アンテナ装置
【課題】 アレイ技術を使用せずに、アンテナ素子の利得増強を図ることができる、アンテナ装置を提供すること。
【解決手段】アンテナ装置10Aは、EBG板12と、EBG板の中央部で支持された1個のカールアンテナ21と、EBG板の主面から所定の距離Hだけ離間して配置された周期構造上板30とから成る。EBG板12は、主面を持つ基板122と、基板の主面上に印刷されてマトリックス状(格子構造)に配列された(Nx×Ny)個の方形パッチ124とを有する。周期構造上板30は、フィルムと、このフィルムに印刷された(Nx×Ny)個の方形パッチ状導体(34)とを有する。(Nx×Ny)個の方形パッチ状導体34は、(Nx×Ny)個の方形パッチ124とそれぞれ対向して配置されている。
【解決手段】アンテナ装置10Aは、EBG板12と、EBG板の中央部で支持された1個のカールアンテナ21と、EBG板の主面から所定の距離Hだけ離間して配置された周期構造上板30とから成る。EBG板12は、主面を持つ基板122と、基板の主面上に印刷されてマトリックス状(格子構造)に配列された(Nx×Ny)個の方形パッチ124とを有する。周期構造上板30は、フィルムと、このフィルムに印刷された(Nx×Ny)個の方形パッチ状導体(34)とを有する。(Nx×Ny)個の方形パッチ状導体34は、(Nx×Ny)個の方形パッチ124とそれぞれ対向して配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関し、特に、EBG(Electromagnetic Band Gap)板を用いたアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナ装置の一つとして、単繊維らせん状アレイアンテナ(Monofilar spiral array antenna)が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
以下、図1を参照して、非特許文献1に開示されている、従来のアンテナ装置(単繊維らせん状アレイアンテナ)10について説明する。ここでは、図1に示されるように、直交座標系(x、y、z)を使用している。直交座標系(x、y、z)において、後述する基板122の中心を原点にとり、x軸は前後方向(奥行き方向)であり、y軸は左右方向(幅方向)であり、z軸は上下方向(高さ方向)である。
【0004】
単繊維らせん状アレイアンテナ10は、マッシュルーム状のEBG板12と、第1乃至第4のアレイ要素21、22、23および24とから構成される。
【0005】
EBG板12は、矩形の基板122と、この基板122の主面上に印刷された(Nx×Ny)個の方形パッチ124と、基板122の裏面に形成(配置)されたグランド板126とから構成される。各方形パッチ124は、Spatchの長さの一辺を持ち、導伝ピン128でグランド板126と短絡されている。パッチ124が印刷される基板122は、比誘電率εrを持ち、厚さBを持つ。グランド板126は、x方向の長さSGPxと、y方向の幅SGPyとを持つ。
【0006】
第1乃至第4のアレイ要素21〜24は、EBG板12によって支持されている。第1乃至第4のアレイ要素21〜24は、x方向においてアレイ間隔dxだけ離間している。
【0007】
図2を参照して、各アレイ要素21〜24について説明する。第1乃至第4のアレイ要素21〜24は同じ形状(構造)を有するので、第1のアレイ要素21についてのみ説明する。尚、アレイ要素はカールアンテナと呼ばれる。
【0008】
アレイ要素(カールアンテナ)21は、1つの垂直細糸と、N個の水平細糸とから構成される。垂直細糸の長さは、アンテナ高さに等しく、hである。第1の水平細糸は長さs1を持ち、第n(n=2,3、…、N−1)の水平細糸は、sn=2(n−1)s1として規定される長さを持つ。最後の水平細糸(第Nの水平細糸)は長さsNを持つ。すべての細糸は幅wを持つ。この渦巻き(カールアンテナ)21は、垂直細糸の終端から同軸線(図示せず)によって給電される。
【0009】
図示の単繊維らせん状アレイアンテナ10は、次のようなパラメータを持つ。λ6が6GHzの試験周波数での自由空間の波長であるとする。アレイ間隔dxは0.88λ6である。アンテナ高さhは0.1λ6である。第1の水平細糸の長さs1は0.03λ6である。水平細糸の数Nは8である。細糸の幅wは0.02λ6である。パッチ124の個数(Nx、Ny)は(18,6)である。パッチ124の一辺の長さSpatchは0.2λ6である。基板122の比誘電率εrは2.2である。基板122の厚さBは0.04λ6である。パッチ124の間隔δpatchは0.02λ6である。
【0010】
図3は、図1に示した単繊維らせん状アレイアンテナ10の、周波数が6GHzでの放射パターンを示す。図示の放射パターンは、FDTD法(Finite Difference Time Domain Method)を用いて解析したものである。放射電界が2つの放射電界成分ER及びELで示されている。図1におけるらせんの巻き方から分かるように、主偏波電界成分がERであり、交差偏波電界成分がELである。図3は、アレイが狭い円偏波(CP)放射ビームをもたらすことを明らかに示しており、アレイの電力半値幅(HPBW)は約14°と計算される。ここで、1つのアレイ要素のHPBWは、68°であることに注意されたい。
【0011】
とにかく、非特許文献1では、アレイによるカールアンテナの利得増強を報告している。
【0012】
【非特許文献1】H. Nakano, T. Taniguchi, K. Sato, T. Maruyama, H. Mimaki, and J. Yamauchi, “A monofilar spiral antenna array above an EBG reflector”, Int. Symp. Antennas and Propagation (ISAP), pp.629-632. Seoul, Korea, August 2005.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図1に示した従来のアンテナ装置(単繊維らせん状アレイアンテナ)10では、第1乃至第4のアレイ要素(カールアンテナ)21〜24のように、アンテナ素子として、複数個のカールアンテナをアレイ状に配列する必要がある。そのため、給電方法が複雑になるという問題がある。
【0014】
そこで、本発明者らは、このようなアレイ技術を使わないで、利得を増強する技術について試行錯誤した。
【0015】
したがって、本発明の課題は、アレイ技術を使用せずに、アンテナ素子の利得増強を図ることができる、アンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、主面を持つEBG板(12)と、該EBG板で支持された1個のアンテナ素子(21)と、前記EBG板の主面から所定の距離(H)だけ離間して配置された周期構造上板(30)と、を有することを特徴とするアンテナ装置(10A)が得られる。
【0017】
上記本発明によるアンテナ装置において、前記1個のアンテナ素子(21)は、前記EBG板(12)の実質的に中央部に配置されていることが好ましい。前記アンテナ素子は、例えば、カールアンテナ(21)から構成されて良い。前記EBG板(12)は、前記主面を持つ基板(122)と、該基板の主面上に印刷されてマトリックス状(格子構造)に配列された(Nx×Ny)個の方形パッチ(124)とを有するものであって良い。この場合、前記周期構造上板(30)は、フィルムと、該フィルムに印刷された(Nx×Ny)個の方形パッチ状導体(34)とを有するもので良く、該(Nx×Ny)個の方形パッチ状導体(34)は前記(Nx×Ny)個の方形パッチ(124)とそれぞれ対向して配置されて良い。前記EBG板(12)は、前記基板の裏面に配置されたグランド板(126)と、前記(Nx×Ny)個の方形パッチ(124)をそれぞれ前記グランド板へ短絡する(Nx×Ny)本の導伝ピン(128)とを有して良い。
【0018】
尚、上記括弧内の符号は、本発明の理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、これらに限定されないのは勿論である。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、EBG板の上に1個のアンテナ素子が置かれ、EBG板の上方に所定の距離だけ離間して周期構造上板を配置したので、アレイ技術を使用せずに、アンテナ素子の利得増強を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
図4及び図5を参照して、本発明の一実施の形態によるアンテナ装置10Aについて説明する。図4はアンテナ装置10Aの斜視図であり、図5はアンテナ装置10Aの正面図である。ここでは、図1の場合と同様の直交座標系(x、y、z)を使用している。直交座標系(x、y、z)において、基板122の中心を原点にとり、x軸は前後方向(奥行き方向)であり、y軸は左右方向(幅方向)であり、z軸は上下方向(高さ方向)である。
【0022】
図示のアンテナ装置10Aは、x−y面と平行な面上に延在する、主面を持つEBG板12と、EBG板12の主面上にその中央部で支持されて設けられた1個のカールアンテナ21と、EBG板12の主面から所定の距離Hだけ離間して配置された周期構造上板30とを有する。
【0023】
EBG板12の構造は、図1を参照して説明したものと同様である。すなわち、EBG板12は、主面を持つ基板122と、この基板122の主面上に印刷された(Nx×Ny)個の方形パッチ124と、基板122の裏面に設けられたグランド板126と、各方形パッチ124をグランド板126へ短絡する導伝ピン128とを有する。換言すれば、(Nx×Ny)個の方形パッチ124は、基板122の主面上に印刷されてマトリックス状(格子構造)に配列されている。基板122は、比誘電率εrを持ち、厚さBを持つ。尚、EBG板12(基板122)は、x方向の長さLxを持ち、y方向の幅Lyを持つ。
【0024】
基板122としては、高周波域での損失が小さい、テフロン(登録商標)などの樹脂を用いることが好ましい。
【0025】
一方、1個のカールアンテナ21は、EBG板12の中央部から上方へ立設している。カールアンテナ21の水平細糸は、基板122の主面から高さh’の距離にある。
【0026】
周期構造上板30は、x−y面と平行な面上に延在するフィルム(図示せず)と、このフィルムに印刷された(Nx×Ny)個の方形パッチ状導体34とを有する。これら(Nx×Ny)個の方形パッチ状導体34は、(Nx×Ny)個の方形パッチ124とそれぞれ対向して配置されている。
【0027】
各方形パッチ124の一辺及び各方形パッチ状導体34の一辺は、Spatchの長さを持つ。
【0028】
図示の例では、アンテナ装置10Aは次のようなパラメータを持つ。基板122の比誘電率εrは2.2である。各方形パッチ124の一辺及び方形パッチ状導体34の一辺の長さSpatchは10mmである。基板122の厚さBは2.0mmである。EBG板12のx方向の長さLxは87mmであり、y方向の長さLyは87mmである。カールアンテナ21の高さh’は3.0mmである。EBG板12と周期構造上板30との離間距離Hは10mmである。また、方形パッチ123及び方形パッチ状導体34の個数(Nx×Ny)は、(8×8)である。
【0029】
図6に、アンテナ装置10Aの右旋円偏波利得GRの周波数特性を示す。図示の右旋円偏波利得GRの周波数特性は、FDTD法(Finite Difference Time Domain Method)を用いて解析したものである。図6において、横軸は周波数(frequency)[GHz]を示し、縦軸は右旋円偏波利得GR[dB]を示す。図6から、最大利得13.1dBが周波数6.75GHzにおいて得られることが分かる。このときの高さHは0.225λ6.75となっている。尚、λ6.75は、6.75GHzの周波数での自由空間の波長である。この最大利得は、周期構造上板30を設置していない場合に比べて、約4.5dBの増加となっている。
【0030】
図7に図4及び図5に示したアンテナ装置10Aの放射パターンの一例を示す。但し、図7では、比較のために周期構造上板30を使用しない場合の放射パターンも示してある。図7において、実線のERは主偏波電界成分を示し、点線のELは交差偏波電界成分を示す。また、図7において、上側の2つの放射パターンは、周期構造上板30を使用したアンテナ装置10Aの、周波数fが6.75GHzでの放射パターンを示し、下側の2つの放射パターンは、周期構造上板30のないアンテナ装置(すなわち、EBG板12と1個のカールアンテナ21のみから成る)の、周波数fが6GHzでの放射パターンを示す。
【0031】
図7から、周期構造上板30がないものと比較して、周期構造上板30があるアンテナ装置10Aの方が、ビームが先鋭化されていることがわかる。
【0032】
したがって、EBG板12と周期構造上板30とを用いることにより、カールアンテナ21の利得増加を図ることができる。上記実施の形態では、約4.5dBの利得増加が得られた。
【0033】
以上、本発明について好ましい実施の形態によって説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定しないのは勿論である。例えば、上述した実施の形態では、アンテナ素子としてカールアンテナを用いた例について述べたが、アンテナ素子の形状はこれに限定されないのは勿論である。例えば、アンテナ素子として、パッチアンテナなどを使用しても良い。また、上述した実施の形態では、周期構造上板30として、パッチ状導体が印刷されたフィルムを使用した例について述べているが、フィルムの代わりに基板を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】従来のアンテナ装置(単繊維らせん状アレイアンテナ)を示す斜視図である。
【図2】図1に示したアンテナ装置に使用されるカールアンテナを示す斜視図である。
【図3】図1に示したアンテナ装置の放射パターンを示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るアンテナ装置を示す斜視図である。
【図5】図4に示したアンテナ装置の正面図である。
【図6】図4に示したアンテナ装置の右旋円偏波利得の周波数特性を示す図である。
【図7】周期構造上板のある図4に示したアンテナ装置と周期構造上板のないアンテナ装置の放射パターンを示す図である。
【符号の説明】
【0035】
10A アンテナ装置
12 EBG板
122 基板
124 方形パッチ
126 グランド板
128 導伝ピン
21 カールアンテナ(アンテナ素子)
30 周期構造上板
34 方形パッチ状導体
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関し、特に、EBG(Electromagnetic Band Gap)板を用いたアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナ装置の一つとして、単繊維らせん状アレイアンテナ(Monofilar spiral array antenna)が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
以下、図1を参照して、非特許文献1に開示されている、従来のアンテナ装置(単繊維らせん状アレイアンテナ)10について説明する。ここでは、図1に示されるように、直交座標系(x、y、z)を使用している。直交座標系(x、y、z)において、後述する基板122の中心を原点にとり、x軸は前後方向(奥行き方向)であり、y軸は左右方向(幅方向)であり、z軸は上下方向(高さ方向)である。
【0004】
単繊維らせん状アレイアンテナ10は、マッシュルーム状のEBG板12と、第1乃至第4のアレイ要素21、22、23および24とから構成される。
【0005】
EBG板12は、矩形の基板122と、この基板122の主面上に印刷された(Nx×Ny)個の方形パッチ124と、基板122の裏面に形成(配置)されたグランド板126とから構成される。各方形パッチ124は、Spatchの長さの一辺を持ち、導伝ピン128でグランド板126と短絡されている。パッチ124が印刷される基板122は、比誘電率εrを持ち、厚さBを持つ。グランド板126は、x方向の長さSGPxと、y方向の幅SGPyとを持つ。
【0006】
第1乃至第4のアレイ要素21〜24は、EBG板12によって支持されている。第1乃至第4のアレイ要素21〜24は、x方向においてアレイ間隔dxだけ離間している。
【0007】
図2を参照して、各アレイ要素21〜24について説明する。第1乃至第4のアレイ要素21〜24は同じ形状(構造)を有するので、第1のアレイ要素21についてのみ説明する。尚、アレイ要素はカールアンテナと呼ばれる。
【0008】
アレイ要素(カールアンテナ)21は、1つの垂直細糸と、N個の水平細糸とから構成される。垂直細糸の長さは、アンテナ高さに等しく、hである。第1の水平細糸は長さs1を持ち、第n(n=2,3、…、N−1)の水平細糸は、sn=2(n−1)s1として規定される長さを持つ。最後の水平細糸(第Nの水平細糸)は長さsNを持つ。すべての細糸は幅wを持つ。この渦巻き(カールアンテナ)21は、垂直細糸の終端から同軸線(図示せず)によって給電される。
【0009】
図示の単繊維らせん状アレイアンテナ10は、次のようなパラメータを持つ。λ6が6GHzの試験周波数での自由空間の波長であるとする。アレイ間隔dxは0.88λ6である。アンテナ高さhは0.1λ6である。第1の水平細糸の長さs1は0.03λ6である。水平細糸の数Nは8である。細糸の幅wは0.02λ6である。パッチ124の個数(Nx、Ny)は(18,6)である。パッチ124の一辺の長さSpatchは0.2λ6である。基板122の比誘電率εrは2.2である。基板122の厚さBは0.04λ6である。パッチ124の間隔δpatchは0.02λ6である。
【0010】
図3は、図1に示した単繊維らせん状アレイアンテナ10の、周波数が6GHzでの放射パターンを示す。図示の放射パターンは、FDTD法(Finite Difference Time Domain Method)を用いて解析したものである。放射電界が2つの放射電界成分ER及びELで示されている。図1におけるらせんの巻き方から分かるように、主偏波電界成分がERであり、交差偏波電界成分がELである。図3は、アレイが狭い円偏波(CP)放射ビームをもたらすことを明らかに示しており、アレイの電力半値幅(HPBW)は約14°と計算される。ここで、1つのアレイ要素のHPBWは、68°であることに注意されたい。
【0011】
とにかく、非特許文献1では、アレイによるカールアンテナの利得増強を報告している。
【0012】
【非特許文献1】H. Nakano, T. Taniguchi, K. Sato, T. Maruyama, H. Mimaki, and J. Yamauchi, “A monofilar spiral antenna array above an EBG reflector”, Int. Symp. Antennas and Propagation (ISAP), pp.629-632. Seoul, Korea, August 2005.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図1に示した従来のアンテナ装置(単繊維らせん状アレイアンテナ)10では、第1乃至第4のアレイ要素(カールアンテナ)21〜24のように、アンテナ素子として、複数個のカールアンテナをアレイ状に配列する必要がある。そのため、給電方法が複雑になるという問題がある。
【0014】
そこで、本発明者らは、このようなアレイ技術を使わないで、利得を増強する技術について試行錯誤した。
【0015】
したがって、本発明の課題は、アレイ技術を使用せずに、アンテナ素子の利得増強を図ることができる、アンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、主面を持つEBG板(12)と、該EBG板で支持された1個のアンテナ素子(21)と、前記EBG板の主面から所定の距離(H)だけ離間して配置された周期構造上板(30)と、を有することを特徴とするアンテナ装置(10A)が得られる。
【0017】
上記本発明によるアンテナ装置において、前記1個のアンテナ素子(21)は、前記EBG板(12)の実質的に中央部に配置されていることが好ましい。前記アンテナ素子は、例えば、カールアンテナ(21)から構成されて良い。前記EBG板(12)は、前記主面を持つ基板(122)と、該基板の主面上に印刷されてマトリックス状(格子構造)に配列された(Nx×Ny)個の方形パッチ(124)とを有するものであって良い。この場合、前記周期構造上板(30)は、フィルムと、該フィルムに印刷された(Nx×Ny)個の方形パッチ状導体(34)とを有するもので良く、該(Nx×Ny)個の方形パッチ状導体(34)は前記(Nx×Ny)個の方形パッチ(124)とそれぞれ対向して配置されて良い。前記EBG板(12)は、前記基板の裏面に配置されたグランド板(126)と、前記(Nx×Ny)個の方形パッチ(124)をそれぞれ前記グランド板へ短絡する(Nx×Ny)本の導伝ピン(128)とを有して良い。
【0018】
尚、上記括弧内の符号は、本発明の理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、これらに限定されないのは勿論である。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、EBG板の上に1個のアンテナ素子が置かれ、EBG板の上方に所定の距離だけ離間して周期構造上板を配置したので、アレイ技術を使用せずに、アンテナ素子の利得増強を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
図4及び図5を参照して、本発明の一実施の形態によるアンテナ装置10Aについて説明する。図4はアンテナ装置10Aの斜視図であり、図5はアンテナ装置10Aの正面図である。ここでは、図1の場合と同様の直交座標系(x、y、z)を使用している。直交座標系(x、y、z)において、基板122の中心を原点にとり、x軸は前後方向(奥行き方向)であり、y軸は左右方向(幅方向)であり、z軸は上下方向(高さ方向)である。
【0022】
図示のアンテナ装置10Aは、x−y面と平行な面上に延在する、主面を持つEBG板12と、EBG板12の主面上にその中央部で支持されて設けられた1個のカールアンテナ21と、EBG板12の主面から所定の距離Hだけ離間して配置された周期構造上板30とを有する。
【0023】
EBG板12の構造は、図1を参照して説明したものと同様である。すなわち、EBG板12は、主面を持つ基板122と、この基板122の主面上に印刷された(Nx×Ny)個の方形パッチ124と、基板122の裏面に設けられたグランド板126と、各方形パッチ124をグランド板126へ短絡する導伝ピン128とを有する。換言すれば、(Nx×Ny)個の方形パッチ124は、基板122の主面上に印刷されてマトリックス状(格子構造)に配列されている。基板122は、比誘電率εrを持ち、厚さBを持つ。尚、EBG板12(基板122)は、x方向の長さLxを持ち、y方向の幅Lyを持つ。
【0024】
基板122としては、高周波域での損失が小さい、テフロン(登録商標)などの樹脂を用いることが好ましい。
【0025】
一方、1個のカールアンテナ21は、EBG板12の中央部から上方へ立設している。カールアンテナ21の水平細糸は、基板122の主面から高さh’の距離にある。
【0026】
周期構造上板30は、x−y面と平行な面上に延在するフィルム(図示せず)と、このフィルムに印刷された(Nx×Ny)個の方形パッチ状導体34とを有する。これら(Nx×Ny)個の方形パッチ状導体34は、(Nx×Ny)個の方形パッチ124とそれぞれ対向して配置されている。
【0027】
各方形パッチ124の一辺及び各方形パッチ状導体34の一辺は、Spatchの長さを持つ。
【0028】
図示の例では、アンテナ装置10Aは次のようなパラメータを持つ。基板122の比誘電率εrは2.2である。各方形パッチ124の一辺及び方形パッチ状導体34の一辺の長さSpatchは10mmである。基板122の厚さBは2.0mmである。EBG板12のx方向の長さLxは87mmであり、y方向の長さLyは87mmである。カールアンテナ21の高さh’は3.0mmである。EBG板12と周期構造上板30との離間距離Hは10mmである。また、方形パッチ123及び方形パッチ状導体34の個数(Nx×Ny)は、(8×8)である。
【0029】
図6に、アンテナ装置10Aの右旋円偏波利得GRの周波数特性を示す。図示の右旋円偏波利得GRの周波数特性は、FDTD法(Finite Difference Time Domain Method)を用いて解析したものである。図6において、横軸は周波数(frequency)[GHz]を示し、縦軸は右旋円偏波利得GR[dB]を示す。図6から、最大利得13.1dBが周波数6.75GHzにおいて得られることが分かる。このときの高さHは0.225λ6.75となっている。尚、λ6.75は、6.75GHzの周波数での自由空間の波長である。この最大利得は、周期構造上板30を設置していない場合に比べて、約4.5dBの増加となっている。
【0030】
図7に図4及び図5に示したアンテナ装置10Aの放射パターンの一例を示す。但し、図7では、比較のために周期構造上板30を使用しない場合の放射パターンも示してある。図7において、実線のERは主偏波電界成分を示し、点線のELは交差偏波電界成分を示す。また、図7において、上側の2つの放射パターンは、周期構造上板30を使用したアンテナ装置10Aの、周波数fが6.75GHzでの放射パターンを示し、下側の2つの放射パターンは、周期構造上板30のないアンテナ装置(すなわち、EBG板12と1個のカールアンテナ21のみから成る)の、周波数fが6GHzでの放射パターンを示す。
【0031】
図7から、周期構造上板30がないものと比較して、周期構造上板30があるアンテナ装置10Aの方が、ビームが先鋭化されていることがわかる。
【0032】
したがって、EBG板12と周期構造上板30とを用いることにより、カールアンテナ21の利得増加を図ることができる。上記実施の形態では、約4.5dBの利得増加が得られた。
【0033】
以上、本発明について好ましい実施の形態によって説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定しないのは勿論である。例えば、上述した実施の形態では、アンテナ素子としてカールアンテナを用いた例について述べたが、アンテナ素子の形状はこれに限定されないのは勿論である。例えば、アンテナ素子として、パッチアンテナなどを使用しても良い。また、上述した実施の形態では、周期構造上板30として、パッチ状導体が印刷されたフィルムを使用した例について述べているが、フィルムの代わりに基板を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】従来のアンテナ装置(単繊維らせん状アレイアンテナ)を示す斜視図である。
【図2】図1に示したアンテナ装置に使用されるカールアンテナを示す斜視図である。
【図3】図1に示したアンテナ装置の放射パターンを示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るアンテナ装置を示す斜視図である。
【図5】図4に示したアンテナ装置の正面図である。
【図6】図4に示したアンテナ装置の右旋円偏波利得の周波数特性を示す図である。
【図7】周期構造上板のある図4に示したアンテナ装置と周期構造上板のないアンテナ装置の放射パターンを示す図である。
【符号の説明】
【0035】
10A アンテナ装置
12 EBG板
122 基板
124 方形パッチ
126 グランド板
128 導伝ピン
21 カールアンテナ(アンテナ素子)
30 周期構造上板
34 方形パッチ状導体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を持つEBG板と、該EBG板で支持された1個のアンテナ素子と、前記EBG板の主面から所定の距離だけ離間して配置された周期構造上板とを有する、ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記1個のアンテナ素子は、前記EBG板の実質的に中央に配置されている、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記アンテナ素子がカールアンテナから成る、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記EBG板は、前記主面を持つ基板と、該基板の主面上に印刷されてマトリックス状(格子構造)に配列された(Nx×Ny)個の方形パッチとを有し、
前記周期構造上板は、フィルムと、該フィルムに印刷された(Nx×Ny)個の方形パッチ状導体とを有し、
前記(Nx×Ny)個の方形パッチ状導体は前記(Nx×Ny)個の方形パッチとそれぞれ対向して配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記EBG板は、前記基板の裏面に配置されたグランド板と、前記(Nx×Ny)個の方形パッチをそれぞれ前記グランド板へ短絡する(Nx×Ny)本の導伝ピンとを有する、請求項4に記載のアンテナ装置。
【請求項1】
主面を持つEBG板と、該EBG板で支持された1個のアンテナ素子と、前記EBG板の主面から所定の距離だけ離間して配置された周期構造上板とを有する、ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記1個のアンテナ素子は、前記EBG板の実質的に中央に配置されている、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記アンテナ素子がカールアンテナから成る、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記EBG板は、前記主面を持つ基板と、該基板の主面上に印刷されてマトリックス状(格子構造)に配列された(Nx×Ny)個の方形パッチとを有し、
前記周期構造上板は、フィルムと、該フィルムに印刷された(Nx×Ny)個の方形パッチ状導体とを有し、
前記(Nx×Ny)個の方形パッチ状導体は前記(Nx×Ny)個の方形パッチとそれぞれ対向して配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記EBG板は、前記基板の裏面に配置されたグランド板と、前記(Nx×Ny)個の方形パッチをそれぞれ前記グランド板へ短絡する(Nx×Ny)本の導伝ピンとを有する、請求項4に記載のアンテナ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2007−235460(P2007−235460A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53905(P2006−53905)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【出願人】(000213367)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【出願人】(000213367)
【Fターム(参考)】
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