説明

アンテナ装置及び電子機器

【課題】1つのアンテナ装置で2方向の偏波の送受信を可能とするアンテナ装置、及び電子機器を提供する。
【解決手段】平面視にて略相似形状の二枚の放射板1、2と、二枚の放射板1、2の間隙gに配され、当該二枚の放射板1、2の端部を連結するとともに給電を行う給電部3と、を備え、二枚の放射板1、2の成す角度が90°以上180°未満となるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、プリンタ装置、複写機等の電子機器に無線通信機能を持たせLAN(Local Area Network)の無線化を可能とする技術の普及に伴い、電子機器に設置するためのUWB(Ultra WideBand)用のアンテナ装置の開発が進められている(例えば、特許文献1参照。)。UWBとは、比帯域幅が25%以上の超広帯域幅を利用し、近距離間通信において100Mbps以上の高速な通信を可能とする超広帯域無線システムである。
【0003】
特許文献1には、図9(a)に示す、相似形状の2枚の放射板41,42を備えたアンテナ装置40が記載されており、比較として、図9(b)に示す、同一形状の放射板51,51を備えたアンテナ装置50も記載されている。
具体的には、アンテナ装置40には、半径R1の半円形状の放射板41と、半径Rの半円形状の放射板42と、が備えられている。また、アンテナ装置50には、半径R1の半円形状の2枚の放射板51,51が備えられている。なお、各放射板41、42、51において、その直線部の一端から円弧頂点までの部分をそれぞれ円弧部411、421、511とする。
図10はアンテナ装置40のアンテナ特性を示した特性曲線(実線データ)と、アンテナ装置50のアンテナ特性を示した特性曲線(破線データ)である。
ここで、アンテナ特性は、入力電力と反射電力の比から求められるリターンロス特性である。リターンロスは反射係数ともいい、その値が小さい程アンテナ装置としてのマッチングがとれていることを示し、一般に、その値が−10dB以下の範囲が使用帯域として好ましいとされている。
【0004】
図10に示すように、アンテナ装置40(図9(a)参照。:図10の実線データ)では、2枚の放射板41,42の円弧部411,421の距離を合算した距離に基づいて決定される共振点P1と、放射板41の円弧部411の距離に基づいて決定される共振点P2と、放射板42の円弧部421の距離に基づいて決定される共振点P3と、の3つの共振点が周波数の低い方から順に現れる。
一方、アンテナ装置50(図9(b)参照。:図10の破線データ)では、2枚の放射板51,51の円弧部511,511の距離を合算した距離に基づいて決定される共振点P4と、1枚の放射板51の円弧部511の距離に基づいて決定される共振点P5と、の2つの共振点が周波数の低い方から順に現れる。
このように、アンテナ装置40は、アンテナ装置50と比較して共振点の数が増加しており、各共振点でリターンロス特性が極小値を取るので、使用帯域が広帯域化されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−110693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のアンテナ装置40は、その長手方向に沿う偏波には対応可能であるものの厚み方向に沿う偏波に対しては対応が困難であるため、2方向以上の偏波に高感度に対応させるためには、それぞれ各偏波に対応する専用のアンテナ装置を設置する必要がある。したがって、どうしてもアンテナ装置の設置スペースが広範囲にわたるものになっていた。
【0007】
本発明の課題は、1つのアンテナ装置で2方向以上の偏波の送受信を可能とし、設置スペースの抑制を図ることのできるアンテナ装置及び電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明に係るアンテナ装置は、
平面視にて略相似形状の二枚の放射板と、
前記二枚の放射板の間隙に配され、当該二枚の放射板の端部を連結するとともに給電を行う給電部と、を備え、
前記二枚の放射板の成す角度が90°以上180°未満となるように配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記二枚の放射板は、ともに平面視にて半円形状を呈しており、
使用可能周波数の波長λに対して、前記二枚の放射板のうち一方の放射板の半径は0.25λ〜0.35λであり、他方の放射板の半径は0.08λ〜0.16λであることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、
請求項1又は2に記載のアンテナ装置を備える電子機器であって、
前記アンテナ装置を収納する筐体を備え、
前記二枚の放射板のうち、一方の放射板は前記筐体の一面に配置され、他方の放射板は前記一方の放射板の配置された一面と連続する他の一面に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、二枚の放射板の成す角度が90°以上180°未満となるように配置されているため、各放射板の面に沿った2方向からの偏波を感度よく送受信することができる。これにより、1つのアンテナ装置で2方向の偏波の送受信が実現されるため、偏波の方向に合わせて複数のアンテナ装置を設置する必要がなく、設置スペースを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態のアンテナ装置と当該アンテナ装置が搭載された電子機器の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1のアンテナ装置の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図2のアンテナ装置の使用周波数を3GHzとした場合のリターンロス周波数特性を示す特性曲線である。
【図4】図2のアンテナ装置の使用周波数を10GHzとした場合のリターンロス周波数特性を示す特性曲線である。
【図5】図3のアンテナ装置のXY平面における3GHzの放射パターンを示す図であり、(a)はZ成分(b)はY成分の偏波を示している。
【図6】図3のアンテナ装置のYZ平面における3GHzの放射パターンを示す図であり、(a)はZ成分(b)はY成分の偏波を示している。
【図7】図3のアンテナ装置のXY平面における10GHzの放射パターンを示す図であり、(a)はZ成分(b)はY成分の偏波を示している。
【図8】図3のアンテナ装置のYZ平面における10GHzの放射パターンを示す図であり、(a)はZ成分(b)はY成分の偏波を示している。
【図9】従来のアンテナ装置の概略構成を示す図であり、(a)は2枚の放射板が同一形状の場合、(b)は2枚の放射板が相似形状の場合を示している。
【図10】図9に示すアンテナ装置のリターンロス周波数特性を示す特性曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係るアンテナ装置について、図面を参照して説明する。なお、図面上に表示したXYZ軸は共通の軸を示すものとする。
【0014】
図1は本実施形態に係るアンテナ装置10と、当該アンテナ装置10が設置された電子機器20を示す概略図である。
なお、電子機器20とは、例えば、パーソナルコンピュータ、複写機、及びプリンタ装置等が挙げられる。
図1に示すように、電子機器20には、アンテナ装置10を収納する、例えば、略直方体形状をなす筐体30が備えられている。
筐体30の角部には、アンテナ装置10が備えられている。
なお、以下の説明において、筐体30の下面と直交する方向をY方向とし、Y方向と直交な平面における2方向をX方向、Z方向とする。
【0015】
以下、本実施形態におけるアンテナ装置10の構成について詳述する。
アンテナ装置10には、第一放射板1、第二放射板2、及び給電部3が備えられている。
第一放射板1及び第二放射板2は、平面視にて相似する半円形状に形成されている。
ここで、第一放射板1及び第二放射板2の半径をそれぞれr1及びr2とする。
【0016】
第一放射板1及び第二放射板2は、互いの円弧頂点が対向し、かつ、この円弧頂点間が所定幅の間隙gを有するように配置されている。
間隙gには、各放射板に電流を給電するとともに2つの放射板を連結する給電部3が設けられている。アンテナ装置10のインピーダンスは、この間隙gの幅に基づいて決定されるようになっている。
【0017】
また、第一放射板1及び第二放射板2の成す角度は90°となるように配置されている。このため、アンテナ装置10は、直交する2方向からの偏波を送受信可能となっている。
なお、第一放射板1と第二放射板2の成す角度は、90°以上180°未満であればよい。この範囲内の角度を保つことによって、異なる二方向からの偏波を送受信するとともに、第一放射板1と第二放射板2とが互いに干渉するのを防止できるようになっている。
【0018】
また、第一放射板1と第二放射板2とは、筐体30の連続した異なる面にそれぞれ設置されている。
具体的には、第一放射板1は、その面が筐体30のXZ平面に沿うように配置され、第二放射板2はその面が筐体30のXY平面に沿うように配置されている。これにより、アンテナ装置10は、Z方向とY方向の2方向の偏波の送受信が可能となっている。
なお、アンテナ装置10の設置時の向きは上記に限定されるものではなく、第一放射板1と第二放射板2とが連続した異なる側面に位置するように設置されていれば良い。
【0019】
また、本実施形態のアンテナ装置10は、間隙g、第一放射板1の半径r1、及び第二放射板2のrの寸法は、それぞれ、波長換算でg=0.001〜0.005λ、r=0.25〜0.35λ、r=0.08〜0.16λの範囲内の値に設定されている。なお、λは使用周波数の波長である。g、r、及びrは、上記範囲とすることで、好適なアンテナ特性が得られるものであるが、アンテナの使用目的に応じて上記範囲内でg、r、及びrを適宜設定することで、使用目的に即したアンテナ特性が実現される。
【0020】
一般的に、アンテナ装置は、自己相似の理によりその寸法を変化させても、比帯域幅は変わらないことが知られている。
例えば、使用周波数を3GHzとした場合、使用周波数の波長λ=100mmであるので、g=0.1〜0.5mm、r=25〜35mm、r=8〜16mmの範囲内の値の場合に良好なアンテナ特性が得られることとなる。
図3は、上記範囲内の値の一例であるが、g=0.1mm、r=30mm、r=12mmとした場合のアンテナ特性を示した特性曲線である。図3に示すように、3.0〜10.6GHzにおいてリターンロス周波数特性が−10dB以下となるため、帯域幅は7.6GHzであり、比帯域幅は112%となっている。
【0021】
一方、例えば、使用周波数を6GHzとした場合、使用周波数の波長λ=50mmであるので、g=0.05〜0.25mm、r=12.5〜17.5mm、r=4〜8mmの範囲の値の場合に良好なアンテナ特性が得られることとなる。
図4は、上記範囲内の値の一例であるが、g=0.05mm、r=15mm、r=6mmとした場合のアンテナ特性を示した特性曲線である。図4に示すように、6.1〜21.8GHzにおいてリターンロス周波数特性が−10dB以下となるため、帯域幅は15.7GHzであり、比帯域幅は112%となっている。
【0022】
このように、使用周波数に応じてg、r、rの値を設定することによって、比帯域幅112%の広帯域なアンテナ特性を実現させることが可能となる。
【0023】
次に、アンテナ装置10の放射パターンの一例として、図3に示すアンテナ特性を有するアンテナ装置の3GHz、10GHzにおける放射パターンを示す。
図5はXY平面内における放射パターン(3GHz)を示す図であり、図6はYZ平面内における放射パターン(3GHz)を示す図である。また、図7はXY平面内における放射パターン(10GHz)を示す図であり、図8はYZ平面内における放射パターン(10GHz)を示す図である。なお、下記の説明において各図ともに(a)はZ成分の放射パターンを示し、(b)はY成分の放射パターンを示す。
【0024】
図5及び図6に示すように、3GHzの周波数帯においては、XY平面内においてもYZ平面内においてもY成分及びZ成分の放射が確認でき、さらには交差偏波にもなっていないため、3GHz帯におけるY方向の偏波とZ方向の偏波を送受信可能となっていることがわかる。
また、図7及び図8に示すように、10GHzの周波数帯においても、XY平面内においてもYZ平面内においてもY成分及びZ成分の放射が確認でき、さらには交差偏波にもなっていないため、10GHz帯におけるY方向の偏波とZ方向の偏波を送受信可能となっていることがわかる。
従って、アンテナ装置10は、Z方向とY方向の2方向の偏波の送受信が可能となっていることがわかる。
【0025】
次に、本実施形態のアンテナ装置10の通信作用について説明する。
所定の周波数の電波が外部機器より送信されると、アンテナ装置10は、第一放射板1及び第二放射板2のそれぞれにより当該電波を受信する。電波が受信されると、給電部3に向かって受信した電波に応じた振幅及び位相の電圧電流が発生し、給電部3に供給された電流は、図示しない無線通信回路に伝達され、電気信号として処理される。
一方、アンテナ装置10が電波を送信する場合、図示しない無線通信回路からの電気信号に基づいて、給電部3に所定の振幅及び位相で電流が供給される。給電部3に供給された電流は、第一放射板1及び第二放射板2のそれぞれに供給され、当該第一放射板1及び第二放射板2に電流が流れる。そして、第一放射板1及び第二放射板2にそれぞれ電流が流れると、アンテナ装置10から外部機器に対して電波が送信される。
【0026】
以上のように、本実施形態に係るアンテナ装置10によれば、1つのアンテナ装置でY方向、及びZ方向の2方向の偏波を感度よく送受信することが可能となる。これにより、1つのアンテナ装置で2方向の偏波の送受信が実現されるため、偏波の方向に合わせて複数のアンテナ装置を設置する必要がなく、設置スペースを抑制することが可能となる。
【0027】
また、二枚の放射板の平面視形状が相似しているため、同一形状の二枚の放射板を用いたアンテナ装置と比較して共振点が増加し、アンテナ装置の使用帯域を広帯域化することができる。
特に、第一放射板1の半径rを0.25λ〜0.35λの範囲内の値に設定し、第二放射板2の半径rを0.08λ〜0.16λの範囲内の値に設定することで、広帯域なアンテナ特性を得ることが可能となる。
【0028】
また、二枚の放射板がそれぞれ電子機器の異なる面に配置されているため、どちらか一方の放射板が、例えば壁や載置物などの遮蔽物によってその特性に影響を受けた場合であっても他方の放射板の特性が維持できる。従って、電子機器の設置環境によらず良好なアンテナ特性を維持することが可能となる。
【0029】
なお、本実施形態においては、第一放射板1から第二放射板2の形状を半円形状として説明したが、これ以外にも、例えば、半楕円形状、台形、長方形、二等辺三角形などとしても良い。
また、アンテナ装置10の設置時の向きとしては、第一放射板1及び第二放射板2とも筐体30の側面に位置するように設置しても良い。
また、アンテナ装置10は、電子機器20の外壁に取り付けることとしても良い。
【0030】
その他、本発明が上記実施の形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
10 アンテナ装置
1 第一放射板
2 第二放射板
3 給電部
20 電子機器
30 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視にて略相似形状の二枚の放射板と、
前記二枚の放射板の間隙に配され、当該二枚の放射板の端部を連結するとともに給電を行う給電部と、を備え、
前記二枚の放射板の成す角度が90°以上180°未満となるように配置されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記二枚の放射板は、ともに平面視にて半円形状を呈しており、
使用可能周波数の波長λに対して、前記二枚の放射板のうち一方の放射板の半径は0.25λ〜0.35λであり、他方の放射板の半径は0.08λ〜0.16λであることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアンテナ装置を備える電子機器であって、
前記アンテナ装置を収納する筐体を備え、
前記二枚の放射板のうち、一方の放射板は前記筐体の一面に配置され、他方の放射板は前記一方の放射板の配置された一面と連続する他の一面に配置されることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−183211(P2010−183211A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23169(P2009−23169)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】