説明

アンテナアレイ

【課題】容易に実装でき、平面回路のような異なるアプリケーションの要件に適応することができるアンテナアレイを提供する。
【解決手段】少なくとも1つのロッドアンテナ(1)の少なくとも2つのグループを備えるアンテナアレイであって、2次元パッチ(2)と、信号エネルギーをパッチ(2)に向けておよび/またはパッチ(2)から転送するためにパッチ(2)に連結されている給電線(3)と、誘電体ロッド(5)と、 パッチ(2)とロッド(5)との間で前記電磁波を転送するために、パッチ(2)とロッド(5)とに連結されている金属ホルダ(4)と、を備え、各グループのロッドアンテナ(1)は別のグループのロッドアンテナ(1)の発信方向とは異なる発信方向を有し、ロッドアンテナ(1)の異なるグループ間での変更により前記アンテナアレイの実際の発信方向を変化させる制御回路をさらに備える、アンテナアレイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アンテナに関する要件は著しく増えている。異なるアプリケーションの要件に合わせて柔軟に適応することができるアンテナシステムが必要とされている。さらに、アンテナシステムは、小さなサイズの放射パターンと、小さなサイドローブと、高い指向性と、高い利得と、平面回路(planar circuitry)を使用した統合機能と、さらに、費用効率の良いアンテナとを備えていることが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、ロッドアンテナは、3次元の導波管給電(three‐dimensional wave guide feeding)によって給電が実現されることが知られている。例えば、小林他による文献「ミリ波アプリケーションに関するテーパ状(tapered)ロッドアンテナ」や、文献「Kobayashi et al.‘Dielectric Tapered Rod Antennas For Milimeter−Wave Applications’, lliEE Transactions on Antennas and Propagation, January 1982」は、金属導波管による誘電体ロッドアンテナの給電を開示している。ここで、導波管は発射ホーン(launching horn)に対応させられている。従来よりロッドアンテナと共に生じていた問題は、導波管給電を用いると、アンテナが異なる要件に柔軟に適応されないことである。
【0004】
したがって、本発明の目的は、容易に実装でき、平面回路のような異なるアプリケーションの要件に適応することができるアンテナアレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述の目的は、請求項1に記載のロッドアンテナによって達成される。
【0006】
本発明に基づくロッドアンテナは、2次元パッチ(patch)と給電線(feeding line)と誘電体ロッド(dielectric rod)と金属ホルダとから構成されており、前記2次元パッチは、電磁波の発信および/または受信のためのものであり、前記パッチは、互いに直交する2つの座標軸によって定められる平面に沿って広がっており、前記給電線は、信号エネルギーをパッチに向けておよび/またはパッチから転送するためにパッチに連結されており、前記誘電体ロッドは、前記電磁波を発信および/または受信するためのものであり、前記ロッドは、第1の2つの座標軸によって定められる平面の外側にある第3座標軸の方向に、パッチから縦に伸びており、前記金属ホルダは、パッチとロッドとの間で前記電磁波を転送するために、パッチとロッドとに連結されている。
【0007】
さらに、前述の目的は、請求項14に記載のロッドアンテナの操作方法によって達成される。
【0008】
本発明に基づく方法は、2次元パッチによって電磁波を発信および/または受信し、ここで、前記パッチが互いに直交する2つの座標軸によって定められる平面に沿って広がっているステップと、パッチに連結された給電線によって、信号エネルギーをパッチに向けておよび/またはパッチから転送するステップと、誘電体ロッドによって、前記電磁波を発信および/または受信し、ここで、前記ロッドが、第1の2つの座標軸によって定められる平面の外側にある第3座標軸の方向にパッチから縦に伸びているステップと、パッチとロッドとに連結された金属ホルダによって、パッチとロッドとの間で前記電磁波を転送するステップとから構成される。
【0009】
給電線が、第1の2つの座標軸のうち1つに沿って伸びているか、あるいは第1の2つの座標軸に直交していることが好ましい。
さらに、金属ホルダの長さが、電磁波の波長と等しいことが好ましい。
1つの実施形態においては、金属ホルダの長さが、電磁波の波長の半分と等しい。
ロッドが第1の2つの座標軸によって定められる平面に直交する方向に伸びている場合もある。
ロッドが、卵形または楕円形または円形または長方形の断面を持つことが好ましい。
ロッドの端から端のどの部分においても、ロッドの断面の形と大きさが一定である場合もある。
ロッドが、一端に向かって次第に細くなる場合もある。
ロッドが、先端部の平面(top plane)を持つことが好ましい。
先端部の平面の標準化された方向が、第3の座標軸の方向に伸びている場合もある。
先端部の平面の標準化された方向が、第3の座標軸と異なる方向に伸びている場合もある。
【0010】
アンテナアレイが、前記の請求項のいずれかに従う少なくとも1つのロッドアンテナの少なくとも2つのグループから構成されており、1つのグループのロッドアンテナが、別のグループのロッドアンテナの発信方向とは異なる発信方向を持つことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に基づくロッドアンテナの概略図である。
【図2】本発明に基づくロッドアンテナの一部分を示した説明図である。
【図3】本発明に基づくロッドアンテナのパッチと給電線を示した説明図である。
【図4】本発明に基づく傾斜したロッドアンテナを示した説明図である。
【図5】図5は、図5aと図5bとからなる。本発明に基づくロッドアンテナの第1実施形態と第2実施形態を示した説明図である。
【図6】図6は図6aと図6bと図6cとからなる。本発明に基づくロッドアンテナの別の実施形態の一部を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好適な実施形態は、添付図面に関してさらに詳細に説明され、以下に記述される。
以下に、本発明に基づくロッドアンテナ1が記述される。本アンテナは、例えばトランシーバや電源装置のように、アンテナとして機能するために必要なさらなる特徴も持っている点に注意すべきである。これらの特徴は、明確化のために、以下では説明されておらず、図にも示されていない。
【0013】
図1は、本発明に基づくロッドアンテナ1の概略図である。アンテナ1は、電磁波を発信および/または受信するための2次元パッチ2から構成されている。パッチ2は、互いに直交する2つの座標軸によって定められる平面に沿って広がっており、図1では、その2つの座標軸はxとyで示されている。給電線3は、パッチ2に向けておよび/またはパッチ2から信号エネルギーを転送するために、パッチ2に連結されている。アンテナ1は、さらに、2次元パッチ2によって発信および/または受信された前記電磁波を発信及び/または受信するための誘電体ロッド5から構成されている。ここで、ロッド5は、第3の座標軸の方向に、パッチ2から縦に伸びており、第3の座標軸は、第1の2つの座標軸によって定められる平面の外側にある。図1では、第3の座標軸はzで示されている。
【0014】
金属ホルダ4は、前記電磁波をパッチ2とロッドとの間で転送するために、パッチ2とロッド5とに連結されている。金属ホルダ4は、パッチ2に連結されており、ロッド5を部分的に取り囲んでいる。金属ホルダ4は、導波管として作用し、3次元ロッド5と2次元パッチ2との間で電磁波を転送する。高い利得と小さなサイドローブを達成するために、金属ホルダの高さは、電磁波の波長と等しくされるか、または電磁波の波長の半分と等しくされる。
【0015】
パッチ2は、ロッドアンテナ1のロッド5のための給電回路として利用できる。パッチ2を用いて、回路のマッチングが制御される。
本発明に基づくロッドアンテナ1を用いた給電は、3次元の導波管給電にも、利用可能な他のあらゆるタイプの給電にも限定されない。このことは、異なるデバイスへのロッドアンテナの実装を可能とし、アンテナ1は容易に異なるアプリケーションの要件に適応される。
【0016】
図2は、本発明に基づくアンテナ1の金属ホルダ4とロッド5とを示している。金属ホルダ4は、ロッド5の位置を調整し、利得とサイドローブ特性(sidelobe performance)とを制御するために用いられる。ロッド5は、卵形や楕円形や円形や長方形やその他あらゆる形の断面を持つ。さらに、ロッド5の断面の大きさと形とは、ロッド5の端から端のどの部分においても一定である場合もあるし、あるいはロッド5は一端に向かって次第に細くなる場合もある。本発明の好適な実施形態においては、ロッド5は、円柱か円錐か楕円錐の形をしている。
【0017】
図3は、本発明に基づく2次元パッチ2の1つの実施形態を示している。パッチ2には、あらゆるタイプの2次元放射素子(radiating element)を利用することができる。図3に示されたように、パッチ2は、給電線3と放射素子7とから構成されている。パッチ2は、金属グラウンド板(grount plate)上で誘電物質の上に導電線を持つマイクロストリップラインとして実装されることができる。さらに、2次元パッチには、スロットや他のあらゆる種類の放射素子を用いることができる。
【0018】
図4は、本発明の第2の実施形態を示している。アンテナ1のロッド5は、第3の座標軸zの方向に伸びている。ここで、座標軸zは、第1の2つの座標軸xとyによって定められる平面の外側にある。さらに、前記平面の外側において、第3の座標軸zは、あらゆる方向をとりうる。したがって、図4に示されるように、ロッド5は座標軸xとyによって定められる平面と直交する方向であっても良いし、直交する方向とは離れて傾斜している場合もある。アンテナ1の発信方向は、ロッドアンテナ1の傾斜角度を変えることによって、制御されることが可能である。
【0019】
更なる実施形態では、ロッドアンテナ1は、半球の広い角度をカバーするアンテナアレイのために用いられることが可能である。ここで、ロッドアンテナ1の少なくとも2つのグループがアンテナアレイ内に実装されている。それぞれのグループは、少なくとも1つの本発明に基づくロッドアンテナ1から構成されている。さらに、それぞれのグループは、他のグループの発信方向とは異なる発信方向を持つ。ここで、発信方向は、ロッドアンテナ1のロッド5の傾斜角度を変えることによって得られる。その後、制御回路を用いて異なるグループ間で電磁波を発信および/または受信するために変更することができ、そこで、半球の広い角度をカバーするために、実際の発信方向が変えられる。
アンテナ1は、先端部の平面6を持たないロッド5から構成される場合もあることに注意すべきである。
【0020】
図5aは、直線偏波(linear polarised electromagnetic wave)に関する、本発明に基づくロッドアンテナ1の実施形態を示しており、図5bは、円偏波(circular polarised electromagnetic wave)に関する、本発明に基づくロッドアンテナ1の実施形態を示している。ロッドアンテナ1のロッド5は、ここでは先端部の平面6から構成されている。先端部の平面6の方向に依存して、ロッドアンテナ1は、直線偏波あるいは円偏波に用いられる。図5aに示されたように、先端部の平面6が第3の座標軸zに対して対称である場合は、アンテナは直線偏波に用いられる。図5bに示されたように、先端部の平面6が第3の座標軸zに対して非対称である場合は、アンテナは円偏波に用いられる。
【0021】
詳細が図6a〜6cに示されているように、先端部の平面6の標準化された方向に依存して、ロッドアンテナ1は、異なる種類の偏波に用いられる。給電線3が−y方向をさしていると仮定すると、図6aは右方向の円偏波に関するロッド5を示している。図6aによれば、先端部の平面6の標準化された方向は、−xかつ+zの方向を向いている。図6bに示されるように、ロッド5を左方向の円偏波に適応するためには、先端部の平面6の標準化された方向は、+xかつ+zの方向を向いている。図6cに示されるように、ロッド5を直線偏波に適応するためには、先端部の平面6の標準化された方向は、z軸の方向を向いている。
給電線3の方向は、第1の2つの座標軸の1方に限定されず、あらゆる他の方向をとる場合がある、例えば、給電線は第1の2つの座標軸と直交する場合もある、ということに注意すべきである。
本アンテナは、無線通信などに関する携帯端末のような、小さな消費者製品に実装されることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのロッドアンテナ(1)の少なくとも2つのグループを備えるアンテナアレイであって、
電磁波の発信および/または受信のためのものであり、互いに直交する2つの座標軸によって定められる平面に沿って広がっている2次元パッチ(2)と、
信号エネルギーをパッチ(2)に向けておよび/またはパッチ(2)から転送するためにパッチ(2)に連結されている給電線(3)と、
前記電磁波を発信および/または受信するためのものであり、第1の2つの座標軸によって定められる平面の外側であって前記平面と直交する方向から傾いている第3座標軸の方向に、パッチ(2)から縦に伸びている誘電体ロッド(5)と、
パッチ(2)とロッド(5)との間で前記電磁波を転送するために、パッチ(2)とロッド(5)とに連結されている金属ホルダ(4)と、
を備え、
各グループのロッドアンテナ(1)は別のグループのロッドアンテナ(1)の発信方向とは異なる発信方向を有し、
ロッドアンテナ(1)の異なるグループ間での変更により前記アンテナアレイの実際の発信方向を変化させる制御回路をさらに備える、アンテナアレイ。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナアレイであって、給電線(3)が、第1の2つの座標軸のうち1つに沿って伸びているか、あるいは第1の2つの座標軸に直交していることを特徴とするアンテナアレイ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアンテナアレイであって、金属ホルダ(4)の長さが、前記電磁波の波長と等しいことを特徴とするアンテナアレイ。
【請求項4】
請求項1または2に記載のアンテナアレイであって、金属ホルダ(4)の長さが、前記電磁波の波長の半分と等しいことを特徴とするアンテナアレイ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のアンテナアレイであって、ロッド(5)が、卵形または楕円形または円形または長方形の断面を持つことを特徴とするアンテナアレイ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のアンテナアレイであって、ロッド(5)の端から端のどの部分においても、ロッド(5)の断面の形と大きさが一定であることを特徴とするアンテナアレイ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のアンテナアレイであって、ロッド(5)が、一端に向かって次第に細くなることを特徴とするアンテナアレイ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のアンテナアレイであって、ロッド(5)が、先端部の平面(6)を持つことを特徴とするアンテナアレイ。
【請求項9】
請求項8に記載のアンテナアレイであって、先端部の平面(6)の標準化された方向が、第3の座標軸の方向に伸びていることを特徴とするアンテナアレイ。
【請求項10】
請求項8に記載のアンテナアレイであって、先端部の平面(6)の標準化された方向が、第3の座標軸と異なる方向に伸びていることを特徴とするアンテナアレイ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−10400(P2012−10400A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196270(P2011−196270)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【分割の表示】特願2008−501172(P2008−501172)の分割
【原出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(397051508)ソニー ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (140)
【Fターム(参考)】