説明

アンテナ素子−導波管変換器、およびこれを用いた無線通信装置

【課題】アンテナ基板と導波管とを離間配置し、組み付けのばらつきによる応力を防ぎつつ良好なアンテナ特性を実現する。
【解決手段】アンテナ基板30の一方の面にアンテナ素子36と、このアンテナ素子の周囲に矩形金属プレート37を配置させ、矩形金属プレートの表面と導波管の開口12,13を、アンテナ基板表面に直交する方向で離間配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波、ミリ波帯通信に用いられるアンテナ素子−導波管変換器、およびこれを用いた無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高精細度テレビジョン放送(以下、HDTV)の無線伝送が注目されており、大容量情報を伝達する必要から、広い伝送帯域を確保できるミリ波を用いた無線伝送システムの開発が進められており、これに伴って上記システムに用いるための、高周波線路を導波管に変換してホーンアンテナ等に接続した小型の無線通信装置が開発されている。
【0003】
図7(a)は、特許文献1による従来の無線通信装置の高周波線路−導波管変換器の分解斜視図、同図(b)は断面図を示している。高周波線路−導波管変換器は、誘電体基板101の表面101aに設けられたコプレーナ線路102と、第1のグランド層111の切り欠き部113内に配設されたアンテナ素子103と、第1のグランド層111に取り付けられた導波管104とを備えている。第1のグランド層111は、誘電体基板101の裏面101bに形成されており、第2のグランド層112は、誘電体基板101の中間に形成されている。コプレーナ線路102は、誘電体基板101の表面101aに形成された直線状のマイクロストリップ線路121と長方形のキャビティ部122とによって構成されている。第1のグランド層111の一部であって、コプレーナ線路102のキャビティ部122のほぼ真下の部位には、矩形状の切り欠き部113が形成されている。
【0004】
アンテナ素子103は、切り欠き部113内に位置するよう配置され、誘電体基板101の裏面101bに形成されている。このアンテナ素子103は、図7(b)に示すように、コプレーナ線路102のマイクロストリップ線路121の先端部121aのほぼ真下に位置している。そして、このアンテナ素子103が、1本のビアホール130を介してマイクロストリップ線路121の先端部121aと接続している。また図7(a)に示すとおり、ビアホール130でマイクロストリップ線路121に接続されたアンテナ素子103は、複数のビアホール131によってシールドされている。
【0005】
導波管104は、四角筒状の標準導波管であり、その開口140を切り欠き部113に対向させた状態で、第1のグランド層111に取り付けられている。
【0006】
より具体的には、キャビティ部122の形状に対応した切り欠き部113が導波管104の開口140と同形に設定され、開口140をこの切り欠き部113に一致させた状態で、導波管104が第1のグランド層111に取り付けられている。
【0007】
次に動作を説明すると、上記構成により、外部機器(図示せず)の出力端であるマイクロストリップ線路(図示せず)をこの導波管−高周波線路変換器のマイクロストリップ線路121に接続して、外部機器からの信号を入力する。入力された信号は、マイクロストリップ線路121の先端部121a側に向かい、コプレーナ線路を伝搬する。そして、この信号はマイクロストリップ線路121の先端部121aからビアホール130を介してアンテナ素子103に至り、アンテナ素子103から放射されて、導波管104内を伝搬する。
【0008】
また、特許文献2では、多層基板の内層に多数のスルーホールを円形状に配置して導波管部を形成し、この多層基板に形成された導波管部とフィードホーンの導波管部を接続した構成のフィードホーン一体型LNB(ローノイズブロックコンバータ)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−131513号公報
【特許文献2】特開平8−125432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来技術では、以下に示すような問題が生じる。
【0011】
一般的に導波管は金属の塊であって硬く重いのに対して、基板は脆く軽いため、機械的強度の異なる両者を如何に接続するかは、高周波線路−導波管変換器の品質を確保する上で、構造上の重要な点となっていた。この点について、特許文献1では、高周波線路が配置された基板と導波管の接続に関して、両者は直接に取り付けられており、特許文献2では、導波管と一体成型されたシャーシと基板とをネジ等で固定している。しかしながら、基板厚さや導波管は個体差によって寸法公差が生じるため、単に物理的に押し付けるだけでは接触が不充分となる可能性がある。また、接触が不充分な場合は、例えば導波管にフィードホーンなどのアンテナが一体形成されているとアンテナ利得の低下に直接影響するという問題が起こりうる。また、導波管と基板を充分に接触させるために強く押し付けすぎると、その応力によって基板や基板上に搭載しているIC等の部品が損傷する可能性がある。
【0012】
これらの問題に対処するため、導波管と基板の接続のための他の材料、例えば導電性材料を介在させて、導波管と基板を間接的に接続させることもあるが、製造工程が複雑になり製品のコストアップとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明に係るアンテナ素子−導波管変換器は、アンテナ素子と前記アンテナ素子を取り囲むように複数列配置された矩形金属プレートを一方の表面に有する第1の基板と、一端に前記第1の基板の前記一方の表面に対向する第1の開口を有する導波管とを備え、前記矩形金属プレートの表面と前記導波管の前記第1の開口が、前記第1の基板の前記一方の表面に直交する方向に所定距離離間配置されることを特徴する。
【0014】
また、本発明に係るアンテナ素子−導波管変換器は、隣接する前記矩形金属プレート同士が一定の間隔で配置されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るアンテナ素子−導波管変換器は、前記第1の基板が、前記一方の表面と他方の表面との間に接地導体板を備え、前記矩形金属プレートと前記接地導体がスルーホールで接続されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るアンテナ素子−導波管変換器は、隣接する前記矩形金属プレート、前記接地導体および前記スルーホールからなる経路が共振回路を形成し、前記共振回路の周波数は前記アンテナ素子の放射波の周波数に等しいことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るアンテナ素子−導波管変換器は、前記複数の矩形金属プレートの表面と前記導波管の前記第1の開口が、前記アンテナ素子の放射波の波長の1/10以下の間隔で離間配置されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るアンテナ素子−導波管変換器は、前記第1の基板の他方の表面に高周波回路が実装されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係るアンテナ素子−導波管変換器は、前記導波管の他端に、前記第1の開口より大きな第2の開口を備えるホーンアンテナが連結されていることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る無線通信装置は、アンテナ素子と前記アンテナ素子の周囲に配置された複数の矩形金属プレートを一方の表面に有する第1の基板と、前記第1の基板を実装する第2の基板と、一端に前記第1の基板の前記一方の表面に対向する第1の開口を有する導波管と、前記導波管に連結された第2の開口を備えるホーンアンテナと、前記第1の基板と前記第2の基板を収容する筐体とを備え、前記複数の矩形金属プレートの表面と前記導波管の前記第1の開口は、前記第1の基板の前記一方の表面に直交する方向で所定距離離間配置されることを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る無線通信装置は、前記ホーンアンテナが前記筐体に支持されることを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る無線通信装置は、前記ホーンアンテナが前記筐体に一体に成型されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、アンテナ素子と共に基板に配置された複数の矩形金属プレートの表面と導波管の開口との間を離間配置する、すなわち複数の矩形金属プレートを配置した基板と導波管とを非接触とするため、両者の組み付けによる応力が回避されることで信頼性が向上したアンテナ素子−導波管変換器が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1のアンテナ素子−導波管変換器を示す上面図および断面図である。
【図2】実施例1に係るアンテナ基板(第1の基板)の説明図である。
【図3】実施例1に係るアンテナ素子−導波管変換器の要部拡大図である。
【図4】実施例1に係るアンテナ素子−導波管変換器のアンテナ利得を示す図である。
【図5】実施例2に係る無線通信装置の構成図である。
【図6】実施例3に係る無線通信装置の構成図である。
【図7】従来の無線通信装置に用いられる高周波線路−導波管変換器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0025】
本発明のアンテナ素子−導波管変換器における実施例1について図1〜図4を参照して説明する。図1は実施例1におけるアンテナ素子−導波管変換器1の要部を示しており、図2は、アンテナ素子−導波管変換器1に使用するアンテナ基板30(第1の基板)の詳細構造を示している。また図3は、図1(b)の破線円部の拡大図であり、図4はアンテナ素子−導波管変換器1のアンテナ利得実測データである。
【0026】
まず、実施例1におけるアンテナ素子−導波管変換器1の構成例について図1を参照して説明する。
【0027】
図1(a)はアンテナ素子−導波管変換器1を波線の内側領域にてアンテナ面側から見た上面図であり、図1(b)は図1(a)の破線A−A’における断面図である。図1(b)に示すようにアンテナ素子−導波管変換器1は、アンテナ基板30、アンテナ基板30の表面に開口13(第1の開口)を対向して配置される導波管11、導波管11に連結されたホーンアンテナ10を備えている。また、アンテナ基板30は、無線通信装置への適用に際して、実装基板20(第2の基板)に実装される。
【0028】
次に、アンテナ基板30の全体構成例について図1(b)を参照して説明する。アンテナ基板30は、例えば低温焼成セラミック等を材料とする多層基板が用いられる。また、アンテナ基板30は、アンテナ素子と、基板上の伝送線路や半導体集積回路で構成されている高周波回路(図示せず)とを混載した基板であり、アンテナ面S1にはアンテナ素子36、実装基板20との接続端子31が形成され、回路面S2には給電線路35に接続された高周波回路(図示せず)が形成される。また、内層に接地導体板39を備えている。また、アンテナ素子36から、回路面S2の給電線路35に達するように形成されたスルーホール34、および、環状接地部32から接地導体板39に達するように形成されたスルーホール38を有している。
【0029】
次にアンテナ基板30の各部の構成例について図1(b)、図2を参照して詳細に説明する。図2(a)は、アンテナ基板30をアンテナ面S1に垂直な方向から見た平面図であり、図2(b)は破線B−B’における断面図であり、図2(c)は図2(b)の構造の電気的等価回路である。
【0030】
まず、アンテナ素子36について説明する。図2(a)においてアンテナ素子36は、アンテナ面S1の金属導体からエッチング加工によって形成、配置した矩形金属導体から成り、アンテナ面S1の中央部に、各端辺を使用周波数の波長に合わせた寸法にて形成される。また、各端辺が基板端と平行となるよう配置している。また、図1(b)に示すとおりアンテナ素子36は、スルーホール34を介して給電線路35に接続されている。なお、アンテナ素子36は矩形形状以外にも他の例として、使用周波数の波長に合わせて円形状としてもよいし、配置が許容される範囲でアンテナ面S1の任意の位置に配置してもよい。また、本例ではアンテナ基板30のアンテナ面S1の金属導体からアンテナ素子36を形成したが、これに限らず他の別部材のアンテナ素子部品を使用してもよい。
【0031】
次に、矩形金属プレート37について説明する。図2(a)に示すとおり、矩形金属プレート37は、アンテナ素子36と同じくアンテナ面S1の金属導体から形成され、アンテナ素子36を取り囲むように、一定の間隔で複数列を成して配置される。また、図1(b)に示すとおり、各々の矩形金属プレートはスルーホール33を介して接地導体板39に接続されている。矩形金属プレート37のそれぞれの端辺は、隣り合う他の矩形金属プレートの端辺と寸法が同一、すなわち個々の矩形金属プレートは正方形であることが好ましい。
【0032】
更に、図2(a)〜(c)を参照して矩形金属プレート37の詳細構造を説明する。図2(b)のとおり、矩形金属プレート37a、37bは一定の間隔L1を介して配置されており、それぞれ、スルーホール33a、33bを介して接地導体板39に接続される。この構造によって矩形金属プレート37a、37bによる間隔L1と、破線で示すスルーホール33a、33bおよびスルーホール33a、33bとの間の接地導体板39の一部からなる経路Kとによって、図2(c)に示すようなキャパシタとインダクタからなる共振回路を形成させている。また、このキャパシタとインダクタからなる共振回路の共振周波数は、アンテナ素子36から放射される電磁波の周波数と等しく設定される。なお、矩形金属プレート37はアンテナ素子36を中央としてアンテナ基板のそれぞれの端辺に向かって2列に配置し、1列目と2列目の矩形金属プレートの隣り合う辺をずれの無いように対向させた例を図示しているがこれに限らず、上記で述べた共振周波数、すなわち、アンテナ素子36から放射される電磁波の周波数、電界強度に合わせて3列以上に配置しても良いし、アンテナ基板のそれぞれの端辺に向かう矩形金属プレートの列の隣り合う辺を互い違いにずらして対向させて配置しても良い。
【0033】
次に、環状接地部32について説明する。図2(a)に示すとおり、環状接地部32は、矩形金属プレート37と同様にアンテナ面S1の金属導体から形成され、複数の矩形金属プレート37の周囲を囲むように配置される。また、図1(b)に示すとおり、環状接地部32は複数のスルーホール38を介して接地導体板39に接続されるとともに、実装基板20に設けられた接地部26に接続される。
【0034】
次に、接続端子31について説明する。図2(a)に示すとおり、接続端子31はアンテナ基板30のアンテナ面S1の、相対する2辺の基板端に沿うように配置されている。これら接続端子は、アンテナ基板30に配置された電源、グランド、信号端子等(いずれも図示せず)を図1(b)に示すように実装基板20に設けられた接続端子25に接続するために用いる。なお、接続端子31の個数や配置は、基板端辺の長さに応じて設定し、実装基板20への実装強度を満足できるように設定するのが好ましい。
【0035】
次に、接地導体板39について説明する。図1(b)に示すとおり、接地導体板39は、アンテナ基板30のアンテナ面S1と高周波回路面S2との間の内層に形成されている。また、接地導体板39は、図1(b)に示すとおり、スルーホール34が形成される領域の導体が除去され、これ以外の領域は内層の全面に亘って形成されている。
【0036】
実装基板20の構成例について図1(b)、図2(a)を参照して説明する。
【0037】
実装基板20は、ガラスエポキシの誘電体基材22を備えるプリント基板で構成され、無線通信に必要なキャパシタや抵抗等の表面実装部品27が実装されている。また、実装基板20には、アンテナ基板30の環状接地部32の内側の矩形領域と相対する位置に、環状接地部32の内側の矩形とほぼ同寸法の貫通孔24を有している。また、アンテナ基板30が実装される実装面Dには、接地部26、および接続端子25が備えられている。一方、実装面Dと反対側の表面には、金属面21が形成されている。また、接地部26から金属面21に達するように形成されたスルーホール23を有している。接地部26は、表面形状がアンテナ基板30の環状接地部32の表面形状と同様な環状形状を有しており、両者は貼り合わされるように接続される。また、接地部26は、実装基板20の貫通孔24の周縁に沿って配置されている。
【0038】
次に、ホーンアンテナ10について図1(a)、(b)、図3を参照して説明する。
【0039】
ホーンアンテナ10は金属で形成され、一端が電波を放射させるための開口12を備えており、他端には、アンテナ基板30と対向する開口13を備える導波管11が連結されている。本実施例では一例として、ホーンアンテナ10と導波管11は一体に成型され、連結されているが、この限りではなく、それぞれ別体のホーンアンテナと導波管を接続し、連結してもよい。導波管11の開口13は、放射波の波長λに対してλ/2≦a≦λとなる長辺aと、b=a/2となる短辺bを有している。この開口13の中心にアンテナ基板30のアンテナ素子36が位置し且つ、開口13が矩形金属プレート37の表面に対して離間配置される。この離間配置についてより具体的には、図3に示すようにホーンアンテナ10に連結された導波管11の開口13と、矩形金属プレート37の表面との間は隙間L2によって離間配置される。本実施例においては一例として、隙間L2は放射波の周波数が60GHzの場合に0.04波長、物理長にして0.2mmとしている。またこの時、導波管11は、先に述べた実装基板20に設けられた貫通孔24に挿入されて、上記離間配置される。
【0040】
次に、アンテナ素子−導波管変換器1が送信処理を行う際の動作について図1(b)、図2(a)〜(c)、図3、図4を参照して説明する。
【0041】
図1(b)において、送信信号がアンテナ基板30の高周波回路面S2に実装された高周波回路(図示せず)に入力され、高周波信号が生成される。この高周波信号は、高周波回路から給電部35を経てスルーホール34を介して、アンテナ素子37に伝搬され、送信信号である電磁波が放射される。アンテナ素子37から放射された電磁波は導波管11の開口13からホーンアンテナ10の開口12へと伝搬し、空間に放射される。
【0042】
この時、アンテナ素子36から放射される電磁波には、上述した導波管11、ホーンアンテナ10への伝搬を経た空間への放射以外に、アンテナ素子36が実装されるアンテナ基板30のアンテナ面S1に沿って基板端へ伝搬する表面波が存在する。
【0043】
この点について図2を用いて説明すると、本実施例においては、表面波がアンテナ素子36からアンテナ基板30の基板端へ向かって伝搬すると、複数の矩形金属プレート37がアンテナ素子36と環状接地部32との間に設けられているので、表面波はまず、矩形金属プレート37に達する。その際、矩形金属プレート間の間隔L1と、矩形金属プレート37と接地導体板39を接続するスルーホール33からなる経路Lによる共振回路は、放射波の周波数付近で共振するように設定されているため、表面波に対して高インピーダンスとなり、アンテナ素子36からの表面波は基板端に達することなくアンテナ素子36の方向へ反射され、その後、図1(b)に示す、導波管11、ホーンアンテナ10への伝搬を経て空間に放射される。
【0044】
次に、図3、図4を参照して、導波管開口13と矩形金属プレート37の表面との隙間L2と、アンテナ素子導波管変換器1が送信処理を行う際の動作の関係ついて説明する。
【0045】
図4は、本実施例で用いた60GHz帯用アンテナのアンテナ利得と、図3における隙間L2の関係を表わしたグラフである。図4のグラフには、矩形金属プレートがある場合とない場合の両方の結果を示している。矩形金属プレート37がない場合は、隙間L2がない場合でも、矩形金属プレート37がある場合とくらべてアンテナ利得が約0.7dBほど低く、さらに、隙間L2がわずかにでもできるとアンテナ利得が大きく低下し、例えば隙間が0.2mm(60GHzに対して0.04波長)の場合はアンテナ利得が約0.6dB程度低下する。一方、矩形金属プレート37がある場合は、隙間L2が0.2mm存在しても、アンテナ利得の低下は、隙間L2が無い場合と比較して0.2dBに抑制できる。更に隙間L2を0.5mm(60GHzに対して0.1波長)とした時、アンテナ利得の低下は約1dBであり、矩形金属プレート37がない場合の低下約1.5dBに比較して、アンテナ利得の低下を0.5dB抑制できる。
【0046】
以上のように実施例1によれば、アンテナ素子36の周囲に矩形金属プレート37を複数配置し、導波管11の開口13と矩形金属プレート37の表面の間をアンテナ基板30に垂直な方向で離間配置したので、導波管11とアンテナ基板30との間の機械的応力を回避しながら、アンテナ素子36から放射される電磁波のうち、アンテナ基板30の表面に沿って基板端へ伝搬する表面波を複数の矩形金属プレート37で抑制して、アンテナ基板30から導波管11へ低損失に電磁波を伝搬できる。また、矩形金属プレート37はアンテナ素子36と同一工程でアンテナ基板30に形成することができるので、部品点数を少なくしながらアンテナ素子導波管変換器1の性能を向上させることもできる。また、ホーンアンテナ10に連結される導波管11の開口13は、放射波の波長λに対してλ/2≦a≦λとなる長辺aと、b=a/2となる短辺bを有しているため、放射に最適なTE10モードのみが低損失に伝搬できるとともに、交差偏波比を向上することもできる。
【実施例2】
【0047】
本発明の実施例2について図5を参照して説明する。
【0048】
図5は、実施例2に係る無線通信装置2を示す図であり、図5(a)はホーンアンテナ10の開口12の側からみた平面図、図5(b)は図5(a)を破線C−C’方向から見た透過図である。無線通信装置2は、実施例1で説明したアンテナ素子導波管変換器1を、シャーシ42とフレーム44からなる筐体内部に組み込み、外部機器(図示せず)との接続のための信号端子43を取り付けたものである。なお、実施例1と同一部分は同一符号で示している。
【0049】
シャーシ42とフレーム44は樹脂で形成されており、実装基板20には、予め、アンテナ基板30の他にキャパシタや抵抗等の表面実装部品27が実装されている。実装基板20は、シャーシ42の4隅の隅部45にビス41で取り付けられている。ホーンアンテナ10は、シャーシ42にビス40で取り付けられる。より詳しくは、ホーンアンテナ10とシャーシ42は共に、端部がL字状に形成されており、このL字状の端部を互いに組み合わせたのちにビス40によって取り付けられる。更に、ホーンアンテナ10に連結された導波管11の開口13と、アンテナ基板30に配置された矩形金属プレート37の表面とが、アンテナ基板30の表面に直交する方向で離間配置するように取り付けられる。なお、アンテナ基板30には電磁遮蔽のためのシールドカバー46が取り付けられる。
【0050】
実施例2によれば、ホーンアンテナ10の端部とシャーシ42の端部をビス40で取り付けるようにしたため、ホーンアンテナ10に連結された導波管11をアンテナ基板30にも実装基板20にも接続することなく、固定、位置決めができる。これにより、導波管11とアンテナ基板30とが離間配置され、機械的応力を回避できる。また、図示はしないが、上記で述べたホーンアンテナ10とシャーシ42の取り付けによる導波管の位置決め以外にも、ホーンアンテナ10或いは、導波管11と実装基板20との間に支持部材を介在させて固定、位置決めすることも可能である。
【0051】
また、実施例1の説明で述べたように、実施例2においてもアンテナ基板30の表面に沿って基板端へ伝搬する表面波は、矩形金属プレート37によってアンテナ素子36の方向へ反射されるため、導波管11とアンテナ基板30の離間配置によるアンテナ利得低下を抑制できる。
【実施例3】
【0052】
本発明の実施例3について図6を参照して説明する。
【0053】
図6は、無線通信装置3の外観を示す図であり、図6(a)はホーンアンテナ10側からみた平面図、図6(b)は図6(a)を破線D−D’方向から見た透過図である。無線通信装置3は、実施例1の図1で示したアンテナ素子導波管変換器1をシャーシ42とフレーム44内部に組み、外部機器(図示せず)との接続のための信号端子43を取り付けたものである。なお、実施例2と同一部分は同一符号で示している。
【0054】
実施例3が実施例2と異なる点は、シャーシ42とホーンアンテナ10およびこれに連結された導波管11が金属で一体成型されている点と、フレーム44も金属で形成されている点である。
【0055】
実施例3の場合、ホーンアンテナ10をシャーシ42と一体化させたため、実施例2に比較して部品点数を減らすことができる。また、シャーシ42とフレーム44が共に金属で形成されているため、遮蔽特性の要求に応じてアンテナ基板30の電磁遮蔽のためのシールドカバー46を廃止することも可能である。また、ホーンアンテナ10とシャーシ42は同一の材料であることから、ホーンアンテナ10とシャーシ42の熱膨張の度合は等しくなり、周囲温度が変化してもホーンアンテナ10に連結された導波管11の開口13とアンテナ基板30との間隔がほぼ一定に保たれる。この結果、周囲温度の変化によって開口13とアンテナ基板30との間隔が変化することよる、アンテナ利得の変化を低減させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、アンテナ機能を有するマイクロ波・ミリ波無線通信装置に適用することができる。また、本発明は、小型で高性能な無線通信装置を実現する上で有効であり、HDTV信号の無線伝送装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 アンテナ素子−導波管変換器
2、3 無線通信装置
10 ホーンアンテナ
11 導波管
12、13 開口
20 実装基板(第2の基板)
21 金属面
22 誘電体基材
23、33、34、38 スルーホール
24 貫通孔
25、31 接続端子
26 接地部
27 表面実装部品
30 アンテナ基板(第1の基板)
32 環状接地部
35 給電部
36、103 アンテナ素子
37 矩形金属プレート
39 接地導体板
40、41 ビス
42 シャーシ
43 信号端子
44 フレーム
45 隅部
46 シールドカバー
101 誘電体基板
101a 誘電体基板101の表面
101b 誘電体基板101の裏面
102 コプレーナ線路
111、112 グランド層
113 切り欠き部
121 マイクロストリップ線路
121a マイクロストリップ線路121の先端部
122 キャビティ部
130、131 ビアホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ素子と前記アンテナ素子を取り囲むように複数列配置された矩形金属プレートを一方の表面に有する第1の基板と、
一端に前記第1の基板の前記一方の表面に対向する第1の開口を有する導波管とを備え、前記矩形金属プレートの表面と前記導波管の前記第1の開口が、前記第1の基板の前記一方の表面に直交する方向に所定距離離間配置されることを特徴するアンテナ素子−導波管変換器。
【請求項2】
隣接する前記矩形金属プレート同士が一定の間隔で配置されることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ素子−導波管変換器。
【請求項3】
前記第1の基板は、前記一方の表面と他方の表面との間に接地導体板を備え、
前記矩形金属プレートと前記接地導体がスルーホールで接続されることを特徴とする請求項1、2のいずれか一項に記載のアンテナ素子−導波管変換器。
【請求項4】
隣接する前記矩形金属プレート、前記接地導体および前記スルーホールからなる経路が共振回路を形成し、前記共振回路の周波数は前記アンテナ素子の放射波の周波数に等しいことを特徴とする請求項3に記載のアンテナ素子−導波管変換器。
【請求項5】
前記複数の矩形金属プレートの表面と前記導波管の前記第1の開口は、前記アンテナ素子の放射波の波長の1/10以下の間隔で離間配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のアンテナ素子−導波管変換器。
【請求項6】
前記第1の基板の他方の表面に高周波回路が実装されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のアンテナ素子−導波管変換器。
【請求項7】
前記導波管の他端に、前記第1の開口より大きな第2の開口を備えるホーンアンテナが連結されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のアンテナ素子−導波管変換器。
【請求項8】
アンテナ素子と前記アンテナ素子の周囲に配置された複数の矩形金属プレートを一方の表面に有する第1の基板と、
前記第1の基板を実装する第2の基板と、
一端に前記第1の基板の前記一方の表面に対向する第1の開口を有する導波管と、
前記導波管に連結された第2の開口を備えるホーンアンテナと、
前記第1の基板と前記第2の基板を収容する筐体とを備え、
前記複数の矩形金属プレートの表面と前記導波管の前記第1の開口は、前記第1の基板の前記一方の表面に直交する方向で所定距離離間配置されることを特徴とする無線通信装置。
【請求項9】
前記ホーンアンテナは、前記筐体に支持されることを特徴とする請求項8に記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記ホーンアンテナは、前記筐体に一体に成型されることを特徴とする請求項8に記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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