説明

アンモニア除去装置およびこれを用いた有機性廃棄物の処理装置ならびに処理方法

【課題】ストリッピング塔に炭酸ガスを吹き込み、アンモニア揮散を抑え、重炭酸アンモニウムおよび炭酸アンモニウムを主成分とした回収液を回収可能なアンモニア除去装置およびこれを用いた有機性廃棄物の処理装置ならびに処理方法を提供すること。
【解決手段】ストリッピング塔の塔下部から炭酸ガスを吹き込んで、塔頂からの有機性廃棄物と気液接触させることにより有機性廃棄物中のアンモニア性窒素をガス中に移行させ気液接触により生じた水蒸気を含むガスに同伴させて塔頂部から排出後、これらの成分を含むガスを冷却器で冷却することにより重炭酸アンモニウムや炭酸アンモニウムの形で分離した処理液を得たのち、この処理液をメタン発酵槽に供給してメタン発酵し、その消化ガスを燃焼装置により燃焼し、その排ガスをストリッピング用の炭酸ガスとして有効利用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜糞尿、食品廃棄物、または、高濃度のアンモニア性窒素含有の有機性排水などからアンモニアを除去するアンモニア除去装置と、このアンモニア除去装置から排出された処理液をメタン発酵処理する処理装置および処理方法に関する。
なお、前記有機物を高濃度に含有する家畜糞尿などの廃棄物や排水を包含して有機性廃棄物というが、各々の用語で記載する場合もある。
【背景技術】
【0002】
従来から、アンモニア性窒素を高濃度に含有する有機性廃棄物においては、河川や海域の富栄養化を防止するため、各種の方法で脱窒処理されている。しかしながら、豚糞、鶏糞、牛糞、馬糞や羊糞などの家畜糞尿などにおいては、その対策が遅れているのが現状であり、地下水や河川の汚染が深刻となっており、その対策が急務となっている。
【0003】
従来、家畜糞尿を処理する方法として、家畜糞尿(以下、有機性排水)を固液分離し、分離した液をメタン発酵させ、このとき高濃度のメタンを含有する消化ガスを回収し、発酵後の液(消化液)を活性汚泥微生物で水処理するなどの方法が知られている。これらの処理方法では、アンモニア性窒素の微生物への阻害を回避するため、アンモニア性窒素を低濃度化する方法が行われている。具体的には、メタン発酵させる前段階において、メタン発酵における阻害因子となるアンモニア性窒素を水蒸気によるストリッピング〔スチームストリッピング法、例えば特許文献1(特開2009−66572号公報)参照〕や、空気を用いた曝気による揮散などにより除去する。
【0004】
このうち、スチームストリッピング法では、ストリッピング用のストリッピング塔において、その塔上部から、高濃度にアンモニア性窒素を含有する有機性排水を流下する一方、塔下部より水蒸気を供給することで、ストリッピング塔内で水蒸気が有機性排水と接触し、有機性排水中のアンモニア成分が水蒸気側へ移行し、有機性排水中から取り除かれる。ストリッピング後のアンモニアを含む水蒸気は、塔頂部からの排出後、冷却器により冷却されて、アンモニアを含む凝縮水(回収液)として回収されるのが一般的である。
また、空気を用いた曝気法の場合でも、液温を高めることで有機性排水中のアンモニア含有量を容易に低減することができ、かつアンモニアを含む凝縮水を回収することもできる。
【0005】
しかしながら、何れの有機性排水の処理方法の場合でも、回収液の主成分は、水酸化アンモニウム、重炭酸アンモニウムおよび炭酸アンモニウムである。このうち、水酸化アンモニウムは、常温でも分圧平衡分のアンモニアが放散する。そのため、水蒸気の冷却後に臭気対策の装置を設ける必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−66572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような課題を背景になされたもので、ストリッピング塔に炭酸ガスを吹き込むことで、有機性排液中からストリッピングされたアンモニアと二酸化炭素とを反応させ、アンモニア分を、常温での放散がし易い水酸化アンモニウムに代えて放散しにくい重炭酸アンモニウムおよび炭酸アンモニウムを主成分とした回収液として回収することができ、これによりストリッピング塔から水蒸気を含むガスの冷却後にアンモニア用の脱臭装置を不必要とすることが可能なアンモニア除去装置およびこれを用いた有機性廃棄物の処理装置ならびに処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本発明の要旨は、請求項1に記載の本発明は、アンモニア性窒素を含む有機性廃棄物に炭酸ガスを接触させ、前記有機性廃棄物からアンモニア性窒素を分離して処理液を得るストリッピング塔を備えたことを特徴とするアンモニア除去装置である。
【0009】
また、請求項2に記載の本発明は、前記ストリッピング塔に供給される前記有機性廃棄物と、前記ストリッピング塔の底部から排出された前記処理液とを熱交換する熱交換器を有した請求項1に記載のアンモニア除去装置である。
【0010】
また、請求項3に記載の本発明は、アンモニア性窒素を含む有機性廃棄物に炭酸ガスを接触させ、前記有機性廃棄物からアンモニア性窒素を分離して処理液を得るストリッピング塔を有したアンモニア除去装置と、
前記処理液を供給して、前記アンモニア性窒素が分離された有機性廃棄物をメタン発酵し、有機物の分解と消化ガスの回収を行うメタン発酵槽
とを備えたことを特徴とする有機性廃棄物の処理装置である。
【0011】
また、請求項4に記載の本発明は、前記ストリッピング塔に供給される前記有機性廃棄物と、前記ストリッピング塔の底部から排出された前記処理液とを熱交換する熱交換器を有した請求項3に記載の有機性廃棄物の処理装置である。
【0012】
さらに、請求項5に記載の本発明は、
前記メタン発酵槽から発生した消化ガスを燃焼させる燃焼装置と、
前記燃焼装置から排出された二酸化炭素を含む排ガスを、前記ストリッピング塔に供給する排ガス供給手段
とを有した請求項3または請求項4に記載の有機性廃棄物の処理装置である。
【0013】
さらにまた、請求項6に記載の本発明は、前記排ガス供給手段は、
前記燃焼装置と前記ストリッピング塔とを連通する排ガス供給管と、
前記排ガス供給管の途中に設けられて、前記排ガスの二酸化炭素濃度を計測するCO濃度計と
前記排ガス供給管の途中に設けられて、前記排ガスの流量を指示調整する流量指示調節計と、
を有した請求項5に記載の有機性廃棄物の処理装置である。
【0014】
請求項7に記載の本発明は、前記燃焼装置が、消化ガスボイラーまたは消化ガス発電機である請求項5または請求項6に記載の有機性廃棄物の処理装置である。
【0015】
請求項8に記載の本発明は、ストリッピング塔内でアンモニア性窒素を含む有機性廃棄物に炭酸ガスを接触させ、前記有機性廃棄物からアンモニア性窒素を分離して処理液を得るストリッピング工程と、前記処理液を供給して、前記アンモニア性窒素が分離された有機性廃棄物をメタン発酵し、有機物の除去と消化ガスの回収を行うメタン発酵工程とを備えたことを特徴とする有機性廃棄物の処理方法である。
【0016】
請求項9に記載の本発明は、前記ストリッピング塔に供給される前記有機性廃棄物と、前記ストリッピング塔の底部から排出された前記処理液とを熱交換する請求項8に記載の有機性廃棄物の処理方法である。
【0017】
請求項10に記載の本発明は、前記消化ガスを脱硫した後に燃焼し、その際に発生した前記炭酸ガスを含む排ガスを前記ストリッピング塔に供給する請求項8または請求項9に記載の有機性廃棄物の処理方法である。
【0018】
請求項11に記載の本発明は、前記ストリッピング塔内でストリッピング中の有機性廃棄物の温度が、70℃以上100℃未満である請求項8〜請求項10のうち、何れか1項に記載の有機性廃棄物の処理方法である。
【0019】
請求項12に記載の本発明は、前記有機性廃棄物が家畜糞尿に由来するものである請求項8〜請求項11のうち、何れか1項に記載の有機性廃棄物の処理方法である。
【0020】
ここで、アンモニア除去装置とは、塔下部から炭酸ガスを吹き込んで、加熱した処理する有機性廃棄物と気液接触させることにより有機性廃棄物中のアンモニア性窒素をガス中に移行させ気液接触により生じた水蒸気を含むガスに同伴して塔頂部から排出後、これらの成分を含むガスを冷却器で冷却することにより重炭酸アンモニウムや炭酸アンモニウムを主成分とする回収液として回収する装置である。
前記アンモニア除去装置の運転条件としては、通常、常圧であり、好ましくは温度85℃〜90℃であり、通常、水蒸気を含む炭酸ガスによりストリッピング処理される。
炭酸ガスとしては、メタン発酵槽から回収された消化ガスを燃焼した排ガスのほか、消化ガスのメタンガス精製装置で排出する炭酸ガス、さらには一般の重油、ガス炊きボイラーなどの燃焼排ガスなどを採用することができる。
【0021】
メタン発酵槽としては、メタン発酵槽、酸発酵槽とメタン発酵槽との組み合わせ装置、または上向流嫌気性処理装置(UASB装置)などを採用することができる。また、回収した消化ガスは燃料などとして利用することができる。なお、メタン発酵槽におけるメタン発酵の処理温度は限定されないが、例えば、中温発酵処理方法では35〜38℃、高温発酵処理方法では54〜56℃程度である。なお、滞留時間は、2日〜2週間として処理するのが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の本発明においては、ストリッピング用のストリッピング塔において、塔下部から炭酸ガスを吹き込むことで、塔上部から流下する有機性廃棄物が気液接触することにより有機性廃棄物中のアンモニア成分は、ガス側へ移行して除去される。
ストリッピング後のアンモニア成分を含む水蒸気含有ガスは、ストリッピング塔の塔頂部から排出された後、冷却器により冷却されて、アンモニア分を、常温で放散しにくい重炭酸アンモニウムおよび炭酸アンモニウムを主成分とした回収液として回収することができる。これにより、ストリッピング塔から水蒸気の冷却後にアンモニア用の脱臭装置を不必要とすることもできる。
【0023】
請求項2、請求項4および請求項9に記載の本発明においては、熱交換器を用いて、ストリッピング塔に供給される有機性廃棄物と、ストリッピング塔の底部から排出された処理液とを熱交換するようにしたので、従来のスチーム直接吹込法に比べ水蒸気量を15%程度減少させることが可能である。
【0024】
請求項3および請求項8に記載の本発明においては、ストリッピング用のストリッピング塔において、塔下部から炭酸ガスを吹き込むことで加熱した処理する有機性廃棄物と気液接触させることにより有機性廃棄物中のアンモニア性窒素をガス中に移行させ気液接触により生じた水蒸気を含むガスに同伴して塔頂部から排出後、これらの成分を含むガスを冷却器で冷却することにより重炭酸アンモニウムや炭酸アンモニウムを主成分とする回収液として回収することができる。
このように、ストリッピング後のアンモニア成分を含むガスは、ストリッピング塔の塔頂部から排出された後、冷却器により冷却されて、アンモニア成分を、常温で放散し難い重炭酸アンモニウムおよび炭酸アンモニウムを主成分とした回収液として回収することができる。これにより、ストリッピング塔からガスの冷却後にアンモニア用の脱臭装置を不必要とすることもできる。
また、アンモニア除去装置において、メタン発酵における阻害因子となるアンモニア性窒素をメタン発酵に影響しない濃度まで低減された処理液(脱アンモニア液)はメタン発酵槽に供給される。メタン発酵槽では、メタン生成菌の働きによりメタン発酵して燃料などとして使用されるメタンを含む消化ガスが回収され、効率的な発酵処理が可能となる。
【0025】
請求項5に記載の本発明においては、メタン発酵槽から発生した消化ガスを燃焼装置により燃焼させ、その際、燃焼装置から排出された二酸化炭素を含む排ガスを排ガス供給手段によりストリッピング塔に供給する。これにより、メタン発酵槽から発生した消化ガスを有効利用して、アンモニア除去装置のストリッピング塔に供給される炭酸ガスを得ることができる。
【0026】
請求項6に記載の本発明においては、燃焼装置から排出された二酸化炭素を含む排ガスを排ガス供給管を通してストリッピング塔に供給する。その途中、流量指示調節計により排ガスの流量を指示調整するとともに、CO濃度計により排ガスの二酸化炭素濃度を計測する。これにより、アンモニアと反応する二酸化炭素必要量を供給し効率的なストリッピングを行うことができる。
【0027】
請求項10に記載の本発明においては、燃焼装置に供給される前の消化ガスを脱硫するので、硫化水素などの発生を低減して大気汚染を防止することができる。
【0028】
請求項11に記載の本発明においては、ストリッピング塔内でストリッピング中の有機性廃棄物の温度を70℃以上100℃未満としたので、比較的少量の炭酸ガスを含む排ガスでアンモニア性窒素をガス中に移行させることができるという効果が得られる。ストリッピング中の有機性廃棄物の温度が70℃未満では、有機性廃棄物からのアンモニアの除去率が低下する。一方、100℃以上では、ストリッピング塔が圧力容器構造規格を満足する仕様となり設備費が嵩むという不都合が生じる。ストリッピング塔内でストリッピング中の有機性廃棄物の好ましい温度は、85〜90℃である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態で、有機性廃棄物(家畜糞尿)の処理装置の系統図である。
【図2】本発明の一実施形態で、ストリッピング塔内での有機性廃棄物の液温とアンモニアの除去率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明を具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の有機性廃棄物の処理装置の系統図である。
【0031】
図1は、有機性廃棄物として家畜糞尿を対象とした処理装置であり、主な装置構成としては、有機性廃棄物の原液タンク1、アンモニア性窒素を分離するアンモニア除去装置2、メタン発酵するメタン発酵槽3、メタン発酵槽3内でのメタン発酵により得られた消化ガスを燃焼する消化ガスボイラー4および消化ガス発電機5と、消化ガスボイラー4および消化ガス発電機5から排出された二酸化炭素を含む排ガスを、アンモニア除去装置2へ供給する排ガス供給手段6とを備えている。
【0032】
以下、これらの構成を詳細に説明する。
原液タンク1は、スクリーンで家畜糞尿から夾雑物を除去した液状の有機性廃棄物(以下「原液」という)を後段の処理工程に供給するにあたり、原液の供給量を調整するために貯留する貯留槽であり、必要によりPH調整が行われる。
原液は、熱交換器11を経て後段のアンモニア除去装置2に供給される構成となっている。
【0033】
アンモニア除去装置2は、原液中のアンモニア性窒素の一部を排出除去する棚段式ストリッピング塔(ストリッピング塔)2Aを有している。なお、ストリッピング塔は、棚段式にかぎらず、充填塔であってもよい。塔上段には加熱処理された原液が供給され、塔下段に排ガス供給手段6から供給された二酸化炭素を含む排ガスが吹き込まれ、有機性廃棄物中のアンモニア分が上昇水蒸気および排ガスに同伴されて上昇し、棚段により分留濃縮され、塔頂部からアンモニアを含む蒸気として排出される。ストリッピング塔2Aの塔頂部には、冷却水を冷媒とする冷却器7により当該蒸気を冷却する冷却器7が連通されている。冷却器7より下流部には、アンモニア成分を重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウムを主成分とした回収液として回収する回収液タンク8が連通されている。
【0034】
回収液タンク8より下流部には、回収液タンク8から排出された回収液を貯留する回収液貯留タンク9が連通されている。また、回収液タンク8から排出された回収液の一部はストリッピング塔2Aの塔上段に還流されている。そのため、回収液タンク8には高濃度の重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム含有の凝縮液が貯留される。また、回収液タンク8の上部からは、アンモニア分が低減された炭酸ガスなどが大気解放される。その途中で、活性炭などを含む脱臭装置10により炭酸ガス中に微量に含まれたアンモニアなどの臭気分が脱臭される。また、大気解放されるガスのうち、未反応の炭酸ガスが、排ガス供給管16の途中に還流される。
さらに、ストリッピング塔2Aの塔底からは処理液である脱アンモニアされた液(以下「脱アンモニア液」という)が抜き出され、熱交換器11によりアンモニア除去装置2に供給される原液と熱交換して適宜温度に調整され、いったん中継タンク12に貯留後、後段のメタン発酵槽3に供給される構成となっている。
【0035】
メタン発酵槽3は、アンモニア除去装置2から供給された脱アンモニア液を、メタン生成菌の働きによりメタン発酵して燃料などとして使用されるメタンを含む消化ガスを回収する装置である。具体的には、メタン発酵装置3は、被メタン処理液である脱アンモニア液を収容する発酵槽、発酵槽内の中央において垂直方向に配設されたドラフトチューブ、ドラフトチューブに連通して上部に配設されたヘッドタンクから主になり、メタン発酵槽3はヘッドタンクにより覆蓋された密閉構造となる。メタン発酵槽3内で発酵後の消化液は消化液タンク13に供給され、その後、活性汚泥微生物により水処理される。
【0036】
メタン発酵槽3の後段には脱硫塔14が連通され、メタン発酵槽3から排出された消化ガスの脱硫が行われる。脱硫塔14の下流部にはガスホルダー15が連通され、ここで脱硫後の消化ガスがいったん貯留される。ガスホルダー15の下流部には、消化ガスを燃料とする消化ガスボイラー(燃焼装置)4および消化ガス発電機(燃焼装置)5が配設されている。消化ガスは、これらの燃焼装置内で燃焼される。消化ガスボイラー4では、脱硫後の消化ガスを燃焼して水蒸気が発生する。この水蒸気は、ストリッピング塔2Aに供給される水蒸気として使用される。なお、水蒸気は、貯留塔2Aの塔下部に直接供給される場合と、熱交換後の原液に供給される場合と、ストリッピング塔2Aから排出された脱アンモニア液の一部が再度ストリッピング塔2Aの中段に還流される際において、還流される脱アンモニア液に混入される場合とがある。
【0037】
燃焼時に発生した二酸化炭素を含む排ガスは、排ガス供給管16を介して、消化ガスボイラー4および消化ガス発電機5と、ストリッピング塔2Aの塔下段および塔底とを連通する。また、排ガス供給管16の上流部には、排ガスの流量を指示調整する流量指示調節計17が設けられる一方、排ガス供給管16の下流部には、排ガスの二酸化炭素濃度を計測するCO濃度計18が設けられている。排ガスが発生過多になった場合には、排ガス供給管16の流量指示調節計17より上流部分から、排ガスの一部(余剰分)を大気放出する。
【0038】
なお、図1において、P1は原液タンク1の原液を熱交換器11を経てストリッピング塔2Aに圧送する第1ポンプ、P2はストリッピング塔2Aの塔底から排出された脱アンモニア液を熱交換器11を経て中継タンク12へ圧送する第2ポンプである。また、P3は中継タンク12に貯留された脱アンモニア液をメタン発酵槽3に圧送する第3ポンプ、P4は燃焼装置4,5からの排ガスをストリッピング塔2Aに圧送する第4ポンプである。
【0039】
次に、図1に記載した本発明に係る家畜糞尿の処理装置の系統図に基づき、家畜糞尿を処理する処理方法を説明する。
まず、家畜糞尿をスクリーンに供給して家畜糞尿から夾雑物を除去する(図示せず)。スクリーンで分離された原液は第1ポンプP1によりアンモニア除去装置2のストリッピング塔2Aの塔上段に圧送される。その途中、原液は熱交換器11を通過することで、ストリッピング塔2Aの塔底から排出された脱アンモニア液と熱交換して85〜90℃に加熱される。塔上段に供給された原液は塔内を流下する一方、塔下段には加熱用のスチームおよび排ガス供給手段6から供給された二酸化炭素を含む排ガスが吹き込まれ、有機性廃棄物中のアンモニア分がガスに同伴されて塔頂部から塔外へ排出される。
【0040】
二酸化炭素を含む排ガスは、液中からストリッピングされたアンモニアと排ガス中の二酸化炭素とが反応して、アンモニア分を重炭酸アンモニウムおよび炭酸アンモニウムを生成する。以下、この反応を次式に示す。
NH+CO+HO → NHHCO
または
2NH+CO+HO → (NHCO
【0041】
冷却水を冷媒とする冷却器7により冷却され、アンモニア分が重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウムを主成分とした回収液として回収液タンク8に貯留される。
次に、回収液タンク8内の回収液は回収液貯留タンク9へ貯留される。このとき、回収液タンク8から排出された回収液の一部はストリッピング塔2Aの塔上段に還流(再ストリッピング)される。これにより、塔頂部より排出する蒸気中のアンモニアの濃度を高めることができる。そのため、回収液タンク8には高濃度の重炭酸アンモニウムおよび炭酸アンモニウムを含有する凝縮液が貯留される。これにより、凝縮液中には、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウムの析出した固形分が混合した回収液として回収することができる。
【0042】
回収液タンク8の上部からは、アンモニア分が回収された未反応の炭酸ガスなどを含む排ガスが、脱臭装置10により脱臭されて大気解放される。大気解放されるガスのうち、未反応の炭酸ガスの一部が、排ガス供給管16の途中に還流される。
次に、ストリッピング塔2Aの塔底からは処理液である脱アンモニア液が第2ポンプP2により抜き出され、前記熱交換器11によりアンモニア除去装置2に供給される原液と熱交換して適宜温度に調整される。その後、脱アンモニア液はいったん中継タンク12に貯留された後、第3ポンプP3によりメタン発酵槽3に供給される。
【0043】
メタン発酵槽3に供給された脱アンモニア液は、メタン発酵槽3内で、35〜38℃の中温発酵処理方法で行われるが、54〜56℃程度の高温発酵処理方法であってもよい。また、メタン発酵処理におけるPHは8.0〜8.5に維持し、容積負荷量CODcr(二クロム酸カリウムを用いて測定される化学的酸素要求量)20〜25kg/m/dで運転される。発生した消化ガスはメタン発酵槽3の上部に形成されるガス溜りに滞留して内圧を高め、ドラフトチューブに連通して上部に配設されたヘッドタンクへ消化液を押し上げることになる。
【0044】
メタン発酵槽3の上部に形成されるガス溜りに滞留した消化ガスは、その圧力で消化ガス排出管から排出され、シールポットを経て脱硫塔14に供給され、脱硫塔14により消化ガス中に混在する硫化水素が除去され、ガスホルダ15に貯留される。ガスホルダ15に貯留された消化ガスは、消化ガスボイラー4および消化ガス発電機5の燃料として利用される。なお、メタン発酵槽3内の固形分濃度は、4wt%〜15wt%となるように調整される。
【0045】
消化ガスボイラー4では、脱硫後の消化ガスを燃焼し水蒸気が発生する。この水蒸気は、ストリッピング塔2Aに供給される原液およびガスの加温用として直接吹き込み、あるいは間接加温用の水蒸気として使用される。なお、水蒸気は、貯留塔2Aの塔下部に直接供給されるか、熱交換後の原液に供給されるか、ストリッピング塔2Aから排出された脱アンモニア液の一部が再度ストリッピング塔2Aの中段に還流される際、この還流される脱アンモニア液中に混入されるなど、液の直接加温として、あるいはそれぞれの箇所の熱交換としての間接加温用として供給される。
【0046】
燃焼時に消化ガスボイラー4および消化ガス発電機5から発生した二酸化炭素を含む排ガスは、第4ポンプP4により排ガス供給管16を介して、ストリッピング塔2Aの塔下段および塔底とに圧送される。その途中、流量指示調節計17により排ガスの流量が指示調整される一方、CO濃度計18により排ガスの二酸化炭素濃度が計測される。なお、排ガスが発生過多になった場合には、排ガス供給管16の流量指示調節計17より上流部分から、排ガスの一部(余剰分)を大気放出する。
【0047】
このように、家畜糞尿の処理装置を構成し、家畜糞尿を処理運転したことで、家畜糞尿のメタン発酵を効率的に行うことができ、廃棄物である家畜糞尿を、排出元の近傍農家などで利用可能な家畜飼料や肥料および燃料ガスなどの多くの有効な処理物として回収できるとともに、廃棄物としての排出を極力少なくすることができる。
【0048】
また、ストリッピング塔2Aの塔下部から炭酸ガスを吹き込むことで、加熱した処理する有機性廃棄物と気液接触させることにより有機性廃棄物中のアンモニア性窒素をガス中に移行させ気液接触により生じた水蒸気を含むガスに同伴して塔頂部から排出させ、これらの成分を含むガスを冷却器で冷却することにより重炭酸アンモニウムや炭酸アンモニウムを主成分とする回収液として回収することができる。この結果、ストリッピング塔2Aから水蒸気の冷却後にアンモニア用の脱臭装置10を不必要とすることもできる。
【0049】
また、熱交換器11を用いて、ストリッピング塔2Aに供給される有機性廃棄物と、ストリッピング塔2Aの底部から排出された処理液とを熱交換するようにしたので、従来のスチーム直接吹込法に比べ水蒸気量を15%程度減少させることが可能である。
さらに、アンモニア除去装置2において、メタン発酵における阻害因子となるアンモニア性窒素をメタン発酵に影響しない濃度まで低減された脱アンモニア液はメタン発酵槽3に供給される。メタン発酵槽3では、メタン生成菌の働きによりメタン発酵して燃料などとして使用されるメタンを含む消化ガスが回収され、効率的な発酵処理が可能となる。
【0050】
さらにまた、メタン発酵槽3より発生した消化ガスを燃焼装置4,5により燃焼させ、その際、燃焼装置4,5から排出された二酸化炭素を含む排ガスを排ガス供給手段6によりストリッピング塔2Aに供給する。これにより、メタン発酵槽3から発生した消化ガスを有効利用して、アンモニア除去装置2のストリッピング塔2Aに供給される炭酸ガスを得ることができる。
【0051】
燃焼装置4,5から排出された二酸化炭素を含む排ガスを排ガス供給管16を通してストリッピング塔2Aに供給する。その途中、流量指示調節計17により排ガスの流量を指示調整するとともに、CO濃度計18により排ガスの二酸化炭素濃度を計測する。これにより、二酸化炭素を効率的に供給することができる。
燃焼装置4,5に供給される前の消化ガスを脱硫するので、硫化水素などの発生を低減して大気汚染を防止することができる。
【実施例】
【0052】
試験例
以下に家畜尿汚水を加温し、炭酸ガスをアンモニア回収装置(ストリッピング塔)に吹き込み、汚水中のアンモニアの除去を行った結果の一例を図2に示す。
処理条件は、原液処理量が10リットル/hr、原液中のアンモニア性窒素濃度が4g/リットル、ガス吹き込み量が600リットル/hr、ガス中のCO濃度が10%、ストリッピング温度が80℃、85℃、90℃のとき、アンモニア除去率が30.7%、51.6%、75.7%である。回収液アンモニア態窒素濃度は2〜8mole/リットルであった。
前記結果から、液温度(ストリッピング温度)が90℃のとき、アンモニア除去率が約76%で、最も好ましかった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、牛、豚、鶏、馬や羊などの家畜糞尿や、食品廃棄物、または高濃度のアンモニア性窒素含有の有機性排水などの有機性廃棄物の処理に有用である。
【符号の説明】
【0054】
2 アンモニア除去装置
2A ストリッピング塔
3 メタン発酵槽
4 消化ガスボイラー(燃焼装置)
5 消化ガス発電機(燃焼装置)
6 排ガス供給手段
11 熱交換器
16 排ガス供給管
17 流量指示調節計
18 CO濃度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア性窒素を含む有機性廃棄物に炭酸ガスを接触させ、前記有機性廃棄物からアンモニア性窒素を分離して処理液を得るストリッピング塔を備えたことを特徴とするアンモニア除去装置。
【請求項2】
前記ストリッピング塔に供給される前記有機性廃棄物と、前記ストリッピング塔の底部から排出された前記処理液とを熱交換する熱交換器を有した請求項1に記載のアンモニア除去装置。
【請求項3】
アンモニア性窒素を含む有機性廃棄物に炭酸ガスを接触させ、前記有機性廃棄物からアンモニア性窒素を分離して処理液を得るストリッピング塔を有したアンモニア除去装置と、
前記処理液を供給して、前記アンモニア性窒素が分離された有機性廃棄物をメタン発酵し、有機物の分解と消化ガスの回収を行うメタン発酵槽
とを備えたことを特徴とする有機性廃棄物の処理装置。
【請求項4】
前記ストリッピング塔に供給される前記有機性廃棄物と、前記ストリッピング塔の底部から排出された前記処理液とを熱交換する熱交換器を有した請求項3に記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項5】
前記メタン発酵槽から発生した消化ガスを燃焼させる燃焼装置と、
前記燃焼装置から排出された二酸化炭素を含む排ガスを、前記ストリッピング塔に供給する排ガス供給手段
とを有した請求項3または請求項4に記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項6】
前記排ガス供給手段は、
前記燃焼装置と前記ストリッピング塔とを連通する排ガス供給管と、
前記排ガス供給管の途中に設けられて、前記排ガスの二酸化炭素濃度を計測するCO濃度計と
前記排ガス供給管の途中に設けられて、前記排ガスの流量を指示調整する流量指示調節計
とを有した請求項5に記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項7】
前記燃焼装置が、消化ガスボイラーまたは消化ガス発電機である請求項5または請求項6に記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項8】
ストリッピング塔内でアンモニア性窒素を含む有機性廃棄物に炭酸ガスを接触させ、前記有機性廃棄物からアンモニア性窒素を分離して処理液を得るストリッピング工程と、
前記処理液を供給して、前記アンモニア性窒素が分離された有機性廃棄物をメタン発酵し、有機物の除去と消化ガスの回収を行うメタン発酵工程
とを備えたことを特徴とする有機性廃棄物の処理方法。
【請求項9】
前記ストリッピング塔に供給される前記有機性廃棄物と、前記ストリッピング塔の底部から排出された前記処理液とを熱交換する請求項8に記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項10】
前記消化ガスを脱硫した後に燃焼し、その際に発生した前記炭酸ガスを含む排ガスを前記ストリッピング塔に供給する請求項8または請求項9に記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項11】
前記ストリッピング塔内でストリッピング中の有機性廃棄物の温度が、70℃以上100℃未満である請求項8〜請求項10のうち、何れか1項に記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項12】
前記有機性廃棄物が家畜糞尿に由来するものである請求項8〜請求項11のうち、何れか1項に記載の有機性廃棄物の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−125701(P2012−125701A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279597(P2010−279597)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000176752)三菱化工機株式会社 (48)
【Fターム(参考)】