D, Furmaniak J, Rees Smith B 1999. The interaction of TSH receptor autoantibodies with 125I-labelled TSH receptor. Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism. 1999 84: 3797-3802に記載されているように125Iにて標識するか、またはビオチンヒドラジド(Perbio Science、クラムリントン、英国)にて標識した。
【0064】
125I−TSHまたは125I−M22または125I−5C9のTSHRへの結合の阻害
国際公開第2004/050708A2号の記述に従い、TSHRをコートしたチューブを用いて結合阻害アッセイを行った。このアッセイにおいて、100μLの試験サンプル(MAb製剤、患者血清または非標識TSH)および50μLの開始緩衝液(RSR Ltd)を、TSHRをコートしたチューブ内で穏やかに振とうしながら、室温で2時間インキュベートした。吸引後チューブを洗浄し、100μLの125I−標識タンパク質(5x104cpm)を加え、振とうしながら室温で1時間インキュベートした。その後チューブを吸引、洗浄し、ガンマカウンター中で計数した。
【0065】
標識タンパク質の結合の阻害は以下のように算出した。
【数1】

コントロール物質は種々の実験結果に示すように、健常血液ドナー血清のプール、または個々の健常血液ドナー血清、またはその他の物質であった。
【0066】
5C9IgGのTSHRへの結合のスキャッチャード解析
50μLのアッセイ緩衝液(50mmol/LのNaCl、10mmol/LのTris、pH7.8、および1%TritonX−100)中の非標識5C9IgGおよび50μLの125I−標識5C9IgG(アッセイ緩衝液中で30,000cpm)を、TSHRをコートしたチューブ内で振とうしながら、室温で2時間インキュベート(これらの条件下で最大の結合が生じた)、吸引し、1mLのアッセイ緩衝液で2回洗浄し、ガンマカウンター中で計数した。結合定数を求めるため、結合したIgGの濃度に対して結合濃度/遊離濃度をプロットした(Scatchard G 1949 The attraction of proteins for small molecules and ions. Annals of the New York Academy of Sciences 51: 660-672)。
【0067】
サイクリックAMP産生刺激の解析
5C9IgGおよびその他の製剤の、ヒトTSHRを導入したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞におけるサイクリックAMP産生の刺激能を、国際公開第2004/050708A2号の記述に従い試験した。細胞あたり約5x104または約5x105のTSHRを発現するCHO細胞を、96ウェルプレート内にウェルあたり3x104細胞まき、ウシ胎仔血清を含まないDMEM(Invitrogen Ltd、ペーズリー、英国)に適応させた後、試験サンプル(TSH、IgGまたは患者血清)を加え(1g/Lのグルコース、20mmol/LのHEPES、222mmol/Lのシュクロース、15g/Lのウシ血清アルブミン、および0.5mmol/Lの3 イソブチル−1−メチルキサンチン
pH7.4を含み、NaClを含まないハンクス緩衝塩溶液であるサイクリックAMPアッセイ緩衝液中に希釈して、100μL)、37℃で1時間インキュベートした。試験溶液の除去後、細胞を溶解し、ライセート中のサイクリックAMP濃度を以下の2つの方法のうちの1つによりアッセイした:1)GE Healthcare (チャルフォント・セント・ジャイルズ、英国)から入手したBiotrak enzyme immunoassay systemの使用、または2)Assay Designs; Cambridge Bioscience(英国)から入手したDirect Cyclic AMP Correlate-EIA kitsの使用。結果は、細胞ライセート(200μL)中のサイクリックAMPをpmol/mLにより、または細胞ウェルあたりのfmolにより表した。
【0068】
アンタゴニスト(遮断)活性の測定
TSHRを発現するCHO細胞において、5C9IgGおよびその他の製剤が、ブタ(p)TSH、天然ヒト(h)TSH、およびリコンビナントヒト(rh)TSH、MAbM22、および患者血清TRAbの刺激活性を阻害する能力を評価した。これは、TSH、M22、またはTRAbの刺激効果を5C9IgG(またはその他の試験される製剤)
の非存在下および存在下において比較することにより行なわれた。アッセイは、サイクリックAMPアッセイ緩衝液中に希釈した50μLの5C9(またはその他の試験される製剤)を細胞ウェルに加え、続いて50μLのTSHまたはM22または患者血清(サイクリックAMPアッセイ緩衝液中に適宜希釈)を加えること以外は上記のように行なわれ、上記の刺激アッセイと同様にインキュベートおよび試験された。
【0069】
5C9に加え、その他のMAbおよび遮断性TRAbをもつ患者由来の血清がこのアッセイにおいて試験された。
【0070】
可変領域遺伝子解析
5C9重鎖および軽鎖の可変領域遺伝子は国際公開第2004/050708A2号の記述に従い、RT−PCR(逆転写酵素PCR)反応のためのmRNAを作製するため、5C9IgGを分泌する1x107のヘテロハイブリドーマ細胞から調整した全RNAを用いて決定した。IgG1HCおよびカッパLCに特異的なセンスおよびアンチセンス鎖オリゴヌクレオチドプライマーは、Medical Research CouncilのV-base(http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)を用いてデザインし、Invitrogen(ペーズリー、PA4 9RF、英国)により合成した。RT反応は50℃15分間で行い、それに続いて94℃15秒間、50℃30秒間、および72℃30秒間で40サイクルのPCRを行なった。DNA産物はpUC18中にクローニングし、Sanger-Coulson法によりシークエンスした(Sanger
F, Nicklen S, Coulson AR 1977 DNA sequencing with chain terminating inhibitors.
Proceedings of the National Academy of Sciences of USA 74: 5463-5467)。V領域の配列は、Ig blast(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)を用いて、入手できるヒトIg遺伝子の配列と比較した。
【0071】
ヒトTSHR配列のアミノ酸変異の、5C9活性における効果の解析
TSHR配列中に特異的変異を導入するために使用された方法は、特許出願の国際公開第2006/016121A号に記載されている。さらに、Flp−Inシステムを用いたCHO細胞への変異TSHRコンストラクトのトランスフェクションもまた、国際公開第2006/016121A号に記載されている。
【0072】
野生型または変異TSHRのいずれかを発現するFlp−In−CHO細胞を96ウェルプレートにまき、5C9製剤がTSH、M22、または患者血清TRAbの刺激活性を遮断する能力を試験するため上記のように使用した。
【0073】
TSHR抗体、TSHおよび関連分子のための5C9に基づいたアッセイ
2.55mLの5C9IgGを100mmol/Lのリン酸ナトリウム緩衝液pH8.5中に透析し、IgGのビオチンに対する分子比1/10により、EZ-Link NHS-LC-Biotin(Perbio)と反応させた。試験血清サンプル(75μL)を、TSHRをコートしたELISAプレートウェル(RSR Ltd)中で振とう(1分間に500振とう)しながら、室温で2時間インキュベートした。試験サンプルを除去および洗浄した後、ビオチン標識5C9IgG(100μL中に2ng)を加え、インキュベーションを室温で25分間、振とうなしで継続した。ウェルを空にし、洗浄して100μLのストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ(100μL中に10ng;RSR Ltd)を加え、室温で20分間、振とうなしでインキュベートした。その後ウェルを3回洗浄し、ペルオキシダーゼの基質であるテトラメチルベンジジン(TMB;100μL;RSR Ltd)を加え、暗所において室温で30分間、振とうなしでインキュベートした。その後反応を停止させるため50μLの0.5mol/LのH2SO4を加え、ELISAプレートリーダーを用いて、各プレートウェルの吸光度を450nmにて読み取った。5C9IgG−ビオチン結合の阻害は、以下のように算出した。
【数2】

【0074】
結果
5C9分泌細胞株の単離およびクローニング
20mLの患者血液から得られたリンパ球(27x106)にEBVを感染させ、48ウェルプレート内のマウスマクロファージフィーダー層上に、ウェルあたり1x106の細胞をまいた。EBV感染後13日目に、プレートウェルの上清の、125I−TSH結合の阻害についてモニターした。陽性ウェルからの細胞を増殖させ、K6H6/B5ハイブリドーマ細胞株と融合し、96ウェルプレートにまいた。125I−TSH結合の阻害活性をもつ抗体を安定に産生する1クローンを得て、4回再クローニングした。ヘテロ−ハイブリドーマ培養上清から精製され、5C9と名付けられたモノクローナル抗体は、カッパ軽鎖を有するIgG1のサブクラスである。
【0075】
5C9IgGのTSHRへの結合および遮断活性
様々な濃度における5C9IgGの、標識TSHまたは標識M22または標識5C9それ自体のTSHRへの結合に対する阻害能を表1に示す。表1に示すように、最少量0.005μg/mLの5C9IgGによって125I−TSH結合の12%の阻害が認められ、この阻害は100μg/mLの5C9による84%の阻害に至るまで量依存性に増大した。これはドナー血清IgGによる125I−TSH結合の阻害、すなわち0.05mg/mLにおける13%の阻害から、1mg/mLにおける94%の阻害までの量依存的な増大と比較することができる。ドナー血漿の場合、健常人血液ドナープール血清の1:160希釈においては125I−TSH結合の16%の阻害が認められ、1:10希釈においては95%の阻害が認められた。
【0076】
5C9IgGはまた、TSHRをコートしたチューブへの125I−M22IgGの結合に対する効果を有していた(表1)。0.01μg/mLの5C9IgGによって、125I−M22IgG結合の9%の阻害が認められ、濃度を増大させることにより、100μg/mLにおける85%に至るまでの阻害の量依存的な増大がもたらされた。ドナー血清IgGは、9%の阻害を起こす0.01mg/mLにおいて有効であり、この効果は1mg/mLにおける89%の阻害まで量依存的に増大した。ドナー血清血漿は、1:320の希釈において125I−M22IgG結合の13%の阻害を示し、1:10の希釈において91%の阻害を示した。
【0077】
非標識5C9IgGは、TSHRをコートしたチューブへの125I−5C9の結合を量依存的に阻害(0.005μg/mLにおける11%の阻害から、100μg/mLにおける88%の阻害まで)(表1−2)することができた。125I−5C9の結合はまた、ドナー血清IgGによっても阻害(0.05mg/mLにおける15%の阻害、および1mg/mLにおける91%の阻害)され、同様にドナー血漿の希釈によっても阻害(1:320希釈における10%の阻害、および1:10希釈における92%の阻害)された。
【0078】
TSHRを発現するCHO細胞におけるTSHおよびM22を介したサイクリックAMPの刺激に対する、5C9IgGの遮断能を表2a−cに示す。ブタTSH(3ng/mL)は、サイクリックAMP産生を強力に刺激した(19,020±2154fmol/細胞ウェル;平均±SD;n=3)(表2a)。0.1μg/mLの5C9IgGの存在で、ブタTSHの刺激活性は11874±4214fmol/細胞ウェル(平均±SD;n=3)まで減少し、かつ1μg/mLの5C9の存在下ではわずかに2,208±32
9fmol/細胞ウェルのサイクリックAMPが産生されたことから、この阻害効果は5C9濃度に依存していた(表2a)。リンパ球ドナー血清もまた、CHO−TSHR細胞におけるTSHを介したサイクリックAMP刺激の強力な阻害効果を有していた。表2aに示すように、サイクリックAMP産生は血清非存在下での19000fmol/細胞ウェルに比較して、1:10希釈のドナー血清(この希釈における全血清IgG濃度は1.43mg/mL)存在下では約6000fmol/細胞ウェルへ減少する阻害が生じた。この効果は、約0.37μg/mLの精製5C9IgGによる効果に一致していた(表2aに示す、様々な濃度の5C9IgGによる効果の希釈曲線から算出した)。このことは、TSHのサイクリックAMP産生刺激能を遮断する能力に関して、精製5C9IgGはドナー血清IgGよりも約3900倍強い活性があることを示している。
【0079】
5C9F(ab’)2および5C9Fabのような5C9の断片もまた、TSH刺激の有効な阻害剤であった。特に、100μg/mLにおける5C9IgG、5C9F(ab’)2、および5C9FabのTSH刺激阻害活性は同等であった(表2b)。10μg/mLにおける3種の全ての製剤、すなわち5C9IgG、5C9F(ab’)2、および5C9FabもまたTSH刺激活性の強力な阻害剤であったが、5C9IgGは5C9F(ab’)2または5C9Fabよりもさらに効果的と考えられた(表2b)。
【0080】
M22Fab(3ng/mL)はサイクリックAMPの強力な刺激剤である(9,432±822fmol/細胞ウェル)(表2c)。5C9の存在下でのM22Fabの刺激効果は量依存的に阻害され、0.1μg/mLの5C9IgGの存在下でのサイクリックAMP濃度は1,298±134fmol/細胞ウェルに減少した。M22刺激の完全な阻害は、100μg/mLの5C9により生じた(表2c)。
【0081】
スキャッチャード解析は、TSHRに結合する125I−標識5C9の結合定数は4x1010L/molであることを示した。
【0082】
TSHRへの125I−5C9IgG結合の、血清TRAbによる阻害
TSHRをコートしたチューブへの125I−5C9IgGの結合に対する血清TRAbの阻害能を表3および図1に示す。125I−TSHの結合および125I−M22IgGの結合に対する同じ血清TRAbの効果もまた、比較のために示した。
【0083】
125I−5C9IgGのTSHRへの結合は、10名の異なる健常血液ドナー(N1−N10、表3)からの血清によって、明らかには阻害されなかった(阻害範囲は3.4−18.9%)。125I−TSHおよび125I−M22の阻害アッセイ(表3)において、全てがTSHR自己抗体陽性であるグレーブス病の患者40名(G1−G40、表3)からの血清は、TSHRをコートしたチューブへの125I−5C9の結合に対して健常血液ドナーからの血清よりも程度の大きな阻害を示した(阻害範囲は22.0−85.2%)(表3)。TSHRに対する125I−5C9IgG、125I−TSH、または125I−M22IgGの結合に対する患者血清TRAbの阻害能は、ピアソン相関係数r=0.95(125I−5C9IgG対125I−TSH;図1a)およびr=0.95(125I−5C9IgG対125I−M22IgG;図1b)で、同程度であった。図1cは、同血清による125I−TSHおよび125I−M22IgGの阻害の比較を示す(ピアソン相関係数r=0.99)。
【0084】
これらの実験は、TSHRへの5C9IgG結合が血清TRAbによって効果的に阻害されること、および5C9IgG結合における血清TRAbの阻害効果は、TSHまたはM22結合におけるこれらの阻害効果に類似していることを示している。
【0085】
表4は、TSH遮断活性を有する患者血清TRAb(B1−B5)および強力な甲状腺
刺激活性を有する患者血清TRAb(S1、S2、S4)の様々な希釈による、125I−5C9IgG結合の阻害を示す。125I−5C9IgG結合は、血清B1−B5により、同様に血清S1、S2、およびS4により量依存的に阻害された。同遮断性および刺激性血清はまた、125I−TSHおよび125I−M22IgG結合を量依存的に阻害し、さらに3種の全ての標識リガンドに対する阻害のパーセンテージは血清の同希釈において同程度であった(表4aおよびb)。
【0086】
これらの結果は、刺激活性および遮断活性の両方を有するTSHR自己抗体は、TSHRへの5C9結合を阻害することを示している。
【0087】
TSH結合阻害活性を有するマウスMAbによる、TSHRへの125I−5C9IgG結合の阻害
125I−TSH結合阻害活性をもつ様々なマウスTSHRMAbの、TSHRへの125I−5C9結合の阻害能を試験し、125I−M22IgG結合における効果と比較した(表5)。表5に示すように、125I−TSHおよび125I−M22IgG結合に対する阻害能を有する全てのMAbは125I−5C9結合もまた阻害したが、幾つかのMAbの場合、125I−5C9および125I−M22結合における阻害効果は125I−TSH結合における阻害効果よりも弱かった。
【0088】
これらの実験は、TSHR上の5C9に対する結合部位と、TSH結合の阻害能を有するマウスTSHRMAbに対する結合部位の間にかなりの重複があることを示唆している。
【0089】
TSHRを発現するCHO細胞における、患者血清によるサイクリックAMPの産生刺激に対する5C9IgGの効果
表2に示すように、5C9IgGはTSHRを発現するCHO細胞内のサイクリックAMP濃度に関するTSHまたはM22の刺激を遮断することができた。一連の異なる実験において、患者血清TRAbの刺激活性における5C9IgGの効果を試験した。その結果を表6aに示す。血清T1−T9およびT11−T18はCHO−TSHR細胞内のサイクリックAMP産生を刺激し、コントロールMAbIgG(ヒト甲状腺ペルオキシダーゼに特異的な2G4)とのインキュベーションはそれらの刺激活性への影響をもたなかった。しかしながら、5C9IgG(200μg/mLを50μL)の存在下では、試験された全ての血清の刺激活性は明らかに減少した(表6a)。
【0090】
6種の異なる血清(T1、T6、T3、T19、T20、T21)の量反応効果を表6b−gに示す。これらの実験において、0.1μg/mLから100μg/mLの範囲の濃度の5C9IgGは血清の刺激活性の量依存的減少を起こし、5C9IgGの効果は血清T3を除く全ての試験された血清において、遮断活性をもつTSHRに対するマウスモノクローナル抗体9D33(国際公開第2004/050708A2号に記載)の効果と同程度であった。T3血清の場合(表6aおよび6d)、100μg/mLの5C9IgGの存在下においてサイクリックAMP産生の約50%の阻害が観察されたが、100μg/mLの9D33IgGはほとんど完全な阻害をもたらした。このことは、5C9および9D33によって認識されるエピトープの間に、ある小さな違いがある可能性を示唆した。
【0091】
TSHRを発現するCHO細胞内の基本的(すなわち無刺激の)なサイクリックAMP産生における5C9IgGの効果
TSHおよびTSHR抗体の刺激活性の阻害と同様に、5C9はこれらの甲状腺刺激剤の非存在下で産生されるサイクリックAMPの量を阻害した。特に表6bは、100μg/mLのコントロールモノクローナルIgG(2G4)の存在下で産生された1207±
123fmol/細胞ウェルのサイクリックAMPが、100μg/mLの5C9IgGの存在下で301±38fmol/細胞ウェルに減少したことを示している。9D33IgGの効果は、100μg/mLの9D33IgGの存在下での721±183fmol/細胞ウェルの産生より、少なかった。表6d、6e、6fおよび6gに示す別々の実験において同様の結果が得られた。このことは、5C9IgGがTSHRの基本的、または恒常的活性において著しい効果を有することを示している。
【0092】
アミノ酸変異を含むTSHRを発現するCHO細胞内サイクリックAMPの産生刺激における5C9IgGの効果
CHO−TSHR細胞内でのブタTSHのサイクリックAMP刺激活性に対する5C9の遮断能における、TSHRの単一アミノ酸変異の効果を表7に示す。特に以下の残基:Lys58、Ile60、Arg80、Tyr82、Thr104、Arg109、Lys129、Phe134、Asp151、Lys183、Gln235、Arg255、Trp258、Ser281をアラニンに変異させたTSHRを発現するCHO細胞において、サイクリックAMP産生刺激に対する5C9の効果を調べた。さらに、TSHRの残基:Arg80Asp、Asp151Arg、Lys183Asp、Arg255Aspの事例において、電荷の変化による変異(change of charge mutation)の効果を調べた。ここでは従来の表記法に従い、置換されたアミノ酸残基、およびその一次配列ポリペプチド内の位置を置換アミノ酸残基の前に示す。以前の研究は、TSHRの電荷の変化による変異(change of charge mutation)であるAsp160LysはTSHRのTSHに対する反応性の喪失の原因となったが、M22に対する反応は影響されなかったことを示している(特許出願国際公開第WO2006/016121A号)。従って、5C9の生物活性におけるTSHRのAsp160Lys変異の効果は、M22をCHO−TSHR細胞におけるサイクリックAMP刺激剤として使用することにより調べられた(表71)。
【0093】
研究された全てのTSHR変異のうち、3種の変異のみがアンタゴニストとして作用する5C9の能力に影響することが見出された。Lys129のAlaへの変異(表7h)は、サイクリックAMP産生のTSHによる刺激を遮断する5C9IgGの能力の完全な喪失をもたらした。
【0094】
TSHR変異であるLys183Alaもまた、5C9IgGの遮断活性の部分的な減少の原因となった。試験の際、1μg/mLにおいてTSHRのLys183Ala変異ではTSH刺激の28%の阻害が観察され、これは野生型TSHRによる84%の阻害と比較される(表7m)。100μg/mLの5C9IgGにおいても、TSHRのLys183Ala変異を用いた実験ではTSH刺激の部分的な阻害(43%)のみが検出されたが、野生型レセプターを用いた実験においては、同濃度においてTSH刺激活性の完全な遮断(93%)が観察された(表7m)。陽性荷電のLys183を陰性荷電のアスパラギン酸に変異させると、5C9の生物活性における効果はLys183Ala変異によって観察されたそれに類似した(表7m)。このことは、Lys183が5C9の生物活性に重要であることを示唆している。Asp151Ala変異の場合、5C9IgG遮断活性のわずかな減少;1μg/mLにおいて、野生型による88%の遮断と比較して49%の阻害が観察された(表7j)。しかしながら100μg/mLの5C9IgGの存在下では、この活性は野生型のTSHRによるものと同等であった。陰性荷電のAsp151を陽性荷電のアルギニンに変異させると、5C9IgG遮断活性の有意な減少は観察されなかった(表7k)。
【0095】
5C9活性におけるTSHR変異の効果は、9D33活性におけるTSHR変異の効果と比較できる。特許出願国際公開第2006/016121A号に記載されているように、TSHRのLys58、Arg80、Tyr82、Arg109、Lys129および
Phe134の変異は、9D33活性における効果を有していた。しかしながらLys129を除いたこれらの変異のいずれもまた、5C9活性における効果を有してはいなかった。さらに、特許出願国際公開第2006/016121A号に記載されているようなM22活性に影響する変異(Arg80、Tyr82、Glu107,Arg109,Lys129,Phe130、Lys183、Tyr185、Arg255およびTrp258)であるLys129を除いたこれらの変異のいずれも、5C9活性には影響しなかった。さらに、Lys183変異は5C9活性およびM22活性において部分的効果を有していたが、9D33活性における効果は有していなかった。
【0096】
これらの結果は、甲状腺刺激性ヒト自己抗体M22、マウス遮断性抗体9D33、およびヒト遮断性自己抗体5C9との相互作用に重要なTSHR残基は異なっていることを示している。従って、5C9とアンタゴニスト活性をもつその他のTSHR抗体(例えば9D33)との組み合わせは、患者血清TRAb、その他の刺激剤による刺激活性および/またはTSHRの恒常的活性を阻害するための特に有効な手段となり得る。
【0097】
5C9の可変領域配列
5C9をコードする遺伝子の配列解析は、HCのV領域遺伝子はVH3−53ファミリー由来、D遺伝子はD2−2ファミリー由来、およびJ遺伝子はJH4ファミリー由来であることを示した。LCの場合、V領域遺伝子はO12ファミリー由来、およびJ領域遺伝子はJK2の生殖系列由来であった。HCのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は図2aおよび2bそれぞれに示され、LCのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は図3aおよび3bそれぞれに示される。
【0098】
生殖系列配列と比較して、HC遺伝子配列には体細胞変異、特にFWR1には1個のサイレント変異、CDR2には2個の置換変異、CDR3には1個のサイレント変異および1個の置換変異、およびFWR4には1個のサイレント変異が存在する。しかしながらHCのV領域配列は2個の挿入、すなわちVおよびD遺伝子の間の長さ6塩基対の1個、および、DおよびJ遺伝子の間の長さ15塩基対の1個により特徴付けられる。従って、HCのCDR1は長さ5アミノ酸、CDR2は長さ16アミノ酸、およびCDR3は長さ18アミノ酸となる(図2b)。
【0099】
LC配列では、FWR1には1個のサイレント変異、CDR1には1個の置換変異、CDR3には1個の置換変異、および、VおよびJ遺伝子の間に長さ6塩基対の1個の挿入が存在する。LCのCDR1は11アミノ酸、CDR2は7アミノ酸、およびCDR3は10アミノ酸よりなる(図3b)。
【0100】
TSHまたはTRAb検出のための5C9に基づくアッセイ
TSHR自己抗体を検出するための、TSHRをコートしたプレートウェルへの5C9IgG−ビオチン結合に基づいたELISAの例を表8に示す。このアッセイにおいて、TSH−ビオチン結合の阻害に対して陽性の全てのサンプルは、5C9IgG−ビオチン結合に対してもまた陽性であった。さらに、吸光度シグナル、パーセント阻害、および組立単位/L値は、TSH−ビオチンおよび5C9−ビオチンアッセイの間で同程度であった(表8)。
【0101】
TSHRを発現するCHO細胞へのマウス甲状腺刺激性モノクローナル抗体(マウスTSHRMAb;TSMAb)の刺激活性に対する5C9IgGの効果
表9に示すように5C9IgGは、試験された5種の全てのTSMAb(1,2,4,5および7)によるサイクリックAMP産生の刺激を遮断することができた。例えばTSMAb1(表9)により刺激されたサイクリックAMPの濃度は18.94±7.4pmol/mLであったが、100μg/mLの5C9IgGの存在下ではわずかに1.24±
0.07pmol/mLのサイクリックAMPが産生された。これは、100μg/mLのコントロールMAb2G4の存在下でのサイクリックAMPの濃度である、16.5±1.1pmol/mLと比較することができる(表9)。
【0102】
以下の表9、同様に表10−15に示すサイクリックAMP濃度はpmol/mLで表している。すなわち、細胞ウェルあたりのサイクリックAMPの量はpmol/mL÷5(アッセイされた各ウェルからのサンプル200μLを表す)である。
【0103】
TSHRを発現するCHO細胞への天然ヒトTSHおよびリコンビナントヒトTSHの刺激活性に対する5C9IgGの効果
ブタTSHによるサイクリックAMP刺激を遮断する5C9IgGの能力を、表2および表10に示す。さらに、5C9IgGは天然ヒトTSH(NIBSC reference preparation 81/565 from National Institute for Biological Standards and Control, South Mimms, Potters Bar EN6 3QG UK)およびリコンビナントTSH(NIBSC reference preparation 94/674)両者のサイクリックAMP刺激に対する阻害能を示した(表10)。特に100ng/mLのリコンビナントまたは天然ヒトTSHいずれかによるサイクリックAMP産生刺激は、サイクリックAMP産生の完全な阻害を得るために0.1−1.0μg/mLの5C9IgGを要求する。5C9分離のための血液採集時におけるドナー血清中の循環TSH濃度は160mU/L(約32ng/mL)であり、得られた結果(表2aおよび表10)は、この濃度の循環TSHは血清中の32−320ng/mLの5C9IgGの存在により完全に遮断され得ることを示している。ドナー血清中のTSHR自己抗体の濃度は、TSHRへの125I−M22結合の阻害(Nakatake N, Sanders J, Richards T, Burne P, Barrett C, Dal Pra C, Presotto F, Betterle C, Furmaniak J, Rees Smith
B 2006 Estimation of serum TSH receptor autoantibody concentration and affinity. Thyroid 16: 1077-1084に記載されているように)を用いることにより1700ng/mL(120ng/mg)と推定された。これはすなわち、TSHによる甲状腺刺激の遮断に要求される5C9の濃度よりも数倍高めである。
【0104】
活性化変異であるS281I、I568TおよびA623IをもつTSHRを発現するCHO細胞内の基本的(すなわち無刺激の)なサイクリックAMP活性における5C9IgGの効果
5C9IgGは、甲状腺活性化剤(すなわちTSHまたはTSHR抗体)の非存在下で、活性化変異をもつTSHRを発現するCHO細胞内で産生されるサイクリックAMPの量を減少させることができた。表11aに示すように、活性化変異であるS281IをもつTSHRを発現するCHO細胞内の基本的なサイクリックAMP濃度は5C9の非存在下で9.90±1.51pmol/mLであり、これは0.01μg/mLの5C9IgGの存在下で4.17±0.60pmol/mLに減少し、1μg/mLの5C9IgGの存在下で3.44±0.63pmol/mLに減少した。遮断性マウスTSHRMAb9D33は、コントロールMAb2G4と同程度のわずかな効果を有した(表11a)。
【0105】
21.39±5.31pmol/mLの基本的なサイクリックAMP濃度を示す、TSHR活性化変異のI568Tによって同様の結果が得られた(表11b)。これは1μg/mLの5C9IgGの添加によって5.29±0.75pmol/mLに減少し、2G4IgG、および5C9IgGを添加した場合の、20.52±0.95pmol/mL、および21.65±1.99pmol/mLそれぞれと比較される。36.89pmol/mLの基本的なサイクリックAMP濃度を有する、研究された第3のTSHR活性化変異であるA623Iの場合は、1μg/mLの5C9IgGの添加によりサイクリックAMP濃度は16.43±1.27pmol/mLに減少し、これは1μg/mlのコントロールIgGである2G4によるわずかな効果(28.96±2.29pmol/mL)または1μg/mLの9D33IgG(40.09±7.73pmol/mL)と比較
される(表11c)。
【0106】
これらの結果は、5C9はマウス遮断性MAbの9D33とは異なり、たとえTSHR活性化変異がTSHRの異なる部分に存在していても(すなわち、S281Iは細胞外ドメインにあり、I568Tは膜貫通ドメインの2番目の細胞外ループにあり、かつA623Iは膜貫通ドメインの3番目の細胞内ループにある)、これらの変異に関連したサイクリックAMP産生において著しい効果を有することを示している。
【0107】
野生型TSHRを発現するCHO細胞におけるTSHを介したサイクリックAMP産生の刺激に対する、5C9およびマウスTSHR遮断性モノクローナル抗体9D33およびこれら2種の抗体の混合物の効果の比較
前記の実験および表12に示すように、低くとも1μg/mLの濃度のヒトTSHR遮断性MAb5C9およびマウスTSHR遮断性MAb9D33は、CHO−TSHR細胞におけるTSHのTSHRサイクリックAMP刺激活性に対する遮断能を有する。表12の実験1−5に示すように、TSHを介したサイクリックAMPの刺激に対する9D33IgGおよび5C9IgGの効果は相加的であった。刺激に2つの異なった濃度のTSH(3ng/mLおよび0.3ng/mL)を用いた際、同じ相加的効果が観察された(表12;実験1−3および実験4および5の各実験)。
【0108】
野生型TSHRを発現するCHO細胞におけるM22を介したサイクリックAMP産生の刺激に対する、5C9およびマウスTSHR遮断性モノクローナル抗体9D33およびこれら2種の抗体の混合物の効果の比較
以前に示したように、5C9および9D33は、CHO−TSHR細胞におけるM22Fabを介したサイクリックAMPの刺激もまた阻害できる。M22を介したサイクリックAMPの刺激に対する9D33IgGおよび5C9IgGの効果は相加的であった(表13、実験1−4)。刺激に2つの異なった濃度のM22Fab(3ng/mLおよび0.3ng/mL)を用いた際、同じ相加的効果が観察された(表13;実験1および2、および実験3および4の各実験)。
【0109】
5C9IgGおよび9D33IgGの相加的効果は、TSHおよびM22の両者を介したサイクリックAMP産生の刺激について同様であった(表12および13)。
【0110】
野生型TSHRを細胞あたり多数発現するCHO細胞内の基本的(すなわち無刺激の)なサイクリックAMP活性における5C9の効果
細胞あたり約5x105のレセプターを発現するCHO細胞株は、以前の実験(例えば表9−13)で用いた標準的なCHO細胞株(細胞あたり約5x104のTSHRを発現する)に比較して高濃度の基本的(すなわち無刺激の)サイクリックAMPを示した。すなわち、それぞれの濃度は、約1.0pmol/mLに比較して47.1±11.7pmol/mLである。野生型TSHRの基本的活性における5C9IgGおよび9D33IgGの効果を、細胞あたり多数のレセプターを発現する細胞株を用いて評価した。9D33IgGおよびネガティブコントロールの抗GAD抗体(5B3)とのインキュベーションは、基本的サイクリックAMP活性の0−5.3%の阻害をもたらした(表14;実験1)。このことは、マウス遮断性MAb9D33またはコントロールMAbは、野生型TSHRを発現するCHO細胞における基本的なサイクリックAMP産生に対して効果をもたないことを示している。しかしながら5C9IgGの場合、基本的サイクリックAMP活性の明らかな阻害が観察された(表14;実験2)。すなわち、0.1μg/mLおよび10μg/mLの濃度はそれぞれ、45.7%および74.6%の阻害を起こした。さらに、5C9Fabおよび5C9F(ab’)もまた、細胞あたり多数のTSHRを発現するCHO細胞における基本的サイクリックAMP活性の有効な阻害剤であった(表14、実験3)。例えば、1μg/mLおよび100μg/mLの5C9Fabはそれぞれ、基本
的なサイクリックAMP産生の39%および61%の阻害を示し、これは100μg/mLの5C9F(ab’)による48%の
阻害と比較される(表14、実験3)。
【0111】
アンタゴニスト(すなわち遮断性)活性を有する患者血清TSHR自己抗体の、活性化変異I568Tを有するTSHRを発現するCHO細胞の基本的(すなわち無刺激の)なサイクリックAMP活性に対する効果
TSHRI568T細胞によるサイクリックAMPアッセイ緩衝液存在下での基本的なサイクリックAMP産生(20.5±8.7pmol/mL)は、試験された健常血液ドナーからの正常プール血清(NPS)または異なった3名の個々の健常血液ドナー血清(N1−N3)の1/10および1/50希釈における添加によって基本的に影響されなかった。NPSおよびN1−N3血清の存在下での基本的なサイクリックAMP産生は、サイクリックAMPアッセイ緩衝液存在下での基本的なサイクリックAMP産生に比較して0−14%の阻害を示した(表15)。しかしながら、高濃度の遮断性TRAb(B2−B5)を有する4種の異なる血清の存在下では、基本的なサイクリックAMP産生の23−89%の阻害が観察された(表15)。5C9IgG(1μg/mL)の存在下では、TSHRI568Tの基本的なサイクリックAMP活性の83%の阻害が観察された。I568T変異をもつTSHRを発現するCHO細胞の基本的なサイクリックAMP産生に対する、2種の遮断性血清(B3およびB4)の量依存性効果もまた表15に示す。
【0112】
これらの結果は、5C9が、特にTSHR活性化変異であるI568Tにおける基本的なサイクリックAMP産生の阻害に関して、患者遮断TSHR自己抗体のTSHR遮断活性特性を有することを示す。
【0113】
アンタゴニスト活性を有する患者血清TSHR自己抗体の、活性化変異S281Iを有するTSHRを発現するCHO細胞の基本的(すなわち無刺激の)なサイクリックAMP活性に対する効果
TSHRS281I細胞によるサイクリックAMPアッセイ緩衝液存在下での基本的なサイクリックAMP産生は11.2±2.0pmol/mLであり、健常血液ドナープール血清または個々の健常血液ドナー血清(1/10または1/50希釈)とのインキュベーションは効果を示さなかった(表16)。一方で、高濃度の遮断性TRAb(B2−B5)を有する4種の異なる血清の存在下では、基本的なサイクリックAMP産生の31−56%の阻害が観察された(表16)。TSHRS281Iを用いた実験において、1μg/mLの5C9IgGは基本的なサイクリックAMP活性を71%阻害した。
【0114】
アンタゴニスト活性を有する患者血清TSHR自己抗体の、活性化変異A623Iを有するTSHRを発現するCHO細胞の基本的(すなわち無刺激の)なサイクリックAMP活性に対する効果
TSHRA623I細胞の場合、サイクリックAMPアッセイ緩衝液存在下での基本的なサイクリックAMP産生は43.5±11.2pmol/mLであり、健常血液ドナープール血清または個々の血清とのインキュベーションによって基本的に影響されなかった。(表17)。高濃度の遮断性TRAb(B2−B5)を有する4種の異なる血清とのインキュベーションでは、これらの実験においてサイクリックAMPの−1%から56%を阻害した(表17)。このことは、同じ実験における1μg/mLの5C9IgGによる49%の阻害と比較することができる。
【0115】
アンタゴニスト活性を有する患者血清TSHR自己抗体の、細胞あたり約5x105の野生型TSHRを発現するCHO細胞の基本的(すなわち無刺激の)なサイクリックAMP活性に対する効果
細胞あたり比較的多数の野生型TSHRを発現するCHO細胞の基本的なサイクリック
AMP産生は、この一連の実験で28.1±0.7pmol/mLであった。該細胞を1/10希釈の健常血液ドナープール血清または個々の血清(N1−N3)とインキュベートしたとき、サイクリックAMPアッセイ緩衝液存在下での基本的なサイクリックAMP濃度は99%から146%の範囲であったが、1/50希釈においてその範囲は93%から137%であった。遮断性TSHR自己抗体を有する試験された4種の血清のうち、1種の血清(B2)は基本的なサイクリックAMP産生において効果を示さなかった(表18)。2種の血清(B3およびB5)の場合、サイクリックAMP濃度は、サイクリックAMPアッセイ緩衝液存在下で観察された濃度に比較して増大した(表18)。血清B3およびB5が刺激活性および遮断活性を有するTSHR自己抗体の混合物を含むことは十分にあり得る。一方、血清B4は1/10および1/50希釈において、基本的なサイクリックAMP産生に対する明らかな阻害効果を有していた。すなわち基本的なサイクリックAMP濃度は、サイクリックAMP緩衝液存在下での濃度に比較してそれぞれ31%および61%であった(表18)。このことは、1μg/mLの5C9IgG存在下での濃度が、サイクリックAMPアッセイ緩衝液存在下での濃度に比べ33%であることと比較することができる(表18)。
【0116】
概して5C9IgGは、野生型TSHR、または遮断性TSHR自己抗体陽性患者由来の血清により観察された効果に対する活性化変異を有するTSHRを導入したCHO細胞における、基本的なサイクリックAMP産生に対し同様の効果を示す。しかしながら、様々な変異の場合において個々の患者血清による効果は変動する(表19)。野生型TSHRの場合、ある血清は刺激効果を示す。これはおそらく遮断性自己抗体と同様にTSHR刺激性自己抗体も存在するためである(表19)。
【0117】
アミノ酸変異を含むTSHRを発現するCHO細胞におけるサイクリックAMP産生の刺激に対する5C9の効果
アミノ酸変異を有するTSHRを発現するCHO細胞におけるサイクリックAMP産生の刺激に対する5C9の効果は、以下の、アラニンへの変異の包含に及ぶ:Asp43、Glu61、His105、Glu107、Phe130、Glu178、Tyr185、Asp203、Tyr206、Lys209、Asp232、Lys250、Glu251、Thr257、Arg274、Asp276(表20a−p、および表21に要約)。
【0118】
TSHRのアミノ酸であるAsp43、Glu61、His105、Glu107、Tyr185、Asp232およびThr275のアラニンへの変異は、TSH刺激によるサイクリックAMP産生に対する5C9IgGの阻害能に効果を示さなかった。TSH刺激によるサイクリックAMP産生に対する5C9の阻害能は、TSHRのPhe130、Glu178、Asp203、Tyr206、Lys250、Glu251およびAsp276のアラニンへの変異により減少した。Lys209AlaおよびAsp274Alaの2種の変異の場合、TSHを介したサイクリックAMP産生に対する5C9IgGの阻害能は増大した。
【0119】
要約すると(表7,20、および21)、Lys129、Phe130、Asp151、Glu178、Lys183、Asp203、Tyr206、Lys250、Glu251およびAsp276の10種のTSHR残基全ては、5C9のTSHによるサイクリックAMP刺激に対する阻害能を、野生型TSHRに比べて減少させた。TSHRのLys129およびAsp203の変異は最大の効果を示し、5C9活性の完全な阻害の原因となった。
【0120】
野生型TSHRを発現するCHO細胞におけるTSHを介したサイクリックAMPの産生刺激に対する遮断性血清B2−B5の、Asp203Ala変異TSHRとの比較による
効果
野生型TSHRにおける1μg/mLの5C9による遮断効果は(TSHにより誘導されたサイクリックAMP刺激の92%の阻害)、Asp203Ala変異TSHRにおいては4%に減少した(表22)。
【0121】
遮断性血清B4の活性はTSHRのAsp203Ala変異により影響されなかったが、遮断性血清B2およびB3では、TSHRのAsp203Ala変異の場合、野生型TSHRと比較してTSHにより誘導されたサイクリックAMP刺激のパーセント阻害にわずかな減少がみられた。
【0122】
一血清B5の場合、TSHにより誘導されたサイクリックAMP刺激のパーセント阻害に顕著な減少が観察された;すなわち、野生型TSHRでの69%の阻害に対して、変異TSHRでは30%の阻害であった。
【0123】
5C9活性に対するTSHRのAsp203Ala変異の効果は遮断性血清の活性に対する効果よりも大きかったが、試験された3/4の血清の遮断活性は様々な程度に影響された。このことは、遮断性TSHR自己抗体および5C9の結合部位は重複しているが、様々な血清と接触する実際のTSHRアミノ酸には幾らかの違いのあることを示し得る。
【0124】
要約および結論
上記の実験は5C9のような本発明による抗体が、ヒトおよびマウスTSHR刺激性抗体、天然ヒトおよび動物TSH、およびリコンビナントヒトTSHを含む様々な甲状腺刺激剤の刺激活性を遮断できることを証明する。さらに、2種の異なる遮断性抗体、すなわちヒトMAb5C9およびマウスMAb9D33は個別に試験した際、TSHRを発現するCHO細胞におけるTSHまたはM22を介したサイクリックAMP刺激に対する遮断能を有し、混合した際、TSHまたはM22刺激に対して相加的遮断効果を示すことが証明される。
【0125】
5C9のような本発明による抗体は、TSHRの基本的(すなわち無刺激の)なサイクリックAMP活性に対する新規な効果を有する。これらの効果は、比較的高濃度の基本的なサイクリックAMPを有するTSHR導入CHO細胞を用いた実験により研究されてきた。すなわち、5C9のような本発明による抗体の基本的なサイクリックAMP活性に対する遮断効果が確認されてきた。さらに、遮断(アンタゴニスト)活性をもつTSHR自己抗体を有する幾つかの血清は、これらのTSHR導入細胞における基本的なサイクリックAMP活性への遮断能を有することが示されてきた。この実験はまた、5C9のような本発明による抗体および血清TSHR遮断自己抗体の、活性化TSHR変異に関連した基本的なサイクリックAMP活性に対する遮断効果を証明する。
【0126】
これらの結果は、5C9が遮断性TSHR自己抗体の特性を示すヒトMAbであること、すなわち甲状腺自己免疫疾患に付随する患者血清TSHR自己抗体の典型であることを強調する。
【0127】
記載された実験はまた、本発明による抗体の遮断活性に重要な幾つかのTSHRアミノ酸の同定も可能にした。
【0128】
概してこの結果は、5C9のような本発明による抗体は、甲状腺自己免疫疾患の患者由来の様々な血清中に見出されたTSHR遮断性自己抗体と同様のTSHR結合活性、およびTSHRの機能における同様の生物学的効果を呈することを示す。従って、血清中の遮断性TSHR自己抗体の特性および生物学的活性を有する5C9のような本発明による抗体は、様々な病態におけるTSHRの不活性化に適用できる。これらの病態は、TSHを
介したTSHRの活性化、甲状腺刺激性TSHR自己抗体を介したTSHRの活性化、基本的な(無刺激の、恒常的な)TSHR活性、および活性化TSHR変異によるTSHRの活性化を含む。従って、5C9のような本発明による抗体は、上述のTSHRの活性化による病態;例えばグレーブス病、グレーブス眼症、TSHRの活性化変異による甲状腺機能亢進症、TSHの異常な濃度(病理的または薬理的)による甲状腺機能亢進症、甲状腺癌、および甲状腺癌転移の管理および制御に適用できる。
【0129】
【表1−1】

【表1−2】

TSHRをコートしたチューブへの標識ラベルの平均結合%
125I−TSHを用いた実験において14%
125I−M22IgGを用いた実験において21%
および、5C9IgGを用いた実験において20%

HBDプール=健常人血液ドナープール血清
2G4=コントロールのIgG(ヒト甲状腺ペルオキシダーゼに対するヒトMAb)
【0130】
【表2a】

11回の決定
a ドナー血清は示されたようにサイクリックAMP検定緩衝液で希釈した
b 比濁法により決定された非希釈血清のIgG濃度は14.3mg/mLであった
5C9IgGおよびTSHはサイクリックAMPアッセイ緩衝液で希釈した。
【0131】
【表2b−1】

【表2b−2】

12組のサンプルの平均
2G4=コントロールのIgG(ヒト甲状腺ペルオキシダーゼに対するヒトMAb)
抗体およびTSH標本はサイクリックAMPアッセイ緩衝液で希釈した。
【0132】
【表2c−1】

【表2c−2】

12組のサンプルの平均
9D33は、TSHRが発現するCHO細胞において、TSHおよびTRAbが介在するサイクリックAMP生産を遮断するマウス抗体である。
抗体およびTSH標本はサイクリックAMPアッセイ緩衝液で希釈した。
【0133】
【表3−1】

【表3−2】

【表3−3】

N1−10=健常人血液ドナーからの血清
G1−G40=グレーブス病にかかった経験のある患者からの血清
結果はほぼ一致する二重測定の平均である。
【数3】

ここで、A=テスト血清存在下での結合;B=健常人血液ドナーからの血清HBDプールのプールの存在下での結合。
HBDプール存在下での125I−5C9は20%の結合率であり、HBDプール存在下での125I−TSHは12%の結合率であり、HBDプール存在下での125I−M22は20%の結合率であった。
【0134】
【表4a−1】

【表4a−2】

【表4a−3】

【0135】
【表4b−1】

【表4b−2】

B1−B5はアンタゴニスト(遮断)活性を伴う高いレベルのTRAbを有する患者血清である。
B3は5C9に対するリンパ球ドナーからの血清である
S1、S2、およびS4はアンタゴニスト(遮断)活性を伴う高いレベルのTRAbを有する患者血清である。
アッセイキャリブレーター40U/L、8U/L、2U/L、および1U/L、は、M22 IgGを健常人血液ドナー血清(HBDプール)で希釈し、NIBSC90/672のU/L活性を、標識したTSHがTSHRでコートしたチューブへ結合することの阻害率を用いて測定したものである。
【数4】

ここで、A=テストサンプル;B=HBDプール
NT=テストしない
1/5、1/10等はHBDプールにおけるテスト血清の希釈率を示し、ニートは希釈無し、を示す。
HBDプールの存在下、125Iで標識したM22IgG、5C9IgG、TSHの、それぞれ約20%、17%、12%がコートしたチューブへ結合した。
【0136】
【表5−1】

【表5−2】

【表5−3】

【表5−4】

【表5−5】

【表5−6】

抗体は健常人血液ドナー血清のプールで希釈した(HBDプール)。
【数5】

ここで、A=テストサンプル存在下での結合率(%);B=HBDプール存在下での結合率(%)
1甲状腺刺激活性を有するマウスTSHR MAb
2TSHおよびTRAb両方が仲介するサイクリックAMP生産の刺激を遮断するマウスTSHR MAb
3甲状腺ペルオキシダーゼMAbに対するヒトMAb(ネガティブコントロール)
4TSH遮断活性を有するマウスTSHR MAb(TSHRアミノ酸381−385により形成されるエピトープを認識する)
5TSH遮断活性を有するマウスTSHR MAb(TSHRアミノ酸36−42により形成されるエピトープを認識する)
6TSH遮断活性を有するマウスTSHR MAb(TSHRアミノ酸246−260により形成されるエピトープを認識する)
7マウスTgMAb(ネガティブコントロール)
HBDプールの存在下、125Iで標識したM22IgG、5C9IgG、TSHの、それぞれ約13%、24%、15%がコートしたチューブへ結合する。
【0137】
【表6a−1】

【表6a−2】

【表6a−3】

【表6a−4】

【表6a−5】

【表6a−6】

ud=検出されず
1=二重測定
HBDプールは健常人血液ドナー血清のプールである;これらの実験では、1:10に希釈したサイクリックAMPアッセイ緩衝液を使用した。
T1−T9およびT11−T18はTSHRを発現するCHO細胞においてサイクリックAMP産生を刺激する血清である。T1―T9およびT11−T18はサイクリックAMPアッセイ緩衝液で1:10に希釈しテストした。
2G4は甲状腺ペルオキシダーゼに対するヒトモノクローナル抗体である(ネガティブコントロール)。
2G4 IgGおよび5C9 IgGは100μg/mLでテストした。
【0138】
【表6b−1】

【表6b−2】

T1は、TSHRを発現するCHO細胞におけるサイクリックAMP産生を刺激する、患者の血清サンプルである;これらの実験ではサイクリックAMPアッセイ緩衝液で1:10に希釈したものを用いた。
2G4は甲状腺ペルオキシダーゼに対するヒトモノクローナル抗体である(ネガティブコントロール)。
9D33は、TSHRを発現するCHO細胞における、TSHおよびTRAbによるサイクリックAMP産生を遮断するマウス抗体である(表2を参照)。
【0139】
【表6c−1】

【表6c−2】

1一回の測定
説明注釈については表6aおよび6bを参照
【0140】
【表6d−1】

【表6d−2】

説明注釈については表6aおよび6bを参照
【0141】
【表6e−1】

【表6e−2】

1二重サンプルの平均
21回の測定
説明注釈については表6aおよび6bを参照
【0142】
【表6f−1】

【表6f−2】

1二重サンプルの平均
NT=テストせず
説明注釈については表6aおよび6bを参照
【0143】
【表6g−1】

【表6g−2】

説明注釈については表6aおよび6bを参照
【0144】
【表7a】

1二重測定の平均値
pTSH濃度=3ng/mL
全ての希釈液はサイクリックAMPアッセイ緩衝液
2G4は甲状腺ペルオキシダーゼに対するヒトモノクローナル抗体である(5C9に対するネガティブコントロール)
【0145】
【表7b】

説明注釈については表7aを参照
【0146】
【表7c】

説明注釈については表7aを参照
【0147】
【表7d】

説明注釈については表7aを参照
【0148】
【表7e】

説明注釈については表7aを参照
【0149】
【表7f】

説明注釈については表7aを参照
【0150】
【表7g】

説明注釈については表7aを参照
【0151】
【表7h】

説明注釈については表7aを参照
【0152】
【表7i】

説明注釈については表7aを参照
【0153】
【表7j】

説明注釈については表7aを参照
【0154】
【表7k】

説明注釈については表7aを参照
【0155】
【表7l】

M22濃度=3ng/mL
説明注釈については表7aを参照
【0156】
【表7m】

説明注釈については表7aを参照。
【0157】
【表7n】

説明注釈については表7aを参照。
【0158】
【表7o】

説明注釈については表7aを参照。
【0159】
【表7p】

説明注釈については表7aを参照。
【0160】
【表7q】

説明注釈については表7aを参照。
【0161】
【表7r】

説明注釈については表7aを参照。
【0162】
【表7s】

説明注釈については表7aを参照。
【0163】
【表8】

アッセイキャリブレーター40U/L、8U/L、2U/L、および1U/LはM22 IgGを健常人血液ドナー血清(HBDプール)で希釈したものであり、NIBSC 90/672のU/L活性により、標識されたTSHのTSHRをコートしたチューブへの結合の阻害を測定した。アッセイのネガティブコントロールはHBDプールである。
【0164】
【表9】

aサイクリックAMPアッセイ緩衝液による希釈液
b2G4はヒト甲状腺ペルオキシダーゼモノクローナル自己抗体コントロールである。
【0165】
【表10−1】

【表10−2】

【表10−3】

【表10−4】

【表10−5】

【0166】
【表11a】

a2G4はヒト甲状腺ペルオキシダーゼモノクローナル抗体コントロールである。
【0167】
【表11b】

【0168】
【表11c】

a2回の測定
【0169】
【表12−1】

【表12−2】

【表12−3】

【表12−4】

【表12−5】

【0170】
【表13−1】

【表13−2】

【表13−3】

【表13−4】

【0171】
【表14−1】

コントロールのCHO細胞では、TSHRが発現されず、サイクリックAMPアッセイ緩衝液の存在下での基礎的なサイクリックAMP産生は1.02±0.06pmol/mL(平均±SD;n=3)であり、3ng/mL TSHの存在下では0.74±0.32pmol/mL(平均±SD;n=3)であった。
−ve=ネガティブ、すなわちサイクリックAMP産生の阻害が無い。
b5B3はグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)ヒトモロクローナル抗体である(5C9に対するネガティブコントロール)。
【表14−2】

コントロールのCHO細胞では、TSHRが発現されず、サイクリックAMPアッセイ緩衝液の存在下での基礎的なサイクリックAMP産生は0.03pmol/mL(n=2)であり、3ng/mL TSHの存在下では0.40±0.09pmol/mL(平均±SD;n=3)であった。
−ve=ネガティブ、すなわちサイクリックAMP産生の阻害が無い。
b5B3はグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)ヒトモロクローナル抗体である(5C9に対するネガティブコントロール)。
【表14−3】

【表14−4】

コントロールのCHO細胞では、TSHRが発現されず、サイクリックAMPアッセイ緩衝液の存在下での基礎的なサイクリックAMP産生は1.03pmol/mL(平均±SD;n=2)であり、3ng/mL TSHの存在下では0.04±0.09pmol/mL(平均±SD;n=3)であった。
−ve=ネガティブ、すなわち還元サイクリックAMP産生の阻害が無い。
F(ab‘) F(ab‘)2の還元により準備される;詳細な説明の記載を参照
【0172】
【表15−1】

【表15−2】

【表15−3】

−ve=ネガティブ、すなわちサイクリックAMP産生の阻害が無い。
HBDプール=健常人血液ドナー血清のプール
N1−N3=個々の健常人血液ドナー
全ての血清はサイクリックAMPアッセイ緩衝液で希釈された。
【0173】
【表16】

説明注釈については表15を参照。
1μg/mLの5C9 IgGは、TSHR S281Iを用いた実験における基本的なサイクリックAMP活性の阻害の71%を引き起こした。
【0174】
【表17】

説明注釈については表15を参照。
1μg/mLの5C9 IgGは、TSHR A623Iを用いた実験における基本的なサイクリックAMP活性の49%阻害を引き起こした。
【0175】
【表18】

【数6】

1μg/mLの5C9 IgGの存在下、基本的なサイクリックAMPレベルはサイクリックAMPアッセイ緩衝液存在下でのレベルに比べ33%に減少した。
【0176】
【表19】

HBDプール=健常人血液ドナー血清のプール。
HBDプールおよびB2〜B5の血清はサイクリックAMPアッセイ緩衝液中で1:10に希釈した。
5C9 IgGはサイクリックAMPアッセイ緩衝液中1μg/mLの濃度で用いた。
B2−B5は、野生型TSHRを発現するCHO細胞中での、TSHおよびM22の両方によるサイクリックAMP産生刺激を遮断した。
【0177】
【表20a】

【0178】
1二重測定の平均
2一重測定
pTSH濃度=3ng/mL。
全ての希釈はサイクリックAMPアッセイ緩衝液で行った。
a5B3はグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)に対するヒトモノクローナル抗体である(5C9に対するネガティブコントロール)。
【0179】
【表20b】

説明注釈については表20aを参照。
【0180】
【表20c】

説明注釈については表20aを参照。
【0181】
【表20d−1】

説明注釈については表20aを参照。
【表20d−2】

説明注釈については表20aを参照。
【0182】
【表20e】

説明注釈については表20aを参照。
【0183】
【表20f】

説明注釈については表20aを参照。
【0184】
【表20g】

UD=アッセイ測定限界以下。
説明注釈については表20aを参照。
【0185】
【表20h】

説明注釈については表20aを参照。
【0186】
【表20i】

説明注釈については表20aを参照。
【0187】
【表20j】

説明注釈については表20aを参照。
【0188】
【表20k】

説明注釈については表20aを参照。
【0189】
【表20l】

説明注釈については表20aを参照。
【0190】
【表20m】

説明注釈については表20aを参照。
【0191】
【表20n】

説明注釈については表20aを参照。
【0192】
【表20o】

説明注釈については表20aを参照。
【0193】
【表20p−1】

説明注釈については表20aを参照。
【表20p−2】

説明注釈については表20aを参照。
【0194】
【表21−1】

【表21−2】

使用したpTSH濃度=3ng/mL
TSHRの比較した効果は野生型とともに観察された活性のパーセンテージで以下のように表される:−+++++=野生型活性の100%;++++=野生型活性の80%以上100%未満;+++=野生型活性の60%以上80%未満;++=野生型活性の40%以上60%未満;+=野生型活性の20%以上40%未満、0=野生型の20%未満、および野生型と比較して増加した活性:>100%は+++++++。NT=テストせず。aこの実験のためのサイクリックAMP刺激は、TSHの応答を欠失したM22を用いた(詳しくは明細書を参照)。
【0195】
【表22】

aサイクリックAMPアッセイ緩衝液での希釈
bTSHの関与するサイクリックAMP刺激の阻害率%
【数7】

1二重サンプルの平均
c最終濃度3ng/mLで使用されたpTSH
HBDプール=健常人ドナー血清のプール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲状腺刺激ホルモン(TSH)のアンタゴニストである、甲状腺刺激ホルモンレセプター(TSHR)に対する単離されたヒト抗体。
【請求項2】
TSHのアンタゴニストである、TSHRに対する単離されたヒト化抗体。
【請求項3】
甲状腺刺激性抗体のアンタゴニストである、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
TSHのアンタゴニストである患者血清TSHR自己抗体のTSHアンタゴニスト特性を有する、請求項1、2、または3に記載の抗体。
【請求項5】
TSHのアンタゴニストおよび甲状腺刺激性抗体のアンタゴニストである、請求項3または4に記載の抗体。
【請求項6】
甲状腺刺激性抗体のアンタゴニストである患者血清TSHR自己抗体のアンタゴニスト特性を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項7】
TSH、M22、TSHRへの刺激活性を有する抗体、または遮断活性を有する抗体によるTSHRもしくはその一部への結合の阻害剤である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項8】
該TSHRの一部がTSHRのロイシンリッチドメイン(LRD)またはその実質的な一部を含む、請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
前記結合を阻止する、請求項7または8に記載の抗体。
【請求項10】
モノクローナルもしくはリコンビナント抗体であるか、またはその断片を含むかもしくはその断片よりなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項11】
1または2以上の相補性決定領域(CDR)を含むVH領域を含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の抗体であって、該CDRが、
a)SNYMS(CDR1);
b)VTYSGGSTSYADSVKG(CDR2);または
c)GGRYCSSISCYARSGCDY(CDR3)
またはこれらのCDRに実質的な相同性を有する1または2以上のアミノ酸配列から選択される抗体。
【請求項12】
1または2以上のCDRを含むVL領域を含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体であって、該CDRが、
a)RASQSISNYLN(CDR1);
b)AASSLQS(CDR2);または
c)QQSYSSPSTT(CDR3)
またはこれらのCDRに実質的な相同性を有する1または2以上のアミノ酸配列から選択される抗体。
【請求項13】
ヒト完全長TSHRに対して約1010L/molの結合アフィニティーを有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項14】
ヒト完全長TSHRに対して約109L/molの結合アフィニティーを有する、請求
項1〜12のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項15】
ヌクレオチドであって、
a.請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体をコードするヌクレオチド配列;
b.
i.
gaagtgcagctggtggagtctggaggaggcctgatccagcctggggggtc cctgagactctcctgtgcagcctctgggttcaccgtcagtagcaactaca tgagctgggtccgccaggctccagggaaggggctggagtgggtctcagtt acttatagcggtggtagcacatcctacgcagactccgtgaagggccgatt
caccatctccagagacaattccaagaacacgctgtatcttcaaatgaaca gcctgagagccgaggacacggccgtgtattactgtgcgagaggggggcga tattgtagtagtataagctgctacgcgaggagcgggtgtgactactgggg ccagggaaccctggtcaccgtctcctcagcctccaccaagggcccatcgg tcttccccctggcaccctcctccaagagcacctctgggggcacagcggcc ctgggctgcctggtcaaggactacttccccgaaccggtgacggtgtcgtg gaactcaggcgccctgaccagcggcgtgcacaccttcccggctgtcctac agtcctcaggactctactccctcagcagcgtggtgaccgtgccctccagc agcttgggcacccagacctacatctgcaacgtgaatcacaagcccagcaa caccaaggtggacaagagagttgagcccaaatcttgtgacaaaactagt ;または
ii.
gccatccagatgacccagtctccttcctccctgtctgcatctgtaggaga cagagtcaccatcacttgccgggcaagtcagagcattagcaactatttaa attggtatcagcagaaaccagggaaagcccctaagctcctgatctatgct gcatccagtttgcaaagtggggtcccatcaaggttcagtggcagtggatc tgggacagatttcactctcaccatcagcagtctgcaacctgaagattttg caacttactactgtcaacagagttacagttccccctccaccacttttggc caggggaccaagctggagatcaaacgaactgtggctgcaccatctgtctt catcttcccgccatctgatgagcagttgaaatctggaactgcctctgttg tgtgcctgctgaataacttctatcccagagaggccaaagtacagtggaag gtggataacgccctccaatcgggtaactcccaggagagtgtcacagagca ggacagcaaggacagcacctacagcctcagcagcaccctgacgctgagcaaagcagactacgagaaacacaaagtctacgcctgcgaagtcacccatcag
ggcctgagctcgcccgt
から選択され、
抗体VHドメイン;および抗体VLドメインまたは
i.SNYMS(CDR1);
ii.VTYSGGSTSYADSVKG(CDR2);
iii.GGRYCSSISCYARSGCDY(CDR3);
iv.RASQSISNYLN(CDR1);
v.AASSLQS(CDR2);または
vi.QQSYSSPSTT(CDR3)
から選択されるCDRのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列もしくはその一部分;または
c.a.またはb.のヌクレオチド配列への高い相同性を有し、かつ少なくとも約109L/molのアフィニティーでTSHRに結合する抗体をコードするヌクレオチド配列を含むヌクレオチド。
【請求項16】
請求項15に記載のヌクレオチドを含むベクター。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体を含む単離細胞。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体を発現する単離細胞。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体を分泌する単離細胞。
【請求項20】
安定へテロ−ハイブリドーマ細胞株由来である、請求項17,18、または19に記載の単離細胞。
【請求項21】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体を含む、規定濃度の、TSHR自己抗体を含む組成物。
【請求項22】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体を含む、規定濃度の、TSHアンタゴニスト活性を有するTSHR自己抗体を含む組成物。
【請求項23】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体を含む、規定濃度の、甲状腺刺激性抗体のアンタゴニストであるTSHR自己抗体を含む組成物。
【請求項24】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体を含む、規定濃度の、TSHアンタゴニスト活性を有し、かつ甲状腺刺激性抗体のアンタゴニストであるTSHR自己抗体を含む組成物。
【請求項25】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体を薬理学的に許容される担体と共に含み、甲状腺関連疾患の治療のために哺乳類被療体に投与するための医薬組成物。
【請求項26】
該甲状腺関連疾患が甲状腺活動亢進症、グレーブス眼病、新生児甲状腺機能亢進症、ヒト絨毛性ゴナドトロピン誘導性甲状腺機能亢進症、前頚骨粘液水腫、甲状腺癌、および甲状腺炎から選択される、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
ヒトへの投与に適する、請求項25または26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
該抗体が被療体の免疫システムにおいて有意な有害作用をもたない、請求項25、26または27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
該組成物が1または2以上のさらなる甲状腺刺激ホルモンレセプターアンタゴニストを含む、請求項25〜28のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
該さらなる甲状腺刺激ホルモンレセプターアンタゴニストが9D33である、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
注射用の形式である、甲状腺関連疾患の治療における使用のための請求項25〜30のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
局所用の形式である、前頚骨粘液水腫の治療における使用のための請求項25〜30のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
点眼薬の形式である、グレーブス眼病の治療における使用のための請求項25〜30のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体の産生方法であって、請求項17〜20のいずれか1項に記載の細胞を培養することにより該細胞に該抗体を発現させることを含む方法。
【請求項35】
該抗体が該細胞により分泌される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
哺乳類被療体または該被療体由来の細胞における甲状腺関連疾患の治療方法であって、該被療体、または該細胞を請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体に接触させることを含む方法。
【請求項37】
該甲状腺関連疾患が甲状腺活動亢進症、グレーブス眼病、新生児甲状腺機能亢進症、ヒト絨毛性ゴナドトロピン誘導性甲状腺機能亢進症、前頚骨粘液水腫、甲状腺癌、および甲状腺炎から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
哺乳類被療体の甲状腺中のTSHRを刺激する甲状腺刺激性自己抗体の阻害方法であって、該被療体を請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体に接触させることを含む方法。
【請求項39】
甲状腺刺激性自己抗体のTSHRへの結合が阻止される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
哺乳類被療体の甲状腺外TSHRに結合する甲状腺刺激性自己抗体の阻害方法であって、該被療体を請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体に接触させることを含む方法。
【請求項41】
該甲状腺外TSHRが該被療体の後眼窩組織および/または前頚骨組織に存在する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
該抗体が、甲状腺外TSHRに結合するTSHR自己抗体を遮断する、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
甲状腺内にあるか、または転移した甲状腺癌を、被療体内か、または被療体由来の甲状腺細胞において治療する方法であって、細胞内の恒常的甲状腺刺激ホルモンレセプター活性を阻害するために、癌性細胞を請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体に接触させることを含む方法。
【請求項44】
甲状腺癌細胞の再増殖が阻止または遅延される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
恒常的な甲状腺活性による甲状腺活動亢進症を、被療体内か、または被療体由来の甲状腺細胞において治療する方法であって、このような甲状腺活動亢進を阻害するために、被療体または細胞を請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体に接触させることを含む方法。
【請求項46】
該被療体がヒトである、請求項36〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
甲状腺関連疾患の治療における、請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体の使用。
【請求項48】
甲状腺関連疾患の治療のための薬剤の調製における、請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体の使用。
【請求項49】
医学的治療における使用のための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項50】
甲状腺関連疾患の治療における使用のための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項51】
該甲状腺関連疾患が甲状腺活動亢進症、グレーブス眼病、新生児甲状腺機能亢進症、ヒト絨毛性ゴナドトロピン誘導性甲状腺機能亢進症、前頚骨粘液水腫、甲状腺癌、および甲状腺炎から選択される、請求項50に記載の抗体。
【請求項52】
TSHR抗体を特徴付けるための方法であって、TSHR関連アミノ酸配列を有するポリペプチドへの試験されるTSHR抗体の結合を決定することを含み、請求項1〜14の
いずれか1項に記載の抗体の使用を含む方法工程に関わる方法。
【請求項53】
TSHR抗体の該ポリペプチドへの結合における請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体の効果を決定することを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
該TSHR関連ポリペプチドが完全長ヒトTSHRを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
TSHおよび関連分子を特徴付けるための方法であって、TSHR関連アミノ酸配列を有するポリペプチドへの、試験されるTSH、または関連分子の結合を決定することを含み、請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体の使用を含む方法工程に関わる方法。
【請求項56】
ELISA形式である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
アンタゴニストとして作用するTSHR自己抗体の結合に関わるTSHRアミノ酸を決定する方法であって、請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体が結合する第一のTSHR関連アミノ酸配列を有するポリペプチドを提供すること、該TSHR関連アミノ酸配列において少なくとも1個のアミノ酸を改変すること、およびこのような改変の効果を抗体の結合において決定することを含む方法。
【請求項58】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体を改変するための方法であって、該抗体の少なくとも1個のアミノ酸を改変すること、およびこのような改変の効果をTSHR関連配列への結合において決定することを含む方法。
【請求項59】
改変TSHR抗体は、TSHRに対する増強されたアフィニティーを有するものが選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
TSHRに結合する甲状腺刺激性抗体を阻害する分子を同定するための方法であって、請求項1〜14のいずれか1項に記載の少なくとも1種の抗体を参照として提供することを含む方法。
【請求項61】
TSHRに結合する甲状腺刺激性抗体を阻止する分子が選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
TSHRに結合する甲状腺遮断性抗体を阻害する分子を同定するための方法であって、請求項1〜14のいずれか1項に記載の少なくとも1種の抗体を参照として提供することを含む方法。
【請求項63】
TSHRに結合する甲状腺遮断性抗体を阻止する分子が選択される、請求項62に記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−521139(P2010−521139A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549848(P2009−549848)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000518
【国際公開番号】WO2008/099185
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(507044468)アールエスアール リミテッド (3)
【Fターム(参考)】