アンテナ特性評価システム
【課題】少ない装置数で、効率のよいアンテナ特性評価を行う。
【解決手段】評価アンテナ24a、24bは、電波暗室20内に配置される。評価対象のアンテナである。送信アンテナ23−1〜23−4は、電波暗室20内に配置され、評価アンテナ24a、24bに電波を放射するアンテナである。合成信号生成部10は、データ系列を一定の処理単位で分けた際に、任意の個数の処理単位でデータ系列を1つのまとまりにし、データ系列のまとまりに所望の相関性を与える符号系列を乗算して、複数の合成信号を生成する。アップコンバータ22−1〜22−4は、合成信号の周波数をアップコンバートする。評価部30は、評価アンテナ24a、24bで受信された電波をダウンコンバートして、ベースバンド信号に変換し、アンテナ特性を解析する。
【解決手段】評価アンテナ24a、24bは、電波暗室20内に配置される。評価対象のアンテナである。送信アンテナ23−1〜23−4は、電波暗室20内に配置され、評価アンテナ24a、24bに電波を放射するアンテナである。合成信号生成部10は、データ系列を一定の処理単位で分けた際に、任意の個数の処理単位でデータ系列を1つのまとまりにし、データ系列のまとまりに所望の相関性を与える符号系列を乗算して、複数の合成信号を生成する。アップコンバータ22−1〜22−4は、合成信号の周波数をアップコンバートする。評価部30は、評価アンテナ24a、24bで受信された電波をダウンコンバートして、ベースバンド信号に変換し、アンテナ特性を解析する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ特性の評価を行うアンテナ特性評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナは、無線伝送特性を左右するキー部品の1つであり、高品質なワイヤレス通信を実現するためには、高性能なアンテナが要求される。このため、電波伝搬環境に応じて、電波の放射・吸収特性を最適化したアンテナ設計を行う。最適化設計のためには、アンテナの特性を測定・評価するアンテナ特性評価技術が重要となる。
【0003】
一方、近年のワイヤレス通信の分野では、MIMO(Multi Input Multi Output:複数のアンテナを用いて、データの送受信を行うワイヤレス通信技術)方式を使った高速無線通信が開発されており、将来、携帯端末などの小型の機器においても、マルチアンテナの実装が必須となると予測される。
【0004】
図19はマルチアンテナの放射パターンを説明するための図である。通信端末MSにアンテナA1、A2のマルチアンテナが設けられている。マルチアンテナ技術では、アンテナA1、A2で受信状態を異なるようにし、片側のアンテナで受信困難な場合でも、反対側のアンテナで受信可能としたダイバーシティ受信を行うことで、通信品質を向上させる。
【0005】
アンテナA1、A2の受信状態が異なるほど、ダイバーシティ受信の効果が上がるので、例えば図19のように、一方のアンテナであるアンテナA1の指向性が、左方向に電波を強く放射し(左方向に放射電力が強い)、右方向には電波を弱く放射するといった(右方向は放射電力が弱い)、放射パターンp1である場合には、他方のアンテナには、左方向に電波を弱く放射し、右方向には電波を強く放射する放射パターンp2となるような指向性を持つアンテナA2を、放射パターン同士が重ならない位置に配置する。
【0006】
ここで、電波が左から右の方向に送信されて、通信端末MSに到来した場合を考える。電波の放射パターンの強弱は、電波の吸収パターンの強弱と同じであるため、到来電波(到来電波b1とする)に対して、アンテナA2では、吸収電力が弱いので受信困難となるが、アンテナA1では、吸収電力が強いので受信可能となる。
【0007】
また、通信端末MSが移動し、その移動地点において、電波が右から左の方向に送信されて通信端末MSに到来したとすると、この到来電波(到来電波b2とする)に対しては、アンテナA1では、吸収電力が弱いので受信困難であるが、アンテナA2では、吸収電力が強いので受信可能となる。
【0008】
このように、マルチアンテナの設計を行う場合は、電波伝搬環境において、アンテナA1、A2の指向性を互いに補完して、アンテナ間での受信状態の相関(アンテナ間相関)が小さくなるように、放射(吸収)パターンの最適化を行う。
【0009】
図20はアンテナ間相関が小さい場合の電波受信強度を示す図である。縦軸は電波受信強度、横軸は時間である。図19で示したアンテナA1、A2で、到来電波b1、b2を受信したときの受信強度を示している。
【0010】
時間t0〜t1で到来電波b1があったときは、アンテナA2の受信強度は低下するが、アンテナA1の受信強度は上昇する。また、時間t1以降で到来電波b2があったときは、アンテナA1の受信強度は低下するが、アンテナA2の受信強度は上昇する。このように、アンテナ間相関を小さくして、受信強度の劣化をアンテナ間で補うことができる。
【0011】
図21はアンテナ間相関が大きい場合の電波受信強度を示す図である。縦軸は電波受信強度、横軸は時間である。通信端末MSaには、図19で示したアンテナA1と同じ放射パターンを持つアンテナA2−1が設置しているとする。
【0012】
時間t0〜t1で到来電波b1があったときは、アンテナA1、A2−1ともに受信強度は上昇するが、時間t1以降で到来電波b2があったときは、アンテナA1、A2−1ともに受信強度は低下してしまう。このように、アンテナ間相関が大きい場合は、放射パターンが落ち込む部分において、アンテナA1、A2−1ともに受信強度が劣化することになる。
【0013】
アンテナの最適化設計を行う場合には、アンテナ特性の評価を行う。このとき、特にマルチアンテナの特性を評価する場合は、アンテナ単体の特性ばかりでなく、上述のように、アンテナ間相関が、アンテナ特性を決める際の重要な評価指標となる。また、誤り率(BLER:block error probability)やスループット等の無線特性を決める際にも、アンテナ間相関は重要な要素となる。
【0014】
一方、実際の電波伝搬環境においては、基地局から送信された搬送電波(キャリア)は、マルチパス(信号波が山やビルなどの反射によって複数の経路を伝搬する現象)を経由して通信端末に到達する。よって、通信端末が移動していた場合には、各パスでキャリアの到来角度に依存してキャリア周波数が異なるドップラシフトを受けることになる(キャリア周波数にあらたなドップラ周波数が加わり、受信周波数が変位することになる)。
【0015】
このため、通信端末では、周波数領域において広がった複数の信号を受信することにより、レベルが激しく変動するフェージング(時間差をもって到達した電波の波長が干渉し合うことによって電波レベルの強弱が変化する現象またはその変動波)を受ける。フェージングによる受信レベル変動は、無線通信における情報伝送のBLERを増大する原因となる。
【0016】
したがって、アンテナ間相関を精度よく評価するには、計算機シミュレーション等によって、実際の電波伝搬環境を模擬したフェージング環境を再現することが必要である。そして、このフェージング環境で測定した値を統計処理して最適化設計を実現することで、アンテナの品質向上が可能となる。
【0017】
図22は従来のアンテナ特性評価を行っているときの様子を示す図である。通信端末MSの周辺に信号発生源5−1〜5−5が配置する。信号発生源5−1〜5−5のそれぞれは、キャリア周波数に対して互いに異なるドップラ周波数Δf1〜Δf5シフトした周波数を持つ正弦波の電波を発生する。なお、信号発生源5−1〜5−5からは、素波(複数の信号波が合成されていない単一の信号波)の状態で各正弦波電波が放射される。
【0018】
図22で示した評価環境では、通信端末MSの周囲に配置された複数の信号発生源5−1〜5−5から、異なるドップラ周波数シフトした電波を放射させて、電波を合成させる。そして、通信端末MSが合成波を受信することで、模擬的なフェージング環境を生成している。
【0019】
ここで、ドップラ周波数の定義について説明する。図23はドップラ周波数を説明するための図である。マルチパス中の1つのパスから到来したキャリア周波数fcが、通信端末MSの進行方向に対して角度θで到来する場合を考える。
【0020】
通信端末MSの移動速度をv、キャリアの波長をλ、到来角度をθとすると、ドップラ周波数Δfは、進行方向を基準としたときの見かけ上の電波の波長によって次式のように表せる。
【0021】
Δf=v/(λ/cosθ)=vcosθ/λ・・・(4)
図24は通信端末MSの進行方向と電波の到来角とに応じたドップラ周波数の変化を示す図である。(A)は通信端末MSの進行方向に対し同一方向のパスから電波を受けた場合、(B)は通信端末MSの進行方向に対し垂直方向から電波を受けた場合を示している。
【0022】
(A)のように、通信端末MSの進行方向と同一方向のパスから電波を受ければ、θ=0、πとなり、式(4)より、ドップラ周波数の絶対値|Δf|は最大となる。
また、(B)のように、通信端末MSの進行方向に対し垂直方向から電波を受ける場合は、進行方向に対する見かけ上の電波の波長は生成されないので、通信端末MSが移動していないのと同じことになり、ドップラシフトの影響は受けない(θ=π/2、3π/2となり、Δf=0)。
【0023】
ここで、図22で示した評価環境において、通信端末MSが、ある方向に移動すると仮定すると、信号発生源5−1〜5−5には、通信端末MSの移動方向に対する電波の到来角度に応じたドップラ周波数を設定して、そのドップラ周波数を持つ電波を放射させることになる。
【0024】
例えば図22に示すように、通信端末MSが矢印Xの信号発生源5−4の方向に移動すると仮定すると、信号発生源5−1〜5−5の周波数設定としては、式(4)からわかるように、信号発生源5−4のドップラ周波数Δf4が最も高くなるように設定し、その他の信号発生源からのドップラ周波数は、ドップラ周波数Δf4と比べて低くなるように設定する。
【0025】
通信端末MSは、固定しており、実際は移動させることはなく、その代わりに、通信端末MSの移動方向に沿って変化するドップラ周波数の変化を、信号発生源5−1〜5−5側で可変に設定して、設定された電波を放射させるものである。
【0026】
このように、通信端末MSが移動したとみなしたときのドップラシフトを信号発生源側で生成し、このときに評価アンテナに生じる受信強度の落ち込みなどを測定評価したりする。
【0027】
アンテナ特性評価の従来技術として、複数の散乱体アンテナを配置して、電波の振幅と位相を制御してアンテナ特性の評価を行う技術が提案されている。
また、端末の周囲において、反射板および散乱体を移動させて、電波の振幅、位相等を制御してフェージング環境を模擬する技術が提案されている。
【0028】
さらに、端末の周囲に複数のアンテナを配置し、アンテナから放射する電波が、端末からみた各アンテナ方向の実環境の特性を持つように制御する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特開2005−227213号公報(段落番号〔0031〕,第1図)
【特許文献2】特開平07−162376号公報(段落番号〔0045〕、〔0046〕,第1図)
【特許文献3】特開平11−340930号公報(段落番号〔0024〕〜〔0031〕,第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
図22で示したような評価環境を具体的なシステムで実現する場合、通常は、電波暗室内に複数のアンテナを配置した測定環境を構築し、この電波暗室内でアンテナ特性評価を行う。なお、電波暗室とは、室内の天井、壁、および床の全面に、電波吸収体を取り付けて、室内での電波の反射を抑えた部屋のことである。
【0031】
図25は従来のアンテナ特性評価システムの構成を示す図である。アンテナ特性評価システム5aは、電波暗室50、ベースバンド信号生成部51、アップコンバータ52−1〜52−4、送信アンテナ53a〜53d、評価アンテナ54a、54b、アンテナ特性評価ボード55、評価用端末56から構成される(以降、評価用の電波を放射するアンテナを送信アンテナ、評価対象のアンテナを評価アンテナと呼ぶ)。
【0032】
電波暗室50内に、電波を送信する送信アンテナ53a〜53dと、評価対象の評価アンテナ54a、54bとが配置される。送信アンテナ53a〜53dは、アップコンバータ52−1〜52−4のそれぞれと接続し、アップコンバータ52−1〜52−4は、ベースバンド信号生成部51と接続する。評価アンテナ54a、54bは、アンテナ特性評価ボード55と接続し、アンテナ特性評価ボード55は、評価用端末56と接続する。
【0033】
ベースバンド信号生成部51は、ベースバンド信号を発生する。アップコンバータ52−1〜52−4は、ベースバンド信号をRF(Radio Frequency)信号の周波数帯にアップコンバートする。
【0034】
アップコンバータ52−1は、ベースバンド信号をキャリア周波数に対してドップラ周波数Δf1シフトした周波数のRF信号にアップコンバートする。アップコンバータ52−2は、ベースバンド信号をドップラ周波数がΔf2のRF信号にアップコンバートする。
【0035】
アップコンバータ52−3は、ベースバンド信号をドップラ周波数がΔf3のRF信号にアップコンバートする。アップコンバータ52−4は、ベースバンド信号をドップラ周波数がΔf4のRF信号にアップコンバートする。
【0036】
送信アンテナ53aは、アップコンバータ52−1でアップコンバートされたキャリア周波数に対してドップラ周波数Δf1シフトした周波数の電波を放射する。送信アンテナ53bは、アップコンバータ52−2でアップコンバートされたドップラ周波数がΔf2の電波を放射する。
【0037】
送信アンテナ53cは、アップコンバータ52−3でアップコンバートされたドップラ周波数がΔf3の電波を放射する。送信アンテナ53dは、アップコンバータ52−4でアップコンバートされたドップラ周波数がΔf4の電波を放射する。
【0038】
評価アンテナ54a、54bは、送信された電波を受信する。アンテナ特性評価ボード55は、評価アンテナ54a、54bで受信された電波をダウンコンバートして、ベースバンド信号に変換する。評価用端末56は、ダウンコンバート後のベースバンド信号にもとづいて、アンテナ特性を解析する。
【0039】
図26は従来のアンテナ特性評価システムの構成を示す図である。アンテナ特性評価システム5bは、図25で示したベースバンド信号生成部51と、アップコンバータ52−1〜52−4との間に、合成信号発生部57が設けられたもので、その他の構成は同じである。
【0040】
合成信号発生部57は、周波数が互いに異なる複数の正弦波を生成し、ベースバンド信号生成部51から出力されたベースバンド信号と、正弦波とを乗算・合成して、複数の合成信号を発生する(所望の相関性が与えられた複数の合成信号によって、模擬的なマルチパスのフェージング環境を生成する)。
【0041】
アップコンバータ52−1〜52−4は、合成信号発生部57から出力された合成信号をRF信号の周波数帯にアップコンバートする(以降の動作は同じなので説明は省略する)。
【0042】
ここで、図25で示したアンテナ特性評価システム5aでは、マルチパス環境を再現し、マルチパス間の相関を所望の値にしてアンテナ特性の評価を行おうとすると、信号発生源および送信アンテナの数が増加してしまう。
【0043】
これに対し、図26で示したアンテナ特性評価システム5bでは、上記のような合成信号発生部57を設けることで、信号発生源および送信アンテナの数を増設することなく、マルチパスのフェージングを生成することが可能になる。
【0044】
しかし、図26に示した従来のアンテナ特性評価システム5bは、ベースバンド信号を発生するベースバンド信号生成部51と、ベースバンド信号を処理して合成信号を発生する合成信号発生部57と、の2つの構成ブロックを持つ必要がある。このため、装置規模が増大し、評価系が複雑化するといった問題があった。
【0045】
ベースバンド信号生成部51では、例えば、LTE(Long Term Evolution:携帯電話機などの移動通信に関する高速通信サービスの規格)のような無線方式の場合、符号化単位(1サブフレーム=1ms)の周期の信号となり、これをメモリに保存して、繰返し信号を発生することになる。
【0046】
一方、合成信号発生部57では、通信端末MSの移動を想定したドップラシフトに対応した数10Hz程度の信号(例えば、数10msの信号)が必要となる。すなわち、マルチパス環境を模擬したアンテナ間相関の評価を行うためには、所望の相関性を得るために、ベースバンド信号をもとにして、長い周期(数10msといった周期)の信号を生成する必要があった(伝搬路を流れる複数の信号の互いの相関性を任意に設定しようとするには、数10ms〜数秒で所望の相関性が得られるような信号を生成していた)。このため、合成信号発生部57は、1ms周期の信号を発生するベースバンド信号生成部51とは異なる動作が必要となる。
【0047】
このように、ベースバンド信号生成部51及び合成信号発生部57は、時間スケールが互いに異なる制御を行うので、従来では、別個の構成ブロックとして設けられており、このため評価システムの規模が大きなものとなっていた。
【0048】
アンテナ特性を評価する場合には、限られたスペースで実施される場合が多いので、構成が小規模で、高精度のアンテナ特性評価が可能なシステム構築が望まれている。
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、少ない装置数で、効率よくアンテナ特性評価を行うアンテナ特性評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0049】
上記課題を解決するために、アンテナ特性評価システムが提供される。このアンテナ特性評価システムは、評価対象のアンテナである評価アンテナと、前記評価アンテナに電波を放射する複数の送信アンテナと、ベースバンド信号であるデータ系列を発生し、前記データ系列から合成信号を生成する合成信号生成部と、前記送信アンテナに接続し、前記合成信号の周波数を前記電波の周波数までアップコンバートするアップコンバータと、前記評価アンテナと接続し、前記電波を受信したときの前記評価アンテナの前記アンテナ特性の評価を行う評価部とを備える。
【0050】
ここで、合成信号生成部は、データ系列を一定の処理単位で分けた際に、任意の個数の処理単位でデータ系列を1つのまとまりにし、データ系列のまとまりに所望の相関性を与える符号系列を乗算して、複数の合成信号を生成する合成信号生成処理を行う。
【発明の効果】
【0051】
装置規模を低減して、効率よくアンテナ特性の評価を行う。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】アンテナ特性評価システムの構成例を示す図である。
【図2】電波信号の伝搬路変動を示す図である。
【図3】通信システムの構成を示す図である。
【図4】相関性設定の一例を示す図である。
【図5】相関性設定の一例を示す図である。
【図6】相関性設定の一例を示す図である。
【図7】Walsh符号を説明するための図である。
【図8】合成信号を生成するブロック構成を示す図である。
【図9】合成信号を生成するブロック構成を示す図である。
【図10】合成信号を生成するブロック構成を示す図である。
【図11】アンテナ特性評価システムの構成例を示す図である。
【図12】合成信号生成部の構成を示す図である。
【図13】直交符号系列発生部で発生される直交符号系列を示す図である。
【図14】直交符号系列発生部で発生される直交符号系列を示す図である。
【図15】行列演算の一例を示す図である。
【図16】乗算処理の一例を示す図である。
【図17】合成処理部及び出力処理部の構成を示す図である。
【図18】変形例を説明するための図である。
【図19】マルチアンテナの放射パターンを説明するための図である。
【図20】アンテナ間相関が小さい場合の電波受信強度を示す図である。
【図21】アンテナ間相関が大きい場合の電波受信強度を示す図である。
【図22】従来のアンテナ特性評価を行っているときの様子を示す図である。
【図23】ドップラ周波数を説明するための図である。
【図24】通信端末の進行方向と電波の到来角とに応じたドップラ周波数の変化を示す図である。(A)は通信端末の進行方向に対し同一方向のパスから電波を受けた場合、(B)は通信端末の進行方向に対し垂直方向から電波を受けた場合を示している。
【図25】従来のアンテナ特性評価システムの構成を示す図である。
【図26】従来のアンテナ特性評価システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1はアンテナ特性評価システムの構成例を示す図である。アンテナ特性評価システム1は、送信アンテナ23−1〜23−4、評価アンテナ24a、24b、合成信号生成部10、アップコンバータ22−1〜22−4、評価部30を備え、電波暗室20内でアンテナ特性の評価を行うシステムである(図の例では、電波暗室20内に送信アンテナが4つ、評価アンテナが2つ配置しているが、これらの個数は任意である)。
【0054】
評価アンテナ24a、24bは、電波暗室20内に配置され、アンテナ特性評価対象のアンテナである。送信アンテナ23−1〜23−4は、評価アンテナ24a、24bに電波を放射する仮想的散乱体としてのアンテナであり、電波暗室20内の適切な位置に分散して配置される。
【0055】
合成信号生成部10は、ベースバンド信号であるデータ系列を発生し、データ系列から合成信号v1〜v4を生成する。アップコンバータ22−1〜22−4(総称する場合は、アップコンバータ22)は、送信アンテナ23−1〜23−4にそれぞれ接続し、合成信号v1〜v4の各周波数を電波の周波数までアップコンバートする。
【0056】
すなわち、合成信号v1〜v4を、移動機の移動速度、移動方向及び電波到来方向から決まるドップラ周波数Δf1〜Δf4の電波にして、送信アンテナ23−1〜23−4を介して放射する。
【0057】
評価部30は、アンテナ特性評価ボード31および評価用端末32を含む。アンテナ特性評価ボード31は、評価アンテナ24a、24bと接続する。アンテナ特性評価ボード31は、評価アンテナ24a、24bで受信された電波をダウンコンバートして、ベースバンド信号に変換する。評価用端末32は、ダウンコンバート後のベースバンド信号にもとづいて、アンテナ特性を解析する。
【0058】
ここで、合成信号生成部10は、データ系列を一定の処理単位で分けた際に、任意の個数の処理単位でデータ系列を1つのまとまりにし、データ系列のまとまりに所望の相関性を与える符号系列を乗算して、複数の合成信号を生成する合成信号生成処理を行う。
【0059】
具体的には、符号化単位(サブフレーム)で構成されるデータ系列に対して、任意の個数の符号化単位でデータ系列を1つのまとまりにし、このデータ系列のまとまりに所望の相関性を与える(所望の相関性を設定する)符号系列を乗算して、複数の合成信号を生成して、フェージングを生成する。合成信号生成部10の詳細な構成及び動作については後述する。
【0060】
次にアンテナ特性評価システム1の装置規模が従来構成と比較して簡略化できる理由について説明する。図2は電波信号の伝搬路変動を示す図である。縦軸は電波強度、横軸は時間である。
【0061】
ワイヤレス通信の環境としては、多重波伝搬の基本電波強度分布であるレイリー分布を有するレイリーフェージング環境が一般的であると言われている。アンテナ特性評価を行う場合でも、このようなレイリーフェージング環境を模擬的に生成して、アンテナ特性の評価を行うことになる。
【0062】
一方、LTE、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、W−CDMA(Wideband−Code Division Multiple Access)、WLAN(Wireless Local Area Network)等の無線通信方式では、それぞれの符号化方式(例えば、ターボ符号等)において、符号化単位でのパケット通信が行われている。
【0063】
したがって、図2に示すように、電波信号の伝搬路変動が、符号化単位内で連続であり、かつレイリー分布になっていれば、符号化単位内でBLER判定等の特性評価を実施すればよく、符号化単位間では不連続が生じていてもよい。
【0064】
すなわち、符号化単位内で電波信号の振幅が連続で、電波強度分布がレイリー分布になっていれば、符号化単位間で不連続であっても、伝送特性は連続的に電波の強さが変動するレイリーフェージング環境の特性と同じになる。
【0065】
ここで、従来では、1符号化単位(1ms)でベースバンド信号(データ系列)を発生し、その1符号化単位のベースバンド信号にもとづいて、マルチパス間に所望の相関性を持つ数10ms〜数秒の複数の信号(合成信号)を生成していた。
【0066】
このように、従来は、ベースバンド信号を発生する機能と、ベースバンド信号に相関性を与えて合成信号を生成する機能とは、処理対象の信号の時間スケールが双方異なるために、別々の機能ブロックで構成されていた。
【0067】
これに対し、アンテナ特性評価システム1では、図2に示すような無線通信方式で行われる符号化単位での無線伝送に着目し、データ系列の符号化単位をいくつかまとめて、そのまとまりに対して所望の相関性を与える構成とした。例えば、4つの符号化単位を1つのまとまりとし、このまとまりに所望の相関性を与えて、4msのフェージング周期の合成信号を生成する。
【0068】
このような制御を行うことにより、ベースバンド信号を発生する時間周期と、合成信号を生成する時間周期との差はなくなり、同じ時間スケールで処理することができるので、これら2つの機能を1つの機能ブロックで構成することが可能になる。
【0069】
すなわち、アンテナ特性評価システム1では、マルチパス間に所望の相関性を与えるために、1ms程度の符号化単位を複数まとめて、そのまとまりに所望の相関性を与え、数msの短いフェージング周期の信号を生成することによってフェージング環境を構築する。
【0070】
このような構成により、装置規模を低減することができる。また、アンテナ特性評価システム1の簡易な構成によっても、マルチパス環境に対して任意の相関性を与えることができるので、アンテナ特性評価時の利便性の向上を図ることも可能になり、効率のよいアンテナ特性評価が可能になる。
【0071】
次にアンテナ特性評価システム1が模擬する通信システムの一例について説明する。図3は通信システムの構成を示す図である。マルチパス環境として、2×2のMIMOパスの伝搬路での通信を行うシステムを示している。
【0072】
通信システム60は、基地局6と移動端末7から構成される。基地局6は、アンテナ6a、6bを有し、アンテナ6aからデータ系列a1が送信され、アンテナ6bからデータa2が送信される。
【0073】
移動端末7は、アンテナ7a、アンテナ7b、信号処理部7cを有する。アンテナ7a、7bそれぞれは、基地局6から送信されたデータa1及びデータa2を受信して、信号処理部7cへ送信する。信号処理部7cは、受信したデータに対して、ダウンコンバート、復調及び復号等の受信処理を行う。
【0074】
一方、図3に示す、基地局6と移動端末7との間の電波伝搬環境においては、アンテナ6aからデータa1の電波が伝搬路へ放射される場合は、電波強度が小さいパスp1aでアンテナ7aに到達し、電波強度が大きいパスp1bでアンテナ7bに到達している。
【0075】
また、アンテナ6bからデータa2の電波が伝搬路へ放射される場合は、電波強度が小さいパスp2aでアンテナ7bに到達し、電波強度が大きいパスp2bでアンテナ7aに到達している。
【0076】
一方、移動端末7側のアンテナ7a、7bでは、伝搬路の強度に応じた大きさで、データa1、a2が合成されて受信される。図3の場合では、アンテナ7aにおいて、データa2の強度が大きく、データa1の強度が小さい合成レベルで受信されている。また、アンテナ7bにおいては、データa1の強度が大きく、データa2の強度が小さい合成レベルで受信されている。
【0077】
アンテナ特性評価システム1が、上記のような通信システム60を模擬してアンテナ特性評価を実施する場合は、送信アンテナ間での相関性を任意に可変して、アンテナ7a、7bの特性評価を行うことになる。
【0078】
したがって、アンテナ6aから放射されるパスp1a、p1bと、アンテナ6bから放射されるパスp2b、p2aそれぞれとは、互いに任意の相関(例えば、無相関(相関性がゼロ))に設定可能となるようにしたりする。
【0079】
次にアンテナ特性評価システム1の合成信号生成部10で行われる、相関性を設定する制御について説明する。図4は相関性設定の一例を示す図である。なお、以降の説明では、8つの符号化単位を1つのまとまりとして相関性を与える例を示す。また、任意の相関性として、相関性をゼロに設定するものとする。
【0080】
合成信号生成部10は、データ系列d1、d2を内部に発生する。データ系列d1では、データX1を1つの符号化単位とし、8つのデータX1を1つのまとまりとしている。また、データ系列d2では、データX2を1つの符号化単位とし、8つのデータX2を1つのまとまりとしている(なお、データ系列d1、d2共に、左から順に#1〜#8の番号を付ける)。
【0081】
データ系列d1に対応するパス、d2に対応するパスを無相関にする場合、図4の例では、データ系列d1の8つの符号化単位のデータX1毎に、直交符号系列(+1、+1、+1、+1、+1、+1、+1、+1)を乗算する。また、データ系列d2の8つの符号化単位のデータX2毎に、直交符号系列(+1、+1、+1、+1、-1、-1、-1、-1)を乗算する。
【0082】
すなわち、データ系列d1に対しては、データX1(#1〜#8)のそれぞれに直交符号(+1)を乗算する。また、データ系列d2に対しては、データX2(#1〜#4)のそれぞれに直交符号(+1)を乗算し、データX2(#5〜#8)に、直交符号(−1)を乗算して、データ系列d2−1を生成する。データ系列d1とデータ系列d2−1とは、このような処理が施されることによって、伝搬環境において無相関になっている。
【0083】
ここで、データ系列d1のデータX1(#1〜#8)は、伝搬路の情報としては+1であり、データ系列d2−1においては、データX2(#1〜#4)までは、伝搬路の情報としては+1であり、データX2(#5〜#8)までは、伝搬路の情報としては−1となっている。
【0084】
したがって、データ系列d1、d2−1に対して、符号化単位毎に伝搬路情報を乗算して加算すれば、(1×1)+(1×1)+(1×1)+(1×1)+(1×(−1))+(1×(−1))+(1×(−1))+(1×(−1))=0となるから、データ系列d1、d2−1は、互いに相関がゼロであり、無相関の関係になっていることがわかる。
【0085】
合成信号生成部10では、データ系列d1とデータ系列d2−1とを符号化単位毎に加算することで、合成信号を生成する。この合成信号は、例えば、図1で示した構成に対応させると、ドップラ周波数Δf1の電波を放射するための合成信号v1に該当するものである。
【0086】
また、データ系列d2−1では、符号化単位間で伝搬環境が不連続となる箇所P1が存在するが、8つの符号化単位のデータを1つのまとまりにして、そのまとまりに相関性を設定しているので、伝送特性に影響を与えることはなく、アンテナ特性評価を実施する上で支障はない。
【0087】
なお、上記の2つのデータ系列に対応するパス間の相関性が、伝搬環境において無相関となることを複素数の表現形式で表すと、以下の式(1)で示される。なお、式(1)中のX*は、Xの複素共役を示す(X=a+jbのとき、Xの複素共役X*は、X*=a−jbである)。また、θ1は、初期位相0〜2πの一様乱数であり、exp(jθ1)は、直交符号を表している。
【0088】
(X1*・X2・exp(jθ1))+(X1*・X2・exp(jθ1))+(X1*・X2・exp(jθ1))+(X1*・X2・exp(jθ1))+(X1*・X2・(−exp(jθ1)))+(X1*・X2・(−exp(jθ1)))+(X1*・X2・(−exp(jθ1)))+(X1*・X2・(−exp(jθ1)))=0・・・(1)
図5は相関性設定の一例を示す図である。図4とは異なる直交符号系列のパターンで、データ系列を無相関にする例を示している。データ系列d1に対応するパス、d2に対応するパスを無相関にする場合、図5の例では、データ系列d1の8つの符号化単位のデータX1毎に、直交符号系列(+1、+1、+1、+1、+1、+1、+1、+1)を乗算する。また、データ系列d2の8つの符号化単位のデータX2毎に、直交符号系列(+1、+1、-1、-1、+1、+1、-1、-1)を乗算する。
【0089】
すなわち、データ系列d1に対しては、データX1(#1〜#8)のそれぞれに直交符号(+1)を乗算する。また、データ系列d2に対しては、データX2(#1、#2)に直交符号(+1)を乗算し、データX2(#3、#4)に、直交符号(−1)を乗算し、データX2(#5、#6)に直交符号(+1)を乗算し、データX2(#7、#8)に、直交符号(−1)を乗算してデータ系列d2−2を生成する。データ系列d1とデータ系列d2−2とは、このような処理が施されることによって、無相関になっている。
【0090】
ここで、データ系列d1のデータX1(#1〜#8)は、伝搬路の情報としては+1である。また、データ系列d2−2のデータX2(#1、#2)は、伝搬路の情報としては+1であり、データX2(#3、#4)は、伝搬路の情報としては−1であり、データX2(#5、#6)は、伝搬路の情報としては+1であり、データX2(#7、#8)は伝搬路の情報としては−1となっている。
【0091】
したがって、データ系列d1、d2−2に対して、符号化単位毎に伝搬路情報を乗算して加算すれば、(1×1)+(1×1)+(1×(−1))+(1×(−1))+(1×1)+(1×1)+(1×(−1))+(1×(−1))=0となるから、データ系列d1、d2−2は、互いに相関がゼロであり、無相関の関係になっていることがわかる。
【0092】
また、データ系列d2−2では、符号化単位間で伝搬環境が不連続となる箇所P2〜P4が存在するが、8つの符号化単位のデータを1つのまとまりにして、そのまとまりに相関性を設定しているので、伝送特性に影響を与えることはなく、アンテナ特性評価を実施する上で支障はない。
【0093】
合成信号生成部10では、データ系列d1とデータ系列d2−2とを符号化単位毎に加算することで、合成信号を生成する。この合成信号は、例えば、図1で示した構成に対応させると、ドップラ周波数Δf2の電波を放射するための合成信号v2に該当するものである。
【0094】
なお、上記の2つのデータ系列の相関性が、伝搬環境において無相関となることを複素数の表現形式で表すと、以下の式(2)で示される。
(X1*・X2・exp(jθ1))+(X1*・X2・exp(jθ1))+(X1*・X2・(−exp(jθ1)))+(X1*・X2・(−exp(jθ1)))+(X1*・X2・exp(jθ1))+(X1*・X2・exp(jθ1))+(X1*・X2・(−exp(jθ1)))+(X1*・X2・(−exp(jθ1)))=0・・・(2)
図6は相関性設定の一例を示す図である。図4、図5では、データ系列d1の符号は変化させずに、データ系列d2の所定データのみに直交符号の(−1)を乗算して直交性を作ったが、図6の例では、データ系列d1の所定データにも直交符号の(−1)を乗算するものである。
【0095】
データ系列d1に対応するパス、d2に対応するパスを無相関にする場合、図6の例では、データ系列d1の8つの符号化単位のデータX1毎に、直交符号系列(+1、+1、-1、-1、-1、-1、+1、+1)を乗算する。また、データ系列d2の8つの符号化単位のデータX2毎に、直交符号系列(+1、+1、-1、-1、+1、+1、-1、-1)を乗算する。
【0096】
すなわち、データ系列d1に対しては、データX1(#1、#2)に直交符号(+1)を乗算し、データX1(#3〜#6)に直交符号(−1)を乗算し、データX1(#7、#8)に直交符号(+1)を乗算してデータ系列d1−2を生成する。
【0097】
また、データ系列d2に対しては、データX2(#1、#2)に直交符号(+1)を乗算し、データX2(#3、#4)に、直交符号(−1)を乗算し、データX2(#5、#6)に直交符号(+1)を乗算し、データX2(#7、#8)に、直交符号(−1)を乗算してデータ系列d2−2を生成する。データ系列d1−2とデータ系列d2−2とは、このような処理が施されることによって、無相関になっている。
【0098】
ここで、データ系列d1−2のデータX1(#1、#2)は、伝搬路の情報としては+1であり、データX1(#3〜#6)は、伝搬路の情報としては−1であり、データX1(#7、#8)は、伝搬路の情報としては+1である。
【0099】
また、データ系列d2−2のデータX2(#1、#2)は、伝搬路の情報としては+1であり、データX2(#3、#4)は、伝搬路の情報としては−1であり、データX2(#5、#6)は、伝搬路の情報としては+1であり、データX2(#7、#8)は伝搬路の情報としては−1となっている。
【0100】
したがって、データ系列d1−2、d2−2に対して、符号化単位毎に伝搬路情報を乗算して加算すれば、(1×1)+(1×1)+((−1)×(−1))+((−1)×(−1))+((−1)×1)+((−1)×1)+(1×(−1))+(1×(−1))=0となるから、データ系列d1−2、d2−2は、互いに相関がゼロであり、無相関の関係になっていることがわかる。
【0101】
データ系列d1−2では、符号化単位間で伝搬環境が不連続となる箇所P5、P6が存在し、データ系列d2−2では、符号化単位間で伝搬環境が不連続となる箇所P2〜P4が存在するが、8つの符号化単位のデータを1つのまとまりにして、そのまとまりに相関性を設定しているので、伝送特性に影響を与えることはなく、アンテナ特性評価を実施する上で支障はない。
【0102】
また、上述したように、送信アンテナ毎に異なる直交符号を用いて無相関のマルチパスを生成することにより、位相だけ異なるのではなく、振幅も異なるようにすることができる。
【0103】
なお、上記の2つのデータ系列の相関性が、伝搬環境において無相関となることを複素数の表現形式で表すと、以下の式(3)で示される。
(X1*・X2・exp(jθ1))+(X1*・X2・exp(jθ1))+(X1*・(−exp(jθ2))・X2・(−exp(jθ1)))+(X1*・(−exp(jθ2))・X2・(−exp(jθ1)))+(X1*・(−exp(jθ2))・X2・exp(jθ1))+(X1*・(−exp(jθ2))・X2・exp(jθ1))+(X1*・X2・(−exp(jθ1)))+(X1*・X2・(−exp(jθ1)))=0・・・(3)
上記の図4〜図6に示した相関性設定では、直交符号系列にWalsh符号を用いた。Walsh符号を用いると、簡易なメモリを用いて直交符号を保存することができる。以下、簡単にWalsh符号について説明する。
【0104】
図7はWalsh符号を説明するための図である。行列A1は、行ベクトル(1、1)、(1、−1)を有し、これら2つの行ベクトルは直交する(∵1×1+1×(−1)=0)。
行列A2は、行ベクトル(A1、A1)、(A1、−A1)を有する。なお、A1は上述の2×2行列なので、行列A2を要素毎に書き出すと、4つの行ベクトル(1、1、1、1)、(1、−1、1、−1)、(1、1、−1、−1)、(1、−1、−1、1)に展開される。
【0105】
ここで、行列A2は、どの2つの行ベクトルを抽出しても直交していることがわかる。例えば、行ベクトル(1、1、1、1)、(1、−1、1、−1)は直交しているし、行ベクトル(1、−1、1、−1)、(1、−1、−1、1)も直交している。
【0106】
上記のような操作を続けていくと、行列Anは、行ベクトル(An-1、An-1)、(An-1、−An-1)を有し、このような行列をアダマール(Hadamard)行列と呼ぶ。また、アダマール行列の行ベクトルがWalsh符号と呼ばれるものである。
【0107】
なお、直交符号としては、上記のようなWalsh符号だけでなく、例えば、{exp[j2πnk/N], (n,k =0,1,…,N-1)}のフーリエ級数に関連した符号、M系列を周期的にシフトし最後に1を追加した符号などがあり、これらを用いてもよい。
【0108】
次にデータ系列d1、d2から合成信号を生成するブロック構成について説明する。図8は合成信号を生成するブロック構成を示す図である。図4で示した内容に対応している。
【0109】
乗算器101aは、データ系列d2の符号化単位のデータX2に、順に直交符号exp(jθ1)、exp(jθ1)、exp(jθ1)、exp(jθ1)、−exp(jθ1)、−exp(jθ1)、−exp(jθ1)、−exp(jθ1)を乗算する。乗算出力は、(X2・exp(jθ1))、(X2・exp(jθ1))、(X2・exp(jθ1))、(X2・exp(jθ1))、(X2・(−exp(jθ1)))、(X2・(−exp(jθ1)))、(X2・(−exp(jθ1)))、(X2・(−exp(jθ1)))となる(このときの乗算出力は、図4のデータ系列d2−1に対応するものである)。
【0110】
加算器102は、これら乗算出力に対して、データ系列d1の符号化単位のデータX1を加算して、合成信号vを出力する。合成信号vは、{X1+(X2・exp(jθ1))}+{X1+(X2・exp(jθ1))}+{X1+(X2・exp(jθ1))}+{X1+(X2・exp(jθ1))}+{X1+(X2・(−exp(jθ1)))}+{X1+(X2・(−exp(jθ1)))}+{X1+(X2・(−exp(jθ1)))}+{X1+(X2・(−exp(jθ1)))}となる。
【0111】
図9は合成信号を生成するブロック構成を示す図である。図5で示した内容に対応している。乗算器101aは、データ系列d2の符号化単位のデータX2に、順に直交符号exp(jθ1)、exp(jθ1)、−exp(jθ1)、−exp(jθ1)、exp(jθ1)、exp(jθ1)、−exp(jθ1)、−exp(jθ1)を乗算する。乗算出力は、(X2・exp(jθ1))、(X2・exp(jθ1))、(X2・(−exp(jθ1)))、(X2・(−exp(jθ1)))、(X2・exp(jθ1))、(X2・exp(jθ1))、(X2・(−exp(jθ1)))、(X2・(−exp(jθ1)))となる(このときの乗算出力は、図5のデータ系列d2−2に対応するものである)。
【0112】
加算器102は、これら乗算出力に対して、データ系列d1の符号化単位のデータX1を加算して、合成信号vを出力する。合成信号vは、{X1+(X2・exp(jθ1))}+{X1+(X2・exp(jθ1))}+{X1+(X2・(−exp(jθ1)))}+{X1+(X2・(−exp(jθ1)))}+{X1+(X2・exp(jθ1))}+{X1+(X2・exp(jθ1))}+{X1+(X2・(−exp(jθ1)))}+{X1+(X2・(−exp(jθ1)))}となる。
【0113】
図10は合成信号を生成するブロック構成を示す図である。図6で示した内容に対応している。乗算器101aは、データ系列d2の符号化単位のデータX2に、順に直交符号exp(jθ1)、exp(jθ1)、−exp(jθ1)、−exp(jθ1)、exp(jθ1)、exp(jθ1)、−exp(jθ1)、−exp(jθ1)を乗算する。乗算出力は、(X2・exp(jθ1))、(X2・exp(jθ1))、(X2・(−exp(jθ1)))、(X2・(−exp(jθ1)))、(X2・exp(jθ1))、(X2・exp(jθ1))、(X2・(−exp(jθ1)))、(X2・(−exp(jθ1)))となる(このときの乗算出力は、図6のデータ系列d2−2に対応するものである)。
【0114】
また、乗算器101bは、データ系列d1の符号化単位のデータX1に、順に直交符号exp(jθ2)、exp(jθ2)、−exp(jθ2)、−exp(jθ2)、−exp(jθ2)、−exp(jθ2)、exp(jθ2)、exp(jθ2)を乗算する。乗算出力は、(X1・exp(jθ2))、(X1・exp(jθ2))、(X1・(−exp(jθ2)))、(X1・(−exp(jθ2)))、(X1・(−exp(jθ2)))、(X1・(−exp(jθ2)))、(X1・exp(jθ2))、(X1・exp(jθ2))となる(このときの乗算出力は、図6のデータ系列d1−2に対応するものである)。
【0115】
加算器102は、これら2つの乗算出力を符号化単位毎に加算して、合成信号vを出力する。合成信号vは、{(X1・exp(jθ2))+(X2・exp(jθ1))}+{(X1・exp(jθ2))+(X2・exp(jθ1))}+{(X1・(−exp(jθ2)))+(X2・(−exp(jθ1)))}+{(X1・(−exp(jθ2)))+(X2・(−exp(jθ1)))}+{(X1・(−exp(jθ2)))+(X2・exp(jθ1))}+{(X1・(−exp(jθ2)))+(X2・exp(jθ1))}+{(X1・exp(jθ2))+(X2・(−exp(jθ1)))}+{(X1・exp(jθ2))+(X2・(−exp(jθ1)))}となる。
【0116】
次に合成信号生成部10(信号発生装置)の詳細構成について説明する。なお、8つの合成信号v1〜v8を生成する場合のアンテナ特性評価システムに適用する際の合成信号生成部10の構成について説明する。最初にアンテナ特性評価システムの構成を示す。
【0117】
図11はアンテナ特性評価システムの構成例を示す図である。アンテナ特性評価システム1−1は、送信アンテナ23−1〜23−8、評価アンテナ24a、24b、合成信号生成部10、アップコンバータ22−1〜22−8、評価部30を備える。
【0118】
なお、基本的な構成は、図1のアンテナ特性評価システム1と同じなので、異なる箇所のみ示すと、合成信号生成部10は8つの合成信号v1〜v8を出力する。アップコンバータ22−1〜22−8それぞれは、合成信号v1〜v8を受信して、アップコンバートを行い、送信アンテナ23−1〜23−8を介して、ドップラ周波数Δf1〜Δf8を電波暗室20内に放射する。
【0119】
図12は合成信号生成部10の構成を示す図である。合成信号生成部10は、直交符号生成部11、演算部12、データ系列生成部13、乗算処理部14、合成処理部15、出力処理部16を備える。
【0120】
直交符号生成部11は、直交符号系列発生部11−1〜11−Nを含み、直交符号系列を生成する。演算部12は、直交符号系列に所望の相関性を与えるための相関パラメータを乗算して、所望の相関性を与えた符号系列を生成する。
【0121】
データ系列生成部13は、ディジタルベースバンド信号であるデータ系列を生成する。乗算処理部14は、データ系列と符号系列とを乗算する。合成処理部15は、複数の乗算結果に重み付けを行って合成し、合成信号を生成する。
【0122】
出力処理部16は、D/A部16a−1〜16a−8、フィルタ16b−1〜16b−8を含み、合成信号の出力インタフェース処理(D/A変換及びD/A変換時に伴う折り返し歪み除去)を行って、アップコンバータ22に向けて出力する。
【0123】
次に直交符号系列発生部11−1〜11−Nについて説明する。直交符号系列発生部11−1〜11−Nは、各々が異なる複数のパターンの直交符号系列を発振可能なディジタル・ジェネレータに該当する。
【0124】
図13は直交符号系列発生部で発生される直交符号系列を示す図である。直交符号系列は、データ系列を識別するための番号(データ系列識別番号)をm、パスを識別するための番号(パス識別番号)をk、1つの直交符号系列発生部で発生される直交符号系列パターンを識別するための番号(直交符号系列パターン識別番号)をnとした場合、xm,k-nと表記するものとする。なお、nは送信アンテナ数と等しい。
【0125】
図13に示す直交符号系列発生部11−1は、データ系列識別番号が1のデータ系列で、パス識別番号が1のパスに対する、直交符号系列を発生している。また、直交符号系列のパターン数が8つ(n=1〜8)あるので、直交符号系列x1,1-1、x1,1-2、x1,1-3、x1,1-4、x1,1-5、x1,1-6、x1,1-7、x1,1-8を生成することになる。
【0126】
さらに、8つの符号化単位を1つのまとまりとして相関性を与えるとした場合、各直交符号系列の直交符号数は8個となる。例えば、直交符号系列x1,1-1は、直交符号として、exp(jθ1,1-1)、exp(jθ1,1-1)、exp(jθ1,1-1)、exp(jθ1,1-1)、exp(jθ1,1-1)、exp(jθ1,1-1)、exp(jθ1,1-1)、exp(jθ1,1-1)の8つを生成している。
【0127】
また、直交符号系列x1,1-2は、直交符号として、exp(jθ1,1-2)、exp(jθ1,1-2)、exp(jθ1,1-2)、exp(jθ1,1-2)、−exp(jθ1,1-2)、−exp(jθ1,1-2)、−exp(jθ1,1-2)、−exp(jθ1,1-2)の8つを生成している(その他の直交符号系列も同様に8つの直交符号を発生する)。
【0128】
図14は直交符号系列発生部で発生される直交符号系列を示す図である。図14に示す直交符号系列発生部11−2は、データ系列識別番号が2のデータ系列で、パス識別番号が1のパスに対する、直交符号系列を生成する。また、直交符号系列のパターン数が8つであるから(n=1〜8)、直交符号系列x2,1-1、x2,1-2、x2,1-3、x2,1-4、x2,1-5、x2,1-6、x2,1-7、x2,1-8を発生することになる。
【0129】
さらに、8つの符号化単位を1つのまとまりとして相関性を与えるので、各直交符号系列の直交符号数は8個となる。例えば、直交符号系列x2,1-1は、直交符号として、exp(jθ2,1-1)、exp(jθ2,1-1)、−exp(jθ2,1-1)、−exp(jθ2,1-1)、exp(jθ2,1-1)、exp(jθ2,1-1)、−exp(jθ2,1-1)、−exp(jθ2,1-1)の8つを生成している。
【0130】
また、直交符号系列x2,1-2は、直交符号として、exp(jθ2,1-2)、exp(jθ2,1-2)、−exp(jθ2,1-2)、−exp(jθ2,1-2)、−exp(jθ2,1-2)、−exp(jθ2,1-2)、exp(jθ2,1-2)、exp(jθ2,1-2)の8つを生成している(その他の直交符号系列も同様に8つの直交符号を持つ)。
【0131】
次に演算部12について説明する。演算部12は、行列演算を行って、無相関のベクトルxから相関のあるベクトルyを算出する。図15は行列演算の一例を示す図である。演算部12は、直交符号生成部11から出力された直交符号系列の列ベクトルに、相関パラメータからなる行列を乗算して、所望の相関性を与えるための符号系列を生成する(以降、行列演算後の符号系列をym,k-nで示す)。
【0132】
図15では、4×4の行列演算の例を示しており、直交符号系列の列ベクトル(x1,1-1、x1,1-5、x2,1-1、x2,1-5)に対し、4×4の相関パラメータの要素からなる行列Hを乗算して、符号系列の列ベクトル(y1,1-1、y1,1-5、y2,1-1、y2,1-5)を生成している。
【0133】
このような、行列演算を施すことで、データ系列に対して、任意の相関性を与えるための符号系列を生成することができる。なお、所望の相関性を無相関にしたい場合は、すなわち、直交符号生成部11から出力された直交符号系列そのものから合成信号を生成して、合成信号を無相関にしたい場合は、行列Hを単位行列にして行列演算を行えばよい。
【0134】
次に乗算処理部14について説明する。乗算処理部14は、データ系列生成部13から出力されたデータ系列と、演算部12から出力された符号系列とを符号化単位毎に乗算する。
【0135】
図16は乗算処理の一例を示す図である。データ系列{X1、X1、・・・}に対して、符号系列yを乗算する様子を示している(以降、乗算処理後の乗算値をνm,k-nと示す)。
【0136】
乗算器14−1〜14−8はそれぞれ、データ系列のデータX1に対して、符号系列y1,1-1、y1,1-2、y1,1-3、y1,1-4、y1,1-5、y1,1-6、y1,1-7、y1,1-8を乗算する。そして、乗算値ν1,1-1、ν1,1-2、ν1,1-3、ν1,1-4、ν1,1-5、ν1,1-6、ν1,1-7、ν1,1-8を出力する。データ系列{X2、X2、・・・}に対しても同様な処理が行われる。
【0137】
次に合成処理部15及び出力処理部16について説明する。図17は合成処理部15及び出力処理部16の構成を示す図である。合成処理部15は、重み付け合成部15−1〜15−8を含む。
【0138】
重み付け合成部15−1〜15−8はそれぞれ、合成信号を生成するために必要な複数の乗算値νに重み定数Wを乗算し、重み付けされた乗算値νの総和を算出して出力する。
出力処理部16は、D/A部16a−1〜16a−8と、フィルタ(折り返しフィルタ)16b−1〜16b−8とから構成される。D/A部16a−1〜16a−8は、合成処理部15から出力されたディジタルの合成信号をアナログの合成信号に変換する。折り返しフィルタ16b−1〜16b−8は、アナログ合成信号をフィルタリングして、D/A変換時に生じた折り返し歪みを除去して、合成信号v1〜v8を生成し、アップコンバータ22側へ送信する。
【0139】
次に変形例について説明する。上記の説明では、データ系列の符号化単位を基準にして、任意の個数の符号化単位(上記の例では8つの符号化単位)で、データ系列を1つのまとまりにした。
【0140】
これに対し、変形例の場合は、評価項目にチャネル推定を実施する場合を考慮したものであって、符号化単位前後のチャネル推定に必要なデータ部分まで広げた範囲を1つの単位(処理単位)とし、任意の個数の処理単位でデータ系列を1つのまとまりにするものである。
【0141】
図18は変形例を説明するための図である。実環境の無線通信システムのデータ系列D1は、データX1,1、X1,2、X1,3・・・というように、符号化単位毎に異なるデータとなっている。すなわち、データX1,1、データX1,2、データX1,3のそれぞれは、通常は異なるデータ値となる。
【0142】
一方、アンテナ特性評価システム1では、BLERなどを測定する場合は、異なるデータ値である必要はないので、例えば、データ系列D1aのように、同じデータX1,2が複数連続するデータ系列を扱う。
【0143】
ここで、実際の無線通信システムでは、復調するときに、チャネル推定が行われる。このチャネル推定は、チャネル推定対象の符号化単位のデータ以外のデータ(パイロット信号)を用いる場合もある。
【0144】
データX1,1にはパイロット信号p1が挿入され、データX1,2にはパイロット信号p2、p3が挿入され、データX1,3にはパイロット信号p4が挿入されているとする。
この場合、データX1,2のチャネル推定を行う場合、パイロット信号p2、p3だけでなく、パイロット信号p1、p4も使用して、データX1,2のチャネル推定を行ったりする。
【0145】
したがって、チャネル推定の評価も実施したい場合には、符号化単位前後のチャネル推定に必要なデータ部分まで広げた範囲を1つの処理単位とし、その処理単位でデータ系列を1つのまとまりにすれば、実環境システムを模擬することができる。
【0146】
変形例では、真ん中のデータX1,2に対しては、データX1,2の前段にあるデータのパイロット信号p1が挿入されている周辺から、データX1,2の後段にあるデータのパイロット信号p4が挿入されている周辺までの範囲Rを新たな処理単位とすればよい。
【0147】
そして、任意の個数の処理単位でデータ系列を1つのまとまりにし、そのまとまりに所望の相関性を与える符号系列を乗算して、複数の合成信号を生成する。このような構成にすることで、実環境システムで行われるチャネル推定と等しいチャネル推定評価を行うことが可能になる。
【0148】
(付記1) アンテナ特性の評価を行うアンテナ特性評価システムにおいて、
評価対象のアンテナである評価アンテナと、
前記評価アンテナに電波を放射する複数の送信アンテナと、
ベースバンド信号であるデータ系列を発生し、前記データ系列から合成信号を生成する合成信号生成部と、
前記送信アンテナに接続し、前記合成信号の周波数を前記電波の周波数までアップコンバートするアップコンバータと、
前記評価アンテナと接続し、前記電波を受信したときの前記評価アンテナの前記アンテナ特性の評価を行う評価部と、
を備え、
前記合成信号生成部は、
前記データ系列を一定の処理単位で分けた際に、任意の個数の前記処理単位で前記データ系列を1つのまとまりにし、前記データ系列のまとまりに所望の相関性を与える符号系列を乗算して、複数の合成信号を生成する合成信号生成処理を行う、
ことを特徴とするアンテナ特性評価システム。
【0149】
(付記2) 前記合成信号生成部は、符号化単位で構成される前記データ系列に対して、前記処理単位を前記符号化単位とし、任意の個数の前記符号化単位でデータ系列を1つのまとまりにして、前記合成信号生成処理を行うことを特徴とする付記1記載のアンテナ特性評価システム。
【0150】
(付記3) 前記合成信号生成部は、符号化単位で構成される前記データ系列に対して、前記符号化単位前後のチャネル推定に必要なデータ部分まで広げた範囲を前記処理単位とし、任意の個数の前記処理単位で前記データ系列を1つのまとまりにして、前記合成信号生成処理を行うことを特徴とする付記1記載のアンテナ特性評価システム。
【0151】
(付記4) 前記合成信号生成部は、
直交符号系列を生成する直交符号生成部と、
前記直交符号系列に所望の相関性を与えるための相関パラメータを乗算して、所望の相関性を与えた前記符号系列を生成する演算部と、
含むことを特徴とする付記1記載のアンテナ特性評価システム。
【0152】
(付記5) 前記直交符号生成部は、前記送信アンテナ毎に、異なる前記直交符号系列を生成することを特徴とする付記4記載のアンテナ特性評価システム。
(付記6) 前記直交符号生成部は、前記直交符号系列をWalsh符号で生成することを特徴とする付記4記載のアンテナ特性評価システム。
【0153】
(付記7) 信号の発生制御を行う信号発生装置において、
ベースバンド信号であるデータ系列を生成するデータ系列生成部、直交符号系列を生成する直交符号生成部、前記直交符号系列に所望の相関性を与えるための相関パラメータを乗算して、所望の相関性を与えた符号系列を生成する演算部、前記データ系列と前記符号系列とを乗算する乗算処理部、複数の乗算結果に重み付けを行って合成し、合成信号を生成する合成処理部、を備える合成信号発生制御部と、
前記合成処理部から出力された前記合成信号の出力インタフェース処理を行う出力処理部と、
を有し、
前記合成信号発生制御部は、前記データ系列を一定の処理単位で分けた際に、任意の個数の前記処理単位で前記データ系列を1つのまとまりにし、前記データ系列のまとまりに所望の相関性を与える前記符号系列を乗算して、複数の前記合成信号を生成する合成信号生成処理を行う、
ことを特徴とする信号発生装置。
【0154】
(付記8) 前記合成信号発生制御部は、符号化単位で構成される前記データ系列に対して、前記処理単位を前記符号化単位とし、任意の個数の前記符号化単位でデータ系列を1つのまとまりにして、前記合成信号生成処理を行うことを特徴とする付記7記載の信号発生装置。
【0155】
(付記9) 前記合成信号発生制御部は、符号化単位で構成される前記データ系列に対して、前記符号化単位前後のチャネル推定に必要なデータ部分まで広げた範囲を前記処理単位とし、任意の個数の前記処理単位で前記データ系列を1つのまとまりにして、前記合成信号生成処理を行うことを特徴とする付記7記載の信号発生装置。
【0156】
(付記10) 前記直交符号生成部は、送信アンテナ毎に、異なる前記直交符号系列を生成することを特徴とする付記7記載の信号発生装置。
(付記11) 前記直交符号生成部は、前記直交符号系列をWalsh符号で生成することを特徴とする付記7記載の信号発生装置。
【符号の説明】
【0157】
1 アンテナ特性評価システム
10 合成信号生成部
20 電波暗室
22−1〜22−4 アップコンバータ
23−1〜23−4 送信アンテナ
24a、24b 評価アンテナ
30 評価部
31 アンテナ特性評価ボード
32 評価用端末
Δf1〜Δf4 ドップラ周波数
v1〜v4 合成信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ特性の評価を行うアンテナ特性評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナは、無線伝送特性を左右するキー部品の1つであり、高品質なワイヤレス通信を実現するためには、高性能なアンテナが要求される。このため、電波伝搬環境に応じて、電波の放射・吸収特性を最適化したアンテナ設計を行う。最適化設計のためには、アンテナの特性を測定・評価するアンテナ特性評価技術が重要となる。
【0003】
一方、近年のワイヤレス通信の分野では、MIMO(Multi Input Multi Output:複数のアンテナを用いて、データの送受信を行うワイヤレス通信技術)方式を使った高速無線通信が開発されており、将来、携帯端末などの小型の機器においても、マルチアンテナの実装が必須となると予測される。
【0004】
図19はマルチアンテナの放射パターンを説明するための図である。通信端末MSにアンテナA1、A2のマルチアンテナが設けられている。マルチアンテナ技術では、アンテナA1、A2で受信状態を異なるようにし、片側のアンテナで受信困難な場合でも、反対側のアンテナで受信可能としたダイバーシティ受信を行うことで、通信品質を向上させる。
【0005】
アンテナA1、A2の受信状態が異なるほど、ダイバーシティ受信の効果が上がるので、例えば図19のように、一方のアンテナであるアンテナA1の指向性が、左方向に電波を強く放射し(左方向に放射電力が強い)、右方向には電波を弱く放射するといった(右方向は放射電力が弱い)、放射パターンp1である場合には、他方のアンテナには、左方向に電波を弱く放射し、右方向には電波を強く放射する放射パターンp2となるような指向性を持つアンテナA2を、放射パターン同士が重ならない位置に配置する。
【0006】
ここで、電波が左から右の方向に送信されて、通信端末MSに到来した場合を考える。電波の放射パターンの強弱は、電波の吸収パターンの強弱と同じであるため、到来電波(到来電波b1とする)に対して、アンテナA2では、吸収電力が弱いので受信困難となるが、アンテナA1では、吸収電力が強いので受信可能となる。
【0007】
また、通信端末MSが移動し、その移動地点において、電波が右から左の方向に送信されて通信端末MSに到来したとすると、この到来電波(到来電波b2とする)に対しては、アンテナA1では、吸収電力が弱いので受信困難であるが、アンテナA2では、吸収電力が強いので受信可能となる。
【0008】
このように、マルチアンテナの設計を行う場合は、電波伝搬環境において、アンテナA1、A2の指向性を互いに補完して、アンテナ間での受信状態の相関(アンテナ間相関)が小さくなるように、放射(吸収)パターンの最適化を行う。
【0009】
図20はアンテナ間相関が小さい場合の電波受信強度を示す図である。縦軸は電波受信強度、横軸は時間である。図19で示したアンテナA1、A2で、到来電波b1、b2を受信したときの受信強度を示している。
【0010】
時間t0〜t1で到来電波b1があったときは、アンテナA2の受信強度は低下するが、アンテナA1の受信強度は上昇する。また、時間t1以降で到来電波b2があったときは、アンテナA1の受信強度は低下するが、アンテナA2の受信強度は上昇する。このように、アンテナ間相関を小さくして、受信強度の劣化をアンテナ間で補うことができる。
【0011】
図21はアンテナ間相関が大きい場合の電波受信強度を示す図である。縦軸は電波受信強度、横軸は時間である。通信端末MSaには、図19で示したアンテナA1と同じ放射パターンを持つアンテナA2−1が設置しているとする。
【0012】
時間t0〜t1で到来電波b1があったときは、アンテナA1、A2−1ともに受信強度は上昇するが、時間t1以降で到来電波b2があったときは、アンテナA1、A2−1ともに受信強度は低下してしまう。このように、アンテナ間相関が大きい場合は、放射パターンが落ち込む部分において、アンテナA1、A2−1ともに受信強度が劣化することになる。
【0013】
アンテナの最適化設計を行う場合には、アンテナ特性の評価を行う。このとき、特にマルチアンテナの特性を評価する場合は、アンテナ単体の特性ばかりでなく、上述のように、アンテナ間相関が、アンテナ特性を決める際の重要な評価指標となる。また、誤り率(BLER:block error probability)やスループット等の無線特性を決める際にも、アンテナ間相関は重要な要素となる。
【0014】
一方、実際の電波伝搬環境においては、基地局から送信された搬送電波(キャリア)は、マルチパス(信号波が山やビルなどの反射によって複数の経路を伝搬する現象)を経由して通信端末に到達する。よって、通信端末が移動していた場合には、各パスでキャリアの到来角度に依存してキャリア周波数が異なるドップラシフトを受けることになる(キャリア周波数にあらたなドップラ周波数が加わり、受信周波数が変位することになる)。
【0015】
このため、通信端末では、周波数領域において広がった複数の信号を受信することにより、レベルが激しく変動するフェージング(時間差をもって到達した電波の波長が干渉し合うことによって電波レベルの強弱が変化する現象またはその変動波)を受ける。フェージングによる受信レベル変動は、無線通信における情報伝送のBLERを増大する原因となる。
【0016】
したがって、アンテナ間相関を精度よく評価するには、計算機シミュレーション等によって、実際の電波伝搬環境を模擬したフェージング環境を再現することが必要である。そして、このフェージング環境で測定した値を統計処理して最適化設計を実現することで、アンテナの品質向上が可能となる。
【0017】
図22は従来のアンテナ特性評価を行っているときの様子を示す図である。通信端末MSの周辺に信号発生源5−1〜5−5が配置する。信号発生源5−1〜5−5のそれぞれは、キャリア周波数に対して互いに異なるドップラ周波数Δf1〜Δf5シフトした周波数を持つ正弦波の電波を発生する。なお、信号発生源5−1〜5−5からは、素波(複数の信号波が合成されていない単一の信号波)の状態で各正弦波電波が放射される。
【0018】
図22で示した評価環境では、通信端末MSの周囲に配置された複数の信号発生源5−1〜5−5から、異なるドップラ周波数シフトした電波を放射させて、電波を合成させる。そして、通信端末MSが合成波を受信することで、模擬的なフェージング環境を生成している。
【0019】
ここで、ドップラ周波数の定義について説明する。図23はドップラ周波数を説明するための図である。マルチパス中の1つのパスから到来したキャリア周波数fcが、通信端末MSの進行方向に対して角度θで到来する場合を考える。
【0020】
通信端末MSの移動速度をv、キャリアの波長をλ、到来角度をθとすると、ドップラ周波数Δfは、進行方向を基準としたときの見かけ上の電波の波長によって次式のように表せる。
【0021】
Δf=v/(λ/cosθ)=vcosθ/λ・・・(4)
図24は通信端末MSの進行方向と電波の到来角とに応じたドップラ周波数の変化を示す図である。(A)は通信端末MSの進行方向に対し同一方向のパスから電波を受けた場合、(B)は通信端末MSの進行方向に対し垂直方向から電波を受けた場合を示している。
【0022】
(A)のように、通信端末MSの進行方向と同一方向のパスから電波を受ければ、θ=0、πとなり、式(4)より、ドップラ周波数の絶対値|Δf|は最大となる。
また、(B)のように、通信端末MSの進行方向に対し垂直方向から電波を受ける場合は、進行方向に対する見かけ上の電波の波長は生成されないので、通信端末MSが移動していないのと同じことになり、ドップラシフトの影響は受けない(θ=π/2、3π/2となり、Δf=0)。
【0023】
ここで、図22で示した評価環境において、通信端末MSが、ある方向に移動すると仮定すると、信号発生源5−1〜5−5には、通信端末MSの移動方向に対する電波の到来角度に応じたドップラ周波数を設定して、そのドップラ周波数を持つ電波を放射させることになる。
【0024】
例えば図22に示すように、通信端末MSが矢印Xの信号発生源5−4の方向に移動すると仮定すると、信号発生源5−1〜5−5の周波数設定としては、式(4)からわかるように、信号発生源5−4のドップラ周波数Δf4が最も高くなるように設定し、その他の信号発生源からのドップラ周波数は、ドップラ周波数Δf4と比べて低くなるように設定する。
【0025】
通信端末MSは、固定しており、実際は移動させることはなく、その代わりに、通信端末MSの移動方向に沿って変化するドップラ周波数の変化を、信号発生源5−1〜5−5側で可変に設定して、設定された電波を放射させるものである。
【0026】
このように、通信端末MSが移動したとみなしたときのドップラシフトを信号発生源側で生成し、このときに評価アンテナに生じる受信強度の落ち込みなどを測定評価したりする。
【0027】
アンテナ特性評価の従来技術として、複数の散乱体アンテナを配置して、電波の振幅と位相を制御してアンテナ特性の評価を行う技術が提案されている。
また、端末の周囲において、反射板および散乱体を移動させて、電波の振幅、位相等を制御してフェージング環境を模擬する技術が提案されている。
【0028】
さらに、端末の周囲に複数のアンテナを配置し、アンテナから放射する電波が、端末からみた各アンテナ方向の実環境の特性を持つように制御する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特開2005−227213号公報(段落番号〔0031〕,第1図)
【特許文献2】特開平07−162376号公報(段落番号〔0045〕、〔0046〕,第1図)
【特許文献3】特開平11−340930号公報(段落番号〔0024〕〜〔0031〕,第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
図22で示したような評価環境を具体的なシステムで実現する場合、通常は、電波暗室内に複数のアンテナを配置した測定環境を構築し、この電波暗室内でアンテナ特性評価を行う。なお、電波暗室とは、室内の天井、壁、および床の全面に、電波吸収体を取り付けて、室内での電波の反射を抑えた部屋のことである。
【0031】
図25は従来のアンテナ特性評価システムの構成を示す図である。アンテナ特性評価システム5aは、電波暗室50、ベースバンド信号生成部51、アップコンバータ52−1〜52−4、送信アンテナ53a〜53d、評価アンテナ54a、54b、アンテナ特性評価ボード55、評価用端末56から構成される(以降、評価用の電波を放射するアンテナを送信アンテナ、評価対象のアンテナを評価アンテナと呼ぶ)。
【0032】
電波暗室50内に、電波を送信する送信アンテナ53a〜53dと、評価対象の評価アンテナ54a、54bとが配置される。送信アンテナ53a〜53dは、アップコンバータ52−1〜52−4のそれぞれと接続し、アップコンバータ52−1〜52−4は、ベースバンド信号生成部51と接続する。評価アンテナ54a、54bは、アンテナ特性評価ボード55と接続し、アンテナ特性評価ボード55は、評価用端末56と接続する。
【0033】
ベースバンド信号生成部51は、ベースバンド信号を発生する。アップコンバータ52−1〜52−4は、ベースバンド信号をRF(Radio Frequency)信号の周波数帯にアップコンバートする。
【0034】
アップコンバータ52−1は、ベースバンド信号をキャリア周波数に対してドップラ周波数Δf1シフトした周波数のRF信号にアップコンバートする。アップコンバータ52−2は、ベースバンド信号をドップラ周波数がΔf2のRF信号にアップコンバートする。
【0035】
アップコンバータ52−3は、ベースバンド信号をドップラ周波数がΔf3のRF信号にアップコンバートする。アップコンバータ52−4は、ベースバンド信号をドップラ周波数がΔf4のRF信号にアップコンバートする。
【0036】
送信アンテナ53aは、アップコンバータ52−1でアップコンバートされたキャリア周波数に対してドップラ周波数Δf1シフトした周波数の電波を放射する。送信アンテナ53bは、アップコンバータ52−2でアップコンバートされたドップラ周波数がΔf2の電波を放射する。
【0037】
送信アンテナ53cは、アップコンバータ52−3でアップコンバートされたドップラ周波数がΔf3の電波を放射する。送信アンテナ53dは、アップコンバータ52−4でアップコンバートされたドップラ周波数がΔf4の電波を放射する。
【0038】
評価アンテナ54a、54bは、送信された電波を受信する。アンテナ特性評価ボード55は、評価アンテナ54a、54bで受信された電波をダウンコンバートして、ベースバンド信号に変換する。評価用端末56は、ダウンコンバート後のベースバンド信号にもとづいて、アンテナ特性を解析する。
【0039】
図26は従来のアンテナ特性評価システムの構成を示す図である。アンテナ特性評価システム5bは、図25で示したベースバンド信号生成部51と、アップコンバータ52−1〜52−4との間に、合成信号発生部57が設けられたもので、その他の構成は同じである。
【0040】
合成信号発生部57は、周波数が互いに異なる複数の正弦波を生成し、ベースバンド信号生成部51から出力されたベースバンド信号と、正弦波とを乗算・合成して、複数の合成信号を発生する(所望の相関性が与えられた複数の合成信号によって、模擬的なマルチパスのフェージング環境を生成する)。
【0041】
アップコンバータ52−1〜52−4は、合成信号発生部57から出力された合成信号をRF信号の周波数帯にアップコンバートする(以降の動作は同じなので説明は省略する)。
【0042】
ここで、図25で示したアンテナ特性評価システム5aでは、マルチパス環境を再現し、マルチパス間の相関を所望の値にしてアンテナ特性の評価を行おうとすると、信号発生源および送信アンテナの数が増加してしまう。
【0043】
これに対し、図26で示したアンテナ特性評価システム5bでは、上記のような合成信号発生部57を設けることで、信号発生源および送信アンテナの数を増設することなく、マルチパスのフェージングを生成することが可能になる。
【0044】
しかし、図26に示した従来のアンテナ特性評価システム5bは、ベースバンド信号を発生するベースバンド信号生成部51と、ベースバンド信号を処理して合成信号を発生する合成信号発生部57と、の2つの構成ブロックを持つ必要がある。このため、装置規模が増大し、評価系が複雑化するといった問題があった。
【0045】
ベースバンド信号生成部51では、例えば、LTE(Long Term Evolution:携帯電話機などの移動通信に関する高速通信サービスの規格)のような無線方式の場合、符号化単位(1サブフレーム=1ms)の周期の信号となり、これをメモリに保存して、繰返し信号を発生することになる。
【0046】
一方、合成信号発生部57では、通信端末MSの移動を想定したドップラシフトに対応した数10Hz程度の信号(例えば、数10msの信号)が必要となる。すなわち、マルチパス環境を模擬したアンテナ間相関の評価を行うためには、所望の相関性を得るために、ベースバンド信号をもとにして、長い周期(数10msといった周期)の信号を生成する必要があった(伝搬路を流れる複数の信号の互いの相関性を任意に設定しようとするには、数10ms〜数秒で所望の相関性が得られるような信号を生成していた)。このため、合成信号発生部57は、1ms周期の信号を発生するベースバンド信号生成部51とは異なる動作が必要となる。
【0047】
このように、ベースバンド信号生成部51及び合成信号発生部57は、時間スケールが互いに異なる制御を行うので、従来では、別個の構成ブロックとして設けられており、このため評価システムの規模が大きなものとなっていた。
【0048】
アンテナ特性を評価する場合には、限られたスペースで実施される場合が多いので、構成が小規模で、高精度のアンテナ特性評価が可能なシステム構築が望まれている。
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、少ない装置数で、効率よくアンテナ特性評価を行うアンテナ特性評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0049】
上記課題を解決するために、アンテナ特性評価システムが提供される。このアンテナ特性評価システムは、評価対象のアンテナである評価アンテナと、前記評価アンテナに電波を放射する複数の送信アンテナと、ベースバンド信号であるデータ系列を発生し、前記データ系列から合成信号を生成する合成信号生成部と、前記送信アンテナに接続し、前記合成信号の周波数を前記電波の周波数までアップコンバートするアップコンバータと、前記評価アンテナと接続し、前記電波を受信したときの前記評価アンテナの前記アンテナ特性の評価を行う評価部とを備える。
【0050】
ここで、合成信号生成部は、データ系列を一定の処理単位で分けた際に、任意の個数の処理単位でデータ系列を1つのまとまりにし、データ系列のまとまりに所望の相関性を与える符号系列を乗算して、複数の合成信号を生成する合成信号生成処理を行う。
【発明の効果】
【0051】
装置規模を低減して、効率よくアンテナ特性の評価を行う。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】アンテナ特性評価システムの構成例を示す図である。
【図2】電波信号の伝搬路変動を示す図である。
【図3】通信システムの構成を示す図である。
【図4】相関性設定の一例を示す図である。
【図5】相関性設定の一例を示す図である。
【図6】相関性設定の一例を示す図である。
【図7】Walsh符号を説明するための図である。
【図8】合成信号を生成するブロック構成を示す図である。
【図9】合成信号を生成するブロック構成を示す図である。
【図10】合成信号を生成するブロック構成を示す図である。
【図11】アンテナ特性評価システムの構成例を示す図である。
【図12】合成信号生成部の構成を示す図である。
【図13】直交符号系列発生部で発生される直交符号系列を示す図である。
【図14】直交符号系列発生部で発生される直交符号系列を示す図である。
【図15】行列演算の一例を示す図である。
【図16】乗算処理の一例を示す図である。
【図17】合成処理部及び出力処理部の構成を示す図である。
【図18】変形例を説明するための図である。
【図19】マルチアンテナの放射パターンを説明するための図である。
【図20】アンテナ間相関が小さい場合の電波受信強度を示す図である。
【図21】アンテナ間相関が大きい場合の電波受信強度を示す図である。
【図22】従来のアンテナ特性評価を行っているときの様子を示す図である。
【図23】ドップラ周波数を説明するための図である。
【図24】通信端末の進行方向と電波の到来角とに応じたドップラ周波数の変化を示す図である。(A)は通信端末の進行方向に対し同一方向のパスから電波を受けた場合、(B)は通信端末の進行方向に対し垂直方向から電波を受けた場合を示している。
【図25】従来のアンテナ特性評価システムの構成を示す図である。
【図26】従来のアンテナ特性評価システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1はアンテナ特性評価システムの構成例を示す図である。アンテナ特性評価システム1は、送信アンテナ23−1〜23−4、評価アンテナ24a、24b、合成信号生成部10、アップコンバータ22−1〜22−4、評価部30を備え、電波暗室20内でアンテナ特性の評価を行うシステムである(図の例では、電波暗室20内に送信アンテナが4つ、評価アンテナが2つ配置しているが、これらの個数は任意である)。
【0054】
評価アンテナ24a、24bは、電波暗室20内に配置され、アンテナ特性評価対象のアンテナである。送信アンテナ23−1〜23−4は、評価アンテナ24a、24bに電波を放射する仮想的散乱体としてのアンテナであり、電波暗室20内の適切な位置に分散して配置される。
【0055】
合成信号生成部10は、ベースバンド信号であるデータ系列を発生し、データ系列から合成信号v1〜v4を生成する。アップコンバータ22−1〜22−4(総称する場合は、アップコンバータ22)は、送信アンテナ23−1〜23−4にそれぞれ接続し、合成信号v1〜v4の各周波数を電波の周波数までアップコンバートする。
【0056】
すなわち、合成信号v1〜v4を、移動機の移動速度、移動方向及び電波到来方向から決まるドップラ周波数Δf1〜Δf4の電波にして、送信アンテナ23−1〜23−4を介して放射する。
【0057】
評価部30は、アンテナ特性評価ボード31および評価用端末32を含む。アンテナ特性評価ボード31は、評価アンテナ24a、24bと接続する。アンテナ特性評価ボード31は、評価アンテナ24a、24bで受信された電波をダウンコンバートして、ベースバンド信号に変換する。評価用端末32は、ダウンコンバート後のベースバンド信号にもとづいて、アンテナ特性を解析する。
【0058】
ここで、合成信号生成部10は、データ系列を一定の処理単位で分けた際に、任意の個数の処理単位でデータ系列を1つのまとまりにし、データ系列のまとまりに所望の相関性を与える符号系列を乗算して、複数の合成信号を生成する合成信号生成処理を行う。
【0059】
具体的には、符号化単位(サブフレーム)で構成されるデータ系列に対して、任意の個数の符号化単位でデータ系列を1つのまとまりにし、このデータ系列のまとまりに所望の相関性を与える(所望の相関性を設定する)符号系列を乗算して、複数の合成信号を生成して、フェージングを生成する。合成信号生成部10の詳細な構成及び動作については後述する。
【0060】
次にアンテナ特性評価システム1の装置規模が従来構成と比較して簡略化できる理由について説明する。図2は電波信号の伝搬路変動を示す図である。縦軸は電波強度、横軸は時間である。
【0061】
ワイヤレス通信の環境としては、多重波伝搬の基本電波強度分布であるレイリー分布を有するレイリーフェージング環境が一般的であると言われている。アンテナ特性評価を行う場合でも、このようなレイリーフェージング環境を模擬的に生成して、アンテナ特性の評価を行うことになる。
【0062】
一方、LTE、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、W−CDMA(Wideband−Code Division Multiple Access)、WLAN(Wireless Local Area Network)等の無線通信方式では、それぞれの符号化方式(例えば、ターボ符号等)において、符号化単位でのパケット通信が行われている。
【0063】
したがって、図2に示すように、電波信号の伝搬路変動が、符号化単位内で連続であり、かつレイリー分布になっていれば、符号化単位内でBLER判定等の特性評価を実施すればよく、符号化単位間では不連続が生じていてもよい。
【0064】
すなわち、符号化単位内で電波信号の振幅が連続で、電波強度分布がレイリー分布になっていれば、符号化単位間で不連続であっても、伝送特性は連続的に電波の強さが変動するレイリーフェージング環境の特性と同じになる。
【0065】
ここで、従来では、1符号化単位(1ms)でベースバンド信号(データ系列)を発生し、その1符号化単位のベースバンド信号にもとづいて、マルチパス間に所望の相関性を持つ数10ms〜数秒の複数の信号(合成信号)を生成していた。
【0066】
このように、従来は、ベースバンド信号を発生する機能と、ベースバンド信号に相関性を与えて合成信号を生成する機能とは、処理対象の信号の時間スケールが双方異なるために、別々の機能ブロックで構成されていた。
【0067】
これに対し、アンテナ特性評価システム1では、図2に示すような無線通信方式で行われる符号化単位での無線伝送に着目し、データ系列の符号化単位をいくつかまとめて、そのまとまりに対して所望の相関性を与える構成とした。例えば、4つの符号化単位を1つのまとまりとし、このまとまりに所望の相関性を与えて、4msのフェージング周期の合成信号を生成する。
【0068】
このような制御を行うことにより、ベースバンド信号を発生する時間周期と、合成信号を生成する時間周期との差はなくなり、同じ時間スケールで処理することができるので、これら2つの機能を1つの機能ブロックで構成することが可能になる。
【0069】
すなわち、アンテナ特性評価システム1では、マルチパス間に所望の相関性を与えるために、1ms程度の符号化単位を複数まとめて、そのまとまりに所望の相関性を与え、数msの短いフェージング周期の信号を生成することによってフェージング環境を構築する。
【0070】
このような構成により、装置規模を低減することができる。また、アンテナ特性評価システム1の簡易な構成によっても、マルチパス環境に対して任意の相関性を与えることができるので、アンテナ特性評価時の利便性の向上を図ることも可能になり、効率のよいアンテナ特性評価が可能になる。
【0071】
次にアンテナ特性評価システム1が模擬する通信システムの一例について説明する。図3は通信システムの構成を示す図である。マルチパス環境として、2×2のMIMOパスの伝搬路での通信を行うシステムを示している。
【0072】
通信システム60は、基地局6と移動端末7から構成される。基地局6は、アンテナ6a、6bを有し、アンテナ6aからデータ系列a1が送信され、アンテナ6bからデータa2が送信される。
【0073】
移動端末7は、アンテナ7a、アンテナ7b、信号処理部7cを有する。アンテナ7a、7bそれぞれは、基地局6から送信されたデータa1及びデータa2を受信して、信号処理部7cへ送信する。信号処理部7cは、受信したデータに対して、ダウンコンバート、復調及び復号等の受信処理を行う。
【0074】
一方、図3に示す、基地局6と移動端末7との間の電波伝搬環境においては、アンテナ6aからデータa1の電波が伝搬路へ放射される場合は、電波強度が小さいパスp1aでアンテナ7aに到達し、電波強度が大きいパスp1bでアンテナ7bに到達している。
【0075】
また、アンテナ6bからデータa2の電波が伝搬路へ放射される場合は、電波強度が小さいパスp2aでアンテナ7bに到達し、電波強度が大きいパスp2bでアンテナ7aに到達している。
【0076】
一方、移動端末7側のアンテナ7a、7bでは、伝搬路の強度に応じた大きさで、データa1、a2が合成されて受信される。図3の場合では、アンテナ7aにおいて、データa2の強度が大きく、データa1の強度が小さい合成レベルで受信されている。また、アンテナ7bにおいては、データa1の強度が大きく、データa2の強度が小さい合成レベルで受信されている。
【0077】
アンテナ特性評価システム1が、上記のような通信システム60を模擬してアンテナ特性評価を実施する場合は、送信アンテナ間での相関性を任意に可変して、アンテナ7a、7bの特性評価を行うことになる。
【0078】
したがって、アンテナ6aから放射されるパスp1a、p1bと、アンテナ6bから放射されるパスp2b、p2aそれぞれとは、互いに任意の相関(例えば、無相関(相関性がゼロ))に設定可能となるようにしたりする。
【0079】
次にアンテナ特性評価システム1の合成信号生成部10で行われる、相関性を設定する制御について説明する。図4は相関性設定の一例を示す図である。なお、以降の説明では、8つの符号化単位を1つのまとまりとして相関性を与える例を示す。また、任意の相関性として、相関性をゼロに設定するものとする。
【0080】
合成信号生成部10は、データ系列d1、d2を内部に発生する。データ系列d1では、データX1を1つの符号化単位とし、8つのデータX1を1つのまとまりとしている。また、データ系列d2では、データX2を1つの符号化単位とし、8つのデータX2を1つのまとまりとしている(なお、データ系列d1、d2共に、左から順に#1〜#8の番号を付ける)。
【0081】
データ系列d1に対応するパス、d2に対応するパスを無相関にする場合、図4の例では、データ系列d1の8つの符号化単位のデータX1毎に、直交符号系列(+1、+1、+1、+1、+1、+1、+1、+1)を乗算する。また、データ系列d2の8つの符号化単位のデータX2毎に、直交符号系列(+1、+1、+1、+1、-1、-1、-1、-1)を乗算する。
【0082】
すなわち、データ系列d1に対しては、データX1(#1〜#8)のそれぞれに直交符号(+1)を乗算する。また、データ系列d2に対しては、データX2(#1〜#4)のそれぞれに直交符号(+1)を乗算し、データX2(#5〜#8)に、直交符号(−1)を乗算して、データ系列d2−1を生成する。データ系列d1とデータ系列d2−1とは、このような処理が施されることによって、伝搬環境において無相関になっている。
【0083】
ここで、データ系列d1のデータX1(#1〜#8)は、伝搬路の情報としては+1であり、データ系列d2−1においては、データX2(#1〜#4)までは、伝搬路の情報としては+1であり、データX2(#5〜#8)までは、伝搬路の情報としては−1となっている。
【0084】
したがって、データ系列d1、d2−1に対して、符号化単位毎に伝搬路情報を乗算して加算すれば、(1×1)+(1×1)+(1×1)+(1×1)+(1×(−1))+(1×(−1))+(1×(−1))+(1×(−1))=0となるから、データ系列d1、d2−1は、互いに相関がゼロであり、無相関の関係になっていることがわかる。
【0085】
合成信号生成部10では、データ系列d1とデータ系列d2−1とを符号化単位毎に加算することで、合成信号を生成する。この合成信号は、例えば、図1で示した構成に対応させると、ドップラ周波数Δf1の電波を放射するための合成信号v1に該当するものである。
【0086】
また、データ系列d2−1では、符号化単位間で伝搬環境が不連続となる箇所P1が存在するが、8つの符号化単位のデータを1つのまとまりにして、そのまとまりに相関性を設定しているので、伝送特性に影響を与えることはなく、アンテナ特性評価を実施する上で支障はない。
【0087】
なお、上記の2つのデータ系列に対応するパス間の相関性が、伝搬環境において無相関となることを複素数の表現形式で表すと、以下の式(1)で示される。なお、式(1)中のX*は、Xの複素共役を示す(X=a+jbのとき、Xの複素共役X*は、X*=a−jbである)。また、θ1は、初期位相0〜2πの一様乱数であり、exp(jθ1)は、直交符号を表している。
【0088】
(X1*・X2・exp(jθ1))+(X1*・X2・exp(jθ1))+(X1*・X2・exp(jθ1))+(X1*・X2・exp(jθ1))+(X1*・X2・(−exp(jθ1)))+(X1*・X2・(−exp(jθ1)))+(X1*・X2・(−exp(jθ1)))+(X1*・X2・(−exp(jθ1)))=0・・・(1)
図5は相関性設定の一例を示す図である。図4とは異なる直交符号系列のパターンで、データ系列を無相関にする例を示している。データ系列d1に対応するパス、d2に対応するパスを無相関にする場合、図5の例では、データ系列d1の8つの符号化単位のデータX1毎に、直交符号系列(+1、+1、+1、+1、+1、+1、+1、+1)を乗算する。また、データ系列d2の8つの符号化単位のデータX2毎に、直交符号系列(+1、+1、-1、-1、+1、+1、-1、-1)を乗算する。
【0089】
すなわち、データ系列d1に対しては、データX1(#1〜#8)のそれぞれに直交符号(+1)を乗算する。また、データ系列d2に対しては、データX2(#1、#2)に直交符号(+1)を乗算し、データX2(#3、#4)に、直交符号(−1)を乗算し、データX2(#5、#6)に直交符号(+1)を乗算し、データX2(#7、#8)に、直交符号(−1)を乗算してデータ系列d2−2を生成する。データ系列d1とデータ系列d2−2とは、このような処理が施されることによって、無相関になっている。
【0090】
ここで、データ系列d1のデータX1(#1〜#8)は、伝搬路の情報としては+1である。また、データ系列d2−2のデータX2(#1、#2)は、伝搬路の情報としては+1であり、データX2(#3、#4)は、伝搬路の情報としては−1であり、データX2(#5、#6)は、伝搬路の情報としては+1であり、データX2(#7、#8)は伝搬路の情報としては−1となっている。
【0091】
したがって、データ系列d1、d2−2に対して、符号化単位毎に伝搬路情報を乗算して加算すれば、(1×1)+(1×1)+(1×(−1))+(1×(−1))+(1×1)+(1×1)+(1×(−1))+(1×(−1))=0となるから、データ系列d1、d2−2は、互いに相関がゼロであり、無相関の関係になっていることがわかる。
【0092】
また、データ系列d2−2では、符号化単位間で伝搬環境が不連続となる箇所P2〜P4が存在するが、8つの符号化単位のデータを1つのまとまりにして、そのまとまりに相関性を設定しているので、伝送特性に影響を与えることはなく、アンテナ特性評価を実施する上で支障はない。
【0093】
合成信号生成部10では、データ系列d1とデータ系列d2−2とを符号化単位毎に加算することで、合成信号を生成する。この合成信号は、例えば、図1で示した構成に対応させると、ドップラ周波数Δf2の電波を放射するための合成信号v2に該当するものである。
【0094】
なお、上記の2つのデータ系列の相関性が、伝搬環境において無相関となることを複素数の表現形式で表すと、以下の式(2)で示される。
(X1*・X2・exp(jθ1))+(X1*・X2・exp(jθ1))+(X1*・X2・(−exp(jθ1)))+(X1*・X2・(−exp(jθ1)))+(X1*・X2・exp(jθ1))+(X1*・X2・exp(jθ1))+(X1*・X2・(−exp(jθ1)))+(X1*・X2・(−exp(jθ1)))=0・・・(2)
図6は相関性設定の一例を示す図である。図4、図5では、データ系列d1の符号は変化させずに、データ系列d2の所定データのみに直交符号の(−1)を乗算して直交性を作ったが、図6の例では、データ系列d1の所定データにも直交符号の(−1)を乗算するものである。
【0095】
データ系列d1に対応するパス、d2に対応するパスを無相関にする場合、図6の例では、データ系列d1の8つの符号化単位のデータX1毎に、直交符号系列(+1、+1、-1、-1、-1、-1、+1、+1)を乗算する。また、データ系列d2の8つの符号化単位のデータX2毎に、直交符号系列(+1、+1、-1、-1、+1、+1、-1、-1)を乗算する。
【0096】
すなわち、データ系列d1に対しては、データX1(#1、#2)に直交符号(+1)を乗算し、データX1(#3〜#6)に直交符号(−1)を乗算し、データX1(#7、#8)に直交符号(+1)を乗算してデータ系列d1−2を生成する。
【0097】
また、データ系列d2に対しては、データX2(#1、#2)に直交符号(+1)を乗算し、データX2(#3、#4)に、直交符号(−1)を乗算し、データX2(#5、#6)に直交符号(+1)を乗算し、データX2(#7、#8)に、直交符号(−1)を乗算してデータ系列d2−2を生成する。データ系列d1−2とデータ系列d2−2とは、このような処理が施されることによって、無相関になっている。
【0098】
ここで、データ系列d1−2のデータX1(#1、#2)は、伝搬路の情報としては+1であり、データX1(#3〜#6)は、伝搬路の情報としては−1であり、データX1(#7、#8)は、伝搬路の情報としては+1である。
【0099】
また、データ系列d2−2のデータX2(#1、#2)は、伝搬路の情報としては+1であり、データX2(#3、#4)は、伝搬路の情報としては−1であり、データX2(#5、#6)は、伝搬路の情報としては+1であり、データX2(#7、#8)は伝搬路の情報としては−1となっている。
【0100】
したがって、データ系列d1−2、d2−2に対して、符号化単位毎に伝搬路情報を乗算して加算すれば、(1×1)+(1×1)+((−1)×(−1))+((−1)×(−1))+((−1)×1)+((−1)×1)+(1×(−1))+(1×(−1))=0となるから、データ系列d1−2、d2−2は、互いに相関がゼロであり、無相関の関係になっていることがわかる。
【0101】
データ系列d1−2では、符号化単位間で伝搬環境が不連続となる箇所P5、P6が存在し、データ系列d2−2では、符号化単位間で伝搬環境が不連続となる箇所P2〜P4が存在するが、8つの符号化単位のデータを1つのまとまりにして、そのまとまりに相関性を設定しているので、伝送特性に影響を与えることはなく、アンテナ特性評価を実施する上で支障はない。
【0102】
また、上述したように、送信アンテナ毎に異なる直交符号を用いて無相関のマルチパスを生成することにより、位相だけ異なるのではなく、振幅も異なるようにすることができる。
【0103】
なお、上記の2つのデータ系列の相関性が、伝搬環境において無相関となることを複素数の表現形式で表すと、以下の式(3)で示される。
(X1*・X2・exp(jθ1))+(X1*・X2・exp(jθ1))+(X1*・(−exp(jθ2))・X2・(−exp(jθ1)))+(X1*・(−exp(jθ2))・X2・(−exp(jθ1)))+(X1*・(−exp(jθ2))・X2・exp(jθ1))+(X1*・(−exp(jθ2))・X2・exp(jθ1))+(X1*・X2・(−exp(jθ1)))+(X1*・X2・(−exp(jθ1)))=0・・・(3)
上記の図4〜図6に示した相関性設定では、直交符号系列にWalsh符号を用いた。Walsh符号を用いると、簡易なメモリを用いて直交符号を保存することができる。以下、簡単にWalsh符号について説明する。
【0104】
図7はWalsh符号を説明するための図である。行列A1は、行ベクトル(1、1)、(1、−1)を有し、これら2つの行ベクトルは直交する(∵1×1+1×(−1)=0)。
行列A2は、行ベクトル(A1、A1)、(A1、−A1)を有する。なお、A1は上述の2×2行列なので、行列A2を要素毎に書き出すと、4つの行ベクトル(1、1、1、1)、(1、−1、1、−1)、(1、1、−1、−1)、(1、−1、−1、1)に展開される。
【0105】
ここで、行列A2は、どの2つの行ベクトルを抽出しても直交していることがわかる。例えば、行ベクトル(1、1、1、1)、(1、−1、1、−1)は直交しているし、行ベクトル(1、−1、1、−1)、(1、−1、−1、1)も直交している。
【0106】
上記のような操作を続けていくと、行列Anは、行ベクトル(An-1、An-1)、(An-1、−An-1)を有し、このような行列をアダマール(Hadamard)行列と呼ぶ。また、アダマール行列の行ベクトルがWalsh符号と呼ばれるものである。
【0107】
なお、直交符号としては、上記のようなWalsh符号だけでなく、例えば、{exp[j2πnk/N], (n,k =0,1,…,N-1)}のフーリエ級数に関連した符号、M系列を周期的にシフトし最後に1を追加した符号などがあり、これらを用いてもよい。
【0108】
次にデータ系列d1、d2から合成信号を生成するブロック構成について説明する。図8は合成信号を生成するブロック構成を示す図である。図4で示した内容に対応している。
【0109】
乗算器101aは、データ系列d2の符号化単位のデータX2に、順に直交符号exp(jθ1)、exp(jθ1)、exp(jθ1)、exp(jθ1)、−exp(jθ1)、−exp(jθ1)、−exp(jθ1)、−exp(jθ1)を乗算する。乗算出力は、(X2・exp(jθ1))、(X2・exp(jθ1))、(X2・exp(jθ1))、(X2・exp(jθ1))、(X2・(−exp(jθ1)))、(X2・(−exp(jθ1)))、(X2・(−exp(jθ1)))、(X2・(−exp(jθ1)))となる(このときの乗算出力は、図4のデータ系列d2−1に対応するものである)。
【0110】
加算器102は、これら乗算出力に対して、データ系列d1の符号化単位のデータX1を加算して、合成信号vを出力する。合成信号vは、{X1+(X2・exp(jθ1))}+{X1+(X2・exp(jθ1))}+{X1+(X2・exp(jθ1))}+{X1+(X2・exp(jθ1))}+{X1+(X2・(−exp(jθ1)))}+{X1+(X2・(−exp(jθ1)))}+{X1+(X2・(−exp(jθ1)))}+{X1+(X2・(−exp(jθ1)))}となる。
【0111】
図9は合成信号を生成するブロック構成を示す図である。図5で示した内容に対応している。乗算器101aは、データ系列d2の符号化単位のデータX2に、順に直交符号exp(jθ1)、exp(jθ1)、−exp(jθ1)、−exp(jθ1)、exp(jθ1)、exp(jθ1)、−exp(jθ1)、−exp(jθ1)を乗算する。乗算出力は、(X2・exp(jθ1))、(X2・exp(jθ1))、(X2・(−exp(jθ1)))、(X2・(−exp(jθ1)))、(X2・exp(jθ1))、(X2・exp(jθ1))、(X2・(−exp(jθ1)))、(X2・(−exp(jθ1)))となる(このときの乗算出力は、図5のデータ系列d2−2に対応するものである)。
【0112】
加算器102は、これら乗算出力に対して、データ系列d1の符号化単位のデータX1を加算して、合成信号vを出力する。合成信号vは、{X1+(X2・exp(jθ1))}+{X1+(X2・exp(jθ1))}+{X1+(X2・(−exp(jθ1)))}+{X1+(X2・(−exp(jθ1)))}+{X1+(X2・exp(jθ1))}+{X1+(X2・exp(jθ1))}+{X1+(X2・(−exp(jθ1)))}+{X1+(X2・(−exp(jθ1)))}となる。
【0113】
図10は合成信号を生成するブロック構成を示す図である。図6で示した内容に対応している。乗算器101aは、データ系列d2の符号化単位のデータX2に、順に直交符号exp(jθ1)、exp(jθ1)、−exp(jθ1)、−exp(jθ1)、exp(jθ1)、exp(jθ1)、−exp(jθ1)、−exp(jθ1)を乗算する。乗算出力は、(X2・exp(jθ1))、(X2・exp(jθ1))、(X2・(−exp(jθ1)))、(X2・(−exp(jθ1)))、(X2・exp(jθ1))、(X2・exp(jθ1))、(X2・(−exp(jθ1)))、(X2・(−exp(jθ1)))となる(このときの乗算出力は、図6のデータ系列d2−2に対応するものである)。
【0114】
また、乗算器101bは、データ系列d1の符号化単位のデータX1に、順に直交符号exp(jθ2)、exp(jθ2)、−exp(jθ2)、−exp(jθ2)、−exp(jθ2)、−exp(jθ2)、exp(jθ2)、exp(jθ2)を乗算する。乗算出力は、(X1・exp(jθ2))、(X1・exp(jθ2))、(X1・(−exp(jθ2)))、(X1・(−exp(jθ2)))、(X1・(−exp(jθ2)))、(X1・(−exp(jθ2)))、(X1・exp(jθ2))、(X1・exp(jθ2))となる(このときの乗算出力は、図6のデータ系列d1−2に対応するものである)。
【0115】
加算器102は、これら2つの乗算出力を符号化単位毎に加算して、合成信号vを出力する。合成信号vは、{(X1・exp(jθ2))+(X2・exp(jθ1))}+{(X1・exp(jθ2))+(X2・exp(jθ1))}+{(X1・(−exp(jθ2)))+(X2・(−exp(jθ1)))}+{(X1・(−exp(jθ2)))+(X2・(−exp(jθ1)))}+{(X1・(−exp(jθ2)))+(X2・exp(jθ1))}+{(X1・(−exp(jθ2)))+(X2・exp(jθ1))}+{(X1・exp(jθ2))+(X2・(−exp(jθ1)))}+{(X1・exp(jθ2))+(X2・(−exp(jθ1)))}となる。
【0116】
次に合成信号生成部10(信号発生装置)の詳細構成について説明する。なお、8つの合成信号v1〜v8を生成する場合のアンテナ特性評価システムに適用する際の合成信号生成部10の構成について説明する。最初にアンテナ特性評価システムの構成を示す。
【0117】
図11はアンテナ特性評価システムの構成例を示す図である。アンテナ特性評価システム1−1は、送信アンテナ23−1〜23−8、評価アンテナ24a、24b、合成信号生成部10、アップコンバータ22−1〜22−8、評価部30を備える。
【0118】
なお、基本的な構成は、図1のアンテナ特性評価システム1と同じなので、異なる箇所のみ示すと、合成信号生成部10は8つの合成信号v1〜v8を出力する。アップコンバータ22−1〜22−8それぞれは、合成信号v1〜v8を受信して、アップコンバートを行い、送信アンテナ23−1〜23−8を介して、ドップラ周波数Δf1〜Δf8を電波暗室20内に放射する。
【0119】
図12は合成信号生成部10の構成を示す図である。合成信号生成部10は、直交符号生成部11、演算部12、データ系列生成部13、乗算処理部14、合成処理部15、出力処理部16を備える。
【0120】
直交符号生成部11は、直交符号系列発生部11−1〜11−Nを含み、直交符号系列を生成する。演算部12は、直交符号系列に所望の相関性を与えるための相関パラメータを乗算して、所望の相関性を与えた符号系列を生成する。
【0121】
データ系列生成部13は、ディジタルベースバンド信号であるデータ系列を生成する。乗算処理部14は、データ系列と符号系列とを乗算する。合成処理部15は、複数の乗算結果に重み付けを行って合成し、合成信号を生成する。
【0122】
出力処理部16は、D/A部16a−1〜16a−8、フィルタ16b−1〜16b−8を含み、合成信号の出力インタフェース処理(D/A変換及びD/A変換時に伴う折り返し歪み除去)を行って、アップコンバータ22に向けて出力する。
【0123】
次に直交符号系列発生部11−1〜11−Nについて説明する。直交符号系列発生部11−1〜11−Nは、各々が異なる複数のパターンの直交符号系列を発振可能なディジタル・ジェネレータに該当する。
【0124】
図13は直交符号系列発生部で発生される直交符号系列を示す図である。直交符号系列は、データ系列を識別するための番号(データ系列識別番号)をm、パスを識別するための番号(パス識別番号)をk、1つの直交符号系列発生部で発生される直交符号系列パターンを識別するための番号(直交符号系列パターン識別番号)をnとした場合、xm,k-nと表記するものとする。なお、nは送信アンテナ数と等しい。
【0125】
図13に示す直交符号系列発生部11−1は、データ系列識別番号が1のデータ系列で、パス識別番号が1のパスに対する、直交符号系列を発生している。また、直交符号系列のパターン数が8つ(n=1〜8)あるので、直交符号系列x1,1-1、x1,1-2、x1,1-3、x1,1-4、x1,1-5、x1,1-6、x1,1-7、x1,1-8を生成することになる。
【0126】
さらに、8つの符号化単位を1つのまとまりとして相関性を与えるとした場合、各直交符号系列の直交符号数は8個となる。例えば、直交符号系列x1,1-1は、直交符号として、exp(jθ1,1-1)、exp(jθ1,1-1)、exp(jθ1,1-1)、exp(jθ1,1-1)、exp(jθ1,1-1)、exp(jθ1,1-1)、exp(jθ1,1-1)、exp(jθ1,1-1)の8つを生成している。
【0127】
また、直交符号系列x1,1-2は、直交符号として、exp(jθ1,1-2)、exp(jθ1,1-2)、exp(jθ1,1-2)、exp(jθ1,1-2)、−exp(jθ1,1-2)、−exp(jθ1,1-2)、−exp(jθ1,1-2)、−exp(jθ1,1-2)の8つを生成している(その他の直交符号系列も同様に8つの直交符号を発生する)。
【0128】
図14は直交符号系列発生部で発生される直交符号系列を示す図である。図14に示す直交符号系列発生部11−2は、データ系列識別番号が2のデータ系列で、パス識別番号が1のパスに対する、直交符号系列を生成する。また、直交符号系列のパターン数が8つであるから(n=1〜8)、直交符号系列x2,1-1、x2,1-2、x2,1-3、x2,1-4、x2,1-5、x2,1-6、x2,1-7、x2,1-8を発生することになる。
【0129】
さらに、8つの符号化単位を1つのまとまりとして相関性を与えるので、各直交符号系列の直交符号数は8個となる。例えば、直交符号系列x2,1-1は、直交符号として、exp(jθ2,1-1)、exp(jθ2,1-1)、−exp(jθ2,1-1)、−exp(jθ2,1-1)、exp(jθ2,1-1)、exp(jθ2,1-1)、−exp(jθ2,1-1)、−exp(jθ2,1-1)の8つを生成している。
【0130】
また、直交符号系列x2,1-2は、直交符号として、exp(jθ2,1-2)、exp(jθ2,1-2)、−exp(jθ2,1-2)、−exp(jθ2,1-2)、−exp(jθ2,1-2)、−exp(jθ2,1-2)、exp(jθ2,1-2)、exp(jθ2,1-2)の8つを生成している(その他の直交符号系列も同様に8つの直交符号を持つ)。
【0131】
次に演算部12について説明する。演算部12は、行列演算を行って、無相関のベクトルxから相関のあるベクトルyを算出する。図15は行列演算の一例を示す図である。演算部12は、直交符号生成部11から出力された直交符号系列の列ベクトルに、相関パラメータからなる行列を乗算して、所望の相関性を与えるための符号系列を生成する(以降、行列演算後の符号系列をym,k-nで示す)。
【0132】
図15では、4×4の行列演算の例を示しており、直交符号系列の列ベクトル(x1,1-1、x1,1-5、x2,1-1、x2,1-5)に対し、4×4の相関パラメータの要素からなる行列Hを乗算して、符号系列の列ベクトル(y1,1-1、y1,1-5、y2,1-1、y2,1-5)を生成している。
【0133】
このような、行列演算を施すことで、データ系列に対して、任意の相関性を与えるための符号系列を生成することができる。なお、所望の相関性を無相関にしたい場合は、すなわち、直交符号生成部11から出力された直交符号系列そのものから合成信号を生成して、合成信号を無相関にしたい場合は、行列Hを単位行列にして行列演算を行えばよい。
【0134】
次に乗算処理部14について説明する。乗算処理部14は、データ系列生成部13から出力されたデータ系列と、演算部12から出力された符号系列とを符号化単位毎に乗算する。
【0135】
図16は乗算処理の一例を示す図である。データ系列{X1、X1、・・・}に対して、符号系列yを乗算する様子を示している(以降、乗算処理後の乗算値をνm,k-nと示す)。
【0136】
乗算器14−1〜14−8はそれぞれ、データ系列のデータX1に対して、符号系列y1,1-1、y1,1-2、y1,1-3、y1,1-4、y1,1-5、y1,1-6、y1,1-7、y1,1-8を乗算する。そして、乗算値ν1,1-1、ν1,1-2、ν1,1-3、ν1,1-4、ν1,1-5、ν1,1-6、ν1,1-7、ν1,1-8を出力する。データ系列{X2、X2、・・・}に対しても同様な処理が行われる。
【0137】
次に合成処理部15及び出力処理部16について説明する。図17は合成処理部15及び出力処理部16の構成を示す図である。合成処理部15は、重み付け合成部15−1〜15−8を含む。
【0138】
重み付け合成部15−1〜15−8はそれぞれ、合成信号を生成するために必要な複数の乗算値νに重み定数Wを乗算し、重み付けされた乗算値νの総和を算出して出力する。
出力処理部16は、D/A部16a−1〜16a−8と、フィルタ(折り返しフィルタ)16b−1〜16b−8とから構成される。D/A部16a−1〜16a−8は、合成処理部15から出力されたディジタルの合成信号をアナログの合成信号に変換する。折り返しフィルタ16b−1〜16b−8は、アナログ合成信号をフィルタリングして、D/A変換時に生じた折り返し歪みを除去して、合成信号v1〜v8を生成し、アップコンバータ22側へ送信する。
【0139】
次に変形例について説明する。上記の説明では、データ系列の符号化単位を基準にして、任意の個数の符号化単位(上記の例では8つの符号化単位)で、データ系列を1つのまとまりにした。
【0140】
これに対し、変形例の場合は、評価項目にチャネル推定を実施する場合を考慮したものであって、符号化単位前後のチャネル推定に必要なデータ部分まで広げた範囲を1つの単位(処理単位)とし、任意の個数の処理単位でデータ系列を1つのまとまりにするものである。
【0141】
図18は変形例を説明するための図である。実環境の無線通信システムのデータ系列D1は、データX1,1、X1,2、X1,3・・・というように、符号化単位毎に異なるデータとなっている。すなわち、データX1,1、データX1,2、データX1,3のそれぞれは、通常は異なるデータ値となる。
【0142】
一方、アンテナ特性評価システム1では、BLERなどを測定する場合は、異なるデータ値である必要はないので、例えば、データ系列D1aのように、同じデータX1,2が複数連続するデータ系列を扱う。
【0143】
ここで、実際の無線通信システムでは、復調するときに、チャネル推定が行われる。このチャネル推定は、チャネル推定対象の符号化単位のデータ以外のデータ(パイロット信号)を用いる場合もある。
【0144】
データX1,1にはパイロット信号p1が挿入され、データX1,2にはパイロット信号p2、p3が挿入され、データX1,3にはパイロット信号p4が挿入されているとする。
この場合、データX1,2のチャネル推定を行う場合、パイロット信号p2、p3だけでなく、パイロット信号p1、p4も使用して、データX1,2のチャネル推定を行ったりする。
【0145】
したがって、チャネル推定の評価も実施したい場合には、符号化単位前後のチャネル推定に必要なデータ部分まで広げた範囲を1つの処理単位とし、その処理単位でデータ系列を1つのまとまりにすれば、実環境システムを模擬することができる。
【0146】
変形例では、真ん中のデータX1,2に対しては、データX1,2の前段にあるデータのパイロット信号p1が挿入されている周辺から、データX1,2の後段にあるデータのパイロット信号p4が挿入されている周辺までの範囲Rを新たな処理単位とすればよい。
【0147】
そして、任意の個数の処理単位でデータ系列を1つのまとまりにし、そのまとまりに所望の相関性を与える符号系列を乗算して、複数の合成信号を生成する。このような構成にすることで、実環境システムで行われるチャネル推定と等しいチャネル推定評価を行うことが可能になる。
【0148】
(付記1) アンテナ特性の評価を行うアンテナ特性評価システムにおいて、
評価対象のアンテナである評価アンテナと、
前記評価アンテナに電波を放射する複数の送信アンテナと、
ベースバンド信号であるデータ系列を発生し、前記データ系列から合成信号を生成する合成信号生成部と、
前記送信アンテナに接続し、前記合成信号の周波数を前記電波の周波数までアップコンバートするアップコンバータと、
前記評価アンテナと接続し、前記電波を受信したときの前記評価アンテナの前記アンテナ特性の評価を行う評価部と、
を備え、
前記合成信号生成部は、
前記データ系列を一定の処理単位で分けた際に、任意の個数の前記処理単位で前記データ系列を1つのまとまりにし、前記データ系列のまとまりに所望の相関性を与える符号系列を乗算して、複数の合成信号を生成する合成信号生成処理を行う、
ことを特徴とするアンテナ特性評価システム。
【0149】
(付記2) 前記合成信号生成部は、符号化単位で構成される前記データ系列に対して、前記処理単位を前記符号化単位とし、任意の個数の前記符号化単位でデータ系列を1つのまとまりにして、前記合成信号生成処理を行うことを特徴とする付記1記載のアンテナ特性評価システム。
【0150】
(付記3) 前記合成信号生成部は、符号化単位で構成される前記データ系列に対して、前記符号化単位前後のチャネル推定に必要なデータ部分まで広げた範囲を前記処理単位とし、任意の個数の前記処理単位で前記データ系列を1つのまとまりにして、前記合成信号生成処理を行うことを特徴とする付記1記載のアンテナ特性評価システム。
【0151】
(付記4) 前記合成信号生成部は、
直交符号系列を生成する直交符号生成部と、
前記直交符号系列に所望の相関性を与えるための相関パラメータを乗算して、所望の相関性を与えた前記符号系列を生成する演算部と、
含むことを特徴とする付記1記載のアンテナ特性評価システム。
【0152】
(付記5) 前記直交符号生成部は、前記送信アンテナ毎に、異なる前記直交符号系列を生成することを特徴とする付記4記載のアンテナ特性評価システム。
(付記6) 前記直交符号生成部は、前記直交符号系列をWalsh符号で生成することを特徴とする付記4記載のアンテナ特性評価システム。
【0153】
(付記7) 信号の発生制御を行う信号発生装置において、
ベースバンド信号であるデータ系列を生成するデータ系列生成部、直交符号系列を生成する直交符号生成部、前記直交符号系列に所望の相関性を与えるための相関パラメータを乗算して、所望の相関性を与えた符号系列を生成する演算部、前記データ系列と前記符号系列とを乗算する乗算処理部、複数の乗算結果に重み付けを行って合成し、合成信号を生成する合成処理部、を備える合成信号発生制御部と、
前記合成処理部から出力された前記合成信号の出力インタフェース処理を行う出力処理部と、
を有し、
前記合成信号発生制御部は、前記データ系列を一定の処理単位で分けた際に、任意の個数の前記処理単位で前記データ系列を1つのまとまりにし、前記データ系列のまとまりに所望の相関性を与える前記符号系列を乗算して、複数の前記合成信号を生成する合成信号生成処理を行う、
ことを特徴とする信号発生装置。
【0154】
(付記8) 前記合成信号発生制御部は、符号化単位で構成される前記データ系列に対して、前記処理単位を前記符号化単位とし、任意の個数の前記符号化単位でデータ系列を1つのまとまりにして、前記合成信号生成処理を行うことを特徴とする付記7記載の信号発生装置。
【0155】
(付記9) 前記合成信号発生制御部は、符号化単位で構成される前記データ系列に対して、前記符号化単位前後のチャネル推定に必要なデータ部分まで広げた範囲を前記処理単位とし、任意の個数の前記処理単位で前記データ系列を1つのまとまりにして、前記合成信号生成処理を行うことを特徴とする付記7記載の信号発生装置。
【0156】
(付記10) 前記直交符号生成部は、送信アンテナ毎に、異なる前記直交符号系列を生成することを特徴とする付記7記載の信号発生装置。
(付記11) 前記直交符号生成部は、前記直交符号系列をWalsh符号で生成することを特徴とする付記7記載の信号発生装置。
【符号の説明】
【0157】
1 アンテナ特性評価システム
10 合成信号生成部
20 電波暗室
22−1〜22−4 アップコンバータ
23−1〜23−4 送信アンテナ
24a、24b 評価アンテナ
30 評価部
31 アンテナ特性評価ボード
32 評価用端末
Δf1〜Δf4 ドップラ周波数
v1〜v4 合成信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ特性の評価を行うアンテナ特性評価システムにおいて、
評価対象のアンテナである評価アンテナと、
前記評価アンテナに電波を放射する複数の送信アンテナと、
ベースバンド信号であるデータ系列を発生し、前記データ系列から合成信号を生成する合成信号生成部と、
前記送信アンテナに接続し、前記合成信号の周波数を前記電波の周波数までアップコンバートするアップコンバータと、
前記評価アンテナと接続し、前記電波を受信したときの前記評価アンテナの前記アンテナ特性の評価を行う評価部と、
を備え、
前記合成信号生成部は、
前記データ系列を一定の処理単位で分けた際に、任意の個数の前記処理単位で前記データ系列を1つのまとまりにし、前記データ系列のまとまりに所望の相関性を与える符号系列を乗算して、複数の合成信号を生成する合成信号生成処理を行う、
ことを特徴とするアンテナ特性評価システム。
【請求項2】
前記合成信号生成部は、符号化単位で構成される前記データ系列に対して、前記処理単位を前記符号化単位とし、任意の個数の前記符号化単位でデータ系列を1つのまとまりにして、前記合成信号生成処理を行うことを特徴とする請求項1記載のアンテナ特性評価システム。
【請求項3】
前記合成信号生成部は、符号化単位で構成される前記データ系列に対して、前記符号化単位前後のチャネル推定に必要なデータ部分まで広げた範囲を前記処理単位とし、任意の個数の前記処理単位で前記データ系列を1つのまとまりにして、前記合成信号生成処理を行うことを特徴とする請求項1記載のアンテナ特性評価システム。
【請求項4】
前記合成信号生成部は、
直交符号系列を生成する直交符号生成部と、
前記直交符号系列に所望の相関性を与えるための相関パラメータを乗算して、所望の相関性を与えた前記符号系列を生成する演算部と、
含むことを特徴とする請求項1記載のアンテナ特性評価システム。
【請求項5】
前記直交符号生成部は、前記送信アンテナ毎に、異なる前記直交符号系列を生成することを特徴とする請求項4記載のアンテナ特性評価システム。
【請求項6】
前記直交符号生成部は、前記直交符号系列をWalsh符号で生成することを特徴とする請求項4記載のアンテナ特性評価システム。
【請求項7】
信号の発生制御を行う信号発生装置において、
ベースバンド信号であるデータ系列を生成するデータ系列生成部、直交符号系列を生成する直交符号生成部、前記直交符号系列に所望の相関性を与えるための相関パラメータを乗算して、所望の相関性を与えた符号系列を生成する演算部、前記データ系列と前記符号系列とを乗算する乗算処理部、複数の乗算結果に重み付けを行って合成し、合成信号を生成する合成処理部、を備える合成信号発生制御部と、
前記合成処理部から出力された前記合成信号の出力インタフェース処理を行う出力処理部と、
を有し、
前記合成信号発生制御部は、前記データ系列を一定の処理単位で分けた際に、任意の個数の前記処理単位で前記データ系列を1つのまとまりにし、前記データ系列のまとまりに所望の相関性を与える前記符号系列を乗算して、複数の前記合成信号を生成する合成信号生成処理を行う、
ことを特徴とする信号発生装置。
【請求項8】
前記合成信号発生制御部は、符号化単位で構成される前記データ系列に対して、前記処理単位を前記符号化単位とし、任意の個数の前記符号化単位でデータ系列を1つのまとまりにして、前記合成信号生成処理を行うことを特徴とする請求項7記載の信号発生装置。
【請求項1】
アンテナ特性の評価を行うアンテナ特性評価システムにおいて、
評価対象のアンテナである評価アンテナと、
前記評価アンテナに電波を放射する複数の送信アンテナと、
ベースバンド信号であるデータ系列を発生し、前記データ系列から合成信号を生成する合成信号生成部と、
前記送信アンテナに接続し、前記合成信号の周波数を前記電波の周波数までアップコンバートするアップコンバータと、
前記評価アンテナと接続し、前記電波を受信したときの前記評価アンテナの前記アンテナ特性の評価を行う評価部と、
を備え、
前記合成信号生成部は、
前記データ系列を一定の処理単位で分けた際に、任意の個数の前記処理単位で前記データ系列を1つのまとまりにし、前記データ系列のまとまりに所望の相関性を与える符号系列を乗算して、複数の合成信号を生成する合成信号生成処理を行う、
ことを特徴とするアンテナ特性評価システム。
【請求項2】
前記合成信号生成部は、符号化単位で構成される前記データ系列に対して、前記処理単位を前記符号化単位とし、任意の個数の前記符号化単位でデータ系列を1つのまとまりにして、前記合成信号生成処理を行うことを特徴とする請求項1記載のアンテナ特性評価システム。
【請求項3】
前記合成信号生成部は、符号化単位で構成される前記データ系列に対して、前記符号化単位前後のチャネル推定に必要なデータ部分まで広げた範囲を前記処理単位とし、任意の個数の前記処理単位で前記データ系列を1つのまとまりにして、前記合成信号生成処理を行うことを特徴とする請求項1記載のアンテナ特性評価システム。
【請求項4】
前記合成信号生成部は、
直交符号系列を生成する直交符号生成部と、
前記直交符号系列に所望の相関性を与えるための相関パラメータを乗算して、所望の相関性を与えた前記符号系列を生成する演算部と、
含むことを特徴とする請求項1記載のアンテナ特性評価システム。
【請求項5】
前記直交符号生成部は、前記送信アンテナ毎に、異なる前記直交符号系列を生成することを特徴とする請求項4記載のアンテナ特性評価システム。
【請求項6】
前記直交符号生成部は、前記直交符号系列をWalsh符号で生成することを特徴とする請求項4記載のアンテナ特性評価システム。
【請求項7】
信号の発生制御を行う信号発生装置において、
ベースバンド信号であるデータ系列を生成するデータ系列生成部、直交符号系列を生成する直交符号生成部、前記直交符号系列に所望の相関性を与えるための相関パラメータを乗算して、所望の相関性を与えた符号系列を生成する演算部、前記データ系列と前記符号系列とを乗算する乗算処理部、複数の乗算結果に重み付けを行って合成し、合成信号を生成する合成処理部、を備える合成信号発生制御部と、
前記合成処理部から出力された前記合成信号の出力インタフェース処理を行う出力処理部と、
を有し、
前記合成信号発生制御部は、前記データ系列を一定の処理単位で分けた際に、任意の個数の前記処理単位で前記データ系列を1つのまとまりにし、前記データ系列のまとまりに所望の相関性を与える前記符号系列を乗算して、複数の前記合成信号を生成する合成信号生成処理を行う、
ことを特徴とする信号発生装置。
【請求項8】
前記合成信号発生制御部は、符号化単位で構成される前記データ系列に対して、前記処理単位を前記符号化単位とし、任意の個数の前記符号化単位でデータ系列を1つのまとまりにして、前記合成信号生成処理を行うことを特徴とする請求項7記載の信号発生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2010−217062(P2010−217062A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65495(P2009−65495)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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