説明

アンテナ装置

【課題】単純な構造で低コストのアンテナ設計が可能なアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置1Aは、アンテナアーム51Aに、導波素子21A,22Aと、双ループ放射器10Aと、反射素子41A〜46Aとが、この順に取り付けられている。アンテナ装置1Aは、たとえば双ループ八木式アンテナとして動作する。アンテナ装置1Aの反射素子41A〜46A、双ループ放射器10Aおよび導波素子21A,22Aは、いずれも棒状に構成されている。そのため、アンテナ装置1Aでは、受風面積が低減される。これらの棒状の素子は、たとえばアルミパイプで構成される。また、アンテナ装置1Aは、導波素子21A,22Aの数を増やすことで、利得を上げていくことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アンテナ装置に関し、より特定的には、双ループアンテナを利用したアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された反射板付平面アンテナは、三角双ループエレメントからなる平面状の放射素子の背面に、平面状の反射板が設けられている。反射板の両側の側部は、放射素子側へ折曲されており、側部の先端縁と放射素子の側縁との間隔が小さくされている。これにより、放射素子と反射板との間隔を狭めても、反射板付平面アンテナの電気的特性を良好にすることができるようになる。
【0003】
特許文献2に記載された双ループアンテナは、給電点から一方のループアンテナまでの距離と他方のループアンテナまでの距離とを変化させることにより、各ループアンテナに給電される際の電磁波の位相に差が生じる。給電点からの距離が短い方のループアンテナから放射される電磁波の位相が、給電点からの距離が長い方のループアンテナから放射される電磁波の位相と比較して進むこととなる。
【0004】
特許文献3に記載された双ループアンテナは、円環部から一対の給電導入部が延設された中央給電タイプのループアンテナを、その配列方向と給電導入部の配線方向とが直交するように配置し、両ループアンテナの給電導入部間を、2線式の並行給電線により接続する。また、並行給電線を構成する一対の給電線を、平行ではなく、線路間隔が漸次変化するように傾斜して配線する。
【0005】
特許文献4に記載された双ループアンテナ装置は、双ループと、後方に配置された反射板と、双ループを固定金具で固定する支持具と、支持具を固定する支柱と、双ループと接続し接続端子を備え信号を伝送する同軸ケーブルと、反射板および支柱を固定し更にマストに取り付け固定する背面金具と、背面金具にマストを挟み込み固定する押さえ金具とを備えた構成を有する。
【0006】
特許文献5に記載されたヌルレスアンテナは、複数の単位アンテナを有する。当該単位アンテナは、複数の放射素子部と、各放射素子部の間に配置される給電点と、給電点と放射素子部とをつなぐ給電線路とを備える。単位アンテナにおける給電点から一方の放射素子部までの給電線路長と他の放射素子部まで給電線路長とが異なる。各単位アンテナの指向性を非対称とすることで、ヌルの発生が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−261023号公報
【特許文献2】特開2004−015385号公報
【特許文献3】特開2000−307327号公報
【特許文献4】特開2005−110164号公報
【特許文献5】特開2004−056319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の双ループアンテナは、主にUHF(Ultra High Frequency)帯の送信用アンテナとして用いられていた。受信用双ループアンテナも存在するが、双ループ放射器と反射器のみの構造で導波器がないので低利得である。さらに、反射器も板金に曲げ加工を施したものであって、加工がしづらいという問題点があった。
【0009】
それゆえに、この発明の目的は、単純な構造で低コストのアンテナ設計が可能なアンテナ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のある局面によれば、アンテナ装置であって、導波素子と、導波素子の後方に配置された双ループ放射器と、双ループ放射器の後方に配置された反射素子とを備え、導波素子、双ループ放射器および反射素子は、いずれも棒状に構成されている。
【0011】
この発明の他の局面によれば、アンテナ装置であって、上下に並列に配置された複数の導波素子と、導波素子の後方に配置された双ループ放射器と、双ループ放射器の後方に配置された複数の反射素子とを備え、複数の導波素子は、双ループ放射器に最も近い一対が板状に構成され、残りが棒状に構成され、複数の反射素子は、棒状に構成されている。
【0012】
好ましくは、双ループ放射器は、2つのループアンテナ部と、2つのループアンテナ部を接続する平行な2本の伝送線路とを含み、2つのループアンテナ部は、電圧定在波比を調整するためのスタブ領域をループ内にそれぞれ有し、2本の伝送線路は、中心点において給電点をそれぞれ有する。
【0013】
好ましくは、導波素子、双ループ放射器および反射素子を所定の位置に配置するためのアンテナアームをさらに備える。
【0014】
好ましくは、アンテナ装置は、地上デジタル放送受信用アンテナである。
【発明の効果】
【0015】
この発明の実施の形態によれば、単純な構造で低コストのアンテナ設計が可能なアンテナ装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態1によるアンテナ装置1Aの構造を示した図である。
【図2】双ループ放射器10の具体的な構造を示した図である。
【図3】アンテナ装置1Aの利得GN1および電圧定在波比VSWR1を示した図である。
【図4】アンテナ装置1Aの前後比FB1および半値幅HW1を示した図である。
【図5】アンテナ装置1Aの470MHzにおける指向性を示した図である。
【図6】アンテナ装置1Aの590MHzにおける指向性を示した図である。
【図7】アンテナ装置1Aの710MHzにおける指向性を示した図である。
【図8】この発明の実施の形態2によるアンテナ装置1Bの構造を示した図である。
【図9】アンテナ装置1Bの利得GN2および電圧定在波比VSWR2を示した図である。
【図10】アンテナ装置1Bの前後比FB2および半値幅HW2を示した図である。
【図11】アンテナ装置1Bの470MHzにおける指向性を示した図である。
【図12】アンテナ装置1Bの590MHzにおける指向性を示した図である。
【図13】アンテナ装置1Bの710MHzにおける指向性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0018】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1によるアンテナ装置1Aの構造を示した図である。
【0019】
図1を参照して、実施の形態1のアンテナ装置1Aは、アンテナアーム51Aに、導波素子21A,22Aと、双ループ放射器10Aと、反射素子41A〜46Aとが、この順に取り付けられている。アンテナ装置1Aは、たとえば双ループ八木式アンテナとして動作する。双ループ放射器10Aの寸法は、縦410mm×横300mmである。反射素子41A〜46Aの全体寸法は、縦560mm×横340mmである。アンテナ装置1Aの奥行き寸法は、導波素子21A,22Aの数によって変動するが、おおむね350mm〜500mm以内である。
【0020】
従来、このような種類のアンテナの反射器は、板金に曲げ加工を施したものが一般的であった。これに対し、アンテナ装置1Aの反射素子41A〜46Aは、棒状に構成されている。そのため、アンテナ装置1Aでは、受風面積が低減される。なお、アンテナ装置1Aの双ループ放射器10Aおよび導波素子21A,22Aもまた、棒状に構成されている。反射素子41A〜46A、双ループ放射器10Aおよび導波素子21A,22Aは、たとえばアルミパイプで構成される。
【0021】
また、アンテナ装置1Aは、従来の双ループアンテナよりも単純な構造で設計することができ、従来の八木式アンテナと同等の性能で、全長(奥行き寸法)を短くすることができる。また、アンテナ装置1Aは、導波素子21A,22Aの数を増やすことで、利得を上げていくことができる。
【0022】
図2は、双ループ放射器10の具体的な構造を示した図である。図2の双ループ放射器10は、実施の形態1の双ループ放射器10Aのみならず、実施の形態2の双ループ放射器10Bにも対応する。
【0023】
図2を参照して、双ループ放射器10は、ループアンテナ部11,14と、伝送線路17,18とを含む。ループアンテナ部11は、VSWR調整用スタブ12,13を含む。VSWR調整用スタブ12,13は、ループアンテナ部11の電圧定在波比(VSWR:Voltage Standing Wave Ratio)を調整するために設けられている。ループアンテナ部14も同様に、VSWR調整用スタブ15,16を含む。ループアンテナ部11,14は、縦50mm×横300mmで、300Ωの特性インピーダンスを有する。
【0024】
伝送線路17,18は、長さ300mmの中心点に給電点17P,18Pをそれぞれ有する。このように、伝送線路17,18は中心点で給電されるため、特性インピーダンスは150Ωとなる。給電点17P,18Pは、バランを介して、75Ωの同軸ケーブルに接続される。
【0025】
図3は、アンテナ装置1Aの利得GN1および電圧定在波比VSWR1を示した図である。
【0026】
図3に示すように、利得GN1は、地上デジタル放送の周波数帯域に相当するUHF帯の470MHz〜710MHzにおいて、6.5dB〜8.0dBの高い値となる。また、電圧定在波比VSWR1は、同じくUHF帯の470MHz〜710MHzにおいて、2.7以下の低い値に抑えられている。
【0027】
図4は、アンテナ装置1Aの前後比FB1および半値幅HW1を示した図である。
ここで、前後比とは、アンテナの最大感度方向とその反対方向(180度±60度の範囲内)との最大感度の比[dB]をいう。また、半値幅とは、アンテナの主軸方向の動作利得より電力で3dB低下する方位の挟む角度[度]をいう。図4に示すように、前後比FB1は、UHF帯の500MHz〜710MHzにおいて、17.5dB〜20.5dBの高い値となる。半値幅HW1は、UHF帯の470MHz〜710MHzにおいて、64度〜68度の比較的小さい値となる。
【0028】
図5〜7は、アンテナ装置1Aの指向性を示した図である。
図5〜7は、470MHz、590MHzおよび710MHzにおけるアンテナ装置1Aの指向性をそれぞれ表わす。図5〜7に示すように、アンテナ装置1Aは、単一方向の指向性を有する。
【0029】
以上のように、実施の形態1のアンテナ装置1Aは、棒状に構成された双ループ放射器10Aに対し、棒状に構成された導波素子21A,22Aおよび反射素子41A〜46Aが付加された構成となっている。当該構成により、地上デジタル放送受信用双ループアンテナを、単純な構造かつ低コストで設計することができる。また、従来の八木式アンテナと同程度の性能で、全長を短くすることが可能である。
【0030】
また、アンテナ装置1Aは、1つのアンテナアーム51Aで、すべての素子を保持している。これらの素子は、たとえばアルミパイプで構成される。当該構成により、素子に板金を使用したりアンテナを筐体で囲った場合と比べて、小型軽量化されコストが削減されるとともに、アンテナの受風面積を減らすことができる。また、アンテナ装置1Aは、導波素子21A,22Aが付加されている分だけ利得が高まっている。
【0031】
[実施の形態2]
図8は、この発明の実施の形態2によるアンテナ装置1Bの構造を示した図である。
【0032】
図8を参照して、実施の形態2のアンテナ装置1Bは、アンテナアーム51Bに、導波素子21B〜27B,31B〜37Bと、双ループ放射器10Bと、反射素子41B〜48Bとが、この順に取り付けられている。アンテナ装置1Bは、たとえば双ループ八木式アンテナとして動作する。反射素子41B〜48Bの全体寸法は、縦560mm×横420mmである。
【0033】
導波素子21B〜27Bと、導波素子31B〜37Bとは、上下に並列に配置されている。双ループ放射器10Bに最も近い導波素子21B,31Bは、板状に構成されている。導波素子22B〜27B,32B〜37Bは、棒状に構成されている。また、反射素子41B〜48Bは、棒状に構成されている。反射素子41B〜48Bおよび導波素子22B〜27B,32B〜37Bは、たとえばアルミパイプで構成される。導波素子21B,31Bは、たとえば板金で構成される。
【0034】
上記のように、導波素子および反射素子の数を増やし構造を一部変えることで、下記に示すように、実施の形態1と比較してアンテナ装置1Bの性能を高めることができる。
【0035】
図9は、アンテナ装置1Bの利得GN2および電圧定在波比VSWR2を示した図である。
【0036】
図9に示すように、利得GN2は、地上デジタル放送の周波数帯域に相当するUHF帯の470MHz〜710MHzにおいて、7.9dB〜10.3dBの高い値となる。このように、アンテナ装置1Bでは、導波素子等の数を増やしたことで、実施の形態1と比較しても利得が大きくなっている。このように、アンテナ装置1Bは、小型化されているにもかかわらず、従来の14素子の八木式アンテナの利得7.5dB〜12.0dBとほぼ同等の性能を有する。
【0037】
また、電圧定在波比VSWR2は、同じくUHF帯の470MHz〜710MHzにおいて、実施の形態1より低い2.5以下の値に抑えられている。
【0038】
図10は、アンテナ装置1Bの前後比FB2および半値幅HW2を示した図である。
図10に示すように、前後比FB2は、UHF帯の470MHz〜710MHzにおいて、18.5dB〜19.0dBの高い値となる。半値幅HW2は、UHF帯の470MHz〜710MHzにおいて、51度〜61度と更に小さい値となる。
【0039】
図11〜13は、アンテナ装置1Bの指向性を示した図である。
図11〜13は、470MHz、590MHzおよび710MHzにおけるアンテナ装置1Bの指向性をそれぞれ表わす。図11〜13に示すように、アンテナ装置1Bは、実施の形態1と同様に単一方向の指向性を有する。
【0040】
以上のように、実施の形態2のアンテナ装置1Bは、板状に構成された双ループ放射器10Bに、一対が板状に構成され残りが棒状に構成された導波素子21B〜27B,31B〜37Bおよびすべてが棒状に構成された反射素子41B〜48Bが付加された構成となっている。当該構成により、地上デジタル放送受信用双ループアンテナを、比較的単純な構造かつ低コストで設計することができる。
【0041】
また、導波素子および反射素子の数を増やし構造を一部変えることで、実施の形態1と比べて、占有体積はやや増大するものの利得などの性能をより一層向上させることが可能となる。また、アンテナ装置1Bは、実施の形態1と同様、1つのアンテナアーム51Bですべての素子を保持している。当該構成により、アンテナを筐体で囲った場合と比べて、小型軽量化されコストが削減されるとともに、アンテナの受風面積を減らすことができる。
【0042】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0043】
1A,1B アンテナ装置、10,10A,10B 双ループ放射器、11,14 ループアンテナ部、12,13,15,16 調整用スタブ、17,18 伝送線路、17P,18P 給電点、21A,22A,21B〜27B,31B〜37B 導波素子、41A〜46A,41B〜48B 反射素子、51A,51B アンテナアーム、FB1,FB2 前後比、GN1,GN2 利得、HW1,HW2 半値幅、VSWR1,VSWR2 定在波比。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波素子と、
前記導波素子の後方に配置された双ループ放射器と、
前記双ループ放射器の後方に配置された反射素子とを備え、
前記導波素子、前記双ループ放射器および前記反射素子は、いずれも棒状に構成されている、アンテナ装置。
【請求項2】
上下に並列に配置された複数の導波素子と、
前記導波素子の後方に配置された双ループ放射器と、
前記双ループ放射器の後方に配置された複数の反射素子とを備え、
前記複数の導波素子は、前記双ループ放射器に最も近い一対が板状に構成され、残りが棒状に構成され、
前記複数の反射素子は、棒状に構成されている、アンテナ装置。
【請求項3】
前記双ループ放射器は、
2つのループアンテナ部と、
前記2つのループアンテナ部を接続する平行な2本の伝送線路とを含み、
前記2つのループアンテナ部は、電圧定在波比を調整するためのスタブ領域をループ内にそれぞれ有し、
前記2本の伝送線路は、中心点において給電点をそれぞれ有する、請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記導波素子、前記双ループ放射器および前記反射素子を所定の位置に配置するためのアンテナアームをさらに備える、請求項1〜3のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記アンテナ装置は、地上デジタル放送受信用アンテナである、請求項1〜4のいずれかに記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−257031(P2012−257031A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128178(P2011−128178)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】