説明

アンテナ装置

【課題】パッチ導体と給電線路との間隔を狭くすることなく、チャンネル間隔を狭くすること。
【解決手段】第1の受信アンテナR1と第2の受信アンテナR2との間で第1の受信アンテナR1と第2の受信アンテナR2とが互いに対向する方向に誘電体基板1を折り曲げることにより、第1の受信アンテナR1と第2の受信アンテナR2との間隔が反射波の波長λの1/2より小さくなるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載ミリ波レーダなどに搭載されるアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダの測角では、受信アンテナをチャンネルごとに並べ、複数の受信アンテナ間の受信位相差から目標物の方位を測定する方法がある(特許文献1)。このような受信アンテナでは、チャンネル間隔が0.5λ(λは受信アンテナに入射される反射波の波長)以上の場合はその受信位相に折り返し(位相反転)が生じる。
【0003】
この受信位相の折り返しは目標物の測位には雑音として寄与するため、チャンネル間隔が0.5λ以下になるように受信アンテナの設計を行うことが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−303801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術によれば、反射波を受信するパッチ導体に加え、給電線路を引き回すためのスペースをチャンネル間に設ける必要があり、フリンジング電界の影響を避けるために、パッチ導体と給電線路との間隔を誘電体基板の厚さの2倍以上離す必要があることから、受信アンテナのチャンネル間隔を0.5λ以下にすることが困難な場合があるという問題があった。さらに、車載レーダで採用されている45度偏波では、方形アンテナのサイズがさらに大きくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、パッチ導体と給電線路との間隔を狭くすることなく、チャンネル間隔を狭くすることが可能なアンテナ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のアンテナ装置は、第1のチャンネルに対応した第1の受信アンテナと、第2のチャンネルに対応した第2の受信アンテナと、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナが配置され、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが互いに対向する方向に折り曲げられた誘電体基板とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、パッチ導体と給電線路との間隔を狭くすることなく、チャンネル間隔を狭くすることが可能という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1(a)は、本発明に係るアンテナ装置の実施の形態1の概略構成を示す平面図、図1(b)は、本発明に係るアンテナ装置の実施の形態1の概略構成を示す断面図である。
【図2】図2は、図1のアンテナ装置のチャネル間隔と基板折り曲げ角度と位相反転角との関係を理論値と比較して示す図である。
【図3】図3は、図1のアンテナ装置の相対位相と位相反転角との関係を示す図である。
【図4】図4は、本発明に係るアンテナ装置の実施の形態2の概略構成を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明に係るアンテナ装置の実施の形態3の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係るアンテナ装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1(a)は、本発明に係るアンテナ装置の実施の形態1の概略構成を示す平面図、図1(b)は、本発明に係るアンテナ装置の実施の形態1の概略構成を示す断面図である。図1において、誘電体基板1の表面にはパッチ導体3a、3bおよび給電線路4a、4bが形成され、誘電体基板1の裏面には地導体2が形成されることで、マイクロストリップアンテナが構成されている。
【0012】
ここで、パッチ導体3a、3bは、目標物から反射された反射波をそれぞれ受信し、給電線路4a、4bは、パッチ導体3a、3bにて受信された反射波をそれぞれ伝送することができる。
【0013】
なお、誘電体基板1としては、エポキシ、ポリイミド、ポリエチレン、テフロン(登録商標)樹脂などの樹脂基板を用いるようにしてもよいし、ガラスやセラミックなどの無機基板を用いるようにしてもよい。また、パッチ導体3a、3b、給電線路4a、4bおよび地導体2の材料としては、AlまたはCuなどの金属薄膜を用いることができる。また、パッチ導体3a、3bの形状は、矩形であってもよいし、多角形、円形、楕円形などであってもよい。
【0014】
そして、パッチ導体3aは給電線路4aに接続されることで、チャンネルCH1に対応した第1の受信アンテナR1が構成され、パッチ導体3bは給電線路4bに接続されることで、チャンネルCH2に対応した第2の受信アンテナR2が構成されている。
【0015】
ここで、給電線路4a、4bはそれぞれ一定の方向に直線状に配置され、互いに並列に引き回されている。また、第1の受信アンテナR1と第2の受信アンテナR2とは互いに隣接して配置されている。
【0016】
そして、誘電体基板1は、第1の受信アンテナR1と第2の受信アンテナR2との間で第1の受信アンテナR1と第2の受信アンテナR2とが互いに対向する方向に折り曲げられている。なお、誘電体基板1の折り曲げ角ηは、第1の受信アンテナR1と第2の受信アンテナR2との間隔d´が反射波の波長λの1/2より小さくなるように設定することが好ましい。
【0017】
ここで、第1の受信アンテナR1と第2の受信アンテナR2との間隔d´は、誘電体基板1の折り曲げ角ηが0°の時の第1の受信アンテナR1と第2の受信アンテナR2との間隔をdとすると、d・cos(η)で与えることができる。
【0018】
また、フリンジング電界の影響を避けるために、パッチ導体3aは、パッチ導体3bおよび給電線路4bと誘電体基板1の厚さhの2倍以上離すことが好ましく、パッチ導体3bは、パッチ導体3aおよび給電線路4aと誘電体基板1の厚さhの2倍以上離すことが好ましい。
【0019】
これにより、パッチ導体3a、3bと給電線路4a、4bとの間隔を狭くすることなく、チャンネルCH1、CH2間隔を狭くすることができる。このため、受信位相に折り返し(位相反転)が生じるのを防止することが可能となり、測角範囲を広げることが可能となる。
【0020】
図2は、図1のアンテナ装置のチャネル間隔と基板折り曲げ角度と位相反転角との関係を理論値と比較して示す図である。図2において、誘電体基板1の折り曲げ角ηを増大させることにより、第1の受信アンテナR1と第2の受信アンテナR2との間隔d´が狭くなる。
【0021】
このため、誘電体基板1の折り曲げ角ηの増大に伴って、図1のアンテナ装置の位相反転角θ1および理論値θ2が大きくなり、受信位相に折り返しが生じ難くすることができる。
【0022】
図3は、図1のアンテナ装置の相対位相と位相反転角との関係を示す図である。図3において、誘電体基板1の折り曲げ角ηが0°の場合、第1の受信アンテナR1と第2の受信アンテナR2との間隔dが0.561λであるとすると、チャンネル間隔が0.5λ以上となり、位相反転が角度±90°内で起こることが判る。
【0023】
一方、誘電体基板1の折り曲げ角ηが25°の場合、第1の受信アンテナR1と第2の受信アンテナR2との間隔d´が0.506λであるが、位相反転が角度±90°内で起こらないことが判る。
【0024】
加えて、誘電体基板1の折り曲げ角ηが28°の場合、第1の受信アンテナR1と第2の受信アンテナR2との間隔d´が0.5λより小さくなり、位相反転が角度±90°内で起こらないことも推測できる。
【0025】
実施の形態2.
図4は、本発明に係るアンテナ装置の実施の形態2の概略構成を示す断面図である。図4において、誘電体基板11の表面にはパッチ導体13a〜13fおよび給電線路14a〜14fが形成され、誘電体基板11の裏面には地導体12が形成されることで、マイクロストリップアンテナが構成されている。
【0026】
そして、パッチ導体13aは給電線路14aに接続されることで、チャンネルCH1に対応した第1の受信アンテナR11が構成され、パッチ導体13bは給電線路14bに接続されることで、チャンネルCH2に対応した第2の受信アンテナR12が構成されている。
【0027】
また、パッチ導体13cは給電線路14cに接続されることで、チャンネルCH3に対応した第1の受信アンテナR13が構成され、パッチ導体13dは給電線路14dに接続されることで、チャンネルCH4に対応した第2の受信アンテナR14が構成されている。
【0028】
また、パッチ導体13eは給電線路14eに接続されることで、チャンネルCH5に対応した第1の受信アンテナR15が構成され、パッチ導体13fは給電線路14fに接続されることで、チャンネルCH16に対応した第2の受信アンテナR16が構成されている。
【0029】
ここで、給電線路14a〜14fはそれぞれ一定の方向に直線状に配置され、互いに並列に引き回されている。また、第1の受信アンテナR11と第2の受信アンテナR12とは互いに隣接して配置され、第1の受信アンテナR13と第2の受信アンテナR14とは互いに隣接して配置されて、第1の受信アンテナR15と第2の受信アンテナR16とは互いに隣接して配置されている。
【0030】
そして、誘電体基板11は、第1の受信アンテナR11と第2の受信アンテナR12との間で第1の受信アンテナR11と第2の受信アンテナR12とが互いに対向する方向に折り曲げられることで、第1の受信アンテナR11と第2の受信アンテナR12との間に谷V1が形成されている。
【0031】
また、誘電体基板11は、第2の受信アンテナR12と第1の受信アンテナR13との間で第2の受信アンテナR12と第1の受信アンテナR13とが互いに対向する方向と反対側に折り曲げられることで、第2の受信アンテナR12と第1の受信アンテナR13との間に山M1が形成されている。
【0032】
また、誘電体基板11は、第1の受信アンテナR13と第2の受信アンテナR14との間で第1の受信アンテナR13と第2の受信アンテナR14とが互いに対向する方向に折り曲げられることで、第1の受信アンテナR13と第2の受信アンテナR14との間に谷V2が形成されている。
【0033】
また、誘電体基板11は、第2の受信アンテナR14と第1の受信アンテナR15との間で第2の受信アンテナR14と第1の受信アンテナR15とが互いに対向する方向と反対側に折り曲げられることで、第2の受信アンテナR14と第1の受信アンテナR15との間に山M2が形成されている。
【0034】
また、誘電体基板11は、第1の受信アンテナR15と第2の受信アンテナR16との間で第1の受信アンテナR15と第2の受信アンテナR16とが互いに対向する方向に折り曲げられることで、第1の受信アンテナR15と第2の受信アンテナR16との間に谷V3が形成されている。
【0035】
なお、誘電体基板11の谷V1の折り曲げ角ηは、第1の受信アンテナR11と第2の受信アンテナR12との間隔が反射波の波長λの1/2より小さくなるように設定することが好ましい。
【0036】
また、誘電体基板11の谷V2の折り曲げ角ηは、第1の受信アンテナR13と第2の受信アンテナR14との間隔が反射波の波長λの1/2より小さくなるように設定することが好ましい。
【0037】
また、誘電体基板11の谷V3の折り曲げ角ηは、第1の受信アンテナR15と第2の受信アンテナR16との間隔が反射波の波長λの1/2より小さくなるように設定することが好ましい。
【0038】
これにより、パッチ導体13a〜13fと給電線路14a〜14fとの間隔を狭くすることなく、チャンネルCH1、CH2間隔と、チャンネルCH3、CH4間隔と、チャンネルCH5、CH6間隔とを狭くすることができる。このため、4個以上のチャンネルCH1〜CH6が設けられている場合においても、受信位相に折り返し(位相反転)が生じるのを防止することが可能となり、測角範囲を広げることが可能となる。
【0039】
実施の形態3.
図5は、本発明に係るアンテナ装置の実施の形態3の概略構成を示す断面図である。図5において、アンテナ固定板17には、誘電体基板11の折り曲げ状態に対応した支持面が形成されている。なお、アンテナ固定板17の材料は、Cu、Al、ステンレスなどの金属を用いることができる。また、アンテナ固定板17には、給電線路14a〜14fを介して送電された信号を給電する給電スロットを設けるようにしてもよい。
【0040】
そして、アンテナ固定板17は導電性接着層16を介して回路基板15に接着され、誘電体基板11は導電性接着層18を介してアンテナ固定板17に接着されている。なお、回路基板15は、第1の受信アンテナR11、R13、R15および第2の受信アンテナR12、R14、R16を介して受信された反射波の受信処理を行うことができる。
【0041】
これにより、誘電体基板11を折り曲げた場合においても、誘電体基板11の折り曲げ状態が崩されることなく回路基板15と一体化することができ、アンテナ装置を車載ミリ波レーダに容易に搭載することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように本発明に係るアンテナ装置は、パッチ導体と給電線路との間隔を狭くすることなく、チャンネル間隔を狭くすることが可能となり、複数の受信アンテナ間の受信位相差から目標物の方位を測定する方法に適している。
【符号の説明】
【0043】
R1、R11、R13、R15 第1の受信アンテナ
R2、R12、R14、R16 第2の受信アンテナ
1、11 誘電体基板
2、12 地導体
3a、3b、13a〜13f パッチ導体
4a、4b、14a〜14f 給電線路
15 回路基板
16、18 導電性接着層
17 アンテナ固定板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のチャンネルに対応した第1の受信アンテナと、
第2のチャンネルに対応した第2の受信アンテナと、
前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナが配置され、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが互いに対向する方向に折り曲げられた誘電体基板とを備えることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとの対が前記誘電体基板上に複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1の受信アンテナおよび前記第2の受信アンテナを介して受信された反射波の受信処理を行う回路基板と、
前記誘電体基板と前記回路基板との間に配置され、前記誘電体基板の折り曲げ状態に対応した支持面を有するアンテナ固定板をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1の受信アンテナは、
反射波を受信する第1のパッチ導体と、
前記第1のパッチ導体に接続された第1の給電線路とを備え、
前記第2の受信アンテナは、
反射波を受信する第2のパッチ導体と、
前記第2のパッチ導体に接続された第2の給電線路とを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1のパッチ導体は、前記第2のパッチ導体および前記第2の給電線路と前記誘電体基板の厚さの2倍以上離され、
前記第2のパッチ導体は、前記第1のパッチ導体および前記第1の給電線路と前記誘電体基板の厚さの2倍以上離されていることを特徴とする請求項4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記誘電体基板の折り曲げ角は、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとの間隔が前記反射波の波長の1/2より小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−244084(P2011−244084A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112272(P2010−112272)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】