アンテナ装置
【課題】2つの周波数帯域をサポートし、かつ2つの周波数帯域のうちの低い方の周波数帯域を広げることができる、小型の板状逆F型アンテナ装置を提供する。
【解決手段】放射導体2は、給電点を含む平面導体21と、放射導体2の開放端を含む平面導体23と、平面導体21と22との間に接続されたデュアルバンド形成用インダクタ22とを含む。接地導体9は、水平部9H1と、水平部9H2と、傾斜部9Sとを有する。水平部9H1は、平面導体21に平行し、かつ平面導体21から間隔Haだけ離隔している。水平部9H2は、平面導体23に平行し、かつ平面導体23から、間隔Haより長い間隔Hbだけ離隔している。傾斜部9Sは、デュアルバンド形成用インダクタ22に対向し、かつ水平部9H1と水平部9H2とを接続する。
【解決手段】放射導体2は、給電点を含む平面導体21と、放射導体2の開放端を含む平面導体23と、平面導体21と22との間に接続されたデュアルバンド形成用インダクタ22とを含む。接地導体9は、水平部9H1と、水平部9H2と、傾斜部9Sとを有する。水平部9H1は、平面導体21に平行し、かつ平面導体21から間隔Haだけ離隔している。水平部9H2は、平面導体23に平行し、かつ平面導体23から、間隔Haより長い間隔Hbだけ離隔している。傾斜部9Sは、デュアルバンド形成用インダクタ22に対向し、かつ水平部9H1と水平部9H2とを接続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置のためのアンテナ装置に関し、特に、デュアルバンドの逆F型アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PDA(Personal Data Assistance)、ノート型パーソナルコンピュータ、及び携帯電話機などの携帯型の通信端末に搭載されるアンテナ装置は、小型であることが要求される。さらに、近年、このようなアンテナ装置は、IEEE802.11b/g/nなどの無線LAN(Local Area Network)の通信規格に加えて、WiMAX(Worldwide interoperability for Microwave Access)と呼ばれる新しい無線通信規格にも準拠することが要求されている。特許文献1〜3は、このような要求に応えるアンテナ装置として、逆F型アンテナ装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−199204号公報。
【特許文献2】特開2003−158419号公報。
【特許文献3】特開昭61−238107号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
WiMAXは、無線LANの通信規格であるIEEE802.11nと同様に、MIMO(Multiple Input Multiple output)技術を応用した通信規格である。従って、WiMAXに準拠した無線通信部とIEEE802.11b/g/nなどの無線LANの通信規格に準拠した無線通信部とを備えた通信機器を設計する場合、2つの無線通信部が1つの変復調部を共用するように設計することは容易である。
【0005】
ここで、IEEE802.11b/gは、2402MHzから2482MHzまでの2.4GHz帯の周波数帯域を用いる無線LANの通信規格であり、当該通信規格において使用可能な帯域幅は約80MHzである。さらに、この周波数帯域に、日本国内のみでIEEE802.11bにおいて利用できる14チャンネル目の周波数帯域を加えた場合は、使用可能な帯域幅は約90MHzである。一方、WiMAXにおいて用いられる周波数帯域は、例えば、2.3GHz帯(2295MHz〜2405MHz)及び2.5GHz帯(2491MHz〜2695MHz)を含み、2.4GHz帯の周波数帯域を用いる無線LANの通信規格において用いられる周波数帯域とは異なる。このため、パワーアンプ、ローノイズアンプ、トランシーバー及びアンテナなどの高周波部を、上述した2つの無線通信部で共用する場合、この高周波部は、2.4GHz帯の周波数帯域を用いる無線LANの通信規格のみに準拠した無線通信部において処理される無線信号の周波数範囲(約90MHz)に比較して、2295MHzから2695MHzまでの4倍以上の周波数範囲の無線信号をサポートする必要がある。
【0006】
さらに、市場に流通している無線LANのための多くの通信機器は、IEEE802.11b/gなどの2.4GHz帯を用いる通信規格に加えて、約800MHzのより広い帯域幅を有する5GHz帯を用いるIEEE802.11n/aの各通信規格にも準拠している。このため、上述した高周波部は、2.4GHz帯の周波数帯域を用いる無線LANの通信規格のみに準拠した無線通信部の高周波部に比較して、2.3GHz帯、2.4GHz帯及び2.5GHz帯を含む2GHz帯、並びに5GHz帯のデュアルバンドをサポートし、かつ2GHz帯においてより広い帯域幅をサポートすることが要求される。
【0007】
また、WiMAXは、屋外において無線通信を利用するために定められた規格であるため、主に、PDA及びノート型パーソナルコンピュータなどの携帯型の通信端末に搭載される。このため、当然ながら、WiMAX及び無線LANの両方の通信規格に準拠した単一の小型のアンテナ装置に対するニーズが非常に高い。しかしながら、2GHz帯及び5GHz帯の両方の周波数帯域において、上述したように広い帯域幅をサポートすることは、技術的に困難であった。
【0008】
例えば、広い範囲の周波数帯域において、アンテナの入力インピーダンスを給電線路の特性インピーダンスに整合させるために、特許文献2記載の逆F型アンテナ装置において、アンテナエレメントは給電用導体と放射用導体とが別個に設けられた二重構造を有し、給電線路から放射用導体に直接給電することなく、給電線路から給電用導体を介して放射用導体に給電する。しかしながら、特許文献2記載の逆F型アンテナ装置の場合、板状の給電用導体を板状の放射用導体と接地導体との間に設ける(特許文献2の図2参照。)ために、セラミックなどの誘電体に、印刷などの方法により複数の板状導体を形成する必要がある。このため、特許文献2記載の逆F型アンテナ装置の製造は容易ではなかった。また、アンテナエレメントとアンテナ基板の接地導体とは所定の間隔だけ離隔している必要があるので、水平面に平行にアンテナ基板を設けると、アンテナ装置は上述した間隔以上の高さを有することになる。特許文献2記載の逆F型アンテナ装置は、より低背であり、かつ水平に広がる指向特性を持つことが仕様として要求される、薄型のノート型パーソナルコンピュータ及びDVDプレーヤなどの電子機器に搭載するためのアンテナ装置には不向きであった。
【0009】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、2つの周波数帯域をサポートし、かつ2つの周波数帯域のうちの低い方の周波数帯域を従来技術に比較して広げることができるアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るアンテナ装置は、
接地導体と、
上記接地導体に接続された一端を有する短絡導体と、
上記接地導体に対向して設けられた放射導体であって、上記短絡導体の他端に接続された一端を有しかつ上記接地導体から所定の間隔だけ離れた位置に設けられた給電点を含む第1の導体と、開放端である一端を有する第2の導体と、上記第1の導体の他端と上記第2の導体の他端との間に接続されたデュアルバンド形成用インダクタとを含む放射導体とを備えたアンテナ装置において、
上記接地導体は、
上記第1の導体に平行し、かつ上記第1の導体から所定の第1の距離だけ離隔した第1の水平部と、
上記第2の導体に平行し、かつ上記第2の導体から、上記第1の距離より長い所定の第2の距離だけ離隔した第2の水平部と、
上記デュアルバンド形成用インダクタに対向し、かつ上記第1の水平部と上記第2の水平部とを接続する傾斜部とを有することを特徴とする。
【0011】
上記アンテナ装置は、第1及び第2の共振周波数を有し、
上記第1の共振周波数は、上記第1の導体と上記短絡導体の各長さの和により設定され、
上記第2の共振周波数は、上記第2の導体と上記インダクタと上記第1の導体と上記短絡導体の各長さの和により設定されたことを特徴とする。
【0012】
また、上記アンテナ装置において、上記第1の距離は、上記第1の共振周波数に対応するように設定され、上記第2の距離は、上記第1の共振周波数に対応するように設定されたことを特徴とする。
【0013】
さらに、上記アンテナ装置において、上記放射導体は誘電体基板上に形成されたことを特徴とする。
【0014】
またさらに、上記アンテナ装置において、上記傾斜部の断面は直線形状を有することを特徴とする。
【0015】
また、上記アンテナ装置において、上記傾斜部の断面は放物線形状を有することを特徴とする。
【0016】
さらに、上記アンテナ装置において、上記デュアルバンド形成用インダクタはメアンダ形状を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るアンテナ装置によれば、第1の導体に平行し、かつ第1の導体から所定の第1の距離だけ離隔した第1の水平部と、第2の導体に平行し、かつ第2の導体から、第1の距離より長い所定の第2の距離だけ離隔した第2の水平部と、デュアルバンド形成用インダクタに対向し、かつ第1の水平部と第2の水平部とを接続する傾斜部とを有する接地導体を備えたので、2つの周波数帯域をサポートし、かつ2つの周波数帯域のうちの低い方の周波数帯域を従来技術に比較して広げることができるアンテナ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るアンテナ装置1の斜視図である。
【図2】図1のアンテナ装置1の側面図である。
【図3】図1のアンテナ装置1の上面図である。
【図4】図1の放射導体2及び接地導体9の部分斜視図である。
【図5】図1の基板10の裏面図である。
【図6】図1の放射導体2及び接地導体9の部分側面図である。
【図7】図1の放射導体2の部分拡大図である。
【図8】比較例に係るアンテナ装置1Pの斜視図である。
【図9】図8のアンテナ装置1Pの側面図である。
【図10】図8のアンテナ装置1Pの上面図である。
【図11】図1のアンテナ装置1の電圧定在波比(Voltage Standing Wave Ratio。以下、VSWRという。)のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図12】図8のアンテナ装置1PのVSWRのシミュレーション結果を示すグラフである。
【図13】図10及び図11の各シミュレーション結果を算出するために用いられたアンテナ装置1及び1Pの各パラメータを示す表である。
【図14】本発明の実施形態の変形例に係る接地導体9Aの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係るアンテナ装置1の斜視図であり、図2は、図1のアンテナ装置1の側面図であり、図3は、図1のアンテナ装置1の上面図である。また、図4は、図1の放射導体2及び接地導体9の部分斜視図であり、図5は、図1の基板10の裏面図である。さらに、図6は、図1の放射導体2及び接地導体9の部分側面図であり、図7は、図1の放射導体2の部分拡大図である。
【0021】
図1において、アンテナ装置1は、PDA、ノート型パーソナルコンピュータ、及び携帯電話機などの携帯型の通信端末に搭載され、かつ共振周波数f1及びf2(ただし、f1>f2である。)で共振するデュアルバンドの板状逆F型アンテナ装置である。アンテナ装置1は、例えばガラスエポキシ基板(FR4(Flame Retardant Type 4)基板)である誘電体基板10(以下、基板10という。)と、例えば銅などの金属の角柱から板金により形成されたブロック状の接地導体9と、例えば銅板である短絡導体板91と、同軸ケーブルを内蔵しかつ誘電体にてなる支持板92とを備えて構成される。ここで、接地導体9は上述した通信端末の金属筐体の一部である。短絡導体板91の一端91aは接地導体9に電気的に接続されて固定されている。また、支持板92は接地導体9に固定されている。支持板92内の同軸ケーブルの中心導体の一端は無線通信回路に接続される一方、その他端は放射導体2の給電点Qに接続される。さらに、支持板92内の同軸ケーブルの接地導体は接地導体9に接続されている。
【0022】
図5に示すように、基板10の裏面に、幅Ew及び長さElを有する長方形の放射導体2は、その長手方向が基板10の長手方向に対して平行となるように、導体パターンで印刷されている。ここで、放射導体2は、短絡導体板91を介して接地導体9に電気的に接続された一端2aと、他端である開放端2bと、給電点Qとを有する。給電点Qの位置は、給電点Qからアンテナ装置1全体を見たインピーダンスが、給電点Qから支持板92内の同軸ケーブル側を見たインピーダンスに一致するように設定される。さらに、図5において、放射導体2は、給電点Qを含みかつ長さEaを有する平面導体21と、放射導体2の開放端2bを含みかつ長さEcを有する平面導体23と、平面導体21と22との間に接続されかつ長さEbを有する、メアンダ形状のデュアルバンド形成用インダクタ22(以下、インダクタ22という。)とを含む。
【0023】
また、図1及び図6に示すように、接地導体9の上面は、水平部9H1と、水平部9H2と、傾斜部9Sとを有する。ここで、水平部9H1は、平面導体21に平行し、かつ平面導体21から所定の間隔Haだけ離隔するように形成され、また、水平部9H2は、平面導体23に平行し、かつ平面導体23から、間隔Haより長い所定の間隔Hbだけ離隔するように形成される。さらに、傾斜部9Sは、水平部9H1と水平部9H2との間に、インダクタ22に対向するように挿入され、水平部9H1と水平部9H2とを接続する。ここで、インダクタ22の直下に形成された傾斜部9Sは、インダクタ22から傾斜部9Sまでの間隔が、インダクタ22と平面導体21との接続部分から、インダクタ22と平面導体23との接続部分まで、間隔Haから間隔Hbまで線形的に変化するように形成される。すなわち、傾斜部9Sの断面は直線形状を有する。なお、図6において、傾斜部9Sの幅Gwは、インダクタ22の長さEbと等しい。
【0024】
図5において、平面導体21のインダクタ22との接続点21aから平面導体21と一端2aと短絡導体板91とを介して、短絡導体板91の接地導体9との接続点91aまでの電気長が、実質的に周波数f1の波長の4分の1となるように設定される。また、開放端2bから平面導体23とインダクタ22と平面導体21と一端2aと短絡導体板91を介して、短絡導体板91の接地導体9との接続点91aまでの電気長が、実質的に周波数f2(f2<f1)の波長の4分の1となるように設定される。ここで、アンテナ装置1を効率的に励振してより大きな利得を得るためには、周波数f1,f2の波長の大小に応じて、対応する間隔Ha,Hbを設定することが好ましい。すなわち、周波数f1の波長<周波数f2の波長なので、間隔Ha<Hbとすることが好ましい。
【0025】
さらに、図7において、インダクタ22の折り返し回数と、ライン幅Laと、ライン間隔Saとは、インダクタ22が、共振周波数f1以上の周波数を有する信号を遮断し、かつ共振周波数f1未満の周波数を有する信号を通過させる高周波阻止用インダクタとして機能するように設定される。
【0026】
次に、本実施形態に係るアンテナ装置1及び比較例に係るアンテナ装置1PのVSWRのシミュレーション結果を示す。図8は、比較例に係るアンテナ装置1Pの斜視図であり、図9は、図8のアンテナ装置1Pの側面図であり、図10は、図8のアンテナ装置1Pの上面図である。図8〜図10に示すように、比較例に係るアンテナ装置1Pは、実施形態に係るアンテナ装置1に比較して、接地導体9に代えて、傾斜部9Sを有していない接地導体9Pを備えた点のみが異なる。ここで、間隔Ha=Hbは実施形態の間隔Haに等しくなるように設定される。
【0027】
図11は、図1の本実施形態に係るアンテナ装置1のVSWRのシミュレーション結果を示すグラフであり、図12は、図8の比較例に係るアンテナ装置1PのVSWRのシミュレーション結果を示すグラフである。また、図13は、図10及び図11の各シミュレーション結果を算出するために用いられたアンテナ装置1及び1Pの各パラメータを示す表である。
【0028】
図10及び図11のシミュレーションにおいて、共振周波数f1は5GHzに設定され、共振周波数f2は2.4GHzに設定された。また、図13に示すように、アンテナ装置1を効率的に励振するために、周波数f1及びf2の各波長に応じて、間隔Haを5mmに設定し、間隔Hbを7mmに設定した。一方、アンテナ装置1Aにおいて、間隔Ha=Hbは、5mmに設定された。さらに、アンテナ装置1及び1Aにおいて、インダクタ22の折り返し回数は6回に設定され、ライン幅Laは0.1mmに設定され、ライン間隔Saは0.1mmに設定され、基板10の厚さは0.8mmに設定された。
【0029】
図10に示すように、アンテナ装置1のVSWRが2以下になる周波数は、2.32GHzから2.6GHzである。一方、図11に示すように、アンテナ装置1PのVSWRが2以下になる周波数は、2.36GHzから2.61GHzである。すなわち、本実施形態によれば、傾斜部9Sを有する接地導体9を備えたので、VSWRが2以下になる周波数帯域の帯域幅は、250MHzから280MHzまで10%以上拡大した。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、周波数f1,f2の波長の大小に応じて、対応する間隔Ha,Hbを設定し、インダクタ22の直下の接地導体9に、接地導体9と放射導体2との間の間隔が間隔Haから間隔Hbまで線形に変化するように傾斜部9Sを設けたので、傾斜部9Sを設けない場合に比較して、共振周波数f2を含む周波数帯域の帯域幅を広げることができる。
【0031】
また、間隔Ha及び間隔Hbを調整することにより、共振周波数f1及びf2を制御することができるので、任意の共振周波数f1及びf2で従来技術に比較して広い帯域幅を確保し、かつ共振周波数f1及びf2を分離できる。このため、例えば、2.3GHz帯、2.4GHz帯及び3.5GHz帯を含む2GHz帯、並びに5GHz帯のデュアルバンドをサポートし、かつ2GHz帯において従来技術に比較して広い帯域幅をサポートする小型のアンテナ装置を実現できる。このようなアンテナ装置は、IEEE802.11b/g及びIEEE802.11n/aの無線LANの通信規格及びWiMAXに準拠した無線通信装置を小型化するために有用である。また、本実施形態に係るアンテナ装置は、ノート型パーソナルコンピュータなどの金属筐体への組み込みなどに対して、効果が期待できる。
【0032】
変形例.
上述した実施形態において、傾斜部9Sの断面は直線形状を有した(図2参照。)が、本発明はこれに限られない。図14は、本発明の実施形態の変形例に係る接地導体9Aの側面図である。図14において、接地導体9Aは、傾斜部9Saを有する。傾斜部9Saは、インダクタ22と接地導体9Aとの間の間隔が、インダクタ22と平面導体21との接続部分からインダクタ22と平面導体23との接続部分まで、間隔Haから間隔Hbまで上に凸の放物線に沿って変化するように形成されている。すなわち、傾斜部9Saの断面は、上に凸の放物線形状を有する。また、傾斜部9Saの断面は、対数関数曲線などの他の形状を有してもよい。
【0033】
なお、上記実施形態及び変形例において、アンテナ装置1は板状逆F型アンテナ装置であったが、本発明はこれに限られず、平面導体21及び23に代えて2つの線状導体を備えた逆F型アンテナ装置であてもよい。
【0034】
また、上記実施形態及び変形例において、基板10と接地導体9又は9Aとの間の空間は空気によって満たされていた。しかしながら、本発明はこれに限られず、基板10と接地導体9又は9Aとの間に誘電体を挟設してもよい。これにより、より低背のアンテナ装置を実現できる。また、接地導体9又は9Aを板金により形成したが、本発明はこれに限られず、接地導体9又は9Aを金属などの基板により形成してもよい。さらに、基板10を接地導体9又は9Aに対して短絡導体板91及び支持板92を用いて固定したが、本発明はこれに限られず、アンテナ装置1全体をマルチレイヤの基板で作成してもよい。
【0035】
さらに、上記実施形態及び変形例において、誘電体基板10を用いたが、本発明はこれに限られず、半導体基板を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上説明したように、本発明に係るアンテナ装置によれば、第1の導体に平行し、かつ第1の導体から所定の第1の距離だけ離隔した第1の水平部と、第2の導体に平行し、かつ第2の導体から、第1の距離より長い所定の第2の距離だけ離隔した第2の水平部と、デュアルバンド形成用インダクタに対向し、かつ第1の水平部と第2の水平部とを接続する傾斜部とを有する接地導体を備えたので、2つの周波数帯域をサポートし、かつ2つの周波数帯域のうちの低い方の周波数帯域を従来技術に比較して広げることができるアンテナ装置を提供できる。
【0037】
本発明に係るアンテナ装置は、無線通信を行う家電製品、パーソナルコンピュータ、及びその他の産業機器のためのアンテナ装置として有用である。
【符号の説明】
【0038】
1…アンテナ装置、
2…放射導体、
9…接地導体、
9S…傾斜部、
9H1…水平部、
9H2…水平部、
10…誘電体基板、
21…平面導体、
22…デュアルバンド形成用インダクタ、
23…平面導体、
91…短絡導体板、
92…支持板、
Q…給電点。
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置のためのアンテナ装置に関し、特に、デュアルバンドの逆F型アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PDA(Personal Data Assistance)、ノート型パーソナルコンピュータ、及び携帯電話機などの携帯型の通信端末に搭載されるアンテナ装置は、小型であることが要求される。さらに、近年、このようなアンテナ装置は、IEEE802.11b/g/nなどの無線LAN(Local Area Network)の通信規格に加えて、WiMAX(Worldwide interoperability for Microwave Access)と呼ばれる新しい無線通信規格にも準拠することが要求されている。特許文献1〜3は、このような要求に応えるアンテナ装置として、逆F型アンテナ装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−199204号公報。
【特許文献2】特開2003−158419号公報。
【特許文献3】特開昭61−238107号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
WiMAXは、無線LANの通信規格であるIEEE802.11nと同様に、MIMO(Multiple Input Multiple output)技術を応用した通信規格である。従って、WiMAXに準拠した無線通信部とIEEE802.11b/g/nなどの無線LANの通信規格に準拠した無線通信部とを備えた通信機器を設計する場合、2つの無線通信部が1つの変復調部を共用するように設計することは容易である。
【0005】
ここで、IEEE802.11b/gは、2402MHzから2482MHzまでの2.4GHz帯の周波数帯域を用いる無線LANの通信規格であり、当該通信規格において使用可能な帯域幅は約80MHzである。さらに、この周波数帯域に、日本国内のみでIEEE802.11bにおいて利用できる14チャンネル目の周波数帯域を加えた場合は、使用可能な帯域幅は約90MHzである。一方、WiMAXにおいて用いられる周波数帯域は、例えば、2.3GHz帯(2295MHz〜2405MHz)及び2.5GHz帯(2491MHz〜2695MHz)を含み、2.4GHz帯の周波数帯域を用いる無線LANの通信規格において用いられる周波数帯域とは異なる。このため、パワーアンプ、ローノイズアンプ、トランシーバー及びアンテナなどの高周波部を、上述した2つの無線通信部で共用する場合、この高周波部は、2.4GHz帯の周波数帯域を用いる無線LANの通信規格のみに準拠した無線通信部において処理される無線信号の周波数範囲(約90MHz)に比較して、2295MHzから2695MHzまでの4倍以上の周波数範囲の無線信号をサポートする必要がある。
【0006】
さらに、市場に流通している無線LANのための多くの通信機器は、IEEE802.11b/gなどの2.4GHz帯を用いる通信規格に加えて、約800MHzのより広い帯域幅を有する5GHz帯を用いるIEEE802.11n/aの各通信規格にも準拠している。このため、上述した高周波部は、2.4GHz帯の周波数帯域を用いる無線LANの通信規格のみに準拠した無線通信部の高周波部に比較して、2.3GHz帯、2.4GHz帯及び2.5GHz帯を含む2GHz帯、並びに5GHz帯のデュアルバンドをサポートし、かつ2GHz帯においてより広い帯域幅をサポートすることが要求される。
【0007】
また、WiMAXは、屋外において無線通信を利用するために定められた規格であるため、主に、PDA及びノート型パーソナルコンピュータなどの携帯型の通信端末に搭載される。このため、当然ながら、WiMAX及び無線LANの両方の通信規格に準拠した単一の小型のアンテナ装置に対するニーズが非常に高い。しかしながら、2GHz帯及び5GHz帯の両方の周波数帯域において、上述したように広い帯域幅をサポートすることは、技術的に困難であった。
【0008】
例えば、広い範囲の周波数帯域において、アンテナの入力インピーダンスを給電線路の特性インピーダンスに整合させるために、特許文献2記載の逆F型アンテナ装置において、アンテナエレメントは給電用導体と放射用導体とが別個に設けられた二重構造を有し、給電線路から放射用導体に直接給電することなく、給電線路から給電用導体を介して放射用導体に給電する。しかしながら、特許文献2記載の逆F型アンテナ装置の場合、板状の給電用導体を板状の放射用導体と接地導体との間に設ける(特許文献2の図2参照。)ために、セラミックなどの誘電体に、印刷などの方法により複数の板状導体を形成する必要がある。このため、特許文献2記載の逆F型アンテナ装置の製造は容易ではなかった。また、アンテナエレメントとアンテナ基板の接地導体とは所定の間隔だけ離隔している必要があるので、水平面に平行にアンテナ基板を設けると、アンテナ装置は上述した間隔以上の高さを有することになる。特許文献2記載の逆F型アンテナ装置は、より低背であり、かつ水平に広がる指向特性を持つことが仕様として要求される、薄型のノート型パーソナルコンピュータ及びDVDプレーヤなどの電子機器に搭載するためのアンテナ装置には不向きであった。
【0009】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、2つの周波数帯域をサポートし、かつ2つの周波数帯域のうちの低い方の周波数帯域を従来技術に比較して広げることができるアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るアンテナ装置は、
接地導体と、
上記接地導体に接続された一端を有する短絡導体と、
上記接地導体に対向して設けられた放射導体であって、上記短絡導体の他端に接続された一端を有しかつ上記接地導体から所定の間隔だけ離れた位置に設けられた給電点を含む第1の導体と、開放端である一端を有する第2の導体と、上記第1の導体の他端と上記第2の導体の他端との間に接続されたデュアルバンド形成用インダクタとを含む放射導体とを備えたアンテナ装置において、
上記接地導体は、
上記第1の導体に平行し、かつ上記第1の導体から所定の第1の距離だけ離隔した第1の水平部と、
上記第2の導体に平行し、かつ上記第2の導体から、上記第1の距離より長い所定の第2の距離だけ離隔した第2の水平部と、
上記デュアルバンド形成用インダクタに対向し、かつ上記第1の水平部と上記第2の水平部とを接続する傾斜部とを有することを特徴とする。
【0011】
上記アンテナ装置は、第1及び第2の共振周波数を有し、
上記第1の共振周波数は、上記第1の導体と上記短絡導体の各長さの和により設定され、
上記第2の共振周波数は、上記第2の導体と上記インダクタと上記第1の導体と上記短絡導体の各長さの和により設定されたことを特徴とする。
【0012】
また、上記アンテナ装置において、上記第1の距離は、上記第1の共振周波数に対応するように設定され、上記第2の距離は、上記第1の共振周波数に対応するように設定されたことを特徴とする。
【0013】
さらに、上記アンテナ装置において、上記放射導体は誘電体基板上に形成されたことを特徴とする。
【0014】
またさらに、上記アンテナ装置において、上記傾斜部の断面は直線形状を有することを特徴とする。
【0015】
また、上記アンテナ装置において、上記傾斜部の断面は放物線形状を有することを特徴とする。
【0016】
さらに、上記アンテナ装置において、上記デュアルバンド形成用インダクタはメアンダ形状を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るアンテナ装置によれば、第1の導体に平行し、かつ第1の導体から所定の第1の距離だけ離隔した第1の水平部と、第2の導体に平行し、かつ第2の導体から、第1の距離より長い所定の第2の距離だけ離隔した第2の水平部と、デュアルバンド形成用インダクタに対向し、かつ第1の水平部と第2の水平部とを接続する傾斜部とを有する接地導体を備えたので、2つの周波数帯域をサポートし、かつ2つの周波数帯域のうちの低い方の周波数帯域を従来技術に比較して広げることができるアンテナ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るアンテナ装置1の斜視図である。
【図2】図1のアンテナ装置1の側面図である。
【図3】図1のアンテナ装置1の上面図である。
【図4】図1の放射導体2及び接地導体9の部分斜視図である。
【図5】図1の基板10の裏面図である。
【図6】図1の放射導体2及び接地導体9の部分側面図である。
【図7】図1の放射導体2の部分拡大図である。
【図8】比較例に係るアンテナ装置1Pの斜視図である。
【図9】図8のアンテナ装置1Pの側面図である。
【図10】図8のアンテナ装置1Pの上面図である。
【図11】図1のアンテナ装置1の電圧定在波比(Voltage Standing Wave Ratio。以下、VSWRという。)のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図12】図8のアンテナ装置1PのVSWRのシミュレーション結果を示すグラフである。
【図13】図10及び図11の各シミュレーション結果を算出するために用いられたアンテナ装置1及び1Pの各パラメータを示す表である。
【図14】本発明の実施形態の変形例に係る接地導体9Aの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係るアンテナ装置1の斜視図であり、図2は、図1のアンテナ装置1の側面図であり、図3は、図1のアンテナ装置1の上面図である。また、図4は、図1の放射導体2及び接地導体9の部分斜視図であり、図5は、図1の基板10の裏面図である。さらに、図6は、図1の放射導体2及び接地導体9の部分側面図であり、図7は、図1の放射導体2の部分拡大図である。
【0021】
図1において、アンテナ装置1は、PDA、ノート型パーソナルコンピュータ、及び携帯電話機などの携帯型の通信端末に搭載され、かつ共振周波数f1及びf2(ただし、f1>f2である。)で共振するデュアルバンドの板状逆F型アンテナ装置である。アンテナ装置1は、例えばガラスエポキシ基板(FR4(Flame Retardant Type 4)基板)である誘電体基板10(以下、基板10という。)と、例えば銅などの金属の角柱から板金により形成されたブロック状の接地導体9と、例えば銅板である短絡導体板91と、同軸ケーブルを内蔵しかつ誘電体にてなる支持板92とを備えて構成される。ここで、接地導体9は上述した通信端末の金属筐体の一部である。短絡導体板91の一端91aは接地導体9に電気的に接続されて固定されている。また、支持板92は接地導体9に固定されている。支持板92内の同軸ケーブルの中心導体の一端は無線通信回路に接続される一方、その他端は放射導体2の給電点Qに接続される。さらに、支持板92内の同軸ケーブルの接地導体は接地導体9に接続されている。
【0022】
図5に示すように、基板10の裏面に、幅Ew及び長さElを有する長方形の放射導体2は、その長手方向が基板10の長手方向に対して平行となるように、導体パターンで印刷されている。ここで、放射導体2は、短絡導体板91を介して接地導体9に電気的に接続された一端2aと、他端である開放端2bと、給電点Qとを有する。給電点Qの位置は、給電点Qからアンテナ装置1全体を見たインピーダンスが、給電点Qから支持板92内の同軸ケーブル側を見たインピーダンスに一致するように設定される。さらに、図5において、放射導体2は、給電点Qを含みかつ長さEaを有する平面導体21と、放射導体2の開放端2bを含みかつ長さEcを有する平面導体23と、平面導体21と22との間に接続されかつ長さEbを有する、メアンダ形状のデュアルバンド形成用インダクタ22(以下、インダクタ22という。)とを含む。
【0023】
また、図1及び図6に示すように、接地導体9の上面は、水平部9H1と、水平部9H2と、傾斜部9Sとを有する。ここで、水平部9H1は、平面導体21に平行し、かつ平面導体21から所定の間隔Haだけ離隔するように形成され、また、水平部9H2は、平面導体23に平行し、かつ平面導体23から、間隔Haより長い所定の間隔Hbだけ離隔するように形成される。さらに、傾斜部9Sは、水平部9H1と水平部9H2との間に、インダクタ22に対向するように挿入され、水平部9H1と水平部9H2とを接続する。ここで、インダクタ22の直下に形成された傾斜部9Sは、インダクタ22から傾斜部9Sまでの間隔が、インダクタ22と平面導体21との接続部分から、インダクタ22と平面導体23との接続部分まで、間隔Haから間隔Hbまで線形的に変化するように形成される。すなわち、傾斜部9Sの断面は直線形状を有する。なお、図6において、傾斜部9Sの幅Gwは、インダクタ22の長さEbと等しい。
【0024】
図5において、平面導体21のインダクタ22との接続点21aから平面導体21と一端2aと短絡導体板91とを介して、短絡導体板91の接地導体9との接続点91aまでの電気長が、実質的に周波数f1の波長の4分の1となるように設定される。また、開放端2bから平面導体23とインダクタ22と平面導体21と一端2aと短絡導体板91を介して、短絡導体板91の接地導体9との接続点91aまでの電気長が、実質的に周波数f2(f2<f1)の波長の4分の1となるように設定される。ここで、アンテナ装置1を効率的に励振してより大きな利得を得るためには、周波数f1,f2の波長の大小に応じて、対応する間隔Ha,Hbを設定することが好ましい。すなわち、周波数f1の波長<周波数f2の波長なので、間隔Ha<Hbとすることが好ましい。
【0025】
さらに、図7において、インダクタ22の折り返し回数と、ライン幅Laと、ライン間隔Saとは、インダクタ22が、共振周波数f1以上の周波数を有する信号を遮断し、かつ共振周波数f1未満の周波数を有する信号を通過させる高周波阻止用インダクタとして機能するように設定される。
【0026】
次に、本実施形態に係るアンテナ装置1及び比較例に係るアンテナ装置1PのVSWRのシミュレーション結果を示す。図8は、比較例に係るアンテナ装置1Pの斜視図であり、図9は、図8のアンテナ装置1Pの側面図であり、図10は、図8のアンテナ装置1Pの上面図である。図8〜図10に示すように、比較例に係るアンテナ装置1Pは、実施形態に係るアンテナ装置1に比較して、接地導体9に代えて、傾斜部9Sを有していない接地導体9Pを備えた点のみが異なる。ここで、間隔Ha=Hbは実施形態の間隔Haに等しくなるように設定される。
【0027】
図11は、図1の本実施形態に係るアンテナ装置1のVSWRのシミュレーション結果を示すグラフであり、図12は、図8の比較例に係るアンテナ装置1PのVSWRのシミュレーション結果を示すグラフである。また、図13は、図10及び図11の各シミュレーション結果を算出するために用いられたアンテナ装置1及び1Pの各パラメータを示す表である。
【0028】
図10及び図11のシミュレーションにおいて、共振周波数f1は5GHzに設定され、共振周波数f2は2.4GHzに設定された。また、図13に示すように、アンテナ装置1を効率的に励振するために、周波数f1及びf2の各波長に応じて、間隔Haを5mmに設定し、間隔Hbを7mmに設定した。一方、アンテナ装置1Aにおいて、間隔Ha=Hbは、5mmに設定された。さらに、アンテナ装置1及び1Aにおいて、インダクタ22の折り返し回数は6回に設定され、ライン幅Laは0.1mmに設定され、ライン間隔Saは0.1mmに設定され、基板10の厚さは0.8mmに設定された。
【0029】
図10に示すように、アンテナ装置1のVSWRが2以下になる周波数は、2.32GHzから2.6GHzである。一方、図11に示すように、アンテナ装置1PのVSWRが2以下になる周波数は、2.36GHzから2.61GHzである。すなわち、本実施形態によれば、傾斜部9Sを有する接地導体9を備えたので、VSWRが2以下になる周波数帯域の帯域幅は、250MHzから280MHzまで10%以上拡大した。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、周波数f1,f2の波長の大小に応じて、対応する間隔Ha,Hbを設定し、インダクタ22の直下の接地導体9に、接地導体9と放射導体2との間の間隔が間隔Haから間隔Hbまで線形に変化するように傾斜部9Sを設けたので、傾斜部9Sを設けない場合に比較して、共振周波数f2を含む周波数帯域の帯域幅を広げることができる。
【0031】
また、間隔Ha及び間隔Hbを調整することにより、共振周波数f1及びf2を制御することができるので、任意の共振周波数f1及びf2で従来技術に比較して広い帯域幅を確保し、かつ共振周波数f1及びf2を分離できる。このため、例えば、2.3GHz帯、2.4GHz帯及び3.5GHz帯を含む2GHz帯、並びに5GHz帯のデュアルバンドをサポートし、かつ2GHz帯において従来技術に比較して広い帯域幅をサポートする小型のアンテナ装置を実現できる。このようなアンテナ装置は、IEEE802.11b/g及びIEEE802.11n/aの無線LANの通信規格及びWiMAXに準拠した無線通信装置を小型化するために有用である。また、本実施形態に係るアンテナ装置は、ノート型パーソナルコンピュータなどの金属筐体への組み込みなどに対して、効果が期待できる。
【0032】
変形例.
上述した実施形態において、傾斜部9Sの断面は直線形状を有した(図2参照。)が、本発明はこれに限られない。図14は、本発明の実施形態の変形例に係る接地導体9Aの側面図である。図14において、接地導体9Aは、傾斜部9Saを有する。傾斜部9Saは、インダクタ22と接地導体9Aとの間の間隔が、インダクタ22と平面導体21との接続部分からインダクタ22と平面導体23との接続部分まで、間隔Haから間隔Hbまで上に凸の放物線に沿って変化するように形成されている。すなわち、傾斜部9Saの断面は、上に凸の放物線形状を有する。また、傾斜部9Saの断面は、対数関数曲線などの他の形状を有してもよい。
【0033】
なお、上記実施形態及び変形例において、アンテナ装置1は板状逆F型アンテナ装置であったが、本発明はこれに限られず、平面導体21及び23に代えて2つの線状導体を備えた逆F型アンテナ装置であてもよい。
【0034】
また、上記実施形態及び変形例において、基板10と接地導体9又は9Aとの間の空間は空気によって満たされていた。しかしながら、本発明はこれに限られず、基板10と接地導体9又は9Aとの間に誘電体を挟設してもよい。これにより、より低背のアンテナ装置を実現できる。また、接地導体9又は9Aを板金により形成したが、本発明はこれに限られず、接地導体9又は9Aを金属などの基板により形成してもよい。さらに、基板10を接地導体9又は9Aに対して短絡導体板91及び支持板92を用いて固定したが、本発明はこれに限られず、アンテナ装置1全体をマルチレイヤの基板で作成してもよい。
【0035】
さらに、上記実施形態及び変形例において、誘電体基板10を用いたが、本発明はこれに限られず、半導体基板を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上説明したように、本発明に係るアンテナ装置によれば、第1の導体に平行し、かつ第1の導体から所定の第1の距離だけ離隔した第1の水平部と、第2の導体に平行し、かつ第2の導体から、第1の距離より長い所定の第2の距離だけ離隔した第2の水平部と、デュアルバンド形成用インダクタに対向し、かつ第1の水平部と第2の水平部とを接続する傾斜部とを有する接地導体を備えたので、2つの周波数帯域をサポートし、かつ2つの周波数帯域のうちの低い方の周波数帯域を従来技術に比較して広げることができるアンテナ装置を提供できる。
【0037】
本発明に係るアンテナ装置は、無線通信を行う家電製品、パーソナルコンピュータ、及びその他の産業機器のためのアンテナ装置として有用である。
【符号の説明】
【0038】
1…アンテナ装置、
2…放射導体、
9…接地導体、
9S…傾斜部、
9H1…水平部、
9H2…水平部、
10…誘電体基板、
21…平面導体、
22…デュアルバンド形成用インダクタ、
23…平面導体、
91…短絡導体板、
92…支持板、
Q…給電点。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地導体と、
上記接地導体に接続された一端を有する短絡導体と、
上記接地導体に対向して設けられた放射導体であって、上記短絡導体の他端に接続された一端を有しかつ上記接地導体から所定の間隔だけ離れた位置に設けられた給電点を含む第1の導体と、開放端である一端を有する第2の導体と、上記第1の導体の他端と上記第2の導体の他端との間に接続されたデュアルバンド形成用インダクタとを含む放射導体とを備えたアンテナ装置において、
上記接地導体は、
上記第1の導体に平行し、かつ上記第1の導体から所定の第1の距離だけ離隔した第1の水平部と、
上記第2の導体に平行し、かつ上記第2の導体から、上記第1の距離より長い所定の第2の距離だけ離隔した第2の水平部と、
上記デュアルバンド形成用インダクタに対向し、かつ上記第1の水平部と上記第2の水平部とを接続する傾斜部とを有することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
上記アンテナ装置は、第1及び第2の共振周波数を有し、
上記第1の共振周波数は、上記第1の導体と上記短絡導体の各長さの和により設定され、
上記第2の共振周波数は、上記第2の導体と上記インダクタと上記第1の導体と上記短絡導体の各長さの和により設定されたことを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
上記第1の距離は、上記第1の共振周波数に対応するように設定され、
上記第2の距離は、上記第1の共振周波数に対応するように設定されたことを特徴とする請求項2記載のアンテナ装置。
【請求項4】
上記放射導体は誘電体基板上に形成されたことを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
上記傾斜部の断面は直線形状を有することを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
上記傾斜部の断面は放物線形状を有することを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項7】
上記デュアルバンド形成用インダクタはメアンダ形状を有することを特徴とする請求項1から6までのうちのいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項1】
接地導体と、
上記接地導体に接続された一端を有する短絡導体と、
上記接地導体に対向して設けられた放射導体であって、上記短絡導体の他端に接続された一端を有しかつ上記接地導体から所定の間隔だけ離れた位置に設けられた給電点を含む第1の導体と、開放端である一端を有する第2の導体と、上記第1の導体の他端と上記第2の導体の他端との間に接続されたデュアルバンド形成用インダクタとを含む放射導体とを備えたアンテナ装置において、
上記接地導体は、
上記第1の導体に平行し、かつ上記第1の導体から所定の第1の距離だけ離隔した第1の水平部と、
上記第2の導体に平行し、かつ上記第2の導体から、上記第1の距離より長い所定の第2の距離だけ離隔した第2の水平部と、
上記デュアルバンド形成用インダクタに対向し、かつ上記第1の水平部と上記第2の水平部とを接続する傾斜部とを有することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
上記アンテナ装置は、第1及び第2の共振周波数を有し、
上記第1の共振周波数は、上記第1の導体と上記短絡導体の各長さの和により設定され、
上記第2の共振周波数は、上記第2の導体と上記インダクタと上記第1の導体と上記短絡導体の各長さの和により設定されたことを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
上記第1の距離は、上記第1の共振周波数に対応するように設定され、
上記第2の距離は、上記第1の共振周波数に対応するように設定されたことを特徴とする請求項2記載のアンテナ装置。
【請求項4】
上記放射導体は誘電体基板上に形成されたことを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
上記傾斜部の断面は直線形状を有することを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
上記傾斜部の断面は放物線形状を有することを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項7】
上記デュアルバンド形成用インダクタはメアンダ形状を有することを特徴とする請求項1から6までのうちのいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−161003(P2012−161003A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20526(P2011−20526)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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