アンチヒューズ素子
【課題】電圧が印加された場合に速やかに短絡状態になり、短絡時の抵抗が低くなるようにすることができるアンチヒューズ素子を提供する。
【解決手段】(a)対向する少なくとも一対の電極膜30,32と、(b)一対の電極膜30,32の間に配置された絶縁体膜22と、(c)一対の電極膜30,32及び絶縁体膜22を支持する基板12とを備える。一対の電極膜30,32は、基板12に相対的に近い一方30が相対的に高電位の第1端子14に接続され、基板12から相対的に遠い他方32が相対的に低電位の第2端子16に接続される。
【解決手段】(a)対向する少なくとも一対の電極膜30,32と、(b)一対の電極膜30,32の間に配置された絶縁体膜22と、(c)一対の電極膜30,32及び絶縁体膜22を支持する基板12とを備える。一対の電極膜30,32は、基板12に相対的に近い一方30が相対的に高電位の第1端子14に接続され、基板12から相対的に遠い他方32が相対的に低電位の第2端子16に接続される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンチヒューズ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般のヒューズは所定以上の電圧等になると切れ、電流を遮断する。これとは逆に、所定以上の電圧になると短絡し、電流が流れるようになるアンチヒューズ素子が提案されている。
【0003】
例えば図10の断面図に示す絶縁体層68は、アンチヒューズ素子として機能する。絶縁体層68は、絶縁材料(例えばSiO2)からなり、基板61上に形成された配線パターン62s,62tの両方に接し、配線パターン62s,62t間の空隙63を跨ぐように連続的に形成されている。配線パターン62s,62tには、LED(発光ダイオード)66のリード端子64,65が半田64a,65aを用いて接続されている。
【0004】
通常時は、LED66の順方向に電流が流れる。例えば、一方の配線パターン62sから、リード端子65、LED66、リード端子64を通って、他方の配線パターン62tに電流が流れる。
【0005】
しかし、LED66の不良、故障等によりLED66内を電流が流れないオープン状態(開放不良)となると、配線パターン62s,62t間に印加される電圧によって、絶縁体層68による絶縁が破壊され、電流は、一方の配線パターン62sから、絶縁体層68を通り、他方の配線パターン62tに流れる。
【0006】
このような構成のアンチヒューズ素子は、例えば図11の電気回路図に示すように、直列に接続されたLED51A,51B,・・・51nの一部が故障しても、他のLEDが点灯し続けるようにするために用いられる。この場合、アンチヒューズ素子52A,52B,・・・52nは、直列に接続されたLED51A,51B,・・・51nのそれぞれに対して並列となるように接続された状態で使用される。一部のLED(例えば51A)に電流が流れない開放不良の場合、そのLEDに並列に接続されたアンチヒューズ素子(例えば52A)が短絡し、電流はアンチヒューズ素子(例えば52A)を迂回して流れ、他のLEDにも電流が流れるため、他のLEDは点灯し続ける。
【0007】
n個のLEDが直列接続され、LEDの順方向電圧低下の電圧値をVfとすると、LEDが開放不良となった場合に、直列接続されたn個のLEDの両端におおよそVf×nの電圧をかけてアンチヒューズ素子の絶縁を破壊して短絡させ、他のLEDを点灯させる。
【0008】
図12は、アンチヒューズ素子の絶縁破壊電圧とアンチヒューズ素子の通電電流との関係を示すグラフである。図12に示すように、絶縁破壊電圧(50V)を越えると絶縁破壊等を開始する。絶縁破壊電圧より低い電圧でもリーク電流が流れ、絶縁破壊電圧に近い領域ではリーク電流が急激に上昇する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−324355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば、Vf=3.3Vで300mAの電流が流れるLED(1W品)を評価したところ、25℃では2.3Vで、100℃では2.1Vで、約3μAのリーク電流が流れた。このLEDを18個直列で使用した場合、Vf×n=59.4Vとなる。
【0010】
しかし、実際はアンチヒューズ素子が絶縁破壊電圧以下であっても3μAの電流が流れる領域が存在すると、1つのLEDが開放不良となった場合、100℃においても他の17個のLEDで2.1×(18−1)=35.7Vの電圧降下が起こる。
【0011】
例えば定電流回路で70Vまで昇圧できたとしても、絶縁破壊電圧が45Vであり34.3V以上でリーク電流が3μAとなる領域が存在するアンチヒューズ素子の場合、アンチヒューズ素子には70−35.7=34.3V以下の電圧しかかからないため、短絡状態にはならない。
【0012】
上記LEDの評価結果では1.9V印加時でもリーク電流は10nA未満であり、実質上、図11に示す電気回路でアンチヒューズ素子にVf×nの電圧をかけようとすると、絶縁破壊電圧以下では1nA以下のリーク電流とすることが必要になる。しかし、そのような特性を有する絶縁膜は、実現困難である。
【0013】
もちろん上記のような場合でも、アンチヒューズ素子の絶縁が破壊する絶縁破壊電圧を下げれば動作可能になる。しかしながら、このアンチヒューズ素子はVf印加後にはLEDよりも充分に長い寿命を有する必要がある。ハイパワーのLEDの直近にアンチヒューズ素子を配置する場合、LEDの発熱によりアンチヒューズ素子の温度も上昇するため、アンチヒューズ素子の寿命は短くなる傾向になる。
【0014】
さらにこのアンチヒューズ素子には以下のような特性が要求される。
(1)動作時に速やかに短絡状態になること
(2)短絡時の抵抗が低いこと。理想的にはLED正常動作時の抵抗より低いこと
(3)短絡状態での信頼性が高いこと。具体的にはLED電流値と同じ電流を長時間流しても抵抗が上昇しないこと
【0015】
すなわち、短絡状態になるのに時間を要すると、その間は他のLEDには微小電流しか流れないので、その間は非常に照度の低い状態で点灯していることになるため、(1)の特性が必要となる。また、LED正常動作時の抵抗より高くなると、この部分での電圧降下が大きくなるので電源電圧を高くする必要が生じるため、(2)、(3)の特性が必要となる。
【0016】
以上の理由により、アンチヒューズ素子の特性は、絶縁体材料、電極材料、内部構造に著しく影響される。
【0017】
本発明は、かかる実情に鑑み、電圧が印加された場合に速やかに短絡状態になり、短絡時の抵抗が低くなるようにすることができるアンチヒューズ素子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成したアンチヒューズ素子を提供する。
【0019】
アンチヒューズ素子は、(a)対向する少なくとも一対の電極膜と、(b)前記一対の電極膜の間に配置された絶縁体膜と、(c)前記一対の電極膜及び前記絶縁体膜を支持する基板とを備える。前記一対の電極膜は、前記基板に相対的に近い一方が相対的に高電位の第1端子に接続され、前記基板から相対的に遠い他方が相対的に低電位の第2端子に接続される。
【0020】
上記構成において、対向する一対の電極膜の間に絶縁体膜が配置されているので、一対の電極膜の間に電圧が印加された場合に、絶縁体膜の絶縁が破壊され速やかに短絡状態になり、短絡時の抵抗が低くなるようにすることができる。
【0021】
上記構成によれば、上記構成とは逆に一対の電極膜のうち基板に相対的に近い一方(下部電極)が相対的に低電位の第2端子に接続され、基板から相対的に遠い他方(上部電極)が相対的に高電位の第1端子に接続される場合よりも、アンチヒューズ素子が動作して短絡状態になるまでの時間を短くすることができる。
【0022】
好ましくは、前記誘電体膜がチタン酸バリウムストロンチウムを主成分とする。
【0023】
この場合、動作前の寿命、動作後の抵抗について良好なアンチヒューズ素子を製造することができる。
【0024】
好ましくは、前記基板から相対的に遠い前記他方の前記電極膜の前記絶縁体膜とは反対側に配置された絶縁層をさらに備える。
【0025】
この場合、一対の電極膜間に電圧がかかった際のリーク電流を小さくすることができる。
【0026】
好ましくは、前記電極膜は、少なくとも前記絶縁体膜と接触する部分が貴金属である。
【0027】
この場合、一対の電極膜の間が短絡状態となった後に長時間電流を流しても、電極膜の酸化や焼結による玉化などが生じないため、一対の電極膜の間の電気抵抗値が上がらないようにすることができる。したがって、アンチヒューズ素子の信頼性を高めることができる。
【0028】
好ましくは、前記基板に支持された、他の一対の電極膜及び前記他の一対の電極膜の間に配置された他の絶縁体膜をさらに備える。前記他の一対の電極膜は、前記基板に相対的に近い一方が相対的に低電位の前記第2端子に接続され、前記基板から相対的に遠い他方が相対的に高電位の前記第1端子に接続される。
【0029】
上記構成によれば、アンチヒューズ素子をどちらの向きに接続しても、アンチヒューズ素子が動作して短絡状態になるまでの時間を短くすることができ、向き(極性)を考慮することなくアンチヒューズ素子を実装することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のアンチヒューズ素子は、電圧が印加された場合に速やかに短絡状態になり、短絡時の抵抗が低くなるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図9を参照しながら説明する。
【0032】
<実施例1> 実施例1のアンチヒューズ素子10について、図1〜図5及び図8を参照しながら説明する。
【0033】
図1の平面図に示すように、アンチヒューズ素子10の上面には一対の外部電極14,16が露出し、外部電極14,16の周囲は保護樹脂18で覆われている。
【0034】
図1の線II−IIに沿って切断した断面図である図2に示すように、アンチヒューズ素子10は、基板12上に、絶縁体膜20,22,24と電極膜30,32とが交互に積層されている。電極膜30,32は、導電体層34を介して、それぞれ、外部電極14,16に電気的に接続されている。絶縁体膜20,22,24と電極膜30,32とにより形成される薄膜構造と導電体層34との間には、絶縁層26,28が形成されている。
【0035】
対向する電極膜30,32の間に配置された絶縁体膜22は、電極膜30,32間に印加される電圧が所定値を越えると絶縁が破壊され、電極膜30,32間を短絡するように、適宜な材料を用いて形成する。例えば、絶縁体膜22には、(Ba,Sr)TiO3、SrTiO3、BaTiO3などの他、Pb(Zr,Ti)O3系、SrBi4Ti4O15等のビスマス層状化合物を用いることができる。
【0036】
電極膜30,32の間に配置された絶縁体膜22以外の絶縁体膜20,24は、電極膜30,32の間に配置された絶縁体膜22と同じ材料を用いても、異なる材料を用いてもよいが、同じ材料を用いると製造が簡単になる。電極膜30,32の間に配置された絶縁体膜22以外の絶縁体膜20,24を形成する。絶縁体膜20は、基板20との密着層である。絶縁体膜24は、基板12から相対的に遠い電極膜32の絶縁体膜22とは反対側に配置された絶縁層であり、この絶縁体膜(絶縁層)24を形成することにより、電極膜30,32間に電圧が印加された際のリーク電流を小さくすることができる。
【0037】
電極膜30,32には、例えば、導電性を有する金属材料を用いる。電極膜30,32は、電極膜30,32間が短絡状態となった後に長時間電流を流しても、酸化や焼結による玉化などが生じないようにするため、少なくとも電極膜30,32の間に配置された絶縁体膜22に接する部分に、貴金属を用いる。例えば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)を、単体又は合金で用いる。
【0038】
次に、アンチヒューズ素子10の製造例について、図3〜図6の断面図を参照しながら説明する。
【0039】
まず、図3(a)に示すように、基板12の上面12sに絶縁体膜20を形成する。具体的には、700nmの熱酸化膜が形成されたSi基板12の上面12sに、Ba:Sr:Ti=70:30:100(モル比)と有機化合物とを混合した原料液をスピンコートにより塗布した後、ホットプレート上300℃で乾燥する。これを2回繰り返した後、昇温速度5℃/sでRTA(高速昇温処理)を行い、酸素雰囲気中600℃の条件で30分間熱処理して、絶縁体膜20として、チタン酸バリウムストロンチウム((Ba,Sr)TiO3(以下、「BST」という。)の薄膜を形成した。この時、最終的にBST薄膜20の膜厚が90nmとなるような条件で成膜を行った。
【0040】
次いで、図3(b)に示すように、電極膜30を形成する。具体的には、BST薄膜20の上に、スパッタリング法を用いて膜厚200nmのPt膜30を成膜した。
【0041】
次いで、図3(c)に示すように、絶縁体膜22、電極膜32、絶縁体膜24を順に形成する。すなわち、Pt膜30上に、前述のBST薄膜20と同様の方法で、絶縁体膜22として膜厚90nmのBST薄膜を形成する。このBST薄膜22上に、前述のPt膜30と同様の方法で、電極膜32として膜厚200nmのPt膜を成膜する。さらに、このPt膜32上に、前述のBST薄膜20と同様の方法で、絶縁体膜24として膜厚90nmのBST薄膜を形成した。
【0042】
次いで、図4(d)に示すように、3層目のBST薄膜24と、2層目のPt膜32をパターニングする。すなわち、3層目のBST薄膜24の上にレジストを塗布し、露光、現像によりレジストパターンを形成し、RIE(反応性イオンエッチング)により3層目のBST薄膜24と2層目のPt膜32を所定形状にパターニングした後、アッシングによりレジストを除去した。
【0043】
同様の方法で、図4(e)に示すように、1、2層目のBST薄膜20,22と、1層目のPt膜30をパターニングした後、レジストを除去した。
【0044】
次いで、図4(f)に示すように、Si基板12上にパターニングされたBST薄膜20,22,24とPt膜30,32とからなる薄膜構造の上に、絶縁層26,28を形成する。
【0045】
具体的には、前述のBST薄膜20と同様に、原料液を塗布・乾燥を2回繰り返した後、昇温速度5℃/sでRTA(高速昇温処理)を行い、酸素雰囲気中800℃で30分熱処理してBST薄膜を形成する。その上に、スパッタリングにより膜厚400nmのSiNX膜を成膜する。その上に、感光性ポリイミドをスピンコートし、露光、現像、キュアすることにより、ポリイミド樹脂のマスクパターンを形成し、形成したマスクパターンを使用し、RIEによりSiNX膜とBST薄膜とをパターニングする。この時、図4(e)に示すようにパターニングで残した2層目と3層目の絶縁体膜22,26に、図4(f)に示すように電極膜30,32が露出する開口部13,17を形成した。
【0046】
次いで、図5(g)に示すように、導電体層34と外部電極14,16とを形成する。
【0047】
具体的には、マグネトロンスパッタを用いて、Ti膜(膜厚50nm)、Cu膜(膜厚500nm)を連続成膜した後、レジスト塗布、露光、現像を順に行なうことによりレジストパターンを形成し、レジストパターンの開口部に、電解メッキで膜厚1μmのNi膜を成膜し、さらにその上に、膜厚1μmのAu膜を成膜した。次いで、溶剤中でレジストを剥離した後、再びレジスト塗布、露光、現像を順に行なうことによりレジストパターンを形成し、形成したレジストパターンをマスクにして、Cu膜をウエットエッチングによりパターンニングした。次いで、レジストパターンをそのまま用いて、RIEにより、Ti膜をパターンニングした。なお、図5(g)において、導電体層34はTi膜及びCu膜で形成されており、外部電極14,16はNi膜及びAu膜により形成されている。
【0048】
次いで、図5(h)に示すように、外部電極14,16の周囲に保護樹脂18を形成する。具体的には、ソルダーレジストとして感光性ポリイミドをスピンコートし、露光、現像、キュアを順に行なうことにより、感光性ポリイミドをパターニングした状態で形成した。
【0049】
次いで、図5(i)に示すように、基板12をカットして、アンチヒューズ素子10を取り出す。具体的には、Si基板12が0.1mmの厚さになるまで、Si基板12の裏面12t側を研削した後、ダイシングソーを用いて基板12をカットし、0.6×0.3×0.1mmmのチップ形状のアンチヒューズ素子10を取り出す。
【0050】
得られたアンチヒューズ素子の絶縁破壊電圧とアンチヒューズ素子の通電電流との関係を調査した。絶縁破壊電圧は15Vであり、図12に比べてリーク電流が急峻な上昇特性を示す。
【0051】
次に、作製したアンチヒューズ素子10の動作確認について説明する。
【0052】
図8の電気回路図に示すように、1W白色のLED2を18個直列接続したモジュール基板を作製した。図8に示すように、LED2間の一箇所にスイッチSを設け、直列に接続されたスイッチS及びスイッチSが接続されたLEDと並列に、作製したアンチヒューズ素子10をハンダ接続した。
【0053】
スイッチSを閉じた状態で定電圧電源を用い、300mAの電流が流れるまで昇圧した。300mA通電時の電圧は、約59Vであった。
【0054】
次に、電源を定電流電源にし、300mAの定電流を流した。この時、電圧リミットを60Vに設定した。
【0055】
このような状態でスイッチSを閉から開にし、アンチヒューズ素子10の動作を確認した。
【0056】
アンチヒューズ素子10の電極膜30,32のうち基板12に近い一方の電極膜30に接続された外部電極14を相対的に高電位側(電源Vo側)、基板12から遠い他方の電極膜32に接続された外部電極16を相対的に低電位側(グランド側)に接続した場合と、アンチヒューズ素子10の電極膜30,32のうち基板12に近い一方の電極膜30に接続された外部電極14を相対的に低電位側、基板12から遠い他方の電極膜32に接続された外部電極16を相対的に高電位側に接続した場合とについて、スイッチSを閉から開にするテストを5回ずつ行った。
【0057】
テストの結果、いずれの場合も、スイッチSを閉から開にすることにより、アンチヒューズ素子10が並列に接続されている部分のLEDは消灯し、他の17個のLEDは一旦暗くなってから、元の照度と同程度まで復帰した。
【0058】
しかし、照度が復帰するまでの所要時間は、基板12に近い一方の電極膜30に接続された外部電極14を相対的に高電位側(電源Vo側)に接続する前者の場合には、全て1秒以内に元の照度と同程度に復帰した。一方、基板12から遠い他方の電極膜32に接続された外部電極16を相対的に高電位側(電源Vo側)に接続する後者の場合、照度が復帰するまでの所要時間は1〜5秒と長く、バラツキも大きかった。
【0059】
動作して短絡状態となったアンチヒューズ素子について、アンチヒューズ素子単体の抵抗を測定したところ、3Ω以下であった。
【0060】
また、一部については、アンチヒューズ動作後、72時間の通電試験を行った。その結果、LEDの照度に変化はなく、試験後のアンチヒューズ素子に抵抗の上昇は見られなかった。
【0061】
また、アンチヒューズ素子単体で信頼性試験(高温、高電圧の加速試験)を行ったところ、105℃、3.5Vの寿命は、50000時間以上と推定された。
【0062】
以上のように、アンチヒューズ素子10は、基板12に近い電極膜30が高電位側となるように接続した方が、アンチヒューズとしての動作速度が速く、特性が安定している。また、前述した材料構成、構造のアンチヒューズ素子10を作製することにより、動作前の寿命、動作後の抵抗についても好適なものが得られた。
【0063】
<実施例2> 実施例2のアンチヒューズ素子10xについて、図6〜図9を参照しながら説明する。
【0064】
図6はアンチヒューズ素子10xの平面図である。図7(a)は、図6の線A−Aに沿って切断した断面図である。図7(b)は、図6の線B−Bに沿って切断した断面図である。
【0065】
図6及び図7に示すように、実施例2のアンチヒューズ素子10xは、実施例1のアンチヒューズ素子10と略同様に構成されている。
【0066】
すなわち、図6に示すように、アンチヒューズ素子10xは、上面に一対の外部電極14,16が露出し、外部電極14,16の周囲は保護樹脂18で覆われている。図7に示すように、基板12上に、絶縁体膜20,22,24と電極膜30a,30b,32a,32bとが交互に積層されている。
【0067】
図6において鎖線よりも下側の部分では、図7(b)に示すように、実施例1のアンチヒューズ素子10と同様に、基板12に近い電極膜30bは一方の外部電極14に電気的に接続され、基板12から遠い電極膜32bは他方の外部電極16に電気的に接続されている。
【0068】
これに対し、図6において鎖線よりも上側の部分では、図7(a)に示すように、実施例1のアンチヒューズ素子10とは逆に、基板12から遠い電極膜32aが一方の外部電極14に電気的に接続され、基板12に近い電極膜30aが他方の外部電極16に電気的に接続されている。
【0069】
つまり、実施例2のアンチヒューズ素子10xは、図9の電気回路図に示すように、外部電極14,16間に、2対の電極30a,32a;30b,32bが逆向きに接続されている。
【0070】
次に、実施例2のアンチヒューズ素子10xの動作確認について説明する。
【0071】
実施例1と同様の方法で、0.6×0.3×0.1mmmのチップ形状のアンチヒューズ素子10xを作製し、これを実施例1と同様の方法(図8参照)で、LED間の1箇所に設けたスイッチSを閉から開にするテストを行った。その結果、アンチヒューズ素子10xの極性によらず、アンチヒューズ素子10が並列に接続されている部分のLEDは消灯し、他の17個のLEDは一旦暗くなった後、全て1秒以内に元の照度と同程度に復帰した。
【0072】
これは、一方の外部電極14を相対的に高電位側に、他方の外部電極16を相対的に低電位側に接続したときも、逆に、一方の外部電極14を相対的に低電位側に、他方の外部電極16を相対的に高電位側に接続したときも、2対の電極膜30a,32aと30b,32bとのうちいずれか一方は、基板に相対的に近い電極膜が相対的に高電位側に接続され、基板から相対的に遠い他方が相対的に低電位側に接続されるため、いずれか一方の電極膜30a,32a又は30b,32bの間が、短時間で短絡状態になるからである。
【0073】
動作して短絡状態となったアンチヒューズ素子10x単体の抵抗を測定したところ、3Ω以下であった。
【0074】
また、一部についてはアンチヒューズ動作後、72時間の通電試験を行なったが、LEDの照度に変化はなく、試験後のアンチヒューズに抵抗の上昇は見られなかった。
【0075】
また、アンチヒューズ単体での信頼性試験を行なったところ、105℃、3.5Vの寿命は、50000時間以上と推定される。
【0076】
実施例2のアンチヒューズ素子10xは、実装方向によらず、動作速度が速くすることができる。動作前の寿命、動作後の抵抗についても、悪影響はない。
【0077】
<まとめ> 以上に説明したアンチヒューズ素子10,10xは、電圧が印加された場合に速やかに短絡状態になり、短絡時の抵抗が低くなるようにすることができる。
【0078】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
【0079】
例えば、本発明のアンチヒューズ素子を、他の回路素子等と一体に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】アンチヒューズ素子の平面図である。(実施例1)
【図2】アンチヒューズ素子の断面図である。(実施例1)
【図3】アンチヒューズ素子の製造工程を示す断面図である。(実施例1)
【図4】アンチヒューズ素子の製造工程を示す断面図である。(実施例1)
【図5】アンチヒューズ素子の製造工程を示す断面図である。(実施例1)
【図6】アンチヒューズ素子の平面図である。(実施例2)
【図7】アンチヒューズ素子の断面図である。(実施例2)
【図8】テスト時の電気回路図である。(実施例1、2)
【図9】アンチヒューズ素子の内部構造を示す電気回路図である。(実施例2)
【図10】アンチヒューズ素子の断面図である。(従来例)
【図11】アンチヒューズ素子の電気回路図である。(従来例)
【図12】アンチヒューズ素子の特性を示すグラフである。(従来例)
【符号の説明】
【0081】
10,10x アンチヒューズ素子
12 基板
14 外部電極(第1端子)
16 外部電極(第2端子)
20 絶縁体膜
22 絶縁体膜
24 絶縁体膜(絶縁層)
30,30a,30b 電極膜(電極膜の一方)
32,32a,32b 電極膜(電極膜の他方)
【技術分野】
【0001】
本発明はアンチヒューズ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般のヒューズは所定以上の電圧等になると切れ、電流を遮断する。これとは逆に、所定以上の電圧になると短絡し、電流が流れるようになるアンチヒューズ素子が提案されている。
【0003】
例えば図10の断面図に示す絶縁体層68は、アンチヒューズ素子として機能する。絶縁体層68は、絶縁材料(例えばSiO2)からなり、基板61上に形成された配線パターン62s,62tの両方に接し、配線パターン62s,62t間の空隙63を跨ぐように連続的に形成されている。配線パターン62s,62tには、LED(発光ダイオード)66のリード端子64,65が半田64a,65aを用いて接続されている。
【0004】
通常時は、LED66の順方向に電流が流れる。例えば、一方の配線パターン62sから、リード端子65、LED66、リード端子64を通って、他方の配線パターン62tに電流が流れる。
【0005】
しかし、LED66の不良、故障等によりLED66内を電流が流れないオープン状態(開放不良)となると、配線パターン62s,62t間に印加される電圧によって、絶縁体層68による絶縁が破壊され、電流は、一方の配線パターン62sから、絶縁体層68を通り、他方の配線パターン62tに流れる。
【0006】
このような構成のアンチヒューズ素子は、例えば図11の電気回路図に示すように、直列に接続されたLED51A,51B,・・・51nの一部が故障しても、他のLEDが点灯し続けるようにするために用いられる。この場合、アンチヒューズ素子52A,52B,・・・52nは、直列に接続されたLED51A,51B,・・・51nのそれぞれに対して並列となるように接続された状態で使用される。一部のLED(例えば51A)に電流が流れない開放不良の場合、そのLEDに並列に接続されたアンチヒューズ素子(例えば52A)が短絡し、電流はアンチヒューズ素子(例えば52A)を迂回して流れ、他のLEDにも電流が流れるため、他のLEDは点灯し続ける。
【0007】
n個のLEDが直列接続され、LEDの順方向電圧低下の電圧値をVfとすると、LEDが開放不良となった場合に、直列接続されたn個のLEDの両端におおよそVf×nの電圧をかけてアンチヒューズ素子の絶縁を破壊して短絡させ、他のLEDを点灯させる。
【0008】
図12は、アンチヒューズ素子の絶縁破壊電圧とアンチヒューズ素子の通電電流との関係を示すグラフである。図12に示すように、絶縁破壊電圧(50V)を越えると絶縁破壊等を開始する。絶縁破壊電圧より低い電圧でもリーク電流が流れ、絶縁破壊電圧に近い領域ではリーク電流が急激に上昇する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−324355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば、Vf=3.3Vで300mAの電流が流れるLED(1W品)を評価したところ、25℃では2.3Vで、100℃では2.1Vで、約3μAのリーク電流が流れた。このLEDを18個直列で使用した場合、Vf×n=59.4Vとなる。
【0010】
しかし、実際はアンチヒューズ素子が絶縁破壊電圧以下であっても3μAの電流が流れる領域が存在すると、1つのLEDが開放不良となった場合、100℃においても他の17個のLEDで2.1×(18−1)=35.7Vの電圧降下が起こる。
【0011】
例えば定電流回路で70Vまで昇圧できたとしても、絶縁破壊電圧が45Vであり34.3V以上でリーク電流が3μAとなる領域が存在するアンチヒューズ素子の場合、アンチヒューズ素子には70−35.7=34.3V以下の電圧しかかからないため、短絡状態にはならない。
【0012】
上記LEDの評価結果では1.9V印加時でもリーク電流は10nA未満であり、実質上、図11に示す電気回路でアンチヒューズ素子にVf×nの電圧をかけようとすると、絶縁破壊電圧以下では1nA以下のリーク電流とすることが必要になる。しかし、そのような特性を有する絶縁膜は、実現困難である。
【0013】
もちろん上記のような場合でも、アンチヒューズ素子の絶縁が破壊する絶縁破壊電圧を下げれば動作可能になる。しかしながら、このアンチヒューズ素子はVf印加後にはLEDよりも充分に長い寿命を有する必要がある。ハイパワーのLEDの直近にアンチヒューズ素子を配置する場合、LEDの発熱によりアンチヒューズ素子の温度も上昇するため、アンチヒューズ素子の寿命は短くなる傾向になる。
【0014】
さらにこのアンチヒューズ素子には以下のような特性が要求される。
(1)動作時に速やかに短絡状態になること
(2)短絡時の抵抗が低いこと。理想的にはLED正常動作時の抵抗より低いこと
(3)短絡状態での信頼性が高いこと。具体的にはLED電流値と同じ電流を長時間流しても抵抗が上昇しないこと
【0015】
すなわち、短絡状態になるのに時間を要すると、その間は他のLEDには微小電流しか流れないので、その間は非常に照度の低い状態で点灯していることになるため、(1)の特性が必要となる。また、LED正常動作時の抵抗より高くなると、この部分での電圧降下が大きくなるので電源電圧を高くする必要が生じるため、(2)、(3)の特性が必要となる。
【0016】
以上の理由により、アンチヒューズ素子の特性は、絶縁体材料、電極材料、内部構造に著しく影響される。
【0017】
本発明は、かかる実情に鑑み、電圧が印加された場合に速やかに短絡状態になり、短絡時の抵抗が低くなるようにすることができるアンチヒューズ素子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成したアンチヒューズ素子を提供する。
【0019】
アンチヒューズ素子は、(a)対向する少なくとも一対の電極膜と、(b)前記一対の電極膜の間に配置された絶縁体膜と、(c)前記一対の電極膜及び前記絶縁体膜を支持する基板とを備える。前記一対の電極膜は、前記基板に相対的に近い一方が相対的に高電位の第1端子に接続され、前記基板から相対的に遠い他方が相対的に低電位の第2端子に接続される。
【0020】
上記構成において、対向する一対の電極膜の間に絶縁体膜が配置されているので、一対の電極膜の間に電圧が印加された場合に、絶縁体膜の絶縁が破壊され速やかに短絡状態になり、短絡時の抵抗が低くなるようにすることができる。
【0021】
上記構成によれば、上記構成とは逆に一対の電極膜のうち基板に相対的に近い一方(下部電極)が相対的に低電位の第2端子に接続され、基板から相対的に遠い他方(上部電極)が相対的に高電位の第1端子に接続される場合よりも、アンチヒューズ素子が動作して短絡状態になるまでの時間を短くすることができる。
【0022】
好ましくは、前記誘電体膜がチタン酸バリウムストロンチウムを主成分とする。
【0023】
この場合、動作前の寿命、動作後の抵抗について良好なアンチヒューズ素子を製造することができる。
【0024】
好ましくは、前記基板から相対的に遠い前記他方の前記電極膜の前記絶縁体膜とは反対側に配置された絶縁層をさらに備える。
【0025】
この場合、一対の電極膜間に電圧がかかった際のリーク電流を小さくすることができる。
【0026】
好ましくは、前記電極膜は、少なくとも前記絶縁体膜と接触する部分が貴金属である。
【0027】
この場合、一対の電極膜の間が短絡状態となった後に長時間電流を流しても、電極膜の酸化や焼結による玉化などが生じないため、一対の電極膜の間の電気抵抗値が上がらないようにすることができる。したがって、アンチヒューズ素子の信頼性を高めることができる。
【0028】
好ましくは、前記基板に支持された、他の一対の電極膜及び前記他の一対の電極膜の間に配置された他の絶縁体膜をさらに備える。前記他の一対の電極膜は、前記基板に相対的に近い一方が相対的に低電位の前記第2端子に接続され、前記基板から相対的に遠い他方が相対的に高電位の前記第1端子に接続される。
【0029】
上記構成によれば、アンチヒューズ素子をどちらの向きに接続しても、アンチヒューズ素子が動作して短絡状態になるまでの時間を短くすることができ、向き(極性)を考慮することなくアンチヒューズ素子を実装することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のアンチヒューズ素子は、電圧が印加された場合に速やかに短絡状態になり、短絡時の抵抗が低くなるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図9を参照しながら説明する。
【0032】
<実施例1> 実施例1のアンチヒューズ素子10について、図1〜図5及び図8を参照しながら説明する。
【0033】
図1の平面図に示すように、アンチヒューズ素子10の上面には一対の外部電極14,16が露出し、外部電極14,16の周囲は保護樹脂18で覆われている。
【0034】
図1の線II−IIに沿って切断した断面図である図2に示すように、アンチヒューズ素子10は、基板12上に、絶縁体膜20,22,24と電極膜30,32とが交互に積層されている。電極膜30,32は、導電体層34を介して、それぞれ、外部電極14,16に電気的に接続されている。絶縁体膜20,22,24と電極膜30,32とにより形成される薄膜構造と導電体層34との間には、絶縁層26,28が形成されている。
【0035】
対向する電極膜30,32の間に配置された絶縁体膜22は、電極膜30,32間に印加される電圧が所定値を越えると絶縁が破壊され、電極膜30,32間を短絡するように、適宜な材料を用いて形成する。例えば、絶縁体膜22には、(Ba,Sr)TiO3、SrTiO3、BaTiO3などの他、Pb(Zr,Ti)O3系、SrBi4Ti4O15等のビスマス層状化合物を用いることができる。
【0036】
電極膜30,32の間に配置された絶縁体膜22以外の絶縁体膜20,24は、電極膜30,32の間に配置された絶縁体膜22と同じ材料を用いても、異なる材料を用いてもよいが、同じ材料を用いると製造が簡単になる。電極膜30,32の間に配置された絶縁体膜22以外の絶縁体膜20,24を形成する。絶縁体膜20は、基板20との密着層である。絶縁体膜24は、基板12から相対的に遠い電極膜32の絶縁体膜22とは反対側に配置された絶縁層であり、この絶縁体膜(絶縁層)24を形成することにより、電極膜30,32間に電圧が印加された際のリーク電流を小さくすることができる。
【0037】
電極膜30,32には、例えば、導電性を有する金属材料を用いる。電極膜30,32は、電極膜30,32間が短絡状態となった後に長時間電流を流しても、酸化や焼結による玉化などが生じないようにするため、少なくとも電極膜30,32の間に配置された絶縁体膜22に接する部分に、貴金属を用いる。例えば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)を、単体又は合金で用いる。
【0038】
次に、アンチヒューズ素子10の製造例について、図3〜図6の断面図を参照しながら説明する。
【0039】
まず、図3(a)に示すように、基板12の上面12sに絶縁体膜20を形成する。具体的には、700nmの熱酸化膜が形成されたSi基板12の上面12sに、Ba:Sr:Ti=70:30:100(モル比)と有機化合物とを混合した原料液をスピンコートにより塗布した後、ホットプレート上300℃で乾燥する。これを2回繰り返した後、昇温速度5℃/sでRTA(高速昇温処理)を行い、酸素雰囲気中600℃の条件で30分間熱処理して、絶縁体膜20として、チタン酸バリウムストロンチウム((Ba,Sr)TiO3(以下、「BST」という。)の薄膜を形成した。この時、最終的にBST薄膜20の膜厚が90nmとなるような条件で成膜を行った。
【0040】
次いで、図3(b)に示すように、電極膜30を形成する。具体的には、BST薄膜20の上に、スパッタリング法を用いて膜厚200nmのPt膜30を成膜した。
【0041】
次いで、図3(c)に示すように、絶縁体膜22、電極膜32、絶縁体膜24を順に形成する。すなわち、Pt膜30上に、前述のBST薄膜20と同様の方法で、絶縁体膜22として膜厚90nmのBST薄膜を形成する。このBST薄膜22上に、前述のPt膜30と同様の方法で、電極膜32として膜厚200nmのPt膜を成膜する。さらに、このPt膜32上に、前述のBST薄膜20と同様の方法で、絶縁体膜24として膜厚90nmのBST薄膜を形成した。
【0042】
次いで、図4(d)に示すように、3層目のBST薄膜24と、2層目のPt膜32をパターニングする。すなわち、3層目のBST薄膜24の上にレジストを塗布し、露光、現像によりレジストパターンを形成し、RIE(反応性イオンエッチング)により3層目のBST薄膜24と2層目のPt膜32を所定形状にパターニングした後、アッシングによりレジストを除去した。
【0043】
同様の方法で、図4(e)に示すように、1、2層目のBST薄膜20,22と、1層目のPt膜30をパターニングした後、レジストを除去した。
【0044】
次いで、図4(f)に示すように、Si基板12上にパターニングされたBST薄膜20,22,24とPt膜30,32とからなる薄膜構造の上に、絶縁層26,28を形成する。
【0045】
具体的には、前述のBST薄膜20と同様に、原料液を塗布・乾燥を2回繰り返した後、昇温速度5℃/sでRTA(高速昇温処理)を行い、酸素雰囲気中800℃で30分熱処理してBST薄膜を形成する。その上に、スパッタリングにより膜厚400nmのSiNX膜を成膜する。その上に、感光性ポリイミドをスピンコートし、露光、現像、キュアすることにより、ポリイミド樹脂のマスクパターンを形成し、形成したマスクパターンを使用し、RIEによりSiNX膜とBST薄膜とをパターニングする。この時、図4(e)に示すようにパターニングで残した2層目と3層目の絶縁体膜22,26に、図4(f)に示すように電極膜30,32が露出する開口部13,17を形成した。
【0046】
次いで、図5(g)に示すように、導電体層34と外部電極14,16とを形成する。
【0047】
具体的には、マグネトロンスパッタを用いて、Ti膜(膜厚50nm)、Cu膜(膜厚500nm)を連続成膜した後、レジスト塗布、露光、現像を順に行なうことによりレジストパターンを形成し、レジストパターンの開口部に、電解メッキで膜厚1μmのNi膜を成膜し、さらにその上に、膜厚1μmのAu膜を成膜した。次いで、溶剤中でレジストを剥離した後、再びレジスト塗布、露光、現像を順に行なうことによりレジストパターンを形成し、形成したレジストパターンをマスクにして、Cu膜をウエットエッチングによりパターンニングした。次いで、レジストパターンをそのまま用いて、RIEにより、Ti膜をパターンニングした。なお、図5(g)において、導電体層34はTi膜及びCu膜で形成されており、外部電極14,16はNi膜及びAu膜により形成されている。
【0048】
次いで、図5(h)に示すように、外部電極14,16の周囲に保護樹脂18を形成する。具体的には、ソルダーレジストとして感光性ポリイミドをスピンコートし、露光、現像、キュアを順に行なうことにより、感光性ポリイミドをパターニングした状態で形成した。
【0049】
次いで、図5(i)に示すように、基板12をカットして、アンチヒューズ素子10を取り出す。具体的には、Si基板12が0.1mmの厚さになるまで、Si基板12の裏面12t側を研削した後、ダイシングソーを用いて基板12をカットし、0.6×0.3×0.1mmmのチップ形状のアンチヒューズ素子10を取り出す。
【0050】
得られたアンチヒューズ素子の絶縁破壊電圧とアンチヒューズ素子の通電電流との関係を調査した。絶縁破壊電圧は15Vであり、図12に比べてリーク電流が急峻な上昇特性を示す。
【0051】
次に、作製したアンチヒューズ素子10の動作確認について説明する。
【0052】
図8の電気回路図に示すように、1W白色のLED2を18個直列接続したモジュール基板を作製した。図8に示すように、LED2間の一箇所にスイッチSを設け、直列に接続されたスイッチS及びスイッチSが接続されたLEDと並列に、作製したアンチヒューズ素子10をハンダ接続した。
【0053】
スイッチSを閉じた状態で定電圧電源を用い、300mAの電流が流れるまで昇圧した。300mA通電時の電圧は、約59Vであった。
【0054】
次に、電源を定電流電源にし、300mAの定電流を流した。この時、電圧リミットを60Vに設定した。
【0055】
このような状態でスイッチSを閉から開にし、アンチヒューズ素子10の動作を確認した。
【0056】
アンチヒューズ素子10の電極膜30,32のうち基板12に近い一方の電極膜30に接続された外部電極14を相対的に高電位側(電源Vo側)、基板12から遠い他方の電極膜32に接続された外部電極16を相対的に低電位側(グランド側)に接続した場合と、アンチヒューズ素子10の電極膜30,32のうち基板12に近い一方の電極膜30に接続された外部電極14を相対的に低電位側、基板12から遠い他方の電極膜32に接続された外部電極16を相対的に高電位側に接続した場合とについて、スイッチSを閉から開にするテストを5回ずつ行った。
【0057】
テストの結果、いずれの場合も、スイッチSを閉から開にすることにより、アンチヒューズ素子10が並列に接続されている部分のLEDは消灯し、他の17個のLEDは一旦暗くなってから、元の照度と同程度まで復帰した。
【0058】
しかし、照度が復帰するまでの所要時間は、基板12に近い一方の電極膜30に接続された外部電極14を相対的に高電位側(電源Vo側)に接続する前者の場合には、全て1秒以内に元の照度と同程度に復帰した。一方、基板12から遠い他方の電極膜32に接続された外部電極16を相対的に高電位側(電源Vo側)に接続する後者の場合、照度が復帰するまでの所要時間は1〜5秒と長く、バラツキも大きかった。
【0059】
動作して短絡状態となったアンチヒューズ素子について、アンチヒューズ素子単体の抵抗を測定したところ、3Ω以下であった。
【0060】
また、一部については、アンチヒューズ動作後、72時間の通電試験を行った。その結果、LEDの照度に変化はなく、試験後のアンチヒューズ素子に抵抗の上昇は見られなかった。
【0061】
また、アンチヒューズ素子単体で信頼性試験(高温、高電圧の加速試験)を行ったところ、105℃、3.5Vの寿命は、50000時間以上と推定された。
【0062】
以上のように、アンチヒューズ素子10は、基板12に近い電極膜30が高電位側となるように接続した方が、アンチヒューズとしての動作速度が速く、特性が安定している。また、前述した材料構成、構造のアンチヒューズ素子10を作製することにより、動作前の寿命、動作後の抵抗についても好適なものが得られた。
【0063】
<実施例2> 実施例2のアンチヒューズ素子10xについて、図6〜図9を参照しながら説明する。
【0064】
図6はアンチヒューズ素子10xの平面図である。図7(a)は、図6の線A−Aに沿って切断した断面図である。図7(b)は、図6の線B−Bに沿って切断した断面図である。
【0065】
図6及び図7に示すように、実施例2のアンチヒューズ素子10xは、実施例1のアンチヒューズ素子10と略同様に構成されている。
【0066】
すなわち、図6に示すように、アンチヒューズ素子10xは、上面に一対の外部電極14,16が露出し、外部電極14,16の周囲は保護樹脂18で覆われている。図7に示すように、基板12上に、絶縁体膜20,22,24と電極膜30a,30b,32a,32bとが交互に積層されている。
【0067】
図6において鎖線よりも下側の部分では、図7(b)に示すように、実施例1のアンチヒューズ素子10と同様に、基板12に近い電極膜30bは一方の外部電極14に電気的に接続され、基板12から遠い電極膜32bは他方の外部電極16に電気的に接続されている。
【0068】
これに対し、図6において鎖線よりも上側の部分では、図7(a)に示すように、実施例1のアンチヒューズ素子10とは逆に、基板12から遠い電極膜32aが一方の外部電極14に電気的に接続され、基板12に近い電極膜30aが他方の外部電極16に電気的に接続されている。
【0069】
つまり、実施例2のアンチヒューズ素子10xは、図9の電気回路図に示すように、外部電極14,16間に、2対の電極30a,32a;30b,32bが逆向きに接続されている。
【0070】
次に、実施例2のアンチヒューズ素子10xの動作確認について説明する。
【0071】
実施例1と同様の方法で、0.6×0.3×0.1mmmのチップ形状のアンチヒューズ素子10xを作製し、これを実施例1と同様の方法(図8参照)で、LED間の1箇所に設けたスイッチSを閉から開にするテストを行った。その結果、アンチヒューズ素子10xの極性によらず、アンチヒューズ素子10が並列に接続されている部分のLEDは消灯し、他の17個のLEDは一旦暗くなった後、全て1秒以内に元の照度と同程度に復帰した。
【0072】
これは、一方の外部電極14を相対的に高電位側に、他方の外部電極16を相対的に低電位側に接続したときも、逆に、一方の外部電極14を相対的に低電位側に、他方の外部電極16を相対的に高電位側に接続したときも、2対の電極膜30a,32aと30b,32bとのうちいずれか一方は、基板に相対的に近い電極膜が相対的に高電位側に接続され、基板から相対的に遠い他方が相対的に低電位側に接続されるため、いずれか一方の電極膜30a,32a又は30b,32bの間が、短時間で短絡状態になるからである。
【0073】
動作して短絡状態となったアンチヒューズ素子10x単体の抵抗を測定したところ、3Ω以下であった。
【0074】
また、一部についてはアンチヒューズ動作後、72時間の通電試験を行なったが、LEDの照度に変化はなく、試験後のアンチヒューズに抵抗の上昇は見られなかった。
【0075】
また、アンチヒューズ単体での信頼性試験を行なったところ、105℃、3.5Vの寿命は、50000時間以上と推定される。
【0076】
実施例2のアンチヒューズ素子10xは、実装方向によらず、動作速度が速くすることができる。動作前の寿命、動作後の抵抗についても、悪影響はない。
【0077】
<まとめ> 以上に説明したアンチヒューズ素子10,10xは、電圧が印加された場合に速やかに短絡状態になり、短絡時の抵抗が低くなるようにすることができる。
【0078】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
【0079】
例えば、本発明のアンチヒューズ素子を、他の回路素子等と一体に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】アンチヒューズ素子の平面図である。(実施例1)
【図2】アンチヒューズ素子の断面図である。(実施例1)
【図3】アンチヒューズ素子の製造工程を示す断面図である。(実施例1)
【図4】アンチヒューズ素子の製造工程を示す断面図である。(実施例1)
【図5】アンチヒューズ素子の製造工程を示す断面図である。(実施例1)
【図6】アンチヒューズ素子の平面図である。(実施例2)
【図7】アンチヒューズ素子の断面図である。(実施例2)
【図8】テスト時の電気回路図である。(実施例1、2)
【図9】アンチヒューズ素子の内部構造を示す電気回路図である。(実施例2)
【図10】アンチヒューズ素子の断面図である。(従来例)
【図11】アンチヒューズ素子の電気回路図である。(従来例)
【図12】アンチヒューズ素子の特性を示すグラフである。(従来例)
【符号の説明】
【0081】
10,10x アンチヒューズ素子
12 基板
14 外部電極(第1端子)
16 外部電極(第2端子)
20 絶縁体膜
22 絶縁体膜
24 絶縁体膜(絶縁層)
30,30a,30b 電極膜(電極膜の一方)
32,32a,32b 電極膜(電極膜の他方)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する少なくとも一対の電極膜と、
前記一対の電極膜の間に配置された絶縁体膜と、
前記一対の電極膜及び前記絶縁体膜を支持する基板と、
を備え、
前記一対の電極膜は、前記基板に相対的に近い一方が相対的に高電位の第1端子に接続され、前記基板から相対的に遠い他方が相対的に低電位の第2端子に接続されることを特徴とする、アンチヒューズ素子。
【請求項2】
前記誘電体膜がチタン酸バリウムストロンチウムを主成分とすることを特徴とする、請求項1に記載のアンチヒューズ素子。
【請求項3】
前記基板から相対的に遠い前記他方の前記電極膜の前記絶縁体膜とは反対側に配置された絶縁層をさらに備えたことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアンチヒューズ素子。
【請求項4】
前記電極膜は、少なくとも前記絶縁体膜と接触する部分が貴金属であることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載のアンチヒューズ素子。
【請求項5】
前記基板に支持された、他の一対の電極膜及び前記他の一対の電極膜の間に配置された他の絶縁体膜をさらに備え、
前記他の一対の電極膜は、前記基板に相対的に近い一方が相対的に低電位の前記第2端子に接続され、前記基板から相対的に遠い他方が相対的に高電位の前記第1端子に接続されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一つに記載のアンチヒューズ素子。
【請求項1】
対向する少なくとも一対の電極膜と、
前記一対の電極膜の間に配置された絶縁体膜と、
前記一対の電極膜及び前記絶縁体膜を支持する基板と、
を備え、
前記一対の電極膜は、前記基板に相対的に近い一方が相対的に高電位の第1端子に接続され、前記基板から相対的に遠い他方が相対的に低電位の第2端子に接続されることを特徴とする、アンチヒューズ素子。
【請求項2】
前記誘電体膜がチタン酸バリウムストロンチウムを主成分とすることを特徴とする、請求項1に記載のアンチヒューズ素子。
【請求項3】
前記基板から相対的に遠い前記他方の前記電極膜の前記絶縁体膜とは反対側に配置された絶縁層をさらに備えたことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアンチヒューズ素子。
【請求項4】
前記電極膜は、少なくとも前記絶縁体膜と接触する部分が貴金属であることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載のアンチヒューズ素子。
【請求項5】
前記基板に支持された、他の一対の電極膜及び前記他の一対の電極膜の間に配置された他の絶縁体膜をさらに備え、
前記他の一対の電極膜は、前記基板に相対的に近い一方が相対的に低電位の前記第2端子に接続され、前記基板から相対的に遠い他方が相対的に高電位の前記第1端子に接続されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一つに記載のアンチヒューズ素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−267293(P2009−267293A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118293(P2008−118293)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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