説明

アンテナ装置

【課題】本発明はアンテナ装置に関し、車内アンテナを車内の好みの位置に配置できるアンテナ装置を得ることを目的とする。
【解決手段】第1コイル21と第1コンデンサ31が直列に接続された第1アンテナ11と、第2コイル22と第2コンデンサ32が直列に接続された第2アンテナ12を、第1、第2コイル21,22に流れる互いの高周波電流i1,i2の矢印で示す旋回方向は逆方向で、かつその中心軸は平行になるように形成すると共に、第2アンテナ12側の第2コイル22に電流調整手段である固定抵抗器5を接続してアンテナ装置1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機と車載機の間で通信を行い車両ドアなどの施錠/解錠を遠隔操作する無線通信システムに用いられるアンテナ装置に関するもので、より詳しくは車両の車内通信エリア検出用のアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機と車両に搭載されたアンテナ装置を有する車載機の間で通信を行い、車両ドアの施錠/解錠を制御する通信システムを搭載した車両が増えている。
【0003】
そして、アンテナ装置は、車両の車外/車内に電磁波を送信しその通信エリア内の携帯機の有無検出を行うために、複数のアンテナが用いられている。
【0004】
ここで、車外検出用のアンテナ(以後、車外アンテナと記載する)は車両の各ドアノブ近傍に配設されて車外に携帯機を検出するように所定の車外通信エリアを有している。
【0005】
また、車内検出用のアンテナ(以後、車内アンテナと記載する)は車内の前部と後部の座席近傍の床面で車両の略中央上に配設されて車内全域の携帯機を検出するように車内通信エリアを有してアンテナ装置が構成されている。
【0006】
以上の構成において、無線通信システムは車外アンテナの検出信号により携帯機を持つ使用者がドアに近づいた際はドアを解錠し、使用者がドアから遠ざかった際はドアを施錠する。
【0007】
また、車内アンテナの検出信号により携帯機が車内にあることを検出した場合には、機械鍵なしでエンジン操作ノブの操作によりエンジン駆動を許可する、いわゆる自動イグニッション動作などが行えるようになっている。
【0008】
なお、車内アンテナの配置が、車内の前後部で、かつ車両の略中央上に配設されているのは、その通信エリアが車外に及ばないようにしているためで、電磁波が車外に及ぶ(以下、車外漏れと記載する)と、その通信エリア内の車外に携帯機が有った場合、車内に有ると誤判定してしまう恐れがある。
【0009】
これは、従来のアンテナ装置が図2の破線で示す指向性Bの特性をもつもので、図2の中心、つまりアンテナ中心から電磁波が放射状に放出され、等距離位置ではいずれの場所でも同じ電磁波強度になるため、従来のアンテナ装置を車内アンテナとして用い、例えば図3に示すように車内の中央部で、かつ車両側方の運転席ドアの下部などに配置すると、その通信エリアは破線で示す通信エリアBとなって車外漏れを生じる恐れがあるためであった。
【0010】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1,2,3が知られている。
【特許文献1】特開2004−27490号公報
【特許文献2】特開昭59−170373号公報
【特許文献3】特開2000−183632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来のアンテナ装置においては、車内アンテナの配置を車内の前後部で、かつ車両の略中央上に配設する必要がある、という配置位置に制約があるという課題があった。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、車内アンテナを車内の好みの位置に配置できるアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明のアンテナ装置は、以下の構成を有するものである。
【0014】
本発明の請求項1に記載の発明は、第1、第2コイルに流れる互いの高周波電流の旋回方向を逆方向に、かつその中心軸を平行に形成すると共に、いずれか1つのアンテナ側にその高周波電流を調整する電流調整手段を設けてアンテナ装置を構成したものであり、第1、第2コイルに流れる互いの高周波電流の旋回方向を逆方向にすることによって、第1、第2コイルそれぞれにより発生する電磁波を逆相にし、かつ電流調整手段で一方のコイル側の電磁波強度を調整することで、合成電磁波強度を左右非対称にできるため、車内アンテナを車内の好みの位置に配置しても車外漏れを生じる恐れがなく、かつ車内全域に通信エリアを確保できるアンテナ装置を得ることができるという作用を有する。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、電流調整手段を、インピーダンス成分を有する電流制限素子としたものであり、例えば電流制限素子の固定抵抗器などを用いることによって、安価な部品で構成できるという作用を有する。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の発明において、電流調整手段を、第1または第2コイル内に挿入した磁性体により形成したものであり、コイル内に挿入された磁性体の位置を変えることにより、コイルのリアクタンス成分を変え高周波電流を調整できるため、通信エリアを精度良く調整できるという作用を有する。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によれば、車内アンテナを車内の好みの位置に配置できるアンテナ装置を得ることができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図4を用いて説明する。
【0019】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態によるアンテナ装置のブロック図、図2は同特性図であり、同図において、11はループ状に巻回された第1コイル21と第1コンデンサ31が直列に接続された第1アンテナ、12は同じくループ状に巻回された第2コイル22と第2コンデンサ32が直列に接続された第2アンテナ、4は第1、第2アンテナ11,12(車内アンテナ11,12)に並列に高周波電流を供給する制御回路である。
【0020】
そして、第1、第2コイル21,22に流れる互いの高周波電流i1,i2の旋回方向が逆方向になるように、第1アンテナ11側の第1コイル21は巻回始め21AがGNDに接続され、巻回終り21Bが第1コンデンサ31を介して制御回路4に接続されている。
【0021】
また、第2アンテナ12側の第2コイル22は巻回始め22Aが電流調整手段である固定抵抗器5を介して制御回路4に接続され、巻回終り22Bが第2コンデンサ32を経てGNDに接続されている。
【0022】
したがって、第1、第2コイル21,22に流れる互いの高周波電流i1,i2は矢印で示すようにその旋回方向は逆方向で、かつ高周波電流i1,i2の中心軸21C,22Cは平行になるように形成されてアンテナ装置1が構成されている。
【0023】
以上の構成において、制御回路4が第1、第2アンテナ11,12に高周波電流を供給することで、アンテナ装置1は所定の通信エリアに電磁波を放射して携帯機(図示せず)との通信を行うことで携帯機の存在を検出するものである。
【0024】
図2はアンテナ装置1の電磁波の指向性で、第1コイル21のその中心軸21Cの中心を原点にXYZ軸と定義したときのX−Z平面における指向特性で、一例として、制御回路4から搬送周波数125kHz、第1アンテナ11への高周波電流0.9A、第2アンテナ12への高周波電流は略0.7Aになるように固定抵抗器5の抵抗値を調整し、中心軸21C,22C間の距離Lを70mmにした時の特性である。
【0025】
そして、図2の破線は従来のアンテナ装置の指向性B、太線は本発明のアンテナ装置1の指向性Aで、従来の指向性BはZ軸線を中心に左右対称の特性だが、本発明の指向性AはZ軸線を中心に左右非対称の特性で+X軸(90°)と−X軸(270°)の電磁波強度差が10dB以上確保できるものである。
【0026】
上記指向性AのX軸上における非対称性は、第1、第2コイル21,22に流れる互いの高周波電流i1,i2の電流値違いおよび旋回方向が逆方向、つまり互いの高周波電流i1,i2により発生する電磁波が逆相になり、かつ第1、第2コイル21,22の中心軸21C,22Cが距離Lの間隔を有することにより次のように形成される。
【0027】
まず、第1コイル21の中心を原点に、+X軸側においては、第1コイル21への高周波電流0.9Aにより発生した+X軸方向の電磁波が距離L離れた第2コイル22の位置で減衰し,かつその位置での第2コイル22への高周波電流0.7Aにより発生した逆相の電磁波によりさらに減衰され合成電磁波強度が小さくなる。
【0028】
一方、−X軸側においては、第1コイル21により発生した−X軸方向の電磁波が距離L離れた第2コイル22から遠ざかる方向であり、第2コイル22の逆相の電磁波による影響を小さいため合成電磁波強度の低下が抑制される。
【0029】
ここで、第1、第2コイル21,22間の距離Lを変えることで、第1コイル21の電磁波に及ぼす第2コイル22の逆相の電磁波による影響度合いを変えることができるため、指向性Aは所望の特性形状を得ることができる。
【0030】
また、固定抵抗器5の抵抗値を変えることで、第1コイル21の電磁波に及ぼす第2コイル22の逆相の電磁波による影響度合いを変えることができるため、指向性Aは所望の特性形状を得ることができる。
【0031】
そして、例えば図3に示すように車内の中央部で、かつ車両側方の運転席ドアの下部にアンテナ装置を配置した際の通信エリアは、破線で示す従来のアンテナ装置の通信エリアBが車外漏れを生じる恐れがあるのに対し、太一点鎖線で示す本発明のアンテナ装置1の通信エリアAは電磁波が左右非対称の特性のため、車外漏れを生じる恐れを抑制することが可能で、かつ車内全域に通信エリアを確保できる。
【0032】
このように本実施の形態によれば、第1、第2コイル21,22に流れる互いの高周波電流i1,i2の旋回方向は逆方向で、かつその中心軸は平行になるように形成すると共に、第2アンテナ12への高周波電流を調整することによって、第1、第2アンテナ11,12(車内アンテナ11,12)の合成通信エリアを左右非対称にできるため、車内アンテナを車内の側方に配置できるアンテナ装置1を得ることができるものである。
【0033】
また、電流調整手段を固定抵抗器5にすることによって、安価なアンテナ装置1を得ることができる。
【0034】
なお、本実施の形態において、電流調整手段を第2アンテナ12側に設けるものとして説明したが、これに限ることはなく、第1アンテナ11側に設けても良く、また第1、第2アンテナ11,12の両方に設けても実施は可能である。
【0035】
また、電流調整手段を固定抵抗器5の例で説明したが、これに限ることはなく、コンデンサやコイルでも実施は可能である。
【0036】
さらに、電流調整手段をコイル内に挿入した磁性体により該コイルのリアクタンス成分を変えるようにして形成することも可能である。
【0037】
図4はその一例で、第1、第2コイル21,22内にそれぞれ挿入された電流調整手段である磁性体51,52をそれぞれ矢印の前後方向に位置調整することで、第1、第2コイル21,22のリアクタンス成分が変わり高周波電流i1,i2を調整できる。
【0038】
つまり、電流調整手段が汎用の固定抵抗器5の場合、その抵抗値は段階的な値を取るため通信エリアは段階的に変化するが、この形態によれば、上記磁性体51,52の位置調整による第1、第2コイル21,22のリアクタンス変化は連続的な値にできるため通信エリアを精度良く調整できる。
【0039】
また、図4に示すように、第1、第2アンテナ11,12および磁性体51,52を、絶縁材により形成された筐体6内に一体配置すると共に、制御回路4とは一対の信号伝送線7により接続することにより、本アンテナ装置1が好みの位置に配置される際、その配置位置に応じた通信エリアを確保できるように調整できる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によるアンテナ装置は、車内アンテナを車内の好みの位置に配置できるという効果を有し、携帯機と車載機の間で通信を行い車両ドアなどの施錠/解錠を遠隔操作する無線通信システムに用いられるアンテナ装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施の形態によるアンテナ装置のブロック図
【図2】同特性図
【図3】同車両への取付け平面図
【図4】同別形態によるアンテナ装置の斜視図
【符号の説明】
【0042】
1 アンテナ装置
4 制御回路
5 固定抵抗器(電流調整手段)
11 第1アンテナ(車内アンテナ11)
12 第2アンテナ(車内アンテナ12)
21 第1コイル
22 第2コイル
31 第1コンデンサ
32 第2コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コイルと第1コンデンサの直列接続体からなる第1アンテナと、第2コイルと第2コンデンサの直列接続体からなる第2アンテナと、前記各アンテナに並列に高周波電流を供給する制御回路からなり、
前記第1、第2コイルに流れる互いの高周波電流の旋回方向を逆方向に、かつその中心軸を平行に形成すると共に、いずれか1つのアンテナ側にその高周波電流を調整する電流調整手段を設けたアンテナ装置。
【請求項2】
電流調整手段を、インピーダンス成分を有する電流制限素子とした請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
電流調整手段を、第1または第2コイル内に挿入した磁性体により形成した請求項1記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−28472(P2007−28472A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210924(P2005−210924)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】