説明

アントシアニジン及びその抽出方法。

【課題】黒生姜由来のアントシアニジン及びその抽出方法を提供する。
【解決手段】本アントシアニジンは、黒生姜から抽出されたことを特徴とする。また、本アントシアニジンの抽出方法は、(1)黒生姜を原料とし、抽出溶媒(例えば、塩酸水溶液とメタノールとの混合溶媒)を用いて抽出を行い、抽出混合液を得る工程と、(2)該抽出混合液から残渣物を分離し、抽出液を得る工程と、(3)該抽出液を濃縮し、乾燥する工程と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒生姜由来のアントシアニジン及びその抽出方法に関する。本発明は、食品、化粧品、医薬品、塗料等に利用される。
【背景技術】
【0002】
従来より、ブルーベリー、ブドウ、リンゴ等の植物には、デルフィニジン等のアントシアニジンが含まれており、このアントシアニジンには、疲れ目、視力低下、眼精疲労等に効果があることが知られている。
更に、上記アントシアニジンは、抗酸化物質であることが知られており、機能性食品や医薬品等の分野での応用が進められている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−318402号公報
【特許文献2】特開平10−59846号公報
【0004】
しかしながら、一般的に知られているアントシアニジン含有植物から抽出可能なアントシアニジンの量は決して多いとはいえず、他の成分等からより効率的に抽出する方法が模索されているのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、黒生姜由来のアントシアニジン及びその抽出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究した結果、意外にも、ショウガ科の植物である黒生姜の成分中にアントシアニジンが含まれていることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、以下の通りである。
1.黒生姜から抽出されたことを特徴とするアントシアニジン。
2.(1)黒生姜を原料とし、抽出溶媒を用いて抽出を行い、抽出混合液を得る工程と、(2)該抽出混合液から残渣物を分離し、抽出液を得る工程と、(3)該抽出液を濃縮し、乾燥する工程と、を備えることを特徴とするアントシアニジンの抽出方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の黒生姜由来のアントシアニジンは、食品、化粧品、医薬品、塗料等の分野に好適に利用することができる。
また、本発明のアントシアニジンの抽出方法によれば、効率良くアントシアニジンを抽出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
<アントシアニジン>
本発明のアントシアニジンは、黒生姜から抽出されたことを特徴とする。
本発明における上記「黒生姜」とは、学名:「Kaempferia parviflora」の植物のことであり、「クラチャイダム」及び「カチャイダム」等の別名で称されることもある。
また、この黒生姜から抽出される本発明のアントシアニジンは完全に精製されたものである必要はなく、その純度は特に限定されない。即ち、本発明におけるアントシアニジンは、抽出プロセスにおいて多段階の精製が行われた高純度のものであってもよいし、精製の度合いが低い1次抽出物等のアントシアニジンを含有する抽出物(アントシアニジン含有抽出物)であってもよい。
また、この黒生姜から抽出される本発明のアントシアニジンは、抽出プロセスにおいて多段階の精製が行われた高純度のものであってもよいし、精製の度合いが低い1次抽出物等のアントシアニジンを含有する抽出物(アントシアニジン含有抽出物)であってもよい。尚、アントシアニジンの純度は、通常、0.1%以上であることが好ましく、より好ましくは1%以上、更に好ましくは10%以上、最も好ましくは25%以上である。
【0010】
上記「抽出」において、原料として用いられる黒生姜の使用部位は特に限定されず、花、花弁、葉、茎、根等のどの部分を使用してもよい。尚、上記原料としては、同一部位の黒生姜のみを用いてもよいし、異なる部位のものを混合して用いてもよい。これらのなかでも、特に、茎及び/又は根を用いることが好ましい。
また、原料形態は生のまま使用してもよいが、乾燥粉末又は乾燥したものを適度な大きさに切断して用いることがより好ましい。
【0011】
本発明の黒生姜由来のアントシアニジンは、本発明の作用効果を阻害しない公知の素材成分、賦形剤、増量剤、着香料等の各種添加剤とともに混合もしくは溶解させ、液体状、ペースト状、粉末状、顆粒状又は固形状の組成物とすることもできる。尚、アントシアニジンの配合割合は適宜調整することができる。
上記組成物の態様としては、例えば、食用組成物、医薬用組成物、化粧用組成物、塗料組成物(特に、船底塗料組成物)、その他の工業用組成物等を挙げることができる。
【0012】
<アントシアニジンの抽出方法>
また、本発明のアントシアニジンの抽出方法は、(1)黒生姜を原料とし、抽出溶媒を用いて抽出を行い、抽出混合液を得る工程と、(2)該抽出混合液から残渣物を分離し、抽出液を得る工程と、(3)該抽出液を濃縮し、乾燥する工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
上記工程(1)では、黒生姜を原料とし、抽出溶媒を用いて抽出が行われ、黒生姜抽出液と抽出残渣物とを含む抽出混合液が得られる。尚、上記「黒生姜」は、前述の説明をそのまま適用することができる。
上記「抽出溶媒」としては、通常、水、熱水、親水性有機溶媒、又は、水或いは熱水と親水性有機溶媒との混合溶媒が用いられる。上記親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、クロロホルム、ジクロロエタン、ペンタン、ヘキサン、酢酸、ギ酸、酢酸エチル、酢酸メチル、エーテル等が挙げられる。尚、これらの親水性有機溶媒は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの抽出溶媒なかでも、水、熱水、水又は熱水とメタノール又はエタノールとの混合溶媒が好ましい。
更に、上記抽出溶媒は、塩酸、リン酸、酢酸等を用いて酸性状態、即ちpH7未満、より好ましくはpH2〜6にしたものがより好ましい。
また、上記抽出溶媒が、上記親水性有機溶媒を含む混合溶媒である場合、親水性有機溶媒の含有割合は、混合溶媒を100体積%とした場合に、20〜80体積%であることが好ましく、より好ましくは30〜70体積%、更に好ましくは40〜60体積%である。
【0014】
上記「抽出」においては、上記抽出溶媒を、乾燥させた黒生姜原料の容量に対し、5〜50容量倍用いることが好ましく、5〜20容量倍用いることがより好ましい。
抽出温度は特に限定されず、0〜100℃であることが好ましく、より好ましくは50〜100℃である。
また、抽出時間は特に限定されず、通常、0.1〜50時間であり、好ましくは0.5〜25時間である。
尚、この抽出は1回のみ行ってもよいし、2回以上繰り返し行ってもよい。
【0015】
上記工程(2)では、上記抽出混合液から残渣物が分離され、抽出液が得られる。
上記抽出混合液から残渣物を分離する方法としては、ろ過、遠心分離等の公知の方法が挙げられる。
【0016】
上記工程(3)では、上記抽出液を濃縮し、乾燥することにより、更には必要に応じて精製処理することにより、目的のアントシアニジンが得られる。
上記濃縮方法としては、ろ過、限外ろ過等の公知の方法を用いることができる。
上記乾燥方法は特に限定されず、例えば、常圧又は減圧下での溶媒の留去、加熱乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、アルコール沈殿等の公知の方法を用いることができる。
【0017】
また、上記精製処理としては、例えば、得られた抽出物を、水などに溶解させ、遠心分離、エタノール沈殿分離、溶剤・分別、シリカゲル、アルミナ、活性炭、活性白土等の吸着剤による分画、イオン交換分離等の精製処理が挙げられ、このような処理により、アントシアニジンの純度を向上させることができる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。尚、本発明においては、下記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【0019】
<実験例1>
黒生姜乾燥粉末(使用部位:根)5gを、2%塩酸水溶液とメタノールとの混合溶媒60mL(2%塩酸水溶液:メタノール=1:1)に加え、抽出温度100℃、抽出時間30分の条件で、加熱還流抽出を行い、黒生姜抽出物と抽出残渣物とを含む抽出混合液を得た。その後、得られた抽出混合液をろ過し、抽出液を得た。次いで、得られた抽出液に、上記混合溶媒を更に配合し、上記抽出液の液量を100mLに定容した。その後、この抽出液を減圧濃縮し、凍結乾燥をして、黒生姜抽出物を得た。
その後、得られた抽出物を50体積%エタノール水溶液に混合し、3000r/minで、20分間遠心分離を行い、上澄液について、波長533nmの吸光度を測定することにより、アントシアニジン含有量を測定した。
その結果、アントシアニジンの含有量は、黒生姜乾燥粉末100g当たり、0.04gであった。尚、この質量は、デルフィニジンとしての含有量である。
【0020】
<実験例2>
実験例1で用いた黒生姜乾燥粉末に代えて、秋ウコン(学名:Curcuma domestica Valeton)乾燥粉末(使用部位:根)を用いたこと以外は、実験例1と同様にして、秋ウコン抽出物を得て、アントシアニジンの含有量を測定した。その結果、アントシアニジン(デルフィニジンとして)は、検出されなかった。
【0021】
<実験例3>
実験例1で用いた黒生姜乾燥粉末に代えて、紫ウコン(ガジュツ)(学名:Curcuma zedoaria Roscoe)乾燥粉末(使用部位:根)を用いたこと以外は、実験例1と同様にして、紫ウコン抽出物を得て、アントシアニジンの含有量を測定した。その結果、アントシアニジン(デルフィニジンとして)は、検出されなかった。
【0022】
<実験例4>
実験例1で用いた黒生姜乾燥粉末に代えて、春ウコン(キョウオウ)(学名:Curcuma aromatica Salisbury)乾燥粉末(使用部位:根)を用いたこと以外は、実験例1と同様にして、春ウコン抽出物を得て、アントシアニジンの含有量を測定した。その結果、アントシアニジン(デルフィニジンとして)は、検出されなかった。
【0023】
<実施例の効果>
以上のように、各ショウガ科植物(黒生姜、秋ウコン、紫ウコン、春ウコン)におけるアントシアニジンの含有量を測定した結果、実験例1の黒生姜から得られた抽出物には、多量のアントシアニジンが含まれていることが分かった。
これに対して、実験例2〜4の黒生姜と同じショウガ科に属する植物(秋ウコン、紫ウコン、春ウコン)から得られた各抽出物には、アントシアニジンは含まれていなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒生姜から抽出されたことを特徴とするアントシアニジン。
【請求項2】
(1)黒生姜を原料とし、抽出溶媒を用いて抽出を行い、抽出混合液を得る工程と、
(2)該抽出混合液から残渣物を分離し、抽出液を得る工程と、
(3)該抽出液を濃縮し、乾燥する工程と、を備えることを特徴とするアントシアニジンの抽出方法。

【公開番号】特開2007−284373(P2007−284373A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112509(P2006−112509)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(506129887)株式会社沖縄グリーンライフ (1)
【Fターム(参考)】