説明

アンテナ装置

【課題】通信特性を維持しつつ、全体で薄型化が図られたアンテナ装置を提供する。
【解決手段】本発明は、リーダーライター2から発信される磁界を受けて、リーダーライター2と誘導結合されて通信可能となるアンテナコイル11aが、絶縁層112の表面に実装されたアンテナ基板11と、アンテナ基板11のアンテナコイル11aが実装されていない絶縁層112の面112aに、接着層13を介して接着され、リーダーライター2から発信される磁界をアンテナコイル11aに引き込む磁性シート12とを含んで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発信器から発信される磁界を受けて、当該発信器と誘導結合されて通信可能となるアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
RFID(Radio Frequency Identification)用のアンテナモジュールとして、次のような数種類のものが従来から用いられている。第1に、FPC(Flexible Printed Circuit)やリジット基板を用いてコイルパターンを平面上に作成したアンテナモジュールがある。第2に、丸線を巻き線にしてコイルを作成したアンテナモジュールがある。第3に、FPCやFFC(Flexible Flat Cable)などをハーネスにして、そのハーネスをリング状にしてコイルを形成したアンテナモジュールがある。
【0003】
上述したアンテナモジュールは、部品の配置、形状を考慮した設計により、適宜選択されて、電子機器に組み込まれて使用されている。
【0004】
電子機器内にアンテナモジュールを配置する場合、電子機器の金属製筐体や内部部品に使用されている金属の影響を受けないようにするため、透磁率が比較的高く、損失係数が小さいフェライト製の磁性シートをアンテナの周辺に取り付けている(特許文献1)。
【0005】
このようにして、磁気特性が良好なフェライト製の磁性シートは、アンテナモジュールに重畳するように配置することによって、磁界がアンテナモジュールの周囲に配置されている金属内に入り渦電流となって熱に変わることを防ぐ。また、フェライト製の磁性シートは、良好な通信性能が得られるように、形状や組合せ等の最適化が行われている。また、携帯電話機などの携帯型電子機器の薄型化が進む中で、アンテナモジュールは、フェライト製の磁性シートと貼り合わされた状態で、できるだけ薄くなるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−310812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、アンテナをFPCなどの可撓性のある電子材料で平面形状にして作成したアンテナ基板に、電子機器内での渦電流や熱の発生を防止する目的で、フェライト製などの磁性シートが取り付けられる場合がある。
【0008】
アンテナを寸法的観点から薄くするには、フェライト構成層、粘着構成層そしてFPC層各々を薄くする事にて対応できるが、通信特性の観点では、金属筐体の影響を受けるため、アンテナパターンと磁性シート間の距離ができるだけ離れていることが好ましい。例えば、図8(A)に示すように、アンテナパターン401と磁性シート402を接着させるADH層403の厚みを変数d[μm]として変化させた場合、図8(B)に示すように、dが小さいほど通信可能距離が小さくなってしまう。これは、アンテナパターンと磁性シート間に形成されるADH層の厚みを薄くするとアンテナ抵抗が上昇し通信性能を劣化するからである。このように、単に各部材を薄くすると通信特性が劣化してしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、通信特性を維持しつつ、全体で薄型化が図られたアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明は、発信器から発信される磁界を受けて、発信器と誘導結合されて通信可能となるアンテナコイルが、絶縁層の表面に実装されたアンテナ基板と、アンテナ基板のアンテナコイルが実装されていない絶縁層の面に、接着層を介して接着され、発信器から発信される磁界をアンテナコイルに引き込む磁性シートとを含んで構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、アンテナ基板のアンテナコイルが実装されていない絶縁層の面に、接着層を介して、磁性シートが接着されているので、アンテナコイル−磁性シート間を離間する部材として、アンテナコイルが表面実装される絶縁部を用いることができ、全体の薄型化を図りつつ良好な通信特性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明が適用されたアンテナモジュールが組み込まれた無線通信システムの構成を示す図である。
【図2】本発明が適用されたアンテナモジュールに係る構成について説明するための断面図である。
【図3】比較例に係るアンテナモジュールに係る構成について説明するための断面図である。
【図4】アンテナコイル−磁性シート間の間隔に応じた通信特性の変化について説明するための図である。
【図5】アンテナモジュールの具体的な寸法を示す図である。
【図6】通信距離を測定する測定条件について説明するための図である。
【図7】リーダーライターとアンテナモジュールの間で誘導結合しているときの通信特性について説明するための図である。
【図8】アンテナパターンと磁性シートとの間の間隔に応じた通信特性の変化について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。
【0014】
本発明が適用されたアンテナモジュールは、電磁波を発信する発信器との間で発生する電磁誘導により通信可能状態となる装置であって、例えば図1に示すようなRFID(Radio Frequency Identification)用の無線通信システム100に組み込まれて使用される。
【0015】
無線通信システム100は、本発明が適用されたアンテナモジュール1と、アンテナモジュール1に対するアクセスを行うリーダーライター2とからなる。
【0016】
リーダーライター2は、アンテナモジュール1に対して磁界を発信する発信器として機能し、具体的には、アンテナモジュール1に向けて磁界を発信するアンテナ2aと、アンテナ2aを介して誘導結合されたアンテナモジュール1と通信を行う制御基板2bとを備える。
【0017】
すなわち、リーダーライター2は、アンテナ2aと電気的に接続された制御基板2bが配設されている。この制御基板2bには、一又は複数の集積回路チップ等の電子部品からなる制御回路が実装されている。この制御回路は、アンテナモジュール1から受信されたデータに基づいて、各種の処理を実行する。例えば、制御回路は、アンテナモジュール1にデータを書き込む場合、データを符号化し、符号化したデータに基づいて、所定の周波数(例えば、13.56MHz)の搬送波を変調し、変調した変調信号を増幅し、増幅した変調信号でアンテナ2aを駆動する。また、制御回路は、アンテナモジュール1からデータを読み出す場合、アンテナ2aで受信されたデータの変調信号を増幅し、増幅したデータの変調信号を復調し、復調したデータを復号する。なお、制御回路では、一般的なリーダーライターで用いられる符号化方式及び変調方式が用いられ、例えば、マンチェスタ符号化方式やASK(Amplitude Shift Keying)変調方式が用いられている。
【0018】
電子機器の筐体3内部に組み込まれるアンテナモジュール1は、誘導結合されたリーダーライター2との間で通信可能となるアンテナコイル11aが実装されたアンテナ基板11と、磁界をアンテナコイル11aに引き込むためアンテナ基板11と重畳する位置に形成された磁性シート12とを備える。また、アンテナモジュール1が組み込まれる電子機器内部には、アンテナコイル11aに流れる電流により、リーダーライター2との間で通信を行う通信処理部4が組み込まれている。
【0019】
アンテナ基板11には、例えばフレキシブルフラットケーブルなどの可撓性の導線をパターンニング処理などをすることによって形成されるアンテナコイル11aと、アンテナコイル11aと通信処理部4とを電気的に接続する端子部11bとが実装されている。
【0020】
アンテナコイル11aは、リーダーライター2から発信される磁界を受けると、リーダーライター2と誘導結合によって磁気的に結合され、変調された電磁波を受信して、端子部11bを介して受信信号を通信処理部4に供給する。
【0021】
磁性シート12は、アンテナ基板11と重畳する位置に形成され、リーダーライター2から発信される磁界をアンテナコイル11aに引き込む。具体的に、磁性シート12は、携帯型電子機器の筐体3内部に設けられた金属部品がリーダーライター2から発信される磁界を跳ね返したり、渦電流を発生するのを抑制するために、磁界が放射されてくる方向の反対側に貼り付けた構造をとる。
【0022】
通信処理部4は、アンテナコイル11aに流れる電流により駆動し、リーダーライター2との間で通信を行う。具体的に、通信処理部4は、受信された変調信号を復調し、復調したデータを復号して、復号したデータを、当該通信処理部4が有する内部メモリに書き込む。また、通信処理部4は、リーダーライター2に送信するデータを内部メモリから読み出し、読み出したデータを符号化し、符号化したデータに基づいて搬送波を変調し、誘導結合によって磁気的に結合されたアンテナコイル11aを介して変調された電波をリーダーライター2に送信する。
【0023】
以上のような構成からなる無線通信システム100において、以下では、アンテナモジュール1の構成に注目して説明する。
【0024】
本実施形態に係るアンテナモジュール1では、モジュール全体の薄型化を図りつつ良好な通信特性を実現する観点から、図2に示すような構成となっている。
【0025】
すなわち、アンテナ基板11は、上下両面から導線と接続可能なダブルアクセス型の配線板であり、具体的には、図2に示すように、ポリイミドからなる絶縁層112の表面に、導電性が高いCu等からなる導電性金属層111、導電性金属層111を被覆するAu/Niなどの耐腐食性を有する耐腐食性金属層113が順に積層されたものである。このような構成からなるアンテナ基板11では、導電性金属層111、耐腐食性金属層113に対して、パターンニング処理等を施すことで、絶縁層112の表面に上述したアンテナコイル11aが実装される。
【0026】
磁性シート12は、例えばフェライト板などの、損失係数が小さくアンテナコイル11aに磁界を効率よく引き込むことが可能な磁性材料からなり、アンテナ基板11のアンテナコイル11aが実装されていない絶縁層112の面112aに、ADHなどの絶縁性の接着層13を介して接着されている。
【0027】
また、アンテナモジュール1は、アンテナ基板11のアンテナコイル11aが実装されていない絶縁層112の面112aの側に、アンテナコイル11aと電気的に接続される端子部11bが設けられている。アンテナモジュール1は、端子部11bを介して、アンテナコイル11aと通信処理部4とが電気的に接続される。具体的には、端子部11bは、導電性が高いAu/Niから形成されている。
【0028】
以上のような構成からなるアンテナモジュール1は、アンテナ基板11のアンテナコイル11aが実装されていない絶縁層112の面112aに、接着層13を介して、磁性シート12が接着されている。したがって、アンテナモジュール1では、接着層13と絶縁層112とが、アンテナコイル11a−磁性シート12間を離間するための厚みdで定義される部材として機能する。このようにして、アンテナモジュール1は、アンテナコイル11a−磁性シート12間を離間するための厚みdで定義される部材として、アンテナコイル11aが表面実装される絶縁層112を用いることができるので、全体の薄型化を図りつつ良好な通信特性を実現することができる。
【0029】
特に、リーダーライター2側から発信される磁界の影響を受けないようにするため、アンテナ基板11が接着された磁性シートの内側に通信処理部4を配置して、通信処理部4とアンテナコイル11aとを電気的に接続するため磁性シート12側に端子部11bを設ける場合、アンテナモジュール1は、図3に示すような比較例に係るシングルアクセス型の配線板を用いたアンテナモジュール200に比べて全体の薄型化を図ることができる。
【0030】
すなわち、アンテナモジュール200は、図3に示すように、片面のみから導線と接続可能なシングルアクセス配線板210と、接着層220を介して、磁性シート230とを接着させたものである。シングルアクセス配線板210は、ポリイミドからなる絶縁層211の表面に、導電性が高いCuからなる導電性金属層212、導電性金属層211を被覆する絶縁部材からなるレジスト層213が順に積層されたものである。なお、レジスト層213には、エッチング処理により開口され、導電性金属層212と電気的に接続可能なAu/Niからなる端子部213aが形成されている。このアンテナモジュール200では、磁性シート230側からアンテナモジュール200の導電性金属層212と通信処理部との接続を確保するため、磁性シート230の面を基準として、接着層220、レジスト層213、導電性金属層212、絶縁層211という順に積層され、レジスト層213に端子部213aが設けられた構造となっている。アンテナモジュール200では、接着層220とレジスト層213とが、アンテナコイル11a−磁性シート230間を離間するための厚みdで定義される部材として機能する。
【0031】
以上のような構成からなるアンテナモジュール200は、本実施形態に係るアンテナモジュール1と異なり、絶縁層211が、アンテナコイル11a−磁性シート230間を離間するための厚みdで定義される部材として機能しないため、全体として厚くなってしまう。したがって、アンテナコイル−磁性シート間の間隔を同一の条件にした場合、アンテナモジュール1は、アンテナモジュール200に比べて、モジュール全体としての薄型化を図ることができる。
【0032】
また、アンテナモジュール1は、アンテナモジュール200と異なり、絶縁層112の表面に実装されたアンテナコイル11aには、絶縁材料を用いたレジスト処理が施されていないが、電子機器等に組み込まれる際には、リーダーライター2と通信を行う観点から、筐体3からアンテナコイル11aまでの空間に電子回路等の導電部材が配置されないので、モジュール全体の薄型化を図りつつ、アンテナコイル11aとして機能させることができる。
【0033】
特に、本願の発明者らは、下記の実施例に基づき、アンテナコイル−磁性シート間の間隔が50[μm]乃至55[μm]の範囲内で離間するように配置することで、アンテナモジュール1が、アンテナモジュール200に比べて、モジュール全体としての薄型化、良好な通信特性を実現することを見出した。
【実施例】
【0034】
<アンテナコイル−磁性シート間に応じた通信特性の変化>
アンテナコイル−磁性シート間の間隔に応じた通信特性の変化について、図4を参照して説明する。図4は、アンテナモジュール1において、アンテナコイル11aと磁性シート12の間の距離を20〜140[μm]まで変化させたときの、下記の(1)式で算出されるQ値の変化を示す図である。
【0035】
Q=ωL/R ・・・(1)
ここで、ω[rad/s]はアンテナコイル11aの角周波数であり、L[μH]はアンテナコイル11aのインダクタンス値であり、R[Ω]はアンテナコイル11aの抵抗値である。Q値は、通信特性を評価する指標であって、この値が大きいほど通信感度が良く、最大通信可能距離が大きくなることを示す。
【0036】
また、図4において、アンテナコイル11aを構成する導電性金属層は、膜厚が35[μm]であり、μ”=1、5、10は、それぞれフェライト製の磁性シート12の複素比透磁率の虚数部である。
【0037】
図4では、アンテナコイル−磁性シート間の間隔が50[μm]より近づけると、Qが大きく劣化することを示している。すなわち、この間隔を狭くしてアンテナモジュール全厚を薄くすることは特性劣化を招くことを示唆している。これに対して、アンテナコイル−磁性シート間の間隔を50〜55[μm]よりも厚くするとQ値は上がり、図4に示すように100[μm]程度以上で安定するが、薄型化の観点から好ましくない。
【0038】
したがって、モジュール全体としての薄型化、良好な通信特性を実現する観点から、アンテナコイル−磁性シート間の間隔を50乃至55[μm]の範囲内で変化させることを制約条件として、下記のようなアンテナモジュールを具体的に作成した。
【0039】
<アンテナモジュールの設計条件>
以下では、図5(A)及び図5(B)に示すようなアンテナ基板101を用いてアンテナモジュールを作成するものとする。
【0040】
すなわち、アンテナ基板101は、図5(A)に示すように、外形形状が36[mm]×29[mm]、厚さが0.09[mm]であって、次のようなアンテナコイル102と、端子部103とが実装される。また、アンテナコイル102は、幅が0.31[mm]の導線が、隣接する導線間で0.12[mm]のスペース、すなわち、パターンピッチが0.42[mm]で、巻き線数が4となるように巻回される。
【0041】
磁性シート104は、アンテナコイル102の外形形状と一致するように配置されるものであって、図5(B)に示すように、その形状が、36[mm]×29[mm]の略矩形である。また、磁性シートは、発振周波数が13.56MHzの磁界における比複素透磁率が次の値のフェライト板を用いるものとする。すなわち、フェライト板は、比複素透磁率の実数部μ’が119、虚数部μ”が1.33のものを用いるものとする。
【0042】
上述した設計条件に従い、それぞれモジュール全体の厚みが同程度となるようにして、実施例としてアンテナモジュール1に対応するアンテナモジュールAと、比較例としてアンテナモジュール200に対応するアンテナモジュールBを次のように作成した。
【0043】
<アンテナモジュールA>
アンテナモジュールAは、次のようなダブルアクセス型の配線板を用いたものである。すなわち、膜厚が25μmのポリイミドからなる絶縁層の表面に、膜厚が50μmのCuからなる導電性金属層が積層されたものである。アンテナモジュールAは、アンテナコイル−磁性シート間の間隔が55[μm]となるように接着層の厚みを調整して、アンテナ基板の絶縁層と磁性シートを接着させたものである。
【0044】
<アンテナモジュールB>
アンテナモジュールBは、次のようなシングルアクセス型の配線板を用いたものである。すなわち、膜厚が25μmのポリイミドからなる絶縁層の表面に、膜厚が35μmのCuからなる導電性金属層、膜厚が15μmからなるレジスト層が順に積層されたものである。アンテナモジュールBは、アンテナコイル−磁性シート間の間隔が50[μm]となるように接着層の厚みを調整して、アンテナ基板のレジスト層と磁性シートを接着させたものである。
【0045】
<評価>
上述したアンテナモジュールA、Bについて、形状と通信特性とを、下記の表1を用いて評価した。ここで、「FPC」とは、アンテナ基板の全厚であり、「間隔」とは、アンテナコイル−磁性シート間の間隔であり、「Total」とはモジュール全体の全厚であり、「最大通信可能距離」とは、発振周波数が13.56[MHz]において、リーダライタとアンテナモジュール間で通信可能な最大距離を示す値であり、この値が大きいほど通信特性がよい。具体的に、「最大通信可能距離」は、図6に示すように、ソニー株式会社製の型名RC-S440Cの非接触ICカードリーダー/ライター301を用いて、アンテナ基板302aを有するアンテナモジュール302の磁性シート302b側に2mm離れた位置に、擬似的な電子基板として50×100[mm]のステンレス板303を設置した条件下で測定したものである。
【0046】
【表1】

【0047】
上記の表1に示すように、アンテナモジュールAは、アンテナモジュールBと比べて、アンテナ基板とモジュール全体の全厚が同様であるが、アンテナコイル−磁性シート間の間隔をできるだけ大きくすることができ、この結果、3[mm]程度遠くまで通信することができた。
【0048】
次に、図7を参照して、リーダーライターとの間で誘導結合しているときの通信特性について説明する。ここで、横軸には、通信に用いられる磁界の周波数を示し、縦軸には、周波数に応じた最大通信可能距離を示している。なお、リーダーライターから発信される磁界の周波数は、上述したように13.56MHzであるが、誘導結合により通信が行われているときには、13.56MHzよりも高い周波数の磁界の成分まで用いて通信が行われる。
【0049】
図7から明らかなように、アンテナモジュールAは、アンテナモジュールBに比べて、計測対象となった全ての周波数帯域において特性上高く、通信感度が良い。
【0050】
また、下記の表2に、アンテナモジュールA、Bについて、インダクタンス値L、抵抗値R、Q値を示す。
【0051】
【表2】

【0052】
上記の表2から明らかなように、アンテナモジュールAは、アンテナモジュールBに比べて、導電性金属層の厚みを厚くすることによって、アンテナコイルの抵抗値を下げることができ、結果としてアンテナモジュール全体の全厚が同じで、Q値で示されるように通信性能が向上したものとなった。
【0053】
以上の結果から明らかなように、本実施の形態に係るアンテナモジュールは、アンテナコイル−磁性シート間の間隔が50[μm]乃至55[μm]の範囲内で離間するように配置する条件下において、モジュール全体としての薄型化、良好な通信特性を実現することができた。このようにして、モジュール全体としての薄型化、良好な通信特性を実現できるのは、アンテナコイル−磁性シートを離間する部材として、アンテナコイルが表面実装される絶縁部を用いることができるからである。
【符号の説明】
【0054】
1、200、302 アンテナモジュール、2 リーダーライター、2a アンテナ、2b 制御基板、3 筐体、4 通信処理部、11、101、302a アンテナ基板、11a、102 アンテナコイル、11b、103、213a 端子部、12、104、230、402 磁性シート、13、220 接着層、100 無線通信システム、111、212 導電性金属層、112、211 絶縁層、112a 面、113 耐腐食性金属層、210 シングルアクセス配線板、213 レジスト層、301 非接触ICカードリーダー/ライター、303 ステンレス板、401 アンテナパターン、403 ADH層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発信器から発信される磁界を受けて、該発信器と誘導結合されて通信可能となるアンテナコイルが、絶縁層の表面に実装されたアンテナ基板と、
上記アンテナ基板のアンテナコイルが実装されていない絶縁層の面に、接着層を介して接着され、上記発信器から発信される磁界を上記アンテナコイルに引き込む磁性シートとを含んで構成されるアンテナ装置。
【請求項2】
上記アンテナ基板のアンテナコイルが実装されていない絶縁層の面には、該アンテナコイルと電気的に接続される端子部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
上記発信器から発信される磁界の発信周波数は、13.56[MHz]であり、
上記アンテナ基板に実装されたアンテナコイルと上記磁性シートとは、50[μm]乃至55[μm]の範囲内で離間するように配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載のアンテナ装置。
【請求項4】
上記絶縁層は、ポリイミドからなることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載のアンテナ装置。
【請求項5】
上記絶縁層に設けられた端子部は、Au/Niから形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載のアンテナ装置。
【請求項6】
上記絶縁層の表面に実装されたアンテナコイルには、絶縁材料を用いたレジスト処理が施されていないことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載のアンテナ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−288242(P2010−288242A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153630(P2009−153630)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】