説明

アンテナシステム

【解決手段】無線周波数識別システム用のアンテナシステムは、(a)基部(105)、(b)基部上に配置された第1パッチアンテナ(102)であって、回転偏向を有し、電気信号及び電磁場間で変換するよう構成された第1パッチアンテナ、(c)基部上に配置された第2パッチアンテナ(103)であって、回転偏向を有し、電気信号及び電磁場間で変換するよう構成された第2パッチアンテナを具備する。第2パッチアンテナは、第1及び第2のパッチアンテナ間の領域(104)を画定するよう第1パッチアンテナから所定距離に配置されると共に、2つのパッチアンテナの電磁場が領域でほぼ逆向きになるよう第1パッチアンテナに対して配向されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関し、特に無線周波数識別通信システムで使用されるアンテナ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線識別(RFID)システムは周知であり、機器、在庫又は生き物を識別・追跡するために使用される。基本的にRFIDは、本明細書では呼び掛け機と称される無線トランシーバと、タグ又は応答機と呼ばれる多数の安価なデバイスとを具備する無線通信システムである。従来のRFIDシステムは、呼び掛け機の射程内を通過する際にタブに含まれる情報を読み出すよう設計されている。情報はタグから読み出すのみであり、タグに書き込まれないので、この種のシステムは受動システムと呼ばれる。別のタイプのRFIDシステムは、能動システムと呼ばれる。このタイプのシステムは、呼び掛け機がタグのデータ読み出すことと、新たな情報を書き込むこと又は呼び掛け機の射程内を通過する際にタグの既存の情報を書き換えることの双方をすることができるシステムである。これらのRFIDシステムは、例えば米国特許第6255993号明細書及び同第6184841号明細書に記載されている。
【0003】
典型的なRFIDシステムにおいて、呼び掛け機は変調無線信号を使用してタグと通信し、タグは変調無線信号で応答する。一般的なRFIDシステムは、変調後方散乱(MBS)システムである。MBSシステムにおいて、タグにメッセージを送信(ダウンリンクと呼ばれる)した後、呼び掛け機は、連続波(CW)無線周波数信号をタグに送信する。次に、タグは、タグに特有のデータに従ってこのCW RF信号を変調し、呼び掛け機に戻し送信する。従って、変調された後方散乱(MBS)は、タグから呼び掛け機への通信(アップリンクと呼ばれる)を可能にする。別のタイプのRFIDシステムは、能動アップリンク(AU)を使用する。AUシステムにおいて、RFIDタグは変調せず、入ってくるCW信号を反射するが、RF搬送波を合成し、そのRF搬送波を変調し、その変調搬送波を呼び掛け機に送信する。いくつかのAUシステムにおいて、アップリンクで使用されるRF搬送波は、ダウンリンクで使用される周波数と同一か近似するのに対し、他のAUシステムにおいて、アップリンクで使用されるRF搬送波は、ダウンリンクで使用される周波数とは異なる周波数である。
【0004】
RFIDシステムの重要な部品は、呼び掛け機内に配置されるアンテナシステムである。このアンテナシステムは、電気信号間のデータ及び電磁放射を変換するよう作用する。この目的のために、典型的なRFIDシステムは、電気信号をアンテナの表面の或るパターンの電磁場に変換し、電磁的、より具体的にはRFの放射を促進する送信アンテナと、RF放射を吸収してアンテナ表面に電磁場を形成し、これら電磁場を電気信号に変換する受信アンテナとを具備する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの電気回路にあるように、性能を犠牲にすることなく、空間を節約し且つコストを削減するために、RFIDシステムを最小にしたいというニーズがある。しかし、アンテナが互いに接近するよう移動すると、良好な性能には重要である送信アンテナ及び受信アンテナ間の分離は低下する傾向があるので、RFIDシステムのアンテナシステムを最小にすることは困難であることが判明した。近接実装されたアンテナ間の分離を改善するための一方法は、アンテナ間に隔壁を用いることである。例えば、Thing Magic社及びSymbol社が販売するアンテナシステムは、アンテナ間に十分な分離を有するが、アンテナ間の貴重な空間を費やす隔壁を使用しているので、小型化の目的に反する。
【0006】
従って、小型化を促進しながら良好な分離を維持するRFIDアンテナシステムに対するニーズがある。本発明は、このニーズを満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
解決手段は、アンテナ間の領域でアンテナの電磁場が干渉するRFIDに適用可能であるが、これに限定されないアンテナシステムにより、提供される。アンテナシステムは、(a)基部、(b)基部上に配置された第1パッチアンテナであって、回転偏向(circular polarization)を有し、電気信号及び電磁場間で変換するよう構成された第1パッチアンテナ、(c)基部上に配置された第2パッチアンテナであって、回転偏向を有し、電気信号及び電磁場間で変換するよう構成された第2パッチアンテナを具備し、第2パッチアンテナは、パッチアンテナ間の領域を画定するよう第1パッチアンテナから所定距離に配置されると共に、2つのパッチアンテナの電磁場が領域でほぼ逆向きになるよう第1パッチアンテナに対して配向されている。
【0008】
また、解決手段は、以下の要素を具備するアンテナシステムにより提供される。すなわち、(a)基部、(b)基部に実装された第1パッチアンテナであって、回転偏向された信号を送信することができる第1円形表面と、第1円形表面内の第1位置に第1給電点とを具備する第1パッチアンテナ、(c)基部に実装された第2パッチアンテナであって、タグからの戻り信号を受信することができる第2円形表面を具備する第2パッチアンテナとを具備し、第2円形表面は第1円形表面とほぼ同じ寸法であり、第2パッチアンテナは第2円形表面内の第2位置に第2給電点とを具備し、第1位置及び第2位置は実質的に対向する。
【0009】
さらに、解決手段は、上述のアンテナシステムを使用するRFIDを具備する。好適な一実施形態において、RFIDシステムは、(a)コントローラ、(b)コントローラに通信連結され、少なくとも送信器、受信器及びアンテナシステムを具備する呼び掛け機を具備し、(c)アンテナシステムは、少なくとも(i)ハウジング、(ii)ハウジング内に実装されると共に送信器に接続された第1アンテナであって、タグに回転偏向した信号を送信することができる第1円形表面と、第1円形表面内の第1位置の給電点とを具備する第1アンテナ、(iii)基部に実装された第2アンテナであって、タグからの戻り信号を受信することができる第2円形表面を具備する第2アンテナを具備し、第2円形表面は第1円形表面とほぼ同じ寸法であり、第2アンテナは第2円形表面内の第2位置に給電点を具備し、第1位置及び第2位置は実質的に対向する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明を説明する。
【0011】
本発明は、送信アンテナ及び受信アンテナを近接配置しながら良好な分離を維持することができる無線周波数識別(RFID)システムに適用可能であるが、これに限定されないアンテナシステムを提供する。この目的のために、アンテナシステムはアンテナ間の相殺的な干渉を活用する結果、これらアンテナの電磁場は磁場を分離する領域で逆向きである。さらに、この相殺的な干渉は、アンテナの給電点を対向する位置に配置することにより、容易且つ信頼性高く達成することができる。このため、アンテナ間の相殺な干渉を活用することにより、アンテナは、隔壁、或いはアンテナを分離する他の手段を要することなく、比較的近接配置することができる。
【0012】
図1及び図2を参照すると、本発明のアンテナシステム100の好適な一実施形態は、RFIDシステムとして図示される。アンテナシステム100は、アンテナ基部105を含むハウジング101を具備する。アンテナ基部105には、第1パッチアンテナ102及び第2パッチアンテナ103が実装される。第1及び第2のパッチアンテナ102,103は、回転偏向を有すると共に電場及び磁場間に信号を変換するよう構成されている。第2パッチアンテナ103は第1パッチアンテナから所定距離に配置されており、第1パッチアンテナ及び第2パッチアンテナ間に領域104を画定する(図2において、破線により境界が定められる)。これらのパッチアンテナは互いに対して配置されるので、2パッチアンテナの電磁場は、領域104でほぼ逆向きである。
【0013】
本発明の重要な側面は、アンテナ間の領域で電磁場が逆向きであることである。本明細書で使用されているように、「逆向きの電磁場」、「逆向きの電場及び磁場」又は単に「逆向き場」の用語は、建設的干渉ではなく相殺的干渉するアンテナの電磁場を指すものとして使用される。建設的干渉及び相殺的干渉は、電磁気学では周知の概念である。簡潔に言えば、場の建設的干渉は、干渉する区域における場の大きさが増大するように場が結合する結果となる。他方、場の相殺的干渉は、干渉する区域における場を結合するのではなく、場の大きさが減少するよう互いに反作用する結果となる。一般的には、場の方向ベクトルが180°±90°異なる場合に相殺的に干渉すると認識されている。
【0014】
アンテナシステム100の電磁場の相殺的/建設的な干渉は、アンテナ間の電場及び磁場の電力密度又は大きさの分析により、評価することができる。図3及び図4を参照すると、電場及び磁場の大きさがそれぞれ図示されている。このようなグラフィック描写はこの分野では周知であり、例えば、Ansoft社が市販する高周波構造シミュレータ(HFSS)を使用して生成することができる。これらの図において、相対強度は、濃い部分が弱い場に対応する濃淡表示(グレースケール)で図示される。
【0015】
図3は、2つの異なるアンテナ構成についてアンテナシステムの電場の大きさを示す。図3(a)は給電点が対向(後述)するアンテナシステムの好適な一実施形態を示し、比較のため、図3(b)は給電点が同じ位置にあるアンテナシステムを示す。図3(a)を参照すると、アンテナからの距離が長くなるにつれて、アンテナ周囲の電場の大きさが小さくなることが明瞭に示されている。しかし、電場の大きさは、濃い影により示されるようにアンテナ間の領域で急激に降下する。これは、このような電場の急激な減少が源からの距離の関数として電場強度の単なる減少ではなく、相殺的干渉の結果生じなければならないので、重要である。
【0016】
図3(b)を参照すると、給電点がスロットに対して再配置されると、アンテナ間の領域での電場強度の急激な減少はない。逆に、電場強度は、各アンテナからの距離が増加する場合であっても、領域にわたってほぼ同じに維持する。このようなパターンは、2本のアンテナの電場の建設的な干渉と矛盾していない。換言すると、アンテナからの距離の関数として減少するのではなく、アンテナ間の領域の電場は、2つの電場が結合すると相対的に一定を保つ。
【0017】
図4(a)及び(b)を参照すると、電場のパターンに類似する磁場のパターンが図示されている。具体的には、図4(a)に関し、アンテナシステム100の磁場が、(図3(a)にあるように)対向する給電点を有するシステム用に図示されている。磁場の大きさは、各々のアンテナからの距離の関数として小さくなる。しかし、電場のように、2つのアンテナ間の領域に磁場強度の急激な減少がある。繰り返すが、磁場の大きさのこのような急激な減少は、第1及び第2のアンテナの磁場間の相殺的干渉を示す。
【0018】
図4(b)を参照すると、給電点が同じ相対位置にあるアンテナシステムの磁場の比較図が図示される。この図において、第1及び第2のアンテナ間の領域での磁場の大きさは、比較的一定であると共に中間の相対強度である。図3(b)の電場と同様に、この領域でのアンテナからの距離の関数として磁場強度の減少がないので、これは建設的干渉を示している。
【0019】
従って、HFSSを使用して、2つのアンテナシステム間の電場及び磁場の強度を決定することができるので、これによりアンテナ間に相殺的干渉か或いは建設的干渉かを決定することができる。
【0020】
好適な一実施形態において、アンテナの中央での電場の相対的大きさに対するアンテナ間の領域の少なくとも一部における電場の相対的大きさは、-3dB未満であり、好適には-4dB未満である。別の好適な実施形態において、アンテナ間の領域の少なくとも一部における電場の大きさは、0.4V/m未満であり、好適には0.3V/m未満である。好適な一実施形態において、アンテナの中央での磁場の相対的大きさに対するアンテナ間の領域の少なくとも一部における磁場の相対的大きさは、-1.5dB未満であり、好適には-2dB未満である。別の好適な実施形態において、アンテナ間の領域の少なくとも一部における磁場の大きさは、0.03V/m未満であり、より好適には0.02V/m未満である。
【0021】
図5を参照すると、2つのアンテナ間の種々の相対的なスロットの位置に対するS21試験の曲線が図示されている。当業界で周知であるように、S21試験は、送信アンテナにより送信されるエネルギーに対する受信アンテナに結合されるエネルギーの比を示す。例えば、送信アンテナが1ワットを送信し、受信アンテナが0.001ワットを受信すると、S21分離は-30dBすなわち1/1000である。応用分野によってはより小さい値を要する場合があるが、-30dB未満のS21分離は一般に、十分であると考えられる。この場合、第2アンテナ103が第1アンテナ102に対して回転され、種々のS21試験が行なわれる。第2アンテナの回転中に、アンテナ及びその給電点の双方が共に回転される。このグラフから、スロット及び給電点の相対位置が分離の重大な効果を有する。具体的には、第2アンテナが第1アンテナに対して225°の角度に位置するようにスロットを配置することにより、分離は-35dB未満になる。この位置は、図2に示されたアンテナの相対配置に対応する。比較すると、アンテナがほぼ90°の相対位置を有するよう構成されると、分離は比較的小さい、すなわち-25dBより大きい。繰り返すが、図3及び図4に関して上述したように、低い分離は、2つのアンテナ間の相殺的干渉の結果である。磁場及び電場を相殺的に干渉させることにより、アンテナ間のエネルギーは、受信アンテナと結合するには不十分な点まで減少する。
【0022】
アンテナシステム100の領域104に逆向きの電場及び磁場を形成することにより、アンテナは、実施形態によってはアンテナ間の分離をさらに強化又はアンテナ間の距離を小さくするために隔壁を追加することが好ましいことがあるが、上述したThing Magic社が提供するアンテナシステムアンテナシステムで使用される隔壁等の隔壁を要することなく、互いに近接して配置することができる。好適には、第1及び第2のアンテナの中心点108a,108b間の距離と、第1アンテナの直径との比は、3:1を超えず、より好適には2:1を超えない。(好適な実施形態において、本明細書で説明したように、アンテナは同じ寸法であり、いずれかの直径がこの決定で使用することができることに留意されたい。)
【0023】
逆向きの電場及び磁場は、パッチアンテナ上の同軸ケーブルの給電点及びスロットの位置に大部分が依存する。より具体的には、送信及び受信の回路は、各パッチアンテナ上の給電点に接続された同軸ケーブルを介してパッチアンテナに接続されている。スロットは、好適な偏向(後述)である回転偏向を構築するために重要である。アンテナ上の給電点及びスロットの配置は、アンテナの電磁場パターンを構築し、この電磁場パターンは上述した電磁場の密度又は大きさを形成する。
【0024】
本願出願人は、各パッチアンテナ上でほぼ対向する位置に給電点を配置することにより、アンテナ表面に逆向きの電磁場パターンが構築されることを見出した。本明細書で使用されるように、「対向する位置」という用語は、中心を有する対称的な表面上の2点の相対位置を指す。この中心において、2点は、中心に対して対向する両側に中心から長距離の位置で、中心を通る仮想線上に位置する。これら2点は同じ表面上にある必要はなく(実際、本発明のアンテナにおいて、そうなっていない)、むしろ、仮想線が両表面に対して同じ位置にある同様の表面上にあることを理解されたい。例えば、図2を参照すると、第1及び第2の給電点107a,107bは、中心108a,108bに対して対向する側に等距離の線120a,120b上にそれぞれ配置される。(給電点は異なるアンテナ上にあるが、線102a,102bは各アンテナに対してほぼ同じ位置にあり、これにより、第1給電点及び第2給電点の比較を可能にすることに留意されたい。)
【0025】
給電点の対向する位置を説明している「ほぼ」という用語を使用することは、それらの位置が絶対的ではない可能性があることを認めている。より具体的には、2つのアンテナをインピーダンス整合するために、アンテナの給電点を調整する必要がある可能性がある。例えば、インピーダンスを50Ωに整合するために、1個の給電点は、真の対向位置から±2.54mmの位置にある可能性がある。調整量はアンテナの直径に関連し、アンテナ直径はシステムの作動周波数に関連する。従って、本明細書で使用されるように、「ほぼ」という用語は、アンテナ直径の2%未満だけ真の対向位置から異なった位置を指す。例えば、アンテナ直径が(915MHzに適する)153.16mmである場合、給電点は、真の対向位置から約3.05mmだけずれている可能性があり、依然として実質的に対向位置にある。この許容可能な調整は、本明細書では「許容差窓」と称される。
【0026】
給電点の位置はまた、デカルト座標系で説明されている。より具体的には、図2を参照すると、アンテナ基部105は細長であり、アンテナのプラットフォームの長さに沿って延びるX軸と、Y軸とを有する。説明の目的のために、第1の平面アンテナ102の中心108aは−X’,Y’の位置にあると仮定することができ、第2の平面アンテナ103の中心108bはX’,Y’の位置にあると仮定することができる。ここで、Y’は0に等しく、中心108a,108b間のX軸に沿った点は0に等しい。この慣例を使用すると、第1給電点107aは−X”,−Y”の位置にあり且つ第2給電点107bはX”,Y”±許容差窓の位置にあるか、又は、図2に示されるように、第1給電点107aは−X”,Y”の位置にあり且つ第2給電点107bはX”,−Y”±許容差窓の位置にある。これらの位置は、アンテナ基部105bのみに関連することを理解されたい。
【0027】
給電点の位置に加えて、本願出願人は、各アンテナのスロットの配置が重要であることを見出した。具体的には、スロット106a,106bは、図2に示されるように互いに対して直交するのが好適である。デカルト座標系に関して、これは、一方のスロットがX’’’/Y’’’の傾斜を有することを意味し、他方のスロットが−X’’’/Y’’’の傾斜を有することを意味する。特に好適な一実施形態において、スロットは、X軸に対して約45°であり、すなわち上述のデカルト座標系の観点ではX’’’/Y’’’が約1に等しい。
【0028】
給電点及びスロットの相対位置とは別に、アンテナは従来の構成を有する。例えば、パラボラ、矩形導波管ホーン又は平面アンテナを含むRFID機能を実行するための多くの適当なアンテナがあるが、本明細書において特に興味があるのは平面アンテナである。適当な市販されているスロット給電された平面アンテナが、例えばメイコム社及びSymbol社から販売されている。
【0029】
平面アンテナは、右回り極性(RCP)、左回り極性(LCP)及び線形極性(LP)を含む種々の極性で開発されることができる。一実施形態において、タグは、線形極性(LP)の4分の1波長パッチアンテナを使用する。パレット等の移動物上に実装されたタグは、その方向を連続的に変化させるので、アンテナの極性に直接関連する方向の整列を困難にする。回転偏向したアンテナは、タグ方向をより以上に許容する。
【0030】
図6を参照すると、本発明のアンテナシステムを組み込むRFIDシステム610が概略的に図示されている。本発明のアンテナシステムは、公知の、すなわち後に開発されたRFIDシステムと共に使用することができることを理解されたい。システム610は、コントローラ614からのコマンドに応答して作動する呼び掛け機613を有する。データ及びコマンドは、相互接続部615を介して呼び掛け機613及びコントローラ614間で交換される。作動の一モードにおいて、呼び掛け機614内に含まれた送信器TX616は、相互接続部617を介して送信/受信(T/R)アンテナシステム618に信号を供給する。T/Rアンテナシステム618は、上述した図1に図示されたシステムに従って構成されている。
【0031】
T/Rアンテナシステム618は、1個以上の応答モジュール612に呼び掛け信号620を放射する。呼び掛け信号620が一応答モジュール612に受信されると、応答信号624を発生して送信することができる。応答信号624は、応答モジュール612の或る特性又は特性組を決定できる変調を有するのが代表的である。
【0032】
応答信号624は、アンテナシステム618により受信されると共に受信器RX628に結合される。受信器RX628は、受信した応答信号624を復調すると共に受信された応答信号624を相互接続部615を介してコントローラ614に決定された情報を供給する。コントローラ614は、応答信号624から派生した情報をバス又は他のデータリンク630を介して外部プロセッサ(図示せず)に供給することができる。
【0033】
同様の種類のシステムは、対象物の集団内で選択された対象物が個別の認識及び処理を要する状況における、識別、並べ替え、計数及び経路指定のために、今日、多大な関心がある。それらの例には、公共又は私企業の輸送システムに関連する荷物の取扱い及び経路指定システム、小包の取扱い及び経路指定システム、自動車又は他のレンタル又はチェックアウトシステム、並びに在庫管理システムがある。ある種のシステム610は、多数の応答モジュール612を同時に呼び掛けることができる。例えば、在庫管理システムは、目的の応答モジュール612に結合された特定物が倉庫内にあるかどうかを決定することに使用することができる。各応答モジュール612は倉庫内の在庫品に関連するか、その逆であるのが代表的である。
【0034】
これらのタイプのシステムにおいて、符号分割多重アクセス方式(CDMA)を、多数の応答モジュール612からの応答の間で判別することに使用してもよい。或いは、所望の目的応答モジュール612に特有の符号又はシリアル番号を有する前部を呼び掛け機613により送信することができ、目的の応答モジュール612のみが呼び掛け信号620に応答する。
【0035】
他の枠組みは、(i)呼び掛け機613からの呼び掛け信号620を1組の応答する目的応答モジュール612に送信する工程と、(ii)目的応答モジュール612の組から応答信号624を識別する工程と、(iii)呼び掛け機613からの信号を送信し、応答信号624から特定されるこれらの応答モジュール612をオフにする工程と、(iv)所望の目的応答モジュール612が特定され呼び出されるまで工程(i)〜(iii)を繰り返す工程と、(v)呼び掛け機613からの信号を送信し、応答モジュール612の組合せを初期状態又は他の任意の所望の状態に回復する工程とを有する。応答モジュールの集団内の1個以上の目的応答モジュール612を選択するための他の方法は、同様に公知である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ハウジング内のアンテナ基部を露出した本発明のアンテナシステムを示す斜視図である。
【図2】図1のシステム用のアンテナ基部を示す斜視図である。
【図3】(a)(b)は、異なるアンテナの構成用の電場の大きさパターンを示す図である。
【図4】(a)(b)は、異なるアンテナの構成用の磁場の大きさパターンを示す図である。
【図5】種々のアンテナ構成用のS21分離試験の結果を示すグラフである。
【図6】本発明のアンテナシステムを使用する無線周波数識別システムを示す概略図である。
【符号の説明】
【0037】
100 アンテナシステム
101 ハウジング
102 第1パッチアンテナ
103 第2パッチアンテナ
104 領域
105 基部
106a,106b スロット
107a 第1給電点
107b 第2給電点
610 RFIDシステム
613 呼び掛け機
614 コントローラ
616 送信器
618 アンテナシステム
628 受信器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部(105)と、
該基部上に配置された第1パッチアンテナ(102)であって、回転偏向を有し、電気信号及び電磁場間で変換するよう構成された第1パッチアンテナと、
前記基部上に配置された第2パッチアンテナ(103)であって、回転偏向を有し、電気信号及び電磁場間で変換するよう構成された第2パッチアンテナとを具備し、
該第2パッチアンテナは、前記第1及び第2のパッチアンテナ間の領域(104)を画定するよう前記第1パッチアンテナから所定距離に配置されると共に、前記2つのパッチアンテナの電磁場が前記領域でほぼ逆向きになるよう第1パッチアンテナに対して配向されていることを特徴とするアンテナシステム(100)。
【請求項2】
前記第1パッチアンテナは、第1位置に第1給電点(107a)を有し、
前記第2パッチアンテナは、第2位置に第2給電点(107b)を有し、
前記第1及び第2の位置は対向する位置にあることを特徴とする請求項1記載のアンテナシステム。
【請求項3】
前記パッチアンテナ(102,103)の各々は、電場及び磁場に対して回転偏向を与えるスロット(106a,106b)を有し、
前記第1パッチアンテナの前記スロット(106a)は、前記第2パッチアンテナの前記スロット(106b)に対して直交することを特徴とする請求項2記載のアンテナシステム。
【請求項4】
前記第1及び第2のパッチアンテナの一方の前記回転偏向は時計回りであり、
前記第1及び第2のパッチアンテナの他方の前記回転偏向は反時計回りであることを特徴とする請求項3記載のアンテナシステム。
【請求項5】
前記パッチアンテナは、寸法及び形状がほぼ同じであることを特徴とする請求項2記載のアンテナシステム。
【請求項6】
前記第1パッチアンテナは所定の直径を有し、
該直径に対する前記距離の比は、約3:1を超えないことを特徴とする請求項2記載のアンテナシステム。
【請求項7】
前記領域に隔壁がないことを特徴とする請求項1記載のアンテナシステム。
【請求項8】
前記アンテナシステムは、-30dB未満のS21分離を有することを特徴とする請求項1記載のアンテナシステム。
【請求項9】
前記第1パッチアンテナの中心での電場に対する前記領域の電場は-3dB未満であり、
前記第1パッチアンテナの中心での磁場に対する前記領域の磁場は-1.5dB未満であることを特徴とする請求項1記載のアンテナシステム。
【請求項10】
基部(105)と、
該基部に実装された第1パッチアンテナ(102)であって、回転偏向された信号を送信することができる第1円形表面、及び該第1円形表面内の第1位置に第1給電点(107a)を具備する第1パッチアンテナと、
前記基部に実装された第2パッチアンテナ(103)であって、タグからの戻り信号を受信することができる第2円形表面を具備する第2パッチアンテナとを具備し、
前記第2円形表面は、前記第1円形表面とほぼ同じ寸法であり、
前記第2パッチアンテナは、前記第2円形表面内の第2位置に第2給電点(107b)を具備し、
前記第1位置及び第2位置は、対向することを特徴とするアンテナシステム。
【請求項11】
前記第1及び第2のアンテナの間の領域には隔壁がないことを特徴とする請求項10記載のアンテナシステム。
【請求項12】
細長のハウジング(101)であって、該ハウジングの長さに沿って且つ前記第1及び第2のアンテナの中心を通って延びるX軸と、Y軸とを有するハウジングをさらに具備し、
前記第1アンテナの前記中心は、−X’,Y’の位置にあり、
前記第2アンテナの前記中心は、X’,Y’の位置にあり、
Y’は0であり、
前記第1及び第2の給電点(107a,107b)は、第1及び第2の位置枠組みの一方に配置され、
前記第1の位置枠組みでは、前記第1給電点は−X”,Y”の位置にあると共に前記第2給電点はX”,−Y”±許容差窓の位置にあり、
前記第2の位置枠組みでは、前記第1給電点は−X”,−Y”の位置にあると共に前記第2給電点はX”,Y”±前記許容差窓の位置にあり、
前記許容差窓は、前記第1アンテナの直径の2%を超えないことを特徴とする請求項10記載のアンテナシステム。
【請求項13】
前記第1及び第2のアンテナの一方は、X’’’/Y’’’の傾斜のスロットを有し、
前記第1及び第2のアンテナの他方は、−X’’’/Y’’’の傾斜のスロットを有することを特徴とする請求項12記載のアンテナシステム。
【請求項14】
前記第1及び第2のアンテナの前記中心間の距離は、前記第1アンテナの前記直径の3倍を超えないことを特徴とする請求項10記載のアンテナシステム。
【請求項15】
前記アンテナは、各々の前記スロットの位置及び前記給電点の位置を除き、寸法及び形状が同じであることを特徴とする請求項10記載のアンテナシステム。
【請求項16】
前記第1及び第2のアンテナの一方は送信アンテナであり、他方は受信アンテナであることを特徴とする請求項10記載のアンテナシステム。
【請求項17】
コントローラ(614)と、
該コントローラに通信連結され、少なくとも送信器(616)、受信器(628)及びアンテナシステム(618,100)を具備する呼び掛け機(613)とを具備する無線周波数識別(RFID)システム(610)であって、
前記アンテナシステムは、少なくとも
基部(105)と、
該基部上に実装されると共に前記送信器に接続された第1パッチアンテナ(102)であって、タグに回転偏向した信号を送信することができる第1円形表面と、該第1円形表面内の第1位置の給電点(107a)とを有する第1パッチアンテナと、
前記基部に実装された第2パッチアンテナ(103)であって、タグからの戻り信号を受信することができる第2円形表面を有する第2パッチアンテナとを具備し、
前記第2円形表面は、前記第1円形表面とほぼ同じ寸法であり、
前記第2パッチアンテナは、前記第2円形表面内の第2位置に給電点(107b)を具備し、
前記第1位置及び第2位置は実質的に対向することを特徴とするRFIDシステム。
【請求項18】
前記第1及び第2のパッチアンテナ間の領域(104)に隔壁がないことを特徴とする請求項17記載のRFIDシステム。
【請求項19】
前記第1及び第2のパッチアンテナの中心間の距離は、前記第1パッチアンテナの直径の3倍を超えないことを特徴とする請求項17記載のRFIDシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−504093(P2009−504093A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525097(P2008−525097)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/029828
【国際公開番号】WO2007/016526
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(503084750)メイコム インコーポレイテッド (39)
【Fターム(参考)】