説明

アンテナユニット、交通信号灯器及び交通信号制御機

【課題】アンテナ設置用の支柱を不要とでき、かつ、道路の美観を損なうことのない新たな技術的手段として、アンテナを組み込んだ信号灯器を提供する。
【解決手段】信号灯器1は、光学ユニット2とアンテナ4とを備えている。光学ユニット2は、LED7を前側として実装している基板8と、可視光透過性を有しLED7を前方で覆うカバー部材9とを有している。アンテナ4は、カバー部材9から後方側として光学ユニット2に組み込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は灯器に関するものであり、特に道路に設置される交通信号灯器、交通信号制御機、及び、この灯器に設けられるアンテナユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、交通安全の促進や交通事故の防止を目的として、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)が提案されている。このITSでは、道路に通信装置(インフラ装置)が設置されており、この通信装置のアンテナから発せられた情報を、道路を走行する車両の車載機が受信し、この情報を活用することにより、車両の走行についての安全性を向上させることができる(特許文献1参照)。
このような路車間通信を無線によって行なう場合、無線通信の見通しを確保する観点から、歩道等に設置した支柱から車道側にアームを張り出し、このアーム上に通信装置のアンテナを取り付けている。また、前記アームを設けなくても見通しが確保できる場合、前記支柱にアンテナを取り付けることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記通信装置のアンテナを道路に設置するために、アンテナ専用の支柱を新たに設けることは経済的でなく、また、道路の美観の点でも好ましくない。
そこで、道路には車両感知器や光ビーコンのヘッド等が設置されているため、これらを取り付けている支柱やアームにアンテナを併設することが考えられる。しかし、この場合においても、美観の点で好ましくない。
【0005】
そこで、アンテナ設置用の支柱を不要とでき、かつ、道路の美観を損なうことのない新たな技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するためのこの発明の灯器は、発光体を有する光学ユニットと、前記光学ユニットに組み込まれている平衡型のアンテナとを備えているものである。
この灯器によれば、アンテナを灯器の光学ユニットに組み込ませ、アンテナを目立たなくすることができる。さらに、アンテナを灯器の光学ユニットに組み込ませることで、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。
【0007】
また、前記光学ユニットは、可視光透過性を有し前記発光体を前方で覆うカバー部材を有し、前記アンテナは、前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられ可視光透過性を有しているのが好ましい。
これによれば、アンテナを、カバー部材から発光体の前端までの範囲として灯器の光学ユニットに組み込ませることができ、アンテナを目立たなくすることができる。そして、アンテナは発光体の前端よりも前方に設けられているが、アンテナは可視光透過性を有しているため、発光体による前方への発光(灯光)の妨げになることを防止することができる。
【0008】
また、前記灯器は、可視光透過性を有し前記カバー部材と前記発光体の前端との間に設けられているアンテナ用基板を備え、前記アンテナは、前記アンテナ用基板にパターン形成された線路からなる構成とすることができる。これによれば、アンテナはアンテナ用基板にパターン形成された線路からなるため、アンテナを所定の形状とすることが容易となる。
【0009】
また、この場合において、前記線路は、メッシュ構造の導電体からなるのが好ましい。また、前記線路は、可視光透過性を有する薄膜導電体からなるのが好ましい。これにより、アンテナは可視光透過性を有する。
【0010】
または、前記アンテナを、前記カバー部材にパターン形成された線路からなる構成とすることができる。この場合、アンテナはカバー部材にパターン形成された線路からなるため、アンテナを所定の形状とすることが容易となるとともに、アンテナを形成するための別部材が不要となる。
【0011】
また、本発明の交通信号灯器は、発光体を有する光学ユニットと、前記光学ユニットに組み込まれている平衡型のアンテナとを備えている。
この交通信号灯器によれば、アンテナを交通信号灯器の光学ユニットに組み込ませ、アンテナを目立たなくすることができる。さらに、アンテナを光学ユニットに組み込ませることで、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。
また、交通信号灯器は、車両のドライバによる視認性を考慮して道路に設置される。このため、この信号灯器を道路の所定の位置に設置すれば、前記アンテナと車両の車載機との間で無線通信を行なう上で、見通しが良好な状態が得られる。
【0012】
また、本発明は、前記交通信号灯器に接続され、前記交通信号灯器の点灯および消灯を行う交通信号制御機であって、前記アンテナを介して、前記交通信号灯器の設置された道路上を走行する車両に対して、現在及び将来の前記交通信号灯器の表示に関する信号情報を送信するように構成されているものである。
【0013】
また、本発明は、発光体と、可視光透過性を有し前記発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットに組み込まれる灯器用のアンテナユニットであって、前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられるための可視光透過性のある平衡型のアンテナを備えている。
本発明によれば、平衡型のアンテナを備えているアンテナユニットを、灯器の光学ユニットに組み込ませることで、そのアンテナを目立たなくすることができる。さらに、アンテナを灯器の光学ユニットに組み込むため、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。また、アンテナを光学ユニットに組み込んだ際に、アンテナは発光体の前端よりも前方に設けられるが、アンテナは可視光透過性を有しているため、発光体による前方への発光(灯光)の妨げになることを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、アンテナは灯器の光学ユニットに組み込まれるため、アンテナ設置用の支柱を不要とでき、かつ、道路の美観を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の灯器の実施の一形態を示す正面図である。
【図2】光学ユニットの斜視図である。
【図3】光学ユニットの正面図である。
【図4】光学ユニットの断面図である。
【図5】他の実施形態の灯器が備えている光学ユニット及びアンテナを示している断面図である。
【図6】さらに別の実施形態の灯器が備えている光学ユニット及びアンテナを示している断面図である。
【図7】さらに別の実施形態の灯器が有しているアンテナの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1はこの発明の灯器の実施の一形態を示す正面図である。図1の灯器は道路に設置される交通信号灯器1(以下、単に信号灯器という)であり、車両用のものである。
歩道等の路側に支柱40が設置され、この支柱40から車道側にアーム41が張り出されて設けられており、このアーム41に信号灯器1が取り付けられている。
【0017】
信号灯器1は、複数(図例では三つ)の光学ユニット2と、これら光学ユニット2を組み込んでいる筐体3とを有している。三つの光学ユニット2は、赤、黄、青の灯光色を有している。各光学ユニット2にはひさし(図示せず)が取り付けられる。
また、支柱40には、信号灯器1を制御する制御装置5が取り付けられている。なお、信号灯器1の設置構造は図示しているもの以外であってもよく、図示しないが前記支柱40及び前記アーム41の形態が異なっていてもよく、また、信号灯器1が歩道橋に架設されたものであってもよい。また、制御装置5は、信号灯器1の筐体3内に設けられたものであってもよい。
なお、信号灯器1の点灯等を制御する制御装置5が、後述するアンテナ4を介した無線通信制御を行うように構成することができるが(あるいは無線通信制御を行う装置を同一筐体内に内蔵させることができるが)、別々の装置としても良い。別々とする場合、前記無線通信制御を行う装置は、信号灯器1の点灯等を制御する制御装置の近傍(同一の支柱40)に設置することが好ましい。
【0018】
図2、図3及び図4は、一つの光学ユニット2の斜視図、正面図及び断面図である。光学ユニット2は、発光体としての発光ダイオード7(以下LEDという)と、複数のLED7が前面8aに実装されているLED基板8と、収容部材6と、カバー部材9とを有している。LED基板8は、その裏面に配線パターンが形成されており、LED7の端子37と繋がっている。LED基板8上には複数のLED7が面状に広がって配設されている。LED7はレンズ部38を有し、このレンズ部38内にLED素子(図示せず)が設けられている。
【0019】
収容部材6は、底部(底壁)6aと、この底部6aの周縁から立設した側部(側壁)6bとを有している皿形状であり、前方に開口している。その開口側である前部に、カバー部材9が取り付けられている。これにより、収容部材6とカバー部材9との間に収容空間部Sが形成されており、この収容空間部SにLED7及びLED基板8が収容されている。そして、LED基板8は収容部材6に固定されている。収容空間部Sのうち、基板8よりも前方を前空間部S1とし、基板8よりも後方を後空間部S2としている。
【0020】
カバー部材9は可視光透過性を有しており(可視光に対して透明であり)複数のLED7を前方で覆っている。なお、この光学ユニット2において、前方とは光の投光側であり(カバー部材9側であり)、後方とは収容部材6の底部6a側である。
【0021】
そして、この光学ユニット2にアンテナ4が組み込まれている。具体的には、収容空間部Sにおいて、カバー部材9とLED7の前端39との間にアンテナ用基板16が設けられており、このアンテナ用基板16上にアンテナ4が形成されている。このアンテナ用基板16には、さらにストリップ線路31が形成されており、ストリップ線路31も光学ユニット2に組み込まれている。
また、図示している形態では、(後にも詳しく説明するが)アンテナ4及びストリップ線路31は、カバー部材9からLED7前端39までの範囲Aに設けられた状態として、光学ユニット2に組み込まれている。これにより、アンテナ4及びストリップ線路31は、光学ユニット2内に、つまり前記収容空間部Sに格納(収容)されている構造となる。
【0022】
アンテナ4は平衡型であり、図示しているものは、平衡二線で給電されるダイポールアンテナである。アンテナ4は、アンテナ用基板16の一面側(後面側)に薄膜導電体としてパターン形成された線路からなり、図3に示しているように、ダイポール部26と平衡給電線部27a,27bと平衡給電線を短絡する部分28とを有している。ダイポール部26は、左右一対のアンテナ素子26a,26bからなる。平衡給電線部27a,27b、部分28がストリップ線路のグランドも兼ねている。
【0023】
ストリップ線路31は、前記アンテナ用基板16の他面側(前面側)に薄膜導電体としてパターン形成された線路からなる。ストリップ線路31は、アンテナ用基板16の他面側であって給電線部27bの裏側となる位置で直線的に延びて形成され、そして、ダイポール部26のアンテナ素子26a,26b間の中央部においてU字状に方向を反転し、アンテナ用基板16の他面側であって給電線部27aの裏側となる位置で直線的に延びて形成されている。このストリップ線路31と平衡給電線部27a,27b、前記部分28によってバルン(平衡不平衡変換部)が構成されている。つまり、この実施形態では、ダイポールアンテナ4及びバルンが一つのアンテナ用基板16に形成されたバルン一体型のアンテナを有している。
【0024】
収容部材6(底部6a)には、アンテナ4用の同軸ケーブル15を接続させる端子部19が取り付けられており、この端子部19に、図1の制御装置5から延びる同軸ケーブル15を接続することができる。そして、この端子部19から後空間部S2へ延びる同軸ケーブル15aが、アンテナ4と接続されている。同軸ケーブル15aは、内導体(中心導体)15b、絶縁体(図示せず)、外導体15d及び被覆部15eを有しており、この同軸ケーブル15の中心導体15bが前記ストリップ線路31に接続されており、外導体15dがグランド(給電線部27b)に接続されている(図4参照、なお、図4は図3を下から見た断面図である)。内、外導体15b,15dと各部とを半田によって接続し固定することができるが、半田以外の方法であってもよい。
なお、図1の制御装置5から延びるLED7用の電源ケーブル(図示せず)が、収容部材6の底部6aに取り付けた端子部(図示せず)を介して、LED用基板8と接続されている。
【0025】
アンテナ用基板16は円形の平板からなり、LED基板8から前方へ立設した支持部材13(図13参照)によって、LED7の前端39よりも前方となって支持されかつ固定されている。支持部材13は絶縁部材からなる。そして、アンテナ用基板16は、LED基板8に対して前方で対向して配置されている。
アンテナ用基板16は誘電体の基板であり、可視光透過性を有する材質からなる。材質の具体例としては、ガラス、ポリカーボネート、アクリル又はポリエチレンテレフタラートがある。また、アンテナ用基板16の厚さは1mm程度である。
【0026】
このように、アンテナ用基板16がLED7の前端39よりも前方に設けられているため、このアンテナ用基板16上にパターン形成されたアンテナ4及びストリップ線路31は、カバー部材9からLED7の前端39までの範囲Aに設けられている構成となる。
また、図4において、カバー部材9は、その後面(背面)9aが凹曲面であって、前面9bが凸曲面であり、アンテナ用基板16は、カバー部材9の後面9aから後方に離れて設けられている。なお、アンテナ用基板16の輪郭は、図示しないが、円形以外に矩形であってもよい。
なお、ここではカバー部材9を凹凸の曲面としたが、信号灯器1がLED灯器であれば、平面とすることもできる。
【0027】
以上の形態によれば、前記アンテナ4、及び、このアンテナ4(アンテナ4及びストリップ線路31を形成しているアンテナ用基板16)をカバー部材9からLED7の前端39までの範囲に設けるための支持部材(取付部)13によって、アンテナユニットが構成されており、このアンテナユニットが、信号灯器1に組み込まれたものとなっている。
【0028】
そして、この信号灯器1において、アンテナ4及びストリップ線路31は、LED7の前端39よりも前方に設けられていることから、このLED7の前方への投光を阻害しないように、アンテナ4及びストリップ線路31は、アンテナ用基板16の一面から他面へと貫く方向(前後方向)に可視光透過性を有している構成としている。つまり、アンテナ8及びストリップ線路31が形成されているアンテナ用基板16は、その全面において、厚さ方向(前後方向)に可視光透過性を有している(可視光に対して透明である)。
【0029】
このための構成を具体的に説明すると、アンテナ用基板16は、前記のとおり透明でありそれ自体が可視光透過性を有している。そして、このアンテナ用基板16上のアンテナ4及びストリップ線路31をメッシュ構造とすることにより、可視光透過性を有しているものとしている。
【0030】
アンテナ4及びストリップ線路31をメッシュ構造とするために、アンテナ用基板16の一面及び他面に、金属膜(金属薄膜)による網目を形成している。この金属膜の網目によるアンテナ4及びストリップ線路31の具体例としては、アンテナ用基板16の面に、例えば線幅10μmであってピッチ(メッシュの間隔)を100μmとする導線部からなる微細なメッシュを形成すればよい。このようにアンテナ用基板16に微細なメッシュを形成する場合、線幅が1μm以上で50μm以下であり、ピッチが50μm以上で1000μm以下とするのが好ましく、さらには、線幅が5μm以上で50μm以下であり、ピッチが100μm以上で1000μm以下とするのが好ましい。
なお、メッシュ形状は、四角形状に限らず、三角形状、ハニカム形状とすることができ、また、全体として放射形状(蜘蛛の巣形状)等とすることができる。
【0031】
また、アンテナ4及びストリップ線路31が可視光透過性を有しているものとするために、これらを、可視光透過性を有する薄膜導電体(薄膜金属)とすることができる。そして、この薄膜導電体を前記アンテナ用基板16に形成することで、アンテナ4及びストリップ線路31を薄く、所定の形状に形成することができる。この場合、薄膜導電体の厚さを1μm以上であり100μm以下とするのが好ましく、これにより、可視光透過性を有するものとなる。
【0032】
アンテナ4及びストリップ線路31をアンテナ用基板16に形成する方法として、以下のものがある。アンテナ4及びストリップ線路31をそれぞれ単独で薄膜導電体として形成し、各々をアンテナ用基板16に貼り付ける。この場合、アンテナ4及びストリップ線路31をアンテナ用基板16に粘着部材(粘着テープ)によって接着する。または、アンテナ用基板16に対して金属蒸着を行なうことでアンテナ4及びストリップ線路31を形成してもよい。または、アンテナ用基板16に対して印刷によってアンテナ4及びストリップ線路31を形成してもよい。または、アンテナ用基板16に対して金属メッキを施してアンテナ4及びストリップ線路31を形成してもよい。
【0033】
また、アンテナ4及びストリップ線路31の材質としては、導電性があり、導電率の高い材料が好ましく、例えば、銅、真鍮などの銅合金、アルミ等による金属箔が好ましく、鉄、ニッケル又はその他の金属箔とすることもできる。
なお、光学ユニット2の収容部材6は、鋼板、アルミ又は樹脂製である。カバー部材9は、レンズであり、ガラス又は樹脂製である。
なお、ここではカバー部材9を凹凸の曲面としたが、信号灯器1がLED灯器であれば、カバー部材9をレンズではなく、平面なガラス等の平板とすることもできる。
【0034】
アンテナ4を光学ユニット2に内蔵したアンテナ内蔵型信号灯器の他の実施形態を説明する。図5は、この信号灯器が備えている光学ユニット2及びアンテナ4を示している断面図である。この信号灯器は前記実施形態と同様に、光学ユニット2と、この光学ユニット2に格納されているアンテナ4とを備えており、光学ユニット2は、LED7が実装されているLED基板8と、可視光透過性を有しLED7を前方で覆うカバー部材9とを有している。そして、アンテナ4及びストリップ線路31は、カバー部材9からLED7の前端39までの範囲Aに設けられており、これらは可視光透過性を有している。
【0035】
図5の実施形態と図4の前記実施形態との相違点は、カバー部材9の形態、並びに、アンテナ4及びストリップ線路31を形成しているアンテナ用基板16の取り付け構造である。その他の構成は同様である。
すなわち、図5では、カバー部材9の前面9bは凸曲面であるが、その後面9aは平面である。そして、このカバー部材9の後面9aに、アンテナ4及びストリップ線路31が各面にそれぞれ形成されているアンテナ用基板16が取り付けられている。なお、この取り付けは、例えば接着とすることができる。
【0036】
また、アンテナ用基板16のカバー部材9への取り付け構造の変形例として、図4に示した後面9aが凹曲面であるカバー部材9の当該後面9aに、アンテナ4及びストリップ線路31を形成しているアンテナ用基板16が取り付けられていてもよい。この場合、アンテナ4、ストリップ線路31及びアンテナ用基板16は、カバー部材9の凹曲面に沿った曲面形状のものである。
【0037】
アンテナ内蔵型信号灯器のさらに別の実施形態を説明する。図6は、この信号灯器が備えている光学ユニット2及びアンテナ4を示している断面図である。
図6の実施形態と前記実施形態(図4)との相違点は、アンテナ4及びストリップ線路31が形成されている部材であり、その他の構成は同様である。すなわち、図6では、アンテナ4は、カバー部材9にパターン形成された線路からなる。カバー部材9は、LED7等を保護するための部材の他に、前記アンテナ用基板16として兼用されており、カバー部材9の後面9aにアンテナ4が形成され、前面9bにストリップ線路31が形成されている。
【0038】
この場合においても、アンテナ4及びストリップ線路31を、カバー部材9の後面9a及び前面9bにパターン形成したメッシュ構造による線路とすることができ、また、パターン形成した薄膜導電体による線路とすることができる。これにより、アンテナ4及びストリップ線路31は、前後方向について可視光透過性を有するものとなる。
また、この場合、表面9bに形成したストリップ線路31の上にさらに保護用のカバーシートを被せて設けるのが好ましい。このカバーシートは可視光透過性を有するものである。
【0039】
アンテナ内蔵型信号灯器のさらに別の実施形態を説明する。この信号灯器についても、前記実施形態(図3と図4)と同様に、アンテナ用基板16が光学ユニット2内に格納されている。図7は、そのアンテナ内蔵型信号灯器が有しているアンテナの説明図である。この図において、アンテナ4は、図3の実施形態と同様に、アンテナ用基板16の一面に形成されているが、バルン34はこのアンテナ用基板16とは別の部分に設けられている。この実施形態のアンテナは、バルン別体型である。
【0040】
バルン34は、例えばアンテナ用基板16の後方に設けられており、同軸ケーブル15aと繋がっている。そして、このバルン34とアンテナ4とは、2線のケーブル35a,35bを介して繋がっている。
そして、アンテナ4は、アンテナ用基板16の一面上にパターン形成されたものであり、アンテナ用基板16(アンテナ4)は、カバー部材9からLED7の前端39までの範囲に設けられている。このため、このLED7の前方への投光を阻害しないように、アンテナ4は、アンテナ用基板16の一面から他面へと貫く方向に可視光透過性を有している構成としている。つまり、前記実施形態(図3及び図4)と同様に、アンテナ用基板16は透明であり、それ自体が可視光透過性を有している。そして、このアンテナ用基板16上のアンテナ4を、メッシュ構造、薄膜導電体とすることにより、可視光透過性を有しているものとしている。
【0041】
以上の各実施形態によれば、アンテナ4は信号灯器1の光学ユニット2に組み込まれたものとなる。なお、図1の信号灯器1は三つの光学ユニット2を有しており、それぞれの光学ユニット2にアンテナ4が組み込まれている。これにより、アンテナ4を目立たなくして信号灯器1に設置することができ、道路の美観を損なうことがない。
そして、アンテナ4が信号灯器1の光学ユニット2に組み込まれていることから、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。また、アンテナ4及びストリップ線路31はLED7よりも前方に設けられているが、これらは可視光透過性を有しているため、LED7による前方への発光(灯光)の妨げになることを防止することができる。
さらに、アンテナ4が露出した状態(突出した状態)にないため、信号灯器1を取り付けるための支柱40及びアーム41(図1)の設計において、アンテナ4が受ける風荷重を追加的に考慮する必要がない。また、アンテナ4に対する防錆、防塵についても追加的に考慮する必要がない。
【0042】
また、交通用の信号灯器1は、車両のドライバによる視認性を考慮して道路に設置されているため、各実施形態の信号灯器を道路の所定位置に設置することで、アンテナ4と車両の車載機との間で無線通信を行なう上で、見通しが良好な状態が自然と得られる。そして、前記各実施形態によれば、投光ユニット2による投光方向とアンテナ4による指向性とを、信号灯器1から前方として略一致させることができため、この光学ユニット2に組み込んだアンテナ4を、路車間で無線通信を行なう高度道路交通システム(ITS)に活用することができ、また、良好な通信状態が得られる。
【0043】
なお、本実施例に記載の交通信号灯器1を制御する制御装置5(交通信号制御機)は、アンテナ4を介して、交通信号灯器1を設置した道路もしくは近傍の道路等を走行する車両に対して、前記交通信号灯器1の現在及び将来の表示に関する信号情報を提供することができる。
信号情報としては、交通信号灯器1が表示する現在もしくは将来の信号灯色に関する情報を指し、各信号灯色の表示継続予定期間や表示する順序等に関する情報等を含むものである。
例えば、現在表示している灯色は青信号でその継続予定時間は5秒であり、その次に表示する灯色は黄信号でその継続予定時間は8秒であり、その次に表示する灯色は右折青矢印灯でその継続予定時間は5乃至10秒である、といった情報を所定の形式で表現して含ませると良い。なお、提供するのは現在表示している灯色とその継続時間だけとしても良いし、1サイクル分の情報をまとめて提供するようにしても良い。また、これらの情報に加えて、地点感応制御を実施している地点では、当該制御に関するパラメータ情報や制御を実施する時間帯の情報等を含ませても良い。
【0044】
そして、前記信号情報を受信した車両側の車載コンピュータは、停止線までの距離と車両の走行速度や加速度等から、停止線に到着するまでの所要時間を推定した上で、当該所要時間経過後の信号灯色を推定することができる。そして、例えば現時点で青信号を表示していたとしても、停止線に到着する時点で信号灯色が赤信号と予測されるような場合には、安全に停止線の手前で停止するように、車載コンピュータは制御すれば良い。逆に、減速しなければ安全に交差点を通過できると判断できるような場合には、速度を維持するように制御すれば良い。
また、車載コンピュータは、車載装置の主導による制御のみならず、ブレーキアシストなど、ドライバの運転動作を補助する動作をしても良い。
また、車載コンピュータは、前記判断の結果を車両の搭乗者に対して、音声や画像情報によって通知するようにしても良い。例えば、「間もなく信号が変わるので停止すべきである」といった内容の音声をドライバに向けて発したり、ヘッドアップディスプレイやナビゲーション装置の画面上に文字や図柄で表示しても良い。
【0045】
また、この発明の灯器は、前記実施形態に限定されるものではない。例えば、信号灯器は車両用以外にも、歩行者用のものであってもよい。また、信号灯器が有する発光体はLED以外に電球であってもよい。また、平衡型のアンテナとしては、前記ダイポールアンテナ以外であってもよく、ループアンテナとしてもよい。さらにこの発明は、信号灯器以外に道路の照明用の照明灯器であってもよい。この場合、発光体として水銀灯やナトリウムランプがある。
【符号の説明】
【0046】
1 信号灯器(灯器)
2 光学ユニット
4 アンテナ
5 制御装置(交通信号制御機)
7 LED(発光体)
8 LED基板(発光体用基板)
9 カバー部材
16 アンテナ用基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光体を有する光学ユニットと、前記光学ユニットに組み込まれている平衡型のアンテナと、を備えていることを特徴とする灯器。
【請求項2】
前記光学ユニットは、可視光透過性を有し前記発光体を前方で覆うカバー部材を有し、
前記アンテナは、前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられ可視光透過性を有している請求項1に記載の灯器。
【請求項3】
可視光透過性を有し前記カバー部材と前記発光体の前端との間に設けられているアンテナ用基板を備え、
前記アンテナは、前記アンテナ用基板にパターン形成された線路からなる請求項2に記載の灯器。
【請求項4】
前記線路は、メッシュ構造の導電体からなる請求項3に記載の灯器。
【請求項5】
前記線路は、可視光透過性を有する薄膜導電体からなる請求項3又は4に記載の灯器。
【請求項6】
前記アンテナは、前記カバー部材にパターン形成された線路からなる請求項2に記載の灯器。
【請求項7】
発光体を有する光学ユニットと、前記光学ユニットに組み込まれている平衡型のアンテナと、を備えていることを特徴とする交通信号灯器。
【請求項8】
発光体と、可視光透過性を有し前記発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットに組み込まれる灯器用のアンテナユニットであって、
前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられるための可視光透過性のある平衡型のアンテナを備えていることを特徴とする灯器用のアンテナユニット。
【請求項9】
請求項7に記載の交通信号灯器に接続され、前記交通信号灯器の点灯および消灯を行う交通信号制御機であって、
前記アンテナを介して、前記交通信号灯器の設置された道路上を走行する車両に対して、現在及び将来の前記交通信号灯器の表示に関する信号情報を送信するように構成されていることを特徴とする交通信号制御機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−14153(P2011−14153A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186994(P2010−186994)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【分割の表示】特願2007−186046(P2007−186046)の分割
【原出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】